説明

α型サイアロン蛍光体およびそれを用いた発光素子

【課題】青〜緑色発光を示すCe3+を付活したα型サイアロン蛍光体について、従来よりも長波長での励起が可能であり、しかも発光効率の優れた蛍光体とそれを用いた発光素子の提供。
【解決手段】Si−Nに対するAl−Nの置換量を高くした、下式の蛍光体。(Ma+x,Ce3+y)Si12−(m+n)Al(m+n)OnN16−n(式中、Mは、Li、Ca、Mg、Y又はランタニド元素(LaとCeを除く)から選ばれる少なくとも1種の元素、Mの原子価をaとすると、m=ax+3y、Ce3+はMサイトを置換)で示されるα型サイアロンであって、1.5≦x+y≦2.25、0.05≦y≦0.5であり、紫外乃至青色光で励起可能なα型サイアロン蛍光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青色〜緑色発光するα型サイアロン蛍光体及びそれを用いた発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2にはCe3+を付活したα型サイアロンは、二価のEuイオン付活の場合に比べ、励起帯、発光帯ともに短波長側にシフトし、励起のピーク波長は約400nmの近紫外域で、蛍光のピーク波長は約500nmでCe特有の非常にブロードな青緑色発光を示すことが記載されている。しかし、この場合は、青色光領域ではほとんど励起されず、青色LEDを励起源とした白色LED用蛍光体としては適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−203504号公報
【特許文献2】特開2004−238506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Ce3+を付活したα型サイアロン蛍光体を白色LED等の発光装置に適用するに当たって、更なる発光効率の向上及び励起の長波長化が期待されている。
本発明の目的は、青〜緑色発光を示すCe3+を付活したα型サイアロン蛍光体について、従来よりも長波長での励起が可能であり、しかも発光効率の優れた蛍光体とそれを用いた発光素子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、Ce3+を付活したα型サイアロン蛍光体の組成に着目して検討を行い、従来よりもSi−Nに対するAl−Nの置換量を高くすることにより、発光効率が向上するとともに、励起帯が長波長側にシフトすることを見いだし、本発明に至ったものである。
即ち、本発明は、一般式:(Ma+,Ce3+)Si12−(m+n)Al(m+n)16−n(Mは、Li、Ca、Mg、Y又ランタニド元素(LaとCeを除く)から選ばれる少なくとも1種の元素、Mの原子価をaとすると、m=ax+3y、Ce3+はMサイトを置換)で示されるα型サイアロンであって、1.5≦x+y≦2.25、0.05≦y≦0.5であり、紫外乃至青色光で励起可能なα型サイアロン蛍光体であり、好ましくは0≦n≦0.8であり、かつMはCaである。
【0006】
また、本発明のα型サイアロン蛍光体は、前記α型サイアロン蛍光体を主成分とする粉末状の蛍光体であり、α型サイアロンの格子定数aが0.789〜0.796nm、格子定数cが0.571〜0.578nmであり、粉末X線回折法で評価した際に、α型サイアロン以外の結晶相の回折強度がα型サイアロンの(210)面の回折線強度に対して、いずれも10%以下である。
【0007】
更に、本発明のα型サイアロン蛍光体は、波長450nmの光で励起した時の外部量子効率が20%以上である。
また、本発明は発光光源と前記α型サイアロン蛍光体から構成される発光素子であり、好ましくは、発光波長の最大強度が240〜480nmにあるLEDであることを特徴とする発光素子である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のCe3+を付活した高m値のα型サイアロン蛍光体は、紫外線だけでなく、青色光で励起され、青緑〜緑色の可視光を効率良く発することができ、種々の発光素子、特に青色LEDや紫外LEDを光源とする白色LEDに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1及び比較例1に係る蛍光体の励起・蛍光スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
α型サイアロンは、一般式:Ma+Si12−(m+n)Al(m+n)16−nで表される。ここでMは、Li、Ca、Mg、Y又はランタニド元素(LaとCeを除く)から選ばれる少なくとも1種の元素である。これは、4式量の単位胞からなるα型窒化ケイ素において、m個のSi−N結合をAl−N結合に置換し、n個のSi−N結合をAl−O結合に置換している。更に、電荷補償のために、Ma+(aはMの価数であり、x=m/a)がx個α型窒化ケイ素結晶の大きなケージ状の空間に侵入固溶している。
【0011】
α型サイアロンに蛍光特性を発現させるためには、Mの一部を固溶可能で発光中心になる元素とする必要がある。Ce3+はイオン半径が大きく、α型サイアロンの結晶を安定化させるのに十分に固溶させることは困難であるが、発光中心としての機能を発現するには十分に固溶可能である。α型サイアロンにおいて、Mサイトの一部をCe3+とすることにより、紫外線で効率良く励起され、青〜緑色発光する蛍光体が得られる。Ce3+の固溶濃度は、一般式:(Ma+,Ce3+)Si12−(m+n)Al(m+n)16−n(m=ax+3y)と表した場合、Ce3+固溶濃度であるy値は0.05〜0.5の範囲であることが好ましい。y値が0.05よりも小さいと発光への寄与が小さく、0.5を越えると、Ce3+間のエネルギー伝達による蛍光の濃度消光が起こるので好ましくない。
【0012】
本発明者は、Ce3+を発光中心としたα型サイアロンの固溶組成(m値、n値)及び電荷補償のために固溶させるMa+に着目し、それらの発光特性との関係を鋭意検討し、特定の固溶組成により、効率良く、Ce3+を固溶させることにより、発光特性が向上し、また固溶組成の変化に対応して、Ce3+近傍の配位環境が変化することにより、励起帯が長波長化し、従来組成では困難であった青色励起が可能であるという知見を得て、本発明に至ったものである。
【0013】
即ち、本発明のα型サイアロン蛍光体は、前記一般式において、1.5≦x+y≦2.25であることが好ましい。x+yが1.5よりも小さい場合は、青色光での励起効率が低く、また紫外線励起においても十分に高い発光強度が得られず、x+yが2.25を越えるα型サイアロンは単相では得難く、蛍光特性に悪影響を及ぼす第二相の生成を伴うので好ましくない。
【0014】
α型サイアロンのm値が取り得る範囲は、n値に依存し、n値が低いほど、熱力学的にα型サイアロン結晶を維持するm値範囲が広がる。本発明のα型サイアロンは、従来よりも高m値となることから、n値は極力小さくすることが好ましい。本発明では、n値を0.8以下とすることにより、m値の範囲を広げることができ、前記のx+y値が得られる。
【0015】
また、本発明者の検討によれば、Mとして、Caを使用すると、幅広い組成範囲でα型サイアロンが安定化し、蛍光特性に優れるので好ましい。しかしながら、励起帯や発光波長の微調整のために、Caの一部を他の元素で置換しても、蛍光特性の大幅な低下がない限りは構わない。
【0016】
本発明では、蛍光発光の観点からは、α型サイアロン結晶相を高純度で極力多く含むこと、できれば単相から構成されていることが望ましいが、若干量の不可避的な非晶質相及び他の結晶相を含む混合物であっても、特性が低下しない範囲であれば構わない。本発明者の検討によれば、粉末X線回折法で評価した際に、α型サイアロン以外の結晶相の回折強度がα型サイアロンの(210)面の回折強度に対して、いずれも10%以下であることが好ましい。10%を越える結晶相が存在すると発光特性が低下するので好ましくない。
【0017】
また、本発明の蛍光体は、前記の様にα型サイアロン以外の成分が存在するため、蛍光体の全組成は必ずしもα型サイアロンの固溶組成に対応しない。α型サイアロン結晶においては、アルミニウム及び酸素の固溶量が増加するに伴い、結晶格子サイズが増加する。そこで、このα型サイアロンの格子定数に着目し、検討した結果、格子定数aが0.789〜0.796nm、格子定数cが0.571〜0.578nmの範囲にある場合に良好な発光特性が得られることを見いだした。
【0018】
Ce3+を付活したα型サイアロン蛍光体に対して、分光蛍光光度計によって、500〜550nmの波長でモニターした励起スペクトルを測定すると、図1に示す様に300nm近傍と390nm近傍に二つのピークが認められる。300nm近傍のピークはα型サイアロン母体材料の基礎吸収に基づくものであり、390nm近傍のピークはCe3+の直接励起によるものである。前記構成を有する本発明のα型サイアロン蛍光体は、励起スペクトルにおける長波長側のピークが長波長側にシフトするという特徴を有しており、青色光励起が可能となる。具体的には、本発明のα型サイアロン蛍光体は、波長450nmの光で励起した場合の外部量子効率が20%以上である。
【0019】
本発明のα型サイアロン蛍光体は、Ce3+を発光中心として用いていることから、蛍光スペクトルは、ブロードであり、その半値幅は100nm以上である。また、蛍光ピーク波長は、励起波長とともに長波長側にシフトする。例えば、波長400nmの近紫外光で励起した場合の蛍光ピーク波長は、500〜530nmであり、波長450nmの青色光で励起した場合は、520〜550nmである。
【0020】
本発明のα型サイアロン蛍光体は、固相反応法や還元窒化法、金属シリコン又はその合金を窒化する方法、気相反応法、シリコンイミド化合物の熱分解法等の公知のケイ素含有窒化物又は酸窒化物の合成方法により得ることができる。一例として、固相反応法により本発明のCe3+付活Ca−αサイアロン蛍光体を得る方法を例示する。
【0021】
原料粉末としては、各構成元素(ケイ素、アルミニウム、カルシウム及びセリウム)の窒化物及び/又は酸化物、更には加熱後に窒化物又は酸化物になる化合物を用いる。これらを用いて反応後に所定のα型サイアロン組成になる様に配合する。
【0022】
前記した各原料を混合する方法については、乾式混合する方法、原料各成分と実質的に反応しない不活性溶媒中で湿式混合した後に溶媒を除去する方法などを採用することができる。尚、混合装置としては、V型混合機、ロッキングミキサー、ボールミル、振動ミル等が好適に利用される。但し、大気中で不安定な窒化カルシウムや窒化セリウムを使用する場合の混合については、それらの加水分解や酸化が合成品特性に影響するため、不活性雰囲気のグローブボックス内で行うことが好ましい。
【0023】
上記の原料混合粉末を、原料及び合成される蛍光体と反応性の低い材質の容器、例えば窒化ホウ素製容器内に充填し、窒素雰囲気中で加熱処理することにより、原料粉末間の固溶反応を進行させ、α型サイアロンを得る。原料混合粉末の容器内への充填は、固溶反応中の粒子間焼結を抑制する観点から、できるだけ嵩高くすることが好ましい。具体的には、原料粉末の容器への充填する際にかさ密度を0.6g/cm以下とすることが好ましい。
【0024】
前記の加熱温度は組成により異なるので一概に規定できないが、一般的に1700℃以上2000℃以下の温度範囲が好ましい。合成温度が1700℃よりも低いと、α型サイアロン結晶中へのCe3+固溶が不十分となるためであり、2000℃を越えると、原料及びα型サイアロンの分解を抑制するために非常に高い窒素圧力を必要とするため、工業的に好ましくない。
【0025】
合成後のα型サイアロンは塊状なので、これを解砕、粉砕及び場合には分級操作を組み合わせて所定のサイズの粉末にすることで、いろいろな用途へ適用される。白色LED用の蛍光体として使用するためには、平均粒径を5〜30μmにすることが好ましい。
【0026】
本発明のα型サイアロン蛍光体は、発光光源と蛍光体から構成される発光装置に使用され、特に240〜480nmの波長を含有している紫外光や可視光を励起源として照射することにより、波長500〜550nmにピークを有する蛍光発光を示し、紫外LED又は青色LEDと、他色の蛍光体と組み合わせることで、容易に白色光が得られる。特に本発明のα型サイアロン蛍光体は非常にブロードな発光を示すので、高演色性の白色光が得やすい。
【0027】
また、本発明のα型サイアロン蛍光体は高温での輝度低下が少ないので、これを用いた発光装置はその輝度低下及び色度ズレが小さく、高温にさらしても劣化せず、更に耐熱性にすぐれており酸化雰囲気及び水分環境下における長期間の安定性にも優れているので、これらを反映して当該発光装置が高輝度で長寿命になるという特徴を有する。
【0028】
本発明の発光装置は、少なくとも一つの発光光源と本発明のα型サイアロンを主成分とする蛍光体を用いて構成される。例えば、特開平5−152609号公報、特開平7−99345号公報、特許第2927279号などに記載されている公知の方法を用いてLEDを製造することができる。この場合において、発光光源は240〜480nmの波長の光を発する紫外LED又は青色LED、特に好ましくは390〜460nmの波長の光を発するLEDが好ましく、これらの発光素子としては、GaNやInGaNなどの窒化物半導体からなるものがあり、組成を調整することにより所定の波長の光を発する発光光源となりうる。
【0029】
発光装置において、本発明の蛍光体を単独で使用する方法以外に、他の蛍光特性を持つ蛍光体と併用することによって、所望の色を発する発光装置を構成することができる。
【実施例】
【0030】
次に、実施例、比較例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。
<実施例1>
原料粉末の配合組成として、宇部興産社製窒化ケイ素粉末(E10グレード)を質量68.1%、トクヤマ社製窒化アルミニウム粉末(Eグレード)を27.0質量%、日本イットリウム社製酸化セリウム粉末を4.9質量%とし、これらをエタノール溶媒中において、窒化ケイ素質ポットとボールによる湿式混合を行い、得られたスラリーを吸引ろ過し、溶媒を除去し、乾燥し、予混合粉末を得た。次に、この予混合粉末を窒素雰囲気下のグローブボックス内に入れ、高純度化学研究所社製の窒化カルシウム粉末と乳鉢混合し、原料混合粉末を得た。尚、混合比は予混合粉末:窒化カルシウム粉末=88.4:11.6質量比とした。以上の配合は、一般式:(Ca2+Ce3+)Si12−(m+n)Al(m+n)16−nにおいて、x=1.51、y=0.16、m=3.5、n=0.24である(但し、窒化物原料粉末の不純物酸素は無視して、CeOは焼成工程でCeOに還元されると仮定して算出)。
【0031】
前記原料混合粉末を、同じくグローブボックス内で、目開き250μmの篩いを通過させた後、窒化ホウ素質の坩堝に充填し、カーボンヒーターの電気炉で0.8MPaの加圧窒素雰囲気中、1900℃で12時間の加熱処理を行った。尚、原料混合粉末に含まれる窒化カルシウムは、空気中で容易に加水分解しやすいので、原料混合粉末を充填した坩堝はグローブボックスから取り出した後、速やかに電気炉にセットし、直ちに真空排気し、窒化カルシウムの反応を防いだ。
【0032】
合成物は緑色の塊状物であったが、乳鉢等で容易に解砕可能であった。解砕物のうち、目開き150μmの篩を通過したものを蛍光体粉末として得た。
得られた蛍光体粉末は、X線回折装置(リガク社製、ULTIMA IV)を用い、粉末X線回折測定(XRD)を行った。主成分はα型サイアロンであり、わずかに同定不能の未知相のピークが存在した。未知相の最大回折線強度は、α型サイアロンの(210)面の回折線強度に対して、1.5%であった。次に、得られた粉末X線回折パターンをリガク社製解析プログラムJADEにより、リートベルト解析を行い、α型サイアロン結晶の格子定数を求めた結果、格子定数aは0.7934nm、格子定数cは0.5760nmであった。
【0033】
次に、ローダミンBと副標準光源により補正をおこなった分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、F−4500)を用いて、励起・蛍光スペクトルの測定を行った。図1に実施例1の蛍光体の励起・蛍光スペクトルを示す。励起スペクトルは、波長290nm付近と波長390nm付近に二つのピークを有しおり、長波長側のスペクトルから青色光でも十分励起が可能であることが分かった。蛍光スペクトルは、半値幅が100nm以上と非常にブロードで、ピーク波長は励起波長に依存し、400nm励起の場合が514nmで、450nm励起の場合が524nmであった。
【0034】
更に、蛍光体の発光特性を以下の方法で評価した。
まず蛍光体粉末を凹型のセルに表面が平滑になる様に充填し、積分球を取り付けた。この積分球に、発光光源(Xeランプ)から所定の波長に分光した単色光を光ファイバーを用いて導入した。この単色光を励起源として、蛍光体試料に照射し、分光光度計(大塚電子社製、MCPD−7000)を用いて、試料の蛍光及び反射光のスペクトル測定を行った。本実施例では、単色光は、波長400nmの近紫外光と波長450nmの青色光を用いた。得られた蛍光スペクトルにおいて、励起波長が400nm及び450nmに対して、それぞれ410〜780nm及び460〜780nm範囲の波長域のデータからJIS Z8724に準じた方法で、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標CIExとCIEyを算出した。励起波長400nmの場合の色度CIEx、CIEyはそれぞれ0.283、0.509で、励起波長450nmの場合の色度CIEx、CIEyはそれぞれ0.350、0.554であった。
【0035】
発光効率は次の様にして求めた。まず試料部に反射率が99%の標準反射板(Labsphere社、スペクトラロン)をセットし、励起光のスペクトルを測定し、励起波長が400nmの場合は、395〜410nmの波長範囲で、励起波長が450nmの場合は445〜460nmの波長範囲のスペクトルから励起光フォトン数(Qex)を算出した。次いで、試料部に蛍光体をセットし、得られたスペクトルデータから励起反射光フォトン数(Qref)及び蛍光フォトン数(Qem)を算出した。
【0036】
尚、励起反射光フォトン数は、励起光フォトン数と同じ波長範囲で、蛍光フォトン数は、励起波長が400nmの場合は、410〜800nmの波長範囲で、励起光が450nmの場合は、455〜800nmの範囲で算出した。得られた三種類のフォトン数から外部量子効率(=Qem/Qex×100)、吸収率(=(Qex−Qref)×100)、内部量子効率(=Qem/(Qex−Qref)×100)を求めた。波長400nmの近紫外光で励起した場合の、吸収率、内部量子効率、外部量子効率はそれぞれ84.6%、65.8%、55.7%であり、波長450nmの青色光で励起した場合は、それぞれ56.7%、51.3%、29.1%であった。
【0037】
<実施例2〜4、比較例1〜3>
得られるα型サイアロンが表1に示す設計組成となる様に原料配合し、実施例1と同様の手法、手順に基づいてα型サイアロン蛍光体を合成した。XRD測定の結果を表2に、蛍光特性を表3に示す。また、比較例1の励起スペクトルを図1に示す。
【表1】


【表2】


【表3】


上記の通り、Ce3+を付活したα型サイアロンの固溶組成を特定の範囲とすることにより、発光効率に優れ、青色励起でも十分蛍光発光が可能な青緑〜緑色蛍光体が得られる。
<実施例5〜7>
実施例1の配合組成をベースにCa2+の20at%を実施例5ではLi+に、実施例6では、Mg2+に、実施例7では、Y3+に置換する様に原料を配合し、実施例1と同様の方法により蛍光体を作製した。XRD測定の結果及び450nmの光で励起した場合の外部量子効率及び色度を表4に示す。
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の蛍光体は、特に、紫外乃至青色光で効率良く励起され、青緑〜緑色の可視光を発するので、紫外、近紫外又は青色LEDを発光光源とする発光装置用の蛍光体として、好適であり、産業上非常に有用である。本発明の発光素子は、耐熱性に優れ、発光特性の温度変化が少ないα型サイアロン蛍光体を用いているので、長期に渡って高輝度な発光素子であり、いろいろな用途に提供でき、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:(Ma+,Ce3+)Si12−(m+n)Al(m+n)16−n(Mは、Li、Ca、Mg、Y又はランタニド元素(LaとCeを除く)から選ばれる少なくとも1種の元素、Mの原子価をaとすると、m=ax+3y、Ce3+はMサイトを置換)で示されるα型サイアロンであって、1.5≦x+y≦2.25、0.05≦y≦0.5であり、紫外乃至青色光で励起可能なα型サイアロン蛍光体。
【請求項2】
請求項1に記載のα型サイアロン蛍光体であって、0≦n≦0.8であることを特徴とするα型サイアロン蛍光体。
【請求項3】
Mが少なくともCaであることを特徴とする請求項1又は2記載のα型サイアロン蛍光体。
【請求項4】
請求項1〜3記載のα型サイアロン蛍光体を主成分とする粉末状のα型サイアロン蛍光体。
【請求項5】
α型サイアロンの格子定数aが0.789〜0.796nm、格子定数cが0.571〜0.578nmであることを特徴とする請求項1〜4記載のα型サイアロン蛍光体。
【請求項6】
粉末X線回折法で評価した際に、α型サイアロン以外の結晶相の回折強度がα型サイアロンの(210)面の回折線強度に対して、いずれも10%以下であることを特徴とする請求項1〜5記載のα型サイアロン蛍光体。
【請求項7】
波長450nmの光で励起した時の外部量子効率が20%以上であることを特徴とする請求項1〜6記載のα型サイアロン蛍光体。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載されたα型サイアロン蛍光体と、発光波長の最大強度が240〜480nmにあるLEDと、を構成要素として含んでいることを特徴とする発光素子。

【図1】
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【公開番号】特開2010−275437(P2010−275437A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129824(P2009−129824)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】