説明

cPLA2に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、その組成物及び使用

特に食細胞において、cPLA発現及びスーパーオキシド生成を阻害できる、cPLAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、炎症状態、特に関節炎、及び神経変性疾患の治療にとって強力な薬剤である。アンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物は、このような疾患の治療方法に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、病状の治療におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用についての分野に関する。より詳しくは、本発明はホスホリパーゼA(PLA)の阻害及びこの分子の活性化を伴う状態の治療のための新規アンチセンスオリゴヌクレオチドを記載する。
【発明の背景】
【0002】
本明細書に引用される全ての参照文献をはじめ、本願を通じて記載される全ての刊行物は、参照により本明細書に完全に組込まれる。
【0003】
炎症は損傷、感染又は免疫系によって異物と認識される分子に対する身体の応答である。炎症がないこと、過度の炎症又は制御されていない炎症は、喘息、関節炎及び自己免疫疾患、成人性呼吸窮迫症候群(ARDS)、心血管炎症及び胃腸炎症等のありとあらゆる疾患をもたらす。多数の研究により、このような炎症性疾患には初回刺激を受けた好中球、単球及びマクロファージが関与していることが実証されている。より最近では、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経変性疾患の病因並びに脳虚血性損傷及び外傷性損傷における、ミクログリア細胞によるスーパーオキシド放出の役割も実証された。
【0004】
食細胞NADPHオキシダーゼによるスーパーオキシドの生成及びホスホリパーゼAによる炎症誘発性脂質性メディエーターの生成は、宿主防御の最も重要な機能である。しかしながら、変化した生理的状態の際には、スーパーオキシドと脂質性メディエーターは、炎症反応を促進し、組織損傷をもたらすプロセス及び種々の炎症性疾患の病態生理に関与する。今日では、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、炎症状態の治療のために最も広く処方される薬物の1種である。しかしながら、それらは望ましくない副作用を示し、最も一般的なものは消化管における潰瘍形成及び出血である。さらに、これらの薬物はプロスタグランジンの産生を低減させるだけであって、炎症部位への好中球の補充において極めて重要な役割を果たすロイコトリエンの産生には影響を及ぼさない。したがって、副作用がより少ない新規抗炎症薬の探索は続いている。コルチコステロイド、抗エンドトキシン抗体、TNFアンタゴニスト、IL−1受容体アンタゴニスト及びその他の薬剤のような炎症カスケードを遮断する薬剤を用いて多数の試験が実施されてきたが、意義深い成功はない。
【0005】
本発明者は細胞株、細胞質ホスホリパーゼA(cPLA)の発現を欠くPLB−985細胞の安定なクローンである細胞系統を樹立し、cPLAが、炎症誘発性脂質性メディエーターの生成におけるその知られている役割に加え、食細胞NADPHオキシダーゼ複合体の構築後の活性化に必須であることを実証した。これら2種の酵素の間の関連が、cPLAによって放出されたアラキドン酸(AA)による、構築されたNADPHオキシダーゼの活性化の分子基盤を提供する[Dana,R.ら(1998)J.Biol.Chem.273:441〜5頁、Lowenthal,A.及びLevy,R.(1999)J.Biol.Chem.274:21603〜10頁、Levy,R.ら(2000)Blood.95:660〜5頁、Pessach,I.ら(2001)J.Biol.Chem.276:33495〜503頁、Shmelzer,Z.ら(2003)J.Cell Biol.162:683〜692頁、Tarsi−Tsuk,D.及びLevy,R.(1990)J.Immunol.;144:2665〜2670頁、Dana,R.ら(1994)Biochem J.297:217〜223頁、Hazan−Halevy,I.ら(2000)J.Biol.Chem.275:12416〜12423頁]。cPLAはオキシダーゼ活性化に必要であるので、その阻害は炎症性メディエーターの形成を減少させるはずであるだけではなく、炎症性疾患の病因に関与している酸素ラジカルの制御されていない加速された放出も調節するはずである。さらに、発明者の研究により、in vivoにおける炎症の際又はin vitroにおける炎症状態の際、好中球及び単球において、cPLAとNADPHオキシダーゼ酵素双方のレベル及び活性が上昇することがわかった[Levy,R.ら(1994)Biochim.Biophys.Acta 1220:261〜265頁、Shaked,G.ら(1994)J.Trauma 37:22〜29頁、Levy,R.ら(2000)Blood 95:660〜665頁、Levy,R.及びMalech,H.(1991)J.Immunol.147:3066〜3071頁、Levy,R.ら(1994)Biochim.Biophys.Acta 1220:253〜260頁、Reizenberg,K.ら(1997)Eur.J.Clin.Invest.27:398〜404頁]。驚くべきことに、最近の報告が、好中球へのcPLA阻害薬ピロリジンの添加は、NADPHオキシダーゼ活性を阻害しないと記載したが[Rubin,B.B.ら(2005)J.Biol.Chem.280:7519〜29頁]、この効果は、好中球における薬物の十分な蓄積を許さない、応用された方法論によるものであった可能性がある(データは示していない)。cPLAを阻害することによって炎症状態を治療する方法は記載されているが、それらは、気道炎症の用量依存性減弱を引き起こすトリフルオロメチルケトン(TFMK)のような物質の使用[米国特許出願第20020165119号、USSN062730]、又は種々の形のPLAを阻害したインドール化合物の使用[US6,797,708]と関連しており、今日まで、炎症の治療のためのcPLAに特有の阻害薬は記載されていない。現在、強力な細胞質PLA阻害薬は、ヒト又は動物における臨床用途には使用できない。今までのところ、cPLAに対する全ての阻害薬は基質と競合するよう設計された。全ての種類のPLAが脂肪酸をリン脂質のsn−2位から切断するので、それらはまた同一の阻害薬によって阻害される(低効率である場合もあるが)。数種の化合物がcPLAの特異的な阻害薬として記載されたが、それらはその他のPLA酵素も同様に阻害することがわかり、その逆もまた同様であった。各PLAサブタイプの特異的阻害薬がないので、アンチセンス技術が、PLAの特定のタイプを阻害する有効なアプローチを提供する。実際、本明細書に示される結果から、cPLAを直接標的とする薬物は、cPLA活性を特異的に阻害することが示唆される。さらに、炎症誘発性メディエーターとスーパーオキシドを産生するcPLAとNADPHオキシダーゼ双方の調節ももたらす。
【0006】
cPLAmRNA配列を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、cPLA転写物発現を阻害できることが過去に報告されている[US6,008,344]。しかし、これらのオリゴヌクレオチドはcPLAタンパク質の発現を阻害することは実証しておらず、それらはリポフェクチンの存在下で細胞に導入された。
【0007】
さらに、cPLAを標的とする3種類のその他のアンチセンスオリゴヌクレオチドが記載されており:PI(表1、配列番号8)[Roshak,A.(1994)J.Biol.Chem.269(42):25999〜26005頁、Muthalif,M.M.ら(1996)J.Biol.Chem.271(47):30149〜30157頁、Marshall,L.(1997)J.Biol.Chem.272(2):759〜765頁、 Anderson,K.M.ら(1997)J.Biol.Chem.272(48):30504〜30511頁]、P2(表1、配列番号9)[Li,Q.及びCathcart,M.K.(1997)J.Biol.Chem.272(4):2404〜2411頁、Zhao,X.ら(2002)J.Biol.Chem.277(28):25385〜25392頁]及びP3(5’−GTGCTGGTAAGGATCTAT−3’、配列番号12)[Locati,M.(1996)J.Biol.Chem.271(11):6010〜6016頁]、平滑筋細胞におけるcPLA及びヒト単球機能を阻害する効果を主に評価している。P1はリポフェクチンとともに用いられた。P1及びP2は全ての塩基にホスホロチオエート修飾があり、本発明者が細胞に対して毒性であると見出した5μMで用いた場合にのみ有意な効果を有していた。P3は10μMで用いられた(又はさらに高い濃度、本発明者によって用いられたものよりも10倍高い)。
【0008】
したがって、炎症誘発性プロセスを阻害するために、cPLAmRNAに対する新規アンチセンスオリゴヌクレオチドを提供すること、及びcPLA発現及びスーパーオキシド生成の阻害におけるその使用が本発明の目的である。したがって、本発明において特許請求されるアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、抗炎症薬としても求められる。
【0009】
本発明のその他の使用及び目的は、説明が進むにつれて明らかとなろう。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様では、本発明は細胞質ホスホリパーゼA(cPLA)mRNA配列のオープンリーディングフレーム(ORF)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド及びその機能的類似体、その誘導体又はその断片であって、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの相補性が前記ORFのヌクレオチド145〜400の間の領域の範囲内であり、cPLAタンパク質の発現を阻害できるアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0011】
一実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは15〜30までのヌクレオチド長、好ましくは、17〜21ヌクレオチド長である。
【0012】
cPLAmRNA配列のオープンリーディングフレームの5’領域に対する前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6のいずれか1つによって表される配列を有し、これらの配列は表1に詳述されている。
【0013】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、改良されたエンドヌクレアーゼ耐性を有するよう化学修飾できる。
【0014】
したがって、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドのもう1つの実施形態では、前記オリゴヌクレオチドの最初の3ヌクレオチド及び/又は最後の3ヌクレオチドにホスホロチオエート修飾が存在し得る。さらに、例えば、配列番号4及び5によって表されるオリゴヌクレオチドのように、別のホスホロチオエート修飾が、前記オリゴヌクレオチドの10番目のヌクレオチドに見られる場合もある。
【0015】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドのさらなる実施形態では、前記オリゴヌクレオチドの最初の3ヌクレオチド及び/又は最後の3ヌクレオチドに2−O−メチル化のようなさらなる修飾が見られる場合もある。
【0016】
本研究において示される特性の結果として、アンチセンスオリゴヌクレオチドはcPLA発現と関連している炎症過程の阻害剤として使用できる。
【0017】
したがって、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、関節リウマチ、成人性呼吸窮迫症候群(ARDS)、喘息、鼻炎、特発性肺繊維症、腹膜炎、心血管炎症、心筋虚血、再潅流損傷、アテローム性動脈硬化症、敗血症、外傷、II型糖尿病、網膜症、乾癬、胃腸炎症、硬変及び炎症性腸疾患並びにアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経変性疾患並びに脳虚血性損傷及び外傷性損傷のうちのいずれか1種の治療及び/又は予防において、すなわち、その病因に酸化ストレスが重要な役割を果たす全ての疾患並びに反応性ミクログリアによるエイコサノイド及びスーパーオキシドの加速された放出がある全ての疾患において用いるためのものである。
【0018】
したがって、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはスーパーオキシド生成及び放出を阻害するために使用できる。詳しくは、前記阻害は好中球、単球及びマクロファージにおいて、好ましくは、好中球において達成される。
【0019】
場合によっては、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、蛍光標識手段、放射性標識手段、金属粒子標識手段及び任意の適した標識手段のうち1種で標識してもよい。
【0020】
第2の態様では、本発明は、有効薬剤として、本発明に定義される少なくとも1種のアンチセンスオリゴヌクレオチド、又はその機能的類似体、誘導体若しくは断片を含む医薬組成物に関する。
【0021】
したがって、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、通常、医薬組成物の形で提供される。前記組成物は、注射、局所投与又は経口摂取によって使用するためのものである。
【0022】
あるいは、本発明の医薬組成物は、有効薬剤として、本発明に定義される少なくとも2種のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はその機能的類似体、その誘導体若しくはその断片を組合せたものを含み得る。前記組合せは、以下のオリゴヌクレオチドを含むことが好ましい:配列番号1と配列番号3、又は配列番号1と配列番号2、又は配列番号1と配列番号6、又は配列番号1と配列番号2及び配列番号3、又は配列番号4と配列番号6、又は配列番号2と配列番号6、又は配列番号2と配列番号3、又は配列番号3と配列番号6。
【0023】
本発明の薬剤組成は医学的使用を目的とする。
【0024】
一実施形態では、本発明の医薬組成物はcPLA発現及び/又は食細胞NADPHオキシダーゼによるフリーラジカル放出と関連している炎症過程の治療を目的とする。
【0025】
もう1つの実施形態では、本発明の医薬組成物は、関節リウマチ、ARDS、喘息、鼻炎、特発性肺繊維症、腹膜炎、心血管炎症、心筋虚血、再潅流損傷、アテローム性動脈硬化症、敗血症、外傷、II型糖尿病、網膜症、乾癬、胃腸炎症、硬変及び炎症性腸疾患、神経変性疾患AD、PD、ALS並びに脳虚血性損傷及び外傷性損傷等のCNS関連疾患のうちのいずれか1種であり得る炎症状態の治療、すなわち、その病因に酸化ストレスが重要な役割を果たす全ての疾患並びに反応性ミクログリアによるエイコサノイド及びスーパーオキシドの加速された放出がある全ての疾患における治療を目的とする。
【0026】
さらなる実施形態では、本発明の医薬組成物はAβプラーク蓄積と関連している状態の治療を目的とする。前記状態は通常、CNS関連疾患、特に、神経変性疾患アルツハイマー病、パーキンソン病及びALS、又は脳虚血性損傷及び外傷性頭部損傷である。
【0027】
本発明の医薬組成物には、バッファー、添加剤、安定剤、希釈剤及び/又は賦形剤を場合によってさらに含めてもよい。
【0028】
もう1つの態様では、本発明は、関節リウマチ、ARDS、喘息、鼻炎、特発性肺繊維症、腹膜炎、心血管炎症、心筋虚血、再潅流損傷、アテローム性動脈硬化症、敗血症、外傷、II型糖尿病、網膜症、乾癬、胃腸炎症、硬変及び炎症性腸疾患、AD、PD、ALS等の神経変性疾患、並びに脳虚血及び外傷性損傷のうちのいずれか1種である炎症状態の治療及び/又は予防、すなわち、その病因に酸化ストレスが重要な役割を果たす全ての疾患並びに反応性ミクログリアによるエイコサノイド及びスーパーオキシドの加速された放出がある全ての疾患における治療及び/又は予防、に用いる医薬組成物の調製のための、本発明に定義されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を提供する。
【0029】
さらなる態様では、本発明は、cPLA活性化を伴う状態の治療のための、本発明に定義されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を提供する。
【0030】
さらに、本発明は、Aβプラーク蓄積と関連している状態の治療及び/又は予防のための、本発明に定義されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を示す。通常、前記状態としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS、脳虚血損傷及び外傷性頭部損傷からなる群から選択されるCNS関連疾患がある。
【0031】
なおさらなる態様では、本発明は、本発明に定義されるアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物の少なくとも1種の治療上有効量を必要とする被験体に投与することを含む、cPLA活性化を伴う状態の治療方法を示す。
【0032】
したがって、さらにもう1つの態様では、本発明は、前記炎症状態が関節リウマチ、ARDS、喘息、鼻炎、特発性肺繊維症、腹膜炎、心血管炎症、心筋虚血、再潅流損傷、アテローム性動脈硬化症、敗血症、外傷、II型糖尿病、網膜症、乾癬、胃腸炎症、硬変及び炎症性腸疾患、AD、PD及びALS等の神経変性疾患並びに脳虚血及び外傷性損傷のうちのいずれか1種であり得る炎症状態の治療方法、すなわち、本発明に定義されるアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物の少なくとも1種の治療上有効量を必要とする被験体に投与することを含む、その病因に酸化ストレスが重要な役割を果たす全ての疾患及び反応性ミクログリアによるエイコサノイド及びスーパーオキシドの加速された放出がある全ての疾患における炎症状態の治療方法を提供する。
【0033】
もう1つの態様では、本発明は、本発明に定義されるアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物の少なくとも1種の治療上有効量を必要とする被験体に投与することを含む、Aβプラーク蓄積と関連している状態の治療方法を提供する。前記状態は通常、神経変性疾患、特に、アルツハイマー病及びパーキンソン病である。
【0034】
最後に、本発明は、細胞、好ましくは、食細胞、すなわち、好中球、単球、マクロファージ及び/又はミクログリアを、本発明に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物と適した時間接触させることを含む、cPLA発現及び/又は活性を阻害するin vivo法、ex vivo法又はin vitro法を提供する。これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、線維芽細胞、神経細胞及び内皮細胞においてcPLA活性を阻害したが、食細胞と比較して低効率であり、これはおそらくはアンチセンスオリゴヌクレオチドに対する前者の細胞の透過性が低いことによるものである(データは示していない)。
【発明の詳細な説明】
【0035】
本研究では、発明者らは細胞質ホスホリパーゼA(cPLA)mRNAに対する6種の異なるアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計した。以下の実施例において示されるように、各アンチセンスはそれ自体、cPLAの発現阻害において極めて強力であるが、オリゴヌクレオチドの種々を組合せたものは、ヒト、マウス及びラット由来の種々の食細胞並びにミクログリア細胞においてcPLA発現を全体的に阻害した。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドによるcPLA発現阻害とNADPHオキシダーゼによるスーパーオキシド生成阻害の間には著しい相関があり、このことはこれまでは実証されていなかった。
【0036】
したがって、本発明はcPLAmRNA配列のオープンリーディングフレーム(ORF)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(図1に示される)、及びその機能的類似体、その誘導体又はその断片であって、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの相補性が前記ORFのヌクレオチド145〜400の間の領域内であり、cPLAタンパク質の発現を阻害できるアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0037】
以下の実施例に示されるように、本発明によって提供されるアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、NADPHオキシダーゼ活性を阻害することによってスーパーオキシド生成も阻害できる。
【0038】
本明細書に記載したように、配列番号7はcPLAmRNA配列[GenBank番号M68874]に相当するcDNA配列に関する。
【0039】
前記のcPLAmRNAのヌクレオチド145〜400の間の領域は標的化するのに特に有用であるが、これはプロセスがすでに始まってしまうとタンパク質合成を中止することよりも阻害することの方がはるかに効率的であるからである(前者はUS6,008,344において、そのcPLAアンチセンス配列のほとんどに対して用いられた戦略である)。したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチドは翻訳部位の領域(ORFの開始)を標的とするよう設計した。
【0040】
それにもかかわらず、アンチセンスによる標的化は依然として極めて経験に基づいたものであり、最も効率的な標的化のための特異的配列及び最適条件を見出すには多数の実験が必要であるということを記載することは重要である。本明細書に記載したように、例えば、本発明者らは最初、ORFの開始に相当するcPLA配列のヌクレオチド145〜400の間の領域を標的とする14種のアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計したが、そのうち6種しか効率的に働かなかったので、その後それらをより詳細に研究した。
【0041】
cPLAmRNA配列のオープンリーディングフレームの5’領域に対する前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6のいずれか1つによって表される配列を有し、これらの配列は表1に詳述されている。
【0042】
記載したように、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、改良されたエンドヌクレアーゼ耐性を有するよう化学修飾できる。それだけには限らないが、ホスホロチオエート化又は2−O−メチル化等のエンドヌクレアーゼに向けた耐性を付与する化学修飾はいずれも採用できる。
【0043】
したがって、ホスホロチオエート修飾は本発明のオリゴヌクレオチドの最初の3ヌクレオチド及び/又は最後の3ヌクレオチドに存在し得る。さらに、例えば、配列番号4及び5によって表されるオリゴヌクレオチドにおけるように、別のホスホロチオエート修飾が前記オリゴヌクレオチドの10番目のヌクレオチド、内部ピリミジン、に見られる場合もある。内部ピリミジンのホスホロチオエート化は安定性を高め、エンドヌクレアーゼ切断から保護することがわかっている[Pirollo,K.F.ら(2003)Pharmacology & Therapeutics 99:55〜77頁]。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、部分ホスホロチオエート化されており、したがって、全てのヌクレオチドにホスホロチオエート修飾を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドよりも毒性が低い。
【0044】
それにもかかわらず、前記オリゴヌクレオチドの最初の3ヌクレオチド及び/又は最後の3ヌクレオチドに2−O−メチル化のようなさらなる修飾が見られる場合もある[EP260,032]。
【0045】
実施例5〜7において示されるように、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはcPLA発現及び活性と関連している炎症過程の阻害薬として使用できる。
【0046】
したがって、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、関節リウマチ、ARDS、喘息、鼻炎、特発性肺繊維症、腹膜炎、心血管炎症、心筋虚血、再潅流損傷、アテローム性動脈硬化症、敗血症、外傷、II型糖尿病、網膜症、乾癬、胃腸炎症、硬変及び炎症性腸疾患、AD、PD、及びALS等の神経変性疾患並びに脳虚血性損傷及び外傷性損傷のうちのいずれか1種の治療及び/又は予防において、すなわち、その病因に酸化ストレスが重要な役割を果たす全ての疾患並びに反応性ミクログリアによるエイコサノイド及びスーパーオキシドの加速された放出がある全ての疾患において使用するのに適している。
【0047】
ヒト単球における研究により、cPLA発現の阻害はまた、NADPHオキシダーゼ活性を阻害することが実証されたが[Li,Q.及びCathcart,M.K.(1997)同書]、別の報告ではcPLA欠陥マウス由来の常在腹膜マクロファージは正常刺激下でスーパーオキシドを放出し得るということが示されている[Gijon,M.A.ら(2000)J.Biol.Chem.275:20146]。対照的に、本発明者らはここで、マウスマクロファージにおけるcPLA発現の阻害において効率的であるアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、マクロファージにおける、並びに単球、好中球及びミクログリア細胞におけるスーパーオキシド生成の阻害においても効率的であるということを実証した。この相違は、「ノックアウト」動物モデルは、例えば、過剰発現及びアイソザイムの代償によって正常な表現型を有することが多く、そのため研究において遺伝子(すなわち、タンパク質又は酵素)の欠損の効果を正確に映し出さないという事実によって説明できる。本結果は、1μM(終濃度)という低レベルのオリゴヌクレオチドを用いて得られたことが最も重要である。本アンチセンスオリゴヌクレオチドは、低い、非毒性の濃度で効果的であり、これによって臨床目的における使用、すなわち、本明細書において論じたようなcPLAの阻害が望ましい状態を治療するための治療薬としての使用に適したものとなるということが重要である。
【0048】
さらに、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、LPSによってミクログリア細胞が活性化され、例えば、反応性酸素種(ROS)及び/又は炎症誘発性メディエーターを放出している状態の治療及び/又は予防における使用に適している。前記状態は、炎症、感染及び虚血性疾患からなる群から選択される。
【0049】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、スーパーオキシド生成及び放出を阻害するのに使用できる。通常、前記阻害は好中球、単球及びマクロファージにおいて、好ましくは、好中球において達成される。
【0050】
活性化された好中球が、炎症部位に到達する第1の細胞であり、次いで、これが高レベルのエイコサノイド及びスーパーオキシドを放出し、これらが炎症過程を加速する。このため、好中球は種々の炎症性疾患の病因の直接的なエフェクターであり、その機能を直接的に阻害することは、炎症過程を低減させるための効率的な方法である。単球(及びマクロファージ)は、炎症部位に到達する第2の細胞集団であり、したがって、その阻害も炎症を止めるために重要である。
【0051】
さらに、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、アミロイドβ(Aβ)プラーク形成によって、又はLPS若しくはサイトカイン等のその他の作用物質によって誘発されるミクログリアによって放出されるエイコサノイド及びROS生成を阻害するために使用できる。ROS形成は、種々の神経疾患の病因に寄与している神経細胞の機能不全又は死滅の原因であることがわかっている。
【0052】
「類似体及び誘導体」とは、前記核酸分子の「断片」、「変異体」、「類似体」又は「誘導体」を意味する。本発明のいずれかのオリゴヌクレオチド配列等といった分子の「断片」とは、分子のいずれかのヌクレオチドサブセットを指すことを意味する。このような分子の「変異体」とは、全分子又はその断片のいずれかと実質的に類似した天然分子を指すことを意味する。分子の「類似体」とは、それだけには限らないが、パラロガス分子又はオルソロガス分子、例えば、それぞれ、同1種に由来する相同分子又は異なる種に由来する相同分子、すなわち、種々の種における遺伝子の対応する領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、その領域については、配列中にわずかな変化を有していてもよい。
【0053】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドのさらなる誘導体としては、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを生物中で追跡及び/又は検出できるように標識されているものやリポーター分子と結合されているものがある。例えば、ビオチン、フルオレセイン、ローダミン、4−(4’−ジメチルアミノ−フェニラゾ)安息香酸(「ダブシル(Dabcyl)」)、4−(4’−ジメチルアミノ−フェニラゾ)スルホン酸(塩化スルホニル)(「ダブシル(Dabsyl)」、5−((2−アミノエチル)−アミノ)−ナフタレン−1−スルホン酸(「エダンス(EDANS)」)、プソラレン(Psoralene)誘導体、ハプテン、シアニン、アクリジン、蛍光ロドール(rhodol)誘導体、コレステロール誘導体、放射性標識、及び金属粒子(例えば、金)のような、その検出を可能にする標識又はリポーター分子はいずれも適したものであり得る。
【0054】
第2の態様では、本発明は、有効薬剤として、本発明に定義される少なくとも1種のアンチセンスオリゴヌクレオチド、又はその機能的類似体、その誘導体若しくはその断片を含む医薬組成物に関する。
【0055】
したがって、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、通常、医薬組成物の形で提供される。前記組成物は、注射、局所投与又は経口摂取によって使用するためのものである。
【0056】
あるいは、本発明の医薬組成物は、有効薬剤として、本発明に定義される少なくとも2種のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はその機能的類似体、その誘導体若しくはその断片を組合せたものを含み得る。前記組合せは以下のオリゴヌクレオチドを含むことが好ましい:配列番号1と配列番号3、又は配列番号1と配列番号2、又は配列番号1と配列番号6、又は配列番号1と配列番号2及び配列番号3、又は配列番号4と配列番号6、又は配列番号2と配列番号6、又は配列番号2と配列番号3、又は配列番号3と配列番号6。
【0057】
本明細書における以下に記載する実施例で、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、同一反応において2種又は3種一緒に併用した場合に、cPLAの阻害とスーパーオキシド生成の阻害の双方がどのようにより効率的であったのかを明らかにする。
【0058】
一実施形態では、本発明の医薬組成物はcPLA発現及び/又は食細胞NADPHオキシダーゼによるフリーラジカル放出と関連している炎症過程の治療を目的とする。
【0059】
もう1つの実施形態では、本発明の医薬組成物は、関節リウマチ、ARDS、喘息、鼻炎、特発性肺繊維症、腹膜炎、心血管炎症、心筋虚血、再潅流損傷、アテローム性動脈硬化症、敗血症、外傷、II型糖尿病、網膜症、乾癬、胃腸炎症、硬変及び炎症性腸疾患、AD、PD、及びALS等の神経変性疾患並びに脳虚血性損傷及び外傷性損傷のうちのいずれか1種であり得る炎症状態の治療、すなわち、その病因に酸化ストレスが重要な役割を果たす全ての疾患並びに反応性ミクログリアによるエイコサノイド及びスーパーオキシドの加速された放出がある全ての疾患における治療を目的とする。
【0060】
さらなる実施形態では、本発明の医薬組成物は、Aβプラーク蓄積と関連している状態の治療を目的とする。前記状態は通常、神経変性疾患、好ましくは、アルツハイマー病、パーキンソン病及びALS、又は脳虚血性損傷及び外傷性損傷である。
【0061】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、LPSに対する曝露によって、ミクログリア細胞が活性化され、ROS及び/又は炎症誘発性メディエーター(エイコサノイド)を放出している状態の治療及び/又は予防において使用されることを目的とする。前記状態は、炎症、感染及び虚血性疾患からなる群から選択される。
【0062】
注射による、本発明の医薬組成物の好ましい使用は、皮下注射、腹膜内注射、静脈内注射及び筋肉注射である。
【0063】
本発明の医薬組成物は通常、希釈液及び/又は緩衝剤、すなわち、その浸透圧を調整する作用物質、並びに、場合によっては1種又は複数の担体、安定剤、賦形剤及び/又は例えば、フレーバー、色、滑沢性を医薬組成物に付与することを目的とする当技術分野で公知の添加剤等をさらに含む。
【0064】
好ましい緩衝剤としては、10mM Tris、pH7.5〜8.0からなり、浸透圧についても調整されているTrisがある。
【0065】
in vivo使用には、アンチセンスオリゴヌクレオチドを滅菌蒸留水又は滅菌生理食塩水に懸濁する。
【0066】
担体としては、デンプン及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、例えば、微晶質セルロース、キサンタンガム等が挙げられる。滑沢剤としては、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0067】
医薬組成物の調製は当技術分野では周知であり、多数の論文及び教本に記載されている。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Gennaro A.R.編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990、特にその中の1521〜1712頁参照。
【0068】
局所投与用の医薬組成物としては、経皮パッチ、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、ドロップ剤、座剤、スプレー剤、液体剤及び散剤が挙げられる。従来の薬剤担体、水性基剤、粉末基剤又は油性基剤、増粘剤等が必要である場合も、望ましいものである場合もある。
【0069】
経口投与用組成物としては、散剤又は顆粒剤、水性媒質若しくは非水性媒質中の懸濁液又は溶液、カプセル剤、サシェ又は錠剤が挙げられる。増粘剤、矯味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤又は結合剤が望ましいものである場合もある。
【0070】
非経口投与用、くも膜下腔内投与用又は脳室内投与用組成物及び製剤としては、同様に、バッファー、希釈剤並びに、それだけには限らないが、浸透促進剤、担体化合物及びその他の製薬上許容される担体又は賦形剤等のその他の適した添加剤を含み得る滅菌水溶液が挙げられる。
【0071】
本発明の医薬組成物としては、それだけには限らないが、溶液、エマルション及びリポソーム含有製剤が挙げられる。これらの組成物は、それだけには限らないが、予め作られた液体、自己乳化型固体及び自己乳化型半固体を含む種々の成分から作製できる。
【0072】
本発明の医薬組成物は、単位投与形で提示できることが好都合であるが、これは製薬業界において周知の従来技術にしたがって調製できる。このような技術は、有効成分と薬剤担体又は賦形剤を結び付けるステップを含む。一般に、製剤は有効成分と液体担体若しくは微粉化個体担体又はその双方とを均一及び密接に結び付け、次いで、必要に応じて製剤を成形することによって調製する。このような組成物は、それだけには限らないが、錠剤、カプセル剤、液体シロップ剤、ソフトゲル剤、座剤及び浣腸等の多数のあり得る投与形のいずれかに製剤できる。本発明の組成物はまた、水性、非水性又は混合媒質中の懸濁液として製剤してもよい。水性懸濁液には、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール及び/又はデキストランをはじめとする懸濁液の粘度を高める物質をさらに含める場合もある。この懸濁液にはまた、安定剤を含めてもよい。
【0073】
本発明の一実施形態では、医薬組成物を泡沫として製剤し使用できる。薬剤泡沫としては、それだけには限らないが、エマルション、マイクロエマルション、クリーム剤、ゼリー剤及びリポソーム等の製剤が挙げられる。これらの製剤の性質は基本的には類似しているが、最終製剤の成分及び稠度が異なる。
【0074】
本発明の医薬組成物にはその他の有効薬剤、例えば、抗生物質、鎮痛薬等をさらに含めてもよい。
【0075】
もう1つの態様では、本発明は、関節リウマチ、ARDS、喘息、鼻炎、特発性肺繊維症、腹膜炎、心血管炎症、心筋虚血、再潅流損傷、アテローム性動脈硬化症、敗血症、外傷、II型糖尿病、網膜症、乾癬、胃腸炎症、硬変及び炎症性腸疾患、AD、PD及びALS等の神経変性疾患並びに脳虚血性損傷及び外傷性損傷のうちのいずれか1種であり得る炎症状態の治療及び/又は予防、すなわち、その病因に酸化ストレスが重要な役割を果たす全ての疾患並びに反応性ミクログリアによるエイコサノイド及びスーパーオキシドの加速された放出がある全ての疾患における治療及び/又は予防に用いる医薬組成物の調製のための、本発明に定義されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を提供する。
【0076】
さらに、本発明は、cPLA活性化を伴う状態の治療のため並びにAβプラーク蓄積と関連している状態の治療及び/又は予防のための、本発明に定義されるアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を提供する。通常、前記状態としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALSからなる群から選択される神経変性疾患、並びに脳虚血性損傷及び外傷性損傷がある。
【0077】
したがって、本発明は、本発明に定義される少なくとも1種のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物の治療上有効量を、必要とする被験体に投与することを含む、cPLA活性化を伴う状態の治療方法を示す。
【0078】
前記治療上有効量又は投薬は、治療されようとする病状の重篤度及び応答性に応じて変わり、治療過程は、治癒が達成されるまで又は病状の減少が達成されるまで数日から数ヵ月続く。最適投薬スケジュールは、患者の身体における薬物蓄積の測定から算出できる。当業者ならば最適投与量、投薬法及び繰り返し率を容易に決定できる。最適投与量は、個々のオリゴヌクレオチドの相対力に応じて変わり得、通常、EC50に基づいて推定でき、in vitro及びin vivo動物モデルにおいて有効であるとわかる。通常、投与量は体重1kgあたり0.01μg〜10mgであり、1日、1週間、1カ月又は1年に1回若しくは複数回、又はさらに2〜20年毎に1回与える場合がある。当業者ならば、測定された体液又は組織中のアンチセンスオリゴヌクレオチドの滞留時間及び濃度に基づいて投薬の繰り返し率を容易に推定できる。
【0079】
治療がうまくいった後、患者が、病状の再発を防ぐために維持療法を受けることが望ましい場合があり、この場合にはオリゴヌクレオチドは、体重1kgあたり0.01g〜10mgの範囲の維持量で1日に1回又は複数回投与される。
【0080】
以下の実施例5〜7において実証されるように、炎症状態の治療に用いられる最適投与量は、5日から14日までの間、毎日、1〜2mg/kg/日が与えられるか(実施例5)、又は炎症後1〜2mg/kg/日を1若しくは2用量で与えられる(実施例6及び7)。
【0081】
cPLA発現を阻害するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用は、炎症部位で上昇したcPLAを特異的に阻害し、正常なcPLA発現には影響を及ぼさないので、局所炎症性疾患の画期的な治療である。この治療は、このような疾患の病因に関与している活性化されたか又は初回刺激を受けた食細胞の活性にも影響を及ぼす場合に、さらにより有効である可能性があるが、これはこれらの細胞が高レベルのエイコサノイド及びスーパーオキシドを分泌し、これらが炎症過程を加速するからである。
【0082】
したがって、本発明はまた、本発明に定義される少なくとも1種のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物の治療上有効量を、必要とする被験体に投与することを含む、関節リウマチ、ARDS、喘息、鼻炎、特発性肺繊維症、腹膜炎、心血管炎症、心筋虚血、再潅流損傷、アテローム性動脈硬化症、敗血症、外傷、II型糖尿病、網膜症、乾癬、胃腸炎症、硬変及び炎症性腸疾患、AD、PD、ALS等の神経変性疾患並びに脳虚血性損傷及び外傷性損傷のうちのいずれか1種である炎症状態の治療、すなわち、その病因に酸化ストレスが重要な役割を果たす全ての疾患並びに反応性ミクログリアによるエイコサノイド及びスーパーオキシドの加速された放出がある全ての疾患における治療方法を提供する。
【0083】
さらに、ミクログリア細胞におけるNADPHオキシダーゼによるスーパーオキシド生成の調節におけるcPLAの関与は、cPLAアンチセンスオリゴヌクレオチドが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALSからなる群から選択される神経変性疾患、並びに脳虚血性損傷及び外傷性損傷の治療に使用できることを示唆する。
【0084】
同様に、本発明はまた、例えば、LPSに曝露され、ミクログリア細胞が活性化され、ROS及び/又は炎症誘発性メディエーターを放出している状態の治療及び/又は予防のための方法であって、前記状態が炎症、感染及び虚血性疾患からなる群から選択される方法を提供する。前記方法は、本発明に定義される少なくとも1種のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物の治療上有効量を、必要とする被験体に投与することを含む。
【0085】
最後の態様として、本発明は、本発明に定義される少なくとも1種のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物の治療上有効量を、必要とする被験体に投与することを含む、神経変性疾患、並びに脳損傷(例えば、卒中又は外傷によって引き起こされた)の治療方法を提供する。前記状態は通常、反応性ミクログリアによるエイコサノイド及びスーパーオキシドの加速された放出のある神経変性疾患、好ましくは、アルツハイマー病及びパーキンソン病、又は脳虚血性損傷及び外傷性損傷である。
【0086】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを必要とする被験体に送達するには種々の投与法を使用できる。オリゴヌクレオチドは、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)腹膜内(i.p.)注射、経口的に(液体形で、又はカプセル剤、丸剤、トローチ剤等の投与単位形として製剤されて)によって送達できる。治療上有効であるためには、オリゴヌクレオチドは注射後、又はさらにより好ましくは、経口投与後のシステムでその安定性を可能にする方法で製剤しなくてはならない。
【0087】
あるいは、本発明のオリゴヌクレオチドはパッチ剤、軟膏剤又はクリーム剤を用い経皮送達によっても送達できる。
【0088】
さらに、本発明に記載されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを有効薬剤として含む医薬組成物は、局所又は全身治療が望まれるかどうかに応じ、さらに、治療されようとする面積に応じて、いくつかの方法で投与できる。投与は局所へ(眼へ並びに膣送達及び直腸送達をはじめとする粘膜へ、例えば、散剤又はエアロゾルの吸入又は吹送によって肺へ、例えば、噴霧器によって等、気管内へ、鼻腔内へ、上皮へ及び経皮的)、経口的又は非経口的であり得る。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹膜内若しくは筋肉内注射若しくは注入、又は頭蓋内、例えば、くも膜下腔内若しくは脳室内投与が挙げられる。少なくとも1つの2’−O−メトキシエチル修飾を有するオリゴヌクレオチドは、経口投与に特に有用であると考えられる。
【0089】
以下の実施例において示されるように、マウス及びラット(関節炎、ARDS及び腹膜炎)における3種の異なる炎症モデルを用いた予備試験が、抗炎症治療としての特異的なcPLAアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効性を実証する。
【0090】
本発明は特許請求の範囲によって規定され、その内容は本明細書の開示内容内に含まれるものと読み取られるべきである。
【0091】
本発明は、開示され、説明されているが、プロセスステップ及び材料は幾らか変わり得るものとして、本明細書に開示された特定の実施例、プロセスステップ及び材料に本発明が制限されないということは理解されなくてはならない。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲及びその等価物によってのみ制限されるので、本明細書に用いた技術用語は、単に個々の実施形態を説明する目的で用いられているものであって、制限しようとするものではないということも理解されなくてはならない。
【0092】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いたように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、特に断りのない限り、複数形の指示対象を含むということは留意しなくてはならない。
【0093】
本明細書及び特許請求の範囲を通じて、特に断りのない限り、語句「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」等の変形物は、記載された整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含み、その他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を除外しないことを意味すると理解される。
【0094】
以下の実施例は、本発明の態様を実施するために発明者らによって用いられた技術の代表的なものである。これらの技術は、本発明を実施するのに好ましい実施形態を例示するものであり、当業者ならば、本開示内容を踏まえ、本発明の対象とする範囲から逸脱することなく多数の改変を行うことができると認識するであろうことは理解されなくてはならない。
【実施例】
【0095】
試験手順
分子生物学の一般法
分子生物学分野のいくつかの方法は、当業者には周知であるので本明細書では詳述しない。このような方法には、PCR、cDNAの発現、哺乳類細胞のトランスフェクション等が含まれる。このような方法を記載する教本としては、例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ISBN:0879693096、F.M.Ausubel(1988)Current Protocols in Molecular Biology、ISBN:047150338X、John Wiley & Sons,Inc.がある。さらに、例えば、ウェスタンブロットのようないくつかの免疫学的技術も、当業者には周知であるので、本明細書に記載されるどの場合においても詳述していない。例えば、Harlow and Lane(1988)Antibodies:a laboratory manual.Cold Spring Harbor Laboratoryを参照されたい。
【0096】
オリゴヌクレオチド
【表1】

【0097】
実施例1
抗cPLAアンチセンスオリゴヌクレオチドの合成
cPLAに対する、14種の異なる部分ホスホロチオエート化[Steinら(1988)Nucleic Acids Res.16:3209〜3221頁]オリゴヌクレオチドをまず合成した。使用前に、オリゴヌクレオチドをHPLCによって精製し、質量分析(Sigma、UK)によって純度について調べた。選抜前に、Blastプログラムを用いて特有性についてスクリーニングすることによって配列を分析し、また、Mulfoldを用いて、二次構造及びオリゴ対形成の欠損についても調べた[Jaeger,J.A.(1989)Methods Enzymol.183:281〜306頁]。
【0098】
予備実験(示していない)によって、それら14種から6種のオリゴヌクレオチドのみがcPLA発現の阻害において有効であるとわかり、その配列が上記表1に詳細に示されている。
【0099】
6種のアンチセンスオリゴヌクレオチドしか有意な活性を示さなかったという事実は、これらが標的配列に対して高い特異性を有するということを示唆した。残りの8種のオリゴヌクレオチドは実験で対照として用いた。
【0100】
これらのオリゴヌクレオチドは、5’及び3’末端双方の最後の3塩基にホスホロチオエート修飾を保持しており(表1で下線によって示されている)、cPLAmRNAの最初の40000塩基対(N末端)についてRNADraw V1.1[Mazura Multimedia、Sweden]を用いコンピュータを利用したアプローチを用いて設計した(表1)。
【0101】
部分ホスホロチオエート化オリゴヌクレオチド(PPS)は、ホスホロチオエート化オリゴヌクレオチドよりも毒性が低く、より特異的であるが、その安定性及び細胞取り込みにおいては同様である。いくつかのPPSは、GGGG(C10)及びGGG(C8及びC9)を含み、細胞取り込みを高めることがわかっている、(表1参照)。PPSC8、C9はまた、安定性を高め、エンドヌクレアーゼ切断から保護することがわかっている内部ピリミジン(t)でのホスホロチオエート化を含む(表1、下線部)。アンチセンスオリゴヌクレオチドのうち5種は、免疫応答を刺激することがわかっているCpGを含んでいなかった。裸のPPSは、公開されたin vitroでの研究とは対照的に、この形でin vivo治療に使用できるため[Pirollo,K.F.ら(2003)同書]、本明細書に示した実験の全てで加えられたが、これにはアンチセンス取り込みを高めるために異なる送達システムを用いた。したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた全ての臨床試験は、裸のオリゴヌクレオチドを用いて実施されている。例えば、組織培養において実施された実験[Jansen,B.ら(2000)Lancet 356:1728〜1733頁]とは対照的に、in vivo臨床試験は、癌患者におけるBcl−2に対するオリゴヌクレオチド送達のために陽イオン性脂質を必要としなかった。これは、in vivoアッセイでは通例であるが、今日まで、何故ベクターが必要でないようであるのかについてはよくわかっていない。1つの仮説としては、オリゴヌクレオチドが循環タンパク質と相互作用し、このことがまだ理解されていない方法で、オリゴヌクレオチドを分解から保護し、担体としても働くというものである[Dias,N.及びStein,C.A.(2002)Eur.J.Pharmac and Biopharmac.54:263〜269頁]。
【0102】
図3〜7において示されるように、PPSアンチセンスオリゴヌクレオチドによるcPLA発現の阻害とスーパーオキシドの刺激された生成の間には明確な相関がある。各PPSオリゴヌクレオチドは、種々の食細胞種において、cPLAタンパク質発現の有意な阻害を引き起こし、それらを組合せたものは大幅に改良された阻害を引き起こした。
【0103】
図3及び4に示されるように、本発明のPPSアンチセンスオリゴヌクレオチドはこれまでに報告されたものよりもはるかに効率的である[US6,008,334、Roshak ら(1994)同書、Muthalifら(1996)同書、Marshallら(1997)同書、Andersonら(1997)同書、Li,Q.及びCathcart,M.K.(1997)同書、Zhao,X.ら(2002)同書]。さらに、先の報告では、これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、そのmRNA合成を阻害する能力についてしか調べられていなかった[US6,008,334]。
【0104】
オリゴヌクレオチドの両末端における修飾の数(及び種類)の効果も評価した(データは示していない)。観察された、cPLA発現及びNADPHオキシダーゼを阻害する効率についての順位は以下の通りであった:
3修飾を有するPPS>2修飾を有するPPS>1修飾を有するPPS>修飾のないもの。
【0105】
PPSアンチセンスオリゴヌクレオチドは、内皮細胞又は上皮細胞よりも単球について示されるように、食細胞におけるcPLAタンパク質発現の阻害においてより効率的であった(データは示していない)。この現象は、器官に影響を及ぼさず、炎症部位の食細胞に直接的に影響を及ぼす炎症の治療に関して特に有利である。
【0106】
実施例2
末梢血ヒト単球におけるcPLAアンチセンスオリゴヌクレオチドのcPLA発現及びスーパーオキシド生成に対する効果
cPLAタンパク質の発現を、発明者らによって作製され、商業マーケットで入手できるものよりもはるかに効率的であるcPLAに対する抗体を用いウェスタンブロット解析によって解析した(図2)。
【0107】
cPLA発現に対する種々のPPSアンチセンスオリゴヌクレオチド及びそれらを組合せたものの効果及びスーパーオキシド生成に対する効果を、末梢血ヒト単球(図3及び4)及びマウスマクロファージにおいて(図5)調べた。10%FCSを含有するRPMI中の細胞懸濁液に、裸の(リポフェクチン等のようなトランスフェクション溶液を含まない)PPSアンチセンスオリゴヌクレオチド(終濃度は1μM)を、37℃で16時間添加した。5ng/ml PMAで刺激された同じ細胞のスーパーオキシド生成(シトクロムc還元によって)及び細胞溶解物におけるcPLAの発現について(ウェスタンブロット解析によって)解析した。示されるように、各PPSアンチセンスは50〜75%のスーパーオキシド生成阻害を引き起こし、これはそのcPLA発現阻害に対する効果と相関していた。cPLAのレベルは、反射モードでの密度測定(densimetry)によって定量化した(Hoefer、Hoefer Scientific Instruments、San Francisco、USA)。これら2つのパラメーターの間の相関は図6に実証されている。
【0108】
図3及び4に示されるように、それぞれP1[Roshakら(1994)同書、Muthalifら(1996)同書、Marshallら(1997)同書、Andersonら(1997)同書]及びP2[Li,Q.及びCathcart,M.K.(1997)同書]、並びにIS1及びIS2[US6,008,334]は、cPLA発現に対しても、スーパーオキシド生成に対しても全く効果がなかった。オリゴヌクレオチドIS1及びIS2はそれぞれ、US6,008,334では、100%及び92%のmRNA発現阻害を引き起こすと報告されていたことは最も重要である。しかし、それらの効果はmRNA発現阻害によって解析されただけでcPLAタンパク質発現阻害によっては解析されていなかった。
【0109】
P1、P2 IS1及びIS2は、その最初の刊行物では、全ての塩基にホスホロチオエート修飾を伴って合成された。本発明者は、完全ホスホロチオエート化された場合、これらのオリゴヌクレオチドは細胞に対して毒性があり、16時間のインキュベーションの後約60〜70%の細胞の死滅を引き起こすことを見出した(データは示していない)。これらの結果は、全ての塩基にホスホロチオエート修飾を有するオリゴヌクレオチドははるかに毒性が高いことを示す先の報告[Pirollo,K.F.ら(2003)同書]と一致している。したがって、この研究については、P1、P2、IS1及びIS2の効果と、本発明者によって合成されたPPSアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果をより正確に比較するために、最初のオリゴヌクレオチドとは異なる、最初と最後の3塩基にしかホスホロチオエート修飾を有さないP1、P2、IS1及びIS2が合成されたことに留意することが重要である。
【0110】
図2及び3に示される結果から、発明者によって合成された(及び特許請求される)アンチセンスオリゴヌクレオチドは、文献に記載されたオリゴヌクレオチドよりも優れていることが実証される。詳しくは、前者は以下であることを強調できる:
a.毒性が低い、
b.cPLAタンパク質発現阻害においてはるかに強力である。
【0111】
P1、P2、IS1及びIS2と比べ、本アンチセンスオリゴヌクレオチドは特に好ましいが、これはそれらがリポフェクチンのような細胞送達システムなしに細胞に導入され得、その活性を発揮できるためである。
【0112】
実施例3
末梢血ヒト好中球における、cPLAアンチセンスオリゴヌクレオチドのcPLA発現及びスーパーオキシド生成に対する効果
cPLA発現及びスーパーオキシド生成に対する種々のPPSアンチセンスオリゴヌクレオチド及びそれらを組合せたものの効果を、末梢血ヒト好中球において調べた。2×10個の好中球に、裸のアンチセンスオリゴヌクレオチドを37℃で6時間添加した(1μM終濃度で)。好中球(95%純度)をFicoll/Hypaque遠心分離し、デキストラン沈降及び赤血球の低張溶解によって単離した[Levy,R.ら(2000)Blood 95:660〜665頁]。図7に示されるように、好中球とともに6時間インキュベートした後に、スーパーオキシド生成の、わずかではあるが有意な(P<0.05)阻害があった。別の実験では、16時間のインキュベーション後に同様の効果が示された(データは示していない)
【0113】
種々のオリゴヌクレオチドアンチセンスによるスーパーオキシド生成の阻害は、細胞膜上の受容体と特異的に結合するfMLP、オプソニン化ザイモサン(OZ)(図8)、LTB、アンジオテンシンII又はAGE(最終糖化反応物)等の生理的アゴニストによって細胞が刺激された場合、大幅に改良された(データは示していない)
【0114】
PPSの効果は、好中球を炎症性疾患(関節リウマチ、喘息又は敗血症等、データは示していない)の患者から精製した場合に、好中球を健常な対照から得た場合よりも大幅に高かった。この現象は、好中球におけるcPLAレベルは病気の間は高く、このことは合成速度の増大を示し、それ故より標的化しやすいということを報告した発明者らの初期の研究と一致する[Levy,R.ら(2000)同書]。
【0115】
図3〜6に表される実験は、非生理的刺激物PMA、受容体をバイパスしてPKCに対して作用するNADPHオキシダーゼの極めて強力なアクチベーター、を用いて実施したことに留意することが重要である。これらの条件下では、種々の受容体の発現及びその刺激物との結合の効果が排除されるため、これにより、NADPHオキシダーゼに対するアンチセンスの直接的な役割を解析することが可能となったからである。
【0116】
実施例4
ラットミクログリアにおける、cPLAアンチセンスオリゴヌクレオチドのcPLA発現及びスーパーオキシド生成に対する効果
アンチセンス及びそれらを組合せたものの効果を、ラット脳から単離したミクログリアで調べた。PPSアンチセンスオリゴヌクレオチド(1μM終濃度で)を、ミクログリア細胞に16時間加えた(単球に用いた条件と同様)。cPLAタンパク質発現の有意な阻害があった。細胞を2mg/ml PMA又は10μMのアミロイドβで刺激し、スーパーオキシド生成を蛍光プローブAmplex Redによって分析した。図9に示されるように、アンチセンスはスーパーオキシド生成の有意な阻害を引き起こし、cPLAタンパク質発現と相関していた。興味深いことに、アンチセンスC8は、ラット配列とは1塩基マッチしなかったが、これはスーパーオキシド生成の阻害を引き起こさず、このことはアンチセンスの高い特異性を示す。阻害は、細胞がアミロイドβで刺激された場合にかなり高かった。ミクログリアをアンチセンスオリゴヌクレオチドとともに48時間インキュベートすることによって、cPLA発現及びスーパーオキシド生成のより高い阻害が引き起こされた(データは示していない)。アミロイドβはアルツハイマー病等の脳及び神経変性疾患の病因において重要な役割を果たすので、この結果は特に重要である。
【0117】
全ての細胞種を×150アンチセンス濃縮物とともにインキュベートしても、細胞に対して毒性ではなく、cPLAによって調節されない細胞機能にも影響を及ぼさなかった(データは示していない)。
【0118】
実施例5
炎症の動物モデル:コラーゲン関節炎
コラーゲン関節炎(CIA)は、関節リウマチ(RA)と多数の臨床上及び病理学的類似性を有する自己免疫関節炎の実験モデルである。CIAは、記載されたように、感受性動物(例えば、DBAブラックマウス)をII型コラーゲン(CII)で免疫化することによって誘発される[Bendele,A.M.ら(2000)Arthritis & Rheumatism、43:2648〜58頁]。全てのマウスは特定の病原体を含まない環境で維持し、標準マウス食と水を与えた。ニワトリCII(Sigma−Aldrich、2mg/ml)を10mM酢酸に4℃で一晩溶解し、等容量のCFA(完全フロイントアジュバント)と合わせた。CFAは100mgの加熱殺菌した結核菌(H37Ra、Difco、Detroit、Michigan、USA)を20mlの不完全フロイントアジュバント(Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouri、USA)と混合することによって調製した。マウス(7〜10週齢)の尾の基部に皮内注射し、7日目又は21日目に追加免疫した。対照マウスはCIIを含まないCFAで処理した。関節炎の重篤度は、以下のスケールに従ってデジタルノギスを用いて直接検査することによってモニターした:等級0、腫脹なし;1、わずかな腫脹及び紅斑;2、明白な炎症及び3、関節硬直。各肢を等級付けし、動物あたり最大12のスコアを与えた。動物の足から体液を吸引し、サイトカイン(mRNA及びタンパク質レベル)及び白血球を調べた。屠殺した後、足を採取し、固定し、脱灰し、パラフィン包埋した。切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色し、以下のスケールにしたがってスコアを付けた:0、炎症なし;1、滑膜細胞層のわずかな肥厚及び/又は表層下のいくらかの炎症細胞:2、滑膜表層の肥厚、表層下の浸潤及び局在する軟骨びらん及び3、滑膜腔の浸潤、パンヌス形成、軟骨破壊及び骨びらん。
【0119】
抗CII抗体の検出:IgGl、IgG2a、IgG2b、IgG3又はIgM及びIgAに対して特異的なHRP結合二次抗体によって、CIIに対する抗体のためのELISAを実施した。
【0120】
細胞単離:CD11b、CD3、CD4及びCD8に対して特異的なビオチン結合抗体とビオチン結合剤ダイナビーズ(Dynabead)を用いて、滑膜細胞の脾細胞サブセットの陽性選抜を実施した。CD11b及びCD3滑膜細胞を陽性選択した後、滑膜細胞をビオチンCD45とともにインキュベートし、過剰のアビジン磁性ビーズを用いて負の選抜を行った。残存するCD45陰性細胞は、RNA抽出に用いた。滑液白血球は、滑膜浸出液から得、Ficoll−Hypaque密度勾配遠心分離によって精製した。
【0121】
CIAのモデルは、例えば、対照マウスの肢と比較して、腫大し、増悪したCIAマウスの肢によって実証されたように、発明者らによってうまく開発された(図10A)。CIAマウスの肢の組織学的評価(図10B)は、関節炎の重篤度と相関しており、図10Aに示されるように肢を直接検査することによってモニターした。CIAマウスの関節切片において炎症細胞(特に、好中球)の浸潤が示されている(図10C)。CIAマウスは、重篤な歩行困難性を示した(データは示していない)。
【0122】
種々のPPS濃縮物及び組合せを用いて実施した予備実験に基づいて、3種の異なるPPS(2、4及び10)を組合せたものについて2mg/kgという最適濃度を規定し、これを本明細書においてカクテルと呼ぶことにした。この濃度はヒトの治療及び動物モデルにおいて用いられる範囲内である。
【0123】
炎症状態の治療には、アンチセンスの滅菌保存液(100μM)を滅菌生理食塩水に所望の濃度で溶解し、病気のマウスにi.v.、皮内のいずれかで、尾の基部又は炎症性関節に注射した。
【0124】
図11に示されるように、14日間毎日、2mg/kgの「カクテル」の静脈内注射を行うことによって、肢の腫脹の減少(図11A)、疾患重得度スコア、マウスの運動能力及び自由に走り回る能力の完全回復(データは示していない)並びに血清IL−6及びTNFαレベルの低減(図11B)によっても検出されたように、関節炎の有意な寛解が引き起こされた。
【0125】
実施例6
炎症の動物モデル:腹膜炎
モデルマウス腹膜炎は、先に記載したようにCD1マウスへのカンディア(Candia)の注射[Levy,R.ら(1989)J.Biol.Regul.Homeost.R Agents 3:5〜12頁]又は種々の用量のグラム陽性菌の注射によって開発されており、動物死を引き起こし、中程度の用量では中程度の疾患を引き起こすグラム陰性(大腸菌)、細菌(S.エピデルミチス(epidermitis))又は致死量のカンジダで腹膜炎を誘発する。50%致死量は、S.エピデルミチスの6×10CFU及び大腸菌の1.5×10CFUと決定された。感染及び/又は炎症のマーカーは、腹膜炎領域の血液細胞の数及び集団、血中炎症性サイトカイン、例えば、TNFα、IL1及びIL6の濃度、並びに腹膜切片の組織学的解析である。致死量の細菌を注射したマウスを、細菌注射の2時間後にアンチセンスで治療し、その後種々の間隔でアンチセンスを注射する。これらの実験では、マウス生存に対するアンチセンスの効果を評価する。低用量の細菌を注射したマウスについては、アンチセンスの効果(記載したように注射した)を、感染及び/又は炎症マーカーによって病理学的に評価する。
【0126】
実施例7
炎症の動物モデル:無菌性腹膜炎
無菌性腹膜炎のモデルは、先に記載されたように、ICRマウスにおいて3mlの滅菌4%チオグリコレート(TG)を腹膜内に注射することによって開発された[Segal,B.H.ら(2002)J Leukoc Biol 71:410]。炎症の評価は、腹膜炎腔における血液細胞の数及び集団、細胞を含まない腹水中及び血清中のLTBの濃度並びに炎症性サイトカイン、TNFα及びIL6の存在によって調べた。細胞を回収するために、10mlの滅菌PBSを腹腔に注射した。細胞数は、トリパンブルー染色した後に顕微鏡によって求めた。細胞集団の構成は、抗マウス好中球に対する抗体(MCA771F)、抗マウスマクロファージに対する抗体(F4/80)及び抗マウスリンパ球に対する抗体(CD3)を用い、FACSによって調べた。細胞集団の構成はまた、ギムザ染色した後、顕微鏡下でも調べた。図12A〜12Bは、4日間の無菌性腹膜炎の間の白血球数(図12A)及び細胞集団(図12B)の変化を示す。TG注射の24時間後に高レベルの好中球が検出され、後に単球−マイクロファージに置き換わった。刺激された食細胞のスーパーオキシド生成の有意な上昇があり、最高速度は腹膜炎誘発の24時間後であった。
【0127】
24時間の無菌性腹膜炎の間の血清中の及び腹腔中のLTBレベルは、図13A〜13Bに示されている。腹膜炎誘発の1時間後、血中LTBレベルの有意な上昇があった。LTBレベルは5時間高く留まり、次いで、8時間後に半分にまで低下した。腹膜炎誘発の16時間後、LTBは血中に検出できなかった。同様のパターンが腹腔においても観察されたが、減衰はより緩やかであり、24時間後になってLTBは検出されなくなった。
【0128】
本結果によれば、文献と一致して、腹膜炎モデルにおいて集積する最初の細胞は好中球であった。したがって、実験の第1のセットでは、無菌性腹膜炎誘発の24時間後にアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果を、主に好中球集積及び活性に対して解析した。滅菌水(0.2ml)に溶解した2用量のcPLAに対するPPSアンチセンスオリゴヌクレオチドの特定の組合せ(「カクテル」)を、腹膜炎誘発の1時間後及び4時間後に、マウスの尾にi.v.投与した。図14A〜14C(2個体のマウスの結果)に実証されるように、この治療により、炎症誘発の24時間後における、腹膜細胞による刺激されたスーパーオキシド生成のわずかな阻害と、腹腔に存在する好中球数の有意な減少(FACS解析によって検出される細胞数及び細胞集団分布として表される)とが引き起こされた。34個体の未処置マウスと比較した無菌性腹膜炎を伴う34個体のマウスの腹膜に補充される好中球の減少及びスーパーオキシド生成に対するカクテルの効果は、図15A〜15Bに示されている。刺激されていない細胞からのスーパーオキシド放出は極めて重要であるが、これは腹膜腔における腹膜細胞の挙動を反映するからである。したがって、休止細胞からのスーパーオキシドの放出を、感受性の強い方法であって、低レベルのスーパーオキシドを検出できる蛍光プローブジヒドロローダミン−123(1mM)を用いて評価した。図16の代表的な結果に示されるように、腹膜炎誘発後の24時間の間のカクテルによる治療は、腹膜細胞によるスーパーオキシドの放出を大幅に減少させた。
【0129】
アンチセンスオリゴヌクレオチド治療の効果は、無菌性腹膜炎の4日間の間、腹膜細胞集団で調べた。補充された好中球数は劇的に減少し、補充されたマクロファージ数は、4日間の腹膜炎の間、治療されたマウスの腹膜において大幅に少なかった(図17A〜17B)。4日間の腹膜炎の間、アンチセンス治療されたマウスの腹膜細胞による、刺激されたスーパーオキシド生成は、未処置のマウスにおけるものよりも大幅に低かった(図18A〜18B)。
【0130】
アンチセンスカクテル治療は、腹膜炎誘発後の24時間の間測定されたように(図19A〜19B)、腹腔のLTBレベルを低下させ、腹腔へ補充される好中球の減少と相関していた(図20A〜20B)。
【0131】
i.v.注射の24時間後の腹膜血液細胞におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの集積を、蛍光標識したアンチセンスオリゴヌクレオチド(最後のヌクレオチドでFITCで標識した)を用いて検出した(図21A〜21B)。組織切片によって、種々の器官における蛍光アンチセンスオリゴヌクレオチドの分布も解析した(結果は示していない)。さらなる実験では、種々のアンチセンス過剰用量を、その毒性を調べるために投与した。カクテル×100は、マウスに対して毒性はなかった(データは示していない)。
実施例8
【0132】
炎症の動物モデル:以下によって誘発される実験上の急性肺損傷:
1−LPS/ザイモサン投与。
マウスに麻酔をかけ、人工呼吸させる。実験の間、酸素ガスを換気システムに連続供給する。静脈内(i.v.)投与の1分前に、2回の深い吸入(3×一回換気量)を行い容積の履歴を標準化させ、測定値をベースラインとする。次いで、マウスに3mg/kgの大腸菌O111:B4由来LPS(Sigma Chemical Co.、St.Louis、MO)をi.v.で与える。2時間後、10mg/kgのサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cereuisiae)由来ザイモサンA(Sigma)をi.v.投与する。生理食塩水処理群では、LPSとザイモサンとの代わりに生理食塩水を動物に同様に与え、対照として用いる。全ての群において、30分間隔で4時間測定を行う。動物の中には、観察期間を6時間に延長したものもあった。肺損傷の発症を生理学的に評価するために、EL(肺コンプライアンスの逆数)を測定する。気管圧(Ptr)、フロー及びボリューム(V)を測定する。EL及び肺抵抗(RL、データは示していない)は、運動方程式を調整することによって算出する:Ptr=ELV+RL(dV/dt)+K(式中、Kは定数である)。ELの変化は肺柔組織の変化及び肺の硬化を反映する。
【0133】
2−HCl吸引
ベースライン測定後、麻酔し、人工呼吸したマウスに2ml/kgのHCl(pH=1.5)をi.t.し、続いて空気塊(30ml/kg)を与える。生理食塩水処理群では、動物に、HClの代わりに生理食塩水を同様に与え、対照として用いる。全ての群において、測定は30分間隔で2時間行う。動物の中には、観察期間が5時間までであるものもある。EL測定値は、急性肺損傷を評価するための生理学的パラメーターである。
肺水腫の評価−実験の最後に、肺湿潤/乾燥質量比を算出し、肺水腫を評価する。切除した肺から閉じ込められた血液を排出した後、肺湿潤質量の測定を行う。次いで、肺を重力対流オーブン中、90℃で72時間、一定質量まで加熱し、残渣を肺乾燥質量として計量する。
気管支肺胞洗浄液−実験の最後に、各群において気管支洗浄(BAL)を実施する(5×1mlリン酸緩衝生理食塩水を用いて)。各動物において、全注射容積の90%(4.5ml)を一貫して回収する。BAL液を450gで10分間遠心分離した後、細胞画分からBAL液全体の細胞数及びBAL液の差次的細胞数を求める。上清はタンパク質含量の測定まで−70℃で保存する。タンパク質濃度は、標準としてウシ血清アルブミンを用いローリー法によって測定する。
トロンボキサン及びロイコトリエン測定は、酵素免疫測定法(EIA)キットによって測定する。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】cPLAのcDNA配列(配列番号7)を示す図であり、アンチセンスオリゴヌクレオチドC2、C3、C4、C8、C9及びC10の位置が強調表示されている。C2はヌクレオチド347〜366を包含し、C3はヌクレオチド155〜174を包含し、C4はヌクレオチド379〜399を包含し、C8はヌクレオチド330〜346を包含し、C9はヌクレオチド183〜202を包含し、C10はヌクレオチド290〜306を包含する。
【図2A】2種の抗cPLA抗体(Ab)間の比較を示す図である。レビー(Levy)のAb[Hazanら(1997)同書]
【図2B】2種の抗cPLA抗体(Ab)間の比較を示す図である。市販の抗体。Dil.=希釈。
【図3A】ヒト末梢血単球におけるcPLA発現及びスーパーオキシド生成に対するcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドの効果を示す図である。対照並びにアンチセンスP1[Roshak,Aら(1994)同書、Marshall,L.ら(1997)同書、Muthalif,M.M.ら(1996)同書、Anderson,K.M.ら(1997)同書]及びP2[Li,Q.及びCathcart,M.K.(1997)同書]と比較した場合における、アンチセンスPPSオリゴヌクレオチドC2、C3、C4、C9及びC2+C4(2+4)の組合せで処理した後に抗cPLA抗体によって検出されるcPLA発現阻害を示すウェスタンブロット解析。種々の処理におけるcPLAのレベルは、密度測定(densitometry)によって定量化し、ウェスタンブロット解析の下に示されている。Lev.=レベル、dens.=密度測定。
【図3B】ヒト末梢血単球におけるcPLA発現及びスーパーオキシド生成に対するcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドの効果を示す図である。対照並びにアンチセンスP1[Muthalif,M.M.ら(1996)同書、Anderson,K.M.ら(1997)同書]及びP2[Li,Q.及びCathcart,M.K.(1997)同書]と比較した場合における、cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドC2、C3、C4、C9及びC2+C4(2+4)の組合せによるスーパーオキシド生成(SO prod.)の阻害を示すヒストグラム。これまでに記載されたアンチセンスオリゴヌクレオチドP1及びP2に対する、本発明のアンチセンスPPSオリゴヌクレオチド(2、3、4及び9と表される)の高い効率に留意することが重要である。
【図4A】末梢血ヒト単球におけるcPLA発現及びスーパーオキシド生成に対するcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドの効果を示す図である。対照並びにオリゴヌクレオチドIS1及びIS2[US6,008,344]と比較した場合における、アンチセンス部分ホスホロチオエート化(PPS)オリゴヌクレオチドC2、C8、C9、C10並びにC3+C10及びC8+C10の組合せで処理した後の、抗cPLA抗体によって検出されるcPLA発現阻害を示すウェスタンブロット解析。種々の処理におけるcPLAのレベルは、密度測定によって定量化し、ウェスタンブロット解析の下に示されている。Lev.=レベル;dens.=密度測定。
【図4B】末梢血ヒト単球におけるcPLA発現及びスーパーオキシド生成に対するcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドの効果を示す図である。対照(cont.)並びにオリゴヌクレオチドIS1及びIS2[US6,008,344]と比較した場合における、cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドC2、C8、C9、C10並びに組合せC3+C10及びC8+C10によるスーパーオキシド生成(SO prod.)の阻害を示すヒストグラム。US6,008,344に記載されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(IS1及びIS2)に対する、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド(図中、2、8、9及び10と表される)の高い効率に留意することが重要である。
【図5A】腹膜マウスマクロファージにおける、cPLA発現及びスーパーオキシド生成に対するcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドの効果を示す図である。アンチセンスPPSオリゴヌクレオチドC3及びC4並びに組合せC3+C4で処理した後の、抗cPLA抗体によって検出されるcPLA発現阻害を示すウェスタンブロット解析。
【図5B】腹膜マウスマクロファージにおける、cPLA発現及びスーパーオキシド生成に対するcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドの効果を示す図である。cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドC3及びC4並びに組合せC3+C4によるスーパーオキシド生成の阻害を示すヒストグラム。
【図5C】腹膜マウスマクロファージにおける、cPLA発現及びスーパーオキシド生成に対するcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドの効果を示す図である。cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドC2、C3、C4、C10並びに組合せC2+C10、C3+C10、C4+C10及びC3+C4によるスーパーオキシド生成の阻害を示すヒストグラム。略語:cont.は、対照;SO genは、スーパーオキシド生成。
【図6】cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドで処理した後のcPLA発現(exp.)とスーパーオキシド生成(SO prod.)の阻害との間の相関を示す図である。Cont.=対照。
【図7A】末梢血ヒト好中球における、cPLA発現及びスーパーオキシド生成に対するcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドの効果を示す図である。アンチセンスPPSオリゴヌクレオチドC2又はC4及び組合せC2+C4で処理した後の、抗cPLA抗体によって検出されるcPLA発現阻害を示すウェスタンブロット解析。種々の処理におけるcPLAのレベルは、密度測定によって定量化し、ウェスタンブロット解析の下に示されている。
【図7B】末梢血ヒト好中球における、cPLA発現及びスーパーオキシド生成に対するcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドの効果を示す図である。PMA処理後のcPLAアンチセンスオリゴヌクレオチドC2、C4又はC10及び組合せC2+C4、C2+C10、C4+C10、C2+C4+C10によるスーパーオキシド生成の阻害を示すヒストグラム。
【図7C】末梢血ヒト好中球における、cPLA発現及びスーパーオキシド生成に対するcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドの効果を示す図である。OZ処理後のcPLAアンチセンスオリゴヌクレオチドC2、C4又はC10及び組合せC2+C4、C2+C10、C4+C10、C2+C4+C10によるスーパーオキシド生成の阻害を示すヒストグラム。略語:Lev.は、レベル;dens.は、密度測定;cont.は、対照;SO gen.は、スーパーオキシド生成。
【図8A】好中球及びマクロファージにおける、cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチド処理後、生理的アゴニストによって刺激されるスーパーオキシド生成の阻害を示す図である。cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドC3又はC4とともに6時間インキュベートした後の、PMA刺激された好中球におけるスーパーオキシド生成の阻害を示すヒストグラム。
【図8B】好中球及びマクロファージにおける、cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチド処理後、生理的アゴニストによって刺激されるスーパーオキシド生成の阻害を示す図である。cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドC3又はC4とともに4時間インキュベートした後の、fMLP刺激された好中球におけるスーパーオキシド生成の阻害を示すヒストグラム。
【図8C】好中球及びマクロファージにおける、cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチド処理後、生理的アゴニストによって刺激されるスーパーオキシド生成の阻害を示す図である。cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドC3又はC4とともに4時間インキュベートした後の、OZ刺激された好中球におけるスーパーオキシド生成の阻害を示すヒストグラム。
【図8D】好中球及びマクロファージにおける、cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチド処理後、生理的アゴニストによって刺激されるスーパーオキシド生成の阻害を示す図である。cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドC3又はC4とともに16時間インキュベートした後の、PMA刺激された単球におけるスーパーオキシド生成の阻害を示すヒストグラム。
【図8E】好中球及びマクロファージにおける、cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチド処理後、生理的アゴニストによって刺激されるスーパーオキシド生成の阻害を示す図である。cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドC3又はC4とともに16時間インキュベートした後の、fMLP刺激された単球におけるスーパーオキシド生成の阻害を示すヒストグラム。
【図8F】好中球及びマクロファージにおける、cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチド処理後、生理的アゴニストによって刺激されるスーパーオキシド生成の阻害を示す図である。cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドC3又はC4とともに16時間インキュベートした後の、OZ刺激された単球におけるスーパーオキシド生成の阻害を示すヒストグラムである。略語:SO prod.は、スーパーオキシド生成;Act.は、活性。
【図9A】cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドによる、ラットミクログリアにおける刺激されたスーパーオキシド生成の阻害を示す図である。アンチセンスPPSオリゴヌクレオチドC2又はC4で処理した後の、抗cPLA抗体によって検出されるcPLA発現の阻害を示すウェスタンブロット解析。
【図9B】cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドによる、ラットミクログリアにおける刺激されたスーパーオキシド生成の阻害を示す図である。cPLAアンチセンスオリゴヌクレオチドC2、C4、C8又はC10、及び組合せC2+C10又はC4+C10で処理した後の、PMAによって活性化されたラットミクログリア細胞におけるスーパーオキシド生成の阻害の速度論を示すグラフ。
【図9C】cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドによる、ラットミクログリアにおける刺激されたスーパーオキシド生成の阻害を示す図である。PMA刺激後のラットミクログリア細胞におけるスーパーオキシド生成に対する、cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチド(C2、C4、C8及びC10、並びに組合せC2+C10及びC4+C10)の効果を示すヒストグラム。
【図9D】cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドによる、ラットミクログリアにおける刺激されたスーパーオキシド生成の阻害を示す図である。アミロイドβ刺激後のラットミクログリア細胞におけるスーパーオキシド生成に対する、cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチド(C2、C4、C8及びC10、並びに組合せC2+C10及びC2+C4)の効果を示すヒストグラムである。略語:rest.は、休止;act.は、活性化;asは、アンチセンス;kin.は、速度論;T.は、時間;min.は、分。
【図10A】コラーゲン関節炎(CIA)の動物モデルを示す図である。対照(cont.)マウスと比較した、実験における増悪したCIAの写真。
【図10B】コラーゲン関節炎(CIA)の動物モデルを示す図である。対照(cont.)と比較した、CIAマウスの全足の関節組織病理学の代表的な切片の組織学的評価を示す写真(×100)。
【図10C】コラーゲン関節炎(CIA)の動物モデルを示す図である。CIAマウスにおける炎症細胞の浸潤を示す写真(×400)。
【図11A】3種のcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドを組合せたもの(「カクテル」)による治療が引き起こした関節炎の寛解を示す図である。CIAマウスの腫大した肢(上、art.=関節炎)及びカクテルで治療した後の肢CIAマウス(下、as=アンチセンス治療)の写真。両写真は同倍率及び動物から同じ距離で撮影した。
【図11B】3種のcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドを組合せたもの(「カクテル」)による治療が引き起こした関節炎の寛解を示す図である。カクテルでの静脈内治療後における、血清(ser.)IL−6及び血清TNFα及び疾患重篤度スコア(dis.sev.sc.)の低減。(各群5個体のマウスからの平均±SEM)。
【図12A】無菌性腹膜炎の誘発後の腹膜細胞集団の数及び構成を示す図である。無菌性腹膜炎マウスにおける腹膜細胞数の変化(各群6個体のマウスからの平均±SEM)。
【図12B】無菌性腹膜炎の誘発後の腹膜細胞集団の数及び構成を示す図である。無菌性腹膜炎マウスにおける腹膜細胞集団の構成の変化。略語:ce.no.は、細胞数;T.は、時間;hは、時;neuは、好中球;macは、マクロファージ;lympは、リンパ球。
【図13A】無菌性腹膜炎の誘発後のLTBレベルを示す図である。血清(ser.)におけるLTBレベル。
【図13B】無菌性腹膜炎の誘発後のLTBレベルを示す図である。腹腔(per.cav.)におけるLTBレベル。各群5個体のマウスからの平均±SEM。T.は、時間;hは、時間。
【図14A】腹膜細胞集団に対するアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドカクテル治療の効果及び誘発24時間後の活性を示す図である。細胞集団(ce.pop.)構成のFACS分析。Neu=好中球。
【図14B】腹膜細胞集団に対するアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドカクテル治療の効果及び誘発24時間後の活性を示す図である。細胞数(ce.co.)を示すグラフ。
【図14C】腹膜細胞集団に対するアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドカクテル治療の効果及び誘発24時間後の活性を示す図である。対照健常マウス(H)、無菌性腹膜炎マウス(P)及びカクテルを静脈内注射した24時間後の無菌性腹膜炎マウス(P+AS)、の刺激された腹膜細胞によるスーパーオキシド生成(SO prod.)。
【図15A】腹膜炎誘発の24時間後の炎症部位における、cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドカクテル治療により低減した好中球数及びスーパーオキシド生成を示す図である。アンチセンス治療を行った好中球(neu)及びその治療を行わなかった好中球(neu)のパーセンテージを示すグラフ。
【図15B】腹膜炎誘発の24時間後の炎症部位における、cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドカクテル治療により低減した好中球数及びスーパーオキシド生成を示す図である。アンチセンス治療を行った無菌性腹膜炎マウス及びその治療を行わなかった無菌性腹膜炎マウスから単離された腹膜細胞のPMAによって刺激されたスーパーオキシド生成(SO prod.)を示すグラフ。
【図16】腹膜炎誘発の24時間後の炎症部位における、cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドカクテル治療によって低減した、休止腹膜細胞による刺激されていないスーパーオキシド生成を示す図である。1μMジヒドロローダミン−123を用いて評価した、アンチセンス治療を行った無菌性腹膜炎マウス及びその治療を行わない無菌性腹膜炎マウスから単離された休止腹膜細胞によるスーパーオキシド生成の検出の一例が示されている。Co.=数。
【図17A】無菌性腹膜炎のマウスにおける、腹膜細胞構成に対するcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドカクテル治療の効果を示す図である。無菌性腹膜炎の間の腹膜細胞構成。
【図17B】無菌性腹膜炎のマウスにおける、腹膜細胞構成に対するcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドカクテル治療の効果を示す図である。アンチセンス治療後の腹膜細胞構成。略語:ce.no.は、細胞数;T.は、時間;hは、時間;neuは、好中球;macは、マクロファージ;lympは、リンパ球。略語:Neuは、好中球;macは、マクロファージ;lympは、リンパ球;(各群5個体のマウスからの平均)。
【図18A】無菌性腹膜炎の間の腹膜細胞による刺激されたスーパーオキシド生成(SO prod.)に対するcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチド治療の効果を示す図である。無菌性腹膜炎のマウスにおける、腹膜細胞による、刺激されたスーパーオキシド生成。
【図18B】無菌性腹膜炎の間の腹膜細胞による刺激されたスーパーオキシド生成(SO prod.)に対するcPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチド治療の効果を示す図である。無菌性腹膜炎で、アンチセンスオリゴヌクレオチドで治療されたマウスにおける、腹膜細胞による刺激されたスーパーオキシド生成。各群5個体のマウスからの平均±SEM。T.=時間、h=時間。
【図19A】cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドカクテル治療によって低減した腹膜LTBレベルを示す図である。無菌性腹膜炎マウスの腹膜におけるLTBレベル。
【図19B】cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドカクテル治療によって低減した腹膜LTBレベルを示す図である。カクテルで治療した無菌性腹膜炎マウスの腹膜におけるLTBレベル。各群5個体のマウスからの平均±SEM。T.=時間、h=時間。
【図20A】cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドカクテル治療によって低減した腹膜好中球数を示す図である。無菌性腹膜炎マウスの腹膜における好中球数(Neu No)。
【図20B】cPLAアンチセンスPPSオリゴヌクレオチドカクテル治療によって低減した腹膜好中球数を示す図である。カクテルで治療した無菌性腹膜炎マウスの腹膜における好中球数(Neu No)。各群5個体のマウスからの平均±SEM。T.=時間、h=時間。
【図21A】注射の24時間後の腹膜血液細胞におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの蓄積を示す図である。治療していない腹膜血液細胞。
【図21B】注射の24時間後の腹膜血液細胞におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの蓄積を示す図である。アンチセンス(as)オリゴヌクレオチドで治療した腹膜血液細胞。上のパネル:光学顕微鏡。下のパネル:共焦点顕微鏡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞質ホスホリパーゼA(cPLA)mRNA配列のオープンリーディングフレーム(ORF)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、その機能的類似体及び、その誘導体又はその断片であって、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの相補性は、前記ORFのヌクレオチド145〜400の間の領域内にあり、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、cPLAタンパク質の発現を阻害できる、
アンチセンスオリゴヌクレオチド、その機能的類似体及び、その誘導体又はその断片。
【請求項2】
NADPHオキシダーゼ活性も阻害できる、請求項1に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
細胞質ホスホリパーゼA(cPLA)mRNA配列のオープンリーディングフレームの5’領域に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、その機能的類似体及び、その誘導体又はその断片であって、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6のいずれか1つによって表される配列を有する、
アンチセンスオリゴヌクレオチド、その機能的類似体及び、その誘導体又はその断片。
【請求項4】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、15〜30までのヌクレオチド長であり、好ましくは、17〜21ヌクレオチド長である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドの最初の3ヌクレオチド及び/又は最後の3ヌクレオチドは、ホスホロチオエート修飾されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドの10番目のヌクレオチドは、ホスホロチオエート修飾されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドの最初の3ヌクレオチド及び/又は最後の3ヌクレオチドは、2−O−メチル化されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
スーパーオキシドの生成及び放出を阻害するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
前記阻害は、好中球、単球及びマクロファージのうちのいずれか1種、好ましくは、好中球で起こる、請求項8に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
Aβプラーク蓄積と関連している状態の治療のための、請求項9に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
アルツハイマー病又はパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脳虚血損傷及び外傷性頭部損傷からなる群から選択される中枢神経系(CNS)関連疾患の治療及び/又は予防のための、請求項8〜10のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
cPLA発現と関連している炎症過程の阻害薬として用いる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
炎症状態の治療及び/又は予防に用いる、請求項12に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
前記状態は、関節リウマチ、成人性呼吸窮迫症候群(ARDS)、喘息、鼻炎、特発性肺繊維症、腹膜炎、心血管炎症、心筋虚血、再潅流損傷、アテローム性動脈硬化症、敗血症、外傷、II型糖尿病、網膜症、乾癬、胃腸炎症、硬変及び炎症性腸疾患のうちのいずれか1種である、請求項13に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項15】
ミクログリア細胞が活性化され、反応性酸素種(ROS)及び/又は炎症誘発性メディエーターを放出する状態の治療及び/又は予防に用いる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項16】
前記状態は、炎症、感染及び虚血性疾患からなる群から選択される、請求項15に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
蛍光標識手段、放射性標識手段、金属粒子標識手段及び任意の適した標識手段のうちの1種で場合によって標識された、請求項1〜16のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の少なくとも1種のアンチセンスオリゴヌクレオチドを有効薬剤として含む医薬組成物。
【請求項19】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の少なくとも2種のアンチセンスオリゴヌクレオチドを組合せたものを有効薬剤として含む医薬組成物。
【請求項20】
前記組合せたものは、以下のオリゴヌクレオチドを含む、請求項19に記載の医薬組成物:配列番号1と配列番号3、又は配列番号1と配列番号2、又は配列番号1と配列番号6、又は配列番号1と配列番号2及び配列番号3、又は配列番号4と配列番号6、又は配列番号2と配列番号6、又は配列番号2と配列番号3、又は配列番号3と配列番号6。
【請求項21】
医学的に用いる、請求項18〜20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
cPLA発現及び/又は食細胞NADPHオキシダーゼによるフリーラジカル放出、と関連している炎症過程の治療のための、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
炎症状態の治療のための、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記状態は、関節リウマチ、ARDS、喘息、鼻炎、特発性肺繊維症、腹膜炎、心血管炎症、心筋虚血、再潅流損傷、アテローム性動脈硬化症、敗血症、外傷、II型糖尿病、網膜症、乾癬、胃腸炎症、硬変及び炎症性腸疾患のうちの1種である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
ミクログリア細胞が活性化され、反応性酸素種(ROS)及び/又は炎症誘発性メディエーターを放出する状態の治療及び/又は予防のための、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記状態は、炎症、感染及び虚血性疾患からなる群から選択される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
Aβプラーク蓄積と関連している状態の治療のための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の少なくとも1種のアンチセンスオリゴヌクレオチドを有効薬剤として含む医薬組成物。
【請求項28】
アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)並びに脳虚血性損傷及び外傷性頭部損傷からなる群から選択されるCNS関連疾患の治療及び/又は予防のための、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
バッファー、添加剤、安定剤、希釈剤及び/又は賦形剤を場合によってさらに含む、請求項1〜28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記状態は、関節リウマチ、ARDS、喘息、鼻炎、特発性肺繊維症、腹膜炎、心血管炎症、心筋虚血、再潅流損傷、アテローム性動脈硬化症、敗血症、外傷、II型糖尿病、網膜症、乾癬、胃腸炎症、硬変及び炎症性腸疾患のうちのいずれか1種である、
炎症状態の治療及び/又は予防に用いる医薬組成物の調製のための、請求項1〜7及び12〜14のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項31】
ミクログリア細胞が活性化され、反応性酸素種(ROS)及び/又は炎症誘発性メディエーターを放出する状態であって、炎症、感染及び虚血性疾患からなる群から選択される前記状態、の治療及び/又は予防に用いる医薬組成物の調製のための、請求項1〜7、15及び16のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項32】
cPLA活性化を伴う状態の治療のための、請求項1〜7及び12〜14のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項33】
Aβプラーク蓄積と関連している状態の治療及び/又は予防のための、請求項1〜11のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項34】
神経変性疾患、特に、アルツハイマー病及びパーキンソン病、の治療及び/又は予防のための、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
請求項1〜7及び12〜14のいずれか一項に記載の少なくとも1種のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物の治療上有効量を、必要とする被験体に投与することを含む、cPLA活性化を伴う状態の治療方法。
【請求項36】
請求項1〜7及び12〜14のいずれか一項に記載の少なくとも1種のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物の治療上有効量を、必要とする被験体に投与することを含む、炎症状態の治療方法。
【請求項37】
前記炎症状態は、関節リウマチ、ARDS、喘息、鼻炎、特発性肺繊維症、腹膜炎、心血管炎症、心筋虚血、再潅流損傷、アテローム性動脈硬化症、敗血症、外傷、II型糖尿病、網膜症、乾癬、胃腸炎症、硬変及び炎症性腸疾患のうちのいずれか1種である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ミクログリア細胞が活性化され、反応性酸素種(ROS)及び/又は炎症誘発性メディエーターを放出する状態の治療及び/又は予防のための方法であって、
請求項1〜7、15及び16のいずれか一項に記載の少なくとも1種のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物の治療上有効量を、必要とする被験体に投与することを含む方法。
【請求項39】
前記状態が炎症、感染及び虚血性疾患からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の少なくとも1種のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物の治療上有効量を、必要とする被験体に投与することを含む、Aβプラーク蓄積と関連している状態の治療方法。
【請求項41】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の少なくとも1種のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物の治療上有効量を、必要とする被験体に投与することを含む、神経変性疾患、好ましくは、アルツハイマー病及びパーキンソン病、の治療方法。
【請求項42】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物を、適した時間、細胞と接触させることを含む、cPLA発現を阻害するin vivo又はin vitroの方法。
【請求項43】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はそれを含む組成物を、適した時間、細胞と接触させることを含む、cPLA活性を阻害するin vivo又はin vitroの方法。
【請求項44】
前記細胞は、食細胞である、請求項42及び43に記載の方法。

【図1】
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【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【公表番号】特表2007−533318(P2007−533318A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509055(P2007−509055)
【出願日】平成17年4月17日(2005.4.17)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000399
【国際公開番号】WO2005/101968
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(506295931)モル リサーチ アプリケーションズ リミテッド (2)
【出願人】(505307770)ベン−グリオン ユニヴァーシティー オブ ザ ネゲヴ リサーチ アンド デヴェロップメント オーソリティー (2)
【Fターム(参考)】