説明

多層積層体

【課題】 金属と木材が強固に接着されている多層積層体を提供する。
【解決手段】 金属層、接着層及び木材の順で構成され、金属層と木材が接着層で接着されている多層積層体であって、接着層が、不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィンからなり、当該不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィンが140℃に加熱したキシレンに不溶のゲルを含まない多層積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層積層体に関するものであり、より詳しくは、金属層、接着層及び木材の順で構成されている多層積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家具、室内壁、自動車の内装部品、鍵盤楽器の装飾などに木材の高級感と質感を再現した塩化ビニル、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂等の成形体、又はシート、フィルム等が広く用いられている(例えば特許文献1)。ところが、本物の木材の持つ高級感、質感は再現できていないため、木材そのものを装飾材料として利用したいという要望が高まっており、木材の質感、及び重量感を再現するため、木材を直接金属に接着したいという要望が強い。
【0003】
しかしながら、木材と金属の接着に液状接着剤を用いた場合、広い面積に渡って液状接着剤を均一に塗工し、更に塗工から接着までのオープンタイム内で接着を完結し、接着後に接着層の均一性を確保することが困難であった。また、木材と金属はその材料としての極性が大きく異なるため、これらの異種素材を強固に接着するのは容易でなかった。
【0004】
そのため、比較的低温、短時間で金属,木材に特別な表面処理を施すことなく簡便かつ強固に接着可能なフィルム、及び、このフィルムにより木材と金属が接着されている積層体が必要とされていた。
【0005】
【特許文献1】特開2004−268373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は木材と金属が接着されている多層積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、不飽和カルボン酸をグラフトした特定のポリオレフィンから製造されたフィルム、シート又はテープ等が短時間、加圧下、比較的低温で加熱することにより金属層及び木材と強固に接着し、金属層/接着層/木材からなる積層体を製造できることを見出したものである。即ち、本発明は、金属層、接着層及び木材の順で構成され、金属層と木材が接着層で接着されている多層積層体であって、接着層が、不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィンからなり、当該不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィンが140℃に加熱したキシレンに不溶のゲルを含まないことを特徴とする多層積層体である。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の多層積層体は、金属層、接着層及び木材の順で構成され、金属層と木材が接着層で接着されているものである。
【0010】
本発明の多層構造体における金属層とは、金属からなる箔、フィルム、シート、板状物等の平坦な平面状金属成形体、及び、立体的な形状を有する3次元成形体を総称して示したものである。上記の平面状金属成形体においては、その厚みに特に制限はない。また、ここでいう3次元成形体は、金属ブロックを切削して得られるような特定の立体形状を有するものも含む。ここに、金属としては、例えば、鋼、銅、アルミニウム、錫メッキアルミニウム、銀メッキ銅、ステンレス鋼等が挙げられるが、これは本発明を制限するものではなくいかなる金属も使用することができる。さらに、表面を異種金属でメッキした金属にも同様に適用可能である。
【0011】
本発明の多層積層体における木材とは、木材を薄くスライスして得られたシート状物、天然木そのものを特定の形状に成形した成形体、粉砕した木材をバインダーで凝固させてシート、フィルム、板、ブロック状に成形した成形材等を指し、これらの成形体は必要に応じて曲面加工などの2次加工が行われていても良く、また、シート、フィルム状の場合には、例えば、適切な方法により和紙、洋紙、セルロース系ポリマー、合成樹脂フィルム等でシート、フィルムの裏面を補強されていてもよい。ここに、木材とは、白樺、竹、オーク、ゼブラウッド、サベリ、メープル、バーズアイメープル、紫檀、黒檀、カリン、桜、マホガニー、セン、杉、ウオルナット、ブビンカ等が例示されるが、これは本発明を制限するものでなく、上記に示した形状の成形体とできるものであれば何等制限なく用いることができる。
【0012】
本発明の多層積層体における接着層は、金属層,木材と接着される層であり、不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィン(以下、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンという)からなるものである。接着層が不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンからなることにより、絶縁性、熱衝撃性、接着強度に優れた積層体を製造できる。
【0013】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、140℃に加熱したキシレンに不溶のゲルを含まないものである。140℃に加熱したキシレンに不溶のゲルを含むとフィルム化した際の製品外観を大きく損なうばかりでなく、ゲルの量によっては接着層としての接着強度、耐久性等の力学特性を低下させ、積層体が剥離する等の問題が生ずる。
【0014】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの不飽和カルボン酸のグラフト量は特に制限されないが、充分な接着性を有し、かつ、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの溶融粘度を適度に維持するため、好ましくは0.1〜10重量%であり、さらに好ましくは0.5〜8重量%である。
【0015】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、後に述べるような原料ポリオレフィンの種類に従い、例えば、不飽和カルボン酸グラフトポリエチレン、不飽和カルボン酸グラフトエチレン・プロピレン共重合体、不飽和カルボン酸グラフトエチレン・ブテン共重合体、不飽和カルボン酸グラフトエチレン・ヘキセン共重合体、不飽和カルボン酸グラフトエチレン・酢酸ビニル共重合体、不飽和カルボン酸グラフトポリプロピレン等が挙げられる。
【0016】
不飽和カルボン酸としては、例えば、不飽和モノカルボン酸類及びその誘導体、不飽和ジカルボン酸類及びその誘導体、不飽和ジカルボン酸の酸無水物類及びその誘導体等が挙げられる。不飽和モノカルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられ、不飽和モノカルボン酸類の誘導体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸類としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等が挙げられ、不飽和ジカルボン酸類の誘導体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸の酸無水物類及びその誘導体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。これらは単独又は2種類以上併用しても良い。特に接着性の観点から無水マレイン酸単独又は無水マレイン酸と(メタ)アクリル酸エステル類の組み合わせが好ましい。
【0017】
ポリオレフィンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、超低密度ポリエチレン(V−LDPE)等が挙げられる。線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)としては、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられる。その他、エチレン−4−メチルペンテン−1樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびその鹸化物、エチレン−ビニルアルコール樹脂(EVOH)、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)等のエチレン系コポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー等が挙げられ、さらに、これらのポリオレフィンの塩素化物も同様に用いることができる。
【0018】
これらのポリオレフィンを合成するための重合方法は通常知られている方法でよく、高圧ラジカル重合、中低圧重合、溶液重合、スラリー重合等があげられ、使用触媒は過酸化物系触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒が挙げられ、これらの触媒で重合されたポリオレフィンを使用することができる。
【0019】
ポリオレフィンの分子量の目安となるメルトマスフローレート(MFR)は特に制限されないが、溶剤への溶解性を加温時でも良好とし、また、最終的なグラフト反応物の材料強度を維持するため、好ましくは0.01〜50000(g/10分)であり、さらに好ましくは0.01〜100(g/10分)である。
【0020】
ポリオレフィンの塩素化方法は公知であり、例えば、四塩化炭素等のハロゲン系溶剤に溶解させた溶液を、紫外線照射下で塩素含有ガスと接触させてポリオレフィンを塩素化する方法(例えば、特開昭47−8643号公報)、ポリオレフィンの粉末を水に懸濁させたスラリー中に塩素ガスを吹き込んでオレフィンを塩素化する方法(例えば、特公昭36−4745号公報)、溶剤を使用せず、ポリオレフィンを、その融点以上に加熱し、溶融させた状態で塩素ガスと接触させることで、ラジカル発生剤、紫外線照射等を用いずにポリオレフィンを塩素化する方法(例えば、特開平3−199206号公報)が開示されている。本発明で用いる塩素化したポリオレフィンはこれらの何れの方法でも製造することができ、塩素化ポリオレフィンの製造方法には何等制限はない。
【0021】
本発明の多層積層体で用いられる不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンは、ハロゲン系溶剤中で、ラジカル発生剤を用いて不飽和カルボン酸をポリオレフィンにグラフトさせることで製造できる。ハロゲン系溶剤としては、例えば、1,1,2−トリクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。なお、ハロゲン系溶剤として1,1,2−トリクロロエタンを用いる場合、市販されている1,1,2−トリクロロエタン中には、しばしば0.5〜2.0重量%のアルコール化合物及び/又はエポキシ化合物を不純物として含有している。ここに、アルコール化合物とは水酸基を有する化合物であり、例えば、エチルアルコールやブチルアルコール等が挙げられ、エポキシ化合物とはエポキシ基を有する化合物であり、例えば、1,2−エポキシプロパンや1,2−エポキシブタン等が挙げられる。不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを無色透明とし、かつ熱安定性も良好でゲルを含有しない不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを得るためには、1,1,2−トリクロロエタンを溶剤として用いる場合には、1,1,2−トリクロロエタン中に不純物として含まれるアルコール化合物及び/又はエポキシ化合物をあらかじめ除去することが好ましい。
【0022】
ラジカル発生剤としては、アゾ系化合物又は有機過酸化物等が用いられる。アゾ系化合物としては、α,α―アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化t−ブチル、過安息香酸t−ブチル等が挙げられる。
【0023】
アゾ系化合物又は有機過酸化物の添加量は特に制限されないが、不飽和カルボン酸のグラフト量を維持し、また、樹脂の溶融粘度の増加を防止することで成形性の低下を防止して製品品質を維持するため、ポリオレフィン100重量部に対して好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部である。
【0024】
反応温度は特に制限されないが、グラフト反応の効率を高め、変性ポリオレフィンの着色、及び架橋等を防止するため、好ましくは40〜130℃、さらに好ましくは60〜130℃である。反応圧力は特に制限されないが、充分な量の不飽和カルボン酸をグラフトし、また、ゲルの発生を抑制して品質低下を防ぐため、好ましくは0〜1MPa、さらに好ましくは0〜0.7MPaである。本反応においては反応温度、及び、反応させるポリオレフィンの種類によっては均一な溶液状態からけん濁状態でグラフト反応が進行するが、できる限り均一な溶液状態でグラフト反応を進めるため、ポリオレフィンの種類によって反応温度を適宜選択することが好ましい。
【0025】
グラフト反応の終了後、必要に応じて安定剤を添加する。安定剤はグラフト反応時に発生するラジカルを消滅させ、グラフト反応を停止させるために添加し、通常ポリオレフィンに添加する酸化防止剤を用いるのが好ましく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、これらの複合系酸化防止剤が好適に用いられる。
【0026】
グラフト反応に使用する反応容器は通常回分式(バッチ式)反応に使用する容器を用いることができ、上記反応温度、反応圧力に耐えられるものであれば差し支えなく、材質は通常ステンレス製が用いられ、必要に応じて内面がガラスライニング、フッ素コーティング処理を施したものも使用できる。
【0027】
グラフト反応で生成した不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンと溶剤との分離には、ドラムドライヤー、水蒸気蒸留、ベント付き押出機等、通常用いられる方法を用いることができるが、ドラムドライヤーを用いることが経済的利用から特に好ましい。
【0028】
反応工程で不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを溶剤と分離する方法としてドラムドライヤーを用いる場合には、反応工程を終了した後、その反応溶液を反応器から、加熱したドラムドライヤーに連続的にフィードして、生成物をポリマー溶液から単離する。この際のドラムドライヤーの温度としては、乾燥を促進しつつ、ポリマーの着色、熱劣化、架橋を抑制するため、好ましくは120〜200℃の範囲であり、さらに好ましくは150〜165℃である。ポリマーは薄膜状でドラムから剥離して単離する。
【0029】
また、ドラムドライヤーにより揮発した1,1,2−トリクロロエタンはドラムドライヤー上部に設置された回収ラインを用いて、回収し、再び反応に用いることができる。
【0030】
ドラムドライヤーによるポリマー溶液からの溶剤除去に必要な時間は、用いる溶剤の種類、及びドラムドライヤーの温度により異なり、適宜選定し得るが、通常10秒〜5分である。
【0031】
単離されたポリマーは必要に応じて紐状、シート状、ストランド状又はチップ状に加工することができ、これらの1次賦形したポリマーを更に、1軸、又は必要に応じて2軸押出機へ供給し、ポリマーを溶融させて押出し、ストランドカット、又は水中カットによりペレット化することも可能である。この際の押出温度は特に制限されないが、用いたポリオレフィンを充分に溶融させてスムーズに押し出し、さらにポリオレフィンの分解、着色等を抑制するため、好ましくは100〜300℃であり、さらに好ましくは150〜250℃である。
【0032】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンには、他樹脂を配合することができる。他樹脂としては、例えば、グラフト反応が施されていない上記ポリオレフィン樹脂のみならず、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン樹脂などのスチレン系樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸−メチルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂(PPO)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテル−エーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリオキシメチレン樹脂(POM)、エポキシ樹脂、ポリウレタン、尿素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、セルロース、石油樹脂などが挙げられる。必要に応じて、反応性の官能基、又は末端基を有する他の樹脂と本発明の不飽和カルボン酸基とを化学反応させることが可能であり、これら官能基間の物理的相互作用を利用したブレンドが可能である。さらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を第三成分として添加し他樹脂との相溶性を向上させる、又は接着性を向上させることも可能である。
【0033】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンには、エラストマー又はゴム成分を配合することができる。エラストマー又はゴム成分としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。また、熱可塑性エラストマー(TPE)としてはSBS、SIS等のスチレン系TPE(SBC)、ポリオレフィン系TPE(TPO)、ウレタン系TPE(TPU)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリマミド系エラストマー(TPA)、シリコーン系TPE、フッ素系TPEが例示される。
【0034】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンには、以下の各種添加剤を配合することができる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、これらの複合系酸化防止剤等が挙げられる。その他安定剤としては有機ホスファイト系安定剤、チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。また、充填剤としては、例えば、球状フィラー、板状フィラー、繊維状フィラー等が挙げられる。接着剤としては、例えば、液体および固体ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシクレゾールノボラック、エポキシフェノールノボラックおよびビスフェノールAエポキシ樹脂とエポキシクレゾールノボラックまたはエポキシフェノールノボラックとの混合物、ビスフェノールFエポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ架橋剤としては、三フッ化硼素の錯化合物、ジシアンジアミド、ポリアミド類、ポリアミン類等が挙げられる。難燃剤としては、例えば、エチレンビステトラブロモフタールイミド、デカブロモジフェニルオキサイド、SAYTEX8010、テトラデカブロモジフェノキシベンゼンなどの臭素化系難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、硼酸亜鉛、FIREBRAKE ZBなどの難燃助剤、DECLORANE PLUSなどの塩素化系難燃剤等が挙げられる。滑剤としては、高級脂肪酸金属塩として例えばステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、カドミウム塩、亜鉛塩、鉛塩、さらにはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩などが使用できる。その他の添加剤としては、帯電防止剤、着色剤、天然油、合成油、ワックス、可塑剤、造核剤、重金属不活性化剤、加工助剤、ワックス類、アーク抑制剤、アルミナ、シラン処理したタルク、マイカ、長石およびウォラストナイトのような滴下抑制剤等が挙げられる。添加剤の添加量は特に制限するものではないが、添加剤の添加効果を発現させ、かつ、接着性を維持するため、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン100重量部に対して20重量部〜40重量部であることが好ましい。
【0035】
不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンと他樹脂、エラストマー又はゴム成分、各種添加剤の混合には、通常用いられる混練方法が使用でき、単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー型インターナルミキサー、バンバリーミキサー、ロール、ニーダー、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサーなどを用いることができる。
【0036】
本発明の多層積層体における接着層は不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを通常のポリオレフィン樹脂を加工する成形方法によりフィルム化可能であり、インフレーションフィルム成形、キャスト成形、押出ラミネーション成形、カレンダー成形、シート成形、繊維成形、ブロー成形、射出成形、回転成形、被覆成形が挙げられる。また、必要に応じてフィルム成形においては、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを少なくとも片側一層に使用した共押出成形や多層積層成形をすることも可能である。
【0037】
本発明の多層積層体の製造においては、多層積層体を構成する金属層、接着層、木材の積層順序に特に制限はなく、金属層に接着層である不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンのフィルムを加熱圧着法により積層した後、この積層体に木材を接着する方法、木材の裏面に接着層である不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンのフィルムを加熱圧着法により積層した加熱圧着性の木材を製造した後、この熱圧着性の木材を金属層に加熱圧着する方法、金属層、接着層、木材の順に重ねた状態で、これらを同時に加熱圧着する方法が例示されるが、施工性の観点から、金属層又は木材の片側にあらかじめ不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンのフィルムを加熱圧着した金属又は木材を製造し、その後この金属/ポリオレフィンフィルム積層体を木材と接着する、又は木材/ポリオレフィンフィルム積層体を金属と接着する2段階の積層方法が好適に用いられる。
【0038】
金属層又は木材がシート、箔、フィルム等の平坦な形状をしている場合には、接着層となる不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンフィルムを自動化プロセスを使用して金属層又は木材に連続的に接着し、ロール形状の熱接着性金属シート、熱接着性金属フィルム、熱接着性木材シート等を製造できる。例えば、金属層にフィルムを接着させるラミネート用ローラを通過させて接着させる方法では、金属層を接着層の溶融温度近傍に予熱しておく方法により接着することができる。一方、金属層を予熱せずにラミネーターにより加熱圧着する方法も同様に可能であり、接着層が接着性を発現する温度に加熱することが可能であれば、なんら積層方法には制限がない。金属を余熱する場合には、熱風の吹き付けまたは誘導加熱が使用できる。何れのケースにおいても不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンが熱可塑性であることを生かして、積層体製造の自動化が容易にできる。金属層と同様に、木材の場合も不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンフィルムとの接着において木材を余熱しておくことが可能であるが、この場合、木材からの水分の揮発、焼けによる変色などが問題となるため、余熱温度はできる限り低温であることが好ましく、50℃〜150℃が好適に用いられる。
【0039】
本発明の多層積層体における接着層の加熱圧着における温度は、40〜250℃である。40℃未満の場合、接着層の融解が充分でなく接着強度が低下する場合があり、また250℃を超える場合には接着層の熱劣化等による着色が見られる場合があり、また、接着層の劣化により接着強度の低下を招く場合がある。好ましくは80〜200℃である。
【0040】
本発明の多層積層体における接着層の加熱圧着に用いられる圧力は、接着層が融着すれば特に制限はないが、接着界面の密着性を維持し、かつ、接着層の流動による層の厚みの低下を抑制するため、好ましくは0.01〜20MPaであり、さらに好ましくは0.01〜5MPaである。接着時の圧力は適宜、被着体の種類により選択することが好ましい。
【発明の効果】
【0041】
本発明の多層積層体は、金属,木材と強固に接着可能な不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを接着層とすることで、金属と木材が強固に接着された質感、重量感、高級感を有する多層積層体を提供するものである。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0043】
<原料>
本発明の実施例には下記の原料を使用した。
【0044】
(1)EVA
エチレン・酢酸ビニル共重合体:東ソー株式会社製 ウルトラセン(登録商標)751(酢酸ビニル含有量=28重量%、MFR=5.7g/10分、密度=952kg/m
(2)L−LDPE
エチレン・ヘキセン−1共重合体:東ソー株式会社製 ニポロン−Z(登録商標)ZF230(MFR=2.0g/10分、密度=920kg/m
(3)ベンゾイルパーオキサイド(BPO)
日本油脂株式会社製 ナイパーB
(4)ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(DBPIB)
日本油脂株式会社製 パーブチルP
(5)2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)
株式会社エーピーアイコーポレーション ヨシノックスBHT
(6)無水マレイン酸、アクリル酸、1,1,2−トリクロロエタン、メタノール、ジメチルホルムアミド、BHT、26%硫酸水溶液、チモールブルー指示薬、N/20のKOH溶液は関東化学株式会社製の1級試薬を用いた。
【0045】
(7)アルミニウム板
東洋アルミニウム株式会社製 番手:A1N30H−H18 厚み:100μm
(8)ステンレス鋼
(株)ニラコ製 SUS304 753513
(9)木材
フラワーアート夢大陸製 黒檀シート、カリンシート、バーズアイメープルシート、オークシート、ゼブラウッドシート 厚み:0.3mm
<酸価>
ポリマーサンプル1gを秤量し、トルエン100mlに加熱溶解させた後、メタノール10ml、ジメチルフォルムアミド10ml、水0.5mlを加える。引き続き、チモールブルー指示薬1mlを加え、N/20のKOH溶液(n−プロパノール/ベンゼン溶液)で滴定し、青紫色が1分以上持続する点を終点として算出した。
【0046】
<メルトマスフローレート(MFR)>
メルトマスフローレート(MFR)は、ポリエチレンはJISK6922−1に、エチレン酢酸ビニル共重合体はJISK6924−1にそれぞれ準拠して、宝工業(株)製のメルトインデクサーL244を用いて、測定温度190℃、荷重2.16kgfの条件で測定した。
【0047】
<ゲル分率の測定>
ポリマー50mgをキシレン50mlに添加し、140℃で12時間溶解させた後、この溶液を200メッシュのステンレス製のメッシュ(75μm)で濾過して金網上の未溶融分を105℃、5時間乾燥して算出した。
【0048】
<溶融押出>
ベントを有するナカタニ機械工業製のゾーン数10の2軸押出機(115mmφ、L/D=50)を用いた。
【0049】
<ヒートサイクル試験>
エスペック株式会社製 冷熱衝撃装置TSA−71L−Aを用いて85℃で30分、常温で5分、−40℃で30分を1サイクルとして接着試験片に熱衝撃を加えて、接着片の剥離等を観察した。
【0050】
<接着試験>
プレス成形機として(株)神藤金属工業所製 復動式圧縮成形機WFA−50を用いて加熱温度150℃、圧力10MPa、10分間、冷却温度30℃、圧力10MPa、5分間のプレス条件にて厚さ100μmのプレスフィルムを得た。該100μmの厚みに成形したフィルムと被着体をテスター産業株式会社製ヒートシールテスターTP−701を用いて180℃、60秒、0.2MPaの条件で加熱圧着した。引張試験機として(株)オリエンテック製テンシロン万能試験機RTE−1210を用いて引張速度(剥離速度)300mm/分の条件にてT型剥離試験により、その接着強度を評価した。
【0051】
実施例1
<不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンの製造>
1,1,2−トリクロロエタンを5000重量部と26%硫酸水溶液を2500重量部とを下口付き10リッターフラスコに入れ激しく撹拌し、静置後下層の有機層を抜き出した。次に、抜き出した有機層と蒸留水を5kgとを下口付き10リッターフラスコに入れ激しく撹拌し、静置後下層の有機層を抜き出す操作を3回繰り返し、不純物の1−ブタノール及び1,2−エポキシブタンを除いた。さらに抜き出した有機層にモレキュラーシーブス4Aを150重量部添加して、スターラーで撹拌することにより脱水し、精製した1,1,2−トリクロロエタン(以下、精製TCEと記す)。
【0052】
4リッターのガラス製反応容器に精製TCE、3000重量部とEVAを200重量部、並びに無水マレイン酸を5重量部仕込んだ。反応器を80℃に昇温し、その後80℃で4時間保持することによってEVAを均一に溶解した。またこの間、反応器に5リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。グラフト反応の触媒として1.55重量部のBPOを精製TCE100重量部に溶解した。この溶液を連続的に反応器へ添加しつつ、反応器の圧力を1MPaに保った状態で、3時間グラフト反応を行った。反応終了後、圧力を常圧に戻し反応器の温度を70℃まで下げ、安定剤として0.06重量部のBHTを添加した。この溶液を大量のメタノール中に注ぎ、生成物である無水マレイン酸グラフトEVAを溶剤から分離した。
【0053】
生成物は、分析の結果1.6重量%の不飽和カルボン酸(無水マレイン酸)を有することがわかった。ゲルは0重量%であった。
【0054】
<不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンフィルムの製造>
復動式圧縮成形機WFA−50を用いて、上記で得られた不飽和カルボン酸グラフトEVAを、加熱温度150℃、圧力10MPa、加熱時間10分間、冷却温度30℃、圧力10MPa、冷却時間5分間の条件でプレス成形することにより、サイズ100mm×100mm、厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの外観、性状は良好でありフィッシュアイ等の欠点は見られなかった。
【0055】
<多層積層体の製造>
得られたサイズ100mm×100mm、厚み100μmのフィルムと和紙で裏面を補強した厚み0.3mmの黒檀シートとを圧力0.1MPa、温度180℃、1分の条件で加熱圧着して、熱融着性をもった黒檀シートを得た。得られた黒檀シートを表面処理を行っていないサイズ100mm×100mm、厚み1mmのアルミニウム板に重ね、圧力0.1MPa、温度180℃、1分の条件で加熱圧着して、多層積層体を得た。得られた積層体の各層は強固に接着しており、40〜80℃に加熱したが剥離は見られなかった。この積層体と同一構成の剥離試験片を作成し、引張り速度300mm/分の条件でT型剥離試験を行ったところ、金属層と接着層との間の剥離強度は50N/15mmと優れており、木材と接着層との間の剥離強度は木材自体の破断強度を上回っていた。また、この積層体は−40℃で折り曲げて剥離が見られず、低温特性にも優れていることを確認した。また、本積層体は、200回のヒートサイクル試験後も剥離が見られず、接着強度の高い積層体であった。
【0056】
実施例2
実施例1で得られたサイズ100mm×100mm、厚み100μmのフィルムと和紙で裏面を補強した厚み0.3mmのカリンシートとを圧力0.1MPa、温度180℃、1分の条件で加熱圧着して、熱融着性をもったカリンシートを得た。得られたカリンシートを表面処理を行っていないサイズ100mm×100mm、厚み1mmのアルミニウム板に重ね、圧力0.1MPa、温度180℃、1分の条件で加熱圧着して、多層積層体を得た。得られた積層体の各層は強固に接着しており、40〜80℃に加熱したが剥離は見られなかった。この積層体と同一構成の剥離試験片を作成し、引張り速度300mm/分の条件でT型剥離試験を行ったところ、金属層と接着層との間の剥離強度は55N/15mmと優れており、木材と接着層との間の剥離強度は木材自体の破断強度を上回っていた。また、この積層体は−40℃で折り曲げて剥離が見られず、低温特性にも優れていることを確認した。また、本積層体は、200回のヒートサイクル試験後も剥離が見られず、接着強度の高い積層体であった。
【0057】
実施例3
4リッターのガラス製反応容器に精製TCE、3000重量部とL−LDPEを200重量部、並びにアクリル酸を6重量部仕込んだ。反応器を80℃に昇温し、その後80℃で4時間保持することによってL−LDPEを均一に溶解した。またこの間、反応器に5リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。グラフト反応の触媒として1.4重量部のBPOを精製TCE100重量部に溶解した。この溶液を連続的に反応器へ添加しつつ、反応器の圧力を1MPaに保った状態で、3時間グラフト反応を行った。反応終了後、圧力を常圧に戻し反応器の温度を70℃まで下げ、安定剤として0.06重量部のBHTを添加した。この溶液を大量のメタノール中に注ぎ、生成物であるアクリル酸グラフトL−LDPEを溶剤から分離した。生成物は、分析の結果1.8重量%のアクリル酸を有することがわかった。ゲルは0重量%であった。
【0058】
得られたアクリル酸グラフトL−LDPEを実施例1と同様の手法でフィルム化した後、圧力0.1MPa、温度180℃、1分の条件でバーズアイメープルシートと加熱圧着し、更に、表面処理を行っていないサイズ100mm×100mm、厚み1mmのアルミニウム板に重ね、圧力0.1MPa、温度180℃、40秒の条件で加熱圧着して、多層積層体を得た。
【0059】
この積層体と同一構成の剥離試験片を作成し、引張り速度300mm/分の条件でT型剥離試験を行ったところ、金属層と接着層との間の剥離強度は52N/15mmと優れており、木材と接着層との間の剥離強度は木材自体の破断強度を上回っていた。また、この積層体は−40℃で折り曲げて剥離が見られず、低温特性にも優れていることを確認した。また、本積層体は、200回のヒートサイクル試験後も剥離が見られず、接着強度の高い積層体であった。
【0060】
実施例4
4リッターのガラス製反応容器に精製TCE、3000重量部とL−LDPEを200重量部、並びに無水マレイン酸を5重量部仕込んだ。反応器を80℃に昇温し、その後80℃で4時間保持することによってL−LDPEを均一に溶解した。またこの間、反応器に5リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。グラフト反応の触媒として1.8重量部のBPOを精製TCE100重量部に溶解した。この溶液を連続的に反応器へ添加しつつ、反応器の圧力を1MPaに保った状態で、3時間グラフト反応を行った。反応終了後、圧力を常圧に戻し反応器の温度を70℃まで下げ、安定剤として0.06重量部のBHTを添加した。この溶液を大量のメタノール中に注ぎ、生成物である無水マレイン酸グラフトL−LDPEを溶剤から分離した。生成物は、分析の結果1.4重量%の水マレイン酸を有することがわかった。ゲルは0重量%であった。
【0061】
得られた無水マレイン酸グラフトL−LDPEを実施例1と同様の手法でフィルム化した後、ゼブラウッドシートと圧力0.1MPa、温度150℃、30秒の条件で加熱圧着し、更に、厚み1mmのステンレス鋼の板と圧力0.1MPa、温度180℃、60秒の条件で加熱圧着して、多層積層体を得た。
【0062】
この積層体と同一構成の剥離試験片を作成し、引張り速度300mm/分の条件でT型剥離試験を行ったところ、金属層と接着層との間の剥離強度は47N/15mmと優れており、木材と接着層との間の剥離強度は木材自体の破断強度を上回っていた。また、この積層体は−40℃で折り曲げて剥離が見られず、低温特性にも優れていることを確認した。また、本積層体は、200回のヒートサイクル試験後も剥離が見られず、接着強度の高い積層体であった。
【0063】
実施例5
実施例3で得られたアクリル酸グラフトL−LDPEのフィルムを、厚み0.3mmのオークシートと圧力0.15MPa、温度160℃、30秒の条件で加熱圧着し、更に、厚み、1mmのステンレス鋼シートと圧力0.1MPa、温度170℃、70秒の条件で加熱圧着して、多層積層体を得た。
【0064】
この積層体と同一構成の剥離試験片を作成し、引張り速度300mm/分の条件でT型剥離試験を行ったところ、金属層と接着層との間の剥離強度は45N/15mmと優れており、木材と接着層との間の剥離強度は木材自体の破断強度を上回っていた。また、この積層体は−40℃で折り曲げて剥離が見られず、低温特性にも優れていることを確認した。また、本積層体は、200回のヒートサイクル試験後も剥離が見られず、接着強度の高い積層体であった。
【0065】
比較例1
ナカタニ機械工業製の115mmφ、L/D=50の2軸押出機を用いて、ゾーンC1、C2、C3を150、180、200℃に、ゾーンC4〜C10、A、Dを220℃に設定し、回転数110rpmで、C6〜C7間のベントから未反応の不飽和カルボン酸を除去しグラフト反応を行った。即ち、EVA100重量部、無水マレイン酸3.6重量部、DBPIB2重量部の比率でヘンシェルミキサーを用いて均一に混合したプリブレンドを二軸押出機に供給、グラフト反応を行い無水マレイン酸をグラフトしたEVAを得た。得られたEVAは0.6重量%の無水マレイン酸を含有し、0.10重量%のゲルを含有していた。
【0066】
復動式圧縮成形機WFA−50を用いて、得られた無水マレイン酸グラフトEVAを、加熱温度160℃、圧力10MPa、加熱時間10分間、冷却温度30℃、圧力10MPa、冷却時間5分間の条件でプレス成形することにより、厚さ110μmのフィルムを得た。
【0067】
得られた無水マレイン酸をグラフトしたEVAを実施例1と同様の手法でフィルム化した後、黒檀シートと圧力0.1MPa、温度150℃、30秒の条件で加熱圧着し、更に、厚み1mmのアルミニウム板に重ね、圧力0.1MPa、温度180℃、1分の条件で加熱圧着して、多層積層体を得た。
【0068】
この積層体と同一構成の剥離試験片を作成し、引張り速度300mm/分の条件でT型剥離試験を行ったところ、金属層と接着層との間の剥離強度は50N/15mmと優れており、木材と接着層との間の剥離強度は木材自体の破断強度を上回っていた。しかし、この積層体を−40℃で折り曲げたところ、一部剥離が見られた。また、本積層体は50回のヒートサイクル試験でアルミニウム板が一部剥離し、実施例と比較して明らかに接着性に劣っていた。
【0069】
比較例2
比較例1と同様の手法で無水マレイン酸をグラフトしたL−LDPEを得た。
即ち、L−LDPE100重量部、無水マレイン酸4.0重量部、DBPIB2.2重量部の比率でヘンシェルミキサーを用いて均一に混合したプリブレンドを二軸押出機に供給し、ゾーンC1、C2、C3を150、180、200℃に、ゾーンC4〜C10、A、Dを220℃に設定し、回転数110rpmで、C6〜C7間のベントから未反応の無水マレイン酸を除去しながらグラフト反応を行った。得られた無水マレイン酸をグラフトしたL−LDPEは0.4重量%の無水マレイン酸を含有し、0.13重量%のゲルを含有していた。
【0070】
復動式圧縮成形機WFA−50を用いて、得られた無水マレイン酸グラフトL−LDPEを、加熱温度170℃、圧力10MPa、加熱時間10分間、冷却温度30℃、圧力10MPa、冷却時間5分間の条件でプレス成形することにより、厚さ100μmのフィルムを得た。
【0071】
得られた無水マレイン酸をグラフトしたL−LDPEを比較例1と同様の手法でフィルム化した後、バーズアイメープルシートと圧力0.1MPa、温度150℃、30秒の条件で加熱圧着し、更に、厚み1mmのアルミニウム板に重ね、圧力0.1MPa、温度180℃、1分の条件で加熱圧着して、多層積層体を得た。
【0072】
この積層体と同一構成の剥離試験片を作成し、引張り速度300mm/分の条件でT型剥離試験を行ったところ、金属層と接着層との間の剥離強度は43N/15mmと優れており、木材と接着層との間の剥離強度は木材自体の破断強度を上回っていた。しかし、この積層体を−40℃で折り曲げたところ、一部剥離が見られ、本積層体は100回のヒートサイクル試験でアルミニウム板が一部剥離し、実施例と比較して明らかに接着性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層、接着層及び木材の順で構成され、金属層と木材が接着層で接着されている多層積層体であって、接着層が、不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィンからなり、当該不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィンが140℃に加熱したキシレンに不溶のゲルを含まないことを特徴とする多層積層体。
【請求項2】
金属層及び/又は木材と接着層とが加熱圧着されることにより、金属層と木材が接着層で接着されていることを特徴とする請求項1に記載の多層積層体。
【請求項3】
不飽和カルボン酸をグラフトした変性ポリオレフィン100重量部に対して、20重量部〜40重量部の難燃剤をさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多層積層体。

【公開番号】特開2009−56777(P2009−56777A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228055(P2007−228055)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】