説明

XML文書処理装置、XML文書処理方法、XML文書処理プログラム、印刷装置

【課題】XML文書に基づいてバンド単位で画像を生成する場合に、バンド単位の印刷イメージの生成に要する時間を抑制する。
【解決手段】XML文書を解析し、描画オブジェクトの情報を含む解析情報を出力する手段と、解析情報に基づき、各描画オブジェクトについて描画位置を決定し、該描画位置を含む描画情報をメモリに記憶する手段と、バンドごとに前記描画情報に基づいて画像を生成するレンダリング手段とを備えたXML文書処理装置であって、各描画オブジェクトについて、描画されるバンドを特定し、前記特定したバンドに対応づけて描画オブジェクトの情報をテーブルに登録する手段を備え、レンダリング手段は、y軸+方向順にバンドを選択し、前記テーブルを参照して前記選択したバンドに描画される描画オブジェクトを特定し、前記メモリから前記特定した描画オブジェクトの描画情報を読み出して、前記選択したバンドの画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、XML文書を解析して画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
XML文書(例えば、SVG(Scalable Vector Graphics)文書やXHTML(Extensible HyperText Markup Language)文書など)に基づいて画像を出力するXML文書処理装置は、通常、XML文書を解析し、各ページの画像を構成する描画オブジェクト(描画要素:図形、イメージ、テキストなど)を抽出する解析手段、抽出された各描画オブジェクトをレイアウトして画像内における描画位置を決定するレイアウト手段、決定された描画位置に基づいて描画オブジェクトを描画して各ページの画像を生成するレンダリング手段、生成された画像を出力する(表示する、印刷する等)出力手段を備えている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−91726号公報
【特許文献2】特開2006−103280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のXML文書処理装置では、解析手段は、描画オブジェクトをXML文書内の記載順序に従って抽出し、レイアウト手段は、かかる抽出した順序に従って描画オブジェクトの描画位置を決定する構成を採るのが一般的である。
【0004】
しかし、XMLでは、描画オブジェクト情報の記載順に制限はないため、XML文書の描画オブジェクトの記載順序(抽出順序)は、画像における描画オブジェクトの描画順序と必ずしも一致しない。そのため、XML文書内で後に記載されている描画オブジェクトが、画像上では先に描画されるといった逆転現象が起こり得る。
【0005】
ここで、XML文書の印刷に対応したプリンタの中には、画像の印刷に必要なメモリ領域を削減すべく、1ページ分の画像を生成・記憶するのではなく、1ページ分の画像領域をy軸方向(通常、主走査方向)に分割し、かかる分割した領域(バンド)単位で画像を生成・記憶する構成を採るものがある。
【0006】
バンド単位で画像を生成・記憶するのプリンタでは、上記の逆転現象によって、先に画像を生成するバンド(y軸座標の値が小さいバンド)に、後に記載(抽出)された描画オブジェクトが描画される可能性があることから、レイアウト処理の実行後に、各バンドに帰属する(描画される)描画オブジェクトを特定した上で、画像を生成する必要がある。
【0007】
かかる理由から、従来のプリンタでは、バンドごとに、全ての描画オブジェクトに対して該バンドに帰属するか否かを判定する構成を採っているが、描画オブジェクトの数が多い場合、帰属判定に時間を要し、ひいてはバンド単位の印刷イメージの生成に要する時間が増大するため、バッファアンダーランエラーや印刷スループットの低下の要因となっていた。
【0008】
このような問題は、バンド単位で画像を生成・印刷するプリンタに限られず、バンド単位で画像を生成・出力するXML文書描画システムにおいて同様に生じ得る。
【0009】
そこで、本発明は、XML文書に基づいてバンド単位で画像を生成する場合に、バンド単位の印刷イメージの生成に要する時間を抑制し、バッファアンダーランエラーや出力スループットの低下を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のXML文書処理装置は、XML文書を解析し、描画オブジェクトの情報を含む文書解析情報を出力する解析手段と、前記文書解析情報に基づき、各描画オブジェクトについて描画位置を決定し、該描画位置を含む描画情報をメモリに記憶するレイアウト手段と、画像領域をy軸方向に分割したバンドごとに前記描画情報に基づいて画像を生成するレンダリング手段と、を備えたXML文書処理装置であって、前記レイアウト手段が描画位置を決定した全ての描画オブジェクトについて、その描画位置と各バンドの座標との比較結果に基づき、描画されるバンドを特定し、前記特定したバンドに対応づけて描画オブジェクトの情報をバンド帰属オブジェクトテーブルに登録する帰属バンド特定手段を備え、前記レンダリング手段は、y軸+方向順にバンドを選択し、バンド帰属オブジェクトテーブルを参照して前記選択したバンドに描画される描画オブジェクトを特定し、前記メモリから前記特定した描画オブジェクトの描画情報を読み出し、前記読み出した描画情報を用いて前記選択したバンドの画像を生成することを特徴とする。
【0011】
具体的には、前記帰属バンド特定手段は、描画オブジェクトの外接矩形のy軸最小座標o_min及びy軸最大座標o_maxを計算し、各バンドのy軸最小座標b_min及びy軸最大座標b_maxに対して、以下の
帰属条件1:o_max≧b_min
帰属条件2:o_min≦b_max
が共に成立する場合に、描画オブジェクトが該バンドに描画されると判断する。
【0012】
かかる構成によれば、画像を生成する段階では帰属判定を行う必要はないため、画像印の生成に要する時間を抑制することができ、バッファアンダーランエラーの発生リスクを低減することができる。
【0013】
好適には、前記帰属バンド特定手段は、描画オブジェクトに関してバンドAの帰属条件1が成立しない場合、バンドAよりもy軸+方向に位置するバンドについて帰属条件の判定を行わないことを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、帰属判定の一部を省略できる可能性がある。すなわち、描画オブジェクトに関して、あるバンドAの帰属条件1(o_max≧b_min)が成立しない場合、該描画オブジェクトは最早、バンドAよりもy軸+方向に位置するバンドに描画されないので、そのようなバンドに対する帰属判定を省略することができる。そのため、バンドごとに全て描画オブジェクトについて帰属判定を行う必要がある従来の方法と比べて、帰属判定に要する時間を短縮でき、印刷スループットを改善することができる。
【0015】
また好適には、前記レンダリング手段は、前記特定した描画オブジェクトのo_maxが、現在描画しているバンドの次のバンドのb_minに対して、o_max<b_minとなる場合、前記特定した描画オブジェクトの描画情報を前記メモリから削除することを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、画像の生成に不要となった描画情報をメモリからタイムリーに削除することができ、メモリ資源の使用効率を向上させることができる。
【0017】
本発明の印刷装置は、本発明のXML文書処理装置と、前記生成されたバンド単位の画像に基づいて印刷処理を実行する印刷手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明のXML文書処理方法は、XML文書を解析し、描画オブジェクトの情報を含む文書解析情報を出力する解析工程と、前記文書解析情報に基づき、各描画オブジェクトについて描画位置を決定し、該描画位置を含む描画情報をメモリに記憶するレイアウト工程と、描画位置を決定した全ての描画オブジェクトについて、その描画位置と各バンドの座標との比較結果に基づき、描画されるバンドを特定し、前記特定したバンドに対応づけて描画オブジェクトの情報をバンド帰属オブジェクトテーブルに登録する帰属バンド特定工程と、画像領域をy軸方向に分割したバンドごとに前記描画情報に基づいて画像を生成するレンダリング工程であって、y軸+方向順にバンドを選択し、バンド帰属オブジェクトテーブルを参照して前記選択したバンドに描画される描画オブジェクトを特定し、前記メモリから前記特定した描画オブジェクトの描画情報を読み出し、前記読み出した描画情報を用いて前記選択したバンドの画像を生成する工程とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明のXML文書処理方法は、印刷装置や情報処理装置において実施することができるが、そのためのプログラムは、CD−ROM、磁気ディスク、半導体メモリ及び通信ネットワークなどの各種の媒体を通じてインストールまたはロードすることができる。
【0020】
なお、本発明において、手段とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その手段が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの手段や装置が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の手段や装置の機能が1つの物理的手段や装置により実現されても良い。
【発明の効果】
【0021】
以上、本発明によれば、XML文書に基づいてバンド単位で画像を生成する場合に、バンド単位の印刷イメージの生成に要する時間を抑制し、バッファアンダーランエラーや出力スループットの低下を改善することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図面を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
【0023】
図1は、本実施形態のプリンタ1のハードウェア構成を表すブロック図である。図に示すように、プリンタ1は、通常のプリンタ装置と同様の構成を備える。
【0024】
例えば、プリンタ1は、用紙をプリンタ内に供給する給紙機構10、印字を行う印刷エンジン11、及び用紙をプリンタ機外に排出する排紙機構12等により構成される動力機構部2を備える。印刷エンジン11は、通常、紙送機構、キャリッジ機構、印刷ヘッドなどを含んで構成され、インクジェットプリンタや熱転写プリンタのように1文字単位で印刷するシリアルプリンタ、1行単位で印刷するラインプリンタ、ページ単位で印刷するページプリンタ等に対応する各種印刷エンジンを用いることができる。
【0025】
また例えば、プリンタ1は、CPU13、ROM14、RAM15、LCDパネル及びLCDコントローラ16、通信インタフェース17(USB、Ethernet(登録商標)、WLAN、Bluetooth等)等からなる情報処理部3を備える。
【0026】
図2は、情報処理部3における主要な機能構成を示すブロック図である。情報処理部3の機能構成は、原則として、従来のSVG文書対応プリンタの情報処理部の機能構成と同様である。
【0027】
例えば、情報処理部3は、印刷ジョブとしてSVG文書を受け付ける受信手段20、SVG文書を解析し、描画オブジェクトの情報などを含む文書解析情報を出力する解析手段21、文書解析情報に基づき、各描画オブジェクトについて描画位置を決定し、該描画位置を含む描画情報を出力するレイアウト手段22、画像領域をy軸方向(主走査方向)に分割した領域(バンド)ごとに前記描画情報に基づいて印刷イメージを生成するレンダリング手段23、前記生成された印刷イメージに基づいて印刷処理を実行する印刷制御手段24等を備えている。
【0028】
ただし、本プリンタ1は、各描画オブジェクトについて、その描画位置と各バンドの座標とを比較して、描画されるバンドを特定し、前記特定したバンドに対応づけて描画オブジェクトの情報をバンド帰属オブジェクトテーブル26に登録する帰属バンド特定手段25を備え、レンダリング手段23が、バンドごとに、バンド帰属オブジェクトテーブル26を参照して該バンドに描画される描画オブジェクトを特定し、前記特定した描画オブジェクトの描画情報を用いて該バンドの画像を生成する点で、従来の構成と異なっている。
【0029】
情報処理部3が備える各手段は、ROM14又はRAM15に格納されるアプリケーションプログラムをCPU13が実行することにより機能的に実現される。これらのアプリケーションプログラムは、例えばCD−ROM、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワークを介して、情報処理部3にインストールまたはロードすることができる構成となっていることが望ましい。
【0030】
以下、図3、図4に示すフローチャート等を参照して、プリンタ1におけるSVG文書に基づく印刷処理について説明する。なお、本明細書において、フローチャート等に示す各工程(符号が付与されていない部分的な工程を含む)は処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。
【0031】
受信手段20は、パソコン等のホスト装置から通信インタフェース17を介してSVG文書を受信し、これを受信バッファ(図示せず)に格納する(S100)。図5に、SVG文書の例を示す。
【0032】
解析手段21は、受信バッファよりSVG文書を読み出し、SVG文書の文書構造を解析して、該SVG文書に含まれる描画オブジェクトの属性情報(図形等のタイプ、サイズ、他の描画オブジェクトとの関係(文書ツリー情報)等)などを抽出・作成する(S101)。文書構造の解析は、従来のSVG文書に対応しているプリンタと同様に行うことができる。
【0033】
次に、解析手段21は、前記抽出・作成した描画オブジェクトの属性情報などを含む文書解析情報を作成し、出力する(RAM等に記憶する)(S102)。
【0034】
次に、レイアウト手段22は、解析手段21が出力した文書解析情報に基づき、従来と同様にして、各描画オブジェクトの描画位置を決定し、該描画位置や描画オブジェクトの属性情報を含む描画情報(レイアウト情報)を作成して出力する(RAM等に記憶する)(S103)。
【0035】
各描画オブジェクトの描画位置の決定、描画情報の作成は、従来のSVG文書に対応しているプリンタと同様に行うことができる。例えば、SVG文書においてビューポート及びビューボックス属性が指定されている場合(解析手段21が出力する文書解析情報にビューポート及びビューボックスの指定情報が含まれている場合)、レイアウト手段22は、従来同様、ビューボックスがビューポートにフィットするように、ビューボックス内の各描画オブジェクトを拡大・縮小し、ビューポート内の描画位置を決定する。
【0036】
次に、帰属バンド特定手段25は、RAM等にバンド帰属オブジェクトテーブル26用のメモリ領域を確保する(S104)。
【0037】
図6にバンド帰属オブジェクトテーブル26の例を模式的に示す。バンド帰属オブジェクトテーブル26は、画像領域を構成するバンドの数に相当するレコードを含み、各レコードは、バンド識別番号と、複数の描画オブジェクトアクセス情報とを格納できるように構成される。描画オブジェクトアクセス情報は、描画オブジェクトの描画情報を取得するための情報であり、例えば描画情報を読み出すためのメモリ上の格納アドレスなどとすることができる。
【0038】
なお、バンド幅(y軸方向の画素数)は、通常、プリンタごとに予め設定されることから、画像領域を構成するバンドの数は、例えば、プリンタ1の印刷設定情報を記憶する記憶手段(図示せず)から印刷用紙サイズを取得し、該印刷用紙サイズのy軸方向画素数をバンド幅で除算することで求めることができる。
【0039】
次に、帰属バンド特定手段25は、レイアウト手段22が描画位置を決定した全ての描画オブジェクトについて、その描画情報を順に選択する(RAM等から読み出す)(S105)。
【0040】
次に、帰属バンド特定手段25は、前記選択した描画情報に含まれる描画位置に基づき、対応する描画オブジェクトの外接矩形のy軸最小座標o_min及びy軸最大座標o_maxを計算する(S106)。
【0041】
例えば、描画オブジェクトが円タイプであった場合、o_min=円中心のy座標−半径、o_max=円中心のy座標+半径となる。また、描画オブジェクトがライン又はパスタイプであった場合、o_min=最小値{ライン又はパスの頂点のy座標}、o_max=最大値{ライン又はパスの頂点のy座標}となる。また、描画オブジェクトが矩形タイプであった場合、o_min=最小値{矩形頂点のy座標}、o_max=最大値{矩形頂点のy座標}となる。
【0042】
次に、帰属バンド特定手段25は、y軸+方向順に(すなわち、画像を描画する順に)バンドを選択し、該選択したバンドのy軸最小座標b_min及びy軸最大座標b_maxを求める(S107)。
【0043】
具体的には、y軸の値が小さい方からn番目のバンドであれば、b_min=バンド幅×(n−1)、b_max=バンド幅×n、となる。
【0044】
次に、帰属バンド特定手段25は、以下の帰属条件1及び帰属条件2について、成立するか否かを判定する(S108)。
帰属条件1: o_max≧b_min
帰属条件2: o_min≦b_max
帰属条件1が成立しない場合、前記選択した描画情報に対応する描画オブジェクトが前記選択したバンド及び前記選択したバンドよりもy軸+方向に位置するバンドに描画される可能性は無いので、帰属バンド特定手段25は、これらのバンドについて帰属条件の判定を省略し、次の描画オブジェクトを選択すべくS111に進む。
【0045】
帰属条件1が成立するが、帰属条件2が成立しない場合、前記選択した描画情報に対応する描画オブジェクトは、前記選択したバンドには描画されないが、前記選択したバンドよりもy軸+方向に位置するバンドに描画される可能性があるため、帰属バンド特定手段25は、次のバンドを選択すべくS110に進む。
【0046】
帰属条件1及び帰属条件2が共に成立する場合、前記選択した描画情報に対応する描画オブジェクトは前記選択したバンドに描画される(帰属する)ため、帰属バンド特定手段25は、バンド帰属オブジェクトテーブル26の前記選択したバンドに対応するレコードに、前記対応する描画オブジェクトのアクセス情報を登録する(S109)。
【0047】
次に、帰属バンド特定手段25は、未選択のバンドがあるか否かを判断し(S110)、ある場合は、S107に再帰する。
【0048】
一方、ない場合、帰属バンド特定手段25は、未選択の描画情報があるか否かを判断し(S111)、ある場合は、S105に再帰する。
【0049】
未選択の描画情報がない場合、全ての描画オブジェクトについてバンド帰属オブジェクトテーブル26への登録が終了したことになるため、レンダリング手段23は、バンド単位の印刷イメージの生成処理を行う(S112〜S117)。
【0050】
まず、レンダリング手段23は、y軸+方向順に(すなわち、画像を描画する順に)バンドを選択する(S112)
次に、レンダリング手段23は、バンド帰属オブジェクトテーブル26を参照して、前記選択したバンドに描画される描画オブジェクトを順に特定し、前記特定した描画オブジェクトの描画情報を用いて該バンドの印刷イメージを生成する(S113)。
【0051】
具体的には、レンダリング手段23は、バンド帰属オブジェクトテーブル26を参照して、前記選択したバンドに対応するレコードから、該レコードに登録されている描画オブジェクトアクセス情報を順に読み出す。
【0052】
次に、レンダリング手段23は、前記読み出した描画オブジェクトアクセス情報に基づいて、対応する描画情報を取得し、かかる描画情報に基づき前記選択したバンドに描画オブジェクトを描画して印刷イメージを生成し、バンドバッファ(図示せず)に格納する。
【0053】
バンド単位の印刷イメージの生成は、従来と同様にして行うことができる。例えば、前記取得した描画情報に含まれる描画位置を前記選択したバンドの基準点を原点とする座標値に変換する。次に、変換後の座標値に基づき、前記選択したバンド内に描画オブジェクトを描画する。バンド内にのみ描画するためには、描画点がバンド外となる場合(例えば、y軸座標値が、負、又は、バンド幅を超える場合)、その描画点について描画しなければよい。
【0054】
次に、レンダリング手段23は、前記特定した描画オブジェクト(描画オブジェクトアクセス情報に基づいて描画情報を取得した描画オブジェクト)のy軸最大座標o_maxが、現在描画しているバンド(前記選択したバンド)の次のバンドのy軸最小座標b_minに対して、o_max<b_minとなるか否かを判断する(S114)。
【0055】
o_max≧b_minとなる場合、レンダリング手段23は、S116に進む。
【0056】
一方、o_max<b_minとなる場合、前記特定した描画オブジェクトは最早、次のバンド以降に描画されることは無いので、レンダリング手段23は、前記特定した描画オブジェクトの描画情報をRAM等から削除する(S115)。
【0057】
次に、レンダリング手段23は、前記選択したバンドに対応するレコードに未選択の描画オブジェクトアクセス情報があるか否かを判断し(S116)、ある場合は、S113に再帰する。
【0058】
一方、未選択の描画オブジェクトアクセス情報がない場合、レンダリング手段23は、未選択のバンドがあるか否かを判断し(S117)、ある場合は、S112に再帰する。
【0059】
未選択のバンドがない場合、バンド単位の印刷イメージの生成処理は終了する。
【0060】
かかる印刷イメージの生成処理と並行して、印刷制御手段24は、従来と同様に印刷処理を実行する。
【0061】
通常、バンドバッファは、画像領域を構成するバンド数よりも少ない数のバンド分しか用意されない。そのため、印刷制御手段24は、バンド単位の印刷イメージの生成処理が進行して所定数のバンドについて印刷イメージが生成できた段階で、印刷イメージの印刷エンジン11への転送を開始し、印刷エンジン11を制御しながら紙等の記録媒体への印刷を実行する。そして、印刷が終了したバンドのバンドバッファについて、他のバンドの印刷イメージを格納できるように解放する。
【0062】
図7(a)(b)に、図5に示すSVG文書の印刷結果、及びかかる印刷結果にバンド境界(バンド幅=400画素)を重畳したものを示す。同図において、左上コーナーが原点であり、右方向がx軸+方向、下方向がy軸+方向である。図5に示すSVG文書には、200〜205の描画オブジェクトが含まれており、これらの描画オブジェクトのアクセス情報がそれぞれ00FF0000、00FF0100、00FF0200、00FF0300、00FF0400、00FF0500であるとした場合、S104〜S111の工程によって作成されるバンド帰属オブジェクトテーブル26は、図6に示すようなものとなる。
【0063】
このように本実施形態では、各バンドの印刷イメージを生成する前に、描画位置を決定した全ての描画オブジェクトについて帰属バンドを判定してバンド帰属オブジェクトテーブル26を作成し、各バンドの印刷イメージを生成する際には、バンド帰属オブジェクトテーブル26を参照して該バンドの印刷イメージの生成に必要な描画オブジェクトを特定している。
【0064】
従来のように、各バンドの印刷イメージを生成する段階で、各バンドに対して帰属する描画オブジェクトを判定する場合、バンドごとに全て描画オブジェクトについて帰属判定を行わなければならない。
【0065】
これに対し、本実施形態の構成では、各バンドの印刷イメージを生成する前に、描画位置を決定した全ての描画オブジェクトに対して帰属するバンドを判定しているため、印刷イメージを生成する段階では帰属判定を行う必要はない。その結果、印刷イメージの生成に要する時間を抑制できるので、バンドバッファのアンダーランエラーの発生リスクを低減することができる。
【0066】
更に、本実施形態の構成によれば、帰属判定の一部を省略できる可能性がある。すなわち、描画オブジェクトに関して、あるバンドAの帰属条件1(o_max≧b_min)が成立しない場合、該描画オブジェクトは最早、バンドAよりもy軸+方向に位置するバンドに描画されないので、そのようなバンドに対する帰属判定を省略することができる。そのため、バンドごとに全て描画オブジェクトについて帰属判定を行う必要がある従来の方法と比べて、帰属判定に要する時間を短縮でき、印刷スループットを改善することができる。
【0067】
更に、本実施形態では、描画オブジェクトのy軸最大座標o_maxが、現在描画しているバンドの次のバンドのy軸最小座標b_minに対して、o_max<b_minとなる場合、かかる描画オブジェクトの描画情報をRAM等から削除する構成を採用しているため、印刷イメージの生成に不要となった描画情報をメモリからタイムリーに削除することができ、メモリ資源の使用効率を向上させることができる。
【0068】
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々に変形して適用することが可能である。例えば、上記実施形態ではXML文書の例としてSVG文書を処理する装置(プリンタ1)について説明したが、本発明を他のXML文書(例えば、XHTML文書)を処理する装置に適用しても良い。また、本発明は、プリンタ等の印刷装置に限られず、XML文書に基づき画像を生成・出力する機能を備えた種々の情報処理装置(コピー機、ファックス、ハンディターミナル、ブラウザなど)に対しても適用することができる。また、画像を出力する態様も、用紙等への印刷のほか、ディスプレイ等への表示など、種々の態様を考えることができる。
【0069】
また例えば、受信手段20、解析手段21、レイアウト手段22、レンダリング手段23、印刷制御手段24、帰属バンド特定手段25等は、必ずしも同一の装置内において実現される必要はなく、物理的に別々の装置において実現される構成であってもよい。例えば、解析手段21、レイアウト手段22、レンダリング手段23、帰属バンド特定手段25を含む構成を、XML文書処理装置又はユニットとして実現してもよい。また例えば、レンダリング手段23等が、帰属バンド特定手段25を兼ね備える(含む)ように構成してもよい。
【0070】
また例えば、上記実施形態では、受信手段20がホスト装置等からSVG文書を受信する構成としているが、プリンタ1に直接又は間接にメモリカード等を接続し、該メモリカード等に記憶されるSVG文書を読み出して処理する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】プリンタ1のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】情報処理部3の機能構成を示すブロック図である。
【図3】プリンタ1におけるSVG文書に基づく印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】プリンタ1におけるSVG文書に基づく印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】SVG文書の例を示す図である。
【図6】バンド帰属オブジェクトテーブル26の例を模式的に示す図である。
【図7】図5に示すSVG文書の印刷結果、及び、かかる印刷結果にバンド境界を重畳した図である。
【符号の説明】
【0072】
1 プリンタ、2 動力機構部、3 情報処理部、10 給紙機構、11 印刷エンジン、12 排紙機構、13 CPU、14 ROM、15 RAM、16 LCDパネル及びLCDコントローラ、17 通信インタフェース、20 受信手段、21 解析手段、22 レイアウト手段、23 レンダリング手段、24 印刷制御手段、25 帰属バンド特定手段、26 バンド帰属オブジェクトテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
XML文書を解析し、描画オブジェクトの情報を含む文書解析情報を出力する解析手段と、
前記文書解析情報に基づき、各描画オブジェクトについて描画位置を決定し、該描画位置を含む描画情報をメモリに記憶するレイアウト手段と、
画像領域をy軸方向に分割したバンドごとに前記描画情報に基づいて画像を生成するレンダリング手段と、を備えたXML文書処理装置であって、
前記レイアウト手段が描画位置を決定した全ての描画オブジェクトについて、その描画位置と各バンドの座標との比較結果に基づき、描画されるバンドを特定し、前記特定したバンドに対応づけて描画オブジェクトの情報をバンド帰属オブジェクトテーブルに登録する帰属バンド特定手段を備え、
前記レンダリング手段は、y軸+方向順にバンドを選択し、バンド帰属オブジェクトテーブルを参照して前記選択したバンドに描画される描画オブジェクトを特定し、前記メモリから前記特定した描画オブジェクトの描画情報を読み出し、前記読み出した描画情報を用いて前記選択したバンドの画像を生成することを特徴とするXML文書処理装置。
【請求項2】
前記帰属バンド特定手段は、描画オブジェクトの外接矩形のy軸最小座標o_min及びy軸最大座標o_maxを計算し、各バンドのy軸最小座標b_min及びy軸最大座標b_maxに対して、以下の
帰属条件1:o_max≧b_min
帰属条件2:o_min≦b_max
が共に成立する場合に、描画オブジェクトが該バンドに描画されると判断することを特徴とする請求項1記載のXML文書処理装置。
【請求項3】
前記帰属バンド特定手段は、描画オブジェクトに関してバンドAの帰属条件1が成立しない場合、バンドAよりもy軸+方向に位置するバンドについて帰属条件の判定を行わないことを特徴とする請求項2記載のXML文書処理装置。
【請求項4】
前記レンダリング手段は、前記特定した描画オブジェクトのo_maxが、現在描画しているバンドの次のバンドのb_minに対して、o_max<b_minとなる場合、前記特定した描画オブジェクトの描画情報を前記メモリから削除することを特徴とする請求項2又は3記載のXML文書処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のXML文書処理装置と、
前記生成されたバンド単位の画像に基づいて印刷処理を実行する印刷手段とを備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
XML文書を解析し、描画オブジェクトの情報を含む文書解析情報を出力する解析工程と、
前記文書解析情報に基づき、各描画オブジェクトについて描画位置を決定し、該描画位置を含む描画情報をメモリに記憶するレイアウト工程と、
描画位置を決定した全ての描画オブジェクトについて、その描画位置と各バンドの座標との比較結果に基づき、描画されるバンドを特定し、前記特定したバンドに対応づけて描画オブジェクトの情報をバンド帰属オブジェクトテーブルに登録する帰属バンド特定工程と、
画像領域をy軸方向に分割したバンドごとに前記描画情報に基づいて画像を生成するレンダリング工程であって、y軸+方向順にバンドを選択し、バンド帰属オブジェクトテーブルを参照して前記選択したバンドに描画される描画オブジェクトを特定し、前記メモリから前記特定した描画オブジェクトの描画情報を読み出し、前記読み出した描画情報を用いて前記選択したバンドの画像を生成する工程とを備えることを特徴とするXML文書処理方法。
【請求項7】
請求項6記載のXML文書処理方法をコンピュータで実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−53755(P2009−53755A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217312(P2007−217312)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】