説明

回転体支持構造、定着装置、及び画像形成装置

【課題】異音の発生を防止した回転体支持構造、定着装置、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】回転軸が水平な回転体の前記回転軸を受ける軸受けと、軸受けが設けられる支持部材と、軸受けを支持部材に固定する固定部材と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等に用いられる回転体支持構造、定着装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現像剤(例えば、トナー)を用いる複写機やプリンタ等の画像形成装置は、例えば、感光体ドラムと、感光体ドラムの周囲に配置された帯電装置、露光装置、及び現像装置と、定着装置とを有する。
これらのうち、現像装置は、例えば、軸受けにより回転自在に軸支された回転軸に設けられている搬送スクリュウの回転によって、回転軸にほぼ沿った方向に現像剤を搬送する現像剤搬送部材と、軸受けと回転軸との間に配置されて、軸受けへの現像剤の侵入を防止するシール部材と、を有する。
【0003】
しかし、現像装置において、シール部材を押圧する向きにスラスト荷重が掛かって、シール部材と軸受けとの摩擦力が増大することがあるため、回転軸の駆動に大きな駆動トルクが必要となることがあった。この回転軸の駆動トルクの増大は、現像装置の駆動系の負荷を高めるため、装置寿命を低下させる原因となる。また、回転軸の駆動トルクを予め余裕を持った大きさに設定した場合には、装置本体の大型化を招いたり騒音が発生したりする虞がある。トナーが軸受け付近から漏れることがあった。
そこで、この問題を解決する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の発明は、軸受けにより回転自在に軸支された回転軸に設けられている搬送スクリュウの回転によって、回転軸にほぼ沿った方向に現像剤を搬送する現像剤搬送部材と、軸受けと該回転軸との間に配置されて、軸受けへの現像剤の侵入を防止するシール部材と、を有する現像装置において、回転軸に作用する現像剤搬送時のスラスト荷重を支えて、シール部材を押圧する向きの回転軸の軸方向の変位を阻止するスラスト防止手段を有するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、画像形成装置は、現像装置の他に定着装置を有する。
図13は、定着装置の概念図である。
定着装置は、現像剤で形成された可視画像を有する用紙10を、ヒータ11を内蔵した定着ローラ12と、モータで駆動される加圧ローラ13とで加圧及び加熱しながら矢印P1方向に搬送することで定着するようになっている。
【0006】
加圧ローラ13には弾性体のローラを用い、定着ローラ12との間にニップを確保するために、定着ローラ12に押し付ける方向に加圧保持されている。加圧力が大きいため、一般的に定着ローラ12および加圧ローラ13の軸受け1−1には玉軸受けが用いられる。
【0007】
図14(a)は、定着ローラ12の中心軸(芯金ともいう。)12aを支持する軸受け1−1にスラスト止め2−1を固定したときの正面図であり、図14(b)は、図14(a)の矢印P2方向の矢視図であり、図14(c)は、図14(a)のXIVc−XIVc線断面図であり、図14(d)は、定着ローラ12を、軸受け1−1を介して支持部材としてのフレーム側板3−1に取り付けたときの側面図であり、図14(e)は、図14(d)の矢印P3方向の矢視図である。
【0008】
スラスト止め2−1は、例えば、一部が切り離された環状部材が用いられる(Cリングもしくはスナップリング軸用止め輪でもよい。)。スラスト止め2−1は、通常は端部2−1b、2−1cが接触して環状の金属からなる。スラスト止め2−1を軸受け1−1の外周に形成された周方向の溝1−1bに固定するときは、図示しない工具を用いて端部2−1b、2−1cが離れるようにC字形状に広げて玉軸受け(以下、軸受けと表記)1−1を通し、溝1−1bの位置で工具を緩めると、元のO字形状に復元することにより、スラスト止め2−1が軸受け1−1に固定されるようになっている。1−1aは軸受け1−1の貫通孔である。
【0009】
スラスト止め2−1が固定された軸受け1−1がフレーム側板3−1の貫通孔3−1aに挿入され、軸受け1−1の貫通孔1−1aに加圧ローラ13の回転軸が挿入されるようになっている。
【0010】
図15(a)は、図14(d)に示した定着ローラ12に加圧力が加わった場合の軸受け1−1付近の状態を示す図であり、図15(b)は、図15(a)の楕円領域A1の拡大図であり、図15(c)は、図15(a)の楕円領域A2の拡大図である。
定着ローラ12は、軸受け1−1によって保持される。定着ローラ12は、フレーム側板3−1と、フレーム側板3−1によって位置決めされた軸受け1−1によって支持されている。また、軸受け1−1は、スラスト止め2−1と図示されていないリングによってスラスト方向(図15(a)の横方向)の移動が規制されている。
【0011】
定着装置では、画像形成装置の立ち上げ後、リロード温度(定着可能な温度)まで熱量が加わるため、スラスト方向に定着ローラ12の芯金(中心軸)12aが熱膨張する。これは、ヒータ11によって加熱された定着ローラ12は、図15(b)、(c)のように、スラスト方向に熱膨張し、そのジャーナル部外周と軸受け1の内周側面部分との間に摩擦が生じるためである。その結果、軸受け1−1は、スラスト方向外側への摩擦力が加わる。
また、周方向の各位置で加圧ローラ13から軸受け1−1の内周側面への加圧力が異なるため、定着ローラジャーナル部と軸受け1−1との間の摩擦力も異なり、周方向の分布を持つことになる。この摩擦力によって軸受け1−1が変移する場合、摩擦力に周方向の分布があるため、軸受け1−1はフレーム側板3−1に対して平行にずれるのではなく、フレーム側板3−1に対して傾斜することになる。
それゆえ、定着ローラ12の中心軸と軸受け1−1の中心軸12aとがずれ、軸受け1−1の内部に不均一な力が加わり、軸受け1−1の回転周期の異音が発生することがある。
これに対して、グリスの塗布などによって、軸受け1−1と定着ローラ12との摩擦を軽減し、不均一な力を減らし、異音の発生を抑制する対策があるが、対処療法であり根本的な対策とはなっていない。
【0012】
図16は、定着装置を有する一般的な画像形成装置におけるヒートサイクルの数(サイクル数)と軸受けの変移量との関係を示す図である。
同図において、横軸はサイクル数を示し、縦軸は軸受けの変移量を示す。
同図より、サイクル数が50程になると異音が発生し、このときの軸受けの変移量が3.8mmであることが分かる。
【0013】
そこで、本発明の目的は、異音の発生を防止した回転体支持構造、定着装置、及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、回転軸が水平な回転体の前記回転軸を受ける軸受けと、該軸受けが設けられる支持部材と、前記軸受けを前記支持部材に固定する固定部材と、を有することを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記固定部材は、前記軸受けに設けられたほぼ環状のスラスト止めと、前記スラスト止めの径方向外側に延長され、突起部側貫通孔が形成された突起部と、前記支持部材の前記突起部の貫通孔に対応する位置に形成された支持部材側貫通孔と、前記突起部側貫通孔及び前記支持部材側貫通孔を貫通する締結部材と、を有することを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記固定部材は、前記軸受けに設けられたほぼ環状のスラスト止めと、前記支持部材の前記スラスト止めの外周に接するように形成された他の支持部材側貫通孔と、前記突起部側貫通孔及び前記他の支持部材側貫通孔を貫通する他の締結部材と、を有することを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記固定部材は、前記軸受けに設けられたほぼ環状のスラスト止めと、前記軸受けに前記スラスト止めとで前記支持部材を挟むように設けられた他のスラスト止めと、を有することを特徴とする。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1から4の何れか一項記載の軸受け構造を有する定着装置であることを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項1から5の何れか一項記載の定着装置を有する画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、異音の発生を防止した回転体支持構造、定着装置、及び画像形成装置の提供を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)〜(f)は、本発明に係る回転体支持構造の一実施の形態を示す説明図である。
【図2】図1に示した回転体支持構造と一般的な回転体支持構造との比較を示すための図である。
【図3】(a)〜(e)は、本発明に係る回転体支持構造の一実施の形態を示す説明図である。
【図4】サイクル数と変位との関係を示す図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明に係る回転体支持構造の他の実施の形態を示す説明図である。
【図6】サイクル数と変位との関係を示す図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明に係る回転体支持構造の他の実施の形態を示す説明図である。
【図8】サイクル数と変位との関係を示す図である。
【図9】a)〜(e)は、本発明に係る回転体支持構造の変形例1〜5を示す断面図である。
【図10】サイクル数と変位との関係を示す図である。
【図11】(a)、(b)は、本発明に係る回転体支持構造に用いられるスラスト止めの変形例A、Bを示す平面図である。
【図12】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概念図である。
【図13】定着装置の概念図である。
【図14】(a)は、定着ローラ12の中心軸(芯金ともいう。)12aを支持する軸受け1−1にスラスト止め2−1を固定したときの正面図であり、(b)は、(a)の矢印P2方向の矢視図であり、(c)は、(a)のXIVc−XIVc線断面図であり、(d)は、定着ローラ12を、軸受け1−1を介して支持部材としてのフレーム側板3−1に取り付けたときの側面図であり、(e)は、(d)の矢印P3方向の矢視図である。
【図15】5(a)は、図14(d)に示した定着ローラ12に加圧力が加わった場合の軸受け1−1付近の状態を示す図であり、(b)は、(a)の楕円領域A1の拡大図であり、(c)は、(a)の楕円領域A2の拡大図である。
【図16】定着装置を有する一般的な画像形成装置におけるヒートサイクルの数(サイクル数)と軸受けの変移量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
<実施の形態1>
[構 成]
図1(a)〜(f)は、本発明に係る回転体支持構造の一実施の形態を示す説明図である。
図1(a)には、定着装置の支持部材としてのフレーム側板3−2の一部が示されており、フレーム側板3−2には軸受け固定用の貫通孔(内径D1)3−2aが形成され、貫通孔3−2aの近傍には貫通孔3−2aを挟むようにフレーム側貫通孔としてのネジ孔3−2bが形成されている。
図1(b)には、軸受けに固定されるスラスト止め2−2が示されている。このスラスト止め2−2の径方向外側には二つの突起部2−2dが貫通孔2−2aを挟むように形成されている。二つの突起部2−2dにはそれぞれ突起部側貫通孔としてのネジ孔2−2eが形成されている(ネジ止めして固定することが可能な形状となっている。)。
【0023】
ネジ孔3−2bと同径のネジ孔2−2eは、フレーム側板3−2に形成されたネジ孔3−2bに対応するように形成されている。スラスト止め2−2は、両端部2−2b、2−2cは、通常時(内径D2)には接触して形状が環状となっており、軸受け1−1に設けられるときに図示しない工具により広げられて両端部2−1b、2−1cが離れて形状がC字形状となる。スラスト止め2−2は、金属からなり弾性を有するため、形状がC字形状から環状に復元することができる。このため、スラスト止め2−2の形状を「ほぼ環状」と表記する。
【0024】
図1(c)には、軸受け(玉軸受け)1−1にスラスト止め2−2を設けた状態が示されている。軸受け1−1の外周面には周方向の溝が形成されている。この軸受け1−1の溝の外径D3はスラスト止め2−2が設けられるようなサイズ(ほぼD2)を有している。
軸受け1−1の外径D4は、フレーム側板3−2の貫通孔3−2aに挿入できるサイズ(ほぼ内径D1)を有している。
【0025】
図1(d)には、スラスト止め2−2が設けられた軸受け1−1がフレーム側板3−2の貫通孔3−2aに挿入された状態が示されている。スラスト止め2−2は、その両突起部2−2dのネジ孔2−2eとフレーム側板3−2のネジ孔3−2aとが重なるように位置決めされる。
スラスト止め2−2の位置決め後、図1(e)、(f)に示すようにスラスト止め2−2側からネジ孔2−2e、3−2bに締結部材としてのネジ5が挿入され、ネジ5の胴部にワッシャ6及びスプリング7がはめ込まれ、ナット8で締結されることにより、軸受け1−1がスラスト止め2−2ごとフレーム側板3−2に固定される。尚、図ではナット8は、1つのネジ5に1つしか設けられていないが、振動や温度変形によるゆるみ止めのため、ダブルナットを用いても良い。また、図ではネジ5として鍋ネジを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、六角ボルト、皿ネジ、プラスネジ、マイナスネジ、六角孔ネジ、これらを組み合わせたネジのいずれでもよい。さらに図では、フレーム側板3−2の厚さがネジ5の胴部より薄い場合を示したが、側板フレーム3−2の厚さがネジ5の胴部より厚い場合にはスクリューボルトを用いてもよい。さらに、図ではネジ5をワッシャ6、スプリング7及びナット8で締結しているが、フレーム側板3−2にネジ溝を形成してネジ5だけで締結するように構成してもよい。
【0026】
[作用効果]
<比較例の作用効果>一般的に用いられる単一のスラスト止めを有する玉軸受けを定着ローラ12の中心軸12aの軸受け1−1として使用したときの軸受け起因の異音発生状況について示す。
ここで、定着ローラ12のジャーナル部の外形、フレーム側板3−2の支持部は、フレーム側板3−2に対して最も軸受け1−1が傾斜しやすい寸法公差の最悪品を用い、加速評価のため、グリスの塗布は行っていない。
【0027】
定着ローラ12を170℃で加熱後のA4サイズの普通紙1000枚を横通紙(10分間)と常温23℃放置20分のヒートサイクルを50回繰り返した際のベアリング異音発生の状況を図2に示す。
図2は、図1に示した回転体支持構造と一般的な回転体支持構造との比較を示すための図である。図2において、横軸がサイクル数を示し、縦軸が軸受けの変位量を示す。
縦軸は、レーザー変移計測器による軸受け最外周部の軸方向の変位量(縦軸0は組み付け時)である。
図2に示す通り、一般的な構成では、50サイクル目において、軸受けから異音が発生し、その際の軸受けの変位が+3.8mmであった。また、ユニット交換寿命を考慮した耐久試験後には、定着ローラ12のジャーナル部が、軸受け1−1との摩擦によって35μm磨耗し、これによって、さらに異音がさらに発生しやくなることが分かった。
【0028】
<実施の形態の作用効果>
次に、軸受け1−1のスラスト止めを図1(e)、(f)に示すようにフレーム側板3−2に対して、ネジ止めして固定することが可能な形状とし、軸受け1−1のスラスト止め(スラスト方向両方向)を行った。ネジ穴2−2e、3−2bを用いてスラスト止め2−2をフレーム側板3−2に固定する。このとき、定着ローラ12の熱膨張を考慮し、定着ローラ12のジャーナルのダレ部(理想的には直角となる角の曲面部)が固定された軸受け1−1と競合することがないようにガタ(隙間)の設計を行っている。このスラスト止め固定時の軸受け起因の異音発生状況を一般的な構成と同じ手順で評価した。
【0029】
図2に示す通り、軸受け1−1を完全にフレーム側板3−2に固定することで、はめあい公差の分だけしか変位を許容せず、軸受け1−1の軸心と定着ローラ12の中心軸12aとが常に一致し、軸受け1−1がフレーム側板3−2に対して傾斜することがないため、異音は全く発生せず、効果が確認された。また、ジャーナル部の磨耗も5μmしか確認されなかった。ユニット交換寿命を考慮した評価試験においても、異音の発生は確認されなかった。これまでの一般的な対策であるグリスの塗布によって、定着ローラ12のジャーナル部と軸受け1−1との摩擦を減らすことで、異音を軽減することができるが、塗布方法や径時での無発生までは、保証することができない。それに対して、軸受け1−1のスラスト止めを行った場合には、原理的に異音が発生しえないことが保障される。
【0030】
<実施の形態2>
次に本発明に係る回転体支持構造の他の実施の形態について述べる。
[構 成]
図3(a)〜(e)は、本発明に係る回転体支持構造の一実施の形態を示す説明図である。以下、図1(a)〜(f)に示した部材と同様の部材には共通の符号を用いた。
図3(a)〜(e)に示した実施の形態と、図1(a)〜(f)に示した実施の形態との相違点は、通常のスラスト止めを支持部材に締結部材を用いて異音の発生を防止した点である。
すなわち、図3(a)には、フレーム側板3−3の一部が示されており、フレーム側板3−3には軸受け固定用の貫通孔3−3aが形成され、貫通孔3−3aの近傍には貫通孔3−3aを挟むようにフレーム側貫通孔としてのネジ孔3−3cが形成されている。
図3(b)には、軸受け1−1にスラスト止め2−1を設けた状態が示されている。軸受け1−1の外周面に形成された周方向の溝にスラスト止め2−1が設けられている。
図3(c)には、スラスト止め2−1が設けられた軸受け1−1がフレーム側板3−3の貫通孔3−3aに挿入された状態が示されている。フレーム側板3−3には、スラスト止め2−1の外周に接触すると共にネジ孔3−3cの中心軸と貫通孔3−3aの中心とが一直線上に並ぶように形成されている(ネジ止めして固定することが可能な形状が形成されている。)。
【0031】
図3(d)、(e)に示すように、スラスト止め2−1側からネジ孔3−3cに締結部材としてのネジ5が挿入され、ネジ5の胴部にワッシャ6及びスプリング7がはめ込まれ、ナット8で締め付けられることにより、軸受け1がスラスト止め2−1ごとフレーム側板3−3に固定される。尚、前述と同様にネジ5の締結にはダブルナットを用いても良く、鍋ネジ以外に六角ボルト、皿ネジ、プラスネジ、マイナスネジ、六角孔ネジ、これらを組み合わせたネジのいずれを用いてもよい。さらに、フレーム側板3の厚さがネジ5の胴部より厚い場合にはスクリューボルトを用いてもよい。さらに、フレーム側板3−2にネジ溝を形成してネジ5だけで締結するように構成してもよい。
【0032】
[作用効果]
一般的に用いられる単一のスラスト止めを有する軸受け1−1を定着ローラ12の中心軸12aの軸受けとして使用したときの軸受け起因の異音発生状況について示す。
ここで、定着ローラ12のジャーナル部の外形、フレームの支持部は、フレーム側板に対して最も軸受けが傾きやすい寸法公差の最悪品を用い、加速評価のため、グリスの塗布は行っていない。
【0033】
定着ローラ12を170℃で加熱後のA4サイズの普通紙1000枚を横通紙(10分間)と常温23℃で放置20分のヒートサイクルを50回繰り返した際のベアリング異音発生の状況を図4に示す。
【0034】
図4は、サイクル数と変位との関係を示す図である。図4において、横軸に上記のサイクル数を示し、縦軸にレーザー変移計測器による軸受け最外周部の軸方向の変位(縦軸0は組み付け時)を示す。
図4に示す通り、通常の構成では、50サイクル目において、軸受けから異音が発生し、その際の軸受けの変位が+3.8mmであった。また、ユニット交換寿命を考慮した耐久試験後には、定着ローラ12のジャーナル部が、軸受け1との摩擦によって35μm磨耗し、これによって、さらに異音がさらに発生しやくなることがわかった。
【0035】
次に、軸受けのスラスト止めを図3(a)〜(e)に示すようにフレーム側板3−3に対して、ネジ止めして固定することが可能な形状とし、軸受け1−1のスラスト止め(スラスト方向両方向)を行った。図3のネジ穴3−3cを用いてスラスト止め2−1をフレーム側板3−3に固定する。このとき、定着ローラ12の熱膨張を考慮し、定着ローラ12のジャーナルのダレ部(理想的には直角となる角の曲面部)が固定された軸受け1−1と競合することがないようにガタ(隙間)の設計を行っている。このスラスト止め2−1の固定時の軸受け1−1が起因する異音発生状況を従来の構成と同じ手順で評価した。
【0036】
図3に示す通り、軸受け1−1を完全にフレーム側板3−3に固定することで、はめあい公差の分だけしか変位を許容せず、軸受け1−1の軸心と定着ローラ12の中心軸12aとが常に一致し、軸受け1−1がフレーム側板3−3に対して傾くことがないため、異音は全く発生せず、効果が確認された。また、ジャーナル部の磨耗も5μmしか確認されなかった。
【0037】
ユニット交換寿命を考慮した評価試験においても、異音の発生は確認されなかった。これまでの対策であるグリスの塗布によって、定着ローラ12のジャーナル部と軸受け1−1との摩擦を減らすことで、異音を軽減することができるが、塗布方法や径時での無発生までは、保証することができない。それに対して、軸受け1−1のスラスト止め2−1の固定を行った場合には、原理的に異音が発生しえないことが保障される。
【0038】
上記のように締結部材によってスラスト固定を行うことによって、元の構成に対して、軸受け1−1のスラスト止め2−1およびフレーム側板3−3へのネジ穴3cの追加のみによって、安価にそして副作用が小さく実現できることが可能となる。
【0039】
<実施の形態3>
次に本発明に係る回転体支持構造の他の実施の形態について述べる。
[構 成]
図5(a)〜(c)は、本発明に係る回転体支持構造の他の実施の形態を示す説明図である。
図5(a)〜(c)に示した実施の形態と、図1(a)〜(f)に示した実施の形態との相違点は、通常のスラスト止めを支持部材の両面に接触するように軸受けに設けることにより異音の発生を防止した点である。
すなわち、図5(a)には、フレーム側板3−1の貫通孔3−1aに、軸受け2−1が挿入され、フレーム側板3−1の両面からスラスト止め2−1で軸受け2−1が固定された状態が示されている。
図5(b)には、図5(a)の矢印P4方向の矢視図が示され、図5(c)には、図5(a)のVc−Vc線断面図が示されている。
スラスト止め2−1は、通常のスラスト止めであり、軸受け1−2は、周面に周方向の二つの溝1−2ba、1−2bbが形成されたものである。二つの溝1−2ba、1−2bbの間隔はフレーム側板3−1の厚さに等しくなるように形成されている。
【0040】
組み付けは、一方(例えば図の左側)のスラスト止め2−1をはずした状態で、支持部材としてのフレーム側板3−1にセットし、その後に他方(この場合、右側)のスラスト止め2−1を軸受け1−2にセットする。このとき、定着ローラ12の熱膨張を考慮し、定着ローラ12のジャーナルのダレ部(理想的には直角となる角の曲面部)が固定された軸受け1−2と競合することがないようにガタ(隙間)の設計を行っている。このスラスト止め2−1の固定時の軸受け1−2が起因する異音発生状況を従来の構成と同じ手順で評価した。
【0041】
図6は、サイクル数と変位との関係を示す図である。図6において、横軸に上記のサイクル数を示し、縦軸にレーザー変移計測器による軸受け最外周部の軸方向の変位(縦軸0は組み付け時)を示す。
図5に示す通り、軸受け1−2を完全にフレーム側板3−1に固定することで、軸受け1−2の溝1−2ba、1−2bb等の公差分だけしか変位を許容せず、軸受け1−2の軸心と定着ローラ12の中心軸12aとが常に一致し、軸受け1−2がフレーム側板3−1に対して傾斜することがないため、異音は全く発生せず、効果が確認された。また、ジャーナル部の磨耗も5μmしか確認されなかった。ユニット交換寿命を考慮した評価試験においても、異音の発生は確認されなかった。これまでの対策であるグリスの塗布によって、定着ローラ12のジャーナル部と軸受け1−2との摩擦を減らすことで、異音を軽減することができるが、塗布方法や径時での無発生までは、保証することができない。それに対して、軸受け1−2のスラスト止めを行った場合には、原理的に異音が発生しえないことが保障される。
2つのスラスト止め2−1を用いることによって、元の構成に対して、軸受け1−2の変更のみによって、安価にそして副作用が小さく軸受け1−2のスラスト方向の固定を行うことが可能となる。
【0042】
<実施の形態4>
次に本発明に係る回転体支持構造の他の実施の形態について述べる。
[構 成]
図7(a)〜(c)は、本発明に係る回転体支持構造の他の実施の形態を示す説明図である。
図7(a)〜(c)に示した実施の形態と、図1(a)〜(f)に示した実施の形態との相違点は、スラスト止め2−1をフレーム側板3−1に接着剤100で接着した点である。
すなわち、図7(a)には、周面にスラスト止め2−1が固定された軸受け2−1がフレーム側板3−1の貫通孔3−1aに挿入され、フレーム側板3−1とスラスト止め2−1との間が接着剤100で固定された状態が示されている。
図7(b)には、図7(a)の矢印P5方向の矢視図が示されており、図7(c)には、図7(a)のVIIc−VIIc線断面図が示されている。
【0043】
接着剤としては、瞬間接着剤(例えば、シアノアクリレート系の接着剤)が挙げられる。定着ローラ12を交換する場合にはアセトン系の剥がし液を用いることで接着剤を除去して軸受けをフレーム側板から外すことで交換可能となる。
【0044】
図8は、サイクル数と変位との関係を示す図である。図8において、横軸に上記のサイクル数を示し、縦軸にレーザー変移計測器による軸受け最外周部の軸方向の変位(縦軸0は組み付け時)を示す。
図7に示す通り、軸受け1−2を完全にフレーム側板3−1に固定することで、軸受け1−2の溝1−2b等の公差分だけしか変位を許容せず、軸受け1−2の軸心と定着ローラ12の中心軸12aとが常に一致し、軸受け1−2がフレーム側板3−1に対して傾斜することがないため、異音は全く発生せず、効果が確認された。また、ジャーナル部の磨耗も5μmしか確認されなかった。ユニット交換寿命を考慮した評価試験においても、異音の発生は確認されなかった。これまでの対策であるグリスの塗布によって、定着ローラ12のジャーナル部と軸受け1−2との摩擦を減らすことで、異音を軽減することができるが、塗布方法や径時での無発生までは、保証することができない。それに対して、軸受け1−2のスラスト止めを行った場合には、原理的に異音が発生しえないことが保障される。
2つのスラスト止め2−1を用いることによって、元の構成に対して、軸受け1−2の変更のみによって、安価にそして副作用が小さく軸受け1−2のスラスト方向の固定を行うことが可能となる。
【0045】
<変形例1〜5>
次に本発明に係る回転体支持構造の変形例1〜5について述べる。
図9(a)〜(e)は、本発明に係る回転体支持構造の変形例1〜5を示す断面図である。
変形例1としての図9(a)は、締結手段としてブラインドリベット101を用いて、スラスト止め2−1を軸受け1−1ごとフレーム側板3−2に固定した状態を示している。
【0046】
変形例2としての図9(b)は、締結手段として打ち込みリベット102を用いて、スラスト止め2−1を軸受け1−1ごとフレーム側板3−2に固定した状態を示している。
【0047】
変形例3としての図9(c)は、締結手段としてかしめ(もしくは夫婦鋲)103a、103bを用いて、スラスト止め2−1を軸受け1−1ごとフレーム側板3−2に固定した状態を示している。
【0048】
変形例4としての図9(d)は、締結手段として溶接(もしくはハンダ付け)によるビード104を用いて、スラスト止め2−1を軸受け1−1ごとフレーム側板3−2に固定した状態を示している。
【0049】
変形例5としての図9(e)は、締結手段として割ピン105を用いて、スラスト止め2−1を軸受け1−1ごとフレーム側板3−2に固定した状態を示している。
【0050】
図10は、サイクル数と変位との関係を示す図である。図10において、横軸に上記のサイクル数を示し、縦軸にレーザー変移計測器による軸受け最外周部の軸方向の変位(縦軸0は組み付け時)を示す。
図9(a)〜(e)に示す通り、軸受け1−1を完全にフレーム側板3−2に固定することで、軸受け1−1の溝1−1b等の公差分だけしか変位を許容せず、軸受け1−2の軸心と定着ローラ12の中心軸12aとが常に一致し、軸受け1−1がフレーム側板3−2に対して傾斜することがないため、異音は全く発生せず、効果が確認された。また、ジャーナル部の磨耗も5μmしか確認されなかった。ユニット交換寿命を考慮した評価試験においても、異音の発生は確認されなかった。これまでの対策であるグリスの塗布によって、定着ローラ12のジャーナル部と軸受け1−1との摩擦を減らすことで、異音を軽減することができるが、塗布方法や径時での無発生までは、保証することができない。それに対して、軸受け1−2のスラスト止めを行った場合には、原理的に異音が発生しえないことが保障される。
【0051】
各変形例のようにスラスト止め2−2を用いることによって、元の構成に対して、軸受け1−1の変更のみによって、安価にそして副作用が小さく軸受け1−1のスラスト方向の固定を行うことが可能となる。
【0052】
<変形例A、B>
次に本発明に係る回転体支持構造に用いられるスラスト止めの変形例A、Bについて述べる。
図11(a)、(b)は、本発明に係る回転体支持構造に用いられるスラスト止めの変形例A、Bを示す平面図である。
図11(a)、(b)に示すスラスト止め2−3、2−4と、図1に示したスラスト止め2−2との相違点は、突起部の数を増加した点である。
すなわち、図11(a)に示すスラスト止め2−3の径方向外側には三つの突起部2−3dが貫通孔2−3aを挟むように形成されている。三つの突起部2−3dにはそれぞれ突起部側貫通孔としてのネジ孔2−3eが形成されている(ネジ止めして固定することが可能な形状となっている。)。
【0053】
ネジ孔2−3eは、図示しないフレーム側板に形成されたネジ孔に対応するように形成されている。
図11(b)に示すスラスト止め2−4の径方向外側には五つの突起部2−4dが貫通孔2−4aを挟むように形成されている。五つの突起部2−4dにはそれぞれ突起部側貫通孔としてのネジ孔2−4eが形成されている(ネジ止めして固定することが可能な形状となっている。)。
【0054】
ネジ孔2−4eは、図示しないフレーム側板に形成されたネジ孔に対応するように形成されている。
【0055】
これらのスラスト止め2−3、2−4を用いることにより、軸受け1−1のスラスト方向の固定がより堅固なものとなり、異音の発生の防止がより効果的なものとなる。
【0056】
<実施の形態5>
次に本発明に係る回転体支持構造を有する定着装置を用いた画像形成装置の一実施の形態について述べる。
図12は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概念図であり、例えば図1、図3、図5に示す構成の回転体支持構造を、定着装置に用いた例である。
図12において、符号21は像担持体であるドラム状の光導電性感光体であり、この光導電性感光体21の周囲には、光導電性感光体21の表面を均一に帯電する帯電装置22、帯電された光導電性感光体21にレーザー光等の書込み光LBを照射して静電画像を形成する光書込み装置23、光導電性感光体21上の静電画像をトナーで現像して顕像化する現像装置24、光導電性感光体21上のトナー画像を転写紙等の転写材に転写する転写装置25、転写後の感光体21上の残留トナーや紙粉等を除去するクリーニング装置26、光導電性感光体21上の残留電荷を除電する除電装置27等が配設されている。
【0057】
また、この画像形成装置には、光導電性感光体21と転写装置25との間の転写部に転写材Pを給紙する給紙部28と、転写材Pに転写されたトナー画像を定着する定着装置29とが設けられている。
【0058】
このような画像形成装置においても異音の発生が防止される。
【0059】
<作用効果>
軸受けと軸受けの支持部材軸のスラスト方向に固定することによって、常にローラ中心軸と軸受け中心軸を一致させ、異音の発生を抑制することができる。
【0060】
締結部品によって、軸受けとその支持部材を締結し、支持部材のスラスト方向の移動を規制することで、従来の構成を大きく変えることなく、単純な構成で、かつ安価に、軸受けを支持部材に対して固定することが可能となり、常にローラ中心軸と軸受け中心軸が常に一致し、異音の発生を抑制することができる。
【0061】
ネジによって、軸受けとその支持部材を締結し、支持部材のスラスト方向の移動を規制することで、従来の構成を大きく変えることなく、組み付けが容易に、単純な構成で、かつ安価に、軸受けを支持部材に対して固定することが可能となり、常にローラ中心軸と軸受け中心軸が常に一致し、異音の発生を抑制することができる。
【0062】
軸受けのスラスト止めを二つ用いることで、軸受けのみの変更によって支持部材のスラスト方向の移動を規制することで、従来の構成を大きく変えることなく、単純な構成で、かつ安価に、軸受けを支持部材に対して固定することが可能となり、常にローラ中心軸と軸受け中心軸が常に一致し、異音の発生を抑制することができる。
【0063】
なお、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1−1、1−2 軸受け
1−1a、1−2a 貫通孔
2−1、2−2、2−3、2−4 スラスト止め
2−1a、2−2a 貫通孔
2−1b、2−1c 端部
2−2d、2−3d、2−4d 突起部
2−2e、2−3e、2−4e ネジ孔(突起部側貫通孔)
3−1、3−2、3−3 フレーム側板
3−2a 貫通孔
3−2b ネジ孔(フレーム側貫通孔)
5 ネジ
6 ワッシャ
7 スプリング
8 ナット
10 用紙
11 ヒ−タ
12 定着ローラ
12a 中心軸
13 加圧ローラ
21 光導電性感光体
22 帯電装置
23 光書き込み装置
24 現像装置
25 転写装置
26 クリーニング装置
27 除電装置
28 給紙部
29 定着装置
100 接着剤
101 ブラインドリベット
102 打ち込みリベット
103 かしめ(もしくは夫婦鋲)
104 ビード
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開2001−109260号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が水平な回転体の前記回転軸を受ける軸受けと、該軸受けが設けられる支持部材と、前記軸受けを前記支持部材に固定する固定部材と、を有することを特徴とする回転体支持構造。
【請求項2】
前記固定部材は、前記軸受けに設けられたほぼ環状のスラスト止めと、前記スラスト止めの径方向外側に延長され、突起部側貫通孔が形成された突起部と、前記支持部材の前記突起部の貫通孔に対応する位置に形成された支持部材側貫通孔と、前記突起部側貫通孔及び前記支持部材側貫通孔を貫通する締結部材と、を有することを特徴とする請求項1記載の回転体支持構造。
【請求項3】
前記固定部材は、前記軸受けに設けられたほぼ環状のスラスト止めと、前記支持部材の前記スラスト止めの外周に接するように形成された他の支持部材側貫通孔と、前記突起部側貫通孔及び前記他の支持部材側貫通孔を貫通する他の締結部材と、を有することを特徴とする請求項1記載の回転体支持構造。
【請求項4】
前記固定部材は、前記軸受けに設けられたほぼ環状のスラスト止めと、前記軸受けに前記スラスト止めとで前記支持部材を挟むように設けられた他のスラスト止めと、を有することを特徴とする請求項1記載の回転体支持構造。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項記載の軸受け構造を有することを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項記載の定着装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−173705(P2012−173705A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38495(P2011−38495)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】