説明

抗血栓剤

【課題】心筋硬塞、卒中、心臓血管の病気および病気状態から選択される、血小板凝集により生じる、もしくは血小板凝集を特徴とする病的状態の予防もしくは処置に用いられる医薬品を提供する。
【解決手段】血小板の凝集により起こる、血小板の凝集を特徴とする病気状態の予防もしくは処置に用いられる果物抽出物もしくはその活性分画。好ましくは、前記果物は、トマト、グレープフルーツ、メロン、マンゴ、パイナップル、ネクタリン、イチゴ、プラム、バナナ、クランベリー、グレープ、セイヨウナシ、リンゴ、およびアボガドから選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗血栓剤に関し、より詳細には果物の抽出物から作られた組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
果物と野菜の多量の摂取は、心血管の病気や、胃、結腸、胸部及び前立腺ガンを含む特定の栄養性に関連するガンの危険を減少させることができる重要な予防方法であることが知られている。心血管の病気及びガンの始まりと進行に関連する1つの要素は、ヒドロキシ及びペルオキシの無い基又は化合物の生成につながる異常な酸化プロセスの発生である。ある部分、果物と野菜を食べることの有益な効果は、そこに含まれ酸化反応を抑制する抗酸化剤により説明されている。その抑制作用の原因となるとして知られる特定の抗酸化剤は、ビタミンC、ビタミンE、並びにアルファ及びベータカロテノイド、リコピン、ルテイン、ゼアンチン(zeanthin)、クリトキサンチン(crytoxanthin)及びキサントフィルを含むカロテノイドを含む。
【0003】
心臓病及びある種のガンを予防する役割を有する、トマトから得られる栄養性化合物を特定することにかなりの努力が費やされてきた。そのような化合物は、Abushita et al, Food Chemistry, 1997, 60(2), 207-212に記載されており、それにおいてはトマトのカロテノイド抽出物を分別し、主成分をリコピン、ベータカロチン及びルテインとして同定する。
【0004】
トマトの研究は、低密度リコタンパク質(LDL)の酸化に対する抗酸化剤の防衛におけるカロテノイド、特にリコピンの役割に注目したものである。Oshima et al.の J.Agricultural and Food Chemistry, 1996, 44(8), 2306-2309では、一重項酸素が作用した時に、リコピンを補足したLDLは補足しないLDLよりもゆっくりとヒドロペルオキシドを蓄積することが記載されており、それにより抗酸化剤がヒドロキシ/ペロキシ基を捕らえる能力を有するという理論を支持する証拠を提供している。さらに、Fuhrman et al.のNutrition Metabolism and Cardiovascular Diseases, 1997, 7(6), 433-443では、食事性補足リコピンがヒトのLDL酸化レベルを大きく減少させることが記載されている。
【0005】
WeisburgerのProceedings for the Society for Experimental Biology and Medicine, 1928, 218(2), 140-143では、典型的には脂質可溶性薬品であるカロテノイドの最適な吸収が少量の食事性油又は脂肪の存在中で改善されたことが報告されている。栄養及び健康の分野での研究により、オリーブオイルなどの単飽和油は、アテローム硬化症、冠状心臓病又は栄養性関連ガンの危険を増加させないので最も望ましいことが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
出願人は、多くの果物からの抽出物が血小板の凝集を抑制する能力を示すことを見いだした。よって、現在までに得られた結果は、これら果物からの抽出物に含まれる組成が冠状の病気、例えば心筋の梗塞症及び脈拍を防止し、及び、さらに心筋の梗塞症、脈拍又は不安定なアンギーナをわずらっている患者の冠状の血栓性−塞栓性の出来事を防止することに使用できることを示唆している。加えて、そのような組成物は、血管形成及びバイパス処置後の再狭窄を防止するために使用できる。さらに、果物の抽出物を含む組成物は、塞栓の治療と関連する心筋梗塞等の血栓性−塞栓性疾患から生じる冠状の病気の治療に使用することができる。
【0007】
現在までに得られた結果は、抗血小板凝集作用に責任を有する化合物が、上述の論文において特定されたリコピンなどの脂質可溶性化合物と非常に異なる構造を有する水溶性化合物であることである。
【0008】
血小板の生成及び活動の異なる段階において作用する多数の抗血小板凝集剤が知られている。アスピリン(アセチルサリチル酸)が最も広く使用され、研究されている。ジピリダモール及びチクロピジン(ticlopidine)も使用されている。アスピリンの抗血小板作用はシクロ−オキシゲナーゼの不可逆性抑制によるものであり、そうして血小板凝集を生じさせる化合物であるトロンボキサンA2の合成を防止する。インドブフェン(indobufen)は血小板シクロ−オキシゲナーゼの可逆性抑制剤である。いくつかの化合物、例えばピルマグレル(pirmagrel)はトロンボキサンA2シンターゼの直接的抑制剤であり、又は例えばスロトロバン(sulotroban)などのトロンボキサンレセプターで拮抗物質として作用する。
【0009】
現在までに得られた結果は、果物の抽出物中の活性分画が、トロンボキサンA2の生成につながる経路のいくつかのステップに、アスピリン及び他の現在入手可能な抗血小板薬剤のそれより上流で影響を与えることを示唆する。悪影響はアスピリンの治療的服用との同時発生である:主たる結果は、はきけ、消化不良及びおう吐などの胃腸障害である。従って、果物の抽出物中の分離血小板凝集抑制化合物が、血栓性−塞栓性の出来事又は冠状の病気の防止においてアスピリン又は他の抗血小板薬剤の望ましい代替物としての使用を見いだすことが予測される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、第1の観点では、本発明は、血小板凝集により始まり又は特徴付けられる疾患状態の予防又は治療に使用する果物の抽出物、その活性分画、又はそれらから分離可能な活性成分を提供する。
【0011】
別の観点では、本発明は、血小板凝集抑制剤として使用される果物の抽出物、又はその活性分画、もしくはそれから分離可能な1以上の活性成分を提供する。
【0012】
さらなる観点では、本発明は、抗血栓剤として使用する果物の抽出物、又はその活性分画、もしくはそれから分離可能な1以上の活性成分を提供する。
【0013】
別の観点では、血小板凝集により始まり又は特徴付けられる疾患状態の予防又は治療に使用され、又は血小板凝集抑制剤として使用され、もしくは抗血栓剤として使用される医薬の製造のための先に規定した果物の抽出物、又はその活性分画、もしくはそれから分離可能な1以上の活性成分を提供する。ここで、用語“分画”は、精製され又は部分的に精製された抽出物を指す。
【0014】
別の観点では、本発明は、(i)血小板凝集により始まり、媒介され、又は特徴付けられる疾患状態の予防又は治療において、又は(ii)血小板凝集抑制剤として、もしくは(iii)抗血栓剤として、使用される医薬の製造プロセスを提供する。そのプロセスは、医薬の必須成分として、上記の果物、又はその抽出物又は活性分画、もしくはそれから分離可能な1以上の活性成分を使用することにより特徴付けられる。
【0015】
さらなる観点では、本発明は、活性分画として、上記の果物、又はその抽出物又は活性分画、もしくはそれから分離可能な1以上の活性成分と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬組成を提供する。
【0016】
本発明で使用される果物の抽出物は、ヒトに対して無毒性なものであり、典型的にその果物は通常は食用果物と考えられるものである。よって、その果物は種又は石を含んでも含まなくても良いが、食用で本質的に非油質の果肉を有する。典型的に、その果物は果肉を覆う皮、殻又は薄皮を有し、それらも任意的に食用であってもよい。
【0017】
本発明において使用可能な果物の例は、ソルナセアエSolnaceae)、ルタセアエRutaseae)、ククルビタセアエCucurbitaceae)、ロサセアエRosaceae)、ムサセアエMusaseae)、アナカルディアセアエAnacardiaceae)、ブロメリアセアエBromeliaceae)、ビタセアエBitaseae)、アレカセアエArecaceae)、エリカセアエEricaceae)、及び、ラウラセアエLauraceae)の科から選択されるものである。
【0018】
ソルナセアエの例はトマト、例えばイングリッシュトマトの品種を含む。ルタセアエの例は、シトラス パラヂシCitrus paradisi)(グレープフルーツ)、シトラスシネンシスCitrus sinensis)(オレンジ)、シトラスライモンCitrus limon)(レモン)、及び、シトラスアウランチフォリアCitrus aurantifolia)(ライム)などのシトラス種を含む。ククルビタセアエの例は、ククルニスメロCucurnis melo)、例えばハネデューメロンを含む。アナカルディアセアエの例は、マンギフェラインディサ(マンゴ)を含む。ロサセアエの例は、ピラス マルスPyrus malus)又はピラス シルベストリスPyrus sylvestris)(リンゴ)、ピラスコムニスPyrus communis)(ピーチ)、アミグダルスペルシカAmygdalus persica)又はプルナスペルシカ バー ネクタリアPrunus persica Var. nectaria)(ネクタリン)、プルナスアルメニアサPrunus armeniasa)(アプリコット)、プルナスドメスティカPrunus domestica)(プラム)、プルナスアビウムPrunus avium)(チェリー)、プルナスペルシカPrunus persica)(ピーチ)、ストロベリー及びブラックベリーを含む。ブロメリアセアエの例は、アナナスサチヴァスAnanas sativus)(パイナップル)を含む。ラウラセアエの例は、ペルシアグラチッシマPersea gratissima)又はペルシアアメリカーナPersea americana)(アボガド)を含む。ビタセアエの例はヴィティスヴィニフェラVitis vinifera)(グレープ)を含む。アレカセアエの例はフェニックスダクチリフェラ(Phoenix dactylifera)(ナツメヤシ)を含む。エリカセアエの例はブルーベリーを含む。
【0019】
その抽出物や活性分画が血小板凝集抑制作用を有するものとして認められた果物の例を特に挙げれば、トマト、グレープフルーツ、メロン、マンゴ、メロン、パイナップル、ネクタリン、イチゴ、プラム、バナナ、クランベリー、ブドウ、ナシ、リンゴ及びアボカドである。
【0020】
本発明の抽出物は、果物、好ましくは、皮をむいた果物の果肉を均質化し、次いで、例えば、遠心分離によってそこから固形分を除去することによって調製される。従って、この抽出物は、典型的なものとしては、果物の果汁のみからなり、場合によっては、均質化工程中に加えられた添加水を含む抽出液である。このような抽出液は、例えば、標準技法である減圧下での蒸発によって、濃縮される。濃縮物の例としては、少なくとも2倍に濃縮されたものであり、より一般的には、少なくとも4倍、例えば、少なくとも8倍、又は、少なくとも40倍、又は、少なくとも100倍、又は、少なくとも200倍、又は、少なくとも1000倍に濃縮されたものである。
【0021】
例えば、(ゲルろ過クロマトグラフィーのための)セファローズゲル等の適切な固形分坦体、又は、適切に処理されたシリカ又はアルミナ、例えば、ODSでコートされたシリカ上で高性能液体クロマトグラフィーを使用したイオン交換コラム上での分子量濾過、即ち、クロマトグラフィーにより、又は、溶剤抽出によって、抽出物を分留して、1つ又は2つ以上の活性分画をその抽出物中で分離してもよい。
【0022】
トマトの抽出物について実施した実験によって、1000のカットオフ分子量を有する限外濾過フィルタを通過する抽出物の有効成分は、無色又は藁色をしており、水溶性であり、そして、沸騰させても、重要な有効性を喪失しないことが認められている。
【0023】
従って、本発明は、抗血栓剤として使用され、又は、血小板凝集抑制剤として使用され、又は、血小板凝集により生じる、又はこの血小板凝集に特徴付けられる病状の予防又は処理に使用される、果物の抽出物(好ましくは、トマトの抽出物)の活性分画であって、1000未満の分子量を有する、実質的に熱に対する安定性を有し、無色又は藁色の水溶性の単一又は複数の化合物を含む活性分画を提供するものである。
【0024】
トマトの抽出物、特に、トマトの抽出液は、本発明の好ましい特徴を示す。トマトの抽出物の活性分画は、シチジンを含有するネクレオシドの混合物を含むものであることが認められている。
【0025】
従って、本発明の一実施形態は、抗血栓剤として使用され、又は、血小板凝集抑制剤として使用され、又は、血小板凝集の初期症状を伴い又はこの血小板凝集に特徴付けられる病状の予防又は処理に使用される、トマトの抽出物の活性分画であって、1000未満の分子量を有する、実質的に熱に対する安定性を有し、無色又は藁色の水溶性の単一又は複数の化合物を含む活性分画を提供する。
【0026】
活性分画は、トマトの果汁、種を包囲する果肉及びその種と結合されており、即ち、そこから抽出可能であることが認められている。従って、本発明の好ましい実施形態においては、皮をむいたトマトの果肉から抽出されたホモジェネート、即ち、その抽出物のみから実質的に構成され、又は、果汁及び/又は種を包囲する果肉及び/又は種のみから実質的に構成される活性分画から調製された成分が使用されている。
【0027】
トマトの抽出物の有効成分を質量分析器(MS)及び核磁気共鳴(NMR)分析法によって分析した結果、この有効成分は、ヌクレオシドの混合物を含有していることが認められた。従って、更なる特徴においては、本発明は、トマトから分離可能であり、下記を特徴とする活性分画そのものを提供するものである:
(a)実質的に熱に対する安定性を有すること
(b)無色又は藁色であること
(c)水溶性化合物であること
(d)1000未満の分子量を有する化合物からなっていること
(e)血小板凝集抑制作用を有する1又は2以上のヌクレオシドを含有していること、そして、好ましくは、
(f)MALDI−TOF質量分析を行った際に、ここに添付した図7に示す質量スペクトルを有していること、そして、好ましくは、
(g)ここに添付した図6に示す1H核磁気共鳴スペクトルを示すこと。
【0028】
薬学的及び栄養薬剤的製剤
抽出物又はその活性分画を、様々な方法で製剤することができる。例えば、経口投与、舌下投与、非経口投与、皮膚透過投与、直腸投与、吸入投与又はバッカル投与用にこれらを製剤することが可能であるが、これらを、経口投与又はバッカル投与用に製剤することが好ましい。このようなものとして、これらを、例えば、水剤、懸濁剤、シロップ、タブレット、カプセル、ロゼンジ、スナックバー、インサート及びパッチとして製剤することが可能である。このような製剤は、周知の方法に従って実現可能である。これらの製剤は、脂質成分が低く、又は、実質的に脂質を含まないことが好ましい。
【0029】
例えば、砂糖、ビタミン剤、香味剤、着色剤、防腐剤及び濃厚剤から選択された1又は2以上の賦形剤の存在下で、経口投与用のシロップ又は他の水剤、例えば、健康飲料として抽出物又は活性分画を形成してもよい。
【0030】
塩化ナトリウム又は砂糖等の張性調整剤を添加して、特定の浸透強度の水剤、例えば、等張液を提供することが可能である。pH値を特定の値に調整し、そして、好ましくは、その水剤をこのpH値に維持するために、緩衝剤等の1又は2以上のpH調整剤を用いることも可能である。緩衝剤の例としては、クエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝剤や、燐酸塩緩衝剤がある。
【0031】
又、抽出物又はその活性分画を、例えば、噴霧乾燥又は凍結乾燥によって乾燥させ、そして、このように乾燥した製品を、例えば、タブレット状、ロゼンジ状、カプセル状、粉状、粒状又はゲル状の固体又は半固体状投薬に製剤してもよい。
【0032】
上述した代わりに、付加的な成分を伴うことなく、単なる乾燥状態の抽出物を調製してもよい。又、固体坦体に、例えば、スクロース、ラクトース、グルコース、フラクトース、マンノース等の糖や、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等の糖アルコールや、セルロース誘導体を吸着させることによって、乾燥状態の抽出物を調製してもよい。特に他の有効な吸着剤としては、例えば、小麦粉及びトウモロコシ粉の穀物粉等のデンプン系吸着剤がある。タブレットを形成するための典型例として、乾燥状態の抽出物は、例えば、スクロース及びラクトースの糖や、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール等の希釈剤、又は、紛状セルロース、微結晶性セルロースやカルボキシメチルセルロース等の変性セルロース又はセルロース誘導体と混合される。典型的には、タブレットは、造粒剤、バインダー、滑剤及び崩壊剤から選択された1又は2以上の賦形剤を含む。崩壊剤の例としては、デンプン、デンプン誘導体、及び、他の吸水性ポリマー、例えば、架橋されたカルボキシメチルセルロース、架橋されたポリビニルピロリドン及びデンプングリコラート等の架橋された高分子崩壊剤が挙げられる。滑剤の例としては、マグネシウムステアリン酸塩やステアリン酸等のステアリン酸塩がある。バインダー及び造粒剤の例としては、ポリビニルピロリドンがある。希釈剤が本体著しく甘くない場合には、例えば、アンモニウムグリシルリジン酸塩や、アスパラギン酸塩又はサッカリンナトリウム等の人工甘味料等の甘味料を添加してもよい。
【0033】
乾燥された抽出物はまた、カプセルに封入されるように粉体状や、細粒状や、半固体状に形成することができる。粉体状にて使用される場合、抽出物は、タブレットとの関係において上記にて定義された一または二以上の結合剤とともに配合され、あるいは薄められない形で提供される。半固体の形態として、乾燥された抽出物は粘ちょうな液体または半固体状の架体中(例えばポリエチレングリコールまたは、液体状のキャリア例えばグリコールすなわちプロピレングリコールまたはグリセロール、または例えばオリーブ油、サンフラワーオイル、サフラワーオイル、宵待ち草油、大豆油、タラの肝油、ニシン油、などから選ばれた植物油や魚油に溶解または懸濁させることができる。これらの抽出物は、硬質ゼラチンや軟質ゼラチンあるいはそれらと同等なもののいずれかでできたカプセルに充填される。軟質ゼラチンやその等価物は粘ちょうな液体や半固体を充填する場合に好適に使用される。
【0034】
乾燥された抽出物はまた、例えば果物バー、キャラメルバーなどの棒状スナック食品のなかで粉体として提供される。棒状スナック食品に使用するため、乾燥された抽出物は天日乾燥されたトマト、ブドウ、およびサルタナなどの乾燥果実、ピーナツ、または燕麦、小麦などのシリアル類などから選ばれた一つのあるいはそれ以上の成分と混合される。
【0035】
乾燥された抽出物は水を加えて溶解液に戻すべく、粉体として供給される。そのようにして、それらはまた例えば糖や緩衝剤例えばクエン酸や燐酸の緩衝剤などの溶解性の結合剤、カーボネートすなわち、ナトリウム・アンモニウムバイカーボネートなどのバイカーボネート類から形成された発泡剤、およびクエン酸やクエン酸塩などの固体状の酸を含むことが出来る。
【0036】
一つの好適な実施形態として、乾燥された抽出物は、望む場合には例えば、硬質ゼラチンカプセルなどのカプセルに充填されるべく、好適な固体(粉状化されている。)の結合剤ともに粉体状で供給される。
【0037】
本発明における固体または半固体の添加は、乾燥抽出物約1000mgまで含ませることができる。例えば約800mgまでである。
【0038】
ある状況のもとにおいては、抽出物は注射や輸液により投与されることが望ましい。それらは望ましくはPH7に緩衝された生理食塩水中に、濾過殺菌された溶体の形で提供される。あるいは、それらは、注射や輸液に使用される殺菌された粉体として提供される。
【0039】
抽出物は食品補強剤、食品添加剤として、あるいは例えば機能性食品または栄養剤として食品中に入れて提供される。
【0040】
本発明の組成物は、抽出物または活性分画の定義された濃度を含む単位混合率の形式にて提供される。このような単位混合率の形式は、生物学的活性に関する望ましいレベルを達成するように選択され得る。
【0041】
医薬品的な使用
本発明はまた、血小板が凝集すること(血栓)により引き起こされる病や症状の予防や治療の方法を提供する。その方法には、血栓を避ける為の、有効で望ましくは無害な量レベルの前記にて定義された果実またはそれらの抽出物や活性化した成分を必要とする患者(例えばヒトや他の哺乳動物)の治療を含む。
【0042】
血小板凝集を特徴とする病気の治療のため、一人の患者に与える一日当りの抽出物や活性分画の量は、抽出物の強さや個々の患者の症状の程度、そしてつまるところは医師の裁量による。しかし、投与量は典型的には問題となっている症状に効果的で無害な量である。
【0043】
一人の患者に与える抽出物や活性分画の量は、典型的には抽出物中の活性分画濃度により異なる。しかし典型的な1日当り投与量の基準は、血栓に悩む患者の体重一キログラム当り0.0001〜0.1g、望ましくは0.001〜0.05gである。活性分画が単独で投与される場合には、投与される固体物質の総量は、増加したその成分の純度に応じた量の分減量されうる。典型的には、一日当り最低100mg、望ましくは200mgの活性分画を、血栓による症状に悩む患者に投与すれば、顕著に血栓を防止できる。
【0044】
一日当りの投与回数は、単一でも複数でもよい。例えば、一日当り1〜4回としてもよい。望ましくは一日当り1〜2回である。
【0045】
本発明の抽出物は、固体や、液体、半固体に入れて投与できる。例えば、抽出物は、果物果汁や、水抽出物の濃縮物、固体・液体・半固体の抽出物の活性分画の純化されたもの等の形で投与されうる。濃縮されていない状態で投与される場合それらは果汁、望ましくは100%果汁の中に入れて投与される。しかし、抽出物は望ましくは濃縮物状で、さらに望ましくは例えば、前記したようにタブレット、ハードゼラチンカプセル、スナックフードバーなどの形で個体中の濃縮物として投与するとよい。
【0046】
本発明の一態様では、少なくとも300mlの100%果実果汁(例えば600mlの100%果実果汁)が、血栓による症状に悩むヒトの患者に対する典型的な一日当りの投与量の基準である。本発明の他の一態様では、一日当り複数回投与する方法として、少なくとも300mlの100%果実果汁を投与することがあげられる。例えば、少なくとも一日2回、望ましくは一日3回投与することである。しかし、上記投与基準は患者には受け容れ難い液体量の範囲を含んでいる。したがってさらに別な実施態様として、例えば一日当りの投与回数を複数にする等して、上記で定義された濃厚物を投与するとよい。
【0047】
本発明の抽出物は、例えば、心臓病薬、坑血栓剤、不整脈治療剤、ACE予防剤、ベータブロッカー、血管拡張剤、他の血栓予防剤、フォスフォジエステラーゼインヒビター、プラスミノーゲン活性化剤、ハイポリピディミックスなどから選ばれた一のまたは複数の他の健康増進剤とともに投与してもよい。抽出物は、他の健康増進剤と別個に配合決定されてもよいし、それらとともに配合決定されてもよい。
【0048】
本発明の組成物は、血栓予防活性を持つ。しかして、本発明の構成物は、血栓が部分的に関与している、または血小板活動過多が関連している症状や病気の治療に役立つ。本発明の組成物は、健康増進のために、血小板活動過多症状が心臓病、ガン、肥満などの第一次または第二次症状として現れている様々な症状に使用することができる。本発明の組成物で、ことのほか注目される診療上の指示の例は、心筋梗塞、環状動脈の血栓崩壊、環状動脈移植、心弁交換、そして、末端や基幹血管の移植などの予後の治療、管理を含んでいる。
【0049】
本発明の抽出物は、単独で、または他の健康増進剤とともに使用される。一つの望ましい実施態様として、本発明の抽出物は、一つの、または複数のストレプトキナーゼ、ヘパリン、インシュリン、坑肥満薬およびHMGCoA還元酵素インヒビターとともに投与される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
ここで、本発明は、以下の実験例および添付された図面を参照することにより説明することができるが、これらに限定されるものではない。
【図1】図1は、トマト抽出物の部分分画の典型的な手順を図式的に示している。
【図2】図2は、水性トマト抽出物の限外濾過のゲル濾過クロマトグラムである。
【図3】図3は、ゲル濾過され、塩分が除去された水性トマト抽出物の高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)イオン交換クロマトグラムである。
【図4】図4は、脱塩分画における血小板凝集活性を示すグラフであり、分画1と分画2は、次に示す高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)イオン交換クロマトグラムを集めたものである。
【図5】図5は、シチジンのHNMRスペクトルである。
【図6】図6は、水性トマト抽出物の脱塩活性分画F2のHNMRスペクトルである。
【図7】図7は、活性分画F2のMALDI−CIMSマススペクトルである。
【図8】図8は、微分分画F2のGC−CIMSクロマトグラムである。
【図9】図9は、トマトの様々な部分から抽出した抽出物を用いて得られる血小板凝集の分析結果を示しているグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0051】
実験例1
血小板凝集を誘発させるADPの研究
方法
100%果物果汁または希釈した果物果汁からなる抽出物を、表1に示された果物から新鮮な状態で分析の日に準備した。準備された100%果物果汁は、果物の皮をむき、新鮮な状態で均一化されたものであった。その結果、均一化は、1.5mlのエッペンドルフ(Eppendorf)チューブ内で遠心分離器により10分間に3000×G回転され、その後、(果汁の)上澄み液は移され、果汁のpHは、最初の果物抽出物のpHに依存して、1Mか0.1Mの水酸化ナトリウムでpH7.4に調整された。比較的繊維の多い果物(リンゴ、マンゴ、アボカド)の場合には、20%または50%w/vの抽出物は、一様に20%または50%の果物とともにpH7.4の食塩加リン酸緩衝液(PBS)によって準備され、100%の果物抽出物に関しては、上述したようにして均一化が行われた。
【0052】
ヒトの血小板の凝集特性に対する果物抽出物の影響は、若いボランティアを対象に調査された。採血前少なくとも14日間は薬物を採取していないボランティアの静脈血が集められた。血液(20ml)は19Gのバタフライニードルを用いて集められ、血液サンプルとクエン酸(135mM)とを、体積比9:1で混合することにより、血液が凝集することを防止した。血小板に富む血漿(PRP)は、200gの血液を15分間、遠心分離することによりサンプルから準備した。
【0053】
必要があれば、果物抽出物の最初のpHに依存して、1Mか0.1Mの水酸化ナトリウムを用いてpH7.4に調整された果物果汁(50μl)は、PRP(450μl)と混合され、37℃で15分間培養され、その後、血小板凝集を誘発させるADPに対する果物抽出物の影響は、最終的な濃度が10μMになるまでADPを加えながらモニタリングされた。制御は、果物果汁の代りにpH7.4のPBS、50μlを用いて平行して行われた。
【0054】
PRPにおける血小板凝集は、4パックの血小板凝集計(Helena Labs、USA)を用い、37℃で、1000rpmのスピードで一定にかき混ぜながらモニタリングされた。血小板の計算は、カウンターセルカウンターを用いて行われた。
【0055】
結果
表1は、ヒトの血小板に対する様々な果物の抗凝集特性を示している。この結果は、多くのボランティア(n)のADPに対応する血小板の抑制%を表示している。表において、アステリスクの付された抽出物は、10分間煮沸し、その後30分間113,000gで遠心分離されている。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例2
トマト抽出物の部分分留
方法
トマト抽出物は、図1に示すような一般的な手段に従って分留された。そして、血小板凝集抑制活性は、種々の段階で測定された。例えば、100%果物から搾られた新鮮なトマト果汁は、10分間煮込まれ、113000gで30分間遠心分離機にかけられた。抽出物の血小板凝集抑制活性は、上記の表1に示されている。
【0058】
遠心分離後、超浮遊性の抽出物の一部は、4℃・窒素圧下で、カットオフ分子量1000のアミコンYM1メンブランフィルターを通過させることにより、限外ろ過が行われた。その限外ろ過物は、フィルター上に保持された果物果汁の残り(捕集物)として集められた。限外ろ過物および捕集物は、血小板凝集を抑制するADPまたはコラーゲン中で、それらの活性がテストされた。限外ろ過物と捕集物の抗血小板凝集活性は、何れも、抽出物の活性分画が1000未満の分子量を持っている単一または複数の化合物からなるものであった。
【0059】
抗血小板凝集活性が、トマト限外ろ過物(カットオフ分子量1000)中の脂質可溶成分であるか水可溶成分であるかどうかを決定するために、限界ろ過物の液体成分は、ブライとダイアーの方法に従って、クロロフォルムとメタノールで抽出された。例えば、限外ろ過物の2mlは、クロロフォルム1.25mlに続いてメタノール2.5mlを混ぜて単相とし、そして、クロロホルム:メタノール:水の比率を1:2:0.8とした。このとき、沈殿物は形成されなかった。クロロフォルム(1.25ml)と水(1.25ml)を更に加え、前記の比率を2:2:1.8とした。そして、緩やかに撹拌し、混合物を二相に分離させた。上相(メタノール/水)は除去され、55℃・窒素下でメタノールを飛ばした。その容量は2mlまでとし、その後、pH7.4に調整した。この水和相の抗血小板凝集活性は、50μlのPBSと比較した。
【0060】
クロロホルム相は、窒素下で蒸発させ、エタノール(50μl)で再けん濁させた。エタノール相のサンプル(10μl)は、抗血小板凝集活性vs.10μlエタノールでテストされた。
結果
限外ろ過物(MWCO)と脱脂質された留分は、pH7.4で、血小板凝集を抑制するADPとコラーゲンに対して、同様な活性を持っていた。一方、脂質留分は、初期の凝集を抑制しなかったが、非凝集が観察された。これは、血小板に影響する不特定の脂質に基づくものと考えられる。
【0061】
結論としては、この分留実験は、血小板凝集抑制活性が、1000未満の分子量からなる水可溶成分と関係していることを示唆している。その成分(s)は、熱安定性および無色/淡黄色であった。
【0062】
実施例3
トマト抽出物からの活性抗血小板凝集成分の単離と同定
方法
トマト抽出物は、図1に示すような一般的な手段に従って分留された。そして、血小板凝集抑制活性は、種々の段階で測定された。例えば、100%果物から搾られた新鮮なトマト果汁は、10分間煮込まれ、113000gで30分間遠心分離機にかけられた。抽出物の血小板凝集抑制活性は、上記の表1に示されている。
【0063】
遠心分離後、超浮遊性の抽出物の一部は、4℃・窒素圧下で、カットオフ分子量1000のアミコンYM1メンブランフィルターを通過させることにより、限外ろ過が行われた。その限外ろ過物(MWCO1000)は集められ、そして、そのサンプルは、血小板凝集を抑制するADPまたはコラーゲン中で、それらの活性がテストされた。限外ろ過物はさらに精製するために冷凍乾燥された。
【0064】
冷凍乾燥したサンプルは、2mlの水中にけん濁させた。水和相の抗血小板凝集活性は、50μlのPBSと比較した。冷凍乾燥したサンプルの水和留分のみが血小板凝集抑制活性(実施例2を参照。)を持っているので、活性分画のさらなる精製は水和留分を利用して行った。
【0065】
さらに、分留は、分子サイズに従って分離するセファローズカラムで行われた。例えば、再けん濁させた冷凍乾燥サンプルのゲルろ過カラムクロマトグラフィーは、P2バイオゲルを使って行った。P2バイオゲルカラムは、0.15M塩化ナトリウムを含むpH3.3の0.01M酢酸緩衝液で平衡させた。そのサンプルは、カラムにロードされ、0.15M塩化ナトリウムを含むpH3.3の0.01M酢酸緩衝液で溶離した。血小板凝集は、図2中のクロマトグラフィー痕跡に示されたUVスペクトルピークに一致する捕集留分(No.1〜8で示された。)のそれぞれについて分析された。
【0066】
血小板凝集抑制活性は、ピーク4に相当する捕集留分の一つに集中していることが分かった。分画4を指すこの留分は、冷凍乾燥され、更に精製された。冷凍乾燥サンプルは、20mg/mlの溶液を与えるために水中に再けん濁された。捕集留分の脱塩は、P2バイオゲルカラムにサンプルをロードし、pH3.3の0.01M酢酸緩衝液で溶離することにより行われた。その溶離は、冷凍乾燥させ、水中で再けん濁させた後に行われた。
【0067】
さらに、精製は、シリカゲルヌクレオシルに対する高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)イオン交換クロマトグラフィーにより行われた。そのサンプルは、パーソルブAC18を詰めたガードカラムと一緒に、ヌクレオシル5μMカラムに供された。そのサンプルは、溶媒A(氷酢酸でpH4に調整された10mM酢酸ナトリウム)と一緒にカラムに流されることによりカラムに捕集された。100%溶媒Aから100%溶媒B(10mM酢酸ナトリウムと1M塩化ナトリウム、pH4)の勾配溶出のため、1ml/分間の流速で30分間のタイムコース以上とした。
【0068】
二つの留分、分画1と分画2、が捕集された。分画1は、ピーク1〜11(サンプル注入後、2.3分と8.1分の間)以上で溶離した物質に相当し、分画2は、ピーク5で溶離した物質に相当した。捕集留分の脱塩は、P2バイオゲルカラムにサンプルをロードし、pH3.3の0.01M酢酸緩衝液で溶離することにより行われた。その溶離は、冷凍乾燥させ、水中で再けん濁させた後に行われた。
【0069】
脱塩した留分、分画1(F1)と分画2(F2)、で測定されたADP誘導した血小板凝集活性を、図4に示した。血小板凝集抑制活性は、ピーク15(図3)に相当する留分、分画2の一つに集中していることが分かった。その分画2は、分析前に冷凍乾燥された。冷凍乾燥サンプルは、20mg/mlの濃度を与えるために水中に再けん濁させ、活性分画(s)の構造解析のために保存した。
【0070】
活性分画中の活性成分は、以下に述べるように、マススペクトルと核磁気共鳴(NMR)を使って特定した。
【0071】
核磁気共鳴スペクトロスコピー
活性分画F2のサンプルの一部は、図6に示したHNMR分析とNMRスペクトルに供した。活性分画のスペクトルは、4−アミノ−1−B−D−リボフラノシル−2−(1H)−ピリミジノン(シチジン)(4-amino-1-B-D-ribofuranosyl-2-(1H)-pyrimidinone(cytidine)−図5を参照。)化合物の純粋なサンプルのスペクトルと比較された。それらは相当類似しているということができるが、活性分画が純粋なシチジン(cytidine)を含んでいないことは明らかである。サンプルF2についてのNMRデータは、リボーズ(ribose)の存在を示唆した。NMRデータ中の小さな相違は、異なったpHまたは異なった塩を示唆した。
【0072】
質量分光分析
脱塩された活性分画である分画2(F2)に対して、数々の質量分光分析的な手法を行った。様々な質量スペクトルから得られたデータは、試料F2が幾つかのヌクレオシド類を含有していることを示しており、その主要成分はシチジンであった。
【0073】
プローブ EIMS
試料F2(42480)の一部を、50℃/分で約550℃前後の温度勾配用いるプローブ電子衝撃イオン化質量分光分析(probe EIMS)により試験した。ブイジーオートスペックイー(VG AutoSpecE)質量分光器を使用し、約5秒/スキャンで、950amuから25amuまで走査(スキャニング)した。F2のプローブEIMSデータは、NISTライブラリであるシトシンのEI質量スペクトルとの比較により、ヌクレオチドの熱/EI−誘導断片化によって形成される4−アミノピリミジノン(シトシン)に対応すると思われるm/z111において、判定に資するイオンを示した。HClの存在も明確に証明され、塩化水素が示唆された。この試料には、エトキシオクチルフェノールの分岐オリゴマーが混在していると思われ、m/z45、135、267、311、355、382、399、426、443、470、及び487にイオンが認められた。
【0074】
MALDI−TOF
試料F2(42480)の一部、及び、シチジンを含む様々な標準品を水に溶解し、マトリックス(9:1 5−ヒドロキシピコリン酸/50mMクエン酸アンモニウム)と混合した。ピーイーバイオシステムズボイジャーエスティーアール(PE Biosystems Voyager−STR)質量分光器を使用した。マトリックスのブランクも分析した。試料F2のMALDI−TOF(マトリックス補助レーザー脱離/イオン化−飛行時間)スペクトル(図7)は、シチジン及びアラビノフラノシルシトシンのそれに非常に近似していた。3つの試料全てが、m/z244(MH+)、m/z266(MNa+)、m/z487(2MH+)及びm/z509(2MNa+)イオンを明確に示し、F2の主要成分がシチジン又はシチジンの異性体であることが示唆された。シクロシチジンは、m/z266(MH+)、m/z451(2MH+)及びm/z473(2MNa+)においてイオンが予想され又は示されたので、もっと小さい分子量を有していた。
【0075】
誘導化/GC−EIMS
試料F2(42480)の一部、及び、シチジンを含む様々な標準品を水に溶解し、内部標準(アラビトール)と混合した。得られた溶液とブランクを凍結乾燥し、無水酢酸/ピリジンを用いてN−アセチル化し、Tri−Sil−Zを用いてトリメチルシリル化した。得られた反応物をヘキサンに溶解し、分取(約1μl)し、ブイジートリオ−1(VG Trio−1)ベンチトップ質量分光器を用いるGC−EIMS(ガスクロマトグラフィー−電子衝撃イオン化質量分光分析)により分析した。試料は、コールドオンカラムインジェクターを通してDB−5毛細管GCカラムに注入した。誘導化された試料F2及び誘導化されたシチジン対照試料から得られたGC−EIMSのデータは、試料F2の主要成分が誘導化されたシチジンに非常に近似しているが、誘導化されたアラビノフラノシルシトシンとは微妙に異なっていることが示唆された。
【0076】
誘導化/GC−CIMS
試料F2(42480)の一部、及び、シチジン標準品を水に溶解し、凍結乾燥した。それらを上記と同じ方法で誘導化し、得られたヘキサン溶液を分取(約1μl)し、ピーイーターボマス(PE TurboMass)ベンチトップ質量分光器を用いるGC−CIMS(ガスクロマトグラフィー−化学的イオン化質量分光分析)により分析した。試料は、PSSインジェクターを通してDB−5MS毛細管GCカラムに注入した。誘導化された試料F2及び誘導化されたシチジンから得られたGC−CIMSのデータにより、試料F2のピークの一つがシチジンであることが確認された。CIスペクトルの試験は、m/z259及び348におけるイオンの存在も示したが、これはリボフラノシル単位と関連付けられる。
【0077】
実施例4
作動薬により又はアラキドン酸の添加後に誘起される血小板凝集に対するトマト誘導抽出物の活性評価
創傷後に引き続き、血小板が損傷した血管内皮に付着し、それによって、さらに血小板が相互に粘着、凝集、活性化、そして血栓を形成しやすくなることが知られている。血小板凝集は、創傷部位において生成されて血小板表面の受容体と反応する因子を介して媒介される。これらの因子の幾つか、例えば、ADP、セロトニン、トロンボキサンA2などは、それら自体が活性化された血小板によって放出され、正のフィードバックループを生じる。
【0078】
血小板の凝集及び活性化の最中において、ADPやコラーゲンのような少量のリガンド(配位子)が特定の受容体に結合する。これが膜ホスホリパーゼの活性化と、酵素ホスホリパーゼA2の活性による血小板膜ホスホリピッドからのアラキドン酸の放出を誘導する。一定割合のアラキドン酸は幾つかのサイクリックエンドパーオキシダーゼ(主要なものとしてはシクロ−オキシゲナーゼ及びリポキシゲナーゼがある)により急速にプロスタグランジンへと代謝され、最終的には酵素トロンボキサンシンテターゼを介してトロンボキサンA2となる。トロンボキサンA2は生物学的に高活性であり、細胞内カルシウムイオンの上昇と、血小板凝集をさらに促進する血小板顆粒の放出を媒介する。トロンボキサンA2は化学的に不安定であり、トロンボキサンB2に分解する。従って、トロンボキサンレベルの測定は、トロンボキサンB2の測定により行われる。
【0079】
半精製トマト抽出物の血小板凝集抑制活性を、作動薬であるADP又はコラーゲン存在下の或いは外因性アラキドン酸添加時の血小板によって生成されるトロンボキサンB2を測定することにより評価した。
【0080】
方法
半精製トマト抽出物は実施例2及び3に従って調製した。そして、50μlのピーク4(図2参照)に対応するゲル濾過分画又はHPLC−精製分画2(図3参照)を、50μlのPBS緩衝液に添加し、血小板リッチ血漿450μlと共に、37℃で15分間放置した。放置の後、作動薬を所望の濃度に添加した。その評価用混合物を遠心分離し、上澄み液中のトロンボキサンB2のレベルを測定した。若しくは、遠心分離した評価用試料を後日のトロンボキサンB2分析を行うために急速冷凍した。
結果
【0081】
【表2】

【0082】
表2は、ADP、コラーゲン及びアラキドン酸による血小板中のトロンボキサンB2生成に対する、ピーク4に対応するゲル濾過分画及びHPLC分画であるF2分画の効果を示している。結果は、半精製トマト抽出物の存在下でADP、コラーゲン又はアラキドン酸に反応して生成したトロンボキサンB2をナノグラム/mlで表している。
【0083】
ピーク4に対応するゲル濾過分画である分画4、及び、HPLC分画であるF2分画は、ADPで誘導されたトロンボキサンB2生成に対して同様の能力を有していた。同様に、分画2は対照試料と比較した時に、コラーゲンで誘導されたトロンボキサンB2生成を抑制した。分画2は一方において、アラキドン酸存在下でのトロンボキサンB2生成を抑制しなかった。
【0084】
結論
これらの実施例は、トマト果汁の抽出物の活性分画が、ADPにより誘導されるトロンボキサンBの産生を抑制するが、トロンボキサンBのアラキドン酸の代謝を止めないことを示す。結果は、血小板凝集抑制剤がこの変換を触媒しない酵素シクロオキシゲナーゼがこの転換を抑制しないように、アラキドン酸のトロンボキサンAへの転換を抑制しないことを示す。
【0085】
結論として、この実験の結果は、トマト抽出物の活性な抗血小板凝集成分の活性が、アスピリンのそれとは異なることを示す。
【0086】
実施例5
トマト中の活性成分のロケーション
4個のトマトが、以下のものを含む調製物を得るために、皮を剥かれ切断された。
【0087】
i)T1と称される、種の周囲の果汁
ii)T2と称される、トマト果肉のみ
iii)T3と称される、種を含む全トマト
調製物T1からT3の抽出物は、実施例1に記載されるようにして調製され、血小板凝集活性を誘導するADPがそれぞれ測定された。
【0088】
結果および結論
図9は、ヒト血小板におけるトマト調製物T1からT3の抗血小板凝集活性を示す。調製物T1およびT3は、血小板の凝集を誘導するADP剤と同様の潜在能を有した。さらに、T1およびT3において測定された血小板凝集活性は、T2と比較して大きく減少しており、これは抗血小板凝集成分がトマトの果汁および種により多い量で局在していることを示す。
【0089】
実施例6
生物学的利用能の研究
トマト抽出物中の活性血小板凝集抑制成分の生物学的利用能に対する予備的な研究は、4人のボランティアにおいて行われた。実施例1および2おいて記載されたようにして調製された100%トマト果汁300mlの投与量が、4人のボランティアのそれぞれに供給された。血小板凝集活性が、直前(時間0)および果汁が消費される1時間後(時間1)で、ボランティアから採取された静脈血液サンプルにおいて測定された。
【0090】
表3は、トマト果汁調製物の消費後1時間の、4人の個人それぞれから採取した血液試料中のADP誘導、およびコラーゲン誘導血小板凝集活性における減少率を示す。結果は、トマト果汁300mlを消費は、血小板の凝集を顕著に減少させるのに十分であることを示した。
【0091】
【表3】

【0092】
実施例7
トマト果汁の消費の累積的な影響の調査
実施例6にしたがって調製されたトマト果汁300mlが、2週間の期間、2人の個人に毎日供給された。血小板凝集活性の測定は、0日と比較して血小板凝集を約12%抑制し、活性が残らない、すなわち身体に蓄積されないことが明らかとなった。
【0093】
製剤
実施例8
果物抽出物を含むカプセル
カプセル剤は、果物抽出物(例えば、実施例2および/または3に記載されたトマト抽出物)のフリーズドライされ、カプセル当たり800mgのカプセル成分とするために、硬質ゼラチンカプセルシェル内に得られたフリーズドライ粉末を充填することにより調製された。
【0094】
実施例9
希釈された果物抽出物を含むカプセル
実施例2もしくは実施例3の活性分画の水溶液に、ショ糖、乳糖およびソルビトールから選択される希釈剤が添加された。そして、溶液は、カプセル当たり800mgのカプセル成分(200mgのトマト抽出物および600gの希釈剤)とするために硬質ゼラチンカプセルシェル内に充填させる粉を得るためにフリーズドライされた。
【0095】
実施例9
乾燥果物抽出物を含む噛みごたえのある果物バー
フリーズドライされたトマト抽出物とオート麦粉末とを組合せ、ミキサー中で他の成分と共に混合され、圧縮されて棒状にされ、ベーキングされることにより噛みごたえのあるフードバーが調製される。
【0096】
【表4】

【0097】
本発明は、特定の実施例により説明されたが、多くの修正物および置換物がここに添付されたクレームの範囲から離れずに形成されることは、容易に認識されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板の凝集により起こる、血小板の凝集を特徴とする病気状態の予防もしくは処置に用いられる果物抽出物もしくはその活性分画。
【請求項2】
血小板凝集抑制剤として用いられる果物抽出物もしくはその活性分画。
【請求項3】
抗血栓剤として用いられる果物抽出物もしくはその活性分画。
【請求項4】
前記果物が、ソルナセアエ(Solnaceae)、ルタセアエ(Rutaceae)ククルビタセアエ(Cucubitaceae)、ロサセアエ(Rosaceae)、ムサセアエ(Musaceae)、アナカルディセアエ(Anacardiaceae)、ブロメリアセアエ(Bromeliaceae)、ビタセアエ(Vitaceae)、エイレカセアエ(Arecaceae)、エリカセアエ(Ericaceae)、およびラウラセアエ(Lauraceae)の科の植物の果物から選択されるものである請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の果物抽出物。
【請求項5】
前記果物が、トマト、グレープフルーツ、メロン、マンゴ、パイナップル、ネクタリン、イチゴ、プラム、バナナ、クランベリー、グレープ、セイヨウナシ、リンゴ、およびアボガドから選択される請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の果物抽出物。
【請求項6】
前記果物が、トマトである請求項5にしたがって用いられる果物抽出物もしくはその活性分画。
【請求項7】
前記果物が、グレープフルーツである請求項5にしたがって用いられる果物抽出物もしくはその活性分画。
【請求項8】
前記果物が、メロンである請求項1から請求項3までのいずれかの請求項にしたがって用いられる果物抽出物もしくはその活性分画。
【請求項9】
前記果物が、イチゴである請求項1から請求項3までのいずれかの請求項にしたがって用いられる果物抽出物もしくはその活性分画。
【請求項10】
水抽出物である先行する請求項の内のいずれかの請求項に記載の抽出物。
【請求項11】
果物の果汁から本質的に構成される請求項10記載の抽出物。
【請求項12】
皮を剥かれた果物の果肉から導かれる先行する請求項の内のいずれかの請求項に記載の抽出物。
【請求項13】
乾燥抽出物を形成するために脱水された請求項9または請求項10に記載の抽出物。
【請求項14】
先行する請求項の内のいずれかの請求項に定義された果物、またはそれらの抽出物もしくは活性分画から導かれる活性成分と、医薬的に許容されるキャリアーとを有する医薬組成物。
【請求項15】
錠剤、カプセル、粉体、および粒体から選択される請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
血小板凝集により生じる、血小板凝集が介在する、もしくは血小板凝集を特徴とする状態もしくは病的症状の予防もしくは処置において用いられる医薬の製造のための、請求項1から請求項13までのいずれかの請求項に定義される果物、またはそれらの抽出物もしくは活性分画の使用。
【請求項17】
血小板凝集防止剤として用いられる医薬の製造のための、請求項1から請求項12までのいずれかの請求項に定義される果物、またはそれらの抽出物もしくは活性分画の使用。
【請求項18】
抗血栓剤として用いられる医薬の製造のための、請求項1から請求項13までのいずれかの請求項に定義される果物、またはそれらの抽出物もしくは活性分画の使用。
【請求項19】
前記病気状態が、血小板の活動過剰に関連する、心筋硬塞、卒中、心臓血管の病気および病気状態から選択されるものである請求項15記載の使用。
【請求項20】
血小板凝集により生じる、血小板凝集が介在する、もしくは血小板凝集を特徴とする状態もしくは病的症状の予防もしくは処置に用いられる医薬の製造方法であって、前記医薬の必須成分として、請求項1から請求項13までのいずれかの請求項に定義される果物、またはそれらの抽出物もしくは活性分画を用いることを特徴とする方法。
【請求項21】
血小板凝集防止剤として用いられる医薬の製造方法であって、前記医薬の必須成分として、請求項1から請求項13までのいずれかの請求項に定義される果物、またはそれらの抽出物もしくは活性分画を用いることを特徴とする方法。
【請求項22】
抗血栓剤として用いられる医薬の製造方法であって、前記医薬の必須成分として、請求項1から請求項13までのいずれかの請求項に定義される果物、またはそれらの抽出物もしくは活性分画を用いることを特徴とする方法。
【請求項23】
先行する請求項のいずれかに定義される抽出物の調製方法であって、果物(例えば、剥かれた果物)の果肉を均質化し、必要に応じて水もしくは緩衝水溶液を添加し、そして固形分を除去するために遠心分離する調製方法。
【請求項24】
血小板凝集により生じる、血小板凝集が介在する、もしくは血小板凝集を特徴とする状態もしくは病的症状の予防もしくは処置のための方法であって、請求項1から請求項13までのいずれかの請求項に定義される果物、またはそれらの抽出物もしくは活性分画を、有効でそして好ましくは無毒な量を、それらの必要において患者(ヒトもしくは哺乳類のような)に投与することを含む方法。
【請求項25】
先行する請求項のいずれかにより定義され、抗血栓剤として用いられる、血小板凝集防止剤として用いられる、または血小板凝集により生じる、もしくは血小板凝集を特徴とする状態もしくは病的症状の予防もしくは処置に用いられる果物抽出物の活性分画であって、前記活性分画が、1000より少ない分子量を有し、実質的に熱に安定で、無色で水溶性の化合物を含む活性分画。
【請求項26】
トマトの抽出物の活性分画であって、前記活性分画が、1000より少ない分子量を有し、実質的に熱に安定で、無色で水溶性の化合物を含む活性分画。
【請求項27】
トマトから単離された活性分画自体であって、
(a)実質的に熱に安定であり、
(b)無色もしくはワラ色であり、
(c)水溶性の化合物であり、
(d)1000より少ない分子量を有する化合物からなり、
(e)血小板凝集抑制活性を有する1もしくはそれ以上のヌクレオシドを含み、そして好ましくは、
(f)MALDI−TOF質量分析に供された際に、添付される図7に示すような質量スペクトルを有し、そして好ましくは、
(g)添付される図6に実質的に示すような、H核磁気共鳴スペクトルを示す、
活性分画。
【請求項28】
少なくとも2倍濃縮、もしくは少なくとも4倍濃縮、もしくは少なくとも8倍、もしくは少なくとも40倍、もしくは少なくとも100倍、もしくは少なくとも200倍、もしくは少なくとも1000倍濃縮である、請求項1から請求項12までのいずれかの請求項に記載の水溶性抽出物。
【請求項29】
カプセルシェル内に収納された乾燥形態における、請求項1から請求項13までのいずれかの請求項に定義される抽出物を有するカプセル製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−36195(P2012−36195A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200583(P2011−200583)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【分割の表示】特願2000−545548(P2000−545548)の分割
【原出願日】平成11年4月23日(1999.4.23)
【出願人】(502279939)プロヴェクシス ナチュラル プロダクツ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】