説明

α−フルオロアルキルテトラベナジン及びジヒドロテトラベナジンイメージング剤並びにプローブ

本発明は、以下の構造Iを有する新規α−フルオロアルキル化合物及び対応するジヒドロテトラベナジン化合物IV並びにかかる化合物の製造において有用な中間体を提供する。α−フルオロアルキル化合物はラセミ形態及び鏡像異性的に富化された形態の両方で提供され、フッ素−18及びフッ素−19のいずれか一方又は両方を含み得る。α−フルオロアルキル化合物は、例えばヒトの糖尿病に関連するバイオマーカーであるVMAT−2に対して高い親和性を有することが示される。フッ素−18基を含むα−フルオロアルキル化合物は、VMAT−2バイオマーカーを標的化するPETイメージング剤として有用である。非放射性標識α−フルオロアルキル化合物は、PETイメージング剤を発見するためのプローブとして有用である。
【化1】


【化2】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラベナジン及びジヒドロテトラベナジンに関連するα−フルオロアルキル化合物並びにかかるα−フルオロアルキル化合物の製造に際して有用な中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
1957年に初めて報告されて以来(Pletscher,A.(1957)Release of 5−hydroxytryptamine by benzoquinolizine derivatives with sedative action,Science 126,507)、テトラベナジン及び構造的に関連する化合物が広く調査され、若干のTBZ化合物及びテトラベナジン誘導体がヒトの健康に影響を及ぼす各種の状態を治療するのに有望であることが示されてきた。例えば、ジヒドロテトラベナジンは精神分裂病及び他の精神病の治療のための薬剤として確認されており(例えば、国際公開第2007/017654号を参照されたい)、テトラベナジンはハンチントン病の治療のための薬剤として有望であることが示されている(Neurology(2006),66(3),366−372)。テトラベナジン及びその誘導体の生物学的研究において使用される大抵の製法はラセミ化合物に関して実施されてきたが、少なくとも1つの事例では、別々に試験した鏡像異性体が示す生物学的活性は大幅に異なっていた(Koeppe,R.A.et al.(1999)Assessment of extrastriatal vesicular monoamine transporter binding site density using stereoisomers of [11C]dihydrotetrabenazine,J Cereb Blood Flow Metab 19,1376−1384を参照されたい)。
【0003】
さらに最近になって、フッ素−18原子を組み込んだ9−デスメチル(±)−ジヒドロテトラベナジンの誘導体は、PETイメージング剤として有用であることが示された(Nuclear Medicine and Biology 33(2006)685−694)。また、Nuclear Medicine and Biology 34(2007)239−246、及びNuclear Medicine and Biology 34(2007)233−237も参照されたい。
【0004】
本発明は、新しい部類のフッ素化テトラベナジン及びジヒドロテトラベナジン誘導体並びにフッ素化テトラベナジン及びジヒドロテトラベナジン類似体を提供すると共に、かかる化合物を鏡像異性的に富化された形態又はラセミ形態で製造するために使用できる効率的な合成方法を開示する。本発明によって提供されるα−フルオロアルキルテトラベナジン及びジヒドロテトラベナジン化合物は、PETイメージング剤、PETイメージング剤開発のためのプローブ、及び治療剤として有用である。加えて、本発明は、主題のテトラベナジン及びジヒドロテトラベナジン誘導体並びにテトラベナジン及びジヒドロテトラベナジン類似体の一方又は両方の鏡像異性体を製造するために使用できる新規合成中間体組成物を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/130365号パンフレット
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、本発明は以下の構造Iを有するα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を提供する。
【0007】
【化1】

【0008】
式中、R1はC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、以下の構造Iを有するα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0010】
【化2】

【0011】
式中、R1は1以上のフッ素−18原子を含むC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0012】
さらに別の実施形態では、本発明は、以下の構造IVを有するα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を提供する。
【0013】
【化3】

【0014】
式中、R1はC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素、C1〜C10脂肪族基、C3〜C10脂環式基又はC3〜C10芳香族基である。
【0015】
さらに別の実施形態では、本発明は、以下の構造IVを有するα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0016】
【化4】

【0017】
式中、R1は1以上のフッ素−18原子を含むC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素、C1〜C10脂肪族基、C3〜C10脂環式基又はC3〜C10芳香族基である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語を用いるが、これらは以下の意味をもつものと定義される。
【0019】
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
【0020】
「任意の」又は「任意には」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象が起こる場合と起こらない場合を包含する。
【0021】
本明細書で使用する「溶媒」という用語は、ただ1種の溶媒又は溶媒の混合物を意味し得る。
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲の全体を通じて使用される概略表現用語は、それが関係する基本機能の変化を生じることなしに変動することが許容される任意の数量表現を修飾するために適用できる。したがって、「約」のような用語で修飾された値は、明記された厳密な値に限定すべきでない。場合によっては、概略表現用語は値を測定するための計器の精度に対応することがある。
【0023】
本明細書で使用する「芳香族基」という用語は、1以上の芳香族原子団を含む原子価1以上の原子配列をいう。1以上の芳香族原子団を含む原子価1以上の原子配列は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。本明細書で使用する「芳香族基」という用語は、特に限定されないが、フェニル基、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、ナフチル基、フェニレン基及びビフェニル基を包含する。上述の通り、芳香族基は1以上の芳香族原子団を含む。芳香族原子団は常に4n+2(式中、「n」は1以上の整数である。)の「非局在化」電子を有する環状構造であり、フェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などで例示される。芳香族基はまた、非芳香族成分を含んでいてもよい。例えば、ベンジル基はフェニル環(芳香族原子団)及びメチレン基(非芳香族成分)からなる芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は芳香族原子団(C63)が非芳香族成分−(CH24−に縮合してなる芳香族基である。便宜上、本明細書での「芳香族基」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルフェニル基はメチル基を含むC7芳香族基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロフェニル基はニトロ基を含むC6芳香族基であり、ニトロ基が官能基である。芳香族基は、4−トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhC(CF32PhO−)、4−クロロメチルフェン−1−イル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェン−1−イル(即ち、3−CCl3Ph−)、4−(3−ブロモプロプ−1−イル)フェン−1−イル(即ち、4−BrCH2CH2CH2Ph−)などのハロゲン化芳香族基を包含する。芳香族基のさらに他の例には、4−アリルオキシフェン−1−オキシ、4−アミノフェン−1−イル(即ち、4−H2NPh−)、3−アミノカルボニルフェン−1−イル(即ち、NH2COPh−)、4−ベンゾイルフェン−1−イル、ジシアノメチリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhC(CN)2PhO−)、3−メチルフェン−1−イル、メチレンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhCH2PhO−)、2−エチルフェン−1−イル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPh(CH26PhO−)、4−ヒドロキシメチルフェン−1−イル(即ち、4−HOCH2Ph−)、4−メルカプトメチルフェン−1−イル(即ち、4−HSCH2Ph−)、4−メチルチオフェン−1−イル(即ち、4−CH3SPh−)、3−メトキシフェン−1−イル、2−メトキシカルボニルフェン−1−イルオキシ(例えば、メチルサリチル)、2−ニトロメチルフェン−1−イル(即ち、2−NO2CH2Ph)、3−トリメチルシリルフェン−1−イル、4−t−ブチルジメチルシリルフェン−1−イル、4−ビニルフェン−1−イル、ビニリデンビス(フェニル)などがある。「C3〜C10芳香族基」という用語は、3以上で10以下の炭素原子を含む芳香族基を包含する。芳香族基1−イミダゾリル(C322−)はC3芳香族基を代表する。ベンジル基(C77−)はC7芳香族基を代表する。
【0024】
本明細書で使用する「脂環式基」という用語は、環状であるが芳香族でない原子配列を含む原子価1以上の基をいう。本明細書で定義される「脂環式基」は、芳香族原子団を含まない。「脂環式基」は1以上の非環式成分を含んでいてもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)は、シクロヘキシル環(環状であるが芳香族でない原子配列)及びメチレン基(非環式成分)からなる脂環式基である。脂環式基は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。便宜上、本明細書での「脂環式基」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルシクロペント−1−イル基はメチル基を含むC6脂環式基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロシクロブト−1−イル基はニトロ基を含むC4脂環式基であり、ニトロ基が官能基である。脂環式基は、同一のもの又は相異なるものであってよい1以上のハロゲン原子を含み得る。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む脂環式基には、2−トリフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、4−ブロモジフルオロメチルシクロオクト−1−イル、2−クロロジフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン−2,2−ビス(シクロヘキス−4−イル)(即ち、−C610C(CF32610−)、2−クロロメチルシクロヘキス−1−イル、3−ジフルオロメチレンシクロヘキス−1−イル、4−トリクロロメチルシクロヘキス−1−イルオキシ、4−ブロモジクロロメチルシクロヘキス−1−イルチオ、2−ブロモエチルシクロペント−1−イル、2−ブロモプロピルシクロヘキス−1−イルオキシ(例えば、CH3CHBrCH2610O−)などがある。脂環式基のさらに他の例には、4−アリルオキシシクロヘキス−1−イル、4−アミノシクロヘキス−1−イル(即ち、H2NC610−)、4−アミノカルボニルシクロペント−1−イル(即ち、NH2COC58−)、4−アセチルオキシシクロヘキス−1−イル、2,2−ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610C(CN)2610O−)、3−メチルシクロヘキス−1−イル、メチレンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610CH2610O−)、1−エチルシクロブト−1−イル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テトラヒドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610(CH26610O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、4−HOCH2610−)、4−メルカプトメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、4−HSCH2610−)、4−メチルチオシクロヘキス−1−イル(即ち、4−CH3SC610−)、4−メトキシシクロヘキス−1−イル、2−メトキシカルボニルシクロヘキス−1−イルオキシ(2−CH3OCOC610O−)、4−ニトロメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、NO2CH2610−)、3−トリメチルシリルシクロヘキス−1−イル、2−t−ブチルジメチルシリルシクロペント−1−イル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキス−1−イル(例えば、(CH3O)3SiCH2CH2610−)、4−ビニルシクロヘキセン−1−イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などがある。「C3〜C10脂環式基」という用語は、3以上で10以下の炭素原子を含む脂環式基を包含する。脂環式基2−テトラヒドロフラニル(C47O−)はC4脂環式基を代表する。シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)はC7脂環式基を代表する。
【0025】
本明細書で使用する「脂肪族基」という用語は、環状でない線状又は枝分れ原子配列からなる原子価1以上の有機基をいう。脂肪族基は1以上の炭素原子を含むものと定義される。脂肪族基をなす原子配列は、窒素、硫黄、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。便宜上、本明細書での「脂肪族基」という用語は、「環状でない線状又は枝分れ原子配列」の一部として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルペント−1−イル基はメチル基を含むC6脂肪族基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、4−ニトロブト−1−イル基はニトロ基を含むC4脂肪族基であり、ニトロ基が官能基である。脂肪族基は、同一のもの又は相異なるものであってよい1以上のハロゲン原子を含むハロアルキル基であり得る。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む脂肪族基には、ハロゲン化アルキルであるトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチレン(例えば、−CH2CHBrCH2−)などがある。脂肪族基のさらに他の例には、アリル、アミノカルボニル(即ち、−CONH2)、カルボニル、2,2−ジシアノイソプロピリデン(即ち、−CH2C(CN)2CH2−)、メチル(即ち、−CH3)、メチレン(即ち、−CH2−)、エチル、エチレン、ホルミル(即ち、−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(即ち、−CH2OH)、メルカプトメチル(即ち、−CH2SH)、メチルチオ(即ち、−SCH3)、メチルチオメチル(即ち、−CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(即ち、CH3OCO−)、ニトロメチル(即ち、−CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル(即ち、(CH33Si−)、t−ブチルジメチルシリル、3−トリメトキシシリルプロピル(即ち、(CH3O)3SiCH2CH2CH2−)、ビニル、ビニリデンなどがある。さらに他の例としては、C1〜C10脂肪族基は1以上で10以下の炭素原子を含む。メチル基(即ち、CH3−)はC1脂肪族基の例である。デシル基(即ち、CH3(CH29−)はC10脂肪族基の例である。
【0026】
上述の通り、一実施形態では、本発明は以下の構造Iを有するα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を提供する。
【0027】
【化5】

【0028】
式中、R1はC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0029】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)の化合物において、
1は、好適にはC1-6フルオロアルキル、C1-6フルオロアルコキシ(C1-6アルキル)、C1-6フルオロハロアルキル、C1-6フルオロヒドロキシアルキル及びC1-6フルオロアルキルカルボニル(C1-6アルキル)から選択され、
2及びR3は、好適には水素、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシから独立に選択される。
【0030】
式(IV)の化合物のR4は、好適には水素、C1-6アルキルカルボニル、アミノカルボニル及び(C1-6アルキル)アミノカルボニルから選択される。本発明の一態様では、R4は水素である。本発明の別の態様では、R4はC1〜C10脂肪族基、C3〜C10脂環式基又はC3〜C10芳香族基である。
【0031】
上述の通り、別の実施形態では、本発明は以下の構造IVを有するα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を提供する。
【0032】
【化6】

【0033】
式中、R1はC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素、C1〜C10脂肪族基、C3〜C10脂環式基又はC3〜C10芳香族基である。
【0034】
本発明によって提供されるα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物I及びジヒドロテトラベナジン化合物IVは、特にヒト患者における糖尿病活性と相互に関連すると考えられる1群のバイオマーカーであるタイプ2小胞モノアミン輸送体(VMAT−2)に対して高い親和性を有することが本明細書で示される。この系列の新規α−フルオロアルキルテトラベナジン化合物及びジヒドロテトラベナジン化合物においてはフッ素による置換がVMAT−2結合性に関して許容されるという発見により、本発明の化合物はVMAT−2バイオマーカーを標的化する検査においてポジトロン放出断層撮影法(PET)用イメージング剤として使用することが可能となる。
【0035】
かくして一実施形態では、本発明は、フッ素−18原子を含む一般構造Iの範囲内の放射性標識α−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を提供する。別の実施形態では、本発明は、フッ素−18原子を含む一般構造IVの範囲内の放射性標識α−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を提供する。フッ素−18標識α−フルオロアルキルテトラベナジン化合物I及びα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物IVは、例えば糖尿病に関連する病的状態に関してヒト患者のポジトロン放出断層撮影法(PET)スクリーニングを行うためのイメージング剤として使用するのに適している。ポジトロン放出断層撮影法は、ヒトの健康にとって決定的に重要な医学イメージング技法となっている。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、安定なフッ素同位体であるフッ素−19原子を含む一般構造I及びIVの範囲内のα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物及びジヒドロテトラベナジン化合物を提供する。フッ素−19原子を含むα−フルオロアルキル化合物は、標的バイオマーカー(例えば、VMAT−2)に対して最適親和性を有するα−フルオロアルキル化合物の同定を可能にする結合検査において有用である。VMAT−2のような標的バイオマーカーに対する所定のフッ素−19含有α−フルオロアルキルテトラベナジン又はジヒドロテトラベナジン化合物の実質的な結合親和性は、対応するフッ素−18含有α−フルオロアルキル化合物のPETイメージングにおける有用性の信頼できる予測指標である。本明細書に開示される通り、α−フルオロアルキルテトラベナジン化合物I及びジヒドロテトラベナジン化合物IVは、バイオマーカーVMAT−2に対して実質的な結合親和性を示す。
【0037】
本明細書全体を通じて興味の焦点は主としてヒトの健康に向けられているものの、本発明によって提供されるα−フルオロアルキルテトラベナジン及びジヒドロテトラベナジン化合物は、ヒト及び動物の各種疾患の検査及び治療に際し、イメージング剤として、イメージング剤開発のためのプローブとして、及び治療剤として有用である。
【0038】
構造Iを有するα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を以下の表1に例示する。
【0039】
【表1】

【0040】
一般に、そして本明細書全体を通じ、ある構造に関する絶対又は相対立体化学は例えば構造Iに見られるように示されていないが、該構造はすべての可能な絶対及び相対立体化学配置を包含するものとする。即ち、構造Iは絶対又は相対立体化学が示されていないα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を表している。したがって、構造Iは、環位置3及び12にR配置及びS配置の両方を有するラセミ化合物1a(表1)を含む1群のα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を表すものである。別の実施形態では、構造Iは、環位置3及び12にR配置(絶対立体化学)を有するα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物1b(表1)を表している。さらに別の実施形態では、構造Iは、化合物1bとは逆の絶対立体化学を有する化合物1d(表1)を表している。本明細書の表1に示した個々のα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物が一般構造Iの範囲内に含まれるテトラベナジン(TBZ)誘導体を例示していることは、当業者には容易に理解されよう。
【0041】
上述の通り、一実施形態では、本発明は、ラセミ混合物(例えば、化合物1a(表1))、単一の鏡像異性体(例えば、化合物1b(表1))、又は単一の主成分鏡像異性体について鏡像異性的に富化された組成物であり得る構造Iのα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を提供する。以下の表2の番号2a〜2cは、主成分鏡像異性体及び1種以上の副成分鏡像異性体を含むα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物Iを例示している。
【0042】
【表2】

【0043】
表2において、α−フルオロアルキルテトラベナジン組成物は主成分鏡像異性体(その構造は「主成分鏡像異性体の構造」欄に示されている)及び「副成分鏡像異性体」を含んでいる。表2に例示されたα−フルオロアルキルテトラベナジン組成物では、主成分鏡像異性体のモル百分率が「モル%」として示されているが、これは組成物のすべての他のα−フルオロアルキルテトラベナジン成分の量に対する表示された構造の主成分鏡像異性体のモル百分率である。ここでの議論のためには、α−フルオロアルキルテトラベナジンは一般構造Iの範囲内に含まれる任意の化合物である。番号2aは、95モル%の表示されたR,R主成分鏡像異性体及びそれより少ない量のS,S副成分鏡像異性体を含むα−フルオロアルキルテトラベナジン組成物を表している。番号2cは、88モル%の表示された構造のS,S主成分鏡像異性体及びそれより少ない量のR,R副成分鏡像異性体を含むα−フルオロアルキルテトラベナジン組成物を表している。本発明によって提供されるテトラベナジン組成物及びジヒドロテトラベナジン組成物が主成分鏡像異性体、副成分鏡像異性体、及び追加のテトラベナジン又はジヒドロテトラベナジンジアステレオマー成分を含み得ることは、当業者には容易に理解されよう。一実施形態では、本発明は、主成分鏡像異性体及び関連ジアステレオマーを含むα−フルオロアルキルテトラベナジン組成物を提供する。別の実施形態では、本発明は、主成分鏡像異性体を有しないジアステレオマー混合物であるα−フルオロアルキルテトラベナジン組成物を提供する。
【0044】
一実施形態では、本発明は、構造Iで表されるα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物であって、鏡像異性的に富化されていて環位置12にR配置を有する鏡像異性体を95モルパーセント(モル%)以上含むものを提供する。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、構造Iで表されるα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物であって、鏡像異性的に富化されていて環位置3にR配置を有する鏡像異性体を95モルパーセント(モル%)以上含むものを提供する。
【0046】
一実施形態では、本発明は、構造Iを有するα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物であって、環位置3のフッ素化脂肪族基(−R1)が環位置12の水素に対してシン配置を有するものを提供する。表2の番号2a〜2cの主成分鏡像異性体は、環位置3のフッ素化脂肪族部分(−R1)が環位置12の水素に対してシン配置を有するα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を例示している。
【0047】
一実施形態では、本発明は、以下の構造IIを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を提供する。
【0048】
【化7】

【0049】
式中、R1はC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0050】
構造IIを有する主成分鏡像異性体を以下の表3に例示する。
【0051】
【表3】

【0052】
一実施形態では、本発明は、構造IIを有する鏡像異性体を80モル%以上含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物、例えば番号3a(表3)の化合物を含む組成物であって、表示されたR,R鏡像異性体が組成物のすべての他のα−フルオロアルキルテトラベナジン成分の量に対して80モル%以上を占めるものを提供する。
【0053】
別の実施形態では、本発明は、構造IIを有する鏡像異性体を95モル%以上含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物、例えば番号3b(表3)の化合物を含むα−フルオロアルキルテトラベナジン組成物であって、表示されたR,R鏡像異性体が組成物のすべての他のα−フルオロアルキルテトラベナジン成分の量に対して95モル%以上を占めるものを提供する。
【0054】
一実施形態では、本発明は、R1がC5〜C10フッ素化脂肪族基でありかつR2及びR3がメトキシ基である構造IIを有する主成分鏡像異性体を含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を提供し、かかる化合物を以下の表4に例示する。
【0055】
【表4】

【0056】
一実施形態では、本発明は、以下の構造IIIを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキル化合物を提供する。
【0057】
【化8】

【0058】
式中、R1はC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0059】
構造IIIを有する主成分鏡像異性体を以下の表5に例示する。
【0060】
【表5】

【0061】
一実施形態では、本発明は、構造IIIを有する鏡像異性体を80モル%以上含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物、例えば番号5a(表5)の化合物を含むα−フルオロアルキルテトラベナジン組成物であって、表示されたS,S鏡像異性体が組成物のすべての他のα−フルオロアルキルテトラベナジン成分の量に対して80モル%以上を占めるものを提供する。別の実施形態では、本発明は、構造IIIを有する鏡像異性体を95モル%以上含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物、例えば番号5b(表5)の化合物を含むα−フルオロアルキルテトラベナジン組成物であって、表示されたS,S鏡像異性体が組成物のすべての他のα−フルオロアルキルテトラベナジン成分の量に対して95モル%以上を占めるものを提供する。
【0062】
別の実施形態では、本発明は、R1がC5〜C10フッ素化脂肪族基でありかつR2及びR3がメトキシ基である構造IIIを有する主成分鏡像異性体を含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキル化合物を提供し、かかる化合物を以下の表6に例示する。
【0063】
【表6】

【0064】
上述の通り、本発明は新規α−フルオロアルキルテトラベナジン化合物I、新規α−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物IV、及び若干の実施形態ではこれらの混合物を提供する。構造IVを有するα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を以下の表7及び表7aに例示する。
【0065】
【表7】


【0066】
構造IVは、環位置2、3及び12にR配置及びS配置の両方を有するラセミ化合物7a(表7)を含む1群のα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を表している。別の実施形態では、構造IVは、環位置2、3及び12にR配置(絶対立体化学)を有するα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物7b(表7)又は化合物7ab(表7a)を表している。さらに別の実施形態では、構造IVは、化合物7bとは逆の絶対立体化学を有する化合物7f(表7)又は化合物7abとは逆の絶対立体化学を有する化合物7af(表7a)を表している。本明細書の表7及び表7aに示した個々のα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物が一般構造IVの範囲内に含まれるジヒドロテトラベナジン(DTBZ)誘導体を例示していることは、当業者には容易に理解されよう。また、α−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物7d、7e、7ad及び7aeがジアステレオマー混合物を表すことも、当業者には容易に理解されよう。
【0067】
上述の通り、一実施形態では、本発明は、ラセミ混合物(例えば、化合物7a(表7))、単一の鏡像異性体(例えば、化合物7b(表7))、又は単一の主成分鏡像異性体について鏡像異性的に富化された組成物であり得る構造IVのα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を提供する。以下の表8の番号8a〜8cは、主成分鏡像異性体及び1種以上の副成分鏡像異性体を含むα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物IVを例示している。
【0068】
【表8】

【0069】

【0070】
表8において、α−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン組成物は主成分鏡像異性体及び副成分鏡像異性体を含んでいる。表8に例示されたα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン組成物では、主成分鏡像異性体のモル百分率が「モル%」として示されているが、これは組成物のすべての他のα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン成分の量に対する表示された構造の主成分鏡像異性体のモル百分率である。ここでの議論のためには、α−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジンは一般構造IVの範囲内に含まれる任意の化合物である。番号8a及び8dは、98モル%の表示されたR,R,R主成分鏡像異性体及びそれより少ない量のS,S,S副成分鏡像異性体を含むα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン組成物を表している。番号8c及び8fは、88モル%の表示された構造のS,S,S主成分鏡像異性体及びそれより少ない量のR,R,R副成分鏡像異性体を含むα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン組成物を表している。番号8b及び8eは、主成分鏡像異性体として表示されたR,S,R鏡像異性体及び副成分のS,S,S鏡像異性体を含む1対のジアステレオマーを表している。
【0071】
一実施形態では、本発明は、構造IVで表されるα−フルオロジヒドロアルキルテトラベナジン化合物であって、鏡像異性的に富化されていて環位置12にR配置を有する鏡像異性体を95モルパーセント(モル%)以上含むものを提供する。
【0072】
別の実施形態では、本発明は、構造IVで表されるα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物であって、鏡像異性的に富化されていて環位置3にR配置を有する鏡像異性体を95モルパーセント(モル%)以上含むものを提供する。
【0073】
一実施形態では、本発明は、構造IVを有するα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物であって、環位置3のフッ素化脂肪族基(−R1)が環位置12の水素に対してシン配置を有するものを提供する。表8の番号8a〜8fの主成分鏡像異性体は、環位置3のフッ素化脂肪族部分(−R1)が環位置12の水素に対してシン配置を有するα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を例示している。
【0074】
一実施形態では、本発明は、以下の構造Vを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を提供する。
【0075】
【化9】

【0076】
式中、R1はC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素、C1〜C10脂肪族基、C3〜C10脂環式基又はC3〜C10芳香族基である。
【0077】
構造Vを有する主成分鏡像異性体を以下の表9に例示する。
【0078】
【表9】

【0079】

【0080】
一実施形態では、本発明は、構造Vを有する鏡像異性体を80モル%以上含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物、例えば番号9a及び9d(表9)の化合物を含む組成物であって、表示されたR,R,R鏡像異性体が組成物のすべての他のα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン成分の量に対して80モル%以上を占めるものを提供する。
【0081】
別の実施形態では、本発明は、構造Vを有する鏡像異性体を95モル%以上含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物、例えば番号9b及び9e(表9)の化合物を含むα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン組成物であって、表示されたR,R,R鏡像異性体が組成物のすべての他のα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン成分の量に対して95モル%以上を占めるものを提供する。
【0082】
一実施形態では、本発明は、R1がC5〜C10フッ素化脂肪族基でありかつR2及びR3がメトキシ基である構造Vを有する主成分鏡像異性体を含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を提供し、かかる化合物を以下の表10に例示する。
【0083】
【表10】

【0084】

【0085】
一実施形態では、本発明は、以下の構造VIを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を提供する。
【0086】
【化10】

【0087】
式中、R1はC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素、C1〜C10脂肪族基、C3〜C10脂環式基又はC3〜C10芳香族基である。
【0088】
構造VIを有する主成分鏡像異性体を以下の表11に例示する。
【0089】
【表11】

【0090】

【0091】
一実施形態では、本発明は、構造VIを有する鏡像異性体を80モル%以上含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物、例えば番号11a又は11d(表11)の化合物を含むα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン組成物であって、表示されたS,S,S鏡像異性体が組成物のすべての他のα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン成分の量に対して80モル%以上を占めるものを提供する。別の実施形態では、本発明は、構造VIを有する鏡像異性体を95モル%以上含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物、例えば番号11b又は11e(表11)の化合物を含むα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン組成物であって、表示されたS,S,S鏡像異性体が組成物のすべての他のα−フルオロアルキルテトラベナジン成分の量に対して95モル%以上を占めるものを提供する。
【0092】
別の実施形態では、本発明は、R1がC5〜C10フッ素化脂肪族基でありかつR2及びR3がメトキシ基である構造VIを有する主成分鏡像異性体を含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキル化合物を提供し、かかる化合物を以下の表12に例示する。
【0093】
【表12】

【0094】

【0095】
本発明によって提供されるα−フルオロアルキルテトラベナジン及びジヒドロテトラベナジン化合物は、本明細書で時には総称的に「α−フルオロアルキル化合物」といわれる。当業者には自明の通り、「α−フルオロアルキル」という用語は構造I〜VIのR1基を意味するが、これはC1〜C10脂肪族基を表し、「アルキル」という用語の通常の意味に限定されない。かくして、「α−フルオロアルキルテトラベナジン」という用語は本明細書では便宜的に広義で使用され、環位置3にC1〜C10フッ素化脂肪族基を含むテトラベナジン化合物を意味する。同様に、α−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジンは、環位置3にC1〜C10フッ素化脂肪族基を含むジヒドロテトラベナジン化合物をいう。
【0096】
後記に実証される通り、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)のフッ素−18標識化合物は、VMAT−2バイオマーカーに対するPETイメージング剤として有用である。したがって、本発明のさらに他の態様に従えば、被験体におけるVMAT−2の検出方法であって、
(i)上記に定義したような式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)のフッ素−18標識化合物或いはその塩を前記被験体に投与する段階、及び
(ii)インビボPETイメージングによって前記フッ素−18標識化合物の取込みを検出する段階
を含んでなる方法が提供される。
【0097】
かかる方法は、例えばβ細胞塊を測定する方法を提供することにより、VMAT−2関連疾患の診断及び臨床研究において有用性を有する情報及びデータを提供する。被験体は、VMAT−2関連疾患を有するか又はそれが疑われる哺乳動物、最も好適にはヒトである。別の態様では、上記に定義したような式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)の化合物或いはその塩はまた、例えば臨床研究目的のため、健常なヒト志願者においてVMAT−2をイメージングするためにも使用できる。VMAT−2のイメージングは定量的に実施できる結果、VMAT−2の量又はその量の変化を測定して疾患を診断し又はその進行を追跡することができる。別法として、VMAT−2のイメージングはVMAT−2の位置を探索するためにも使用できる。
【0098】
「VMAT−2関連疾患」という用語は、ハンチントン病、パーキンソン病又は精神分裂病のような脳のVMAT−2関連疾患、或いはインスリノーマや他の神経内分泌腫瘍を含むβ細胞関連疾患又は糖尿病(例えば、1型糖尿病、2型糖尿病若しくは症状発現前の1型糖尿病)のような膵臓のVMAT−2関連疾患を意味する。本発明の一態様では、VMAT−2関連疾患は糖尿病である。本発明の別の態様では、VMAT−2関連疾患は精神分裂病である。
【0099】
したがって、VMAT−2関連疾患のインビボPET診断又はイメージングのための放射性医薬品の製造における、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)のフッ素−18標識化合物或いはその塩の使用がさらに提供される。別の態様では、VMAT−2関連疾患のインビボPET診断又はイメージングで使用するための、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)のフッ素−18標識化合物或いはその塩が提供される。
【0100】
さらに他の態様では、被験体(好ましくはヒト)におけるVMAT−2関連疾患のインビボ診断又はイメージング方法であって、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)のフッ素−18標識化合物或いはその塩を投与する段階、及びインビボPETイメージング技法によって前記化合物の取込みを検出する段階を含んでなる方法が提供される。本方法は、特に糖尿病のインビボ診断又はイメージングのために好ましい。本発明の一態様では、本方法は、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)のフッ素−18標識化合物或いはその塩を予め投与した被験体(好ましくはヒト)において、インビボPETイメージング技法によって前記化合物の取込みを検出する段階を含んでいる。
【0101】
本発明はさらに、VMAT−2関連疾患に対処するための薬物による被験体(好ましくはヒト)の治療効果をモニターする方法であって、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)のフッ素−18標識化合物或いはその塩を前記被験体に投与する段階及びインビボPETイメージング技法によって前記化合物の取込みを検出する段階を含んでなり、前記投与及び検出は任意ではあるが好ましくは(例えば前記薬物による治療前、治療中及び治療後に)繰り返して実施される方法を提供する。
【0102】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)の化合物或いはその塩は、好ましくは、インビボで使用するために前記化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含んでなる医薬製剤として投与され、したがってかかる製剤は本発明のさらに他の態様をなす。「医薬製剤」とは、本発明では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)の化合物或いはその塩の有効量を哺乳動物(好適にはヒト)への投与に適した形態で含んでなる製剤として定義される。「薬学的に許容される賦形剤」は、好適には、製剤が生理学的に認容され得るようにして(即ち、毒性又は耐え難い不快感なしに哺乳動物体に投与できるようにして)式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)の化合物或いはその塩を懸濁又は溶解できる流体(特に液体)である。薬学的に許容される賦形剤は、好適には、無菌のパイロジェンフリー注射用水、(有利には注射用の最終製剤が等張性になるように平衡させ得る)食塩水のような水溶液、或いは1種以上の張度調整物質(例えば、血漿陽イオンと生体適合性対イオンとの塩)、糖(例えば、グルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)又は他の非イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液のような注射可能なキャリヤー液体である。好ましくは、薬学的に許容される賦形剤はパイロジェンフリー注射用水又は等張食塩水である。
【0103】
医薬製剤は、抗菌保存剤、pH調整剤、充填剤、安定剤又は重量オスモル濃度調整剤のような追加賦形剤を任意に含むことができる。「抗菌保存剤」という用語は、潜在的に有害な微生物(例えば、細菌、酵母又はかび)の増殖を阻止する薬剤を意味する。抗菌保存剤はまた、使用する用量に応じて多少の殺菌性を示すこともある。本発明の抗菌保存剤の主な役割は、医薬製剤中におけるこのような微生物の増殖を阻止することである。しかし、抗菌保存剤は、任意には投与に先立って前記医薬製剤を調製するために使用されるキットの1種以上の成分における潜在的に有害な微生物の増殖を阻止するためにも使用できる。好適な抗菌保存剤には、パラベン類(即ち、メチル、エチル、プロピル又はブチルパラベン或いはこれらの混合物)、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールがある。好ましい抗菌保存剤はパラベン類である。
【0104】
「pH調整剤」という用語は、医薬製剤のpHがヒト又は哺乳動物への投与のために許容し得る範囲(およそpH4.0〜10.5)内にあることを保証するために有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。好適なかかるpH調整剤には、トリシン、リン酸塩又はTRIS[即ち、トリス(ヒドロキシルメチル)アミノメタン]のような薬学的に許容される緩衝剤、及び炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの混合物のような薬学的に許容される塩基がある。医薬製剤をキットの形態で使用する場合には、pH調整剤を任意には独立のバイアル又は容器に入れて供給することができ、その結果としてキットのユーザーは多段操作の一部としてpHを調整することができる。
【0105】
「充填剤」という用語は、製造及び凍結乾燥中における材料の取扱いを容易にすることができる薬学的に許容される増量剤を意味する。好適な充填剤には、塩化ナトリウムのような無機塩、及びスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースのような水溶性糖又は糖アルコールがある。
【0106】
本発明の医薬製剤は、通例、注射器又はカニューレによる溶液の追加及び抜取りを許しながら、無菌健全性及び/又は放射能安全性の維持、さらに任意には不活性ヘッドスペースガス(例えば、窒素又はアルゴン)の維持を可能にする密封容器からなる適当なバイアル又は容器に入れた状態で供給される。好ましいかかる容器は、気密クロージャーを(通例はアルミニウムからなる)オーバーシールと共にクリンプ加工した隔膜封止バイアルである。クロージャーは、無菌健全性を維持しながら皮下注射針による1回又は数回の穿刺に適したもの(例えば、クリンプ加工した隔膜封止クロージャー)である。かかる容器は、(例えば、ヘッドスペースガスの変更又は溶液のガス抜きのために)所望される場合にはクロージャーが真空に耐え得ると共に、酸素又は水蒸気のような外部大気ガスの侵入を許すことなしに減圧のような圧力変化にも耐え得るという追加の利点を有している。
【0107】
好ましい複数用量容器は、複数の患者用量を含む(例えば、容積10〜30cm3の)単一のバルクバイアルからなり、したがって臨床的状況に合わせて製剤の実用寿命中に様々な時間間隔で1回分の患者用量を臨床グレードの注射器に抜き取ることができる。予備充填注射器は1回分のヒト用量又は「単位用量」を含むように設計され、したがって好ましくは臨床用に適した使い捨て注射器又は他の注射器である。本発明の医薬製剤は、好ましくは1人の患者用に適した用量を有し、上述したような適当な注射器又は容器に入れて供給される。
【0108】
本発明の医薬製剤は、無菌製造条件下で(即ち、クリーンルーム内で)製造して所望の無菌で非発熱性の製品を得ることができる。基本構成部分、特に賦形剤及び医薬製剤に接触する装置部品(例えば、バイアル)は無菌であることが好ましい。医薬製剤の成分は、無菌濾過或いは(例えば、γ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は(例えば、エチレンオキシドによる)化学処理を用いる)終末滅菌をはじめとする、当技術分野で公知の方法によって滅菌できる。一部の成分を予め滅菌しておけば、最小数の操作を実施すれば済むので好ましい。しかし、予防策として、医薬製剤の製造における最終段階として少なくとも無菌濾過段階を含めることが好ましい。
【0109】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)の化合物或いはその塩の「有効量」とは、インビボPETイメージングでの使用又は治療での使用のために有効な量を意味し、投与すべき正確な化合物、被験体又は患者の体重、及び当技術分野の熟練した医師にとって自明な他の変量に応じて変動する。本発明のフッ素−18標識化合物は、PETイメージングのためには、所望の信号を生み出すのに十分な量で被験体に投与すればよい。通常、体重70kg当たり0.01〜100mCi、好ましくは0.1〜50mCiの典型的な放射性核種投与量で十分であろう。
【0110】
上述の通り、本発明によって提供されるα−フルオロアルキルテトラベナジン及びジヒドロテトラベナジン化合物I、II、III、IV、V及びVIは、フッ素化脂肪族部分−R1にフッ素−18原子を含み得る。様々な実施形態において、フッ素−18原子を含むかかるα−フルオロアルキル化合物はPETイメージング剤として有用である。かくして一実施形態では、本発明は、以下の構造Iを有するα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0111】
【化11】

【0112】
式中、R1は1以上のフッ素−18原子を含むC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0113】
別の実施形態では、本発明は、以下の構造IIを有する主成分鏡像異性体を含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0114】
【化12】

【0115】
式中、R1は1以上のフッ素−18原子を含むC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0116】
さらに別の実施形態では、本発明は、以下の構造IIIを有する主成分鏡像異性体を含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0117】
【化13】

【0118】
式中、R1は1以上のフッ素−18原子を含むC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。
【0119】
別の実施形態では、本発明は、R1が1以上のフッ素−18原子を含むC5〜C10フルオロ脂肪族基でありかつR2及びR3がメトキシ基である構造Iを有する鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0120】
一実施形態では、本発明は、以下の構造IVを有するα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0121】
【化14】

【0122】
式中、R1は1以上のフッ素−18原子を含むC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素、C1〜C10脂肪族基、C3〜C10脂環式基又はC3〜C10芳香族基である。
【0123】
別の実施形態では、本発明は、以下の構造Vを有する主成分鏡像異性体を含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0124】
【化15】

【0125】
式中、R1は1以上のフッ素−18原子を含むC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素、C1〜C10脂肪族基、C3〜C10脂環式基又はC3〜C10芳香族基である。
【0126】
さらに別の実施形態では、本発明は、以下の構造VIを有する主成分鏡像異性体を含む鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0127】
【化16】

【0128】
式中、R1は1以上のフッ素−18原子を含むC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素、C1〜C10脂肪族基、C3〜C10脂環式基又はC3〜C10芳香族基である。
【0129】
別の実施形態では、本発明は、R1が1以上のフッ素−18原子を含むC5〜C10フルオロ脂肪族基でありかつR2及びR3がメトキシ基である構造IVを有する鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0130】
本明細書で使用する「PETイメージング剤」という用語は、フッ素−18標識α−フルオロアルキルテトラベナジン又はジヒドロテトラベナジン化合物を含む組成物であって、PETスキャンを実施するため患者に投与できる組成物をいう。通例、イメージング剤は、PETスキャンを行うのに十分な量のフッ素−18標識α−フルオロアルキルテトラベナジン又はジヒドロテトラベナジン化合物を含む水性製剤の形態で患者に投与される。通例、患者に投与されるフッ素−18標識α−フルオロアルキルテトラベナジン又はジヒドロテトラベナジン化合物の量は、フッ素−18標識α−フルオロアルキル化合物の重量としてナノグラムのオーダーに相当している。患者に投与されるPETイメージング剤に存在する非放射性フッ素−19含有α−フルオロアルキル化合物の相対量に関しては、PETイメージング剤は通例約0.01〜約10%の範囲内の比放射能を有している。一実施形態では、PETイメージング剤は約0.01〜約5%の範囲内の比放射能を有している。別の実施形態では、PETイメージング剤は約0.01〜約1%の範囲内の比放射能を有している。
【0131】
フッ素−18標識α−フルオロアルキルテトラベナジン又はジヒドロテトラベナジン化合物を含む水性製剤は、通例は静脈内に投与され、水中へのPETイメージング剤の分散を促進する各種薬剤を含み得る。一実施形態では、PETイメージング剤は、エタノール及びフッ素−18標識α−フルオロアルキル化合物を含む水性製剤として患者に投与できる。別の実施形態では、PETイメージング剤は、デキストロース及びフッ素−18標識α−フルオロアルキル化合物を含む水性製剤として患者に投与できる。さらに別の実施形態では、PETイメージング剤は、食塩水及びフッ素−18標識α−フルオロアルキル化合物を含む水性製剤として患者に投与できる。かかる製剤は、上述したようなさらに他の賦形剤を任意に含み得る。かかる賦形剤には、さらに典型的には、緩衝剤、薬学的に許容される可溶化剤(例えば、シクロデキストリン或いはプルロニック(Pluronic)、ツイーン(Tween)又はリン脂質のような界面活性剤)及び薬学的に許容される安定剤又は酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、ゲンチシン酸又はp−アミノ安息香酸)のような1種以上の賦形剤が含まれる。
【0132】
一実施形態では、本発明は、α−フルオロアルキルテトラベナジン化合物I及びα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物IVの両方を含んでなるPETイメージング剤を提供する。
【0133】
PETイメージング剤として、及びPETイメージング剤として使用するための所定α−フルオロアルキル化合物の適性を判定するためのプローブとして有用であることに加え、本発明によって提供されるα−フルオロアルキル化合物は、精神分裂病及びハンチントン病のような疾患の治療において治療学的有用性を有すると考えられる。かくして一実施形態では、本発明は、患者における病的状態を治療するのに有用な、構造Iを有するα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物を提供する。別の実施形態では、本発明は、患者における病的状態を治療するのに有用な、構造IVを有するα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物を提供する。様々な他の実施形態では、本発明は、患者における病的状態を治療するのに有用な、鏡像異性的に富化されたα−フルオロアルキルテトラベナジン又はジヒドロテトラベナジン化合物II、III、V及びVI(並びにこれらの混合物)を提供する。通例、所定の用量で患者に投与されるα−フルオロアルキル化合物の量はミリグラムのオーダーである。
【0134】
一般構造I又は一般構造IVの範囲内にあるα−フルオロアルキル化合物のようなα−フルオロアルキル化合物が、各種の条件下で、PETイメージング剤として、イメージング剤の発見及び開発のためのプローブとして、及び/又は治療剤として有用な塩を形成し得ることは当業者にとって容易に理解されよう。したがって、本発明は新規で有用なα−フルオロアルキル化合物のホスト及びその塩を提供する。
【0135】
本発明に係る好適な塩には、(i)鉱酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸)から導かれるもの並びに有機酸(例えば、酒石酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸)から導かれるもののような、生理学的に許容される酸付加塩、並びに(ii)アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩及びマグネシウム塩)、有機塩基(例えば、トリエタノールアミン、N−メチル−D−グルカミン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン及びモルホリン)との塩、及びアミノ酸(例えば、アルギニン及びリシン)との塩のような、生理学的に許容される塩基塩がある。例えば、特定の一実施形態では、本発明は新規α−フルオロアルキル化合物の塩酸塩、例えば表6の番号6a又は表10の番号10eの化合物の塩酸塩を提供する。
【0136】
本発明のさらに他の態様では、医学で使用するための、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI)の化合物或いはその塩が提供される。
【0137】
本発明のα−フルオロアルキルテトラベナジン及びジヒドロテトラベナジン化合物は、本明細書の実験セクションに示されるものをはじめとする各種の方法によって製造できる。一実施形態では、α−フルオロアルキルテトラベナジン化合物は、求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤と以下の構造VIIを有する親フッ素性テトラベナジン化合物との反応によって製造される。
【0138】
【化17】

【0139】
式中、Qはカルボニル基、保護カルボニル基、ヒドロキシメチン基又は保護ヒドロキシメチン基であり、R1は求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤と反応し得る1以上の官能基を含むC1〜C20脂肪族基、C2〜C20脂環式基又はC2〜C20芳香族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。Qがカルボニル基、保護カルボニル基又はヒドロキシメチン基である場合、本発明のα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物への到達には、化合物IVと求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤との反応後に追加の化学変換(例えば、アセチル化)が必要となることがある。
【0140】
式(VII)の化合物並びに後記の式(VIII)及び(IX)において、
1は、好適には以下のに一層詳しく定義される通りであり、
2及びR3は、好適には各々独立に水素、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシから選択され、
Qは、好適にはQ基の例として表13に示した基から選択される。
【0141】
かくして一実施形態では、本発明は構造VIIを有する親フッ素性テトラベナジン化合物を提供する。構造VIIを有する親フッ素性テトラベナジン化合物を以下の表13に例示する。
【0142】
【表13】

【0143】
一般構造VIIに規定されている通り、本発明の化合物を製造するために使用できる親フッ素性テトラベナジン及びジヒドロテトラベナジン化合物には、正式にテトラベナジン化合物である化合物(即ち、例えば表13の番号13c及び13eのようにQがカルボニル基である化合物)、環位置2に遊離ヒドロキシル基を有するジヒドロテトラベナジン化合物である化合物(即ち、例えば表13の番号13bのようにQがヒドロキシメチン基である化合物)、「保護」テトラベナジン化合物(即ち、Qが保護カルボニル基であり、例えば本明細書の実施例4のテトラベナジンケタールトシレート33に見られるようにQがエチレンケタール基である化合物)、並びに「保護」ジヒドロテトラベナジン化合(即ち、Qが保護ヒドロキシメチン基であり、例えば表13の番号13a及び本明細書の実施例5のトシレート34のようにQがCHOTHP基である化合物)がある。したがって、「保護カルボニル基」という用語はカルボニル基等価物、通常はケタール基、チオケタール基又はジチオケタール基のような官能基に変換されたカルボニル基をいい、「保護ヒドロキシメチン基」という用語はヒドロキシメチン基等価物、通常はテトラヒドロピラニル(THP)エーテル基、メトキシメチルエーテル基(MOM基)、メトキシエトキシエーテル基(MEM基)、メチルチオメチルエーテル基、ベンジルエーテル基、p−メトキシベンジルエーテル基、ピバロイルエステル基(OPiv)又はアセチルエステル基(OAc)のような官能基に変換されたヒドロキシメチン基をいう。カルボニル基又はヒドロキシメチン基を保護カルボニル基又は保護ヒドロキシメチン基に変換するために使用できる保護剤は、当技術分野で公知である。例えば、保護剤は、James R.HansonのProtecting Groups In Organic Synthesis(Blackwell Science,1999)及びGreene’s Protective Groups in Organic Synthesis(Wiley−Interscience,2006)に詳述されている。
【0144】
上述の通り、一実施形態では、本発明は、R1が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上の官能基を含むC1〜C20脂肪族基、C2〜C20脂環式基又はC2〜C20芳香族基(好適にはC1-6アルキル、C1-6アルコキシ(C1-6アルキル)、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル及びC1-6アルキルカルボニル(C1-6アルキル)から選択される基)である構造VIIを有する親フッ素性化合物を提供する。一実施形態では、求核性フッ化物イオンと反応し得る官能基は、芳香族スルホン酸エステル基(例えば、トシレート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート)又は脂肪族スルホン酸エステル基(例えば、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート)である。一実施形態では、求核性フッ化物イオンと反応し得る官能基は、トシレート基、メシレート基及びトリフルオロメタンスルホネート基からなる群から選択される。
【0145】
一実施形態では、本発明は、R1基が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上のトシレート基を含む構造VIIを有する親フッ素性化合物を提供する。例えば、表13の番号13a、13j及び13kを参照されたい。本明細書に定義される通り、トシレート基は芳香族基であり、トシレート基を含むR1基も芳香族基である。例えば番号13aに示した化合物では、トシレート基を含むR1基はC9芳香族基であり、これはフッ化物イオンで置換されるとC2フッ素化脂肪族基になる。
【0146】
別の実施形態では、本発明は、R1基が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上のメシレート基を含む構造VIIを有する親フッ素性化合物を提供する。本明細書に定義される通り、メシレート基は脂肪族基であり、メシレート基を含むR1基はR1基の全体的構造に応じて脂肪族基、脂環式基又は芳香族基であり得る。例えば、R1がメシレート基及びエポキシ基を含む構造VIIを有する親フッ素性化合物では、R1基は脂環式基である。別法として、R1がメシレート基及びトシレート基を含む構造VIIを有する親フッ素性化合物では、R1基は芳香族基である。本明細書に示された脂肪族基、脂環式基及び芳香族基の定義によれば、脂肪族基(環状でない原子配列)は脂環式基(芳香族でない環状の原子配列)及び芳香族基(芳香族である環状の原子配列)を含んでいてはならず、脂環式基は芳香族基を含んでいてはならず、芳香族基は芳香族原子団のみを含んでいなければならないという階層構造が確立されることを念頭に置くことは役に立つ。
【0147】
別の実施形態では、本発明は、R1基が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上のトリフルオロメタンスルホネート(トリフレート)基を含む構造VIIを有する親フッ素性化合物を提供する。例えば、表13の番号13bを参照されたい。
【0148】
別の実施形態では、本発明は、R1基が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上のp−ニトロベンゾエート基を含む構造VIIを有する親フッ素性化合物を提供する。例えば、表13の番号13cを参照されたい。
【0149】
別の実施形態では、本発明は、R1基が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上のメタンスルホネート基を含む構造VIIを有する親フッ素性化合物を提供する。例えば、表13の番号13dを参照されたい。
【0150】
別の実施形態では、本発明は、R1基が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上のエポキシ基を含む構造VIIを有する親フッ素性化合物を提供する。例えば、表13の番号13iを参照されたい。
【0151】
さらに別の実施形態では、本発明は、R1基が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上の環状スルフェート基を含む構造VIIを有する親フッ素性化合物を提供する。例えば、表13の番号13lを参照されたい。
【0152】
一実施形態では、本発明は、R1が求電子性フッ素化剤(例えば、フッ素ガス、ペルクロリルフルオリド、フッ化第二水銀及びフェニルセレネニルフルオリド)と反応し得る1以上の官能基を含むC2〜C20脂肪族基である構造VIIを有する親フッ素性化合物を提供する。
【0153】
かくして一実施形態では、求電子性フッ素化剤と反応し得る官能基は、炭素−炭素二重結合及び炭素−炭素三重結合からなる群から選択される。表13の番号13e、13f、13g、13h及び13kは、一般構造VIIの範囲内にある化合物であって、求電子性フッ素化剤と反応し得るものを例示している。R1基が求電子性フッ素化剤と反応し得る官能基(二重結合)及び求核性フッ化物イオンと反応し得る官能基(トシレート基)を含む番号13kに注意されたい。表13の番号13kはまた、チオケタール保護基を含むことも特筆される。本明細書で使用するチオケタール保護基は、「カルボニル炭素」に結合した酸素原子及び硫黄原子の両方を含んでおり、「カルボニル炭素」に結合した2つの硫黄原子を含むジチオケタールと区別される。
【0154】
親フッ素性テトラベナジン化合物VIIは、鏡像異性的に富化された形態又はラセミ形態で製造できる。例えば、親フッ素性テトラベナジン化合物VIIは、表13の番号13hに示したR,R,R−鏡像異性体で富化することができる。別法として、親フッ素性テトラベナジン化合物は、表13の番号13dとは逆の絶対立体化学を有する鏡像異性体(例えば、番号13fのS,S,S−鏡像異性体)で富化することもできる。
【0155】
かくして一実施形態では、本発明は、以下の構造VIIIを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化された親フッ素性化合物を提供する。
【0156】
【化18】

【0157】
式中、Qはカルボニル基、保護カルボニル基、ヒドロキシメチン基又は保護ヒドロキシメチン基であり、R1は求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤と反応し得る1以上の官能基を含むC1〜C20脂肪族基、C2〜C20脂環式基又はC2〜C20芳香族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。主成分鏡像異性体VIIIは、表13の番号13b、13d、13h及び13kによって例示される。Qがカルボニル基、保護カルボニル基又はヒドロキシメチン基である場合、本発明のα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物への到達には、化合物Vと求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤との反応後に追加の化学変換(例えば、アセチル化)が必要となることがある。
【0158】
別の実施形態では、本発明は、以下の構造IXを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化された親フッ素性化合物を提供する。
【0159】
【化19】

【0160】
式中、Qはカルボニル基、保護カルボニル基、ヒドロキシメチン基又は保護ヒドロキシメチン基であり、R1は求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤と反応し得る1以上の官能基を含むC1〜C20脂肪族基、C2〜C20脂環式基又はC2〜C20芳香族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。主成分鏡像異性体IXは、表13の番号13e及び13fによって例示される。Qがカルボニル基、保護カルボニル基又はヒドロキシメチン基である場合、本発明のα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物への到達には、化合物VIと求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤との反応後に追加の化学変換(例えば、アセチル化)が必要となることがある。
【0161】
同時係属国際特許出願第PCT/US2008/065738号には、本発明の化合物の製造に使用できるラセミ形のテトラベナジン組成物及び鏡像異性的に富化されたテトラベナジン組成物の製造方法が開示されている。加えて、本明細書の実施例セクションには、親フッ素性テトラベナジン化合物VIIの製造及び特性決定並びにそれからα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物I及びα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物IVへの転化に関する詳細な実験的記載が示されている。
【0162】
一般に、親フッ素性テトラベナジン化合物VIIを製造するためには、求核性アルケニル化学種を、以下の構造Xを有するアルデヒド化合物と反応させることでアリル型アルコールを得る(実施例セクションの方法4、5及び6を参照されたい)。
【0163】
【化20】

【0164】
式中、R3は水素又はC1〜C20脂肪族基であり、R4は水素又はC1〜C20脂肪族基であり、P1は保護基である。次いで、アリル型アルコールを酸化することで、「第1中間体」と呼ばれるエノンを得る(実施例セクションの方法7、8及び9を参照されたい)。次いで、それの保護基P1を除去し、脱保護された第1中間体にアミノ環化反応を施して対応するテトラベナジン化合物を得る。
【0165】
一般式Xに包含される代表的なアルデヒド化合物を以下の表14に示す。
【0166】
【表14】

【0167】
表14の番号14aに示したアルデヒド化合物の製法は、本明細書の実施例セクション(方法1〜3)に記載されている。一般に、構造Xによって表される部類のアルデヒド化合物は、例えば以下のスキーム1に示す方法論を使用する当技術分野で認められた方法によって製造できる。スキーム1に示されているように、保護基P1が「Boc」保護基を表すことは当業者にとって容易に理解されよう。
【0168】
【化21】

【0169】
かくして、アルデヒド化合物Xは、Sasamoto et al.(Journal of the American Chemical Society 128,14010−14011,2006)によって記載された方法論を用いて製造された中間体から製造できる。Sasamoto et al.は、鏡像異性的に富化されたテトラヒドロキノリンマロネート化合物の製法を開示している。かかる化合物は、本明細書に示される通り、スキーム1に図示されているようなテトラヒドロキノリンマロネートの一方のエステル部分の選択的加水分解及び脱炭酸、次いで得られたテトラヒドロイソキノリンモノエステルからアルデヒド化合物Xへの還元によってアルデヒド化合物Xに転化できる。
【0170】
スキーム1に示された2モル%のDM−SEGPHOSが生成物アルデヒドXの鏡像異性的富化の原因となるキラル触媒をなすこと、さらに逆のキラリティーのDM−SEGPHOSをキラル触媒として使用すれば、「S」鏡像異性体(環位置12にS配置を有するアルデヒド化合物X(例えば、表14の番号14bを参照されたい))について鏡像異性的に富化された生成物アルデヒドXが得られることは、当業者にとって容易に理解されよう。好適なキラル触媒には、Sasamoto et al.(Journal of the American Chemical Society 128,14010−14011,2006)によって開示されたもの、例えば(S)−Binap、(R)−Binap、(S)−DM−Binap、(R)−DM−Binap、(S)−DM−SEGPHOS及び(R)−DM−SEGPHOSがある。通例、単一の配置(例えば、「S」配置)を有する配位子からなる触媒の使用は逆の「R」配置の立体化学的に富化されたマロネート付加物を生み出し、その逆もまた正しい。
【0171】
キラル触媒を用いて環位置12に単一の配置が富化されたアルデヒド化合物Xを生成することに加えて、ラセミ形のアルデヒドXをそれの成分鏡像異性体に分離するために多種多様の方法が利用できる。例えば、ラセミ形のアルデヒド化合物Xは、キラルhplcカラム上での高速液体クロマトグラフィー(hplc)によってそれの成分鏡像異性体に分離できる。
【0172】
本発明によって提供される鏡像異性的に富化された組成物を製造するための他の方法には、構造Iを有するラセミ形のα−フルオロアルキル化合物をジアステレオマーの混合物からなる付加物に転化させ、次いでこれを分別結晶によって分離するものがある。例えば、構造Iを有するラセミ形のα−フルオロアルキル化合物を(+)−酒石酸と反応させることで、ラセミ形のα−フルオロアルキル化合物の付加物(酒石酸アンモニウム塩)を生成させることができる。前記付加物は酒石酸アンモニウム塩のジアステレオマーの混合物からなり、次いでこれを分別結晶によって分離すればよい。
【実施例】
【0173】
以下の実施例は本発明に係る方法及び実施形態を例示するものにすぎず、したがって特許請求の範囲を限定するものと解すべきでない。
【0174】
TBZ及びDTBZ出発原料の製造方法
方法1 保護ジエステル2の製造
【0175】
【化22】

【0176】
ジヒドロイソキノリン(1.0eq.)及びBoc無水物(1.5eq.)を室温のCH2Cl2に溶解することで、ジヒドロイソキノリンに関して1.5Mの溶液を得た。混合物を30分間撹拌した。所定の時間後、反応混合物を0℃に冷却し、次いでジイソプロピルマロネート(1.5eq.)及びPd触媒(0.008eq.)の予備冷却ジクロロメタン溶液を反応混合物に順次添加することで、出発ジヒドロイソキノリンに関して0.84Mの最終反応濃度を得た。反応混合物を約2.5℃で15時間撹拌し続けた。この時間後、EtOAc及びブラインを反応混合物に添加した。水性層を3回分のEtOAcで抽出し、合わせた有機層を乾燥し(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗物質を最小量のジクロロメタンに溶解し、SiO2上でのフラッシュクロマトグラフィー(15〜30%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)によって精製した。生成物は、室温では溶解状態で回転異性体の混合物として存在する無色の固体(94%)であった。[α]26D−69.0(c0.21,CHCl3);1H NMR(CDCl3)δ0.81−1.02(m,6H)、1.06−1.17(m,6H)、1.23−1.38(m,9H)、2.51−2.63(m,1H)、2.64−2.77(m,1H)、3.20−3.29(m,0.6H)、3.32−3.41(m,0.4H)、3.51−3.58(m,1H)、3.62−3.70(m,6H)、3.70−3.76(m,0.4H)、3.91−4.01(m,0.6H)、4.65−4.82(m,1H)、4.83−4.98(m,1H)、5.71(見掛けのd,J=5.7Hz,0.6H)、5.78(見掛けのd,J=7.9Hz,0.4H)、6.42−6.49(m,1H)、6.77(s,0.6H)、6.81(s,0.4H);13C NMR(CDCl3)δ21.02、21.09、21.18、21.32、27.24、27.95、28.02、37.60、39.34、52.11、52.83、55.48、55.52、59.28、60.08、68.58、68.76、68.82、79.46、80.03、110.09、110.73、111.13、126.11、126.18、126.37、127.07、146.81、146.87、147.93、153.86、154.30、166.29、166.78、166.94、167.06。
【0177】
方法2 保護ジエステル2の選択的加水分解及び脱炭酸
【0178】
【化23】

【0179】
出発原料をイソプロパノールに溶解しての0.2M溶液を得た。この溶液に1M NaOH水溶液を添加して、反応混合物の最終濃度をマロネートに関して0.1Mにした。反応混合物を70℃に加熱し、この温度に22分間保った(計時は反応混合物の温度が65℃を超えた時点で開始した)。所定の時間後、反応混合物を急速に0℃に冷却した。反応混合物を2M HCl水溶液で注意深く酸性化し、3回分のジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出液を乾燥し(Na2SO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。単離された物質をTHFに溶解して(反応混合物に使用したの初期量に基づいて)0.1Mの溶液を得、トリエチルアミン(1.0eq)を室温で反応混合物に添加した。反応混合物をその還流温度に加熱し、この温度に90分保った。反応混合物を減圧下で濃縮し、最小量のCH2Cl2に溶解し、直ちにSiO2上でのカラムクロマトグラフィー(15〜40%EtOAc−ヘキサン、40%での溶出液を284nmでモニターした)によって精製した。生成物は室温で回転異性体の混合物として存在し、無色の泡状物(79%)であった。[α]26D−82(c0.24,CH2Cl2);1H NMR(CDCl3)δ1.19−1.25(m,6H)、1.43−1.49(m,9H)、2.58−2.69(m,2H)、2.70−2.77(m,1H)、2.78−2.92(m,1H)、3.13−3.43(m,1H)、3.81−3.85(m,6H)、3.86−4.01(m,1H)、4.91−5.05(m,1H)、5.38−5.61(m,1H)、6.56−6.61(m,1H)、6.64−6.70(s,1H);13C NMR(CDCl3)δ21.75、21.90、27.93、28.08、28.44、37.53、38.75、42.22、42.81、51.11、51.87、55.92、56.02、68.08、79.74、80.21、109.60、109.99、111.44、111.54、126.28、126.48、128.54、128.76、147.51、147.97、154.39、154.51、170.36、170.59;LRMS−(ESI+)(C2131NO6+H)[M+H]+に関する計算値394.22、実測値394.16。
【0180】
方法3 アルデヒド化合物4の製造
【0181】
【化24】

【0182】
出発モノエステル(、1.0eq.)を−78℃のトルエンに溶解した0.12M溶液に、シリンジポンプでDiBAl−H(1.5eq.)の1.5Mヘキサン溶液を滴下した。滴下後、反応混合物を−78℃で2時間撹拌した。反応混合物をEtOAcの添加によって奪活し、次いで飽和クエン酸水溶液で酸性化した。反応混合物を室温まで放温し、30分間撹拌し続けた。相を分離し、水性相を3回分のEtOAcで抽出した。合わせた有機抽出液を2回分の2M HCl水溶液で洗浄し、ブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をSiO2上での精製に供した(15〜35%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)。単離生成物であるアルデヒド化合物は無色の泡状物(76%)であった。生成物は室温で回転異性体の1:1混合物として存在した。[α]26D−116(c0.26,CH2Cl2);1H NMR(CDCl3)δ1.40(s,9H)、2.58(見掛けのt,J=3.8Hz,0.5H)、2.61(見掛けのt,J=3.5Hz,0.5H)、2.68−2.88(m,3H)、3.02−3.27(m,1H)、3.78(見掛けのs,6H)、3.87−3.99(m,0.5H)、4.08−4.23(m,0.5H)、5.37−5.68(m,1H)、6.55(s,1H)、6.58(s,1H)、9.78(s,1H);13C NMR(CDCl3)δ20.90、28.02、28.27、37.23、38.65、49.29、49.93、51.12、55.83、55.96、80.13、80.64、109.42、109.52、111.52、126.34、126.51、127.78、127.82、147.72、147.97、153.85、154.62、200.08、200.33。
【0183】
方法4 アルデヒド化合物4とヨウ化アルケニル5から導かれる求核性アルケニル化学種との反応によるアリル型アルコール6の製造
【0184】
【化25】

【0185】
ヨウ化アルケニル(1.0eq)及びアルデヒド化合物(1.0eq.)からなる室温のニート混合物に、0.5%NiCl2(w/w)をドープした塩化クロム2.65eq.を添加した。混合物を約2分間渦動させて均質な緑灰色ペーストを得、次いで窒素下でさらに10分間撹拌した後、無水DMFを添加して最終反応濃度を0.36Mにした。反応混合物は濃緑色であり、室温で14時間撹拌し続けた。所定の時間後、反応混合物を1:1 EtOAc−ヘキサンで希釈し、0.5M EDTA水溶液(pH9)を添加し、混合物全体を1.5時間撹拌した。水性層を3回分のEtOAcで抽出し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して緑色の油状物を得た。粗物質をSiO2上でのカラムクロマトグラフィーに供した(35%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)。生成物であるアリル型アルコールは、ジアステレオマーの混合物として収率53%で単離された淡黄色の油状物であったが、これを追加の特性決定又は分析なしに次の段階に供した。
【0186】
方法5 アルデヒド化合物4とヨウ化アルケニル7から導かれる求核性アルケニル化学種との反応によるアリル型アルコール8の製造
【0187】
【化26】

【0188】
ヨウ化アルケニル(1.0eq)及びアルデヒド化合物(1.25eq.)からなる室温のニート混合物に、0.5%NiCl2(w/w)をドープした塩化クロム2.5eq.を添加した。混合物を約2分間渦動させて均質な緑灰色ペーストを得、次いで窒素下でさらに10分間撹拌した後、無水DMFを添加して最終反応濃度を0.36Mにした。反応混合物は濃緑色であり、室温で14時間撹拌し続けた。所定の時間後、反応混合物を1:1 EtOAc−ヘキサンで希釈し、0.5M EDTA水溶液(pH9)を添加し、混合物全体を1.5時間撹拌した。水性層を3回分のEtOAcで抽出し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して緑色の油状物を得た。粗物質をSiO2上でのカラムクロマトグラフィーに供した(20%EtOAc−ヘキサン〜35%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)。生成物であるアリル型アルコールは、ジアステレオマーの混合物として収率54%で単離された淡黄色の油状物であったが、これを追加の特性決定又は分析なしに次の段階に供した。
【0189】
方法6 アルデヒド化合物4とヨウ化アルケニル9から導かれる求核性アルケニル化学種との反応によるアリル型アルコール10の製造
【0190】
【化27】

【0191】
ヨウ化アルケニル(1.5eq)及びアルデヒド(1.0eq.)からなる室温のニート混合物に、0.5%NiCl2(w/w)をドープした塩化クロム2.5eq.を添加した。混合物を約2分間渦動させて均質な緑灰色ペーストを得、次いで窒素下でさらに10分間撹拌した後、無水DMFを添加して最終反応濃度を0.36Mにした。反応混合物は濃緑色であり、室温で14時間撹拌し続けた。所定の時間後、反応混合物を1:1 EtOAc−ヘキサンで希釈し、0.5M EDTA水溶液(pH9)を添加し、混合物全体を1.5時間撹拌した。水性層を3回分のEtOAcで抽出し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して緑色の油状物を得た。粗物質をSiO2上でのカラムクロマトグラフィー(40%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)に供することで、生成物であるアリル型アルコール10をジアステレオマーの1:1混合物として存在する淡黄色の油状物(47%)として得た。1H NMR(CD2Cl2)δ0.94−1.00(m,6H)、1.13−1.16(m,9H)、1.54−1.57(m,9H)、1.67−1.74(m,2H)、1.79−1.86(m,0.5H)、1.87−1.94(m,1H)、1.96−2.05(m,0.5H)、2.09−2.24(m,2H)、2.66−2.77(m,1H)、2.85−2.99(m,1H)、3.16−3.22(m,0.5H)、3.36−3.44(m,0.5H)、3.80−3.92(m,8H)、4.01−4.08(m,0.5H)、4.12−4.17(m,0.5H)、4.30−4.38(m,0.5H)、4.66−4.77(m,0.5H)、4.86−4.96(m,1H)、5.23−5.30(m,0.5H)、5.34−5.39(m,1H)、5.39−5.43(m,0.5H)、6.68−6.72(m,1H)、6.73−6.77(m,0.5H)、6.77−6.81(m,0.5H)、7.43−7.52(m,6H)、7.75−7.82(m,4H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.12、26.83、27.33、27.45、27.54、27.59、28.29、28.41、33.46、33.48、38.30、39.45、43.64、43.82、44.93、45.05、45.48、45.95、50.95、52.25、55.89、55.99、56.01、61.14、69.99、73.06、80.03、80.49、110.21、110.56、111.87、112.00、112.02、112.39、125.92、126.32、126.35、127.77、129.57、129.69、130.17、134.15、135.68、147.85、147.88、147.99、148.11、148.71、149.59、149.61、155.79、156.39。
【0192】
方法7 アリル型アルコール6の酸化による第1中間体12の製造
【0193】
【化28】

【0194】
アリル型アルコール(1.0eq)を0℃のジクロロメタンに溶解した0.1M溶液に、1.1eq.のデス−マーチン(Dess−Martin)試薬11を添加した。反応混合物を撹拌しながら、2.5時間かけてゆっくりと室温まで加温した。反応物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液の添加によって奪活し、酢酸エチルで希釈した。有機層及び水性層を分配して分離し、水性層をさらに3回分の酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗物質をSiO2上でのカラムクロマトグラフィー(10〜30%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)によって精製した。生成物である第1中間体12は、26℃では溶解状態で回転異性体の60:40混合物として存在する無色の悪臭ある油状物(66%)であった。1H NMR(CDCl3)δ0.82(見掛けのt,J=7.6Hz,6H)、1.42(s,9H)、1.70(見掛けのsept,J=6.62Hz,1H)、2.08−2.15(m,1H)、2.15−2.24(m,1H)、2.62−2.70(m,1H)、2.75−2.91(m,1H)、2.93−3.07(m,1H)、3.07−3.29(m,1.6H)、3.30−3.43(m,0.4H)、3.79(s,3H)、3.81(s,3.4H)、4.04−4.16(m,0.6H)、5.52−5.62(m,1H)、5.69(s,1H)、5.90(s,0.6H)、6.04(s,0.4H)、6.57(s,1H)、6.63(s,1H);13C NMR(CDCl3)δ22.45、27.04、27.25、28.11、28.41、38.01、39.33、40.39、45.20、45.90、51.62、55.92、55.98、79.75、80.23、109.85、110.25、110.28、111.41、125.65、125.72、126.26、129.25、147.57、147.87、148.16、148.29、148.35、154.40、154.51、199.53;HRMS−(ESI+)(C2435NO5)+H)[M+H]+に関する計算値418.2594、実測値418.2590。
【0195】
方法8 アリル型アルコール8の酸化による第1中間体13の製造
【0196】
【化29】

【0197】
(1.0eq)を0℃のジクロロメタンに溶解した0.1M溶液に、1.1eq.のデス−マーチン試薬11を添加した。反応混合物を撹拌しながら、2.5時間かけてゆっくりと室温まで加温した。反応物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液の添加によって奪活し、ジクロロメタンで希釈した。有機層及び水性層を分配して分離し、水性層をさらに3回分のジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗物質をSiO2上でのカラムクロマトグラフィー(10〜50%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)によって精製した。生成物である第1中間体13は、26℃では溶解状態で回転異性体の50:50混合物として存在する無色の油状物(82%)であった。1H NMR(CD2Cl2)δ1.19(s,9H)、1.55(s,9H)、1.63−1.83(m,5H)、2.34−2.57(m,2H)、2.70−2.85(m,1H)、2.85−3.05(m,1H)、3.05−3.41(m,2.5H)、3.41−3.56(m,0.5H)、3.81−3.83(m,1H)、3.84(s,3H)、3.86(s,3H)、3.97−4.08(m,0.5H)、4.20−4.35(m,0.5H)、5.68(見掛けのt,J=6.6Hz,1H)、5.87(s,1H)、6.09(s,0.5H)、6.19(s,0.5H)、6.71(s,1H)、6.76(s,1H)、7.45−7.60(m,6H)、7.77−7.95(m,4H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.19、24.66、24.75、26.83、28.06、28.28、30.57、32.43、37.75、39.20、45.16、45.66、63.84、79.46、79.77、110.21、110.49、111.81、124.37、124.67、126.45、127.76、129.19、129.68、134.13、135.61、147.79、148.19、149.20、154.09、154.41、199.15、199.27;HRMS−(ESI+)(C4053NO6Si+H)[M+H]+に関する計算値672.3720、実測値672.3715。
【0198】
方法9 アリル型アルコール10の酸化による第1中間体14の製造
【0199】
【化30】

【0200】
アリル型アルコール10(1.0eq)を0℃のジクロロメタンに溶解した0.1M溶液に、1.1eq.のデス−マーチン試薬11を添加した。反応混合物を撹拌しながら、5時間かけてゆっくりと室温まで加温した。反応物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液の添加によって奪活し、ジクロロメタンで希釈した。有機層及び水性層を分配して分離し、水性層をさらに3回分のジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗物質をSiO2上でのカラムクロマトグラフィー(10〜50%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)によって精製した。生成物である第1中間体14は、26℃では溶解状態で回転異性体の50:50混合物として存在する黄色の泡状物(93%)であった。1H NMR(CD2Cl2)δ0.85(s,6H)、1.14(s,9H)、1.48−1.57(m,9H)、1.65(t,J=7.3Hz,2H)、2.30−2.50(m,2H)、2.70−2.80(m,1H)、2.85−2.98(m,1H)、3.07−3.17(m,1H)、3.22−3.37(m,1.5H)、3.38−3.50(m,0.5H)、3.81(s,3H)、3.85(s,3H)、3.85−3.92(m,2H)、3.94−4.02(m,0.5H)、4.18−4.25(m,0.5H)、5.65−5.72(m,1H)、5.74(s,1H)、6.07(s,0.5H)、6.14(s,0.5H)、6.69(s,1H)、6.76(s,1H)、7.45−7.54(m,6H)、7.77−7.82(m,4H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.09、26.80、26.92、26.97、28.13、28.22、28.28、33.22、37.94、39.39、41.79、41.87、44.49、45.33、46.02、51.16、51.44、55.79、55.83、61.05、79.47、79.76、110.18、110.51、111.74、126.40、127.26、127.36、127.76、129.48、129.69、134.09、135.66、146.93、147.06、147.78、148.10、154.16、154.47、199.36;HRMS−(ESI+)(C4257NO6Si−C592(Boc)+H)[M−Boc+H]+に関する計算値600.3509、実測値600.3496。
【0201】
方法10 第1中間体12からのBoc保護基の除去及びアミノ環化による(+)−テトラベナジン15の製造
【0202】
【化31】

【0203】
第1中間体12(1.0eq)を10%Me2S−ジクロロメタンに溶解して82mM溶液を得た。溶液を0℃に冷却し、トリイソプロピルシラン(1.1eq.)、次いで(0℃に予備冷却した)TFAを反応混合物に添加して41mMの最終濃度を得た。反応混合物を0℃で1時間撹拌した。所定の時間後、反応混合物を飽和炭酸カリウム水溶液の添加によって0℃で奪活し、減圧下で濃縮して大部分のジメチルスルフィドを除去した。混合物を5回分のジクロロメタンで抽出し、合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することで、粗生成物を黄色の固体として得た。粗生成物をヘキサン中3.5%ジメトキシエタンから再結晶した。得られた無色の結晶をヘキサンで洗浄して純粋な(+)−テトラベナジン(15)(46%)を得た。mp126.0oC(3.5%DME−ヘキサン)(116℃で結晶多形が認められた);[α]26D+37.2(c0.41,CH2Cl2);1H NMR(CD2Cl2)δ0.89(見掛けのt,J=7.2Hz,6H)、0.98(ddd,J=12,6.0,4.0Hz,1H)、1.59−1.68(m,1H)、1.74(ddd,J=12,5.9,5.7Hz,1H)、2.32(見掛けのt,J=11.7Hz,1H)、2.46(見掛けのt,J=12.3Hz,1H)、2.55(ddd,J=12,10.0,3.8Hz,1H)、2.65−2.73(m,2H)、2.83(dd,J=5.5,2.8Hz,1H)、2.97−3.07(m,1H)、3.07−3.14(m,1H)、3.25(dd,J=9.7,6.3Hz,1H)、3.47(見掛けのd,J=12Hz,1H)、3.75(s,3H)、3.77(s,3H)、6.55(s,1H)、6.60(s,1H);13C NMR(CD2Cl2)δ21.98、23.02、25.51、29.46、35.16、47.47、47.63、50.47、55.87、56.01、61.47、62.46、108.46、111.72、126.37、128.96、147.65、147.98、209.72;HRMS−(ESI+)(C1927NO3+H)[M+H]+に関する計算値318.2069、実測値318.2082。
【0204】
方法11 第1中間体13からのBoc保護基の除去及びアミノ環化による(+)−TBZ化合物16の製造
【0205】
【化32】

【0206】
第1中間体出発原料13(1.0eq)を10%Me2S−ジクロロメタンに溶解して26mM溶液を得た。溶液を0℃に冷却し、トリイソプロピルシラン(1.1eq.)、次いで(0℃に予備冷却した)TFAを反応混合物に添加して13mMの最終濃度を得た。反応混合物を0℃で1時間撹拌した。所定の時間後、反応混合物を飽和炭酸カリウム水溶液の添加によって0℃で奪活し、減圧下で濃縮して大部分のジメチルスルフィドを除去した。混合物を5回分のジクロロメタンで抽出し、合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することでオレンジ色の油状物を得た。単離した物質を直ちにSiO2上でのフラッシュクロマトグラフィー(20〜30%EtOAc−ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)によって精製した。(所望の生成物を豊富に含むジアステレオマー混合物として存在する)半純粋な生成物を、数日かけてヘキサン中3.5%ジメトキシエタンから晶出させた。得られた無色の結晶をヘキサンで洗浄することで、(+)−TBZ化合物16を単一のジアステレオマー(42%)として得た。[α]26D+40.1(c0.63,CH2Cl2);1H NMR(CD2Cl2)δ1.14(s,9H)、1.18−1.30(m,1H)、1.45−1.56(m,2H)、1.60−1.75(m,2H)、1.86−1.98(m,1H)、2.41(見掛けのt,J=11.4Hz,1H)、2.47(見掛けのt,J=12.6Hz,1H)、2.59−2.82(m,3H)、2.93(dd,J=13.1,2.8Hz,1H)、3.06−3.20(m,2H)、3.34(dd,J=9.6,6.1Hz,1H)、3.55(見掛けのd,J=11.6Hz,1H)、3.78(見掛けのt,J=6.3Hz,2H)、3.84(s,3H)、3.85(s,3H)、6.64(s,1H)、6.69(s,1H)、7.40−7.53(m,6H)、7.70−7.81(m,4H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.14、23.43、25.98、26.74、29.47、32.77、47.55、49.42、50.44、55.74、55.86、61.06、62.36、63.81、108.31、111.68、126.31、127.68、128.91、129.60、134.15、135.59、147.59、147.90、209.36;HRMS−(ESI+)(C3545NO4Si+H)[M+H]+に関する計算値572.3196、実測値572.3187。
【0207】
方法12 第1中間体14からのBoc保護基の除去及びアミノ環化による(+)−TBZ化合物17の製造
【0208】
【化33】

【0209】
出発原料14(1.0eq)を10%Me2S−ジクロロメタンに溶解して出発原料の176mM溶液を得た。溶液を0℃に冷却し、トリイソプロピルシラン(1.1eq.)、次いで(0℃に予備冷却した)TFAを反応混合物に添加して88mMの最終濃度を得た。反応混合物を0℃で1時間撹拌した。所定の時間後、反応混合物を飽和炭酸カリウム水溶液の添加によって0℃で奪活し、減圧下で濃縮して大部分のジメチルスルフィドを除去した。混合物を5回分のジクロロメタンで抽出し、合わせた有機抽出液をブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することで黄色の泡状物を得た。粗生成物をSiO2上でのフラッシュクロマトグラフィー(0.2%トリエチルアミン−10%EtOAc−89.8%ヘキサン〜0.2%トリエチルアミン−50%EtOAc−49.8%ヘキサン、溶出は285nm及び228nmで観察した)によって精製した。生成物である(+)−TBZ化合物17は、所望のジアステレオマーのみからなる無色の泡状物(73%)であった。1H NMR(CD2Cl2)δ0.79(dd,J=13.8,3.8Hz,1H)、0.92(s,6H)、1.14(s,9H)、1.59−1.72(m,2H)、2.27(dd,J=13.2,5.1Hz,1H)、2.52−2.65(m,2H)、2.68−2.82(m,2H)、2.94(dd,J=13.0,3.0Hz,1H)、3.06−3.18(m,2H)、3.25(dd,J=9.8,6.3Hz)、3.55(dd,J=11.6,1.8Hz,1H)、3.83−3.88(m,8H)、6.65(s,1H)、6.69(s,1H)、7.44−7.53(m,6H)、7.74−7.82(m,4H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.09、26.79、27.10、29.48、32.31、36.90、44.38、46.02、47.45、50.15、55.77、55.91、61.09、62.53、63.50、108.38、111.75、126.30、127.74、128.93、129.67、134.13、135.65、147.66、147.98、208.73;HRMS−(ESI+)(C3749NO4Si+H)[M+H]+に関する計算値600.3509、実測値600.3499。
【0210】
方法13 (+)−テトラベナジン15の還元によるジヒドロテトラベナジン化合物18及び19のジアステレオマー混合物の製造
【0211】
【化34】

【0212】
(+)−TBZ(15)を0℃のエタノールに溶解した0.11M溶液にNaBH4(2.85eq)を添加した。反応混合物を室温で60分間撹拌した。溶媒を減圧下で注意深く除去し、残留物をジクロロメタンに溶解し、3回分の飽和K2CO3水溶液で洗浄した。水性洗液を2回分のジクロロメタンで逆抽出した。合わせた有機抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することで、高真空下で静置すれば結晶化する無色の油状物を得た。粗生成物の精製は、SiO2上でのクロマトグラフィー(2.5〜5%MeOH−CH2Cl2、溶出は285nmで観察した)によって達成した。UV活性画分をTLCによって再分析した。この手順で2種の生成物18及び19を単離した。主生成物18は無色の固体(74%)であった。[α]26D+48(c0.30,CH2Cl2);1H NMR(CD2Cl2)δ0.93(d,J=6.6Hz,3H)、0.95(d,J=6.6Hz,3H)、1.04(ddd,J=14.6,8.7,4.3Hz,1H)、1.42(dd,J=20.2,11.4Hz,1H)、1.59(ddd,J=13.7,9.6,3.3Hz,1H)、1.64−1.78(m,2H)、1.96(見掛けのt,J=11.4Hz,1H)、2.27(br s,1H)、2.40−2.48(m,1H)、2.54(ddd,J=12.3,3.7,2.3Hz,1H)、2.60−2.67(m,1H)、2.95−3.09(m,3H)、3.11(見掛けのd,J=11.1Hz,1H)、3.35(ddd,J=10.4,10.4,4.5Hz,1H)、3.80−3.81(m,6H)、6.60(s,1H)、6.69(s,1H);13C NMR(CD2Cl2)δ21.61、24.02、25.33、29.30、39.68、40.81、41.58、51.83、55.74、55.91、60.02、60.92、74.32、108.42、111.73、126.68、129.76、147.35、147.61;HRMS−(ESI+)(C1929NO3+H)[M+H]+に関する計算値320.2226、実測値320.2242。副生成物19は黄色の油状物(4%)であった。1H NMR(CD2Cl2)δ0.94(d,J=6.6Hz,3H)、0.96(d,J=6.6Hz,3H)、1.13−1.20(m,1H)、1.24−1.34(m,2H)、1.60−1.77(m,2H)、1.89−2.00(m,1H)、2.36−2.44(m,2H)、2.53(ddd,J=10.5,10.5,3.8Hz,1H)、2.58−2.70(m,2H)、2.91−2.98(m,1H)、2.98−3.09(m,1H)、3.48(見掛けのd,J=11.6Hz,1H)、3.80−3.82(見掛けのs,6H)、4.07(見掛けのd,J=3.1Hz,1H)、6.60(s,1H)、6.68(s,1H);13C NMR(CD2Cl2)δ22.74、22.81、24.87、29.30、37.83、38.87、39.42、52.44、55.76、55.96、56.32、56.43、67.88、108.45、111.78、127.18、130.38、147.30、147.54。
【0213】
方法14 TBZ化合物16のケタール化
【0214】
【化35】

【0215】
出発原料16(1.0eq)をエチレングリコールに溶解した87mM溶液にメタンスルホン酸(1.76eq)を添加した。反応混合物を密封容器内で85℃に加熱し、この温度に20時間保った。所定の時間後、反応混合物を1mLの飽和炭酸カリウム水溶液の添加によって奪活し、EtOAcを添加した。反応混合物を室温でさらに1時間撹拌した後、水性層及び有機層を分配して分離した。水性層を3回分のCH2Cl2で抽出し、合わせた有機抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮して黄色の油状物を得た。粗生成物の精製は、SiO2上でのフラッシュクロマトグラフィー(1%トリエチルアミン−DCM〜1%トリエチルアミン−9%メタノール−90%DCM、溶出は284nm及び240nmで観察した)によって行った。所望の生成物を含むと考えられるプールを集めることで、ケタール20を無色の油状物(73%)として得た。1H NMR(CD2Cl2)δ1.03−1.15(m,1H)、1.20−1.35(m,2H)、1.37−1.61(m,4H)、1.87−1.99(m,1H)、2.08−2.17(br.s,1H)、2.20−2.29(m,2H)、2.42−2.51(m,1H)、2.55−2.64(m,1H)、2.92−3.03(m,3H)、3.27(見掛けのd,J=11Hz,1H)、3.57(見掛けのt,J=6.3Hz,2H)、3.758(s,3H)、3.764(s,3H)、3.92−4.00(m,2H)、4.00−4.09(m,2H)、6.56(s,1H)、6.57(s,1H);13C NMR(CD2Cl2)δ23.74、25.30、29.31、33.25、41.00、43.90、55.74、56.07、58.68、59.82、62.64、63.68、65.17、63.35、108.50、109.65、111.78、126.82、129.81、147.31、147.67;LRMS−(ESI+)(C2131NO5+H)[M+H]+に関する計算値378.23、実測値378.25。
【0216】
方法15 ヒドロキシケタール20のフッ素化
【0217】
【化36】

【0218】
出発ヒドロキシケタール20をジクロロメタンに溶解した100mM溶液にDAST試薬(2.2eq.)を室温で添加した。反応混合物を16時間撹拌した後、反応混合物を1mLの飽和NaHCO3水溶液の添加によって奪活した。水性層及び有機層を分配して分離し、水性層を3回分のジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮して黄色の油状物を得、これをSiO2上でのフラッシュクロマトグラフィー(1%トリエチルアミン−DCM〜1%トリエチルアミン−5%メタノール−94%DCM,40CV、溶出は284nm及び240nmで観察した)によって精製した。精製生成物であるα−フルオロアルキルケタール21を黄色の油状物として収率60%で得た。単離した物質を追加の特性決定なしに次の段階に供した。
【実施例1】
【0219】
実施例1 保護テトラベナジン化合物であるα−フルオロアルキルケタール21によるα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物22の製造
【0220】
【化37】

【0221】
出発フルオロアルキルケタール21を3:1 THF−水に溶解した8mM溶液に0.18gのダウエックス(DOWEX)強酸性陽イオン交換樹脂を添加した。反応混合物を65℃に加熱し、この温度に一晩保った。樹脂を飽和炭酸カリウム水溶液で洗浄し、混合物を3回分のジクロロメタン及び3回分のトルエンで抽出した。有機抽出液を合わせ、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗物質をPhenomenex Gemini C18カラム5μm(4.6×250mm)上での半分取HPLC(284nm及び240nmでのUV検出)によって1.0mL/分の流量で精製した。次の勾配を使用した。即ち、100%0.1mM TEAA緩衝液(pH7)を3分間保ち、次いで25分かけて98%MeCN/2%0.1mM TEAA緩衝液(pH7)まで傾斜させ、最後にこのレベルにさらに12分間保った。分析中にはカラムを室温に保った。主UV活性ピークは34.8分に溶出し、これを捕集して減圧下で濃縮することで、生成物を黄色の油状物(5%)として得た。LRMS−(ESI+)(C1926FNO3+H)[M+H]+に関する計算値336.20、実測値336.16。
【0222】
方法16 ジヒドロテトラベナジン化合物23の製造
【0223】
【化38】

【0224】
テトラベナジン化合物15を0℃のエタノールに溶解した0.1M溶液にNaBH4(2.85eq)を添加した。反応混合物を室温で60分間撹拌した。過剰の溶媒を減圧下で注意深く除去し、残留物をジクロロメタンに溶解し、3回分の飽和K2CO3水溶液で洗浄した。水性洗液を2回分のジクロロメタンで逆抽出した。合わせた有機抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮して黄色の泡状物を得た。粗生成物の精製は、SiO2上でのクロマトグラフィー(2.5〜5%MeOH−CH2Cl2、溶出は285nmで観察した)によって達成した。生成物であるジヒドロテトラベナジン化合物23は無色の泡状物(78%)であった。1H NMR(CD2Cl2)δ1.09−1.22(m,11H)、1.44(dd,J=20.1,11.6Hz,2H)、1.55−1.72(m,4H)、1.78−1.88(m,1H)、2.02(見掛けのt,J=11.4Hz,1H)、2.46(ddd,J=4.6,11.3,10.3Hz,1H)、2.57(ddd,J=13.1,3.8,2.5Hz,1H)、2.65(dd,J=14.3,4.0Hz,1H)、2.94−3.10(m,3H)、3.14(見掛けのd,J=11.1Hz,1H)、3.40(ddd,J=9.5,9.5,4.6Hz,1H)、3.76(見掛けのt,J=6.3Hz,2H)、3.83(見掛けのs,6H)、6.63(s,1H)、6.73(s,1H)、7.42−7.49(m,6H)、7.71−7.76(m,4H)、13C NMR(CD2Cl2)δ19.17、23.21、26.75、29.38、29.79、33.03、40.89、43.88、51.86、55.76、55.94、59.78、60.95、63.93、73.92、108.48、111.76、126.75、127.69、129.61、129.81、134.23、135.62、147.38、147.63;HRMS−(ESI+)(C3547NO4Si+H)[M+H]+に関する計算値574.3353、実測値574.3333。
【0225】
方法17 ジヒドロテトラベナジン化合物24及び2−エピ−24の製造
【0226】
【化39】

【0227】
テトラベナジン化合物17を0℃のエタノールに溶解した0.1M溶液にNaBH4(2.85eq)を添加した。反応混合物を室温で60分間撹拌した。過剰の溶媒を減圧下で注意深く除去し、残留物をジクロロメタンに溶解し、3回分の飽和K2CO3水溶液で洗浄した。水性洗液を2回分のジクロロメタンで逆抽出した。合わせた有機抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮して黄色の泡状物を得た。粗生成物であるジヒドロテトラベナジン化合物24の精製は、SiO2上でのクロマトグラフィー(2.5〜5%MeOH−CH2Cl2、溶出は285nmで観察した)によって達成した。生成物24は無色の泡状物(69%)であった。1H NMR(CD2Cl2)δ0.99(s,6H)、1.02−1.06(m,1H)、1.16(s,9H)、1.48(dd,J=20.2,11.4Hz,1H)、1.63−1.82(m,4H)、2.06(見掛けのt,J=11.4Hz,1H)、2.47((ddd,J=3.8,10.6,10.6Hz,1H)、2.60(ddd,J=12.0,3.4,2.3Hz,1H)、2.68(見掛けのbr d,J=15.4Hz,1H)、2.96−3.04(m,1H)、3.05−3.14(m,2H)、3.17(見掛けのbr d,J=11.4Hz,1H)、3.31(ddd,J=9.3,9.3,4.3Hz,1H)、3.85(s,6H)、3.87−3.92(m,2H)、6.66(s,1H)、6.75(s,1H)、7.43−7.56(m,6H)、7.76−7.86(m,4H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.10、26.83、27.67、27.77、29.28、32.73、39.98、40.64、42.21、44.66、49.89、51.75、55.77、55.94、61.02、61.24、62.71、73.88、108.46、111.79、126.62、127.76、129.70、134.10、135.68、147.44、147.69。ジヒドロテトラベナジン化合物24の環位置2のエピマーの少量を収率約12%で単離し、特性決定した。エピマー生成物(2−エピ−24)は淡黄色の油状物であった。1H NMR(CD2Cl2)δ0.92(s,6H)、0.96−1.02(m,2H)、1.08(s,9H)、1.42(dd,J=14.5,4.7Hz,1H)、1.61−1.71(m,3H)、1.86−1.95(m,1H)、2.35(見掛けのdt,J=13.7,2.9Hz,1H)、2.43(見掛けのt,J=11.6Hz,1H)、2.51(ddd,J=11.4,11.4,3.9Hz,1H)、2.59−2.67(m,2H)、2.88−2.95(m,1H)、2.98−3.11(m,1H)、3.45(br d,J=11.4Hz,1H)、3.76−3.88(m,8H)、3.94−4.01(m,1H)、6.61(s,1H)、6.67(s,1H)、7.40−7.54(m,6H)、7.68−7.81(m,4H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.05、26.72、27.51、29.31、29.78、32.81、36.51、39.36、41.99、44.53、52.34、55.77、55.86、55.96、57.71、61.16、69.62、108.45、111.80、127.19、127.71、129.64、130.43、134.12、135.65、147.30、147.53。少量のエピマー(2−エピ−24)を、方法19(ヒドロキシメチン基をTHPエーテルとして保護することによる2−エピ−26の製造)、方法21(t−ブチルジフェニルシリル基の除去による2−エピ−28の製造)及び方法23(第一ヒドロキシ基とDASTとの反応による2−エピ−30の製造)に類似した一連の段階によって転化し、次いで実施例3に記載された段階に類似した段階でTHPエーテル保護基を除去することにより、環位置2の配置が「R」ではなく「S」であることを除けばすべての点で化合物32と同一の構造を有する化合物であるα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン2−エピ−32(表15参照)を得た。中間体2−エピ−28は低分解能質量分析法によって特性決定した。LRMS−(ESI+)(C2437NO5+H)[M+H]+に関する計算値448.31、実測値448.26。α−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン2−エピ−32は高分解能質量分析法によって特性決定した。HRMS−(ESI+)(C2132FNO3+H)[M+H]+に関する計算値366.24445、実測値366.24333。
【0228】
方法18 THP保護DTBZ化合物25の製造
【0229】
【化40】

【0230】
出発ジヒドロテトラベナジン化合物23(1.0eq)をジクロロメタンに溶解した0.1M溶液にメタンスルホン酸(1.1eq)を添加し、次いでジヒドロピラン(2.2eq.)を添加した。反応物を26℃で36時間撹拌した。この時間後、反応混合物を飽和炭酸カリウム水溶液の添加によって奪活した。ジクロロメタンを添加し、水性層及び有機層を分配して分離した。水性層を3回分のCH2Cl2で抽出し、合わせた有機抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮して黄色の油状物を得た。これを直ちにSiO2上でのフラッシュクロマトグラフィー(1%トリエチルアミン−DCM〜1%トリエチルアミン−5%メタノール−94%DCM、溶出は284nm及び240nmで観察した)による精製に供した。所望の生成物を含むと考えられる画分を減圧下で濃縮することで、保護ジヒドロテトラベナジン化合物25を、ジアステレオマーのほぼ1:1混合物として存在する淡黄色の油状物(75%)として得た。1H NMR(CD2Cl2)δ1.10(s,9H)、1.48−1.65(m,8H)、1.66−1.79(m,4H)、1.80−1.90(m,1.5H)、1.91−1.99(m,0.5H)、1.99−2.11(m,1H)、2.40−2.51(m,1H)、2.62−2.68(m,1H)、2.68−2.76(m,1H)、2.95−3.16(m,3H)、3.29−3.37(m,0.5H)、3.49−3.58(m,1.5H)、3.71−2.78(dd,J=9.4,6.1Hz,2H);3.79−3.86(m,6H)、3.86−3.94(m,1H)、3.95−4.07(m,1H)、4.65−4.71(m,0.5H)、4.92−5.01(m,0.5H)、6.60−6.64(s,1H)、6.69−6.72(s,0.5H)、6.72−6.75(s,0.5H)、7.39−7.50(m,6H)、7.68−7.77(m,4H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.16、19.69、20.24、23.17、23.23、25.65、25.67、25.72、26.74、29.43、29.46、29.78、29.90、30.69、31.14、31.21、33.06、33.11、36.00、39.52、41.61、42.49、51.77、51.95、55.76、56.04、56.17、59.91、59.99、60.72、61.00、62.31、62.50、62.87、63.96、64.10、75.58、82.46、94.06、101.79、108.75、108.80、111.76、111.82、126.83、126.98、127.68、129.58、130.00、130.04、134.23、134.25、134.26、134.28、135.61、147.35、147.38、147.68、147.71。
【0231】
方法19 THP保護DTBZ化合物26の製造
【0232】
【化41】

【0233】
出発ジヒドロテトラベナジン化合物24(1.0eq)をジクロロメタンに溶解した0.1M溶液にメタンスルホン酸(1.1eq)を添加し、次いでジヒドロピラン(2.2eq.)を添加した。反応物を26℃で36時間撹拌した。この時間後、反応混合物を飽和炭酸カリウム水溶液の添加によって奪活した。ジクロロメタンを添加し、水性層及び有機層を分配して分離した。水性層を3回分のCH2Cl2で抽出し、合わせた有機抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することで、ジヒドロテトラベナジン化合物26をジアステレオマーのほぼ1:1混合物として存在する黄色の泡状物(99%)として得た。この粗生成物を追加の精製なしに次の段階に供した。
【0234】
方法20 α−ヒドロキシアルキル保護ジヒドロテトラベナジン化合物27の製造
【0235】
【化42】

【0236】
保護ジヒドロテトラベナジン化合物25をTHFに溶解した0.3M溶液に、THF中の1.0Mテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)溶液(3.3eq)を添加することで、最終反応濃度を出発原料25に関して0.15Mとした。反応混合物を室温で14時間撹拌し続けた。混合物を脱イオン水で希釈し、3回分のジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮して黄色の油状物を得た。粗物質をSiO2上でのカラムクロマトグラフィー(1%トリエチルアミン−DCM〜1%トリエチルアミン−10%メタノール−89%DCM、溶出は284nm及び240nmで観察した)によって精製した。生成物であるα−ヒドロキシアルキル保護ジヒドロテトラベナジン化合物27は、幅の広いピークとして操作中に遅れて溶出した。生成物は、淡黄色の油状物として存在するジアステレオマーの1:1混合物(60%)であった。1H NMR(CD2Cl2)δ1.11−1.33(m,2.0H)、1.48−1.66(m,8.0H)、1.69−1.80(m,2.5H)、1.81−1.95(1.5H)、1.98−2.13(m,1.0H)、2.21−2.38(m,1.0H)、2.40−2.52(m,1.0H)、2.58−2.67(m,1.5H)、2.70(ddd,J=12.5,3.8,2.5Hz,0.5H)、2.95−3.15(m,4.0H)、3.33(ddd,J=9.5,9.5,4.5Hz,0.5H)、3.51−3.59(m,1.5H)、3.62(見掛けのdd,J=9.7,6.3Hz,2.0H)、3.81(見掛けのs,4.5H)、3.82(s,1.5H)、3.82−3.96(m,0.5H)、3.97−4.04(m,0.5H)、4.69(dd,J=3.6,2.8Hz,0.5H)、4.89−4.94(m,0.5H)、6.60(見掛けのd,J=1.8Hz,1.0H)、6.70(見掛けのd,J=3.5Hz,1.0H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.99、20.19、22.91、23.16、25.64、25.66、29.28、29.32、29.71、29.78、31.13、31.32、33.13、33.24、35.96、39.35、41.38、42.32、51.66、51.85、55.74、56.01、56.16、59.82、59.93、60.68、60.95、62.32、62.55、62.83、62.86、75.96、82.35、94.72、101.75、108.71、108.74、111.71、111.78、126.71、126.89、129.78、129.82、147.34、147.37、147.69、147.73;LRMS−(ESI+)(C2437NO5+H)[M+H]+に関する計算値448.31、実測値448.25。
【0237】
方法21 α−ヒドロキシアルキル保護ジヒドロテトラベナジン化合物28の製造
【0238】
【化43】

【0239】
二重保護ジヒドロテトラベナジン化合物26をTHFに溶解した0.3M溶液に、THF中の1.0M TBAF溶液(3.3eq)を添加することで、最終反応濃度を出発原料26に関して0.15Mとした。反応混合物を室温で14時間撹拌し続けた。混合物を脱イオン水で希釈し、3回分のジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮して黄色の油状物を得た。粗物質をSiO2上でのカラムクロマトグラフィー(1%トリエチルアミン−DCM〜1%トリエチルアミン−10%メタノール−89%DCM、溶出は284nm及び240nmで観察した)によって精製した。生成物は、幅の広いピークとして操作中に遅れて溶出した。生成物であるα−ヒドロキシアルキル保護ジヒドロテトラベナジン化合物28は、無色の油状物として存在するジアステレオマーの1:1混合物(71%)であった。1H NMR(CD2Cl2)δ0.90−1.10(m,6.5H)、1.23−1.39(m,0.5H)、1.48−1.69(m,7.0H)、1.71−1.94(m,4.0H)、2.08(m,1.0H)、2.38−2.83(m,4.0H)、2.93−3.16(m,3.5H)、3.22(ddd,J=9.5,9.5,4.5Hz,0.5H)、3.40−3.60(m,1.5H)、3.61−3.76(m,2.0H)、3.77−3.91(m,6H)、3.92−4.06(m,1.5H)、4.62−4.83(m,0.5H)、4.83−5.09(m,0.5H)、6.60(見掛けのd,J=1.8Hz,1.0H)、6.70(見掛けのd,J=3.5Hz,1.0H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.96、25.67、27.62、27.71、27.89、29.26、29.30、31.18、31.28、32.78、35.87、37.52、38.28、39.34、41.47、41.95、45.18、45.29、51.50、51.74、55.72、55.99、56.15、59.12、59.19、60.60、60.85、62.58、62.71、62.82、62.94、76.16、83.14、94.56、102.07、108.75、111.73、111.81、126.69、126.86、129.86、129.93、147.33、147.37、147.67、147.73;LRMS−(ESI+)(C2641NO5+H)[M+H]+に関する計算値448.31、実測値448.25。
【0240】
方法22 α−フルオロアルキル保護ジヒドロテトラベナジン化合物29の製造
【0241】
【化44】

【0242】
出発α−ヒドロキシアルキル保護ジヒドロテトラベナジン化合物27をジクロロメタンに溶解した60mM溶液にジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(DAST、2.2eq.)を室温で添加した。反応物をこの温度で14時間撹拌し、次いで飽和炭酸カリウム水溶液の添加によって奪活した。水性層及び有機層を分配し、水性層を2回分のジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮してオレンジ色の油状物を得、これをSiO2上でのフラッシュクロマトグラフィー(1%トリエチルアミン−DCM〜1%トリエチルアミン−10%メタノール−89%DCM,40CV、溶出は284nm及び240nmで観察した)によって精製した。所望の生成物は、幅の広いピークとして操作中に遅れて溶出した。生成物であるα−フルオロアルキル保護ジヒドロテトラベナジン化合物29は、ジアステレオマーの1:1混合物として存在する淡黄色の油状物(58%)であった。1H NMR(CD2Cl2)δ1.12−1.31(m,2.0H)、1.50−1.67(m,6.0H)、1.66−1.91(m,6.0H)、1.99−2.12(m,1.0H)、2.39−2.51(m,1.0H)、2.59−2.67m,1.5H)、2.71(ddd,J=12.5,3.8,2.5Hz,0.5H)、2.93−3.15(m,4.0H)、3.33(ddd,J=9.3,9.3,4.5Hz,0.5H)、3.49−3.59(m,1.5H)、3.76−3.87(m,6.0H)、3.88−3.94(m,0.5H)、3.97−4.04(m,0.5H)、4.42(ddd,J=6.1,4.3,6.1Hz,1.0H)、4.54(ddd,J=6.1,4.3,6.1Hz,1.0H)、4.66−4.74(m,0.5H)、4.91−4.99(m,0.5H)、6.56−6.66(m,1.0H)、6.68−6.78(m,1.0H);13C NMR(CD2Cl2)δ19.79、20.22、22.60、22.63、22.66、22.69、25.66、25.72、29.42、29.46、29.65、29.76、30.73、30.79、30.92、30.98、31.15、31.25、36.02、39.50、41.57、42.41、51.75、51.93、55.76、56.04、56.17、59.88、59.96、60.70、60.97、62.49、62.89、75.83、82.45、83.39、83.49、85.01、85.12、94.29、101.76、108.75、108.79、111.75、111.82、126.83、126.99、129.96、130.01、147.35、147.38、147.67、147.72;LRMS−(ESI+)(C2436FNO4+H)[M+H]+に関する計算値422.27、実測値422.23。
【0243】
方法23 α−フルオロアルキル保護ジヒドロテトラベナジン化合物30の製造
【0244】
【化45】

【0245】
出発α−ヒドロキシアルキル保護ジヒドロテトラベナジン化合物28をジクロロメタンに溶解した60mM溶液にジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(DAST、2.2eq.)を室温で添加した。反応物をこの温度で14時間撹拌し、次いで飽和炭酸カリウム水溶液の添加によって奪活した。水性層及び有機層を分配し、水性層を2回分のジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮してオレンジ色の油状物を得、これをSiO2上でのフラッシュクロマトグラフィー(1%トリエチルアミン−DCM〜1%トリエチルアミン−10%メタノール−89%DCM,40CV、溶出は284nm及び240nmで観察した)によって精製した。所望の生成物は、幅の広いピークとして操作中に遅れて溶出した。生成物であるα−フルオロアルキル保護ジヒドロテトラベナジン化合物30は、ジアステレオマーの1:1混合物として存在する油状物(46%)であった。単離した物質を追加の特性決定又は分析なしに次の段階に供した。
【実施例2】
【0246】
実施例2 α−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物31の製造
【0247】
【化46】

【0248】
出発原料であるα−フルオロアルキル保護ジヒドロテトラベナジン化合物29をMeOH中の0.1M HClに溶解することで、出発原料29の26mM溶液を得た。反応混合物を室温で1.5時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を高真空下で1時間乾燥した。残留物を炭酸カリウム水溶液で処理し、3回分のジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することで、所望の生成物であるα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン31を無色の固体(99%)として得た。1H NMR(CD2Cl2)δ1.15−1.26(m,1H)、1.47(m,2H)、1.54−1.91(m,6H)、2.05(見掛けのt,J=11.4Hz,1H)、2.43−2.51(m,1H)、2.56(ddd,J=12.3,3.8,2.5Hz,1H)、2.60−2.68(m,1H)、2.96−3.09(m,3H)、3.15(見掛けのd,J=11.1Hz,1H)、3.42(ddd,J=9.5,9.5,4.6Hz,1H)、3.81(s,6H)、4.42(t,J=6.1Hz,1H)、4.54(t,J=6.1Hz,1H)、6.61(s,1H)、6.70(s,1H);13C NMR(CD2Cl2)δ22.80(dC*-C-C-F,J=5.1Hz)、29.41、29.80、30.99(dC*-C-F,J=19.0Hz)、41.02、43.91、51.93、55.90、56.07、59.79、61.05、74.00、84.36(dC*-F,J=163.2Hz)、108.58、111.88、126.79、129.68、147.55、147.82;LRMS−(ESI+)(C1928FNO3+H)[M+H]+に関する計算値338.21、実測値338.20。
【実施例3】
【0249】
実施例3 α−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物32の製造
【0250】
【化47】

【0251】
出発原料をMeOH中の0.1M HClに溶解することで、出発原料30の26mM溶液を得た。反応混合物を室温で1.5時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を高真空下で1時間乾燥した。残留物を炭酸カリウム水溶液で処理し、3回分のジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することで、所望の生成物であるα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン32を無色の固体(99%)として得た。1H NMR(CD2Cl2)δ0.92−0.97(m,1H)、1.01(s,6H)、1.03−1.11(m,1H)、1.42(q,J=11.4Hz,1H)、1.62−1.85(m,1H)、2.06(t,J=11.4Hz,1H)、2.39−2.49(m,1H)、2.57(ddd,J=12.3,3.8,2.5Hz,1H)、2.60−2.68(m,1H)、2.94−3.08(m,3H)、3.14(見掛けのd,J=11.1Hz,1H)、3.33(ddd,J=9.5,9.5,4.6Hz,1H)、3.81(s,6H)、4.54(ddd,6.2,6.2,2.0Hz,1H)、4.66(ddd,6.2,6.2,1.8Hz,1H)、6.60(s,1H)、6.69(s,1H);13C NMR(CD2Cl2)δ27.47、27.65、29.33、32.65(dC*-C-C-F,J=4.4Hz)、40.09、40.87、42.07(dC*-C-F,J=17.6Hz)、42.09、51.75、55.78、55.94、60.94、62.64、74.09、82.16(dC*-F,J=161.7Hz)、108.40、111.76、126.69、129.73、147.42、147.66;HRMS−(ESI+)(C2132FNO3+H)[M+H]+に関する計算値366.24445、実測値366.24404。
【実施例4】
【0252】
実施例4 中間体の保護テトラベナジンアルコール20による親フッ素性保護テトラベナジントシレート33の製造
【0253】
【化48】

【0254】
α−ヒドロキシアルキル保護TBZ化合物20のピリジン溶液にトルエンスルホニルクロリド(トシルクロリド、1.5当量)を添加し、混合物を0℃で撹拌し、薄層クロマトグラフィー(tlc)によって定期的にモニターする。tlcが出発アルコール20の完全な消費を示したとき、反応混合物を氷冷水及びEtOAcの添加によって奪活する。有機層を水、1M HCl(5×)、飽和Na2CO3及びブラインで順次に洗浄する。有機層を無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。残留物をシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて親フッ素性保護TBZトシレート33を得る。
【実施例5】
【0255】
実施例5 中間体の保護テトラベナジンアルコール27による親フッ素性保護テトラベナジントシレート34の製造
【0256】
【化49】

【0257】
α−ヒドロキシアルキル保護TBZ化合物27のピリジン溶液にトルエンスルホニルクロリド(トシルクロリド、1.5当量)を添加し、混合物を0℃で撹拌し、薄層クロマトグラフィー(tlc)によって定期的にモニターする。tlcが出発アルコール20の完全な消費を示したとき、反応混合物を氷冷水及びEtOAcの添加によって奪活する。有機層を水、1M HCl(5×)、飽和Na2CO3及びブラインで順次に洗浄する。有機層を無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。残留物をシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて親フッ素性保護TBZトシレート34を得る。
【実施例6】
【0258】
実施例6 PETイメージング剤35の製造
【0259】
【化50】

【0260】
18F]KF溶液(約1mL)を、水中にF−18を含むバイアルから陰イオン交換樹脂(Chromafix、30−PS−HCO3、ABX)に通す。次いで、炭酸カリウム(約2mg)及びクリプトフィックス(Kryptofix)221(約16mg)を含むアセトニトリル及び水の4:1溶液約1mLを用いて、固定化されたF−18フッ化物イオンを反応バイアルに移す。バイアルを窒素流及び部分真空下で40℃に加熱することで、水の共沸除去を行う。追加の乾燥アセトニトリル(1mL)を添加して蒸発させる。この共沸乾燥プロトコルを3回繰り返す。最終蒸発段階後、親フッ素性保護TBZトシレート33(約2mg)を含むジメチルホルムアミド及びアセトニトリルの混合物(約1mL)を添加し、バイアルを密封する。反応混合物を撹拌しながら100℃で10分間加熱し、次いで室温に冷却する。出発トシレート33及び生成物のF−18 α−フルオロアルキル保護テトラベナジンを含む生成物混合物を水(10mL)で希釈し、Sep−Pakカートリッジに通す。次いで、カートリッジを水(3×)で洗浄することで、未反応のフッ化物イオン及び生成物混合物の他の水溶性成分を除去する。次いで、放射性標識α−フルオロアルキル保護テトラベナジン化合物及び出発トシレート33をアセトニトリルでカートリッジから溶出させる。次いで、大部分のアセトニトリルを蒸発させ、残留物を塩酸(HCl)を含む水性メタノールに溶解し、60℃で加熱する。混合物を再び水で約2mLに希釈し、分取逆相HPLCにかけることで、アセトニトリル及び水の混合物中に精製トレーサーを得る。所望のトレーサーを含む画分を蒸留脱イオン水で5倍に希釈し、Sep−Pakカートリッジに通す。カートリッジを水で洗浄し、次いで窒素で3分間パージする。エタノール又はジメチルスルホキシドを用いてSepPakから溶出させることで化合物35を単離する。窒素流下でエタノールを除去し、及び/又は適当量の食塩水を添加することで、PETイメージング剤35を含む水性製剤を得る。
【実施例7】
【0261】
実施例7 PETイメージング剤36の製造
【0262】
【化51】

【0263】
18F]KF溶液(約1mL)を、水中にF−18を含むバイアルから陰イオン交換樹脂(Chromafix、30−PS−HCO3、ABX)に通す。次いで、炭酸カリウム(約2mg)及びクリプトフィックス221(約16mg)を含むアセトニトリル及び水の4:1溶液約1mLを用いて、固定化されたF−18フッ化物イオンを反応バイアルに移す。バイアルを窒素流及び部分真空下で40℃に加熱することで、水の共沸除去を行う。追加の乾燥アセトニトリル(1mL)を添加して蒸発させる。この共沸乾燥プロトコルを3回繰り返す。最終蒸発段階後、親フッ素性保護TBZトシレート34(約2mg)を含むジメチルホルムアミド及びアセトニトリルの混合物(約1mL)を添加し、バイアルを密封する。反応混合物を撹拌しながら100℃で10分間加熱し、次いで室温に冷却する。出発トシレート34及び中間体のF−18 α−フルオロアルキル保護テトラベナジンを含む生成物混合物を水(10mL)で希釈し、Sep−Pakカートリッジに通す。次いで、カートリッジを水(3×)で洗浄することで、未反応のフッ化物イオン及び生成物混合物の他の水溶性成分を除去する。次いで、放射性標識α−フルオロアルキル中間体及び出発トシレート34をアセトニトリルでカートリッジから溶出させ、ダウエックス強酸性陽イオン交換樹脂を含む水によって65℃で10分間処理する。次いで、反応混合物を濾過し、水で約2mLに希釈し、分取逆相HPLCにかけることで、アセトニトリル及び水の混合物中に精製トレーサーを得る。所望のトレーサーを含む画分を蒸留脱イオン水で5倍に希釈し、Sep−Pakカートリッジに通す。カートリッジを水で洗浄し、次いで窒素で3分間パージする。エタノール又はジメチルスルホキシドを用いてSepPakから溶出させることで化合物36を単離する。窒素流下でエタノールを除去し、及び/又は適当量の食塩水を添加することで、PETイメージング剤36を含む水性製剤を得る。
【実施例8】
【0264】
実施例8 別法によるPETイメージング剤36の製造
【0265】
【化52】

【0266】
18F]KF溶液(約1mL)を、水中にF−18を含むバイアルから陰イオン交換樹脂(Chromafix、30−PS−HCO3、ABX)に通す。次いで、炭酸カリウム(約2mg)及びクリプトフィックス221(約16mg)を含むアセトニトリル及び水の4:1溶液約1mLを用いて、固定化されたF−18フッ化物イオンを反応バイアルに移す。バイアルを窒素流及び部分真空下で40℃に加熱することで、水の共沸除去を行う。追加の乾燥アセトニトリル(1mL)を添加して蒸発させる。この共沸乾燥プロトコルを3回繰り返す。最終蒸発段階後、親フッ素性保護TBZトシレート34(約2mg)を含むジメチルホルムアミド及びアセトニトリルの混合物(約1mL)を添加し、バイアルを密封する。反応混合物を撹拌しながら100℃で10分間加熱し、次いで室温に冷却する。出発トシレート34及び生成物のF−18 α−フルオロアルキル保護ジヒドロテトラベナジン中間体を含む生成物混合物を窒素流下で濃縮し、残留物をHClを含むエタノールに溶解し、混合物を短時間加温してTHP保護基の除去を行う。次いで、過剰のオクタデシルアミン(約5mg)及び炭酸カリウム(約2mg)を添加し、混合物を60℃で5分間加熱して未反応のトシレート基を対応するオクタデシルアミンに転化させる。次いで、生成物混合物を水(10mL)で希釈し、Sep−Pakカートリッジに通す。次いで、カートリッジを水(3×)で洗浄することで、未反応のフッ化物イオン及び生成物混合物の他の水溶性成分を除去する。次いで、放射性標識α−フルオロアルキル化合物36及び対応するオクタデシルアミン付加物37をアセトニトリルでカートリッジから溶出させる。混合物を再び水で約2mLに希釈し、分取逆相HPLCにかけることで、アセトニトリル及び水の混合物中に精製トレーサーを得る。所望のトレーサーを含む画分を蒸留脱イオン水で5倍に希釈し、Sep−Pakカートリッジに通す。カートリッジを水で洗浄し、次いで窒素で3分間パージする。エタノール又はジメチルスルホキシドを用いてSepPakから溶出させることで化合物36を単離する。窒素流下でエタノールを除去し、及び/又は適当量の食塩水を添加することで、PETイメージング剤36を含む水性製剤を得る。
【0267】
VMAT−2に対するα−フルオロアルキル化合物の結合親和性の測定
本発明によって提供されるα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物3132及び2−エピ−32に関してVMAT−2結合親和性を測定した。VMAT−2結合親和性の測定は、プロトコルCat.No.100−0751を用いてNovascreen Biosciences Corporation(ハノーヴァー、米国メリーランド州)により実施された。Novascreen,Inc.は、製薬業界のための生物学的アッセイの商業的提供業者である。結合親和性データを以下の表15に示すが、これらは本発明のα−フルオロアルキル化合物がDTBZ対照品(比較例1)に比べて非常に高い結合親和性を有することを例示している。α−フルオロアルキル化合物3132及び2−エピ−32に関して得られたデータは、環位置3のフルオロアルキル置換(これは、TBZ及びDTBZに比べ、生物学的活性分子中の水素がフッ素で置換される場合に必ず生じる不確実性をもって環位置3の基のサイズ及び親油性の変化を合併する構造変化である)が意外にも許容されることを示している。加えて、ナノモル(nM)濃度単位で表された結合定数Kiは、VMAT−2バイオマーカーに対する本発明のα−フルオロアルキル化合物の非常に高い親和性を表している。
【0268】
【表15】

【実施例9】
【0269】
実施例9 (2R,3R,11bR)−3−(4−フルオロ−2,2−ジメチルブチル)−9,10−ジメトキシ−2,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−1H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イルアセテート40の製造
【0270】
【化53】

【0271】
10mg(27μmol)のα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物32を0℃の無水ジクロロメタン250μLに溶解した溶液に、4.4μL(2当量、54μmol)の無水ピリジンを添加し、次いで3.1μL(1.2当量、32.4μmol)の無水酢酸を添加する。反応混合物を撹拌し続けながら、14時間かけてゆっくりと室温まで加温する。反応の進行をHPLC−MSによって追跡する。次いで、反応混合物を1mLの飽和塩化アンモニウム水溶液の添加によって奪活し、さらに750μLのジクロロメタンで希釈する。水性層及び有機層を分配して分離し、水性層をさらに2回分(各1mL)のジクロロメタンで抽出する。合わせた有機抽出液を3mLのブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することで、粗α−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジンアセテート40を得る。これは分取逆相HPLCによって精製できる。
【実施例10】
【0272】
実施例10 (2R,3R,11bR)−3−(4−フルオロ−2,2−ジメチルブチル)−9,10−ジメトキシ−2,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−1H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イルイソブチレート41
【0273】
【化54】

【0274】
10mg(27μmol)のα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物32を0℃の無水ジクロロメタン250μLに溶解した溶液に、4.4μL(2当量、54μmol)の無水ピリジンを添加し、次いで5.4μL(1.2当量、32.4μmol)の無水イソ酪酸を添加する。反応混合物を撹拌し続けながら、14時間かけてゆっくりと室温まで加温する。反応の進行をHPLC−MSによって追跡する。次いで、反応混合物を1mLの飽和塩化アンモニウム水溶液の添加によって奪活し、さらに750μLのジクロロメタンで希釈する。水性層及び有機層を分配して分離し、水性層をさらに2回分(各1mL)のジクロロメタンで抽出する。合わせた有機抽出液を3mLのブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することで、粗α−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジンイソブチレート41を得る。これは分取逆相HPLCによって精製できる。
【実施例11】
【0275】
実施例11 (2R,3R,11bR)−3−(4−フルオロ−2,2−ジメチルブチル)−9,10−ジメトキシ−2,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−1H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イルベンジルカルバメート42
【0276】
【化55】

【0277】
10mg(27μmol)のα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物32を0℃の無水ジクロロメタン250μLに溶解した溶液に、4.4μL(2当量、54μmol)の無水ピリジンを添加し、次いで4.0μL(1.2当量、32.4μmol)のベンジルイソシアネートを添加する。反応混合物を撹拌し続けながら、14時間かけてゆっくりと室温まで加温する。反応の進行をHPLC−MSによって追跡する。次いで、反応混合物を1mLの飽和塩化アンモニウム水溶液の添加によって奪活し、さらに750μLのジクロロメタンで希釈する。水性層及び有機層を分配して分離し、水性層をさらに2回分(各1mL)のジクロロメタンで抽出する。合わせた有機抽出液を3mLのブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することで、粗α−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジンN−ベンジルカルバメート42を得る。これは分取逆相HPLCによって精製できる。
【実施例12】
【0278】
実施例12 (2R,3R,11bR)−3−(4−フルオロ−2,2−ジメチルブチル)−9,10−ジメトキシ−2,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−1H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イルカルバメート43
【0279】
【化56】

【0280】
10mg(27μmol)のα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物32を150μLの四塩化炭素に溶解した撹拌溶液に、トリホスゲン(3.9mg、13.2μmol)を150μLの四塩化炭素及び2.6μL(1.2当量、32.4μmol)の無水ピリジンに懸濁した懸濁液を添加する。得られた溶液を密封容器内において55〜60℃で6時間撹拌する。所定の時間後、反応混合物を室温に冷却し、混合物を250μLのジクロロメタンで希釈する。混合物を2回分(各200μL)の水及び1回分(200μL)のブラインで洗浄し、乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することで、粗クロロホルメートを得る。粗物質を60μLのTHFに溶解し、氷浴中で冷却する。この溶液に、60μLの50%アンモニア水溶液を激しく撹拌しながら添加する。反応混合物を撹拌し続けながら、14時間かけてゆっくりと室温まで加温する。過剰のアンモニアを乾燥窒素流下で除去する。残留物を2mLのジクロロメタンに溶解し、1mLのブラインで洗浄する。有機層を集め、水性層をさらに1mLのジクロロメタンで洗浄する。有機抽出液を乾燥し(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮することで、粗α−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジンカルバメート43を得る。これは分取逆相HPLCによって精製できる。
【実施例13】
【0281】
実施例13 PETイメージング剤45の製造
【0282】
【化57】

【0283】
遮蔽フード内に収容されかつ窒素パージ入口及び磁気回転棒を備えたテフロン(登録商標)内張り反応バイアルに、F−18フッ化物イオン、炭酸カリウム(約1mg)及びクリプトフィックス221(約10mg)を含む水性アセトニトリル溶液約1ミリリットルを加える。バイアルを窒素流下で100℃に加熱することで、水の共沸除去を行う。追加の乾燥アセトニトリル(1mL)を添加して蒸発させる。この共沸乾燥プロトコルを3回繰り返す。最終蒸発段階後、親フッ素性アセテート保護DTBZトシレート44(2mg)を含むジメチルホルムアミド及びアセトニトリルの混合物(約1mL)を添加し、バイアルを密封する。反応混合物を撹拌しながら100℃で10分間加熱し、次いで室温に冷却する。出発トシレート44及び中間体のF−18 α−フルオロアルキル保護ジヒドロテトラベナジンを含む生成物混合物を水(10mL)で希釈し、Sep−Pakカートリッジに通す。次いで、カートリッジを水(3×)で洗浄することで、未反応のフッ化物イオン及び生成物混合物の他の水溶性成分を除去する。次いで、放射性標識PETイメージング剤45及び出発トシレート44をアセトニトリルでカートリッジから溶出させる。次いで、大部分のアセトニトリルを蒸発させ、残留物をアセトニトリルに溶解し、濾過し、分取逆相HPLCにかけることで、PETイメージング剤45を含む水性製剤を得る。(トシレート44は、環位置2の遊離ヒドロキシ基のアセチル化、次いでt−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基の脱保護及び得られた第一アルコールのトシル化によってジヒドロテトラベナジン化合物23から製造できる。)
【実施例14】
【0284】
実施例14 (2R,3R,11bR)−3−(4−ヒドロキシ−2,2−ジメチルブチル)−9,10−ジメトキシ−2,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−1H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−オール
【0285】
【化58】

【0286】
出発原料(54mg、90μmol)を2.0mLのTHF中0.5M TBAFに溶解した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。所定の時間後、反応混合物をブラインの添加によって奪活し、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出液を乾燥し、減圧下で濃縮し、次いで直ちにSiO2上でのフラッシュクロマトグラフィー(12gカラム、(この操作ではジクロロメタン及びメタノールの両方を0.1%トリエチルアミンでスパイクした)CH2Cl2,2CV、0〜5%MeOH−CH2Cl2,14CV、5%MeOH−CH2Cl2,4CV、溶出は284nm及び236nmで観察した)によって精製した。生成物は無色の油状物(32mg、88μmol、98%)であった。LRMS−(ESI+)(C2133NO4+H)[M+H]+に関する計算値364、実測値364。
【実施例15】
【0287】
実施例15 4−((2R,3R,11bR)−2−ヒドロキシ−9,10−ジメトキシ−2,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−1H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−3,3−ジメトキシブチル4−メチンベンゼンスルホネート
【0288】
【化59】

【0289】
33mg(91μmol)の出発原料を0℃のジクロロメタン1mLに溶解した溶液に、22μL(272μmol)のピリジンを添加し、次いで33mg(100μmol)のp−トルエンスルホン酸無水物を添加した。反応物を0℃で3時間撹拌し続けた。この時間後、反応混合物をブラインの添加によって奪活し、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出液を乾燥し、減圧下で濃縮し、次いで直ちにSiO2上でのフラッシュクロマトグラフィー(12gカラム、(この操作ではジクロロメタン及びメタノールの両方を0.1%トリエチルアミンでスパイクした)CH2Cl2,2CV、0〜5%MeOH−CH2Cl2,14CV、5%MeOH−CH2Cl2,4CV、溶出は284nm及び236nmで観察した)によって精製した。単離した生成物は淡黄色の油状物(25mg、47μmol、53%)であった。これをLCMSで分析してからMeCNに溶解し、18Fでの放射性フッ素化のために使用するまで−80℃で凍結保存した。
【0290】
1H NMR(400MHz,CD2Cl2)δ0.89−0.98(m,7H)、1.38(q,J=11.3Hz,1H)、1.52−1.76(m,5H)、1.97−2.04(m,1H)、2.37−2.49(m,4H)、2.55(ddd,J=13.2,4.6,3.7Hz,1H)、2.59−2.67(m,1H)、2.91−3.05(m,3H)、3.12(ap br d,J=11.9Hz,1H)、3.28(ddd,J=9.6,9.6,4.5Hz,1H)、3.81(s,6H)、4.06−4.24(m,2H)、6.60(s,1H)、6.68(s,1H)、7.40(d,J=7.7Hz,2H)、7.80(d,J=7.7Hz,2H);13C NMR(100.6MHz,CD2Cl2)δ21.44、27.52、27.62、29.30、32.69、40.05、40.22、40.95、41.48、51.69、55.75、55.91、60.87、62.48、68.47、74.00、108.34、111.71、126.65、127.84、129.63、129.93、133.25、145.01、147.38、147.64;LRMS−(ESI+)(C2839NO6S+H)[M+H]+に関する計算値518、実測値518。
【実施例16】
【0291】
実施例16 放射合成の例
【0292】
【化60】

【0293】
反応バイアルに、クリプトフィックス(376g・mol-1、57mg・ml-1、148.5mM)及び炭酸カリウム(138.2g・mol-1、10.2mg・ml-1、73.3mM)のアセトニトリル溶液各0.050mLを加えた。この溶液を1.5mLのアセトニトリルで希釈し、溶媒を部分真空及び窒素流下で除去した。さらに1回分(1.5mL)のアセトニトリルを用いてドライダウンを繰り返した。乾燥したK222及びK2CO3を含む反応器をもう一度1.5mLのアセトニトリルに溶解し、密封し、ホットセルに移した。[18F]KF(精製水中40mCi・mL-1(1480MBq・mL-1))をIBA Molecular社(オールバニー、米国ニューヨーク州)又はPETNET Solutions社(オールバニー、米国ニューヨーク州)から入手し、受け入れたままで使用した。K222及びK2CO3を含む反応バイアルに[18F]KF溶液の一部(0.30〜0.40mL)を直接移し、部分真空及び穏やかな加熱(45℃)下で反応混合物を乾固した。反応器をN2で再加圧し、さらに1.5mLのアセトニトリルを用いて共沸ドライダウンを1回繰り返した。乾燥固体を0.5mLのアセトニトリルで再懸濁し、アリコートを取り出す前に数分間撹拌した。
【0294】
別途、高回収バイアル(2mL、National Scientific社)にMR3068−OTs(0.8mg、1.55×10-6mol)を仕込んだ。260μLの[18F]KF・K222溶液を高回収バイアルに移し、容器にキャップを付けて加熱ブロック中に配置した。反応物を約70〜80℃に12分間保ち、この時点で分析HPLCでの分析のために小アリコート(<5μL)を取り出した。0.1%のTFAを含む蒸留脱イオン水の添加によって反応物を奪活し、溶液をCH3CN:水の1:1混合物約700μLに希釈した。所望の生成物を半分取HPLCによって単離精製した。生成物を含むHPLC画分を蒸留脱イオンH2Oで5:1に希釈し、次いでtC18 Plus Sep Pak(Waters社)上に固定化した。移動相を溶出させ、SepPakをまず5mLの蒸留脱イオンH2Oで、次いで30mLの空気でフラッシュした。まずボイド容積(約0.5mL)を溶出させ、次いで250〜350μLの溶出液を独立のフラスコ内に集めることにより、[18F]MR3068を最小量のエタノール又はDMSO中に単離した。放射化学純度及び化学純度を確定するため、単離した生成物に関してRP−HPLC分析を実施した。通例、製剤化後分析のためには10μLの0.1μCi/μL溶液を注入した。生体分布分布のためには、最終製剤化生成物を1×(10mM)PBSw/0.25%ツイーン80で希釈して7.7%EtOH又は2%DMSOの最終有機物含有量を得た。単離放射化学収率は19±11%(n=10)(崩壊補正値29±14%)であり、放射化学純度は99%より高かった。反応時間は変動したが、平均は143±48分であった。
【0295】
分析HPLC条件は次の通りであった。分析は、G1311A QuatPump、100μLシリンジ及び2.0mLシートキャピラリーの付いたG1313Aオートインジェクター、Phenomenex Monolithic C18カラム(4.6mm×100mm)、G1316Aカラムヒーター、G1315A DAD並びにRamon−Star−GABIγ線検出器を備えたHP Agilent 1100上で実施した。95:5蒸留脱イオンH2O:CH3CN+0.05%TFA、溶媒B:CH3CN+0.05%TFA。勾配溶出:0分,0%B、4分,20%B、10分,80%B、10.5分,100%B、12分,100%B、13分,0%B、16分,0%B。TR約6.9分。
【0296】
半分取HPLC条件は次の通りであった。精製は、DG−2080−54 4ラインデガッサー、MX−2080−32ダイナミックミキサー、2台のPU−2086 Plus Prepポンプ、大容量注入キットを取り付けたAS−2055 Plus Intelligentオートインジェクター、ガード(S/N 295860−1、P/N 00G−4252−N0)付きのPhenomenex 5μ Luna C18(2)100Å,250×10mm,5μカラム、MD−2055 PDA、及び固体SiPINフォトダイオードγ線検出器に取り付けたCarrol & Ramsey Associates Model 105Sアナログレートメーターを備えたJasco LC上で実施した。勾配溶出:0分,0%B、0.75分,0%B、1分,20%B、17.5分,70%B、17.75分,100%B、18.25分,100%B、18.5分,20%B、19.0分,0%B。溶媒A:95:5蒸留脱イオンH2O:CH3CN+0.05%TFA、溶媒B:CH3CN+0.05%TFA。TR約10.2分。
【0297】
上記の実施例は単に例示的なものであって、本発明の若干の特徴のみを例示するために役立つ。添付の特許請求の範囲は考えられる限り広い範囲で本発明を特許請求するものであり、本明細書に記載した実施例は多種多様なすべての可能な実施形態から選択された実施形態を例示している。したがって、添付の特許請求の範囲は本発明の特徴を例示するために利用される実施例の選択によって限定されべきでないというのが出願人の意図するところである。特許請求の範囲で使用される「含む」という用語及びその文法的変形語は、論理的に言って、例えば特に限定されないが「から本質的になる」及び「からなる」のような様々に定義範囲の異なる語句も含めて意味する。必要な場合には範囲が示されているが、これらの範囲はその中に入るすべての部分範囲を包含する。これらの範囲内での変動は当業者には自明であろうし、また未だ公表されていなくてもこれらの変動は可能であれば添付の特許請求の範囲によってカバーされると解すべきである。また、科学及び技術の進歩により、言語の不正確さのために現在では想定されていない同等例及び置換例が可能になることも予想されるが、これらの変形例も可能であれば添付の特許請求の範囲によってカバーされると解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造Iを有するα−フルオロアルキルテトラベナジン化合物。
【化1】

(式中、R1はC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。)
【請求項2】
以下の構造IVを有するα−フルオロアルキルジヒドロテトラベナジン化合物。
【化2】

(式中、R1はC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素、C1〜C10脂肪族基、C3〜C10脂環式基又はC3〜C10芳香族基である。)
【請求項3】
鏡像異性的に富化され、好適には鏡像異性的に80%以上富化された、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項4】
以下の構造IIを有する主成分鏡像異性体を含んでなる、請求項3記載の鏡像異性的に富化された化合物。
【化3】

(式中、R1はC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。)
【請求項5】
以下の構造Vを有する主成分鏡像異性体を含んでなる、請求項3記載の鏡像異性的に富化された化合物。
【化4】

(式中、R1はC1〜C10フッ素化脂肪族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R4は水素、C1〜C10脂肪族基、C3〜C10脂環式基又はC3〜C10芳香族基である。)
【請求項6】
1がC5〜C10フルオロ脂肪族基であり、R2及びR3がメトキシ基である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
以下の構造を有する、請求項2又は請求項5記載の化合物。
【化5】

【請求項8】
以下の構造を有する、請求項2又は請求項5記載の化合物。
【化6】

【請求項9】
フッ素−18原子を含む、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の化合物の塩。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含んでなる医薬製剤。
【請求項12】
医学で使用するための、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
被験体におけるVMAT−2の検出方法であって、
(i)請求項9記載のフッ素−18標識化合物又はその塩を前記被験体に投与する段階、及び
(ii)インビボPETイメージングによって前記フッ素−18標識化合物の取込みを検出する段階
を含んでなる方法。
【請求項14】
被験体(好ましくはヒト)におけるVMAT−2関連疾患のインビボ診断又はイメージング方法であって、請求項9記載のフッ素−18標識化合物又はその塩を投与する段階、及びインビボPETイメージング技法によって前記化合物の取込みを検出する段階を含んでなる方法。
【請求項15】
VMAT−2関連疾患が糖尿病である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項13乃至請求項15のいずれか1項に記載の方法で使用するための、請求項9記載の化合物又はその塩。
【請求項17】
以下の構造VIIを有する親フッ素性化合物。
【化7】

(式中、Qはカルボニル基、保護カルボニル基、ヒドロキシメチン基又は保護ヒドロキシメチン基であり、R1は求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤と反応し得る1以上の官能基を含むC1〜C20脂肪族基、C2〜C20脂環式基又はC2〜C20芳香族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。)
【請求項18】
1が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上の官能基を含む、請求項17記載の親フッ素性化合物。
【請求項19】
鏡像異性的に富化された、請求項17又は請求項18記載の親フッ素性化合物。
【請求項20】
環位置12にR配置を有する鏡像異性体を95モル%以上含む、請求項19記載の親フッ素性化合物。
【請求項21】
環位置3にR配置を有する鏡像異性体を95モル%以上含む、請求項19記載の親フッ素性化合物。
【請求項22】
Qが保護ケトン基である、請求項19記載の親フッ素性化合物。
【請求項23】
Qが保護ヒドロキシメチン基である、請求項19記載の親フッ素性化合物。
【請求項24】
1が1種以上の芳香族スルホン酸エステル基を含む、請求項19記載の親フッ素性化合物。
【請求項25】
1が1種以上の脂肪族スルホン酸エステル基を含む、請求項19記載の親フッ素性化合物。
【請求項26】
以下の構造VIIIを有する主成分鏡像異性体を含んでなる鏡像異性的に富化された親フッ素性化合物。
【化8】

(式中、Qはカルボニル基、保護カルボニル基、ヒドロキシメチン基又は保護ヒドロキシメチン基であり、R1は求核性フッ化物イオン又は求電子性フッ素化剤と反応し得る1以上の官能基を含むC1〜C20脂肪族基、C2〜C20脂環式基又はC2〜C20芳香族基であり、R2は水素又はC1〜C10脂肪族基であり、R3は水素又はC1〜C10脂肪族基である。)
【請求項27】
構造VIIIを有する鏡像異性体を80モル%以上含む、請求項26記載の鏡像異性的に富化された親フッ素性化合物。
【請求項28】
構造VIIIを有する鏡像異性体を95モル%以上含む、請求項26記載の鏡像異性的に富化された親フッ素性化合物。
【請求項29】
1が求核性フッ化物イオンと反応し得る1以上の官能基を含む、請求項26記載の鏡像異性的に富化された親フッ素性化合物。

【公表番号】特表2011−505363(P2011−505363A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536109(P2010−536109)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/084601
【国際公開番号】WO2009/070552
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】