ePTFEの製造方法及び血管グラフトのようなePTFEを備える構造
【課題】ePTFEの製造方法及び血管グラフトのようなePTFEを備える構造を提供すること。
【解決手段】血管グラフトを製造する方法は、未焼結PTFE未処理チューブ押出物(12)を準備して、その後第1のノード及びその中にフィブリル微細構造を生じるために最初の未焼結押出物(17)を膨張することを含む。この後に、押出物が部分的焼結されるように十分な時間、その温度を上げるために押出物の加熱を行う。部分的に焼結された押出物は、血管グラフトを製造するために続いて膨張される(25)。膨張は、血管グラフト中に第2のノード及びフィブリル微細構造を生じる。この方法に従って製造されるePTFEは、様々な構造(例えばチューブ構造、繊維構造及びシート構造)に加工される。
【解決手段】血管グラフトを製造する方法は、未焼結PTFE未処理チューブ押出物(12)を準備して、その後第1のノード及びその中にフィブリル微細構造を生じるために最初の未焼結押出物(17)を膨張することを含む。この後に、押出物が部分的焼結されるように十分な時間、その温度を上げるために押出物の加熱を行う。部分的に焼結された押出物は、血管グラフトを製造するために続いて膨張される(25)。膨張は、血管グラフト中に第2のノード及びフィブリル微細構造を生じる。この方法に従って製造されるePTFEは、様々な構造(例えばチューブ構造、繊維構造及びシート構造)に加工される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は膨張されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を備える構造の製造方法に関する。特に本発明は、PTFE構造が膨張され、部分的に焼結され、さらに膨張されるような方法に関する。本発明はさらに、本方法に従って作られたePTFEを備える構造(例えば血管グラフトのePTFEチューブ構造)に関する。
【背景技術】
【0002】
埋め込み可能な腔内プロテーゼ(特に血管グラフト)としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の押し出しチューブ構造を用いることは、周知である。PTFEは特に、優れた生体適合性を示すので埋め込み可能なプロテーゼとして好適である。PTFEチューブ構造は、PTFEが低血栓形成性を示すので、血管の交換又は修復の際の血管グラフトとして用いられる場合がある。血管の用途では、グラフトは膨張されたポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)チューブ構造から製造される。これらのチューブ構造は、ひとたび血管系に埋め込まれると、自然な組織内成長及び細胞創傷を許容する微小孔微細構造を有する。これは、長期治癒及びグラフトの開通性に効果をもたらす。ePTFEで形成されるグラフトは、延伸フィブリルで相互連結した空間を設けたノードによって形成される繊維状態を備える。
【0003】
押し出されたPTFE未処理チューブ構造からePTFEチューブ構造を形成することは公知である。かかる未処理チューブ構造は、未処理当初の長手寸法に対して実質的により大きい長手寸法を備えるePTFEチューブ構造内へ長手方向に膨張させることができる。かかる長手方向の膨張は、ePTFEチューブ構造の焼結によって固定されてもよいノード及びフィブリル微細構造を構築する。焼結ePTFEチューブ構造はその後さらに、ePTFEチューブ構造の寸法ならびに他の形質又は特性をさらに変えるために膨張される場合がある。例えば、焼結ePTFEチューブ構造はその直径を増大するために半径方向に膨張される場合がある。
【0004】
押し出されたPTFE未処理チューブ構造を膨張する周知な方法の1つの短所は、かかる方法が典型的に第1に長手方向に膨張し、第2に完全に焼結する未処理のチューブ構造を与えることである。かかる完全焼結したePTFEチューブ構造のさらなる膨張は、例えばその半径方向の膨張によって、困難かもしれない。例えば、完全焼結したePTFEチューブ構造の半径方向の膨張は典型的に、かかる膨張の間それに対する損傷を防止するためにチューブ構造に対する半径方向の力の非常に慎重な負荷が必要とされる。具体的には、非常に厳密な力規模及びその負荷率は、例えばチューブ構造の引裂を防止するために必要とされ得る。力負荷及びあるいは他の条件のかかる厳密な制御は、かかる更なる膨張を困難にする。かかる更なる半径方向膨張の困難性は、かかる膨張増大の規模につれて増す。完全焼結されたePTFEチューブ構造の更なる膨張が適当に行われない場合、その後焼結したePTFEチューブ構造の大部分はかかる更なる膨張によって損傷され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、長手方向に膨張したePTFEチューブ構造の更なる膨張を容易にするために血管グラフトのPTFEチューブ構造の製造方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のePTFE構造の製造方法は、本明細書中にPTFE押出物として言及した押出PTFE構造を提供することを含む。押出PTFE構造は未焼結であり、それからまず、第1のノード及びその中にフィブリル微細構造を生じるために未焼結PTFE押出物を最初に膨張する。この後に、ePTFE構造が部分的に焼結されるのに十分な期間、その温度を上げるために、最初に膨張されたePTFE構造を加熱する。部分的に焼結したePTFE構造は次に膨張される中間体を構成する。膨張はePTFE構造中に第2のノード及びフィブリル微細構造を生じる。本方法はPTFE未処理チューブ押出物からePTFEチューブ構造を製造するために用いられ得る。また、本方法は他のePTFE構造(例えば患者の体に埋め込まれてもよいステントカバー)を製造するために用いられ得る。加えて、本方法はePTFE材のシート、プレート及びロッド製造するために用いられ得る。さらに、本方法は繊維物質(例えば織物、編物又は組物)中に組み込まれてもよいePTFEモノフィラメントを製造するために用いられ得る。これらのシート、プレート及び繊維物質の各々は、患者の体に又は体内に埋め込まれて得る。
【0007】
最初に膨張されたePTFE構造の部分的な焼結は、次の膨張を促進する。例えば、長手方向に膨張されたePTFEチューブ構造の部分的な焼結は、次の半径方向の膨張を促進する。これは、最初の長手方向の膨張及び部分的な焼結から生じるノード及びフィブリル微細構造が変形可能で、かかる変形の間、引裂に対する増大した抵抗などを有するためである。これは、かかる次の半径方向の膨張によって、より高い有用な製品収量を与える。
【0008】
あらかじめ膨張されたePTFEチューブ構造の部分的な焼結は、相当量の次の膨張にとって特に好都合である。対照的に、膨張したePTFEチューブ構造が完全に焼結され、その後続いて膨張された場合、チューブ構造中でその後相当量の引裂などが予想できる。したがって、長手方向に膨張されたePTFEチューブ構造の部分的な焼結は、半径方向の膨張が実質的にチューブ構造の半径方向の寸法を増大することが望まれる場合、続いて半径方向の膨張を促進する。また、半径方向の膨張が、様々な半径方向寸法を有するその部分間にチューブ構造のテーパ部分を生じることが望まれる場合、部分的に焼結された長手方向に膨張したePTFEチューブ構造の半径方向の膨張は促進される。加えて、二股ePTFEチューブ構造の構成成分(例えば主要部又は1つ以上のその分枝を構成するePTFEチューブ構造)は、二股ePTFEチューブ構造に組み立てられる前に長手方向に膨張されてもよいし、次に半径方向に膨張されてもよい。かかる次の半径方向の膨張は、構成成分が長手方向の膨張後かつその半径方向の膨張前に部分的に焼結されるときに促進される。
【0009】
本発明の方法の別の実施形態は、焼結されず、未焼結押出物を長手方向に膨張され、未焼結で長手方向に膨張された押出物を半径方向に膨張されるPTFE未処理チューブ押出物を提供することを含む。部分的に又は完全に焼結されたePTFEチューブ構造と比較して、長手方向に膨張された未焼結チューブ構造の半径方向膨張は、高い収量結果をももたらす。それは長手方向に膨張された未焼結チューブ構造が変形可能であり、かかる変形の間、引裂などに対する更なる耐性を有するからである。
【0010】
本発明の方法に従って製造されるePTFEは、様々な構造(例えば前記のチューブ構造)に加工され得る。加えて、ePTFEは、繊維物質に組み込まれ得る繊維構造内に加工され得る。また、ePTFEはシート構造に加工され得る。さらに、繊維物質及びシート構造はそれぞれのチューブ構造内に形成され得る。
【0011】
本発明のこれら特徴とそれ以外の特徴は、添付図面を参照して、本発明の具体的な実施形態の下記の説明からより完全に理解されるであろう。
【0012】
より特定すれば、本願発明は以下の項目に関し得る。
(項目1)
ePTFE構造を製造する方法であって、未焼結の膨張してないPTFE押出物を準備する準備工程と、第1のノード及びその中にフィブリル微細構造を有するePTFE構造を生じるために未焼結押出物を最初に膨張する第1の膨張工程と、ePTFE構造の少なくとも一部が部分的に焼結されるように、十分な継続時間その温度を上げるためにePTFE構造を加熱する加熱工程とを含み、上記加熱工程は、第1の膨張の少なくとも一部が保持されるePTFE構造を与え、保持される第1の膨張の少なくとも一部でePTFE構造部分が完全に焼結されないように温度及び継続時間を制限することを提供する方法。
(項目2)
膨張していないPTFE押出物は膨張していないPTFE未処理チューブ押出物によって形成され、上記準備工程は膨張していないPTFE未処理チューブ押出物を準備する工程を含んでなり、上記第1の膨張工程は膨張していない未処理チューブ押出物からePTFEチューブ構造を生じる、項目1に記載の方法。
(項目3)
ePTFEチューブ構造の上記加熱が、およそ316℃(600゜F)〜およそ371℃(700゜F)間でその温度を上昇する工程を含んでなり、上記上昇する工程がおよそ1分間〜およそ1時間の継続時間である、項目2に記載の方法。
(項目4)
第2のノード及びその中にフィブリル微細構造を生じるために、部分的に焼結されたePTFE構造を次に膨張する第2の膨張工程をさらに含んでなり、上記第2の膨張工程は上記加熱工程後である、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記第1の膨張工程が、PTFE未処理チューブ押出物の長さをおよそ200%〜およそ6000%増大する、項目2に記載の方法。
(項目6)
上記第2の膨張工程が、部分的焼結ePTFE構造を横断方向に膨張する横断方向膨張工程を含んでなる、項目4に記載の方法。
(項目7)
PTFE押出物がPTFE未処理チューブ押出物によって形成され、上記準備工程がPTFE未処理チューブ押出物を準備する工程を含んでなり、上記第1の膨張工程がePTFEチューブ構造を生じるためのPTFE未処理チューブ押出物を長手方向へ膨張する工程によって定められ、上記横断方向膨張工程が部分的焼結されたePTFEチューブ構造を半径方向に膨張する半径方向膨張工程によって定められる、項目6に記載の方法。
(項目8)
上記半径方向膨張工程が、部分的に焼結されたePTFEチューブ構造の半径方向の寸法をおよそ10%〜600%増大する、項目7に記載の方法。
(項目9)
ePTFE構造の上記加熱が、その半固定された微細構造をもたらす、項目1に記載の方法。
(項目10)
さらに、およそ500゜F(260℃)の温度まで未焼結PTFE未処理チューブ押出物を最初に加熱する第1の加熱工程を含んでなり、上記第1の加熱工程が上記第1の膨張工程前である、項目2に記載の方法。
(項目11)
さらに、繊維物質で形成されたチューブ構造にePTFE構造を取り付ける取付工程を含んでなり、上記取付工程は上記加熱工程後であり、ePTFE構造が繊維物質で形成されたチューブ構造と同軸関係にある、項目2に記載の方法。
(項目12)
ePTFE構造を製造する方法であって、未焼結である膨張されてないPTFE押出物を供給する工程と、未焼結ePTFE構造を生じるために未焼結押出物を長手方向に膨張する長手方向膨張工程と、未焼結ePTFE構造を横断方向に膨張する横断方向膨張工程と、を含んでなる方法。
(項目13)
さらに、ePTFE構造を焼結する工程を含んでなり、上記焼結する工程が上記長手方向及び横断方向膨張工程後である、項目12に記載の方法。
(項目14)
PTFE押出物がPTFE未処理チューブ押出物によって形成され、上記長手方向膨張工程がePTFEチューブ構造を形成するためのPTFE未処理チューブ押出物を長手方向に膨張する工程によって定められ、上記横断方向膨張工程がePTFEチューブ構造を半径方向に膨張する工程によって定められる、項目12に記載の方法。
(項目15)
完全焼結及び完全再結晶化された微細構造の結晶微細構造より少ないある程度の結晶微細構造を有するPTFE構造。
(項目16)
上記PTFE構造がある程度の結晶構造を有する微細構造を含んでなり、その結晶構造が完全焼結及び完全再結晶化された微細構造の約10%〜約90%である、項目15に記載のPTFE構造。
(項目17)
微細構造の最大結晶化未満であるとDSCによって測定されたとき、ある程度の結晶を有する上記微細構造を含んでなるPTFE構造。
(項目18)
上記PTFE構造がPTFEチューブ構造を含んでなる、項目17に記載のPTFE構造。
(項目19)
制御された結晶性高分子微細構造を有するPTFE構造を形成する方法であって、PTFE押出物を準備する工程と、PTFE押出物を完全に焼結するには不十分であるが部分的に焼結するのに十分な時間及び温度でPTFE押出物の少なくとも一部を加熱する工程と、部分的に結晶であり、PTFE押出物を冷却し、部分的に焼結状態に相関する微細構造を組み立てさせる工程と、を含んでなる方法。
(項目20)
さらに、DSCによる微細構造の結晶含量のデータπマイニング分析する工程と、PTFE押出物のPTFEの微細構造を完全に結晶化するためにDSCにかけて測定した結晶含量を比較する工程と、を含んでなる、項目19に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の血管グラフトを製造する方法を示すブロック図である。その方法は、最初に未焼結押出物を膨張し、部分的に押出物を焼結し、続いて押出物を膨張することを含む。
【図2】長手方向に膨張させたePTFEチューブの顕微鏡写真である。
【図3】PTFEの部分的な焼結の温度及び対応時間分を示すグラフである。
【図4】未焼結PTFE、部分的未焼結PTFE及び完全未焼結PTFEの炭素原子の回転運動範囲の略図である。
【図5】長手方向に膨張し、部分的に焼結し、半径方向に膨張させたePTFEチューブの顕微鏡写真である。
【図6】図1の方法の他の実施形態を示すブロック図である。その他の実施形態は、未焼結PTFE未処理チューブ押出物の半径方向の膨張に伴う長手方向の膨張を含む。
【図7】本発明の血管グラフトの斜視図である。その血管グラフトはePTFEチューブ構造及びその中にステントを備える。そのePTFEチューブ構造は本発明の方法に従って製造される。
【図8】ePTFEチューブ構造及びステントを示す図7の8―8線によって示される平面の断面図である。
【図9】本発明の血管グラフトの長手方向断面図である。その血管グラフトは繊維物質で形成されたチューブ内にePTFEチューブ構造を備える。そのチューブ構造の一方又は両方は本発明の方法に従って製造される。
【図10】チューブ構造間の結合材を示す図9の囲い(10)に含まれる部分の拡大図である。
【図11】本発明の繊維物質の斜視図である。その繊維物質は、本発明の方法に従って製造された1つ以上のePTFE繊維構造を組み込んでいる。
【図12】本発明の血管グラフトの斜視図である。その血管グラフトは、図11の繊維物質から形成されたePTFEチューブ構造を含む。
【図13】本発明のePTFEシート構造の斜視図である。そのePTFEシート構造は、本発明の方法に従って製造される。
【図14】本発明の血管グラフトの斜視図である。その血管グラフトは図13のシート構造から形成されたePTFEチューブ構造を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例)
対応する参照符号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を示す。
【0015】
図面、特に図1を参照しながら、ePTFE構造を製造する方法(10)をそのブロック図に示す。方法(10)に従って製造するePTFE構造は、血管グラフトである。方法(10)の他の実施形態は、他のePTFE構造(例えばステントカバー、シート、プレート、ロッド及びモノフィラメント)を製造するために用いられ得る。血管グラフトを製造する方法(10)は、未焼結(12)PTFE未処理チューブ押出物及び予熱押出物(15)を提供することを含む。例えば、予熱(15)はおよそ室温〜500゜F(260℃)の温度であってもよい。
【0016】
予熱した未焼結PTFE未処理チューブ押出物は、その加熱(17)を続けることで長手方向に膨張する。連続加熱は、最高およそ600゜F(316℃)(例えば500゜(260℃)F)の温度であってもよい。膨張したPTFE未処理チューブ押出物は、本明細書においてePTFEチューブ構造と称する。長手方向の膨張(17)は、押出物の長手方向寸法をおよそ10%〜10000%増大し得る。好ましい実施形態では、長手方向寸法をおよそ200%〜6000%で増大し得る。かかる膨張率はおよそ1〜100cm/秒(例えば35cm/秒)であってもよい。連続加熱(17)による長手方向の膨張は、チューブ構造中に第1のノード及びフィブリル微細構造を生じる。チューブ構造は、ePTFE繊維の長手方向配向及びノードの半径方向配向によって特徴づけられる。その実施例を図2に示す。
【0017】
図2は、予熱し、同時に長手方向に膨張し、加熱し、次に完全に焼結した、ePTFEチューブ構造の内面の顕微鏡写真である。長手方向の膨張前、PTFEチューブ構造の内径は僅かに11mmを超えていた。PTFEチューブ構造の内径は、長手方向の膨張によって減少した。ePTFEチューブ構造の微細構造は完全な焼結によって固定化したが、それ以外ではその結果として実質的に影響を受けなかった。したがって、図2の顕微鏡写真は、長手方向の膨張及びその加熱(17)後のePTFEチューブ構造の微細構造を示す。
【0018】
長手方向に膨張したePTFEチューブ構造を少なくとも最初の長手方向の膨張(17)部分が構造中に保持されるか固定されるように、チューブ構造の温度を上げる十分な時間、加熱することによって部分的に焼結する(20)。部分的な焼結は、少なくとも最初の長手方向膨張(17)部分が保持されるePTFEチューブ構造部分を完全には焼結しないように、温度と継続時間の制限をさらに与える。好ましい実施形態では、PTFEチューブ構造は最初の長手方向膨張(17)と部分的焼結(20)の間、同じ電気炉中にとどまる。
【0019】
部分的焼結(20)を与えうる温度及び対応時間の実施例を図3に示す。部分的焼結(20)の温度範囲は、およそ600゜F(316℃)又は、それ以下〜700゜F(371℃)である。部分的焼結(20)の継続時間の範囲は、およそ1分〜1時間である。図3は、部分的焼結(20)が相対的に低い温度で相対的に長い継続時間又は相対的に高い温度で相対的に短い継続時間、ePTFEチューブ構造をさらすことで与えられ得ることを示す。図3はまた、部分的焼結(20)が完全焼結の起こる温度を上回る温度で起こり得ることを示す。かかる温度が与えられる継続時間は十分に短い。完全焼結は、およそ652゜F(344℃)〜660゜F(349℃)の温度で起こる。全てのePTFEチューブ構造を部分的に焼結することは可能である。あるいは、部分的焼結を構造の選択部分(例えば長手方向断面)に適用してもよい。
【0020】
部分的焼結(20)は、ePTFEチューブ構造の半固定した微細構造を生じる。図4は、未焼結、部分的焼結、及び完全焼結PTFE物質間の分子結合によって形成した炭素原子の可動域の略図を示す。特定の理論によって拘束されることを望まず、部分的焼結は未焼結PTFE物質と比較して隣接原子の小さい分子旋光度を与えるが、完全焼結PTFE物質と比較してより大きな分子旋光度範囲を与えると考えられる。図4に図示の可動域は、隣接する炭素原子間の三次元相対変位に関する。
【0021】
「部分的焼結」という用語は、ePTFE物質が完全焼結物質を生じるには不十分な時間及び温度の条件にさらしたことを意味する。「完全焼結」した物質は、ePTFE物質を冷却したときにポリマーが「完全に」結晶化するか、又は完全に結晶状態に戻るような時間及び温度の条件にさらしたことを意味する。この完全な結晶化は、「100%」結晶化する、又はその物質の達成可能な結晶化の最大量と考えられる。完全結晶化は、部分的焼結ePTFE物質から形成した結晶化を比較するための基準である。
【0022】
ePTFE物質を完全に焼結するために、十分な時間と温度の条件をポリマーの十分な分子配向させることでそこに作用できるようにすべきである。そうすると、冷却ができるときに実質的な結果として高度な結晶、すなわち完全な結晶化となる。高度な結晶形は、完全に微細構造を固定し、この物理的形態を封じる高度な物理的又は熱的なエネルギーを必要とする。対照的に、部分的焼結物質は部分的に結晶化されただけであり、このように固定構造(例えば結晶化度に相当する部分的な固定構造)をより小さい程度を有するだけである。
【0023】
完全な結晶化形では、結晶構造に起因する相対的な分子運動能を欠く。小さい結晶構造は、分子レベルでより高い程度の相対運動を可能とする。
【0024】
ePTFE物質を適当な時間及び温度条件にさらすことで至った結晶化度は、X線回折及び示差走査熱量測定(DSC)を含む種々の方法で測定できる。DSCは、温度の関数として物質の熱エネルギー吸収又は熱容量を測定する。ポリマーの結晶形から溶解形への温度遷移及び変化を経るのに要した熱エネルギー量と相関する吸収ピークが測定された。最大結晶化構造を有する完全焼結物質は、部分的焼結で達した結晶化度測定のための基準を与える。部分的焼結の時間及び温度のパラメータは、一般的に完全焼結に必要なパラメータより少ないので、ポリマーの完全な分子配向の機会は少なく、一旦ポリマーが冷却されると付随して結晶形態は少ない。部分的焼結ePTFE構造は、結晶化構造の程度が、完全焼結され、完全再結晶された微細構造の約10%〜90%の微細構造を備えていてもよい。
【0025】
このように本発明に係る部分的焼結ePTFE構造は、結晶構造が少なく、ePTFE物質の裂ける可能性が少ないので、さらに膨張できる。このことにより、ePTFE構造が完全焼結され、完全結晶化されたならば、その後更なる膨張を生じるために小さい力又はエネルギーを要するであろう。
【0026】
部分的焼結(20)の後に、ePTFEチューブ構造を再び加熱する(22)。加熱(22)に続いて、ePTFEチューブ構造をその寸法を増大させるためにその加熱し続ける(25)ことによって半径方向に膨張させる。半径方向の膨張(25)は、ePTFEチューブ構造の半径方向の寸法をおよそ10%〜600%まで増大し得る。また、半径方向膨張(25)は、ePTFEチューブ構造の内径をおよそ1mm〜36mmまで増大する結果となってもよい。ePTFEチューブ構造の半径方向膨張(25)は、二次的なノード及びその中にフィブリル微細構造を生じる。その例を図5に示す。
【0027】
図5は、長手方向膨張(例えば図1のステップ(17)による)、部分的焼結(例えば図1のステップ(20)による)及び半径方向膨張(例えば図1のステップ(25)による)したePTFEチューブ構造の外面の顕微鏡写真である。半径方向膨張の前、PTFEチューブ構造の内径は、およそ11mmであった。PTFEチューブ構造の内径は、半径方向膨張によっておよそ36mmに増大した。半径方向膨張(25)の後、ePTFEチューブ構造を、その微細構造を部分的に固定するために部分的焼結する(27)。あるいは半径方向膨張(25)の後、ePTFEチューブ構造を、その微細構造を完全に固定するために完全に焼結することは可能である。
【0028】
部分的焼結(27)の後、又は場合によっては完全焼結後、ePTFEチューブ構造はステントがチューブ構造(30)内にあるようにステントを有し得る。アセンブリ(30)は、ePTFEチューブ構造内にステントの挿入を含み得る。
【0029】
あるいは、部分的焼結(27)又は場合によっては完全焼結の後、続いて繊維物質でできたチューブ構造内にePTFEチューブ構造を構成し得る。好ましい実施形態では、チューブ構造は互いに同軸関係であり、結合し合っている。チューブ構造が互いに同軸関係であり、そして結合し合うように繊維物質でできたチューブ構造がePTFEチューブ構造内にある、他の構成が可能である。
【0030】
図1で例示する方法(10)の工程の変形例は、本発明の範囲内で可能である。例えば、部分的焼結(20)をPTFE未処理チューブ押出物の半径方向膨張より前に行い、その後長手方向膨張を行うことが可能である。膨張していないPTFE未処理チューブ押出物の半径方向膨張は、ePTFE繊維の半径方向の配向及びノードの長手方向の配向によって特徴づけられる第1のノード及びフィブリル微細構造を生じる。また、部分的焼結(20)は、更なる膨張又は他の処理工程より前でもよいし、後でもよい。
【0031】
方法(10a)の別の実施形態を図6に示す。図6に例示した工程は、接尾辞”a”の付加によって、図1に記載の図6と同じ参照番号を有する図1の工程に対応する。図6に示すように、長手方向の膨張及び加熱(17a)の後に、未焼結ePTFEチューブ構造の加熱(35)、半径方向膨張及びその加熱(37)を行う。好ましい実施形態では、チューブ構造を長手方向膨張及びその加熱(17a)の間第1の電気炉に入れ、続いてチューブ構造の半径方向膨張と加熱(37)のために第2の電気炉に移す。チューブ構造の半径方向膨張を電気炉の外で行うことも可能である。他の実施形態では、図6の工程(37)と類似の半径方向膨張及び加熱を、図6の工程(17a)と類似の長手方向膨張及び加熱の前に行うことが可能である。したがって、方法(10a)は、未焼結PTFE未処理チューブ押出物の長手方向及び半径方向の膨張を与える。
【0032】
方法(10、10a)は、血管グラフトのいくつかの実施形態の製品を提供する。例えば、一体的なePTFEチューブ構造40(例えば、図7に示される)を含む血管グラフトを(10、10a)の方法に従って製造してもよい。ePTFEチューブ構造(40)をステント(42)と結合して用いてもよい。図7及び8に示すように、ステント(42)はチューブ構造(40)内で固定されている。
【0033】
他の実施形態では、ePTFEチューブ構造(45)をそれと同軸関係の繊維物質で形成される第2のチューブ構造(47)に取り付け得る。図9に示すように、ePTFEチューブ構造(45)は、第2のチューブ構造(47)内にあってもよい。ePTFEチューブ構造(45)は、第2のチューブ構造(47)に対するアセンブリの前に、未焼結、部分的焼結、又は完全焼結であってもよい。概して、図10に示すように、ePTFEチューブ構造(45)及び第2のチューブ構造(47)は、接着剤(50)によって、ePTFEチューブ構造の外部表面が第2のチューブ構造の内部表面に結合されることによって互いに結合される。
【0034】
好ましい実施形態では、接着剤(50)はCorethane(商標)接着剤である。接着剤(50)は、シーラント材を含んでもよい。接着剤(50)は、吹付けによってチューブ構造(45、47)に塗布され得る。例えば、ボンディング材又はシーラントは、その長手方向及び半径方向膨張の後、ePTFEチューブ構造(45)の外部表面に吹付けられ得る。さらに他の実施形態では、第2のチューブ構造(47)は、それに対して同軸関係のePTFEチューブ構造(45)内にあってもよいし、チューブ構造が結合しあってもよい。
【0035】
ePTFEチューブ構造(45)及び第2のチューブ構造(47)のアセンブリに関連する互いに同軸関係の結合し合ったチューブ構造の実施形態は、米国特許出願第US2003/0204241号に開示される。この文献は、援用によって本明細書の一部をなす。
【0036】
図10に示すように、方法(10、10a)は、編物、織物又は組物のような繊維物質(55)に組み入れられ得る1つ以上のePTFEフィラメント(52)の製造を与える。繊維物質(55)のフィラメント(52)の一部又は全部を方法(10、10a)に従って製造してもよい。繊維物質(55)をその端が互いに接触するように筒構造に圧延してもよい。方向は筒構造の長手方向軸線に対して長手方向又はらせん方向であってもよい。図12に示すように、端は、繊維物質(55)がチューブ構造(57)を形成するように結合しあっている。図7及び8に示すように、チューブ構造(57)を単独で、又は、そのカバーとしてのステント(42)と組み合わせて用いてもよい。あるいは、チューブ構造(57)を図9及び10に示すチューブ構造(45、47)のいずれかとして用いてもよい。加えて、繊維材(55)を患者の体表面又は体内のインプラントとして用いるために、非円筒状外形(例えば、平面又はわずかに湾曲させる)を備えるように成形してもよい。
【0037】
図13に示すように、方法(10、10a)は、ePTFEシート構造(60)の製造を提供する。シート構造(60)は、不連続なフィラメント(52)によって形成される繊維物質(55)と比較すると、一体的な連続構造である。一般的に、シート構造(60)を繊維物質(55)のために本願明細書に記載したものと同じ方法で圧延し、チューブ構造(62)内に形成してもよい。図7及び8に示すように、チューブ構造(62)を単独で、又は、そのカバーとしてのステント(42)と組み合わせて用いてもよい。あるいは、図9及び10に示すように、チューブ構造(62)をチューブ構造(45、47)のいずれかとして用いてもよい。あるいは、シート構造(60)を患者の体表面又は体内のインプラントとして用いるために、非円筒状外形(例えば、平面又はわずかに湾曲させる)を備えるように成形してもよい。
【0038】
方法(10、10a)は、腹部動脈瘤及び大動脈動脈瘤の治療器具用に適当である血管グラフトの製造を提供する。かかる器具を「AAA器具」と称してもよい。方法(10,10a)に従って製造した血管グラフトはまた、グラフトが、患者の体の開口部を通して備え付けられる相当な大きさである医療処置用に適当である。かかる処置で使用する器具は「切開治療外科用製品」と称される場合がある。方法(10、10a)に従って製造した血管グラフトはまた、グラフトが、低侵襲手術でつくられてもよいように小開口を通して備え付けられる医療処置用に適当である。
【0039】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明したが、多数の変更を上述した本発明の技術的思想及び技術的範囲内でなすことができることが理解されるべきである。したがって、本発明は、開示された実施形態に限定されないが、請求項の文言によって容認される全範囲を有することが意図される。
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は膨張されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を備える構造の製造方法に関する。特に本発明は、PTFE構造が膨張され、部分的に焼結され、さらに膨張されるような方法に関する。本発明はさらに、本方法に従って作られたePTFEを備える構造(例えば血管グラフトのePTFEチューブ構造)に関する。
【背景技術】
【0002】
埋め込み可能な腔内プロテーゼ(特に血管グラフト)としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の押し出しチューブ構造を用いることは、周知である。PTFEは特に、優れた生体適合性を示すので埋め込み可能なプロテーゼとして好適である。PTFEチューブ構造は、PTFEが低血栓形成性を示すので、血管の交換又は修復の際の血管グラフトとして用いられる場合がある。血管の用途では、グラフトは膨張されたポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)チューブ構造から製造される。これらのチューブ構造は、ひとたび血管系に埋め込まれると、自然な組織内成長及び細胞創傷を許容する微小孔微細構造を有する。これは、長期治癒及びグラフトの開通性に効果をもたらす。ePTFEで形成されるグラフトは、延伸フィブリルで相互連結した空間を設けたノードによって形成される繊維状態を備える。
【0003】
押し出されたPTFE未処理チューブ構造からePTFEチューブ構造を形成することは公知である。かかる未処理チューブ構造は、未処理当初の長手寸法に対して実質的により大きい長手寸法を備えるePTFEチューブ構造内へ長手方向に膨張させることができる。かかる長手方向の膨張は、ePTFEチューブ構造の焼結によって固定されてもよいノード及びフィブリル微細構造を構築する。焼結ePTFEチューブ構造はその後さらに、ePTFEチューブ構造の寸法ならびに他の形質又は特性をさらに変えるために膨張される場合がある。例えば、焼結ePTFEチューブ構造はその直径を増大するために半径方向に膨張される場合がある。
【0004】
押し出されたPTFE未処理チューブ構造を膨張する周知な方法の1つの短所は、かかる方法が典型的に第1に長手方向に膨張し、第2に完全に焼結する未処理のチューブ構造を与えることである。かかる完全焼結したePTFEチューブ構造のさらなる膨張は、例えばその半径方向の膨張によって、困難かもしれない。例えば、完全焼結したePTFEチューブ構造の半径方向の膨張は典型的に、かかる膨張の間それに対する損傷を防止するためにチューブ構造に対する半径方向の力の非常に慎重な負荷が必要とされる。具体的には、非常に厳密な力規模及びその負荷率は、例えばチューブ構造の引裂を防止するために必要とされ得る。力負荷及びあるいは他の条件のかかる厳密な制御は、かかる更なる膨張を困難にする。かかる更なる半径方向膨張の困難性は、かかる膨張増大の規模につれて増す。完全焼結されたePTFEチューブ構造の更なる膨張が適当に行われない場合、その後焼結したePTFEチューブ構造の大部分はかかる更なる膨張によって損傷され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、長手方向に膨張したePTFEチューブ構造の更なる膨張を容易にするために血管グラフトのPTFEチューブ構造の製造方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のePTFE構造の製造方法は、本明細書中にPTFE押出物として言及した押出PTFE構造を提供することを含む。押出PTFE構造は未焼結であり、それからまず、第1のノード及びその中にフィブリル微細構造を生じるために未焼結PTFE押出物を最初に膨張する。この後に、ePTFE構造が部分的に焼結されるのに十分な期間、その温度を上げるために、最初に膨張されたePTFE構造を加熱する。部分的に焼結したePTFE構造は次に膨張される中間体を構成する。膨張はePTFE構造中に第2のノード及びフィブリル微細構造を生じる。本方法はPTFE未処理チューブ押出物からePTFEチューブ構造を製造するために用いられ得る。また、本方法は他のePTFE構造(例えば患者の体に埋め込まれてもよいステントカバー)を製造するために用いられ得る。加えて、本方法はePTFE材のシート、プレート及びロッド製造するために用いられ得る。さらに、本方法は繊維物質(例えば織物、編物又は組物)中に組み込まれてもよいePTFEモノフィラメントを製造するために用いられ得る。これらのシート、プレート及び繊維物質の各々は、患者の体に又は体内に埋め込まれて得る。
【0007】
最初に膨張されたePTFE構造の部分的な焼結は、次の膨張を促進する。例えば、長手方向に膨張されたePTFEチューブ構造の部分的な焼結は、次の半径方向の膨張を促進する。これは、最初の長手方向の膨張及び部分的な焼結から生じるノード及びフィブリル微細構造が変形可能で、かかる変形の間、引裂に対する増大した抵抗などを有するためである。これは、かかる次の半径方向の膨張によって、より高い有用な製品収量を与える。
【0008】
あらかじめ膨張されたePTFEチューブ構造の部分的な焼結は、相当量の次の膨張にとって特に好都合である。対照的に、膨張したePTFEチューブ構造が完全に焼結され、その後続いて膨張された場合、チューブ構造中でその後相当量の引裂などが予想できる。したがって、長手方向に膨張されたePTFEチューブ構造の部分的な焼結は、半径方向の膨張が実質的にチューブ構造の半径方向の寸法を増大することが望まれる場合、続いて半径方向の膨張を促進する。また、半径方向の膨張が、様々な半径方向寸法を有するその部分間にチューブ構造のテーパ部分を生じることが望まれる場合、部分的に焼結された長手方向に膨張したePTFEチューブ構造の半径方向の膨張は促進される。加えて、二股ePTFEチューブ構造の構成成分(例えば主要部又は1つ以上のその分枝を構成するePTFEチューブ構造)は、二股ePTFEチューブ構造に組み立てられる前に長手方向に膨張されてもよいし、次に半径方向に膨張されてもよい。かかる次の半径方向の膨張は、構成成分が長手方向の膨張後かつその半径方向の膨張前に部分的に焼結されるときに促進される。
【0009】
本発明の方法の別の実施形態は、焼結されず、未焼結押出物を長手方向に膨張され、未焼結で長手方向に膨張された押出物を半径方向に膨張されるPTFE未処理チューブ押出物を提供することを含む。部分的に又は完全に焼結されたePTFEチューブ構造と比較して、長手方向に膨張された未焼結チューブ構造の半径方向膨張は、高い収量結果をももたらす。それは長手方向に膨張された未焼結チューブ構造が変形可能であり、かかる変形の間、引裂などに対する更なる耐性を有するからである。
【0010】
本発明の方法に従って製造されるePTFEは、様々な構造(例えば前記のチューブ構造)に加工され得る。加えて、ePTFEは、繊維物質に組み込まれ得る繊維構造内に加工され得る。また、ePTFEはシート構造に加工され得る。さらに、繊維物質及びシート構造はそれぞれのチューブ構造内に形成され得る。
【0011】
本発明のこれら特徴とそれ以外の特徴は、添付図面を参照して、本発明の具体的な実施形態の下記の説明からより完全に理解されるであろう。
【0012】
より特定すれば、本願発明は以下の項目に関し得る。
(項目1)
ePTFE構造を製造する方法であって、未焼結の膨張してないPTFE押出物を準備する準備工程と、第1のノード及びその中にフィブリル微細構造を有するePTFE構造を生じるために未焼結押出物を最初に膨張する第1の膨張工程と、ePTFE構造の少なくとも一部が部分的に焼結されるように、十分な継続時間その温度を上げるためにePTFE構造を加熱する加熱工程とを含み、上記加熱工程は、第1の膨張の少なくとも一部が保持されるePTFE構造を与え、保持される第1の膨張の少なくとも一部でePTFE構造部分が完全に焼結されないように温度及び継続時間を制限することを提供する方法。
(項目2)
膨張していないPTFE押出物は膨張していないPTFE未処理チューブ押出物によって形成され、上記準備工程は膨張していないPTFE未処理チューブ押出物を準備する工程を含んでなり、上記第1の膨張工程は膨張していない未処理チューブ押出物からePTFEチューブ構造を生じる、項目1に記載の方法。
(項目3)
ePTFEチューブ構造の上記加熱が、およそ316℃(600゜F)〜およそ371℃(700゜F)間でその温度を上昇する工程を含んでなり、上記上昇する工程がおよそ1分間〜およそ1時間の継続時間である、項目2に記載の方法。
(項目4)
第2のノード及びその中にフィブリル微細構造を生じるために、部分的に焼結されたePTFE構造を次に膨張する第2の膨張工程をさらに含んでなり、上記第2の膨張工程は上記加熱工程後である、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記第1の膨張工程が、PTFE未処理チューブ押出物の長さをおよそ200%〜およそ6000%増大する、項目2に記載の方法。
(項目6)
上記第2の膨張工程が、部分的焼結ePTFE構造を横断方向に膨張する横断方向膨張工程を含んでなる、項目4に記載の方法。
(項目7)
PTFE押出物がPTFE未処理チューブ押出物によって形成され、上記準備工程がPTFE未処理チューブ押出物を準備する工程を含んでなり、上記第1の膨張工程がePTFEチューブ構造を生じるためのPTFE未処理チューブ押出物を長手方向へ膨張する工程によって定められ、上記横断方向膨張工程が部分的焼結されたePTFEチューブ構造を半径方向に膨張する半径方向膨張工程によって定められる、項目6に記載の方法。
(項目8)
上記半径方向膨張工程が、部分的に焼結されたePTFEチューブ構造の半径方向の寸法をおよそ10%〜600%増大する、項目7に記載の方法。
(項目9)
ePTFE構造の上記加熱が、その半固定された微細構造をもたらす、項目1に記載の方法。
(項目10)
さらに、およそ500゜F(260℃)の温度まで未焼結PTFE未処理チューブ押出物を最初に加熱する第1の加熱工程を含んでなり、上記第1の加熱工程が上記第1の膨張工程前である、項目2に記載の方法。
(項目11)
さらに、繊維物質で形成されたチューブ構造にePTFE構造を取り付ける取付工程を含んでなり、上記取付工程は上記加熱工程後であり、ePTFE構造が繊維物質で形成されたチューブ構造と同軸関係にある、項目2に記載の方法。
(項目12)
ePTFE構造を製造する方法であって、未焼結である膨張されてないPTFE押出物を供給する工程と、未焼結ePTFE構造を生じるために未焼結押出物を長手方向に膨張する長手方向膨張工程と、未焼結ePTFE構造を横断方向に膨張する横断方向膨張工程と、を含んでなる方法。
(項目13)
さらに、ePTFE構造を焼結する工程を含んでなり、上記焼結する工程が上記長手方向及び横断方向膨張工程後である、項目12に記載の方法。
(項目14)
PTFE押出物がPTFE未処理チューブ押出物によって形成され、上記長手方向膨張工程がePTFEチューブ構造を形成するためのPTFE未処理チューブ押出物を長手方向に膨張する工程によって定められ、上記横断方向膨張工程がePTFEチューブ構造を半径方向に膨張する工程によって定められる、項目12に記載の方法。
(項目15)
完全焼結及び完全再結晶化された微細構造の結晶微細構造より少ないある程度の結晶微細構造を有するPTFE構造。
(項目16)
上記PTFE構造がある程度の結晶構造を有する微細構造を含んでなり、その結晶構造が完全焼結及び完全再結晶化された微細構造の約10%〜約90%である、項目15に記載のPTFE構造。
(項目17)
微細構造の最大結晶化未満であるとDSCによって測定されたとき、ある程度の結晶を有する上記微細構造を含んでなるPTFE構造。
(項目18)
上記PTFE構造がPTFEチューブ構造を含んでなる、項目17に記載のPTFE構造。
(項目19)
制御された結晶性高分子微細構造を有するPTFE構造を形成する方法であって、PTFE押出物を準備する工程と、PTFE押出物を完全に焼結するには不十分であるが部分的に焼結するのに十分な時間及び温度でPTFE押出物の少なくとも一部を加熱する工程と、部分的に結晶であり、PTFE押出物を冷却し、部分的に焼結状態に相関する微細構造を組み立てさせる工程と、を含んでなる方法。
(項目20)
さらに、DSCによる微細構造の結晶含量のデータπマイニング分析する工程と、PTFE押出物のPTFEの微細構造を完全に結晶化するためにDSCにかけて測定した結晶含量を比較する工程と、を含んでなる、項目19に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の血管グラフトを製造する方法を示すブロック図である。その方法は、最初に未焼結押出物を膨張し、部分的に押出物を焼結し、続いて押出物を膨張することを含む。
【図2】長手方向に膨張させたePTFEチューブの顕微鏡写真である。
【図3】PTFEの部分的な焼結の温度及び対応時間分を示すグラフである。
【図4】未焼結PTFE、部分的未焼結PTFE及び完全未焼結PTFEの炭素原子の回転運動範囲の略図である。
【図5】長手方向に膨張し、部分的に焼結し、半径方向に膨張させたePTFEチューブの顕微鏡写真である。
【図6】図1の方法の他の実施形態を示すブロック図である。その他の実施形態は、未焼結PTFE未処理チューブ押出物の半径方向の膨張に伴う長手方向の膨張を含む。
【図7】本発明の血管グラフトの斜視図である。その血管グラフトはePTFEチューブ構造及びその中にステントを備える。そのePTFEチューブ構造は本発明の方法に従って製造される。
【図8】ePTFEチューブ構造及びステントを示す図7の8―8線によって示される平面の断面図である。
【図9】本発明の血管グラフトの長手方向断面図である。その血管グラフトは繊維物質で形成されたチューブ内にePTFEチューブ構造を備える。そのチューブ構造の一方又は両方は本発明の方法に従って製造される。
【図10】チューブ構造間の結合材を示す図9の囲い(10)に含まれる部分の拡大図である。
【図11】本発明の繊維物質の斜視図である。その繊維物質は、本発明の方法に従って製造された1つ以上のePTFE繊維構造を組み込んでいる。
【図12】本発明の血管グラフトの斜視図である。その血管グラフトは、図11の繊維物質から形成されたePTFEチューブ構造を含む。
【図13】本発明のePTFEシート構造の斜視図である。そのePTFEシート構造は、本発明の方法に従って製造される。
【図14】本発明の血管グラフトの斜視図である。その血管グラフトは図13のシート構造から形成されたePTFEチューブ構造を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例)
対応する参照符号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を示す。
【0015】
図面、特に図1を参照しながら、ePTFE構造を製造する方法(10)をそのブロック図に示す。方法(10)に従って製造するePTFE構造は、血管グラフトである。方法(10)の他の実施形態は、他のePTFE構造(例えばステントカバー、シート、プレート、ロッド及びモノフィラメント)を製造するために用いられ得る。血管グラフトを製造する方法(10)は、未焼結(12)PTFE未処理チューブ押出物及び予熱押出物(15)を提供することを含む。例えば、予熱(15)はおよそ室温〜500゜F(260℃)の温度であってもよい。
【0016】
予熱した未焼結PTFE未処理チューブ押出物は、その加熱(17)を続けることで長手方向に膨張する。連続加熱は、最高およそ600゜F(316℃)(例えば500゜(260℃)F)の温度であってもよい。膨張したPTFE未処理チューブ押出物は、本明細書においてePTFEチューブ構造と称する。長手方向の膨張(17)は、押出物の長手方向寸法をおよそ10%〜10000%増大し得る。好ましい実施形態では、長手方向寸法をおよそ200%〜6000%で増大し得る。かかる膨張率はおよそ1〜100cm/秒(例えば35cm/秒)であってもよい。連続加熱(17)による長手方向の膨張は、チューブ構造中に第1のノード及びフィブリル微細構造を生じる。チューブ構造は、ePTFE繊維の長手方向配向及びノードの半径方向配向によって特徴づけられる。その実施例を図2に示す。
【0017】
図2は、予熱し、同時に長手方向に膨張し、加熱し、次に完全に焼結した、ePTFEチューブ構造の内面の顕微鏡写真である。長手方向の膨張前、PTFEチューブ構造の内径は僅かに11mmを超えていた。PTFEチューブ構造の内径は、長手方向の膨張によって減少した。ePTFEチューブ構造の微細構造は完全な焼結によって固定化したが、それ以外ではその結果として実質的に影響を受けなかった。したがって、図2の顕微鏡写真は、長手方向の膨張及びその加熱(17)後のePTFEチューブ構造の微細構造を示す。
【0018】
長手方向に膨張したePTFEチューブ構造を少なくとも最初の長手方向の膨張(17)部分が構造中に保持されるか固定されるように、チューブ構造の温度を上げる十分な時間、加熱することによって部分的に焼結する(20)。部分的な焼結は、少なくとも最初の長手方向膨張(17)部分が保持されるePTFEチューブ構造部分を完全には焼結しないように、温度と継続時間の制限をさらに与える。好ましい実施形態では、PTFEチューブ構造は最初の長手方向膨張(17)と部分的焼結(20)の間、同じ電気炉中にとどまる。
【0019】
部分的焼結(20)を与えうる温度及び対応時間の実施例を図3に示す。部分的焼結(20)の温度範囲は、およそ600゜F(316℃)又は、それ以下〜700゜F(371℃)である。部分的焼結(20)の継続時間の範囲は、およそ1分〜1時間である。図3は、部分的焼結(20)が相対的に低い温度で相対的に長い継続時間又は相対的に高い温度で相対的に短い継続時間、ePTFEチューブ構造をさらすことで与えられ得ることを示す。図3はまた、部分的焼結(20)が完全焼結の起こる温度を上回る温度で起こり得ることを示す。かかる温度が与えられる継続時間は十分に短い。完全焼結は、およそ652゜F(344℃)〜660゜F(349℃)の温度で起こる。全てのePTFEチューブ構造を部分的に焼結することは可能である。あるいは、部分的焼結を構造の選択部分(例えば長手方向断面)に適用してもよい。
【0020】
部分的焼結(20)は、ePTFEチューブ構造の半固定した微細構造を生じる。図4は、未焼結、部分的焼結、及び完全焼結PTFE物質間の分子結合によって形成した炭素原子の可動域の略図を示す。特定の理論によって拘束されることを望まず、部分的焼結は未焼結PTFE物質と比較して隣接原子の小さい分子旋光度を与えるが、完全焼結PTFE物質と比較してより大きな分子旋光度範囲を与えると考えられる。図4に図示の可動域は、隣接する炭素原子間の三次元相対変位に関する。
【0021】
「部分的焼結」という用語は、ePTFE物質が完全焼結物質を生じるには不十分な時間及び温度の条件にさらしたことを意味する。「完全焼結」した物質は、ePTFE物質を冷却したときにポリマーが「完全に」結晶化するか、又は完全に結晶状態に戻るような時間及び温度の条件にさらしたことを意味する。この完全な結晶化は、「100%」結晶化する、又はその物質の達成可能な結晶化の最大量と考えられる。完全結晶化は、部分的焼結ePTFE物質から形成した結晶化を比較するための基準である。
【0022】
ePTFE物質を完全に焼結するために、十分な時間と温度の条件をポリマーの十分な分子配向させることでそこに作用できるようにすべきである。そうすると、冷却ができるときに実質的な結果として高度な結晶、すなわち完全な結晶化となる。高度な結晶形は、完全に微細構造を固定し、この物理的形態を封じる高度な物理的又は熱的なエネルギーを必要とする。対照的に、部分的焼結物質は部分的に結晶化されただけであり、このように固定構造(例えば結晶化度に相当する部分的な固定構造)をより小さい程度を有するだけである。
【0023】
完全な結晶化形では、結晶構造に起因する相対的な分子運動能を欠く。小さい結晶構造は、分子レベルでより高い程度の相対運動を可能とする。
【0024】
ePTFE物質を適当な時間及び温度条件にさらすことで至った結晶化度は、X線回折及び示差走査熱量測定(DSC)を含む種々の方法で測定できる。DSCは、温度の関数として物質の熱エネルギー吸収又は熱容量を測定する。ポリマーの結晶形から溶解形への温度遷移及び変化を経るのに要した熱エネルギー量と相関する吸収ピークが測定された。最大結晶化構造を有する完全焼結物質は、部分的焼結で達した結晶化度測定のための基準を与える。部分的焼結の時間及び温度のパラメータは、一般的に完全焼結に必要なパラメータより少ないので、ポリマーの完全な分子配向の機会は少なく、一旦ポリマーが冷却されると付随して結晶形態は少ない。部分的焼結ePTFE構造は、結晶化構造の程度が、完全焼結され、完全再結晶された微細構造の約10%〜90%の微細構造を備えていてもよい。
【0025】
このように本発明に係る部分的焼結ePTFE構造は、結晶構造が少なく、ePTFE物質の裂ける可能性が少ないので、さらに膨張できる。このことにより、ePTFE構造が完全焼結され、完全結晶化されたならば、その後更なる膨張を生じるために小さい力又はエネルギーを要するであろう。
【0026】
部分的焼結(20)の後に、ePTFEチューブ構造を再び加熱する(22)。加熱(22)に続いて、ePTFEチューブ構造をその寸法を増大させるためにその加熱し続ける(25)ことによって半径方向に膨張させる。半径方向の膨張(25)は、ePTFEチューブ構造の半径方向の寸法をおよそ10%〜600%まで増大し得る。また、半径方向膨張(25)は、ePTFEチューブ構造の内径をおよそ1mm〜36mmまで増大する結果となってもよい。ePTFEチューブ構造の半径方向膨張(25)は、二次的なノード及びその中にフィブリル微細構造を生じる。その例を図5に示す。
【0027】
図5は、長手方向膨張(例えば図1のステップ(17)による)、部分的焼結(例えば図1のステップ(20)による)及び半径方向膨張(例えば図1のステップ(25)による)したePTFEチューブ構造の外面の顕微鏡写真である。半径方向膨張の前、PTFEチューブ構造の内径は、およそ11mmであった。PTFEチューブ構造の内径は、半径方向膨張によっておよそ36mmに増大した。半径方向膨張(25)の後、ePTFEチューブ構造を、その微細構造を部分的に固定するために部分的焼結する(27)。あるいは半径方向膨張(25)の後、ePTFEチューブ構造を、その微細構造を完全に固定するために完全に焼結することは可能である。
【0028】
部分的焼結(27)の後、又は場合によっては完全焼結後、ePTFEチューブ構造はステントがチューブ構造(30)内にあるようにステントを有し得る。アセンブリ(30)は、ePTFEチューブ構造内にステントの挿入を含み得る。
【0029】
あるいは、部分的焼結(27)又は場合によっては完全焼結の後、続いて繊維物質でできたチューブ構造内にePTFEチューブ構造を構成し得る。好ましい実施形態では、チューブ構造は互いに同軸関係であり、結合し合っている。チューブ構造が互いに同軸関係であり、そして結合し合うように繊維物質でできたチューブ構造がePTFEチューブ構造内にある、他の構成が可能である。
【0030】
図1で例示する方法(10)の工程の変形例は、本発明の範囲内で可能である。例えば、部分的焼結(20)をPTFE未処理チューブ押出物の半径方向膨張より前に行い、その後長手方向膨張を行うことが可能である。膨張していないPTFE未処理チューブ押出物の半径方向膨張は、ePTFE繊維の半径方向の配向及びノードの長手方向の配向によって特徴づけられる第1のノード及びフィブリル微細構造を生じる。また、部分的焼結(20)は、更なる膨張又は他の処理工程より前でもよいし、後でもよい。
【0031】
方法(10a)の別の実施形態を図6に示す。図6に例示した工程は、接尾辞”a”の付加によって、図1に記載の図6と同じ参照番号を有する図1の工程に対応する。図6に示すように、長手方向の膨張及び加熱(17a)の後に、未焼結ePTFEチューブ構造の加熱(35)、半径方向膨張及びその加熱(37)を行う。好ましい実施形態では、チューブ構造を長手方向膨張及びその加熱(17a)の間第1の電気炉に入れ、続いてチューブ構造の半径方向膨張と加熱(37)のために第2の電気炉に移す。チューブ構造の半径方向膨張を電気炉の外で行うことも可能である。他の実施形態では、図6の工程(37)と類似の半径方向膨張及び加熱を、図6の工程(17a)と類似の長手方向膨張及び加熱の前に行うことが可能である。したがって、方法(10a)は、未焼結PTFE未処理チューブ押出物の長手方向及び半径方向の膨張を与える。
【0032】
方法(10、10a)は、血管グラフトのいくつかの実施形態の製品を提供する。例えば、一体的なePTFEチューブ構造40(例えば、図7に示される)を含む血管グラフトを(10、10a)の方法に従って製造してもよい。ePTFEチューブ構造(40)をステント(42)と結合して用いてもよい。図7及び8に示すように、ステント(42)はチューブ構造(40)内で固定されている。
【0033】
他の実施形態では、ePTFEチューブ構造(45)をそれと同軸関係の繊維物質で形成される第2のチューブ構造(47)に取り付け得る。図9に示すように、ePTFEチューブ構造(45)は、第2のチューブ構造(47)内にあってもよい。ePTFEチューブ構造(45)は、第2のチューブ構造(47)に対するアセンブリの前に、未焼結、部分的焼結、又は完全焼結であってもよい。概して、図10に示すように、ePTFEチューブ構造(45)及び第2のチューブ構造(47)は、接着剤(50)によって、ePTFEチューブ構造の外部表面が第2のチューブ構造の内部表面に結合されることによって互いに結合される。
【0034】
好ましい実施形態では、接着剤(50)はCorethane(商標)接着剤である。接着剤(50)は、シーラント材を含んでもよい。接着剤(50)は、吹付けによってチューブ構造(45、47)に塗布され得る。例えば、ボンディング材又はシーラントは、その長手方向及び半径方向膨張の後、ePTFEチューブ構造(45)の外部表面に吹付けられ得る。さらに他の実施形態では、第2のチューブ構造(47)は、それに対して同軸関係のePTFEチューブ構造(45)内にあってもよいし、チューブ構造が結合しあってもよい。
【0035】
ePTFEチューブ構造(45)及び第2のチューブ構造(47)のアセンブリに関連する互いに同軸関係の結合し合ったチューブ構造の実施形態は、米国特許出願第US2003/0204241号に開示される。この文献は、援用によって本明細書の一部をなす。
【0036】
図10に示すように、方法(10、10a)は、編物、織物又は組物のような繊維物質(55)に組み入れられ得る1つ以上のePTFEフィラメント(52)の製造を与える。繊維物質(55)のフィラメント(52)の一部又は全部を方法(10、10a)に従って製造してもよい。繊維物質(55)をその端が互いに接触するように筒構造に圧延してもよい。方向は筒構造の長手方向軸線に対して長手方向又はらせん方向であってもよい。図12に示すように、端は、繊維物質(55)がチューブ構造(57)を形成するように結合しあっている。図7及び8に示すように、チューブ構造(57)を単独で、又は、そのカバーとしてのステント(42)と組み合わせて用いてもよい。あるいは、チューブ構造(57)を図9及び10に示すチューブ構造(45、47)のいずれかとして用いてもよい。加えて、繊維材(55)を患者の体表面又は体内のインプラントとして用いるために、非円筒状外形(例えば、平面又はわずかに湾曲させる)を備えるように成形してもよい。
【0037】
図13に示すように、方法(10、10a)は、ePTFEシート構造(60)の製造を提供する。シート構造(60)は、不連続なフィラメント(52)によって形成される繊維物質(55)と比較すると、一体的な連続構造である。一般的に、シート構造(60)を繊維物質(55)のために本願明細書に記載したものと同じ方法で圧延し、チューブ構造(62)内に形成してもよい。図7及び8に示すように、チューブ構造(62)を単独で、又は、そのカバーとしてのステント(42)と組み合わせて用いてもよい。あるいは、図9及び10に示すように、チューブ構造(62)をチューブ構造(45、47)のいずれかとして用いてもよい。あるいは、シート構造(60)を患者の体表面又は体内のインプラントとして用いるために、非円筒状外形(例えば、平面又はわずかに湾曲させる)を備えるように成形してもよい。
【0038】
方法(10、10a)は、腹部動脈瘤及び大動脈動脈瘤の治療器具用に適当である血管グラフトの製造を提供する。かかる器具を「AAA器具」と称してもよい。方法(10,10a)に従って製造した血管グラフトはまた、グラフトが、患者の体の開口部を通して備え付けられる相当な大きさである医療処置用に適当である。かかる処置で使用する器具は「切開治療外科用製品」と称される場合がある。方法(10、10a)に従って製造した血管グラフトはまた、グラフトが、低侵襲手術でつくられてもよいように小開口を通して備え付けられる医療処置用に適当である。
【0039】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明したが、多数の変更を上述した本発明の技術的思想及び技術的範囲内でなすことができることが理解されるべきである。したがって、本発明は、開示された実施形態に限定されないが、請求項の文言によって容認される全範囲を有することが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図1に示される血管グラフトの製造方法。
【請求項1】
図1に示される血管グラフトの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−45757(P2011−45757A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261856(P2010−261856)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【分割の表示】特願2007−549588(P2007−549588)の分割
【原出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【分割の表示】特願2007−549588(P2007−549588)の分割
【原出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
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