説明

α−ヒドロキシケトン化合物の製造方法

【課題】工業的に有利なα−ヒドロキシケトン化合物の製造方法の提供。
【解決手段】オスミウム化合物と三級アミン化合物または三級アミンオキシド化合物との存在下、3置換オレフィン化合物式(1)と有機ヒドロパーオキシドとを反応させるα−ヒドロキシケトン化合物式(2)の製造方法。(式中、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基等を表す。)



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−ヒドロキシケトン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α−ヒドロキシケトン化合物の製造方法としては、例えば、オスミウム化合物の存在下、3置換オレフィン化合物とN−メチルモルホリン−N−オキシドとを反応させる方法(例えば、非特許文献1参照)が知られている。しかし、かかる方法は、収率面で工業的に満足できるものではなかった。
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,80,2226-2229 (1958)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような状況のもと、本発明者は、工業的に有利なα−ヒドロキシケトン化合物の製造方法を開発すべく、鋭意検討したところ、オスミウム化合物と三級アミン化合物または三級アミンオキシド化合物との存在下、3置換オレフィン化合物と有機ヒドロパーオキシドとを反応させることにより、収率よくα−ヒドロキシケトン化合物が得られることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明は、オスミウム化合物と三級アミン化合物または三級アミンオキシド化合物との存在下、3置換オレフィン化合物と有機ヒドロパーオキシドとを反応させるα−ヒドロキシケトン化合物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の方法によれば、α−ヒドロキシケトン化合物を収率よく得ることができるため、工業的に有利である。また、イオン性液体を溶媒として用いれば、オスミウム化合物と三級アミン化合物または三級アミンオキシド化合物とを回収し、リサイクル使用することが可能となるため、さらに有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
3置換オレフィン化合物としては、炭素−炭素二重結合を有し、該二重結合を形成している二つの炭素原子上に置換基が三つ結合しているものであればよく、またかかる置換基のうち任意の二つが一緒になって、その結合炭素原子とともに環構造を形成していてもよい。
【0008】
かかる3置換オレフィン化合物としては、例えば式(1)
【化1】

(式中、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシ基またはハロゲン原子を表す。また、RとR、RとRまたはRとRが一緒になって、その結合炭素原子とともに環構造を形成していてもよい。)
で示されるオレフィン化合物が挙げられる。
【0009】
、RおよびRで示されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。これらアルキル基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メンチルオキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−フェノキシフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルフェニル基等の置換されていてもよいアリール基;フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、メンチルオキシカルボニル基、クロロメトキシカルボニル基、フルオロメトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、メトキシメトキシカルボニル基、エトキシメトキシカルボニル基、メトキシエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、4−クロロベンジルオキシカルボニル基、4−メチルベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基、3−フェノキシベンジルオキシカルボニル基、2,3,5,6−テトラフルオロベンジルオキシカルボニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジルオキシカルボニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジルオキシカルボニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジルオキシカルボニル基等の置換されていてもよいアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;カルボキシ基;等の基で置換されていてもよい。かかる基で置換されたアルキル基の具体例としては、クロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基、3−メトキシカルボニル−2,2−ジメチルシクロプロピル基、3−エトキシカルボニル−2,2−ジメチルシクロプロピル基、3−(2,3,5,6−テトラフルオロベンジルオキシカルボニル)−2,2−ジメチルシクロプロピル基、3−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジルオキシカルボニル)−2,2−ジメチルシクロプロピル基、3−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジルオキシカルボニル)−2,2−ジメチルシクロプロピル基、3−(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジルオキシカルボニル)−2,2−ジメチルシクロプロピル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、3−フェノキシベンジル基、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル基等が挙げられる。
【0010】
アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メンチルオキシ基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。これらアルコキシ基は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メンチルオキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−フェノキシフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルフェニル基等の置換されていてもよいアリール基;等の基で置換されていてもよい。かかる基で置換されたアルコキシ基の具体例としては、クロロメトキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−クロロベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基、3−フェノキシベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0011】
アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。これらアリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メンチルオキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;等の基で置換されていてもよい。かかる基で置換されたアリール基の具体例としては、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−フェノキシフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルフェニル基等が挙げられる。
【0012】
アリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜10のアリールオキシ基が挙げられる。これらアリールオキシ基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メンチルオキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;等の基で置換されていてもよい。かかる基で置換されたアリールオキシ基の具体例としては、2−メチルフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基等が挙げられる。
【0013】
置換されていてもよいアシル基としては、カルボニル基と前記置換されていてもよいアルキル基または前記置換されていてもよいアリール基とから構成される基であり、例えばアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、フェニルアセチル基等が挙げられる。
【0014】
置換されていてもよいアルコキシカルボニル基とは、前記置換されていてもよいアルコキシ基とカルボニル基とから構成される基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、メンチルオキシカルボニル基、クロロメトキシカルボニル基、フルオロメトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、メトキシメトキシカルボニル基、エトキシメトキシカルボニル基、メトキシエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、4−クロロベンジルオキシカルボニル基、4−メチルベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基、3−フェノキシベンジルオキシカルボニル基、2,3,5,6−テトラフルオロベンジルオキシカルボニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジルオキシカルボニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジルオキシカルボニル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0015】
置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基とは、前記置換されていてもよいアリールオキシ基とカルボニル基とから構成される基であり、例えばフェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、2−メチルフェノキシカルボニル基、4−クロロフェノキシカルボニル基、4−メチルフェノキシカルボニル基、4−メトキシフェノキシカルボニル基、3−フェノキシフェノキシカルボニル基等が挙げられる。
【0016】
ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0017】
とR、RとRまたはRとRが一緒になって、その結合炭素原子とともに形成していてもよい環構造としては、例えばシクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等が挙げられる。
【0018】
3置換オレフィン化合物の具体例としては、2−メチル−2−ペンテン、3−メチル−2−ペンテン、3−エチル−2−ペンテン、2−メチル−2−ヘキセン、3−メチル−2−ヘキセン、(2−メチルプロペニル)ベンゼン、2−フェニル−2−ブテン、1−メチルシクロペンテン、1,3−ジメチルシクロペンテン、1,4−ジメチルシクロペンテン、エチリデンシクロヘキサン、1−メチルシクロヘキセン、1,3−ジメチルシクロヘキセン、1,5−ジメチルシクロヘキセン、イソホロン、2−カレン、3−カレン、α−ピネン、7−メトキシ−α−カラコレン、プレニルアセテート、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)−シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)−シクロプロパンカルボン酸エチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)−シクロプロパンカルボン酸イソプロピル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)−シクロプロパンカルボン酸tert−ブチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)−シクロプロパンカルボン酸シクロヘキシル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)−シクロプロパンカルボン酸メンチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)−シクロプロパンカルボン酸ベンジル、
【0019】
3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)−シクロプロパンカルボン酸(4−クロロベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)−シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)−シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)−シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)−シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)−シクロプロパンカルボン酸(3−フェノキシベンジル)等が挙げられる。
【0020】
3置換オレフィン化合物の二重結合部分の立体配置は、E体であっても、Z体であっても、それらの混合物であってもよい。また、3置換オレフィン化合物の中には、その分子内に不斉炭素を有しており、光学異性体が存在するものがあるが、本発明には、光学異性体の単独または混合物のいずれも用いることができる。3置換オレフィンは、市販のものを用いてもよいし、任意の公知の方法により製造して用いてもよい。
【0021】
オスミウム化合物としては、例えばオスミウム(VI)酸カリウム二水和物、オスミウム(VI)酸ナトリウム二水和物、酸化オスミウム(VIII)、酸化オスミウム(IV)、三塩化オスミウム、ヘキサクロロオスミウム酸、ヘキサクロロオスミウム酸ナトリウム、ヘキサクロロオスミウム酸カリウム、オスミウムカルボニル、ビス(シクロペンタジエニル)オスミウム、ドデカカルボニルトリスオスミウム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を同時に用いてもよい。好ましくは、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物、オスミウム(VI)酸ナトリウム二水和物、酸化オスミウム(VIII)、酸化オスミウム(IV)からなる群から選ばれる少なくとも一つのオスミウム化合物である。かかるオスミウム化合物は、通常、市販のものを用いることができる。
【0022】
オスミウム化合物の使用量は、3置換オレフィン化合物に対して、通常0.00001〜0.01モル倍の範囲である。
【0023】
三級アミン化合物としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ(n−プロピル)アミン、トリイソプロピルアミン、トリ(n−ブチル)アミン、トリイソブチルアミン、トリ(n−ペンチル)アミン、トリ(n−ヘキシル)アミン、トリ(n−ヘプチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン、トリ(n−ノニル)アミン、トリ(n−デシル)アミン、トリ(n−ドデシル)アミン、トリ(n−テトラデシル)アミン、トリ(n−ヘキサデシル)アミン、トリ(n−オクタデシル)アミン、ジメチルエチルアミン、ジメチル(n−プロピル)アミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジメチル(n−ブチル)アミン、ジメチルイソブチルアミン、ジメチル(n−ペンチル)アミン、ジメチル(n−ヘキシル)アミン、ジメチル(n−ヘプチル)アミン、ジメチル(n−オクチル)アミン、ジメチル(n−ノニル)アミン、ジメチル(n−デシル)アミン、ジメチル(n−ウンデシル)アミン、ジメチル(n−ドデシル)アミン、ジメチル(n−テトラデシル)アミン、ジメチル(n−ヘキサデシル)アミン、ジメチル(n−オクタデシル)アミン、
【0024】
メチルジエチルアミン、ジ(n−プロピル)メチルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、ジ(n−ブチル)メチルアミン、ジイソブチルメチルアミン、ジ(n−ペンチル)メチルアミン、ジ(n−ヘキシル)メチルアミン、ジ(n−ヘプチル)メチルアミン、ジ(n−オクチル)メチルアミン、ジ(n−ノニル)メチルアミン、ジ(n−デシル)メチルアミン、ジ(n−ドデシル)メチルアミン、ジ(n−テトラデシル)メチルアミン、ジ(n−ヘキサデシル)メチルアミン、ジ(n−オクタデシル)メチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジ(n−ブチル)ベンジルアミン、ジ(n−ヘキシル)ベンジルアミン、ジ(n−オクチル)ベンジルアミン、ジ(n−デシル)ベンジルアミン、ジ(n−ドデシル)ベンジルアミン、ジ(n−オクタデシル)ベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジ(n−ブチル)アニリン、N,N−ジ(n−ヘキシル)アニリン、N,N−ジ(n−オクチル)アニリン、N,N−ジ(n−デシル)アニリン、N,N−ジ(n−ドデシル)アニリン、N−(n−ヘキサデシル)アニリン、N−(n−オクタデシル)アニリン、
【0025】
N−メチルモルホリン、N−(n−ブチル)モルホリン、N−(n−ヘキシル)モルホリン、N−(n−オクチル)モルホリン、N−(n−デシル)モルホリン、N−(n−ドデシル)モルホリン、N−(n−ヘキサデシル)モルホリン、N−(n−オクタデシル)モルホリン、N−メチルピロリジン、N−(n−ブチル)ピロリジン、N−(n−ヘキシル)ピロリジン、N−(n−オクチル)ピロリジン、N−(n−デシル)ピロリジン、N−(n−ドデシル)ピロリジン、N−(n−ヘキサデシル)ピロリジン、N−(n−オクタデシル)ピロリジン、N−メチルピペリジン、N−(n−ブチル)ピペリジン、N−(n−ヘキシル)ピペリジン、N−(n−オクチル)ピペリジン、N−(n−デシル)ピペリジン、N−(n−ドデシル)ピペリジン、N−(n−ヘキサデシル)ピペリジン、N−(n−オクタデシル)ピペリジン、4−ジメチルアミノピリジン、4−[ジ(n−ヘキシル)アミノ]ピリジン等が挙げられる。かかる三級アミン化合物は、通常、市販のものを用いることができる。
【0026】
三級アミンオキシド化合物とは、前記三級アミン化合物のアミノ基を構成する窒素原子が酸化された化合物であり、例えばトリメチルアミンN−オキシド、トリエチルアミンN−オキシド、N−メチルモルホリンN−オキシド等が挙げられる。かかる三級アミンオキシド化合物は、市販のものを用いてもよいし、対応する三級アミン化合物を酸化して得られるものを用いてもよい。
【0027】
三級アミン化合物または三級アミンオキシド化合物(以下、三級アミン化合物または三級アミンのキシド化合物を、三級アミン類と略記することもある。)の使用量は、通常、オスミウム化合物に対して1〜1000モル倍の範囲である。なかでも、3置換オレフィン化合物に対して0.1モル倍以下の範囲が好ましい。
【0028】
有機ヒドロパーオキシドとしては、例えばtert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−アミルヒドロパーオキシド、キュメンヒドロパーオキシド、シメンヒドロパーオキシド等が挙げられる。有機ヒドロパーオキシドは、単離されたものを用いてもよいが、通常、水溶液もしくは有機溶媒溶液として用いる。水溶液もしくは有機溶媒溶液中の有機ヒドロパーオキシドの濃度は、特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜90重量%程度の範囲である。かかる有機ヒドロパーオキシドは、市販のものを用いてもよいし、任意の公知方法により製造して用いてもよい。
【0029】
有機ヒドロパーオキシドの使用量は、3置換オレフィン化合物に対して、通常2モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面も考慮すると、実用的には50モル倍以下である。
【0030】
3置換オレフィン化合物と有機ヒドロパーオキシドとの反応は、通常、溶媒の存在下に実施する。溶媒としては、水や有機溶媒を用いてもよいし、後述するイオン性液体を用いてもよい。有機溶媒としては、例えば、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;メタノール、エタノール、tert−ブタノール等のアルコール溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;等が挙げられる。
【0031】
水や有機溶媒を用いる場合、その使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、3置換オレフィン化合物に対して100重量倍以下である。
【0032】
反応温度は、通常−20〜200℃の範囲である。
【0033】
各反応試剤の混合順序は特に限定されないが、好ましくは、オスミウム化合物、三級アミン類、3置換オレフィン化合物および必要に応じて溶媒を混合し、該混合物中に、有機ヒドロパーオキシドを徐々に加えていく方法が用いられる。ここで、有機ヒドロパーオキシドは、3置換オレフィン化合物または溶媒との混合物であってもよい。また、有機ヒドロパーオキシドと同時並行して3置換オレフィン化合物または溶媒を加えていってもよい。
【0034】
反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
【0035】
本発明の反応により、α−ヒドロキシケトン化合物が得られる。例えば、式(1)で表される3置換オレフィン化合物を用いた場合、得られるα−ヒドロキシケトン化合物は、式(2)
【化2】

(式中、R、RおよびRは上記と同一の意味を表す。)
で示されるα−ヒドロキシケトン化合物である。
【0036】
溶媒として水または有機溶媒を用いた場合、得られた反応混合物に、例えば還元処理、濾過処理、分液処理、濃縮処理等の後処理を行えば、目的とするα−ヒドロキシケトン化合物を単離することができる。還元処理を行う場合の還元剤としては、α−ヒドロキシケトン化合物と反応せず、残存した有機ヒドロパーオキシドを分解する化合物であれば、特に限定されないが、好ましくは亜硫酸ナトリウムが用いられる。また、分液処理を行う場合は、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を用いてもよい。水に不溶の有機溶媒としては、例えばヘキサン、へプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;等が挙げられ、その使用量は特に制限されない。得られたα−ヒドロキシケトン化合物は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィー等の通常の手段によりさらに精製されてもよい。
【0037】
かくして得られるα−ヒドロキシケトン化合物としては、例えば2−メチル−2−ヒドロキシ−3−ペンタノン、3−メチル−3−ヒドロキシ−2−ペンタノン、3−エチル−3−ヒドロキシ−2−ペンタノン、2−メチル−2−ヒドロキシ−3−ヘキサノン、3−メチル−3−ヒドロキシ−2−ヘキサノン、2−ベンゾイル−2−プロパノール、3−フェニル−3−ヒドロキシ−2−ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチルシクロペンタノン、2−ヒドロキシ−2,5−ジメチルシクロペンタノン、2−ヒドロキシ−2,4−ジメチルシクロペンタノン、1−アセチル−1−ヒドロキシシクロヘキサン、2−ヒドロキシ−2−メチルシクロヘキサノン、2−ヒドロキシ−2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2−ヒドロキシ−2,3−ジメチルシクロヘキサノン、3−ヒドロキシ−3,5,5−トリメチル−2−オキソシクロヘキサノン、3−ヒドロキシ−3,7,7−トリメチルビシクロ[4.1.0]ヘプタン−2−オン、3−ヒドロキシ−4−カラノン、3−ヒドロキシ−3,6,6−トリメチル−2−ノルピナノン、3,4−ジヒドロ−1−ヒドロキシ−1−イソプロピル−6−メトキシ−4,7−ジメチル−2(1H)−ナフタレノン、1−アセトキシ−3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)シクロプロパンカルボン酸エチル、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)シクロプロパンカルボン酸イソプロピル、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)シクロプロパンカルボン酸シクロヘキシル、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)シクロプロパンカルボン酸メンチル、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)シクロプロパンカルボン酸ベンジル、
【0038】
3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)シクロプロパンカルボン酸(4−クロロベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)シクロプロパンカルボン酸(4−フェノキシベンジル)等が挙げられる。
【0039】
溶媒としてイオン性液体を用いれば、オスミウム化合物や三級アミン類を回収し、リサイクル使用することが可能となるため、さらに有利である。
【0040】
イオン性液体とは、通常、有機カチオン種とアニオン種とから構成される塩であり、その融点が100℃以下程度であり、300℃程度の高温まで安定で液体状態を保つ化合物である。かかるイオン性液体としては、例えばアルキル置換イミダゾリウム塩、アルキル置換ピリジニウム塩、第四級アンモニウム塩、第四級ホスフォニウム塩、第三級スルホニウム塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、アルキル置換イミダゾリウム塩、アルキル置換ピリジニウム塩および第四級アンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種であり、なかでもアルキル置換イミダゾリウム塩が好ましい。
【0041】
アルキル置換イミダゾリウム塩とは、通常、イミダゾリン環上の少なくとも一つの窒素原子が置換されていてもよいアルキル基と結合したイミダゾリウムカチオンと、例えばテトラフルオロボレートアニオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミドアニオン、アルキルカルボキシレートアニオン、アルカンスルホネートアニオン等のアニオン種とから構成される塩である。ここで、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基等の炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。これらアルキル基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;等の基で置換されていてもよい。かかる基で置換されたアルキル基の具体例としては、クロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。かかる置換されていてもよいアルキル基は、イミダゾリン環上の炭素原子にも結合していてよい。
【0042】
アルキル置換イミダゾリウム塩の具体例としては、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−イソブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−メチル−3−メトキシエチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3,5−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,3−ジエチル−5−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等のアルキル置換イミダゾリウムテトラフルオロボレートおよび前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンが塩化物イオンに代わったアルキル置換イミダゾリウムクロリド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンが臭化物イオンに代わったアルキル置換イミダゾリウムブロミド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがヨウ化物イオンに代わったアルキル置換イミダゾリウムヨーダイド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがヘキサフルオロホスフェートアニオンに代わったアルキル置換イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミドアニオンに代わったアルキル置換イミダゾリウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルキルカルボキシレートアニオンに代わったアルキル置換イミダゾリウムアルキルカルボキシレート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルカンスルホネートアニオンに代わったアルキル置換イミダゾリウムアルカンスルホネート;等が挙げられる。
【0043】
アルキル置換ピリジニウム塩とは、通常、ピリジン環上の窒素原子が前記置換されていてもよいアルキル基と結合したピリジニウムカチオンと、前記アニオン種とから構成される塩である。その具体例としては、N−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−プロピルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−ブチル−4−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−イソブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−ペンチルピリジニウムテトラフルオロボレート等のアルキル置換ピリジニウムテトラフルオロボレートおよび前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンが塩化物イオンに代わったアルキル置換ピリジニウムクロリド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンが臭化物イオンに代わったアルキル置換ピリジニウムブロミド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがヨウ化物イオンに代わったアルキル置換ピリジニウムヨーダイド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがヘキサフルオロホスフェートアニオンに代わったアルキル置換ピリジニウムヘキサフルオロホスフェート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミドアニオンに代わったアルキル置換ピリジニウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルキルカルボキシレートに代わったアルキル置換ピリジニウムアルキルカルボキシレート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルカンスルホネートアニオンに代わったアルキル置換ピリジニウムアルカンスルホネート;等が挙げられる。
【0044】
第四級アンモニウム塩とは、通常、同一または相異なる前記置換されていてもよいアルキル基4つと窒素原子とから構成されるアンモニウムカチオンと、前記アニオン種とから構成される塩である。その具体例としては、トリメチルペンチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリメチルヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリメチルヘプチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリメチルオクチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルペンチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の第四級アンモニウムテトラフルオロボレートおよび前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがヘキサフルオロホスフェートアニオンに代わった第四級アンモニウムヘキサフルオロホスフェート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミドアニオンに代わった第四級アンモニウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルキルカルボキシレートアニオンに代わった第四級アンモニウムアルキルカルボキシレート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルカンスルホネートアニオンに代わった第四級アンモニウムアルカンスルホネート;等が挙げられる。
【0045】
第四級ホスフォニウム塩とは、通常、同一または相異なる前記置換されていてもよいアルキル基4つとリン原子とから構成されるホスフォニウムカチオンと、前記アニオン種とから構成される塩である。その具体例としては、トリメチルペンチルホスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルホスフォニウムテトラフルオロボレートの第四級ホスフォニウムテトラフルオロボレートおよび前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがヘキサフルオロホスフェートアニオンに代わった第四級ホスフォニウムヘキサフルオロホスフェート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミドアニオンに代わった第四級ホスフォニウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルキルカルボキシレートアニオンに代わった第四級ホスフォニウムアルキルカルボキシレート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルカンスルホネートアニオンに代わった第四級ホスフォニウムアルカンスルホネート;等が挙げられる。
【0046】
第三級スルホニウム塩とは、通常、同一または相異なる前記置換されていてもよいアルキル基3つとイオウ原子とから構成されるスルホニウムカチオンと、前記アニオン種とから構成される塩である。その具体例としては、トリエチルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリブチルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリプロピルスルホニウムテトラフルオロボレート等の第三級スルホニウムテトラフルオロボレートおよび前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがヘキサフルオロホスフェートアニオンに代わった第三級スルホニウムヘキサフルオロホスフェート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミドアニオンに代わった第三級スルホニウムビス(パーフルオロアルカンスルホニル)アミド;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルキルカルボキシレートアニオンに代わった第三級スルホニウムアルキルカルボキシレート;前記各化合物のテトラフルオロボレートアニオンがアルカンスルホネートアニオンに代わった第三級スルホニウムアルカンスルホネート;等が挙げられる。
【0047】
かかるイオン性液体の使用量は、特に制限されないが、3置換オレフィン化合物に対して、通常0.1〜10重量倍の範囲である。また、イオン性液体を溶媒として用いる場合、前述した水や有機溶媒を用いる必要はないが、もちろんそれらを用いてもよい。
【0048】
溶媒としてイオン性液体を用いた場合、得られた反応混合物に、例えば還元処理、濾過処理、分液処理、濃縮処理等の後処理を行えば、目的とするα−ヒドロキシケトン化合物を単離することができる。還元処理を行う場合の還元剤としては、α−ヒドロキシケトン化合物と反応せず、残存した有機ヒドロパーオキシドを分解する化合物であれば、特に限定されないが、好ましくは亜硫酸ナトリウムが用いられる。また、分液処理を行う場合は、必要に応じてイオン性液体と混合しない有機溶媒を用いてもよい。イオン性液体と混合しない有機溶媒としては、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;等が挙げられ、その使用量は特に制限されない。
【0049】
上記の後処理時に、通常、処理物が有機層とイオン性液体層との2層あるいはそれに加えて水層を含む3層に分離する。この場合、分液処理により有機層とイオン性液体層を取得すればよい。該有機層は、通常、α−ヒドロキシケトン化合物を含んでおり、これを濃縮処理することにより、α−ヒドロキシケトン化合物を単離することができる。得られたα−ヒドロキシケトン化合物は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィー等の通常の手段により、さらに精製されてもよい。
【0050】
また、前記イオン性液体層は、通常、オスミウム化合物や三級アミン類を含んでおり、取得したイオン性液体層は、そのままもしくは必要に応じて洗浄処理、濃縮処理等を行った後、本発明の反応にリサイクル使用することができる。該イオン性液体層をリサイクル使用する場合は、通常、新たにオスミウム化合物を用いなくてもよいが、必要に応じてオスミウム化合物を追加して用いてもよい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0052】
実施例1
50mLのフラスコに1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート1g、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物1mg、N−メチルモルホリン−N−オキシド10mgおよび3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチル1.82gを仕込み、内温25℃にて攪拌しながら、70%tert−ブチルヒドロパーオキシド水溶液3.0gを1時間かけて滴下した。その後、同温度で4時間攪拌した。反応混合物をn−ヘキサン10gで3回抽出処理し、得られた有機層を合一して、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)シクロプロパンカルボン酸メチルを含む溶液を得た。ガスクロマトグラフィ−(内部標準法)にて、分析したところ、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)シクロプロパンカルボン酸メチルの収率は90%であった。
【0053】
実施例2
50mLのフラスコに1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート2g、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物2mg、N−メチルモルホリン−N−オキシド10mgおよびエチリデンシクロヘキサン1.1gを仕込み、内温60℃にて攪拌しながら、70%tert−ブチルヒドロパーオキシド水溶液3.0gを1時間かけて滴下した。その後、同温度で2時間攪拌した。反応混合物をn−ヘキサン10gで3回抽出処理し、得られた有機層を合一して、1−アセチル−1−ヒドロキシシクロヘキサンを含む溶液を得た。ガスクロマトグラフィ−(内部標準法)にて分析したところ、1−アセチル−1−ヒドロキシシクロヘキサンの収率は56%であった。
【0054】
実施例3
50mLのフラスコに1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート500mg、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物0.7mg、N−メチルモルホリン−N−オキシド5mgおよび(2−メチルプロペニル)ベンゼン500mgを仕込み、内温50℃にて攪拌しながら、70%tert−ブチルヒドロパーオキシド水溶液1.2gを1時間かけて滴下した。その後、同温度で2時間攪拌した。反応混合物をn−ヘキサン10gで3回抽出処理し、得られた有機層を合一して、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノンを含む溶液を得た。ガスクロマトグラフィ−(内部標準法)にて分析したところ、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノンの収率は64%であった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の製造方法により得られるα−ヒドロキシケトン化合物は、医農薬、有用天然物や電子材料およびそれらの中間体等に用いられる重要な化合物である(例えば、特開2006−152114号公報、J.Am.Chem.Soc.,110,2919-2924 (1988)参照)。かかる化合物を収率よく得ることができるため、本発明は工業的に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オスミウム化合物と三級アミン化合物または三級アミンオキシド化合物との存在下、3置換オレフィン化合物と有機ヒドロパーオキシドとを反応させるα−ヒドロキシケトン化合物の製造方法。
【請求項2】
オスミウム化合物が、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物、オスミウム(VI)酸ナトリウム二水和物、酸化オスミウム(VIII)、酸化オスミウム(IV)からなる群から選ばれる少なくとも一つのオスミウム化合物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
オスミウム化合物の使用量が、3置換オレフィン化合物に対して0.00001〜0.01モル倍の範囲である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
三級アミン化合物または三級アミンオキシド化合物の使用量が、オスミウム化合物に対して1〜1000モル倍の範囲であり、かつ、3置換オレフィン化合物に対して0.1モル倍以下の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
有機ヒドロパーオキシドが、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−アミルヒドロパーオキシド、キュメンヒドロパーオキシド、シメンヒドロパーオキシドから選ばれる少なくとも一つの有機ヒドロパーオキシドである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
3置換オレフィン化合物が、式(1)
【化1】

(式中、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアリールオキシカルボニル基、カルボキシ基またはハロゲン原子を表す。また、RとR、RとRまたはRとRが一緒になって、その結合炭素原子とともに環構造を形成していてもよい。)
で示される3置換オレフィン化合物であり、得られるα−ヒドロキシケトン化合物が式(2)
【化2】

(式中、R、RおよびRは上記と同一の意味を表す。)
で示されるα−ヒドロキシケトン化合物である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
イオン性液体の存在下に反応を実施する請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
イオン性液体が、アルキル置換イミダゾリウム塩、アルキル置換ピリジニウム塩および第四級アンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種のイオン性液体である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の製造方法において、α−ヒドロキシケトン化合物の製造後に、オスミウム化合物ならびに三級アミン化合物または三級アミンオキシド化合物を含むイオン性液体層を回収し、該イオン性液体層をリサイクル使用する方法。

【公開番号】特開2008−115128(P2008−115128A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301253(P2006−301253)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】