説明

X線CT装置

【課題】放射線照射装置に対するX線CT装置の架台や寝台の位置精度や傾き角度精度が適正範囲内であるか否かを簡単に確認することができるようにする。
【解決手段】X線CT装置1は、可視光を扇状に発光してこの可視光を放射線照射装置の両側面と上面との三方向から照射することにより放射線照射装置の設置位置を位置決めする3つの発光部4a、4b、4cとが設けられた治療室内に設置される。このX線CT装置1は、X線管とX線検出器とを保持する中心線“O”回りに回転可能な回転体を備えてこの回転体の中心線“O”を放射線照射装置のアイソセンタに向けて配置される架台2を有し、架台2の両側面と上面とに、発光部4a、4b、4cから発光された可視光の照射位置を視認可能なマーカ12a〜12fが中心線“O”の方向に沿って2つずつ設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体に対して放射線治療を行う場合、放射線治療計画装置や放射線治療器等の放射線照射装置と、治療部位の場所や大きさを確認するために被検体をX線撮影するX線CT装置とを同じ治療室内に設置し、X線CT装置で被検体の治療部位をX線撮影した後、その撮影結果に基づいて被検体の治療部位に対して放射線照射装置で放射線を照射して放射線治療を施すことが行われている(下記特許文献1参照)。
【0003】
この場合、放射線照射装置のアイソセンタと、X線CT装置の架台や寝台との位置合わせが正しく行われていることが必要である。
【0004】
従来はこの位置合わせを、ファントムを用いて行っていた。具体的には、寝台の天板にファントムを取付け、この取付け位置及び取付け角度を、放射線照射装置の周囲の三方に設けられている放射線照射装置の位置決め用のレーザ装置から発光された光をファントムに照射することにより決定する。ファントムの取付け位置及び取付け角度を決定した後、天板をスライドさせることによりファントムを架台内に挿入してX線撮影し、架台や寝台の位置を変更しながらこの撮影を複数回繰り返す。その後、撮影された画像データから架台及び寝台のX軸、Y軸方向の位置精度、X軸、Y軸、Z軸回りの傾き角度精度を計算し、これらの位置精度や傾き角度精度が適正範囲内となる位置に架台と寝台とを位置決めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−255719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、放射線照射装置に対する架台や寝台の位置決めをファントムを用いて行う場合には、レーザ装置を用いて行う天板に対するファントムの取付け位置及び取付け角度の決定が煩雑である。また、ファントムの撮影を複数回繰り返すために時間と手間とがかかっている。しかも、架台や寝台の放射線照射装置に対する位置精度や傾き角度精度が適正範囲内であるか否かを簡単に確認することはできない。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的は、放射線照射装置に対するX線CT装置の架台や寝台の位置精度や傾き角度精度が適正範囲内であるか否かを簡単に確認することができるX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、可視光を扇状に発光してこの可視光を放射線照射装置の両側面と上面との三方向から照射することにより放射線照射装置の設置位置を位置決めする3つの発光部と設けられた治療室内に設置されるX線CT装置において、X線CT装置は、X線管とX線検出器とを保持する中心線回りに回転可能な回転体を備え、この回転体の中心線を放射線照射装置のアイソセンタに向けて配置される架台を有し、架台の両側面と上面とに、発光部から発光された可視光の照射位置を視認可能なマーカが中心線の方向に沿って2つずつ設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1及び第2の実施形態のX線CT装置とレーザ装置との治療室内での設置状態を示す斜視図である。
【図2】架台とレーザ装置との治療室内での設置状態を示す正面図である。
【図3】レーザ装置から発光されたレーザ光がマーカに照射されている状態を示す説明図である。
【図4】マーカに対するレーザ光の照射状態から、架台の位置精度と傾き角度精度とが適正範囲内であるか否かを判断する場合の説明図である。
【図5】第3及び第4の実施形態のX線CT装置とレーザ装置との治療室内での設置状態を示す斜視図である。
【図6】レーザ装置から発光されたレーザ光がフォトセンサに照射されている状態を示す説明図である。
【図7】フォトセンサに対するレーザ光の照射状態から、架台の位置精度と傾き角度精度とが適正範囲内であるか否かを判断する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態のX線CT装置1を、図1ないし図4に基づいて説明する。X線CT装置1は、被検体の治療部位にX線を照射することにより被検体の治療部位をX線撮影する架台2と、X線撮影される被検体が載置される寝台3とを備えている。
【0011】
このX線CT装置1は、X線CT装置1による撮影結果に基づいて放射線治療計画を立てる放射線照射装置である放射線治療計画装置(図示せず)と共に、治療室R内に設置される。この治療室Rの内側の両側面及び上面には、室内に向けて可視光を扇状に発光する発光部である3つのレーザ装置4a、4b、4cが取付けられている。
【0012】
これらのレーザ装置4a、4b、4cは、放射線治療計画装置のアイソセンタに向け照射されるよう配置され、放射線治療計画装置の位置決め用に用いられている。すなわち、各レーザ装置4a、4b、4cから発光されるレーザ光を放射線治療計画装置に設けられた目的個所に両側面及び上面の三方向からそれぞれ照射し、その照射状況を目視により確認することにより位置決めすることができる。
【0013】
また、これらのレーザ光は、治療室R内に配置されるX線CT装置にも同様に両側面及び上面の三方向からそれぞれ照射される。これらの放射線治療計画装置とX線CT装置1の架台2と寝台3とは、放射線治療計画装置、寝台3、架台2の順に直線上に配列されている。
【0014】
X線CT装置1の架台2は、治療室R内の床面に設けられたガイドレール5に沿って移動可能に設けられた自走式タイプであり、その移動方向は寝台3に対して接離する方向とされている。また、この架台2は、ガイドレール5に対する係合部(図示せず)を備えた基部6と、基部6に固定された外装ケース7とを有している。
【0015】
この外装ケース7には、図1及び図2に示すように、寝台3に載置された被検体が挿入される空洞部8が形成されている。外装ケース7内には、図2に示すように、空洞部8に挿入された被検体の回りを回転するドラム状の回転体9と、回転体9を回転体9の中心線“O”の回りに回転可能に支持する支持部(図示せず)と、回転体9を回転させる駆動部(図示せず)とが設けられている。この回転体9には、X線を出射するX線管10と、被検体を透過したX線を検出するX線検出器11とが保持されている。
【0016】
また、架台2は、回転体9の中心線“O”を放射線治療計画装置のアイソセンタに向けて配置されている。
【0017】
X線CT装置1の寝台3は、支柱部3aと被検体が載置される載置部3bとから構成され、寝台3の長手方向(載置部3bに載置された被検体の体軸方向)が放射線治療計画装置のアイソセンタに向けて配置されている。なお、載置部3bは上下方向に移動可能に設けられるとともに支柱部3aを支点として水平面内で180度回転可能に設けられている。
【0018】
12a、12b、12c、12d、12e、12fは、架台2の位置や傾き角度が適正範囲内であるか否かを確認する為の視認可能なマーカである。これらのマーカ12a〜12fは、架台2の外装ケース7の両側面と上面とであって、中心線“O”の方向に沿った面内に、それぞれ中心線“O”の方向に沿って2個ずつ合計6個設けられている。
すなわち、マーカ12a、12bは、架台2の外装ケース7の一方の側面に取付けられ、回転体9の中心線“O”を含む水平面内に位置されている。マーカ12c、12dは、架台2の外装ケース7の上面に取付けられ、回転体9の中心線“O”を含む垂直面内に位置している。マーカ12e、12fは、架台2の外装ケース7の他方の側面に取付けられ、回転体9の中心線“O”を含む水平面内に位置している。
【0019】
また、マーカ12a、12bは、図3に示すように、アルミニウム製又は樹脂製のプレート13に一定の幅を有する視認用線14をけがいたり印刷したりして形成され、レーザ装置4aから発光されたレーザ光のマーカ12a、12bに対する照射位置を視認できるようになっている。マーカ12c〜12fもマーカ12a、12bと同じ構成であり、レーザ装置4b、4cから発光されたレーザ光のマーカ12c〜12fに対する照射位置を視認できるようになっている。
【0020】
なお、架台2の外装ケース7へのマーカ12a〜12fの取付け箇所は、外装ケース7に設けられている開閉可能なカバー部ではなく、位置固定であるフレーム部であることが望ましい。
【0021】
次に、図3を用いてX線CT装置1の架台2の位置決めについて説明する。
【0022】
図3は、レーザ装置4aから発光されたレーザ光が、マーカ12a、12bに照射されている状態の説明図である。
【0023】
レーザ装置4aから発光された扇状のレーザ光が、図3の実線で示すように架台2の一方の側面に取付けられている2つのマーカ12a、12bの視認用線14に照射されている場合には、架台2のY軸方向(上下方向)の位置精度が適正範囲内にあり、また架台2のX軸回りの傾き角度精度が適正範囲内にあることを意味する。一方、レーザ装置4aから発光された扇状のレーザ光が、図3の破線で示すようにマーカ12aの視認用線14には照射されているがマーカ12bの視認用線14には照射されていない場合には、架台2のY軸方向の位置精度又は架台2のX軸回りの傾き角度精度の少なくとも一方が適正範囲内から外れていることを意味する。
【0024】
さらに、図4を用いてX線CT装置1の架台2の位置決めについて詳細に説明する。
【0025】
図4は、マーカ12a、12bに対するレーザ光の照射状態から、架台2のY軸方向の位置精度と架台2のX軸回りの傾き角度精度“θ”とが適正範囲内であるか否かを判断する場合の説明図である。
【0026】
マーカ12aは、回転体9の中心線“O”と架台2のX線パス(X線管20からのX線出射方向)の中心との交点上であって、視認用線14の幅方向の中央部が中心線“O”上に位置するように配置されている。マーカ12bは、マーカ12aから中心線“O”の方向に沿って寸法“L”離れた位置に配置されている。なお、マーカ12aの視認用線14の幅寸法(中心線“O”と直交する方向の寸法)が“A”、マーカ12bの視認用線14の幅寸法(中心線“O”と直交する方向の寸法)が“B”とされている。また、図4では、レーザ光は、マーカ12aの視認用線14におけるY軸方向に沿った一端側と、マーカ12bの視認用線14におけるY軸方向の他端側とに照射されている。
【0027】
ここで、架台2のY軸方向の位置精度は、マーカ12aの視認用線14の幅寸法“A”により決めることができる。例えば、Y方向の位置精度が±1mm以内とする必要があれば、幅寸法“A”を2mmとする。そして、このマーカ12aの視認用線14にレーザ光が照射されていれば、架台2のY軸方向の位置精度は適正範囲内にあると言える。
【0028】
つぎに、架台2のX軸回りの傾き角度精度“θ”は、マーカ12a、12b間の寸法“L”と、マーカ12aの視認用線14の幅寸法“A”と、マーカ12bの視認用線14の幅寸法“B”とにより、以下の式で求めることができる。
θ=tan−1(A+B/2L)
したがって、必要とする傾き角度精度“θ”を満たすように、“L”、“A”、“B”を決定し、レーザ光がマーカ12aの視認用線14とマーカ12bの視認用線14とに照射されていれば、架台2のX軸回りの傾き角度が適正範囲内にあると言える。
【0029】
なお、図4ではマーカ12a、12bを例に挙げ、架台2のY軸方向の位置精度とX軸回りの傾き角度精度とが適正範囲内にあるか否かを判断する場合について説明したが、マーカ12c、12dに対するレーザ装置4bから発光されたレーザ光の照射状態、又は、マーカ12e、12fに対するレーザ装置4cから発光されたレーザ光の照射状態から、架台2のX軸方向の位置精度、架台2のY軸回りの傾き角度精度、架台2のZ軸回りの傾き角度精度についても適正範囲内にあるか否かを判断することができる。
【0030】
このような構成において、レーザ装置4aからレーザ光を発光させることにより、医師や放射線技師は、発光されたレーザ光がマーカ12a、12bに対する照射位置を視認することができる。
【0031】
そして、レーザ光が図3の実線で示すようにマーカ12a、12bの視認用線14に照射されている場合には、架台2のY軸方向の位置精度及び架台2のX軸回りの傾き角度精度が適正範囲内にあることを簡単に確認することができる。一方、レーザ装置4aから発光されたレーザ光が少なくともいずれか一方のマーカ12a、12bの視認用線14に照射されていない場合には、架台2のY軸方向の位置精度と架台2のX軸回りの傾き角度精度との少なくともいずれか一方が適正範囲内から外れていることを簡単に確認することができる。
【0032】
レーザ装置4b、4cから発光されたレーザ光についても同様である。レーザ装置4bから発光されたレーザ光がマーカ12c、12dの視認用線に照射されている場合には、架台2のX軸方向の位置精度、及び、架台2のY軸回りの傾き角度精度が適正範囲内にあることを簡単に確認することができる。一方、レーザ装置4bから発光されたレーザ光が少なくともいずれか一方のマーカ12c、12dの視認用線に照射されていない場合には、架台2のY軸方向の位置精度と架台2のX軸回りの傾き角度精度との少なくともいずれか一方が適正範囲内から外れていることを簡単に確認することができる。
【0033】
また、レーザ装置4cから発光されたレーザ光が、マーカ12a、12bの視認用線14に照射されている場合には、架台2のZ軸回りの傾き角度精度が適正範囲内にあることを簡単に確認することができる。一方、レーザ装置4cから発光されたレーザ光が少なくともいずれか一方のマーカ12e、12fの視認用線に照射されず、及び、レーザ装置4aから発光されたレーザ光が少なくともいずれか一方のマーカ12a、12bの視認用線14に照射されない場合には、架台2のZ軸回りの傾き角度精度が適正範囲内から外れていることを簡単に確認することができる。
【0034】
レーザ装置4a(又は、4b、4c)から発光されたレーザ光が、中心線“O”の方向に沿って位置する2つのマーカ12a、12b(又は、12c、12d、又は、12e、12f)の視認用線14に照射されていないことを医師や放射線技師が視認した場合には、サービスマンを呼んで架台2の位置や傾き角度を修正する。
【0035】
したがって、架台2にマーカ12a〜12fを取付け、これらのマーカ12a〜12fに向けてレーザ光を照射することにより、医師や放射線技師が架台2の位置精度や傾き角度精度が適正範囲内であるか否かを簡単に確認することができ、架台2の位置精度や傾き角度精度を適正範囲内に維持した状態で被検体に対する放射線治療計画を立てることができ、放射線治療計画の精度を向上させることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図1ないし図4に基づいて説明する。なお、第1の実施形態で説明した発明の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【0037】
この第2の実施形態と第1の実施形態との違いは、第1の実施形態はX線CT装置1の架台2の位置決めに関するものであり、第2の実施形態はX線CT装置1の寝台3の位置決めに関するものである点である。
【0038】
15a、15b、15c、15d、15e、15fは、寝台3の位置や傾き角度が適正範囲内であるか否かを確認する為のマーカである。これらのマーカ15a〜15fは、寝台3の両側面と上面とであって、中心線“O”の方向に沿った面内に、それぞれ中心線“O”の方向に沿って2個ずつ合計6個設けられている。
【0039】
これらのマーカ15a〜15fは、架台2に取付けられているマーカ12a〜12fと同様に、アルミニウム製又は樹脂製のプレートに一定の幅を持った視認用線をけがいたり印刷したりして形成され、レーザ装置4a〜4cから発光されたレーザ光のマーカ15a〜15fに対する照射位置を視認できるようになっている。
【0040】
そして、これらのマーカ15a〜15fに対するレーザ光の照射状態から、図3及び図4に示した場合と同様に、寝台3のY軸方向、X軸方向の位置精度、X軸回り、Y軸回り、Z軸回りの傾き角度精度が適正範囲内にあるか否かを判断することができる。なお、マーカ15a〜15fに対するレーザ光の照射状態から寝台3の位置精度、傾き角度精度を判断する場合には、寝台3を昇降させ、マーカ15a、15b、15e、15fを中心線“O”を含む水平面内に位置させた状態で行う。
【0041】
したがって、寝台3についても架台2と同様であり、寝台3にマーカ15a〜15fを取付け、これらのマーカ15a〜15fに向けてレーザ光を照射することにより、医師や放射線技師が寝台3の位置精度や傾き角度精度が適正範囲内であるか否かを簡単に確認することができ、寝台3の位置精度や傾き角度精度を適正範囲内に維持した状態で被検体に対する放射線治療計画を立てることができ、放射線治療計画の精度を向上させることができる。
【0042】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を図5ないし図7に基づいて説明する。なお、第1の実施形態で説明した発明の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付け、重複する説明は省略する。第3の実施形態のX線CT装置1Aの基本的構成は第1の実施形態のX線CT装置1と同じである。異なる点は、架台2の外装ケース7にはマーカ12a〜12fに代えてレーザ装置4a〜4cから発光された光の照射位置を計測可能なフォトセンサ16a、16b、16c、16d、16e、16fが取付けられている点である。すなわち、フォトセンサ16a〜16fは、架台2の両側面と上面とであって、中心線“O”の方向に沿った面内に、それぞれ中心線“O”の方向に沿って2個ずつ合計6個設けられている。
【0043】
これらのフォトセンサ16a〜16fは、フォトセンサ16a〜16fを架台2に取付けた場合にY軸方向となる向きに複数のフォトダイオードがアレイ状に配列されて構成されている。また、フォトセンサ16a〜16fで受光されたレーザ光の位置情報は、図示しない位置情報演算表示部に供給され、架台2の位置精度や傾き角度精度が演算され、その結果が表示される。なお、第3の実施形態においては、レーザ装置4a〜4cから発光されるレーザ光は、フォトセンサ16a〜16fで検知できればよく、可視光でなくてもよい。
【0044】
フォトセンサ16a、16bは、架台2の外装ケース7の一方の側面に取付けられ、回転体9の中心線“O”を含む水平面内に位置している。フォトセンサ16c、16dは、架台2の外装ケース7の上面に取付けられ、回転体9の中心線“O”を含む垂直面内に位置している。フォトセンサ16e、16fは、架台2の外装ケース7の他方の側面に取付けられ、回転体9の中心線“O”を含む水平面内に位置している。
【0045】
図6は、レーザ装置4aから発光されたレーザ光が、フォトセンサ16a、16bに照射されている状態の説明図である。
【0046】
すなわち、レーザ装置4aからのレーザ光は、架台2の位置により図6に示すように各フォトセンサ16a、16bの異なる位置に照射され、この位置情報が位置情報演算表示部に供給される。
【0047】
この位置情報の取得について、図7を用い詳細に説明する。
【0048】
この図7は、フォトセンサ16a、16bに対するレーザ光の照射状態から、架台2の位置精度“δ”と架台2の傾き角度精度“α”とが適正範囲内であるか否かを判断する場合の説明図である。
【0049】
図7においては、フォトセンサ16aは、X線パス中心からの距離が“L1”、フォトセンサ16bはX線パス中心からの距離が“L2”の位置関係となっている。この位置関係において、フォトセンサ16aに照射されたレーザ光は、中心線“O”から寸法“C”の位置に、また、フォトセンサ16bに照射されたレーザ光は、中心線“O”から寸法“D”の位置に照射されている。
【0050】
この条件において、架台2のY軸方向の位置精度“δ”は、以下の式で演算される。
δ=D−(C+D)・L2/(L1+L2)
また、架台2のX軸回りの傾き角度精度“α”は、以下の式で演算される。
α=tan−1(C+D)/(L1+L2)
演算された位置精度“δ”と傾き角度精度“α”とは、位置情報演算表示部の表示部に表示される。
【0051】
なお、図7ではフォトセンサ16a、16bを例に挙げ、架台2のY軸方向の位置精度とX軸回りの傾き角度精度とを演算する場合を例に挙げて説明したが、レーザ装置4bから発光されたレーザ光のフォトセンサ16c、16dに対する照射状態、又は、レーザ装置4cから発光されたレーザ光のフォトセンサ16e、16fに対する照射状態から、架台2のX軸方向の位置精度、架台2のY軸回りの傾き角度精度、架台2のZ軸回りの傾き角度精度が得られる。
【0052】
したがって、医師や放射線技師は、位置情報演算表示部の表示部の表示を見ることにより架台2の位置精度と傾き角度精度とを常に監視することができ、位置精度や傾き角度精度が適正範囲内から外れた場合には、サービスマンを呼んで架台2の位置や傾き角度を修正することができる。
【0053】
このように、架台2にフォトセンサ16a〜16fを取付け、これらのフォトセンサ16a〜16fにレーザ光を照射することにより、架台2の位置精度や傾き角度精度を適正範囲内に維持した状態で被検体に対する放射線治療計画を立てることができ、放射線治療計画の精度を向上させることができる。
【0054】
また、このようにして得られた位置情報を放射線治療計画装置に入力することにより、架台2や寝台3の位置精度や傾き角度精度を考慮した放射線治療計画を立てることができ、より一層精度の高い放射線治療計画を立てることができる。
【0055】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態を図5ないし図7に基づいて説明する。なお、第3の実施形態で説明した発明の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【0056】
この第4の実施形態と第3の実施形態との違いは、第3の実施形態はX線CT装置1の架台2の位置決めに関するものであり、第4の実施形態はX線CT装置1の寝台3の位置決めに関するものである点である。すなわち、寝台3には、フォトセンサ17a、17b、17c、17d、17e、17fが取り付けられている。これらのフォトセンサ17a〜17fは、架台2の両側面と上面とであって、中心線“O”の方向に沿った面内に、それぞれ中心線“O”の方向に沿って2個ずつ合計6個設けられている。また、このフォトセンサ17a〜17fの構成及び位置情報の取得については第3の実施形態で説明したフォトセンサ16a〜16fと同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0057】
これらのフォトセンサ17a〜17fに向けてレーザ光が照射されることにより、寝台3の位置情報が位置情報演算表示部に供給され、表示される。
【0058】
また、このようにして得られた位置情報を放射線治療計画装置に入力することにより、寝台3の位置精度や傾き角度精度を考慮した放射線治療計画を立てることができ、より一層精度の高い放射線治療計画を立てることができる。
【0059】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、架台2や寝台3の両側面と上面とにマーカ12a〜12f、15a〜15f又はフォトセンサ16a〜16f、17a〜17fを中心線“O”又は寝台3の長手方向と平行な方向に沿って2個ずつ取付け、これらのマーカ12a〜12f、15a〜15fやフォトセンサ16a〜16f、17a〜17fにレーザ装置4a〜4cから発光されたレーザ光を照射することにより、架台2や寝台3の位置精度と傾き角度精度とが適正範囲内であるか否かを簡単に確認することができる。これにより、架台2や寝台3の位置精度や傾き角度精度を適正範囲内に維持した状態で被検体に対する放射線照射を行うことができる。
【0060】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変更は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 X線CT装置
1A X線CT装置
2 架台
3 寝台
4a、4b、4c レーザ装置(発光部)
9 回転体
10 X線管
11 X線検出器
12a、12b、12c、12d、12e、12f マーカ
15a、15b、15c、15d、15e、15f マーカ
16a、16b、16c、16d、16e、16f フォトセンサ
17a、17b、17c、17d、17e、17f フォトセンサ
R 治療室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を扇状に発光してこの可視光を放射線照射装置の両側面と上面との三方向から照射することにより前記放射線照射装置の設置位置を位置決めする3つの発光部とが設けられた治療室内に設置されるX線CT装置において、
前記X線CT装置は、X線管とX線検出器とを保持する中心線回りに回転可能な回転体を備えてこの回転体の前記中心線を前記放射線照射装置のアイソセンタに向けて配置される架台を有し、
前記架台の両側面と上面とに、前記発光部から発光された可視光の照射位置を視認可能なマーカが前記中心線の方向に沿って2つずつ設けられていることを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
可視光を扇状に発光してこの可視光を放射線照射装置の両側面と上面との三方向から照射することにより前記放射線照射装置の設置位置を位置決めする3つの発光部とが設けられた治療室内に設置されるX線CT装置において、
前記X線CT装置は、被検体が載置されて長手方向を前記放射線照射装置のアイソセンタに向けて配置される寝台を有し、
前記寝台の両側面と上面とに、前記発光部から発光された可視光の照射位置を視認可能なマーカが前記寝台の長手方向に沿って2つずつ設けられていることを特徴とするX線CT装置。
【請求項3】
光を扇状に発光してこの光を放射線照射装置の両側面と上面との三方向から照射することにより前記放射線照射装置の設置位置を位置決めする3つの発光部とが設けられた治療室内に設置されるX線CT装置において、
前記X線CT装置は、X線管とX線検出器とを保持する中心線回りに回転可能な回転体を備えてこの回転体の前記中心線を前記放射線照射装置のアイソセンタに向けて配置される架台を有し、
前記架台の両側面と上面とに、前記発光部から発光された光の照射位置を計測可能なフォトセンサが前記中心線の方向に沿って2つずつ設けられていることを特徴とするX線CT装置。
【請求項4】
光を扇状に発光してこの光を放射線照射装置の両側面と上面との三方向から照射することにより前記放射線照射装置の設置位置を位置決めする3つの発光部とが設けられた治療室内に設置されるX線CT装置において、
前記X線CT装置は、被検体が載置されて長手方向を前記放射線照射装置のアイソセンタに向けて配置される寝台を有し、
前記寝台の両側面と上面とに、前記発光部から発光された光の照射位置を計測可能なフォトセンサが前記寝台の長手方向に沿って2つずつ設けられていることを特徴とするX線CT装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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