発光試料撮像方法および発光細胞撮像方法
【課題】発光量の少ない発光試料でも、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズを提供すること。
【解決手段】鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズを提供することを課題とする。本発明の発光試料撮像方法では、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズ2と、集光レンズ3と、0℃程度の冷却CCDカメラ4と、モニタ5と、を用いて、発光試料であるサンプル1を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像する。
【解決手段】鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズを提供することを課題とする。本発明の発光試料撮像方法では、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズ2と、集光レンズ3と、0℃程度の冷却CCDカメラ4と、モニタ5と、を用いて、発光試料であるサンプル1を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光試料を撮像する発光試料撮像方法および当該発光試料撮像方法で用いる対物レンズに関するものである。また、本発明は、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像する発光細胞撮像方法および当該発光細胞撮像方法で用いる対物レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、発光試料の観察においては、発光試料からの発光量の測定が行われていた。例えば、ルシフェラーゼ遺伝子が導入された細胞の観察では、ルシフェラーゼ遺伝子の発現の強さ(具体的には発現量)を調べるために、ルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光量の測定が行われていた。そして、ルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光量の測定は、まず細胞を溶解した細胞溶解液とルシフェリンやATPやマグネシウムなどを含む基質溶液とを反応させ、ついで基質溶液と反応させた細胞溶解液からの発光量を光電子増倍管を用いたルミノメーターで定量する、という手順で行われていた。つまり、発光量は細胞を溶解した後に測定されていた。これにより、ある時点でのルシフェラーゼ遺伝子の発現量を細胞全体の平均値として測定することができた。ここで、ルシフェラーゼ遺伝子などの発光遺伝子をレポーター遺伝子として細胞に導入する方法には例えばリン酸カルシウム法やリポフェクチン法やエレクトロポーション法などがあり、各方法は目的や細胞の種類の違いに応じて使い分けられている。また、ルシフェラーゼ遺伝子がレポーター遺伝子として導入された細胞においてルシフェラーゼ遺伝子の発現の強さをルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光量を指標として調べる際、細胞に導入するルシフェラーゼ遺伝子の上流や下流に目的のDNA断片を繋ぐことで当該DNA断片がルシフェラーゼ遺伝子の転写に及ぼす影響を調べることができ、また、細胞に導入するルシフェラーゼ遺伝子の転写に影響を及ぼすと思われる転写因子などの遺伝子を発現ベクターに繋いでルシフェラーゼ遺伝子と共発現させることで当該遺伝子の遺伝子産物がルシフェラーゼ遺伝子の発現に及ぼす影響を調べることができる。
【0003】
また、時間経過に沿って発光遺伝子の発現量を捉えるには生きた細胞からの発光量を経時的に測定する必要がある。そして、生きた細胞からの発光量の経時的測定は、まず細胞を培養するインキュベーターに分光測定計としてのルミノメーターの機能を付け、ついで培養している全細胞集団からの発光量をルミノメーターで一定時間ごとに測定する、という手順で行われていた。これにより、一定の周期性をもった発現リズムなどを測定することができ、よって、細胞全体における発光遺伝子の発現量の経時的な変化を捉えることができた。一方、発光遺伝子の発現が一過性である場合には、個々の細胞での発現量に大きなばらつきがある。例えば、HeLa細胞などのクローン化した培養細胞であっても、細胞膜表面のレセプターを介した薬剤の応答が個々の細胞でばらつくことがある。さらに、分光測定法は、迅速であるが、容器内の細胞数が多いほど光強度が高まるので、発現量と細胞数を区別するのが難しい。従って分光測定法による発現量は定量性に欠ける。すなわち、細胞全体としての応答は検出されなくとも数個の細胞は応答している場合がある。このことから、発光遺伝子の発現が一過性である場合には、細胞全体からではなく個々の細胞から発光量を経時的に測定することが重要である。そして、顕微鏡を用いた生きた個々の細胞からの発光量の経時的測定は、各細胞の発光が極めて弱いので、液体窒素温度レベルの冷却CCDカメラで長時間露光したり、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラとフォトンカウンティング装置とを用いたりして行われていた。これにより、生きた個々の細胞における発光遺伝子の発現量の経時的な変化を捉えることができた。
【0004】
ところで、最近、生物学分野や医学分野の研究において、生きた試料を対象とした画像による動的変化の経時的観察の必要性が高まってきている。具体的には、発光や蛍光観察を利用する研究分野では、試料内のタンパク質分子の動的な機能発現を捉えるためにタイムラプスや動画撮像が求められている。現状では、蛍光試料を対象として撮像した画像による動的変化の観察(例えば、蛍光を利用したタンパク質1分子の動画観察)が行われている。蛍光試料の撮像の場合、励起光を照射し続けることで蛍光試料から発せられる光量が時間の経過とともに減少するという性質があるため、定量的な評価に利用できる安定した画像を経時的に撮ることが困難であったが、しかし、鮮明な、つまり、空間分解能の高い画像を短い露出時間で撮ることができた。一方、発光試料を対象とした画像による動的変化の経時的観察においては、発光試料からの発光が極めて小さいので、発光試料の観察には、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラを用いて行われていた。発光試料の撮像の場合、励起光を照射する必要がないため、定量的な評価に利用できる安定した画像を経時的に撮ることができた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、微弱な発光の発光試料を撮像する場合、発光試料からの発光量が極めて少ないため、鮮明な画像を撮るのに必要な露出時間が長くなる、という問題点があった。また、撮像の時間間隔は単位時間あたりの光量に制約されるため、微弱な発光の発光試料を撮像する場合、鮮明な画像を非常に長い時間間隔で、例えば60分以上の間隔で、経時的に撮ることができても、比較的短い時間間隔で、例えば20ないし30分間隔で鮮明な画像を連続的に撮像することは困難であった、という問題点があった。ましてや、非常に短い時間間隔で、例えば5ないし10分間隔で発光試料を画像化することは極めて難しかった、という問題点があった。ゆえに、5分未満、例えば1分ないし3分程度で鮮明な画像を得ることは想定外の事であった。一般に、撮像に要する時間が長いほど、発現量の変動解析が不正確になり、定量性が低くなる。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、発光量の少ない発光試料でも、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる発光試料撮像方法は、発光試料を撮像する発光試料撮像方法において、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズを用いることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は発光細胞撮像方法に関するものであり、本発明にかかる発光細胞撮像方法は、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像する発光細胞撮像方法において、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズを用いることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は対物レンズに関するものであり、本発明にかかる対物レンズは、発光試料を撮像する発光試料撮像方法で用いる対物レンズにおいて、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は対物レンズに関するものであり、本発明にかかる対物レンズは、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像する発光細胞撮像方法で用いる対物レンズにおいて、当該対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は対物レンズに関するものであり、本発明にかかる対物レンズは、発光試料を撮像する発光試料撮像方法で用いる対物レンズにおいて、当該対物レンズおよび/または当該対物レンズを包装する包装容器に、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値を表記したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる発光試料撮像方法では、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズを用いる。これにより、発光量の少ない発光試料(例えば、発光タンパク質(例えば、導入された遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子)から発現された発光タンパク質)や、発光性の細胞または発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の個体(例えば動物や臓器など)など)でも、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる、という効果を奏する。
【0013】
また、本発明にかかる発光細胞撮像方法では、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズを用いるので、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像対象として、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる、という効果を奏する。
【0014】
また、本発明にかかる対物レンズは、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上であるので、発光量の少ない発光試料(例えば、発光タンパク質(例えば、導入された遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子)から発現された発光タンパク質)や、発光性の細胞または発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の個体(例えば動物や臓器など)など)でも、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる、という効果を奏する。具体的には、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像対象として、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる、という効果を奏する。
【0015】
また、本発明にかかる対物レンズは、従来の対物レンズと比較して、開口数が大きいことと、倍率が小さいことの両方を備えているので、本発明にかかる対物レンズを用いれば広範囲を分解能よく撮像することができる。これにより、例えば移動する発光試料や広い範囲に分布する発光試料を撮像対象とすることができる。
【0016】
また、本発明にかかる対物レンズは、当該対物レンズおよび/または当該対物レンズを包装する包装容器(パッケージ)に、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値(例えば0.01以上)を表記した。これにより、例えば発光画像観察を行う者は、表記された(NA÷β)2の値を確認すれば、発光試料を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像するのに適した対物レンズを容易に選択することができる、という効果を奏する。
【0017】
さらに、本発明者は、同一シャーレ内で培養された複数の細胞において、遺伝子発現の変動パターンが異なることも発見した。さらに、本発明者が追究した光学的条件によれば、撮像装置の対物レンズを開口数(NA)/投影倍率(β)の2乗で表される光学的条件が0.071以上である場合に、1〜5分以内で画像化でき、画像解析も可能な細胞画像を提供できることも突き止めた。これらの発光画像を蓄積型の撮像装置により顕微鏡観察する発光解析システムを発光顕微鏡と呼ぶこととする。発光顕微鏡は、好ましくは遮光のための開閉蓋(ないし開閉窓)を具備する遮光手段を有し、この遮光手段の開閉によって必要な生体試料をセットまたは交換するようになっている。目的に応じて、生体試料を収容する容器に対して化学的ないし物理学的刺激を行う操作を手動ないし自動で行うようにしてもよい。後述する本発明の最良の一形態では、発光顕微鏡は公知または独自の培養装置を搭載している。培養装置は、長期間のシステム内での解析を可能にするように、温度、湿度、pH、外気成分、培地成分、培養液成分を最適に維持する機能を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置の構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、(NA/β)2の値を表記した対物レンズ2の一例を示す図である。
【図3】図3は、対物レンズを簡略に示した図である。
【図4】図4は、現在市販されている一般的な顕微鏡の対物レンズによる像の明るさ(NA/β)2の一例を示す図である。
【図5】図5は、実施例1で用いる対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)の条件を示した図である。
【図6】図6は、実施例2で用いる対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)の条件を示した図である。
【図7】図7は、実施例2において撮像したHeLa細胞の画像を示す図である。
【図8】図8は、実施例3で用いる対物レンズの開口数(NA)の条件を示した図である。
【図9】図9は、実施例3において撮像したHeLa細胞の画像を示す図である。
【図10】図10は、実施例3で用いた対物レンズの(NA/β)2の値と図9に示す画像の発光強度との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置の構成について図1を参照して説明する。図1は、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置の構成の一例を示す図である。図1に示すように、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置は、撮像対象であるサンプル1を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像するためのものであり、対物レンズ2と集光レンズ3とCCDカメラ4とモニタ5とで構成されている。なお、当該装置は図示の如くズームレンズ6をさらに備えてもよい。
【0021】
サンプル1は、発光試料であり、例えば、発光タンパク質(例えば導入された遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子、エクオリン遺伝子、ホラジン遺伝子など)から発現された発光タンパク質)や、発光性の細胞や、発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の臓器や、発光性の個体(動物など)などである。また、サンプル1は、具体的には、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞でもよい。ここで、発光試料の元となる生物学的材料は、例えば、真核動物、シアノバクテリア由来の細胞または組織が挙げられる。医学用途において、哺乳類、とくにヒトにおける検査すべき部位からバイオプシーにより切除した細胞を含む試料がとくに例示される。再生医療においては、少なくとも一部が人工的に改良ないし合成された生体試料であって、生物学的活性を良好に維持するかどうかを検査する目的に利用できる。他の一面において、本発明のアッセイ対象は、動物由来の細胞または生体組織に限らず、植物や昆虫由来の細胞または生体組織であってもよい。菌、ウイルスにおいては、従来のルミノメーターでは実行されなかった容器内の部分ごとの解析が対象となり得る。ルミノメーターではウェルまたはシャーレ等の容器内に無数の試料(例えば1ウェル当り100万個以上)を重積することで強大な発光量を迅速に得るようにしている。本発明では、肉眼では全く見えない個々の発光試料の画像を生成するので、個々の細胞が識別できる程度の密度で容器内に収容しても、個別の細胞ないし生体組織を解析できる。このような個別の解析は、発光している細胞だけを統計的に合計したり平均化する解析方法を含んでいる。これにより、細胞1個当りの正確な相互作用に関する評価が行なえる。また、多数の混在する発光試料において、同様の発光量ないし発光パターンを有する細胞群ないし組織領域を識別することが可能となる。サンプル1を収容する試料容器としては、シャーレ、スライドガラス、マイクロプレート、フローセルが挙げられる。ここで、容器底面は、光透過性の材料(ガラス、プラスチックなど)であるのは勿論のこと、2次元的データが得られやすいように、幅広(ないし扁平)な底面を有する容器であるのがさらに好ましい。複数の収容部分を一体化したウェルやキュベットにおいては、各収容部分の仕切り部分が遮光性の材料ないし染料で全面的に成形するのが好ましい。また、シャーレ等の上部開口を有する容器については、蒸発防止用のフタを覆い被せるのが好ましく、さらにフタの内面が反射防止用の被膜ないし染色を施すのがS/N比を向上させる上で好ましい。このような硬質のフタの代わりに、容器内の試料の上面にミネラルオイルのような液状のフタを配置するようにしてもよい。試料容器を載置するための試料ステージを、一般の顕微鏡装置のように、X軸方向およびY軸方向に移動させるようにして、必要に応じて別の撮像用の視野に変更するようにしてもよい。対物レンズ2は、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上のものである。ここで、対物レンズ2は、サンプル1の下方に倒立形式で配置してもよい。対物レンズ2は、生きた発光試料を培養条件のような恒温環境で安定に機能するように適宜の加熱手段(ペルチェ素子、温風ヒーターなど)により加熱してもよい。対物レンズ2は、さらに、光軸方向であるZ軸方向に駆動(図では上下方向)するようにしてもよい。Z軸駆動機構が備えられており、対物レンズ2をZ軸(光軸方向)に沿って自動的に駆動する。対物レンズ2のZ軸駆動機構としては、ラックピニオン機構やフリクションローラー機構が例として挙げられる。また、対物レンズ2は、所望の倍率に応じて適宜、油浸式にすることができる。また、どの倍率を選択するかは、評価(ないし解析)すべき試料のサイズに応じて任意に設定する。具体的には、細胞や組織を観察できる程度の低倍率(例えば5倍から20倍)や細胞内または細胞外の微小物質を観察できる程度の高倍率(例えば40倍から100倍)であり得る。集光レンズ3は、対物レンズ2を介して到達したサンプル1からの発光を集める。CCDカメラ4は、0℃程度の冷却CCDカメラであり、対物レンズ2や集光レンズ3を介してサンプル1を撮像する。モニタ5はCCDカメラ4で撮像した画像を出力する。また、モニタ5は、発光試料の画像情報を動画で表示する構成を具備することにより、1以上の所望の細胞に関する活性の変化をリアルタイムな映像でもって観察するような解析方法を提供するのが好ましい。これにより、細胞単位または組織単位での発光の様子を臨場感と躍動感有る映像でもって、時系列で観察することが可能となる。
【0022】
そして、対物レンズ2や対物レンズ2の包装容器(パッケージ)には、(NA/β)2の値を表記する。ここで、(NA/β)2の値を表記した対物レンズの一例について図2を参照して説明する。図2は、(NA/β)2の値を表記した対物レンズ2の一例を示す図である。従来の対物レンズには、レンズ種類(例えば“PlanApo”)、倍率/NA油侵(例えば“100×/1.40oil”)および無限遠/カバーガラス厚(例えば“∞/0.17”)が表記されていた。しかし、本発明にかかる対物レンズ(対物レンズ2)には、レンズ種類(例えば“PlanApo”)、倍率/NA油侵(例えば“100×/1.40oil”)、無限遠/カバーガラス厚(例えば“∞/0.17”)の他に、さらに射出開口角(例えば、“(NA/β)2:0.05”)が表記されている。
【0023】
以上、説明したように、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置において、対物レンズ2は、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である。これにより、発光量の少ない発光試料(例えば、発光タンパク質(例えば、導入された遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子)から発現された発光タンパク質)や、発光性の細胞または発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の個体(例えば動物や臓器など)など)でも、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる。具体的には、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像対象として、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる。また、対物レンズ2は、従来の対物レンズと比較して、開口数が大きく且つ倍率が小さいので、対物レンズ2を用いれば広範囲を分解能よく撮像することができる。これにより、例えば動きのある発光試料や移動する発光試料や広い範囲に分布する発光試料を撮像対象とすることができる。また、対物レンズ2は、当該対物レンズ2および/または当該対物レンズ2を包装する包装容器(パッケージ)に、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値(例えば0.01以上)を表記した。これにより、例えば発光画像観察を行う者は、表記された(NA÷β)2の値を確認すれば、発光試料を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像するのに適した対物レンズを容易に選択することができる。
【0024】
従来、ルシフェラーゼ遺伝子を用いたレポーターアッセイにおいては、細胞を溶解した後に発光量を測定するため、ある時点での発現量しか捉えることができず、しかも細胞全体の平均値としての計測になってしまう。また、培養しながらの計測においては、細胞コロニーの経時的な発現量の変化を捉えることはできるが、個々の細胞での発現量の変化を捉えることはできない。そして、個々の細胞の発光を顕微鏡で観察するためには、生きた細胞からの発光量が極めて弱いため、液体窒素温度レベルの冷却CCDカメラで長時間露光したり、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラでフォトンカウンティングをしたりしなければならない。そのため、発光検出のカメラは高価で大掛かりなものになってしまう。しかし、レポーター遺伝子産物としてのルシフェラーゼ活性を示す個々の細胞の発光を顕微鏡によって観察する際、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、イメージ・インテンシファイアを装着することなく、0℃程度の冷却CCDカメラを用いて定量的な画像を取得することができる。すなわち、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、生きた状態で個々の細胞の発光を0℃程度の冷却CCDカメラによって観察することができるので、イメージ・インテンシファイアやフォトンカウンティングのための装置が不要である。つまり、低コストで発光試料の撮像を行うことができる。また、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、個々の生きた細胞の発光を、培養しながら経時的に観察することができ、さらにリアルタイムに観察することもできる。また、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、同じ細胞について、異なった条件での薬剤や刺激の応答をモニタすることができる。
【0025】
ここで、本発明にかかる発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズの理解を容易にするために、従来の対物レンズおよびそれを用いた発光画像観察について簡単に説明する。
一般に、顕微鏡観察における空間分解能εは、下記数式1で表される。
ε=0.61×λ÷NA ・・・(数式1)
(数式1において、λは光の波長であり、NAは開口数である。)
また、観察範囲の直径dは、下記数式2で表される。
d=D÷M ・・・(数式2)
(数式2において、Dは視野数であり、Mは倍率である。なお、視野数は一般に22から26である。)
従来、顕微鏡用対物レンズの焦点距離は国際規格で45mmとされていた。そして、最近では、焦点距離を60mmとする対物レンズが使われはじめている。この焦点距離を前提にしてNAが大きい、つまり空間分解能が高いレンズを設計すると作動距離(WD)は一般には0.5mm程度であり、また長WD設計のものでも8mm程度であった。このような対物レンズを用いた場合、観察範囲は0.5mm径程度である。
【0026】
しかし、ディッシュやガラズボトムディッシュに分散した細胞群や組織、個体の観察を行う場合、観察範囲が1から数cmに及ぶことがある。このような範囲を分解能よく観察したいときには、低倍率でありながらNAを大きい値で維持しなければならない。換言すると、NAはレンズ半径と焦点距離との比であるので、NAが大きいまま広い範囲を観察できる対物レンズは、低倍である必要がある。そして、結果的に、このような対物レンズは大口径となる。なお、大口径の対物レンズの製作では、一般的に光学材料の物性の均一性やコーティングの均一性において、また、レンズ形状においても高い精度が求められる。
【0027】
また、顕微鏡観察の場合、光学系の透過率や対物レンズの開口数やCCDカメラのチップ面での投影倍率やCCDカメラの性能などが像の明るさに大きく影響してくる。そして、像の明るさは、開口数(NA)を投影倍率(β)で割った値の2乗、すなわち(NA/β)2で評価される。ここで、図3に示すように、対物レンズには、一般に、入射開口角NAと射出開口角NA'との間に下記数式3の関係があり、NA'2が観察者の目やCCDカメラなどに届く明るさを示す値である。
NA'=NA÷β ・・・(数式3)
(数式3において、NAは入射開口角(開口数)であり、NA'は射出開口角であり、βは投影倍率である。)
一般の対物レンズにおいて、NA'は高々0.04であり、NA'2は0.0016である。また、現在市販されている一般的な顕微鏡の対物レンズにおける像の明るさ(NA/β)2の値を調査したところ、図4に示すように、0.0005から0.002の範囲であった。
【0028】
ところが、図4に示す現在市販されている対物レンズを装着した顕微鏡を用いて、例えば細胞内でルシフェラーゼ遺伝子を発現させ発光している細胞を観察しても、当該細胞からの発光を目視で観察することができないし、さらに0℃程度に冷却したCCDカメラを用いて撮像した発光画像を観察しても細胞からの発光を確認することができない。なお、発光試料を観察する場合には、蛍光観察に必要な励起光の投影は不要である。例えば、落射蛍光観察では、対物レンズは、励起光投影レンズと蛍光を集光して画像を形成するレンズとの両方の機能を満たしている。
そこで、光量の少ない発光を画像で観察するためには、大きなNAと小さいβの特性を有する対物レンズが必要である。そして、結果的に、当該対物レンズは大口径となる傾向がある。なお、このような対物レンズでは、励起光投影の機能を考慮することなく機能を単純化して設計、製造しやすくすることが求められる。
【0029】
また、発光や蛍光観察を利用する研究分野では、試料内のタンパク質分子の動的な機能発現を捉えるためにタイムラプスや動画撮像が求められている。最近では、蛍光を利用したタンパク質1分子の動画観察が行われている。これらの撮像では単位時間の撮像フレーム数が多いほど画像1フレームあたりの露出時間は短くなる。このような観察においては、明るい光学系、特に、明るい対物レンズが必要となる。しかし、蛍光に比べて発光タンパク質の光量は少ないので、1フレームの撮像に、例えば20分の露出時間を要することが多い。このような露出時間でタイムラプス観察を行うには動的な変化が非常に遅い試料に限られる。例えば、約1時間に一度分裂する細胞では、その周期内の変化を観察することはできない。従って、シグナル・ノイズ比を高く維持しながら少ない光量を効率よく画像化するために、光学系の明るさを向上することは重要である。
【0030】
以上の経緯を踏まえて製作された本発明の対物レンズは、一般に市販されている対物レンズ(例えば図4参照)に比べて、大きなNAと小さいβの特性を有している。よって、本発明の対物レンズのNA'2は大きな値である。つまり、本発明の対物レンズは明るい対物レンズであると言うことができる。これにより、本発明の対物レンズのような明るい対物レンズを用いれば、光量の少ない発光試料からの発光を画像で観察することができる。また、より暗い像を観察するために、開口数の大きい本発明の対物レンズを実体顕微鏡に装着することで、イメージ・インテンシファイアを装着することなく、0℃程度に冷却したCCDカメラでも、細胞の発光を画像で観察することができる。また、液体窒素冷却を用いるCCDカメラで感度を上げる方法があるが、この場合CCDカメラが非常に高価に、大規模になる。また、単に感度のみを高めると外来ノイズも増えるので、高S/N比による測定は難しい。しかし、本発明の対物レンズを用いれば、ペルチェ冷却によるCCDカメラでも、細胞の発光を画像で観察することができるので、外来ノイズ(例えば宇宙線)によるS/N比低下を招くことなく正確に発光測定できる。また、本発明の対物レンズは、例えば5〜10cm程度の大口径である。これにより、従来では撮像対象となり得なかった移動する発光試料や広い範囲、例えば5〜50mm径、好ましくは例えば10〜30mm径相当の領域に分布する発光試料などを撮像対象とすることができる。かかる広い観察範囲は、対物レンズの倍率やズーミング機構によって、自在に調節することが可能である。
【0031】
以上の本発明の方法および装置は、必要とする装置構成を制御したり連携するためのソフトウェアまたは該ソフトウェアを特徴づけるコンピュータプログラムの形態で提供されてもよい。また、本発明の方法または装置を装置と同一ないし別個に配置されたデータベースと電気的に接続することにより、画像容量ないし解析情報量に制限されることなく、高速で且つ信頼性と質の高い解析結果を提供することが可能になる。
【実施例1】
【0032】
本実施例1では、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したHeLa細胞の発光を画像で観察することができるような対物レンズの(NA/β)2の条件を検討した。
【0033】
本実施例1における撮像対象(上述した実施の形態におけるサンプル1)は、ホタルルシフェラーゼ遺伝子“pGL3 control vector”(プロメガ社(会社名))をトランスフェクションしたHeLa細胞である。なお、当該HeLa細胞の発光画像観察にあたり、HeLa細胞を、トランスフェクション後1日培養してハンクス平衡塩類溶液で洗浄した後、1mMのルシフェリンを含むハンクス平衡塩類溶液に置換した。本実施例1で用いた対物レンズ(上述した実施の形態における対物レンズ2)の開口数(NA)および投影倍率(β)の条件は図5に示す通りである。図5は、実施例1で用いる対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)の条件を示した図である。図5に示すように、対物レンズのNAは0.074から0.4の値であり、対物レンズのβは0.27から1.5の値である。本実施例1で用いたCCDカメラ(上述した実施の形態におけるCCDカメラ4)は0℃の冷却CCDカメラであり、当該CCDカメラの画素数は765×510、画素サイズは9μm×9μm、チップの面積は6.89×4.59(mm2)、量子効率は550nmで55%の仕様である。なお、本実施例1において、HeLa細胞の撮像は、用いる装置(例えば図1参照)全体を暗幕で覆った状態で行われた。
【0034】
本実施例1では、図5に示すように、検討した全ての(NA/β)2の条件で発光画像観察が可能であることが示された。これにより、(NA/β)2が0.071以上の対物レンズを用いれば、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したHeLa細胞の発光画像観察が可能であることが示された。
【実施例2】
【0035】
本実施例2では、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したHeLa細胞の発光を画像で観察することができるような対物レンズの(NA/β)2の条件を、異なる露出時間で検討した。
【0036】
本実施例2における撮像対象は上述した実施例1と同じである。また、本実施例2で用いた対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)の条件は、図6に示す通りである。図6は、実施例2で用いる対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)の条件を示した図である。なお、本実施例2で用いた対物レンズは、上述した実施例1における図5に記載の“0.4X”、“0.83X”および“1.5X”に対応するものである。また、本実施例2で用いたCCDカメラは上述した実施例1と同じである。そして、露出時間は、図6に示すように、1分間または5分間である。なお、上述した実施例1と同様、本実施例2においても、HeLa細胞の発光画像撮像は、用いる装置全体を暗幕で覆った状態で行われた。
【0037】
本実施例2では、図7に示すように、“0.4X”の対物レンズを用いて5分間の露出時間で撮った画像A、“0.83X”の対物レンズを用いて5分間の露出時間で撮った画像B、“1.5X”の対物レンズを用いて5分間の露出時間で撮った画像Cおよび“1.5X”の対物レンズを用いて1分間の露出時間で撮った画像Dの全ての画像において、発光画像観察が可能である。これにより、(NA/β)2が0.071以上の対物レンズを用いる場合、露出時間が1分間でも、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したHeLa細胞の発光画像観察が可能であることが示された。
【実施例3】
【0038】
本実施例3では、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したHeLa細胞の発光を画像で観察することができるような対物レンズの(NA/β)2の条件を、さらに高倍率にして検討した。
【0039】
本実施例3における撮像対象は上述した実施例1または実施例2と同じである。また、本実施例3で用いた対物レンズは、オリンパス社製の“UApo40X Oil Iris”である。なお、対物レンズの開口数(NA)の条件は図8に示す通りであり、各開口数(NA)は対物レンズの絞り環を変えることによって設定した。図8は、実施例3で用いる対物レンズの開口数(NA)の条件を示した図である。図8に示すように、開口数(NA)の値は0.65から1.35である。そして、対物レンズ(A〜E)の投影倍率(β)の値は、集光レンズですべて8倍に設定した。よって、図8に示すように、対物レンズの(NA/β)2の値は、0.007から0.028まで変動する。また、本実施例3で用いたCCDカメラはオリンパス社製の“DP30BW”で、その動作温度は5℃、画素数は1360×1024、画素サイズは6μm×6μm、チップの面積(mm2)は13.8×9.18である。そして、露出時間は2分間である。なお、上述した実施例1および実施例2と同様、本実施例3においても、HeLa細胞の撮像は、用いる装置全体を暗幕で覆った状態で行われた。
【0040】
本実施例3では、図9に示すように、NAが0.83から1.35の対物レンズで撮った画像Bから画像Eについては、容易にHeLa細胞の発光を確認することができた。つまり、図9の画像Bから画像Eまでは容易に発光が観察できた。一方、NAが0.65の対物レンズで撮った画像Aについては、定量的に発光を確認することが困難であった。なお、図9で示した各画像は、40倍の対物レンズ(オリンパス社製の“UApo40X Oil Iris”)の絞り位置を変えることによりそのNAを0.65から1.35まで段階的に変えて撮像したものである。これにより、露出時間が2分間である場合、(NA/β)2の値が0.01以上であればルシフェラーゼ遺伝子を導入したHeLa細胞の発光画像観察が可能であることが示された。
【0041】
ここで、実施例3で用いた(図8に示す)対物レンズの(NA/β)2の値と図9に示す画像(画像A、画像Bおよび画像C)の発光強度との関係(図10参照)から、細胞の発光画像観察に適する対物レンズの(NA/β)2の条件を検討した。図10は、図9に示す画像(画像A、画像Bおよび画像C)の発光強度を、対物レンズの(NA/β)2の値を横軸にとってプロットした図である。なお、発光強度とは、発光して明るい領域を含む規定された領域(例えば、図9の画像Aにおいて四角で示した領域)全体からの光強度(CCDカメラの出力値)から、発光して明るい領域を含まず(発光せず暗い領域を含み)且つ前記規定された領域の面積と同じ面積を持つ領域全体からの光強度(CCDカメラの出力値)を差し引いたものである。
図10に示すように、図9の画像Aの発光強度と画像Bの発光強度との間に有意差があること、および図9の画像Bの発光強度と画像Cの発光強度との間に有意差があることを、各画像の発光強度のばらつき(画像の発光強度が取り得る範囲)に基づいて定量的に検出することができた。また、図10において図9の画像Aの発光強度は負の値も含むので、図9の画像Aは発光画像観察に適さないことが図10から分かる。したがって、以上の検討から、対物レンズの(NA/β)2の値が0.01以上であれば、充分且つ確実に細胞の発光画像観察を行うことができることが示された。つまり、細胞の発光画像観察に適する対物レンズの(NA/β)2の値は0.01以上であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明にかかる発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズは、例えば、ルシフェラーゼなどの発光遺伝子をレポーター遺伝子とし、遺伝子発現を制御するプロモーターやエンハンサーの解析や、転写因子などのエフェクター遺伝子や様々な薬剤の効果などを調べるレポーターアッセイにおいて、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 サンプル
2 対物レンズ
3 集光レンズ
4 CCDカメラ
5 モニタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光試料を撮像する発光試料撮像方法および当該発光試料撮像方法で用いる対物レンズに関するものである。また、本発明は、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像する発光細胞撮像方法および当該発光細胞撮像方法で用いる対物レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、発光試料の観察においては、発光試料からの発光量の測定が行われていた。例えば、ルシフェラーゼ遺伝子が導入された細胞の観察では、ルシフェラーゼ遺伝子の発現の強さ(具体的には発現量)を調べるために、ルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光量の測定が行われていた。そして、ルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光量の測定は、まず細胞を溶解した細胞溶解液とルシフェリンやATPやマグネシウムなどを含む基質溶液とを反応させ、ついで基質溶液と反応させた細胞溶解液からの発光量を光電子増倍管を用いたルミノメーターで定量する、という手順で行われていた。つまり、発光量は細胞を溶解した後に測定されていた。これにより、ある時点でのルシフェラーゼ遺伝子の発現量を細胞全体の平均値として測定することができた。ここで、ルシフェラーゼ遺伝子などの発光遺伝子をレポーター遺伝子として細胞に導入する方法には例えばリン酸カルシウム法やリポフェクチン法やエレクトロポーション法などがあり、各方法は目的や細胞の種類の違いに応じて使い分けられている。また、ルシフェラーゼ遺伝子がレポーター遺伝子として導入された細胞においてルシフェラーゼ遺伝子の発現の強さをルシフェラーゼ活性に因る細胞からの発光量を指標として調べる際、細胞に導入するルシフェラーゼ遺伝子の上流や下流に目的のDNA断片を繋ぐことで当該DNA断片がルシフェラーゼ遺伝子の転写に及ぼす影響を調べることができ、また、細胞に導入するルシフェラーゼ遺伝子の転写に影響を及ぼすと思われる転写因子などの遺伝子を発現ベクターに繋いでルシフェラーゼ遺伝子と共発現させることで当該遺伝子の遺伝子産物がルシフェラーゼ遺伝子の発現に及ぼす影響を調べることができる。
【0003】
また、時間経過に沿って発光遺伝子の発現量を捉えるには生きた細胞からの発光量を経時的に測定する必要がある。そして、生きた細胞からの発光量の経時的測定は、まず細胞を培養するインキュベーターに分光測定計としてのルミノメーターの機能を付け、ついで培養している全細胞集団からの発光量をルミノメーターで一定時間ごとに測定する、という手順で行われていた。これにより、一定の周期性をもった発現リズムなどを測定することができ、よって、細胞全体における発光遺伝子の発現量の経時的な変化を捉えることができた。一方、発光遺伝子の発現が一過性である場合には、個々の細胞での発現量に大きなばらつきがある。例えば、HeLa細胞などのクローン化した培養細胞であっても、細胞膜表面のレセプターを介した薬剤の応答が個々の細胞でばらつくことがある。さらに、分光測定法は、迅速であるが、容器内の細胞数が多いほど光強度が高まるので、発現量と細胞数を区別するのが難しい。従って分光測定法による発現量は定量性に欠ける。すなわち、細胞全体としての応答は検出されなくとも数個の細胞は応答している場合がある。このことから、発光遺伝子の発現が一過性である場合には、細胞全体からではなく個々の細胞から発光量を経時的に測定することが重要である。そして、顕微鏡を用いた生きた個々の細胞からの発光量の経時的測定は、各細胞の発光が極めて弱いので、液体窒素温度レベルの冷却CCDカメラで長時間露光したり、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラとフォトンカウンティング装置とを用いたりして行われていた。これにより、生きた個々の細胞における発光遺伝子の発現量の経時的な変化を捉えることができた。
【0004】
ところで、最近、生物学分野や医学分野の研究において、生きた試料を対象とした画像による動的変化の経時的観察の必要性が高まってきている。具体的には、発光や蛍光観察を利用する研究分野では、試料内のタンパク質分子の動的な機能発現を捉えるためにタイムラプスや動画撮像が求められている。現状では、蛍光試料を対象として撮像した画像による動的変化の観察(例えば、蛍光を利用したタンパク質1分子の動画観察)が行われている。蛍光試料の撮像の場合、励起光を照射し続けることで蛍光試料から発せられる光量が時間の経過とともに減少するという性質があるため、定量的な評価に利用できる安定した画像を経時的に撮ることが困難であったが、しかし、鮮明な、つまり、空間分解能の高い画像を短い露出時間で撮ることができた。一方、発光試料を対象とした画像による動的変化の経時的観察においては、発光試料からの発光が極めて小さいので、発光試料の観察には、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラを用いて行われていた。発光試料の撮像の場合、励起光を照射する必要がないため、定量的な評価に利用できる安定した画像を経時的に撮ることができた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、微弱な発光の発光試料を撮像する場合、発光試料からの発光量が極めて少ないため、鮮明な画像を撮るのに必要な露出時間が長くなる、という問題点があった。また、撮像の時間間隔は単位時間あたりの光量に制約されるため、微弱な発光の発光試料を撮像する場合、鮮明な画像を非常に長い時間間隔で、例えば60分以上の間隔で、経時的に撮ることができても、比較的短い時間間隔で、例えば20ないし30分間隔で鮮明な画像を連続的に撮像することは困難であった、という問題点があった。ましてや、非常に短い時間間隔で、例えば5ないし10分間隔で発光試料を画像化することは極めて難しかった、という問題点があった。ゆえに、5分未満、例えば1分ないし3分程度で鮮明な画像を得ることは想定外の事であった。一般に、撮像に要する時間が長いほど、発現量の変動解析が不正確になり、定量性が低くなる。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、発光量の少ない発光試料でも、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる発光試料撮像方法は、発光試料を撮像する発光試料撮像方法において、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズを用いることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は発光細胞撮像方法に関するものであり、本発明にかかる発光細胞撮像方法は、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像する発光細胞撮像方法において、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズを用いることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は対物レンズに関するものであり、本発明にかかる対物レンズは、発光試料を撮像する発光試料撮像方法で用いる対物レンズにおいて、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は対物レンズに関するものであり、本発明にかかる対物レンズは、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像する発光細胞撮像方法で用いる対物レンズにおいて、当該対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は対物レンズに関するものであり、本発明にかかる対物レンズは、発光試料を撮像する発光試料撮像方法で用いる対物レンズにおいて、当該対物レンズおよび/または当該対物レンズを包装する包装容器に、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値を表記したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる発光試料撮像方法では、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズを用いる。これにより、発光量の少ない発光試料(例えば、発光タンパク質(例えば、導入された遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子)から発現された発光タンパク質)や、発光性の細胞または発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の個体(例えば動物や臓器など)など)でも、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる、という効果を奏する。
【0013】
また、本発明にかかる発光細胞撮像方法では、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズを用いるので、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像対象として、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる、という効果を奏する。
【0014】
また、本発明にかかる対物レンズは、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上であるので、発光量の少ない発光試料(例えば、発光タンパク質(例えば、導入された遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子)から発現された発光タンパク質)や、発光性の細胞または発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の個体(例えば動物や臓器など)など)でも、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる、という効果を奏する。具体的には、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像対象として、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる、という効果を奏する。
【0015】
また、本発明にかかる対物レンズは、従来の対物レンズと比較して、開口数が大きいことと、倍率が小さいことの両方を備えているので、本発明にかかる対物レンズを用いれば広範囲を分解能よく撮像することができる。これにより、例えば移動する発光試料や広い範囲に分布する発光試料を撮像対象とすることができる。
【0016】
また、本発明にかかる対物レンズは、当該対物レンズおよび/または当該対物レンズを包装する包装容器(パッケージ)に、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値(例えば0.01以上)を表記した。これにより、例えば発光画像観察を行う者は、表記された(NA÷β)2の値を確認すれば、発光試料を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像するのに適した対物レンズを容易に選択することができる、という効果を奏する。
【0017】
さらに、本発明者は、同一シャーレ内で培養された複数の細胞において、遺伝子発現の変動パターンが異なることも発見した。さらに、本発明者が追究した光学的条件によれば、撮像装置の対物レンズを開口数(NA)/投影倍率(β)の2乗で表される光学的条件が0.071以上である場合に、1〜5分以内で画像化でき、画像解析も可能な細胞画像を提供できることも突き止めた。これらの発光画像を蓄積型の撮像装置により顕微鏡観察する発光解析システムを発光顕微鏡と呼ぶこととする。発光顕微鏡は、好ましくは遮光のための開閉蓋(ないし開閉窓)を具備する遮光手段を有し、この遮光手段の開閉によって必要な生体試料をセットまたは交換するようになっている。目的に応じて、生体試料を収容する容器に対して化学的ないし物理学的刺激を行う操作を手動ないし自動で行うようにしてもよい。後述する本発明の最良の一形態では、発光顕微鏡は公知または独自の培養装置を搭載している。培養装置は、長期間のシステム内での解析を可能にするように、温度、湿度、pH、外気成分、培地成分、培養液成分を最適に維持する機能を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置の構成の一例を示す図である。
【図2】図2は、(NA/β)2の値を表記した対物レンズ2の一例を示す図である。
【図3】図3は、対物レンズを簡略に示した図である。
【図4】図4は、現在市販されている一般的な顕微鏡の対物レンズによる像の明るさ(NA/β)2の一例を示す図である。
【図5】図5は、実施例1で用いる対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)の条件を示した図である。
【図6】図6は、実施例2で用いる対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)の条件を示した図である。
【図7】図7は、実施例2において撮像したHeLa細胞の画像を示す図である。
【図8】図8は、実施例3で用いる対物レンズの開口数(NA)の条件を示した図である。
【図9】図9は、実施例3において撮像したHeLa細胞の画像を示す図である。
【図10】図10は、実施例3で用いた対物レンズの(NA/β)2の値と図9に示す画像の発光強度との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置の構成について図1を参照して説明する。図1は、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置の構成の一例を示す図である。図1に示すように、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置は、撮像対象であるサンプル1を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像するためのものであり、対物レンズ2と集光レンズ3とCCDカメラ4とモニタ5とで構成されている。なお、当該装置は図示の如くズームレンズ6をさらに備えてもよい。
【0021】
サンプル1は、発光試料であり、例えば、発光タンパク質(例えば導入された遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子、エクオリン遺伝子、ホラジン遺伝子など)から発現された発光タンパク質)や、発光性の細胞や、発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の臓器や、発光性の個体(動物など)などである。また、サンプル1は、具体的には、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞でもよい。ここで、発光試料の元となる生物学的材料は、例えば、真核動物、シアノバクテリア由来の細胞または組織が挙げられる。医学用途において、哺乳類、とくにヒトにおける検査すべき部位からバイオプシーにより切除した細胞を含む試料がとくに例示される。再生医療においては、少なくとも一部が人工的に改良ないし合成された生体試料であって、生物学的活性を良好に維持するかどうかを検査する目的に利用できる。他の一面において、本発明のアッセイ対象は、動物由来の細胞または生体組織に限らず、植物や昆虫由来の細胞または生体組織であってもよい。菌、ウイルスにおいては、従来のルミノメーターでは実行されなかった容器内の部分ごとの解析が対象となり得る。ルミノメーターではウェルまたはシャーレ等の容器内に無数の試料(例えば1ウェル当り100万個以上)を重積することで強大な発光量を迅速に得るようにしている。本発明では、肉眼では全く見えない個々の発光試料の画像を生成するので、個々の細胞が識別できる程度の密度で容器内に収容しても、個別の細胞ないし生体組織を解析できる。このような個別の解析は、発光している細胞だけを統計的に合計したり平均化する解析方法を含んでいる。これにより、細胞1個当りの正確な相互作用に関する評価が行なえる。また、多数の混在する発光試料において、同様の発光量ないし発光パターンを有する細胞群ないし組織領域を識別することが可能となる。サンプル1を収容する試料容器としては、シャーレ、スライドガラス、マイクロプレート、フローセルが挙げられる。ここで、容器底面は、光透過性の材料(ガラス、プラスチックなど)であるのは勿論のこと、2次元的データが得られやすいように、幅広(ないし扁平)な底面を有する容器であるのがさらに好ましい。複数の収容部分を一体化したウェルやキュベットにおいては、各収容部分の仕切り部分が遮光性の材料ないし染料で全面的に成形するのが好ましい。また、シャーレ等の上部開口を有する容器については、蒸発防止用のフタを覆い被せるのが好ましく、さらにフタの内面が反射防止用の被膜ないし染色を施すのがS/N比を向上させる上で好ましい。このような硬質のフタの代わりに、容器内の試料の上面にミネラルオイルのような液状のフタを配置するようにしてもよい。試料容器を載置するための試料ステージを、一般の顕微鏡装置のように、X軸方向およびY軸方向に移動させるようにして、必要に応じて別の撮像用の視野に変更するようにしてもよい。対物レンズ2は、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上のものである。ここで、対物レンズ2は、サンプル1の下方に倒立形式で配置してもよい。対物レンズ2は、生きた発光試料を培養条件のような恒温環境で安定に機能するように適宜の加熱手段(ペルチェ素子、温風ヒーターなど)により加熱してもよい。対物レンズ2は、さらに、光軸方向であるZ軸方向に駆動(図では上下方向)するようにしてもよい。Z軸駆動機構が備えられており、対物レンズ2をZ軸(光軸方向)に沿って自動的に駆動する。対物レンズ2のZ軸駆動機構としては、ラックピニオン機構やフリクションローラー機構が例として挙げられる。また、対物レンズ2は、所望の倍率に応じて適宜、油浸式にすることができる。また、どの倍率を選択するかは、評価(ないし解析)すべき試料のサイズに応じて任意に設定する。具体的には、細胞や組織を観察できる程度の低倍率(例えば5倍から20倍)や細胞内または細胞外の微小物質を観察できる程度の高倍率(例えば40倍から100倍)であり得る。集光レンズ3は、対物レンズ2を介して到達したサンプル1からの発光を集める。CCDカメラ4は、0℃程度の冷却CCDカメラであり、対物レンズ2や集光レンズ3を介してサンプル1を撮像する。モニタ5はCCDカメラ4で撮像した画像を出力する。また、モニタ5は、発光試料の画像情報を動画で表示する構成を具備することにより、1以上の所望の細胞に関する活性の変化をリアルタイムな映像でもって観察するような解析方法を提供するのが好ましい。これにより、細胞単位または組織単位での発光の様子を臨場感と躍動感有る映像でもって、時系列で観察することが可能となる。
【0022】
そして、対物レンズ2や対物レンズ2の包装容器(パッケージ)には、(NA/β)2の値を表記する。ここで、(NA/β)2の値を表記した対物レンズの一例について図2を参照して説明する。図2は、(NA/β)2の値を表記した対物レンズ2の一例を示す図である。従来の対物レンズには、レンズ種類(例えば“PlanApo”)、倍率/NA油侵(例えば“100×/1.40oil”)および無限遠/カバーガラス厚(例えば“∞/0.17”)が表記されていた。しかし、本発明にかかる対物レンズ(対物レンズ2)には、レンズ種類(例えば“PlanApo”)、倍率/NA油侵(例えば“100×/1.40oil”)、無限遠/カバーガラス厚(例えば“∞/0.17”)の他に、さらに射出開口角(例えば、“(NA/β)2:0.05”)が表記されている。
【0023】
以上、説明したように、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置において、対物レンズ2は、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である。これにより、発光量の少ない発光試料(例えば、発光タンパク質(例えば、導入された遺伝子(例えばルシフェラーゼ遺伝子)から発現された発光タンパク質)や、発光性の細胞または発光性の細胞の集合体や、発光性の組織試料や、発光性の個体(例えば動物や臓器など)など)でも、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる。具体的には、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像対象として、鮮明な画像を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮ることができる。また、対物レンズ2は、従来の対物レンズと比較して、開口数が大きく且つ倍率が小さいので、対物レンズ2を用いれば広範囲を分解能よく撮像することができる。これにより、例えば動きのある発光試料や移動する発光試料や広い範囲に分布する発光試料を撮像対象とすることができる。また、対物レンズ2は、当該対物レンズ2および/または当該対物レンズ2を包装する包装容器(パッケージ)に、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値(例えば0.01以上)を表記した。これにより、例えば発光画像観察を行う者は、表記された(NA÷β)2の値を確認すれば、発光試料を短い露出時間で、ひいてはリアルタイムに撮像するのに適した対物レンズを容易に選択することができる。
【0024】
従来、ルシフェラーゼ遺伝子を用いたレポーターアッセイにおいては、細胞を溶解した後に発光量を測定するため、ある時点での発現量しか捉えることができず、しかも細胞全体の平均値としての計測になってしまう。また、培養しながらの計測においては、細胞コロニーの経時的な発現量の変化を捉えることはできるが、個々の細胞での発現量の変化を捉えることはできない。そして、個々の細胞の発光を顕微鏡で観察するためには、生きた細胞からの発光量が極めて弱いため、液体窒素温度レベルの冷却CCDカメラで長時間露光したり、イメージ・インテンシファイアを装着したCCDカメラでフォトンカウンティングをしたりしなければならない。そのため、発光検出のカメラは高価で大掛かりなものになってしまう。しかし、レポーター遺伝子産物としてのルシフェラーゼ活性を示す個々の細胞の発光を顕微鏡によって観察する際、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、イメージ・インテンシファイアを装着することなく、0℃程度の冷却CCDカメラを用いて定量的な画像を取得することができる。すなわち、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、生きた状態で個々の細胞の発光を0℃程度の冷却CCDカメラによって観察することができるので、イメージ・インテンシファイアやフォトンカウンティングのための装置が不要である。つまり、低コストで発光試料の撮像を行うことができる。また、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、個々の生きた細胞の発光を、培養しながら経時的に観察することができ、さらにリアルタイムに観察することもできる。また、本発明にかかる発光試料撮像方法を実施するための装置を利用すれば、同じ細胞について、異なった条件での薬剤や刺激の応答をモニタすることができる。
【0025】
ここで、本発明にかかる発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズの理解を容易にするために、従来の対物レンズおよびそれを用いた発光画像観察について簡単に説明する。
一般に、顕微鏡観察における空間分解能εは、下記数式1で表される。
ε=0.61×λ÷NA ・・・(数式1)
(数式1において、λは光の波長であり、NAは開口数である。)
また、観察範囲の直径dは、下記数式2で表される。
d=D÷M ・・・(数式2)
(数式2において、Dは視野数であり、Mは倍率である。なお、視野数は一般に22から26である。)
従来、顕微鏡用対物レンズの焦点距離は国際規格で45mmとされていた。そして、最近では、焦点距離を60mmとする対物レンズが使われはじめている。この焦点距離を前提にしてNAが大きい、つまり空間分解能が高いレンズを設計すると作動距離(WD)は一般には0.5mm程度であり、また長WD設計のものでも8mm程度であった。このような対物レンズを用いた場合、観察範囲は0.5mm径程度である。
【0026】
しかし、ディッシュやガラズボトムディッシュに分散した細胞群や組織、個体の観察を行う場合、観察範囲が1から数cmに及ぶことがある。このような範囲を分解能よく観察したいときには、低倍率でありながらNAを大きい値で維持しなければならない。換言すると、NAはレンズ半径と焦点距離との比であるので、NAが大きいまま広い範囲を観察できる対物レンズは、低倍である必要がある。そして、結果的に、このような対物レンズは大口径となる。なお、大口径の対物レンズの製作では、一般的に光学材料の物性の均一性やコーティングの均一性において、また、レンズ形状においても高い精度が求められる。
【0027】
また、顕微鏡観察の場合、光学系の透過率や対物レンズの開口数やCCDカメラのチップ面での投影倍率やCCDカメラの性能などが像の明るさに大きく影響してくる。そして、像の明るさは、開口数(NA)を投影倍率(β)で割った値の2乗、すなわち(NA/β)2で評価される。ここで、図3に示すように、対物レンズには、一般に、入射開口角NAと射出開口角NA'との間に下記数式3の関係があり、NA'2が観察者の目やCCDカメラなどに届く明るさを示す値である。
NA'=NA÷β ・・・(数式3)
(数式3において、NAは入射開口角(開口数)であり、NA'は射出開口角であり、βは投影倍率である。)
一般の対物レンズにおいて、NA'は高々0.04であり、NA'2は0.0016である。また、現在市販されている一般的な顕微鏡の対物レンズにおける像の明るさ(NA/β)2の値を調査したところ、図4に示すように、0.0005から0.002の範囲であった。
【0028】
ところが、図4に示す現在市販されている対物レンズを装着した顕微鏡を用いて、例えば細胞内でルシフェラーゼ遺伝子を発現させ発光している細胞を観察しても、当該細胞からの発光を目視で観察することができないし、さらに0℃程度に冷却したCCDカメラを用いて撮像した発光画像を観察しても細胞からの発光を確認することができない。なお、発光試料を観察する場合には、蛍光観察に必要な励起光の投影は不要である。例えば、落射蛍光観察では、対物レンズは、励起光投影レンズと蛍光を集光して画像を形成するレンズとの両方の機能を満たしている。
そこで、光量の少ない発光を画像で観察するためには、大きなNAと小さいβの特性を有する対物レンズが必要である。そして、結果的に、当該対物レンズは大口径となる傾向がある。なお、このような対物レンズでは、励起光投影の機能を考慮することなく機能を単純化して設計、製造しやすくすることが求められる。
【0029】
また、発光や蛍光観察を利用する研究分野では、試料内のタンパク質分子の動的な機能発現を捉えるためにタイムラプスや動画撮像が求められている。最近では、蛍光を利用したタンパク質1分子の動画観察が行われている。これらの撮像では単位時間の撮像フレーム数が多いほど画像1フレームあたりの露出時間は短くなる。このような観察においては、明るい光学系、特に、明るい対物レンズが必要となる。しかし、蛍光に比べて発光タンパク質の光量は少ないので、1フレームの撮像に、例えば20分の露出時間を要することが多い。このような露出時間でタイムラプス観察を行うには動的な変化が非常に遅い試料に限られる。例えば、約1時間に一度分裂する細胞では、その周期内の変化を観察することはできない。従って、シグナル・ノイズ比を高く維持しながら少ない光量を効率よく画像化するために、光学系の明るさを向上することは重要である。
【0030】
以上の経緯を踏まえて製作された本発明の対物レンズは、一般に市販されている対物レンズ(例えば図4参照)に比べて、大きなNAと小さいβの特性を有している。よって、本発明の対物レンズのNA'2は大きな値である。つまり、本発明の対物レンズは明るい対物レンズであると言うことができる。これにより、本発明の対物レンズのような明るい対物レンズを用いれば、光量の少ない発光試料からの発光を画像で観察することができる。また、より暗い像を観察するために、開口数の大きい本発明の対物レンズを実体顕微鏡に装着することで、イメージ・インテンシファイアを装着することなく、0℃程度に冷却したCCDカメラでも、細胞の発光を画像で観察することができる。また、液体窒素冷却を用いるCCDカメラで感度を上げる方法があるが、この場合CCDカメラが非常に高価に、大規模になる。また、単に感度のみを高めると外来ノイズも増えるので、高S/N比による測定は難しい。しかし、本発明の対物レンズを用いれば、ペルチェ冷却によるCCDカメラでも、細胞の発光を画像で観察することができるので、外来ノイズ(例えば宇宙線)によるS/N比低下を招くことなく正確に発光測定できる。また、本発明の対物レンズは、例えば5〜10cm程度の大口径である。これにより、従来では撮像対象となり得なかった移動する発光試料や広い範囲、例えば5〜50mm径、好ましくは例えば10〜30mm径相当の領域に分布する発光試料などを撮像対象とすることができる。かかる広い観察範囲は、対物レンズの倍率やズーミング機構によって、自在に調節することが可能である。
【0031】
以上の本発明の方法および装置は、必要とする装置構成を制御したり連携するためのソフトウェアまたは該ソフトウェアを特徴づけるコンピュータプログラムの形態で提供されてもよい。また、本発明の方法または装置を装置と同一ないし別個に配置されたデータベースと電気的に接続することにより、画像容量ないし解析情報量に制限されることなく、高速で且つ信頼性と質の高い解析結果を提供することが可能になる。
【実施例1】
【0032】
本実施例1では、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したHeLa細胞の発光を画像で観察することができるような対物レンズの(NA/β)2の条件を検討した。
【0033】
本実施例1における撮像対象(上述した実施の形態におけるサンプル1)は、ホタルルシフェラーゼ遺伝子“pGL3 control vector”(プロメガ社(会社名))をトランスフェクションしたHeLa細胞である。なお、当該HeLa細胞の発光画像観察にあたり、HeLa細胞を、トランスフェクション後1日培養してハンクス平衡塩類溶液で洗浄した後、1mMのルシフェリンを含むハンクス平衡塩類溶液に置換した。本実施例1で用いた対物レンズ(上述した実施の形態における対物レンズ2)の開口数(NA)および投影倍率(β)の条件は図5に示す通りである。図5は、実施例1で用いる対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)の条件を示した図である。図5に示すように、対物レンズのNAは0.074から0.4の値であり、対物レンズのβは0.27から1.5の値である。本実施例1で用いたCCDカメラ(上述した実施の形態におけるCCDカメラ4)は0℃の冷却CCDカメラであり、当該CCDカメラの画素数は765×510、画素サイズは9μm×9μm、チップの面積は6.89×4.59(mm2)、量子効率は550nmで55%の仕様である。なお、本実施例1において、HeLa細胞の撮像は、用いる装置(例えば図1参照)全体を暗幕で覆った状態で行われた。
【0034】
本実施例1では、図5に示すように、検討した全ての(NA/β)2の条件で発光画像観察が可能であることが示された。これにより、(NA/β)2が0.071以上の対物レンズを用いれば、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したHeLa細胞の発光画像観察が可能であることが示された。
【実施例2】
【0035】
本実施例2では、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したHeLa細胞の発光を画像で観察することができるような対物レンズの(NA/β)2の条件を、異なる露出時間で検討した。
【0036】
本実施例2における撮像対象は上述した実施例1と同じである。また、本実施例2で用いた対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)の条件は、図6に示す通りである。図6は、実施例2で用いる対物レンズの開口数(NA)および投影倍率(β)の条件を示した図である。なお、本実施例2で用いた対物レンズは、上述した実施例1における図5に記載の“0.4X”、“0.83X”および“1.5X”に対応するものである。また、本実施例2で用いたCCDカメラは上述した実施例1と同じである。そして、露出時間は、図6に示すように、1分間または5分間である。なお、上述した実施例1と同様、本実施例2においても、HeLa細胞の発光画像撮像は、用いる装置全体を暗幕で覆った状態で行われた。
【0037】
本実施例2では、図7に示すように、“0.4X”の対物レンズを用いて5分間の露出時間で撮った画像A、“0.83X”の対物レンズを用いて5分間の露出時間で撮った画像B、“1.5X”の対物レンズを用いて5分間の露出時間で撮った画像Cおよび“1.5X”の対物レンズを用いて1分間の露出時間で撮った画像Dの全ての画像において、発光画像観察が可能である。これにより、(NA/β)2が0.071以上の対物レンズを用いる場合、露出時間が1分間でも、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したHeLa細胞の発光画像観察が可能であることが示された。
【実施例3】
【0038】
本実施例3では、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したHeLa細胞の発光を画像で観察することができるような対物レンズの(NA/β)2の条件を、さらに高倍率にして検討した。
【0039】
本実施例3における撮像対象は上述した実施例1または実施例2と同じである。また、本実施例3で用いた対物レンズは、オリンパス社製の“UApo40X Oil Iris”である。なお、対物レンズの開口数(NA)の条件は図8に示す通りであり、各開口数(NA)は対物レンズの絞り環を変えることによって設定した。図8は、実施例3で用いる対物レンズの開口数(NA)の条件を示した図である。図8に示すように、開口数(NA)の値は0.65から1.35である。そして、対物レンズ(A〜E)の投影倍率(β)の値は、集光レンズですべて8倍に設定した。よって、図8に示すように、対物レンズの(NA/β)2の値は、0.007から0.028まで変動する。また、本実施例3で用いたCCDカメラはオリンパス社製の“DP30BW”で、その動作温度は5℃、画素数は1360×1024、画素サイズは6μm×6μm、チップの面積(mm2)は13.8×9.18である。そして、露出時間は2分間である。なお、上述した実施例1および実施例2と同様、本実施例3においても、HeLa細胞の撮像は、用いる装置全体を暗幕で覆った状態で行われた。
【0040】
本実施例3では、図9に示すように、NAが0.83から1.35の対物レンズで撮った画像Bから画像Eについては、容易にHeLa細胞の発光を確認することができた。つまり、図9の画像Bから画像Eまでは容易に発光が観察できた。一方、NAが0.65の対物レンズで撮った画像Aについては、定量的に発光を確認することが困難であった。なお、図9で示した各画像は、40倍の対物レンズ(オリンパス社製の“UApo40X Oil Iris”)の絞り位置を変えることによりそのNAを0.65から1.35まで段階的に変えて撮像したものである。これにより、露出時間が2分間である場合、(NA/β)2の値が0.01以上であればルシフェラーゼ遺伝子を導入したHeLa細胞の発光画像観察が可能であることが示された。
【0041】
ここで、実施例3で用いた(図8に示す)対物レンズの(NA/β)2の値と図9に示す画像(画像A、画像Bおよび画像C)の発光強度との関係(図10参照)から、細胞の発光画像観察に適する対物レンズの(NA/β)2の条件を検討した。図10は、図9に示す画像(画像A、画像Bおよび画像C)の発光強度を、対物レンズの(NA/β)2の値を横軸にとってプロットした図である。なお、発光強度とは、発光して明るい領域を含む規定された領域(例えば、図9の画像Aにおいて四角で示した領域)全体からの光強度(CCDカメラの出力値)から、発光して明るい領域を含まず(発光せず暗い領域を含み)且つ前記規定された領域の面積と同じ面積を持つ領域全体からの光強度(CCDカメラの出力値)を差し引いたものである。
図10に示すように、図9の画像Aの発光強度と画像Bの発光強度との間に有意差があること、および図9の画像Bの発光強度と画像Cの発光強度との間に有意差があることを、各画像の発光強度のばらつき(画像の発光強度が取り得る範囲)に基づいて定量的に検出することができた。また、図10において図9の画像Aの発光強度は負の値も含むので、図9の画像Aは発光画像観察に適さないことが図10から分かる。したがって、以上の検討から、対物レンズの(NA/β)2の値が0.01以上であれば、充分且つ確実に細胞の発光画像観察を行うことができることが示された。つまり、細胞の発光画像観察に適する対物レンズの(NA/β)2の値は0.01以上であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明にかかる発光試料撮像方法、発光細胞撮像方法および対物レンズは、例えば、ルシフェラーゼなどの発光遺伝子をレポーター遺伝子とし、遺伝子発現を制御するプロモーターやエンハンサーの解析や、転写因子などのエフェクター遺伝子や様々な薬剤の効果などを調べるレポーターアッセイにおいて、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 サンプル
2 対物レンズ
3 集光レンズ
4 CCDカメラ
5 モニタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光試料を撮像する発光試料撮像方法において、
開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズを用いること
を特徴とする発光試料撮像方法。
【請求項2】
前記発光試料は発光タンパク質であること
を特徴とする請求項1に記載の発光試料撮像方法。
【請求項3】
前記発光タンパク質は、導入された遺伝子から発現されたものであること
を特徴とする請求項2に記載の発光試料撮像方法。
【請求項4】
前記遺伝子はルシフェラーゼ遺伝子であること
を特徴とする請求項3に記載の発光試料撮像方法。
【請求項5】
前記発光試料は発光性の細胞または発光性の細胞の集合体であること
を特徴とする請求項1に記載の発光試料撮像方法。
【請求項6】
前記発光試料は発光性の組織試料であること
を特徴とする請求項1に記載の発光試料撮像方法。
【請求項7】
前記発光試料は発光性の個体であること
を特徴とする請求項1に記載の発光試料撮像方法。
【請求項8】
ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像する発光細胞撮像方法において、
開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズを用いること
を特徴とする発光細胞撮像方法。
【請求項9】
発光試料を撮像する発光試料撮像方法で用いる対物レンズにおいて、
開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上であること
を特徴とする対物レンズ。
【請求項10】
前記発光試料は発光タンパク質であること
を特徴とする請求項9に記載の対物レンズ。
【請求項11】
前記発光タンパク質は、導入された遺伝子から発現されたものであること
を特徴とする請求項10に記載の対物レンズ。
【請求項12】
前記遺伝子はルシフェラーゼ遺伝子であること
を特徴とする請求項11に記載の対物レンズ。
【請求項13】
前記発光試料は発光性の細胞または発光性の細胞の集合体であること
を特徴とする請求項9に記載の対物レンズ。
【請求項14】
前記発光試料は発光性の組織試料であること
を特徴とする請求項9に記載の対物レンズ。
【請求項15】
前記発光試料は発光性の個体であること
を特徴とする請求項9に記載の対物レンズ。
【請求項16】
ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像する発光細胞撮像方法で用いる対物レンズにおいて、
開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上であること
を特徴とする対物レンズ。
【請求項17】
発光試料を撮像する発光試料撮像方法で用いる対物レンズにおいて、
当該対物レンズおよび/または当該対物レンズを包装する包装容器に、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値を表記したこと
を特徴とする対物レンズ。
【請求項18】
前記(NA÷β)2の値が0.01以上であること
を特徴とする請求項17に記載の対物レンズ。
【請求項1】
発光試料を撮像する発光試料撮像方法において、
開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズを用いること
を特徴とする発光試料撮像方法。
【請求項2】
前記発光試料は発光タンパク質であること
を特徴とする請求項1に記載の発光試料撮像方法。
【請求項3】
前記発光タンパク質は、導入された遺伝子から発現されたものであること
を特徴とする請求項2に記載の発光試料撮像方法。
【請求項4】
前記遺伝子はルシフェラーゼ遺伝子であること
を特徴とする請求項3に記載の発光試料撮像方法。
【請求項5】
前記発光試料は発光性の細胞または発光性の細胞の集合体であること
を特徴とする請求項1に記載の発光試料撮像方法。
【請求項6】
前記発光試料は発光性の組織試料であること
を特徴とする請求項1に記載の発光試料撮像方法。
【請求項7】
前記発光試料は発光性の個体であること
を特徴とする請求項1に記載の発光試料撮像方法。
【請求項8】
ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像する発光細胞撮像方法において、
開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上である対物レンズを用いること
を特徴とする発光細胞撮像方法。
【請求項9】
発光試料を撮像する発光試料撮像方法で用いる対物レンズにおいて、
開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上であること
を特徴とする対物レンズ。
【請求項10】
前記発光試料は発光タンパク質であること
を特徴とする請求項9に記載の対物レンズ。
【請求項11】
前記発光タンパク質は、導入された遺伝子から発現されたものであること
を特徴とする請求項10に記載の対物レンズ。
【請求項12】
前記遺伝子はルシフェラーゼ遺伝子であること
を特徴とする請求項11に記載の対物レンズ。
【請求項13】
前記発光試料は発光性の細胞または発光性の細胞の集合体であること
を特徴とする請求項9に記載の対物レンズ。
【請求項14】
前記発光試料は発光性の組織試料であること
を特徴とする請求項9に記載の対物レンズ。
【請求項15】
前記発光試料は発光性の個体であること
を特徴とする請求項9に記載の対物レンズ。
【請求項16】
ルシフェラーゼ遺伝子を導入した発光細胞を撮像する発光細胞撮像方法で用いる対物レンズにおいて、
開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値が0.01以上であること
を特徴とする対物レンズ。
【請求項17】
発光試料を撮像する発光試料撮像方法で用いる対物レンズにおいて、
当該対物レンズおよび/または当該対物レンズを包装する包装容器に、開口数(NA)および投影倍率(β)で表される(NA÷β)2の値を表記したこと
を特徴とする対物レンズ。
【請求項18】
前記(NA÷β)2の値が0.01以上であること
を特徴とする請求項17に記載の対物レンズ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図7】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図7】
【図9】
【公開番号】特開2013−84007(P2013−84007A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−4756(P2013−4756)
【出願日】平成25年1月15日(2013.1.15)
【分割の表示】特願2006−547919(P2006−547919)の分割
【原出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月15日(2013.1.15)
【分割の表示】特願2006−547919(P2006−547919)の分割
【原出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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