説明

パターニング基材の作製方法

【課題】工程の複雑化や設備規模の増加が問題となっているフォトリソグラフィー法に代わりに開発されている被印刷基材表面上へ転写する反転印刷法において、簡便な工程/設備規模で、パターンの変形による抜けが無く、パターン重ね合わせ精度が高く、高品質な微細加工の要求の解決を課題とする。
【解決手段】パターン上層部、下層部を含んだ、少なくとも二つの層により構成される積層構造パターンを基材上に作製する方法であって、パターン上層部が、その下方のパターン層よりも大きく、パターン断面形状で画像パターン上層部からなるパターン表面部分が水平方向に突き出した形状とした事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基材やプラスチックフィルム等の可撓性基材を用いたパタ−ニング基材の作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、紙やフィルムを対象に発達してきたパターニング技術の応用範囲がエレクトロニクス分野へと拡大されており、精密機器の量産化や低価格化に貢献している。とくに発達が目覚しいフラットパネルディスプレイには、多くの部材に精密パターニング技術が用いられており、これら精密パターニング技術を利用した部材の大型化や低価格化が益々求められている。
【0003】
例えばフラットパネルディスプレイの一つであるカラー液晶表示装置等に使用されているカラーフィルタ(CF)は、透明基板上に微細な赤(R)、緑(G)、及び青(B)の三色の着色層によるパターンが規則正しく、例えばドット状あるいはストライプ状に配列されたものである。加えて各着色層間には各着色層を光学的に分離するための隔壁となる格子状、あるいはストライプ状の光遮蔽層、いわゆるブラックマトリクス(BM)が精密パターニング技術を利用して製造されている。
【0004】
このようなCFの製造初期には、蒸着法や染色法が用いられていたが、それぞれ隣接する画素ごとに薄膜を十数層にも重ねる複雑なプロセスが必要(蒸着法)、色素受像の為の有機層や色耐性に問題がある(染色法)、などの理由で用いられなくなった (特許文献1及び2)。
【0005】
また、オフセット印刷やスクリーン印刷などの既存の印刷方式を利用して、CFのパターニングを行う試みがされてきた(特許文献3)。
【0006】
しかし、スクリーン印刷では、スクリーン版の変形が生じやすく、印刷パターンの変形やパターンの重ね合わせ精度に問題があった。
【0007】
さらに、オフセット印刷においては、ブランケットからのパターンの受理や転移時にパターンの潰れや、にじみ、加圧時にパターン中心部と輪郭部においてのインキ膜厚の差異が生じる問題があった。
【0008】
そこで、近年では透明基板上に上記BM、及び3色の着色パターンの各層を各々、顔料分散レジスト塗布、露光、及び現像工程等を繰り返すフォトリソグラフィー法(顔料分散法とも呼ばれる)が製造方法の中心となっている。
【0009】
フォトリソグラフィー法は、BMを含めた各色のパターニングに要する工程が複雑であり、テレビ製品向けなどの大型化に伴う設備規模の増加が問題となっている。また、モバイル製品向けなどの小型パネルにおいてはフォトリソグラフィー法で得られるCFパターンの微細化が課題となっている。
【0010】
フォトリソグラフィー法では、一般にBMパターンに対する各着色パターンのアライメント精度(位置合わせ精度)の誤差を考慮し、予めBMパターンで形成された画素面積よりも各着色パターンを大きく設計している。
【0011】
そのためCFの断面を見てみると、BMパターン表面に着色パターンの一部が乗り上が
り(オーバーラップ)、段差となる為に液晶配向の乱れやムラの原因となっている。
【0012】
さらに、ディスプレイの高精細化がテレビ製品やモバイル製品で進んでおり、画素の小型化やBM線幅の微細化が求められているため、BMパターンに対する着色パターンのオーバーラップ幅がほとんど設定できなくなる傾向がある。
【0013】
そこで、BMパターンを画素パターンの隔壁として用い、開口部へオフセット印刷を用いて印刷した後、印刷に用いたブランケット胴でそのまま画素表面を加圧し、開口部全面にインキを延ばす方法も考案されている(特許文献4)。
【0014】
この方法では、確かにBMパターンと画素パターンのオーバーラップを設定せずに、インキを画素全面に広げることが可能であるが、インキの流動性が高い段階で加圧を行うため、混色を防ぐ目的で隔壁の高さを確保すると、インキへの加圧を均一にすることが困難になる不具合や、通常のオフセット印刷を用いる為に高精細化が困難であった。
【0015】
さらに、インクジェット(IJ)を応用したパターニング技術も、積層したインキ吸収性樹脂層を用いる受像層方式や、隔壁として用いるBMパターンに撥インキ性を付与した隔壁方式が主に用いられる。
【0016】
しかし、受像層方式では、着色インキを吸収した場合の膨張の制御や、加工表層へ耐性を付与することが難しい。
【0017】
また、インクジェット方式ではインキの粘度を上げることが困難な為、隔壁方式では吐出直後において、隔壁の高さの数倍となるインキ量を決壊なく保持しなければならず、着色パターンににじみや混色が生じやすい(特許文献5)。
【0018】
CFブラックマトリックスパターンとして下層部をフォトリソ法、上層部を印刷法で作製し、フォトリソ法によるパターン形状の改善、印刷法による遮光性の向上を目指しているが、工程が複雑となり、上層部の印刷層は下層部のフォトリソ層のパターンより小さくならないとフォトリソ法パターンの形状の良さを損なってしまう(特許文献6)。
【0019】
同じ印刷法を用い複数回印刷する事により多層化し、その時にオフセット印刷に用いるブランケットの相対位置を変化させることによりブランケット起因の欠陥の改善する試みがあるが、ピンホールに関しては改善されるが、パターン形状の改善や層毎の大きさを変えることはできず、パターン上層部からなるパターン表面部分が水平方向に突き出した形状にする事はできない(特許文献7)。
【0020】
そこで、着色パターンの混色の発生を防止するためには、BMパターンの構造を、親インキ性を有する層と撥インキ性を有する層とをもつ多層積層構造にするといった手法が検討されている。
【0021】
しかし、この手法では、BMパターンを多層化する必要があり、そのためにフォトリソグラフィー工程を複数回行わなければならず、結果として、プロセスの複雑化とコストアップを招いてしまう。
【0022】
また、混色を防止するために、BMパターンの撥インキ性を過度に上げてしまうと、着色層のパターニング時に、着色インキがセルの中央部で盛り上がり且つ外周部が極端に薄くなってしまうという品質不良が発生した。
【0023】
一方、BMパターンの断面形状が丸みを持った「かまぼこ」型であった場合、BMパタ
ーンが十分な撥インキ性を有していても、その形状よりBMパターンが堰の役目を果たさずに、混色が発生することがあった。
【0024】
そのため、BMパターン作製時に、その形状を制御することができれば、着色層のパターニング時の混色・ムラを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開昭63−26361号公報
【特許文献2】特開平4−86801号公報
【特許文献3】特開平11−314341号公報
【特許文献4】特開平2−297502号公報
【特許文献5】特開平6−186416号公報
【特許文献6】特開平6−337307号公報
【特許文献7】特開平6−62414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、上記のような問題を解決すべくなされたものであって、工程の複雑化や設備規模の増加が問題となっているフォトリソグラフィー法に代わり、開発されている被印刷基材表面上へ転写する反転印刷法を用いたパターン基材の作製方法おいて、簡便な工程/設備規模で、パターンの変形による抜けが無く、パターン重ね合わせ精度が高く、高品質な微細加工のできるパターン基材の作製方法を提供する事を課題とする
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、パターン表面部を成す上層部と、基材表面との接地部分を成す下層部と、を含んだ、少なくとも二つの層により構成される積層構造パターンを基材上に作製する方法であって、
(a)インキ剥離性のフィルム基材上に、第一のインキ液膜を塗工して設けた後、該インキ液膜を予備乾燥し、予備乾燥インキ膜を得る工程と、
(b)該第一の予備乾燥インキ膜を設けた該インキ剥離性のフィルム基材上に、第二のインキ液膜を塗工して設け、予備乾燥して予備乾燥インキ膜とする工程を少なくとも一回行うことで、積層した予備乾燥インキ膜を得る工程と、
(c)必要な画像パターンを凹部とした凸版を積層した該予備乾燥インキ膜に接触、剥離させ、該インキ剥離性のフィルム基材上に積層した該予備乾燥インキ膜からなる画像パターンを形成する工程と、
(d)該インキ剥離性のフィルム基材上に形成された積層した該予備乾燥インキ膜による画像パターンを目的の被印刷基材表面上へ転写する工程と、
を備えることを特徴とするパターニング基材の作製方法である。
【0028】
また、請求項2に記載の発明は、パターン表面部を成す上層部と、基材表面との接地部分を成す下層部と、を含んだ、少なくとも二つの層により構成される積層構造パターンを基材上に作製する方法であって、
(a)インキ剥離性のフィルム基材上に、第一のインキ液膜を塗工して設けた後、該インキ液膜を予備乾燥し、予備乾燥インキ膜を得る工程と、
(b)必要な画像パターンを凹部とした凸版を該第一の予備乾燥インキ膜に接触、剥離させ、該インキ剥離性のフィルム基材上に該予備乾燥インキ膜からなる画像パターンを形成する工程と、
(c)該インキ剥離性のフィルム基材上に形成された該第一の予備乾燥インキ膜による画像パターンを目的の被印刷基材表面上へ転写する工程と、
を行った該被印刷基材に対して、パターン表面の親インキ性を高める処理をした後、繰り返し(a)〜(c)工程を行い、該インキ剥離性のフィルム基材上の画像パターンと被印刷基材上に転写された画像パターンとを位置合わせして転写することで、同一の被印刷基材に対して画像パターンを少なくとも二回重ねて転写することを特徴とするパターニング基材の作製方法である。
【0029】
また、請求項3に記載の発明は、パターン表面部を成す上層部と、基材表面との接地部分を成す下層部と、を含んだ、少なくとも二つの層により構成される積層構造パターンを基材上に作製する方法であって、
一つの該積層構造をもつパターニング基材を作製するために、前記インキ剥離性のフィルム基材上に塗工するインキが、パターニング基材を構成する画像パターン各層ごとに異なることを特徴とする請求項1または2に記載のパターニング基材の作製方法である。
【0030】
また、請求項4に記載の発明は、パターン表面部を成す上層部と、基材表面との接地部分を成す下層部と、を含んだ、少なくとも二つの層により構成される積層構造パターンであって、
該パターン上層部が、その下方のパターン層よりも大きく、パターン断面形状で、該画像パターン上層部からなるパターン表面部分が水平方向に突き出した形状となるように、
前記インキ剥離性のフィルム基材上へ塗工する第一のインキの予備乾燥状態での転写性と、前記凸版との接触・剥離時の前記予備乾燥インキ膜の乾燥状態と、のいずれか、または両方を調整し、請求項1または3に記載の方法により作製したパターニング基材を用いることを特徴とするカラーフィルタである。
【0031】
また、請求項5に記載の発明は、パターン表面部を成す上層部と、基材表面との接地部分を成す下層部と、を含んだ、少なくとも二つの層により構成される積層構造パターンであって、
該パターン上層部が、その下方のパターン層よりも大きく、パターン断面形状で、該画像パターン上層部からなるパターン表面部分が水平方向に突き出した形状となるように、
前記被印刷基材上に最後に積層転写する画像パターンの形状を調整し、請求項2または3に記載の方法により作製したパターニング基材を用いることを特徴とするカラーフィルタである。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に係る発明によれば、インキ剥離性のフィルム基材上に設けた、積層した予備乾燥インキ膜を一括して、凸版との接触、剥離により画像パターンを形成することができるため、積層構造をもつパターニング基材を簡易に、パターンの変形による抜けが無く、パターン重ね合わせ精度が高く、高品質に作製することができる。
【0033】
請求項2に係る発明によれば、同一の被印刷基材に対して、複数回のパターニング工程を経て、積層構造パターンを作製することにより、前記予備乾燥した状態で積層して設けることが難しいインキであっても、インキ剥離性のフィルム基材を用いた反転印刷法により、積層構造をもつパターニング基材を簡易に、パターンの変形による抜けが無く、パターン重ね合わせ精度が高く、高品質に作製することができる。
【0034】
請求項3に係る発明によれば、積層構造パターンを構成するインキパターンの層ごとに異なるインキを用いることにより、層ごとに任意の特性を付与した積層構造パターニング基材を作製することができる。
【0035】
請求項4,5に係る発明によれば、積層構造パターンを、上面部が水平方向に突き出した形状にすることで、CF基板として着色層をパターニングする際に、着色層のパターニ
ング方法を、インキ剥離性のフィルム基材を用いた印刷法に限定せず、インクジェット法によるパターニングであっても、着色層をオーバーラップ・混色無くパターニングすることが可能なBMパターン基材を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】インキ剥離性のフィルム基材の構造を説明した図である。
【図2】インキ剥離性のフィルム基材を用いたパターニング基材の作製方法により、インキ剥離性のフィルム基材上に積層した予備乾燥インキ膜を形成し、一括して画像パターンを形成する積層構造パターニング基材の作製工程を説明した図である。(a)はインキ剥離性のフィルム基材上に第一のインキ液膜を塗工している模式図である。(b)は第一のインキ液膜上に第二のインキ液膜を塗工積層している模式図である。(c)はインキ除去板を用い不要な画像パターンインキ膜を除去している模式図である。
【図3】インキ除去板を用い不要な部分を除去された後の上層部と下層部との2つの層により構成される画像パターンインキ積層構造体であり、上層部からなるパターン表面部分が水平方向に突き出した形状で被印刷基材に転写されたことを説明した模式図である。
【図4】被印刷基材に転写された上層部と下層部との2つの層により構成される、積層構造パターニング基材上に着色インキ液膜が転写された事を説明する模式図である。
【図5】図4にて示した着色インキ液膜が面一処理により段差内に押し込まれ均一化されることを示した模式図である。
【図6】上層部と下層部との2つの層により構成される画像パターンと着色インキからなる積層構造パターニング基材を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明によるパターニング基材の作製方法を図1〜6に示し、実際のパターニング工程に従って説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
本発明に用いるインキ剥離性のフィルム基材10は、プラスチック等の可撓性基材を加工し用いる事が可能である。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ナイロン、アラミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロースなどのフィルム、シートを用いる事ができる。さらに光透過性の基材を用いる事により、パターンの重ね合わせ時にアライメントを容易とする事ができる。
【0039】
図1に示すように、本発明に用いるインキ剥離性のフィルム基材10は、上記フィルム基材11表面へインキ剥離性のシリコーン層12として、シリコーンオイル、シリコーンワニスに代表される離型剤を塗っても良いし、あるいはシリコーンゴムの薄膜層を形成してもよい。また同じ目的でフッ素系樹脂、フッ素系ゴムも利用されうるし、フッ素樹脂微粉末をシリコーンゴムあるいは、普通のゴムに混ぜて剥離性を出すなどの使い方をしてもよい。
【0040】
これらシリコーン系の塗膜は通常フィルム基材11との密着が低いが、熱硬化または紫外線硬化性のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、最表面に設けるシリコーン層に対して、より基材との接着性の高い樹脂層を、アンカー層としてあらかじめフィルム基材11上に設け、その上層に設けることもできる。
【0041】
いずれもインキ塗工時には、均一なインキ液膜を形成することができると同時に、一度塗工したインキ液膜の完全なインキ剥離性を有することが望ましい。
【0042】
具体的なシリコーンとしては、ジメチルポリシロキサンの各種分子量のもの、その他メ
チルハイドロジエンポリシロキサン、メチルフェニルシリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、あるいはこれらポリシロキサンと有機化合物との共重合体など、変成したものを用いることができる。
【0043】
シリコーンゴムとしては、二液型のジオルガノポリシロキサンと架橋剤としての三官能性以上のシラン、またはシロキサン及び硬化触媒を組み合わせたもの、あるいは一液型ではジオルガノポリシロキサンとアセトンオキシム、各種メトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等の組み合わせなどが用いられ、その他ゴム硬度を調節するためのポリシロキサンが適宜用いられる。
【0044】
このようにして得られるインキ剥離性のフィルム基材10に対するインキ剥離性は、処理面へインキを滴下した際の接触角が、10°以上90°以下となるのが好ましく、より好ましくは20°以上70°以下である。この接触角が小さいと後工程でのインキ剥離性が低下してパターンの欠陥(再現性不良等)が発生しやすくなり、接触角が大きいとインキ液膜13を形成する際にハジキが生じて、均一なインキ液膜を形成することが困難になる。
【0045】
上記に示したインキ剥離性のフィルム基材10上へインキ液膜を形成する方法としては、インキの粘度や溶媒の乾燥性によって公知の塗工方法を用いることができる。例えば、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等が挙げられる。中でも、ダイコート、キャップコート、ロールコート、アプリケータ等の塗工方法では、広い範囲の粘度のインキについて均一なインキ液膜を形成することができる。
【0046】
インキ剥離性のフィルム基材10上へ前記方法によりインキ液膜を形成した後に、前記インキ液膜を予備乾燥する。この予備乾燥には自然乾燥、冷風・温風乾燥、マイクロ波、減圧乾燥などを用いることができ、また、紫外線、電子線などの放射線を用いることもできる。
【0047】
この予備乾燥では、前記インキ液膜の粘度またはチキソトロピー性、脆性を上げる事を目的とするもので、インキ液膜の完全乾燥はさせない。乾燥が不十分な場合は、後工程で述べるインキ除去版の凸部を押し当て剥離する際に、インキ液膜が断裂し不良が発生する。さらには、被印刷基材への転写時にパターンのつぶれにより前記インキ除去版のデザイン通りのパターニングができない。
【0048】
逆に乾燥が行き過ぎた場合は、前記インキ除去版にインキが転写されない。また、隔壁パターンに囲われた位置へ転写する場合、パターンのつぶれが小さく、均一にインキを設けることができない。そのため使用するインキの組成、塗工膜厚によって乾燥状態を調整する。
【0049】
前記第一の予備乾燥インキ膜上に、第二のインキ液膜を塗工する方法としては、前述のインキ剥離性のフィルム基材上へのインキ液膜の塗工と同様に、公知の塗工方法を用いることができる。
【0050】
インキ除去版としては、無アルカリガラス等の低膨張ガラス表面に感光性樹脂を用いてマスクパターンを形成した後、既存のドライエッチング処理やウェットエッチング処理、もしくはサンドブラスト処理を用いて、2μmから30μmの版深を設けたものを用いることができる。あまり、版深が浅いとインキ液膜が、版底に接触しパターンの再現ができなくなる。一定以上の版深を有すれば、得られるパターンの形状に変わりはないが、一方
で版に設けるパターンを高解像化できなくなる弊害がある。
【0051】
また、インキ除去版にはナイロン、アクリル、シリコーン樹脂、スチレン-ジエン共重合体などからなるものを用いることもできる。またエチレン-プロピレン系、ブチル系、ウレタン系ゴムなどのゴム製の版を用いることもできる。このような樹脂製のインキ除去版は、すでに凸版印刷やフレキソ印刷用に用いられており、予め作製した型に所定の樹脂を流し込んで版とする、あるいは彫刻によっても作製することができるが、感光性樹脂を用いる方法がより高精度のものを作製できる。
【0052】
また、インキ除去版にはナイロン、アクリル、シリコーン樹脂、スチレン-ジエン共重合体などからなるものを用いることもできる。またエチレン-プロピレン系、ブチル系、ウレタン系ゴムなどのゴム製の版を用いることもできる。このような樹脂製のインキ除去版は、すでに凸版印刷やフレキソ印刷用に用いられており、予め作製した型に所定の樹脂を流し込んで版とする、あるいは彫刻によっても作製することができるが、感光性樹脂を用いる方法がより高精度のものを作製することができる。
【0053】
同一の被印刷基材に対して複数回転写工程を繰り返す印刷方式を用いて、層ごとに形状を変えた積層構造のパターニング基材を作製する場合、インキ層ごとにデザインの異なるインキ除去版を用意することもできる。
【0054】
インキ剥離性のフィルム基材上に積層した予備乾燥インキ膜を形成し、被印刷基材へ一括して転写することで、インキ膜を2層に積層したパターニング基材を作製する場合には、
図2(a)に示すように、まず、インキ剥離性のフィルム基材10上に、第一のインキを塗工した後、第一のインキ液膜21を予備乾燥させる。
【0055】
図2(b)に示すように、第一のインキ液膜21が均一に予備乾燥されたインキ剥離性のフィルム基材10上に、第二のインキを塗工し、第一のインキ液膜21の上に第二のインキ液膜22を積層させた後、第二のインキ液膜22を予備乾燥させる。
【0056】
図2(c)、(d)に示すように、2層重なったインキ液膜による画像パターンが形成されたインキ剥離性のフィルム基材10に、インキ除去版40を押し当て、不要なインキ液膜をインキ除去版40へ転移せしめ、インキ剥離性のフィルム基材10上に、第一のインキ液膜21と第二のインキ液膜22とからなる画像パターンインキ液膜23を形成する。
【0057】
図2(d)に示すように、形成した画像パターンインキ液膜23で、第一のインキ液膜21による画像パターンが、第二のインキ液膜22による画像パターンよるも大きく、被印刷基材上に形成するパターンにおいて、上層部からなるパターン表面部分が水平方向に突き出した形状とするためには、第一のインキが予備乾燥状態において、インキ内部の凝集が強くなるように、インキ組成を調整すればよい。具体的には、インキ塗膜成分内の顔料成分の組成を増やせばよい。
【0058】
また、パターン上層部からなるパターン表面部分が水平方向に突き出した形状とするために、インキ組成内の溶剤の調整・変更により、第二のインキとの予備乾燥状態でのパターン転写性を変えることができるが、これらの方法にのみ限定されるものではない。
【0059】
形成された第一のインキ液膜21と第二のインキ液膜22とからなる画像パターンインキ液膜23を、被印刷基材30へ転写することで、
図3に示すように、被印刷基材30上に、パターン上層部と下層部とからなる2層構造の
画像パターン20を形成することができる。
【0060】
3つ以上のインキ膜を積層させたパターニング基材を作製する場合、第二のインキ液膜を予備乾燥させた後、順次インキ液膜を塗工し、予備乾燥させることで、所望の積層数の予備乾燥インキ液膜を形成させ、パターニングを行うことができる。
【0061】
積層塗工時にハジキが生じ、むらが発生する場合には、同一の被印刷基材に対し、複数回、画像パターン転写工程を行い、積層構造パターンを作製することも可能であり、各層の画像パターンを転写した後に、画像パターンインキ膜のベーク処理、プラズマ表面処理などを行い、画像パターンインキ膜表面の親インキ性を高めることができる。
【0062】
続いて、インキ剥離性のフィルム基材上に形成した画像パターンと、被印刷基材上に形成、表面処理された画像パターンとの位置合わせ工程を行った後、転写することで、積層構造パターニング基材を得ることができる。
【0063】
位置合わせ工程時には、インキ剥離性のフィルム基材10と、被印刷基材30との間隔は、インキ剥離性のフィルム基材10の帯電や吸着による基材との接触を起こさないように、また、アライメントに用いる観察カメラの被写界深度や焦点制御などを考慮し20μmから500μmの距離を保って平行に配置することが好ましい。
【0064】
BMパターン、および着色パターンからなる画像パターンに用いるインキは、顔料成分と樹脂成分を溶媒中に溶解、分散させたインキを用いる事ができる。
【0065】
着色パターンに用いる顔料には、例えば、赤、緑、青の各色で使用できる顔料として次のものが挙げられる。顔料の種類は、カラーインデックス(C.I.)No.で示す。赤色顔料として、97、122、123、149、168、177、180、192、208、209、215などが、緑色顔料として7、36などが、青色顔料として、15、15:1、15:3、15:6、22、60、64などが挙げられる。BMパターンに用いる黒顔料として、カーボンブラック、チタンブラックなどが挙げられる。また、これら赤、緑及び青顔料の色調整及びインキの流動性を改善するために、次に挙げる顔料を必要量添加することができる。
【0066】
主に着色パターンに用いる赤色、緑色、青色以外にも、例えば、黄顔料として、17、83、109、110、128などが、紫顔料として、19、23などが、白顔料として、18、21、27、28などが、橙顔料として、38、43などが挙げられる。顔料は、単体以外に、顔料を予め分散剤、有機溶剤に分散させた顔料分散体であっても良い。
【0067】
また、BMパターンに用いられる黒色顔料としては、カーボンブラックやチタンブラックが単独または混合して用いられる。
【0068】
インキの樹脂成分には、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂からなる群から選ばれる1つ以上のものが使用される。
【0069】
さらに溶剤には、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤及び炭化水素系溶剤などが使用される。エステル系溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、アルコール系溶剤として、1-ブタノール、3メトキシー3メチル-1ブタノール、1-ヘキサノール、1,3ブタンジオール、1-ペンタノール、2-メチル1-ブタノール、4-メチル-2-ペンタノール、エーテル系溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、炭化水素系溶剤として、ソルベッソ100、ソルベッソ150(製品名 エクソン化学社製)などが挙げられる。
【0070】
本発明の精密パターンの印刷方法は、ガラスやプラスチック板などへの印刷に適用できるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ナイロン、アラミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどのフィルム、シートを用いる事もできる。印刷に適用するインキの乾燥や硬化条件に合わせて選定すればよく、耐熱性のものとしてはポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミドなどが好適である。
【0071】
また、無機フィラーを樹脂に添加して耐熱性を向上させた材料からなる基材でもよい。フィルムおよびシートは、延伸フィルムでもよく、未延伸フィルムでもよく、また、可撓性基材には必要に応じてガスバリア層や平滑化層、インキ受像層が印刷面または他の面に積層されていても良い。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を更に詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0073】
実施に作製したCFは、300mm□のガラス基板上に作製し、基板中央部150mm□部に、BM幅20μmによって仕切られた開口部80μm×300μmの開口部を連続して有するパターンとした。
【0074】
(インキ剥離性のフィルム基材)
インキ剥離性のフィルム基材としては、基材厚約120μmのシリコーン系離形ポリエステルフィルム:K1504(東洋紡績社製)を300mm幅、500mのロール状で用意した。
【0075】
(画像パターン用インキの調製)
ポリイミド前駆体(東レ社製「セミコファインSP−510」)10重量部、カーボンブラック7.5重量部、溶剤(N-メチルピロリドン)130重量部、分散剤(銅フタロシアニン誘導体)5重量部、光開始剤5重量部をビーズミル分散機で冷却しながら3時間分散し隔壁パターン用インキを調製した。
【0076】
(積層構造パターニング基材の作製)
インキ剥離性のフィルム基材上に、第一の画像パターン用インキを、ダイコートを用いて、200mm□に塗工し、120℃で60秒間予備乾燥させた後、第二の画像パターン用インキを塗工し、第一のインキと第二のインキとからなる積層インキ液膜を120℃で120秒間予備乾燥させる。
【0077】
次に、前記インキ剥離性のフィルム基材に、画像パターンが凹部となったインキ除去版を押し当てた後、剥離することで、インキ剥離性のフィルム基材上に積層した画像パターンを形成する。
【0078】
インキ剥離性のフィルム基材上の画像パターンを、ガラス基材へ転写した後、オーブンで230℃、1時間のポストベークを行い、画像パターンを形成した。膜厚は1.2μm
であり、第一のインキによる画像パターン上層部は、第二のインキによる下層部分のパターンに対して1.8μm水平方向に突き出していた。
【0079】
この基材に対し、インキ剥離性のフィルム基材を用いて着色インキ液膜を転写し、積層構造パターンの開口部に着色層を配置したパターニング基材を作製した。
【0080】
転写後面一加工を行うと着色インキ液膜は押されることのより、上層部が水平方向に突き出した形状なっている画像パターンの下層に押しまれる。
【0081】
得られたガラス基材を210℃で20分硬化させた後、顕微鏡観察を行い、画素パターン部分に光漏れや隣接する開口部への混色が無い事を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の印刷方法は、ガラス基材や、プラスチックフィルム等の可撓性基材に、高精細な積層構造を有したパターンを安定して作製することができ、カラーフィルタ(CF)を主とするディスプレイ関連部材やその他エレクトロニクス部材の製造、および表裏面で異なる情報を表示する広告媒体に利用できる。
【符号の説明】
【0083】
10・・・インキ剥離性のフィルム基材
11・・・フィルム基材
12・・・インキ剥離性のシリコーン層
20・・・画像パターン
21・・・第一のインキ液膜
22・・・第二のインキ液膜
23・・・画像パターンインキ液膜
24・・・着色インキ液膜
30・・・被印刷基材
40・・・インキ除去版
50・・・積層構造パターニング基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン表面部を成す上層部と、基材表面との接触部分を成す下層部と、を含んだ、少なくとも二つの層により構成される積層構造パターンを基材上に作製する方法であって、(a)インキ剥離性のフィルム基材上に、第一のインキ液膜を塗工して設けた後、該インキ液膜を予備乾燥し、第一の予備乾燥インキ膜を得る工程と、
(b)該第一の予備乾燥インキ膜を設けた該インキ剥離性のフィルム基材上に、第二のインキ液膜を塗工して設け、予備乾燥して予備乾燥インキ膜とする工程を少なくとも一回行うことで、積層した予備乾燥インキ膜を得る工程と、
(c)必要な画像パターンを凹部とした凸版を積層した該予備乾燥インキ膜に接触、剥離させ、該インキ剥離性のフィルム基材上に積層した該予備乾燥インキ膜からなる画像パターンを形成する工程と、
(d)該インキ剥離性のフィルム基材上に形成された積層した該予備乾燥インキ膜による画像パターンを目的の被印刷基材表面上へ転写する工程と、
を備えることを特徴とするパターニング基材の作製方法。
【請求項2】
パターン表面部を成す上層部と、基材表面との接地部分を成す下層部と、を含んだ、少なくとも二つの層により構成される積層構造パターンを基材上に作製する方法であって、(a)インキ剥離性のフィルム基材上に、第一のインキ液膜を塗工して設けた後、該インキ液膜を予備乾燥し、予備乾燥インキ膜を得る工程と、
(b)必要な画像パターンを凹部とした凸版を該第一の予備乾燥インキ膜に接触、剥離させ、該インキ剥離性のフィルム基材上に該予備乾燥インキ膜からなる画像パターンを形成する工程と、
(c)該インキ剥離性のフィルム基材上に形成された該第一の予備乾燥インキ膜による画像パターンを目的の被印刷基材表面上へ転写する工程と、
を行った該被印刷基材に対して、パターン表面の親インキ性を高める処理をした後、繰り返し(a)〜(c)工程を行い、該インキ剥離性のフィルム基材上の画像パターンと被印刷基材上に転写された画像パターンとを位置合わせして転写することで、同一の被印刷基材に対して画像パターンを少なくとも二回重ねて転写することを特徴とするパターニング基材の作製方法。
【請求項3】
パターン表面部を成す上層部と、基材表面との接地部分を成す下層部と、を含んだ、少なくとも二つの層により構成される積層構造パターンを基材上に作製する方法であって、一つの該積層構造をもつパターニング基材を作製するために、前記インキ剥離性のフィルム基材上に塗工するインキが、パターニング基材を構成する画像パターン各層ごとに異なることを特徴とする請求項1または2に記載のパターニング基材の作製方法。
【請求項4】
パターン表面部を成す上層部と、基材表面との接地部分を成す下層部と、を含んだ、少なくとも二つの層により構成される積層構造パターンであって、
該パターン上層部が、その下方のパターン層よりも大きく、パターン断面形状で、該画像パターン上層部からなるパターン表面部分が水平方向に突き出した形状となるように、
前記インキ剥離性のフィルム基材上へ塗工する第一のインキの予備乾燥状態での転写性と、前記凸版との接触・剥離時の前記予備乾燥インキ膜の乾燥状態と、のいずれか、または両方を調整し、請求項1または3に記載の方法により作製したパターニング基材を用いることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項5】
パターン表面部を成す上層部と、基材表面との接地部分を成す下層部と、を含んだ、少なくとも二つの層により構成される積層構造パターンであって、
該パターン上層部が、その下方のパターン層よりも大きく、パターン断面形状で、該画像パターン上層部からなるパターン表面部分が水平方向に突き出した形状となるように、
前記被印刷基材上に最後に積層転写する画像パターンの形状を調整し、請求項2または3に記載の方法により作製したパターニング基材を用いることを特徴とするカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−99957(P2011−99957A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253836(P2009−253836)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】