説明

X線検査装置およびX線検査装置の画像処理手順の生成方法

装置が自動的に検査対象となる物品に対して最適な画像処理手順を選択して検査を行うことが可能なX線検査装置を提供するために、X線検査装置(10)は、シールドボックス(11)と、コンベア(12)と、X線照射器(13)と、X線ラインセンサ(14)と、モニタ(26)と、制御コンピュータ(20)とを備えている。制御コンピュータ(20)は、CPU(21)がHDD(25)等の記憶部に格納された各種プログラムを読み込んで、画像形成部(31a)、採用画像処理手順生成部(31b)および異物判定部(31c)を機能ブロックとして形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象となる物品に対してX線を照射し、物品を透過したX線の検出結果に基づいて形成されたX線画像に対して画像処理を施して物品の検査を行うX線検査装置およびその画像処理手順の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品などの商品の生産ラインにおいては、商品への異物混入や商品の割れ欠けがある場合にその不良商品が出荷されることを防止するために、X線検査装置を用いた商品不良検査が行われている。このX線検査装置では、連続搬送されてくる被検査物に対してX線を照射し、そのX線の透過状態をX線受光部で検出して、被検査物中に異物が混入していないか、あるいは被検査物に割れ欠けが生じていたり被検査物内の単位内容物の数量が不足していたりしないかを判別する。また、X線検査装置によって、被検査物内の単位内容物の数量を数える検査が行われることもある。
そして、X線検査装置には、例えば、被検査物に照射された放射線の透過光を検出して画像を形成し、この画像情報に基づいて異物の混入の有無を判定するものがある。このX線検査装置では、金属、石、ガラス等の異物が食品等の被検査物よりも暗く表示される特性を利用して、その画像の中に含まれる所定濃度範囲の画素を抽出し、抽出された画素の固まりの面積が所定の大きさ以上である場合にこれを異物と判定している。
特許文献1には、異物に対する選択性が高く高感度な異物検出を行うことが可能なX線検査装置が開示されている。このX線検査装置では、画像処理を施すマトリクスのサイズや係数を複数用意してそれらを組み合わせることで、様々な検体の異物検出を行うことが可能になる。
【特許文献1】WO98/11456(平成10年3月19日再公表)
【発明の開示】
【0003】
しかしながら、上記従来のX線検査装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたX線検査装置では、様々な検体の異物検出に適応可能な画像処理を施すことができるものの、検体に応じたマトリクスや係数等の選定は人が行うものであった。このため、このX線検査装置では、単に画像処理の種類の選択肢を増やしているだけのものであって、誰もが様々な種類の検体に対して最適な画像処理を行うための画像処理手順を選択して採用することができない。
本発明の課題は、装置が自動的に検査対象となる物品に対して最適な画像処理手順を選択して検査を行うことが可能なX線検査装置およびX線検査装置の画像処理手順の生成方法を提供することにある。
第1の発明に係るX線検査装置の画像処理手順の生成方法は、検査対象となる物品に対してX線を照射し、物品を透過したX線の検出結果に基づいて形成されたX線画像に対して画像処理を施して物品の検査を行うX線検査装置の画像処理手順の生成方法であって、第1〜第3のステップを備えている。第1のステップは、複数の画像処理手順を用意する。第2のステップは、画像処理手順のそれぞれによってX線画像を画像処理し、X線画像に対する画像処理手順それぞれの適応度合いである適応度を算出する。第3のステップは、適応度に基づいて検査において使用される最適な画像処理手順を自動的に選択する。
ここでは、物品に対して照射されたX線の透過量に基づいて形成されたX線画像に対して画像処理を施して異物混入等の検査を行うX線検査装置において、複数の画像処理手順を用意してそれぞれの画像処理手順に基づく処理を行った後で形成された画像に対する適応度に基づいて、最適な画像処理手順を自動的に選択する。
通常、X線検査装置では、検査対象となる物品が変わるとそのX線画像の映り方も変わってくるため、その都度適切な画像処理を施す必要がある。しかし、このようなX線画像に対する適切な画像処理手順の選択は、従来は熟練者の経験と勘により行われていたため、誰もがX線画像に対して適切な画像処理を施して正確な検査を行えるとは言い難い。
そこで、本発明のX線検査装置では、用意された複数の画像処理手順のそれぞれが画像処理を行って適応度を算出し、この適応度に応じて最適な画像処理手順を自動的に選択する。
これにより、熟練者の経験や勘に頼ることなく、検査対象となる物品の特性等に応じて装置が自動的に適切な画像処理手順を選択することができる。よって、誰もが簡単にX線画像に対して最適化された画像処理を行って正確な検査を行うことが可能になる。
なお、上記適応度とは、例えば、所定のX線画像に対して、正確に検査を行うことが可能な画像処理手順に近づくほど適応度が高くなる指標である。検査対象となる物品が変わってX線画像のコントラストが変化するような場合でも、この適応度に応じて画像処理手順を変更することで、常に正確に検査を行うことが可能になる。
第2の発明に係るX線検査装置は、検査対象となる物品に対してX線を照射し、物品を透過したX線の検出結果に基づいて形成されたX線画像に対して画像処理を施して物品の検査を行うX線検査装置であって、画像取得部と、採用画像処理手順決定部と、を備えている。画像取得部は、物品に対して照射されたX線を検出して所定のX線画像を取得する。採用画像処理手順決定部は、画像取得部が取得したX線画像に対して複数の画像処理手順によって画像処理を施し、X線画像に対する各画像処理手順の適応度合いである適応度を算出する。そして、適用度に基づいて検査において使用される最適な画像処理手順を自動的に選択する。
ここでは、物品に対して照射されたX線の透過量に基づいて形成されたX線画像に対して画像処理を施して異物混入等の検査を行うX線検査装置において、複数の画像処理手順を用意してそれぞれの画像処理手順に基づく処理を行った後で形成された画像に対する適応度に基づいて、実際に採用する画像処理手順を自動的に選択する。
通常、X線検査装置では、検査対象となる物品が変わるとそのX線画像の映り方も変わってくるため、その都度適切な画像処理を施す必要がある。しかし、このようなX線画像に対する適切な画像処理手順の選択は、従来は熟練者の経験と勘により行われていたため、誰もがX線画像に対して適切な画像処理を施して正確な検査を行えるとは言い難い。
そこで、本発明のX線検査装置では、用意された複数の画像処理手順のそれぞれが画像処理を行って適応度を算出し、この適応度に応じて最適な画像処理手順を自動的に選択する。
これにより、熟練者の経験や勘に頼ることなく、検査対象となる物品の特性等に応じて装置が自動的に適切な画像処理手順を選択することができる。よって、誰もが簡単にX線画像に対して最適化された画像処理を行って正確な検査を行うことが可能になる。
なお、上記適応度とは、例えば、所定のX線画像に対して、正確に検査を行うことが可能な画像処理手順に近づくほど適応度が高くなる指標である。検査対象となる物品が変わってX線画像のコントラストが変化するような場合でも、この適応度に応じて画像処理手順を変更することで、常に正確に検査を行うことが可能になる。
第3の発明に係るX線検査装置は、第2の発明に係るX線検査装置であって、画像取得部は、所定のX線画像を、実際に物品に対して照射されたX線を検出して新たに取得する。
ここでは、実際にX線を検出して取得されたX線画像を新たに取得し、このX線画像について適応度の算出を行う。
これにより、新たに取得したX線画像について算出された適用度に基づいて、X線画像に対して最適化された画像処理を行って正確な検査を行うことが可能になる。
第4の発明に係るX線検査装置は、第2の発明に係るX線検査装置であって、画像取得部は、所定のX線画像を、過去に取得したX線画像を記憶する記憶部からX線画像を呼び出して取得する。
ここでは、過去に検出されたX線画像を格納している記憶部からX線画像を読み出し、このX線画像について適応度を算出する。
これにより、記憶部から読み出して取得された過去のX線画像について算出された適用度に基づいて、X線画像に対して最適化された画像処理を行って正確な検査を行うことが可能になる。
第5の発明に係るX線検査装置は、第2から第4の発明に係るX線検査装置であって、採用画像処理手順決定部は、所定の画像処理パーツをランダムに組み合わせて複数の画像処理手順を生成する。
ここでは、所定の画像処理パーツをランダムに組み合わせて複数の画像処理手順を生成する。これにより、画像処理パーツの数に対応して画像処理手順の組み合わせパターン数も増やすことができる。
第6の発明に係るX線検査装置は、第5の発明に係るX線検査装置であって、画像処理パーツは、X線画像に対して画像処理を施すためのフィルタである。
ここでは、各画像処理手順が、画像処理を施すための複数のフィルタを組み合わせて形成されている。これにより、例えば、圧縮フィルタ、平滑フィルタ、鮮鋭化フィルタ等を組み合わせて複数の画像処理手順を生成することが可能になる。
第7の発明に係るX線検査装置は、第2から第6の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、採用画像処理手順決定部は、適用度に基づいて新たな複数の画像処理手順を生成して再度画像処理手順の適応度を算出するルーチンを繰り返して採用画像処理手順を決定する。
ここでは、用意した複数の画像処理手順によって1つのX線画像に対してそれぞれ画像処理を行って、各画像処理手順に対応する適応度を算出するルーチンを複数回(複数世代)繰り返す。これにより、より適応度の高い画像処理手順を選択して適切な画像処理を行い、正確な検査を行うことができる。
第8の発明に係るX線検査装置は、第2から第7の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、採用画像処理手順決定部が適応度に基づいて選択した画像処理手順によってX線画像の画像処理を行った結果に基づいて、検査対象となる物品に異物が混入しているか否かの検査を行う異物判定部を、さらに備えている。
ここでは、取得したX線画像に対して最適化された画像処理手順に従って画像処理を施すことで、検査対象となる物品に対する異物混入の検査を行うことができる。
第9の発明に係るX線検査装置は、第8の発明に係るX線検査装置であって、画像取得部は、検査対象となる物品の良品画像を取得し、良品画像に所定の数、大きさの仮想異物像をブレンドしてX線画像を形成する。
ここでは、画像取得部によって、取得した検査対象となる物品の良品画像に所定の仮想異物像をブレンドして、最適な画像処理手順を決定するために用いられるX線画像が形成される。
ここで、上記良品画像とは、異物を含まない検査対象物品のX線画像である。この良品画像に所定の異物をブレンドして形成されるX線画像は、同種の物品の異物検査において使用される最適な画像処理手順の適応度を算出するための基準とされる。つまり、良品画像にブレンドされた仮想異物像の位置、大きさがわかっている状態で各画像処理手順による画像処理を行って、各画像処理手順による画像処理結果から適切に異物検出ができるか否かにより各画像処理手順の適応度を求めることができる。
これにより、複数の画像処理手順によって画像処理が施されて各画像処理手順の適応度を算出する際の基準となるX線画像を得て画像処理手順の最適化を図ることで、同種の物品に対して最適な画像処理手順を決定することができる。
第10の発明に係るX線検査装置は、第9の発明に係るX線検査装置であって、画像取得部は、良品画像を、実際に物品に対して照射されたX線を検出することで新たに取得する。
ここでは、新たに取得した良品画像に対して、所定の異物像をブレンドしてX線画像を形成する。
これにより、新たに取得した良品画像を用いて、これにブレンドされた仮想異物像の位置、大きさがわかっている状態で各画像処理手順による画像処理を行って、各画像処理手順による画像処理結果から適切に異物検出ができるか否かにより各画像処理手順の適応度を求めることができる。
第11の発明に係るX線検査装置は、第9の発明に係るX線検査装置であって、画像取得部は、良品画像を、過去に取得した良品画像を記憶する記憶部から良品画像を呼び出して取得する。
ここでは、過去に取得して記憶部に格納していた良品画像を読み出して取得し、これに所定の異物像をブレンドしてX線画像を作成する。
これにより、記憶部に格納されていた良品画像を用いて、これにブレンドされた仮想異物像の位置、大きさがわかっている状態で各画像処理手順による画像処理を行って、各画像処理手順による画像処理結果から適切に異物検出ができるか否かにより各画像処理手順の適応度を求めることができる。
第12の発明に係るX線検査装置は、第9から第11の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、画像取得部は、過去に取得した異物入りのX線画像を記憶する記憶部から異物入りのX線画像を呼び出して、位置が指定された異物像を仮想異物像として用いる。
ここでは、過去に取得したX線画像に含まれる異物像の位置を、タッチパネル等を用いてどれが抽出した異物かを指定して仮想異物像として用いる。
これにより、取得した異物像の位置、大きさがわかっている状態で各画像処理手順による画像処理を行って、各画像処理手順による画像処理結果から適切に異物検出ができるか否かにより各画像処理手順の適応度を求めることができる。
第13の発明に係るX線検査装置は、第9から第11の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、画像取得部は、良品の前記物品に所定の異物を混入させて撮影したX線画像を取得し、X線画像に含まれる異物像の位置を指定して仮想異物像として用いる。
ここでは、良品である物品に所定の異物像を混入させてX線画像を取得し、このX線画像に含まれる異物像を直接指定して仮想異物像として用いる。
これにより、異物像の位置、大きさがわかっている状態で各画像処理手順による画像処理を行って、各画像処理手順による画像処理結果から適切に異物検出ができるか否かにより各画像処理手順の適応度を求めることができる。
第14の発明に係るX線検査装置は、第2から第13の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、採用画像処理手順決定部は、各画像処理手順による画像処理時間を考慮して適応度の算出を行う。
ここでは、各画像処理手順による画像処理に要する時間を算出し、この時間に基づいて適応度の算出を行う。
これにより、適応度が同じであれば画像処理時間が非常に長い画像処理手順の優先順位を下げて、処理時間の長い画像処理手順が採用されることを防止することができる。この結果、適応度が高いものであっても時間がかかる処理手順を排除して、効率のよい画像処理を選択することができる。
第15の発明に係るX線検査装置は、第2から第14の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、採用画像処理手順決定部は、少なくとも、X線画像に対して画像処理を行った結果、得られる画像に含まれる異物の明るさの最小値、平均値、異物以外の画像の明るさの最大値に基づいて、適応度を算出する。
ここでは、各画像処理手順に対応する適応度の算出に際して、各画像処理手順によって画像処理を行った結果、得られる画像に含まれる異物の明るさの最小値、平均値、異物以外の画像の明るさの最大値等の情報を判断基準としている。
これにより、複数の画像処理手順の中から最も適応度の高い画像処理手順を選択することで、正確な検査を行うことができる。
第16の発明に係るX線検査装置は、第2から第15の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、採用画像処理手順決定部は、複数の画像処理手順の中から選択された2つの画像処理手順を交配して次世代の画像処理手順を生成する。
ここでは、複数の画像処理手順の中から2つを選択し、互いに画像処理パーツの一部を交配させて次世代の画像処理手順を生成する。
これにより、例えば、適応度の高い画像処理手順同士を交配させることにより、より適応度が高くなる可能性が高い画像処理手順を選択することができる。
第17の発明に係るX線検査装置は、第2から第16の発明のいずれか1つに係るX線検査装置であって、採用画像処理手順決定部は、所定の世代数になるまで、または所定の適応度に達するまで、または所定の時間が経過するまで、画像処理手順の最適化を繰り返す。
ここでは、最適化された画像処理手順の選定を、所定の世代数に達するまで、所定の適応度に達するまで、あるいは所定の時間が経過するまで繰り返し行う。
これにより、ある程度最適化が進んだところで処理を終了し、その時点で最も適応度が高い画像処理手順を選択することができる。よって、効率よく最適化された画像処理手順を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線異物検査装置の外観斜視図。
【図2】X線異物検査装置のシールドボックス内部の簡易構成図。
【図3】X線異物検査の原理を示す模式図。
【図4】制御コンピュータのブロック構成図。
【図5】図1のX線検査装置が備えている制御コンピュータによって形成される機能ブロックを示す図。
【図6】図1のX線検査装置による画像処理アルゴリズムの最適化処理を示すフローチャート。
【図7】(a)は良品画像を示す図、(b)は(a)の良品画像に仮想異物像をブレンドした画像を示す図。
【図8】図6の画像処理アルゴリズムの最適化処理における画像処理手順のテンプレートの一例を示す図。
【図9】(a)は本実施形態で使用される画像処理アルゴリズム(フィルタ)の構成を示す図、(b)は(a)の画像処理アルゴリズムにランダムにフィルタが代入されて構成されるデータ列を示す図。
【図10】適応度が算出されたデータ列を構成するフィルタごとに画像処理時間によってランク付けされた図。
【図11】本発明の他の実施形態に係るX線検査装置による画像処理アルゴリズムの最適化処理を示すフローチャート。
【図12】本発明のさらに他の実施形態に係るX線検査装置による画像処理アルゴリズムの最適化処理を示すフローチャート。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に係るX線検査装置による画像処理アルゴリズムの最適化処理を示すフローチャート。
【図14】本発明のさらに他の実施形態に係るX線検査装置による画像処理アルゴリズムの最適化処理を示すフローチャート。
【図15】本発明のさらに他の実施形態に係るX線検査装置による画像処理アルゴリズムの最適化処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0005】
10 X線検査装置
11 シールドボックス
11a 開口
12 コンベア
13 X線照射器(X線源)
14 X線ラインセンサ
14a 画素
15 光電センサ
16 遮蔽ノレン
20 制御コンピュータ(制御部)
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 外部接続(USB)
25 CF(ハードディスク)
25a しきい値ファイル
26 モニタ(表示装置)
31a 画像形成部(画像取得部)
31b 採用画像処理手順決定部
31c 異物判定部
G 商品
S ステップ
C 画像縮小フィルタ
F 平滑・鮮鋭化フィルタ
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
[実施形態1]
本発明の一実施形態に係るX線検査装置について、図1〜図10を用いて説明すれば以下の通りである。
[X線検査装置全体の構成]
本実施形態のX線検査装置10は、図1に示すように、食品等の商品(物品)の生産ラインにおいて品質検査を行う装置の1つである。X線検査装置10は、連続的に搬送されてくる商品に対してX線を照射し、商品を透過したX線量に基づいて商品に異物が混入していないかの検査を行う。
また、X線検査装置10は、図1および図2に示すように、主として、シールドボックス11と、コンベア12と、X線照射器(X線源)13と、X線ラインセンサ14と、タッチパネル機能付きのモニタ(表示装置)26と、制御コンピュータ20(図4参照)とを備えている。
[シールドボックス]
シールドボックス11は、商品Gの入口側と出口側の双方の面に、商品を搬出入するための開口11aを有している。このシールドボックス11の中に、コンベア12、X線照射器13、X線ラインセンサ14、制御コンピュータ20などが収容されている。
また、開口11aは、図1に示すように、シールドボックス11の外部へのX線の漏洩を防止するために、遮蔽ノレン16によって塞がれている。この遮蔽ノレン16は、鉛を含むゴム製のノレン部分を有しており、商品が搬出入されるときには商品によって押しのけられる。なお、この遮蔽ノレンについては後段にて詳述する。
また、シールドボックス11の正面上部には、モニタ26の他、キーの差し込み口や電源スイッチが配置されている。
[コンベア]
コンベア12は、シールドボックス11内において商品を搬送するものであって、図4に示すコンベアモータ12fによって駆動される。コンベア12による搬送速度は、作業者が入力した設定速度になるように、制御コンピュータ20によるコンベアモータ12fのインバータ制御によって細かく制御される。
[X線照射器]
X線照射器13は、図2に示すように、コンベア12の上方に配置されており、下方のX線ラインセンサ14に向かって扇状にX線(図2の斜線範囲を参照)を照射する。
〔X線ラインセンサ〕
X線ラインセンサ14は、コンベア12の下方に配置されており、商品Gやコンベア12を透過してくるX線を検出する。このX線ラインセンサ14は、図3に示すように、コンベア12による搬送方向に直交する向きに一直線に水平配置された多くの画素14aから構成されている。
[モニタ]
モニタ(表示装置)26は、フルドット表示の液晶ディスプレイである。また、モニタ26は、タッチパネル機能を有しており、初期設定や不良判断に関するパラメータ入力などを促す画面を表示する。
また、モニタ26は、後述する画像処理が施された後のX線画像を表示する。これにより、ユーザに対して商品Gに含まれる異物の有無、場所、大きさ等を視覚的に認識させることができる。
[制御コンピュータ]
制御コンピュータ20は、図4に示すように、CPU21とともに、このCPU21によって制御される主記憶部としてROM22、RAM23、およびCF(コンパクトフラッシュ(登録商標))25を搭載している。CF25には、密集度のしきい値を記憶するしきい値ファイル25a、検査画像や検査結果を記憶する検査結果ログファイル25bなどが収納されている。
また、制御コンピュータ20は、モニタ26に対するデータ表示を制御する表示制御回路、モニタ26のタッチパネルからのキー入力データを取り込むキー入力回路、図示しないプリンタにおけるデータ印字の制御等を行うためのI/Oポート、外部接続端子としてのUSB24等を備えている。
CPU21、ROM22、RAM23、CF25等の記憶部は、アドレスバス,データバス等のバスラインを介して相互に接続されている。
また、制御コンピュータ20は、コンベアモータ12f、ロータリエンコーダ12g、X線照射器13、X線ラインセンサ14、光電センサ15等と接続されている。
ロータリエンコーダ12gは、コンベアモータ12fに装着されており、コンベア12の搬送速度を検出して制御コンピュータ20に対して送信する。
X線照射器13は、制御コンピュータ20によって、X線の照射タイミングやX線照射量、X線照射禁止等を制御される。
X線ラインセンサ14は、検査開始前に実施される画像処理アルゴリズム(画像処理手順)の最適化処理を行うために、異物の混入していない商品(良品)を透過したX線を検出し、これを良品画像として制御コンピュータ20に対して送信する。さらに、X線ラインセンサ14は、検査開始後には、各画素14aにおいて検出されたX線量に基づく信号値を制御コンピュータ20に対して送信する。
光電センサ15は、被検査物である商品GがX線ラインセンサ14の位置にくるタイミングを検出するための同期センサであり、コンベアを挟んで配置される一対の投光器および受光器から構成されている。
制御コンピュータ20は、以上のような構成を備えており、図4に示すCPU21がCF25等の記憶部に格納された各種プログラムを読み込んで、図5に示すような、画像形成部(画像取得部)31a、採用画像処理手順決定部31bおよび異物判定部31cを機能ブロックとして形成する。
画像形成部31aは、CPU21が記憶部(CF25等)に格納された画像形成プログラムを読み込んで形成される機能ブロックであって、X線ラインセンサ14における検出結果に基づいてX線画像を形成する。具体的には、光電センサ15からの信号を受けて、商品Gが扇状のX線照射領域(図3および図5に示す斜線部分参照)を通過するときに、X線ラインセンサ14によるX線透視像信号(図8参照)を細かい時間間隔で取得して、それらのX線透視像信号に基づいて商品GのX線画像を作成する。すなわち、X線ラインセンサ14の各画素14aから細かい時間間隔をあけて各時刻のデータを得て、それらのデータから2次元画像が作成される。また、画像形成部31aは、異物混入の検査を実施する前に、異物の混入していない商品を透過したX線をX線ラインセンサ14において検出し、この検出結果に基づいて良品画像(図7(a)参照)を形成した後、ここで得られた良品画像に所定の仮想異物像をブレンドして画像処理手順の最適化処理に用いられる基準となる画像(図7(b)参照)を形成する。
採用画像処理手順決定部31bは、CPU21が記憶部に格納された画像処理手順最適化プログラムを読み込んで形成される機能ブロックであって、画像形成部31aによって形成された図7(a)に示す良品画像に仮想異物像をブレンドした図7(b)に示す画像に対して、複数の画像処理アルゴリズムに従って画像処理を行い、画像処理の結果得られた画像に基づいて、上記画像(商品)に対するそれぞれの画像処理アルゴリズムの適応度を算出する。さらに、採用画像処理手順決定部31bは、算出した適応度に応じて複数の画像処理アルゴリズムの優先順位を並び替えて、再度同様の処理を繰り返す。これにより、適応度の高い画像処理アルゴリズムを選択してその画像(商品)に対して最適な画像処理を行うことで、高精度な異物検出が可能になる。なお、画像処理アルゴリズムの最適化処理については後段にて詳述する。
異物判定部31cは、CPU21が記憶部に格納された異物判定プログラムを読み込んで形成される機能ブロックであって、上記採用画像処理手順決定部31bによって最適化された画像処理アルゴリズムに従って画像処理を行い、画像処理されて得られる画像に基づいて異物混入の有無の判定を行う。具体的には、異物判定部31cは、画像形成部31aによって検査対象となる商品に対して照射されたX線の透過量に基づいて作成されたX線画像に対して、上記最適化された画像処理アルゴリズムに従って画像処理を行った結果に基づいて、複数の判断方式によって商品の良・不良(異物が混入していないかどうか)を判断する。判断方式には、例えば、トレース検出方式、2値化検出方式などがある。これらの判断方式で判断した結果、1つでも不良と判断するもの(図8に示す異物像)があれば、その商品Gは不良品と判断される。
トレース検出方式および2値化検出方式は、マスク領域以外の画像領域に対して異物混入の判定を行う。マスク領域は、コンベアガイド12dや商品Gの容器部分などに対して設定される。特に、トレース検出方式は、被検出物の大まかな厚さに沿って基準レベル(閾値)を設定し、像がそれよりも暗くなったときに商品G内に異物が混入していると判断する方式である。この方式では、比較的小さな異物を検出して商品不良を検出することができる。
<制御コンピュータによる画像処理手順の最適化処理>
ここでは、上述した採用画像処理手順決定部31bによる、検査対象となる商品ごとに最適な画像処理アルゴリズムを選択するための処理について詳しく説明する。
例えば、検査対象となる商品が食品である場合には、X線照射方向における商品の厚みやパッケージ、同梱物の有無によってはノイズが増大し、X線画像における濃淡によって判断される異物判定が困難になる場合がある。例えば、検査対象がスパゲッティ等の場合には、商品の濃淡と異物との差がつきにくく、高精度な異物判定を行うことが困難である。このため、従来のX線検査装置では、検査しようとする食品ごとに熟練者の経験と勘によって適用な画像処理アルゴリズムを選択して異物判定を行っていた。しかし、熟練者の経験等によっても最適な画像処理アルゴリズムが選択できない場合がある、食品ごとに複数の画像処理アルゴリズムによって処理しながら検査を行うと時間がかかりすぎて食品の製造ラインには適用できない、等の問題がある。
そこで、本実施形態のX線検査装置10では、検査対象となる商品ごとに最適な画像処理アルゴリズムが異なることを考慮し、検査開始前の段階において最適な画像処理アルゴリズムを選択することができるように、画像処理手順の最適化処理を行っている。
本実施形態のX線検査装置10は、図6に示すフローチャートに従って、各商品に対して最適な画像処理アルゴリズムを決定する。
すなわち、作業者によって画像処理アルゴリズム最適化処理を開始するように指示入力がされると、X線検査装置10はX線照射器13とコンベア12とが起動され、良品画像取得モードとなる。
そして、作業者によって異物が混入していないことがわかっている商品をコンベア12によって搬送し、S1に示すように、画像形成部31aが複数の良品画像(図7(a)参照)を取得する。これを予め設定された回数繰り返して、所定の枚数の良品画像を取得する。このとき、制御コンピュータ20では、これら複数の良品画像がCF25等の記憶手段に記憶される。
次に、画像形成部31aが、取得した良品画像における仮想異物像をブレンドする位置をランダムに選択する。そして、選択した位置(画素群)を、実際の異物像と同様のコントラストになるまで、例えば約30%暗くすることで、S2に示すように、良品画像に対して実際に検出された仮想異物像を用いて所定の数だけ(例えば、5つ)ブレンドする(図7(b)参照)。このとき、ブレンドする仮想異物像は、実際の異物と同様の状態を再現するために仮想異物像の外周の画素のコントラストを約15%だけ暗くする。
次に、S3に示すように、異物抽出アルゴリズムを示すデータ列の初期化を行う。ここでは、画像処理アルゴリズムが、画像処理を行うための複数種類のフィルタを組み合わせて構成されている。画像処理アルゴリズムを構成するフィルタとしては、例えば、複数の画像収縮フィルタや複数の平滑・鮮鋭化フィルタを用いることができる。
画像縮小フィルタは、画像面積を1/4に縮小するためのフィルタであって、画像処理高速化のために使用される。つまり、高解像度の処理が必要な場合にはこの画像縮小フィルタを用いずにそのままの大きさの画像を使用し、効率よく短時間で画像処理を行いたい場合にはこの画像縮小フィルタを使用する。例えば、「最大値縮小フィルタ」、「最小値縮小フィルタ」、「平均値縮小フィルタ」、「縮小せず」、の4種類のフィルタC1〜C4を用意する。
平滑・鮮鋭化フィルタは、異物像をスムージングしたり、エッジを強調したりするためのフィルタであって、異物を強調するために使用される。例えば、「最大値フィルタ」、「平均値フィルタ」、「アンシャープマスク」、「処理なし」等の20種類のフィルタF1〜F20を用意する。
図8には、画像処理手順を示すテンプレートの一例が示されている。このテンプレートは、生成されたデータ列を基にしてどのような手順で処理を進めるかを示す型である。
具体的には、図8に示すように、仮想異物像がブレンドされた画像が2段の画像縮小フィルタC1,C2を用いて画像処理され、縮小画像である「画像1」が作成される。続いて、「画像1」に対してフィルタF1〜F5を用いて商品の像だけを残し、異物像を消し去って「画像2」が作成される。一方、「画像1」に対してフィルタF6,F7を用いて異物像を強調した「画像3」が作成される。続いて、Subtractionでは、これらの「画像2」、「画像3」を用いて両者の差を求め、異物を抽出した画像が作成される(理想的には、画像中の異物以外の部分は0に近い値となり、異物像は大きい値となる。)。なお、ここでは「画像2」と「画像3」との差を所定の閾値を用いて2値化して判定しても良い。
図8に示すテンプレートの場合には、最適化するデータ列は、図9(a)に示すようなデータ列となる。図9(a)に示すようなデータ列を、例えば50個用意してデータをランダムに決定したフィルタで埋めて、図9(b)に示すデータ列1〜データ列nを作成する。
次に、図9(b)に示すデータ列1〜データ列nを用いて、検査対象である商品に対する各画像処理手順の適応度を算出する。
すなわち、まず、各異物抽出画像において抽出された異物部分の画像の明るさの平均値OBJ1を求める。そして、OBJ1の最小値OBJmin(全画像中の全異物抽出明るさの最小値)を求める。さらに、OBJ1の平均値OBJave(全画像中の全異物抽出明るさの平均値)を求める。また、各異物抽出画像において、異物以外の画像の明るさの最大値BG1を求める。次に、BG1の最大値BGmax(全画像中の全異物以外の明るさの最大値)を求める。最後に、上記平均値等の抽出値の差と比とを用いて適応度Pを算出する。なお、本実施形態では算出される適応度は1に近い値になるほど適応度が高いことを意味するものとする。
ここでさらに、その画像処理手順を構成する各フィルタFを、図10に示すように画像処理時間によってランク分けし、各フィルタに対応する適応度をその構成フィルタのランクによって増減する。
例えば、ある画像処理アルゴリズムを示すデータ列が、Ca,Fb,Fe,Fj,Fi,Fa,Fdという7つのフィルタから構成されている場合には、各フィルタの増減は図10に示すように順に、0%,0%,−10%,−10%,0%,+10%,−20%となるため、適応度を−30%とする。
このように、各フィルタによる画像処理時間を考慮して適応度を調整することで、同じ適応度の場合には、処理時間がより短い方の画像処理アルゴリズムを優先して選択することが可能になる。
そして、算出された適応度を用いて、以下のような手順で適応度の高い画像処理アルゴリズム(データ列)のみを残すように処理が行われる。
すなわち、適応度の低いデータ列(例えば0.1以下)を無条件で淘汰し、新たなデータ列をランダムに生成しなおす。そして、局所解に陥ることを防止するために、ルーレットルールに従って、重複を許しながら現行の世代と同じ数の個体を選び、次世代に残すデータ列を選択する。次に、ランダムに選択したペアについて一定の確率(例えば80%)で個体間のデータを交配させる。交配は、一点交叉等の方法を用いることができる。次に、全個体の全データについて、予め設定されている一定の確率でランダムにデータ(フィルタ)を突然変異させる。突然変異確率は、初代世代では低めに設定し、世代が進むにつれて大きくなる。なお、突然変異確率については、上限を5%とする。さらに、進化速度を高めるために、現行世代の個体の中で最も適応度が高い個体(エリート個体)については変更することなくそのまま次世代にコピーして残す。
以上のような処理を1世代とし、所定の終了条件を満たすまで処理を繰り返していく。そして、S4に示すように、終了時点で最も適応度が高い個体(画像処理アルゴリズム)を選択してデータ列を最適化する。
なお、上記終了条件としては、例えば、適応度が1.5以上、5000世代まで、処理時間が6時間経過等の条件を設定することができる。
ここで、選択された画像処理アルゴリズムと、装置が予め用意している画像処理アルゴリズムとを比較して、選択された画像処理アルゴリズムの方が適応度が高い場合には、S5に示すように、デフォルトのデータ列を最適化されたデータ列に置き換えて、これを実際の検査に用いる画像処理アルゴリズムとして採用する。なお、本実施形態のX線検査装置10では、マニュアル操作によりデフォルトの画像処理アルゴリズムや、過去に使用した画像処理アルゴリズムに戻せる機能を有している。
[X線検査装置の特徴]
(1)
本実施形態のX線検査装置10およびその画像処理手順の生成方法では、図5に示す機能ブロックとして形成された画像形成部31a、採用画像処理手順決定部31bにより、画像処理アルゴリズムの最適化処理が行われる。すなわち、まず、採用画像処理手順決定部31bが、複数種類のフィルタをランダムに組み合わせて作成された複数の画像処理アルゴリズムを用意する。そして、画像作成部31aによって作成された良品画像に仮想異物像をブレンドした画像に対して、採用画像処理手順決定部31bがそれぞれの画像処理アルゴリズムによって画像処理を行い、得られた画像に基づいて適応度を算出する。ここで、採用画像処理手順決定部31bが算出した適応度が高い画像処理アルゴリズムを選択して、実際に検査を行う画像処理アルゴリズムとして採用する。
これにより、検査対象となる商品が変わっても、その商品ごとに最適な画像処理アルゴリズムを、装置が適応度に応じて自動的に選択してくれるため、熟練者の経験や勘に依存することなく、精度の高い異物検出を行うことができる。よって、使用者が誰であっても、検査対象が何であっても、常に最適な画像処理アルゴリズムを採用して高精度な異物検出を行うことが可能になる。
(2)
本実施形態のX線検査装置10では、採用画像処理手順決定部31bが、図9(a)および図9(b)に示すように、複数のフィルタ(画像処理パーツ)を組み合わせて画像処理アルゴリズムを形成する。
これにより、複数のフィルタをランダムに組み合わせて、多くの画像処理アルゴリズムを作成することができる。そして、画像処理パーツとなるフィルタの数を増やすことで、これらを組み合わせて構成される画像処理アルゴリズムの種類を増やすことができる。
(3)
本実施形態のX線検査装置10では、画像処理アルゴリズムを構成する画像処理パーツとして、各種フィルタを用いている。
これにより、画像縮小フィルタ、平滑・鮮鋭化フィタ等を組み合わせて、多くの画像処理アルゴリズムを生成することができる。
(4)
本実施形態のX線検査装置10では、50個生成した画像処理アルゴリズムごとに適応度を算出し、適応度の高い画像処理アルゴリズムを優先して残す一方、適応度が低い画像処理アルゴリズムを無条件に淘汰して新たに生成した画像処理アルゴリズムに置き換えて次世代の個体を生成し、これを所定の終了条件が来るまで繰り返す。
これにより、適応度の高い画像処理アルゴリズムに選定していき、所定の終了条件を満たした際に最も適応度が高い画像処理アルゴリズムを選択することで、検査対象となる商品の特性に応じて最適化された画像処理アルゴリズムを選択することができる。この結果、常に高精度な異物混入の判定を行うことが可能になる。
(5)
本実施形態のX線検査装置10では、図5に示す異物判定部31cが、採用画像処理手順決定部31bによって採用された画像処理アルゴリズムによって画像処理された結果に基づいて異物混入の検査を行う。
これにより、採用画像処理手順決定部31bによって検査対象となる商品に対して最適化された画像処理アルゴリズムを用いて画像処理された結果に基づいて異物混入の判定を行うため、高精度な検査を行うことができる。
(6)
本実施形態のX線検査装置10では、図5に示す画像形成部31aが、検査を開始する前に、予め異物が混入していない商品の画像を作成し、この良品画像に仮想異物像をブレンドした画像を作成する。
これにより、予め異物がどこにあるかわかっている画像を基準とし、この画像に対して各画像処理アルゴリズムによって画像処理を行うことで、その画像処理アルゴリズムが適切に異物を検出できるかを示す指標となる適応度を算出することができる。この結果、適応度の高い画像処理アルゴリズムを選択して、高精度な異物混入検査を実施することができる。
(7)
本実施形態のX線検査装置10では、上述した各画像処理アルゴリズムによって画像処理された結果得られる画像に基づいて算出された適応度に対し、図10に示すようにその画像処理アルゴリズムによる画像処理時間に応じて各フィルタごとの増減割合を乗じて、その画像処理アルゴリズムの適応度を算出する。
これにより、同程度の適応度である場合には、処理時間が長い方の画像処理アルゴリズムの方が適応度が低くなるため、より処理時間が短い画像処理アルゴリズムを選択して、効率よく検査を行うことが可能な画像処理アルゴリズムを採用することができる。
(8)
本実施形態のX線検査装置10では、適応度の算出に関して、良品画像に仮想異物像をブレンドして得られる画像に対して各画像処理アルゴリズムに従って画像処理を行った結果得られる画像に含まれる、異物部分の画像の明るさの平均値BJ1や、OBJ1の最小値OBJmin、OBJ1の平均値OBJave、異物以外の画像の明るさの最大値BG1、BG1の最大値BGmax等の抽出値の差と比とを用いて適応度Pを算出する。
これにより、複数用意した画像処理アルゴリズムの中からその商品に対して最適な画像処理アルゴリズムを選択し、高精度な異物混入検査を実施することが可能になる。
(9)
本実施形態のX線検査装置10では、複数生成された画像処理アルゴリズムの中から2つを選択し、その画像処理アルゴリズムを構成の一部(フィルタ)を交配して次世代用の画像処理アルゴリズムを生成する。
これにより、例えば、適応度の高い画像処理アルゴリズム同士を交配させることで、次世代にはさらに適応度の高い画像処理アルゴリズムを生成する可能性を高くすることができる。
(10)
本実施形態のX線検査装置10では、上記画像処理アルゴリズムの最適化処理の終了条件として、適応度が1.5以上、5000世代まで、処理時間が6時間経過等の条件を設定している。
これにより、ある程度最適化処理が進んだ段階で処理を終了し、その時点で生成されている画像処理アルゴリズムの中で最も適応度の高いものを採用することができる。これにより、時間等の条件設定を設けて画像処理アルゴリズムの最適化処理を行うことで、効率よく適応度の高い画像処理アルゴリズムを選択することができる。
[実施形態2]
本発明の他の実施形態に係るX線検査装置について、図11を用いて説明すれば以下の通りである。なお、上記実施形態1において説明した構成と共通の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
本実施形態のX線検査装置では、図10に示すようなフローチャートに従って、各商品についての最適な画像処理アルゴリズムを決定する。
すなわち、本実施形態のX線検査装置では、ステップS11およびステップS12における良品画像、異物像の取得方法が、上記実施形態1におけるステップS1およびステップS2の処理とは異なっている。
具体的には、ステップS11において、RAM23に格納されている過去に取得した良品画像を読み出して取得する。そして、ステップS12において、この良品画像に実際に検出して位置、数、大きさ等が分かっている異物像をブレンドする。続く、ステップS13〜ステップS15における処理については、上記実施形態1のステップS3〜ステップS5と同様である。
このように、過去に取得されてRAM23に格納されていた良品画像を読み出して、仮想異物像とブレンドしてX線画像を作成した場合でも、上記実施形態1と同様に、予め異物がどこにあるかわかっている画像を基準とし、この画像に対して各画像処理アルゴリズムによって画像処理を行うことで、その画像処理アルゴリズムが適切に異物を検出できるかを示す指標となる適応度を算出することができる。この結果、適応度の高い画像処理アルゴリズムを選択して、高精度な異物混入検査を実施することができる。
[実施形態3]
本発明のさらに他の実施形態に係るX線検査装置について、図12を用いて説明すれば以下の通りである。なお、上記実施形態1,2において説明した構成と共通の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
本実施形態のX線検査装置では、図12に示すようなフローチャートに従って、各商品についての最適な画像処理アルゴリズムを決定する。
すなわち、本実施形態のX線検査装置では、ステップS21およびステップS22における良品画像、異物像の取得方法が、上記実施形態1におけるステップS1およびステップS2の処理とは異なっている。
具体的には、図12に示すように、ステップS21において、実際に商品に対してX線を照射して検出されたX線量に基づいて作成された良品画像を取得する。次に、ステップS22において、過去に商品に対してX線を照射して検出された異物像をRAM23から読み出して、ステップS21で取得した良品画像にブレンドする。以下、ステップS23〜ステップS25における処理は上記実施形態1のステップS3〜ステップS5と同様である。
このように、実際に今取得した良品画像に、過去に検出されてRAM23に格納されていた異物像をブレンドしてX線画像を作成した場合でも、上記実施形態1と同様に、予め異物がどこにあるかわかっている画像を基準とし、この画像に対して各画像処理アルゴリズムによって画像処理を行うことで、その画像処理アルゴリズムが適切に異物を検出できるかを示す指標となる適応度を算出することができる。この結果、適応度の高い画像処理アルゴリズムを選択して、高精度な異物混入検査を実施することができる。
[実施形態4]
本発明のさらに他の実施形態に係るX線検査装置について、図13を用いて説明すれば以下の通りである。なお、上記実施形態1〜3において説明した構成と共通の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
本実施形態のX線検査装置では、図13に示すようなフローチャートに従って、各商品についての最適な画像処理アルゴリズムを決定する。
すなわち、本実施形態のX線検査装置では、ステップS31およびステップS32における良品画像、異物像の取得方法が、上記実施形態1におけるステップS1およびステップS2の処理とは異なっている。
具体的には、図13に示すように、ステップS31において、過去に商品に対してX線を照射して検出された良品画像をRAM23から読み出して良品画像を取得する。次に、ステップS32において、過去に商品に対してX線を照射して検出された異物像をRAM23から読み出して、ステップS31で取得した良品画像にブレンドする。以下、ステップS33〜ステップS35における処理は上記実施形態1のステップS3〜ステップS5と同様である。
このように、RAM23に格納された過去に取得された良品画像と異物像とをブレンドしてX線画像を作成した場合でも、上記実施形態1と同様に、予め異物がどこにあるかわかっている画像を基準として、この画像に対して各画像処理アルゴリズムによって画像処理を行うことで、その画像処理アルゴリズムが適切に異物を検出できるかを示す指標となる適応度を算出することができる。この結果、適応度の高い画像処理アルゴリズムを選択して、高精度な異物混入検査を実施することができる。
[実施形態5]
本発明のさらに他の実施形態に係るX線検査装置について、図14を用いて説明すれば以下の通りである。なお、上記実施形態1〜3において説明した構成と共通の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
本実施形態のX線検査装置では、図14に示すようなフローチャートに従って、各商品についての最適な画像処理アルゴリズムを決定する。
すなわち、本実施形態のX線検査装置では、ステップS41およびステップS42における良品画像、異物像の取得方法が、上記実施形態1におけるステップS1およびステップS2の処理とは異なっている。
具体的には、図14に示すように、ステップS41において、過去に商品に対してX線を照射して検出された異物像入りのX線画像をRAM23から読み出して取得する。次に、ステップS32において、ユーザが手動でステップS41で取得したX線画像に含まれる異物像の位置をタッチパネルによって直接指定する。以下、ステップS43〜ステップS45における処理は上記実施形態1のステップS3〜ステップS5と同様である。
このように、RAM23に格納された過去に取得されたX線画像に対して手動で異物像の位置を指定して、位置や大きさがわかっている異物像を含むX線画像を取得した場合でも、上記実施形態1と同様に、予め異物がどこにあるかわかっている画像を基準として、この画像に対して各画像処理アルゴリズムによって画像処理を行うことで、その画像処理アルゴリズムが適切に異物を検出できるかを示す指標となる適応度を算出することができる。この結果、適応度の高い画像処理アルゴリズムを選択して、高精度な異物混入検査を実施することができる。
なお、異物像入りのX線画像については、過去に取得したX線画像を呼び出して取得する以外に、異物入りの物品についてX線画像を新たに取得してもよい。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、良品画像と仮想異物像をブレンドしたX線画像を用いて、最適な画像処理手順を選択する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図15のフローチャートに示すように、良品の物品に所定の異物を混入させてX線画像を取得し(ステップS51)、予め異物が入っているかが分かっているX線画像を用いて、上記の画像処理手順の最適化を行ってもよい。この場合でも、異物像の位置を手動で指定して(ステップS52)、X線画像中における異物の位置を正確に認識できるため、上記と同様の効果を得ることができる。ステップS53以降の処理については上記ステップS3以降と同様である。
(B)
上記実施形態では、X線検査装置10が異物混入検査を行っている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、検査対象となる商品のエッジの検出を行う検査装置に対しても、本発明を適用することが可能である。
(C)
上記実施形態では、画像処理アルゴリズムを複数種類のフィルタを組み合わせて構成している例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、フィルタ以外の他の画像処理パーツを組み合わせて画像処理アルゴリズムを構成したX線検査装置に対しても同様に適用可能である。
(D)
上記実施形態では、適応度の算出において、良品画像に仮想異物像をブレンドして得られる画像に対して各画像処理アルゴリズムに従って画像処理を行った結果得られる画像に含まれる、異物部分の画像の明るさの平均値BJ1や、OBJ1の最小値OBJmin、OBJ1の平均値OBJave、異物以外の画像の明るさの最大値BG1、BG1の最大値BGmax等の抽出値の差と比とを用いて適応度Pを算出する例を挙げて説明した。
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、他の算出方法によって適応度の算出を行ってもよい。
(E)
上記実施形態では、画像処理アルゴリズムの最適化処理の終了条件として、世代数、時間経過、適応度を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、他の終了条件によって画像処理アルゴリズムの最適化処理が終了してもよい。
(F)
上記実施形態では、X線検査装置における画像処理アルゴリズムの最適化を、例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、各種アルゴリズムによって画像処理を行う他の分析装置についても同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0007】
本発明のX線検査装置は、熟練者の経験や勘に頼ることなく検査対象となる商品の特性に応じた適正な画像処理を行って高精度な検査を実施できるという効果を奏することから、アルゴリズムに従って処理を行う各種分析装置に対しても広く適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象となる物品に対してX線を照射し、前記物品を透過したX線の検出結果に基づいて形成されたX線画像に対して画像処理を施して前記物品の検査を行うX線検査装置の画像処理手順の生成方法であって、
複数の画像処理手順を用意する第1のステップと、
前記画像処理手順のそれぞれによって前記X線画像を画像処理し、前記X線画像に対する前記画像処理手順それぞれの適応度合いである適応度を算出する第2のステップと、
前記適応度に基づいて前記検査において使用される最適な前記画像処理手順を自動的に選択する第3のステップと、
を備えているX線検査装置の画像処理手順の生成方法。
【請求項2】
検査対象となる物品に対してX線を照射し、前記物品を透過したX線の検出結果に基づいて形成されたX線画像に対して画像処理を施して前記物品の検査を行うX線検査装置であって、
前記物品に対して照射されたX線を検出して所定のX線画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部が取得した前記X線画像に対して複数の画像処理手順によって画像処理を施し、前記X線画像に対する前記各画像処理手順の適応度合いである適応度を算出し、前記適用度に基づいて前記検査において使用される最適な画像処理手順を自動的に選択する採用画像処理手順決定部と、
を備えたX線検査装置。
【請求項3】
前記画像取得部は、前記所定のX線画像を、実際に前記物品に対して照射されたX線を検出して新たに取得する、
請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記画像取得部は、前記所定のX線画像を、過去に取得したX線画像を記憶する記憶部から前記X線画像を呼び出して取得する、
請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記採用画像処理手順決定部は、所定の画像処理パーツをランダムに組み合わせて前記複数の画像処理手順を生成する、
請求項2から4のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記画像処理パーツは、前記X線画像に対して画像処理を施すためのフィルタである、
請求項5に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記採用画像処理手順決定部は、前記適用度に基づいて新たな複数の画像処理手順を生成して再度前記画像処理手順の適応度を算出するルーチンを繰り返して前記採用画像処理手順を決定する、
請求項2から6のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記採用画像処理手順決定部が前記適応度に基づいて選択した前記画像処理手順によって前記X線画像の画像処理を行った結果に基づいて、前記検査対象となる物品に異物が混入しているか否かの検査を行う異物判定部を、さらに備えた、
請求項2から7のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項9】
前記画像取得部は、前記検査対象となる物品の良品画像を取得し、前記良品画像に所定の数、大きさの仮想異物像をブレンドして前記X線画像を形成する、
請求項8に記載のX線検査装置。
【請求項10】
前記画像取得部は、前記良品画像を、実際に前記物品に対して照射されたX線を検出することで新たに取得する、
請求項9に記載のX線検査装置。
【請求項11】
前記画像取得部は、前記良品画像を、過去に取得した良品画像を記憶する記憶部から前記良品画像を呼び出して取得する、
請求項9に記載のX線検査装置。
【請求項12】
前記画像取得部は、過去に取得した異物入りのX線画像を記憶する記憶部から前記異物入りのX線画像を呼び出して、ユーザによって位置が指定された異物像を仮想異物像として用いる、
請求項9から11のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項13】
前記画像取得部は、良品の前記物品に所定の異物を混入させて撮影したX線画像を取得し、前記X線画像に含まれる異物像の位置を指定して仮想異物像として用いる、
請求項9から11のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項14】
前記採用画像処理手順決定部は、前記各画像処理手順による画像処理時間を考慮して前記適応度の算出を行う、
請求項2から13のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項15】
前記採用画像処理手順決定部は、少なくとも、前記X線画像に対して画像処理を行った結果、得られる画像に含まれる異物の明るさの最小値、平均値、異物以外の画像の明るさの最大値に基づいて、前記適応度を算出する、
請求項2から14のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項16】
前記採用画像処理手順決定部は、前記複数の画像処理手順の中から選択された2つの画像処理手順を交配して次世代の画像処理手順を生成する、
請求項2から15のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項17】
前記採用画像処理手順決定部は、所定の世代数になるまで、または所定の適応度に達するまで、または所定の時間が経過するまで、前記画像処理手順の最適化を繰り返す、
請求項2から16のいずれか1項に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【国際公開番号】WO2006/001107
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【発行日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528358(P2006−528358)
【国際出願番号】PCT/JP2005/005537
【国際出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】