説明

p27のユビキチン化アッセイ及びその使用方法

本発明は、簡便でかつ信頼性の高いp27のユビキチン化アッセイに関する。該アッセイはプレートキャプチャーアッセイとして、又は均一時間分解蛍光共鳴エネルギー転移アッセイとして、容易に反復可能な確立された反応条件下で実施することができるので、例えば抗癌剤候補をハイスループットスクリーニングする上で特に有用である。本発明は、p27若しくは任意のタンパク質のユビキチン化量を決定する方法、及びp27若しくは任意のタンパク質のユビキチン化を調節する化合物を同定する方法の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願 出願番号60/619,092(2005年10月15日出願)の利益を主張するもので、この出願は引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする。
【0002】
1.本発明の分野
本発明は、p27のユビキチン化のアッセイに関する。本発明は、p27タンパク質のユビキチン化を調節する化合物を同定するスクリーニング方法も含む。p27の分解は複数の癌の発生に関連しているので、本発明をスクリーニング方法に利用して抗癌化合物候補を同定することがさらにできる。
【背景技術】
【0003】
2.本発明の背景
p27は細胞周期を制御する重要なネガティブレギュレーターであり、G1期からS期への移行を特異的に阻害する。詳述すると、p27は細胞周期タンパク質Cdk2-サイクリンE及びCdk2-サイクリンAのネガティブレギュレーターであり、その活性が前記移行において必要である。静止期の非複製細胞では、p27レベルが蓄積する。しかしながら、静止期の細胞の分裂が始まると、p27のレベルは急速に低下する。p27レベルは、存在するタンパク質の分解により低下し、転写又は翻訳の制御によっては低下しない。この分解にはユビキチン化が伴い、続いてプロテアソームを介した分解が起こる。
【0004】
細胞において、ユビキチンはE1(ユビキチン活性化酵素)により活性化され、E2(ユビキチン結合酵素)に運ばれ、E2の活性システインとユビキチンのC末端カルボキシル基との間にチオエステル結合(E2〜Ub)を形成させる。レビューに関しては、Hershko及びCiechanover, Annu. Rev. Biochem., 67:425-479 (1998)を参照されたい。p27は、Cdk2-サイクリンEによるユビキチン化において最初に認識され、Tl87残基でタンパク質をリン酸化する。Cdk2及びCycEとの複合体中のリン酸化p27はE3リガーゼの基質であり、該E3リガーゼはSCFSkp2して知られ、Skp1、Cul1(cullin)、Rbxl(Rocタンパク質)、及びFボックスタンパク質Skp2からなる。E3リガーゼは、リン酸化p27とE2〜Ubの両方に結合し、さらにE2からp27へのユビキチンの転移を促す。ユビキチン連結カスケードの構成因子はこれまで大いに注目を集めてきた。レビューに関しては、Weissman, Nature Reviews, 2:169-178 (2001)を参照されたい。E1及びE2は十分に特性付けられた酵素である。複数の種のE2(哺乳動物では少なくとも25種類)があり、そのいくつかは特定のE3酵素と好ましい対をなして、様々な標的タンパク質に対する特異性を付与する。E2の学名は種間で統一されていないが、当技術分野の発明者らはこの問題を解決するよう努めてきた。そのため、当業者であれば容易に様々なE2タンパク質のほか、種の相同体も同定することができる(Haasら, FASEB, 11 : 1257-1268 (1997))。
【0005】
細胞制御因子(例えば、p53、β-カテニン、p27)の抑制されない分解が特定の癌腫で観察されており、ユビキチンリガーゼが制御されないとこの分解の変化に影響するという仮説が提唱される。レビューに関しては、A. Ciechanover, EMBO J. , 17:7151 (1998)を参照されたい。p27の分解は、数多くの癌腫の発症及び増悪に関与しており、該癌腫には乳癌(Alkarainら, J. Mammary Gland Biol. Neoplasia, 9(l):67-80 (2004))、前立腺癌(Visら, J. Urol, 164(6):2156-61 (2000))、子宮内膜癌、卵巣癌(Suiら, Gynecol Oncol, 83(l):56-63 (2001))及び皮膚癌が含まれる。したがって、p27のユビキチン化の原因である細胞タンパク質、及びこのp27のユビキチン化反応自体が抗癌剤を開発する上で重要な標的として利用される。
【0006】
数種類のp27のユビキチン化アッセイが当技術分野では報告されているが、いずれも薬剤の発見には適していない。Wangら, J. Biol. Chem., 278(34):32390-32396 (2003)は、p27のユビキチン化活性のアッセイを報告しており、該アッセイでは、Cdk2/サイクリンEによりリン酸化された[35S]標識p27が、E1、cdc34(E2タンパク質)、SCFSkp2複合体、ユビキチン、メチル化ユビキチン、ユビキチンアルデヒド、Cks1、及びMG132(プロテアソームインヒビター)と組合わされる。そして、該ユビキチン化反応の結果は、SDS-PAGE及び蛍光イメージングにより可視化される。Issakaniら(米国特許番号6,737,244)は、ユビキチンリガーゼアッセイについて報告しており、FLAG(8-merペプチド)でタグ付されたユビキチンはATP、E1、E2-Ubch5c(E2)、E3-HisROC1/Cul1と組合わされる。しかしながら、FLAGでタグ付されたユビキチンはp27へは運ばれない。細胞抽出物を利用してユビキチン化反応に必要な因子を供給するp27のユビキチン化のアッセイを報告している他の文献もある。例えば、Tsvetkovら, Curr Biol, 9(12):661-4 (1999)を参照されたい。
【発明の開示】
【0007】
3.本発明の概要
本発明は、ユビキチン化タンパク質中のユビキチン量を決定する方法であって、該ユビキチン化タンパク質を表面上で捕捉し、捕捉されたユビキチン化タンパク質を形成させること、及び該捕捉されたユビキチン化タンパク質中のユビキチンを検出することを含む、前記方法を提供する。別の実施形態において、本発明はタンパク質のユビキチン化レベル又は量を決定する方法であって、(a) 該タンパク質と、該タンパク質を共にユビキチン化することができる複数のポリペプチドとを接触させ、ユビキチン化タンパク質を形成させ;(b) 該ユビキチン化タンパク質を表面上で捕捉し;さらに(c) 該表面上で捕捉された該タンパク質中に存在するユビキチン量を決定することを含み、該表面上に捕捉された該タンパク質中に存在するユビキチン量が該p27のユビキチン化の程度と相関する、前記方法を提供する。特別な実施形態において、該タンパク質はp27である。特別な実施形態において、該複数のポリペプチドはそれぞれ単離されたポリペプチドである。より特別な実施形態において、該複数のポリペプチドはE1、E2、E3、Cks1及びユビキチンを含む。より特別な実施形態において、該E1、E2、E3又はCks1は組換え的に産生される。別のより特別な実施形態において、該E1、E2、E3及びCks1は細胞抽出物から精製される。別の特別な実施形態において、該p27は事前にリン酸化(前リン酸化)される。さらに別の特別な実施形態において、該ユビキチンは標識される。より特別な実施形態において、該標識はビオチンである。別のより特別な実施形態において、該標識されたユビキチンはユーロピウムにより可視化され、ストレプトアビジンと結合する。該方法の別の特別な実施形態において、該決定はハイスループットスクリーニングの一部としてマルチウェルプレート上で行われる。
【0008】
別の実施形態において、本発明はユビキチン化タンパク質中のユビキチン量を決定する方法であって、(a) 第1の標識で該タンパク質を標識し;(b) 第2の標識で該ユビキチンを標識し;さらに(c) 該第1の標識の該第2の標識に対する割合を決定することを含み、該割合は該タンパク質中のユビキチン量と相関する、前記方法を提供する。特別な実施形態において、該タンパク質はp27である。別の特別な実施形態において、該第1の標識及び該第2の標識は蛍光標識である。より特別な実施形態において、割合の該決定には、第1の蛍光値を生じさせる該第1の標識からの蛍光を検出し;第2の蛍光値を生じさせる該第2の標識からの蛍光を検出し;さらに該第1の蛍光値の該第2の蛍光値に対する割合を決定することが含まれる。別のより特別な実施形態において、該第1の蛍光標識が励起されると、該第2の標識は検出可能な蛍光シグナルを放つ。より特別な実施形態において、該第1の標識及び該第2の標識は同一のユビキチン化p27上に存在する。別の特別な実施形態において、該第2の蛍光標識が励起されると、該第1の標識は検出可能な蛍光シグナルを放つ。より特別な実施形態において、該第1の標識及び該第2の標識は同一のユビキチン化p27上に存在する。別の特別な実施形態において、該第1の標識及び該第2の標識は、蛍光共鳴エネルギー転移アッセイでの使用に適している。別の特別な実施形態において、該第1の標識はユーロピウム、Cy5、トリスビピリジン・ユーロピウム・クリプテート、Dylight(商標)547、Dylight(商標)647、又はアロフィコシアニン(XL665)である。別の特別な実施形態において、該第2の標識はユーロピウム、Cy5、トリスビピリジン・ユーロピウム・クリプテート、Dylight(商標)547、Dylight(商標)647、又はアロフィコシアニン(XL665)である。別の特別な実施形態において、該第1の標識はユーロピウムであり、該第2の標識はCy5である。より特別な実施形態において、割合の該決定には、該ユーロピウムを340 nmで励起し、第1の蛍光値を生じさせる620 nmで該ユーロピウムの蛍光を検出し、第2の蛍光値を生じさせる665 nmで該Cy5の蛍光を決定し、さらに該第2の蛍光値及び該第1の蛍光値の割合を決定することが含まれ、割合が高くなるほどp27のユビキチン化量が多くなることを示す。該アッセイの特別な実施形態において、該Euの濃度は約2 nMであり、Cy5の濃度は約125 nMである。
【0009】
別の実施形態において、本発明はp27のユビキチン化量を決定する方法であって、(a) p27を、ユビキチン化の前後どちらかで第1の標識で標識されたユビキチンでユビキチン化しユビキチン化p27を形成させ;(b)該p27を該第1の標識と区別できる第2の標識で標識し;さらに(c) 該第2の標識からの第2のシグナルの、該第1の標識からの第1のシグナルに対する割合を決定することを含み、割合が高くなるほどp27のユビキチン化量が多くなることを示す、前記方法を提供する。特別な実施形態において、該第1の標識及び該第2の標識は蛍光標識であり、該第1のシグナル及び該第2のシグナルはそれぞれ、該第1の標識及び該第2の標識からの蛍光シグナルである。より特別な実施形態において、該第1の蛍光標識及び該第2の蛍光標識は、蛍光共鳴エネルギー転移又は発光共鳴エネルギー転移アッセイでの使用に適している。別の特別な実施形態において、該第1の蛍光又は発光標識が供与体であり、該第2の蛍光又は発光標識が受容体である。別の実施形態において、本発明はタンパク質に結合するユビキチン量を決定する方法であって、該ユビキチン上の第2の標識量の、該タンパク質上の該第1の標識量に対する割合を決定することを含み、該割合が該タンパク質のユビキチン化量と相関している、前記方法を提供する。
【0010】
上記の特別な実施形態において、ユビキチン化タンパク質は、タンパク質を、一緒になってin vitroで該タンパク質をユビキチン化するのに十分な複数のポリペプチドと接触させて、タンパク質から形成されている。特別な実施形態において、該複数のポリペプチドのうち、それぞれのポリペプチドは、単離されたポリペプチドである。より特別な実施形態において、該複数のポリペプチドにはE1、E2、E3、Cks1及びユビキチンが含まれる。より特別な実施形態において、該ユビキチンには非標識のユビキチンと標識されたユビキチンが含まれる。より特別な実施形態において、該E1、E2、E3又はCks1は組換え的に産生される。別のより特別な実施形態において、該E1、E2、E3及びCks1は細胞抽出物から精製される。別のより特別な実施形態において、該E1の濃度は約 5 ng/μLであり;該E2の濃度は約150 ng/Lであり;該E3の濃度は約5 ng/μLであり;及び/又は該Cks1の濃度は約0.25 ng/μLである。別のより特別な実施形態において、該標識されたユビキチンはビオチンを含み、濃度は約9 ng/μLである。別のより特別な実施形態において、該E1の濃度は約5 ng/μLであり;該E2の濃度は約150 ng/μLであり;該E3の濃度は約12.5 ng/μLであり;及び/又は該リン酸化p27の濃度は約4 ng/μLである。
【0011】
別の実施形態において、本発明はp27のユビキチン化を調節する化合物を同定する方法であって、該化合物の存在下及び該化合物の非存在下で、単離されたリン酸化p27、E1、E2、E3、Cks1とユビキチンを組合わせることにより形成されたユビキチン化p27の量を決定することを含み、該化合物の存在下で形成されたユビキチン化p27の量が該化合物の非存在下で形成されたユビキチン化p27の量と異なる場合、該化合物はp27のユビキチン化を調節する化合物として同定される、前記方法を提供する。特別な実施形態において、該p27は該E1、E2、E3、Cdk2及びユビキチンと組合わせる前にCdk2及びサイクリンEでリン酸化される。別の特別な実施形態において、該リン酸化p27の濃度は約4 ng/μLであり;該E1の濃度は約5 ng/μLであり;該E2の濃度は約150 ng/μLであり;該Cks1の濃度は約0.25 ng/μLであり;該ユビキチンの濃度は約250 ng/μLであり;又は該E3の濃度は約5 ng/μLである。別の特別な実施形態において、該化合物の存在下で形成されたユビキチン化p27の量は、該化合物の非存在下で形成されたユビキチン化p27の量よりも少なく、該化合物はp27のユビキチン化を阻害する化合物として同定される。別の特別な実施形態において、該E1、E2、E3又はCks1は組換え的に産生される。別の特別な実施形態において、該E1、E2、E3又はCks1は細胞抽出物から精製される。別の特別な実施形態において、該ユビキチンは標識で標識される。より特別な実施形態において、該標識はビオチンである。より特別な実施形態において、該標識されたユビキチンはユーロピウムで標識されたストレプトアビジンで可視化される。別の特別な実施形態において、該同定はハイスループットスクリーニングの一部としてマルチウェルプレート上で行われる。
【0012】
別の実施形態において、本発明はサンプル中のp27のユビキチン化を調節する化合物を同定する方法であって、(a) ある量のp27を化合物と組合わせ、該p27と該化合物の混合物を形成させて第1のサンプルを調製し;(b) 同量のp27を含むが該化合物を含まない第2のサンプルを調製し;(c) 該第1及び第2のサンプルを、p27を共にユビキチン化することができる複数のポリペプチドとそれぞれ接触させ、ユビキチン化p27を形成させ;(d) 該第1及び該第2のサンプル中の該ユビキチン化p27を表面上でそれぞれ捕捉し;さらに(e) 第1及び第2のサンプル中で、該表面上で捕捉された該p27中に存在するユビキチン量をそれぞれ決定することを含み、第1及び第2のサンプルから得られるユビキチン量が異なる場合、該化合物はユビキチン化を調節することを示す、前記方法を提供する。この方法の特別な実施形態において、該第1のサンプルと該第2のサンプルの調製には、p27とE1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、又は任意のそれらの組合せを組合わせることがさらに含まれる。別の特別な例において、該複数のポリペプチドはそれぞれ単離されたポリペプチドである。より特別な実施形態において、該複数のポリペプチドはE1、E2、E3、Cks1及びユビキチンを含む。より特別な実施形態において、該E1、E2、E3又はCks1は組換え的に産生される。別のより特別な実施形態において、該E1、E2、E3及びCks1は細胞抽出物から精製される。さらに別の特別な実施形態において、該ユビキチンは標識される。より特別な実施形態において、該標識はビオチンである。別のより特別な実施形態において、該標識されたユビキチンはユーロピウムで標識されたストレプトアビジンにより可視化される。該方法の別の特別な実施形態において、p27の該ユビキチン化を調節する化合物の同定は、ハイスループットスクリーニングの一部としてマルチウェルプレート上で行われる。
【0013】
別の実施形態において、本発明はタンパク質のユビキチン化を調節する化合物(例えば、抗癌剤)を同定する方法であって、(a) 該タンパク質を該化合物の存在下及び該化合物の非存在下でユビキチン化し; (b) 該タンパク質を第1の標識で標識し;(c) 該ユビキチンを第2の標識で標識し;さらに(d) 該第1の標識の該第2の標識に対する割合を決定することを含み、該化合物の存在下における割合が該化合物の非存在下における割合と異なる場合、該化合物はp27のユビキチン化を調節することを示す、前記方法を提供する。特別な実施形態において、該タンパク質はp27である。別の特別な実施形態において、該第1の標識及び該第2の標識は蛍光標識である。より特別な実施形態において、割合の該決定には、第1の蛍光値を生じさせる該第1の標識からの蛍光を検出し; 第2の蛍光値を生じさせる該第2の標識からの蛍光を検出し;さらに該第1の蛍光値の該第2の蛍光値に対する割合を決定することが含まれる。別のより特別な実施形態において、該第1の蛍光標識が励起されると、該第2の標識は検出可能な蛍光シグナルを放つ。より特別な実施形態において、該第1の標識及び該第2の標識は同一のユビキチン化p27上に存在する。別の特別な実施形態において、該第2の蛍光標識が励起されると、該第1の標識は検出可能な蛍光シグナルを放つ。より特別な実施形態において、該第1の標識及び該第2の標識は同一のユビキチン化p27上に存在する。別の特別な実施形態において、該第1の標識及び該第2の標識は蛍光共鳴エネルギー転移アッセイでの使用に適している。別の特別な実施形態において、該第1の標識はユーロピウム、Cy5、トリスビピリジン・ユーロピウム・クリプテート、Dylight(商標)547、Dylight(商標)647、又はアロフィコシアニン(XL665)である。別の特別な実施形態において、該第2の標識はユーロピウム、Cy5、トリスビピリジン・ユーロピウム・クリプテート、Dylight(商標)547、Dylight(商標)647、又はアロフィコシアニン(XL665)である。別の特別な実施形態において、該第1の標識はユーロピウムであり、該第2の標識はCy5である。別の特別な実施形態において、該第2の標識はユーロピウムであり、該第1の標識はCy5である。より特別な実施形態では、該ユーロピウムは340 nmの照射で励起され、第1の蛍光値を生じさせる620 nmで該ユーロピウムの蛍光を決定し、第2の蛍光値を生じさせる665 nmで該Cy5の蛍光を決定し、さらに該第2の蛍光値の該第1の蛍光値に対する割合を決定し、割合が高くなるほどp27のユビキチン化量が多くなることを示す。
【0014】
本発明は、抗癌剤を同定する方法であって、該化合物の存在下及び該化合物の非存在下で、単離されたp27、E1、E2、E3、Cks1、サイクリンE、Cdk2とユビキチンを組合わせることにより形成されたユビキチン化p27の量を決定することを含み、該化合物の存在下で形成されたユビキチン化p27の量が該化合物の非存在下で形成されたユビキチン化p27の量と異なる場合、該化合物は抗癌剤として同定される、前記方法をさらに提供する。特別な実施形態において、該p27は該E1、E2、E3、Cdk2及びユビキチンと組合わせる前にCdk2及びサイクリンEでリン酸化される。別の特別な実施形態において、該リン酸化p27の濃度は約4 ng/μLであり;該E1の濃度は約5 ng/μLであり;該E2の濃度は約150 ng/μLであり;又は該E3の濃度は約5 ng/μLである。別の特別な実施形態において、該化合物の存在下で形成されたユビキチン化p27の量は、該化合物の非存在下で形成されたユビキチン化p27の量よりも少ない。別の特別な実施形態において、該E1、E2、E3又はCks1は組換え的に産生される。別の特別な実施形態において、該E1、E2、E3及びCks1は細胞抽出物から精製される。別の特別な実施形態において、該ユビキチンは標識される。より特別な実施形態において、該標識はビオチンである。より特別な実施形態において、該標識されたユビキチンはユーロピウムで標識されたストレプトアビジンにより可視化される。別の特別な実施形態において、該同定はハイスループットスクリーニングの一部としてマルチウェルプレート上で行われる。
【0015】
本発明は、抗癌剤を同定する方法であって、(a) ある量のp27を化合物と組合わせ、該p27と該化合物の混合物を形成させることにより、第1のサンプルを調製し;(b) 同量のp27を含むが該化合物を含まない第2のサンプルを調製し;(c) 該第1及び第2のサンプルを、p27を共にユビキチン化することができる複数のポリペプチドとそれぞれ接触させ、ユビキチン化p27を形成させ;(d) 該第1及び該第2のサンプル中の該ユビキチン化p27を表面上でそれぞれ捕捉し;さらに(e) 第1及び第2のサンプル中で、該表面上で捕捉された該p27中に存在するユビキチン量をそれぞれ決定することを含み、第1のサンプルから得られたユビキチン量が該2のサンプルから得られた量よりも少ない場合、該化合物は抗癌剤である、前記方法を提供する。この方法の特別な実施形態において、該第1のサンプルと該第2のサンプルの調製には、p27とE1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、又は任意のそれらの組合せを組合わせることがさらに含まれる。この方法の別の特別な例において、該複数のポリペプチドはそれぞれ単離されたポリペプチドである。より特別な実施形態において、該複数のポリペプチドはE1、E2、E3、Cks1及びユビキチンを含む。より特別な実施形態において、該E1、E2、E3又はCks1は組換え的に産生される。別のより特別な実施形態において、該E1、E2、E3及びCks1は細胞抽出物から精製される。別のより特別な実施形態において、該ユビキチンは標識される。より特別な実施形態において、該標識はビオチンである。さらにより特別な実施形態において、該標識されたユビキチンはユーロピウムで標識されたストレプトアビジンにより可視化される。該方法の別の特別な実施形態において、該同定はハイスループットスクリーニングの一部としてマルチウェルプレート上で行われる。
【0016】
本発明は、抗癌剤を同定する方法であって、第1及び第2の標識の割合の変化、若しくは第1及び第2の標識からのシグナルとして決定されるp27のユビキチン化レベル又は量を化合物が変化させるかどうかを決定することを含み、該p27は該第1の標識で標識されており、ユビキチンは該第2の標識で標識されており、両者に違いを認める場合、該化合物は抗癌剤として同定される、前記方法も提供する。別の実施形態において、本発明は抗癌剤を同定する方法であって、(a) ある量のp27を化合物と組合わせて、該p27と該化合物の混合物を形成させることにより、第1のサンプルを調製し;(b) 同量のp27を含むが該化合物を含まない第2のサンプルを調製し;(c) 該第1及び第2のサンプルを、ユビキチンを含む、p27を共にユビキチン化することができる複数のポリペプチドとそれぞれ接触させ、第1及び第2のユビキチン化p27をそれぞれ形成させ;(d) 該第1及び第2のユビキチン化p27中のp27を第1の標識で標識し、該第1及び第2のユビキチン化p27中のユビキチンを第2の標識で標識し;さらに(e) 該第1及び第2のユビキチン化p27を、第1の標識の第2の標識に対する量比、又は第1の標識の第2の標識に対するシグナル量の割合からそれぞれ決定することを含み、該割合に関して、該第2のユビキチン化p27が該第1のユビキチン化p27と異なる場合、該化合物は抗癌剤である、前記方法を提供する。この方法の特別な実施形態において、該第1のサンプルと該第2のサンプルの調製には、p27とE1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、又は任意のそれらの組合せを組合わせることがさらに含まれる。この方法の別の特別な例において、該複数のポリペプチドはそれぞれ単離されたポリペプチドである。より特別な実施形態において、該複数のポリペプチドはE1、E2、E3、Cks1及びユビキチンを含む。より特別な実施形態において、該E1、E2、E3又はCks1は組換え的に産生される。別のより特別な実施形態において、該E1、E2、E3及びCks1は細胞抽出物から精製される。この方法の別の特別な実施形態において、同定はハイスループットスクリーニングの一部としてマルチウェルプレート上で行われる。特別な実施形態において、該p27は該E1、E2、E3、Cdk2及びユビキチンと組合わせる前にCdk2及びサイクリンEでリン酸化される。別の特別な実施形態において、該リン酸化p27の濃度は約4 ng/μLであり;該E1の濃度は約5 ng/μLであり;該E2の濃度は約150 ng/μLであり;又は該E3の濃度は約12.5 ng/μLである。
【0017】
本発明は、p27のユビキチン化アッセイのキットであって、p27、Cdk2/サイクリンE、及びp27を共にユビキチン化することができる複数のポリペプチド、該ポリペプチドを発現する組換え細胞又は該ポリペプチドをコードする配列を含有する組換えベクターを含む、前記キットをさらに提供する。該キットの特別な実施形態において、p27及びCdk2/サイクリンEは複合体として提供される。別の特別な実施形態において、該複数のポリペプチドはE1、E2、E3、Cks1及びユビキチンを含む。より特別な実施形態において、該ユビキチンは標識される。該キットのより特別な実施形態において、該標識はビオチンである。別のより特別な実施形態において、該キットは、任意でプロテインA又はGで被覆されたプレート;緩衝液;可視化剤;及び該ポリペプチドの発現と精製に必要な器具及び試薬の1以上をさらに含む。
【0018】
3.1 定義
本明細書で使用される場合、「p27」はCdk2-サイクリンE及びCdk2-サイクリンAのインヒビター(例えば、ネガティブレギュレーター)であるタンパク質を意味する。本明細書において使用される場合、「p27」にはp27由来の断片、部分、又はポリペプチド、すなわち任意のp27変異体(タグ付されたp27も含む)も包含され、本明細書で記載のアッセイにおいて有用であり得る。本明細書に記載の方法で使用されるp27由来の任意の断片、部分、又はポリペプチドは、残りのアッセイ成分によって認識(すなわち、結合)され、ユビキチン化される必要がある。
【0019】
本明細書で使用される場合、「単離された」は、例えば「単離されたタンパク質」に関していうと、アッセイ方法の特定成分が細胞抽出物から分離されるか、若しくはそれが由来する自然の細胞環境中にはその特定成分が含まれないことを意味する。「単離された」タンパク質又はアッセイ成分は、たとえ他のアッセイ成分と組合わされても、なおも「単離された」ものとみなされる。
【0020】
本明細書において使用される場合、「前リン酸化されたp27」は、Cdk2及びCycEとの複合体内において、ATP及びMg++の存在下でCdk2及びCycEによりリン酸化されたp27を意味する。
【0021】
本明細書において使用される場合、「E1」はユビキチン活性化酵素を意味する。
【0022】
本明細書において使用される場合、「E2」はユビキチン結合酵素を意味する。
【0023】
本明細書において使用される場合、「E3」はSCFSkp2として知られるユビキチンリガーゼを意味し、タンパク質Skp1、Skp2、Roc1及びcullin (Cul1)を含む。
【0024】
本明細書において使用される場合、「Cks1」はp27のユビキチン化に必須の細胞周期制御タンパク質を意味し、またSCFSkp2に必須な活性化因子である。
【0025】
本明細書において使用される場合、「標識」は直接的(すなわち、第1の標識)又は間接的(すなわち、第2の標識)に検出することができる分子を意味し;例えば標識は、可視化することができ、さらに/若しくは測定することができ、または同定することによりその存在若しくは不存在を知ることができる。当業者であれば、上記を標識により実現する方法を理解するであろう。標識としては、限定されるものではないが、ビオチン、蛍光標識、標識酵素及び放射線同位元素が含まれる。
【0026】
本明細書において使用される場合、「ユビキチン」には本明細書のどこかに記載される完全長のタンパク質又はその断片若しくは変異体が含まれ、標識の有無は問わない。
【0027】
本明細書において使用される場合、「p27のユビキチン化を調節する」とは、p27のユビキチン化のレベル又は程度に検出可能な変化をもたらすことを意味する。「調節する」には、p27のユビキチン化のレベル若しくは量(例えば、所定の時間でp27に結合するユビキチン分子の数、又はその結合が起こる速度)を増加又は減少させることが含まれる。「調節する」には、p27のユビキチン化を完全に阻害することも含まれる。好ましくは、p27のユビキチン化を調節する化合物として該アッセイで同定された化合物は、p27のユビキチン化の量又はレベルを減少させる。
【0028】
本明細書において使用される場合、「ポリペプチド」は、機能性タンパク質(例えば、E1、E2、p27等)の全部、又はタンパク質全体の活性の全て若しくは有効な一部を保持する任意のそのフラグメントの両方を意味する。
【0029】
4.図面の簡単な説明
図1は、本明細書に記載のp27ユビキチンアッセイで使用される成分間の相互作用を図示する。p27はCdk2及びサイクリンE(CycE)と複合体を形成し、リン酸化される。p27複合体とE3(すなわちSCFskp2(Cullin(Cul1)、Skp1、Skp2及びRoc))をCks1の存在下で接触させると、ユビキチン(黒丸)がE2〜UbからE2、次いでp27へと転移される。E2〜Ubの形成は、E1により触媒される。p27は図示のとおり、該アッセイにおいて複数ユビキチン化されうる。
【0030】
図2は、アッセイの特異性試験の結果を表す。p27のユビキン化アッセイ(完全)を、表2に挙げた全ての成分の存在下で実施した(下記の実施例2を参照されたい)。各対照では、表示されたそれぞれ1つの成分が該アッセイから除かれた。ユビキチン化p27(4ng/μl)は、2.5μg/mlの抗体sc-528で被覆されたプロテインA又はプロテインGプレート上で捕捉され、またユーロピウム-ストレプトアビジン(1:1000)で検出された。Y軸の値は、p27のユビキチン化を示しており、ユーロピウムキレートの時間分解蛍光発光(34Onmで励起し、615nmで発光)として測定される。
【0031】
図3は、アッセイの最適化の間の、捕捉抗体sc-528のタイトレーションを表す。2つの異なるロットのsc-528が逐次希釈され、かつプロテインAで被覆された384ウェルプレート上に被覆された。前リン酸化されたp27(4ng/μl)は、完全にユビキチン化され、かつ該プレート上で捕捉されEu-Strep(1:1000)で検出された。Y軸の値は、p27のユビキチン化を示しており、ユーロピウムキレートの時間分解蛍光発光(34Onmで励起し、615nmで発光)として測定される。
【0032】
図4は、アッセイの最適化の間の、ユーロピウム-ストレプトアビジンのタイトレーションを表す。前リン酸化されたp27(4ng/μl)は完全にユビキチン化され、かつ2.5μg/mlのsc-528で被覆されたプロテインAプレート上で捕捉された。逐次希釈されたEu-Strep(0.1mg/ml)を用いて、ユビキチン化p27が検出された。
【0033】
図5は、アッセイの最適化の間の、ユビキチン化p27のタイトレーションを表す。前リン酸化されたp27(8ng/μl)は完全にユビキチン化され、アッセイ希釈液で逐次希釈され、かつ2.5μg/mlのsc-528で被覆されたプロテインAプレート上で捕捉された。Eu-Strep(0.1mg/ml)は1:250で希釈され、ユビキチン化p27が検出された。
【0034】
図6A〜6Cは、アッセイ成分E1及びE2のタイトレーションを表す。前リン酸化p27は、E1(図6A)又はE2(図6B)のどちらかにより、表記の濃度に変化させてユビキチン化された。他の成分は、図6Cに示すとおり一定の濃度に保持した。p27はsc-528(2.5μg/ml)で被覆されたプロテインAプレート上で捕捉された。ユビキチン化p27は、Eu-ストレプトアビジン(1:25O希釈)により検出された。
【0035】
図6D〜6Fは、アッセイ成分E3及びCks1のタイトレーションを表す。前リン酸化p27は、E3(図6D)又はCks1(図6E)のいずれかにより、表記の濃度に変化させてユビキチン化された。他の成分は、図6Gに示すとおり一定の濃度に保持された。p27はsc-528(2.5μg/ml)で被覆されたプロテインAプレート上で捕捉された。ユビキチン化p27は、Eu-ストレプトアビジン(1:25O希釈)により検出された。
【0036】
図6G〜6Iは、E3:Cks1の混合液のタイトレーションを表す。前リン酸化p27は、E3(図6G)及びCks1(図6H)を除き、全ての成分により、図6Iで示されたとおり一定の濃度でユビキチン化された。E3及びCks1は1:1のモル比で混合し、逐次希釈した。したがって、この実験において、E3及びCks1はモル比1:1で共にタイトレートされた。p27はsc-528(2.5μg/ml)で被覆されたプロテインAプレート上で捕捉された。ユビキチン化p27は、Eu-ストレプトアビジン(1:25O希釈)により検出された。該データはE3及びCks1の両方の濃度に対しプロットされた。
【0037】
図6J〜6Lは、p27とBio-Ubのタイトレーションを表す。前リン酸化p27は、p27又はBio-Ubのどちらかにより、表記の濃度に変化させてユビキチン化された。他の成分は、表2に示すとおり一定の濃度に保持した。p27はsc-528(2.5μg/ml)で被覆されたプロテインAプレート上で捕捉された。ユビキチン化p27は、Eu-ストレプトアビジン(1:25O希釈)により検出された。
【0038】
図7A〜7Cは、アッセイの最適化の間の、ATP及びジチオスレイトール(DTT)のタイトレーションを表す。前リン酸化p27は、DTT(図7A)又はATP(図7B)のいずれかにより表記の濃度に変化させてユビキチン化し、他の成分は図7Cに示すとおり一定の濃度でユビキチン化された。
【0039】
図8A〜8Cは、アッセイの最適化の間の、ジメチルスルホキシド(DMSO)のタイトレーションを表す。前リン酸化p27は、増量したDMSOの存在下で、図8Cに示すとおり一定の濃度ですべての成分によりユビキチン化された。
【0040】
図9Aは、p27のユビキチン化を進行させる至適時間を決めるための、経時変化実験を表す。前リン酸化p27は、室温で表示の時間に、図9Bに示す全ての成分の存在下でユビキチン化された。p27はsc-528(2.5μg/ml)で被覆されたプロテインAプレート上で捕捉された。ユビキチン化p27は、Eu-ストレプトアビジン(1:25O希釈)により検出された。
【0041】
図10は、反応停止を最適化した結果を表す。対照(Cks1あり又はなし)では、前リン酸化p27が、室温でCks1と共に又はCks1なしでユビキチン化された。表示の時間において、反応物のアリコート(30μl)を40μlのアッセイ希釈液(AD)と混合させ、すべての時点までドライアイスで凍結させ回収した。AD+/-Cks1では、アッセイ反応液をCks1と共に又はCks1なしで、室温でインキュベートした。15分で、200μlのADを150μlのアッセイ反応液に加え、混合液のインキュベートを室温で継続した。表示時間において、該混合液のアリコート(70μl)を取り出し、すべての時点までドライアイスで凍結させ回収した。p27はsc-528で被覆されたプロテインAプレート上で捕捉された。ユビキチン化p27は、Eu-ストレプトアビジンにより検出された。
【0042】
図11は、p27ユビキチン化のHTR-FRETアッセイ様式を表す。11A:p27のユビキチン化反応及び反応成分。11B:ユビキチン化p27の検出。Eu-ユーロピウム。ユーロピウムは340 nmの照射により励起させ、さらにユーロピウムの蛍光は620 nmで読み取り、Cy5の蛍光は665 nmで読み取った。FRET値(すなわち、665/620*10,000)の計算式は、他の供与体/受容体対に関しては、(受容体の蛍光値)/(供与体の蛍光値)*定数に一般化することができ、ここで供与体及び受容体の蛍光値は、供与体又は受容体の蛍光値が検出できる波長の蛍光値である。
【0043】
図12:ビオチン標識ユビキチンの最適濃度の決定。p27は、室温で90分間、表示濃度のBio-UbによりE1の存在下又は非存在下で、ユビキチン化された。該アッセイにおける各成分の最終濃度は、次のとおりとした:His-E1:5 ng/ml、His-Ubc3:150 ng/ml、E3:10 ng/ml、Cks1:0.5 ng/ml、及び前リン酸化p27:8 ng/ml。反応は、抗p27(sc-527)、Eu-PRG(ユーロピウム-プロテインG)、及びSA-XL665(最終濃度はそれぞれ、1OnM、5nM、及び25〜125nM)を含む検出混合液の1:4希釈液で停止させた。データはAnalyst HT (Molecular Devices)により収集した。標識からの蛍光は、620 nm及び665 nmで決定された。各濃度条件において、グラフの棒は左から右へと読まれ、凡例に従い上から下へと読まれる。
【0044】
図13:ビオチン標識ユビキチンの最適濃度の決定。p27は、室温で1時間、表示濃度のBio-Ub及びUbによりユビキチン化された。該アッセイにおける各成分の最終濃度は、次のとおりとした:His-E1:5 μg/ml、His-Ubc3:150 ng/μl、E3:10 ng/μl、Cks1:0.5 ng/μl、及び前リン酸化p27:8 ng/μl。反応は、2倍量のSDS-ローディング緩衝液の1:2希釈液で停止させ、SDS-PAGE並びに表記の抗p27及び抗ユビキチンによるウェスタンブロットに供した。Ub:ユビキチン、Bio-Ub:ビオチン標識ユビキチン。ブロットの左の数字は、分子量(キロダルトン)である。
【0045】
図14:ストレプトアビジン結合Cy5(図14A)及びプロテインG-ユーロピウム(図14B)のタイトレーション。p27は、表に掲げた成分と共に室温で1時間、E1の存在下(ポジティブコントロール:S)又はE1の非存在下(ネガティブコントロール:B)でユビキチン化された。それぞれの反応(15μl)は5μlの8OmM EDTA及び2OnMの抗リン酸化p27、5μlのCy5-SA希釈液、及び5μlのEu-PRGにより、384ウェルプレート上で停止させた。該アッセイにおける各成分の最終濃度は、次のとおりとした:His-E1:5 ng/μl、His-Ubc3:150 ng/μl、E3:5 ng/μl、Cks1:0.25 ng/μl、前リン酸化p27:4 ng/μl、Bio-Ub:9.1 ng/μL、ユビキチン:34.3 ng/μL、DMSO:2%。EDTA及び抗リン酸化p27は、それぞれ20 mM及び3.33 nMであった。Cy5-SA及びEu-PRGの最終濃度は、それぞれ図14A及び図14Bに示すとおりであった。室温で1時間インキュベートした後、プレートはAnalyst HTで読み取った。S/Bは、(E1を伴うサンプルのFRET)/(E1を伴わない対応するサンプルのFRET)である。
【0046】
図15:抗p27及びプロテインG-Euのタイトレーション。p27は、表に掲げた成分と共に、室温で1時間、E1の存在下(ポジティブコントロール:S)又は非存在下(ネガティブコントロール:B)でユビキチン化された。それぞれの反応(15μl)は、5μlの8OmM EDTA及び75OnMのCy5-SA、5μlの抗リン酸化p27の希釈液、及び5μlのEu-PRGにより、384ウェルプレート上で停止させた。EDTA及びCy5-SAの最終濃度は、それぞれ2OmM及び125nMであった。抗リン酸化p27及びEu-PRGの最終濃度はそれぞれ、表示されたとおりであった。他のアッセイ成分の最終濃度は、次のとおりとした:His-E1:5 ng/μl、His-Ubc3:150 ng/μl、E3:5 ng/μl、Cks1:0.25 ng/μl、及び前リン酸化p27:4 ng/μl、Bio-Ub:9.1 ng/μL、ユビキチン:34.3 ng/μL、DMSO:2%。室温で1時間インキュベートした後、該プレートはAnalyst HTで読み取った。S/Bは(E1を伴うサンプルのFRET)/(E1を伴わない対応するサンプルのFRET)である。
【0047】
図16:E1及びE2のタイトレーション。p27は、E1又はE2の濃度を増加させながら、室温で1時間、384ウェルプレート上でユビキチン化された。それぞれの反応(15μl)は、4OmM EDTA、25OnMのCy5-SA、8nMの抗リン酸化p27、及び2.5nM Eu-PRGを含む停止液15μlでインキュベートされた。他のアッセイ成分の最終濃度は以下のとおりとした: E3:5 ng/μL、Cks1:0.25 ng/μL、前リン酸化p27:4 ng/μL、Bio-Ub:9.1 ng/μL、ユビキチン:34.3 ng/μL、DMSO:2%。室温で1時間インキュベートした後、該プレートはAnalyst HTで読み取った。
【0048】
図17:E3/Cks1のタイトレーションと経時変化。p27は、E3及びCks1の濃度を増加させながら、室温で表示時間に384ウェルプレート上でユビキチン化された。E3は各希釈液につき、Cks1を等モル比とした。各時点において、5μlの8OmM EDTAを15μlの反応液へと加えた。全ての時点が完了した後、375nMのCy5-SA、12nMの抗リン酸化p27、及び3.75nM Eu-PRGを含む抗体混合液10μlを、20μlのEDTAを添加した反応混合液に加えた。他のアッセイ成分の最終濃度は以下のとおりとした: His-E1:5 ng/μL、His-Ubc3:150 ng/μL、E3:12.5 ng/μL、Cks1:0.625 ng/μL、前リン酸化p27:4 ng/μL、Bio-Ub:9.1 ng/μL、ユビキチン:34.3 ng/μL、DMSO:2%。室温で1時間インキュベートした後、該プレートはAnalyst HTで読み取った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
5.発明の詳細な説明
5.1 p27のユビキチン化アッセイ方法
本発明は、p27のユビキチン化量又はレベルをアッセイする方法を提供する。該方法では、各成分から再構成されたin vitro p27ユビキチン化システムを適用する。本明細書に記載の方法が有利なのは、それらがp27のユビキチン化のハイスループット分析に適しているからである。該アッセイに被験化合物が含まれる場合(すなわち、p27が被験化合物の存在下でリン酸化又はユビキチン化される場合)、本明細書に記載のp27ユビキチン化アッセイにより、該化合物がp27のユビキチン化量を調節するか(例えば、検出可能な程度に減少又は増加させるか)否かを決定することができる。そのような化合物は、p27の不適切若しくは異常なユビキチン化(例えば、正常と比べ異常に高いp27のユビキチン化、1種類以上の細胞型に腫瘍形成性をもたらすp27のユビキチン化レベル等)により発生するか、これらに関連する疾患、障害又は状態を治療する候補物となる。
【0050】
本明細書に記載のアッセイでは、通常次の成分を用いる:
【表1】

【0051】
p27アッセイに関して、2種類の様式の詳細な例が実施例に記載されている。
【0052】
5.1.1 キャプチャーアッセイ
p27のユビキチン化程度を化合物の存在又は非存在下でアッセイする方法はプレートキャプチャーアッセイを利用して実施することができ、その場合ユビキチン化p27はプレート上に捕捉され、そして捕捉されたユビキチンの量が決定される。
【0053】
5.1.1.1 方法
通常、この方法は次のとおり進められる。p27をユビキチン化し表面へ捕捉する。そして、ユビキチン化したp27中のユビキチンを標識し、該標識を検出する。標識の量の変化は、p27中のユビキチン若しくはユビキチン化のレベル又は量の変化と相関している。1実施形態において、p27はリン酸化されると、ユビキチン化に適した基質となる。1実施形態において、p27はタンパク質CycE及びCdk2との接触に供され、p27は例えば残基T187でリン酸化され、Tl87-リン酸化p27となる。特別な実施形態において、このリン酸化p27はCdk2及びCycEと共に複合体を形成する。別の実施形態において、p27、Cdk2及びCycEの複合体は、さらにCdk2及びCycEと接触させられ、T187におけるp27のリン酸化が増加する。
【0054】
その後リン酸化p27は、ユビキチン化に必要なポリペプチドとATP及びMgCl2の存在下で接触させられる。1実施形態において、該ポリペプチドはE1、E2、E3(SCFSkp2)、Cks1及び十分量のユビキチンであり、p27のユビキチン化反応混合物を形成する。1実施形態において、該ユビキチンは標識される。好ましい実施形態において、該ユビキチンはビオチンで標識されている。ある時間の経過後に該反応は停止し、そして該ユビキチン化されたp27は表面上で捕捉される。任意で、加熱ステップを反応の最後に含めてもよい。該捕捉されたp27はその後アッセイされ、ユビキチンの存在量が決定される。当業者であれば、上記のとおり概説した方法のステップを変更しても、アッセイの目的を達成でき得ることを理解するであろう。
【0055】
1実施態様において、本発明はp27のユビキチン化の程度を決定する方法であって、p27と、p27を共にユビキチン化することができる複数のポリペプチドとを接触させ、ユビキチン化p27を形成させ;該ユビキチン化p27を表面上で捕捉し;さらに該表面上で捕捉された該p27中に存在するユビキチン量を決定することを含み、該表面上に捕捉された該p27中に存在するユビキチン量は該p27のユビキチン化の程度に相関する、前記方法を提供する。
【0056】
別の実施形態において、本発明はサンプル中のp27の量を決定する方法であって、p27と、p27を共にユビキチン化することができる複数のポリペプチドとを接触させ、ユビキチン化p27を形成させ;該ユビキチン化p27を表面上で捕捉し;さらに該表面上で捕捉されたp27中に存在するユビキチン量を決定することを含み、該表面上に捕捉されたp27中に存在するユビキチン量は該サンプル中のp27の量を示す、前記方法を提供する。特別な例において、該サンプルはヒトに由来する。別の特別な実施形態において、該サンプルは、p27レベルが正常範囲を逸脱していることに起因する疾患若しくは状態に罹患又は罹患しやすい被験体に由来する。より特別な実施形態において、該疾患又は状態は癌である。
【0057】
別の実施形態において、本発明はp27のユビキチン化を調節する化合物を同定する方法であって、該化合物の存在下及び該化合物の非存在下で、単離されたリン酸化p27、E1、E2、E3、Cks1とユビキチンを組合わせて形成されたユビキチン化p27の量を決定することを含み、該化合物の存在下で形成されたユビキチン化p27の量が該化合物の非存在下で形成されたユビキチン化p27の量と異なる場合、該化合物はp27のユビキチン化を調節する化合物として同定される、前記方法を提供する。特別な実施形態において、該p27は該E1、E2、E3、Cdk2及びユビキチンと組合わせる前にCdk2及びサイクリンEでリン酸化される。別の特別な実施形態において、該リン酸化p27の濃度は約4 ng/μLであり;該E1の濃度は約5 ng/μLであり;該E2の濃度は約150 ng/μLであり;該Cks1の濃度は約0.25 ng/μLであり;該ユビキチンの濃度は約250 ng/μLであり;又は該E3の濃度は約5 ng/μLである。別の特別な実施形態において、該化合物の存在下で形成されたユビキチン化p27の量は、該化合物の非存在下で形成されたユビキチン化p27の量よりも低く、該化合物はp27のユビキチン化を阻害する化合物として同定される。別の特別な実施形態において、該E1、E2、E3又はCks1は組換え的に産生される。別の特別な実施形態において、該E1、E2、E3又はCks1は細胞抽出物から精製される。別の特別な実施形態において、該ユビキチンは標識で標識される。より特別な実施形態において、該標識はビオチンである。
【0058】
別の実施形態において、この発明はサンプル中のp27のユビキチン化を調節する化合物を同定する方法であって、ある量のp27を候補化合物と組合わせ、p27と該化合物の混合物を形成させることにより、第1のサンプルを調製し;同量のp27を含むが該化合物を含まない第2のサンプルを調製し;該第1及び第2のサンプルを、p27を共にユビキチン化することができる複数のポリペプチドとそれぞれ接触させ、ユビキチン化p27を形成させ;該第1及び該第2のサンプル中の該ユビキチン化p27を表面上でそれぞれ捕捉し;さらに第1及び第2のサンプル中で、該表面上で捕捉された該p27中に存在するユビキチン量をそれぞれ決定することを含み、第1及び第2のサンプルから得られるユビキチン化量が異なる場合、該化合物はユビキチン化を調節するといえる、前記方法を包含する。該方法の特別な実施形態において、該第1のサンプル及び該第2のサンプルは、p27、E1、E2、E3、Cks1、ユビキチン又はそれらの任意の組合せと組合わせることにより個別に調製される。
【0059】
別の実施形態では、該方法を使用して、異常なp27のユビキチン化に関連する疾患、障害又は状態を治療することができる1以上の化合物を同定することができる。特別な実施形態において、該異常なp27のユビキチン化は、ユビキチン化の異常増加を表す。さらに特別な実施形態において、このユビキチン化の異常増加が、増殖若しくは転移を引き起こし、或いはこれらと関連している。別の実施形態では、該方法を使用してp27のユビキチン化を減少させる化合物である抗癌剤を同定することができる。
【0060】
該方法の1実施形態において、該複数のポリペプチドはそれぞれ単離されたポリペプチドであり、つまり細胞抽出物や同一物質中には含まれていない。特別な実施形態において、該複数のポリペプチドにはE1、E2、E3、Cks1及びユビキチンが含まれる。より特別な実施形態において、該ユビキチンは標識される。該標識は、任意の検出可能な標識(例えば、比色分析用標識、蛍光、発光、放射性標識など)である。より特別な実施形態において、該標識はビオチンである。別の実施形態において、該p27又は任意の該複数のポリペプチドは組換え的に産生される。別の実施形態において、該p27又は任意の該複数のポリペプチドは、細胞抽出物から精製される。別の実施形態において、該p27又は任意の該複数のポリペプチドは組換え的に個別に産生され、in vitroで組合わされる。別の実施形態において、2以上の該p27、該Cdk2及び該サイクリンEは宿主において共発現され、ともに精製される。別の実施形態において、該E3はタンパク質Cul1、Roc1、Skp1及びSkp2からなり、該Cul1、Roc1、Skp1及びSkp2は宿主で共発現され、ともに精製される。別の実施形態において、該p27はユビキチン化の前にリン酸化される。別の実施形態において、該p27はp27、Cdk2及びサイクリンEの複合体とCdk2及びサイクリンEの複合体を、ATP及びマグネシウムの存在下で接触させることによりリン酸化される。別の特別な実施形態において、該表面はp27に結合する抗体で被覆されている。より特別な実施形態において、該抗体はp27のC末端19残基を複数認識する抗体である。
【0061】
5.1.1.2 プレート
本明細書記載のアッセイのプレートキャプチャー様式の本質的な態様は、p27を表面上で捕捉することにある。この表面は、好ましくは複数サンプルのハイスループットスクリーニングに適したものであり、すなわち複数のp27のユビキチン化反応を並行して行うのに適したものである。本明細書に記載の方法で使用され得る表面としては、限定されるものではないが、ガラス又はプラスチック表面が挙げられる。好ましくは、該表面はプラスチック表面であり、そしてより好ましくは、プラスチックのマルチウェルプレート、例えば48-ウェルプレート、96-ウェルプレート、384-ウェルプレート、又は1536-ウェルプレート等の上の複数表面のいずれか1つである。さらにより好ましくは、該表面は自動蛍光発光する量が少量であるものである。そのような表面の例としては、これに限定されないが、白色のプレート、又は好ましくはOptiPlate 96-well plates (Perkin-Elmer, Boston, Massachusetts)等の黒色のプラスチック(例えば、ポリスチレン)プレート若しくはPierce Biotechnology (Rockford, Illinois)社の黒色プレートが挙げられる。該プレートは特注して被覆することができる。該表面は好ましくはプロテインA又はプロテインGで被覆される。
【0062】
該表面は十分量のp27を捕捉するように調製され、ユビキチン化アッセイで使用される。p27を該表面に捕捉する好ましい方法は、抗p27抗体を用いる方法である。そのような抗体は、StressGen (Victoria, British Columbia, Canada)、Zymed Laboratories (South San Francisco, California)又はBD Biosciences Pharmingen (San Diego, California)のような供給業者より購入できる。抗p27抗体には、これに限定されないが、例えばsc-528、sc-527、及びK25020と表記される抗体が含まれる。
【0063】
別の方法としては、そのような抗体は周知技術を必要に応じて用いて調製することができる。p27抗体を産生する際には、p27タンパク質全体を使用できるが、該タンパク質のフラグメントも使用できる。1実施形態において、該抗体はp27のC末端19残基を免疫原として利用し、そのような免疫原に免疫特異的に結合する抗体を生じさせて産生される。本発明で役立つp27抗体には、これに限定されないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、及びFab発現ライブラリーが含まれる。好ましくは、該p27抗体はモノクローナル又はポリクローナル抗体である。1実施形態において、該抗体はsc-528抗体(p27のC末端ペプチド(19-mer)から産生されたウサギポリクローナル抗体)である。
【0064】
当技術分野で公知の様々な方法を用いて、p27に対するポリクローナル抗体又はそのフラグメントを産生することができる。。特別な実施形態では、ウサギポリクローナル抗体を取得することができる(Pagano, 1995, 「From peptide to purified antibody」, in Cell Cycle: Materials and Methods, Pagano, ed., Spring- Verlag., pp. 217-281)。
【0065】
抗p27抗体を産生するためには、野生型p27、又は合成型、又はその誘導体(例えば、フラグメント)を様々な宿主動物(これに限定されないが、例えばウサギ、マウス、及びラット)へ注射して免疫がなされ得る。様々なアジュバントを宿主の種に合せて使用することで、免疫応答を増強することができ、該アジュバントには(完全及び不完全)フロイントアジュバント、水酸化アルミニウム(alum)などの無機物質ゲル、モノホスホリルリピドA(MPL)等のリポ多糖誘導体、リゾレシチン等の表面活性物質、多価ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳液、キホールリペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、及びBCG(bacille Calmett-Guerin)及びコリネバクテウム・パルブム(Corynebacterium parvum)等の潜在的に有用なヒトのアジュバントが含まれる。
【0066】
p27に対するモノクローナル抗体の調製では、任意の技術を用いて、連続継代細胞株を培養し抗体分子を産生させることができる。例えば、Kohler及びMilsteinにより最初に開発されたハイブリドーマ技術(Nature 256:495-497 (1975))のほかに、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら, Immunology Today 4:72 (1983))、及びEBVハイブリドーマ技術によりヒトモノクローナル抗体を産生することができる(Cole, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96 (1985))。本発明のさらなる実施形態において、モノクローナル抗体は、無菌動物において最近の技術を利用して産生され得る(例えば、PCT/US90/02545を参照されたい)。ヒト抗体を使用することができ、またヒトハイブリドーマ(Coteら, Proc. Natl. Acad. ScL U.S.A. 80:2026-2030 (1983))の使用やヒトB細胞のエプスタイン・バー・ウイルス(Epstein-Barr virus)によるin vitro形質転換(Coleら, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, pp. 77-96 (1985))により取得することができる。
【0067】
一本鎖抗体を使用してp27を捕捉することもできる。米国特許番号4,946,778を参照されたい。
【0068】
抗p27抗体の産生において、所望の抗体のスクリーニングは当技術分野で知られる技術、例えばELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)により完遂することができる。
【0069】
該表面への抗体の結合は、結合抗体を介してp27を該表面へ逐次結合させる任意の手段により完遂され得る。例えば、ビオチンをコンジュゲートさせた抗体は、アビジンで被覆された表面に結合され得る。好ましいい実施形態において、該表面はプロテインA又はプロテインGで被覆されており、該抗体はこの被覆されたプレートと接触させられ、結合される。表面を被覆するのに、プロテインAとプロテインGのどちらを選択するかは、抗p27抗体の供給源による。例えば、プロテインA及びプロテインGは、ウサギ及びヒトIgG1抗体とほぼ等量十分に結合するが、プロテインGはヒツジ、ヤギ及びウシ由来の抗体にプロテインAよりも良好に結合する。プロテインA及びプロテインGは、Amersham Biosciences, Inc. (Uppsala, Sweden)又はBio Vision (Mountain View, California)から取得することができる。プロテインAで被覆されたプレートは、例えばPierce Biotechnology (Rockford, Illinois)から取得することができる。
【0070】
抗p27抗体をプロテインA又はプロテインGで被覆された表面へ付着させるためには、一般に、該抗体を該表面へ接触させれば、十分に結合させることができる。特別な実施形態において、抗p27抗体は、プロテインA又はプロテインGで被覆された表面に次のとおり結合される。表面は中程度の界面活性剤(例えば、0.05% Tween 20を含有するリン酸緩衝生理食塩水)を含む緩衝液で1回以上洗浄し、その後、抗体を含む溶液を該表面へ付着させた後、室温で1時間以上、好ましくは一晩インキュベートさせる。過剰な(すなわち、結合していない)抗体は、ブロッキング剤、例えばEILSAアッセイ希釈液(例えば、BD Pharmingen, No. 555213から購入)を含有する緩衝液で該表面から洗い流し、該緩衝液又は希釈液を抗体が結合した表面に接触させ、そして室温で1〜4時間インキュベートさせる。
【0071】
5.1.2 FRETアッセイ
本明細書に記載のp27のユビキチン化アッセイは、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)アッセイ、好ましくはHTR-FRET(均一時間分解蛍光共鳴エネルギー転移)アッセイとして実施することもできる。この実施形態では、該アッセイは2種類の蛍光団が使用され、プレート上への捕捉や洗浄工程を必要としない。
【0072】
該アッセイは通常2段階で進行する。第1に、該アッセイのタンパク質成分(例えば、p27、Cdk2、CycE、Cks1、Skp1、Skp2、Cul1、Roc1)は、一般にプレートキャプチャーアッセイについて上記したとおり一緒にし、ユビキチン化混合物を形成させる。通常、Cul1、Roc1、Skp1及びSkp2を一緒にすると、テトラメトリックな複合体が形成され、他のアッセイ成分がこれに加えられる。他には、Cul1/Roc1及びSkp1/Skp2を一緒にすると、ジメトリックな複合体が形成され、残りのアッセイ成分がこれに加えられる。p27はリン酸化されると、ユビキチンに適した受容体となる。通常、Cks1及びユビキチンは、最後にユビキチン化混合物へ加えられる。E1及びE2は、適切な条件下で共にp27をユビキチン化する。第2に、ユビキチン化の後、p27ユビキチン化複合体の成分、好ましくは、p27は第1の検出可能な標識で標識され、そしてp27に連結されたユビキチンの少なくとも1つは、第2の標識でユビキチン化される前、又はユビキチン化後に標識される。該標識は、その後検出される。標識の程度は、例えば染料が発色する場合は色の程度、標識が蛍光団である場合は蛍光の程度を検出することにより、決定される。p27の標識レベル又は量の、ユビキチンの標識レベル又は量に対する割合が高くなるほど、p27のユビキチン化の量又は程度は増大する。本発明のHTR-FRETアッセイの特別な例は、実施例4に記載されている。
【0073】
1実施形態において、第1の標識及び第2の標識はいずれも蛍光団である。より特別な実施形態において、該蛍光団は蛍光共鳴転移アッセイでの使用に適している。好ましくは、該第1及び第2の標識のうちの1つは供与体の蛍光団であり、またもう1つの標識は受容体の蛍光団である。好ましくは、該受容体の蛍光団は、該供与体の蛍光団に隣接している場合(すわなち、該供与体の蛍光団及び受容体の蛍光団が同一のp27ユビキチン化複合体に存在するか、同一のユビキチン化p27に存在する場合)に、検出可能となるか、実質的により検出しやすくなる。好ましくは、第2の標識は第1の標識に近接していなければ検出されない。好ましくは、受容体の蛍光団は、供与体の蛍光団が励起されないと検出されない。ユビキチン化p27の量、又はp27のユビキチン化の程度若しくは量は、受容体量の供与体の標識量に対する割合、若しくは受容体からのシグナルの供与体の標識からのシグナルに対する割合を決定することにより決定され、割合が高いほどp27のユビキチン化の程度又は量が高くなることを示す。
【0074】
より特別な実施形態において、該p27は第1の標識(例えば、蛍光団)で標識され、該ユビキチンは第2の標識(例えば、蛍光団)で標識される。より特別な実施形態において、該第1の蛍光団は受容体の蛍光団であり、該第2の蛍光団は供与体の蛍光団である。別のより特別な実施形態において、該第1の蛍光団は供与体の蛍光団であり、該第2の蛍光団は受容体の蛍光団である。より特別な実施形態において、該供与体の蛍光団が励起された場合にのみ、該受容体の蛍光団は蛍光発光する。より特別な実施形態において、該第1の標識はユーロピウムであり、第2の標識はCy5である。別のより特別な実施形態において、該第2の標識はユーロピウムであり、該第1の標識はCy5である。Cy5の濃度は100〜200 nMが上限であるのに対し、Euの濃度は低nM範囲(例えば、50 nM未満)内でなければならない。別のより特別な実施形態において、該供与体の蛍光団はユーロピウムであり、該受容体の蛍光団はCy5である。より特別な実施形態において、該第1の標識(例えば、ユーロピウム)は340 nmの照射により励起され、第1の標識の蛍光は620 nmで励起される。
【0075】
第1の蛍光値を生じさせる620 nmにおける第1の標識の蛍光が決定され、第2の蛍光を生じさせる665 nmにおける第2の標識の蛍光が決定され、さらに第2の蛍光値の第1の蛍光値に対する割合が決定され、割合が高くなるほどp27のユビキチン化の程度又は量が高くなることを示す。
【0076】
p27は、当技術分野で知られるタンパク質を標識する方法を用いて標識することができる。好ましい方法では、標識された抗p27抗体又は抗体フラグメントが上述のとおり使用される(第5.1.1.2節を参照されたい)。任意の標識を用いることができるが、好ましい標識は、蛍光共鳴エネルギー転移アッセイの使用に適したものである。好ましい実施形態において、該p27はユーロピウムで標識されたプロテインGが連結された抗p27抗体を用いて、標識される(例えば、図11を参照されたい)。抗p27抗体自体は、Euで標識することができる。該p27は、ヘマグルチニン(HA)、Myc、Flag、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)等のタグをp27へ付着させ、さらに標識された抗体をタグへ結合させることにより標識することもできる。p27はタグ付けされたタンパク質(例えば、p27と該タグを含む融合タンパク質)として発現することもでき、該融合タンパク質はその後、直接又は間接的に標識された抗タグ抗体又は抗体フラグメントと結合される。該p27又はタグ付けされたp27は、標識された第2の抗体を用いて標識することもできる(例えば、一次ヒト抗p27抗体は、Euで標識されたラット、ヤギ、マウス等の抗ヒト抗体と結合させることにより標識される)。該ユーロピウムは、任意のほかの時間分解蛍光団、例えばCy5、クリプテート(例えば、トリスビピリジン・ユーロピウム・クリプテート)、Dylight(商標)547又はDylight(商標)647(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)、アロフィコシアニン(XL665)等で代用することができる。
【0077】
ユビキチンは、当技術分野で知られるタンパク質を標識する方法により標識することもできる。好ましくは、該ユビキチンは時間分解FRETに適したCy5、クリプテート(例えば、トリスビピリジン・ユーロピウム・クリプテート)、Dylight(商標)547又はDylight(商標)647(Pierce Biotechnology, Rockford, IL)、アロフィコシアニン(XL665)等の蛍光団で標識される。p27に関して、ユビキチンの標識化は直接的であり(例えば、標識はユビキチン又はタグと直接的に共有若しくは非共有結合し、該ユビキチンはタグ付けされた融合タンパク質として発現される)、又は該標識は媒介(例えば、標識された抗ユビキチン抗体、標識されたストレプトアビジンが結合したビオチン結合ユビキチン等)を介して結合され得る。
【0078】
5.1.3 アッセイ成分-ポリペプチド
本明細書で記載(例えば、第5.1.1節、第5.1.2節)のp27ユビキチンアッセイのタンパク質成分は、例えば組換えDNA技術を使用したり、あるいは細胞抽出物を精製させて、個別に産生される。該アッセイのタンパク質成分(例えば、E1、E2等)、又はそれらをコードする核酸は、タンパク質が由来する任意の種から得られる。例えば、該アッセイのそれぞれのタンパク質成分は、哺乳類、魚類、鳥類、無脊椎動物等に由来し得る。該アッセイに適したタンパク質成分は、化合物にとって所望の標的と同じ種に由来し;例えば、ヒトのタンパク質アッセイ成分は、同定される化合物がヒトを治療するのに使用される場合に好ましい。しかしながら、1以上のアッセイタンパク質成分が様々な種に由来する場合は、化合物は特定の種を治療するものとして同定され得る。1実施形態において、該アッセイのタンパク質成分はそれぞれ、哺乳類のタンパク質である(すなわち、哺乳類に由来している)。別の実施形態において、該アッセイのタンパク質成分はそれぞれ、霊長類のタンパク質である。別の実施形態において、該アッセイのタンパク質成分はそれぞれ、ヒトタンパク質である。別の実施形態において、該アッセイのタンパク質成分は供給源の種に関係なく、個別に選択される。1実施形態において、該アッセイのタンパク質成分の産生に使用される核酸はそれぞれ、哺乳類の核酸である。別の実施形態において、該アッセイのタンパク質成分の産生に使用される核酸はそれぞれ、霊長類の核酸である。別の実施形態において、該アッセイのタンパク質成分の産生に使用される核酸はそれぞれ、ヒトの核酸である。別の実施形態において、該アッセイのタンパク質成分をコードする核酸は、供給源の種に関係なく個別に選択される。
【0079】
プレートキャプチャー様式のアッセイの1実施形態において、リン酸化p27はアッセイにおいて濃度は約4 ng/μLであり;該E1の濃度は約5 ng/μLであり;該E2の濃度は約150 ng/μLであり;該E3の濃度は約5 ng/μLであり;該Cks1の濃度は約0.25 ng/μLであり;該ユビキチンの濃度は約250 ng/μLである。FRET様式のアッセイの実施形態のうち1実施形態において、該リン酸化p27はアッセイにおいて濃度約4 ng/μLであり; 該E1の濃度は約5 ng/μLであり; 該E2の濃度は約150 ng/μLであり; 該E3の濃度は約12.5 ng/μL; 該Cks1の濃度は約0.625 ng/μLであり; 又は該ユビキチンの濃度は約34 ng/μLである。別の特別な実施形態において、該化合物の存在下で形成されたユビキチン化p27の量は、該化合物の非存在下で形成されたユビキチン化p27の量よりも少ない。別の特別な実施形態において、該E1、E2、E3又はCks1は組換え的に産生される。別の特別な実施形態において、該E1、E2、E3、及びCks1は細胞抽出物より精製される。別の特別な実施形態において、該ユビキチンは標識される。より特別な実施形態において、該標識はビオチンである。
【0080】
様々な実施形態において、本発明に役立つE1タンパク質には、これに限定されないが、ATCC登録番号A38564、S23770、AAA61246、P22314、CAA40296又はBAA33144のポリペプチドのアミノ酸配列を有するE1タンパク質が含まれ、これらは引用により本明細書に含まれているものとする。E1は商業的に(例えば、Affiniti Research Products (Exeter, U.K.)より)入手することができる。
【0081】
様々な実施形態において、本発明のE1タンパク質を産生させるのに用いられる核酸には、これに限定されないが、ATCC登録番号M58028、X56976又はAB012190で開示される核酸が含まれ、これらは引用により本明細書に含まれているものとする。
【0082】
様々な実施形態において、本発明で使用されるE2タンパク質には、これに限定されないが、ATCC登録番号AAC37534、P49427、CAA82525、AAA58466、AAC41750、P51669、AAA91460、AAA91461、CAA63538、AAC50633、P27924、AAB36017、Q16763、AAB86433、AAC26141、CAA04156、BAAl1675、Q16781又はCAB45853で開示されるアミノ酸配列を有するタンパク質が含まれ、それぞれが引用により本明細書に含まれているものとする。
【0083】
E2を作製するのに使用される核酸には、これに限定されないが、ATCC登録番号L2205、Z29328、M92670、L40146、U39317、U39318、X92962、U58522、S81003、AF031141、AF075599、AJ000519、又はD83004で開示される配列を有するそれらの核酸が含まれ、それぞれが引用により本明細書に含まれているものとする。
【0084】
好ましい実施形態において、E2は上記のとおりタグを有する。E2のタグとしては、これに限定されないが、例えば標識、結合対のパートナー及び基質結合成分がある。1実施形態において、該タグはHis-タグ又はGST-タグである。
【0085】
本発明は、E3を含む方法及び組成物を提供する。上述のとおり「E3」はユビキチンリガーゼを意味する。1実施形態において、E3にはリングフィンガープロテイン及びCullinが含まれる。様々な実施形態において、リングフィンガープロテインには、これに限定されないが、Roc1、Roc2又はAPC11が含まれる。
【0086】
リングフィンガープロテインのほかの例としては、これに限定されないが、ATCC登録番号AAD30147及びAAD30146又は6320196で開示されるアミノ酸配列を有するタンパク質が含まれ、これらは引用により本明細書に含まれているものとする。リングフィンガープロテインを作製するのに使用される核酸には、これに限定されないが、ATCC登録番号AF142059、AF142060又はNC_001136の核酸433493〜433990で開示される核酸配列を有する核酸が含まれる。
【0087】
様々な実施形態において、Cullinはこれに限定されないが、Cul 1、Cul 2、Cul 3、Cul 4A、Cul 4B、Cul5又はAPC2を含む。1実施形態において、リングフィンガープロテインはRoc1であり、CullinはCul1である。Cullinのほかの例は、これに限定されないが、ATCC登録番号4503161、AAC50544、AAC36681、4503163、AAC51190、AAD23581、4503165、AAC36304、AAC36682、AAD45191、AAC50548、Q13620、4503167又はAAF05751で開示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を含み、それぞれが引用により本明細書に含まれているものとする。
【0088】
該アッセイで使用されるタンパク質のうち任意のものには、タグ、例えば、単離若しくは精製を促進又は可能にする短いポリペプチド配列が含まれる。
【0089】
組換え型又は野生型ポリペプチドの発現と精製は、当技術分野で知られる任意の一般的方法(例えば、Sambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd Ed. (2001)、Kriegler, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual (1990)、Current Protocols in Molecular Biology (1994)、Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, 3rd Ed. (1994)、及びDeutscher, Guide to Protein Purification (1990))により実施することができ、さらに本明細書に記載の方法によっても行うことができる。本発明の化合物は、公知のタンパク質精製技術(抽出、沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過等)を通常どおり適用して、培地又は細胞から抽出及び精製することができる。化合物は、カラムマトリックスに結合した改変した受容体タンパク質細胞外ドメインを用いたアフィニティークロマトグラフィー、又はヘパリンクロマトグラフィーにより単離することができる。
【0090】
本明細書に記載のハイスループットアッセイで使用される任意のポリペプチドには、もとのポリペプチド配列の保存的変異体が含まれ得る。本明細書で使用される用語「保存的変異」は、アミノ酸残基が生物学的に類似する別の残基で置換されることを意味する。保存的変異としては例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン又はメチオニン等の疎水性残基の1つの別の残基への置換、極性残基の1つを別の残基へ置換(例えば、アルギニンをリジンへ置換、グルタミン酸をアスパラギン酸へ置換、又はグルタミンをアスパラギンへ置換等)することが挙げられる。用語「保存的変異」には、非置換の親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を用いて、置換ポリペプチドに対して作製された抗体が非置換ポリペプチドに対しても免疫反応できるようにすることも含まれる。
【0091】
任意の上記ポリペプチドの一次アミノ酸配列を若干改変させれば、本明細書で記載の対応する非改変のポリペプチドと比べ、ほぼ同等の活性をポリペプチドに付与することができる。そのような改変は、部位特異的突然変異誘発により意図的に行ったり、あるいは自然に起こすことができる。これらの改変により産生された上記に挙げたポリペプチドの改変型は、該ポリペプチドの生物学的活性が現存する限り、本明細書に記載のアッセイにおいて使用することができる。
【0092】
1以上のアミノ酸を欠失させることにより、その活性を著しく変化させることなく、得られた分子の構造を改変させることもできる。欠失により小さな活性分子の開発を進めて広い有用性を保有させることができる。例えば、アミノ又はカルボキシ末端のアミノ酸を除去することにより、もとの活性若しくはもとのタンパク質とほぼ同等の活性を維持することができる。
【0093】
配列変異体に加え、任意の該アッセイタンパク質成分のフラグメント又は誘導体を、もとのタンパク質活性の本質部分を維持する限り、使用することができる。例えば、任意若しくは全ての基質成分(下記のp27/Cdk2/サイクリンE)のフラグメント又は変異体は、タンパク質とフラグメントの組合せ若しくはフラグメントの組合せがE3リガーゼの基質として作用する限り、もとのタンパク質の代わりに使用することができる。また、p27又はp27フラグメントは、もとのCdk2ともとのサイクリンEの結合体において、もとのp27がユビキチン化される条件下でユビキチン化することができる。
【0094】
5.1.4 可視化
本発明方法により、ユビキチンを検出できるように標準的手法を用いてユビキチンを標識化することにより、p27のユビキチン化の程度が決定される。本明細書において、別途規定されない限り、用語「標識」は例えば、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、若しくは他の化学的手段により検出することができる組成物又は化合物を意味する。
【0095】
1実施形態において、ユビキチンは蛍光団を蛍光標識として用いて可視化される。「蛍光標識」は、その固有の蛍光特性により検出できる任意の分子を意味する。特別な実施形態において、該蛍光団はユーロピウム(Eu)である。Hemmila, 「Europium as a label in time-resolved immunofluorometric assays」, Anal Biochem., 137(2):335-43 (1984)を参照されたい。他の蛍光団を蛍光標識として使用することができる。適当な蛍光標識には、これに限定されないが、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラサイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、カスケードブルー(商標)及びテキサスレッドが含まれる。適切な可視性染料は、例えばHaugland, Molecular Probes Handbook (1996)に記載されており、引用により本明細書に明確に含まれているものとする。他の適当な蛍光標識には、これに限定されないが、緑色蛍光タンパク質(GFP: Chalfieら, Science, 263(5148): 802-805 (1994)、及びEGFP、Clontech- Genbank Accession Number U55762)、青色蛍光タンパク質(BFP: Quantum Biotechnologies, Inc., 1801 de Maisonneuve Blvd. West, 8th Floor, Montreal (Quebec) Canada H3H 1J9、Stauber, R. H., Biotechniques, 24(3): 462-471 (1998)、Heim, R.及びTsien, R. Y., Curr. Biol, 6: 178-182 (1996))、強化黄色蛍光タンパク質(EYFP: Clontech Laboratories, Inc., 1020 East Meadow Circle, Palo Alto, Calif. 94303)、ルシフェラーゼ (Ichikiら, J. Immunol, 150(12): 5408-5417 (1993))、β-ガラクトシダーゼ (Nolanら, Proc Natl Acad Sci USA, 85(8): 2603-2607 (1988)、WO 92/15673、WO 95/07463、WO 98/14605、WO 98/26277、WO 99/49019、米国特許番号5,292,658、米国特許番号5,418,155、米国特許番号5,683,888、米国特許番号5,741,668、米国特許番号5,777,079、米国特許番号5,804,387、米国特許番号5,874,304、米国特許番号5,876,995、及び米国特許番号5,925,558)が含まれる。上記参考文献のすべては、本明細書に引用により明確に含まれているものとする。
【0096】
別の実施形態において、ユビキチンの可視化に用いられる標識は、蛍光共鳴エネルギー転移での使用に適した蛍光団である。ユビキチンを標識するのに使用する蛍光団は、受容体の蛍光団又は供与体の蛍光団であり;好ましい実施形態において、該アッセイの別のタンパク質、例えばp27は同時にFRETにも適した蛍光団で標識される。ユビキチン化p27中のユビキチンが、供与体又は受容体の蛍光団により標識される場合、p27は受容体又は供与体の蛍光団でそれぞれ標識され、供与体を励起させることにより受容体の蛍光団が蛍光発光させられる。ユビキチンは、FRETと互換性がある蛍光団により標識することができ、蛍光というよりむしろ消光を生じさせたり、そのように反応する場合がある。
【0097】
他の適切な標識には、これに限定されないが、放射性同位元素(例えば、3H、32P、3C、11C、14C、35S)、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(商標))、酵素(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、及びEILSAで一般に用いられる他の酵素)、熱量測定標識(例えば、コロイド金、色つきガラス、例えばこれに限定されないがポリスチレン、ポリプロピレン、及びラテックス等のプラスチックビーズ)、電子密度の高い試薬、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン及び抗血清又はモノクローナル抗体を入手することができるタンパク質、並びに質量分析、NMR分光分析、又は他の周知の分析方法により検出可能なその他の標識が含まれる。1実施形態において、ユビキチンはビオチンを標識として用いて可視化される。
【0098】
5.1.5 被験化合物のスクリーニング
上記のp27のユビキチン化アッセイを使用することにより、p27のユビキチン化を調節できる化合物をスクリーニングすることができる。そのような化合物は、癌、増殖性障害、並びにユビキチンが介在するp27の分解、これに付随する細胞周期の制御低下及び例えば不適切な増殖若しくは転移の進行と関連した他の疾患、障害又は状態の治療に非常に有効な可能性がある。そのような化合物は、例えば、リン酸化後でかつ該アッセイのユビキチン化成分と接触させる前に、又はリン酸化前にp27と接触される。したがって、該アッセイを用いてp27のリン酸化を調節する、すなわちユビキチン化できるp27-Ub前駆体が形成される割合を調節する化合物を同定することができる。あるいは、該アッセイは、リン酸化p27がユビキチン化する割合を調節する、すなわちp27-Ubの形成を調節する化合物を同定することができる。
【0099】
本発明は、p27のユビキチン化を調節する化合物を同定する方法であって、該化合物の存在下又は非存在下でp27をユビキチン化し、該化合物の存在下におけるユビキチン化の程度又は量と、該化合物の非存在下におけるユビキチン化の程度又は量を比べ、差を検出することを含む、前記方法を提供する。1実施形態において、本発明はp27のユビキチン化を調節する化合物を同定する方法であって、該化合物の存在下でp27をユビキチン化し第1のp27サンプルを生じさせ;該化合物の非存在下でp27をユビキチン化し第2のp27サンプルを生じさせ、さらに該第1のp27サンプル及び該第2のp27サンプル中のユビキチン化量を決定することを含み、該第1及び第2のサンプルから得られるユビキチン化量が異なる場合、該化合物はユビキチン化を調節するといえる、前記方法を提供する。
【0100】
プレートキャプチャーを用いる1実施形態において、本発明はp27のユビキチン化を調節する化合物を同定する方法であって、ある量のp27と候補化合物を組合わせて、該p27と該化合物の混合物を形成させることにより、第1のサンプルを調製し; 該化合物の非存在下である量のp27を含有する第2のサンプルを調製し; 該第1及び第2のサンプルを、p27を共にユビキチン化することができる複数のポリペプチドとそれぞれ接触させ、ユビキチン化p27を形成させ; 該第1及び該第2のサンプル中のユビキチン化p27を表面上でそれぞれ捕捉し; さらに第1及び第2のサンプル中で、該表面上で捕捉されたp27中に存在するユビキチン量をそれぞれ決定することを含み、第1及び第2のサンプルから得られたユビキチン化量が異なる場合、該化合物はユビキチン化を調節するといえる、前記方法を提供する。
【0101】
FRETを用いる別の実施形態において、本発明はp27のユビキチン化を調節する化合物を同定する方法であって、該化合物の存在下で、p27をユビキチンによりユビキチン化して第1のユビキチン化p27を産生させ;該化合物の非存在下でp27をユビキチン化して第2のユビキチン化p27を産生し;該第1及び第2のユビキチン化p27中のp27を第1の標識で標識し;該第1及び第2のユビキチン化p27中のユビキチンを第2の標識で標識し;該第1のユビキチン化p27及び該第2のユビキチン化p27の両方に関して、第1の割合及び第2の割合をそれぞれ生じさせる該第1の標識の該第2の標識に対する割合を決定することを含み、該第1の割合及び該第2の割合が異なる場合、該化合物はユビキチン化を調節するといえる、前記方法を提供する。
【0102】
特別な実施形態において、該化合物と接触させる該p27はリン酸化p27である。別の特別な実施形態において、該化合物と接触させる該p27は非リン酸化p27である。別の特別な実施形態において、該化合物はp27、E1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、又はそれらの任意の組合せと接触される。別の特別な実施形態において、該化合物はポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質、又はそれらの組合せである。別の特別な実施形態において、該化合物は小さな有機分子又は薬剤である。別の特別な実施形態において、該化合物は、p27のユビキチン化レベル又は量の調節作用とは異なる活性を持つことが知られている。別の特別な実施形態において、該化合物はp27のユビキチン化を調節する以外に活性を持つことが知られていない。
【0103】
上記のプレート又はFRETアッセイのいずれかの特別な実施形態において、該第1のサンプル及び該第2のサンプルは、ある量のp27、E1、E2、E3、Cks1、ユビキチン又はそれらの任意の混合物を、該第1のサンプルの場合、候補薬剤と混合して調製される。特別な実施形態において、該方法を用いて抗癌剤となる可能性のある薬剤を同定することができ、この化合物は該化合物の非存在下条件の場合と比べ、p27のユビキチン化を低下させる。別の特別な実施形態において、該方法を用いて、抗増殖剤となる可能性のある薬剤であって、該化合物の非存在下条件の場合と比べ、p27のユビキチン化を低下させる該薬剤を同定することができる。別の特別な実施形態において、該方法を用いて、正常細胞と比べp27のユビキチン化が亢進していることに起因する疾患、状態又は障害に対して効果がある可能性がある化合物を同定することができる。
【0104】
別の実施形態において、本発明は抗癌剤を同定する方法であって、単離されたp27、E1、E2、E3、Cks1、サイクリンE、Cdk2とユビキチンを組合わせることにより形成されたユビキチン化p27の量を、該化合物の存在下及び該化合物の非存在下で決定することを含み、該化合物の存在下で形成されたユビキチン化p27の量と、該化合物の非存在下で形成されたユビキチン化p27の量に差がある場合、該化合物は抗癌剤として同定される、前記方法を提供する。特別な実施形態において、該p27は該E1、E2、E3、Cdk2及びユビキチンと組合わされる前に、Cdk2及びサイクリンEによりリン酸化される。
【0105】
別の特別な実施形態において、該リン酸化p27の濃度は約4 ng/μLであり;該E1の濃度は約5 ng/μLであり;該E2の濃度は約150 ng/μLであり;該E3の濃度は約5 ng/μLであり;該Cks2の濃度は約0.25 ng/μLであり;かつ/又は該ユビキチンの濃度は約500 ng/μLである。別の特別な実施形態において、該リン酸化p27の濃度は約4 ng/μLであり; 該E1の濃度は約5 ng/μLであり; 該E2の濃度は約150 ng/μLであり; 該E3の濃度は約12.5 ng/μLであり; 該Cks1の濃度は約0.625 ng/μLであり; 又は該ユビキチンの濃度は約34 ng/μLである。別の特別な実施形態において、該化合物の存在下で形成されたユビキチン化p27の量は、該化合物の非存在下で形成されたユビキチン化p27の量よりも低い。別の特別な実施形態において、該E1、E2、E3又はCks1は組換え的に産生される。別の特別な実施形態において、該E1、E2、E3、及びCks1は細胞抽出物から精製される。別の特別な実施形態において、該ユビキチンは標識される。より特別な実施形態において、該標識はビオチンである。
【0106】
該アッセイはp27を共にユビキチン化する各成分を使用し、かつ該アッセイはプレートキャプチャーアッセイとFRETアッセイのどちらも、多重並行実施に適している。そのため、本明細書に記載のアッセイ方法は、一貫して再現性のある結果をもたらし、またハイスループットにおける使用に特に適しており、例えば化学ライブラリーをスクリーニングして、p27のユビキチン化調節因子を同定することができる。
【0107】
好ましくは、p27のユビキチン化調節活性の検査対象となる化合物は、小さな有機分子である。そのような分子は、例えば、化合物のライブラリー(例えば、コンビナトリアルライブラリー)を用いて容易に同定することができる。本明細書で使用される場合、用語「ライブラリー」は複数の化合物を意味し、また「コンビナトリアルライブラリー」は、例えば、化学技術を組み合わせて合成された化合物の一群、又はそれぞれが固有の立体構造を有する低分子量(1000ダルトン未満)の固有化学物質の一群を意味する。特別な実施形態において、ライブラリーには50; 100; 150; 200; 250; 500; 750; 1,000; 1,250; 1,500; 1,750; 2,000; 2,500; 5,000; 7,500; 10,000; 20,000; 30,000; 40,000; 又は50,000 個の異なる化合物が含まれる。他の特別な実施形態において、ライブラリーには最大で50; 100; 150; 200; 250; 500; 75O; 1,000; 1,250; 1,500; 1,750; 2,000; 2,500; 5,000; 7,500; 10,000; 20,000; 30,000; 40,00O; 又は50,000個の異なる化合物が含まれる。他の特別な実施形態において、ライブラリーには10〜100; 10〜150; 100〜200; 100〜250; 100〜500; 100〜750; 500〜1,000; 500〜1,250; 500〜1,500; 500〜1,750; 1,000〜2,000; 1,000〜2,500; 2,000〜5,000; 2,000〜7,500; 2,000〜10,000; 5,000〜20,000; 10,000〜30,000; 10,000〜40,000; 20,000〜50,000; 10,000〜100,000; 20,000〜200,000; 30,000 〜300,000; 40,000〜400,000; 又は50,000〜500,000個の異なる化合物が含まれる。互換性のある化学構成単位100個を体系的に組み合わせ、混合すると、理論上1億個のテトラメトリック化合物又は100億個のペンタメトリック化合物を合成することができる(Gallopら, 「Applications of Combinatorial Technologies to Drug Discovery, Background and Peptide Combinatorial Libraries」, J. Med. Chen, 37(9):1233-1250 (1994))。
【0108】
当技術分野で知られる他の化学ライブラリー、例えば、自然産物ライブラリーも使用することができる。例えば、ポリペプチドライブラリーのような一次結合化学ライブラリーは、組合せ可能な全ての形態にアミノ酸を結合させて任意の長さのペプチドを生じさせることにより形成され、該ペプチドは、その後p27のユビキチン化調節活性に関して調べられる。
【0109】
典型的なライブラリーは、数社の供給業者(ArQuIe, Tripos/PanLabs, ChemDesign, Pharmacopoeia)から購入することができる。いくつかの場合において、これらの化学ライブラリーは、ライブラリーの各メンバーの同一性を、メンバー化合物が結合する基質上で記号化する方法を組み合わせて作製されるので、効果的な調節因子である分子を直接かつ迅速に同定することができる。したがって、多様な組合せ方法により、該化合物の組成は化合物のプレート上での位置で明確にされる。一例として、1〜20個のプールされた化合物を単一反応ウェルに投与することにより、単一プレート上での位置を調べスクリーニングすることができる。したがって、もし調節作用が観察されれば、相互作用対をどんどん小さくしてその調節活性に関してアッセイすることができる。そのような方法により、多くの候補分子をスクリーニングすることができる。
【0110】
本明細書に記載のp27のユビキチン化アッセイで検査するのに適した化合物ライブラリーの構築方法は、当技術分野では知られている。例えば、ペプチドライブラリーの例はHoughtenら, Nature, 354: 84-86 (1991)に列挙され、各ペプチド内の第1及び第2の残基がそれぞれ特定される遊離型ヘキサペプチドの混合物が記載されており、Lamら, Nature, 354: 82-84 (1991)は固相分割合成スキームにより、一群の各ビーズをアミノ酸残基の単一又はランダム配列上で固定するペプチドライブラリーを作製する「1ビーズ1ペプチド」手法を報告しており;Medynski, Bio/Technology, 12: 709-710 (1994)は分割合成及びT-バッグ合成方法について記載しており;さらにGallopら, J. Medicinal Chemistry, 37(9): 1233-1251 (1994)。コンビナトリアルライブラリーはOhlmeyerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 10922-10926 (1993)の方法により、調製することもでき;Erbら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91: 11422-11426 (1994)、Houghtenら, Biotechniques, 13: 412 (1992)、Jayawickremeら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91: 1614-1618 (1994)、又はSalmonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 11708-11712 (1993)にも記載されている。PCT公開番号WO 93/20242、並びにBrenner及びLerner, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 5381-5383 (1992)は、それぞれの化学ポリマーライブラリーメンバーを識別するオリゴヌクレオチドを含む「記号化したコンビナトリアル化学ライブラリー」について報告している。
【0111】
非ペプチド、例えばペプチド誘導体(例えば、1以上の非天然アミノ酸を含む)のライブラリーを使用することもできる。例えば、Simonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 9367-9371 (1992)を参照されたい。
【0112】
マルチプルコンビナトリアル化学ライブラリーを使用して、p27の調節活性を有する特に有用な化合物を同定することができる。例えば、小分子ライブラリーは、当技術分野で周知のコンビナトリアルライブラリーの形成方法を利用して作製される。例えば、米国特許番号5,463,564及び5,574,656を参照されたい。これらの文献は、引用によりその全体が本明細書に含まれているものとする。ライブラリー化合物は、本明細書に記載のアッセイを用いてスクリーニングされ、所望の構造及び機能特性を有するような化合物が同定される。それぞれのライブラリー化合物の性質を記号化して、ユビキチン化調節活性を明示する化合物を分析することができ、様々な同定化合物に共通する特徴を抜き出して組合せ、ライブラリーを将来的に繰り返すことができる。
【0113】
一度化合物ライブラリーをスクリーニングすれば、第1ラウンドのスクリーニングで示されたp27のユビキチン化を調節する特徴を有する化学構成単位を用いて、後続のライブラリーを作製することができる。次に、この方法を用いて、候補化合物にp27のユビキチン化を調節するのに必要な構造及び機能的特徴をどんどん保有させることを反復繰り返せば、最終的に高度の活性を有する一群の被験化合物を得ることができる。これらの化合物はその後、抗腫瘍及び/又は抗癌薬として哺乳動物で使用される場合の安全性及び有効性に関して、さらに調べられ得る。
【0114】
本発明で意図するとおり、該アッセイを使用して、p27のユビキチン化又はユビキチン化状態を調節する(すなわち検出できる程度に変化させる)任意の化合物を同定することができる。p27ユビキチン化の調節とは、ユビキチン化を増強又は低減させることのいずれをも意味し得る。好ましくは、1実施形態において、同定された化合物は、該化合物と接触していない対照サンプルと比べ、検出可能な程度にユビキチン化を阻害する。特別な実施形態において、該化合物は、p27のユビキチン化を50%以上阻害する。ユビキチン化された基質の割合又は基質に取り込まれたユビキチン量が、被験化合物の非存在下で反応させた場合と比較して多い場合、該化合物はユビキチン化を刺激するといえる。1実施形態において、該化合物は、該化合物と接触していない対照サンプルと比べ50%以上ユビキチン化を刺激する。
【0115】
5.1.6 ハイスループットモード
本発明のアッセイは、1つにはプレート基盤上で実施されるので、化合物をハイスループットスクリーニングするのに特に有用である。本発明のアッセイとして、例えば24、36、48、96、300、500、又は1000以上のサンプルを含む複数サンプル(例えば、ユビキチン化反応混合液)のアレイが適用される。アレイに多数のサンプルが含まれる場合、該アレイは1以上のサブアレイ、様々な構成成分を含有するサンプルを含むサブアレイを包含することがある。
【0116】
好ましくは、該サンプルは自動的に調製され、サンプルウェルへ加えられ、さらに混合される。同様に、サンプルごとに自動的にアッセイを実施及び処理することができる。本明細書で使用される場合、用語「自動化」又は「自動的に」はコンピュータソフトウェア及び/又はロボット装置を利用して、サンプル、成分、及び被験物を加え、混合し、分析することを意味する。
【0117】
サンプルは、当技術分野で知られる様々な析出又は物質移動技術(これに限定されないが、手作業に代用される技術、ピペッティング技術、及び他のマニュアル又は自動化固体若しくは液体分配システムを含む)を用いてサンプルウェルへ加えられる。
【0118】
該成分をサンプルウェルに加え混合させた後、該サンプルは本発明方法のアッセイにより処理することができる。該サンプルは個別に又はグループごとに、処理することができる。本発明のアッセイ法にあわせ改良し使用できるマイクロアレイシステムは、数多くあり、商業的に入手することができる。本発明のアッセイ方法に適したマイクロアレイシステムは、これに限定されないが、例えばGene Logic of Gaithersburg, MD (米国特許番号5,843,767)、Luminex Corp., Austin, TX、Beckman Instruments, Fullerton, CA、MicroFab Technologies, Piano, TX、Nanogen, San Diego, CA、及びHyseq, Sunnyvale, CAにより製造されたものが含まれる。これらの装置では、複数の異なるシステムを基にサンプルを調べる。全ての装置には、反応がおこるテストウェルに成分を導く数千の微細なチャネルが含まれる。これらのシステムはコンピュータに連結され、適切なソフトウェア及びデータセットを用いてデータが分析される。Beckman Instruments systemは、ナノリットル量のサンプルを96又は384-アレイに導入することができ、またMicroFab Technologies systemは、インクジェットプリンターを用いて一定分量のサンプルを個別にウェルに導入することができる。
【0119】
これら及び他のシステムを改良して、本発明での使用に適した形にすることができる。例えば、標準的製造ソフトウェア(例えば、Mathlab software;Mathworks, Natick, MAから購入することができる)を用いて、アッセイ成分と被験化合物を様々な濃度や組合せにして、組合物を製造することができる。そうやって製造された組合物は、Microsoft EXCEL等のスプレッドシートにダウンロードすることができる。スプレッドシートを基に作業リストを作成し、自動化された分配メカニズムを指示して、製造ソフトウェアにより製造された様々な組合物サンプルのアレイを調製することができる。該作業リストは、実際に使用する自動化分配メカニズムに合わせた標準的プログラミング方法により、作成することができる。作業リストを用いれば、別々にプログラムされたステップというよりむしろコマンド処理として、簡単にファイルを使用することができる。該作業リストは、製造プログラムによる製造成果物と、自動化分配メカニズムにより直接読み取ることができるファイルフォーマットに適したコマンドとを、結びつける。
【0120】
この自動化された分配メカニズムは、少なくとも1成分、また様々な追加成分をそれぞれのサンプルウェルに導入させる。好ましくは、該自動化分配メカニズムは、それぞれの成分を多量に導入することができる。1実施形態において、該自動化分配メカニズムは、1以上のマイクロ電磁弁を利用する。
【0121】
自動化液体及び固体分配システムが当技術分野ではよく知られており、Tecan Genesis, Tecan-US, Research Triangle Park, North Carolina等から購入することができる。ロボットアームを用いて、各成分又はそれらの混合物をストックプレートからサンプルウェル若しくは部位に集めたり、分配することができる。この過程を繰り返して、アレイは完成される。該サンプルはその後混合される。例えば、ロボットアームは、設定された回数分だけ各ウェルプレート上を上下に動き、適当な混合具合を確保する。
【0122】
本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、自動化されたハイスループットアッセイを種々変更できることは当業者であれば、当然に理解するであろう。
【0123】
5.1.7 他のタンパク質へのアッセイの適用
上記のアッセイ方法は、任意のタンパク質のユビキチン化をアッセイできるように一般化することができる。例えば、一般化されたプレートキャプチャーアッセイには、上記のとおりプレート(目的のタンパク質に対し特異的な捕捉抗体を含む)、ユビキチン化タンパク質(例えば、ユビキチン活性化タンパク質、ユビキチンコンジュゲートタンパク質、及びユビキチンリガーゼ)、及びタンパク質を調製してユビキチン化するのに必要な任意のタンパク質が含まれる。例えば、本明細書に記載の方法を状況に応じて変更させて、容易にIκB ユビキチン化を検出することができ、またIκBのユビキチン化を阻害する化合物をスクリーニングするのに使用することができる。同様の方法で、HTR-FRET-様式アッセイを、目的のタンパク質、ユビキチン化タンパク質(例えば、ユビキチン活性化タンパク質、ユビキチンコンジュゲートタンパク質、及びユビキチンリガーゼ)、タンパク質を調製してユビキチン化するのに必要な任意のタンパク質を用いて、実施することができる。目的のタンパク質は、例えば目的のタンパク質に対し特異的な抗体を用いてp27を標識する場合と同様の方法で、標識することができる。目的のユビキチン化タンパク質中のユビキチンは、p27のFRETアッセイについて上述したように、標識することができる。目的のタンパク質のユビキチン化に対する化合物の有効性は、プレートキャプチャーとFRETアッセイのどちらも、p27について本明細書に記載するアッセイ法と同様の方法で、決定することができる。
【0124】
5.2 適用
上述のとおり、本発明の方法は、p27ユビキチン化の変化からその全体又は一部が生じる癌を治療することができる1以上の化合物(例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、多糖、小さな有機分子、薬剤又は候補薬剤等)を同定するのに有用である。そのような癌には、必ずしもこれらに限定されないが、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄芽球性白血病、前骨髄性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、及び赤白血病を含む白血病;慢性骨髄性(顆粒球性)白血病又は慢性リンパ球性白血病等の慢性白血病;真性赤血球増加症;ホジキンス病及び非ホジキンス病等のリンパ腫;多発性骨髄腫;ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;重鎖病;肉腫及び癌腫のような固形腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管性内皮肉腫、骨膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横絞筋肉腫、結腸癌、すい臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛腫、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、頸部癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫又は網膜芽腫などが含まれる。
【0125】
該アッセイは、癌に関連するか否かを問わず、p27のユビキチン化における変化に関連するほかの障害又は状態を治療するのに有用な化合物を同定するのにも役立つ。様々な実施形態において、そのような障害又は状態には、これに限定されないが、増殖性障害及び異形成、T細胞及び線維芽細胞の増殖症及び増殖関連障害;子宮内膜症、炎症等が含まれる。
【0126】
p27のユビキチン化を調節することができ、好ましくはp27のユビキチン化を低下させることができる化合物若しくは化合物のセットがいったん同定されれば、そのような化合物は、p27のユビキチン化に関連する特定の癌、疾患、状態若しくは障害に関連又は寄与する1種類以上の細胞型に対しin vitroでさらに検査される。例えば、p27のユビキチン化調節因子として同定された化合物をin vitroで検査し、細胞の転移若しくは増殖性パターンに対して、結果として任意の変化をもたらすかどうかを確認して、転移性癌細胞又は不適切に増殖する細胞に対する効果を明らかにすることができる。陽性若しくは所望の変化があれば、転移若しくは不適切な増殖は減少又は除去される。
【0127】
本明細書に記載のアッセイ等のアッセイを用いて、化合物が付与された群及び対照細胞群の両方において、p27を確実にユビキチン化状態とするのも好ましい。このほか1つには、抗体を利用した試験を行い、細胞中のp27レベルに対する化合物の効果を確認することができる。そのような抗体を利用したアッセイは、当技術分野で公知の方法(ELISA、RIA等)を用いて実施することができる。そのような実験では、等量の正常細胞におけるp27レベル又は標準p27レベルのどちらかを対照として使用することができる。
【0128】
本明細書に記載のハイスループットアッセイで同定された化合物(「同定化合物」)をin vivoで調べ、目的とする特定の癌、疾患、障害又は状態に対する効果を確かめることもできる。例えば、同定化合物は、既知のマウス若しくは他の哺乳動物の腫瘍モデルを用いて様々な濃度で調べることができ、またはマウス、ラット、ウサギ等の哺乳動物に対し、モデルとして使用される特定の哺乳動物から入手した特定の癌の腫瘍細胞を投与する前、投与と同時、又は投与後に、様々な濃度で投与される場合がある。
【0129】
該アッセイを使用して抗発癌性又は抗増殖性化合物候補を同定する場合、本発明のアッセイで同定された化合物が腫瘍細胞増殖、細胞形質転換及び腫瘍形成をin vitro又はin vivoで阻害するかは、当技術分野で公知又は本明細書に記載の様々なアッセイを用いて検証することができる。当該アッセイでは、癌細胞株の細胞又は患者から入手した細胞が使用され得る。当技術分野で周知の多くのアッセイを使用して、当該生存及び/又は増殖を評価することができ;例えば細胞増殖は、(3H)-チミジン取り込みの測定、細胞の直接計数、既知の癌原遺伝子(例えば、fas、myc)等の遺伝子又は細胞周期マーカー(Rb、cdc2、サイクリンA、Dl、D2、D3又はE)の転写、翻訳又は活性における変化を検出することによって、アッセイすることができる。そのようなタンパク質及びmRNAのレベル並びに活性は、当技術分野で周知の任意の方法で測定することができる。例えばタンパク質は、商業的に入手可能な抗体(例えば、Santa Cruz, Inc.から多くの細胞周期マーカー抗体を入手することができる)を用いて、ウェスタンブロット法又は免疫沈降法等の既知の免疫診断方法により定量することができる。mRNAは、当技術分野で周知の所定の方法、例えばノーザン解析、RNアーゼプロテクション、逆転写が関連するポリメラーゼ連鎖反応等により、定量することができる。細胞生存能力は、トリパンブルー染色又は当技術分野で公知の他の細胞死若しくは生存マーカーを用いて、評価することができる。分化は、形態の変化等に基づき視覚的に評価することができる。
【0130】
細胞周期及び細胞増殖分析は、当技術分野で公知の様々な技術を用いて実施することができ、これに限定されないが、以下のものが含まれる:
1つの例としては、増殖細胞を同定するアッセイとして、ブロモデオキシウリジン(「BRDU」)の取り込みを利用することができる。該BRDUアッセイでは、BRDUを新たに合成されたDNAに取り込ませることにより、DNAを合成する細胞集団を同定する。新たに合成されたDNAはその後、抗BRDU抗体を用いて検出することができる(Hoshinoら, 1986, Int. J. Cancer 38, 369、Campanaら, 1988, J Immunol. Meth. 107, 79を参照されたい)。
【0131】
細胞増殖は、(3H)-チミジン取り込みを用いて調べることもできる(例えば、Chen, 1996, Oncogene 13:1395-403、Jeoung、1995, J. Biol. Chem. 270:18367-73を参照されたい)。このアッセイにより、S期のDNA合成を量的に評価することができる。このアッセイにおいて、DNA合成細胞は(3H)-チミジンを新たに合成されたDNAへ取り込む。該取り込みはその後、シンチレーション計数管(例えば、Beckman LS 3800 Liquid Scintillation Counter)で放射線同位元素をカウントする等、当技術分野の標準的技術を用いて測定することができる。
【0132】
増殖性細胞核抗原(PCNA)の検出を利用して、細胞増殖を測定することもできる。PCNAは36キロダルドンのタンパク質で、増殖細胞、特に初期のG1及びS期の細胞周期でその発現が増加するので、増殖細胞のマーカーとして役立つ場合がある。ポジティブ細胞は、抗PCNA抗体を用いた免疫染色により確認される(Liら, 1996, Curr. Biol. 6:189-199、Vassilevら, 1995, J Cell Sci. 108:1205-15を参照されたい)。
【0133】
細胞増殖は、細胞集団のサンプルを時間をかけてカウントして(例えば、毎日細胞を計数して)、測定することができる。細胞は、血球計及び光学顕微鏡法(例えば、HyLite hemacytometer, Hausser Scientific)を用いてカウントすることができる。細胞数を時間に対してプロットして、目的の集団の成長カーブを得ることができる。好ましい実施形態において、この方法によってカウントされた細胞は、生細胞を染色しない色素トリパンブルー(Sigma)とまず混合され、集団中で生存するものとしてカウントされる。
【0134】
DNA量及び/又は細胞の分裂指数は、例えば、細胞のDNA倍数性値に基づいて測定され得る。例えば、細胞周期のG1期の細胞は通常、2NのDNA倍数値をもつ。DNAは複製されるが、有糸分裂によっては成長しない細胞(例えば、S期の細胞)では、倍数性値は2Nより高く、DNA量は最大で4Nである。倍数性値及び細胞周期の動態は、ヨウ化プロピジウムアッセイを用いてさらに測定することができる(例えば、Turnerら, 1998, Prostate 34:175-81を参照されたい)。この他に、DNA倍数性はコンピュータ制御のミクロ濃度測定染色システムでDNAフォイルゲン染色を量子化して(化学量論的方法でDNAと結び付け)、決定することができる(例えば、Bacus, 1989, Am. J. Pathol.135:783-92を参照されたい)。別の実施形態において、DNA量は染色体の塗布量を調製して、分析することができる(Zabalou, 1994, Hereditas .120:127-40、Pardue, 1994, Meth. Cell Biol. 44:333-351)。
【0135】
細胞周期タンパク質(例えば、CycA、CycB、CycE、CycD、cdc2、Cdk4/6、Rb、p21又はp27)の発現は、細胞の増殖状態又は細胞集団に関して重大な情報をもたらす。例えば、抗増殖シグナル伝達経路における検証は、p21ciplを導入することにより明確にされ得る。細胞中のp21発現レベルが増加すると、細胞周期G1への移行が遅延する(Harperら, 1993, 細胞 75:805-816、Liら, 1996, Curr. Biol. 6:189-199)。p21の誘導は、商業的に入手可能な特異的抗p21抗体(例えば、Santa Cruz, Inc.から購入)を用いて、免疫染色により確認することができる。同様に、細胞周期タンパク質は購入可能な抗体を用いたウェスタンブロット分析により調べることができる。別の実施形態において、細胞集団は細胞周期タンパク質を検出する前に同調させられる。細胞周期タンパク質は、目的のタンパク質に対する抗体を用いたFACS(蛍光活性化細胞選別装置)分析によって検出することもできる。
【0136】
細胞周期の長さ又は細胞周期の速さにおける変化を検出することにより、同定化合物が細胞増殖を阻害するのを測定することもできる。1実施形態において、細胞周期の長さは(例えば、1以上の同定化合物と接触させた又は非接触の細胞を用いて)細胞集団が倍増する時間として決定される。別の実施形態では、FACS分析を使用して細胞周期の進行期を分析したり、G1、S、及びG2/M期のフラクションが精製される(例えば、Deliaら, 1997, Oncogene 14:2137-47を参照されたい)。
【0137】
細胞周期のチェックポイントの経過及び/若しくは細胞周期チェックポイントの誘導は、本明細書で記載の方法又は当技術分野で知られる任意の方法を用いて、調べることができる。これに限定されるわけではないが、細胞周期チェックポイントは、ある細胞事象を確実に特定の順番で生じさせるメカニズムの1つである。チェックポイント遺伝子は、突然変異により規定され、初期事象が先に終了する前に、後期事象を生じさせる(Weinert及びHartwell, 1993, Genetics, 134:63-80)。細胞周期チェックポイント遺伝子の誘導又は阻害は、例えばウェスタンブロット分析又は免疫染色等によりアッセイすることができる。細胞周期チェックポイントの経過は、事前に特定の事象が生じることなくチェックポイントを通過して、細胞が進行すること(例えば、ゲノムDNAの複製が終わる前に細胞分裂へと発展すること)を利用して、さらに評価することができる。
【0138】
特定の細胞周期タンパク質を発現させる効果に加え、細胞周期に関与するタンパク質の活性及び翻訳後修飾は、細胞制御並びに増殖状態に対し、重要な役割を果たしているかもしれない。本発明は、翻訳後修飾(例えば、リン酸化)を当技術分野で公知の任意の方法で検出することを含むアッセイで使用される。例えば、リン酸化チロシン残基を検出する抗体は商業的に入手することができ、該抗体をウェスタンブロット解析で用いて、当該修飾されたタンパク質を検出することができる。別の例としては、ミリスチル化等の修飾は、薄層クロマトグラフィーや逆相H.P.L.C.で検出することができる(例えば、Glover, 1988, Biochem. J. 250:485-91を参照されたい)。
【0139】
シグナル伝達並びに細胞周期タンパク質及び/又はタンパク質複合体の活性は、しばしばキナーゼ活性で介在される。本発明は、ヒストンH1アッセイ等のアッセイによりキナーゼ活性を分析するのに利用される(例えば、Deliaら, 1997, Oncogene 14:2137-47を参照されたい)。
【0140】
同定化合物が培養細胞における細胞増殖をin vitroで変化させるかどうかは、当技術分野で周知の方法を用いて検証することもできる。細胞培養モデルの特別な例にはこれに限定されないが、肺癌に関しては、初期ラット肺癌細胞(Swaffordら, 1997, MoI. Cell. Biol, 17:1366-1374)及び大細胞未分化癌細胞株(Mabryら, 1991, Cancer Cells, 3:53-58);大腸癌に関しては、結腸直腸細胞株(Park及びGazdar, 1996, J Cell Biochem. Suppl. 24:131-141);乳癌に関しては、複数の確立された細胞株(Hamblyら, 1997, Breast Cancer Res. Treat. 43:247-258、Gierthyら, 1997, Chemosphere 34:1495-1505、Prasad及びChurch, 1997, Biochem. Biophys. Res. Commun. 232:14-19); 前立腺癌に関しては、十分に特性付けられた多くの細胞モデル(Webberら, 1996, Prostate, Part 1, 29:386-394、Part 2, 30:58-64、及びPart 3, 30:136-142、Boulikas, 1997, Anticancer Res. 17:1471-1505);泌尿生殖器癌に関しては、連続継代ヒト膀胱癌細胞株(Ribeiroら, 1997, Int. J. Radiat. Biol. 72:11-20); 移行上皮癌の臓器培養物(Boothら, 1997, Lab Invest. 76:843-857)及びラット増悪モデル(Vetら, 1997, Biochim. Biophys Acta 1360:39- 44); 及び白血病及びリンパ腫に関しては、確立された細胞株(Drexler, 1994, Leuk. Res. 18:919-927、Tohyama, 1997, Int. J. Hematol. 65:309-317)が含まれる。
【0141】
同定化合物が、細胞形質転換(又は悪性表現型への進行)をin vitroで阻害するかどうかも検証することができる。この実施形態では、形質転換された細胞表現型をもつ細胞を、1以上の同定化合物と接触させ、そして形質転換された表現型に関連する特徴の変化(in vivoの発癌活性に関連するin vitroの特徴セット)、例えばこれに限定されないが軟寒天上でのコロニー形成、より丸くなった細胞形態、より緩んだ下層接着、接触阻害の喪失、アンカーレージ依存性の喪失、プラスミノーゲン活性化因子などのプロテアーゼの放出、糖輸送の増加、血清必要性の低下、又は胎児性抗原の発現等における変化を調べることができる(Luriaら, 1978, General Virology, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, pp. 436-446を参照されたい)。
【0142】
侵入性の喪失又は接着の低下を利用して、同定化合物の抗癌効果を検証することもできる。例えば、転移性癌の形成に重要な側面は、前癌又は癌細胞が疾患の初発部位からわかれ、第2の部位で確実に新たなコロニーを成長させる能力である。細胞が末梢部位へと侵入する能力には、癌状態となる可能性が反映される。侵入性の喪失は、例えばE-カドヘリンが介在した細胞-細胞接着の誘導を含む当技術分野で公知の様々な技術により、測定することができる。当該E-カドヘリンが接着に介在すると、表現型の転換及び侵入性を低下させる場合がある(Hordijkら, 1997, Science 278:1464-66)。
【0143】
侵入性の低下は、細胞遊走の阻害をみてさらに調べることができる。様々な2次元及び3次元細胞マトリックスを購入することができる(Calbiochem-Novabiochem Corp., San Diego, CA)。マトリックスを通過する又はマトリックスへの細胞遊走は、顕微鏡法、時間をかけた写真撮影若しくはビデオ撮影、又は細胞遊走を測定可能な当技術分野の任意の方法を用いて、調べることができる。関連する実施形態において、侵入性の低下は、肝細胞成長因子(HGF)への反応をみて調べられる。HGF誘発-細胞散乱は、Madin-Darby canine kidney(MDCK)細胞などの細胞の侵入性と相関している。このアッセイは、HGFへ反応する細胞散乱活性を失った細胞集団を同定する(Hordijkら, 1997, Science 278:1464-66)。
【0144】
この他に、侵入性の喪失は走化性チャンバー(Neuroprobe/ Precision Biochemicals Inc., Vancouver, BC)で細胞遊走を観察して、測定することができる。当該アッセイでは、化学誘引剤をチャンバーの片側(例えば、チャンバー下部)でインキュベートし、細胞を分離された反対側(例えばチャンバー上部)のフィルターに播種する。細胞をチャンバー上部からチャンバー下部へと通過させるためには、該細胞はフィルターの小径を活発に移動できなければならない。そして、移動した細胞数のチェッカーボード分析は、したがって侵入性と相関し得る(例えば、Ohnishi, 1993, Biochem. Biophys. Res. Commun. 193:518-25を参照されたい)。
【0145】
同定化合物が、in vivoで腫瘍形成を阻害するかどうかも、検証することができる。腫瘍形成及び転移の拡大を含めた過剰増殖性障害の動物モデルが、当技術分野では膨大な数知られている(表317-1, 第317章,「Principals of Neoplasia」, Harrison's Principals of Internal Medicine, 13th Edition、Isselbacherら著, McGraw-Hill, New York, p. 1814、及びLovejoyら, 1997, J. Pathol. 181 :130-135を参照されたい)。特別な例としては、以下が挙げられる:肺癌に関しては、腫瘍結節のラットへの移植(Wangら, 1997, Ann. Thorac. Surg. 64:216-219)又はNK細胞が枯渇したSCIDマウスにおける肺癌転移の確立(Yono及びSone, 1997, Gan To Kagaku Ryoho 24:489-494);結腸癌に関しては、ヒト結腸癌細胞のヌードマウスへの結腸癌移植(Gutman及びFidler, 1995, World J. Surg. 19:226-234)、ヒト潰瘍性大腸炎の高タマリンド綿モデル(Warren, 1996, Aliment. Pharmacol. Ther. 10 Supp 12:45-47)及び腺腫様ポリープ腫瘍サプレッサーが突然変異したマウスモデル(Polakis, 1997, Biochim. Biophys. Acta 1332:F127-F147);乳癌に関しては、乳癌のトランジェニックモデル(Dankort及びMuller, 1996, Cancer Treat. Res. 83:71-88、Amundadittirら, 1996, Breast Cancer Res. Treat. 39:119-135)及びラットにおける腫瘍の化学誘発(Russo及びRusso, 1996, Breast Cancer Res. Treat. 39:7-20);前立腺癌に関しては、化学誘発性及びトランジェニック齧歯類モデル、及びヒト異種移植モデル(Royaiら, 1996, Semin. Oncol. 23:35-40);泌尿生殖器癌に関しては、ラット及びマウスでの膀胱腫瘍の誘発(Oyasu, 1995, Food Chem. Toxicol 33:747-755)及びヒト移行上皮細胞癌のヌードラットへの異種移植(Jarrettら, 1995, J. Endourol. 9:1-7);及び造血癌に関しては、動物での同種異系骨髄移植(Appelbaum, 1997, Leukemia 11 (Suppl. 4):S15-S17)。さらに、多くのタイプの癌に適用することができる一般的動物モデルが報告されており、これに限定されないが、例えばp53欠損マウスモデル(Donehower, 1996, Semin. Cancer Biol. 7:269-278)、Minマウス(Shoemakerら, 1997, Biochem. Biophys. Acta, 1332:F25-F48)、及びラットにける腫瘍への免疫応答(Frey, 1997, Methods, 12:173-188)が含まれる。
【0146】
例えば、同定化合物を試験動物(1実施形態では、その腫瘍型が発症しやすい試験動物)に投与し、続いてその試験動物が、同定化合物が投与されていない実験動物と比較して、腫瘍形成の出現を低下させるかどうかを調べることができる。その他には、同定化合物を、腫瘍を有する試験動物(悪性、新生、若しくは形質転換された細胞の誘発又は発癌物質の投与により、腫瘍が誘発された動物)に投与し、続いて同定化合物が投与されていない実験動物と比較して、その試験動物内の腫瘍の消退を調べることができる。
【0147】
5.3 キット
本発明には、本発明のアッセイ方法の実施を簡略化することができるキットが含まれる。本発明の典型的なキットには、それぞれのアッセイ成分が好ましい濃度単位で含まれる。当該成分はこれに限定されないが、p27及びCdk2/サイクリンE単体又はその複合体;本発明のアッセイ方法で使用されるポリペプチド、すなわちE1、E2、及びE3(単一成分又はその複合体);任意で標識されたユビキチン;任意で表面が適当に被覆されたプレート(例えば、プロテインA又はプロテインGで被覆されたプレート、好ましくは黒色プレート);標識する物質; 被覆する物質;及び緩衝液並びに該アッセイに必要なほかの試薬が含まれる。特別な実施形態において、該キットにはp27に対する抗体、目的のタンパク質に対する抗体、又はユビキチンに対する抗体が含まれる。該キットが、FRETアッセイに使用する物質を提供するものである場合、該キットは1実施形態において、供与体の蛍光団及び受容体の蛍光団を提供する。特別な実施形態において、該供与体の蛍光団はp27(例えば、リン酸化p27)と結合した形態である。別の実施形態において、該受容体の蛍光団は、ユビキチンと結合した形態である。
【0148】
それぞれの成分は個別に包装され得、適切な場合には2以上の成分を一緒に包装することができる。いくつかの実施形態では、該アッセイの成分をコードする組換えDNA(例えば、ベクター)を、その精製された成分自体に代えて含めることができる。そのような場合、発現及び成分の精製に必要な物質をキットに含めることもできる。そのような物質には、これに限定されないが、例えば宿主細胞、培地成分及び精製装置及び他の用途の試薬、タグ付けした分子が含まれる。
【0149】
本発明は、次の非限定的な実施例を参照することでさらに明確化される。本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、当業者にとって材料及び方法のいずれも種々変更できることは言うまでもない。
【実施例】
【0150】
6. 実施例
6.1 実施例1: p27のユビキチン化アッセイ-プレートキャプチャー様式
このアッセイでは、細胞周期インヒビターp27のユビキチン化をp27のin vivoユビキチン化を再現するハイスループット可能なin vitro再構成システムで測定する。ユビキチン化p27は抗p27抗体で被覆されたプレートを用いて捕捉され、ビオチン化ユビキチンに結合するユーロピウム(Eu)標識ストレプトアビジンにより検出される。後述のアッセイでは、被験化合物をユビキチン化反応液に加えることが含まれる。
【0151】
該アッセイは、少なくとも次のタンパク質相互作用に基づく。E1は、Mg++及びATPの存在下でユビキチンを活性化し、ユビキチンのC末端とE1の活性システインとの間にチオエステル結合を形成させる。活性化ユビキチンはその後E2へ転移される。E3複合体及びCks1の存在下において、E2によって運ばれたユビキチンはp27に転移され、ユビキチンのC末端とp27上のリジン残基の側鎖との間にイソペプチド結合を形成させる。ポリユビキチン鎖は、ユビキチンのC末端と別のユビキチン分子上のリジン残基の側鎖との間のイソペプチド結合によって形成される。
【0152】
6.1.1 材料及び方法
E1、E2及びCks1: His-E1、E2(His-UBcH3)及びStrepでタグ付けしたCks1を、大腸菌(Escherichia coli)内で発現させ、ニッケルキレートカラム又はSカラム(Cks1用)のいずれかを用いて精製した。Cks1はトロンビン切断し、Sカラムから取り出した。回収したタンパク質は、ユビキチン緩衝液(3OmM Tris-HCl pH 7.5, 20%グリセロール, 1mM DTT)に対し透析させ、そして一定分量ずつ-8O℃で保存した。
【0153】
E3: 昆虫細胞を、GST-Skp2、Skp1、Cul1(Cullin)、及びRoc1をそれぞれ発現するバキュロウイルスで共感染させた。得られたSCFSkp2複合体は、グルタチオンアガロースビーズを用いて精製した。ユビキチン緩衝液で透析した後、該複合体は一定分量ずつ-8O℃で保存した。
【0154】
ビオチン-ユビキチン: 100 mgのユビキチン(Sigma U6253)を10 mlリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で溶解した。12.5 mgのEZ-link(商標)Sulfo-NHS-LC-Biotin(Pierce Biotechnology, Catalog #21335)を加え、そして氷上で2時間インキュベートした。
【0155】
p27/Cdk2/Cyc E: ヒトp27を、Sf9細胞内でCdk2及びHisでタグ付けしたサイクリンEを用いて共発現させた。該p27/Strep-Cdk2/His-サイクリンEは、ニッケルキレートカラムにより精製し、ユビキチン緩衝液に対し透析させた。
【0156】
Cdk2/Cyc E: Cdk2/His-サイクリンEは、p27/Cdk2/His-サイクリンEと同じ方法で調製した。
【0157】
前リン酸化p27は、0.1mg/ml Cdk2/CycEを0.lmg/ml p27/Cdk2/CycEと共に、室温で2時間、キナーゼ緩衝液(4OmM Tris-HCl pH 7.5, 1OmM MgCl2, 1mM DTT, 1mM ATP)中でインキュベートして調製した。
【0158】
他の成分/材料: 384-ウェル プロテインA被覆黒色プレートは、Pierce Biotechnologyに特注して入手した。sc-528(p27のC末端ペプチド(C-19)に対して産生されたウサギポリクローナル抗体)は、Santa Cruz Biotechnologies (Santa Cruz, California)から入手した。該アッセイでは、Eu-ストレプトアビジン(Perkin Elmer #1244-360; 0.lmg/ml)、増進液(Perkin Elmer #1244-105)、アッセイ希釈液(BD Pharmingen #555213)、リン酸緩衝生理食塩水、及び洗浄緩衝液(1OmM Tris-HCl, pH 7.5, 0.05% (v/v) Tween 20)も用いた。
【0159】
アッセイ混合液A(下記参照)には、3倍濃度のユビキチン緩衝液(120 mM Tris HCl, pH 7.5, 15mM MgCl2)、3mM ジチオスレイトール、15 ng/μL E1、450 ng/μL E2、15 ng/μL E3,及び12 ng/μL 前リン酸化p27を含有させた。
【0160】
開始溶液(下記参照)では、0.75 mg/mLビオチン化ユビキチン及び0.75 ng/μL Cks1をアッセイ希釈緩衝液(3OmM Tris-HCl, pH7.5, 1 nM DTT, 19.5%グリセロール)中に含有させた。ネガティブコントロールの開始溶液では、0.75 mg/mL ビオチン化ユビキチンをアッセイ希釈緩衝液(3OmM Tris-HCl, pH7.5, 1mM DTT, 19.5%グリセロール)中に含有させた。
【0161】
6.1.2 アッセイ手順
捕捉プレートは次のとおり被覆した。プロテインAで被覆したプレートのウェルは、0.05% (v/v) Tween 20を含むPBSで3回洗浄した。各ウェルに対し、PBSで希釈した2.5μg/ml sc-528抗体25μLを加えた。該抗体及びプレートは、室温で一晩インキュベートさせた。翌日、結合しなかった抗体は廃棄した。100μLアッセイ希釈液を各ウェルに加え、そして室温で1〜4時間インキュベートした。該アッセイ希釈液は、反応混合液を各ウェルに加える直前に廃棄した。
【0162】
ユビキチン化反応は次のとおり実施した: 5μLの被験化合物の6%ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液をV底プレートの各ウェルに加えた。各ウェルに対し、5μLのアッセイ混合液A及び5μLの開始溶液(実験条件)又はCks1を含有しない開始溶液(対照条件)を加えた。この混合液を室温で45分間インキュベートし、さらに20μLのアッセイ希釈液をウェルごとに加えた。各ウェル中のこの混合液20μLは、上述の被覆したプロテインA捕捉プレートに移し、室温で1時間インキュベートした。該ウェルはその後、洗浄緩衝液(10 mM Tris-HCl, pH 7.6, 0.05% (v/v) Tween 20)で6回洗浄した。洗浄後、25μl Eu-ストレプトアビジンを最終濃度0.4μg/ml(25mM Hepes, pH 7.6, 1% BSA, 0.2% Tween 20溶液)で各ウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。該ウェルはその後、洗浄緩衝液(10 mM Tris-HCl, pH 7.6, 0.05% (v/v) Tween 20)で6回洗浄した。25μLの増進液をウェルごとに加え、そしてプレートを読みとり、ユーロピウムキレートの615 nmでの時間分解蛍光発光量を決定した。
【0163】
6.2 実施例2:アッセイの最適化
プロテインA又はプロテインGのいずれかのプレート上で捕捉されたシグナルは、前リン酸化p27、E2、E3、Cks1及びビオチン化ユビキチンに依存しているので、このアッセイはp27のユビキチン化に特化しているといえる。これらの成分のうち、いずれも含まない混合液では、該アッセイにおいて目立ったシグナルが生じなかった(図2)。
【0164】
アッセイを最適化するためには、上述のとおりアッセイを実施することが肝要である。2種類の異なるロットのsc-528抗体を逐次希釈し、そしてプロテインAで被覆された捕捉プレート上を被覆させた。前リン酸化p27(4 ng/μL)を完全にユビキチン化し、さらに該プレート上で捕捉しEu-Strep (1:1000)で検出した(図3A)。該アッセイにおけるsc-528の最適量は測定の結果2.5μg/mLであり、この濃度を標準アッセイ条件として選択した。
【0165】
Eu-ストレプトアビジンのタイトレーションのため、前リン酸化p27 (4 ng/μL)を完全にユビキチン化し、2.5μg/mlの抗体sc-528で被覆されたプロテインAプレート上で捕捉した。Eu-Strep (0.1 mg/ml)を逐次希釈し、そしてユビキチン化p27の検出に利用した。各反応に使用するEu-ストレプトアビジンの最適量は、測定の結果0.4μg/ml (1:250希釈液;図4)であった。そのため、この濃度を標準アッセイ条件として選択した。
【0166】
ユビキチン化p27のタイトレーションのため、捕捉抗体及びEu-ストレプトアビジンは、上記のとおり決定された濃度で使用した。前リン酸化p27 (8ng/μL)を完全にユビキチン化し、タトレートした。Eu-Strepの蛍光発光を測定した結果、4 ng/μLの前リン酸化p27までは直線的に上昇した(図5)。そのため該アッセイでは、この濃度を前リン酸化p27濃度として選択した。表2に記載の標準アッセイ条件下では、約50%の前リン酸化p27がユビキチン化された。
【0167】
Cks1とE3、E3とE2、E2とE1間のマトリックスタイトレーション、及びビオチン化ユビキチンのタイトレーションを行った。理想的な条件下では、E1、E2、前リン酸化p27及びビオチン化ユビキチンは、飽和状態にする必要がある。しかしながら、E2を300 ng/μLという高濃度で飽和させることはできなかった。したがって、E2濃度に関しては150 ng/μLを選択した。E1、E2、E3、Cks1、前リン酸化p27、ビオチン化ユビキチン、及びE3/Cks1をそれぞれタイトレートするため(図6A〜6J)、反応混合液中の残りの成分は表2に示す濃度のとおり一定に保った。
【表2】

【0168】
これらの成分の最適濃度は、次のとおり決定した:E1:5 ng/μL (43 nM)、E2:150 ng/μL (5.6μM)、E3:5 ng/μL (26 nM)、及びCks1:0.25 ng/μL (26 nM)。
【0169】
ATP及びDTTのタイトレーション:ATPをタイトレートするため、p27/Cdk2/CycE及びCdk2/CycEを別々に反応液へ加えた。前リン酸化p27には、リン酸化反応アッセイに由来するATPが含まれたためである。したがって、2種類のATP依存性反応:(1)Cdkl/CycEによるp27のリン酸化反応;及び(2)E1によるビオチン化ユビキチンの活性化が起こる。ATPの飽和量は500μMが最適であると推定し、これを選択した(図7A)。DTTは1 mMを最適濃度として選択した(図7B)。
【0170】
DMSO耐性は次のとおり確認した。p27のユビキチン化はDMSOに対し感受性である。1回目のタイトレーションで、p27のユビキチン化は、約15%(v/v)のDMSOでほぼ完全に失われることがわかった(図8A)。濃度を0〜10%DMSOとした2回目のタイトレーションでは、約60%のp27のユビキチン化活性が2%DMSOで保持されることがわかったので(図8B)、最終濃度2%をDMSO濃度として選択した。
【0171】
時間経過:前リン酸化p27は、図9に示した時間で上記表1に挙げた成分の存在下、ユビキチン化した。最適化アッセイは、1.5時間まで直線的に上昇した。この時間のうち、45分間をインキュベートする時間とした。このインキュベーション時間とした場合、最適化アッセイの結果は、ウェスタンブロット法のゲルで検出される同じサンプルのp27のユビキチン化とよく相関していた。
【0172】
反応を停止することができる方法としては、数種類の方法が想定された。アッセイ希釈液の添加をその方法として選択した(図10)。
【0173】
6.3 実施例3:コンピュータによるp27ユビキチン化を調節する化合物のハイスループットスクリーニング
この実施例では、実施例1に記載のアッセイの改良型を記載する。該改良型を使用して、p27のユビキチン化を増加又は低減させる化合物をハイスループットスクリーニングすることができる。
【0174】
コンビナトリアル化学ライブラリーの一部として作製された被験化合物が、p27のユビキチン化を調節する能力を、実施例1に記載のアッセイを用いて調べる。ユビキチン化量(すなわち、615 nmにおける蛍光発光)を対照条件での蛍光発光(すなわち、被験化合物の溶液の代わりに、5μLの6% DMSOを用いて行う同一反応)と比較する。被験化合物条件下での蛍光が、対照条件での蛍光と比べ50%差があれば、その化合物はp27のユビキチン化を調節するものとして同定される。p27のユビキチン化を調節するものとして同定された化合物は、統計学的に有意のあるサンプルサイズを用いて(例えば、同一被験化合物を用いて、各化合物につき並行してp27ユビキチン化反応を10回行う)、再度調べられる。p27のユビキチン化に対し、統計学的に有意な調節を示すことが確認された化合物は、半分以下の濃度、具体的には5〜10の一連の濃度条件(すなわち、1倍、0.5倍、0.25倍、0.125倍等)に希釈し、ED50濃度を決定する。
【0175】
6.4 実施例4: p27の均一時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(HTR-FRET)アッセイ様式
均一時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(HTR-FRET)アッセイを発展させて、p27のユビキチン化をin vitroで遮断する化合物をハイスループットスクリーニングできるようにした。このアッセイでは、p27は、ユビキチン(Ub)とビオチン化ユビキチン(Bio-Ub)の混合物を用いて、E1、E2、E3及びCks1の存在下で修飾される(図11)。ウサギ抗リン酸化p27抗体及びLance Euで標識したプロテインG(Eu-PRG)を供与体として用い、またCy5で標識したストレプトアビジン(Cy5-SA又はDylite-SA)を受容体として用いた。ユビキチン化p27は、Eu及びCy5の間に生じたFRETシグナルとして検出される。この均一p27 Ubアッセイは非常に単純で、わずか4つの添加工程からなり、また反応結果を判読する前に分離する工程を含まない。該アッセイ手順を単純化することにより、アッセイ時間を減少させ、スループットを高め、かつ良好なZ統計量を用いた高品質のデータをもたらすことができる。
【0176】
6.4.1 材料及び方法
タンパク質成分の調製
1) E1、E2、及びCks1:His-E1は、バキュロウイルスを感染させたSf9細胞から発現させた。His-UbcH3及びStrepでタグ付けしたCks1は、E. coli(大腸菌)中で発現させた。His-E1、His-UbcH3、及びStrepでタグ付けしたCks1は、Ni2+キレート又は抗Strepタグのいずれかのクロマトグラフィーでそれぞれ精製した。該Strepタグは、Cks1からトロンビン切断により除去し、またこの切断したタグは抗Strepタグクロマトグラフィーにより除去した。該タンパク質をUb緩衝液(3OmM Tris-HCl, pH 7.5, 20%グリセロール, 1 mM DTT) に対し透析させ、一定分量ずつ-8O℃で保存した。
【0177】
2) E3:昆虫細胞を、GST-Skp2、His-Skp1、His-Cul1、及びRoc1をそれぞれ発現するバキュロウイルスで共感染させた。SCFSkp2 複合体は、グルタチオンアガロースビーズにより精製した。Ub緩衝液で透析した後、該タンパク質複合体は少ない一定分量ずつ-8O℃で保存した。
【0178】
3) Bio-Ub:100mgのUb(Sigma U6253)を10 mlリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で溶解した。12.5 mgのEZ-link(商標)Sulfo-NHS-LC-Biotin(Pierce Biotechnology, Catalog #21335)を加えた。氷上で2時間インキュベートした後、標識したユビキチンは10 mM Hepes(pH 8.0)で透析し、少ない一定分量ずつ-8O℃で保存した。
【0179】
4) Ub:ユビキチンはSigma (U6253)から購入し、水又はPBS10mg/mlで溶解させた。
【0180】
5) p27/Cdk2/CycE: ヒトp27をSf9細胞内で、Strepでタグ付したCdk2及びHisでタグ付けしたサイクリンEを用いて共発現させた。該p27/Strep-Cdk2/His-サイクリンEは、Ni2+キレートクロマトグラフィーにより精製し、Ub緩衝液に対し透析させた。
【0181】
6) Cdk2/CycE:Strep-Cdk2/His-サイクリンEは、p27/Strep-Cdk2/His-サイクリンEと同じ方法で調製した。
【0182】
7) リン酸化p27は、0.1mg/ml Cdk2/CycEを0.lmg/ml p27/Cdk2/CycEと共に、室温で2時間、キナーゼ緩衝液(4OmM Tris-HCl, pH 7.5, 1OmM MgCl2, 1mM DTT, 1mM ATP)中でインキュベートして調製した。
【0183】
他の材料:
1) アッセイプレート: Greiner 384-ウェル黒色ポリプロピレンプレート, cat# 3710
2) ウサギ抗リン酸化p27抗体: Zymed (Cat# 71-7700); 0.25mg/ml
3) Eu-プロテインG: Perkin Elmer (AD0071), 0.4mg/ml (19.1μM)
4) SA-Cy5: Amersham (PA92005V), l mg/ml水溶液
5) SA-Dylite: Pierce Biotechnology (21824), l mg/ml
6) 1O倍Ub緩衝液: 40OmM Tris HCl(pH7.5), 5OmM MgCl2
7) アッセイ緩衝液: 3OmM Tris HCl, pH7.5, 1 mM DTT, 19.5%グリセロール, 0.03% Brij 35;4℃で保存。
【0184】
試薬の取扱い
タンパク質試薬は全て、一定分量に分割し(それぞれの分量は、40個の384-ウェルプレートでのスクリーニングに必要な量と等量とし)、-8O℃で保存した。タンパク質は使用に際し、常時氷上に置いておく必要があり、残りの部分はドライアイスで凍結させなければならず、-8O℃で保存した。凍結/解凍サイクルを頻繁に繰り返すことは避けなければならない。
【0185】
6.4.2 アッセイの開発
モノユビキチン化とポリユビキチン化を比較した後、様々な抗p27抗体と二次抗体、様々な供与体/受容体対等、図11で図示したHTR-FRETアッセイ様式を選択した。この様式では、Bio-Ubを標識ユビキチン化p27に対するトレーサーとして使用した。抗リン酸化p27に結合したLance Eu-標識プロテインG(Eu-PRG)をFRET供与体として使用し、SA-Cy5をFRETの受容体として使用した。FRETのシグナルは、665 nmにおけるCy5の蛍光発光が、Euを340 nmで励起した後に620 nmとしたEuの蛍光発光を超える割合として測定される。
【0186】
HTR-FRETアッセイでは、Eu及びCy5濃度が増加すると、FRETのバックグラウンドが増加する。一般に、バックグラウンドシグナルを低くするために、Eu濃度は低nM範囲としなればならない。一方、Cy5の濃度は最大100〜20OnMまでとすることができる。p27 Ubアッセイにおいて使用されるBio-Ubの最適濃度を決定するため、8OnMのp27を0〜4μMのBio-Ubでユビキチン化し、最終濃度5nMのEu-PRG、1OnMの抗p27、及び25〜125nMのSA-Cy5を含む検出混合液で1:4に希釈した。1μMのBio-Ubを125nMのCy5-SAで希釈したものが、シグナル対バックグラウンドの割合(S/B)を最適とした(図12)。さらにCy5-SAの濃度を増加させても、シグナルは目立った増加をみせなかったが、バックグラウンドは増加した(データは示していない)。E1に対するUbの見掛け上のKmは約2μMであるので、4μMの未標識のユビキチンが反応に使用された(見掛け上のKmの2倍)。4μM Ub及びlμM Bio-Ubの存在下でのp27のユビキチン化は、飽和濃度(28μM)のBio-Ubの存在下でのp27のユビキチン化と非常に類似していた(図13)。p27のユビキチン化は1μM Bio-Ub単独の存在下では非常に低く、このことは反応において、Bio-Ubは全ユビキチンlμMに制限され得ることを示唆している。
【0187】
次に、p27のユビキチン化に関する停止条件を決定した。p27のユビキチン化は2OmM EDTAで完全に阻害された(データは示していない)。該反応液は、わずか5mMのMgCl2を含んでいたが(表2)、5mM EDTA単独ではp27のユビキチン化には何も影響がなく、また1OmM EDTAのみでは部分的にp27のユビキチン化が阻害された。HTR-FRETアッセイで検出されたp27のユビキチン化は、ウェスタンブロット法で検出されたユビキチン化とよく相関し、このことはHTR-FRETで検出されたシグナルが、p27のユビキチン化を正確に反映することを示している。
【0188】
SA-Cy5及びEu-PRGの濃度を最適化するために、4OnMのp27を4μM Ub及び1μM Bio-Ubでユビキチン化した。該反応は、4O mM EDTA、6.67 nM抗リン酸化p27、様々な濃度のCy5-SA(図14A)及びEu-PRG(図14B)を含む停止溶液による1:2希釈液で停止させた。最適なS/Bは、125nMのCy5-SA及び約2nMのEu-PRGにより得た。いずれかの検出試薬の濃度が高いほど、S/Bは低下した。Cy5-SA 125nMを用いて、抗リン酸化p27及びEu-PRGを同じ方法でタイトレートした(図15)。抗リン酸化p27及びEu-PRGの最適濃度は、それぞれ3.75 nM及び1.25 nMであった。
【0189】
E1及びE2のタイトレーション(それぞれ図16A及び16B)では、E1及びE2がそれぞれ5ng/μl (39nM)及び150ng/μl (5μM)で飽和となり、プレートキャプチャー様式のp27 Ubアッセイで観察した場合と一致していることが示された(上記の実施例1及び2を参照されたい)。そのため、5ng/μl (39nM)のE1及び150ng/μl (5μM)のE2を選択した。
【0190】
図17A及び17Bは、E3及びCks1のタイトレーション及び様々なE3/Cks1濃度における反応の時間依存性を示す。実験条件下では、最大FRETシグナルは3500であった。62.5nMのE3及びCks1では、インキュベーション時間を1時間とすると、最大シグナルは約70%となり、この濃度をスクリーニング用として選択した。
【0191】
上記データに基づき、HTR-FRET様式のp27のユビキチン化アッセイの最終プロトコールを確立した。
【0192】
アッセイ手順:
1) 開始溶液を調製し、室温で20〜3O分間インキュベートする。
Start+Cks1:アッセイ希釈緩衝液中12μM Ub、3μM Bio-Ub、及び1.875ng/μl (187.5nM) Cks1。
Start-Cks1:アッセイ希釈緩衝液中12μM Ub及び3μM Bio-Ub。
2) 表3に示すとおりアッセイ混合液Aを調製する。
3) セットアップ反応:アッセイプレートに、5μl/ウェルのアッセイ混合液A、化合物の6% DMSO及び0.03% Brij35 (30μg/ml;最終濃度 10μg/ml)溶液、及び開始溶液を加える。アッセイ総量は15μlとする。室温(約23℃〜25℃)で1時間インキュベートする。
4) 反応は、15μl/ウェルの停止溶液(4OmM EDTA、0.1% Tween 20、25OnM Cy5、2nM Eu-PRG、及び8nM抗リン酸化p27のPBS溶液)を添加して停止させる。
5) Analyst HTプレートリーダー(Molecular Device)でプレートを読み取る前に、室温で1〜2時間インキュベートする。
【表2】

【0193】
【表3】

【0194】
略語:
Ub: ユビキチン、Bio-Ub: ビオチン化ユビキチン、Cdk2/CycE: Cdk2/サイクリンE、E1 : ユビキチン活性化酵素(Uba)、E2: ユビキチン結合酵素(Ubc)、E3: ユビキチンリガーゼ、SCF: Skp1、Cul1、及びRoc1、RT:室温、PBS: リン酸緩衝生理食塩水、HTR-FRET: 均一時間分解蛍光共鳴エネルギー転移、Eu-PRG: Lance Euで標識したプロテインG、SA-Cy5: Cy5 で標識したストレプトアビジン、S/B: シグナル/バックグラウンド。
【0195】
本明細書に記載のすべての文献は、その全体が引用により本明細書に含まれているものとする。また、本明細書に記載のすべての文献は、すべての目的について、それぞれの文献又は特許又は特許出願が特別に及び個別に示され、すべての目的につきその全体が引用により本明細書に含まれるのと同程度に含まれているものとする。
【0196】
本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、当業者にとって本発明の改良型及び変更型を種々作製できることは言うまでもない。本明細書に記載の特別な実施形態は例にすぎず、本発明は添付の特許請求の範囲の用語によってのみ制限され、該特許請求の範囲に含まれる内容と均等な全範囲の内容がこれに含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】図1は、本明細書に記載のp27ユビキチンアッセイで使用される成分間の相互作用を図示する。
【図2】図2は、アッセイの特異性試験の結果を表す。
【図3】図3は、アッセイの最適化の間の、捕捉抗体sc-528のタイトレーションを表す。
【図4】図4は、アッセイの最適化の間の、ユーロピウム-ストレプトアビジンのタイトレーションを表す。
【図5】図5は、アッセイの最適化の間の、ユビキチン化p27のタイトレーションを表す。
【図6A−6C】図6A〜6Cは、アッセイ成分E1及びE2のタイトレーションを表す。
【図6D−6F】図6D〜6Fは、アッセイ成分E3及びCks1のタイトレーションを表す。
【図6G−6I】図6G〜6Iは、E3:Cks1の混合液のタイトレーションを表す。
【図6J−6L】図6J〜6Lは、p27とBio-Ubのタイトレーションを表す。
【図7】図7は、アッセイの最適化の間の、ATP及びジチオスレイトール(DTT)のタイトレーションを表す。
【図8】図8は、アッセイの最適化の間の、ジメチルスルホキシド(DMSO)のタイトレーションを表す。
【図9】図9は、p27のユビキチン化を進行させる至適時間を決めるための、経時変化実験を表す。
【図10】図10は、反応停止を最適化した結果を表す。
【図11】図11は、p27ユビキチン化のHTR-FRETアッセイ様式を表す。
【図12】図12は、ビオチン標識ユビキチンの最適濃度の決定を示す。
【図13】図13は、ビオチン標識ユビキチンの最適濃度の決定を示す。
【図14】図14は、ストレプトアビジン結合Cy5(図14A)及びプロテインG-ユーロピウム(図14B)のタイトレーションを示す。
【図15】図15は、抗p27及びプロテインG-Euのタイトレーションを示す。
【図16】図16は、E1及びE2のタイトレーションを示す。
【図17】図17は、E3/Cks1のタイトレーションと経時変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユビキチン化タンパク質中のユビキチン量を決定する方法であって、ユビキチン化タンパク質を表面上で捕捉し、捕捉されたユビキチン化タンパク質を形成させること、及び該捕捉されたユビキチン化タンパク質中のユビキチンを検出することを含む、前記方法。
【請求項2】
タンパク質のユビキチン化量を決定する方法であって:
a) タンパク質と、該タンパク質を共にユビキチン化することができる複数のポリペプチドとを接触させることにより、ユビキチン化タンパク質を形成させ;
b) 該ユビキチン化タンパク質を表面上で捕捉し;さらに
c) 該表面上で捕捉されたタンパク質中に存在するユビキチン量を決定すること
を含み、該表面上に捕捉されたタンパク質中に存在するユビキチン量は、該タンパク質のユビキチン化量と相関する、前記方法。
【請求項3】
上記タンパク質がp27である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
上記複数のポリペプチドがそれぞれ単離されたポリペプチドである、請求項2記載の方法。
【請求項5】
上記複数のポリペプチドがE1、E2、E3、Cks1及びユビキチンを含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
上記E1、E2、E3又はCks1が組換え的に産生される、請求項3記載の方法。
【請求項7】
上記E1、E2、E3及びCks1が細胞抽出物から精製される、請求項3記載の方法。
【請求項8】
上記ユビキチンが標識される、請求項5記載の方法。
【請求項9】
上記標識がビオチンである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
上記標識されたユビキチンが、ストレプトアビジンと連結するユーロピウムにより可視化される、請求項8記載の方法。
【請求項11】
上記決定がハイスループットスクリーニングの一部としてマルチウェルプレート上で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
p27のユビキチン化を調節する化合物を同定する方法であって、化合物の存在下及び化合物の非存在下で、単離されたリン酸化p27、E1、E2、E3、Cks1とユビキチンを組合わせて形成されたユビキチン化p27の量を決定することを含み、該化合物の存在下で形成されたユビキチン化p27の量が該化合物の非存在下で形成されたユビキチン化p27の量と異なる場合、該化合物はp27のユビキチン化を調節する化合物として同定される、前記方法。
【請求項13】
上記p27が上記E1、E2、E3、Cdk2及びユビキチンと組合わせる前にCdk2及びサイクリンEでリン酸化される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
上記リン酸化p27の濃度が約4 ng/μLであり;上記E1の濃度が約5 ng/μLであり;上記E2の濃度が約150 ng/μLであり;又は上記E3の濃度が約5 ng/μLである、請求項12記載の方法。
【請求項15】
上記化合物の存在下で形成されたユビキチン化p27の量が、上記化合物の非存在下で形成されたユビキチン化p27の量よりも少なく、上記化合物がp27のユビキチン化を阻害する化合物として同定される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
上記E1、E2、E3又はCks1が組換え的に産生される、請求項12記載の方法。
【請求項17】
上記E1、E2、E3又はCks1が細胞抽出物から精製される、請求項12記載の方法。
【請求項18】
上記ユビキチンが標識で標識される、請求項12記載の方法。
【請求項19】
上記標識がビオチンである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
上記標識されたユビキチンが、ユーロピウムで標識されたストレプトアビジンを用いて可視化される、請求項18記載の方法。
【請求項21】
上記同定がハイスループットスクリーニングの一部としてマルチウェルプレート上で行われる、請求項11記載の方法。
【請求項22】
ユビキチン化タンパク質中のユビキチン量を決定する方法であって:
a) 第1の標識で該タンパク質を標識し;
b) 第2の標識で該ユビキチンを標識し;
c) 該第2の標識の該第1の標識に対する割合を決定すること
を含み、割合が高くなるほど該タンパク質のユビキチン化量が多くなることを示す、前記方法。
【請求項23】
上記タンパク質がp27である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
上記第1の標識及び上記第2の標識が蛍光標識である、請求項22記載の方法。
【請求項25】
上記割合の決定に、第1の蛍光値を生じさせる上記第1の標識からの蛍光を検出すること;第2の蛍光値を生じさせる上記第2の標識からの蛍光を検出すること;及び該第1の蛍光値の該第2の蛍光値に対する割合を決定することを含む、請求項22記載の方法。
【請求項26】
上記第1の蛍光標識が励起されると、上記第2の標識が検出可能な蛍光シグナルを放つ、請求項22記載の方法。
【請求項27】
上記第1の標識及び上記第2の標識が同一のユビキチン化p27上に存在する、請求項22記載の方法。
【請求項28】
上記第2の蛍光標識が励起されると、上記第1の標識が検出可能な蛍光シグナルを放つ、請求項27記載の方法。
【請求項29】
上記第1の標識及び上記第2の標識が同一のユビキチン化p27上に存在する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
上記第1の標識及び上記第2の標識が蛍光共鳴エネルギー転移アッセイでの使用に適している、請求項22記載の方法。
【請求項31】
上記第1の標識がユーロピウム、Cy5、トリスビピリジン・ユーロピウム・クリプテート、Dylight(商標)547、Dylight(商標)647、又はアロフィコシアニン(XL665)である、請求項22記載の方法。
【請求項32】
上記第2の標識がユーロピウム、Cy5、トリスビピリジン・ユーロピウム・クリプテート、Dylight(商標)547、Dylight(商標)647、又はアロフィコシアニン(XL665)である、請求項22記載の方法。
【請求項33】
上記第1の標識がユーロピウムであり、上記第2の標識がCy5である、請求項22記載の方法。
【請求項34】
上記ユーロピウムを340 nmの照射で励起し、第1の蛍光値を生じさせる620 nmで該ユーロピウムの蛍光を決定し、第2の蛍光値を生じさせる665 nmで上記Cy5の蛍光を決定し、さらに該第2の蛍光値の該第1の蛍光値に対する割合を決定し、割合が高くなるほどp27のユビキチン化量が多くなることを示す、請求項33記載の方法。
【請求項35】
抗癌剤の同定方法であって、化合物の存在下及び化合物の非存在下で、単離されたp27、E1、E2、E3、Cks1、サイクリンE、Cdk2とユビキチンを組合わせて形成されたユビキチン化p27の量を決定することを含み、該化合物の存在下で形成されたユビキチン化p27の量が、該化合物の非存在下で形成されたユビキチン化p27の量と異なる場合、該化合物は抗癌剤として同定される、前記方法。
【請求項36】
上記p27が上記E1、E2、E3、Cdk2及びユビキチンと組合わせる前に、Cdk2及びサイクリンEでリン酸化される、請求項34記載の方法。
【請求項37】
上記リン酸化p27の濃度が約4 ng/μLであり; 上記E1の濃度が約5 ng/μLであり; 上記E2の濃度が約150 ng/μLであり;又は上記E3の濃度が約7.5 ng/μLである、請求項34記載の方法。
【請求項38】
上記化合物の存在下で形成されたユビキチン化p27の量が、上記化合物の非存在下で形成されたユビキチン化p27の量よりも少ない、請求項34記載の方法。
【請求項39】
上記E1、E2、E3又はCks1が組換え的に産生される、請求項34記載の方法。
【請求項40】
上記E1、E2、E3及びCks1が細胞抽出物から精製される、請求項34記載の方法。
【請求項41】
上記ユビキチンが標識で標識される、請求項34記載の方法。
【請求項42】
上記標識がビオチンである、請求項41記載の方法。
【請求項43】
上記標識されたユビキチンが、ユーロピウムで標識されたストレプトアビジンを用いて可視化される、請求項41記載の方法。
【請求項44】
上記同定がハイスループットスクリーニングの一部としてマルチウェルプレート上で行われる、請求項34記載の方法。
【請求項45】
p27のユビキチン化アッセイのためのキットであって、p27、Cdk2/サイクリンE、及びp27を共にユビキチン化することができる複数のポリペプチド、該ポリペプチドを発現する組換え細胞又は該ポリペプチドをコードする配列を包含する組換えベクターを含む、前記キット。
【請求項46】
p27及びCdk2/サイクリンEが複合体として提供される、請求項45記載のキット。
【請求項47】
上記複数のポリペプチドがE1、E2、E3、Cks1及びユビキチンを含む、請求項45記載のキット。
【請求項48】
上記ユビキチンが標識により標識される、請求項47記載のキット。
【請求項49】
上記標識がビオチンである、請求項48記載のキット。
【請求項50】
任意でプロテインA又はGで被覆されたプレート;緩衝液;可視化剤;又は該ポリペプチドの発現と精製に必要な器具若しくは試薬をさらに1以上含む、請求項45記載のキット。
【請求項51】
サンプル中のp27のユビキチン化を調節する化合物を同定する方法であって:
a) p27、E1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、若しくはいずれかのそれらの組合せを化合物と組合わせて、該化合物と該p27、E1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、又はいずれかのそれらの組合せとの混合物を形成させることにより、第1のサンプルを調製し;
b) p27、E1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、又はいずれかのそれらの組合せを組合わせ、該p27、E1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、又はいずれかのそれらの組合せの混合物を形成させることにより、該化合物を含まない第2のサンプルを調製し;
c) 該p27、E1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、又はいずれかのそれらの組合せを使ったステップ(a)及び(b)における混合物では、p27をユビキチン化するには十分でない場合、第1及び第2のサンプルをそれぞれ複数のポリペプチドと接触させ、該複数のポリペプチド及び該p27、E1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、又はいずれかのそれらの組合せでp27を共にユビキチン化することができ;
d) ユビキチン化p27を形成させ;
e) 該第1及び第2のサンプル中の該ユビキチン化p27を表面上でそれぞれ捕捉し;及び
f) 該第1及び第2のサンプル中で、該表面上で捕捉された該p27中に存在するユビキチン量をそれぞれ決定すること
を含み、該第1及び第2のサンプルから得られるユビキチン量が異なる場合、該化合物はp27のユビキチン化を調節する化合物として同定される、前記方法。
【請求項52】
抗癌化合物を同定する方法であって:
a) p27、E1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、又はいずれかのそれらの組合せを化合物と組合わせ、該化合物と該p27、E1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、又はいずれかのそれらの組合せとの混合物を形成させることにより、第1のサンプルを調製し;
b) p27、E1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、又はいずれかのそれらの組合せを組合わせ、該p27、E1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、又はいずれかのそれらの組合せの混合物を形成させることにより、該化合物を含まない第2のサンプルを調製し;
c) 該p27、E1、E2、E3、Cks1及びユビキチン、又はいずれかのそれらの組合せを使ったステップ(a)及び(b)における混合物では、p27をユビキチン化するには十分でない場合、第1及び第2のサンプルをそれぞれ複数のポリペプチドと接触させ、該複数のポリペプチド及び該p27、E1、E2、E3、Cks1、ユビキチン、又はいずれかのそれらの組合せでp27を共にユビキチン化することができ;
d) ユビキチン化p27を形成させ;
e) 第1及び第2のサンプル中の該ユビキチン化p27を表面上でそれぞれ捕捉し;及び
f) 第1及び第2のサンプル中で、該表面上で捕捉された該p27中に存在するユビキチン量をそれぞれ決定すること
を含み、該第1及び第2のサンプルから得られるユビキチン量が異なる場合、該化合物は抗癌化合物として同定される、前記方法。
【請求項53】
p27のユビキチン化量を決定する方法であって:
a) ユビキチン化の前後いずれかで、第1の標識で標識されたユビキチンでp27をユビキチン化し、ユビキチン化p27を形成させ;
b) 該p27を該第1の蛍光又は発光標識と区別できる第2の標識で標識し;及び
c) 該第1の蛍光標識から生じた該第1の蛍光又は発光シグナルの、該第2の蛍光標識から生じた該第2の蛍光シグナルに対する割合を決定すること
を含み、割合が高くなるほどp27のユビキチン化量が多くなることを示す、前記方法。
【請求項54】
上記第1の蛍光標識及び上記第2の蛍光標識が、蛍光共鳴エネルギー転移又は発光共鳴エネルギー転移アッセイでの使用に適している、請求項53記載の方法。
【請求項55】
上記第1の蛍光又は発光標識が供与体であり、上記第2の蛍光又は発光標識が受容体である、請求項53記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A−6C】
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【図6D−6F】
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【図6G−6I】
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【図6J−6L】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2008−517278(P2008−517278A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536976(P2007−536976)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/037171
【国際公開番号】WO2006/044747
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(504135550)シグナル ファーマシューティカルズ,エルエルシー (21)
【Fターム(参考)】