説明

α−ラクトアルブミン組成物

本発明は、選択的細胞傷害活性を有する、α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との活性複合体である、単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACを含む、薬学的組成物に関する。本発明の組成物は、オリゴマー/多量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACを微量含む。α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC組成物の選択的細胞傷害性に基づいて、このような組成物は、療法における使用のための医薬の製造における使用に好適である。単量体LACを含む医薬は、選択的細胞傷害活性に起因して、細菌及びウイルス感染症、並びに特に癌の治療において使用される。本願は、さらに、細胞傷害活性を有する、単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACを含む組成物の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願、又は本出願において引用される全ての特許及び非特許参考文献もまた、それらの全体が、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、選択的細胞傷害活性を有する、α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との活性複合体である、単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACを含む、薬学的組成物に関する。本発明の組成物は、オリゴマー/多量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACを微量含む。α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC組成物の選択的細胞傷害性に基づいて、このような組成物は、療法における使用のための医薬の製造における使用に好適である。単量体LACを含む医薬は、選択的細胞傷害活性に起因して、細菌及びウイルス感染症、並びに特に癌の治療において使用される。
【0003】
本願は、さらに、細胞傷害活性を有する、単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACを含む組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
単量体α−ラクトアルブミン(LA)は、ヒト乳清中において最も豊富なタンパク質である。成熟単量体α−ラクトアルブミンは、多くの哺乳動物種において123個のアミノ酸残基(14.2kDa)からなる。ヒト、ウシ、ウマ、ヤギ、及びラクダ(camelide)α−ラクトアルブミンは全て123個のアミノ酸残基からなり、一方、ブタα−ラクトアルブミンは122個のアミノ酸からなる。ヒト、ウシ、ヤギ及びブタα−ラクトアルブミンはまた、19個のアミノ酸のリーダー配列を含む。この14KDaタンパク質は広くキャラクタライズされており、結晶構造が解明されている。
【0005】
α−ラクトアルブミンの結晶構造によって、タンパク質は4個のαヘリックスと、タンパク質のC末端で見られる1個の三本鎖βシートとからなることが示された。大きなαヘリックスドメインは、アミノ酸5−11、23−34、86−98、及び短いαヘリックスセグメント;アミノ酸18−20、115−118を含む。βドメインは、アミノ酸40−50からなる三本鎖逆平行シート及び短い76−82ヘリックスを含む。
【0006】
α−ラクトアルブミンは、金属タンパク質であり、高親和性Ca2+結合部位及びいくつかの亜鉛結合部位を含む。高親和性Ca2+結合部位は、アミノ酸残基77−89にわたる。特に、残基79、82、84、87及び88が、Ca2+結合に関与するようである(非特許文献1)。α−ラクトアルブミンは、高親和性結合部位についてCa2+と競合し得る、Mg2+、Mn2+、Na+及びK+などの他の生理学的に重要なカチオンに結合する。
【0007】
ネイティブな単量体は、ラクトースシンターゼ複合体の調節サブユニットであり、ガラクトシルトランスフェラーゼの受容体特異性をN−アセチルグルコサミンからグルコースへ変化させ、引き続いてラクトースが合成される。
【0008】
α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との多量体複合体は殺細胞能を有し得ることが示された。オリゴマー複合体を含有する人乳由来のフラクションは、多量体α−ラクトアルブミン又はMAL又はHAMLET(腫瘍細胞に致死的なヒトa−ラクトアルブミン)として記載され、単量体形態とは異なる生物学的特性を有すると報告された。それは、正常な分化細胞においてではなく、腫瘍細胞において選択的にインビトロアポトーシスを誘発する分子複合体である。
【0009】
多量体LAのアポトーシス活性は、セレンディピティーによって発見された。細菌付着に対する人乳の効果に関する研究の間、驚くべきことに、人乳は、形質転換及び非形質転換未熟細胞株においてアポトーシスを誘発することが発見された。人乳中のアポトーシス活性は、低いpHでの沈殿によって得られた人乳カゼインのフラクションから単離され、1M NaCl後に単一ピークとして溶離する、イオン交換クロマトグラフィーによって精製された。溶離液は、アポ様コンフォメーションの部分的に折り畳まれていないa−ラクトアルブミンを含有することが分光法によって示され(非特許文献2)、ネイティブ様二次構造を有するが、側鎖の特定の三次パッキングを欠いている(非特許文献2)。アポトーシス誘発と折り畳み変化との関係は、ネイティブなα−ラクトアルブミンのアポトーシス誘発形態への故意の変換によって証明された(非特許文献3)。HAMLETは、腫瘍細胞の表面へ結合し、細胞質中へ移行し、細胞核中に蓄積し、ここで、それは、DNAフラグメント化を引き起こすことが示された(非特許文献3)。
【0010】
オリゴマー複合体は、抗生物質(特許文献1)及び癌療法(非特許文献4)の分野の両方において治療用途を有すると報告されている。特に、オリゴマー形態は、正常な細胞においてではなく、癌細胞及び未熟細胞においてアポトーシス細胞死を誘発する。これらの観察によって、前記タンパク質がコンフォメーションのスイッチング後に新たな生物学的特性を獲得することが示唆された。
【0011】
a−ラクトアルブミンは低いpHへ曝露されるとコンフォメーションのスイッチングを受けることが公知である。A状態又はモルテングロビュール状態は、ネイティブな二次構造を有するが、ネイティブな状態よりもあまり十分に規定されていない三次構造を有する。a−ラクトアルブミンの同様の状態はまた、中性pHでも、固く結合されたCa2+イオンの除去時、ジスルフィド結合の還元時、又は高温時に形成し得る。
【0012】
他の試薬、具体的にはオレイン酸などの脂質が、ヒトa−ラクトアルブミンのHAMLETへの変換において有用であることも見出された。特に、オレイン酸(C18:1:9シス)がHAMLET産生のために必要であることが以前報告された(非特許文献3)。
【0013】
単一の非常に高親和性のCa2+結合部位へのCa2+の結合は、前記タンパク質がネイティブなコンフォメーションを維持するために重要である。高親和性Ca2+結合部位は、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ及びラクダα−ラクトアルブミンを含む多くの哺乳動物種にわたって100%保存されている。Ca2+を連結する7つの酸素のうちの5つは、82、87及び88位におけるAsp残基の側鎖カルボキシレートによって並びにLys79及びAsp84のカルボニル酸素によって与えられ、2つの水分子が残りのリガンドを供給する。結合されたCa2+は、αヘリックス領域とシートとを接近させ、Ca2+結合部位の側面に位置する2つのジスルフィド結合は、分子のこの部分をかなり剛直にする。他のカチオン、例えば、Mg2+、Mn2+、Na+及びK+の結合もまた、α−ラクトアルブミンにおいてコンフォメーション変化を引き起こすが、これらはCa2+の結合についてよりも小さい。
【0014】
アポトーシス活性を有するLACへのヒトα−ラクトアルブミンの変換は、コンフォメーション又は折り畳み変化、脂肪酸又は脂質の存在及びオリゴマー化の両方を必要とすることが以前見出された。コンフォメーション又は折り畳み変化は、好都合なことに、カルシウムイオンの除去によって、又はカルシウムイオンを含まない変異体を使用することによって、行われる。しかし、いったん変化が行われると、カルシウム又は機能的カルシウム結合部位の存在は、活性のいかなる損失も生じさせない。オリゴマー複合体は、抗生物質(特許文献1)及び癌療法(非特許文献4)の分野の両方において治療用途を有すると報告されている。特に、LACのオリゴマー形態は、癌細胞及び未熟細胞においてアポトーシス細胞死を誘発し得るが、成熟した正常な細胞においては誘発しない(又は低い程度でのみ誘発する)。これらの観察によって、前記タンパク質は、脂肪酸又は脂質と活性複合体を形成する際に新たな生物学的特性を獲得することが示唆された。従って、脂肪酸又は脂質、例えばオレイン酸などの試薬は、LAのLACへの変換において有用であり得る。
【0015】
以前、癌細胞及び未熟細胞に対する細胞傷害活性は、多量体ヒトLACのみの特徴であると考えられていた(非特許文献4、非特許文献2、非特許文献5)。SDS−PAGE及びMALDI−MSを使用して、Hakanssonら(2000年)は、単量体LAC及びオリゴマーLACの両方を含む組成物を分析した。活性細胞傷害性フラクションはLACのオリゴマー形態を含有し、LACの殺細胞活性はオリゴマー形態のみに起因すると決定された(非特許文献5)。
【0016】
Xuら(2005年)は、2つの別個の論文において、市販のウシα−ラクトアルブミン及び牛乳から精製したα−ラクトアルブミンを、細胞増殖の強力な阻害を示し細胞死を誘発し得る形態へ変換することができたことを示した(非特許文献6及び非特許文献7)。α−ラクトアルブミンの多量体形態のみが、これらの細胞傷害性生物学的活性を示し;単量体形態は、いかなる殺細胞活性をも示さなかった(非特許文献6及び非特許文献7)。
【0017】
オリゴマー複合体は、抗生物質(特許文献1)及び癌療法(非特許文献4)の分野の両方において治療用途を有すると報告されている。特に、LACのオリゴマー形態は、癌細胞及び未熟細胞においてアポトーシス細胞死を誘発し得るが、成熟した正常な細胞においては誘発しない(又は低い程度でのみ誘発する)。これらの観察によって、前記タンパク質は、脂肪酸又は脂質と活性複合体を形成する際に新たな生物学的特性を獲得することが示唆された。従って、脂肪酸又は脂質、例えばオレイン酸などの試薬は、LAのLACへの変換において有用であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】W096/04929
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Permyakov et al., α-Lactalbumin: structure and function. FEBS Letters 473 (2000) 269-274.
【非特許文献2】M. Svensson, et al, (1999) J Biol Chem, 274, 6388-96
【非特許文献3】M. Svensson, et al., (2000) Proc Natl Acad Sci USA, 97, 4221-6
【非特許文献4】A. Hakansson et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, (1995) 92, 8064-8068
【非特許文献5】A. Hakansson et al. Molecular Microbiology (2000) 35, 589-600
【非特許文献6】Xu et al., Biosci.Biotechnol. Biochem. (2005) 69, 1082-1089
【非特許文献7】Xu et al., Biosci.Biotechnol. Biochem. (2005) 69, 1189-1192
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、単量体LACが、選択的細胞傷害活性、例えば、癌細胞及び未熟細胞に対する細胞傷害活性を含む、多量体LACと同様の生物学的活性を含み得るという知見に関する。
【0021】
本発明のある局面は、α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との複合体である単量体LACを含む薬学的組成物であって、該α−ラクトアルブミンがヒトα−ラクトアルブミン若しくはウシα−ラクトアルブミン又はその機能的均等物であり、該組成物が単量体LACを少なくとも50質量%含む、薬学的組成物に関する。
【0022】
好ましくは、単量体LAC組成物は選択的細胞傷害活性を有し、ここで、LD50として測定される効力は、0.1mg/ml未満である。
【0023】
好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、配列番号1によって同定されるウシα−ラクトアルブミンである。別の態様において、α−ラクトアルブミンは、配列番号2によって同定されるヒトα−ラクトアルブミンである。
【0024】
さらなる局面において、本発明は、α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との複合体である単量体LACを含む組成物の製造方法であって、該α−ラクトアルブミンが配列番号1若しくは配列番号2のα−ラクトアルブミン又はそれに少なくとも70%同一の配列を含むその機能的均等物であり、該組成物が単量体LACを少なくとも50質量%含み、以下の工程:
a.単量体α−ラクトアルブミンを少なくとも95質量%含むα−ラクトアルブミン組成物を得る工程、
b.以下によって該α−ラクトアルブミンをLACへ変換する工程
i.該α−ラクトアルブミンからのカルシウムの放出、及び
ii.該α−ラクトアルブミンへの脂肪酸又は脂質の結合、並びに
c.LACを精製する工程
を含む方法に関する。
【0025】
他の同様に好ましい態様において、LACは、デンマーク特許出願PA 2007 0693の実施例3及び4に記載の方法に従って製造され得る。
【0026】
なおさらなる局面において、本発明は、医薬の製造のための、α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との複合体である単量体LACを含む組成物の使用であって、該α−ラクトアルブミンが配列番号1若しくは配列番号2のα−ラクトアルブミン又はそれに少なくとも70%同一の配列を含むその機能的均等物であり、該組成物が単量体LACを少なくとも50質量%含む、使用に関する。
【0027】
本発明の次の局面は、
i.α−ラクトアルブミンLAと脂肪酸又は脂質との複合体である単量体LACを含む薬学的組成物であって、該α−ラクトアルブミンが配列番号1若しくは配列番号2のもの又はそれに少なくとも70%同一の配列を含むその機能的均等物であり、該組成物が単量体LACを少なくとも50質量%含む、薬学的組成物、並びに
ii.薬学的賦形剤
を含む医薬を投与することを含む治療方法に関する。
【0028】
本明細書において使用される場合:
用語「α−ラクトアルブミン」は、本明細書において使用される場合、ポリペプチドの三次構造とは無関係のα−ラクトアルブミンポリペプチドの意味を有する。ウシ及びヒトα−ラクトアルブミンの配列は、それぞれ、配列番号1及び配列番号2によって定義される。1Aは、ヒト及びウシα−ラクトアルブミンの配列アラインメントを示す。従って、ヒトα−ラクトアルブミンは、任意の三次元構造を有する配列番号2の任意のポリペプチドである。同様に、ウシα−ラクトアルブミンは、任意の三次元構造を有する配列番号1の任意のポリペプチドである。
【0029】
用語「LA」は、本明細書において使用される場合、好ましくはネイティブな三次元構造であり、かつ、好ましくは高親和性カルシウム結合部位へ結合されたカルシウムを有する、α−ラクトアルブミンポリペプチドの意味を有する。LAは、脂肪酸又は脂質と複合体化されておらず、好ましくは、殺細胞能を有さない。用語「hLA」及び「bLA」は、本明細書において使用される場合、それぞれ、ヒトLA及びウシLAの意味を有する。
【0030】
α−ラクトアルブミンのA状態は、例えば低pHで溶解される場合に採用されるα−ラクトアルブミンの部分的に折り畳まれた状態の意味を有し、一方、アポ状態は、例えば中性pH及び低塩濃度でのタンパク質結合カルシウムの除去時に採用されるα−ラクトアルブミンの部分的に折り畳まれた状態である。
【0031】
用語「LAC」は、本明細書において使用される場合、α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との活性複合体の意味を有する。「活性な」によって、複合体がアポトーシス誘発能を有することが意味される(より詳しくは本明細書下記のセクション「α−ラクトアルブミン」を参照のこと)。用語hLAC及びbLACは、本明細書において使用される場合、それぞれ、ヒトLAC及びウシLACの意味を有する。好ましくは、LACは、15μg未満/70μl中100.000細胞である殺細胞活性を有する。好ましい態様において、LD50は、10μg未満/70μl中100.000細胞である。本発明に従うα−ラクトアルブミン組成物は、より好ましくは、5μg未満/100.000細胞の、LD50として測定される細胞傷害活性を有する。最も好ましいのは、LD50として測定される細胞傷害活性が、1〜5μg/70μl中100.000細胞である組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本出願人は、本明細書において、α−ラクトアルブミン複合体を含む組成物、好ましくは、多量体又はオリゴマーLACの含有量と比較して優勢な含有量の単量体LACを含有するLACを含む組成物を記載する。
【0033】
単量体α−ラクトアルブミンは、約14kDaの分子量を有する。α−ラクトアルブミンの単量体は、例えば、該単量体がイオン交換カラムを通過すると、多量体化又はオリゴマー化し、より高い分子量の分子を形成し得る(療法(A.Hakansson et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, (1995) 92, 8064-8068)。これらの多量体形態は、選択的細胞傷害活性を有することがわかった(A.Hakansson et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, (1995) 92, 8064-8068)。
【0034】
同様に、本発明に従う単量体α−ラクトアルブミン複合体は、好ましくは、単量体α−ラクトアルブミンと脂質又は脂肪酸とからなる。
【0035】
一般的に、本発明に従う単量体α−ラクトアルブミン分子は、たった1個のα−ラクトアルブミンポリペプチド、例えば、本明細書以下に記載の任意のα−ラクトアルブミンポリペプチドを含有する。好ましくは、本発明に従う単量体α−ラクトアルブミン分子は、14〜15kDaの範囲の分子量を有する。一般的に、α−ラクトアルブミンの二量体は、厳密に2つのα−ラクトアルブミンポリペプチド、例えば、本明細書以下に記載の任意のα−ラクトアルブミンポリペプチドを含有する。好ましくは、α−ラクトアルブミンの二量体は、28〜30kDaの範囲の分子量を有する。一般的に、α−ラクトアルブミンの三量体は、厳密に3つのα−ラクトアルブミンポリペプチド、例えば、本明細書以下に記載の任意のα−ラクトアルブミンポリペプチドを含有する。好ましくは、三量体は、42〜45kDaの範囲の分子量を有する。同様のことがより高次のオリゴマーについて当てはまる。
【0036】
LAC単量体及びオリゴマーの含有量は、重量、即ち、タンパク質複合体の質量によって算出される。α−ラクトアルブミン分子の相対含有量が以下の通りである例において[6個の単量体α−ラクトアルブミン、1個の二量体α−ラクトアルブミン及び1個の三量体α−ラクトアルブミンを含む組成物]、単量体α−ラクトアルブミンの含有量は、6×14/(6×14+2×14+3×14)×100%=84/154×100%=54.5%である。
【0037】
本発明に従うα−ラクトアルブミン組成物、好ましくはLACは、50%(質量%)を超える単量体LAC、例えば60質量%を超える、例えば70質量%を超える、好ましくは80質量%を超える、又は90質量%を超える単量体LAC、好ましくは、95質量%を超える単量体LACを含む。
【0038】
特に好ましい態様において、本組成物は、96%(質量%)を超える単量体α−ラクトアルブミン、好ましくはLAC、より好ましくは97%を超える、又は98%を超える、最も好ましくは99%を超える単量体α−ラクトアルブミン、好ましくはLACを含み、従って、本組成物は、好ましくは、多量体又はオリゴマーα−ラクトアルブミン、好ましくはLACを微量含む、本質的に純粋な単量体α−ラクトアルブミン、好ましくはLAC組成物である。実施例1に記載され、図4B及び4によってキャラクタライズされるα−ラクトアルブミン複合体組成物は、多量体又はオリゴマーα−ラクトアルブミン、好ましくはLACの含有量が、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又はウエスタンブロット法のいずれかによって検出可能でない組成物を示す。
【0039】
組成物中の多量体又はオリゴマーα−ラクトアルブミン、好ましくはLACの量は、PAGE又は免疫ブロット法などの方法による検出のレベル未満であることが好ましい。
【0040】
本発明の局面は、α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との複合体である、単量体α−ラクトアルブミン、好ましくはLACを含む組成物であって、該α−ラクトアルブミンがウシ若しくはヒトα−ラクトアルブミン又はその機能的均等物であり、該組成物が単量体LACを少なくとも95質量%含む組成物に関する。好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、ウシα−ラクトアルブミンである。
【0041】
野生型ウシα−ラクトアルブミン、即ち、該タンパク質の天然の非突然変異型は、配列番号1として同定され、野生型ヒトα−ラクトアルブミン、即ち、該タンパク質の天然の非突然変異型は、配列番号2として同定される。本発明はまた、配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を含むか又は配列番号2に対して少なくとも70%の配列同一性を含むα−ラクトアルブミンの機能的相同体並びにα−ラクトアルブミンの機能的相同体と脂肪酸又は脂質との活性複合体を包含する。リーダー配列を含む野生型ウシα−ラクトアルブミン、即ち、19個のアミノ酸のリーダー配列を含む該タンパク質の天然の非突然変異型は、配列番号3として同定され、リーダー配列を含む野生型ヒトα−ラクトアルブミン、即ち、19個のアミノ酸のリーダー配列を含む該タンパク質の天然の非突然変異型は、配列番号4として同定される。
【0042】
機能的相同体は、野生型α−ラクトアルブミン、例えば、野生型ヒトα−ラクトアルブミン又は野生型ウシラクトアルブミンとは配列が異なるが、依然として機能的に能力のある、α−ラクトアルブミンとして定義され得る。機能的相同体は、野生型α−ラクトアルブミンの突然変異型又は代替のスプライス変異体であり得る。別の局面において、α−ラクトアルブミンの機能的相同体は、本明細書以下において記載されるように定義される。機能的相同体は、エクスビボで導入された、1つ又はそれ以上の突然変異及び/又は1つ又はそれ以上の配列欠失及び/又は付加を有するα−ラクトアルブミンの組換え型であり得るが、これに限定されない。
【0043】
本発明の好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、ヒト又はウシα−ラクトアルブミンであり得、ここで、該α−ラクトアルブミンは、天然のミルクα−ラクトアルブミン又は組換えで作製されたα−ラクトアルブミンのいずれかである。
【0044】
α−ラクトアルブミン
α−ラクトアルブミンは、背景セクションにおいて記載したように、ミルク中において非常に豊富である。異なる哺乳動物種由来のα−ラクトアルブミンの配列は、十分に保存されている。齧歯動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット)、霊長類、ネコ及びイヌ由来の配列は、高度の同一性を示す。ウマ、ヤギ、ウシ、ブタ及びヒト由来のアミノ酸配列は、約75〜95%同一性を示す(Pettersson, Jenny, BBRC 345 (2006) 260-270)。
【0045】
任意の種、好ましくは任意の哺乳動物種由来のα−ラクトアルブミンが、単量体α−ラクトアルブミン、好ましくはLACの製造のために、本発明に従って使用され得る。本発明について、ウシ又はヒト種とは異なる任意の種由来のα−ラクトアルブミンは、ウシ又はヒトα−ラクトアルブミンの機能的均等物(下記参照)と考えられる。α−ラクトアルブミンは、リゾチームCと進化的に関連し、リゾチームCと約35〜40%の配列相同性及び4個のジスルフィド結合の位置を共有する。
【0046】
本発明のある態様において、ウシ又はヒトα−ラクトアルブミンの機能的均等物は、ウマ、ヤギ、ウシ、ラクダ及びブタからなる群より選択される。最も好ましい態様において、α−ラクトアルブミンはウシのものである。図1Bは、ウシ及びヒトα−ラクトアルブミンのタンパク質配列のアラインメントを示す。
【0047】
ヒト野生型α−ラクトアルブミンは、配列番号2として同定され、ウシ野生型α−ラクトアルブミンは、配列番号1として同定される。本発明の1つの好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、ウシα−ラクトアルブミンであり、本発明の別の態様において、α−ラクトアルブミンは、ヒトα−ラクトアルブミンである。より好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、配列番号1によって同定されるウシ野生型α−ラクトアルブミンであり、本発明の別の好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、配列番号2によって同定されるヒトα−ラクトアルブミンである。
【0048】
別の好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、組換え野生型ヒトα−ラクトアルブミンであり、本発明の同様に好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、組換え野生型ウシα−ラクトアルブミンである。α−ラクトアルブミン変異体としては、当業者に公知の任意の形態のα−ラクトアルブミン及びその任意の機能的相同体が挙げられる。例えば、α−ラクトアルブミン変異体としては、スプライス変異体、及び対立遺伝子変異体、及び一塩基変異多型が挙げられる。
【0049】
α−ラクトアルブミンの機能的相同体は、配列番号1又は配列番号2との少なくともいくらかの配列同一性を示し、かつ、脂肪酸又は脂質で複合体化されると、LACと1つ又はそれ以上の機能、例えば、アポトーシス誘発能を共有する、任意のタンパク質であり得る(より詳しくは本明細書下記を参照のこと)。
【0050】
アポトーシス誘発のLACの能力は、例えば、デンマーク特許出願PA 2007 0693に記載されるように、又は実施例:単量体α−ラクトアルブミン組成物の細胞傷害性におけるように、測定され得る。DNAフラグメント化のα−ラクトアルブミンの能力は、例えば、305nm UV光源を使用して臭化エチジウムを用いて、(Pettersson, Jenny, BBRC 345 (2006) 260-270)に記載されるように、視覚化され得る。野生型LACの機能である、α−ラクトアルブミンのヒストン結合活性は、デンマーク特許出願PA 2007 0693に記載されるように測定され得る。
【0051】
本発明で使用されるα−ラクトアルブミンは、任意の好適な供給源から誘導され得、例えば、α−ラクトアルブミンは、天然のα−ラクトアルブミンであり得、又はα−ラクトアルブミンは、本明細書以下において詳細に記載される、組換えで作製されたα−ラクトアルブミンであり得る。好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、人乳から精製されたヒトα−ラクトアルブミンであり、別の同様に好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、牛乳から精製されたウシα−ラクトアルブミンである。好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、組換えウシα−ラクトアルブミンである。より好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、組換えウシ野生型α−ラクトアルブミンである。
【0052】
α−ラクトアルブミンの機能的均等物
本発明の1つの好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、ウシα−ラクトアルブミンであり、より好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、配列番号1によって同定されるウシ野生型α−ラクトアルブミンである。非常に好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、組換え野生型ヒトα−ラクトアルブミンである。本発明の別の好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、ヒトα−ラクトアルブミンであり、より好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、配列番号2によって同定されるヒト野生型α−ラクトアルブミンである。非常に好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、組換え野生型ウシα−ラクトアルブミンである。
【0053】
ウシ又はヒトα−ラクトアルブミン配列の合理的な数の修飾又は変更は、本発明に従うα−ラクトアルブミン分子の活性を妨げないことが、上記から明らかである。このようなα−ラクトアルブミン分子は、本明細書において、ウシ又はヒトα−ラクトアルブミンの機能的均等物と呼ばれ、例えば、本明細書以下に記載されるネイティブなウシ又はヒトα−ラクトアルブミンの変異体及びフラグメントであり得る。
【0054】
α−ラクトアルブミンの機能的相同体は、配列番号1又は配列番号2との少なくともいくらかの配列同一性を示し、かつ、α−ラクトアルブミンと以下のような機能を1つ又はそれ以上共有する、任意のタンパク質であり得る:
・ラクトースの合成において補因子として作用すること
・LACへ変換されると殺細胞活性を示すこと
・LACへ変換されるとアポトーシスを誘発する能力
・LACへ変換される場合のヒストン結合活性
【0055】
LACが殺細胞活性を有するかどうか測定するために、いくつかの方法が使用され得る。
【0056】
LACがヒストン結合活性を有するかどうか測定するために、いくつかの方法が使用され得る。
【0057】
好ましくは、機能的相同体は、配列番号1又は配列番号2との少なくともいくらかの配列同一性を示し、かつ、殺細胞能を有する。
【0058】
好ましくは、例えば配列アラインメントによって評価される、異なるが密接に関連する種のα−ラクトアルブミン間の進化的保存は、個々の残基に対する進化的圧力の程度を示すために使用され得る。好ましくは、α−ラクトアルブミン配列は、α−ラクトアルブミン機能が保存されている種間で、例えば、しかしこれらに限定されないが、齧歯動物、サル及び類人猿を含む哺乳動物間で、比較される。高い選択圧下での残基は、種間で変化する残基ではなく、容易には置換され得ない必須のアミノ酸を示す可能性が高い。例えば、このようなアラインメントは、EBML−EBI製のClustalWを使用し、ブタα−ラクトアルブミン及びヒトα−ラクトアルブミンを比較して、行われ得る(図1A)。ウシ又はヒトα−ラクトアルブミン配列の合理的な数の修飾又は変更は、本発明に従うα−ラクトアルブミン分子の活性を妨げないことが、上記から明らかである。このようなα−ラクトアルブミン分子は、本明細書において、ウシ又はヒトα−ラクトアルブミンの機能的均等物と呼ばれ、例えば、本明細書以下に記載されるネイティブなウシ又はヒトα−ラクトアルブミンの変異体及びフラグメントであり得る。
【0059】
機能アッセイは、例えば、α−ラクトアルブミン機能が保存されているかどうかを測定するために使用され得る。当業者に公知の機能アッセイが、複合体化されていないα−ラクトアルブミンの機能的保存を確認するために使用され得る。このような機能アッセイは、ラクトースの産生におけるラクトースシンターゼ複合体の調節サブユニットとして作用するα−ラクトアルブミンの能力を測定する。
【0060】
当業者に公知の機能アッセイが、脂肪酸又は脂質と複合体化したα−ラクトアルブミンの機能的保存を確認するために使用され得る。当業者に公知のα−ラクトアルブミン機能を評価するための機能アッセイとしては、本明細書上記及びデンマーク特許出願PA 2007 0693において記載されるアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書において使用される場合、表現「変異体」は、基本のタンパク質(これは、好適には、ウシ又はヒトα−ラクトアルブミンである)に相同であるが、配列内の1つ又はそれ以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されている点で、それらが誘導される基本配列とは相違する、ポリペプチド又はタンパク質を指す。アミノ酸が大まかに類似した特性を有する異なるアミノ酸で置換される場合、アミノ酸置換は「保存的」と見なされ得る。非保存的置換は、アミノ酸が異なるタイプのアミノ酸で置換される場合である。大まかに述べると、より少ない非保存的置換が、ポリペプチドの生物学的活性を変更することなく可能である。図1Aは、ウシ、ヒト、ウマ、ヤギ、ウシ、ラクダ及びブタα−ラクトアルブミンのタンパク質配列のアラインメントを示し、ここで、同一残基(「*」)並びに保存的置換を有する残基(「:」)及び半保存的置換を有する残基(「.」)がマークされている。
【0062】
従って、本発明の1態様において、α−ラクトアルブミンの機能的相同体は、配列番号1又は配列番号2に対して高い配列同一性を有する配列を含むことが好ましく、ここで、図1Aにおいて「*」でマークされた保存された残基はいずれも置換されていない。この態様においてさらに好ましいのは、図1Aにおいて「:」でマークされた残基が、置換されていないか、又は保存的置換によって、より好ましくは本明細書以下において定義される高いレベルの類似性を有するアミノ酸での置換によって、置換されているのみであることである。
【0063】
従って、1態様において、ウシα−ラクトアルブミンの機能的相同体は、配列番号1に対して高い配列同一性を有する配列を有することが好ましく、ここで、残基E1、L3、E7、V8、L15、Y18、V21、S22、V27、Q39、A40、I41、N44、I59、K62、Q65、I85、M90、N102、S112、D116、K122は、置換されていないか、又は保存的置換のみによって置換されており、より好ましくは本明細書以下において定義される高いレベルの類似性を有するアミノ酸のみによって置換されている。
【0064】
α−ラクトアルブミンの機能的相同体が配列番号1又は配列番号2に対して高い配列同一性を有する配列を有することが、本発明において、なおさらに好ましく、ここで、図1Aにおいて「.」でマークされた残基は、置換されていないか、又は保存的置換によって、例えば、本明細書以下において定義されるより低いレベル又は高いレベルの類似性を有するアミノ酸で、置換されているのみである。従って、ウシα−ラクトアルブミンの機能的相同体は、配列番号1に対して高い配列同一性を有する配列を有することが好ましく、ここで、残基D14、K16、G17、G20、P24、S47、N56、D63、D64、N74、V92、及びA109は、置換されていないか、又は保存的置換によって、例えば、本明細書以下において定義されるより低いレベル又は高いレベルの類似性を有するアミノ酸で、置換されているのみである。
【0065】
α−ラクトアルブミンの機能的相同体が、図1Aにおいてマークされていない残基が任意の他のアミノ酸で置換され得る、配列番号1又は配列番号2に対して高い配列同一性を有する配列を有し得ることも、本発明内に含まれる。従って、ヒトα−ラクトアルブミンの機能的相同体は、配列番号1に対して高い配列同一性を有する配列を有し得、ここで、残基F9、R10、E11、G19、W25、T29、T30、T33、Q43、D46、T48、N66、P67、H68、S70、I89、K98、V99、L118、及びL123は、置換されていないか、又は任意の他のアミノ酸で置換されている。
【0066】
当業者は、1つのアミノ酸が1つ又はそれ以上の共通の化学的及び/又は物理的特徴を有する別のもので置換される、「保存的」アミノ酸置換の作製及び評価方法を知っている。保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能に影響を与える可能性が低い。アミノ酸は、共通の特徴に従って分類され得る。保存的アミノ酸置換は、所定のグループのアミノ酸内の1つのアミノ酸の、同一のグループ内の別のアミノ酸での置換であり、ここで、所定のグループ内のアミノ酸は、類似する又は実質的に類似する特徴を示す。
【0067】
保存的アミノ酸置換は、類似する側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンであり;脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリン及びスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギン及びグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リジン、アルギニン及びヒスチジンであり;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換グループは、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、及びアスパラギン−グルタミンである。
【0068】
本明細書において適用される場合の用語「保存的アミノ酸置換」の意味において、1つのアミノ酸は、本明細書以下に記載のアミノ酸のグループ内の別のもので置換され得る:
【0069】
より低いレベルの類似性:
極性:
i)極性側鎖を有するアミノ酸(Asp、Glu、Lys、Arg、His、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyr、及びCys)
ii)非極性側鎖を有するアミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Pro、及びMet)
親水性又は疎水性:
iii)疎水性アミノ酸(Ala、Cys、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Tyr、Val)
iv)親水性アミノ酸(Arg、Ser、Thr、Asn、Asp、Gln、Glu、His、Lys)
電荷:
v)中性アミノ酸(Ala、Asn、Cys、Gln、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、Val)
vi)塩基性アミノ酸(Arg、His、Lys)
vii)酸性アミノ酸(asp、Glu)
高いレベルの類似性:
viii)酸性アミノ酸及びそれらのアミド(Gln、Asn、Glu、Asp)
ix)脂肪族側鎖を有するアミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile)
x)芳香族側鎖を有するアミノ酸(Phe、Tyr、Trp)
xi)塩基性側鎖を有するアミノ酸(Lys、Arg、His)
xii)ヒドロキシ側鎖を有するアミノ酸(Ser、Thr)
xiii)硫黄含有側鎖を有するアミノ酸(Cys、Met)
【0070】
好ましい保存的アミノ酸置換グループは、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、及びアスパラギン−グルタミンである。
【0071】
従って、本発明に従う変異体又はそのフラグメントは、前記配列又はそのフラグメントの同一の変異体内で、又は、前記配列又はそのフラグメントの異なる変異体間で、少なくとも1つの置換、例えば、互いに独立して導入された複数の置換を含み得る。
【0072】
同一の変異体又はそのフラグメントは、本明細書上記に定義される保存的アミノ酸の1を超えるグループ由来の1を超える保存的アミノ酸置換を含み得ることが、上記の概要から明らかである。
【0073】
20個の標準アミノ酸並びに2個の特別なアミノ酸、セレノシステイン及びピロリシンに加えて、インビボでタンパク質へ組み込まれない莫大な数の「非標準アミノ酸」が存在する。非標準アミノ酸の例としては、硫黄含有タウリン並びに神経伝達物質であるGABA及びドーパミンが挙げられる。他の例は、ランチオニン、2−アミノイソ酪酸、及びデヒドロアラニンである。さらなる非標準アミノは、オルニチン及びシトルリンである。
【0074】
非標準アミノ酸は、通常、標準アミノ酸への修飾によって形成される。例えば、タウリンは、システインの脱炭酸によって形成され得、一方、ドーパミンは、チロシンから合成され、ヒドロキシプロリンは、プロリンの翻訳後修飾によって作製される(コラーゲン中において一般的)。非天然アミノ酸の例は、例えば37C.F.R.セクション1.822(b)(4)に列挙されるものであり、これらの全ては、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0075】
本明細書に記載される標準及び非標準アミノ酸残基は両方とも、「D」又は「L」異性体形態であり得る。
【0076】
本発明に従う機能的均等物は、非標準アミノ酸を含む任意のアミノ酸を含み得ることが考えられる。好ましい態様において、機能的均等物は、標準アミノ酸のみを含む。
【0077】
標準及び/又は非標準アミノ酸は、ペプチド結合又は非ペプチド結合によって連結され得る。用語ペプチドはまた、当該技術分野において公知であるように、化学又は酵素触媒反応によって導入される翻訳後修飾を包含する。このような翻訳後修飾は、必要に応じて、分配の前に導入され得る。本明細書に明記されるアミノ酸は、優先的にL−立体異性体形態にある。アミノ酸アナログが、20個の天然アミノ酸の代わりに使用され得る。フルオロフェニルアラニン、ノルロイシン、アゼチジン−2−カルボン酸、S−アミノエチルシステイン、4−メチルトリプトファンなどを含む、いくつかのこのようなアナログが公知である。
【0078】
好適には、変異体は、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%同一であり、従って、変異体は、好ましくは、ウシα−ラクトアルブミンの所定の配列との少なくとも75%配列同一性、例えば少なくとも80%配列同一性、例えば少なくとも85%配列同一性、例えば少なくとも90%配列同一性、例えば少なくとも91%配列同一性、例えば少なくとも91%配列同一性、例えば少なくとも92%配列同一性、例えば少なくとも93%配列同一性、例えば少なくとも94%配列同一性、例えば少なくとも95%配列同一性、例えば少なくとも96%配列同一性、例えば少なくとも97%配列同一性、例えば少なくとも98%配列同一性、例えば99%配列同一性を有する。
【0079】
配列同一性は、多数の周知のアルゴリズムを使用し、多数の異なるギャップペナルティーを適用して算出され得る。配列同一性は、全長配列番号1又は配列番号2と比べて算出される。代替案において、それは、シグナルペプチドをコードする配列が含まれていない配列番号1又は配列番号2と比べて算出される。理論に拘束されないが、シグナルペプチドは、配列番号1及び配列番号2のアミノ酸1〜24を含むと予想される。これらに限定されないがFASTA、BLAST、又はLALIGNなどの、任意の配列アラインメントツールが、相同体を検索し配列同一性を算出するために使用され得る。さらに、適切な場合、これらに限定されないがPAM、BLOSSUM又はPSSM行列などの、任意の周知の置換行列が、検索アルゴリズムと共に適用され得る。例えば、PSSM(位置特異的スコア行列)が、PSI−BLASTプログラムを介して適用され得る。さらに、配列アラインメントが、ギャップオープニング及びエクステンションについて一連のペナルティーを使用して行われ得る。例えば、BLASTアルゴリズムは、5〜12の範囲のギャップオープニングペナルティー、及び1〜2の範囲のギャップエクステンションペナルティーを用いて使用され得る。
【0080】
本発明の範囲内の機能的相同体は、配列番号1又は配列番号2によって同定されるウシα−ラクトアルブミン又はヒトα−ラクトアルブミンとのいくらかの配列同一性を示すポリペプチドであり、好ましくは、それらは、配列番号1又は配列番号2との高い配列同一性を有し、例えば、機能的相同体は、少なくとも70%配列同一性を共有する配列を有し得、好ましくは、機能的相同体は、配列番号1又は配列番号2との少なくとも75%配列同一性、例えば少なくとも80%配列同一性、例えば少なくとも85%配列同一性、例えば少なくとも90%配列同一性、例えば少なくとも91%配列同一性、例えば少なくとも91%配列同一性、例えば少なくとも92%配列同一性、例えば少なくとも93%配列同一性、例えば少なくとも94%配列同一性、例えば少なくとも95%配列同一性、例えば少なくとも96%配列同一性、例えば少なくとも97%配列同一性、例えば少なくとも98%配列同一性、例えば99%配列同一性を有する。
【0081】
機能的均等物は、さらに、ヒトタンパク質中に通常存在しない、化学的修飾、例えば、ユビキチン化、標識化(例えば、放射性核種、種々の酵素などを用いる)、ペグ化(ポリエチレングリコールを用いての誘導体化)、又はオルニチンなどのアミノ酸(アミノ酸)の挿入(又は化学合成による置換)を含み得る。
【0082】
本明細書に記載のペプチジル化合物に加えて、立体的に類似する化合物が、ペプチド構造の重要な部分を模倣するように作製され得、そのような化合物もまた、本発明のペプチドと同一の様式で使用され得る。これは、当業者に公知のモデリング及び化学的デザイニングの技術によって達成され得る。例えば、エステル化及び他のアルキル化が、テトラペプチド構造を模倣するように、例えば、ジアルギニンペプチド骨格の、アミノ末端を修飾するために使用され得る。全てのこのような立体的に類似する構築物は本発明の範囲内にあることが理解される。
【0083】
N末端アルキル化及びC末端エステル化を有するペプチドもまた、本発明内に包含される。機能的均等物はまた、無関係の化学的部分又は二量体を含む、同一の分子を用いて形成された、グリコシル化及び共有結合性又は集合性複合体を含む。このような機能的均等物は、当該技術分野において公知の手段によって、N及びC末端のいずれか一方又は両方を含む、フラグメント中において見られる基への官能基の連結によって作製される。
【0084】
用語「そのフラグメント」は、所定のアミノ酸配列の任意の部分を指し得る。フラグメントは、一緒に連結された、全長タンパク質内からの1を超える部分を含み得る。好適なフラグメントは、欠失又は付加突然変異体であり得る。少なくとも1つのアミノ酸の付加は、好ましくは2〜250個のアミノ酸、例えば10〜20個のアミノ酸、例えば20〜30個のアミノ酸、例えば40〜50個のアミノ酸の付加であり得る。フラグメントは、タンパク質由来の小さな領域又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0085】
好適なフラグメントは、欠失又は付加突然変異体であり得る。少なくとも1つのアミノ酸の付加又は欠失は、好ましくは2〜250個のアミノ酸、例えば10〜20個のアミノ酸、例えば20〜30個のアミノ酸、例えば40〜50個のアミノ酸の付加又は欠失であり得る。欠失及び/又は付加は、互いに独立して、配列内での及び/又は配列の末端での欠失及び/又は付加であり得る。
【0086】
機能的相同体は、少なくとも70%を共有する、配列番号1又は配列番号2によって同定されるα−ラクトアルブミンの欠失突然変異体であり得、従って、機能的相同体は、好ましくは、少なくとも75%配列同一性、例えば少なくとも80%配列同一性、例えば少なくとも85%配列同一性、例えば少なくとも90%配列同一性、例えば少なくとも91%配列同一性、例えば少なくとも91%配列同一性、例えば少なくとも92%配列同一性、例えば少なくとも93%配列同一性、例えば少なくとも94%配列同一性、例えば少なくとも95%配列同一性、例えば少なくとも96%配列同一性、例えば少なくとも97%配列同一性、例えば少なくとも98%配列同一性、例えば99%配列同一性を有する。
【0087】
欠失突然変異体は、好適には、長さが少なくとも20又は40連続アミノ酸、より好ましくは少なくとも80又は100連続アミノ酸のものを含む。従って、このようなフラグメントは、少なくとも20連続アミノ酸、例えば少なくとも30連続アミノ酸、例えば少なくとも40連続アミノ酸、例えば少なくとも50連続アミノ酸、例えば少なくとも60連続アミノ酸、例えば少なくとも70連続アミノ酸、例えば少なくとも80連続アミノ酸、例えば少なくとも90連続アミノ酸、例えば少なくとも95連続アミノ酸、例えば少なくとも100連続アミノ酸、例えば少なくとも105アミノ酸、例えば少なくとも110連続アミノ酸、例えば少なくとも115連続アミノ酸、例えば少なくとも120連続アミノ酸を含む、配列番号1又は配列番号2によって同定される配列のより短い配列であり得、ここで、該欠失突然変異体は、好ましくは、配列番号1又は配列番号2と少なくとも75%配列同一性、例えば少なくとも80%配列同一性、例えば少なくとも85%配列同一性、例えば少なくとも90%配列同一性、例えば少なくとも91%配列同一性、例えば少なくとも91%配列同一性、例えば少なくとも92%配列同一性、例えば少なくとも93%配列同一性、例えば少なくとも94%配列同一性、例えば少なくとも95%配列同一性、例えば少なくとも96%配列同一性、例えば少なくとも97%配列同一性、例えば少なくとも98%配列同一性、例えば99%配列同一性を共有する。
【0088】
α−ラクトアルブミンの機能的相同体は、多くても500個、より好ましくは多くても400個、なおより好ましくは多くても300個、さらにより好ましくは多くても200個、例えば多くても175個、例えば多くても160個、例えば多くても150個のアミノ酸、例えば多くても142個のアミノ酸を含むことが好ましい。
【0089】
用語「そのフラグメント」は、所定のアミノ酸配列の任意の部分を指し得る。フラグメントは、一緒に連結された、全長タンパク質内からの1を超える部分を含み得る。部分は、好適には、基本の配列由来の少なくとも5個、好ましくは少なくとも10個の連続アミノ酸を含む。それらは、タンパク質由来の小さな領域又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0090】
本発明のある態様において、α−ラクトアルブミンフラグメントは、1つ又はそれ以上のアミノ酸セグメントを含む。セグメントは、以下より選択され得る:アミノ酸5−11、23−34、86−98を含む大きなαヘリックスドメイン、及び短いαヘリックスセグメント;アミノ酸18−20、115−118、又は三本鎖逆平行シート:アミノ酸40−50、及び短い76−82ヘリックスを含むβドメイン、又はカルシウム結合ドメイン76−89、又はこれらのドメイン間の任意のセグメント:アミノ酸1−4、12−17、21−22、35−39、51−76、82−84、99−114若しくは119−123。好ましくは、α−ラクトアルブミンフラグメントは、上述のセグメントを少なくとも2個、より好ましくは記載のセグメントを少なくとも3個、より好ましくは4個又は最も好ましくは5個又は6個全ての上述のセグメントを含む。
【0091】
αドメインとβドメインとの界面を形成する領域は、ヒトa−ラクトアルブミンにおいては、構造中においてアミノ酸35−39及び83−87によって定義される。従って、それらと平行によって(by parallel thereto)、ウシα−ラクトアルブミンの好適なフラグメントは、これらの領域、好ましくは、ネイティブなタンパク質のアミノ酸35−87、例えばネイティブなタンパク質のアミノ酸20−100、例えばネイティブなタンパク質のアミノ酸10−110、例えばネイティブなタンパク質のアミノ酸5−115、例えばアミノ酸1−123由来の全領域を含む。前記分子のこの領域は、3つの塩基性アミノ酸の1つ(R70)がウシα−ラクトアルブミンにおいてS70へ変化されており、従って1つの可能性のある配位性側鎖が排除されている点で、ウシタンパク質とヒトタンパク質とで相違する。
【0092】
欠失及び/又は付加は、互いに独立して、配列内での及び/又は配列の末端での欠失及び/又は付加であり得る。
【0093】
高親和性Ca2+結合部位は、異なる種由来のα−ラクトアルブミンにおいて100%保存され(Acharya K. R., et al., (1991) J Mol Bio3 221,5il-581)、該タンパク質についてのこの機能の重要性を示している。それは、背景セクションにおいて記載したように、5個の異なるアミノ酸及び2個の水分子によって配位結合される。
【0094】
特定の態様において、本発明に従う変異体は、カルシウム結合部位が、カルシウムについての親和性が低下されるように、又はそれがもはや機能的ではないように修飾されているものである。α−ラクトアルブミン中のカルシウム結合部位は、残基K79、D82、D84、D87及びD88によって配位されている。従って、例えば酸性残基の1つ又はそれ以上を除去することによる、これらの残基の修飾は、カルシウムについての前記部位の親和性を低下させるか又は機能を完全に排除し得、このタイプの突然変異体は、本発明の1態様である。特定の態様において、前記タンパク質配列内のアミノ酸87位のアスパラギン酸残基は、非酸性残基、特に非極性又は非荷電極性側鎖へ突然変異される。突然変異体タンパク質における構造的歪みを最小化するために、D87はまたアスパラギン(N)によっても置換され得る。従って、本発明の複合体における使用についての変異体は、a−ラクトアルブミンのD87A及びD87N変異体、又はこの突然変異を含むフラグメントであり得る。
【0095】
LACは、カルシウムが存在する場合も存在しない場合も活性であるようである。これについて2つの説明が妥当と思われる。第1の最も可能性の高いシナリオにおいて、LACは、αヘリックスドメインの妨害をほぼ伴わずに、展開及び脂肪酸の結合(下記参照)によって形成される。次いで、Ca2+結合部位は、脂肪酸が存在しない場合と同様のコンフォメーションを保持し得、Ca2+がそこへ結合され得る。第2の可能性は、Ca2+部位が破壊され、観察されるCa2+結合は、LACにおける新たなCa2+部位の形成によって説明されるということである。脂肪酸の頭部基は、アミノ酸残基と共に潜在的にカルシウムに配位し得る。
【0096】
従って、Ca2+結合部位は、アポトーシス関連コンフォメーションへのa−ラクトアルブミンの変換に関与しておらず、LACへのCa2+結合に関連する構造変化は、生物学的機能を妨げないようである。従って、代替の態様において、Ca2+結合部位は、上述のアミノ酸セグメント76−89を含めることによって保存される。
【0097】
α−ラクトアルブミン複合体
本発明に従うα−ラクトアルブミン組成物は、配列番号1又は配列番号2のウシ若しくはヒトα−ラクトアルブミン又はその機能的均等物と脂質又は脂肪酸とを含むα−ラクトアルブミン複合体(LAC)を含む。
【0098】
本発明の好ましい態様において、α−ラクトアルブミンは、脂肪酸と複合体化されている。脂肪酸は、しばしば長い非分枝の脂肪族鎖を有するカルボン酸である。脂肪酸の生合成はアセチル−CoAを必要とし、ここで、酢酸単位は2つのC原子を含有するので、大抵の天然脂肪酸は、4〜80C原子の範囲の偶数のC原子を有する。脂肪酸の脂肪族鎖は、飽和又は不飽和のいずれかであり得る。飽和脂肪酸は、水素で飽和されており、従って二重結合を有さない。不飽和脂肪酸は、1個の二重結合を有する一価不飽和(又はMUFA)又は2個若しくはそれ以上の二重結合を有する多価不飽和(PUFA)のいずれかであり得る。本発明の脂肪酸は、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸であり得る。
【0099】
本発明の好ましい態様において、脂肪酸は、C4〜C30の群、例えばC6〜C28、例えばC8〜C26、例えばC10〜C24、例えばC12〜C22、例えばC14〜C20、例えばC16〜C20、例えばC16、C17、C18及びC20の群、例えばC16、C18及びC20の群より選択される。
【0100】
脂肪酸は、しばしば、鎖のC原子の数、並びに二重結合の数、位置及びコンフォメーションを使用して記載される。例えば、ステアリン酸は、18個のC原子を有し、そして二重結合を有さない鎖を有し、C18:0と記載され得、オレイン酸は、18個のC原子及び1個の二重結合の鎖を有し、C18:1と記載され得、リノール酸は、18個のC原子及び2個の二重結合の鎖を有し、C18:2と記載され得るなどである。
【0101】
二重結合は、カルボキシル末端から数えて、第x番目の炭素−炭素結合上に配置される。ラテン語の接頭語シス(同じ側)又はトランス(反対側)は、二重結合に関する水素原子の方向を記載することによって二重結合のコンフォメーションを記載する。シスコンフォメーションの二重結合が好ましい。二重結合の位置は、しばしば、二重結合の数を示す整数の後に、最後の数として記載される。従って、例えば、炭素9と10の間に1個の二重結合を有する18炭素鎖を有するオレイン酸は、C18:1:9シスと記載され得、それぞれ、炭素9と10、12と13、15と16の間に3個の二重結合を有する18炭素鎖を有するα−リノレン酸は、C18:3:9,12,15と記載され得る。シス又はトランスは、二重結合の位置の後に記載され得る。1を超える二重結合が存在し、かつ、それらが全て同一のコンフォメーションである場合、用語シス又はトランスは、全ての二重結合の位置の記載の後に記載され得、従って全ての二重結合のコンフォメーションに関する。従って、例えば、それぞれ炭素9と10、12と13の間の両方ともシス二重結合である2個の二重結合を有する18炭素鎖を有するリノール酸は、C18:2:9,12シスと記載され得る。
【0102】
本発明の好ましい態様において、脂肪酸は、0〜6個の範囲の二重結合、例えば1〜5個の範囲の二重結合を有し、例えば、二重結合の数は、1、2、3又は4個の二重結合の群より選択される。本発明のより好ましい態様において、脂肪酸は、1又は3個の二重結合を有する。本発明の最も好ましい態様において、脂肪酸は、1個の二重結合を有する。
【0103】
飽和脂肪酸の例は以下である:
酪酸(ブタン酸):CH3(CH2)2COOH、又はC4:0
カプロン酸(ヘキサン酸):CH3(CH2)4COOH、又はC6:0
カプリル酸(オクタン酸):CH3(CH2)6COOH、又はC8:0
カプリン酸(デカン酸):CH3(CH2)8COOH、又はC10:0
ラウリン酸(ドデカン酸):CH3(CH2)10COOH、又はC12:0
ミリスチン酸(テトラデカン酸):CH3(CH2)12COOH、又はC14:0
パルミチン酸(ヘキサデカン酸):CH3(CH2)14COOH、又はC16:0
ステアリン酸(オクタデカン酸):CH3(CH2)16COOH、又はC18:0
アラキジン酸(エイコサン酸):CH3(CH2)18COOH、又はC20:0
ベヘン酸(ドコサン酸):CH3(CH2)20COOH、又はC22:0
【0104】
不飽和脂肪酸が、本発明について好ましい。
【0105】
本発明において使用され得る不飽和脂肪酸の例としては、例えば以下が挙げられる:
オレイン酸:CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH、又はC18:1:9シス
リノール酸:CH3(CH2)4CH=CHCH2CH=CH(CH2)7COOH、又はC18:2:9,12シス
α−リノレン酸:
CH3CH2CH=CHCH2CH=CHCH2CH=CH(CH2)7COOH、又はC18:3:9,12,15シス
アラキドン酸:
CH3(CH2)4CH=CHCH2CH=CHCH2CH=CHCH2CH=CH(CH2)3COOH、又はC20:4
エイコサペンタエン酸、又はC20:5
ドコサヘキサエン酸、又はC22:6
エルカ酸:CH3(CH2)7CH=CH(CH2)11COOH、又はC22:1
バクセン酸:C18:1:11シス
パルミトレイン酸:16:1:9シス
ペトロセリン酸:C18:1:6シス
ステアリドン酸:C18:4:6,9,12,15シス
ヘプタデセン酸 17:1:10シス
ステアリドン酸 18:4:6,9,12,15シス
エイコセン酸 20:1:11シス
【0106】
ある態様において、一価飽和酸は、α−ラクトアルブミンと複合体化されている。より好ましいのは、C16:1:6シス及びトランス、C16:1:9シス及びトランス、C16:1:11シス及びトランス、C18:1:6シス又はトランス、C18:1:9シス及びトランス、C18:1:11シス又はトランス、C18:1:13シス又はトランス、C20:1:9シス及びトランス、C20:1:11シス及びトランス、C20:1:13シス及びトランスの群より選択される一価飽和酸である。
【0107】
好ましい態様において、α−ラクトアルブミンと複合体化された一価飽和酸は、C16:1:6シス、C16:1:9シス、C16:1:11シス、C18:1:6シス、C18:1:9シス、C18:1:11シス、C18:1:13シス、C20:1:9シス、C20:1:11シス、C20:1:13シスの群より選択される脂肪酸のようにシスコンフォメーションにある。
【0108】
別の好ましい態様において、α−ラクトアルブミンと複合体化された脂肪酸は、好ましくはC18:1:9シス、C18:1:11シス、C18:1:6シス、C16:1:9シス、C18:3:6,9,12シス、C18:3:9,12,15シス、C18:2:9,12シスからなる群より選択される、シスコンフォメーションの不飽和脂肪酸である。
【0109】
別の好ましい態様において、α−ラクトアルブミンと複合体化された脂肪酸は、1〜5個の範囲のシス二重結合を含むC16〜C20脂肪酸からなる群より選択される。従って、脂肪酸は、例えば、バクセン酸C18:1:11シス、リノール酸C18:2:9,12シス、αリノレン酸C18:3:9,12,15、パルミトレイン酸C16:1:9シス、ヘプタデセン酸C17:1:10シス、γリノレン酸C18:3:6,9,12シス、ステアリドン酸C18:4:6,9,12,15シス、エイコセン酸C20:1:11シス及びエイコサペンタエン酸C20:5:5,8,11,14,17シスからなる群より、例えば、バクセン酸C18:1:11シス、リノール酸C18:2:9,12シス、αリノレン酸C18:3:9,12,15からなる群より選択され得る。
【0110】
本発明の非常に好ましい態様において、α−ラクトアルブミンと複合体化された脂肪酸は、不飽和C16又はC18脂肪酸、好ましくはC18脂肪酸であり、ここで、全ての二重結合はシス二重結合である。この態様において、脂肪酸は、好ましくは、1個、例えば2個、例えば3個、例えば4個の二重結合を含み得、ここで、全ての二重結合はシス二重結合である。従って、脂肪酸は、例えば、C18:1:9シス、C18:1:11シス、C18:1:6シス、C16:1:9シス、C18:3:6,9,12シス、C18:3:9,12,15シス、C18:2:9,12シス及びC18:4:6,9,12,15シスからなる群より選択され得、好ましくはC18:1:9シス、C18:1:11シス、C18:1:6シス、C18:3:6,9,12シス、C18:3:9,12,15シス、C18:2:9,12シス及びC18:4:6,9,12,15シスからなる群より選択され得、例えばC18:1:9シス、C18:1:11シス、C18:3:6,9,12シス、C18:3:9,12,15シス及びC18:2:9,12シスからなる群より選択され得る。
【0111】
最も好ましい脂肪酸は、本発明によれば、C18:1:9シス及びC18:1:11シスである。C18:1:9シスは、本発明の複合体について非常に好ましい。
【0112】
代替の態様において、多価不飽和酸(polysatued acid)がα−ラクトアルブミンと複合体化されている。好ましくは、多価不飽和酸(polysatuated acid)は、C18:2:9,12シス、C18:3:9,12,15シス、C18:3:6,9,12シス、及びC20:4:5,8,11,15シスの群より選択される。
【0113】
1態様において、脂肪酸は人工脂肪酸である。
【0114】
α−ラクトアルブミン中の脂肪酸又は脂質結合部位は、αヘリックスドメインとβシートドメインとの間の溝中に配置され得、これは、アポタンパク質において露出されるようになる。本出願人は、オレイン酸などの補因子が、αドメインとβドメインとの間の界面において結合し、結合された補因子酸が、αドメインがネイティブ様コンフォメーションを維持することを可能にさせながら、該分子のこの領域をロックすると考える。
【0115】
前記分子のこの領域は、3つの塩基性アミノ酸の1つ(R70)がウシα−ラクトアルブミンにおいてS70へ変化されており、従って1つの可能性のある配位性側鎖が排除されている点で、ウシタンパク質とヒトタンパク質とで相違する。
【0116】
活性複合体は、好ましくは、変更されたタンパク質折り畳みを好み、かつ、脂肪酸又は脂質補因子は利用可能である、ローカルな環境において作製される。
【0117】
α−ラクトアルブミン、好ましくはLAC、複合体組成物の製造
α−ラクトアルブミン組成物は、本発明によれば、任意の好適な方法によって製造され得る。α−ラクトアルブミンの天然供給源は、好ましくはウマ、ヤギ、ウシ及びブタの群、最も好ましくはウシより選択される、種々の哺乳動物種由来の乳である。又は、α−ラクトアルブミンは、組換えで作製され得(より詳しくは本明細書下記のセクション「組換え作製」を参照のこと)、又はいくつかの会社から商品として得ることができる。
【0118】
精製
タンパク質の精製は、一般的に、コンタミしている核酸、ファージ及び/又はウイルス、他のタンパク質及び/又は他の生体高分子の除去又は分離の1つ又はそれ以上の工程を含む。LAを含む組成物、例えば乳又は宿主細胞の抽出物又は培養培地(本明細書以下のセクション「組換え作製」を参照のこと)からLAを得ることは、1つ又はそれ以上のタンパク質単離工程を含み得る。任意の好適なタンパク質単離工程が本発明で使用され得る。当業者は、一般的に、そのようなものが必要であれば、LAについて有用なタンパク質単離工程を容易に同定することができる。
【0119】
本発明で有用なタンパク質単離工程は、例えば、クロマトグラフ法、例えば、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及び/又はアフィニティークロマトグラフィー;濾過法、例えば、ゲル濾過及び限外濾過;沈殿、例えば、硫安沈殿及び/又は勾配分離、例えば、ショ糖勾配分離を含む、タンパク質精製のために一般的に使用される方法であり得る。LAの精製は、任意の組み合わせで上述の方法の1つ又はそれ以上を含み得る。
【0120】
上述の方法は当業者に周知であり、例えば、Amersham Biosciencesによって作成されGEから入手可能である、表題“Antibody Purification”、“The Recombinant Protein Handbook”、“Protein Purification”、“Ion Exchange Chromatography”、“Affinity Chromatography”、“Hydrophobic Interaction Chromatography”、“Gel Filtration”、“Reversed Phase Chromatography”、“Expanded Bed Adsorption”及び“Chromatofocusing”を含む“Protein Separation Handbook Collection”に記載されるように行われ得る。
【0121】
特に、LAの精製は、例えば、1つ又はそれ以上の遠心分離工程を含み得る。前記遠心分離は、例えば、脱脂目的のため及び/又は細胞/細胞残屑などを除去するため及び/又は沈殿物から上澄みを分離するために使用され得る。
【0122】
特に、LAの精製は、例えば、1つ又はそれ以上の沈殿工程、例えば、硫酸アンモニウムを、例えば10〜75%、好ましくは30〜60%の範囲、例えば40〜45%の範囲の濃度で使用する沈殿を含み得る。沈殿が40〜45%の範囲の硫酸アンモニウム濃度を使用して行われる場合、LAは、一般的に、上澄み中に存在する。
【0123】
LAの精製は、1つ又はそれ以上の濾過工程、例えば、濾紙による濾過及び/又は0.1μm〜100μmの範囲、例えば0.5〜50μmの範囲、例えば0.5〜20μmの範囲、例えば0.5〜1μmの範囲の細孔径を有する別のフィルターを使用する濾過を含み得る。
【0124】
LAの精製は、1つ又はそれ以上のクロマトグラフィー工程、例えば、任意の上述のクロマトグラフ法を含み得る。1つの好ましい態様において、本方法は、疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む。
【0125】
組換え作製
LAの機能的均等物は、好ましくは、組換えで作製される。野生型LAもまた、1つの好ましい態様において、組換えで作製され得る。有用な組換え作製法としては、当該技術分野において公知の従来の方法、例えば、組換えタンパク質の作製に好適な大腸菌(E. coli)、S.セレビシエ(S. cerevisiae)又はS.ポンベ(S. pombe)又は昆虫又は哺乳動物細胞などの好適な宿主細胞における異種LA又はその機能的相同体の発現による方法が挙げられる(下記を参照のこと)。当業者は、一般的に、一般的には組換えタンパク質、具体的にはLAの作製のための有用な組換え技術を容易に同定することができる。
【0126】
1態様において、LAは、トランスジーン植物又は動物において産生される。この文脈において、トランスジェニック植物又は動物は、ヒト若しくはウシLA又はこの機能的相同体をコードする核酸を含有し発現するように遺伝子操作された植物又は動物を意味する。
【0127】
本発明の好ましい態様において、LA又はその機能的相同体は、宿主細胞によって組換えで作製される。
【0128】
従って、本発明の1局面において、LAは、宿主細胞において発現を指示することができる第2核酸と作動可能に結合されたα−ラクトアルブミン又はその機能的相同体をコードする第1核酸配列を含む宿主細胞によって産生される。従って、第2核酸配列は、前記細胞において問題のタンパク質の発現を指示するプロモーターを含み得るか、又はこれからなってよい。当業者は、所定の宿主細胞における使用について有用な第2核酸配列を容易に同定することができる。
【0129】
組換えLA又はその機能的相同体の製造方法は、一般的に、以下の工程を含む:
− 宿主細胞を提供する工程
− 宿主細胞において問題の前記タンパク質の発現を指示することができる第2核酸へ作動可能に連結されたLA又はその機能的相同体をコードする第1核酸を含む遺伝子発現構築物を作製する工程
− 前記構築物で前記宿主細胞を形質転換する工程
− 前記宿主細胞を培養し、それによってLA又はその機能的相同体を発現させる工程。
【0130】
従って、LAを含む組成物は、前記宿主細胞の抽出物、又は前記宿主細胞の抽出物から及び/又は培養培地から精製された組成物であり得る。
【0131】
このようにして作製された組換えLAは、任意の従来の方法によって、例えば、本明細書において上述した任意のタンパク質精製方法によって単離され得る。当業者は、問題のタンパク質を精製するための好適なタンパク質単離工程を同定することができる。
【0132】
本発明の1態様において、組換えで作製されたLA又はその機能的相同体は、宿主細胞によって分泌される。
【0133】
LA又はその機能的相同体が分泌される場合、問題の組換えタンパク質の製造方法は、以下の工程を含み得る:
− 宿主細胞を提供する工程
− 前記宿主細胞においてLA又はその機能的相同体の発現を指示することができる第2核酸へ作動可能に連結されたLA又はその機能的相同体をコードする第1核酸を含む遺伝子発現構築物を作製する工程
− 前記構築物で前記宿主細胞を形質転換する工程
− 培養培地において前記宿主細胞を培養し、それによって、LA又はその機能的相同体を発現させ、該培養培地中へ該タンパク質を分泌させる工程
− それによってLA又はその機能的相同体を含む培養培地を得る工程。
【0134】
従って、LA又はその機能的相同体を含む組成物は、本発明のこの態様において、前記培養培地又は前記培養培地から作製された組成物であり得る。
【0135】
本発明の別の態様において、前記組成物は、動物、その部分若しくは細胞から作製された抽出物、又はこのような抽出物の単離されたフラクションである。
【0136】
本発明の好ましい態様において、LAは、宿主細胞においてインビトロで組換えによって作製され、細胞溶解物、細胞抽出物から、又は組織培養上澄みから単離される。より好ましい態様において、LAは、それらが問題のタンパク質を発現するように修飾されている宿主細胞によって産生される。本発明のなおより好ましい態様において、前記宿主細胞は、LAを産生し分泌するように形質転換される。
【0137】
従って、好ましい態様において、LA作製は、好ましくは組換え作製であり、ここで、LA産生は以下によって得られる:
− 宿主細胞において発現を指示することができる第2核酸へ作動可能に連結された、ヒト若しくはウシα−ラクトアルブミンペプチド又はその機能的相同体をコードする第1核酸を含む遺伝子発現構築物を作製すること
− 前記構築物で宿主細胞培養物を形質転換すること
− 培養培地において前記宿主細胞培養物を培養し、それによって、前記ポリペプチドを発現させ該培養培地中へ分泌させること
− 種々のα−ラクトアルブミン分子及び核酸を含む組成物を得ること。
【0138】
1態様において、LA作製は、好ましくは組換え作製であり、ここで、LA作製は以下によって得られる:
− 宿主細胞において発現を指示することができる第2核酸へ作動可能に連結された、ヒト若しくはウシα−ラクトアルブミンペプチド又はその機能的相同体をコードする第1核酸を含む遺伝子発現構築物を作製すること、
− 前記構築物で宿主細胞培養物を形質転換すること、
− 前記宿主細胞培養物をインビトロで又はトランスジェニック植物又は動物の形態で培養し、それによってLAを発現させること、
− 複数のLA分子及び核酸を含む組成物を得ること。
【0139】
本発明に従って、α−ラクトアルブミンをコードする核酸は、ヒト又はウシα−ラクトアルブミン遺伝子から、又は本明細書上記に定義される他の動物種のα−ラクトアルブミン遺伝子から誘導され得る。
【0140】
好ましい態様において、遺伝子発現構築物は、哺乳動物細胞株又はトランスジェニック植物若しくは動物における発現に好適である。1態様において、宿主細胞培養物は、トランスジーン動物中において培養される。この文脈において、トランスジェニック植物又は動物は、本明細書上記に定義されるヒト若しくはウシα−ラクトアルブミン又はその機能的相同体をコードする核酸を含有し発現するように遺伝子操作された植物又は動物を意味する。
【0141】
好ましい態様において、本発明の遺伝子発現構築物は、ウイルス系ベクター、例えばDNAウイルス系ベクター、RNAウイルス系ベクター、又はキメラウイルス系ベクターを含む。DNAウイルスの例は、サイトメガロウイルス、単純ヘルペス(Herpex Simplex)、エプスタイン・バーウイルス、シミアンウイルス40、ウシパピローマウイルス、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウィルス、及びバキュロウィルスである。しかし、遺伝子発現構築物は、例えば、プラスミド系ベクターを含むだけであり得る。
【0142】
1局面において、本発明は、この機能的誘導体を含むヒト又はウシα−ラクトアルブミン遺伝子由来のイントロン配列を1つ又はそれ以上含むことを特徴とする、ヒト若しくはウシα−ラクトアルブミン又はその機能的相同体をコードする発現構築物を提供する。さらに、それは、ウイルス遺伝子又は哺乳動物及び昆虫遺伝子を含む真核生物遺伝子由来のプロモーター領域を含有し得る。
【0143】
プロモーター領域は、好ましくは、ネイティブなヒト又はウシα−ラクトアルブミンプロモーターとは異なるように選択され、好ましくはヒト又はウシα−ラクトアルブミンの収率を最適化するために、プロモーター領域は、問題のベクター及び宿主細胞で最適に機能するように選択される。
【0144】
好ましい態様において、プロモーター領域は、ラウス肉腫ウイルスの長い末端反復プロモーター、及びサイトメガロウイルス前初期プロモーター、及び延長因子1αプロモーターを含む群より選択される。
【0145】
別の態様において、プロモーター領域は、微生物、例えば他のウイルス、酵母及び細菌の遺伝子から誘導される。
【0146】
組換えLA又はその機能的相同体のより高い収率を得るために、プロモーター領域は、エンハンサーエレメント、例えば、マウス血管内皮成長因子遺伝子の5’末端非翻訳領域のQBI SP163エレメントを含み得る。
【0147】
本発明に従う組換えLAの1つの製造方法は、宿主細胞培養物が、真核生物のもの、例えば、哺乳動物細胞培養物又は酵母細胞培養物であり得ることを特徴とする。
【0148】
有用な哺乳動物細胞は、例えば、ヒト胎児腎臓細胞(HEK細胞)、例えば、番号CRL−1573及びCRL−10852でAmerican Type Culture Collectionに寄託された細胞株、トリ胚線維芽細胞、ハムスター卵巣細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、ヒト子宮頸癌細胞、ヒトメラノーマ細胞、ヒト腎臓細胞、ヒト臍血管内皮細胞、ヒト脳内皮細胞、ヒト口腔腫瘍細胞、サル腎臓細胞、マウス線維芽細胞、マウス腎臓細胞、マウス結合組織細胞、マウスオリゴ樹状(oligodendritic)細胞、マウスマクロファージ、マウス線維芽細胞、マウス神経芽細胞腫細胞、マウスプレB細胞、マウスBリンパ腫細胞、マウス形質細胞腫細胞、マウス奇形癌細胞、ラット星状細胞腫細胞、ラット乳腺上皮細胞、COS、CHO、BHK、293、VERO、HeLa、MDCK、WI38、及びNIH 3T3細胞であり得る。
【0149】
しかし、宿主細胞は、原核生物細胞又は酵母細胞のいずれかであることが好ましい。原核生物細胞は、例えば、大腸菌であり得る。酵母細胞は、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia)又はハンセヌラ(Hansenula)であり得る。
【0150】
組換えで作製されたα−ラクトアルブミンが本発明で使用される場合、組換えで作製されたα−ラクトアルブミンは、天然のα−ラクトアルブミンと同様のサイズ分布プロフィールを有することが好ましい。
【0151】
上述の方法は当業者に周知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, 2001, John Wiley and Sons, Inc., Frederick M. Ausubel et al.編に記載されるように行われ得る。
【0152】
組換えで作製されたLAは、例えば、本明細書上記のセクション“α−ラクトアルブミンの精製”に記載されるように精製され得、組換えで作製されたLAは、例えば本明細書以下に記載されるように、LACを作製するために使用され得る。
【0153】
α−ラクトアルブミン複合体の製造方法
本発明に従うLACは、α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との活性複合体である。当業者に公知の機能アッセイは、脂肪酸又は脂質と複合体化したα−ラクトアルブミンの機能的活性を確認するために使用され得る。当業者に公知のα−ラクトアルブミン機能を評価するための機能アッセイとしては、本明細書上記並びに実施例6及び7に記載のアッセイ、例えば、殺細胞アッセイ又はヒストンアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
牛乳から出発する、α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC、組成物の好ましい製造方法は、遠心分離、沈殿、濾過及び疎水性相互作用クロマトグラフィーの工程を含み得る。乳からのα−ラクトアルブミンの好ましい製造方法を、実施例1に記載する。α−ラクトアルブミンの精製に続いて、α−ラクトアルブミンはα−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACへ変換される。この変換は、α−ラクトアルブミンからのCa2+イオンの放出を含む一連の工程によって行われ得る。次いで、α−ラクトアルブミンは、例えばイオン交換マトリックス上の、脂質補因子に結合される。第3に、活性複合体は、例えば、高塩濃度を使用する溶離によって、単離され得る(実施例1を参照のこと)。
【0155】
カルシウムの放出
カルシウムの放出は、当業者に公知の任意の好適な方法によって得られ得る。
【0156】
1態様において、カルシウムの放出は、LAをカルシウムキレート剤と接触させることによって達成され得る。カルシウムキレート剤は、1,2−ビス(2−アミノフェノキシ)−エタン−N,N,N’,N’−四酢酸(BAPTA)又はエチレングリコール−ビス(アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むがこれらに限定されないカルシウムキレート剤の群より選択され得る。本発明の非常に好ましい態様において、カルシウムキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0157】
1つの好ましい態様において、カルシウムキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸である。
【0158】
本発明の特定の態様において、カルシウムの放出は、α−ラクトアルブミンの機能的相同体を使用することによって得られ、ここで、カルシウム結合部位が、α−ラクトアルブミンの機能的相同体がカルシウムに結合する能力を低下させる様式で修飾されている。特に、カルシウム結合部位のアミノ酸(K79、D82、D84、D87及びD88)は、カルシウムについての親和性が低下されるように、又はそれがもはや機能的ではなくなるように、修飾され得る。この特定の態様において、LAからのカルシウムの放出を含む工程は、もはや用いられず、LACへのLAの変換は、アニオン交換媒体への同時の又は後の曝露を伴う、LAへの脂肪酸又は脂質の結合から構成される。
【0159】
α−ラクトアルブミン組成物は、ポリアクリルゲル電気泳動(PAGE)、免疫ブロット法(ウエスタンブロット法)及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、MALDI−MS、又はα−ラクトアルブミン組成物の内容物が分析され得る任意の他の方法を使用して、さらに分析され得る。ポリアクリルゲル電気泳動(PAGE)、免疫ブロット法(ウエスタンブロット法)及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用するα−ラクトアルブミン組成物の分析を、図3及び4に示す。
【0160】
続いて、精製されたα−ラクトアルブミン複合体は、高濃度のα−ラクトアルブミン複合体の安定な溶液を得るために、濾過、濃縮及び緩衝剤交換され得る。
【0161】
好ましい態様において、組成物は、0.01〜90%の食塩水組成物、例えば0.1〜80%NaCl、例えば0.2〜70%NaCl、例えば0.3〜60%NaCl、例えば0.4〜50%NaCl、例えば0.5〜40%NaCl、例えば0.6〜30%NaCl、例えば0.7〜20%NaCl、例えば0.8〜10%NaCl、例えば0.85〜5%NaCl、例えば約0.9%NaClである。好ましい態様において、組成物は0.9%NaCl溶液である。
【0162】
本発明に従うα−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC、組成物は、好ましくは、1mg/mlを超える、例えば2mg/mlを超える、好ましくは5mg/mlを超える、例えば6mg/ml又は7mg/mlを超える、例えば8mg/mlを超える、より好ましくは約9mg/mlの濃度を有する。別の態様において、本発明に従うα−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC、組成物は、好ましくは、約7mg/mlの濃度を有する。
【0163】
本出願人は、理論によって拘束されないが、α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC、組成物中の単量体/多量体α−ラクトアルブミンの比率は、変換手順に供される単量体/多量体α−ラクトアルブミンの比率によって制御されることを見出した。従って、α−ラクトアルブミンの最初の精製手順から得られる単量体/多量体α−ラクトアルブミンの比率が重要である。実施例1において、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)のアウトプットは、図3Aにおいて見られるように、主に単量体であり、単量体α−ラクトアルブミン複合体組成物へ至り(図3B)、一方、混合された単量体/多量体α−ラクトアルブミン組成物を与える精製手順は、混合された単量体/多量体α−ラクトアルブミン複合体組成物を生じさせる(データを示さず)。実施例1において適用される方法において、α−ラクトアルブミンは、6mg/mlゲル(90mg/cm2)のロードでのHICに続いて得られ、一方、混合された単量体/多量体α−ラクトアルブミン組成物は、2mg/mlゲル(32mg/cm2)のロードでのHICに続いて得られた。単量体α−ラクトアルブミン複合体の製造は、高濃度の出発生成物によって好まれ得、それによって、中間のHIC精製されるα−ラクトアルブミンは、単量体形態のα−ラクトアルブミン複合体を生じさせる変換に好適な単量体形態で得られる。
【0164】
従って、本発明のある局面は、多量体又はオリゴマーLACの含有量と比較して、95%(質量%)を超える単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACを含む本発明に従う組成物の製造方法に関する。
【0165】
ある態様は、α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との単量体複合体である単量体LACを含む組成物の製造方法であって、該α−ラクトアルブミンが配列番号1若しくは配列番号2のウシ若しくはヒトα−ラクトアルブミン又はその機能的均等物であり、該組成物が単量体α−ラクトアルブミンを少なくとも50質量%含み、以下の工程:
b.単量体α−ラクトアルブミンを少なくとも95質量%含むα−ラクトアルブミン組成物を得る工程、
c.以下によって該α−ラクトアルブミンをLACへ変換する工程
i.該α−ラクトアルブミンからのカルシウムの放出、及び
ii.該α−ラクトアルブミンへの脂肪酸又は脂質の結合、並びに
d.LACを精製する工程
を含む方法に関する。
【0166】
工程ci及びciiは、任意の順序で連続して、又は同時に、行われ得る。
【0167】
単量体α−ラクトアルブミンを少なくとも95質量%含むα−ラクトアルブミン組成物は、好ましくは、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって得られ得、ここで、カラムに2mg/ml超、好ましくは4mg/ml超、例えば少なくとも6mg/mlがロードされる。ロードは、代わりにmg/cm2で測定され得、それによって、好ましいロードは、40mg/cm2超、例えば50mg/cm2超又は好ましくは60mg/cm2超である。なおさらに好ましいのは、70mg/cm2超又は80mg/cm2超のロードである。
【0168】
ある態様において、α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACの製造のために本発明で使用される方法は、例えばデンマーク特許出願PA 2007 00693の実施例3及び4に記載されるような、クロマトグラフィーによるα−ラクトアルブミン複合体へのα−ラクトアルブミンの変換を含む。これらの態様において、より高いロードのα−ラクトアルブミン及び高い収率のα−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACが達成され得る。
【0169】
従って、LACの作製のために、変換用のカラムに、20mgを超えるα−ラクトアルブミン/cm2イオン交換媒体、例えば少なくとも30mg/cm2、例えば40mg/cm2を超える、例えば少なくとも50mg/cm2、例えば60mg/cm2を超える、例えば少なくとも70mg/cm2、例えば80mg/cm2を超える、例えば少なくとも90mgのα−ラクトアルブミン/cm2イオン交換媒体がロードされ得る。本発明のある態様において、上述のロードでのラクトアルブミン複合体の収率は、少なくとも50%、例えば少なくとも55%、例えば60%超、例えば少なくとも65%、例えば70%超、例えば少なくとも75%、例えば80%超である。従って、1つの好ましい態様において、ロードが30mg α−ラクトアルブミン/cm2イオン交換媒体である場合、収率は、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも75、例えば少なくとも80%である。ロードが42mg α−ラクトアルブミン/cm2イオン交換媒体である場合、収率は、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも75、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%であることも好ましい。別の態様において、ロードが90mg α−ラクトアルブミン/cm2イオン交換媒体である場合、収率は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、例えば少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、例えば少なくとも75、例えば少なくとも80%であることが好ましい。
【0170】
さらに好ましいのは、組成物が、もしあれば、ほんの僅かしかコンタミしているタンパク質などの生体高分子を含まないことである。従って、組成物のタンパク質の少なくとも50質量%、例えば少なくとも60質量%、例えば少なくとも70質量%、例えば少なくとも80質量%、例えば少なくとも90質量%がLACであることが好ましい。
【0171】
細胞傷害性
背景セクションにおいて記載したように、多量体α−ラクトアルブミン(MAL)又はHAMLETは、細菌及びウイルス感染に対するその効果に加えて、癌細胞及び未熟細胞に対して選択的細胞傷害活性を有することが実証された。活性複合体の形成は、補因子オレイン酸に依存し、環境からのca2+の減少によって刺激されることが示された。
【0172】
本出願人は、ここで、癌細胞に対して同様の細胞傷害活性を有する単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACの製造を記載する。単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC組成物の細胞傷害性は、当該技術分野において周知である、任意の好適な細胞傷害性アッセイを使用して評価され得る。このようなアッセイのある例、即ち、ViaLightアッセイを実施例2に記載する。手順の概観を図5に概説する。
【0173】
所定の細胞集団の50%を殺すことができるα−ラクトアルブミンの用量は、測定されるルミネセンスデータに基づいて算出される。α−ラクトアルブミン組成物の効力は、LD50用量によって反映され、ここで、低いLD50用量が、高い効力を有する組成物、即ち、癌細胞を殺すことにおいて非常に有効な組成物についての特徴である。この状況において、癌細胞株L1210が使用されるが、いくつかの異なる細胞株が前記目的について好適であることは明らかである。このような分析からの結果を、図6及び7に並びに実施例2、表1において表形式で表す。
【0174】
ある態様において、α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC組成物のLD50として測定される細胞傷害活性は、15μg未満/70μl中100.000細胞である。好ましい態様において、LD50は、10μg未満/70μl中100.000細胞である。本発明に従うα−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC組成物は、より好ましくは、5μg未満/100.000細胞のLD50として測定される細胞傷害活性を有する。最も好ましいのは、LD50として測定される細胞傷害活性が1〜5μg/70μl中100.000細胞である組成物である。
【0175】
LD50は、所定の容積中の細胞集団の50%を殺すために必要とされるα−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC組成物の量などの、化合物の濃度として算出され得る。実施例2表1に示される結果は、本発明に従う組成物は、好ましくは、70μl中100,000細胞の細胞集団について測定した場合に0.1mg/ml未満のLD50濃度、例えば、70μl中100,000細胞の細胞集団について測定した場合に0.9mg/ml未満のLD50を有することを示している。特に好ましい態様において、70μl中100,000細胞の細胞集団について測定した場合に0.08未満のLD50濃度、より好ましくは0.06未満、最も好ましくは70μl中100,000細胞の細胞集団について測定した場合に0.04mg/ml未満である。
【0176】
薬学的製剤
本発明の組成物を含有する薬学的組成物は、従来の技術によって、例えば、Remington:
The Science and Practice of Pharmacy 1995, E. W. Martin編, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pa.に記載されるように作製され得る。組成物は、従来の形態、例えば、カプセル剤、錠剤、エアロゾル、液剤、懸濁剤又は局所適用であり得る。
【0177】
用語「医薬」及び「薬学的組成物」は、本明細書において交換可能に使用される。
【0178】
本発明は、α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACを含む薬学的組成物を提供する。
【0179】
1局面において、本発明は、薬学的組成物に関する。薬学的組成物は、特定の薬学的組成物についての目的に応じて、多数の異なる様式で製剤化され得る。
【0180】
例えば、薬学的組成物は、それが特定の投与形態について有用となる様式で製剤化され得る。好ましい投与形態は、本明細書以下に記載される。
【0181】
1態様において、薬学的組成物は、それが液体となるように製剤化される。例えば、組成物はタンパク質溶液であり得、又は組成物はタンパク質懸濁液であり得る。前記液体は、非経口投与について、例えば注射又は注入について好適であり得る。
【0182】
液体は任意の有用な液体であり得るが、しばしば、液体は水性液体であることが好ましい。多くの目的について、特に液体が非経口投与について使用される場合、液体は無菌であることがさらに好ましい。無菌は、任意の従来の方法、例えば濾過、照射又は加熱によって与えられ得る。さらに、特に液体が非経口投与について製剤化される場合、液体はウイルス低減工程へ供されていることが好ましい。
【0183】
ウイルス低減は、例えば、ナノ濾過、又は、好適なフィルター、例えばいくつかの層からなるPlanovaフィルターでのウイルス濾過によって行われ得る。Planovaフィルターは、任意の好適なサイズ、例えば、75N、35N、20N又は15Nであり得、又は、異なるサイズのフィルター、例えばPlanova20Nが使用され得る。ウイルス低減はまた、別のフィルターを用いての、例えば0.01〜1μmの範囲、例えば0.05〜0.5μmの範囲、例えば約0.1μmの細孔径を有するフィルターを使用しての、プレ濾過工程を含み得る。ウイルス低減はまた、酸処理工程を含み得る。
【0184】
薬学的組成物は、使用者により便利であり得る、単回投薬単位に包装され得る。従って、ボーラス注射用の薬学的組成物は、例えば多くても10ml、好ましくは多くても8ml、より好ましくは多くても6ml、例えば多くても5ml、例えば多くても4ml、例えば多くても3ml、例えば約2.2mlの投薬単位で包装され得る。
【0185】
薬学的組成物は、任意の好適な容器に包装され得る。1例において、薬学的組成物の単回投薬量が、注射器又は注入に有用な容器に包装され得る。
【0186】
本発明の別の態様において、薬学的組成物は、乾燥組成物である。乾燥組成物は、そのまま使用され得るが、大抵の目的について、該組成物は、貯蔵のみについての乾燥組成物である。使用前に、乾燥組成物は、好適な液体組成物、例えば滅菌水に溶解又は懸濁され得る。
【0187】
本発明に従う薬学的組成物はまた、LAC、例えば本明細書上記に記載の任意のLACをコードする第1核酸配列を含み得る。第1核酸配列は、薬学的組成物で治療される個体において、より好ましくは罹患している該個体の細胞において、第1核酸配列の発現を指示する第2核酸配列と好ましくは作動可能に結合されている。従って、第2核酸配列はヒトにおいて第1核酸配列の発現を指示し得ることが好ましい。臨床状態が癌である本発明の態様において、第2核酸配列は、悪性細胞などの癌細胞において第1核酸配列の発現を指示し得ることが好ましい。第1及び第2核酸配列は好適なベクター中に含まれることがさらに好ましい。
【0188】
薬学的組成物が、例えばローション、クリーム、軟膏剤、スプレー、例えばエアロゾルスプレー又は鼻腔用スプレー、直腸坐剤又は膣坐剤、点滴剤、例えば点眼剤又は点鼻剤、パッチ、密封包帯などの形態で、部位の部位へ局所的に適用され得ることも本発明に含まれる。
【0189】
薬学的に許容される添加剤
α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACを含有する薬学的組成物は、任意の従来の技術によって、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, E. W. Martin編, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Paに記載されるように、製造され得る。
【0190】
用語「医薬」及び「薬学的組成物」は、本明細書において交換可能に使用される。
【0191】
薬学的に許容される添加剤は、任意の通常使用される薬学的に許容される添加剤であり得、これらは、特定の製剤、意図される投与経路などに応じて選択される。例えば、薬学的に許容される添加剤は、Nemaら,1997年に記載される任意の添加剤であり得る。さらに、薬学的に許容される添加剤は、例えばインターネットアドレスhttp://www.fda.gov/cder/drug/iig/default.htmにおいて入手可能である、FDAの“inactive ingredients list”からの任意の承認された添加剤であり得る。
【0192】
本発明のある態様において、薬学的組成物は等張剤を含むことが望ましい。特に、薬学的組成物が注射又は注入による投与について作製される場合、等張剤が添加されることがしばしば望ましい。
【0193】
従って、組成物は、等張剤である薬学的に許容される添加剤を少なくとも1つ含み得る。
【0194】
薬学的組成物は、等張、低張、又は高張であり得る。しかし、注入又は注射用の薬学的組成物は、それが投与される際に、本質的に等張であることがしばしば好ましい。従って、貯蔵について、薬学的組成物は、好ましくは、等張又は高張であり得る。薬学的組成物が貯蔵について高張である場合、それは、投与前に、等張溶液となるように希釈され得る。
【0195】
等張剤は、塩などのイオン性等張剤、又は炭水化物などの非イオン性等張剤であり得る。
【0196】
イオン性等張剤の例としては、NaCl、CaCl2、KCl及びMgCl2が挙げられるが、これらに限定されない。非イオン性等張剤の例としては、マンニトール及びグリセロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0197】
しかし、本発明の他の態様において、薬学的組成物は、緩衝剤を全く含まないか、又は緩衝剤をマイクロモル量だけ含む場合がある。
【0198】
好ましい態様において、緩衝剤はTRISである。TRIS緩衝剤は、種々の他の名称、例えば、トロメタミンUSPを含むトロメタミン、THAM、トリズマ、トリスアミン、トリスアミノ及びトロメタモールで公知である。名称TRISは、上述の名称全てを含む。
【0199】
特に薬学的製剤が非経口用途用である場合、緩衝剤は、さらに例えば、非経口用途についてのUSP適合緩衝剤より選択され得る。例えば、緩衝剤は、一塩基酸、例えば、酢酸、安息香酸、グルコン酸、グリセリン酸及び乳酸、二塩基酸、例えば、アコニット酸、アジピン酸、アスコルビン酸、炭酸、グルタミン酸、リンゴ酸、コハク酸及び酒石酸、多塩基酸、例えば、クエン酸及びリン酸、並びに塩基、例えば、アンモニア、ジエタノールアミン、グリシン、トリエタノールアミン、及びTRISからなる群より選択され得る。
【0200】
薬学的組成物は、安定剤である薬学的に許容される添加剤を少なくとも1つ含み得る。
【0201】
例えば、安定剤は、ポロキサマー、Tween−20、Tween−40、Tween−60、Tween−80、Brij、金属イオン、アミノ酸、ポリエチレングリコール、Triton、EDTA、アスコルビン酸、Triton X−100、NP40又はCHAPSからなる群より選択され得る。
【0202】
本発明に従う薬学的組成物はまた、凍結保護剤を1つ又はそれ以上含み得る。特に、組成物が凍結乾燥タンパク質を含むか又は組成物が凍結状態で保存される場合、薬学的組成物へ凍結保護剤を添加することが望ましい場合がある。
【0203】
凍結保護剤は、任意の有用な凍結保護剤であり得、例えば、凍結保護剤は、デキストラン、グリセリン、ポリエチレングリコール、スクロース、トレハロース及びマンニトールからなる群より選択され得る。
【0204】
従って、薬学的に許容される添加剤は、等張塩、高張塩、緩衝剤及び安定剤からなる群より選択される1つ又はそれ以上を含み得る。さらに、薬学的に許容される添加剤は、等張剤、緩衝剤、安定剤及び凍結保護剤からなる群より選択される1つ又はそれ以上を含み得る。例えば、薬学的に許容される添加剤は、グルコース一水和物、グリシン、NaCl及びポリエチレングリコール3350を含む。
【0205】
製剤
本発明の組成物が未加工の組成物として投与されることが可能である一方、薬学的製剤の形態でそれを提示することが好ましい。従って、本発明は、さらに、本明細書に定義される、本発明の組成物又はその薬学的に許容される塩、並びにそれについての薬学的に許容される担体を含む、医薬適用のための、薬学的製剤を提供する。
【0206】
経口投与
本発明の組成物は、多種多様の経口投与投薬形態で製剤化され得る。薬学的組成物及び投薬形態は、活性成分として本発明の組成物又はその薬学的に許容される塩若しくはその結晶形態を含み得る。薬学的に許容される担体は、固体又は液体のいずれかであり得る。固体形態調製物としては、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、及び分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、矯味矯臭剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、防腐剤、湿潤剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料としても機能し得る1つ又はそれ以上の物質であり得る。
【0207】
好ましくは、組成物は、約0.5質量%〜75質量%が本発明の組成物であり、残りは、好適な薬学的賦形剤からなる。経口投与について、このような賦形剤としては、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0208】
散剤中において、担体は、細かく分割された固体であり、これは、細かく分割された活性成分との混合物である。錠剤中において、活性成分は、必要な結合能を有する担体と好適な割合で混合されており、所望の形状及びサイズに圧縮されている。散剤及び錠剤は、好ましくは、活性組成物を1〜約70%含有する。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロールナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどである。用語「作製」は、活性成分が、担体有り又は無しで、それと結合されている担体によって囲まれているカプセル剤を提供する、担体としてのカプセル化材料を用いての活性組成物の製剤化を含むように意図される。同様に、カシェ剤及びロゼンジも含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、及びロゼンジが、経口投与に好適な固体形態であり得る。複数単位投薬量顆粒剤(multiple-unit-dosage granule)も同様に作製され得る。上記コアの錠剤及び顆粒剤は、砂糖の濃縮溶液などでコーティングされ得る。コアはまた、胃腸管における溶解速度を変化させるポリマー、例えば、5.5を超えるpkaを有するアニオン性ポリマーでコーティングされ得る。このようなポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、並びに商標Eudragit S100及びL100で販売されているポリマーである。ゼラチンカプセル剤の作製において、これらは軟質又は硬質であり得る。前者の場合、活性化合物はオイルと混合され、後者の場合は、複数単位投薬量顆粒剤がその中に充填される。
【0209】
本発明に従う点滴剤は、滅菌又は非滅菌水性又は油性溶液又は懸濁液を含み得、場合により殺菌剤及び/又は殺真菌剤及び/又は任意の他の好適な防腐剤を含み、場合により界面活性剤を含む、好適な水性溶液に有効成分を溶解することによって作製され得る。得られた溶液は、次いで、濾過によって浄化され得、好適な容器へ移され、これは次いで密封され、半時間98〜100℃でオートクレーブ処理するか又は維持することによって滅菌される。又は、前記溶液は、濾過によって滅菌され、無菌的に容器へ移され得る。点滴剤に含めるために好適である殺菌剤及び殺真菌剤の例は、硝酸フェニル水銀又は酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)及び酢酸クロルヘキシジン(0.01%)である。任意の油性溶液の作製についての好適な溶媒としては、グリセロール、希釈アルコール及びプロピレングリコールが挙げられる。
【0210】
使用直前に経口投与用の液体形態調製物へ変換されることが意図される固体形態調製物もまた含まれる。このような液体形態としては、溶液、懸濁液、及びエマルジョンが挙げられる。これらの調製物は、活性成分に加えて、着色剤、フレーバー、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有し得る。
【0211】
経口投与について好適な他の形態としては、エマルジョン、シロップ剤、エリキシル剤、水溶液、水性懸濁剤、練り歯磨き、ゲル歯磨き、チューインガムを含む液体形態調製物、又は使用直前に液体形態調製物へ変換されるように意図される固体形態調製物が挙げられる。エマルジョンは、プロピレングリコール水溶液中の溶液で作製され得、又は、レシチン、ソルビタンモノオレエート、又はアカシアなどの乳化剤を含有し得る。水溶液は、水に活性成分を溶解し、好適な着色剤、フレーバー、安定剤及び増粘剤を添加することによって、作製され得る。水性懸濁剤は、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他の周知の懸濁化剤などの粘性材料と共に、水に、細かく分割された活性成分を分散させることによって、作製され得る。固体形態調製物としては、液剤、懸濁剤、及びエマルジョンが挙げられ、活性成分に加えて、着色剤、フレーバー、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有し得る。
【0212】
非経口投与
本発明の組成物は、(例えば、注射、例えばボーラス注射又は持続注入による)非経口投与について製剤化され得、添加された防腐剤を含む、アンプル、予め充填された注射器、少容量注入、又は複数用量容器での、単位用量形態で提示され得る。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の、懸濁液、溶液、又はエマルジョン、例えば、水性ポリエチレングリコール中の溶液などの形態をとり得る。油性又は非水性担体、希釈剤、溶媒若しくはビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、及び注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられ、製剤化剤(formulatory agent)、例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤若しくは懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤を含有し得る。又は、有効成分は、好適なビヒクル、例えば発熱物質を含まない滅菌水を用いての使用前の構築のための、溶液からの凍結乾燥によって又は滅菌固体の無菌単離によって得られる、粉末形態であり得る。
【0213】
非経口製剤において有用なオイルとしては、石油、動物油、植物油、又は合成油が挙げられる。このような製剤において有用なオイルの具体例としては、落花生油、大豆油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ペトロラタム、及び鉱油が挙げられる。非経口製剤における使用のための好適な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルは、好適な脂肪酸エステルの例である。
【0214】
非経口製剤における使用について好適な石鹸としては、脂肪アルカリ金属、アンモニウム及びトリエタノールアミン塩が挙げられ、好適な洗剤としては、(a)陽イオン洗剤、例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハライド、及びアルキルピリジニウムハライド;(b)陰イオン洗剤、例えば、アルキル、アリール、及びオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテル、及びモノグリセリドスルフェート、及びスルホスクシーネート、(c)非イオン洗剤、例えば、脂肪アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、及びポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー、(d)両性洗剤、例えば、アルキル−β−アミノプロピオネート、及び2−アルキル−イミダゾリン第四級アンモニウム塩、並びに(e)それらの混合物が挙げられる。
【0215】
非経口製剤は、典型的に、溶液中において有効成分を約0.5〜約25質量%含有する。防腐剤及び緩衝剤が使用され得る。注射部位での炎症を最小化又は排除するために、このような組成物は、約12〜約17の親水性・親油性バランス(HLB)を有する非イオン性界面活性剤を1つ又はそれ以上含有し得る。このような製剤中の界面活性剤の量は、典型的に約5〜約15質量%の範囲にある。好適な界面活性剤としては、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えばソルビタンモノオレエート、及び、プロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって形成される、疎水性塩基を有するエチレンオキシドの高分子量付加物が挙げられる。非経口製剤は、単位用量又は複数用量の密封容器、例えば、アンプル及びバイアルに提示され得、使用の直前に、注射用の滅菌液体賦形剤、例えば水の添加のみを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即席の注射溶液及び懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌散剤、顆粒剤、及び錠剤から調製され得る。
【0216】
局所投与
本発明の組成物はまた、局所的に送達され得る。局所投与についての領域としては、皮膚表面、並びにまた膣、直腸、鼻、口及び喉の粘膜組織が挙げられる。皮膚及び粘膜を介しての局所投与のための組成物は、炎症の徴候、例えば、腫脹又は赤みを引き起こさないべきである。
【0217】
局所組成物は、局所投与に適合された薬学的に許容される担体を含み得る。従って、組成物は、例えば、懸濁剤、液剤、軟膏剤、ローション、性的潤滑剤、クリーム、フォーム、エアロゾル、スプレー、坐剤、インプラント、吸入剤、錠剤、カプセル剤、乾燥粉末、シロップ剤、香膏又はロゼンジの形態をとり得る。このような組成物を作製するための方法は、製薬産業において周知である。
【0218】
本発明の組成物は、軟膏剤、クリーム又はローションとして、又は経皮パッチとして、表皮への局所投与用に製剤化され得る。軟膏剤及びクリームは、例えば、好適な増粘剤及び/又はゲル化剤の添加を伴って水性又は油性基剤を用いて製剤化され得る。ローションは、水性又は油性基剤を用いて製剤化され得、一般的に、乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、又は着色剤も1つ又はそれ以上含有する。口腔における局所投与について好適な製剤としては、風味付けされた基剤、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性薬剤を含むロゼンジ;不活性基剤、例えば、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア中に有効成分を含む香錠;並びに好適な液体担体中に有効成分を含むうがい薬が挙げられる。
【0219】
本発明に従うクリーム、軟膏剤又はペーストは、外用の有効成分の半固体製剤である。それらは、好適な機械類の助けを借りて、脂肪性又は非脂肪性基剤と、細かく分割された又は粉末化された形態の有効成分を、単独で又は水性若しくは非水性流体中の溶液若しくは懸濁液で、混合することによって作製され得る。基剤は、炭化水素、例えば、固形、軟質又は流動パラフィン、グリセロール、蜜蝋、金属石鹸;粘液;天然起源の油、例えば、アーモンド油、トウモロコシ油、ラカッセイ油、ヒマシ油又はオリーブ油;羊毛脂又はその誘導体、又は脂肪酸、例えば、ステアリン酸又はオレイン酸、並びにアルコール、例えば、プロピレングリコール又はマクロゲルを含み得る。製剤は、任意の好適な界面活性剤、例えば、アニオン性、カチオン性又は非イオン性界面活性剤、例えば、ソルビタンエステル又はそのポリオキシエチレン誘導体を含み得る。懸濁化剤、例えば、天然ガム、セルロース誘導体、又は無機材料、例えば、珪質シリカ、及び他の成分、例えば、ラノリンも含まれ得る。
【0220】
本発明に従うローションとしては、皮膚又は眼への適用に好適であるものが挙げられる。アイローションは、殺菌剤を場合により含有する滅菌水溶液含み得、点滴剤の作製についてのものと同様の方法によって作製され得る。皮膚への適用のためのローション又はリニメント剤はまた、乾燥を促進し皮膚を冷却する薬剤、例えば、アルコール又はアセトン、及び/又は保湿剤、例えば、グリセロール、又は油、例えば、ヒマシ油又はラッカセイ油を含み得る。
【0221】
経皮送達
本明細書に記載される医薬品−化学修飾剤複合体は、経皮的に投与され得る。経皮投与は、典型的に、患者の体循環中への薬物の経皮的通過のための医薬品の送達を含む。皮膚部位は、薬物を経皮的に投与するための解剖学的領域を含み、前腕部、腹部、胸部、背部、殿部、乳様突起部などを含む。
【0222】
経皮送達は、長期間、患者の皮膚へ前記複合体の供給源をさらすことによって達成される。経皮パッチは、身体へ医薬品−化学修飾剤複合体の制御送達を提供するという追加の利点を有する。Transdermal Drug Delivery: Developmental Issues and Research Initiatives, Hadgraft and Guy (eds.), Marcel Dekker, Inc., (1989);Controlled Drug Delivery: Fundamentals and Applications, Robinson and Lee (eds.), Marcel Dekker Inc., (1987);及びTransdermal Delivery of Drugs, Vols. 1-3, Kydonieus and Berner (eds.), CRC Press, (1987)を参照のこと。このような投薬形態は、適切な媒体、例えば、エラストマーマトリクス材料中に医薬品−化学修飾剤複合体を溶解するか、分散するか、又はそうでなければ組み込むことによって作製され得る。吸収促進剤もまた、皮膚を通っての前記化合物の流動を増加させるために使用され得る。このような流動の速度は、速度制御膜を提供するか、又は前記化合物をポリマーマトリクス又はゲルに分散させることによって、制御され得る。
【0223】
受動的経皮薬物送達
種々のタイプの経皮パッチが、本明細書に記載の方法において使用され得る。例えば、簡単な接着性パッチは、基材及びアクリレート接着剤から作製され得る。医薬品−化学修飾剤複合体及び任意の促進剤が、接着性キャスト溶液へ配合され、徹底的に混合される。溶液は、基材上へ直接キャストされ、キャスト溶媒はオーブンにおいて蒸発され、接着性フィルムが残る。剥離ライナーが、システムを完成するために付けられ得る。
【0224】
又は、ポリウレタンマトリクスパッチが、医薬品−化学修飾剤複合体を送達するために使用され得る。このパッチの層は、基材、ポリウレタン薬物/促進剤マトリクス、膜、接着剤、及び剥離ライナーを含む。ポリウレタンマトリクスは、室温硬化性ポリウレタンプレポリマーを使用して作製される。前記プレポリマーへの水、アルコール、及び複合体の添加によって、基材のみに直接キャストされ得る粘着性フィルムエラストマーが形成される。
【0225】
本発明のさらなる態様は、ヒドロゲルマトリクスパッチを使用する。典型的に、ヒドロゲルマトリクスは、アルコール、水、薬物、及びいくつかの親水性ポリマーを含む。このヒドロゲルマトリクスは、基材と接着層との間の経皮パッチ中へ組み込まれ得る。
【0226】
液体リザーバパッチもまた、本明細書に記載の方法において使用され得る。このパッチは、不透過性又は半透性の、ヒートシール可能な基材、ヒートシール可能な膜、アクリレート系感圧皮膚接着剤、及びシリコン処理剥離ライナーを含む。基材が膜へヒートシールされ、リザーバが形成され、次いでこれに複合体、促進剤、ゲル化剤、及び他の賦形剤の溶液が充填される。
【0227】
フォームマトリクスパッチは、ゲル化された医薬品−化学修飾剤溶液が薄いフォーム層、典型的にポリウレタン中に束縛されていること以外、液体リザーバシステムと設計及び成分が類似する。このフォーム層は、パッチの周辺部でヒートシールされている膜と基材との間に位置する。
【0228】
受動送達系について、放出速度は、典型的に、リザーバと皮膚との間に配置された膜によって、モノリシックデバイスからの拡散によって、又は送達系中の速度制御バリアとして役立つ皮膚自体によって制御される。米国特許第4,816,258号;第4,927,408号;第4,904,475号;第4,588,580号;第4,788,062号などを参照のこと。薬物送達速度は、一部、膜の性質に依存する。例えば、体内の膜を通る薬物送達の速度は、一般的に、皮膚バリアを通るよりも速い。複合体がデバイスから膜へ送達される速度は、最も有利には、リザーバと皮膚との間に配置される律速膜の使用によって制御される。皮膚は複合体に対して十分に透過性である(即ち、皮膚を介しての吸収は、膜を介しての通過速度よりも高い)と考えると、膜は、患者によって経験される投薬速度を制御するために役立つ。
【0229】
好適な透過性膜材料は、所望の透過性度、複合体の性質、及びデバイスの構築と関係する機械的な考察に基づいて、選択され得る。例示的な透過性膜材料としては、多種多様の天然及び合成ポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(シリコーンゴム)、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)、ポリウレタン、ポリウレタン−ポリエーテルコポリマー、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セルロース材料、例えば、三酢酸セルロース及び硝酸/酢酸セルロース、並びにヒドロゲル、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)が挙げられる。
【0230】
所望のデバイス特徴に応じて、他のアイテム、例えば、治療薬の他の従来の成分がデバイス中に含有され得る。例えば、本発明に従う組成物はまた、防腐剤又は静菌剤、例えば、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、クロロクレゾール、塩化ベンザルコニウムなどを1つ又はそれ以上含み得る。これらの薬学的組成物はまた、他の有効成分、例えば、抗菌剤、特に抗生物質、麻酔薬、鎮痛薬、及び止痒剤を含有し得る。
【0231】
坐剤としての投与
本発明の組成物は、坐剤としての投与用に製剤化され得る。先ず、低融点ワックス、例えば、脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物が、溶融され、活性成分が、例えば撹拌によって、均一に分散される。次いで、溶融した均一混合物を好都合なサイズの型へ注ぎ、冷却し、固化させる。
【0232】
活性組成物は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)担体(例えば、PEG1000[96%]及びPEG4000[4%])中に配置された、本発明の組成物を約0.5%〜約50%含む坐剤へ製剤化され得る。
【0233】
本発明の組成物は、膣投与用に製剤化され得る。有効成分に加えて好適であることが当該技術分野において公知である担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー。
【0234】
呼吸器投与
本発明の組成物は、経鼻投与用に製剤化され得る。液剤又は懸濁剤は、従来の手段によって、例えばドロッパー、ピペット又はスプレーを用いて、鼻腔へ直接適用される。製剤は、単回又は複数用量形態で提供され得る。ドロッパー又はピペットの後者の場合において、これは、好適な、所定の量の液剤又は懸濁剤を患者へ投与することによって達成され得る。スプレーの場合において、これは、例えば、定量噴霧スプレーポンプによって達成され得る。
【0235】
本発明の組成物は、鼻腔内投与を含む特に呼吸器へのエアロゾル投与用に製剤化され得る。組成物は、一般的に、例えば5ミクロン以下の桁の小さな粒径を有する。このような粒径は、当該技術分野において公知の手段によって、例えばマイクロナイゼーションによって得られ得る。有効成分は、好適な噴射剤、例えばクロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、若しくはジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適なガスを含む加圧パックで提供される。エアロゾルはまた、好都合には、レシチンなどの界面活性剤を含有し得る。薬物の用量は、定量バルブによって制御され得る。又は、有効成分は、乾燥粉末の形態で、例えば、好適な粉末基剤、例えば、ラクトース、デンプン、デンプン誘導体、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドン(PVP)中の前記組成物の粉末ミックスの形態で提供され得る。粉末担体は、鼻腔内においてゲルを形成する。粉末組成物は、単位用量形態、例えば、粉末が吸入器によって投与され得る、例えばゼラチン又はブリスターパックのカプセル又はカートリッジで提示され得る。
【0236】
必要に応じて、製剤は、有効成分の持続又は制御放出投与に適合された腸溶コーティングを用いて作製され得る。
【0237】
薬学的調製物は、好ましくは、単位投薬形態である。このような形態において、調製物は、好適な量の活性成分を含有する単位用量へ細分化される。単位投薬形態は、パッケージが別個の量の調製物を含有する、パッケージされた調製物、例えば、バイアル又はアンプル中の、パッケージされた錠剤、カプセル剤、及び散剤であり得る。また、単位投薬形態は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、又はロゼンジ自体であり得、又はそれは、パッケージされた形態の好適な数の任意のこれらであり得る。
【0238】
薬学的に許容される塩
本発明の化合物の薬学的に許容される塩はまた、それらが作製され得る場合、本発明によって包含されるように意図される。これらの塩は、薬学的使用へのそれらの適用において許容されるものである。それによって、塩は親化合物の生物学的活性を保持し、かつ、塩は、疾患を治療することにおけるその適応及び使用において不都合な又は有害な効果を有さないことが意味される。
【0239】
薬学的に許容される塩は、標準的な様式で作製される。親化合物が塩基である場合、それは、好適な溶媒中において過剰量の有機又は無機酸で処理される。親化合物が酸である場合、それは、好適な溶媒中において無機又は有機塩基で処理される。
【0240】
本発明の化合物は、有効量で、経口、経直腸、又は非経口(皮下を含む)経路によって、そのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩の形態で、薬学的に許容される担体又は希釈剤と一斉に、同時に、又は共に、特に、好ましくはその薬学的組成物の形態で、投与され得る。
【0241】
本発明の薬学的組成物における使用のための薬学的に許容される酸付加塩の例としては、鉱酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸、並びに有機酸、例えば、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、p−トルエンスルホン酸、及びアリールスルホン酸から誘導されるものが挙げられる。
【0242】
投与形態
薬学的組成物は、それが1つ又はそれ以上の特定の投与方法について好適となるように、作製され得る。さらに、本明細書に記載の治療方法は、種々の投与方法を含み得る。
【0243】
一般的に、活性LACが疾患部位に到達し得るような様式でLACが個体へ投与され得る任意の投与方法が、本発明で使用され得る。
【0244】
治療方法における、薬物送達の主な経路は、下記に記載されるように、静脈内、経口、及び局所である。薬物を標的部位へ送達するか又は薬物を血流中へ導入するに有効である、他の薬物投与方法、例えば、皮下注射又は吸入も考えられる。
【0245】
本発明の薬学的調製物が投与される粘膜は、例えば鼻、膣、眼、口、生殖管、肺、胃腸管、又は直腸における、生物学的に活性な物質が提供される哺乳動物の任意の粘膜、好ましくは鼻、口又は膣の粘膜であり得る。
【0246】
本発明の組成物は、非経口的に、即ち、静脈内、筋肉内、皮下、鼻腔内、直腸内、膣内又は腹腔内投与によって、投与され得る。非経口投与の皮下及び筋肉内形態が、一般的に好ましい。このような投与について好適な投薬形態は、従来の技術によって作製され得る。組成物はまた、吸入によって、即ち、鼻腔内及び経口吸入投与によって投与され得る。このような投与について好適な投薬形態、例えば、エアロゾル製剤又は定量吸入器は、従来の技術によって作製され得る。
【0247】
本発明に従う組成物は、少なくとも1つの他の化合物と共に投与され得る。前記化合物は、別個の製剤として又は単位投薬形態中に合わされて、同時に投与され得るか、又は連続して投与され得る。
【0248】
治療
本発明に従う組成物は、医薬の製造のために使用され得る。このような医薬は、選択的細胞傷害性が望ましい種々の疾患の治療について有用であり得る。明らかに、α−ラクトアルブミン複合体は、細菌の付着及びウイルスの広がりを防止することができる。ある態様において、前記医薬は、細菌及び/又はウイルス感染症の治療のために使用され得る。さらなる態様において、前記医薬は、癌の治療において使用される。
【0249】
細菌感染
明らかに、α−ラクトアルブミン複合体は、細胞表面、例えば上皮細胞への細菌の付着を防止することができ、又は代替手段によって、微生物に対する殺菌効果を発揮することができる。
【0250】
細菌感染によって引き起こされる疾患としては、炭疽、細菌性髄膜炎、ブルセラ症、カンピロバクター症、ネコひっかき病、コレラ、ジフテリア、流行性発疹チフス、淋病、膿痂疹、ジオネラ病、らい病(ハンセン病)、レプトスピラ症、リステリア症、ライム病、類鼻疽、MRSA感染症、ノカルジア症、百日咳(Pertussis)(百日咳(Whooping Cough))、ペスト、肺炎球菌性肺炎、オウム病、Q熱、ロッキー山紅斑熱(RMSF)、サルモネラ症、猩紅熱、細菌性赤痢、梅毒、破傷風、トラコーマ、結核、野兎病、腸チフス、発疹チフス;尿路感染症が挙げられる。
【0251】
ある態様において、本発明に従う組成物は、細菌感染症の治療用である。
【0252】
特に、肺炎連鎖球菌及びインフルエンザ菌は、重篤な感染症の重要な原因である。好ましい態様において、本発明に従う組成物は、例えば肺炎連鎖球菌又はインフルエンザ菌によって引き起こされる感染症の治療用の医薬の製造用である。
【0253】
ウイルス感染
α−ラクトアルブミン複合体の選択的細胞傷害性は、ウイルス感染した細胞に対して向けられ得、それによって、ウイルスが増殖する前に細胞が破壊されるので、ウイルスの広がりが抑えられる。
【0254】
ウイルス感染によって引き起こされる疾患としては、AIDS、エイズ関連症候群、水痘(Chickenpox)(水痘(Varicella))、普通感冒、サイトメガロウイルス感染症、コロラドダニ熱、デング熱、エボラ出血熱、流行性耳下腺炎、エクスプロジシティス(Explodicitis)、手足口病、肝炎、単純ヘルペス、帯状ヘルペス、HPV、インフルエンザ(フルー)、ラッサ熱、麻疹、マールブルグ出血熱、伝染性単核球症、おたふく風邪、灰白髄炎、進行性多巣性白質脳症、狂犬病、風疹、SARS、天然痘(痘瘡)、ウイルス性脳炎、ウイルス性胃腸炎、ウイルス髄膜炎、ウイルス性肺炎、西ナイル病、黄熱が挙げられる。
【0255】
ある態様において、本発明に従う組成物は、ウイルス感染症の治療用である。
【0256】
種々のタイプのウイルス、例えば、呼吸器のウイルス、胃腸のウイルス、免疫不全ウイルス、例えば、HIV、及び脳のウイルス、例えば、ウイルス髄膜炎、又は他の内部器官のウイルスが、本発明に従う組成物を使用して治療され得る。
【0257】
呼吸器の感染症
呼吸器の感染症、例えば、髄膜炎、耳炎及び副鼻腔炎は、鼻咽頭を介して進入する細菌によって引き起こされる。
【0258】
呼吸器のウイルス感染症は、例えば、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器性シンシチウムウイルス(RSV)、パラインフルエンザ、ライノウイルス(Phinovirus)及びコロナウイルスによって引き起こされ得る。
【0259】
ある態様において、本発明に従う組成物は、呼吸器の感染症の治療用である。本発明に従う医薬は、上気道中へミストの形態で吸入され得る。
【0260】
腫瘍の治療
1態様において、良性又は悪性の両タイプの腫瘍が、さらに、α−ラクトアルブミン複合体の選択的細胞傷害性に基づいて、本発明に従う組成物を使用して治療され得る。
【0261】
いぼ
いぼは、一般的に、カリフラワーに似ている、典型的に手及び足における、小さな粗い腫瘍である。いぼは、一般的であり、ウイルス感染によって、具体的にはヒトパピローマウイルス(HPV)によって、引き起こされる。それらは、典型的に、数ヵ月後に消滅するが、何年も持続し得、再発し得る。
【0262】
形状及び冒された部位が異なる、広範囲の種々のタイプのいぼが同定され、これらとしては以下が挙げられる:
尋常性いぼ(尋常性疣贅):手及び膝において最も一般的な、粗面を有する隆起したいぼ。
扁平いぼ(扁平疣贅):数多く生じ得る、黄褐色又は肉色の、小さく、滑らかで扁平ないぼ;顔、首、手、手首及び膝において最も一般的。
糸状又は指状疣贅:顔に、特に眼瞼及び唇付近に最も一般的な、糸又は指様のいぼ。
足底いぼ(疣贅、足底疣贅):中央に複数の黒い点をしばしば伴う、硬く時として痛みを伴うしこり;通常、足底における圧覚点においてのみ。
モザイク疣贅:一般的に手又は足底における、密集した足底型いぼの群。
陰部疣贅(性病いぼ、尖圭コンジローマ、尖圭疣贅(verruca acuminata)):陰部を冒すいぼ。
【0263】
好ましい態様において、本発明に従う組成物は、いぼの治療用であり、これは、好ましくは、本発明に従う医薬の局所適用によって治療される。
【0264】
乳頭腫
乳頭腫は、ヒトパピローマウイルスによって引き起こされ得る又は引き起こされ得ない、良性上皮腫瘍を指す。代替の原因は、例えば、脈絡叢乳頭腫(CPP)である。
【0265】
HPVにしばしば関連する2つのタイプの乳頭腫は、扁平上皮乳頭腫及び移行上皮乳頭腫(「膀胱乳頭腫」としても公知)である。
【0266】
好ましい態様において、本発明に従う単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC組成物は、乳頭腫の治療用であり、これは、好ましくは、本発明に従う医薬の局所適用によって治療される。
【0267】

癌性疾患は、新形成又は新生物と科学的に呼ばれ、良性又は悪性であり得る。癌は、腫瘍に似ている細胞のタイプ、及び従って、腫瘍の起源であると推定される組織によって分類される。以下の一般的なカテゴリーが適用される:
癌腫:上皮細胞由来の悪性腫瘍。この群は、乳癌、前立腺癌、肺癌及び結腸癌の一般的な形態を含む、最も一般的な癌を含む。
リンパ腫及び白血病:血液及び骨髄細胞由来の悪性腫瘍。
肉腫:結合組織、又は間葉細胞由来の悪性腫瘍。
中皮腫:腹膜及び胸膜を裏打ちする中皮細胞由来の腫瘍。
神経膠腫:脳細胞の最も一般的なタイプである神経膠由来の腫瘍。
胚細胞腫:通常精巣及び卵巣において見られる、生殖細胞由来の腫瘍。
絨毛癌:胎盤由来の悪性腫瘍。
【0268】
好ましい態様において、本発明に従う単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC組成物は、癌の治療用である。
【0269】
癌の治療用の医薬は、本発明によれば、好ましくは、腫瘍へ直接適用される。
【0270】
粘膜腫瘍
粘膜表面で見られる条件は、pHなどの特性の点で非常に独特であり得る。粘膜表面は、特に、鼻の通路、口、咽喉、食道、肺、胃、直腸、膣及び膀胱において見られる。
【0271】
本発明に従って治療され得る特定の粘膜表面としては、腫瘍である咽頭、肺、結腸及び膀胱表面が挙げられる。
【0272】
膀胱癌
膀胱癌は、膀胱のいくつかのタイプの悪性腫瘍の任意のものを指す。最も一般的なタイプの膀胱癌は、膀胱の内側を裏打ちする細胞において生じ、尿路上皮細胞癌又は移行上皮癌(UCC又はTCC)と呼ばれる。
【0273】
より好ましい態様において、本発明に従う単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC組成物は、膀胱癌の治療用である。
【0274】
神経膠芽腫
神経膠腫は、グリア細胞由来の原発性中枢神経系(CNS)腫瘍のあるタイプである。神経膠腫の関与の最も一般的な部位は、脳であるが、それらはまた、脊髄、又はCNSの任意の他の部分、例えば視神経にも影響を与え得る。
【0275】
より好ましい態様において、本発明に従う単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC組成物は、神経膠腫/神経膠芽腫の治療用である。
【0276】
血管新生
腫瘍血管新生は、癌性腫瘍中へ浸透する血管の網目構造の増殖であり、栄養及び酸素を供給し、老廃物を除去する。血管新生のプロセスは、腫瘍細胞が正常なホスト組織へシグナル伝達する分子を放出し、新たな血管の増殖を促す遺伝子及びタンパク質を活性化すると、開始される。血管新生の一連の天然インヒビターが同定されており、癌細胞の増殖及び広がりを防止及び/又は阻害すると考えられている。
【0277】
α−ラクトアルブミン複合体は血管新生を阻害し得るという知見は、さらに、癌の治療及び/又は阻害にα−ラクトアルブミンの適用性を広げた。
【0278】
ある態様において、本発明に従う単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLAC組成物は、血管新生の阻害用である。
【0279】
治療方法
本発明のある局面は、
以下を含む医薬を投与すること:
i.α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との複合体である単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACを含む組成物であって、該α−ラクトアルブミンが配列番号1若しくは配列番号2のウシ若しくはヒトα−ラクトアルブミン又はその機能的均等物であり、該組成物が単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACを少なくとも95質量%含む、組成物、並びに
ii.薬学的賦形剤
を含む、治療の必要がある個体の治療方法に関する。
【0280】
本発明によれば、必要がある個体は、任意の上述の疾患に苦しむか又はこれに罹る危険性がある任意の個体である。従って、本発明に従う治療は、治癒的治療及び/又は予防的治療の両方であり得る。
【0281】
投与レジメン
投与される単量体α−ラクトアルブミン複合体、好ましくはLACの投薬要件は、使用される特定の薬物組成、投与経路、及び治療される特定の被験体に応じて変化する。理想的には、本方法によって治療される患者は、一般的に薬剤耐性が現れる前に必要とされる量以下の、最大許容量の、薬学的有効量の化合物を受容する。
【0282】
本化合物のために本明細書に開示される全ての使用方法について、一日経口投薬レジメンは、好ましくは、約0.01〜約80mg/kg総体重である。一日非経口投薬レジメンは、約0.001〜約80mg/kg総体重であり得る。一日局所投薬レジメンは、好ましくは、0.1mg〜150mであり、1日1〜4回、好ましくは2又は3回投与される。一日吸入投薬レジメンは、好ましくは、1日当たり約0.01mg/kg〜約1mg/kgである。化合物又はその薬学的に許容される塩の個々の投薬の最適量及び間隔は、治療される状態の性質及び程度、投与の形態、経路及び部位、並びに治療される特定の患者によって決定され、このような最適条件は従来の技術によって決定され得ることも当業者によって認識される。治療の最適なコース、即ち、所定の日数の間1日当たりに与えられる化合物又はその薬学的に許容される塩の投与数は、治療決定試験の従来のコースを使用して当業者によって確認され得ることも当業者によって認識される。
【0283】
活性化合物の日用量は多様であり、投与経路のタイプに依存するが、原則として、それは、個人投与で活性化合物1〜100mg/用量、局所投与において2〜200mg/用量である。24時間当たりの適用数は、投与経路に依存するが、例えば、鼻における(in the no. se)局所適用の場合、24時間当たり3回から8回へ変化し得、即ち、治療的使用において治療される身体によって産生される粘液の流れに依存する。
【0284】
用語「単位投薬形態」は、本明細書において使用される場合、ヒト及び動物被験体についての単位投薬として好適な物理的に別個の単位を指し、各々の単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体、又はビヒクルと共に、所望の効果を生じるに十分な量の計算された、単独の又は他の薬剤と組み合わされた、所定量の化合物を含有する。本発明の単位投薬形態についての詳細は、使用される特定の化合物、及び達成される効果、並びにホストにおける各化合物と関連する薬力学に依存する。投与される用量は、「有効量」又は、個人の患者において「有効なレベル」を達成するために必要な量であるべきである。
【0285】
「有効なレベル」は、投与について好ましい終点として使用されるので、実際の用量及びスケジュールは、薬物動態、薬物分布、及び代謝における個人差に応じて、異なり得る。「有効なレベル」は、例えば、本発明に従う1つ又はそれ以上の化合物の濃度に対応する患者における所望の血液又は組織レベルとして定義され得る。
【図面の簡単な説明】
【0286】
【図1】A.ウマ、ブタ、ラクダ、ヒト、ウシ及びヤギα−ラクトアルブミンの配列アラインメント。B.ヒト及びウシα−ラクトアルブミンの配列アラインメント。
【図2】製造方法の概略図。
【図3】α−ラクトアルブミン複合体への変換前(A)及び変換後(B)のα−ラクトアルブミン組成物のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)クロマトグラム。(A)40mg/cm2樹脂を超えるbLAロードでの4連続HIC実行から精製されたbLAのSEC−HPLCクロマトグラムは、24.6分の保持時間を伴う単一の単量体bLAピークを示す。B)Aにおいて示される精製bLAのプールから製造されたbLACのSEC−HPLCクロマトグラム。
【図4】bLA及びbLACのウエスタンブロット。レーン1:Presicion Plus Merker(BioRad)、レーン2:精製bLA(Fluka 61289)、レーン3〜5 実施例1に記載されるように精製されたbLA、レーン6〜8 実施例3に示されるような23分で溶離する二量体ピークを生じる32mg/cm2のロードで精製されたbLA − レーン6 23分で溶離するピークフラクション、レーン7 中間フラクション、レーン8 24.6分で溶離するピークフラクション、レーン9 4℃で保存されたbLAC産物、レーン10 −20℃で保存されたbLAC産物。単量体バンドは、僅か約10kDaの見かけの分子質量で移動し、二量体バンドは、15kDaとして移動する。単量体bLAサンプルは、標準プロトコルを使用して、Bruker Microflex装置においてMALDI−MSによって、単量体bLAについて予想されるように14,196Daの質量を有すると分析された。二量体バンドは、既知の分子質量の分子で実行されたSECマーカーを使用する直線性試験によって測定された28kDaの見かけの分子質量を有するように移動する。
【図5】細胞傷害性試験の概要。
【図6】A.ルミネセンス(ViaLight)及びトリパンブルー排除によって測定された、ヒトα−ラクトアルブミン(hLAC)組成物N177−58Bの細胞傷害性試験。B.ルミネセンス(ViaLight)によって測定されたウシα−ラクトアルブミン複合体(bLAC)組成物N262−34Bの細胞傷害性試験。
【図7】A.α−ラクトアルブミン複合体(hLAC)組成物N177−58B、及びウシα−ラクトアルブミン複合体(bLAC)組成物N262−01Eの細胞傷害性試験。B.ウシα−ラクトアルブミン(bLAC)組成物N262−35B−093及びN262−35B−094の細胞傷害性試験。
【図8】32mg/cm2のロードで牛乳から精製されたbLA(A)及び変換後に得られたbLAC産物(B)のSEC−HPLCクロマトグラム。bLA及びbLAC産物は両方とも、23分で溶離する二量体ピークを示し、一方、単量体bLA及びbLACは24.6±0.5分で溶離する。サンプルをウエスタンブロット法によって分析する(図4)。
【図9】bLACへのbLAの変換の間、種々の塩濃度で溶離されたピークのキャラクタライゼーション。bLA/bLAC二量体の保持時間=23分;bLA/bLAC単量体の保持時間=25分。
【実施例】
【0287】
実施例1
ウシα−ラクトアルブミンの精製及びbLACへの変換
ウシの全乳(2L)を、30分間3500×gでの遠心分離によって脱脂した。脱脂乳を、一晩、硫安沈殿させ(264g/L=40−45%飽和)、その後、沈殿物を3500×gで30分間遠心分離した。硫安沈殿上澄みを収穫し、先ず濾紙で濾過し、残存する沈殿物又は脂肪を除去し、続いてPolysep IIメディアを含むMillipore Optiscaleフィルター1.0/0.5μmで濾過した。
【0288】
硫安沈殿上澄みを、硫安沈殿上澄み100mL当たり32.55mL EDTA(0.25M)+24.97mL Tris−EDTA(Tris 50mM,EDTA 1mM,pH7.5)+67.45mLの添加によって、HICクロマトグラフィーのために調整した。調整された媒体をpH7.5へ調節した。
【0289】
15cmのベッド高さ及び19.6cm2の面積を有するPhenyl Sepharose 6 FF High Sub(GE Healthcare)樹脂300mLが充填されたGE Healthcare XK50/30カラムへ前記調整された媒体を適用することによって、疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用して、ウシα−ラクトアルブミンを精製した。全てのクロマトグラフィー実行を、40cm/hrの流速及び40mg bLA/cm2のロードで行った。
【0290】
調整された媒体の適用前に、前記カラムを、平衡化溶液(Tris 50mM,EDTA 1mM,pH 7.5)5カラム体積(CV)で平衡化した。
【0291】
カラム平衡化に続いて、前記調整された硫安沈殿上澄みを適用し、その後、カラムを3CVの平衡化溶液(Tris 50mM,EDTA 1mM,pH 7.5)で洗浄した。前記樹脂に結合されたbLAを、2CVの溶離溶液(Tris 50mM,CaCl2 1mM,pH 7.5)を使用して溶離した。溶離されたbLAを、フラクションコレクターで回収し、メインピークサンプル容積は約150〜200mLのであった。bLAの回収は約600mgであった。
【0292】
クロマトグラフィー実行後、カラムを水で洗浄し、NaOH(1M)で再生した。
【0293】
平衡から再生までのクロマトグラフィー実行は、約415分かかった。
【0294】
HIC精製から回収されたbLAを、変換前に、Mini kleenpak 20フィルター(Pall)で濾過した。
【0295】
10cmのベッド高さ及び19.6cm2の面積を有するDEAE Trisacryl plus M(Pall Biosepra)樹脂200mLが充填されたGE Healthcare XK50/20カラムにおいて、α−ラクトアルブミンの変換を行った。全てのクロマトグラフィー実行を、40cm/hrの流速及び15mg bLA/cm2のロードで行った。
【0296】
第1のHIC実行から回収されたbLAの適用前に、カラムをオレイン酸でプレ調整した。先ず、3CVの平衡化溶液(Tris 10mM,NaCl 0.1M,pH 8.5)を使用して、カラムを平衡化した。オレイン酸プレ調整を、エタノール2.5mL及び10mM Tris(pH 8.5)200mLと共にオレイン酸200μLの溶液160mLをカラム上に適用することによって行い、その後、カラムを2CVの平衡化溶液(Tris 10mM,NaCl 0.1M,pH 8.5)、次いで3勾配ステップ溶離で洗浄した。ステップ1:1CVについて0−15%の溶離溶液(Tris 10mM,NaCl 1M,pH 8.5)、ステップ2:2CVについて15%の溶離溶液(Tris 10mM,NaCl 1M,pH 8.5)、次いで、2CVの100%溶離溶液(Tris 10mM,NaCl 1M,pH 8.5)。前記ステップ溶離後、カラムを3CVの平衡化溶液(Tris 10mM,NaCl 0.1M,pH 8.5)で平衡化した。
【0297】
オレイン酸でカラムをプレ調整した後、HICによって得られたbLAを、100mL HIC回収当たり50mL Tris(100mM)+50mL EDTA(0.25M)及び300mL Milli−Q H2Oの添加によって調整し、pH 8.5及び導電率6.0±0.5mS/cm、その後、それをカラム上へ適用した。
【0298】
調整されたbLA含有HIC回収の適用後、カラムを2CVの平衡化溶液(Tris 10mM,NaCl 0.1M,pH 8.5)次いで3勾配ステップ溶離で洗浄した。ステップ1:1CVについて0−15%の溶離溶液(Tris 10mM,NaCl 1M,pH 8.5)、ステップ2:2CVについて15%の溶離溶液(Tris 10mM,NaCl 1M,pH 8.5)、次いで4CVの100%溶離溶液(Tris 10mM,NaCl 1M,pH 8.5)。
【0299】
bLACを、フラクションコレクターで回収し、メインピークサンプル容積は約150−200mLであった。bLACの回収は約160mgであった。
【0300】
各バッチのbLA変換後、カラムを、2CVの酢酸(1M)、2CVの100mM Tris(pH 8.5)、2CVのNaOH(0.5M)、4CVの100mM Tris(pH 8.5)及び2〜3CVの20%エタノールで再生し、ここで、カラムを保存した。
【0301】
プレ調整平衡から再生までの変換クロマトグラフィー実行は、約560分かかった。
【0302】
緩衝剤交換及び濃縮の前に、bLACをMini Kleenpak 20フィルター(Pall)で濾過した。
【0303】
変換されたウシα−ラクトアルブミンを、Aekta CrossFlow装置を使用して、緩衝剤交換し濃縮した。濾過を、KvickStart 5kDa限外濾過膜を使用して行った。リテンテート(retentate)流量は、80mL/分、ロード<9.6mg/cm2及び4.0barのTMPリミットであった。変換されたウシα−ラクトアルブミンを約9mg/mLへ濃縮し、緩衝剤を0.9%NaClへ7回交換した。
【0304】
ウエスタンブロット法による単量体及び/又は多量体bLACの測定
オレイン酸と複合体化したウシα−ラクトアルブミンの単量体/多量体組成物(bLAC)を、ウエスタンブロット法によって視覚化することができた。bLACの単量体及び多量体形態を、供給業者(PAGEgel)によって推奨される標準プロトコルを使用して、16%SDSゲル(PAGEgel)において分離することができ、引き続いてPVDF膜へブロッティングした。単量体及び多量体形態を、1:6000に希釈されたHRP標識ヤギ抗ウシ−ラクトアルブミン(Bethyl A10−128P)を使用しての前記膜上での免疫検出によって視覚化し、化学発光基質(SuperSignal West Pico化学発光基質,Pierce)で検出することができた(図3を参照のこと)。
【0305】
SEC−HPLCによる単量体及び/又は多量体bLACの測定
オレイン酸と複合体化されたウシα−ラクトアルブミンの単量体/多量体組成物(bLAC)を、SEC−HPLCによって視覚化することができた。bLACの単量体及び多量体形態を、Superdex 75,Tricorn 10/300カラム(GE Health Care)上へbLAC 25μLを注入することによって分離することができた。安定なベースラインが得られるまで、カラムを溶離緩衝剤(Tris 10mM,NaCl 140mM,NaN3 0.001%,pH7.4)で平衡化した。bLACサンプルの適用後、サンプルを、1サンプル当たり80分の実行時間を生じる38cm/hrの流量で溶離緩衝剤(Tris 10mM,NaCl 140mM,NaN3 0.001%,pH7.4)40mLで溶離した。bLACの単量体形態は24.6±0.5分後に溶離し、一方、二量体は23±0.5分後に溶離した(図2を参照のこと)。
【0306】
実施例2
単量体α−ラクトアルブミン組成物の細胞傷害性
α−ラクトアルブミン組成物の細胞傷害活性を、Cambrex製のViaLight(登録商標)PLUS細胞増殖及び細胞傷害性バイオアッセイキットを使用して、下記および図4に示される概要に従い、生存能力アッセイで試験した。LAC調製物の効力を、5%ウシ胎仔血清、1%非必須アミノ酸及び2mMピルビン酸ナトリウムが補充されたRPMI 1640培地(HEPES無し)中において培養されたマウスリンパ性白血病細胞株L1210(ATCC cat.no CCL−219)を殺すそれらの能力から測定した。
【0307】
各々の試験したLAC調製物から、好適な希釈系列を0.9% NaCl溶液において作製した。各希釈物20μLを、三連で、96ウエルホワイトウォール細胞培養プレート中において血清及びHEPESを含まないRPMI 1640培地中にPBS洗浄されたL1210細胞100,000又は200,000個を含有する細胞懸濁液50μLと混合した。37℃及び5%CO2で1時間インキュベーションした後、1ウエル当たりウシ胎仔血清5μLを添加し、全ての細胞外LACを不活性化した。37℃及び5%CO2でさらに1時間インキュベーションすることによって、細胞にさらにアポトーシスを受けさせ、次いで、培養物の生存能力を測定した。
【0308】
培養物の生存能力を、LACの代わりに0.9%NaCl溶液20μLで処理したコントロール培養物に対する存在するATPの量を測定することによって、又は、トリパンブルー排除によって、測定することができた。ATPは、全ての代謝的に活性な細胞中に存在する。死細胞中において、ATPは急速に消滅し、従って、生存細胞のみがATPを含有すると考えられ得る。従って、ATPの相対レベルと生存細胞のパーセンテージとの間には直接的な相関関係が存在する。ATPの相対量を、Cambrex製のViaLight PLUSキット及び照度計を使用して測定した。ATPを定量するために、以下の反応を使用した:
【数1】

【0309】
発光は、照度計においてルミネセンスとして測定された。ルミネセンスは、ATP濃度と線形的に関連した。本方法を使用した場合、前記プレートをインキュベーターから取り出し、室温で10分間冷却した。1ウエル当たりViaLight PLUSキットからの溶解試薬50μLを添加し、プレートを室温で10分間インキュベートした。次いで、ViaLight PLUSキットからのAMR PLUS溶液100μLを各ウエルへ添加し、プレートを室温で5分間インキュベートした。プレートを、1秒の統合読み取り時間で照度計において読み取った。
【0310】
得られたデータから、生存能力又はルミネセンスに対するLAC用量のグラフ(100,000細胞当たりのμg、又は1細胞当たりのpg)をプロットすることができ、LD50(使用した条件及び特定の曝露時間でのL1210細胞の50%に対して致死的であるLACの用量)を測定することができた。ルミネセンス測定法からの結果は、トリパンブルー排除によって得られた結果と同等であることがわかった。
【0311】
α−ラクトアルブミンのいくつかのバッチを試験して得られた結果を下記の表に示す。
【表1】

【0312】
実施例3
α−ラクトアルブミン複合体の単量体/多量体bLAC比率についての決定因子としてのHICのロード
単量体/多量体bLAC比率を、実施例1に記載の疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製したbLAの単量体/多量体組成物によって制御することができた。
【0313】
2mg/mLゲル(32mg/cm2)のロードによって二量体及び単量体形態の両方を有するbLAが生じ(図8)、一方、6mg/mL樹脂(90mg/cm2)のロードによって単量体bLAのみが得られた(実施例1、図3)。bLAの変換は実施例1に記載の通りに行った。
【0314】
実施例4
各サンプル調整の前に、新たに3.5mMのオレイン酸溶液を調製した。オレイン酸(20μL)を、エタノール96%(0.25mL)及びTris−HCl(10mM)pH8.5、NaCl(0.1M)(20mL)と混合した。
【0315】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって精製されたbLAを、EDTA、Tris(0.1M pH8.5)及びオレイン酸溶液で調整した。種々のサンプル調整の説明を表4に示す。
【表2】

【0316】
AIECカラムにおける適用の前に、調整されたサンプルを室温で約30分間混合した。
【0317】
カラムに新たにQ Sepharose XL樹脂(GE healthcare)を充填した。表2に示される種々のbLAサンプルを、このカラム上に適用した。AIEC実行についてのクロマトグラフィーパラメータは、以下であった。
【表3】

【0318】
いくつかの再生ストラテジーを試験した:
【表4】

【0319】
70%エタノールでの再生手順を、オレイン酸又はbLACなどの疎水的に結合された物質を除去するために適用した。
【0320】
収率及び効力
変換実行の収率を、標準手順に従ってサイズ排除HPLC(SE−HPLC)実行によって測定した。
【0321】
変換されたbLAの効力を、殺細胞によって測定した。殺細胞アッセイを、本明細書以下の実施例5に記載されるように行った。殺細胞アッセイによって測定されたbLACの効力を、1細胞当たりのpg bLACで示した(LD50)。殺細胞アッセイにおける試験の前に、bLAC溶液を、NAP−25脱塩カラム(GE HealthCare)を使用してNaCl(0.9%)に対して脱塩した。
【0322】
結果:変換実行の比較
Q sepharose XLにおけるいくつかの変換実行のクロマトグラムが図9に見られる。全ての実行において、EDTAの最終濃度は1mMであった。
【0323】
変換実行の結果は、表3において要約した。収率計算及び殺細胞能を、70%溶媒B(溶媒A中)で溶離されたピークについて行った。
【0324】
【表5】

【0325】
表3に示される結果から、変換の収率が80%を超えることが理解され得る。
【0326】
2.9、4.1及び8.8mg/mL Q sepharose XLに対応する3つの異なるbLAロード30、42及び90mg/cm2を、LAC−041、−042及び−047において試験した。変換の収率は、最も高いロード(LAC−047)でも依然として80%を超えるとわかった。
【0327】
SE−HPLC
bLACへのbLAの異なる変換実行から溶離されたピークをSE−HPLCによって分析した。実行の収率を測定するために、これらの分析を変換の前及び後のbLA/bLACの定量化のために使用した(表3を参照のこと)。この分析によって、変換後のbLAC、即ち、単量体、二量体、又は凝集体形態の純度も示された。これは、変換実行が異なるbLAロードで行われた場合に、特に重要であった。
【0328】
SE−HPLCクロマトグラム(図9)を見ると、70%Bバッファーで回収されたbLACは主に単量体形態であったことがわかる。より高いロードで、bLAC単量体のみが回収される傾向があった。次いで、bLA二量体が、より少量のbLA単量体を伴って、45%Bバッファーでの第1ステップ勾配において回収された。殺細胞活性は、45%Bバッファー溶離において回収されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との単量体α−ラクトアルブミン複合体を含む薬学的組成物であって、該α−ラクトアルブミンがウシα−ラクトアルブミン又はその機能的均等物であり、該組成物が単量体α−ラクトアルブミンを少なくとも95質量%含む、薬学的組成物。
【請求項2】
組成物が単量体α−ラクトアルブミンを少なくとも98質量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中の多量体又はオリゴマーα−ラクトアルブミンの量が、PAGE及び免疫ブロット法などの方法による検出のレベル未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
LD50として測定される細胞傷害活性が0.1mg/ml未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
LD50として測定される細胞傷害活性が0.04mg/ml未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
脂肪酸又は脂質が、C16:1:6シス及びトランス、C16:1:9シス及びトランス、C16:1:11シス及びトランス、C18:1:6シス又はトランス、C18:1:9シス及びトランス、C18:1:11シス又はトランス、C18:1:13シス又はトランス、C20:1:9シス及びトランス、C20:1:11シス及びトランス、C20:1:13シス及びトランスの群より選択される一価飽和酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
機能的均等物がウシα−ラクトアルブミンと少なくとも70%同一である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
機能的均等物が、ウシα−ラクトアルブミンの少なくとも40個のアミノ酸の連続配列を少なくとも1つ含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
機能的均等物が、ウシα−ラクトアルブミンのアミノ酸4−8、34−38、48−58、75−88、91−97及びアミノ酸103−121の群より選択されるウシα−ラクトアルブミンのアミノ酸セグメント少なくとも2つの配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
α−ラクトアルブミンの前記機能的均等物が、ウマ、ヤギ、ウシ、ラクダ及びブタのα−ラクトアルブミンの群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
α−ラクトアルブミンがウシのものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
タンパク質濃度が5mg/mlを超える、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との単量体α−ラクトアルブミン複合体を含む薬学的組成物の製造方法であって、該α−ラクトアルブミンがウシα−ラクトアルブミン又はその機能的均等物であり、該組成物が単量体α−ラクトアルブミンを少なくとも95質量%含み、以下の工程:
a.単量体α−ラクトアルブミンを少なくとも95質量%含むα−ラクトアルブミン組成物を得る工程、
b.以下によって該α−ラクトアルブミンをα−ラクトアルブミン複合体へ変換する工程
i.該α−ラクトアルブミンからのカルシウムの放出、及び
ii.該α−ラクトアルブミンへの脂肪酸又は脂質の結合、並びに
c.該α−ラクトアルブミン複合体を精製する工程
を含む、方法。
【請求項14】
医薬の製造のための、α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との単量体α−ラクトアルブミン複合体を含む組成物の使用であって、該α−ラクトアルブミンがウシα−ラクトアルブミン又はその機能的均等物であり、該組成物が単量体α−ラクトアルブミンを少なくとも95質量%含む、使用。
【請求項15】
呼吸器感染症の治療のための請求項14に記載の使用。
【請求項16】
いぼの治療のための請求項14に記載の使用。
【請求項17】
乳頭腫の治療のための請求項14に記載の使用。
【請求項18】
癌の治療のための請求項14に記載の使用。
【請求項19】
膀胱癌の治療のための請求項14に記載の使用。
【請求項20】
血管新生の阻害のための請求項14に記載の使用。
【請求項21】
i.α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との単量体α−ラクトアルブミン複合体を含む組成物であって、該α−ラクトアルブミンがウシα−ラクトアルブミン又はその機能的均等物であり、該組成物が単量体α−ラクトアルブミンを少なくとも95質量%含む、組成物、並びに
ii.薬学的賦形剤
を含む医薬を投与することを含む治療方法。
【請求項22】
α−ラクトアルブミンと脂肪酸又は脂質との単量体α−ラクトアルブミン複合体を含む組成物であって、該α−ラクトアルブミンがウシα−ラクトアルブミン又はその機能的均等物であり、該組成物が単量体α−ラクトアルブミンを少なくとも95質量%含む、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−510180(P2010−510180A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536606(P2009−536606)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/DK2007/050169
【国際公開番号】WO2008/058547
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(507364447)ニーア・ハムレット・ファルマ・アー・ベー (3)
【Fターム(参考)】