説明

β−アミノエステルの製造方法

【課題】単純なケトイミンに対して触媒的不斉マンニッヒ反応を適用して光学活性β,β-ジ置換-β-アミノエステルを効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】式(I)で表される化合物の製造方法であって、式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物とを光学活性一価銅錯体触媒及び式(IV):(R9O)nSiX4-nで表されるトラップ剤の存在下で反応させる工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケトイミンに対する触媒的不斉マンニッヒ反応を利用したβ-アミノエステル及びβーアミノ酸の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学活性β-アミノ酸は多くの天然物や各種の医薬化合物の部分構造として重要な構造単位であり、生物学的ツールとしても注目されている。一般的に、β-アミノ酸は炭素-炭素結合形成反応であるマンニッヒ反応によりβ-アミノエステルを前駆体化合物として製造し、このβ-アミノエステルを化学変換することにより製造することができる。光学活性β-アミノ酸の製造のためには不斉中心を有するβ-アミノエステルを製造する必要があり、その目的には触媒的不斉マンニッヒ反応が利用できる(例えば、総説としてChem. Rev. 99, 1069, 1999; Acc. Chem. Res., 36, 10, 2003; Angew. Chem. Int. Ed., 45, 348, 2006等を参照のこと)。
【0003】
触媒的不斉マンニッヒ反応によりβ-アミノエステルを製造する方法として、アルデヒド由来のイミン類(アルドイミン類)を出発原料として用いる方法は数多く報告されている。しかしながら、アルデヒドに代えてケトン由来のイミン類を出発原料として用いる方法については従来ほとんど報告がなく、唯一、エステル基を導入したケトイミノエステル類についての報告がなされているにすぎない(ケトイミノエステル類についてはChem. Eur. J., 9, 6145, 2003及び Angew. Chem. Int. Ed., 43, 4476, 2004の報告がある)。特に、エステル基で修飾されていない単純なケトイミン類からβ,β-ジ置換-β-アミノエステルを製造する方法はラセミ体合成反応ですら報告がない。
【0004】
ケトイミン類に対して触媒的マンニッヒ反応を適用できない主たる理由は、ケトイミン類が求核剤に対して反応性が低いこと、及びケトイミン類(α-位にプロトンを有する)が塩基性条件化においてエナミンに異性化してしまうことにある。β,β-ジ置換-β-アミノエステルはβ,β-ジ置換-β-アミノ酸を製造するための直接的な前駆体として利用できることから、触媒的マンニッヒ反応をケトイミン類に適用してβ,β-ジ置換-β-アミノエステルを効率的に製造することができれば、工業的にβ-アミノ酸を安価に製造できる可能性があり、幅広い応用が期待できる。さらに、触媒的不斉マンニッヒ反応によりプロキラルなケトイミンの炭素原子に結合している2つの置換基を区別することができれば、光学活性β,β-ジ置換-β-アミノ酸を極めて効率的に製造でき、不斉中心を有する天然物や医薬化合物の製造にも応用できるることから、この不斉反応の開発が切望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、単純なケトイミンに対して触媒的不斉マンニッヒ反応を適用して光学活性β,β-ジ置換-β-アミノエステルを効率的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、光学活性一価銅錯体である不斉触媒と特定のケイ素化合物であるトラップ剤とを組み合わることにより、ケトイミンの異性化を生じない温和な条件下で求核力の高い銅エノラートを発生させることができ、ケトイミンに対する触媒的不斉マンニッヒ反応が効率的に進行することを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明により、下記の一般式(I):
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、置換若しくは無置換アルキル基、置換若しくは無置換アルケニル基、又は置換若しくは無置換アルキニル基を示し;R3及びR4は同一又は異なる置換基であり、それぞれ独立に置換又は無置換アリール基を示し;R5は置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、置換若しくは無置換アルキル基、又は置換若しくは無置換アルケニル基を示し;R6及びR7は同一又は異なる置換基であり、それぞれ独立に水素原子、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、置換若しくは無置換アルキル基、置換若しくは無置換アルケニル基、又は置換若しくは無置換アルキニル基を示す)で表される化合物の製造方法であって、下記の一般式(II):
【化2】

(式中、R1、R2、R3、及びR4は上記と同義である)で表される化合物と、下記の一般式(III):
【化3】

(式中、R5、R6、及びR7は上記と同義であり、R8はトリアルキルシリル基を示す)で表される化合物とを、光学活性一価銅錯体触媒及び下記一般式(IV):(R9O)nSiX4-n(式中、R9はアルキル基を示し、Xはフッ素原子又はアセトキシ基を示し、nは1ないし3の整数を示す)で表されるトラップ剤の存在下で反応させる工程を含む方法が提供される。
【0008】
上記発明の好ましい態様によれば、R2が置換又は無置換のアルキル基であり、R3及びR4がそれぞれフェニル基、トリル基、又はキシリル基であり、R6及びR7が水素原子であり、R8がトリメチルシリル基であり、光学活性一価銅錯体触媒がCuOAc-DTBM-SEGPHOS又はCuOAc-4-tert-Bu-シクロヘキシル-DuPHOSである上記の方法が提供される。また、上記の好ましい態様において、R1が置換若しくは無置換のアリール基又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり、R3及びR4がそれぞれ3,5-キシリル基であり、光学活性一価銅錯体触媒がCuOAc-DTBM-SEGPHOSであり、R9がエチル基であり、Xがアセトキシ基であり、nが2である上記の方法;及び上記の好ましい態様において、R1が置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、又は置換若しくは無置換のアルキニル基であり、R3及びR4がそれぞれ3,5-キシリル基であり、光学活性一価銅錯体触媒がCuOAc-4-tert-Bu-シクロヘキシル-DuPHOSであり、R9がエチル基であり、Xがフッ素原子であり、nが3である上記の方法が提供される。
【0009】
別の観点からは、本発明により、下記の一般式(V):
【化4】

(式中、R1、R2、R6、及びR7は上記と同義である)で表されるβ,β-ジ置換-β-アミノ酸の製造方法であって、下記の工程:
(a)上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表される化合物を光学活性一価銅錯体触媒及び上記一般式(IV)で表されるトラップ剤の存在下で反応させて上記一般式(I)で表される化合物を製造する工程;及び
(b)上記工程(a)で得られた上記一般式(I)で表される化合物を酸性条件下で処理してフォスフィノイル基を除去し、続いてエステル基を塩基性条件下で加水分解して上記一般式(V)で表される化合物を得る工程
を含む方法が提供される。
さらに別の観点からは、本発明により、下記一般式(Ia):
【化5】

(式中、R1aは置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、置換若しくは無置換アルキル基、又は置換若しくは無置換アルケニル基を示し、R2aは置換又は無置換アルキル基を示し、R3a及びR4aは同一の置換又は無置換アリール基を示し、R5aは置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、置換若しくは無置換アルキル基、又は置換若しくは無置換アルケニル基を示し、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子又は置換若しくは無置換アルキル基を示す)で表される化合物が提供される。この発明の好ましい態様によれば、上記一般式(Ia)において、R1aが置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、置換若しくは無置換アルキル基、又は置換若しくは無置換アルケニル基であり、R2aが無置換アルキル基であり、R3a及びR4aがキシリル基であり、R5aが置換若しくは無置換アルキル基であり、R6及びR7が水素原子である化合物が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法により不斉中心を有するβ,β-ジ置換-β-アミノ酸を極めて効率的に製造することができ、上記アミノ酸を部分構造として含む天然物や医薬化合物を簡便かつ安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書において用いられる用語の意味は以下のとおりである。
アリール基としては単環式又は縮合多環式の芳香族炭化水素基を用いることができ、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントラニル基、又はフェナンスリル基等が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0012】
ヘテロアリール基としては、単環式又は縮合多環式の芳香族ヘテロ環基を用いることができる。環構成ヘテロ原子の個数は特に限定されないが、1個ないし数個、好ましくは1個ないし5個程度である。2個以上の環構成ヘテロ原子を含む場合にはそれらは同一でも異なっていてもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、又はイオウ原子等を挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0013】
単環式ヘテロアリール基としては、例えば、2-フリル基、3-フリル基、2-チエニル基、3-チエニル基、1-ピロリル基、2-ピロリル基、3-ピロリル基、2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、4-イソオキサゾリル基、5-イソオキサゾリル基、2-チアゾリル基、4-チアゾリル基、5-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、4-イソチアゾリル基、5-イソチアゾリル基、1-イミダゾリル基、2-イミダゾリル基、4-イミダゾリル基、5-イミダゾリル基、1-ピラゾリル基、3-ピラゾリル基、4-ピラゾリル基、5-ピラゾリル基、(1,2,3-オキサジアゾール)-4-イル基、(1,2,3-オキサジアゾール)-5-イル基、(1,2,4-オキサジアゾール)-3-イル基、(1,2,4-オキサジアゾール)-5-イル基、(1,2,5-オキサジアゾール)-3-イル基、(1,2,5-オキサジアゾール)-4-イル基、(1,3,4-オキサジアゾール)-2-イル基、(1,3,4-オキサジアゾール)-5-イル基、フラザニル基、(1,2,3-チアジアゾール)-4-イル基、(1,2,3-チアジアゾール)-5-イル基、(1,2,4-チアジアゾール)-3-イル基、(1,2,4-チアジアゾール)-5-イル基、(1,2,5-チアジアゾール)-3-イル基、(1,2,5-チアジアゾール)-4-イル基、(1,3,4-チアジアゾリル)-2-イル基、(1,3,4-チアジアゾリル)-5-イル基、(1H-1,2,3-トリアゾール)-1-イル基、(1H-1,2,3-トリアゾール)-4-イル基、(1H-1,2,3-トリアゾール)-5-イル基、(2H-1,2,3-トリアゾール)-2-イル基、(2H-1,2,3-トリアゾール)-4-イル基、(1H-1,2,4-トリアゾール)-1-イル基、(1H-1,2,4-トリアゾール)-3-イル基、(1H-1,2,4-トリアゾール)-5-イル基、(4H-1,2,4-トリアゾール)-3-イル基、(4H-1,2,4-トリアゾール)-4-イル基、(1H-テトラゾール)-1-イル基、(1H-テトラゾール)-5-イル基、(2H-テトラゾール)-2-イル基、(2H-テトラゾール)-5-イル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、3-ピリダジニル基、4-ピリダジニル基、2-ピリミジニル基、4-ピリミジニル基、5-ピリミジニル基、2-ピラジニル基、(1,2,3-トリアジン)-4-イル基、(1,2,3-トリアジン)-5-イル基、(1,2,4-トリアジン)-3-イル基、(1,2,4-トリアジン)-5-イル基、(1,2,4-トリアジン)-6-イル基、(1,3,5-トリアジン)-2-イル基、1-アゼピニル基、1-アゼピニル基、2-アゼピニル基、3-アゼピニル基、4-アゼピニル基、(1,4-オキサゼピン)-2-イル基、(1,4-オキサゼピン)-3-イル基、(1,4-オキサゼピン)-5-イル基、(1,4-オキサゼピン)-6-イル基、(1,4-オキサゼピン)-7-イル基、(1,4-チアゼピン)-2-イル基、(1,4-チアゼピン)-3-イル基、(1,4-チアゼピン)-5-イル基、(1,4-チアゼピン)-6-イル基、(1,4-チアゼピン)-7-イル基等の5ないし7員の単環式ヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0014】
縮合多環式ヘテロアリール基としては、例えば、2-ベンゾフラニル基、3-ベンゾフラニル基、4-ベンゾフラニル基、5-ベンゾフラニル基、6-ベンゾフラニル基、7-ベンゾフラニル基、1-イソベンゾフラニル基、4-イソベンゾフラニル基、5-イソベンゾフラニル基、2-ベンゾ[b]チエニル基、3-ベンゾ[b]チエニル基、4-ベンゾ[b]チエニル基、5-ベンゾ[b]チエニル基、6-ベンゾ[b]チエニル基、7-ベンゾ[b]チエニル基、1-ベンゾ[c]チエニル基、4-ベンゾ[c]チエニル基、5-ベンゾ[c]チエニル基、1-インドリル基、1-インドリル基、2-インドリル基、3-インドリル基、4-インドリル基、5-インドリル基、6-インドリル基、7-インドリル基、(2H-イソインドール)-1-イル基、(2H-イソインドール)-2-イル基、(2H-イソインドール)-4-イル基、(2H-イソインドール)-5-イル基、(1H-インダゾール)-1-イル基、(1H-インダゾール)-3-イル基、(1H-インダゾール)-4-イル基、(1H-インダゾール)-5-イル基、(1H-インダゾール)-6-イル基、(1H-インダゾール)-7-イル基、(2H-インダゾール)-1-イル基、(2H-インダゾール)-2-イル基、(2H-インダゾール)-4-イル基、(2H-インダゾール)-5-イル基、2-ベンゾオキサゾリル基、2-ベンゾオキサゾリル基、4-ベンゾオキサゾリル基、5-ベンゾオキサゾリル基、6-ベンゾオキサゾリル基、7-ベンゾオキサゾリル基、(1,2-ベンゾイソオキサゾール)-3-イル基、(1,2-ベンゾイソオキサゾール)-4-イル基、(1,2-ベンゾイソオキサゾール)-5-イル基、(1,2-ベンゾイソオキサゾール)-6-イル基、(1,2-ベンゾイソオキサゾール)-7-イル基、(2,1-ベンゾイソオキサゾール)-3-イル基、(2,1-ベンゾイソオキサゾール)-4-イル基、(2,1-ベンゾイソオキサゾール)-5-イル基、(2,1-ベンゾイソオキサゾール)-6-イル基、(2,1-ベンゾイソオキサゾール)-7-イル基、2-ベンゾチアゾリル基、4-ベンゾチアゾリル基、5-ベンゾチアゾリル基、6-ベンゾチアゾリル基、7-ベンゾチアゾリル基、(1,2-ベンゾイソチアゾール)-3-イル基、(1,2-ベンゾイソチアゾール)-4-イル基、(1,2-ベンゾイソチアゾール)-5-イル基、(1,2-ベンゾイソチアゾール)-6-イル基、(1,2-ベンゾイソチアゾール)-7-イル基、(2,1-ベンゾイソチアゾール)-3-イル基、(2,1-ベンゾイソチアゾール)-4-イル基、(2,1-ベンゾイソチアゾール)-5-イル基、(2,1-ベンゾイソチアゾール)-6-イル基、(2,1-ベンゾイソチアゾール)-7-イル基、(1,2,3-ベンゾオキサジアゾール)-4-イル基、(1,2,3-ベンゾオキサジアゾール)-5-イル基、(1,2,3-ベンゾオキサジアゾール)-6-イル基、(1,2,3-ベンゾオキサジアゾール)-7-イル基、(2,1,3-ベンゾオキサジアゾール)-4-イル基、(2,1,3-ベンゾオキサジアゾール)-5-イル基、(1,2,3-ベンゾチアジアゾール)-4-イル基、(1,2,3-ベンゾチアジアゾール)-5-イル基、(1,2,3-ベンゾチアジアゾール)-6-イル基、(1,2,3-ベンゾチアジアゾール)-7-イル基、(2,1,3-ベンゾチアジアゾール)-4-イル基、(2,1,3-ベンゾチアジアゾール)-5-イル基、(1H-ベンゾトリアゾール)-1-イル基、(1H-ベンゾトリアゾール)-4-イル基、(1H-ベンゾトリアゾール)-5-イル基、(1H-ベンゾトリアゾール)-6-イル基、(1H-ベンゾトリアゾール)-7-イル基、(2H-ベンゾトリアゾール)-2-イル基、(2H-ベンゾトリアゾール)-4-イル基、(2H-ベンゾトリアゾール)-5-イル基、2-キノリル基、3-キノリル基、4-キノリル基、5-キノリル基、6-キノリル基、7-キノリル基、8-キノリル基、1-イソキノリル基、3-イソキノリル基、4-イソキノリル基、5-イソキノリル基、6-イソキノリル基、7-イソキノリル基、8-イソキノリル基、3-シンノリニル基、4-シンノリニル基、5-シンノリニル基、6-シンノリニル基、7-シンノリニル基、8-シンノリニル基、2-キナゾリニル基、4-キナゾリニル基、5-キナゾリニル基、6-キナゾリニル基、7-キナゾリニル基、8-キナゾリニル基、2-キノキサリニル基、5-キノキサリニル基、6-キノキサリニル基、1-フタラジニル基、5-フタラジニル基、6-フタラジニル基、2-ナフチリジニル基、3-ナフチリジニル基、4-ナフチリジニル基、2-プリニル基、6-プリニル基、7-プリニル基、8-プリニル基、2-プテリジニル基、4-プテリジニル基、6-プテリジニル基、7-プテリジニル基、1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、9-カルバゾリル基、2-(α-カルボリニル)基、3-(α-カルボリニル)基、4-(α-カルボリニル)基、5-(α-カルボリニル)基、6-(α-カルボリニル)基、7-(α-カルボリニル)基、8-(α-カルボリニル)基、9-(α-カルボリニル)基、1-(β-カルボニリル)基、3-(β-カルボニリル)基、4-(β-カルボニリル)基、5-(β-カルボニリル)基、6-(β-カルボニリル)基、7-(β-カルボニリル)基、8-(β-カルボニリル)基、9-(β-カルボニリル)基、1-(γ-カルボリニル)基、2-(γ-カルボリニル)基、4-(γ-カルボリニル)基、5-(γ-カルボリニル)基、6-(γ-カルボリニル)基、7-(γ-カルボリニル)基、8-(γ-カルボリニル)基、9-(γ-カルボリニル)基、1-アクリジニル基、2-アクリジニル基、3-アクリジニル基、4-アクリジニル基、9-アクリジニル基、1-フェノキサジニル基、2-フェノキサジニル基、3-フェノキサジニル基、4-フェノキサジニル基、10-フェノキサジニル基、1-フェノチアジニル基、2-フェノチアジニル基、3-フェノチアジニル基、4-フェノチアジニル基、10-フェノチアジニル基、1-フェナジニル基、2-フェナジニル基、1-フェナントリジニル基、2-フェナントリジニル基、3-フェナントリジニル基、4-フェナントリジニル基、6-フェナントリジニル基、7-フェナントリジニル基、8-フェナントリジニル基、9-フェナントリジニル基、10-フェナントリジニル基、2-フェナントロリニル基、3-フェナントロリニル基、4-フェナントロリニル基、5-フェナントロリニル基、6-フェナントロリニル基、7-フェナントロリニル基、8-フェナントロリニル基、9-フェナントロリニル基、10-フェナントロリニル基、1-チアントレニル基、2-チアントレニル基、1-インドリジニル基、2-インドリジニル基、3-インドリジニル基、5-インドリジニル基、6-インドリジニル基、7-インドリジニル基、8-インドリジニル基、1-フェノキサチイニル基、2-フェノキサチイニル基、3-フェノキサチイニル基、4-フェノキサチイニル基、チエノ[2,3-b]フリル基、ピロロ[1,2-b]ピリダジニル基、ピラゾロ[1,5-a]ピリジル基、イミダゾ[11,2-a]ピリジル基、イミダゾ[1,5-a]ピリジル基、イミダゾ[1,2-b]ピリダジニル基、イミダゾ[1,2-a]ピリミジニル基、1,2,4-トリアゾロ[4,3-a]ピリジル基、1,2,4-トリアゾロ[4,3-a]ピリダジニル基等の8ないし14員の縮合多環式ヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0015】
アルキル基としては、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組合せからなるアルキル基を用いることができ、例えば、C1〜C15アルキル基が好ましく、C1〜C10アルキル基がより好ましく、C1〜C6アルキル基がさらに好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、1-エチルブチル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロプロピルメチル基、1-シクロプロピルエチル基、2-シクロプロピルエチル基、3-シクロプロピルプロピル基、4-シクロプロピルブチル基、5-シクロプロピルペンチル基、6-シクロプロピルヘキシル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロヘキシルブチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロオクチルメチル基、又は6-シクロオクチルヘキシル等を挙げることができるが、これらに限定されることはない。また、環状アルキル基には、上記ヘテロアリール基の二重結合の全てを単結合に置き換えた飽和ヘテロ環基も包含される。
【0016】
アルケニル基としては、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組合せからなるアルケニル基を用いることができ、例えば、C2〜C15アルケニル基が好ましく、C2〜C10アルケニル基がより好ましく、C2〜C6アルケニル基がさらに好ましい。アルケニル基に含まれる二重結合の数は特に限定されないが、例えば、1〜数個であり、1又は2個程度が好ましい。例えば、ビニル基、プロパ-1-エン-1-イル基、アリール基、イソプロペニル基、ブタ-1-エン-1-イル基、ブタ-2-エン-1-イル基、ブタ-3-エン-1-イル基、2-メチルプロパ-2-エン-1-イル基、1-メチルプロパ-2-エン-1-イル基、ペンタ-1-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、3-メチルブタ-2-エン-1-イル基、3-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ヘキサ-1-エン-1-イル基、ヘキサ-2-エン-1-イル基、ヘキサ-3-エン-1-イル基、ヘキサ-4-エン-1-イル基、ヘキサ-5-エン-1-イル基、4-メチルペンタ-3-エン-1-イル基、4-メチルペンタ-3-エン-1-イル基、ヘプタ-1-エン-1-イル基、ヘプタ-6-エン-1-イル基、オクタ-1-エン-1-イル基、オクタ-7-エン-1-イル基、ノナ-1-エン-1-イル基、ノナ-8-エン-1-イル基、デカ-1-エン-1-イル基、デカ-9-エン-1-イル基、ウンデカ-1-エン-1-イル基、ウンデカ-10-エン-1-イル基、ドデカ-1-エン-1-イル基、ドデカ-11-エン-1-イル基、トリデカ-1-エン-1-イル基、トリデカ-12-エン-1-イル基、テトラデカ-1-エン-1-イル基、テトラデカ-13-エン-1-イル基、ペンタデカ-1-エン-1-イル基、ペンタデカ-14-エン-1-イル基、2-シクロプロペン-1-イル基、2-シクロブテン-1-イル基、2-シクロペンテン-1-イル基、3-シクロペンテン-1-イル基、2-シクロヘキセン-1-イル基、1-シクロヘキセン-1-イル基、3-シクロヘキセン-1-イル基、1-シクロブテン-1-イル基、1-シクロペンテン-1-イル基、2-シクロヘキセン-1-イルメチル基、2-シクロヘキセン-1-イルメチル基等を挙げることができるが、これらに限定されることはない。また、環状アルケニル基には、上記アリール基の二重結合のうち少なくとも1個の二重結合を除く任意の個数の二重結合を単結合に置き換えた部分飽和炭素環基、あるいは上記ヘテロアリール基の二重結合のうち少なくとも1個の二重結合を除く任意の個数の二重結合を単結合に置き換えた部分飽和ヘテロ環基等も包含される。
【0017】
アルキニル基としては、直鎖状又は分枝鎖状のアルキニル基を用いることができ、例えば、C2〜C15アルキニル基が好ましく、C2〜C10アルキニル基がより好ましく、C2〜C6アルキニル基がさらに好ましい。アルキニル基に含まれる三重結合の数は特に限定されないが、例えば、1〜数個であり、1又は2個程度が好ましい。アルキニル基は1個〜数個の二重結合を含んでいてもよい。また、アルキニル基は環状アルキル基又は環状アルケニル基と組み合わされていてもよい。例えば、エチニル基、プロパ-1-イン-1-イル,プロパ-2-イン-1-イル,ブタ-1-イン-1-イル基、ブタ-3-イン-1-イル基、1-メチルプロパ-2-イン-1-イル,ペンタ-1-イン-1-イル基、ペンタ-4-イン-1-イル基、ヘキサ-1-イン-1-イル基、ヘキサ-5-イン-1-イル基、ヘプタ-1-イン-1-イル基、ヘプタ-6-イン-1-イル基、オクタ-1-イン-1-イル基、オクタ-7-イン-1-イル基、ノナ-1-イン-1-イル基、ノナ-8-イン-1-イル基、デカ-1-イン-1-イル基、デカ-9-イン-1-イル基、ウンデカ-1-イン-1-イル基、ウンデカ-10-イン-1-イル基、ドデカ-1-イン-1-イル基、ドデカ-11-イン-1-イル基、トリデカ-1-イン-1-イル基、トリデカ-12-イン-1-イル基、テトラデカ-1-イン-1-イル基、テトラデカ-13-イン-1-イル基、ペンタデカ-1-イン-1-イル基、ペンタデカ-14-イン-1-イル基等を挙げることができる。
【0018】
本明細書において、ある官能基について「置換又は無置換」という場合には、該官能基上の化学的に可能な位置に1個又は2個以上の置換基が存在する場合があることを意味する。官能基に存在する置換基の種類、置換基の個数、及び置換位置は特に限定されず、2個以上の置換基が存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。官能基に存在する置換基としては、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、チオキソ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、チオシアナト基、イソシアナト基、イソチオシアナト基、ヒドロキシ基、スルファニル基、カルボキシ基、スルファニルカルボニル基、オキサロ基、メソオキサロ基、チオカルボキシ基、ジチオカルボキシ基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホ基、スルファモイル基、スルフィノ基、スルフィナモイル基、スルフェノ基、スルフェナモイル基、ホスホノ基、ヒドロキシホスホニル基、C1〜C6のアルキル基、C2〜C6のアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基等)、C2〜C6のアルキニル基(例えば、エチニル基、1-プロピニル基等)、C1〜C6のアルキリデン基、C6〜C10のアリール基、C7〜C12のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基等)、C7〜C12のアラルキリデン基(例えば、ベンジリデン基、フェネチリデン基、1-ナフチルメチリデン基、2-ナフチルメチリデン基等)、C1〜C6のアルコキシ基、C6〜C10のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基等)、C7〜C12のアラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基、(1-ナフチルメチル)オキシ基、(2-ナフチルメチル)オキシ基等)、C1〜C6のアルキルスルファニル基(例えば、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基等)、C6〜C10のアリールスルファニル基(例えば、フェニルスルファニル基、1-ナフチルスルファニル基、2-ナフチルスルファニル基等)、C7〜C12のアラルキルオキシスルファニル基(例えば、ベンジルスルファニル基、(1-ナフチルメチル)スルファニル基、(2-ナフチルメチル)スルファニル基等)、C1〜C6のアルカノイル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、n-ブチリル基、ピバロイル基等)、C6〜C10のアロイル基(例えば、ベンゾイル基、1-ナフトイル基、2-ナフトイル基等)、C1〜C6のアルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、プロパンスルホニル基等)、C6〜C10のアリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基、1-ナフタレンスルホニル基、2-ナフタレンスルホニル基等)、C1〜C6のアルコキシカルボニル基、アミノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ジアゼニル基、ウレイド基、チオウレイド基、グアニジノ基、カルバモイミドイル基(アミジノ基)、アジド基、イミノ基、ヒドロキシアミノ基、ヒドロキシイミノ基、アミノオキシ基、ジアゾ基、セミカルバジノ基、セミカルバゾノ基、アロファニル基、ヒダントイル基、ホスファノ基、ホスホロソ基、ホスホ基、ボリル基、シリル基、スタニル基、セラニル基、オキシド基、ヘテロアリール基、又はヘテロアリール基の二重結合の一部又は全てを単結合に置き換えた部分飽和若しくは完全飽和ヘテロ環基等を挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0019】
これらの置換基は、さらに1種又は2種以上の他の置換基により置換されていてもよい。そのような例として、例えば、C1〜C6のハロゲン化アルキル基(例えば、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等)、C1〜C6のハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基等)、カルボキシ置換C1〜C6アルキル基(例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基等)、C1〜C6アルキル置換アミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基等)等を挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0020】
本発明の方法は、上記の一般式(I)で表される化合物の製造方法であって、上記の一般式(II)で表される化合物と、上記の一般式(III)で表される化合物とを、光学活性一価銅錯体触媒及び上記一般式(IV)で表されるトラップ剤の存在下で反応させることを特徴としている。本発明の方法では、上記一般式(I)で表される化合物においてR1及びR2が異なる置換基である光学活性化合物を効率的に製造することができるので、R1及びR2は異なる置換基であることが好ましい。もっとも、R1及びR2が同一の置換基である化合物の製造にも本発明の方法を適用できることは言うまでもない。
【0021】
一般式(I)及び一般式(II)で表される化合物において、R1としては、フェニル基若しくはナフチル基などのアリール基、フリル基若しくはチエニル基などのヘテロアリール基、フェニル基などが2-位に置換したビニル基、1-シクロヘキセン-1-イル基、若しくは直鎖状の1-アルケニル-1-イル基などのアルケニル基、又はシクロヘキシル基などのアルキル基が好ましい。R1が不飽和結合を含む場合には、R1において不飽和結合を構成する炭素原子又はヘテロ原子、好ましくは不飽和結合を構成する炭素原子がイミノ基の炭素原子に結合して、R1の不飽和結合とイミノ基の不飽和結合とが共役することが好ましい。
【0022】
R2は置換又は無置換のアルキル基であることが好ましく、無置換のアルキル基であることがより好ましい。さらに好ましくはC1〜C6アルキル基であり、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。R1とR2は互いに結合して環を形成していてもよい。例えば、R1とR2が結合して1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン環を形成してもよい。
【0023】
一般式(I)及び一般式(II)で表される化合物において、R3及びR4は同一であることが好ましく、例えば、R3及びR4が無置換フェニル基及びアルキル置換フェニル基からなる群から選ばれる同一の基であることが好ましい。アルキル置換フェニル基としては、例えば、トリル基又はキシリル基が好ましく、キシリル基としては例えば3,5-キシリル基が好ましい。R3及びR4が共に3,5-キシリル基であることが特に好ましい。
【0024】
一般式(I)及び一般式(III)で表される化合物において、R5としては置換又は無置換アルキル基が好ましい。無置換アルキル基としては、例えば、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、又はtert-ブチル基などを用いることができ、置換アルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などを用いることができる。ベンジル基を構成するフェニル基上にはさらにアルコキシ基、アミノ基、水酸基、又はハロゲン原子などの置換基が存在していてもよい。
一般式(I)及び一般式(III)で表される化合物において、R6及びR7が共に水素原子であることが好ましい。
【0025】
好ましい態様として、上記一般式(Ia)で表される化合物を製造する方法が挙げられ、上記一般式(Ia)において、R1aが置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、置換若しくは無置換アルキル基、又は置換若しくは無置換アルケニル基であり、R2aが無置換アルキル基であり、R3a及びR4aがキシリル基であり、R5aが置換若しくは無置換アルキル基であり、R6及びR7が水素原子である化合物を製造する方法がさらに好ましい方法として挙げられる。
【0026】
光学活性一価銅錯体触媒は、例えば、J. Am. Chem. Soc., 128, 7164, 2006; J. Am. Chem. Soc., 128, 7687, 2006;日本国特許第3,148,136号などに記載されており、例えば、光学活性一価銅フォスフィン錯体などが好ましい例として挙げられる。一価銅としては、例えば酢酸銅(I)(CuOAc)を用いることが好ましく、配位子としては、例えばDTBM-SEGPHOS(Ad. Synth. Catal., 343, 264, 2001)又は4-tert-Bu-シクロヘキシル-DuPHOS(例えば、J. Am. Chem. Soc., 115, 10125, 1993を参照することにより合成できる)などが好ましいが、これらに限定されることはない。例えば、R1が置換若しくは無置換のアリール基又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である場合には、配位子としてDTBM-SEGPHOSを用いることが好ましく、R1が無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、又は置換若しくは無置換のアルキニル基である場合には、配位子として4-tert-Bu-シクロヘキシル-DuPHOSを用いることが好ましい。利用可能な光学活性一価銅錯体触媒のその他の例としては、例えばイソプロピルDuPHOSなどが挙げられる。一般的には光学活性一価銅錯体触媒は、反応溶液中で一価銅と配位子化合物とを反応させることにより用時調製することができる。
【0027】
上記一般式(IV)で表されるトラップ剤において、R9はエチル基であることが好ましい。Xとnの組合せは使用する光学活性一価銅錯体触媒の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、光学活性一価銅錯体触媒としてCuOAc-DTBM-SEGPHOSを用いる場合には、Xがアセトキシ基であり、nが2であることが好ましい。また、光学活性一価銅錯体触媒としてCuOAc-4-tert-Bu-シクロヘキシル-DuPHOSを用いる場合には、Xがフッ素原子であり、nが3であることが好ましい。
【0028】
上記反応は、一般的には、例えばテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒やハロゲン化炭化水素などの不活性溶媒中で行なうことができ、氷冷下から溶媒の還流温度までの範囲の温度、好ましくは室温ないし50度程度の温度で行なうことができる。反応の終点は薄層クロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーなどを用いて反応の進行をモニターすることにより適宜決定することが可能であるが、一般的には反応時間は数時間ないし数日である。出発原料として用いる一般式(I)で表される化合物1モルに対して、一般式(II)で表される化合物は1ないし数モル、好ましくは2ないし4モルの割合で用いることができ、光学活性一価銅錯体触媒は反応液中に1ないし50 mol%程度、好ましくは5ないし20 mol%程度の濃度で使用することができる。トラップ剤は一般式(I)で表される化合物1モルに対して若干過剰量(1〜1.2モル程度)を用いればよい。得られた上記一般式(I)で表される化合物はR1及びR2が異なる置換基である場合にはそれらが結合する炭素原子が不斉炭素となり、それにより2種類の光学活性体が存在するが、本発明の方法では高度に立体制御されつつ反応が進行して、高い光学純度を有するいずれか一方の光学活性体が高収率で得られるという特徴がある。
【0029】
上記の一般式(I)で表される化合物から上記一般式(V)で表されるβ,β-ジ置換-β-アミノ酸を製造することができる。この反応は、一般的には、上記の一般式(I)で表される化合物を酸性条件下で処理してフォスフィノイル基を除去し、続いてエステル基を塩基性条件下で加水分解することにより行なうことができる。フォスフィノイル基の除去反応は、例えば、テトラヒドロフランなどの不活性溶媒中で希塩酸を作用させることにより行なうことができ、この反応は、一般的には室温から溶媒の還流温度、好ましくは50℃程度の温度で1ないし数時間で行なうことができる。エステル基の加水分解はエタノールやイソプロパノールなどのアルコール系溶媒中で水酸化ナトリウム水溶液を作用させることにより行なうことができるが、この反応は、一般的には氷冷下ないし加温下、好ましくは室温下に数時間ないし数日程度で行なうことができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。下記の実施例において、Meはメチル基、Etはエチル基、Buはノルマルブチル基、tBuは三級(tert-)ブチル基、Acはアセチル基、TMSはテトラメチルシリル基を示す。
例1
【化6】

【0031】
化合物a (75.1 mg, 0.2 mmol)を2時間室温で減圧下に乾燥し、グローブボックス内でDTBM-SEGPHOS (21.6 mg, 0.02 mmol)と酢酸銅(I) (2.5 mg, 0.02 mmol)を加えた。アルゴン雰囲気下に乾燥THFを0.5 mL加え、室温で10分間攪拌した。この溶液に(EtO)2Si(OAc)2 (51μL, 0.02 mmol)と化合物b (82μL, 0.4 mmol)を室温下加え、40℃で20時間反応させた。室温に冷却した後、飽和食塩水を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して粗生成物を得た。生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶出溶媒:酢酸エチル/塩化メチレン=1/10→1/5)、純粋な生成物cを得た (80.1 mg, 81%)。
【0032】
1H NMR (CDCl3) δ 0.81 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.14-1.23 (m, 2H), 1.37-1.44 (m, 2H), 1.52 (s, 3H), 2.31 (s, 6H), 2.33 (s, 6H), 3.06 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 3.38 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 3.86-3.96 (m, 2H), 4.91 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.07 (s, 1H), 7.08 (s, 1H), 7.19-7.23 (m, 1H), 7.30-7.35 (m, 2H), 7.48 (d, J = 12.2 Hz, 2H), 7.54-7.59 (m, 4H)
13C NMR (CDCl3) δ 13.54, 18.94, 21.27, 21.30, 29.73 (d, JC-P = 4.1 Hz), 30.40, 47.71 (d, JC-P = 2.1 Hz), 58.70 (d, JC-P = 3.0 Hz), 64.19, 125.00, 126.70, 128.29, 128.69, 128.76, 129.56, 129.64, 133.12, 133.13, 133.16, 133.19, 134.14, 134.46, 135.17, 135.46, 137.87, 137.98, 138.03, 138.13, 147.08, 147.14, 172.07
31P NMR (CDCl3) δ 20.3
[α]26D -17.0 (c = 1.12, CHCl3) (95% ee)
HPLC DAICEL CHIRALCEL AD-H, hexane/2-propanol = 20/1, 1.0 mL/min, tR 16.1 min (major), 29.4 min (minor)
MS m/z 514 (M+Na+); HRMS Calcd for C30H38NO3P+ (M+) 491.2584, Found 491.2591; IR (neat) 1723, 1199 cm-1.
【0033】
例2
【化7】

例1で得られた生成物c (71 mg, 0.14 mmol)をTHF 0.75 mLに溶解し、3 N HCl 0.25 mLを加えて40℃で2.5時間攪拌した。反応液を室温まで冷却した後、溶媒を留去し、イソプロパノール 1 mLと0.5 N NaOH 1 mLを加えて室温で20時間攪拌した。1 N HClを加えて中和した後、反応液を留去し、残渣をイオン交換カラムクロマトグラフィー(Dowex 50Wx8-100 (acidic) 2 g, 溶出溶媒:メタノール→25% アンモニア水)で精製して生成物dを得た(20.1 mg, 81%)。
[α]24D = +14.7 (c = 1.00, CH3OH), 文献値(J. Org. Chem. 56, 4, 1991) [α]22D = -10.2 (c = 0.78, CH3OH) for (R) isomer (100% ee)
1H NMR (CD3OD) δ 1.69 (s, 3H), 2.72 (d, J = 16.5 Hz, 1H), 2.82 (d, J = 16.5 Hz, 1H), 7.31-7.35 (m, 1H), 7.39-7.48 (m, 4H)
13C NMR (CD3OD) δ 27.15, 46.24, 58.07, 125.64, 129.18, 130.02, 142.98, 177.21
MS m/z 202 (M+Na+)
HRMS Calcd for C10H13NO2 (M+) C10H13NO2 179.0941, Found 179.0940; IR (KBr) 3398, 2980, 1573, 1473, 1390 cm-1.
【0034】
例3
例1と同様にして反応を行い、下記の表1に示す結果を得た。表中、additiveはトラップ剤を示し、PGはP(=O)Xy2を示す。下記に示すマンニッヒプロダクトの化合物番号は、例えば、化合物2aから得られる生成物を化合物5aと表示している。
【表1】

a:条件A:化合物3を2当量、配位子として6:(R)-DTBM-SEGPHOS、トラップ剤として(EtO)2Si(OAc)2を1当量;
条件B:化合物3を4当量、配位子としてDuPHOS(下記配位子7又は8)、トラップ剤として(EtO)3SiFを1.2当量
b:収率は単離収率
c:光学純度は光学活性HPLCで決定
d:化合物3を4当量
e:配位子7
f:配位子8
【化8】

g:絶対配置はβ,β-ジ置換アミノ酸に誘導した後に旋光度を文献(J. Org. Chem., 56, 4, 1991)と比較することにより(S)配置であると決定
【0035】
N-(2-ブトキシカルボニル-1-p-クロロフェニル-1-メチルエチル)-ジ(3,5-キシリル)フォスフィンアミド(5b)
1H NMR (CDCl3) δ 0.84 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 1.18-1.24 (m, 2H), 1.40-1.44 (m, 2H), 1.51 (s, 3H), 2.31 (s, 6H), 2.33 (s, 6H), 3.05 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 3.30 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 3.90-3.96 (m, 2H), 4.90 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.08 (s, 1H), 7.09 (s, 1H), 7.25-7.29 (m, 2H), 7.46-7.52 (m, 6H)
13C NMR (CDCl3) δ 13.54, 18.97, 21.29, 21.31, 29.58 (d, JC-P = 4.1 Hz), 30.43, 47.59, 58.36, 64.38, 126.74, 128.39, 128.75, 128.83, 129.40, 129.47, 132.61, 133.189, 133.21, 133.23, 133.26, 133.91, 1334.24, 134.94, 135.25, 137.96, 138.08, 138.18, 145.49, 145.54, 171.94
31P NMR (CDCl3) δ 20.1
[α]26D -24.9 (c = 0.80, CHCl3) (97% ee)
HPLC DAICEL CHIRALCEL AD-H, hexane/2-propanol = 20/1, 1.0 mL/min, tR 19.0 min (major), 26.9 min (minor)
MS m/z 548 (M+Na+)
HRMS Calcd for C30H37ClNO3P+ (M+) 525.2194, Found 525.2194
IR (neat) 1722, 1199 cm-1
【0036】
N-(2-ブトキシカルボニル-1-p-メトキシフェニル-1-メチルエチル)-ジ(3,5-キシリル)フォスフィンアミド(5c)
1H NMR (CDCl3) δ 0.83 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 1.16-1.25 (m, 2H), 1.39-1.43 (m, 2H), 1.52 (s, 3H), 2.31 (s, 6H), 2.32 (s, 6H), 3.06 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 3.30 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.89-3.97 (m, 2H), 4.86 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 6.81-6.86 (m, 2H), 7.06 (s, 1H), 7.08(s, 1H), 7.44-7.49 (m, 4H), 7.54 (d, J = 12.2 Hz, 2H)
13C NMR (CDCl3) δ 13.56, 18.98, 21.28, 21.30, 29.80 (d, JC-P = 4.1 Hz), 30.45, 47.77, 55.17, 58.26 (d, JC-P = 2.0 Hz), 64.19, 113.40, 126.33, 128.75, 128.82, 129.51, 129.59, 133.06, 133.07, 133.11, 133.13, 134.17, 134.47, 135.20, 135.47, 137.84, 137.94, 137.99, 138.08, 139.00, 139.05, 158.24, 172.13
31P NMR (CDCl3) δ 19.9
[α]25D -20.4 (c = 0.91, CHCl3) (97% ee)
HPLC DAICEL CHIRALCEL AD-H, hexane/2-propanol = 20/1, 1.0 mL/min, tR 25.7 min (major), 47.8 min (minor)
MS m/z 544 (M+Na+)
HRMS Calcd for C31H40NO4P+ (M+) 521.2689, Found 521.2694
IR (neat) 1720, 1185 cm-1
【0037】
N-[2-ブトキシカルボニル-1-メチル-1-(2-ナフチル)エチル]-ジ(3,5-キシリル)フォスフィンアミド(5d)
1H NMR (CDCl3) δ 0.74 (t, J = 7.7 Hz, 3H), 1.11-1.19 (m, 2H), 1.34-1.42 (m, 2H), 1.64 (s, 3H), 2.28 (s, 6H), 2.33 (s, 6H), 3.23 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 3.41 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 3.88-3.94 (m, 2H), 5.02 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.04 (s, 1H), 7.09 (s, 1H), 7.42-7.52 (m, 4H), 7.57 (d, J = 12.5 Hz, 2H), 7.70 (dd, J = 2.2 Hz, J = 8.9 Hz, 1H), 7.77-7.84 (m, 3H), 7.95 (d, J = 1.9 Hz, 1H)
13C NMR (CDCl3) δ 13.47, 18.94, 21.26, 21.32, 29.55 (d, JC-P = 4.1 Hz), 30.43, 47.63 (d, JC-P = 2.1 Hz), 58.77 (d, JC-P = 3.0 Hz), 64.26, 123.75, 123.85, 125.83, 125.98, 127.35, 128.03, 120.20, 128.77, 128.85, 129.58, 129.65, 132.28, 133.09, 133.12, 133.17, 133.20, 134.04, 134.40, 135.07, 135.36, 135.40, 137.86, 137.97, 138.04, 138.15, 144.21, 144.26, 172.10
31P NMR (CDCl3) δ 20.1
[α]27D -50.8 (c = 0.83, CHCl3) (96% ee)
HPLC DAICEL CHIRALCEL AD-H, hexane/2-propanol = 20/1, 1.0 mL/min, tR 17.2 min (major), 26.8 min (minor)
MS m/z 564 (M+Na+)
HRMS Calcd for C34H40NO3P+ (M+) 541.2740, Found 541.2742
IR (neat) 1723, 1197 cm-1
【0038】
N-[2-ブトキシカルボニル-1-(2-フラニル)-1-メチルエチル]-ジ(3,5-キシリル)フォスフィンアミド(5e)
1H NMR (CDCl3) δ 0.87 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.24-1.32 (m, 2H), 1.48-1.54 (m, 2H), 1.64 (s, 3H), 2.29 (s, 6H), 2.31 (s, 6H), 3.01 (d, J = 15.3 Hz, 1H), 3.07 (d, J = 15.3 Hz, 1H), 3.98-4.06 (m, 2H), 4.74 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 6.19 (dd, J = 1.8 Hz, 3.4 Hz, 1H), 6.24 (dd, J = 0.9 Hz, 3.4 Hz, 1H), 7.04 (s,1H), 7.05 (s, 1H), 7.19 (dd, J = 0.9 Hz, 1.8 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 13.1 Hz, 2H), 7.43 (d, J = 13.4 Hz, 2H)
13C NMR (CDCl3) δ 13.58, 19.00, 19.02, 21.26, 26.31 (d, JC-P = 4.1 Hz), 30.46, 46.56 (d, JC-P = 3.0 Hz), 54.67 (d, JC-P = 2.1 Hz), 64.39, 105.76, 105.77, 110.11, 128.76, 128.84, 129. 50, 129.57, 133.02, 133.04, 133.11, 133.13, 133.53, 133.89, 134.54, 134.89, 137.70, 137.80, 137.88, 137.99, 141.14, 157.66, 157.72, 171.55
31P NMR (CDCl3) δ 19.9
[α]27D -10.9 (c = 0.76, CHCl3) (95% ee)
HPLC DAICEL CHIRALCEL AD-H, hexane/2-propanol = 20/1, 1.0 mL/min, tR 15.5 min (major), 21.9 min (minor)
MS m/z 504 (M+Na+)
HRMS Calcd for C28H36NO4P+ (M+) 481.2376, Found 481.2379
IR (neat) 1726, 1194 cm-1
【0039】
N-[2-ブトキシカルボニル-1-メチル-1-(3-チエニル)フェニルエチル]-ジ(3,5-キシリル)フォスフィンアミド(5f)
1H NMR (CDCl3) δ 0.84 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.19-1.27 (m, 2H), 1.43-1.49 (m, 2H), 1.57 (s, 3H), 2.30 (s, 6H), 2.32 (s, 6H), 3.00 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 3.21 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 3.93-4.01 (m, 2H), 4.91 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.07 (bs, 2H), 7.13 (dd, J = 1.3 Hz, J = 5.2 Hz, 1H), 7.20 (dd, J = 3.1 Hz, J = 5.2 Hz, 1H), 7.25 (dd, J = 1.3 Hz, J = 3.1 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 11.8 Hz, 2H), 7.50 (d, J = 12.2 Hz, 2H)
13C NMR (CDCl3) δ 13.57, 13.59, 18.99, 19.00, 21.29, 29.22 (d, JC-P = 5.2 Hz), 30.44 (d, JC-P = 2.0 Hz), 48.14, 56.71, 56.72, 56.74, 64.30, 120.34, 125.60, 125.98, 128.81, 128.89, 129.43, 129.50, 133.11, 134.29, 135.06, 135.29, 137.84, 137.94, 138.05, 148.54, 148.58, 171.92
31P NMR (CDCl3) δ 9.6
[α]27D -19.5 (c = 1.09, CHCl3) (96% ee)
HPLC DAICEL CHIRALCEL AD-H, hexane/2-propanol = 20/1, 1.0 mL/min, tR 8.5 min (major), 14.2 min (minor)
MS m/z 520 (M+Na+)
HRMS Calcd for C28H36NO3PS+ (M+) 497.2148, Found 497.2154
IR (neat) 1723, 1197 cm-1
【0040】
N-(2-ブトキシカルボニル-1-エチル-1-フェニルエチル)-ジ(3,5-キシリル)フォスフィンアミド(5g)
1H NMR (CDCl3) δ 0.46 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 0.86 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 1.22-1.31 (m, 2H), 1.45-1.53 (m, 2H), 1.88-2.04 (m, 2H), 2.31 (s, 6H), 2.34 (s, 6H), 3.26 (d, J = 16.8 Hz, 1H), 3.31 (d, J = 16.8 Hz, 1H), 3.96-4.05 (m, 2H), 4.82 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.06 (s, 1H), 7.09 (s, 1H), 7.19 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.30 (t, J = 7.6Hz, 2H), 7.44 (d, J = 12.2 Hz, 2H), 7.51 (d, J = 7.6 Hz, 2H), 7.58 (d, J = 12.2 Hz, 2H)
13C NMR (CDCl3) δ 8.81, 13.57, 19.02, 21.28, 21.31, 30.48, 34.02 (d, JC-P = 4.1 Hz), 42.67 (d, JC-P = 2.1 Hz), 62.76 (d, JC-P = 3.1 Hz), 64.21, 126.35, 126.74, 127.96, 128.76, 128.83, 129.39, 129.46, 133.06, 134.41, 134.60, 135.44, 135.58, 137.80, 137.91, 138.01, 144.35, 144.41, 172.50
31P NMR (CDCl3) δ 20.0
[α]22D +6.3 (c = 0.98, CHCl3) (91% ee)
HPLC DAICEL CHIRALCEL AD-H, hexane/2-propanol = 20/1, 1.0 mL/min, tR 14.4 min (major), 21.8 min (minor)
MS m/z 528 (M+Na+)
HRMS Calcd for C31H40NO3P+ (M+) 505.2740, Found 505.2736
IR (neat) 2960, 1725, 1198 cm-1
【0041】
N-(2-ブトキシカルボニル-1-シクロヘキサ-1-エニル-1-メチルエチル)-ジ(3,5-キシリル)フォスフィンアミド(5h)
1H NMR (CDCl3) δ 0.88 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.28-1.35 (m, 5H), 1.44-1.58 (m, 6H), 1.96-2.08 (m, 4H), 2.31 (s, 6H), 2.34 (s, 6H), 2.76 (d, J = 15.3 Hz, 1H), 2.97 (d, J = 15.3 Hz, 1H), 3.99-4.08 (m, 2H), 4.37 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 5.85-5.90 (m, 1H), 7.05 (s, 1H), 7.06 (s, 1H), 7.44 (d, J = 12.2 Hz, 2H), 7.52 (d, J = 12.2 Hz, 2H)
13C NMR (CDCl3) δ 13.60, 19.08, 21.28, 22.03, 22.94, 24.71, 25.29, 26.03 (d, JC-P = 4.1 Hz), 30.58, 45.84 (d, JC-P = 2.1), 59.33 (d, JC-P = 2.1 Hz), 64.10, 121.62, 128.77, 128.84, 129.51, 129.59, 132.92, 132.94, 139.96, 132.98, 134.44, 134.71, 135.47, 135.71, 137.71, 137.81, 137.86, 137.97, 141.01, 141.06, 172.29
31P NMR (CDCl3) δ 19.3
[α]27D +2.1 (c = 1.06, CHCl3) (81% ee, using (R,R)-8)
HPLC DAICEL CHIRALCEL AD-H, hexane/2-propanol 20/1, 1.0 mL/min, tR 10.1 min (minor), 15.5 min (major)
MS m/z 518 (M+Na+)
HRMS Calcd for C30H42NO3P+ (M+) 495.2897, Found 495.2903
IR (neat) 2929, 1725, 1199 cm-1
【0042】
N-[1-(2-ブトキシカルボニル)エチル-1-メチル-2-ヘプテニル]-ジ(3,5-キシリル)フォスフィンアミド(5i)
1H NMR (CDCl3) δ 0.81 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 1.20-1.35 (m, 4H), 1.36 (s, 3H), 1.51-1.59 (m, 2H), 1.81-1.88 (m, 2H), 2.30 (s, 6H), 2.31 (s, 6H), 2.67 (d, J = 15.3 Hz, 1H), 2.78 (d, J = 15.3 Hz, 1H), 4.01- 4.10 (m, 2H), 4.44 (d, J = 6.1 Hz, 1H), 5.51-5.60 (m, 2H), 7.45 (s, 2H), 7.44 (d, J = 12.2 Hz, 2H), 7.49 (d, J = 12.2 Hz, 2H)
13C NMR (CDCl3) δ 13.53, 13.60, 19.09, 21.25, 22.09, 27.31 (d, JC-P = 4.1 Hz), 30.53, 34.06, 47.30 (d, JC-P = 3.1 Hz), 55.99 (d, JC-P = 3.1 Hz), 64.23, 128.88, 128.98, 129.05, 129.45, 129.52, 132.89, 132.90, 132.93, 134.43, 134.55, 135.46, 135.56, 135.60, 135.64, 137.70, 137.76, 137.80, 137.87, 172.13
31P NMR (CDCl3) δ 19.5
[α]24D +4.7 (c = 1.00, CHCl3) (77% ee, using (R,R)-8)
HPLC DAICEL CHIRALCEL AD-H, hexane/2-propanol 50/1, 1.0 mL/min, tR 31.4 min (minor), 33.6 min (major)
MS m/z 506 (M+Na+)
HRMS Calcd for C29H42NO3P+ (M+) 483.2897, Found 483.2895
IR (neat) 2958, 1725, 1197 cm-1
【0043】
N-[2-ブトキシカルボニル-1-シクロヘキシル-1-メチルエチル]-ジ(3,5-キシリル)フォスフィンアミド(5j)
1H NMR (CDCl3) δ 0.90 (t, J = 7.4, 3H), 0.92-1.25 (m, 5H), 1.08 (s, 3H), 1.30-1.39 (m, 2H), 1.53-1.85 (m, 7H), 2.14 (d, J = 12.5, 1H), 2.30 (s, 6H), 2.32 (s, 6H), 2.56 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 2.94 (1H, J = 15.6 Hz, 1H), 3.98 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 4.02-4.15 (m, 2H), 7.05 (s, 1H), 7.07 (s, 1H), 7.43 (d, J = 12.2 Hz, 2H), 7.52 (d, J = 12.2 Hz, 2H)
13C NMR (CDCl3) δ 13.60, 19.10, 21.25, 21.63, 21.66, 26.41, 26.65, 26.77, 27.33, 27.59, 30.58, 44.68 (d, JC-P = 2.1 Hz), 47.06 (d, JC-P = 6.3 Hz), 58.98 (d, JC-P = 2.1 Hz), 64.05, 128.76, 128.84, 129.47, 129.55, 132.89, 132.93, 132.95, 134.52, 134.83, 135.55, 135.82, 137.68, 137.79, 137.83, 137.94, 172.52
31P NMR (CDCl3) δ 19.4
[α]25D +12.6 (c = 1.14, CHCl3) (74% ee, using (S,S)-iPr-Duphos 7)
HPLC DAICEL CHIRALCEL AD-H, hexane/2-propanol 20/1, 1.0 mL/min, tR 10.3 min (major), 12.8 min (minor)
MS m/z 520 (M+Na+)
HRMS Calcd for C29H41NO3P (M-Me+) 482.2819, Found 482.2823
IR (neat) 2927, 1720, 1192 cm-1
【0044】
t-ブチルシクロヘキシル−DUPHOS
1H NMR (CDCl3) δ 0.52-0.70 (m, 5H), 0.73 (s, 18H), 0.81 (s, 18H), 0.85-1.10 (m, 16H), 1.21-1.28 (m, 2H), 1.40-1.85 (m, 19H), 1.96-2.08 (m, 5H), 2.17-2.28 (m, 2H), 2.36-2.47 (m,2H), 7.24-7.28 (m, 2H), 7.45-7.55 (m, 2H)
13C NMR (CDCl3) δ 27.22, 27.41, 27.51, 27.56, 27.69, 29.62, 30.62, 30.95, 31.00, 31.04, 31.96, 32.24, 32.34, 34.44, 34.49, 34.54, 35.73, 35.78, 35.83, 38.22, 42.43, 42.54, 42.65, 48.05, 48.29, 48.34, 49.32, 49.38, 49.43, 127.46, 133.66, 145.84
31P NMR (CDCl3) δ -12.5
[α]23D +65.9 (c = 0.99, CHCl3)
MS m/z 803 (M+H+)
HRMS Calcd for C54H93P2 (M+H+) 803.6747, Found 803.6730; IR 2934, 1364, 1098 cm-1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、置換若しくは無置換アルキル基、置換若しくは無置換アルケニル基、又は置換若しくは無置換アルキニル基を示し;R3及びR4は同一又は異なる置換基であり、それぞれ独立に置換又は無置換アリール基を示し;R5は置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、置換若しくは無置換アルキル基、又は置換若しくは無置換アルケニル基を示し;R6及びR7は同一又は異なる置換基であり、それぞれ独立に水素原子、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、置換若しくは無置換アルキル基、置換若しくは無置換アルケニル基、又は置換若しくは無置換アルキニル基を示す)で表される化合物の製造方法であって、下記の一般式(II):
【化2】

(式中、R1、R2、R3、及びR4は上記と同義である)で表される化合物と、下記の一般式(III):
【化3】

(式中、R5、R6、及びR7は上記と同義であり、R8はトリアルキルシリル基を示す)で表される化合物とを、光学活性一価銅錯体触媒及び下記一般式(IV):(R9O)nSiX4-n(式中、R9はアルキル基を示し、Xはフッ素原子又はアセトキシ基を示し、nは1ないし3の整数を示す)で表されるトラップ剤の存在下で反応させる工程を含む方法。
【請求項2】
R2が置換又は無置換のアルキル基であり、R3及びR4がそれぞれフェニル基、トリル基、又はキシリル基であり、R6及びR7が水素原子であり、R8がトリメチルシリル基であり、光学活性一価銅錯体触媒がCuOAc-DTBM-SEGPHOS又はCuOAc-4-tert-Bu-シクロヘキシル-DuPHOSである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1が置換若しくは無置換のアリール基又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり、R3及びR4がそれぞれ3,5-キシリル基であり、光学活性一価銅錯体触媒がCuOAc-DTBM-SEGPHOSであり、R9がエチル基であり、Xがアセトキシ基であり、nが2である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
R1が置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、又は置換若しくは無置換のアルキニル基であり、R3及びR4がそれぞれ3,5-キシリル基であり、光学活性一価銅錯体触媒がCuOAc-4-tert-Bu-シクロヘキシル-DuPHOSであり、R9がエチル基であり、Xがフッ素原子であり、nが3である請求項2に記載の方法。
【請求項5】
下記の一般式(V):
【化4】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、置換若しくは無置換アルキル基、置換若しくは無置換アルケニル基、又は置換若しくは無置換アルキニル基を示し;R6及びR7は同一又は異なる置換基であり、それぞれ独立に水素原子、置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、置換若しくは無置換アルキル基、置換若しくは無置換アルケニル基、又は置換若しくは無置換アルキニル基を示す)で表されるβ,β-ジ置換-β-アミノ酸の製造方法であって、下記の工程:
(a)請求項1に記載の一般式(II)で表される化合物と請求項1に記載の一般式(III)で表される化合物とを光学活性一価銅錯体触媒及び請求項1に記載の一般式(IV)で表されるトラップ剤の存在下で反応させて上記一般式(I)で表される化合物を製造する工程;及び
(b)上記工程(a)で得られた上記一般式(I)で表される化合物を酸性条件下で処理してフォスフィノイル基を除去し、続いてエステル基を塩基性条件下で加水分解して上記一般式(V)で表される化合物を得る工程
を含む方法。
【請求項6】
下記一般式(Ia):
【化5】

(式中、R1aは置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、置換若しくは無置換アルキル基、又は置換若しくは無置換アルケニル基を示し、R2aは置換又は無置換アルキル基を示し、R3a及びR4aは同一の置換又は無置換アリール基を示し、R5aは置換若しくは無置換アリール基、置換若しくは無置換ヘテロアリール基、置換若しくは無置換アルキル基、又は置換若しくは無置換アルケニル基を示し、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子又は置換若しくは無置換アルキル基を示す)で表される化合物。

【公開番号】特開2008−169167(P2008−169167A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5306(P2007−5306)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年12月20日〜22日 国立大学法人東京大学主催の平成19年3月薬学系研究科博士課程修了予定者研究業績発表会において文書をもって発表 平成18年12月22日 http://pubs.acs.org/journals/jacsat/index.htmlを通じて発表
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】