説明

水の浄化方法及び水の浄化装置

【課題】イニシャルコスト、及びランニングコストがともに安価であり、安定したアンモニア性窒素除去能力を発揮できる水の浄化方法及び水の浄化装置の提供。
【解決手段】アンモニア性窒素を含有し、全有機炭素(TOC)濃度が15mg/L以下である処理対象水を、植物系資材を濾材として含む濾床と接触させて該処理対象水のアンモニア性窒素濃度を低減させる浄化工程を少なくとも含むことを特徴とする水の浄化方法、及びアンモニア性窒素を含有し、全有機炭素(TOC)濃度が15mg/L以下である処理対象水を、植物系資材を濾材として含む濾床と接触させて該処理対象水のアンモニア性窒素濃度を低減させる浄化手段を少なくとも有する水の浄化装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イニシャルコスト、及びランニングコストがともに安価であり、安定したアンモニア性窒素除去能力を発揮できる水の浄化方法及び水の浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川及び海洋の汚染を防止するため、都市排水及び工場排水などの処理が重要となっている。また、排水中の窒素濃度規制も強化されており、毒性の高いアンモニア性窒素の処理も重要な項目である。
このようなアンモニアの除去方法としては、(1)排水中のアンモニアを蒸散させ、触媒反応により分解させる方法を用いたアンモニアストリッピング法、(2)生物学的硝化を利用した活性汚泥法による方法が一般的である。前記(1)のアンモニアストリッピング法は高濃度の処理対象水の処理に用いられ、前記(2)の活性汚泥法は比較的低濃度の処理対象水の処理に使用されている。
しかし、前記(1)のアンモニアストリッピング法は、蒸発エネルギー及び触媒にかかるランニングコストが高くなる。前記(2)の活性汚泥法は、高溶存酸素条件(好気)維持のためエアレーションが必須となり、ランニングコストがかかる。更に、いずれの方法もプラント型の施設であり、イニシャルコストが高いという問題がある。
【0003】
また、特許文献1では、水路排水設備中に植物の光合成による酸素供給を利用して生物学的硝化を行う方法が提案されている。
前記特許文献1に記載の方法では、水路処理なのでイニシャルコストが小さく、光合成を利用するのでランニングコストも低いが、日照時限定であり、夜間には逆に処理対象水中の溶存酸素が欠乏しやすくなるため、能力的にも安定的な効果が得られにくいという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−46768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、イニシャルコスト、及びランニングコストがともに安価であり、安定したアンモニア性窒素除去能力を発揮できる水の浄化方法及び水の浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> アンモニア性窒素を含有し、全有機炭素(TOC)濃度が15mg/L以下である処理対象水を、植物系資材を濾材として含む濾床と接触させて該処理対象水中のアンモニア性窒素濃度を低減させる浄化工程を少なくとも含むことを特徴とする水の浄化方法である。
<2> 濾床が、複数の濾床ユニットが水平方向にマトリックス状に配列され、かつ垂直方向に多層に積層されてなる前記<1>に記載の水の浄化方法である。
<3> 濾床の最上部から処理対象水を給水して該濾床の下部から排出させることにより該処理対象水を浄化する前記<1>から<2>のいずれかに記載の水の浄化方法である。
<4> 下部から排出された水の少なくとも一部を濾床の最上部から供給して循環させる前記<3>に記載の水の浄化方法である。
<5> 処理対象水を濾床と接触させる前に、処理対象水中の全有機炭素(TOC)濃度を低減させる全有機炭素濃度低減工程を含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の水の浄化方法である。
<6> アンモニア性窒素を含有し、全有機炭素(TOC)濃度が15mg/L以下である処理対象水を、植物系資材を濾材として含む濾床と接触させて該処理対象水中のアンモニア性窒素濃度を低減させる浄化手段を少なくとも有することを特徴とする水の浄化装置である。
<7> 処理対象水を濾床と接触させる前に、処理対象水中の全有機炭素(TOC)濃度を低減させる全有機炭素濃度低減手段を有する前記<6>に記載の水の浄化装置である。
【0007】
本発明の水の浄化方法は、アンモニア性窒素を含有し、全有機炭素(TOC)濃度が15mg/L以下である処理対象水を、植物系資材を濾材として含む濾床と接触させて該処理対象水のアンモニア性窒素濃度を低減させる浄化工程を少なくとも含む。
本発明の水の浄化装置は、アンモニア性窒素を含有し、全有機炭素(TOC)濃度が15mg/L以下である処理対象水を、植物系資材を濾材として含む濾床と接触させて該処理対象水のアンモニア性窒素濃度を低減させる浄化手段を少なくとも有する。
本発明の水の浄化方法及び水の浄化装置においては、安価かつ手に入りやすい植物系資材を濾材として含む濾床に処理対象水を接触させることで、濾材表面に硝化菌が付着固定され、生物学的硝化によりアンモニア性窒素を分解でき、単位面積あたりのアンモニア性窒素除去能力を向上させるため、植物系資材を大気接触できる程度の密度で積層させて、その積層する高さを高く配置することで、効率よくアンモニア性窒素を除去することができる。
また、本発明の水の浄化方法及び水の浄化装置は、処理対象水中のTOC濃度が低い場合にはそのまま使用することができ、処理対象水中のTOC濃度が高い場合には、従属栄養細菌が優勢となるため、前処理として全有機炭素濃度低減手段により処理対象水中のTOC濃度を低減させた後、浄化処理を行うことにより効率的にアンモニア性窒素の除去が可能となる。前記処理対象水のTOC濃度は15mg/L以下であることが好ましく、10mg/L以下であることが更に好ましい。処理対象水のTOC濃度が15mg/Lを超える場合には、アンモニア性窒素濃度を低減する浄化工程の前に、全有機炭素濃度低減工程を経て、TOC濃度を15mg/L以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、イニシャルコスト、及びランニングコストがともに安価であり、安定したアンモニア性窒素除去能力を発揮できる水の浄化方法及び水の浄化装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(水の浄化方法及び水の浄化装置)
本発明の水の浄化方法は、少なくとも浄化工程を含み、全有機炭素濃度低減工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
本発明の水の浄化装置は、少なくとも浄化手段を有し、全有機炭素濃度低減手段、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
本発明の水の浄化方法は、本発明の水の浄化装置により好適に実施することができ、前記浄化工程は前記浄化手段により行うことができ、前記全有機炭素濃度低減工程は前記全有機炭素濃度低減手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0010】
<浄化工程及び浄化手段>
前記浄化工程は、アンモニア性窒素を含有し、全有機炭素(TOC)が15mg/L以下である処理対象水を、植物系資材を濾材として含む濾床と接触させて該処理対象水中のアンモニア性窒素濃度を低減させる工程であり、浄化手段により好適に行われる。
【0011】
−処理対象水−
前記処理対象水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば工場排水、畜産排水等の各種産業排水;下水等の生活排水;河川等を流れる汚濁水、湖沼等の汚濁水、汚染された地下水、汚濁した汽水、汚濁した海水、などが挙げられる。
前記処理対象水は、通常何らかの有機物を含むが、処理対象水中のアンモニア性窒素濃度の低減効果を向上させる観点から、前記処理対象水の全有機炭素(TOC)濃度が15mg/L以下であることが好ましく、10mg/L以下であることがより好ましい。前記処理対象水のTOC濃度が15mg/Lを超える場合には、アンモニア性窒素濃度を低減する浄化工程の前に、全有機炭素(TOC)濃度低減工程を経て、TOC濃度を15mg/L以下とすることが好ましい。
前記全有機炭素(TOC)濃度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、燃焼触媒酸化−CO検出(NDIR)、などが挙げられる。また、前記全有機炭素(TOC)濃度の測定には、市販品を使用してもよく、該市販品としては、例えば株式会社島津製作所製のTOC−VSCHなどが挙げられる。
【0012】
なお、前記処理対象水の水温は低くても、完全に凍結せず、処理対象水が濾床中を流れる限り、硝化能力は発揮できるが、水温が高い方が、硝化能力が高くなる傾向がある。冬期でも高い硝化能力を期待する場合には、可能であれば処理水の加熱もしくは温室での実施が好ましい。
【0013】
−濾床−
前記濾床としては、植物系資材を濾材として含むものであれば、その大きさ、高さ、形状などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記濾床の大きさについては、処理対象水の処理量及びアンモニア性窒素濃度により、大きさを設定することができる。前記濾床の高さについては、作業性を考慮すると50cm〜2m程度に設定することが好ましい。
前記濾床としては、一体ものにすることも可能であるが、1つ1つの濾床ユニット(植物系資材を含む濾材)を小さくして、該濾床ユニットを水平方向にマトリックス状に配列し、かつ垂直方向に多層に積層させたものを用いることで、取扱が容易となり、例えば最上段で目詰まりが発生した場合でも、その部分のみ交換することができ、メンテナンス性に優れる。
また、前記濾床ユニットを水平方向にマトリックス状に配列し、かつ垂直方向に多層に積層させることにより、前記処理対象水との接触面積が増加し、より水の浄化効率が高まる点で、好ましい。更に前記処理対象水中の溶存酸素量を容易に増加させることができ、有機物分解に有利な好気条件を形成しやすい点で、好ましい。
なお、前記濾床としては、植物系資材を入れた籠や網(濾床ユニット)を重ねることにより、多段に配置したものを用いることもできる。前記「多段に配置」とは、特に制限はなく、例えば、前記植物系資材が、重力に対して、上下方向に積み重なって配置されていてもよいし、水平方向に並べて配置されていてもよいし、その両方であってもよい。
【0014】
−植物系資材−
前記植物系資材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、木質資材、繊維質資材、加工資材などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記木質資材としては、例えば、木片、剪定枝、樹皮、根株、廃材、及びこれらを破砕したチップ、オガクズ、鉋屑などが挙げられる。
前記繊維質資材としては、例えば、ヨシ、稲藁、籾殻などが挙げられる。
前記加工資材としては、例えば、割り箸、古畳、などが挙げられる。
これらの中でも、硝化菌が付着しやすい点から、オガクズ、籾殻が特に好ましい。
【0015】
前記植物系資材の使用量としては、特に制限はなく、前記処理対象水の水質や量、所望の浄化程度等に応じて、適宜選択することができる。
前記植物系資材の形状及びサイズとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記植物系資材としては、本発明の目的のために新たに準備したものであってもよいし、他の用途において使用済みの廃材であってもよい。前記植物系資材としては、前記使用済みの廃材を使用することが、環境性、及びコスト性の点で、好ましい。
【0016】
前記植物系資材は、容器に入れて使用することが好ましい。
前記容器として、例えば、籠や網を使用すれば、前記植物系資材と前記処理対象水との接触を保ったまま、水の移動等による前記植物系資材の移動、分散を防ぐことができる。
前記容器として籠や網を使用する際、部分的に前記植物系資材と前記処理対象水との接触を防ぎ、所望の水の流れを確保する等の目的から、例えば、更にビニール、プラスチックなどを使用してもよい。
【0017】
<全有機炭素(TOC)濃度低減工程及び全有機炭素(TOC)濃度低減手段>
前記全有機炭素(TOC)濃度低減工程は、処理対象水を濾床と接触させる前に、処理対象水中の全有機炭素(TOC)濃度を低減させる工程であり、全有機炭素(TOC)濃度低減手段により好適に行うことができる。
【0018】
前記処理対象水の全有機炭素(TOC)濃度が高い場合には、硝化菌に比べ、増殖速度の大きい従属栄養細菌の繁殖が優勢となり、硝化菌の密度が低くなる傾向がある。このため、十分な硝化能力が発揮できず、硝化能力が低下する傾向がある。また、前記従属栄養細菌が優先的に有機物分解して処理対象水中の溶存酸素を消費するため、好気状態を維持できず、硝化菌の活動が、硝化菌が消費できる処理対象水中の溶存酸素が減少することにより、阻害され、硝化能力が低下する傾向がある。前記硝化能力低下を防ぐことは、予め全有機炭素(TOC)濃度低減工程により処理対象水中のTOC濃度を低い状態に保つことで硝化菌が優勢に繁殖でき、従属栄養細菌が有機物分解時に処理対象水中の酸素消費量も少なくなり、好気性も維持しやすく、安定したアンモニア除去能力を得ることが可能である。
【0019】
前記全有機炭素(TOC)濃度低減手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば散水濾床による処理、など挙げられる。前記処理対象水中のTOC濃度が一定以上の場合、散水により処理対象水の溶存酸素濃度を一定以上にすることにより、従属栄養細菌が散水濾床中に繁殖し、従属栄養細菌の活動により処理対象水中の有機物が消費される。前記散水濾床については、生物膜の生成による目詰まりが想定されるため、濾材はメッシュの荒い濾材を使用することが好ましい。また、植物系資材を使用する場合には、粗朶、剪定枝などで十分である。処理対象水中のTOC濃度を低減する処理後に、硝化を目的とした本発明の水の浄化装置で処理対象水を処理することにより、本発明の水の浄化装置の硝化能力を十分発揮させることができる。
【0020】
<浄化>
本発明において、前記「浄化」とは、処理対象水中のアンモニア性窒素濃度が処理前と比べて、処理後に低減されることを意味する。
水が浄化されたかどうかは、処理前の水(処理対象水)と処理後の水(処理水)におけるアンモニア性窒素濃度をそれぞれ測定し、比較することによって、判断することができる。
前記アンモニア性窒素の濃度は、例えばイオン電極法を利用した計測器(株式会社堀場製作所製、D−53及び5002A)などで測定することができる。
【0021】
前記浄化の方法としては、前記処理対象水を、前記植物系資材を濾材として含む濾床と接触させることができる方法であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記濾床に対して前記処理対象水を供給する方法、(2)前記濾床を前記処理対象水上に浮かべる方法、などが挙げられる。
前記(1)濾床に対する前記処理対象水の供給方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(i)前記濾床に対して、前記処理対象水を、シャワー等を用いて液滴の状態で供給(散水)する方法、(ii)滝のような状態で一度に大量に供給する方法、(iii)ホース、配管、水路等を用いて所望の量で所望の位置に供給する方法、などが挙げられる。
前記濾床に対する前記処理対象水の供給方向については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重力に対し、濾床の最上部から供給して該濾床の下部から排出させてもよく、濾床の最上部及び下部の両方から供給してもよいし、また、濾床の水平方向から供給してもよい。
これらの中でも、前記濾床の最上部から処理対象水を給水して該濾床の下部から排出させて該処理対象水を浄化することが硝化に必要な高い溶存酸素濃度をエアレーション等を実施せずに実現できる点から好ましく、下部から排出された水の少なくとも一部を濾床の最上部から供給して、循環させることがより好ましい。
また、前記濾床に対する前記処理対象水の供給速度にも、特に制限はなく、前記濾床の種類や量、前記処理対象水の水質や量、所望の浄化程度等に応じて、適宜選択することができる。
【0022】
より具体的には、前記水の浄化方法としては、前記濾床ユニットを水平方向にマトリックス状に配列し、かつ垂直方向に多層に積層させ、そこに処理対象水を上から散水する方法(散水濾床法);水より重い木片等の前記植物系資材を使用するか、又は重りを使用して前記植物系資材を水中に置き、水中に散気して浄化する方法(沈水濾床浄水方法);必要に応じて浮きなどを使用し、前記植物系資材が水や空気の動きによって動くような状態で、水に浮かべる方法(流動床浄水方法);などが挙げられる。これらの中でも、簡便性の点では、前記散水濾床法が好ましい。
【0023】
本発明の水の浄化装置は、前記処理対象水を浄化する浄化手段を有してなり、全有機炭素(TOC)濃度低減手段、更に必要に応じて、その他の手段を有してなる。
前記浄化手段としては、上述した植物系資材を濾材として含む濾床を備えている。前記濾床としては、濾床ユニットをマトリックス状に配列し、多層に積層させたものが、取扱が容易となり、例えば最上段で目詰まりが発生した場合でも、その部分のみ交換することができ、メンテナンス性に優れているので好ましい。
前記全有機炭素(TOC)濃度低減手段としては、上述したとおりである。
【0024】
ここで、図面を参照して本発明の水浄化装置及び水の浄化方法について説明する。図1は水の浄化装置を上から見た図、図2は、水の浄化装置を水平方向から見た図、図3は水の浄化装置の立体図である。
濾床1の大きさについては、特に制限はなく、処理対象水の処理量及びアンモニア性窒素濃度により、大きさを設定することができる。濾床1の高さについては、作業性を考慮すると50cm〜2m程度に設定することが好ましい。また、濾床1は、一体ものにすることも可能であるが、図1〜図3に示すように1つ1つの濾床ユニットを小さくして、該濾床ユニットをマトリックス状に配列し、多層に積層させたものが用いられている。
前記濾床に入れる濾材としては、通常は廃棄される粗朶や剪定枝、オガクズ、籾殻等の植物系濾材が挙げられる。
【0025】
処理対象水は、濾床1上に散水等により給水される。給水方法としては,濾床1の最上段が処理対象水面より高い場合には、散水ポンプ4を利用して揚水し、給水配管5を経由して、濾床1上に給水する。給水は濾床1上全面に均等に散水することが好ましい。散水手段としては、シャワー状にしてもよいし、雨樋や竹を半分に割ったものに穴を開けたり、切れ目を入れて、通水させ散水してもよい。濾床1の最上面が処理対象水面より低くなるようにすれば、ポンプ等を使用せずに給水することが可能になる。濾床上から給水された処理対象水は、濾床1の下部に向かって流れ、濾床中で、アンモニア性窒素が分解され、濾床1の下部から、濾床外に流れる。濾床1の下部から流れ出た水は排水水路3に流入する。排水水路の形状は濾床下部から流れ出る濾床で処理した水を通水できるのであればどのような構造でもよい。
また、図4に示すように、給水側は散水ポンプ4にて、濾床前半部7全面に散水できるように設定し、循環散水用として出口側にも散水ポンプ6を設置し、濾床後半部8全面に散水することもできる。
また、図示を省略しているが、給水水路の散水ポンプ以外に排水水路にも散水ポンプを配置して、濾床の下部から排出された水の少なくとも一部を濾床の最上部から供給して循環させるように構成することもできる。
なお、前記濾床及び散水手段をフロート上に配置すれば、池、湖、貯液プール等の水面上で浮かべたまま処理が可能であり、適用用途が広がる。
【0026】
本発明によれば、処理対象水は、曝気等の機械的なエアレーションを行わなくても、大気との接触により、硝化に必要な高い溶存酸素濃度を保つことが可能であり、小さなランニングコストで安定した硝化能力を維持できる。また、濾材を積層する高さを高くすることにより、単位面積あたりの処理対象水と硝化菌との接触機会増加が期待でき、単位面積あたりの被処理中アンモニア性窒素除去能力を増加させることが可能となる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
下記実施例及び比較例において、N−NH濃度、及びTOC(Total Organic Carbon;全有機炭素)濃度は、以下のようにして測定した。
【0028】
<N−NH濃度の測定>
N−NH濃度の測定は、イオン電極法を利用した計測器(株式会社堀場製作所製、D−53及び5002A)を用いて行った。
【0029】
<TOC(全有機炭素)濃度の測定>
TOC濃度の測定は、TOC濃度測定器(株式会社島津製作所製、TOC−VSCH)を用いて測定した。
【0030】
(実施例1)
幅2.5m×長さ10m×高さ0.2mの水路中に、幅40cm×奥行き60cm×高さ22.5cmの植栽籠中に粗朶を敷き詰め、その上にオガクズ、籾殻で覆い、濾材とした濾床を幅側6個×奥行き側15個×高さ5段とした。なお、最下段には濾材は入れず、植栽籠のみとした(浄化手段)。
処理対象水の給水側は散水ポンプにて行い、シャワー状に濾床前半部全面に掛かるように設定した。更に、循環散水用として出口側にも散水ポンプを設置し、濾床後半部全面に散水できるように設定した。処理対象水の給水量は5m/hrになるように流した(浄化処理)。
その結果、給水側で7.4mg/LであったTOC濃度が、出口側で3.5mg/Lとなり、給水側で12.5mg/LであったN−NH濃度は、出口側で4.3mg/L(減8.2mg/L)となった。
【0031】
(実施例2)
処理対象水の全有機炭素濃度低減処理として、幅40cm×奥行き60cm×高さ22.5cmの植栽籠中に粗朶を濾材として詰め込み、幅側6個×奥行き側2個×高さ5段の予備濾床(全有機炭素濃度低減手段)を作製した。
処理対象水を予備濾床の上部からポンプで散水を行い、予備濾床の下部から流れ出た処理済の水を回収した。この予備濾床による全有機炭素濃度低減処理により、全有機炭素濃度低減処理の給水側で処理対象水のTOC濃度が13.5mg/Lであったものが、4.7mg/L(減8.8mg/L)となった。
次に、全有機炭素濃度低減処理後の処理対象水を、実施例1と同じ設備及び同条件で浄化処理を実施した。
その結果、給水側で4.7mg/LであったTOC濃度が、出口側で2.2mg/Lとなり、給水側で22.2mg/LであったN−NH濃度は、出口側で10.5mg/L(減11.7mg/L)となった。
【0032】
(比較例1)
給水側でのTOC濃度が17.5mg/L、N−NH濃度が15.2mg/Lの処理対象水を実施例1と同設備、及び同条件で浄化処理を行ったところ、出口側でTOC濃度は7.8mg/L(減9.7mg/L)となったのに対し、N−NH濃度は13.7mg/L(減1.5mg/L)であった。
この比較例1では、処理対象水のTOC濃度が高いにも拘らず全有機炭素濃度低減処理を行わなかったため、浄化手段の硝化能力が低下し、実施例1及び2に比べて、アンモニア性窒素の削減効果が小さかった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の水の浄化方法及び水の浄化装置は、イニシャルコスト、及びランニングコストがともに安価であり、安定したアンモニア性窒素除去能力を発揮できるので、例えば河川、湖沼、汽水、海水等の汚濁水の浄化、汚染された地下水等の浄化、下水等の生活排水の処理、工場排水、畜産排水等の各種産業排水の処理など、様々な場面での水の浄化に好適に利用可能であり、生活に必要不可欠である水環境の改善に、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る水の浄化装置の上面図である。
【図2】図2は、図1の水の浄化装置の側面図である。
【図3】図3は、図1及び図2の水の浄化装置の立体図である。
【図4】図4は、本発明の他の一実施形態に係る水の浄化装置の平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 濾床
2 給水水路
3 排水水路
4 散水ポンプ
5 散水配管
6 散水ポンプ
7 濾床前半部
8 濾床後半部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア性窒素を含有し、全有機炭素(TOC)濃度が15mg/L以下である処理対象水を、植物系資材を濾材として含む濾床と接触させて該処理対象水中のアンモニア性窒素濃度を低減させる浄化工程を少なくとも含むことを特徴とする水の浄化方法。
【請求項2】
濾床が、複数の濾床ユニットが水平方向にマトリックス状に配列され、かつ垂直方向に多層に積層されてなる請求項1に記載の水の浄化方法。
【請求項3】
濾床の最上部から処理対象水を給水して該濾床の下部から排出させることにより該処理対象水を浄化する請求項1から2のいずれかに記載の水の浄化方法。
【請求項4】
下部から排出された水の少なくとも一部を濾床の最上部から供給して循環させる請求項3に記載の水の浄化方法。
【請求項5】
処理対象水を濾床と接触させる前に、処理対象水中の全有機炭素(TOC)濃度を低減させる全有機炭素濃度低減工程を含む請求項1から4のいずれかに記載の水の浄化方法。
【請求項6】
アンモニア性窒素を含有し、全有機炭素(TOC)濃度が15mg/L以下である処理対象水を、植物系資材を濾材として含む濾床と接触させて該処理対象水中のアンモニア性窒素濃度を低減させる浄化手段を少なくとも有することを特徴とする水の浄化装置。
【請求項7】
処理対象水を濾床と接触させる前に、処理対象水中の全有機炭素(TOC)濃度を低減させる全有機炭素濃度低減手段を有する請求項6に記載の水の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−56440(P2009−56440A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228036(P2007−228036)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【出願人】(591203082)DOWAハイテック株式会社 (9)
【Fターム(参考)】