説明

p型GaNが薄く、かつAlGaN電子遮断層を含まない窒化ガリウムベースの発光ダイオード

100nm以下の厚さを有するp型層と、n型層と、発光するためのp型層とn型層との間に位置付けられる活性層とを有する、発光ダイオード(LED)であって、LEDは、別個の電子遮断層を含まない。一実施形態において、活性層は、4nm以上の厚さを有する1つ以上の量子井戸を備えている。さらに、一実施形態において、活性層は、活性層内で電子担体を捕捉し、閉じ込め、それにより、電子遮断層の機能を提供するための十分に厚い厚さと組成とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国特許法第119条(e)により、同時係属の同一人に譲渡された米国仮出願第61/111,642号(2008年11月5日出願、Hong Zhong, Anurag Tyagi, James S.Speck, Steven P.DenBaars, Shuji Nakamura、名称「THIN P−TYPE GALLIUM NITRIDE AND ALUMINUM GALLIUM NITRIDE ELECTRON−BLOCKING LAYER FREE GALLIUM NITRIDE−BASED LIGHT EMITTING DIODES」、代理人事件番号30794.291−US−P1(2009−156))の利益を主張する。該出願は、参照により本明細書に引用される。
【0002】
本願は、以下の、同時係属の同一人に譲渡された米国特許出願に関連する:
米国特許出願第12/370,479号(2009年2月12日出願、Arpan Chakraborty, Benjamin A.Haskell, Stacia Keller, James S.Speck, Steven P.DenBaars, Shuji Nakamura、名称「FABRICATION OF NONPOLAR INDIUM GALLIUM NITRIDE THIN FILMS, HETEROSTRUCTURES AND DEVICES BY METALORGANIC CHEMICAL VAPOR DEPOSITION,」、代理人事件番号30794.117−US−C2)。該出願は、米国特許法第120条により、米国特許出願第11/621,479号(2007年1月9日出願、現在は米国特許第7,504,274号(2009年3月17日発行)、Arpan Chakraborty, Benjamin A.Haskell, Stacia Keller, James S.Speck, Steven P.DenBaars, Shuji Nakamura,Umesh K.Mishra、名称「FABRICATION OF NONPOLAR INDIUM GALLIUM NITRIDE THIN FILMS, HETEROSTRUCTURES AND DEVICES BY METALORGANIC CHEMICAL VAPOR DEPOSITION,」、代理人事件番号30794.117−US−C1(2004−495−3))の継続出願であり、該出願は、米国特許法第120条により、米国特許出願第11/123,805号(2005年5月6日出願、現在は米国特許第7,186,302号(2007年3月6日発行)、Arpan Chakraborty, Benjamin A.Haskell, Stacia Keller, James S.Speck, Steven P.DenBaars, Shuji Nakamura,Umesh K.Mishra、名称「FABRICATION OF NONPOLAR INDIUM GALLIUM NITRIDE THIN FILMS, HETEROSTRUCTURES AND DEVICES BY METALORGANIC CHEMICAL VAPOR DEPOSITION,」、代理人事件番号30794.117−US−U1(2004−495−2))の継続出願であり、該出願は、米国特許法第119条(e)により、米国仮出願第60/569,749号(2004年5月10日出願、Arpan Chakraborty, Benjamin A.Haskell, Stacia Keller, James S.Speck, Steven P.DenBaars, Shuji Nakamura,Umesh K.Mishra、名称「FABRICATION OF NONPOLAR InGaN THIN FILMS, HETEROSTRUCTURES AND DEVICES BY METALORGANIC CHEMICAL VAPOR DEPOSITION,」、代理人事件番号30794.117−US−P1(2004−495−1))の利益を主張する;
米国特許出願第11/621,482号(2007年1月9日出願、Troy J.Baker, Benjamin A.Haskell, Paul T.Fini, Steven P.DenBaars, James S.Speck, Shuji Nakamura、名称「TECHNIQUE FOR THE GROWTH OF PLANAR SEMI−POLAR GALLIUM NITRIDE,」、代理人事件番号30794.128−US−C1(2005−471−3))。該出願は、米国特許法第120条により、米国特許出願第11/372,914号(2006年3月10日出願、現在は米国特許第7,220,324号(2007年5月22日発行)、Troy J.Baker, Benjamin A.Haskell, Paul T.Fini, Steven P.DenBaars, James S.Speck, Shuji Nakamura、名称「TECHNIQUE FOR THE GROWTH OF PLANAR SEMI−POLAR GALLIUM NITRIDE,」、代理人事件番号30794.128−US−U1(2005−471−3))の継続出願であり、該出願は、米国特許法第119条(e)により、米国仮出願第60/660,283号(2005年3月10日出願、Troy J.Baker, Benjamin A.Haskell, Paul T.Fini, Steven P.DenBaars, James S.Speck, Shuji Nakamura、名称「TECHNIQUE FOR THE GROWTH OF PLANAR SEMI−POLAR GALLIUM NITRIDE,」、代理人事件番号30794.128−US−P1(2005−471−1))の利益を主張する;
米国特許出願第11/852,908号(2007年9月10日出願、D.Craven, S.Speck、名称「NON−POLAR A−PLANE GALLIUM NITRIDE THIN FILMS GROWN BY METALORGANIC CHEMICAL VAPOR DEPOSITION,」、代理人事件番号30794.245−US−I1(2002−301−4))。該出願は、米国特許出願第10/413,691号(2003年4月15日出願、Michael D.Craven,James S.Speck、名称「NON−POLAR A−PLANE GALLIUM NITRIDE THIN FILMS GROWN BY METALORGANIC CHEMICAL VAPOR DEPOSITION,」、代理人事件番号30794.100−US−U1(2002−294−2))の一部継続出願であり、該出願は、米国特許法第119条(e)により、米国仮出願第60/372,909号(2002年4月15日出願、Michael D.Craven,Stecia Keller, Steven P.DenBaars, Tal Margalith, James S.Speck, Shuji Nakamura,Umesh K.Mishra、名称「NON−POLAR A−PLANE GALLIUM NITRIDE THIN FILMS AND HETEROSTRUCTURE MATERIALS,」、代理人事件番号30794.95−US−P1(2002−294/301/303))の利益を主張する;および、
米国特許出願第11/472,033号(2006年6月21日出願、Michael D.Craven,Stecia Keller, Steven P.DenBaars, Tal Margalith, James S.Speck, Shuji Nakamura,Umesh K.Mishra、名称「NON−POLAR (Al,B,In,Ga)N QUANTUM WELL AND HETEROSTRUCTURE MATERIALS AND DEVICES,」、代理人事件番号30794.101−US−D1(2002−301−3))。該出願は、米国特許法第120条、121条により、米国特許出願第10/413,690号(2003年4月15日出願、現在は米国特許第7,09,514号(2006年8月15日発行)、Michael D.Craven,他、名称「NON−POLAR (Al,B,In,Ga)N QUANTUM WELL AND HETEROSTRUCTURE MATERIALS AND DEVICES,」、代理人事件番号30794.101−US−U1(2002−301−2))の分割出願であり、該出願に基づく利益を主張し、該出願は、米国特許法第第119条(e)により、米国仮出願第60/372,909号(2002年4月15日出願、Michael D.Craven,Stecia Keller, Steven P.DenBaars,Tal Marglith, James S.Speck, Shuji Nakamura,Umesh K.Mishra、名称「NON−POLAR A−PLANE GALLIUM NITRIDE THIN FILMS AND HETEROSTRUCTURE MATERIALS,」、代理人事件番号30794.95−US−P1(2002−294/301/303))の利益を主張する。上記全ての出願は、参照により本明細書に引用される。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、発光ダイオード(LED)に関し、特に、種々の照明の用途のための高効率および高輝度LED、およびこうしたLEDの製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
(注記:本願は、括弧内の1つ以上の参照番号(例えば、参考文献[x])によって、本明細書を通して指示されるように、いくつかの異なる刊行物を参照する。このような参照番号に従って順序付けられたこれらの異なる刊行物の一覧は、以下の「参考文献」の項に列挙される。これらの刊行物はそれぞれ、参照することによって本明細書に組み込まれる。)
窒化ガリウム(GaN)ベースのワイドバンドギャップ半導体発光ダイオード(LED)が、およそ15年の間、利用可能となっている。LED開発の進展により、LED技術に大きな変化がもたらされ、フルカラーLEDディスプレイ、LED交通信号、白色LED等が実現した。
【0005】
非常に効率の良い白色LEDが、蛍光灯の潜在的な代替物として大きな関心を集めている。例えば、白色LED(130−150ルーメン/ワット[1])の発光効率は、既に、通常の蛍光灯(75ルーメン/ワット)の発光効率を超えている。それにもかかわらず、現在市販されているウルツ鉱窒化物ベースのLEDは、それらの[0001]c極成長方位のための、多重量子井戸(MQW)内の分極関連の電場の存在によって特徴付けられる。ヘテロ界面における自発および圧電分極の両方における不連続性によって、量子井戸内に内部電場が生じ、これは、担体分離(量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)を生じさせ、量子井戸内の放射再結合率を低減させる[2−5]。適正な放射再結合率を維持するには、c極光発光デバイスは、典型的には、薄い(3nm未満の)量子井戸を有する[6−7]。
【0006】
これらの分極関連の効果を低減させるために、非極性平面(つまり、(1−100)m面または(11−20)a面)上におけるIII族窒化物デバイスの成長が実証されている[8−9]。こうした効果を低減、できれば排除するための別のアプローチは、c−方向に対して傾斜している結晶面、すなわち、半極性平面上においてIII族窒化物デバイスを成長させることである。これらの平面は、c面のIII族窒化物材料と比較して、ヘテロ構造における分極不連続を低減しており、c面から約45°に方位付けられた半極性平面について、InGaN/GaNのヘテロ構造内には分極の不連続は存在しない[5]。量子井戸領域内の分極関連の電場が低減すると、半極性方位のInGaN量子井戸内の電子および正孔波動関数は、所与の量子井戸厚さについて、c極配向のInGaN量子井戸内の電子および正孔波動関数よりも多く重複を有する(このためより高い放射効率がもたらされる)と考えられる。換言すると、放射再結合率への不利益な効果について心配せずに、半極性LEDに厚い量子井戸設計を利用することができる。異なる半極性平面((10−1−1)、(10−1−3)、(11−22)平面等を含む)上で成長されたデバイスが実証されており、これらは、大幅に低減した分極関連の電場を示す[10−12]。しかしながら、これらのヘテロエピタキシャルに成長したデバイスの出力電力は、積層欠陥および貫通転位という問題を抱えている。最近になって、高品質の自立GaN基板の登場により、無極性のm面、半極性(10−1−1)、および(11−22)自立GaN基板上における407nm〜513nmの範囲のピーク放射波長を有する、高性能の無極性および半極性LEDが報告されている[13−17]。しかしながら、これらのデバイスの出力電力は、今も典型的な最新のc極デバイスよりも低く、それは、部分的には、最適化されていないLEDエピタキシャル層構造を原因とする可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、この問題を解決すると期待されている新規の半極性LEDエピタキシャル層構造を示す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の従来技術における制限を克服し、かつ本発明の熟読および理解によって明白となるであろう他の制限をも克服するために、本発明は、薄い(つまり100ナノメートル(nm)未満の)p型GaN層を含み、AlGaN電子遮断層(EBL)を含まないGaNベースの半極性方位発光ダイオード(LED)を製造するための新規のアプローチを含む。好適な実施形態において、LEDのための基板として、自立半極性(10−1−1)GaNが使用される。本発明は、既存の半極性LEDを超えるいくつかの利点を提供する。まず、p型GaNが薄く、かつAlGaN EBLを含まない設計により、直列抵抗、ひいてはGaNベースのLEDの動作電圧を低下させることができる。さらに、薄いp型GaN層は、量子井戸領域から発せられる光の吸収を低減し得る。さらに、正孔担体の注入効率は、AlGaN EBLの除去によって恩恵を受ける可能性がある。
【0009】
一実施形態において、LEDは、発光のために、100nm以下の厚さを有するp型層と、n型層と、p型層とn型層との間に位置付けられる活性層であって、p型層、n型層、および活性層は、半極性窒化物ベースの材料から成る、活性層と、を備える。例えば、p型層は、最大でも50nmの厚さを有する。LEDは、III族窒化物ベースであってもよいが、例えば、AlGaN電子遮断層は含まない。
【0010】
活性層は、4nm以上の厚さを有する1つ以上の量子井戸を含んでもよく、活性層/量子井戸は、活性層内で電子担体を捕捉し、閉じ込め、それにより、電子遮断層の機能を提供するように、十分厚い厚さと、組成とを有する。量子井戸は、例えば、InGaN量子井戸であり得る。
【0011】
本発明のLEDは、別個のAlGaN遮断層と、より厚いp型層とを備える、LEDと比較して、より高い発光効率、結晶品質、正孔注入効率、より低い直列抵抗、動作電圧、および光吸収を有し得る。
【0012】
本発明は、さらに、基板上にn型層を堆積させるステップと、n型層上に、発光するための活性層を堆積させる(例:4nmより大きく、かつ、活性層内で電子担体を捕捉し、閉じ込め、それにより、電子遮断層の機能を提供するような厚さおよび組成に、1つ以上のInGaN量子井戸を成長させる)ステップと、活性層上に、100nm以下の厚さ(例:最大でも50nmの厚さ)までp型層を堆積させるステップとを含み、p型層、n型層、および活性層は、半極性窒化物ベースの材料から成る、LEDを製造するための方法を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
次に、図面を参照する(同一参照番号は、全体を通して対応する部品を表す)。
【図1a】図1(a)は、本発明の一実施形態に従う、LEDの概略断面図である。
【図1b】図1(b)は、本発明の活性領域の一例の概略断面図である。
【図2】図2は、InGaN/GaN MQWまたは単一量子井戸(SQW)を含む、p型GaNが薄く、かつAlGaN EBLを含まない半極性LEDのためのエピタキシャル層構造の別の例の概略断面図である。
【図3】図3は、本発明に従う、LEDのさらに別の例の概略断面図である。
【図4】図4は、本発明の方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましい実施形態の以下の説明では、本明細書の一部を形成し、本発明が実践され得る特定の実施形態の一例として示される、付随の図面が参照される。他の実施形態が利用され得、構造的変化は、本発明の範囲から逸脱することなく成され得ることを理解されたい。
【0015】
(概要)
本発明の目的は、性能および製造可能性を向上させた、半極性方位のGaNベースのLEDを生成することである。提案されたデバイスは、典型的には、種々のディスプレイ、照明、および固体の照明用途のための光源として使用される。
【0016】
p型GaNが薄く、かつAlGaN−EBLを含まないLED構造の実現は、(本発明は、LEDエピタキシャル構造をさらに簡略化するため)GaNベースのLEDの製造可能性における複合的な進歩を可能にし、低減された電圧動作およびより高い結晶品質を有するデバイスを作成できる可能性がある。半極性GaNプラットフォームは、より高い放射再結合率、ひいてはより高い内部量子効率を有するデバイス等の性能的な利点を提供することが期待される。これらの利点は、種々の商品のコストを削減する可能性がある。
【0017】
(用語)
本明細書で使用されるように、「(Al、Ga、In)N」またはIII族窒化物は、単一種、Al、Ga、およびIn、さらに、これらのIII族金属種の二元、三元および四元組成のそれぞれの窒化物を含むように、幅広く解釈されることを意図している。従って、(Al、Ga、In)Nという用語は、化合物AlN、GaN、およびInN、さらに、三元化合物AlGaN、GaInN、およびAlInN、ならびに四元化合物AlGaInNを、こうした用語に含まれる種として考える。(Ga、Al、In)化合物種のうちの2つ以上が存在する場合、化学量論的比率および「非化学量論的(off−stoichiometric)」比率(組成内に存在する(Ga、Al、In)構成種のそれぞれの存在する相対分子量に関する)を含む、全ての可能性のある組成を、本発明の幅広い範囲内で用いることができる。従って、GaN材料を参照する、以降の本発明の記載は、種々の他の(Al、Ga、In)N材料種の形成に適用可能であることが理解されよう。さらに、本発明の範囲内の(Al、Ga、In)N材料は、微量のドーパントおよび/または他の不純物または含有材料(inclusional material)を含み得る。
【0018】
(技術的説明)
本発明は、(Ga、In、Al)N等の、しかし、これに制限されない合金で構成される半導体LEDである。そのp型GaN厚さが150nm〜200nmの範囲であるこれまでに報告された他の半極性LED[14−18]と比較して、提案されたデバイスは、より薄いp型GaN層(つまり100nm未満であり、典型的な値は50nm)を含む。さらに、以前に報告された半極性LED[14−18]とは異なり、提案されたデバイスは、典型的には、量子井戸領域とp型GaN層との間に挟まれたAlGaN電子遮断層(EBL)を含まない。デバイスは、十分に確立された半導体デバイス製造技術を用いて成長および処理される。
【0019】
図1(a)は、光を発するために、100nm以下(例:最大でも50nm)の厚さ104を有するp型層102、n型層106、およびp型層102とn型層106との間に位置決めされる活性領域または層108を含む、本発明に従うデバイス100(例:LED)を示す。活性層108は、典型的に、しかし必ずしもそうでなくてもよいが、活性層108内で電子担体を捕捉し、閉じ込め、それにより、EBLの機能を提供するように、十分厚い厚さ110および組成を有する。このため、本発明は、発光および電子遮断機能の両方を提供する1つの層108として、EBLと活性層108とを統合し得る。このため、一実施形態において、LED100は、電子遮断のために特化して成長された別個のEBL(層102、106、108とは異なる)を含まない。例えば、LED100は、典型的にはAlGaN遮断層を含まない。
【0020】
このため、LEDは、別個のAlGaN遮断層およびより厚いp型層を含むLEDと比較して、より高い発光効率、結晶品質、正孔注入効率、より低い直列抵抗、動作電圧、および光吸収を有し得る。
【0021】
LEDは、典型的には、例えば、III族窒化物(Al、In、Ga)N層である層102、106、および108のIII族窒化物ベースである。
【0022】
図1(b)に示すように、活性層108は、発光のために、4nm以上の厚さ114、および組成(例:InGaN)を有する1つ以上の量子井戸112を含み得る。さらに、活性層108は、量子井戸112内で電子担体を捕捉および閉じ込めることにより、電子遮断層の機能を提供するような、組成および厚さ114を有する1つ以上の量子井戸112を含み得る。量子井戸112(例:InGaN)は、典型的には、第1の量子井戸障壁116(例:GaN)および第2の量子井戸障壁118(例:GaN)の間に挟まれる。電子担体は、典型的には、電力源に応答して、活性層108および量子井戸112へと流れ、デバイス100によって発せられる光を生成するために、活性層108および量子井戸112内の正孔と再び結合する。
【0023】
LED100は、典型的には半極性または非極性方位120を有し、例えば、層102、106、および108は、非極性または半極性方位120に沿って成長され、または、活性層108およびn型層106の間の界面122、ならびに活性層108およびp型層102の間の界面124が選択された非極性または半極性平面となるように、切り取られる。量子井戸112および第1の障壁116の間の界面126ならびに量子井戸112および第2の障壁118の間の界面128も、選択された非極性または半極性平面である。半極性または非極性方位120は、典型的には、QCSEが、c面デバイスと比較して低くなるように、量子閉じ込め方向(量子井戸112内の電子および正孔がエネルギー障壁によって閉じ込められる方向は、障壁層116、118によって提供される)に沿っている。
【0024】
一実施形態において、全ての層、例えばp型層102、n型層106、および活性層108は、半極性窒化物ベースの材料から成る。
【0025】
図2は、提案されたデバイスについての典型的なエピタキシャル層構造200を示す。これは、本発明の一実施形態である。他のエピタキシャル構造も可能であり、以下にいくつかの代替の実施形態が提案される。第1の例として、デバイス200は、最初に、意図せずにドープされた(UID)および/またはn型GaN層204、次に、InGaN/GaN SQWまたはMQWを含み得る量子井戸領域206、次に、薄いp型GaN層208を有する、半極性(10−1−1)の自立GaN基板202上に成長される。デバイスの半極性方位により、個々の量子井戸厚さは、典型的にc極デバイス(つまり4nmより大きい)で使用されるものよりも厚くすることができる。(10−1−1)自立GaN基板202は、半極性(10−1−1)平面である、その上に層204がエピタキシャルに成長される表面210を有する。
【0026】
図3は、薄いp型GaN層302を有し、AlGaN EBLを含まない、自立半極性(10−1−1)GaN基板304上に有機金属化学気相堆積(MOCVD)によって成長させた半極性LEDデバイス300の第2の例を示す。LEDエピタキシャル層構造は、1.0μmの厚さのシリコンドープn型GaN306、3nmの厚さの量子井戸308および30nmの厚さのUID GaN障壁310、312を含む活性層、30nmの厚さのマグネシウム(Mg)ドープp型GaN層302、ならびに20nmの厚さの高濃度Mgドープp型GaN接触層314を含む。成長後、LEDが製造され、シルバーヘッダ上でパッケージングされる。250nmの厚さのインジウムスズ酸化物(ITO)がp型GaN接触316として使用され、Ti/Auが、p型およびn型電極318、320として使用された。代表的なLED300が、(封入化なし、また、意図的な光抽出方法なしで)直流(DC)動作で、積分球内におけるベアヘッダ(bare header)上で試験された。20ミリアンプ(mA)の駆動電流において、444nmのピーク発光波長および15.2ミリワット(mW)の出力電力が計測された。比較において、資料[15]に記載される(封入化なし、また意図的な光抽出方法なしの)ベアシルバーヘッダ上で積分球において計測された最良の半極性青色LEDの出力電力は、DC動作、20mAで、11.6mWにすぎなかった。厚い(200nm)p型GaN層およびAlGaN EBLを除き、この半極性LED([15]に記載される)は、ピークEL発光波長、結晶方位、量子井戸厚さ、およびITOのp接触厚等、本発明の第2の例とほぼ同一であることに留意されたい。
【0027】
GaNベースのLEDの種々のカテゴリを作成するための提案されたエピタキシャル構造の実施が、本発明の核である。このエピタキシャル構造は、標準的な半導体処理技術を使用して、種々のP型GaN層が薄く、かつAlGaN EBLを含まない半極性(TPAF)LEDを製造し得る。
【0028】
上記および以下に記載されるように、本発明には複数の応用例および修正例が存在する。
【0029】
(プロセスステップ)
図4は、以下のステップを含む、LEDを製造する方法を示す。
【0030】
ブロック400は、基板上、例えば非極性または半極性の基板上、あるいは基板の非極性または半極性の平面上、あるいは半極性または非極性の成長を支持する基板上に、第1の伝導型(例:n型層)を有する層を堆積すること(例:成長させること)を示す。n型層は、例えば、III族窒化物の非極性または半極性方位に沿って成長し得る。
【0031】
ブロック402は、第1の伝導型を有するブロック400の層上で発光するための活性層または領域を堆積すること(例:成長させること)を示す。一例において、活性層を堆積することは、4nm以上の厚さを有する1つ以上の量子井戸を成長させることを含む。さらに、方法は、典型的には、しかし必ずしもそうでなくてもよいが、電子担体を捕獲および閉じ込めることにより、電子遮断層の機能を提供する厚さにまで、およびそのような機能を提供する組成を用いて活性層を堆積することを含む。例えば、活性層の堆積は、電子担体を捕獲および閉じ込める厚さおよび組成を有する1つ以上の量子井戸の成長を含み得る。量子井戸は、InGaN量子井戸として成長され得る。
【0032】
このため、AlGaN遮断層等の別個の電子遮断層は、LED内に含まれる必要はない。
【0033】
活性層は、典型的には、ブロック400内で成長される第1の伝導型を有する層の非極性または半極性平面上において、III族窒化物の非極性または半極性方位に沿っている。
【0034】
ブロック404は、ブロック402の活性層上に第2の伝導型(例:p型層)および100nm以下の厚さを有する層を堆積すること(例:成長させること)を示す。一例において、ステップは、最大50nmの厚さにまでp型層を堆積することを含む。p型層は、例えば、III族窒化物の非極性または半極性方位に沿って成長し得る。
【0035】
ブロック406は、方法の最終結果、LED等のデバイスを示す。p型層、活性層、およびn型層は、典型的にはIII族窒化物であり、LEDは、典型的には、例えばAlGaN電子遮断層を含まない。全ての層、例えば、p型層、n型層および活性層は、半極性窒化物ベースの材料から成ってもよい。堆積ステップ(a)、(b)、および(c)によって、別個のAlGaN遮断層およびより厚いp型層を備えるLEDと比較して、より高い発光効率、結晶品質、正孔注入効率、より低い直列抵抗、動作電圧、および光吸収が生じ得る。
【0036】
(考えられる修正)
TPAF LEDの成長は、全ての他の半極性平面、および非極性のa面およびm面を含むが、これに限定されない、半極性(10−1−1)平面以外の(Ga、In、Al)N結晶方位で実施され得る。「半極性平面」という用語は、c面、a面、またはm面として分類することができない任意の平面を指すように使用できる。結晶学的用語において、半極性平面は、少なくとも2つのゼロ以外のh、i、またはkのミラー指数およびゼロ以外のlのミラー指数を有する任意の平面になる。非極性のm面およびa面は、それぞれ、(10−10)および(11−20)平面を指す。
【0037】
好適な実施形態は、成長する構造と一致する組成格子を有する自立半極性窒化物ウエハ上に成長される、上記の(Ga、Al、In)Nの薄膜、ヘテロ構造、およびデバイスを示した。自立半極性窒化物ウエハは、外部基板を厚い半極性窒化物層から除去することによって、バルク窒化物インゴットまたはブールを個々の半極性窒化物ウエハにカットすることによって、または任意の他の考えられる結晶成長またはウエハ製造技術によって作成し得る。本発明の範囲は、全ての考えられる結晶成長方法およびウエハ製造技術によって作成される全ての考えられる自立半極性窒化物ウエハ上の半極性(Ga、Al、In)Nの薄膜、ヘテロ構造、およびデバイスの成長および製造を含む。基板は、いくつかの例において、さらに、薄膜化され、および/または研磨され、および/または除去され得る。
【0038】
同様に、上記の(Ga、Al、In)N薄膜、ヘテロ構造、およびデバイスは、成長される構造に一致する組成格子を有する自立非極性窒化物ウエハ上に成長され得る。自立半極性窒化物ウエハは、厚い半極性窒化物層から外部基板を除去することによって、バルク窒化物インゴットまたはブールを個々の半極性窒化物ウエハにカットすることによって、または任意の他の考えられる結晶成長またはウエハ製造技術によって作成し得る。本発明の範囲は、全ての考えられる結晶成長方法およびウエハ製造技術によって作成される全ての考えられる自立半極性窒化物ウエハ上の非極性(Ga、Al、In)Nの薄膜、ヘテロ構造、およびデバイスの成長および製造を含む。基板は、いくつかの例において、さらに、薄膜化され、および/または研磨され得る。
【0039】
さらに、自立GaN以外の外部基板を、半極性または非極性テンプレートの成長のために使用できる。本発明の範囲は、全ての考えられる基板の全ての考えられる結晶学的な方位における半極性および非極性(Ga、Al、In)N薄膜、ヘテロ構造、およびデバイスの成長および製造を含む。これらの基板は、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ケイ素、酸化亜鉛、窒化ホウ素、アルミン酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ゲルマニウム、窒化アルミニウム、没食子酸リチウム、一部置換尖晶石、およびγ−LiAlO構造を共有する第4正方酸化物を含むが、これに限定されない。
【0040】
上記の半極性(Ga、Al、In)Nデバイスは、自立GaNウエハ上に成長された。しかしながら、本発明の範囲は、さらに、非極性または半極性のエピタキシャル横方向過成長(ELO)テンプレート上で成長された非極性または半極性(Ga、Al、In)Nデバイスを含む。ELO技術とは、以降のエピタキシャル層における貫通転位(TD)の密度を低下させる方法である。TD密度が低下すると、デバイスパフォーマンスの向上につながる。
【0041】
(Ga、In、Al)N量子井戸およびヘテロ構造設計の変形例は、本発明の範囲から逸脱せずに可能である。例えば、低アルミニウム組成AlGaN層(AlGaN1−xN、00.5)およびAlInGaN第4層を、量子井戸障壁として使用できる。さらに、層の特定の厚さおよび組成、成長された量子井戸の数、および含有物は、特定のデバイス設計に固有の変数であり、本発明の代替の実施形態において使用し得る。
【0042】
本発明は、量子井戸を含まないTPAF GaNベースのLEDを作成するように使用され得る。一例として、GaN/InGaN二重ヘテロ構造を含むLED構造がある。
【0043】
(利点および改善)
本発明は、既存の半極性LEDを超えるいくつかの利点を提供する。p型GaNが薄く、かつAlGaN−EBLを含まない半極性LEDは、より高い発光有効性を有すると期待される。これは、p型GaN層が薄く、かつAlGaN EBLが存在しないため、直列抵抗、ひいてはGaNベースのLEDの動作電圧を低下させることができるためである。さらに、薄いp型GaN層は、量子井戸領域から発する光の吸収を低減し得る。さらに、AlGaN EBLは、量子井戸活性領域内の電子担体の捕捉および閉じ込めを改善するが、正孔担体の注入の阻害もするため[19]、正孔担体の注入効率は、AlGaN EBLの除去による恩恵を受ける可能性がある。AlGaN EBLの代わりに、半極性成長方位によって容易にされる厚い量子井戸設計は、電子担体の捕捉および閉じ込めに役立つように利用することができる(厚い量子井戸は電子担体の捕捉および閉じ込めにおいてより効率的であると期待される[20−22])。
【0044】
本発明の実施は、さらに、より高いLED結晶品質を生じさせると期待される。これは、(好適には、InGaN量子井戸成長温度よりずっと高い温度で成長される)薄いp型GaN層は、より短い成長時間しか必要とせず、これにより、InGaN量子井戸領域を高温にさらすことを短くして、高温を原因とするInGaN量子井戸領域の考えられる悪化を緩和するためである。さらに、AlGaN EBL層がないことは、このAlGaN層が、典型的には、InGaN量子井戸の転位を避けるために、InGaN量子井戸成長温度前後で成長するので、全体的なエピタキシャル層結晶品質を向上させると予想される。高品質のAlGaN成長に望ましくない、この温度で成長されるAlGaNは、低い結晶品質、特に、高欠陥密度が問題となる可能性がある。提案されたデバイスは、既存のデバイスと比較して大幅に簡略化されたエピタキシャル構造を有するため、本発明は、LEDの製造可能性をさらに向上させることができることに留意されたい。
【0045】
その直列抵抗、光吸収を低減させ、InGaN量子井戸の品質をより良く保存させるために、半極性方位GaNベースのLEDにおいて薄いp型GaN層を採用するという概念は、新規のものであると考えられる。LEDエピタキシャル層の正孔担体注入および結晶品質を向上させるための、AlGaN電子遮断層を含まない半極性方位GaNベースのLEDの概念も、新規であると考えられる。
【0046】
【化1】

【0047】
【化2】

(結論)
ここで、本発明の好ましい実施形態の説明を結論付ける。本発明の1つ以上の実施形態の上述の説明は、例証および説明の目的のために提示されている。本発明を包括的または開示される正確な形態に制限することを意図するものではない。多くの修正例および変形例が、上述の教示に照らして可能である。本発明の範囲は、本発明を実施するための形態によってではなく、本明細書に添付の請求項によって制限されることが意図される。
【図1(a)】

【図1(b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
100nm以下の厚さを有するp型層と、
n型層と、
該p型層と該n型層との間に位置付けられる活性層と
を備え、該p型層、該n型層、および該活性層は、半極性窒化物ベースの材料から成る、
発光ダイオード(LED)。
【請求項2】
前記p型層は、最大でも50nmの厚さを有する、請求項1に記載のLED。
【請求項3】
前記LEDは、III族窒化物ベースであり、AlGaN電子遮断層を含まない、請求項1に記載のLED。
【請求項4】
前記活性層は、4nm以上の厚さを有する1つ以上の量子井戸を備えている、請求項1に記載のLED。
【請求項5】
前記活性層は、該活性層内で電子担体を捕捉し、閉じ込め、それにより、電子遮断層の機能を提供するための十分に厚い厚さと組成とを有する、請求項1に記載のLED。
【請求項6】
前記活性層は、前記厚さを有する1つ以上の量子井戸を備える、請求項5に記載のLED。
【請求項7】
前記量子井戸は、InGaN量子井戸である、請求項6に記載のLED。
【請求項8】
別個のAlGaN遮断層とより厚いp型層とを備えているLEDと比較して、より高い発光効率、結晶品質、正孔注入効率、より低い直列抵抗、動作電圧、および光吸収を有する、請求項1に記載のLED。
【請求項9】
発光ダイオード(LED)を製造する方法であって、
(a)基板上にn型層を堆積させるステップと、
(b)該n型層上に、発光するための活性層を堆積させるステップと、
(c)該活性層上に、100nm以下の厚さまでp型層を堆積させるステップと
を含み、該p型層、n型層、および活性層は、半極性窒化物ベースの材料から成る、
方法。
【請求項10】
前記p型層を最大でも50nmの厚さまで堆積させるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記p型層、前記活性層、および前記n型層は、III族窒化物であり、前記LEDは、AlGaN電子遮断層を含まない、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記活性層を堆積させるステップは、4nm以上の厚さを有する1つ以上の量子井戸を成長させるステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記活性層内で電子担体を捕捉し、閉じ込め、それにより、電子遮断層の機能を提供する厚さまで、およびそのような組成で、前記活性層を堆積させるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記活性層を堆積させるステップは、前記厚さおよび組成を有する1つ以上の量子井戸を成長させるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記量子井戸は、InGaN量子井戸として成長させられる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記堆積させるステップ(a)、(b)、および(c)は、別個のAlGaN遮断層とより厚いp型層とを備えているLEDと比べて、より高い発光効率、結晶品質、正孔注入効率、より低い直列抵抗、動作電圧、および光吸収をもたらす、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記堆積させるステップ(a)、(b)および(c)は、半極性方向に沿って成長させるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−507875(P2012−507875A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534862(P2011−534862)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/063012
【国際公開番号】WO2010/053880
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】