説明

p40依存性疾患の治療におけるベンジダミンの使用

サイトカインサブユニットp40の発現又は過剰発現に起因した炎症性疾患、特にクローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎および乾癬の治療におけるベンジダミンの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、p40依存性疾患の治療におけるベンジダミンの使用に関する。
特に、本発明は、サイトカインサブユニットp40の発現又は過剰発現に起因した炎症性疾患の治療におけるベンジダミンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンジダミン(メルクインデックス、第9編、1976年、第147頁、No.1136)は鎮痛性、抗炎症性および筋弛緩作用を有する一群の物質に関する特許文献1に初めて記述された。
【0003】
ベンジダミンは、実際に塩酸塩としてヒトの治療に広く使用される。これは主に全身性経路により消炎剤や鎮痛剤として使用される。しかも、これは例えば筋肉痛、腱炎、外陰膣炎、歯肉炎、口内炎、口腔粘膜炎などのような局所炎症を含む疾患に主に局部的に使用される。さらに、ベンジダミンサリチル酸塩はリウマチ性疾患に使用される。
【0004】
特許文献2は、膣トリコモナスおよびガードネレラ・バジナリス感染症の治療におけるベンジダミンの使用を開示する。膣トリコモナスは、男性と女性の両方の尿生殖路の感染症を引き起こす原虫である。ガードネレラ・バジナリスは、直径0.25〜0.44mmのコロニーを形成するグラム不定性の多形性小桿菌である。
【0005】
特許文献3は、抗炎症量のベンジダミンと抗菌有効量の抗菌剤とを含む医薬組成物を開示する。ベンジダミンと抗菌剤との組合せは、ベンジダミンの活性を損なうことなく抗菌剤の活性を高めて、特に歯茎、口およびのどの細菌感染症に対する有効な防腐、抗炎および鎮痛治療をもたらす。
【0006】
特許文献4は、口腔の粘膜との重要な接触を可能にし、中枢作用性鎮咳薬およびベンジダミンを含む経口鎮咳医薬組成物を開示する。ベンジダミンは、中枢作用性鎮咳薬単独の場合と比較して、特定の病理における咳の末梢刺激に対する中枢作用性鎮咳薬の作用の発現時間を短縮し得ることが示された。
【0007】
特許文献5は、TNF、すなわちαTNFとしても既知の非グリコシル化ポリペプチド、またはカケクチンに起因した病理状態の治療用薬剤を調製するためのベンジダミンの使用を開示する。TNFは、サイトカイン群に属し、それ自体外部攻撃から生体を防御する免疫応答を刺激する一因となる。他方、TNFそれ自体の過剰な作用は、TNFの相当な毒性を付与する実際の病原因子となり得る。ベンジダミン治療の利益と言われるTNFに起因した病理状態の代表的な例としては、敗血症性ショック、悪液質、結核若しくはエイズのような慢性ウイルス又は細菌の感染症、或いは多発性硬化症又は潰瘍性大腸炎のような変性疾患が挙げられる。
【0008】
しかし、ベンジダミンの作用は、TNFに関する限り、抗炎症効果を達成するために投与したものよりも多い投与量で実行される。その後、20mg/kgの投与量、またマウスで40mg/kgの高い投与量がTNF産生に対し大きな抑制効果を有するのに必要とされることが報告されている(非特許文献1及び2)。
【0009】
近年、エタネルセプト、インフリキシマブ及びアダリムマブのようなTNFに干渉し得る化合物の使用が開発され、クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎、乾癬及び強直性脊椎炎の治療のための臨床試験がなされている。
【0010】
しかし、別の機構によるものであるが、TNFに干渉し得る化合物の使用は、安全性の問題によりかなり制限される。実際、免疫活性におけるTNFの重要な役割により、抗TNF剤の使用が感染症、悪性腫瘍又は自己免疫疾患のような一般的な免疫抑制後遺症の出現をしばしば伴うことが臨床試験と臨床診療とで実証されている。
【0011】
さらに最近、いくつかの科学的研究は、サイトカインサブユニットp40が乾癬の病理に基本的な役割を果たし得ることを示した(非特許文献3)。
【0012】
サイトカインサブユニットp40は、インターロイキン−12(IL−12)及びインターロイキン−23(IL−23)の両方の成分である。p40サイトカインサブユニットは、ジスルフィド結合を介してサイトカインサブユニットp35に結合してIL−12を形成し、またサイトカインサブユニットp19に結合してIL−23を形成する。IL−12及びIL−23は炎症誘発性ヘテロ二量体サイトカインの小さい一群の構成体である。IL−12用受容体は、IL−12Rβ1及びIL−23Rβ2のサブユニットにより構成される一方、IL−23用受容体はIL−12Rβ1及びIL−23Rのサブユニットにより構成される。
【0013】
IL−12及びIL−23は、主として活性化樹枝状細胞及び食細胞によって発現する。二つのサイトカイン用受容体は、T細胞およびNK細胞並びにNK T細胞に発現するが、IL−23用受容体の低レベルの複合体は単球、マクロファージ及び樹枝状細胞にも存在する。
【0014】
これら類似性にもかかわらず、IL−12及びIL−23が異なる免疫学的回路を制御することを示唆する多くの証拠がある。実際、IL−12はγ―インターフェロン(IFN−γ)を産生し得るTh1細胞の発達を制御し、細胞毒性、抗菌性及び坑腫瘍性の応答を増加する一方、IL−23はIL−17を産生し得るCD4+細胞の発生に至る回路を調節する。IL−23依存プロセスの誘導は、様々な種類の炎症性細胞、例えばTH−17の可動化をもたらし、免疫学的応答により仲介される多数の炎症性病理の発症に不可欠であることが実証されている。
【0015】
p40の発現に伴う病理の代表的な例としては、関節器官の慢性炎症性疾患(例えば関節リウマチ)、皮膚組織の慢性炎症性疾患(例えば乾癬)、胃腸器官の慢性炎症性疾患(例えばクローン病)がある。しかし、IL−23はまた、腫瘍の発生や成長を促進するという役割を果たす。実際、IL−23は、腫瘍微小環境における一連の回路を調整し、血管新生と炎症媒体物の産生とを刺激する。
【0016】
乾癬は世界人口の3%に影響を与える慢性炎症性皮膚疾患である(非特許文献4及び5)。1型の異常な免疫応答が乾癬の病理と相関し、この応答を誘導するIL−12及びIL−23のようなサイトカインが適当な治療対象物を表す場合がある。サブユニットp40を共有するIL−12及びIL−23の発現が乾癬斑において著しく増加され、また前臨床研究によりこれらサイトカインの役割が乾癬の病理において実証された。最近、乾癬を患っている患者に対する抗IL−12及び抗IL−23のモノクローナル抗体による治療が、疾患の進行や重篤さの兆候の改善に有効であることが証明され、その後乾癬の病理におけるIL−12及びIL−23の役割を強固にした。
【0017】
クローン病は、消化器の慢性炎症性病理であり、その口から肛門までのあらゆる領域に影響を及ぼす可能性がある。クローン病は通常回腸の末端管や大腸の特定の領域を苦しめる。これは口内炎やリウマチ性関節炎のような全身性自己免疫疾患をしばしば伴う。ヨーロッパでは500000人、米国では600000人を超える人がクローン病により影響を受けている。
【0018】
クローン病は、サイトカインのTh1細胞媒介過剰活性に伴う病理である。IL−12は、Th1細胞により仲介された炎症応答の初期における主要なサイトカインである。クローン病は、腸組織での抗原提示細胞によるIL−12の増大した産生と、リンパ球と腸管マクロファージによるγ―インターフェン(IFN−γ)およびTNF−αとの増大した産生を特徴とする。これらサイトカインは、病理の特徴的な兆候である腸壁の炎症プロセスおよび肥厚を誘導、支持する。IL−12の抑制が腸の炎症のモデル及び/又はクローン病を患っている患者における炎症応答を制御するのに有効であることが前臨床的および臨床的証拠により実証された。
【0019】
癌と炎症との関係は現在確立された事実である。多くの腫瘍の形態が炎症部位に由来し、炎症媒体物が腫瘍にしばしば産生される。
【0020】
IL−23は、癌に関連するサイトカインとして同定され、特に隣接する正常組織と比較した場合、IL−23の発現はヒト悪性腫瘍の試料において著しく高い。さらに、隣接する正常組織におけるIL−23の有意な発現の欠如は、腫瘍発生の役割を強固にする腫瘍中のIL−23の過剰調節を示唆する。
【0021】
出願人は、クローン病、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎および乾癬などの慢性炎症性疾患のより安全かつ安価な治療用の医薬を開発し、これまで報告された治療に関連したいくつかの副作用及び高いコストを回避する必要性が依然としてあることに気付いた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第3318905号明細書
【特許文献2】欧州特許第195749号明細書
【特許文献3】欧州特許第812193号明細書
【特許文献4】米国特許第5932589号明細書
【特許文献5】米国特許第6300358号明細書
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】M.Sironi et al.,“Inhibition of inflammatory cytokine production and protection against endotoxin toxicity by benzidamine”,Cytokine,1996年9月第8巻,第9号,第710−716頁
【非特許文献2】A.Guglielmotti et al.“Benzydamine protection in a mouse model of endotoxemia”,Journal Inflammation Research,1997年9月第46巻,第9号,第332−335頁
【非特許文献3】M.Cargill,“A large−scale genetic association study confirms IL12B and leads to the identification of IL23R as psoriasis−risk genes”,American journal of human genetics,2007年2月第80巻,第2号,第273−290頁
【非特許文献4】Koo J.Dermatol.Clin.1996;14:485−96。
【非特許文献5】Schon MP.et al.,N.Engl.J.Med.2005;352:1899−912。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
驚くべきことに、出願人はベンジダミンがサイトカインサブユニットp40の発現と過剰発現を抑制することができることを見出した。また、出願人は驚くべきことに、ベンジダミンがTNFに対する活性について以前報告されたものに関してより低濃度でサイトカインサブユニットp40に対して活性であることを見出した。
【0025】
驚くべきことに、出願人はサイトカインサブユニットp40の発現または過剰発現に起因した、例えばクローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎および乾癬のような炎症性疾患の治療にベンジダミンを使用し得ることを見出した。
【0026】
従って、本発明はサイトカインサブユニットp40の発現に基づく炎症性疾患の治療用薬剤の製造における、ベンジダミンまたはその生理学的に許容し得る酸付加塩の使用に関する。
【0027】
好ましくは、本発明は、クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎および乾癬からなる群から選択した炎症性疾患の治療用薬剤の製造における、ベンジダミンまたはその生理学的に許容し得る酸付加塩の使用に関する。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、治療有効量のベンジダミンまたはその生理学的に許容し得る酸付加塩の投与を備える治療を必要とする患者における、サイトカインサブユニットp40の発現に基づく炎症性疾患の治療方法に関する。
【0029】
有利なことに、出願人は、クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎および乾癬の治療におけるベンジダミンまたはその生理学的に許容し得る酸付加塩の使用が、現在既知のTNFに干渉し得る化合物での治療的処置についてよりも良好な結果を付与することを見出した。
【0030】
さらに、出願人はまた、本発明に係るベンジダミンまたはその生理学的に許容し得る酸付加塩の使用が、TNFに干渉し得る化合物での治療的処置についてよりも副作用が低いことを見出した。
【0031】
加えて、出願人はまた、本発明に係るベンジダミンまたはその生理学的に許容し得る酸付加塩の使用が、TNFに干渉し得る化合物での治療的処置についてよりも安価な治療的処置を提供するのを可能にすることを見出した。
【0032】
最後に、出願人は、ベンジダミンまたはその生理学的に許容し得る酸付加塩をTNF産生の抑制に予め既知の投与量よりも低い投与量で使用し得ることを見出した。
【0033】
従って、本発明の好ましい実施形態は、サイトカインサブユニットp40の発現に基づく炎症性疾患の全身または局所投与による治療用薬剤の製造における、ベンジダミンまたはその生理学的に許容し得る酸付加塩の使用に関する。
【0034】
有利なことに、全身投与用の本発明の薬剤は、遊離塩基として表されるベンジダミンを1mg〜100mg、より好ましくは5mg〜50mgの量で含む。
【0035】
有利なことに、局所投与用の本発明の薬剤は、遊離塩基として表されるベンジダミンを薬剤の総重量に対し1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%の量で含む。
【0036】
より好ましい実施形態において、本発明は、ベンジダミンまたはその生理学的に許容し得る酸付加塩を遊離塩基として表されるベンジダミン0.1mg/kg〜50mg/kgの1日投与量で投与することを備える治療を必要とする患者における、サイトカインサブユニットp40の発現に基づく炎症性疾患の治療方法に関する。
【0037】
本発明の方法は、全身または局所投与を備えるのが好ましい。
【0038】
有利なことに、本発明の方法は、遊離塩基として表されるベンジダミンの0.1mg/kg〜50mg/kgの1日投与量でベンジダミンまたはその生理学的に許容し得る酸付加塩を全身投与することを備える。
【0039】
有利なことに、本発明の方法は、遊離塩基として表されるベンジダミンの1mg/kg〜50mg/kgの1日投与量でベンジダミンまたはその生理学的に許容し得る酸付加塩を局所投与することを備える。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の目的のために、ベンジダミンまたはその生理学的に許容し得る酸付加塩をそれ自体として投与することができる。
【0041】
有利なことに、ベンジダミンまたはその生理学的に許容し得る酸付加塩を、全身または局所投与用の医薬製剤の形状で投与することができる。
【0042】
ベンジダミンは、生理学的に許容し得る有機又は無機酸で生理学的に許容し得る酸付加塩を形成することができる。生理学的に許容し得る無機酸の代表的な例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸及び硝酸がある。適当な生理学的に許容し得る有機酸の代表的な例としては、酢酸、アスコルビン酸、安息香酸、クエン酸、フマル酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、コハク酸、タンニン酸及び酒石酸がある。
【0043】
全身経路により使用する場合、医薬製剤は錠剤、糖衣錠、カプセル、粉末および徐放製剤のような固体、または筋肉若しくは静脈内注射用無菌溶液、懸濁剤および乳剤のような液体である。
【0044】
局所用医薬製剤は、洗浄溶液、クリーム及び発泡体のような膣投与形態、口内洗浄液およびスプレーのような口腔治療用の投与形態、並びに軟膏、ペースト、クリーム、発泡体、ゲル、溶液および粉末のような鼻及び耳用の投与形態とすることができる。
【0045】
従来の賦形剤に加えて、本発明の製剤は、防腐剤、安定剤、乳化剤、浸透圧を調節するための塩、緩衝液、着色剤および香料などの他の適当な医薬添加剤を含んでもよい。
【0046】
特定の治療にとって必要である場合、本発明の製剤はまた、同時投与が有益な他の混合可能な活性成分を含むことができる。
【0047】
有利なことに、本発明の全身投与用医薬製剤は、遊離塩基として表されるベンジダミンを1mg〜100mg、より好ましくは5mg〜50mgの量で含む。
【0048】
有利なことに、本発明の局所投与用医薬製剤は、遊離塩基として表されるベンジダミンを薬剤の総重量に対し1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%の量で含む。
【0049】
治療の実用的用途に対し、ベンジダミンまたはその生理学的に許容し得る酸付加塩の有効量は、必要な特定の治療法、選択された医薬製剤および投与経路並びに特定の患者の年齢、体重および応答のような既知の要因に応じてかなり幅広い範囲にわたって変えることができる。しかし、最適な有効量及び投与間隔は、関与する医師により単純な日常的手順にしたがって容易に達成することができる。
【0050】
一般に、ベンジダミン遊離塩基の1日投与量は、好ましくは50mg/kg未満、より好ましくは10mg/kg未満、更に好ましくは5mg/kg未満である。
【0051】
一方、ベンジダミン遊離塩基の1日投与量は、好ましくは0.1mg/kgより高く、より好ましくは0.5mg/kgより高く、更に好ましくは1mg/kgより高い。
【0052】
当然、その酸付加塩の場合、上述したベンジダミン遊離塩基の量に相当する量が投与される。
【0053】
有利なことに、全身投与の場合、遊離塩基として表されるベンジダミンの1日投与量は、0.1mg/kg〜5mg/kgであるのが好ましい。
【0054】
有利なことに、局所投与の場合、遊離塩基として表されるベンジダミンの1日投与量は、1mg/kg〜50mg/kgであるのが好ましい。
【0055】
本発明の医薬製剤は、必要に応じて混合、造粒及び圧縮を含む薬剤師による従来の手法に従うか、又は望ましい結果を与えるのに見合った成分を様々に混合し及び溶解することにより作製することができる。
【0056】
次の例は、本発明を実施するための少なくとも一つの方法を説明するが、添付された請求の範囲によって定義される保護が求められている事項をいかなる方法においても制限することはない。
【実施例】
【0057】
実施例1
生体外でのp40 mRNA発現に対するベンジダミンの効果
【0058】
リポポリサッカライド(LPS)で刺激されたMonoMac6細胞によるp40の発現を抑制するベンジダミンの能力を評価した。
【0059】
細胞を50000細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートに置いた。化合物を75μMの濃度で試験し、1時間培養した。その後、細胞をLPS(100ng/ml)で4時間刺激した。
【0060】
全RNAを細胞ペレットからRNeasyミニキット(Qiagen社製)を使用して抽出し、TaqMan逆転写試薬合成キット(Applied Biosystems社製)で逆転写し、そして得られたcDNAをリアルタイムPCR反応に使用した。
【0061】
次の温度プロファイル、50℃を2分間、95℃を10分間、そして95℃で15秒間と60℃で1分間の45サイクルを適用することによりABIプリズム7000配列検出システム(Applied Biosystems社製)を用いて、増幅を96ウェルプレートで得た。増幅のために、ヒトp40に特異のプライマー及びプローブのセットを用いた(Applied Biosystems社製, RefSeq NM_002187.2)。
【0062】
β−アクチン用のプライマー及びプローブのセットを別のウェルに規格化の目的用試料の内部対照として用いた。一度反応が生起すると、各試料の閾値サイクル(Ct)を計算し、その後ΔΔCt法により相対定量化を行うことにより、ABIプリズム7000SDSソフトウェアを用いて蛍光データを分析した。
【0063】
得られた結果を抑制の百分率で表し、下記の表1に対照する。
【0064】
【表1】

【0065】
表1に得られた結果により示されるように、ベンジダミンはヒト単球ラインにおけるp40のLPS−誘導発現を著しく抑制する能力があり、特定のmRNAの濃度で80%減少を示した。
【0066】
実施例2
生体外でのp40タンパク質産生に対するベンジダミンの効果
【0067】
抗CD3で刺激したヒトPBMC(末梢血単核細胞)によるタンパク質p40の産生を抑制する化合物の能力を評価した。
【0068】
細胞を2×10細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートに置いた。化合物を六点1/2の対数投与曲線(0.3〜100μMの範囲)で試験し、1時間培養した。その後、細胞を抗CD3(4μg/ml)で48時間刺激した。
【0069】
産生されたp40の量を、緩衝液で適当に希釈された上清についてLuminex100システムの使用により測定した。
【0070】
得られた結果を下記表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
表2に得られた結果により示されるように、化合物はヒトPBMCにおけるp40の抗CD3誘導産生を著しく抑制する能力があり、23〜99%の範囲の抑制を示し、10.1μMのIC50をもたらした。
【0073】
実施例3
生体外でのTNFに対するベンジダミンの効果
【0074】
抗CD3で刺激したヒトPBMC(末梢血単核細胞)によるタンパク質TNFの発現を抑制する化合物の能力を評価した。
【0075】
細胞を2×10細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートに置いた。化合物を六点1/2の対数投与曲線(0.3〜100μMの範囲)で試験し、1時間培養した。その後、細胞を抗CD3.(4μg/ml)で48時間刺激した。
【0076】
産生されたTNFの量を、緩衝液で適当に希釈された上清についてLuminex100システムの使用により測定した。
【0077】
得られた結果を下記表3に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
表3に得られた結果により示されるように、化合物はヒトPBMCにおけるTNFの抗CD3誘導産生を8〜70%の範囲で抑制する能力があり、p40で得られるものより約4倍も高い43.1μMのIC50をもたらした。
【0080】
実施例4
斑性乾癬に対するベンジダミンの効果
【0081】
乾癬用の信頼できる実験動物モデルがなく(Lowes MA et al、Nature、2007、445:866−73)、またヒトにおけるベンジダミンを用いた長期的な経験と、その局所投与後の低い全身暴露と、優れた安全性プロファイルとを考慮すると、ベンジダミンを5%のクリーム(下記表8の製剤に対応)として乾癬の影響を受ける患者の小群において試験した。
【0082】
クリームを、軽度から中程度の斑性乾癬(PASI<10)に影響を受けた7人の患者において試験した。PASI(乾癬の面積重症度指数)は、皮膚病変の平均重症度の有効な尺度であり、“赤み”、“厚さ”および“スケーリング”として評価され、存在する領域の百分率および病変の部位に対し重み付けがされている。クリームを連続30日間1日1回患部に塗布し、皮膚に吸収されるまで軽くマッサージした。
【0083】
ベンジダミン5%含有クリームによる治療は、PASIにおける50%以上の相当な減少を示し、7人の治療した患者のうち4人で効果的な結果となった。
【0084】
実施例5
次の表4〜9は本発明に係る医薬製剤の特定例を示す。
【0085】
【表4】

【0086】
【表5】

【0087】
【表6】

【0088】
【表7】

【0089】
【表8】

【0090】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトカインサブユニットp40の発現に起因した炎症性疾患の治療用薬剤の製造におけるベンジダミン又はその生理学的に許容し得る酸付加塩の使用。
【請求項2】
前記炎症性疾患がクローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎および乾癬からなる群より選択される請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記薬剤が全身又は局所投与用に処方される請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記全身投与用薬剤が、遊離塩基として表される1mg〜100mg、より好ましくは5mg〜50mgの量のベンジダミン又はその生理学的に許容し得る酸付加塩を含む請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記局所投与用薬剤が、遊離塩基として表されるベンジダミン又はその生理学的に許容し得る酸付加塩を薬剤の総重量に対し1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%の量で含む請求項3に記載の使用。
【請求項6】
治療を必要とする患者にベンジダミン又はその生理学的に許容し得る酸付加塩の治療有効量を投与することを備えるサイトカインサブユニットp40の発現に起因した炎症性疾患の治療方法。
【請求項7】
前記炎症性疾患がクローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎および乾癬からなる群より選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記投与が、0.1mg/kg〜50mg/kgの遊離塩基として表されるベンジダミン又はその生理学的に許容し得る酸付加塩の1日投与量でもたらされる請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記投与が、全身性又は局所性経路によってもたらされる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記全身投与が、0.1mg/kg〜5mg/kgの遊離塩基として表されるベンジダミン又はその生理学的に許容し得る酸付加塩の1日投与量でもたらされる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記局所投与が、1mg/kg〜50mg/kgの遊離塩基として表されるベンジダミン又はその生理学的に許容し得る酸付加塩の1日投与量でもたらされる請求項9に記載の方法。
【請求項12】
サイトカインサブユニットp40の発現に起因した炎症性疾患の全身又は局所投与による治療用で、ベンジダミン又はその生理学的に許容し得る酸付加塩を含む医薬組成物。
【請求項13】
遊離塩基として表されるベンジダミン又はその生理学的に許容し得る酸付加塩を全身投与用として1mg〜100mg、より好ましくは5mg〜50mgの量で含む請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
遊離塩基として表されるベンジダミン又はその生理学的に許容し得る酸付加塩を局所投与用として組成物の総重量に対し1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%の量で含む請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記ベンジダミンの生理学的に許容し得る酸付加塩が、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、アスコルビン酸、安息香酸、クエン酸、フマル酸、乳酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、コハク酸、タンニン酸及び酒石酸からなる群より選択した無機酸又は有機酸で得られる請求項12〜14のいずれかに記載の局所投与用医薬組成物。

【公表番号】特表2012−532173(P2012−532173A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518870(P2012−518870)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058881
【国際公開番号】WO2011/003737
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(592160973)アジェンデ・キミケ・リウニテ・アンジェリニ・フランチェスコ・ア・チ・エレ・ア・エフェ・ソシエタ・ペル・アチオニ (36)
【氏名又は名称原語表記】AZIENDE CHIMICHE RIUNITE ANGELINI FRANCESCO A.C.R.A.F.SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】