説明

α−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物及び該α−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物の製造方法

【課題】α−リポ酸包接率が高く、シクロデキストリンにより包接されたα−リポ酸の有効活性比の高められたα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物を提供する。
【解決手段】シクロデキストリンがα−リポ酸を包接してなるα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物において、該包接化合物中にα−リポ酸を30質量%以上含有することを特徴とするα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物。また、シクロデキストリンがα−リポ酸を包接してなるα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物の製造方法において、α−リポ酸のアルコール溶液とシクロデキストリンの水分散液とを混合し、超音波周波数30〜60KHz、処理時間1.5〜3.5時間、処理温度4〜30℃で超音波処理することを特徴とするα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物及び該α−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α―リポ酸は、チオクト酸とも呼ばれ、その化学名は1,2−ジチオラン−3−バレリアン酸(吉草酸)である。
【0003】
α―リポ酸(チオクト酸)は、ヒトの肝臓、腎臓、心臓の中に多く存在するビタミン様物質であり、ピルベート及び他のα−ケト酸の脱カルボキシル反応にかかわる酵素複合体の補酵素としてその生理的機能を果たしている。α―リポ酸(チオクト酸)は、それを外因的に摂取することによっても、活性酸素除去、ビタミンC、ビタミンEの再生、糖代謝の改善、糖尿病にともなう糖尿病性白内障、神経病、心血管損傷等糖尿病合併症の予防と治療、急性肝炎、肝硬変、肝昏迷、脂肪肝等肝臓疾病の予防と治療、肝臓病から引き起こる栄養代謝失調等の症状治療、肥満や体重減少、又はエネルギー消費量増大等の作用効果を期待することができ、ヒトの健康や美容に有用であることが知られている。
【0004】
以上のように、α−リポ酸(チオクト酸)は有用な化合物であるが、その化学的性質に起因して種々の問題がある。すなわち、例えば、35℃程度の温度条件でも自己重合反応をおこし人体に吸収されない不活性体となってしまうため、保存、輸送時には温度管理が必要でありコスト高となってしまう。また、製造過程で重合がおこると、加工機材への粘着・塞栓等の支障をきたす可能性もある。更にまた、リポ酸の弱酸性の性質により、賦形剤等との予期せぬ反応が懸念される。
【0005】
一方また、α−リポ酸(チオクト酸)の摂取に際しては、その辛味と刺激臭が受容されにくく、また、その粘膜刺激性から、経口摂取する場合には、息苦しさ、胃もたれ等の不快症状の原因ともなる。
【0006】
このような問題に対して、シクロデキストリンにα−リポ酸を包接させることで、α−リポ酸の重合化に対する安定性や、刺激臭、辛味若しくは粘膜刺激性を改善できることが知られている。すなわち、例えば、下記特許文献1には、チオクト酸と炭水化物との付加化合物の製造方法が開示され、炭水化物としてシクロデキストリンを用いることが記載され、また、下記特許文献2には、(R)−チオクト酸およびシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体からなる包接化合物及び(S)−チオクト酸およびシクロデキストリンまたはシクロデキストリン誘導体からなる包接化合物が開示されている。
【特許文献1】特公昭37−7970号公報
【特許文献2】特開平7−188304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、シクロデキストリンはα−リポ酸によって所望される活性にとって不必要な成分であり、その摂取等、人体への接触量はできるだけ抑えることが好ましい。したがって、そのためには、シクロデキストリンがα−リポ酸を包接してなるα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物において、α−リポ酸の有効活性比を高めて包接化合物中のシクロデキストリン含量を抑えること、言い換えればα−リポ酸の包接率を高めることが必要であった。
【0008】
上記特許文献1又は2に記載された技術は、このような課題を解決するものではなかった。また、汎用されるシクロデキストリンの分子量は1100程度であり、その空洞直径は0.6〜1.0nmであることから(例えば、β―シクロデキストリンにおいては分子量1135、空洞直径0.7〜0.8nm。)、分子量206のα−リポ酸の包接率をそのモル比で1:1以上に向上させることは困難であると考えられていた。
【0009】
したがって、本発明の目的は、α−リポ酸包接率が高く、シクロデキストリンにより包接されたα−リポ酸の有効活性比の高められたα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、α−リポ酸のアルコール溶液とシクロデキストリンの水分散液とを混合し、その混合液に所定条件の超音波処理を施すことによって、意外にもα−リポ酸の包接率を包接化合物中にα−リポ酸を30質量%以上含有するまでに向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0012】
(1)シクロデキストリンがα−リポ酸を包接してなるα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物において、該包接化合物中にα−リポ酸を30質量%以上含有することを特徴とするα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物。
【0013】
なお、本発明において、「α−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物中のα−リポ酸質量%」は、「α−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物に含まれるα−リポ酸の質量」を「α−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物の質量」で除し、100を乗して得た値であり、以下では、「包接率」とも称する。
【0014】
(2)前記シクロデキストリンが、β―シクロデキストリン又はその誘導体である上記(1)記載のα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物。
【0015】
(3)シクロデキストリンがα−リポ酸を包接してなるα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物の製造方法において、α−リポ酸のアルコール溶液とシクロデキストリンの水分散液とを混合し、超音波周波数30〜60KHz、処理時間1.5〜3.5時間、処理温度4〜30℃で超音波処理することを特徴とするα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物の製造方法。
【0016】
(4)前記シクロデキストリンが、β―シクロデキストリン又はその誘導体である上記(3)記載の製造方法。
【0017】
(5)前記α−リポ酸のアルコール溶液が、α−リポ酸をエタノール濃度90%以上のアルコール溶液に溶解したものである上記(3)又は(4)記載の製造方法。
【0018】
(6)前記シクロデキストリンの水分散液が、超音波処理によりシクロデキストリンを水に分散させたものである上記(3)〜(5)いずれか一つに記載の製造方法。
【0019】
(7)α−リポ酸のアルコール溶液とシクロデキストリンの水分散液とを混合する工程において、混合体積比として、α−リポ酸のアルコール溶液の10部に対してシクロデキストリンの水分散液を9部以下で混合する上記(3)〜(6)いずれか一つに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明のα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物によれば、α−リポ酸を30質量%以上含有するので、α−リポ酸によって所望される活性にとって不必要なシクロデキストリン含量を抑えて、α−リポ酸の有効活性比を高めることができる。
【0021】
また、本発明のα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物の製造方法によれば、α−リポ酸包接率が高く、シクロデキストリンにより包接されたα−リポ酸の有効活性比の高められたα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に用いられるα−リポ酸は、下記化学式〔1〕で表される周知の化合物である。
【0023】
【化1】

【0024】
α−リポ酸(チオクト酸)には(R)−チオクト酸と(S)−チオクト酸の鏡像異性体が存在するが(上記特許文献2参照。)、本発明に用いられるα−リポ酸はその混合物(ラセミ体)を用いてもよく、また、光学活性体を用いてもよい。例えば、米国シグマアルドリッチ社等からα−リポ酸純度98%のラセミ体を入手でき、本発明に好ましく用いることができる。
【0025】
本発明に用いられるシクロデキストリンは、数分子のD−グルコースがα(1→4)グルコシド結合によって結合し環状構造をなしたオリゴ糖であり、周知のシクロデキストリン類を使用できる。これらには、メチル、エチル、カルボキシメチル、ヒドロキシアルキル、ジアルキルアミノエチル、スルホアルキル、カロボキシアルキル等のアルキル基や分岐鎖糖を有するシクロデキストリンや、また、2量体のシクロデキストリンが含まれる。一般に包接化合物として汎用されているものは、グルコースが6個結合しているα−シクロデキストリン、7個結合しているβ−シクロデキストリン、8個結合しているγ−シクロデキストリンであり、例えば、株式会社林原生物化学研究所等から入手でき、本発明に好ましく用いることができる。
【0026】
シクロデキストリンの環状構造の内部は他の比較的小さな分子を包接できる程度の大きさの空孔となっている。空孔の空洞内径は上記α−シクロデキストリンで0.6nm、β−シクロデキストリンで0.7〜0.8nm、γ−シクロデキストリン0.9〜1.0nm程度とされており、空孔内部は疎水性となっている。水に難溶性であり脂溶性の高い分子量206のα−リポ酸(チオクト酸)は、シクロデキストリンとの疎水性相互作用を介して空洞内部に保持され及び/又は部分的に保持され、シクロデキストリンとの包接状態を構成する。また、シクロデキストリンの水への溶解度は、α−シクロデキストリンで14.5mg/100ml水、β−シクロデキストリンで1.85mg/100ml水、γ−シクロデキストリンで23.2mg/100ml水である。本発明においては、このうちβ−シクロデキストリンを特に好ましく用いることができる。
【0027】
本発明においては、α−リポ酸のアルコール溶液とシクロデキストリンの水分散液とを混合し、その混合液に対し、超音波周波数30〜60KHzより好ましくは40〜50KHz、処理時間1.5〜3.5時間より好ましくは2〜2.5時間、処理温度4〜30℃より好ましくは15〜30℃の条件で超音波処理を施すことにより、包接化合物中にα−リポ酸を30質量%以上含有するα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物を得ることができる。なお、α−リポ酸分子とシクロデキストリン分子が接触するように前記混合液をよく攪拌しながら前記超音波処理を施すことか好ましいことは勿論である。
【0028】
超音波処理は周知の方法でおこなえばよく、工業用超音波振動器等を用いて後述する条件下に超音波処理をおこなえばよい。
【0029】
上記α−リポ酸のアルコール溶液において、アルコール溶媒に要求される主な作用は、リポ酸を溶解してシクロデキストリンの水分散液との混合後、混合液の中でリポ酸分子がデキストリン分子と過不足なく接触させる作用である。そのようなアルコール溶媒としては、例えば、エタノール又は含水エタノールを好ましく用いることができ、エタノール濃度が90%以上であればα−リポ酸を高濃度に溶解するので好ましく、更に95%以上であればα−リポ酸を更に高濃度に溶解するのでより好ましい。一方、α−リポ酸の濃度が高まれば、上記混合液の流動過程において、α−リポ酸分子が混合液全体に攪拌されず部分的に滞留する可能性がある。したがって、上記α−リポ酸のアルコール溶液においては、飽和度60〜80%のα−リポ酸のアルコール溶液を用いることが好ましい。
【0030】
また、上記混合液の中でα−リポ酸分子がシクロデキストリン分子と過不足なく接触させるためには、シクロデキストリンの水中における分散度合も重要な要素となる。したがって、上記シクロデキストリンの水分散液は、超音波処理によりシクロデキストリンを水に分散させたものであることが好ましい。そして、その水分散液中のシクロデキストリン量としては、5〜10gのシクロデキストリンを水10mlに添加して調製したものとすることが好ましく、6〜8gのシクロデキストリンを水10mlに添加して調製したものとすることがより好ましい。
【0031】
更にまた、上記混合液の中でα−リポ酸分子がシクロデキストリン分子と過不足なく接触させるためには、α−リポ酸のアルコール溶液とシクロデキストリンの水分散液とをいかなる混合比で混合するかも重要な要素となる。したがって、上記混合液は、α−リポ酸のアルコール溶液とシクロデキストリンの水分散液とを混合する工程において、混合体積比として、α−リポ酸のアルコール溶液の10部に対してシクロデキストリンの水分散液を9部以下で混合する工程を経て得られたものであることが好ましい。
【0032】
一方、本発明のα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物の製造方法によれば、α−リポ酸包接率の高い包接化合物を製造することができ、例えば、該包接化合物中にα−リポ酸を30質量%以上、より好ましくは35質量%以上含有するα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物を得ることができる。
【0033】
本発明のα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物は、例えば、医薬用経口剤に適したものとして、錠剤、粉末、顆粒、カプセル剤等、また、美容用塗布剤に適したものとしてクリーム剤等の製剤に配合することができるが、これらに限定されない。更にまた、α−リポ酸やシクロデキストリンは食品安全性の面で問題が少なく、健康食品や栄養補助食品等に配合することもできる。
【実施例】
【0034】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0035】
<実施例1> (α−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物の調製)
α−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物の調製は以下の手順でおこなった。
【0036】
すなわち、まず、常温下、5gのα−リポ酸を10mlの含水エタノール(エタノール濃度95%)に添加して攪拌により溶かし、α−リポ酸5g/10mlアルコール液のα−リポ酸のアルコール溶液を得た。なお、α−リポ酸の溶解度に対するエタノール濃度の影響を調べるためには、下記試験例1に後述するように、溶媒として用いた含水エタノールのエタノール濃度について、適宜その条件を変えた。
【0037】
また、常温下、8gのβ―シクロデキストリンを10mlの脱イオン水に添加して攪拌により懸濁させた後、超音波振動器で処理してシクロデキストリン8g/10ml水のシクロデキストリンの水分散液を得た。
【0038】
次に、上記シクロデキストリンの水分散液を絶えず攪拌しながら、また、超音波振動器で超音波処理をおこないながら、当該シクロデキストリンの水分散液に上記α−リポ酸のアルコール溶液をゆっくりと注ぎ込み、その後更に攪拌しながら超音波処理を続けた。なお、この超音波処理をともなう混合工程においては、下記試験例2〜5に後述するように、(1)α−リポ酸のアルコール溶液とシクロデキストリンの水分散液との混合体積比、(2)温度、(3)周波数、(4)時間について、適宜それらの条件を変えた。
【0039】
上記超音波処理の後、混合液をステンレスの盆にあけ、表面を均一にし、約2〜3時間30℃で温風乾燥した。そして、得られた乾燥物を取り出し100メッシュの篩にかけた後、エタノール濃度95%の含水エタノールで未包接α−リポ酸を洗浄し、1500回転/分の条件で10分間遠心分離し、沈殿物と溶液分を分離した。分離した沈殿物を30℃で温風乾燥し、α−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物を得た。
【0040】
<試験例1> (α−リポ酸の含水エタノールにおける溶解度に及ぼすエタノール濃度の影響)
α−リポ酸のアルコール溶液において、エタノールの主な作用は、溶媒の役割を担い、リポ酸を溶解することである。シクロデキストリンの水分散液との混合後、混合液の中でリポ酸分子がデキストリン分子と過不足なく接触できるのはその作用のためである。したがって、まず、α−リポ酸の溶解度に対するエタノール濃度の影響を検討した。
【0041】
すなわち、α−リポ酸のアルコール溶液の調製のために用いた含水エタノールのエタノール濃度を、65、70、75、80、85、90、95%と変化させ、常温でのα−リポ酸の溶解度を測定した(具体的にどのように測定したのかを記載できればお願いします)。その結果を下記表1及び図1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
その結果、エタノール濃度が高いほど溶解度が高く、エタノール濃度95%において溶解度は7g/10mlに達した。ただし、エタノール濃度95%の飽和溶液は、上記混合液の流動過程においてα−リポ酸分子が混合液全体に攪拌されず部分的に滞留する可能性があった。この結果を受け、以下の試験においては、エタノール濃度95%のアルコール溶液10mlに5gのα−リポ酸を溶解したものを用いることとした。
【0044】
なお、シクロデキストリンの水中における分散性も重要な要素となるため別途検討し、デキストリンと水の質量/体積が4:5の比率であれば、当該シクロデキストリンの水分散液を攪拌しやすくなることを確認した。この結果を受け、上記実施例1のとおり、脱イオン水10mlに8gのβ―シクロデキストリンを添加して超音波処理により分散させたものを用いることとした。
【0045】
<試験例2> (α−リポ酸のアルコール溶液とシクロデキストリンの水分散液との混合体積比の影響)
上記実施例1の超音波処理をともなう混合工程において、α−リポ酸のアルコール溶液とシクロデキストリンの水分散液との混合体積比を、比(α−リポ酸のアルコール溶液:シクロデキストリンの水分散液)として、9:10、10:10、10:9、10:8、10:7と変えて、それがα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物のα−リポ酸包接率に与える影響について検討した。なお、超音波振動時の温度は20℃、超音波周波数は40KHz、超音波処理時間は2時間とした。
【0046】
αリポ酸包接率の算出は、上記実施例1の未包接α−リポ酸を洗浄する工程で得られる、洗い流された部分のα−リポ酸量を測定して、原料のα−リポ酸含量からの差分量が原料とした全量のβ−シクロデキストリンと包接状態にあるとして算出した。その結果を下記表2及び図2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
その結果、α−リポ酸のアルコール溶液とシクロデキストリンの水分散液との混合体積比を、比(α−リポ酸のアルコール溶液:シクロデキストリンの水分散液)として、10:7で混合するのが最も効率的であることが明らかとなった。この結果を受け、以下の試験においては、混合体積比を10:7とすることとした。
【0049】
<試験例3> (超音波処理時の温度条件の影響)
上記実施例1の超音波処理をともなう混合工程において、超音波処理時の温度条件を、0、4、10、15、20、25、30℃と変えて、それがα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物のα−リポ酸包接率に与える影響について検討した。なお、超音波周波数は40KHz、超音波処理時間は2時間とした。また、αリポ酸包接率は上記試験例2と同様に算出した。結果を下記表3及び図3に示す。

【0050】
【表3】

【0051】
その結果、超音波処理時の温度条件を20℃とするのが最も効率的であることが明らかとなった。この結果を受け、以下の試験においては、超音波処理時の温度条件を20℃とすることとした。
【0052】
<試験例4> (超音波処理時の周波数条件の影響)
上記実施例1の超音波処理をともなう混合工程において、超音波処理時の周波数条件を、20、30、40、50、60、70KHzと変えて、それがα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物のα−リポ酸包接率に与える影響について検討した。なお、超音波処理時間は2時間とした。また、αリポ酸包接率は上記試験例2と同様に算出した。結果を下記表4及び図4に示す。
【0053】
【表4】

【0054】
その結果、超音波処理時の周波数条件を40KHzとするのが最も効率的であることが明らかとなった。この結果を受け、以下の試験においては、超音波処理時の周波数条件を40KHzとすることとした。
【0055】
<試験例5> (超音波処理時間の影響)
上記実施例1の超音波処理をともなう混合工程において、超音波処理時間を、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5時間と変えて、それがα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物のα−リポ酸包接率に与える影響について検討した。なお、αリポ酸包接率は上記試験例2と同様に算出した。結果を下記表5及び図5に示す。
【0056】
【表5】

【0057】
その結果、超音波処理時間を2時間とするのが最も効率的であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物は、例えば、医薬品、食品又は化粧品等の原料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】溶媒のエタノール濃度とα−リポ酸の溶解度の関係を示す図表である。
【図2】α−リポ酸のアルコール溶液/シクロデキストリンの水分散液の混合体積比と、α−リポ酸の包接率との関係を示す図表である。
【図3】超音波処理時の温度条件と、α−リポ酸の包接率との関係を示す図表である。
【図4】超音波処理時の周波数条件と、α−リポ酸の包接率との関係を示す図表である。
【図5】超音波処理時間と、α−リポ酸の包接率との関係を示す図表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリンがα−リポ酸を包接してなるα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物において、該包接化合物中にα−リポ酸を30質量%以上含有することを特徴とするα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物。
【請求項2】
前記シクロデキストリンが、β―シクロデキストリン又はその誘導体である請求項1記載のα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物。
【請求項3】
シクロデキストリンがα−リポ酸を包接してなるα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物の製造方法において、α−リポ酸のアルコール溶液とシクロデキストリンの水分散液とを混合し、超音波周波数30〜60KHz、処理時間1.5〜3.5時間、処理温度4〜30℃で超音波処理することを特徴とするα−リポ酸/シクロデキストリン包接化合物の製造方法。
【請求項4】
前記シクロデキストリンが、β―シクロデキストリン又はその誘導体である請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
前記α−リポ酸のアルコール溶液が、α−リポ酸をエタノール濃度90%以上のアルコール溶液に溶解したものである請求項3又は4記載の製造方法。
【請求項6】
前記シクロデキストリンの水分散液が、超音波処理によりシクロデキストリンを水に分散させたものである請求項3〜5いずれか一つに記載の製造方法。
【請求項7】
α−リポ酸のアルコール溶液とシクロデキストリンの水分散液とを混合する工程において、混合体積比として、α−リポ酸のアルコール溶液の10部に対してシクロデキストリンの水分散液を9部以下で混合する請求項3〜6いずれか一つに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−99661(P2007−99661A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290429(P2005−290429)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(399080490)株式会社シンギー (7)
【Fターム(参考)】