説明

α−メチルアシル−CoAラセマーゼのための酵素循環に基づくアッセイ

本発明は、α−メチルアシル−CoAラセマーゼ活性をアッセイする方法を提供する。このアッセイでは、α−メチルアシル−CoAラセマーゼを含有するサンプル、またはα−メチルアシル−CoAラセマーゼを含有する疑いのあるサンプルを、(2R)−2−メチルアシル−CoAと接触させる。α−メチルアシルCoAラセマーゼが、サンプル中に存在している場合、(2R)−2−メチルアシルCoAは、(2S)−メチルアシル−CoAに変換される。本方法は、次に、α−メチルアシル−CoAラセマーゼ活性に対応する検出可能なシグナルを発生する、(2S)−メチルアシルCoAとトランス−2,3デヒドロアシル−CoAとの間の循環反応系を利用する。同じ原理に基づく、α−メチルアシル−CoAラセマーゼをアッセイするためのキットもまた、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年10月15日に出願された米国特許出願第10/966,983号の一部継続出願である、2004年12月3日に出願された、米国特許出願第11/004,477号に関連する(これらの出願は、その全体が参考として援用される)。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概してα−メチルアシル−CoAラセマーゼ検出の分野に関する。特に、本発明は、サンプル中でα−メチルアシル−CoAラセマーゼをアッセイするための方法およびキットを提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
α−メチルアシル−CoAラセマーゼ(AMACR)は、食餌中の分枝鎖脂肪酸およびC27−胆汁酸中間体のペルオキシソームでのβ酸化において鍵となる役割を演じる、特色づけのよくなされた酵素である。(非特許文献1)。AMACRは、(R)−α−メチル分枝鎖脂肪アシル−CoAエステルをこれらの(S)立体異性体へ変換するのを触媒する。(非特許文献2;非特許文献3)。AMACRは、ヒト肝臓から47kDaのモノマーとして単離され、そして主にペルオキシソームに局在化し、少量はミトコンドリアでも検出される。(非特許文献3;非特許文献4)。ヒト肝臓から単離されたAMACRの等電点は、pH6.1であり、そしてこの酵素はpH7とpH8の間で最適活性を示す。
【0004】
AMACR発現の上昇は、前立腺、結腸直腸、卵巣、乳房、膀胱、肺、腎細胞癌腫、リンパ腫、および黒色腫などの、いくつかのタイプの癌のバイオマーカーであることが示されている。(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。研究はまた、α−メチルアシル−CoAラセマーゼ酵素活性が前立腺癌組織標本において上昇していることも示す。(非特許文献8)。特許文献1および特許文献2は、前立腺癌を有する患者または前立腺癌を発生する危険性のある患者、および前立腺癌が別の組織に転移することから生じる癌を有する患者または癌を発生する危険性のある患者を、AMACRの発現または活性を測定することによって同定する方法を記載している。
【0005】
AMACRの酵素活性をアッセイするためのいくつかの方法が報告されている。非特許文献4は、2−メチル[2-(3)H]アシル−CoAを基質として用いる、AMACR酵素活性の放射アッセイを記載している。非特許文献9は、AMACRが、2R−メチル−ペンタデカノイル−CoAと結合される、AMACRの代替の酵素アッセイを記載している。反応生成物の2S異性体は、過剰量の添加オキシダーゼ(プリスタノイルCoAオキシダーゼ)によって不飽和化され、これは過酸化水素の生成をもたらす。この過酸化水素は、適切な水素供与体の存在下でペルオキシダーゼによってモニターされる。しかし、サンプル中のAMACR酵素活性をアッセイするための(例えば、癌の診断のために)、信頼性がありそして感受性のある方法が、未だ、必要とされている。
【特許文献1】国際公開第02/27324号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0123081号
【非特許文献1】Ferdinandusseら,J.Lipid Res.(2000)41:l890−1896
【非特許文献2】Cuebasら,Biochem.J.(2002)363:801−807
【非特許文献3】Schmitzら,Eur.J.Biochem.(1995) 231:815−822
【非特許文献4】Schmitzら,Eur.J.Biochem.(1994)222:313−23
【非特許文献5】Rubinら,JAMA(2002)287:1662−1670
【非特許文献6】Luoら,Cancer Res.(2002)62:2220−2226
【非特許文献7】Sreekumarら,J Natl.Cancer Inst.(2004)96:834−843
【非特許文献8】Kumar−Sinhaら,Am.J.Pathol.(2004)164:787−93
【非特許文献9】Veldhovenら,Biochem.Biophys.Acta(1997)1347:62−68
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、サンプル中のα−メチルアシル−CoAラセマーゼをアッセイするための方法を提供する。該方法は、以下:a)α−メチルアシル−CoAラセマーゼを含有する疑いのあるサンプルと(2R)−2−メチルアシルCoAとを接触させ、(2S)−2−メチルアシル−CoAを発生させる工程;b)工程a)からの該(2S)−2−メチルアシル−CoAを、発生した場合、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素および酸化型の第一の電子アクセプターの存在下で、トランス−2,3−デヒドロアシル−CoAに変換し、これによって第一の電子アクセプターの還元型が発生される工程;該トランス−2,3−デヒドロアシル−CoAを、トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素および還元型の第2の電子アクセプターの存在下で、(2S)−2−メチルアシル−CoAに再変換し、循環反応系を形成させ、これによって第2の電子アクセプターの酸化型が発生される工程;ここで第1の電子アクセプターと第2の電子アクセプターは異なる工程;およびc)該循環反応系において、第1の電子アクセプターの還元型もしくは酸化型の濃度変化または第2の電子アクセプターの還元型もしくは酸化型の濃度変化を評価し、これによって、サンプル中のα−メチルアシル−CoAラセマーゼの、存在、非存在および/または量が測定される工程、を包含する、方法を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、該(2R)−2−メチルアシル−CoAは、アシル基の鎖長がC(4)〜C(30)までの、C(8)〜C(25)までの、またはC(10)〜C(25)までの、(2R)−2−メチル−分枝アシル−CoAである。いくつかの実施形態では、(2R)−2−メチルアシル−CoAは、(2R)−プリスタノイル−CoAである。いくつかの実施形態では、(2R)−2−メチルアシル−CoAは(25R)−3α,7α,12α−トリヒドロキシ−5β−コレスタノイル−CoAである。
【0008】
いくつかの実施形態では、最初に、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素および酸化型の第1の電子アクセプターがサンプルに添加され、そして次に、このサンプルは(2R)−2−メチルアシル−CoA、トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素、および還元型の第2の電子アクセプターに接触される。いくつかの実施形態では、α-メチルアシル−CoAラセマーゼを含有する疑いのあるサンプルは、(2R)−2−メチルアシル−CoA、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素、酸化型の第1の電子アクセプターと接触される。他の実施形態では、α-メチルアシル−CoAラセマーゼを含有する疑いのあるサンプルは、(2R)−2−メチルアシル−CoA、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素、酸化型の第1の電子アクセプター、トランス−2,3−デヒドルアシル−CoA変換酵素、および酸化型の第2の電子アクセプターと接触される。
【0009】
いくつかの実施形態では、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素とトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素は異なる。
【0010】
いくつかの実施形態では、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素は、アシル−CoAデヒドロゲナーゼであり、そして第1の電子アクセプターは、NAD、NADP、チオ−NAD、チオ−NADP、アセチル−NAD、およびアセチル−NADPからなる群から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素は、アシル−CoAオキシダーゼであり、第1の電子アクセプターはOである。
【0012】
いくつかの実施形態では、トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素は、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼであり、そして第2の電子アクセプターは、NADH、NADPH、チオ−NADH、チオ−NADPH、アセチル−NADH、およびアセチル−NADPHからなる群から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態では、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素とトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素とは、同じである。いくつかの実施形態では、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素およびトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素の両方が、アシル−CoAデヒドロゲナーゼである。いくつかの実施形態では、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素およびトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素の両方が、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼである。酸化型の第1の電子アクセプターは、NAD、NADP、チオ−NAD、チオ−NADP、アセチル−NAD、およびアセチル−NADPからなる群から選択され得、還元型の第2の電子アクセプターは、NADH、NADPH、チオ−NADH、チオ−NADPH、アセチル−NADH、およびアセチル−NADPHからなる群から選択され得る。
【0014】
前記循環反応系における還元型もしくは酸化型の第1の電子アクセプターの濃度変化、または還元型もしくは酸化型の第2の電子アクセプターの濃度変化は、光度測定法(photometric method)によって評価され得る。
【0015】
本発明の方法は、さらに、酸化型もしくは還元型の第1の電子アクセプターまたは還元型もしくは酸化型の第2の電子アクセプターを、還元型もしくは酸化型の第1の電子アクセプターの濃度変化または還元型もしくは酸化型の第2の電子アクセプターの濃度変化を評価するための、発色試薬に結合させる工程を包含し得る。ここで、この酸化型もしくは還元型の第1の電子アクセプターの濃度変化または還元型もしくは酸化型の第2の電子アクセプターの濃度変化は、比色測定法(colorimetric method)によって評価される。
【0016】
本発明の方法によってアッセイされ得るサンプルは、生物学的サンプルを含む。いくつかの実施形態では、この生物学的サンプルは、血液、血清、血漿、および尿などの生物学的流体である。いくつかの実施形態では生物学的サンプルは、前立腺、結腸、卵巣、乳房、膀胱、肺、腎臓、リンパ球からなる群から選択される。
【0017】
本発明の方法は、個体における癌の予後および/または診断のために使用され得る。いくつかの実施形態では、癌は、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、腎臓癌、リンパ腫、および黒色腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、血液サンプル(例えば、全血、血漿、および血清)中のα−メチルアシル−CoAラセマーゼ活性をアッセイすることによって、個体における前立腺癌の予後および/または診断のために使用され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、本方法は、さらに、個体からのサンプル中のα−メチルアシル−CoAラセマーゼの量と、あらかじめ決められた値とを比較する工程を含み、これによって、α−メチルアシル−CoAラセマーゼの量の増加は、個体が癌を有しているまたは癌を発生させる危険性があることを示す。いくつかの実施形態では、癌は、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、腎臓癌、リンパ腫、および黒色腫からなる群から選択される。
【0019】
本発明はまた、サンプル中のα−メチルアシル−CoAラセマーゼをアッセイするためのキットを提供する。該キットは、(2R)−2−メチルアシル−CoA、酸化型の第1の電子アクセプター、酸化型の第1の電子アクセプターの存在下において、(2S)−2−メチルアシル−CoAのトランス−2,3−デヒドロアシル−CoAへの変換を触媒する(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素、還元型の第2の電子アクセプター、および還元型の第2の電子アクセプターの存在下において、トランス−2,3−デヒドロアシル−CoAの(2S)−2−メチルアシル−CoAへの変換を触媒するトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素を備え、ここで第1の電子アクセプターと第2の電子アクセプターは異なる。
【0020】
いくつかの実施形態では、この(2R)−2−メチルアシル−CoAは、アシル基の鎖長がC(4)〜C(30)までの、C(8)〜C(25)までの、またはC(10)〜C(25)までの、(2R)−2−メチル−分枝アシル−CoAである。いくつかの実施形態では、(2R)−2−メチルアシル−CoAは、(2R)−プリスタノイル−CoAである。いくつかの実施形態では、(2R)−2−メチルアシル−CoAは(25R)−3α,7α,12α−トリヒドロキシ−5β−コレスタノイル−CoAである。
【0021】
いくつかの実施形態では、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素とトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素は異なる。いくつかの実施形態では、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素は、アシル−CoAデヒドロゲナーゼであり、そして第1の電子アクセプターは、NAD、NADP、チオ−NAD、チオ−NADP、アセチル−NAD、およびアセチル−NADPからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素は、アシル−CoAオキシダーゼであり、第1の電子アクセプターはOである。いくつかの実施形態では、トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素は、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼであり、そして第2の電子アクセプターは、NADH、NADPH、チオ−NADH、チオ−NADPH、アセチル−NADH、およびアセチル−NADPHからなる群から選択される。
【0022】
いくつかの実施形態では、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素とトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素は、同じである。いくつかの実施形態では、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素およびトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素の両方が、アシル−CoAデヒドロゲナーゼまたはトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼであり、酸化型の第1の電子アクセプターは、NAD、NADP、チオ−NAD、チオ−NADP、アセチル−NAD、およびアセチル−NADPからなる群から選択され、還元型の第2の電子アクセプターは、NADH、NADPH、チオ−NADH、チオ−NADPH、アセチル−NADH、およびアセチル−NADPHからなる群から選択される。
【0023】
キットは、さらに、これらに限られるわけではないが、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、腎臓癌、リンパ腫、および黒色腫を含む癌の予後および/または診断のための使用を示す使用説明書を含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、α−メチルアシル−CoAラセマーゼ活性をアッセイする方法を提供する。このアッセイでは、α−メチルアシル−CoAラセマーゼを含有するサンプルまたはα−メチルアシル−CoAを含有する疑いのあるサンプルを、(2R)−2−メチルアシル−CoAと接触させる。酵素的に活性なα−メチルアシル−CoAラセマーゼがサンプル中に存在する場合、(2R)−2−メチルアシル−CoAは、(2S)−2−メチルアシル−CoAに変換される。本方法は、次に(2S)−2−メチルアシル−CoAおよびトランス−2,3−デヒドロアシル−CoAの間の循環反応系を利用して、α−メチルアシル−CoAラセマーゼの酵素活性に対応する検出可能なシグナルを発生させる。本明細書において記載される方法は、癌を診断するために使用され得る。例えば、本方法は、血液サンプルを使用して、生検なしで、前立腺癌を診断するために使用され得る。
【0025】
開示を明確にするために、そして限定するつもりはないが、本発明の詳細な説明は、以下に続くサブセクションに分けられる。
【0026】
(A.定義)
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって、一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において参照される、全ての特許、特許出願、公開公報および他の出版物は、参考としてその全体が援用される。このセクションで記載される定義が、参考として本明細書において援用される、特許、特許出願、公開公報および他の出版物において示される定義と相容れないまたはさもなくば矛盾する場合は、このセクションにおいて示される定義を、参考として本明細書において援用される定義より優先させる。
【0027】
本明細書において使用されるときは、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
【0028】
本明細書において使用されるときは、「α−メチルアシル−CoAラセマーゼ」または「AMACR」(EC5.1.99.4)とは、(2S)−2−メチルアシル−CoAと(2R)−2−メチルアシル−CoAの間の変換を触媒する酵素をいう。その活性を実質的には変更しない、α−メチルアシル−CoAラセマーゼの誘導体、改変体、および類似体を含むことが意図される。α−メチルアシル−CoAラセマーゼは、ヒト、マウス、ウシ、ラット、ショウジョウバエ(fruit fly)、その他などのいかなる供給源からも得られ得る。
【0029】
本明細書において使用されるときは、「(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素」とは、酸化型の電子アクセプターの存在下において、(2S)−2−メチルアシル−CoAからのトランス−2,3−デヒドロアシル−CoAの形成を触媒する酵素をいう。その活性を実質的には変更しない(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素の誘導体、改変体、および類似体を含むことが意図される。
【0030】
本明細書において使用されるときは、「トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素」とは、還元型の電子アクセプターの存在下において、トランス−2,3−デヒドロアシル−CoAからの(2S)−2−メチルアシル−CoAの形成を触媒する酵素をいう。その活性を実質的には変更しないトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素の誘導体、改変体、および類似体を含むことが意図される。
【0031】
本明細書において使用されるときは、用語「評価する(assessing)」は、反応系中に存在する分析物の量または濃度の絶対値を得るという意味での、および反応系中の分析物のレベルを示す、指標、比、パーセンテージ、視覚的値または他の値をも得るという意味での、量的測定および質的測定を含むことを意図する。評価は、直接でも間接でもよく、そして実際に検出される化学種は、当然分析物それ自身である必要はなく、例えばそれらの誘導体または何かのさらなる物質であり得る。
【0032】
本明細書において使用されるときは、「サンプル」とは、分析物アッセイが望まれる分析物を含有し得る全てのものをいう。サンプルは、生物学的流体または生物学的組織のような生物学的サンプルであり得る。生物学的流体の例としては、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙、粘液、羊水などが挙げられる。生物学的組織は、通常、特定の種類の、それらの細胞間物質を伴った、細胞の集合であり、ヒト、動物、植物、細菌、真菌またはウイルス構造体の構造材料の一つを形成する。これらとしては、結合組織、上皮組織、筋肉組織および神経組織が挙げられる。生物学的組織の例としては、器官、腫瘍、リンパ節、動脈および個々の細胞もまた挙げられる。
【0033】
本明細書において使用されるときは、「血液サンプル」としては、全血、血清、および血漿が挙げられる。
【0034】
本明細書において使用されるときは、「血清」とは、フィブリン血塊と血球とを取り除いた後に得られる血液の液体部分をいい、循環血液中の血漿とは区別される。
【0035】
本明細書において使用されるときは、「血漿」とは、血液の流体、非細胞部分をいい、血液凝固の後に得られる血清とは区別される。
【0036】
本明細書において使用されるときは、「流体」とは、流れ得る任意の組成物をいう。従って流体は、このように、ペースト、溶液、水性混合物、ゲル、ローション、クリームおよび他のこのような組成物の形態である組成物を含む。
【0037】
本明細書において使用されるときは、「疾患または障害」とは、例えば、感染または遺伝的欠陥によりもたらされ、そして同定可能な症状によって特色付けられる、生物における病理学的状態をいう。
【0038】
本明細書において使用されるときは、「接触させる(contacting)」とは、2つ以上の成分を一緒にすることを意味する。「接触させる」は、全ての成分を流体混合物中または半流体混合物中で、混合することによって達成され得る。「接触させる」は、1つ以上の成分を1つ以上の他の成分と、固体組織切片または基板などの固体表面上で接触させる場合もまた達成され得る。
【0039】
本明細書において使用されるときは、「循環反応系(cycling reaction system)」とは、(2S)−2−メチルアシル−CoAをトランス−2,3−デヒドロアシル−CoAへ変換する過程、およびトランス−2,3−デヒドロアシルCoAから逆に(2S)−2−メチルアシル−CoAへと、変換する過程をいう。
【0040】
(B.α−メチルアシル−CoAラセマーゼをアッセイする方法)
本発明は、サンプル中のα−メチルアシル−CoAラセマーゼをアッセイするための方法を提供する。該方法は、以下:a)α−メチルアシル−CoAラセマーゼを含有する疑いのあるサンプルと(2R)−2−メチルアシルCoAとを接触させ、(2S)−2−メチルアシル−CoAを発生させる工程;b)工程a)からの該(2S)−2−メチルアシル−CoAを、発生した場合、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素および酸化型の第一の電子アクセプターの存在下で、トランス−2,3−デヒドロアシル−CoAに変換し、これによって第一の電子アクセプターの還元型が発生される工程;該トランス−2,3デヒドロアシル−CoAを、トランス−2,3デヒドロアシル−CoA変換酵素および還元型の第2の電子アクセプターの存在下で、(2S)−2−メチルアシル−CoAに再変換し、循環反応系を形成させ、これによって第2の電子アクセプターの酸化型が発生される工程;ここで第1の電子アクセプターと第2の電子アクセプターは異なる工程;およびc)該循環反応系において、第1の電子アクセプターの還元型もしくは酸化型の濃度変化または第2の電子アクセプターの還元型もしくは酸化型の濃度変化を評価し、これによって、サンプル中のα−メチルアシル−CoAラセマーゼの、存在、非存在および/または量が測定される工程、を包含する。いくつかの実施形態では、工程c)で発生した検出可能シグナルは、該循環反応系における、還元型もしくは酸化型の第1の電子アクセプター、または還元型もしくは酸化型の第2の電子アクセプターの濃度変化である。いくつかの実施形態では、サンプルは、血液サンプル(例えば、全血、血清、および血漿)である。
【0041】
(工程a):α−メチルアシル−CoAラセマーゼによる(2R)−2−メチルアシルCoAの(2S)−2−メチルアシル−CoAへの変換)
本発明においてα−メチルアシル−CoAラセマーゼをアッセイする方法は、α−メチルアシル−CoAラセマーゼによって触媒される酵素活性を測定することに基づいている。α−メチルアシル−CoAラセマーゼは、(2R)−2−メチルアシルCoAを(2S)−2−メチルアシル−CoAへ変換するする反応を触媒する。従って、サンプル中のα−メチルアシル−CoAラセマーゼの存在または非存在および量は、これらの反応において発生した(2S)−2−メチルアシル−CoAを測定することによって決定され得る。それゆえ、本発明の工程a)の例示的反応スキームは:
(2R)−2−メチルアシル−CoA →
(2S)−2−メチルアシル−CoA (1)
である。
【0042】
アッセイされるα−メチルアシル−CoAラセマーゼの基質であれば、どんな(2R)−2−メチルアシル−CoAも使用され得る。アシル基は、どんな脂肪酸からも由来し得る。アシル基は、鎖長が少なくともC(4)の、少なくともC(6)の、少なくともC(8)の、少なくともC(10)またはそれを超える、分枝アシル(例えば脂肪酸アシル)であり得る。例えば、鎖長は、C(4)〜C(30)、C(4)〜C(16)、C(8)〜C(25)、C(8)〜C(18)、C(10)〜C(25)、またはC(12)〜C(25)であり得る。アシル基としては、芳香族化合物(例えば、イブプロフェン)およびトリヒドロキシコプロスタノイル−CoAなどの胆汁酸中間体が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、(2R)−2−メチルアシル−CoAは、(2R)−プリスタノイル−CoAである。いくつかの実施形態では、(2R)−2−メチルアシルCoAは(2R,6R,10)−トリメチルウンデカノイル−CoAである。いくつかの実施形態では、(2R)−2−メチルアシルCoAは、(2R,6)−ジメチルヘプタノイル−CoAである。いくつかの実施形態では、(2R)−2−メチルアシルCoAは、(2R)−メチル−ペンタデカノイル−CoAである。いくつかの実施形態では、(2R)−2−メチルアシル−CoAは、(25R)−3α,7α,12α−トリヒドロキシ−5β−コレスタノイル−CoAである。
【0043】
工程a)の(2R)−2−メチルアシル−CoAは、α−メチルアシル−CoAラセマーゼ反応のために適切であり、そしてサンプル中のα−メチルアシル−CoAラセマーゼの活性に依存する、任意の濃度であり得る。例えば、(2R)−2−メチルアシル−CoAの濃度は、約0.01mMから約100mM、約0.05mMから約50mM、約0.5mMから約10mM、または約1mMから約5mMである。酵素反応は、概して、酵素反応の完了に適切な条件(例えば緩衝液および温度など)の下で行われる。α−メチルアシル−CoAラセマーゼ酵素反応のために適切な、当該分野で公知の任意の緩衝液が使用され得る。例えば、緩衝液は、約6から約8のpHのリン酸緩衝液、約7から約9のpHのトリス−HCl緩衝液、または約6から約9のpHのGood緩衝液であり得る。例えば、反応は、約30℃から37℃の間の温度下で5分間、10分間、15分間、30分間、または60分間、行われ得る。この反応は、次の工程の前に終了され得る。
【0044】
本発明を用いて、α−メチルアシル−CoAラセマーゼを含有する任意のサンプルまたはα−メチルアシル−CoAラセマーゼを含有する疑いのある任意のサンプルがアッセイされ得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、血液(全血、血清および血漿が挙げられる)または尿である。いくつかの実施形態では、サンプルは組織サンプル(例えば、前立腺、結腸、卵巣、乳房、膀胱、肺、腎臓、およびリンパ球)である。いくつかの実施形態では、組織サンプルをホモジェナイゼーションにかけ、アッセイを行う前に粗組織ホモジェネートを得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、サンプルは、アッセイが行われる前に、前処理される。例示的処理工程としては、遠心分離、抽出/洗浄、細胞溶解、凍結/融解、および音波破砕が挙げられる。サンプルはまた、アッセイの前に、希釈され得る。
【0046】
(工程b):(2S)−2−メチルアシル−CoA/トランス−2,3デヒドロアシル−CoA循環反応系)
本発明の工程b)では、第1の電子アクセプター(その酸化型)の存在下において、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素の作用を介して、(2S)−2−メチルアシル−CoAをトランス−2,3デヒドロアシル−CoAに変換し、そして次に、第2の電子アクセプター(その還元型)の存在下において、トランス−2,3デヒドロアシル−CoA変換酵素の作用を介して、トランス−2,3デヒドロアシル−CoAを(2S)−2−メチルアシル−CoAに逆変換する。第1の電子アクセプターと第2の電子アクセプターは異なる電子アクセプターである。工程b)は、このように循環反応系を形成し、還元型の第1の電子アクセプターの増加および酸化型の第1の電子アクセプターの減少、ならびに、酸化型の第2の電子アクセプターの増加および還元型の第2の電子アクセプターの減少を生じる。特定の型の電子アクセプターの増加または特定の型の電子アクセプターの減少が測定され得る。いくつかの実施形態では、特定の型の電子アクセプターが蓄積され、そしてその蓄積が評価される。
【0047】
いくつかの実施形態では、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素とトランス−2,3デヒドロアシル−CoA変換酵素とは異なる。いくつかの実施形態では、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素は、第2の電子アクセプターと交差反応しないかまたは第2の電子アクセプターに第1の電子アクセプターに対するよりも低い親和性でしか結合しない、および/あるいはトランス−2,3デヒドロアシル−CoA変換酵素は、第1の電子アクセプターと交差反応しないかまたは第1の電子アクセプターに第1の電子アクセプターに対するよりも低い親和性で結合する。
【0048】
酸化型の電子アクセプターの存在下において、(2S)−2−メチルアシル−CoAからのトランス−2,3デヒドロアシル−CoAの形成を触媒する、任意の(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素が使用され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素は、アシル−CoAデヒドロゲナーゼ(EC 1.3.1.8)である。例えば、以下のGenBankアクセッション番号B70719(Mycobacterium tuberculosis)のアミノ酸配列を有する任意のアシル−CoAデヒドロゲナーゼ(EC 1.3.1.8)、またはCvetanovicら(Biochemical J.227:49−56(1985))、Dommesら(Eur.J.Biochem.125:335−341(1982))、およびSeubertら(Biochim.Biophys.Acta 164:498−517(1968))によって記載された任意のアシル−CoAデヒドロゲナーゼ(EC 1.3.1.8)が使用され得る。
【0050】
他の実施形態では、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素は、アシル−CoAオキシダーゼ(EC 1.3.3.6)である。例えば、以下のGenBankアクセッション番号:T52121(Arabidopsis thaliana)、T52120(Arabidopsis thaliana)、I38095(Homo sapiens)、S64224(Saccaromyces cerevisiae)、A54942(Homo sapiens)、OXRTA2(Rattus norveqicus)、OXRTA1(Rattus norveqicus)、OXCKX5(candida tropicalis)のアミノ酸配列を有する、アシル−CoAオキシダーゼ(EC 1.3.3.6)が使用され得る。
【0051】
さらに他の実施形態では、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素は、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(EC 1.3.1.38)である。例えば、以下のGenBankアクセッション番号:S72400(Streptomyces collinus)のアミノ酸配列を有する任意のトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(EC 1.3.1.38)、またはMizugakiら(J.Biochem.92:1649−1654(1982))およびPrasadら(Arch.Biochem.Biophys.237:535−544(1985))によって記載された任意のトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(EC 1.3.1.38)が使用され得る。
【0052】
還元型の電子アクセプターの存在下において、トランス−2,3−デヒドロアシル−CoAからの(2S)−2−メチルアシル−CoAの形成を触媒する、任意のトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素が使用され得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、このトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素は、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(EC 1.3.1.38)である。当該分野で公知でありそして本明細書において記載される、任意のトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼが使用され得る。
【0054】
他の実施形態では、このトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素は、アシル−CoAデヒドロゲナーゼ(EC 1.3.1.8)である。当該分野で公知でありそして本明細書において記載される、任意のアシル−CoAデヒドロゲナーゼが使用され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素とトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素とは同じである。一つの実施形態では、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素およびトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素の両方が、アシル−CoAデヒドロゲナーゼである。他の実施形態では、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素およびトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素の両方が、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼである。当該分野で公知でありそして本明細書において記載される、任意のアシル−CoAデヒドロゲナーゼおよび任意のトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素が使用され得る。
【0056】
第1および第2の電子アクセプターは、第1の電子アクセプターと第2の電子アクセプターとが異なるとの条件で、反応のために選択される酵素と適合性がある、任意の電子アクセプターであり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素は、アシル−CoAデヒドロゲナーゼであり、そして第1の電子アクセプターは、NAD、NADP、チオ−NAD、チオ−NADP、アセチル−NAD、およびアセチル−NADPからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素は、アシル−CoAオキシダーゼであり、そして第1の電子アクセプターはOである。いくつかの実施形態では、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素は、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼであり、そして第1の電子アクセプターは、NAD、NADP、チオ−NAD、チオ−NADP、アセチル−NAD、およびアセチル−NADPからなる群から選択される。
【0058】
いくつかの実施形態では、このトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素は、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼであり、そして第2の電子アクセプターは、NADH、NADPH、チオ−NADH、チオ−NADPH、アセチル−NADH、およびアセチル−NADPHからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、このトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素は、アシル−CoAデヒドロゲナーゼであり、そして第2の電子アクセプターは、NADH、NADPH、チオ−NADH、チオ−NADPH、アセチル−NADH、およびアセチル−NADPHからなる群から選択される。
【0059】
いくつかの実施形態では、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素およびトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素は、アッセイにおいて発生するシグナルを増幅する、(2S)−2−メチルアシル−CoAとトランス−2,3−デヒドロアシル−CoAとの間の循環反応を、集合的に触媒し得る。この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素およびトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素は、異なる電子アクセプターを使用し得、そして他方の酵素によって使用される電子アクセプターと交差反応(cross−react)しないかまたは低い親和性でしか反応しない。代替として、これらの2つの酵素は、同じ電子アクセプターを認識し得る。十分な量の酸化型の第1の電子アクセプターおよび十分な量の還元型の第2の電子アクセプターが、両反応を駆動させ、そして十分なシグナルが発生されるまで循環がつづけられることを可能にするために、循環反応に添加され得る。
【0060】
工程b)のための2つの以下の例示的反応スキームでは、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素とトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素とは異なる。例えば、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素は、アシル−CoAデヒドロゲナーゼ(EC 1.3.1.8)であり、そしてトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素は、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(EC1.3.1.38)である。このように、工程b)のための例示的反応スキームは以下である:
(2S)−2−メチルアシル−CoA+チオ−NADP+HO →
トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA+チオ−NADPH+H (2a)
トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA+NADH+H
(2S)−2−メチルアシル−CoA+NAD+HO (2b)
反応(2a)は、アシル−CoAデヒドロゲナーゼによって触媒される反応を表し、そして反応(2b)は、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼによって触媒される反応を表す。例として、(2S)−2−メチルアシル−CoAは、(2S)−プリスタノイル−CoAであり、そしてトランス−2,3−デヒドロアシル−CoAは、トランス−2,3−デヒドロプリスタノイル−CoAである。十分なチオ−NADPおよびNADHが、循環反応を発生させるために反応物に添加され得る。これはチオ−NADPHの蓄積をもたらす。
【0061】
別の例では、循環反応で、アシル−CoAオキシダーゼ(EC 1.3.3.6)は(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素として使用され、そしてトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(EC 1.3.1.38)がトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素として使用される。例示的反応スキームは以下である:
(2S)−2−メチルアシル−CoA+O
トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA+H (3a)
トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA+NADPH+H
(2S)−2−メチルアシル−CoA+NADP+HO (3b)
反応(3a)は、アシル−CoAオキシダーゼによって触媒される反応を表し、そして反応(3b)は、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼによって触媒される反応を表す。例として、(2S)−2−メチルアシル−CoAは、(2S)−プリスタノイル−CoAであり、そしてトランス−2,3−デヒドロアシル−CoAは、トランス−2,3−デヒドロプリスタノイル−CoAである。十分な量のOおよびNADPHが、循環反応を発生させるために反応物に添加され得る。これはNADPおよびHの蓄積をもたらす。
【0062】
以下は、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素およびトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素が同じである場合の、例示的反応スキームである。一つのこのような例示的反応スキームは以下である:
(2S)−2−メチルアシル−CoA+チオ−NADP+HO →
トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA+チオ−NADPH+H (4a)
トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA+NADH+H
(2S)−2−メチルアシル−CoA+NAD+HO (4b)
反応(4a)および(4b)の両方は、同じ酵素によって触媒され、この酵素はアシル−CoAデヒドロゲナーゼ(EC 1.3.1.8)またはトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ(EC 1.3.1.38)である。例として、(2S)−2−メチルアシル−CoAは、(2S)−プリスタノイル−CoAであり、そしてトランス−2,3−デヒドロアシル−CoAは、トランス−2,3−デヒドロプリスタノイル−CoAである。十分なチオ−NADPおよびNADHが、循環反応中で両反応を駆動させるために反応混合物に添加し得る。循環反応はチオ−NADPHの蓄積をもたらす。
【0063】
同じ循環効果を達成するのに、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素およびトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素の任意の他の組み合わせが使用され得る。
【0064】
工程a)および工程b)の酵素反応は、概して、酵素反応の完了のために適切な条件(例えば、緩衝液および温度)下で行われる。本明細書において記載される工程b)および工程a)のための緩衝液は、同じでものであっても異なるものであってもよい。工程a)および/またはb)における特定の酵素反応のために適切な、当該分野で公知の任意の緩衝液が使用され得る。例えば、緩衝液は、約6から約8のpHのリン酸緩衝液、約7から約9のpHのトリス−HCl緩衝液、または約6から約9のpHのGood緩衝液であり得る。
【0065】
工程b)の温度は、工程a)と同じであっても異なっていてもよい。工程b)の温度は、好ましくは、約25℃から約37℃の間である。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書において記載される1つ以上の工程が、別々の反応混合物中で行われる。例えば、反応の1つ以上の工程の最終生成物が、次の工程のための試薬が添加される前に、反応混合物から部分的または完全に分離され得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書において記載される工程a)およびb)は、単一の反応混合物中で行われる。いくつかの実施形態では、次の工程のための酵素、基質、または電子アクセプターは、前の工程の終わりに同じ反応混合物に、連続して添加される。いくつかの実施形態では、前の工程の反応は、次の工程のための試薬が添加される前に、終了される。いくつかの実施形態では、1つを超える数の工程のためのいくつかの試薬または全ての試薬が、反応混合物に同時に添加される。いくつかの実施形態では、工程a)およびb)のための試薬が、同時にサンプルと混合される。これらの実施形態では、α−メチルアシル−CoAラセマーゼを含有する疑いのあるサンプルは、(2R)−2−メチルアシル−CoA、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素、および酸化型の第1の電子アクセプター、トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素、および還元型の第2の電子アクセプターと接触される。いくつかの実施形態では、工程a)のための試薬および工程b)のための試薬のいくつかが、同時にサンプルと混合される。これらの実施形態では、α−メチルアシル−CoAラセマーゼを含有する疑いのあるサンプルは、(2R)−2−メチルアシル−CoA、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素、酸化型の第1の電子アクセプターと接触される。
【0068】
いくつかの実施形態では、工程b)のための試薬のいくつかがサンプルと最初に混合され、そして工程a)のための試薬および工程b)のための他の試薬が後に添加される。いくつかの実施形態では、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素および酸化型の第1の電子アクセプターが、サンプルに最初に添加され、そして次にサンプルは、(2R)−2−メチルアシル−CoA、トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素、および還元型の第2の電子アクセプターと接触される。いくつかの実施形態では、このサンプルは(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素および酸化型の第1の電子アクセプターと共にインキュベートされ、サンプル中の(2S)−2−メチルアシル−CoAのトランス−2,3−デヒドロアシル−CoAへの変換を可能にする。これらの実施形態は、実施例1および実施例2に詳細に記載されている。
【0069】
(工程c):工程b)において発生したシグナルの評価)
サンプル中のα−メチルアシル−CoAラセマーゼの定量は、工程b)において発生したシグナルの減ずる差または加えられる差をモニターすることによって達成され得る。評価は、連続的にまたは異なる時点で行い得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、還元型または酸化型の第1の電子アクセプターの濃度変化が評価される。いくつかの実施形態では、α−メチルアシル−CoAラセマーゼの活性は、還元型の第1の電子アクセプターの濃度の増加を評価することによって決定される。いくつかの実施形態では、α−メチルアシル−CoAラセマーゼの活性は、酸化型の第1の電子アクセプターの濃度の減少を評価することによって決定される。
【0071】
いくつかの実施形態では、還元型または酸化型の第2の電子アクセプターの濃度変化が評価される。いくつかの実施形態では、α−メチルアシル−CoAラセマーゼの活性は、還元型の第2の電子アクセプターの濃度の減少を評価することによって決定される。いくつかの実施形態では、α−メチルアシル−CoAラセマーゼの活性は、酸化型の第2の電子アクセプターの濃度の増加を評価することによって決定される。
【0072】
本明細書において記載される電子アクセプターの濃度変化は、当該分野で公知の方法を用いて評価され得る。例えば、NADHまたはNADPHの濃度変化は、340nmの吸収を測定することによって、分光光度測定的に決定され得る。チオ−NADPHの濃度変化は、405nmの吸収を測定することによって、分光光度測定的に決定され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、NADHまたはNADPHの濃度変化は、電子輸送色原体(electron transport chromogen)を用いる比色測定法によって測定され得る。電子輸送色原体としては、塩化3−(p−ヨードフェニル)−2−(p−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウム、臭化3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウム、3,3’−(4,4’−ビフェニレン)−ビス(塩化2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウム)、3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)−ビス[塩化2−(p−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウム](=ニトロ−テトラゾリウム:NTB)、3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’ビフェニレン)−ビス[塩化2,5−ビス(p−ニトロフェニル)−2H−テトラゾリウム]、3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)−ビス(塩化2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウム)、および2,6−ジクロロフェノール−インドフェノールが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい例は、水溶性テトラゾリウム塩およびジアホラーゼまたはフェナジンメトスルフェートとの組み合わせである。これらの電子輸送色原体は、NADPまたはNADPHのための電子アクセプターであり、着色したホルマザン(formazane)色素を形成し、そして形成される色素は、それらの最大吸収において比色測定的に測定される。
【0074】
NADHまたはNADPHのためのさらなるアッセイ方法は、NADまたはNADPHが、リザズリン(resazulin)などの蛍光試薬の存在下にジアホラーゼで処理される、蛍光光度測定法である。
【0075】
本明細書において記載される還元型および/または酸化型の電子アクセプターの濃度の測定は、当該分野において公知である。たとえば、消費されたOまたは形成されたHの量は、電子センサー(electronic sensor)の使用によってアッセイされ得る。非常に多くの還元−酸化指示器(red−ox indicator)が、この目的のために使用され得、そして溶液中のHおよびOをアッセイするために、広範囲の方法が文献中に記載されている。発生したHはまた、指示薬とHを反応させることによって、検出可能生成物として測定され得る。指示薬の例は、分光光度測定的方法によって測定され得る試薬、カラー指示薬(color indicator)、蛍光試薬または発光試薬である。例えば、Hは、ぺルオキシオキザレートおよびアクリジニウムエステルの非酵素的化学発光反応を使用して評価され得る。
【0076】
アッセイは、ポジティブおよびバックグラウンドの対照(positive and background controls)を伴う、二重で行い得る。既知の量の、既知の活性のα−メチルアシル−CoAラセマーゼを使用することによって、標準曲線が得られ得る。それぞれのサンプルのα−メチルアシル−CoAラセマーゼのレベルは、次に、測定されるそれぞれのシグナルをこの標準曲線と比較することによって測定され得る。
【0077】
(C.本方法の使用)
本発明は、血液サンプルなどのサンプル中に存在するα−メチルアシル−CoAラセマーゼを検出するための増加した感度を有するアッセイを提供する。本発明の方法は、このように、変更されたα−メチルアシル−CoAラセマーゼのレベルと関係する状態を検出するための実用的手段、および個体においてα−メチルアシル−CoAラセマーゼレベルをモニターするための実用的手段を提供する。本方法は、被験体における、不適当な量もしくは活性のα−メチルアシル−CoAラセマーゼ、またはこれの効果もしくは活性と関係する任意の疾患の予後または診断のために使用され得る。このような疾患の例としては、これらに限られるわけではないが、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、腎臓癌、リンパ腫、および黒色腫などの癌が挙げられる。
【0078】
本発明の酵素アッセイは、生物学的過程および種々の病理学的状態におけるα−メチルアシル−CoAラセマーゼの役割を探求するための研究道具もまた提供する。
【0079】
(D.α−メチルアシル−CoAラセマーゼをアッセイするためのキット)
本発明は、診断キットなどの、α−メチルアシル−CoAラセマーゼ活性をアッセイするためのキットもまた提供する。このようなキットは、本発明の方法を行うために、本明細書において記載される、1つ以上の基質、酵素試薬および電子アクセプターを包含する。いくつかの実施形態では、キットは、(2R)−2−メチルアシル−CoA、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素、酸化型の第1の電子アクセプター、トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素、および還元型の第2の電子アクセプターを含み、ここで第1の電子アクセプターと第2の電子アクセプターとは異なる。本明細書において記載される任意の基質、酵素、および電子アクセプターが、キットに含まれ得る。キットはまた、ポジティブおよび/またはネガティブの対照標準も含み得、同様に、例えば比色測定アッセイを行うための試薬などの、工程b)によって発生されるシグナルを評価するために必要な試薬を含み得る。キットはまた、本発明の方法を行うためのおよび/または加工のためにサンプルを診断試験所まで移動させるための、器具または容器、ならびに本発明の方法を行うための適切な使用説明書も含み得る。
【0080】
本発明のキットは、任意の適切な包装状態であり得る。例えば、診断システムに関連して本明細書において論じられる包装は、診断システムにおいて習慣的に利用されるものである。このような包装は、自動分析器において使用するために適切な容器を含む。
【0081】
(E.実施例)
以下の実施例は、例示的目的にのみのために含められ、そして本発明の範囲を限定する意図はない。
【0082】
(実施例1.アシル−CoAデヒドロゲナーゼおよびトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼを使用するα−メチルアシル−CoAラセマーゼ(AMACR)アッセイ)
この研究では、この(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素は、アシル−CoAデヒドロゲナーゼであり;そしてトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素は、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼである。この研究において使用される試薬は、以下の表1および表2に示される。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

この研究では、260μlの試薬1を20μlのサンプル(血清または血漿)に加える。25℃または37℃下での5分間のインキュベーションの後、60μlの試薬2を、反応混合物に加える。405nmの吸収変化を、8分間から10分間の間モニターする。405nmでの増加速度を、AMACRキャリブレーターから発生される速度に対して、サンプル中のAMACR活性をキャリブレーションするため使用する。
【0085】
(実施例2.アシル−CoAオキシダーゼおよびトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼを使用するα−メチルアシル−CoAラセマーゼ(AMACR)アッセイ)
この研究では、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素は、アシル−CoAオキシダーゼであり;そしてトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素は、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼである。この研究において使用される試薬は、以下の表3および表4に示される。
【0086】
【表3−1】

【0087】
【表3−2】

【0088】
【表4】

この研究では、260μlの試薬1を25μlのサンプル(血清または血漿)の中へ加える。25℃または37℃下での5分間のインキュベーションの後、60μlの試薬2を、反応混合物に加える。550nmの吸収変化を、8分間から10分間の間モニターする。サンプル中のAMACR活性を、AMACRキャリブレーターを用いてキャリブレーションする。
【0089】
上記の実施例は、例示的目的のみのために包含され、そして本発明の範囲を限定する意図はない。上に記載されるものの多くの変形形態が可能である。上記の実施例の変更形態および変形形態が、当該分野の当業者には明白であるので、本発明は添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のα−メチルアシル−CoAラセマーゼをアッセイするための方法であって、該方法は:
a)α−メチルアシル−CoAラセマーゼを含有する疑いのあるサンプルと(2R)−2−メチルアシルCoAとを接触させ、(2S)−2−メチルアシル−CoAを発生させる工程;
b)工程a)からの該(2S)−2−メチルアシル−CoAを、発生した場合、(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素および酸化型の第一の電子アクセプターの存在下で、トランス−2,3−デヒドロアシル−CoAに変換し、これによって第一の電子アクセプターの還元型が発生される工程であって;該トランス−2,3デヒドロアシル−CoAを、トランス−2,3デヒドロアシル−CoA変換酵素および還元型の第2の電子アクセプターの存在下で、(2S)−2−メチルアシル−CoAに再変換し、循環反応系を形成させ、これによって第2の電子アクセプターの酸化型が発生される工程;ここで第1の電子アクセプターと第2の電子アクセプターとは異なる工程;および
c)該循環反応系において、第1の電子アクセプターの還元型もしくは酸化型の濃度変化または第2の電子アクセプターの還元型もしくは酸化型の濃度変化を評価し、これによって、該サンプル中のα−メチルアシル−CoAラセマーゼの、存在、非存在および/または量を決定する工程、を包含する、方法。
【請求項2】
前記(2R)−2−メチルアシル−CoAが、C(4)からC(30)までの鎖長を有する(2R)−2−メチル−分枝アシル−CoAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(2R)−2−メチルアシル−CoAが、C(8)からC(25)までの鎖長を有する(2R)−2−メチル−分枝アシル−CoAである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記(2R)−2−メチルアシル−CoAが、(2R)−プリスタノイル−CoAである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記(2R)−2−メチルアシル−CoAが、(25R)−3α,7α,12α−トリヒドロキシ−5β−コレスタノイル−CoAである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
最初に前記(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素および前記酸化型の第1の電子アクセプターが前記サンプル中へ添加され、そして次に前記サンプルは(2R)−2−メチルアシル−CoA、トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素、および前記還元型の第2の電子アクセプターに接触される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素と前記トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素とが異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素がアシル−CoAデヒドロゲナーゼであり、そして前記第1の電子アクセプターがNAD、NADP、チオ−NAD、チオ−NADP、アセチル−NAD、およびアセチル−NADPからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素がアシル−CoAオキシダーゼであり、そして前記第1の電子アクセプターがOである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素がトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼであり、そして前記第2の電子アクセプターがNADH、NADPH、チオ−NADH、チオ−NADPH、アセチル−NADH、およびアセチル−NADPHからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素がトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼであり、そして前記第2の電子アクセプターがNADH、NADPH、チオ−NADH、チオ−NADPH、アセチル−NADH、およびアセチル−NADPHからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素がトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼであり、そして前記第2の電子アクセプターがNADH、NADPH、チオ−NADH、チオ−NADPH、アセチル−NADH、およびアセチル−NADPHからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素と前記トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素とが同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素および前記トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素の両方が、アシル−CoAデヒドロゲナーゼまたはトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記酸化型の前記第1の電子アクセプターが、NAD、NADP、チオ−NAD、チオ−NADP、アセチル−NAD、およびアセチル−NADPからなる群から選択され;そして前記還元型の前記第2の電子アクセプターが、NADH、NADPH、チオ−NADH、チオ−NADPH、アセチル−NADH、およびアセチル−NADPHからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
濃度変化が光度測定法によって評価される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、該方法はさらに、工程c)の後で、前記酸化型もしくは還元型の前記第1の電子アクセプターまたは前記還元型もしくは酸化型の前記第2の電子アクセプターを、発色試薬に結合させる工程を包含し、該酸化型もしくは還元型の該第1の電子アクセプターの濃度変化または該還元型もしくは酸化型の該第2の電子アクセプターの濃度変化は、比色測定法によって評価される、方法。
【請求項18】
前記サンプルが生物学的サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記生物学的サンプルが血液サンプルである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記血液サンプルが、全血、血清、および血漿からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記生物学的サンプルが、前立腺、結腸、卵巣、乳房、膀胱、肺、腎臓、リンパ球からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、該方法は個体における癌の予後および/または診断のために使用される、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、該方法はさらに、前記個体からの前記サンプル中のα−メチルアシル−CoAラセマーゼの量を、あらかじめ決められた値と比較する工程を包含し、これによって、α−メチルアシル−CoAラセマーゼの量の増加が、該個体が癌を有しているまたは癌を発生させる危険性があることを示す、方法。
【請求項24】
前記癌が、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、腎臓癌、リンパ腫、および黒色腫からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
サンプル中のα−メチルアシル−CoAラセマーゼをアッセイするためのキットであって、該キットが、(2R)−2−メチルアシル−CoA、酸化型の第1の電子アクセプター、酸化型の該第1の電子アクセプターの存在下において(2S)−2−メチルアシル−CoAのトランス−2,3−デヒドロアシル−CoAへの変換を触媒する(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素、還元型の第2の電子アクセプター、および還元型の該第2の電子アクセプターの存在下においてトランス−2,3−デヒドロアシル−CoAの(2S)−2−メチルアシル−CoAへの変換を触媒するトランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素を備え、ここで該第1の電子アクセプターと該第2の電子アクセプターは異なる、キット。
【請求項26】
前記(2R)−2−メチルアシル−CoAが、C(4)からC(30)までの鎖長を有する(2R)−2−メチル−分枝アシル−CoAである、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記(2R)−2−メチルアシル−CoAが、C(8)からC(25)までの鎖長を有する(2R)−2−メチル−分枝アシル−CoAである、請求項25に記載のキット。
【請求項28】
前記(2R)−2−メチルアシル−CoAが、(2R)−プリスタノイル−CoAである、請求項25に記載のキット。
【請求項29】
前記(2R)−2−メチルアシル−CoAが、(25R)−3α,7α,12α−トリヒドロキシ−5β−コレスタノイル−CoAである、請求項25に記載のキット。
【請求項30】
前記(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素がアシル−CoAデヒドロゲナーゼであり、そして前記第1の電子アクセプターがNAD、NADP、チオ−NAD、チオ−NADP、アセチル−NAD、およびアセチル−NADPからなる群から選択される、請求項25に記載のキット。
【請求項31】
前記(2S)−2−メチルアシル−CoA変換酵素がアシル−CoAオキシダーゼであり、そして前記第1の電子アクセプターがOである、請求項25に記載のキット。
【請求項32】
前記トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素がトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼであり、そして前記第2の電子アクセプターがNADH、NADPH、チオ−NADH、チオ−NADPH、アセチル−NADH、およびアセチル−NADPHからなる群から選択される、請求項25に記載のキット。
【請求項33】
前記トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素がトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼであり、そして前記第2の電子アクセプターがNADH、NADPH、チオ−NADH、チオ−NADPH、アセチル−NADH、およびアセチル−NADPHからなる群から選択される、請求項30に記載のキット。
【請求項34】
前記トランス−2,3−デヒドロアシル−CoA変換酵素がトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼであり、そして前記第2の電子アクセプターがNADH、NADPH、チオ−NADH、チオ−NADPH、アセチル−NADH、およびアセチル−NADPHからなる群から選択される、請求項31に記載のキット。
【請求項35】
請求項25に記載のキットであって、該キットはさらに癌の予後および/または診断のための使用を示す使用説明書を備える、キット。
【請求項36】
前記癌が、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、腎臓癌、リンパ腫、および黒色腫からなる群から選択される、請求項35に記載のキット。

【公表番号】特表2008−516608(P2008−516608A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536931(P2007−536931)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/036983
【国際公開番号】WO2006/044633
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(506017089)
【Fターム(参考)】