説明

回転体

【課題】軸心を有する中空状のセラミックス製の胴部と、胴部と同軸に配置されるとともに当該胴部の両端から軸心方向に延びる軸部とを有する回転体において、容易に回転バランスを調整可能な回転体を提供する。
【解決手段】軸心を有する中空状のセラミックス製の胴部1aと、胴部と同軸に配置されるとともに当該胴部の両端から軸心方向に延びる軸部1hとを有する回転体であって、胴部の中空部に配置された、当該胴部の中空部に内挿される板状または環状の内挿部材3を有し、内挿部材3は、その端面に凹部または貫通孔が設けられている回転体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空状のセラミックス製の胴部と、胴部と同軸に配置されるとともに当該胴部の両端から軸心方向に延びる軸部とを有する回転体に係わる。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野に係わる回転体として、めっき鋼板の製造ラインにおいて、亜鉛やアルミニウムなどの溶融金属めっき浴中に浸漬して使用される溶融金属めっき浴用ロールがあり、本願出願人も、窒化珪素質セラミックスで胴部と軸部を構成することにより、溶融金属めっき浴に対し高い耐食性、耐熱性および耐摩耗性を具現したシンクロールまたはサポートロールその他溶融金属めっき浴用ロールを、下記特許文献1および2などで提案している。なお、従来技術の問題を明らかにするために、回転体である溶融金属めっき浴用ロールを例として以下説明するが、本発明は溶融金属めっき浴用ロールに限定されない。
【0003】
特許文献1に開示された溶融金属めっき浴用ロールは、「耐食性、耐熱性、耐摩耗性に優れ、ロールを軽量化して回転しやすい、ロールを浴中から引き揚げた際の割れを防止でき、ロール全体をセラミックスにより長尺化できる」という課題を解決するために構成されたものであり、「ロール胴部と軸部をそれぞれセラミックスにより中空状に形成し、ロール胴部の両端部に軸部を接合したことを特徴とする溶融金属浴中に浸漬して用いられる連続溶融金属めっき用ロール」である。
【0004】
また、特許文献2に開示された溶融金属めっき用ロールは、「使用中にロール軸部がロール胴部から抜けることを防止」するという課題を解決するために構成されたものであり、「ロール胴部とロール軸部が滑って空転することを防止するための回り止めフランジ部材の中空部に中空状のロール軸部を貫通させるとともに、該フランジ部材の外周部に、セラミックスにより中空状に形成したロール胴部を嵌合したことを特徴とする連続溶融金属めっき用ロール」である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−89836号公報
【特許文献2】特開2005−298839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、溶融金属めっき浴中において鋼板と直接接触する溶融金属めっき浴用ロールには、鋼板表面に欠陥が無く均一なめっき層を形成するため、回転時に生じる振動量が所定のレベル以下となるよう一定の回転バランスを有している必要がある。しかしながら、特許文献1および2に開示された溶融金属めっき浴用ロールのセラミックスで構成された胴部は、その焼結時に曲がりが発生する場合があり、当該胴部を組み込んだ溶融金属めっき浴用ロールの回転バランスを調整することが操業条件によっては必要となる場合があることを本願発明者らは知覚した。
【0007】
また、上記のような溶融金属めっき浴用ロールに限らずロール・ローラその他の回転体において、回転時の振動が所定のレベルとなるよう要請される場合には、回転バランスを調整する必要がある。そして、胴部が金属製の回転体の場合には、金属製の錘体(バランスウエイト)を例えば胴部の側面に螺合または溶接し、回転バランスを調整することが周知である。しかしながら、胴部がセラミックスで構成された回転体の場合には、溶接はもちろんのこと、胴部に雌螺子を加工すると破壊の起点となるため、胴部自身に錘体を配置することが困難である。
【0008】
本発明は、上記従来の技術の問題点を鑑み本発明者らが鋭意検討してなされたものであり、軸心を有する中空状のセラミックス製の胴部と、胴部と同軸に配置されるとともに当該胴部の両端から軸心方向に延びる軸部とを有する回転体において、容易に回転バランスを調整可能な回転体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の一態様は、軸心を有する中空状のセラミックス製の胴部と、胴部と同軸に配置されるとともに当該胴部の両端から軸心方向に延びる軸部とを有する回転体であって、胴部の中空部に配置された、当該胴部の中空部に内挿される板状または環状の内挿部材を有し、内挿部材は、その端面に凹部または貫通孔が設けられている回転体である。なお、凹部または貫通孔に替えて、内挿部材には錘体が配置されていてもよい。
【0010】
内挿部材は、使用雰囲気における熱膨張係数が胴部とほぼ同一のセラミックスで構成されており、胴部の中空部に嵌入され固定されていることが望ましい。
【0011】
さらに、胴部の中空部に内挿部材を嵌入し固定する場合には、内挿部材の外周の一部は、半径方向に向かい凸形状をなしていることが望ましい。また、内挿部材は、胴部の内周面に密着する弾性部材を介して胴部の中空部に嵌入され固定されていてもよく、胴部の内面には段部が形成されており、内挿部材は、段部の大径部に嵌入され固定されていてもよい。
【0012】
さらに、内挿部材は、焼嵌めにより胴部の中空部に固定されていることが好ましい。
【0013】
加えて、軸心方向から見た内挿部材の外周縁の形状は略円形状であり、内挿部材の外周面が、胴部の内周面に密着するよう配置されていることが好ましい。
【0014】
なお、胴部の中空部に内挿部材を挿入し固定する場合には、胴部の内周面には略円環状の溝部が形成されており、内挿部材は、軸心に対し平行な一平面を有するとともに胴部の溝部の内周面に内挿部材の外周面が密接した状態で当該溝部の一部に挿入される第1の内挿部材と、第1の内挿部材の一平面に対し一定の間隙で対向するよう配置される一平面を有するとともに溝部の内周面に外周面が密接した状態で当該溝部の他部に挿入される第2の内挿部材とで構成され、第1の内挿部材および第2の内挿部材を溝部の内周面に押し付ける押付部を有する構成としてもよい。
【0015】
凹部もしくは貫通孔または錘体は、胴部の軸心回りにおいて同一円周上に複数個配置されていることがより好ましい。
【0016】
上記内挿部材は、軸部を中空状とし、胴部に代えて軸部の少なくとも一方の中空部に配置することができ、回転体の使用時における胴部または軸部の最大応力発生位置に配置することができる。さらに、前記軸部を、胴部の一方端に配置される中空状の第1の軸部と、他方端に配置される中空状の第2の軸部とで構成し、内挿部材を、第1の軸部または第2の軸部の少なくとも一方に配置することができる。
【0017】
さらに、胴部を、少なくとも中空状の第1の胴部と、第1の胴部と外径が同一で中空状の第2の胴部とで構成し、第2の胴部を、第1の胴部と同軸に、その一方端面が、第1の胴部の一方端面に相対する状態で配置し、内挿部材を、軸心方向において、前記第1の胴部材および第2の胴部材の相対する一方端面の双方を含むように配置することができる。
【0018】
内挿部材は、胴部または軸部の内周面に外周面が密着する略円筒状の大径部と、軸心方向における厚みが大径部よりも薄い略円盤状の薄肉部とを有し、薄肉部は大径部の内周面に接続されているように構成することが好ましい。
【0019】
上記回転体は溶融金属メッキ浴用ロールであり、内挿部材は、その外周面に形成された軸心方向に伸びる溝部を有し、溝部の両端は開口するように構成することが好ましい。
【0020】
上記回転体は溶融金属メッキ浴用ロールであり、環状の内挿部材の貫通孔部には、浮力調整用錘を配置することが好ましい。
【0021】
上記回転体は溶融金属メッキ浴用ロールであり、板状の内挿部材は、胴部の内部を密閉するように胴部または軸部に配置されており、胴部の内部には、浮力調整用錘が配置されていることが望ましい。なお、胴部の両端から伸びる第1の軸部および第2の軸部の少なくとも一方が中実の略円柱形状であり、他方が略円筒形状である場合には、他方に板状の内挿部材を配置する。さらに、浮力調整用錘は、胴部の回転にともない胴部の内部を内周面に沿い流動する流動物であることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
上記本発明によれば、その課題を解決することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】めっき鋼板製造ラインの概略構成図である。
【図2】図1の溶融金属めっき浴装置の構成を示す図である。
【図3】図2の溶融金属めっき浴用ロールを示す図である。
【図4】図3の溶融金属めっき浴用ロールの部分拡大図である。
【図5】図3の溶融金属めっき浴用ロールの第1変形例を示す図である。
【図6】図3の溶融金属めっき浴用ロールの第2変形例を示す図である。
【図7】図3の溶融金属めっき浴用ロールの第3変形例を示す図である。
【図8】図3の溶融金属めっき浴用ロールの第4変形例を示す図である。
【図9】図3の溶融金属めっき浴用ロールの第5および第6変形例を示す図である。
【図10】図3の溶融金属めっき浴用ロールの第7変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について、その実施態様である溶融金属めっき浴用ロールおよび変形例に基づき、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、回転体として溶融金属めっき浴用ロールを例に説明するが、本発明は、例えば高温雰囲気、腐食雰囲気その他の過酷な環境で使用するため、高速回転用途の回転体において当該回転体を軽量化するため、あるいは使用雰囲気における温度変化に対し胴部の寸法精度を維持するため、少なくとも胴部をセラミックスで構成したロール・ローラその他の回転体に適用することが可能である。さらに、以下説明する本発明の各要素は、単独にまたは適宜組み合わせて利用することができ、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変形して利用することができる。
【0025】
[めっき鋼板製造ライン、溶融金属めっき装置]
まず、本発明に係わる溶融金属めっき浴用ロール(以下単に「ロール」と言う場合がある。)が溶融金属めっき浴に浸漬されて使用される溶融金属めっき装置、およびその溶融金属めっき装置が組み込まれるめっき鋼板製造ラインについて、図1および2を参照しつつ説明する。
【0026】
図1に示すように、めっき鋼板製造ラインは、不図示のペイオフリールに装着された熱延酸洗コイルまたは冷延コイルから引き出された鋼板Pを前処理し、材質調整するために焼鈍処理を行い、次いで溶融金属めっき浴に鋼板を浸漬してその表面に亜鉛やアルミニウム又はそれらの合金からなる溶融金属を付着させた鋼板P1とし、その後鋼板P1を冷却して付着した溶融金属を冷却・凝固し、スキンパス圧延機やテンションレベラーを通し、その後化成処理などの後処理を施された鋼板P1をテンションリールに巻き取り、出荷するように構成されている。
【0027】
図2は、図1において溶融金属めっきを行う溶融金属めっき装置80の概略構成を示す、正面から見た断面図である。溶融金属めっき装置80は、溶融金属めっき浴(以下単に「めっき浴」と言う場合がある。)81を入れた浴槽82と、めっき浴81の表層部分に浸漬されて、めっき浴81の内に導入される鋼板の酸化を防止するためのスナウト83と、めっき浴81の中に配置されたシンクロール1と、めっき浴81の内でシンクロール1の上方に位置する一対のサポートロール6・7と、めっき浴81の表面より僅か上方に位置するガスワイピングノズル86とを有する。シンクロール1自体には外部駆動力が付与されず、移動する鋼板との接触により駆動される。またサポートロール6・7は、通例、一方のサポートロール6が外部のモーター(
図示せず) に連結された駆動ロールであり、他方のサポートロール7が非駆動ロールである。なお、サポートロール6には外部駆動力が付与されない無駆動タイプもある。溶融金属めっき浴用ロールであるシンクロール1及び一対のサポートロール6・7は、フレーム84・85に取り付けられた軸受87・88により回転自在に各々支持されており、常に一体としてめっき浴81の内に浸漬される。
【0028】
鋼板Pは、スナウト83を経てめっき浴81の内に斜方から進入し、シンクロール1を経由して上方に進行方向を変えられる。めっき浴81の中を上昇する鋼板Pは一対のサポートロール6・7に挟まれ、パスラインが保たれるとともに、反りや振動が防止される。ガスワイピングノズル86は、めっき浴81から出てきた鋼板P1に高速ガスを吹き付ける。高速ガスのガス圧及び吹き付け角度により、鋼板P1に付着した溶融金属めっきの厚さを均一に調整する。このようにして、溶融金属めっきが施された鋼板P1
が得られる。
【0029】
[シンクロール]
図2のめっき装置80に組み込まれるシンクロール1の構成について、その正面から見た断面図である図3および図3の拡大断面図である図4を参照して説明する。なお、以下の第1〜7変形例の構成についても同様であるが、基本的に、シンクロールを例として説明する構成はサポートロールにも適用することができ、サポートロールを例として説明する構成はシンクロールにも適用することができる。
【0030】
図3・4に示すように、シンクロール1は、回転中心となる軸心Iを有する中空状のセラミックス製の胴部1aと、胴部1aと同軸に配置されるとともに胴部1aの両端から軸心方向に延びる軸部1hを基本的な構成として有するとともに、胴部1aの軸心Iに対し端面が交差するよう胴部1aの中空部に内挿される板状の内挿部材3を有している。そして、本態様のシンクロール1では、比較的大径の場合に好ましい要素である、胴部1aと軸部1hを結合する中間部1cが配置されている。胴部1aの両端部と軸部1hとの間に、中間部1cを介在させない場合も本願発明に含まれることはいうまでもない。なお、胴部1aの両端に配置される各々二の中間部1cおよび軸部1hの構成およびそれらと胴部1aとの関係は同一であるので、図示左側の中間部1cおよび軸部1hのみ説明し、右側の中間部1cおよび軸部1hの説明は省略する。
【0031】
[胴部]
所定の外径となるよう外周面が加工されている本態様のセラミックス製の胴部1aには、両端部に形成された略円形状の凹部1bと、軸心方向において中央に形成された一の段部1kとを有しており、段部1kは、胴部1aの左端より内面加工で形成された内周面である大径面1Lと、無加工の焼結面である小径面1mと、大径面1Lと小径面1mとを結ぶ軸心Iに対し直行する方向(以下半径方向という場合がある。)に伸びる位置合わせ面1nとで構成されている。なお、溶融金属めっき浴用ロールであるシンクロール1は、めっき浴への浸漬時および引上時に急熱・急冷されるために、その表面と内部との温度分布が異なると過大な応力が生じ、割損する可能性があるので、図示のように半径方向において一定の厚みを有する中空状とすることが好ましい。
【0032】
[中間部]
胴部1aの両端部に形成された凹部1bに嵌入れ固定される略円環形状の中間部1cは、胴部1aと同様にセラミックスで構成されており、軸心方向に貫通する大径の貫通孔部を中央に有するとともに、半径方向において内周面と外周面との間に形成された軸心方向に貫通する小径の貫通孔部1dを有している。貫通孔部1dは、図4(c)に示すように、軸心周りに45°のピッチで等角度に形成されており、後述する内挿部材3の凹部3cまたは貫通孔3bを形成する場合に使用されるとともに、シンクロール1をめっき浴に浸漬する場合には、その内部に溶融金属を円滑に導入してシンクロール1の熱衝撃による割損を防止し、さらにシンクロール1をめっき浴から取り出す場合には、内部に侵入した溶融金属を円滑に外部に排出して溶融金属が内部で凝固することを防止する機能も果たしている。また、シンクロール1の中空部に貫通孔部1dを通じて溶融金属を導入することにより、シンクロール1の内部の空気を排出することで、浮力で上昇し過大な力で軸受と接触して磨耗が進行することを抑制することができる。なお、貫通孔部1dの構成は、好ましい態様である図示に限定されることなく、異なる孔径の貫通孔部1dを複数設けてもよく、貫通孔部1dを配置する角度ピッチも同一である必要もなく、同一円周上に設ける必要もない。さらに、溶融金属の導入・排出をさらに円滑にするためには、軸心方向から見たときに一方の中間部1cの貫通孔部1dに対し、他方の中間部1cの貫通孔部1dがずれた位置となるように両者を配置してもよく、また、溶融金属の導入・排出をより円滑に行うためには、中間部1cの外周面に軸心方向に伸びる複数の溝部を形成し、胴部1aの凹部1bに中間部1cが嵌入され固定されたときに凹部1bの内周面と溝部とで貫通孔部1dが構成されるようにしてもよい。
【0033】
[軸部]
本態様の軸部1hは、胴部1aおよび中間部1cと同様にセラミックスにより中空状に構成されており、中間部1cの中央に形成された貫通孔部に嵌入れ固定される大径部1eと、軸受87に支持され摺動する摺動面を有する小径部1gと、大径部1eと小径部1gとを連結する連結部1fとを有している。ここで、鋭角な部分が存在すると破壊の起点となるため、連結部1fと大径部1eおよび小径部1gの結合部分は、軸心方向に沿う断面視において各々滑らかな曲線で形成されている。なお、図3において、符号1iは、軸心方向にシンクロール1を支持するスラスト受けである。セラミックスで構成されたスラスト受け1iは、小径部1gの端部開口に嵌入れ固定されており、シンクロール1の回転性を考慮し、軸受87に接触する面積が小さくなるように構成されており、その左端面の半径方向に沿う断面視は、左方向に凸である全体として弧状をなしている。
【0034】
[材料構成]
以下、内挿部材3の説明の前に、上記胴部1a、中間部1c、軸部1h、内挿部材3を構成する材料であるセラミックスについて説明する。なお、本発明に係わる回転体において、必然的にセラミックスである必要があるのは胴部1aのみであり、中間部1c、軸部1c、内挿部材3は例えば金属や樹脂などで構成してもよいが、特に溶融金属めっき浴用ロールであるシンクロールやサポートロールのように高温雰囲気、腐食雰囲気中で使用されるような回転体の場合には、全ての部材をセラミックスで構成することが、使用中における回転体の破損や損耗を防止するために好ましい。
【0035】
セラミックスとしては、回転体が使用される雰囲気その他の操業条件の要請による耐熱衝撃性・耐食性などに応じ、アルミナ・ジルコニア・シリカその他の酸化物系セラミックス、硼化ジルコニウム・硼化チタン・硼化ボロンその他の硼化物系セラミックス、炭化シリコン・炭化ボロンその他の炭化物系セラミックス、またはカーボンなどの無機材料を利用してよい。そして、本態様の溶融金属めっき浴用ロールは、めっき浴への浸漬および取出しの際に急熱・急冷されるため、耐熱衝撃性に優れている必要がある。そのため、溶融金属めっき浴用ロールを構成するセラミックスとしては、熱伝導率が高い窒化珪素・窒化アルミその他の窒化物系セラミックスが好ましく、めっき浴である溶融金属に対し高い耐溶損性および耐磨耗性を有し、高温強度に優れた窒化珪素系セラミックスが特に好ましい。以下、溶融金属めっき浴用ロールを構成するに好適な窒化珪素セラミックスについて詳述するが、窒化珪素セラミックス自体は特開2001−335368号に記載のものと同じでよい。
【0036】
窒化珪素セラミックス中に存在するアルミニウム及び酸素はフォノン散乱源となり、熱伝導率を低減させる。窒化珪素セラミックスは、窒化珪素粒子とその周囲の粒界相とから構成され、アルミニウム及び酸素はこれらの相に含有される。アルミニウムは珪素に近いイオン半径を有するため、窒化珪素粒子内に容易に固溶する。アルミニウムの固溶により窒化珪素粒子自身の熱伝導率が低下し、窒化珪素セラミックスの熱伝導率は著しく低下する。従って、窒化珪素セラミックス中におけるアルミニウムの含有量はできるだけ少なくしなければならない。
【0037】
焼結助剤として添加する酸化物中の酸素の多くは粒界相に存在する。窒化珪素セラミックスの高熱伝導率化を達成するには、窒化珪素粒子に比べて熱伝導率が低い粒界相の量を低減することが必要である。焼結助剤の添加量の下限は、8.5%以上の相対密度を有する焼結体が得られる量である。焼結助剤の添加量をこの範囲内でできるだけ少なくすることにより、粒界相中の酸素量を低減させる必要がある。
【0038】
酸素量の少ない窒化珪素粉末を原料とすると、粒界相中の酸素量が低減できるために粒界相の量自体を低減でき、焼結体の高熱伝導率化が達成されるが、焼結過程で生成するSiOの量の減少により難焼結性となる。ところが、他の酸化物より焼結性に優れたMgOを焼結助剤として用いると、焼結助剤の添加量を少なくして、緻密な焼結体を得ることができる。その結果、焼結体の熱伝導率は飛躍的に高くなる。
【0039】
マグネシウムとともに添加し得る焼結助剤としては、Y、La、Ce、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb,Lu等の周期律表第3族(後述)が挙げられる。なかでも、焼結温度及び圧力が高くなり過ぎないという点で、Y、La、Ce、Gd、Dy、Ybが好ましい。
【0040】
本発明に使用する窒化珪素セラミックスの常温における熱伝導率は50W/(m・K)以上であり、より好ましくは60W/(m・K)以上である。従って、窒化珪素系セラミックス中の酸素含有量は、50W/(m・K)以上の熱伝導率を得るには5重量%以下であり、60W/(m・K)以上の熱伝導率を得るには3重量%以下である。また窒化珪素粒子中の酸素含有量は、50W/(m・K)以上の熱伝導率を得るには2.5重量%以下であり、60W/(m・K)以上の熱伝導率を得るには1.5重量%以下である。さらに窒化珪素系セラミックス中のアルミニウムの含有量は、50W/(m・K)以上の熱伝導率を得るには0.2重量%以下であり、60W/(m・K)以上の熱伝導率を得るには0.1重量%以下である。
【0041】
窒化珪素セラミックス中のマグネシウムMgO換算)
と周期律表第3 族元素酸化物の合計量は0.6〜7重量% であるのが好ましい。その合計量が0.6重量%未満では、焼結体の相対密度が95%未満と不十分である。一方7重量%を超えると、熱伝導率の低い粒界相の量が過剰となり、焼結体の熱伝導率が50W/(m・K)未満となる。MgO+
第3族元素酸化物は0.6〜4重量%であるのがより好ましい。
【0042】
MgO/ 第3族元素酸化物の重量比は1〜70が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5が最も好ましい。MgO/
第3族元素酸化物が1未満では、粒界相中の希土類酸化物の割合が多すぎるため、難焼結性となり緻密な焼結体が得られない。また、MgO/ 第3族元素酸化物が70を超えると焼結時におけるMgの拡散を抑制できず、焼結体表面に色むらが生じる。MO/IIIA
が1〜70の範囲にあると、1650〜1850℃での焼結により高熱伝導率化が著しい。焼結体を1800〜2000℃で熱処理すると、さらに高熱伝導率化される。熱処理による高熱伝導率化は、窒化珪素粒子の成長と蒸気圧の高いMgOの揮発による。
【0043】
窒化珪素粒子中のアルミニウム、マグネシウム及び周期律表第3族元素の合計量は1 . 0重量% 以下であるのが好ましい。
【0044】
窒化珪素焼結体中のβ型窒化珪素粒子のうち、短軸径が5μm以上のβ型窒化珪素粒子の割合が10体積%超では、焼結体の熱伝導率は向上するが、組織中に導入された粗大粒子が破壊の起点として作用するため破壊強度が著しく低下し、700Mpa以上の曲げ強度が得られない。従って、窒化珪素焼結体中のβ型窒化珪素粒子のうち、短軸径が5μm以上のβ型窒化珪素粒子の割合は10体積%以下であるのが好ましい。同様に、組織中に導入された粗大粒子が破壊の起点として作用することを抑えるために、β型窒化珪素粒子のアスペクト比は15以下であるのが好ましい。
【0045】
シンクロール1において胴部1aを形成する窒化珪素セラミックスは、急激な温度変化に対して十分な抵抗力を有する必要がある。急激な温度変化に対する抵抗力は下記式(1):
R=αc(1−ν)/Eα ・・・(1)
( 但し、αc:常温における4点曲げ強度(MPa)、ν:常温におけるポアソン比、E:常温におけるヤング率(MPa)、α:常温から800℃までの平均熱膨張係数)
により表される係数で表される係数Rは600以上であるのが好ましく、700以上であるのがより好ましい。係数Rが600未満であるとロールが破壊するおそれがある。係数Rは、ロールから切り出した試験片に対して測定した常温における4点曲げ強度αc(MPa)
、常温におけるポアソン比ν、常温におけるヤング率E(MPa)及び常温から800℃までの平均熱膨張係数αから求める。
【0046】
[内挿部材]
胴部1aの中空部に内挿される内挿部材3について、図3の拡大断面図である図4(a)、A矢視図である図4(b)、B矢視図である図4(c)を参照して説明する。本態様の円板形状をなす内挿部材3は、胴部1aと同様にセラミックスで構成されており、胴部1aに形成された大径面1Lの内径とほぼ同一の外径を有している。内挿部材3は、胴部1aの位置合わせ面1nに右側面が突き当てられることにより軸心方向における位置決めがされ、胴部1aに嵌入され固定される。内挿部材3の固定方法は、固定部材などで機械的に固定してもよいが、シンクロール1の操業の安定性およびコストの面から、焼嵌めにより固定することが好ましい。その焼嵌め率は0.01/1000〜0.5/1000の範囲内であるのが好ましい。焼嵌め率が0.01/1000未満であると、胴部1aによる内挿部材3の締付け力が不十分であり、内挿部材が中空部から脱落するおそれがある。また焼嵌め率が0.5/1000を超えると、焼嵌めによる締付け力が大きくなりすぎ、胴部1aまたは内挿部材3が破損するおそれがある。より好ましい焼嵌め率は0.2/1000〜0.3/1000である。なお、中間部1cの胴部1aに対する固定、軸部1hの中間部1cへの固定も同様に焼嵌めにより行ってよい。
【0047】
上記のように胴部1aに内挿された内挿部材3には、回転中心となる軸心Iを基点とし、要求される振動レベルに応じ設定された所定の範囲の中に重心が位置するよう、その端面に形成された半径方向に沿う断面が円形状の凹部3c〜3e、軸心方向に内挿部材3を貫通する断面が円形状の貫通孔3bが形成され、シンクロール1の回転バランスが調整されている。なお、図4(b)に示すように、凹部3c〜3eや貫通孔3bは、回転バランスの調整量に応じ各々複数個形成してよく、複数個形成された場合には各々の半径方向に沿う大きさは、適宜に設定される。また、軸心方向における凹部3c〜3eの深さも同様であり(凹部3c〜3eの深さが内挿部材3の厚みを越える場合が貫通孔3bと言える。)、回転バランスの調整量により貫通孔3bを形成しない場合もありうる。また、半径方向に沿う凹部3c〜3eや貫通孔3bの断面形状は円形状に限定されず、三角形状・矩形状・多角形状その他種々の断面形状を適用しうるが、破壊の基点となる角部がないことから断面円形状または断面楕円形状とすることが望ましく、さらに研削加工などの除去方法で比較的容易に形成可能な断面円形状とすることがコストの面から好ましい。
【0048】
また、貫通孔3bまたは凹部3c〜3eを配置する位置は限定される理由はなく、内挿部材3の端面のどのような位置に形成しても構わないが、軸心回りの同一円周上に配置されていることが望ましい。さらに、軸心方向から見た内挿部材3の形状は、例えば三角形状・矩形状・多角形状・楕円形状その他種々の形状を適用しうるが、シンクロール1の回転バランスを容易に調整できる点および大径面1Lと全周に渡り密接することにより強固に固定できる点から、本態様のように円板状とすることが望ましい。なお、内挿部材3の外周の一部に、例えば軸心方向に伸びる溝・切欠き・孔その他胴部1aの大径面1Lとの非接触部分が形成されていても、内挿部材3の外周面と大径面1Lが実質的に密着していればよい。また、図4(b)に破線で示すように、半径方向において内挿部材3の中央に貫通孔部3fを設け、軸心方向から見た内挿部材3の形状を円環状とし、その端面から伸びる平面が軸心Iと交差するよう胴部1aの中空部に内挿してもよい。この場合、貫通孔3bまたは凹部3c〜3eは、円環状の内挿部材3の内周面と外周面の間に設けられることとなる。
【0049】
ここで、本態様の貫通孔3bまたは凹部3c〜3eは、図3および図4(c)に示すように、中間部1cに形成された貫通孔部1dから軸心方向において臨むことが可能な位置に形成されている。すなわち、本態様の貫通孔3bまたは凹部3c〜3eは、内挿部材3および中間部1cを各々胴部1aに嵌入れ固定した後、中間部1cの貫通孔部1dの中を通した工具を内挿部材3の端面まで伸ばし、形成したものである。このような構成とすることで、胴部1a・中間部1c・軸部1hおよび内挿部材3を組み上げてシンクロール1を形成した後に、動バランス試験などで回転バランスの確認を行いつつ、シンクロール1の回転バランスを適切に調整することができる。なお、胴部1a・中間部1c・軸部1hを組み上げる前に、各々個別に回転バランスを確認しておき、確認された個々の回転バランスに基づき計算で求めた調整量により、胴部1aに組み込む前に予め貫通孔3bまたは凹部3cを形成した内挿部材3を胴部1aに嵌入れ固定しても構わない。その場合には、貫通孔3bまたは凹部3c〜3eは、中間部1cの貫通孔部1dから軸心方向において臨むことが可能な位置に必ずしも形成する必要はない。
【0050】
内挿部材3に設けられた上記貫通孔3b、または円環状の内挿部材3における中央の貫通孔部3fは、中間部1cに設けた貫通孔部1dと同様に、シンクロール1の中空部へ溶融金属を円滑に導入し、または当該中空部から排出する機能を果たしうる。しかしながら、当該貫通孔3bまたは貫通孔部3fは必ずしも設ける必要はない。すなわち、胴部1aの中空部に内挿された円板状の内挿部材3で左右に二つに分離された室の間で溶融金属の流通がないよう、胴部1aの中空部を締め切る態様で内挿部材3を構成してもよい。
【0051】
[第1変形例]
上記シンクロール1の第1変形例について図5を参照して説明する。第1変形例に係わるシンクロール4の部分拡大した正面断面図である図5(a)、その右側面図である図5(b)に示すように、シンクロール4の内挿部材4aには、上記内挿部材3の貫通孔3bまたは凹部3cに替えて、錘体(バランスウエイト)4b〜4eが、その側面または側面に開口するように形成された円形凹部に配置されている。なお、内挿部材4aの構成および胴部1aとの関係および錘体4b〜4eの配置方法は、基本的に、上記内挿部材3と同様である。また、本第1変形例を含め以下説明する変形例において、上記シンクロール1と同様な要素については同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0052】
ここで、内挿部材4aの左端面に配置された錘体4cは、適宜な接着材を介して端面に固定されている。また、内挿部材4aの右端面において、軸心回りに同一円周上に配置された錘体4b・4d・4eは、内挿部材4aの右端面に形成された有底孔状の円形凹部に挿入され固定されている。有低孔への錘体4b・4d・4eの固定は、例えば螺合により行ってもよいが、焼き嵌めまたは冷し嵌めにより行えば、部材の点数が少なくなり構成を単純化できるので好ましい。なお、上記貫通孔3bまたは凹部3cと同様に、回転バランスの調整量により、錘体4b〜4eを配置する位置、その質量・大きさ・形状・材質その他の条件は、適宜設定される。また、錘体4b〜4eは金属で構成することができるが、金属は溶融金属中で容易に溶損することから、その表面にセラミックス・ダイヤモンドライクカーボンなどからなる耐食性の高い膜を被覆処理しておくことが好ましい。また、耐食性が高く、密度が比較的高い、超鋼合金やサーメットなどで錘体4b〜4eを構成してもよい。
【0053】
[第2変形例]
上記シンクロール1の第2変形例であるシンクロール5について、図6を参照しつつ説明する。シンクロール5は、シンクロール1および4に対し、(1)軸心方向において、胴部の中空部の両端部に、貫通孔の無い二の内挿部材が配置されている点、(2)そのように内挿部材が配置され、胴部に形成された密閉空間に、浮力調整用錘が配置されている点、(3)上記胴部に配置された内挿部材に加え、二の軸部の中空部にも各々内挿部材が配置されている点、で相違している。ここで、胴部に配置された内挿部材はいずれか一枚であってもよく、軸部に配置する内挿部材は、いずれか一方の軸部に配置してもよい。さらに、内挿部材を胴部に配置せず軸部にのみに配置してもよい。加えて、浮力調整用錘は、必ずしも配置する必要はなく、いずれも必要に応じ、選択することができる。なお、本変形例を含め以下説明する第3〜6変形例では、シンクロール1を構成する中間部1cのように内挿部材を内挿した後に、回転バランスを調整する貫通孔部1dが設けられていない。したがって、上記記載のとおり、胴部・中間部・軸部の回転バランスを個別に確認しておき、確認された個々の回転バランスに基づき計算で求めた調整量により、予め貫通孔・凹部または錘体を配置した内挿部材を胴部に嵌入れし、回転バランスの調整されたシンクロールを構成している。
【0054】
本態様のシンクロール5の胴部5aには、その左端面から右方に離れた所定の位置に第1の段部1kが、右端面から左方に離れた所定の位置に第2の段部5kが形成されている。第1の段部1kおよび第2の段部5kは、各々胴部1aの両端より内面加工で形成された内周面である大径面1L・5Lと、無加工の焼結面である小径面1mと、大径面1L・5Lと小径面1mとを結ぶ半径方向に伸びる位置合わせ面1n・5nとで構成されている。
【0055】
そして、上記変形例1の内挿部材と同一の構成である、錘体5eが配置された内挿部材5dは、その右側面が、第1の段部1kの位置合わせ面1nに突き当てられることにより、軸心方向における位置決めがされ、胴部1aに嵌入され固定されている。また、錘体や凹部が形成されない、円板形状の内挿部材5fは、その左側面が、第2の段部5kの位置合わせ面5nに突き当てられることにより、軸心方向における位置決めがされ、胴部1aに嵌入され固定されている。この内挿部材5dおよび5fが配置される位置は、図6に示すように、シンクロール5の外周面に接触する鋼板Pの軸心方向における端部に相当する、胴部5aに最も曲げ応力の発生する位置である。このように内挿部材5d・5fを配置することにより、内挿部材5d・5fは、シンクロール5の回転バランスを調整する機能を果たすとともに、鋼板Pの接触により胴部5aに最大応力の作用する位置に配置することにより、シンクロール5の胴部5aの強度を高めるという機能をも果たすこともできる。また、図6に示すように、軸部1hの中空部に内挿部材5i・5gを配置することにより、同様に軸部1hの強度を向上することができ、図示のように軸部1hの大径部に内挿部材5i・5gを配置すれば、中間部5cと軸部1hとの嵌め入れによる固定を更に強固にすることができる。
【0056】
ここで、上記態様のように貫通孔の無い内挿部材5d・5fを胴部5aに配置した場合、または溶融金属を導入・排出するための貫通孔部が形成されない中間部5cが胴部5aに設けられている場合であって、貫通孔の無い内挿部材5i・5gを軸部1hに配置した場合には、内挿部材5d・5iの右側面、内挿部材5f・5gの左側面および胴部5aの内面とで画成され、密閉された空間が、形成される。そして、その密閉空間には溶融金属が導入されないため、内部に閉じ込められた空気により大きな浮力を生じ、軸部1hまたは不図示の軸受の摺動面の磨耗を進行させる。そのため、本態様のシンクロール5では、浮力を相殺可能な重力を付与するため、この密閉空間に所定の質量を有する浮力調整用錘5jが配置されている。この浮力調整用錘5jは、例えば胴部1aの内面に配置したバルク状の錘体でもよいが、そのような錘体を設けるとシンクロール5の回転バランスの調整を困難にする可能性があるので、シンクロール5の回転とともにその内周面に沿い流動する、液体、粉体または粒体その他の流動物であることが望ましく、工業生産上において入手の容易な金属粉または金属粒であることがより好ましい。このように流動物を浮力調整用錘として使用することにより、浮力調整用錘は、シンクロール5の回転に伴わず常にその中空部の底部に留まるので、シンクロール5に生じる浮力を相殺しつつその回転バランスを容易に調整することができる。
【0057】
[第3変形例]
上記シンクロール1の第3変形例であるサポートロール6について、図7を参照しつつ説明する。本態様のサポートロール6は、シンクロールに比べ胴部1aが小径であるため、中間部を介さず、胴部1aの両端に各々形成された凹部1bに、二の軸部6hが直接嵌入れし固定されている。本態様の軸部6hは中実であり、上記第2変形例のシンクロール5と同様に、二の軸部6hの各々の内方の側面と胴部1aの内周面とで密閉空間が画成されている。
【0058】
図7(a)のC部の拡大図である図7(b)に示すように、胴部1aの中空部には、軸心方向において中央部に形成された段部1kの位置合わせ面1nに右側面が当接するよう内挿部材6aが配置されており、その内挿部材6aには、回転バランスを調整するために貫通孔3bが形成されている。ここで、本態様のサポートロール6には密閉空間が形成されているので、浮力を相殺する要素を有することが好ましい。しかしながら、内挿部材6aには貫通孔3bが形成されているので、第2変形例の浮力調整用錘とは別の態様の浮力調整用錘を使用している。
【0059】
すなわち、図7(b)に示すように、内挿部材6aには、その中央部には軸心方向に貫通する貫通孔部6dが形成されている。好ましくは略円柱形状の内周面を有する貫通孔部6dには、浮力を相殺するための所定の質量を有する略円板形状の浮力調整用錘6eが配置されている。この浮力調整用錘6eの外径は貫通孔部6dの内径とほぼ同一であり、貫通孔部6dに、好ましくは焼嵌めまたは冷し嵌めにより嵌入れ固定される。なお、嵌入れによる固定のみでは不十分で、軸心方向における浮力調整用錘6eの離脱を防止する必要が生じる場合がある。その場合には、図7(b)に示すように、軸心方向における浮力調整用錘6eの幅を、内挿部材6aの幅と同一とし、内挿部材6aの両側面に平板状の抜け止め部材6gの一面を密着するように配置し、抜け止め部材6g双方を固定部材6fで内挿部材6aに固定しておいてもよい。また、貫通孔部6dを、大径部と小径部とを有する段付の貫通孔とし、小径部の内側端面に浮力調整用錘6eの側面を突き当て、内挿部材6aの一方の側面のみに抜け止め部材6gを配置するよう構成してもよい。
【0060】
[第4変形例]
上記シンクロール1の第4変形例であるサポートロール7について、図8を参照しつつ説明する。図8(a)に示すように、本態様のサポートロール7も、中間部を介さず、胴部7gの各々の両端に各々形成された凹部1bに、中実の二の軸部6hが直接嵌入れし固定されている。
【0061】
本態様のサポートロール7の胴部7gは、軸心方向において複数個、本態様においては2個に分割された中空状の第1の胴部材7aと、第1の胴部材7aと外径が同一で長さが略同一である中空状の第2の胴部材7bとで構成されている。そして第2の胴部材7bは、第1の胴部材7aと同軸に、その左端面が第1の胴部材7aの右端面に相対する状態で配置されている。なお、サポートロール7の場合には、鋼板の表面に薄く付着した溶融金属層に損傷を与えないように、第1の胴部材7aと第2の胴部材7bの各々の端面は隙間なく密着している必要があるが、この構成をシンクロールに適用する場合には、必ずしも密着している必要はなく、両端面は一定の間隙を介して相対する状態となるよう配置されていればよい。
【0062】
図8(a)のD部の拡大図である図8(b)に示すように、上記のように配置された胴部材7a・7bに対し、回転バランスを調整するための錘体4bが配置された内挿部材7cは、軸心方向において、第1の胴部材7aおよび第2の胴部材7bの相対する端面の双方を含むように配置され、嵌入れ、好ましくは焼嵌めにより両者を連結している。すなわち、本態様の内挿部材7cは、サポートロール7の回転バランスを調整する機能を果たすとともに、胴部7gを構成する複数に分割された胴部材7a・7bを連結するという機能をも果たすこともできる。なお、軸部6hは、胴部材7a・7bと別体の部品として構成されている必要はなく、胴部材7aに一方の軸部6hを、胴部材7bに他方の軸部6hを、継目なく一体的に構成しておいてもよい。また、本態様のサポートロール7においても、左側の軸部6hの右側面、内挿部材7cの左側面および胴部7aの内周面で画成された密閉空間、ならびに右側の軸部6hの左側面、内挿部材7cの右側面および胴部7bの内周面で画成された密閉空間、二の密閉空間が形成される。しかるに、上記第2変形例のシンクロール5と同様に、この密閉空間により生じる浮力を調整するため、密閉空間の中に浮力調整用錘5jを格納しておいてもよい。
【0063】
内挿部材7cは、胴部7gの内周面に外周面が密着する略円筒状の大径部7eと、軸心方向における厚みが大径部7eよりも薄い略円盤状の薄肉部7fとを有し、薄肉部7fを大径部7eの内周面に接続するように構成してもよい。このように内挿部材7cを構成することにより、内挿部材7cの肉厚を大幅に薄くすることが出来るために、その製造が容易になり、さらに軽量化できるためシンクロール7の自重も軽くなり、使用時に高速回転が可能となり、めっきを施す鋼板のめっき浴中の浸漬スピードを上げることが出来ることから、めっき浴の効率向上の効果が期待できる。
【0064】
次に、シンクロール1と異なる態様により内挿部材を胴部の中空部に嵌入れした例である、第5変形例および第6変形例について説明する。
【0065】
[第5変形例]
上記シンクロール1の第5変形例について、その二つの態様であるシンクロール8・9に基づき、図9を参照しつつ説明する。ここで、図9(a)は内挿部材8aの周辺部分を拡大したシンクロール8の正面断面図、図9(b)は図9(a)のE矢視であり、図9(a)は図9(b)のF−F断面視となっている。また、図9(c)は内挿部材9aの周辺部分を拡大したシンクロール9の正面断面図、図9(d)は図9(c)のG矢視であり、図9(c)は図9(d)のH−H断面視となっている。
【0066】
第5変形例に係わる二つの態様のシンクロール8・9は、いずれも、胴部1aの内周面1mを加工せず、軸心方向に沿い湾曲した内周面1mを有する胴部1aの中空部に、内挿部材8a・9aを配置している点で、シンクロール1と相違している。
【0067】
すなわち、第5変形例に係わる第1の態様のシンクロール8は、回転バランス調整用の凹部3cが右側面に形成された内挿部材8aを有し、内挿部材8aには、半径方向に向かい内側に凸状をなしている部分(図9(b)においてハッチングを付している領域である。)に対応する、その外周の一部に、半径方向において外側に向かい凸状をなす凸状部分8cが、外周の他部には平坦面である平坦部分8bが形成されている。図9(a)は理解のため強調して図示しているが、内挿部材8aの凸状部分8cは、軸心方向に沿う断面視において円弧の一部をなす形状であり、その軸心に沿う断面視は、胴部1aの凸状部分の変化に対応し、円周方向において両端に向かい如々に平坦面となるよう滑らかに変化する。なお、軸心方向に沿う凸状部分8cの断面形状は、上記に限らず、略半円形状、台形状、三角形状であってもよいが、内挿部材8aの胴部1aへの嵌入れ時におけるその内周面1mの損傷を防止する点、内挿部材8aの挿着作業を容易にする点から円弧の一部をなす形状とすることが好ましい。また、平坦部分8bについても、胴体1aの内周面1mの凹状をなしている部分に対応し、半径方向において外側に向かう凸状部分を形成しても構わない。
【0068】
上記内挿部材8aは、好ましくは焼嵌めにより胴部1aの中空部に固定される。具体的には、既に説明した焼嵌め率となるよう胴部1aを加熱し、膨張した胴部1aの中空部に内挿部材8aを挿入し、その後胴部1aを室温まで如々に冷却する。内挿部材8aは、外周の一部に形成された凸状部分8cの頂部が凸状をなしている胴部1aの内周面1mに、かつ外周の他部に形成された平坦面の両端が凹状をなしている胴部1aの内周面1mに、各々当接し、もって、胴部1aの中空部に内挿部材8aは固定されることとなる。
【0069】
次に、第5変形例に係わる第2の態様のシンクロール9について説明する。このシンクロール9は、回転バランス調整用の凹部3cが右側面に形成された略円板形状の内挿部材9aを有し、その内挿部材9aは、金属・樹脂その他の弾性を有する板状の弾性部材9cを介して胴部1aの未加工の内周面1mに嵌入れ固定されている。具体的には、平坦な外周面9bを有する内挿部材9aの外径は、胴部1aの中空部の内径より小さく、弾性部材9cは、胴部1aの中空部に内挿部材9aを挿入した際に形成される円環状の隙間9dとほぼ同一の厚みを有し、120°の等角度で当該隙間9dに3枚配置されている。
【0070】
上記内挿部材9aは、好ましくは焼嵌めにより胴部1aの中空部に固定される。具体的には、内挿部材9aの外周面9bに、当該外周面9bの曲率に倣うよう予め変形させておいた3枚の弾性部材9cを上記位置関係で配置する。次いで、既に説明した焼嵌め率となるよう胴部1aを加熱し、膨張した胴部1aの中空部に、上記のように配置した3枚の弾性部材9cと内挿部材9aを挿入し、その後胴部1aを室温まで如々に冷却する。すると、収縮する胴部1aにより押圧される弾性部材9cは、その弾性により内挿部材9aの外周面9bおよび胴部1aの未加工の内周面1mに倣い変形するので、胴部1aの中空部に内挿部材9aは固定されることとなる。
【0071】
[第6変形例]
上記シンクロール1の第6変形例について、図10を参照しつつ説明する。ここで、図10(a)は内挿部材10aの周辺部分を拡大したシンクロール10の正面断面図、図10(b)は図10(a)のJ矢視であり、図9(a)は図9(b)のK−K断面視となっている。また、図10(c)は、図10(a)のI部の拡大図である。
【0072】
第6変形例に係わるシンクロール10は、上記シンクロール1に対し、(1)内挿部材10aが複数の部材の組合せにより構成されている点、(2)その複数の部材を胴部の内周面に押し付けることにより内挿部材10aを固定する点、で相違している。
【0073】
すなわち、本態様の内挿部材10aは、胴部1aの軸心に対し平行な平面10jを有する半円板形状の第1の内挿部材10bと、上記平面10jに対し一定の間隙10iを隔て対向配置される平面10kを有する第2の内挿部材10cとを有している。そして右側面に回転バランス調整用の凹部3cが形成された第1の内挿部材10bは、軸心方向において胴部1aの中央に形成された略円環状の溝部の内周面10gの上半分に、その外周面10fが密接し、同様に右側面に回転バランス調整用の凹部3cが形成された第2の内挿部材10cは、上記溝部の内周面10gの下半分に、その外周面10eが密着するように、各々押付部10hにより溝部の内周面10gに押付けられ、固定されている。なお、本態様の内挿部材10aは、第1の内挿部材10bと第2の内挿部材10cという2個の部材で構成しているが、これに限定されず、さらに多くの部材で構成しても構わない。また、第1の内挿部材10bおよび第2の内挿部材10cの各々の平面10j・10kの位置も、図10(b)のように軸心方向から見て、胴部10aの中心付近に配置されている必要はなく、中心より上方・下方いずれの位置であっても構わず、その方向も鉛直方向や斜め方向に配置してよい。しかしながら、製造の容易さの点からは、本態様の内挿部材10aのように構成することが望ましい。
【0074】
第1の内挿部材10bおよび第2の内挿部材10cを溝部の内周面10gに押し付ける押付部10hについて、その詳細を説明する。本態様の押付部10hは、特にくさび効果を利用して押付力を発生させる構造であり、軸心に対し平行な平面である下面10mと、左下がりに傾斜した傾斜面である上面10Lとを有する可動駒10nと、第1の内挿部材10bと第2の内挿部材10cに跨り両者の左側面に当接する足部を有する固定駒10qと、可動駒10nと固定駒10q各々に同軸に、軸心方向に形成された貫通孔10pおよび10rに挿入された固定螺子(ボルト)10sと、固定螺子10sの右端に螺合された固定輪(ナット)10tとを有している。また、軸心方向から見て、第1の内挿部材10bの下部の中央には、上記可動駒10nの傾斜面10Lと同一角度で傾斜した上面10oを有する下方に開口した凹部が形成されている。そして、可動駒10nは、その傾斜した上面10Lが第1の内挿部材10bの凹部上面10oと、下面10mが第2の内挿部材10cの平面10kと、密接するように配置されている。なお、押付部10hを構成する各要素は、内挿部材10aと同様にセラミックスで構成しておくことが望ましいが、めっき浴に触れない雰囲気で使用される場合には、金属製であっても構わない。
【0075】
上記押付部10hによれば、固定螺子10sと固定輪10qとの締結動作により左方向に移動する可動駒10nは、傾斜した上面10Lが第1の内挿部材10bの凹部上面10oと、下面10mが第2の内挿部材10cの平面10kと密接しているので、そのくさび効果により、第1の内挿部材10bを上方に、第2の内挿部材10cを下方に押圧し、各々の外周面10f・10eを、溝部の内周面10gに押し付け、胴部1aの中空部に内挿部材10aを固定することができる。なお、押付部は、上記くさび効果を利用した構成に限らず、例えば圧縮バネその他弾性体を第1の内挿部材10bおよび第2の内挿部材10cの隙間10iに配置して両者を溝部に押し付ける構成としてもよい。また、押付部は中央部のみでなく左右に複数設けても良い。
【符号の説明】
【0076】
1(4、5、8、10) シンクロール
6(7) サポートロール
1a(5a、6a,7g、) 胴部
1c 中間部
1h(6h) 軸部
3(4a、5d、5f、5g、5i、6a、7c、8a、9a、10a) 内挿部材
3b 貫通孔部
3c 凹部
4b 錘体
5j(6e) 浮力調整用錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心を有する中空状のセラミックス製の胴部と、前記胴部と同軸に配置されるとともに当該胴部の両端から軸心方向に延びる軸部とを有する回転体であって、当該胴部の中空部に内挿される板状または環状の内挿部材を有し、前記内挿部材は、その端面に凹部または貫通孔が設けられている回転体。
【請求項2】
前記凹部または貫通孔に替えて、前記内挿部材には錘体が配置されている請求項1に記載の回転体。
【請求項3】
前記内挿部材は、使用雰囲気における熱膨張係数が前記胴部とほぼ同一のセラミックスで構成されており、前記胴部の中空部に嵌入され固定されている請求項1または2のいずれかに記載の回転体。
【請求項4】
前記内挿部材の外周の一部は、半径方向に向かい凸形状をなしている請求項3に記載の回転体。
【請求項5】
前記内挿部材は、前記胴部の内周面に密着する弾性部材を介して前記胴部の中空部に嵌入され固定されている請求項3に記載の回転体。
【請求項6】
前記胴部の内面には段部が形成されており、前記内挿部材は、前記段部の大径部に嵌入され固定されている請求項3に記載の回転体。
【請求項7】
前記内挿部材は、焼嵌めにより前記胴部の中空部に固定されている請求項1乃至6のいずれかに記載の回転体。
【請求項8】
軸心方向から見た前記内挿部材の外周縁の形状は略円形状であり、前記内挿部材の外周面が、前記胴部の内周面に密着するよう配置されている請求項1乃至7のいずれかに記載の回転体。
【請求項9】
前記胴部の内周面には略円環状の溝部が形成されており、前記内挿部材は、前記軸心に対し平行な一平面を有するとともに前記胴部の溝部の内周面に前記内挿部材の外周面が密接した状態で当該溝部の一部に挿入される第1の内挿部材と、前記第1の内挿部材の一平面に対し一定の間隙で対向するよう配置される一平面を有するとともに前記溝部の内周面に外周面が密接した状態で当該溝部の他部に挿入される第2の内挿部材とで構成され、前記第1の内挿部材および前記第2の内挿部材を前記溝部の内周面に押し付ける押付部を有する請求項3に記載の回転体。
【請求項10】
前記凹部もしくは貫通孔または錘体は、前記胴部の軸心回りにおいて同一円周上に複数個配置されている請求項1乃至9のいずれかに記載の回転体。
【請求項11】
前記軸部は中空状であり、前記内挿部材は、前記胴部に代え軸部の少なくとも一方の中空部に配置されている請求項1乃至10のいずれかに記載の回転体。
【請求項12】
前記内挿部材は、前記回転体の使用時における前記胴部または軸部の最大応力発生位置に配置されている請求項1乃至11に記載の回転体。
【請求項13】
前記軸部は、前記胴部の一方端に配置される中空状の第1の軸部と、他方端に配置される中空状の第2の軸部とを有し、前記内挿部材は、前記第1の軸部または第2の軸部の少なくとも一方に配置されている請求項1乃至12のいずれかに記載の回転体。
【請求項14】
前記胴部は、少なくとも、中空状の第1の胴部材と、前記第1の胴部材と外径が同一で中空状の第2の胴部材とで構成されており、前記第2の胴部材は、前記第1の胴部材と同軸に、その一方端面が、前記第1の胴部材の一方端面に相対する状態で配置され、前記内挿部材は、軸心方向において、前記第1の胴部材および第2の胴部材の相対する一方端面の双方を含むように配置されている請求項1乃至13のいずれかに記載の回転体。
【請求項15】
前記内挿部材は、前記胴部または軸部の内周面に外周面が密着する略円筒状の大径部と、軸心方向における厚みが前記大径部よりも薄い略円盤状の薄肉部とを有し、前記薄肉部は前記大径部の内周面に接続されている請求項1乃至14のいずれかに記載の回転体。
【請求項16】
前記回転体は溶融金属メッキ浴用ロールであり、前記内挿部材は、その外周面に形成された軸心方向に伸びる溝部を有し、前記溝部の両端は開口している請求項1乃至15のいずれかに記載の回転体。
【請求項17】
前記回転体は溶融金属メッキ浴用ロールであり、前記環状の内挿部材の貫通孔部には、浮力調整用錘が配置されている請求項1乃至16のいずれかに記載の回転体。
【請求項18】
前記回転体は溶融金属メッキ浴用ロールであり、前記板状の内挿部材は、前記胴部の内部を密閉するように前記胴部または軸部に配置されており、前記胴部の内部には、浮力調整用錘が配置されている請求項1乃至15のいずれかに記載の回転体。
【請求項19】
前記胴部の両端から伸びる第1の軸部および第2の軸部の少なくとも一方が中実の略円柱形状であり、他方が略円筒形状である場合には、他方に前記板状の内挿部材が配置されている請求項18に記載の回転体。
【請求項20】
前記浮力調整用錘は、前記胴部の回転にともない当該胴部の内部を内周面に沿い流動する流動物である請求項18または19のいずれかに記載の回転体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−180552(P2012−180552A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43437(P2011−43437)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】