説明

β晶核剤およびその製造方法、樹脂組成物およびその製造方法、多孔質膜、非水電解質用セパレータならびに非水電解質電池

【課題】非水電解質電池用セパレータ等に使用されるβ晶系ポリプロピレン製品を、赤く着色する等の弊害を伴うことなく効率良く得ることができるβ晶核剤を、特別な装置や操作を用いることなく、安価でかつ高い収率で生成する。
【解決手段】一般式(1)または一般式(2)で示されるアミン塩系化合物をβ晶核剤として用いる。


(式中、R1は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表し、R2およびR3は同一または異なって、炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のアミン残基を表す。)


(式中、R4、R5は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多孔質膜の製造に用いるβ晶核剤およびその製造方法と、このβ晶核剤を用いた樹脂組成物およびその製造方法、多孔質膜、非水電解質用セパレータならびに非水電解質電池に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性ポリプロピレンには、α、β、γ、δの各変態と溶融ポリプロピレンを急冷した際に生ずるスメクチック変態がある。このうちβ変態(以下「β晶」と適宜称する)は、従来において汎用なポリプロピレンのナチュラルペレットに見られるα変態(以下「α晶」と適宜称する)と比較して、低融点、低密度であり、また両者の結晶状態や破壊の状態が異なる等、応用上興味ある特性を有していることが知られている。
【0003】
β晶の製造方法としては、溶融ポリプロピレンを温度勾配下に結晶化させる方法と、微量の核剤(以下「β晶核剤」という。)を添加混合する方法とがあるが、前者は長時間を要し、しかも微量の試料しか得られないため、後者の方法がより実用的である。
【0004】
かかるβ晶核剤として、これまでに例えば非特許文献1に記載されたγ-キナクリドンや、特許文献1に記載されているN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドなどが提案されている。
【0005】
具体的には、特許文献1は、例えば下記の化(A)に示す2,6−ナフタレンジカルボン酸と、化(B)に示すシクロヘキシルアミンとともに、亜リン酸トリフェニル、ピリジンおよびN−メチルピロリドンを用い、攪拌しながら窒素雰囲気下で100℃で3時間反応させる。この後、反応溶液を冷却し、再沈殿させ、沈殿物を洗浄・乾燥することにより、β晶核剤である化(C)に示すN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドを得ることが記載されている。
【0006】
【化1】

【0007】
【化2】

【0008】
【化3】

【0009】
特許文献1には、混合溶液を反応させるための装置として、攪拌機、温度計、冷却管およびガス導入孔を備えた四ッ口フラスコを用いることが記載されている。また、上述の材料および他のジカルボン酸およびモノアミンを用いることにより、3時間程度の合成時間でβ晶核剤の収率を50〜85%程度とすることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−310665号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】JOUENAL OF MACROMORECULAR SCIENCE,41,1121−1171(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、非特許文献1に記載されるγ-キナクリドンをβ晶核剤として用いた場合、得られる製品が赤く着色するといった欠点がある。また、特許文献1に記載されているN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド等を生成する方法の場合には、合成の際に特別の装置や操作を必要とする、また、合成に長時間を要する等の欠点がある。
【0013】
この発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、β晶系ポリプロピレン製品を効率良く得ることができる新規有用なβ晶核剤を得ること、また、このβ晶核剤を適用してなる、樹脂組成物およびその製造方法、多孔質膜、非水電解質用セパレータならびに非水電解質電池を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の問題を解決するための第1の発明は、一般式(1)または一般式(2)で示されるアミン塩系化合物である。
【0015】
【化4】

(式中、R1は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表し、R2およびR3は同一または異なって、炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のアミン残基を表す。また、R1、R2、R3およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【化5】

(式中、R4、R5は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表す。また、R4、R5およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【0016】
また、第2の発明は、一般式(1)または一般式(2)で示されるアミン塩系化合物からなるβ晶核剤である。
【0017】
第3の発明は、脂環式または芳香族のジカルボン酸と脂環式または芳香族のモノアミンとを、常温下で水に分散させて溶解して反応溶液を調整する工程と、
反応溶液に水と混和する有機溶媒を混合して生成物を沈殿させる工程と、
生成物を洗浄および乾燥する工程と
からなるβ晶核剤の製造方法である。
【0018】
第4の発明は、プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体に対して、一般式(1)および一般式(2)の構造を有するアミン塩系化合物がβ晶核剤として配合された樹脂組成物である。
【0019】
β晶核剤は、プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体100重量部に対して0.0001重量部以上5重量部以下混合されることが好ましい。また、樹脂組成物中におけるβ晶の含有率が20重量%以上であることが好ましい。
【0020】
第5の発明は、脂環式または芳香族のジカルボン酸と脂環式または芳香族のモノアミンとを、常温下で水に分散させて溶解して反応溶液を調整する工程と、
反応溶液に水と混和する有機溶媒を混合して生成物を沈殿させる工程と、
生成物を洗浄および乾燥する工程と
により製造したβ晶核剤を、プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体に混合してなる樹脂組成物の製造方法である。
【0021】
第6の発明は、プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体に対して、一般式(1)および一般式(2)の構造を有するアミン塩系化合物がβ晶核剤として配合された樹脂組成物を延伸してなる多孔質膜である。
【0022】
第7の発明は、プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体に対して、一般式(1)および一般式(2)の構造を有するアミン塩系化合物がβ晶核剤として配合された樹脂組成物を延伸してなる非水電解質電池用セパレータである。
【0023】
第8の発明は、正極と、
負極と、
プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体に対して、一般式(1)および一般式(2)の構造を有するアミン塩系化合物がβ晶核剤として配合された樹脂組成物を延伸してなり、正極と負極との間に配置される非水電解質電池用セパレータと
を備える非水電解質電池である。
【0024】
この発明では、安価で容易に、かつ高い収率でβ晶核剤を生成することができる。また、この発明の方法では、従来より容易かつ安価な方法で二次加工性の高いβ晶核剤をしてなる樹脂組成物を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、容易かつ安価な方法でβ晶核剤、β晶核剤を含む樹脂組成物およびその成形樹脂を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の非水電解質電池の一実施形態であって、ラミネート型二次電池の一例を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示した電池素子のII−II線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という。)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(β晶核剤の例)
2.第2の実施の形態(この発明のβ晶核剤を用いた多孔質膜の例)
【0028】
1.第1の実施の形態
第1の実施の形態では、特定の構造を有するアミン塩系化合物からなるβ晶核剤について説明する。
【0029】
(1−1)β晶核剤の構成
この発明のβ晶核剤は、下記の一般式(1)および一般式(2)の構造を有するアミン塩系化合物である。
【0030】
【化6】

(式中、R1は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式または芳香族のジカルボン酸残基を表し、R2およびR3は同一または異なって、炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のアミン残基を表す。また、R1、R2、R3およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【0031】
【化7】

(式中、R4、R5は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式または芳香族のジカルボン酸残基を表す。また、R4、R5およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【0032】
上述の一般式(1)で表されるアミン塩系化合物は、所定の脂環式または芳香族のジカルボン酸と、所定の脂環式または芳香族のモノアミンとをアミン塩化することにより、容易に調製することができる。
【0033】
一般式(1)の化合物としては、具体的に、下記の化(3)で示される2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミン塩、もしくは、下記の化(4)で示される1,4-ジカルボキシテトラフルオロベンゼンジシクロヘキシルアミン塩が一例として挙げられる。
【0034】
【化8】

【0035】
【化9】

【0036】
また、一般式(2)で表されるアミン塩系化合物は、脂環式、芳香族のジアミンと、硫酸とから容易に調整することができる。
【0037】
一般式(2)の化合物としては、具体的に、下記の化(5)で示される1,4−フェニレンジアミン硫酸塩が一例として挙げられる。

【0038】
脂環式ジカルボン酸として、より具体的には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジ酢酸等が例示される。
【0039】
芳香族ジカルボン酸として、より具体的には、p−フェニレンジ酢酸、p−フェニレンジエタン酸、フタル酸、4−tert−ブチルフタル酸、イソフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸、テレフタル酸、1,8−ナフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビナフチルジカルボン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)メタン、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、3,3’−スルホニルジ安息香酸、4,4’−スルホニルジ安息香酸、3,3’−オキシジ安息香酸、4,4’−オキシジ安息香酸、3,3’−カルボニルジ安息香酸、4,4’−カルボニルジ安息香酸、3,3’−チオジ安息香酸、4,4’−チオジ安息香酸、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジ安息香酸、4,4’−イソフタロイルジ安息香酸、4,4’−テレフタロイルジ安息香酸、ジチオサリチル酸等の芳香族二塩基酸、1,4-ジカルボキシテトラフルオロベンゼン、1,3-ジカルボキシテトラフルオロベンゼン、1,2-ジカルボキシテトラフルオロベンゼン、2,6-ジカルボキシヘキサフルオロナフタレン、1,4-ジカルボキシヘキサフルオロナフタレン、2,7-ジカルボキシヘキサフルオロナフタレン、等が例示される。
【0040】
脂環式モノアミンとして、より具体的には、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、4−エチルシクロヘキシルアミン、2−プロピルシクロヘキシルアミン、2−イソプロピルシクロヘキシルアミン、4−プロピルシクロヘキシルアミン、4−イソプロピルシクロヘキシルアミン、2−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、4−n−ブチルシクロヘキシルアミン、4−イソブチルシクロヘキシルアミン、4−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、4−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、4−n−アミルシクロヘキシルアミン、4−イソアミルシクロヘキシルアミン、4−sec−アミルシクロヘキシルアミン、4−tert−アミルシクロヘキシルアミン、4−ヘキシルシクロヘキシルアミン、4−ヘプチルシクロヘキシルアミン、4−オクチルシクロヘキシルアミン、4−ノニルシクロヘキシルアミン、4−デシルシクロヘキシルアミン、4−ウンデシルシクロヘキシルアミン、4−ドデシルシクロヘキシルアミン、4−シクロヘキシルシクロヘキシルアミン、4−フェニルシクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロドデシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、α−シクロヘキシルエチルアミン、β−シクロヘキシルエチルアミン、α−シクロヘキシルプロピルアミン、β−シクロヘキシルプロピルアミン、γ−シクロヘキシルプロピルアミンが例示される。
【0041】
芳香族モノアミンとして、より具体的には、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−エチルアニリン、p−エチルアニリン、o−プロピルアニリン、m−プロピルアニリン、p−プロピルアニリン、o−クミジン、m−クミジン、p−クミジン、o−tert−ブチルアニリン、p−n−ブチルアニリン、p−イソブチルアニリン、p−sec−ブチルアニリン、p−tert−ブチルアニリン、p−n−アミルアニリン、p−イソアミルアニリン、p−sec−アミルアニリン、p−tert−アミルアニリン、p−ヘキシルアニリン、p−ヘプチルアニリン、p−オクチルアニリン、p−ノニルアニリン、p−デシルアニリン、p−ウンデシルアニリン、p−ドデシルアニリン、p−シクロヘキシルアニリン、o−アミノジフェニル、m−アミノジフェニル、p−アミノジフェニル、p−アミノスチレン、ベンジルアミン、α−フェニルエチルアミン、β−フェニルエチルアミン、α−フェニルプロピルアミン、β−フェニルプロピルアミン、γ−フェニルプロピルアミン等が例示される。
【0042】
脂環式ジアミンとしては、例えば、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の他、イソフォロンジアミン、メンセンジアミン等の脂環式ジアミンが例示される。
【0043】
芳香族ジアミンとしては、より具体的には、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン等が例示される。
【0044】
(1−2)β晶核剤の合成方法
この発明のβ晶核剤であるアミン塩系化合物は、所定の脂環式または芳香族のジカルボン酸と、所定の脂環式または芳香族のモノアミンとをアミン塩化することにより、容易に調製することができる。
【0045】
すなわち、所定の脂環式または芳香族のジカルボン酸と、所定の脂環式または芳香族のモノアミンとを、常温下で水に分散させて拡散し、溶解させる。この操作は、数分で行うことができる。
【0046】
続いて、上述のジカルボン酸とモノアミンとが溶解された反応溶液に対して、反応溶媒である水と混和する有機溶媒を混合する。このような有機溶媒としては、アセトンを用いることが好ましい。これにより、生成物を沈殿させる。生成物が沈殿した反応溶液を濾過しし、洗浄、乾燥を行うことにより、この発明のβ晶核剤を得ることができる。
【0047】
このような方法によりβ晶核剤を合成する場合、β晶核剤の合成に活性化剤を用いる必要がなく、合成時に加熱、冷却を行う必要がないため、これら操作を行う装置が不要となる。また、加熱、冷却工程が簡略されるとともに沈殿物生成にかかる時間が短く、合成時間は約30分程度と非常に短い時間での合成が可能である。さらに、90%以上という高い収率でβ晶核剤を合成することができる。
【0048】
また、この発明のアミン塩系化合物からなるβ晶核剤は分解温度が高く、例えば溶融ポリプロピレンと混合して用いる場合であっても分解しないため好ましい。
【0049】
(1−3)1,4-ジカルボキシテトラフルオロベンゼンジシクロヘキシルアミン塩の合成方法
β晶核剤の一例として1,4-ジカルボキシテトラフルオロベンゼンジシクロヘキシルアミン塩を合成する場合について説明する。1,4-ジカルボキシテトラフルオロベンゼンジシクロヘキシルアミン塩の合成には、下記の化(6)の1,4-ジカルボキシテトラフルオロベンゼンと、化(7)のシクロヘキシルアミンとを出発材料として用いることができる。
【0050】
【化10】

【0051】
【化11】

【0052】
まず、1,4-ジカルボキシテトラフルオロベンゼンと、シクロヘキシルアミンとを水に分散させ、攪拌して溶解し反応溶液とする。この後、アセトンを反応溶液に混合することにより、1,4-ジカルボキシテトラフルオロベンゼンと、シクロヘキシルアミンとが反応した生成物が沈殿する。この沈殿物を反応溶液から濾過し、洗浄、乾燥することにより、1,4-ジカルボキシテトラフルオロベンゼンジシクロヘキシルアミン塩を得ることができる。
【0053】
1,4-ジカルボキシテトラフルオロベンゼンジシクロヘキシルアミン塩は、その収率が95%と高い収率を示す。この発明のβ晶核剤は、安価で容易に、かつ高い収率で生成することができる。
【0054】
2.第2の実施の形態
第2の実施の形態は、第1の実施の形態によるβ晶核剤を用いて作製された樹脂組成物である。
【0055】
(2−1)β晶核剤を用いた樹脂組成物の構成
第2の実施の形態における樹脂組成物は、ポリプロピレン(PP)系樹脂に対して第1の実施の形態における一般式(1)および一般式(2)の構造を有するアミン塩系化合物をβ晶核剤として配合し溶融した溶融物を結晶化させることにより得られる。
【0056】
樹脂組成物を構成するポリプロピレン(PP)系樹脂としては、プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体であって、具体的には、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレンを主体としたプロピレン−エチレンランダムコポリマー、プロピレン−エチレンブロックコポリマーおよび上述のポリプロピレン系樹脂と少量の熱可塑性樹脂、例えば、高密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1とのブレンドポリマー等が例示される。
【0057】
上述のような重合体を製造するために適用される触媒としては、一般に使用されているチーグラー・ナッタ型触媒はもちろん、遷移金属化合物(例えば、三塩化チタン、四塩化チタン等のチタンのハロゲン化物)を塩化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウムを主成分とする担体に担持してなる触媒と、アルキルアルミニウム化合物(トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド等)とを組み合わせてなる触媒系も使用することができる。
【0058】
結晶性ポリプロピレン系樹脂成分のメルトフローレート(MFR;JIS K 6758-1981)は、その適用する成形方法により適宜選択され、通常、0.1〜100g/10分程度、好ましくは0.5〜50g/10分程度である。
【0059】
なお、この発明のβ晶核剤中でも、化(4)の1,4-ジカルボキシテトラフルオロベンゼンジシクロヘキシルアミン塩は耐熱性に優れ、β晶を効果的に生成し得るため、樹脂組成物の生成において特に好ましい。
【0060】
β晶核剤の添加量は、所定の効果が得られる限り適宜選択することができるが、通常、ポリプロピレン(PP)系樹脂100重量部に対し、0.0001重量部以上5重量部以下、より好ましくは0.001重量部以上1重量部以下である。β晶核剤の添加量が0.0001重量部未満ではβ晶が生成しにくい。また、β晶核剤の添加量が5重量部を越える場合には添加効果の優位差が認められず、経済的に不利となる。
【0061】
また、この発明の樹脂組成物には、必要に応じて安定剤(エポキシ化合物等)、酸化防止剤(フェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物等)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物)、中和剤、造核剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤(脂肪族炭化水素、高級脂肪酸及びそのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、脂肪酸エステル、高級脂肪酸アマイド、ロジン誘導体等)、着色剤、エラストマー、無機鉱物(タルク、ハイドロタルサイト等)の各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
【0062】
この発明に係るβ晶核剤は、極めて微量で結晶性ポリプロピレン系樹脂をβ晶に変換させることができる。また、通常の成形条件下で20重量%以上のβ晶を含有する樹脂組成物を得ることができる。
【0063】
この発明の樹脂組成物は、α晶のポリプロピレンと比べて融点が低く、加熱下において変形に要する力が小さい等の特徴を有している。このため、二次加工性の改善等に非常に有用であり、所望する混合方法、成形加工条件下にて成形することにより、容易にβ晶を従来になく高度に含有した色相の良好な成形品を得ることができる。β晶を20重量%以上混合する樹脂組成物は、このようなβ晶の樹脂組成物の性質をより高めることができる点で好ましい。この樹脂組成物であるポリプロピレン成形品は、容器、シート、フィルム等の幅広い分野への応用が可能である。
【0064】
また、この発明の樹脂組成物は、成形条件、例えば冷却条件を選択することによりα型結晶構造とβ型結晶構造の含有比率を制御することが可能である。この特性は、特に二軸延伸フィルムの表面粗面化等に効果的である。得られた表面粗面化フィルムはブロッキング防止性、印刷性、接着性等に優れ、包装用フィルム、印刷用紙、トレーシングペーパー、油浸型プラスチックコンデンサー等の分野で非常に有用である。また、延伸により空孔を多数有するように形成した多孔質膜として、例えば非水電解質電池のセパレータとして用いることも好ましい。
【0065】
なお、この発明の樹脂組成物中のβ晶核剤は、例えば下記の方法によって確認することができる。まず、少量の樹脂組成物を数時間から十数時間程度水中に浸漬し、極性添加剤成分を抽出する。続いて、加熱もしくは減圧によって、抽出液から水分を除去することにより、抽出成分を濃縮する。なお、必要に応じて液体クロマトグラフィー(LC;Liquid Chromatography)による分離を行っても良い。
【0066】
次に、上述の抽出成分の赤外分光(IR;Infrared Spectroscopy)分析を行い、2500〜2750cm−1に現れる、この発明のβ晶核剤であるアミン塩系化合物の特徴的な吸収ピークを確認することによって、この発明のβ晶核剤の有無を確認することができる。なお、赤外分光装置としては、例えばフーリエ変換赤外分光分析装置および顕微赤外分光分析装置等を使用することができる。
【0067】
(2−2)β晶核剤を用いた樹脂組成物の製造方法
上述のポリプロピレンホモポリマー、プロピレンを主体としたコポリマー、ポリプロピレン系樹脂と少量の熱可塑性樹脂とのブレンドポリマーから選択された材料を、例えばチーグラー・ナッタ型触媒を用いて重合させる。このとき、所定量のβ晶核剤を添加して上述の材料を重合させる。これにより、β晶核剤を配合したポリプロピレン系の樹脂組成物を得ることができる。
【0068】
また、上述のポリプロピレンホモポリマー、プロピレンを主体としたコポリマー、ポリプロピレン系樹脂と少量の熱可塑性樹脂とのブレンドポリマーから選択された材料を、例えばチーグラー・ナッタ型触媒を用いて重合させる。そして、重合後のポリプロピレン系樹脂材料に、所定量のβ晶核剤を混合することによってもβ晶核剤を配合したポリプロピレン系の樹脂組成物を得ることができる。
【0069】
β晶核剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物は、例えば射出成形、押出成形、圧縮成形等の方法により、所望の形状に成型する。このとき、例えば冷却条件等の成形条件を調整することにより、α型結晶構造とβ型結晶構造の含有比率が所望の含有比率となるように制御することができる。また、必要に応じて、成型された樹脂組成物を一軸延伸、二軸延伸により延伸するようにしても良い。
【0070】
3.第3の実施の形態
第3の実施の形態は、第2の実施の形態によるβ晶核剤を用いた樹脂組成物を用いたセパレータを備える非水電解質電池である。
【0071】
(3−1)非水電解質電池の構成
第3の実施の形態では、ラミネートフィルムで外装された非水電解質電池について説明する。
【0072】
(3−1)非水電解質電池の構成
第3の実施の形態では、第2の実施の形態におけるβ晶核剤を用いた樹脂組成物から作製したセパレータを用いた非水電解質電池について説明する。
【0073】
図1は、この発明の第3の実施の形態による非水電解質電池の一構成例を示す断面である。また、図2は、この発明の第3の実施の形態による非水電解質電池の電極積層構造を示す。
【0074】
この非水電解質電池は、正極リード15および負極リード16が取り付けられた巻回電極体10をフィルム状の外装部材19の内部に収納した構成とされており、扁平型の形状を有するものである。正極リード15および負極リード16は、それぞれ例えば短冊状であり、外装部材19の内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極リード15は、例えばアルミニウム(Al)などの金属材料により構成されており、負極リード16は、例えばニッケル(Ni)などの金属材料により構成されている。
【0075】
[外装部材]
外装部材19は、例えば、熱融着層、金属層および外装樹脂層をこの順に積層しラミネート加工などにより貼り合わせた構造を有するラミネートフィルムである。外装部材19は、例えば、熱融着層の側を内側として、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。
【0076】
熱融着層は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレンあるいはこれらの共重合体などのポリオレフィン樹脂により構成されている。水分透過性を低くすることができ、気密性に優れているからである。金属層は、箔状あるいは板状のアルミニウム、ステンレス、ニッケルあるいは鉄などにより構成されている。外装樹脂層は、例えば熱融着層と同様の樹脂により構成されていてもよいし、ナイロンなどにより構成されていてもよい。破れや突き刺しなどに対する強度を高くすることができるからである。外装部材19は、熱融着層、金属層および外装樹脂層以外の他の層を備えていてもよい。
【0077】
外装部材19と正極リード15および負極リード16との間には、正極リード15および負極リード16と、外装部材19の内側との密着性を向上させ、外気の侵入を防止するための密着フィルム17が挿入されている。密着フィルム17は、正極リード15および負極リード16に対して密着性を有する材料により構成されている。正極リード15および負極リード16が上述した金属材料により構成される場合には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0078】
図2は、図1に示した巻回電極体10のII−II線に沿った断面図である。巻回電極体10は、正極11と負極12とをセパレータ13および非流動性電解質である非水電解質層14を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ18が貼着されて巻回状態を維持している。
【0079】
[正極]
正極11は、正極活物質を含有する正極活物質層11Bが、正極集電体11Aの両面上に形成されたものである。正極集電体11Aとしては、例えばアルミニウム(Al)箔、ニッケル(Ni)箔あるいは、ステンレス(SUS)箔などの金属箔を用いることができる。
【0080】
正極活物質層11Bは、例えば正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成されている。正極活物質としては、目的とする電池の種類に応じて、金属酸化物、金属硫化物または特定の高分子を用いることができる。例えばリチウムイオン電池を構成する場合、LiMO(式中、Mは、一種以上の遷移金属を表し、xは、電池の充放電状態によって異なり、通常0.05以上1.10以下である)を主体とする、リチウムと遷移金属との複合酸化物が用いられる。リチウム複合酸化物を構成する遷移金属としては、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)等が用いられる。
【0081】
このようなリチウム複合酸化物として、具体的には、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiNiCo1−y(0<y<1)等が挙げられる。また、遷移金属元素の一部を他の元素に置換した固溶体も使用可能である。LiNi0.5Co0.5、LiNi0.8Co0.2等がその例として挙げられる。これらのリチウム複合酸化物は、高電圧を発生でき、エネルギー密度が優れたものである。
【0082】
また、正極活物質としてTiS、MoS、NbSe、V等のリチウムを有しない金属硫化物または酸化物を使用しても良い。これらの正極活物質は、単独で用いるか、もしくは複数種を混合して用いてもよい。
【0083】
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックあるいはケチェンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
【0084】
結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0085】
正極11は正極集電体11Aの一端部にスポット溶接または超音波溶接で接続された正極リード15を有している。この正極リード15は金属箔、網目状のものが望ましいが、電気化学的および化学的に安定であり、導通がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。正極リード15の材料としては、例えばアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)等が挙げられる。
【0086】
[負極]
負極12は、負極活物質を含有する負極活物質層12Bが、負極集電体12Aの両面上に形成されたものである。負極集電体12Aとしては、例えば銅(Cu)箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔を用いることができる。
【0087】
負極活物質層12Bは、例えば負極活物質と、必要に応じて導電剤と結着剤とを含有して構成されている。負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金またはリチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料または金属系材料と炭素系材料との複合材料が用いられる。具体的に、リチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料としては、例えば、易黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭あるいはカーボンブラック類などがある。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。炭素材料は、リチウムの吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られ、さらに導電剤としても機能するので好ましい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。
【0088】
さらに、リチウムをドープ・脱ドープできる材料としては、ポリアセチレン、ポリピロール等の高分子やSnO等の酸化物を使用することができる。
【0089】
上述の炭素材料の他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が挙げられる。高いエネルギー密度が得られるからである。このような負極材料は、金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。
【0090】
なお、ここで言う「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含まれる。また、「合金」は、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、あるいはそれらの2種以上が共存するものがある。
【0091】
上記した金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、リチウム金属が挙げられる。また、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素としては、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)などである。
【0092】
リチウムと合金を形成することが可能な金属元素あるいは半金属元素により構成された負極材料としては、長周期型周期表における14族の金属元素および半金族元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が好ましく、ケイ素(Si)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が特に好ましい。リチウムを吸蔵および放出する能力が大きいため、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0093】
ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金あるいは化合物や、スズの単体、合金あるいは化合物や、それらの1種あるいは2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
【0094】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を有するものが挙げられる。ケイ素の化合物としては、例えば、酸素あるいは炭素(C)を有するものが挙げられ、ケイ素に加えて、上記した第2の構成元素を有していてもよい。
【0095】
ケイ素の合金あるいは化合物の一例としては、SiB2、SiB、MgSi、NiSi、TiSi、MoSi、CoSi、NiSi、CaSi、CrSi、CuSi、FeSi、MnSi、NbSi、TaSi、VSi、WSi、ZnSi、SiC、Si、SiO、SiO(0<v≦2)あるいはLiSiOなどが挙げられる。
【0096】
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を有するものが挙げられる。スズの化合物としては、例えば、酸素あるいは炭素を有するものが挙げられ、スズに加えて、上記した第2の構成元素を有していてもよい。スズの合金あるいは化合物の一例としては、SnO(0<w≦2)、SnSiO、LiSnOあるいはMgSnなどが挙げられる。
【0097】
[セパレータ]
セパレータ13は、正極11と負極12とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ13は、電気的に安定であると共に、正極活物質、負極活物質あるいは溶媒に対して化学的に安定であり、かつ電気伝導性を有していなければどのようなものを用いてもよい。例えば、高分子の不織布、多孔質フィルム、ガラスあるいはセラミックスの繊維を紙状にしたものを用いることができ、これらを複数積層して用いてもよい。特に、多孔質ポリオレフィンフィルムを用いることが好ましく、これをポリイミド、ガラスあるいはセラミックスの繊維などよりなる耐熱性の材料と複合させたものを用いてもよい。
【0098】
この非水電解質電池では、充電を行うと、例えば、正極11からリチウムイオンが放出され、セパレータ13に含浸された電解質を介して負極12に吸蔵される。一方、放電を行うと、例えば、負極12からリチウムイオンが放出され、セパレータ13に含浸された電解液を介して正極11に吸蔵される。
【0099】
[電解質]
非水電解質層14は、電解液と、この電解液を保持する高分子化合物とを含有しており、いわゆるゲル状となっている。電解液は、電解質塩と、この電解質塩を溶解する溶媒とを含んでいる。電解質塩としては、例えば、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C)、メタンスルホン酸リチウム(LiCHSO)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl)、六フッ化ケイ酸二リチウム(LiSiF)、塩化リチウム(LiCl)あるいは臭化リチウム(LiBr)などが挙げられる。電解質塩にはいずれか1種を用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0100】
溶媒としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンあるいはε−カプロラクトンなどのラクトン系溶媒、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ブチレン(BC)、炭酸ビニレン(VC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)あるいは炭酸ジエチル(DEC)などの炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン、1−エトキシ−2−メトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフランあるいは2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、スルフォラン系溶媒、リン酸類、リン酸エステル溶媒、またはピロリドン類などの非水溶媒が挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0101】
また、溶媒として、環状エステルまたは鎖状エステルの水素の一部または全部がフッ素化された化合物を含むことが好ましい。このフッ素化された化合物としては、ジフルオロエチレンカーボネート(4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン)を用いることが好ましい。負極活物質としてケイ素(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)などの化合物を含む負極12を用いた場合であっても、充放電サイクル特性を向上させることができ、特にジフルオロエチレンカーボネートがサイクル特性改善効果に優れるからである。
【0102】
高分子化合物は、溶媒を吸収してゲル化するものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデンあるいはビニリデンフルオロライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレンオキサイドあるいはポリメチルメタクリレートを繰返し単位として含むものなどが挙げられる。高分子化合物には、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0103】
特に、酸化還元安定性の点からは、フッ素系高分子化合物が望ましく、中でも、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとを成分として含む共重合体が好ましい。さらに、この共重合体は、モノメチルマレイン酸エステルなどの不飽和二塩基酸のモノエステル、三フッ化塩化エチレンなどのハロゲン化エチレン、炭酸ビニレンなどの不飽和化合物の環状炭酸エステル、またはエポキシ基含有アクリルビニルモノマーなどを成分とし
て含んでいてもよい。より高い特性を得ることができるからである。
【0104】
(2−2)非水電解質電池の製造方法
[正極の製造方法]
正極活物質と、結着剤と、導電剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散して混合液を調製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体11Aに塗布し乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層11Bを形成し、正極11を得る。
【0105】
[負極の製造方法]
負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体12Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層12Bを形成し、負極12を得る。
【0106】
[非水電解質電池の組み立て方法]
まず、非水溶媒と、電解質塩と、必要に応じて溶剤とを含む前駆溶液を調整する。この前駆溶液を、正極11および負極12のそれぞれの表面に塗布した後、溶剤を揮発させてゲル状の非水電解質層を形成する。続いて、正極集電体11Aおよび負極集電体12Aにそれぞれ正極リード15および負極リード16を取り付ける。ここで、正極リード15および負極リード16は、非水電解質層の形成前に正極集電体11Aおよび負極集電体12Aに取り付けておくようにしても良い。
【0107】
続いて、非水電解質層が設けられた正極11と負極12とをセパレータ13を介して積層させてから長手方向に巻回し、その最外周部に保護テープを接着させて巻回電極体を形成する。このとき、セパレータ13としては、第2の実施の形態における樹脂組成物を二軸延伸した多孔質膜を用いる。
【0108】
最後に、例えば2枚のフィルム状の外装部材の間に巻回電極体を挟み込んだ後、その外装部材の外縁部同士を熱融着などで接着させて減圧下で封止し、巻回電極体を封入する。このとき、正極リード15および負極リード16と外装部材との間に、密着フィルム17を挿入する。これにより、この発明の非水電解質電池が完成する。
【0109】
この発明の非水電解質電池に用いるセパレータは、上述のように容易な方法で、かつ安価に得られ、さらに高い機能を備える樹脂組成物を延伸することにより作製することができる。このため、非水電解質電池としての性能を維持しつつ、製造コストを低下させることができる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0111】
以下の実施例では、樹脂組成物の構成を変えて作製した樹脂シートのβ晶含有率を測定した。なお、実施例に用いるβ晶核剤は以下の通りである。
化(4):1,4−ジカルボキシテトラフルオロベンゼンジシクロヘキシルアミン塩
化(5):1,4−フェニレンジアミン硫酸塩
【0112】
【化12】

【0113】
【化13】

【0114】
また、比較例に用いるβ晶核剤は以下の通りである。
化(a):ピメリン酸ジシクロヘキシルアミン塩
化(b):n−ブチルジアミン硫酸塩
【0115】
【化14】

【0116】
【化15】

【0117】
<実施例1>
プロピレンホモポリマーペレット(MFR=3g/10分)100重量部にβ晶核剤として化(4)の1,4−ジカルボキシテトラフルオロベンゼンジシクロヘキシルアミン塩を0.2重量部添加し、ドライブレンドで混合した。この後、一軸溶融押出機で200℃でペレット化した。次に、得られたペレットを200℃、5分の条件下で圧縮成形し、厚さ200μmのポリプロピレンシートとした。
【0118】
[β晶含有率の測定]
上述のポリプロピレンシートにおけるβ晶の生成をX線解折により確認したところ、β晶の生成が確認された。また、上述のポリプロピレンシートから5〜10mgの試料片を打ち抜き、DSC(Differential scanning calorimetry;示差走査熱量測定)装置の試料パンにセットした。この後、窒素雰囲気下で室温から200℃まで10℃/分で昇温し、このとき得られたDSCプロファイルのα晶とβ晶のピーク面積よりβ晶含有率(面積%)を求めたところ、得られた試料のβ晶含有率は38%であった。
【0119】
<実施例2>
β晶核剤として化(5)の1,4−フェニレンジアミン硫酸塩を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレンシートを作製した。実施例1と同様の方法によりβ晶の生成が確認され、得られた試料のβ晶含有率は30%であった。
【0120】
<比較例1>
化(4)の1,4−ジカルボキシテトラフルオロベンゼンジシクロヘキシルアミン塩を添加しない以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレンシートを作製した。実施例1と同様の方法による測定により得られた試料のβ晶含有率は痕跡量であった。
【0121】
<比較例2>
化(4)の1,4−ジカルボキシテトラフルオロベンゼンジシクロヘキシルアミン塩の代わりに化(a)のピメリン酸ジシクロヘキシルアミン塩を用いた以外は実施例1と同様にしてポリプロピレンシートを作製した。実施例1と同様の方法による測定により得られた試料のβ晶含有率は痕跡量であった。
【0122】
<比較例3>
化(4)の1,4−ジカルボキシテトラフルオロベンゼンジシクロヘキシルアミン塩の代わりに化(b)のn−ブチルジアミン硫酸塩を用いた以外は実施例1と同様にしてポリプロピレンシートを作製した。実施例1と同様の方法による測定により得られた試料のβ晶含有率は痕跡量であった。
【0123】
上述の結果から、この発明のβ晶核剤を用いた場合には、簡易な方法でβ晶の含有率の高い樹脂組成物が得られることが分かった。
【0124】
以上、この発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、この発明はこれらに限定されるものではなく、この発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0125】
例えば、上記の実施の形態では、正極および負極を積層して巻回した電池素子を備える場合について説明したが、一対の正極と負極とを積層した平板状の電池素子、又は複数の正極と負極とを積層した積層型の電池素子を備える場合についても、この発明を適用することができる。
【0126】
また、この発明は、上述の如く、電極反応物質としてリチウムを用いる電池に関するものであるが、この発明の技術的思想は、ナトリウム(Na)若しくはカリウム(K)などの他のアルカリ金属、マグネシウム(Mg)若しくはカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属、又はアルミニウムなどの他の軽金属を用いる場合についても適用することが可能である。
【符号の説明】
【0127】
10…巻回電極体
11…正極
11A…正極集電体
11B…正極活物質層
11a…電極表面部
11b…電極内部
12…負極
12A…負極集電体
12B…負極活物質層
13…セパレータ
14…非水電解質(層)
15…正極端子
16…負極端子
17…密着フィルム
18…保護テープ
19…外装部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)または一般式(2)で示されるアミン塩系化合物。
【化1】

(式中、R1は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表し、R2およびR3は同一または異なって、炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のアミン残基を表す。また、R1、R2、R3およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【化2】

(式中、R4、R5は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表す。また、R4、R5およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【請求項2】
一般式(1)または一般式(2)で示されるアミン塩系化合物からなるβ晶核剤。
【化3】

(式中、R1は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表し、R2およびR3は同一または異なって、炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のアミン残基を表す。また、R1、R2、R3およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【化4】

(式中、R4、R5は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表す。また、R4、R5およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【請求項3】
脂環式または芳香族のジカルボン酸と脂環式または芳香族のモノアミンとを、常温下で水に分散させて溶解して反応溶液を調整する工程と、
上記反応溶液に水と混和する有機溶媒を混合して生成物を沈殿させる工程と、
上記生成物を洗浄および乾燥する工程と
からなるβ晶核剤の製造方法。
【請求項4】
プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体に対して、一般式(1)および一般式(2)の構造を有するアミン塩系化合物がβ晶核剤として配合された樹脂組成物。
【化5】

(式中、R1は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表し、R2およびR3は同一または異なって、炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のアミン残基を表す。また、R1、R2、R3およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【化6】

(式中、R4、R5は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表す。また、R4、R5およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【請求項5】
上記β晶核剤が、上記プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体100重量部に対して0.0001重量部以上5重量部以下混合された
請求項4に記載の樹脂組成物
【請求項6】
β晶含有率が20重量%以上である
請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
脂環式または芳香族のジカルボン酸と脂環式または芳香族のモノアミンとを、常温下で水に分散させて溶解して反応溶液を調整する工程と、
上記反応溶液に水と混和する有機溶媒を混合して生成物を沈殿させる工程と、
上記生成物を洗浄および乾燥する工程と
により製造したβ晶核剤を、プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体に混合してなる樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
上記プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体100重量部に対して上記β晶核剤を0.0001重量部以上5重量部以下混合する
請求項7に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体に対して、一般式(1)および一般式(2)の構造を有するアミン塩系化合物がβ晶核剤として配合された樹脂組成物を延伸してなる多孔質膜。
【化7】

(式中、R1は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表し、R2およびR3は同一または異なって、炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のアミン残基を表す。また、R1、R2、R3およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【化8】

(式中、R4、R5は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表す。また、R4、R5およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【請求項10】
プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体に対して、一般式(1)および一般式(2)の構造を有するアミン塩系化合物がβ晶核剤として配合された樹脂組成物を延伸してなる非水電解質電池用セパレータ。
【化9】

(式中、R1は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表し、R2およびR3は同一または異なって、炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のアミン残基を表す。また、R1、R2、R3およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【化10】

(式中、R4、R5は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表す。また、R4、R5およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【請求項11】
正極と、
負極と、
プロピレンを主要な構成成分としてなる重合体に対して、一般式(1)および一般式(2)の構造を有するアミン塩系化合物がβ晶核剤として配合された樹脂組成物を延伸してなり、上記正極と上記負極との間に配置される非水電解質電池用セパレータと
を備える非水電解質電池。
【化11】

(式中、R1は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表し、R2およびR3は同一または異なって、炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のアミン残基を表す。また、R1、R2、R3およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)
【化12】

(式中、R4、R5は炭素数3〜18の飽和あるいは不飽和の脂環式、または芳香族のジカルボン酸残基を表す。また、R4、R5およびアミノ基の水素原子は、飽和あるいは不飽和アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エステル基、イミド基、スルフィド基、ジアゾ基、アジド基、ホスフィノ基、ジイミド基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシル基、シアノ基、チオール基、イミノ基、アゾ基、もしくはアジ基により、同一または異なって一つ以上置換されていてもよい。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−178745(P2011−178745A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46544(P2010−46544)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】