説明

γ−アミノ酪酸含有組成物を含む飼料とその製造方法

【課題】 従来存在しなかった、γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料を提供すること、即ち、家畜における嗜好性および飼料特性に優れた、γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料を提供することを目的とする。
【解決手段】 発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地での乳酸菌の培養物を有するγ-アミノ酪酸含有組成物と、糖或いはデンプン含量の高い、液体又は固体原料と、から実質的になるγ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料;並びに前記γ-アミノ酪酸含有組成物と、糖或いはデンプン含量の高い、液体又は固体原料とを、攪拌混合することを特徴とする、γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料とその製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地で乳酸菌を培養し固−液分離し、γ-アミノ酪酸含有組成物の製造する際に生じた液体部分及び固形部分、すなわちγ-アミノ酪酸含有組成物(特許文献1)は、従来、人の飲食物として利用されていたが、家畜の飼料としては利用されていない。
【0003】
一方、畜産分野(畜産農家)では、日本国内で生産されたものを原料として、さらに日本国内で加工処理された国産飼料への要求が強い。
しかしながら、γ-アミノ酪酸含有組成物は、家畜における嗜好性および飼料特性が不明のため、飼料原料としての利用が困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開2005−65691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、従来、γ-アミノ酪酸含有組成物は、飼料として利用可能な栄養成分を含んでいるにも拘わらず、家畜における嗜好性および飼料特性が不明のため飼料原料として利用できなかった。
本発明は、従来存在しなかった、γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料を提供することを目的とするものである。
即ち、家畜における嗜好性および飼料特性に優れた、γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、γ-アミノ酪酸含有組成物と、糖或いはデンプン含量の高い、液体又は固体原料と、から実質的になるγ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料が目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
請求項1に係る本発明は、発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地での乳酸菌の培養物を有するγ-アミノ酪酸含有組成物と、糖或いはデンプン含量の高い、液体又は固体原料と、から実質的になるγ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地での乳酸菌の培養物を有するγ-アミノ酪酸含有組成物と、糖或いはデンプン含量の高い、液体又は固体原料とを、攪拌混合することを特徴とする、γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料の製造方法を提供するものである。
請求項3に係る本発明は、回転刃を有するブレンダー或いはカッターミキサーを用いて撹拌混合する、請求項2記載の方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来存在しなかった、γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料が提供される。
従って、γ-アミノ酪酸含有組成物の家畜飼料としての有用性が示されたことになる。
即ち、本発明によれば、γ-アミノ酪酸含有組成物の飼料特性および飼料価値の評価と、γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料の組成および製造方法を検討することで、γ-アミノ酪酸含有組成物の家畜飼料としての有用性を示された。
本発明によれば、畜産分野でのγ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料としての利用および、飼料製造企業或いは団体等に直接技術移転が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
請求項1に係る本発明は、発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地での乳酸菌の培養物を有するγ-アミノ酪酸含有組成物と、糖或いはデンプン含量の高い、液体又は固体原料と、から実質的になるγ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料である。
請求項1に係る本発明において用いるγ-アミノ酪酸含有組成物は、発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地での乳酸菌の培養物を有するもの、具体的には例えばラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)IFO12005株の培養物を有するものである。
【0009】
このγ-アミノ酪酸含有組成物は、発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地で乳酸菌、具体的には例えばラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)IFO12005株を培養し、必要に応じて固−液分離することにより製造することができる。
本発明においては、γ-アミノ酪酸含有組成物としては、固−液分離した後の固形部分を用いることが特に好ましい。
【0010】
本発明において培地に用いる発芽玄米糠としては、どの様な発芽玄米の糠でも良い。米糠も同様であり、無洗米製造時に発生する無洗米粕(肌糠)も含む。但し、精米後、時間が経過すると米糠臭の発生、微生物の増加が懸念されるので、使用までは冷蔵保管が好ましい。
米糠は、細かくいうと、米の一番外側の部分から、米の芯に向かって順に、赤糠、中糠、白糠に区分され、本発明ではいずれも用いることができ、勿論全体としての米糠を用いることができる。
また、本発明においては、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮も培地として用いることができる。
ここで脱脂米糠は、前記した米糠を常法により脱脂したものである。
本発明においては、上記した発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた1種のものを単独で、或いはこれらを2種以上併用することができる。
本発明においては、少なくとも発芽玄米糠を用いることが好ましいことから、特に発芽玄米糠単独、又は発芽玄米糠と米糠の混合物が好ましい。
それ以外の米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮、竹小豆種皮を培地として用いる場合では、酵素処理による培地のアミノ酸等の栄養源の増加、もしくは酵母エキスを添加することが好ましい。
【0011】
次に、γ-アミノ酪酸含有組成物を製造するにあたっては、培地にさらにグルタミン酸もしくはその塩を用いる。グルタミン酸の塩としては、具体的にはナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。
培地としては、上記した発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地であればよく、さらに通常、水を含むものである。この他、必要に応じて培地として米糖化液、甘酒、麹エキス等を用いることもできる。
【0012】
また、使用する乳酸菌としては、γ-アミノ酪酸(GABA)生産乳酸菌であればどのような菌でも用いることができるが、GABA生産乳酸菌の中でも特にラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)IFO12005株が好適に用いられる。
このラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)IFO12005株を用いることによって、発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のもののみを栄養源とすることにより、添加するグルタミン酸もしくはその塩をγ-アミノ酪酸に変換すると共に、菌体生産が可能である。
発芽玄米糠では乳酸菌が10の8乗オーダーまで増殖可能であり、種培養用の培地としても充分な菌体量である。
【0013】
本発明で用いるγ-アミノ酪酸含有組成物は、発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地での乳酸菌、具体的には例えばラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)IFO12005株の培養物を有するものである。
添加するグルタミン酸もしくはその塩、特にグルタミン酸ナトリウム(MSG)を効率よくγ-アミノ酪酸に変換するには、発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものに対し、重量で0.1〜30%、好ましくは1〜20%のグルタミン酸もしくはその塩、特にMSGを加え、水を発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものの0.5〜20倍、好ましくは2〜8倍重量加え、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)IFO12005株を接種し、培養することが望ましい。
【0014】
このときの培養は静置が望ましく、培養温度は1〜40℃、好ましくは3〜35℃であり、培養時間は1日〜30日、好ましくは2日から14日である。
具体的には例えば、発芽玄米糠5g、MSG 0.5g、水40mlの混合液を121℃で15分間オートクレーブ滅菌後、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)IFO12005株を接種し、30℃で7日間培養することにより、固形分中のγ-アミノ酪酸含有量は4.22%に達する。
【0015】
このように発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地で乳酸菌ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)IFO12005株を培養することにより、目的とするγ-アミノ酪酸含有組成物が得られる。
培養後、必要に応じて固−液分離することにより、固形部分であるγ-アミノ酪酸含有組成物と共に、液体部分であるγ-アミノ酪酸高含有水が得られる。固−液分離は、遠心分離または濾過によって行われる。γ-アミノ酪酸高含有水の脱色・脱臭は活性炭、ゼオライト、合成吸着剤などにより行うことができる。
また、培養液の濾過性を向上させるために、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼなどの多糖分解酵素、蛋白分解酵素、脂質分解酵素を培養前又は培養終了後に用いることができる。培養前に、発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものに、多糖分解酵素、蛋白分解酵素及び脂質分解酵素のうちの少なくとも1種を作用させることにより、糖、アミノ酸、有機酸を乳酸菌の栄養源として富化することもできる。
【0016】
なお、培養に先立ち、発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものの加水混合液に酸添加し、pH4.6以下としておくことにより、常圧下での加熱殺菌が可能となる。このとき加える酸としては鉱酸でも有機酸でも良い。好ましくはクエン酸、乳酸等の不揮発性の有機酸が望ましい。
このように発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものの加水混合液、つまり発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のもの、水の混合液に、乳酸などの酸を加え、pHを4.6以下に調整することにより、常圧、100℃以下の加熱条件で殺菌できる。この結果、加圧滅菌装置が不要となる。なお、このとき、添加するグルタミン酸もしくはその塩は別途滅菌処理したものを用いるとよい。
【0017】
具体的には、殺菌、冷却後、MSGを糠重量に対し0.1〜20%を加え、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)IFO12005株を接種し、30℃で7日間培養することにより、固形分中のγ-アミノ酪酸含有量は発芽玄米糠試験区で6.19〜7.02%、米糠試験区で6.27〜7.12%となった。特にMSGの変換率を95%以上にするにはMSGの添加量は20%以下が良い。
このようにして、γ-アミノ酪酸含有組成物が得られる。
【0018】
請求項1に係る本発明は、このような発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地での乳酸菌の培養物を有するγ-アミノ酪酸含有組成物と、糖或いはデンプン含量の高い、液体又は固体原料と、から実質的になるγ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料である。
ここで糖或いはデンプン含量の高い、液体又は固体原料として具体的には、米粉糖化液、糖蜜、トウモロコシ粉末などを挙げることができる。トウモロコシ粉末としては、粒径が4mm以下程度に粉砕処理した乾燥トウモロコシ粉末が好ましい。
【0019】
発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地での乳酸菌の培養物を有するγ-アミノ酪酸含有組成物と、糖或いはデンプン含量の高い、液体又は固体原料の配合割合は、通常、前者1〜99重量%に対して、後者99〜1重量%、好ましくは前者67重量%に対して、後者33重量%である。
【0020】
なお、前記γ-アミノ酪酸含有組成物と米粉糖化液とを混合して得られる混合物の状態は、米粉糖化液含量が30%(w/w)付近では粉末状である。
また、前記γ-アミノ酪酸含有組成物と糖蜜とを混合して得られる混合物の状態は、糖蜜含量が30%(w/w)付近では粉末状であるが、約70%(w/w)以上ではゲル状となる。
また、前記γ-アミノ酪酸含有組成物とトウモロコシ粉末とを混合して得られる混合物の状態は粉体である。
【0021】
このような発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地での乳酸菌の培養物を有するγ-アミノ酪酸含有組成物と、糖或いはデンプン含量の高い、液体又は固体原料と、から実質的になるγ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料は、γ-アミノ酪酸含有組成物単体と比べて、格段に嗜好性が高いものとなっている。
このようなγ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料は、請求項2に記載したように、発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地での乳酸菌の培養物を有するγ-アミノ酪酸含有組成物と、糖或いはデンプン含量の高い、液体又は固体原料とを、攪拌混合することにより製造することができる。
攪拌混合は、好ましくは請求項3に記載したように、回転刃を有するブレンダー或いはカッターミキサーを用いて撹拌混合すればよく、好ましくは回転刃を有するブレンダー或いはカッターミキサーを用いて3,000rpm以上にて、2から5分間撹拌混合すればよい。
【0022】
このようにして請求項1に記載した如き、発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地での乳酸菌の培養物を有するγ-アミノ酪酸含有組成物と、糖或いはデンプン含量の高い、液体又は固体原料と、から実質的になるγ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料が得られる。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
製造例1[米糠を用いたγ-アミノ酪酸含有組成物の製造]
米糠(あきたこまち精米90%)400kg、水1600Lをステンレス製発酵タンクに投入し、加熱減菌した。その後、40℃まで冷却し、MSG32kgを加えた。次に、グルコース2%、MSG1%、酵母エキス1%を含む培養液で前培養したラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)IFO12005株培養液16Lを接種した。均一に攪拌後、30℃にて5日間静置培養した。培養液を加熱殺菌後、固-液分離を行い、得られたろ過残渣450kg(水分50%)をドラム式通風乾燥機によって乾燥し、1.30%(水分9.0%)のγ-アミノ酪酸含有組成物150kgを得た。
また、γ-アミノ酪酸含有組成物は以下の製造例2に記述する方法により、無洗米粕(肌糠)を用いて製造することもできた。
【0025】
製造例2[無洗米粕(肌糠)を用いたγ-アミノ酪酸含有組成物の製造]
BG無洗米製造時に発生する肌糠2.5kg、水13.6Lを30Lジャーに採り良く混合した。混合液を乳酸にてpH4.5に調整後、市販酵素剤の液化アミラーゼ酵素剤、蛋白分解酵素剤、繊維分解酵素剤、脂肪分解酵素剤を1/1000(米糠重量に対して)を加え、攪拌しながら酵素処理を次のような昇温プログラムで行った。攪拌開始後60分から90分の間に40℃から55℃に上昇させ、さらに、攪拌開始してから210分後に100℃に至り、100℃で10分間保持する様に温度を行い、その後、酵素処理液をオートクレーブ滅菌した(121℃、15分)。滅菌後、別途滅菌したMSG 600gを含む水溶液を加えた後、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis )IFO12005の前培養液(生菌数1.0X109 cfu/ml) 1Lを接種し、30℃で攪拌(50rpm)した。培養2日後には添加したMSGは全てγ-アミノ酪酸に変換された。培養液を遠心分離により固液分離した。γ-アミノ酪酸濃度16.3mg/gの上清液19.2kgが得られた。また、沈殿部分は乾燥を行い、γ-アミノ酪酸濃度20.0mg/gの乾燥物860gが得られた。
【0026】
試験例1(γ-アミノ酪酸含有組成物の飼料特性および飼料価値の評価)
(1)γ-アミノ酪酸含有組成物の飼料特性の評価
製造例1で得られたγ-アミノ酪酸含有組成物を化学分析し、飼料としての特性を評価した。γ-アミノ酪酸含有組成物(固形物)の化学成分を表1に示した。
表1に示すように、γ-アミノ酪酸含有組成物(固形物)は、粗脂肪含量の高さが特徴的であり、粗蛋白含量も比較的高いことが明らかになった。
【0027】
【表1】

【0028】
(2)γ-アミノ酪酸含有組成物のウシ第一胃内消失率の測定
第一胃カニューレ装着牛を用いて、ナイロンバッグ法により、製造例1で得られたγ-アミノ酪酸含有組成物のウシ第一胃内消失率を測定した。γ-アミノ酪酸含有組成物(固形物)のウシ第一胃内消失率の結果と、大豆粕の第一胃内消失率の結果の比較を図1に示した。
図1に示されるように、製造例1で得られたγ-アミノ酪酸含有組成物(固形物)のウシの第一胃内分解率は比較的緩やかで、20%以上が第一胃内での分解を免れる可能性がみられた。
【0029】
(3)γ-アミノ酪酸含有組成物の味パターン
味覚センサーを用いて、製造例1で得られたγ-アミノ酪酸含有組成物の味パターンを一般的な飼料である圧片トウモロコシ、市販の乳牛用の配合飼料と比較して評価した。結果を図2に示した。
図2に示されるように、製造例1で得られたγ-アミノ酪酸含有組成物(固形物)の味は圧片トウモロコシに比べて酸味が強く、甘味が弱い傾向が見られた。
【0030】
(4)γ-アミノ酪酸含有組成物の嗜好性等の評価
ウシ(哺乳子牛)およびブタ(離乳子豚)におけるγ-アミノ酪酸含有組成物の嗜好性等を評価した。哺乳子牛(約1ヶ月齢のホルスタイン種雄牛)における給与量と摂取拒否行動の有無を表2に示した。また、26頭を一群として飼育される20日齢の離乳子豚におけるγ-アミノ酪酸含有組成物を配合した飼料給予後30分間のγ-アミノ酪酸含有組成物摂取量を図3に示した。
【0031】
【表2】

【0032】
表2によれば、約1ヶ月齢のホルスタイン種雄牛において、給与9例中の1例において摂取拒否行動が認められた。
また、図3によれば、離乳子豚では、γ-アミノ酪酸含有組成物(固形物)の配合割合が増加することでγ-アミノ酪酸含有組成物(固形物)の摂取量には増加が見られ、本実験条件ではγ-アミノ酪酸含有組成物を配合した飼料給予後30分間で213.7g(1頭あたり平均8.2g)を自発的に摂取した。
【0033】
試験例2(γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料の組成および製造方法の検討)
まずγ-アミノ酪酸含有組成物と混合する素材の選定を行った。γ-アミノ酪酸含有組成物は飼料特性の評価により、粗脂肪含量が比較的高く、また、酸味が強く、甘味が弱い傾向が認められたため、γ-アミノ酪酸含有組成物と混合する素材には、粗脂肪含量が低く、甘みを有する事を特徴とし、さらに、飼料として使用可能な安全性を有し、且つ、国内産である素材、或いは、比較的入手が容易で安価な素材が適する。米粉糖化液は国内産の米糠を原料として製造され、甘味があり粗脂肪含量が低く、また、糖蜜も甘味があり、粗脂肪含量が低い。また、トウモロコシ粉末も粗脂肪含量が低く、さらに、試験例1における味覚センサーによる評価により甘味があると評価された。これらの材料は安全性の点で飼料として使用可能であることから、γ-アミノ酪酸含有組成物と混合する素材として選定した。
【0034】
γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料の組成および製造方法を検討した。γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料の組成を表3に示した。
【0035】
【表3】

【0036】
(1)重量当たり1%以上のγ-アミノ酪酸含有組成物(固形物)と1%以上の米粉糖化液を加え、回転刃を有するブレンダー或いはカッターミキサーを用いて3,000rpm以上、2から5分間撹拌混合した。この撹拌混合操作の結果得られる混合物の状態は粉体であった。
(2)重量当たり1%以上のγ-アミノ酪酸含有組成物(固形物)と1%以上の糖蜜を、回転刃を有するブレンダー或いはカッターミキサーを用いて約3,000rpm、5分間撹拌混合した。この撹拌混合操作の結果得られた混合物は、糖蜜含量が30%(W/W)付近では粉末状であるが、約70%(W/W)以上ではゲル状となり、さらに、糖蜜含量60%(W/W)付近の混合物を70℃で24時間以上通風乾燥することにより、ブロック状に加工することができた。
(3)重量当たり1%以上のγ-アミノ酪酸含有組成物(固形物)と4mm以下に粉砕処理した乾燥トウモロコシ粒を、回転刃を有するブレンダー或いはカッターミキサーを用いて約3,000rpm、5分間撹拌混合した。この混合操作の結果得られる混合物の状態は粉体であった。
【0037】
試験例3(γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料の性能の実証)
γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料の性能を実証した。
γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料例、組成、および状態を表4に、黒毛和種成雌牛6頭2反復、及び9頭を用いた一対比較試験による試験飼料の平均嗜好度を表5に、それぞれ示した。また、γ-アミノ酪酸含有組成物(固形物)を含む飼料およびγ-アミノ酪酸含有組成物の化学組成を表6に示す。
【0038】
(1)表4、表5によれば、γ-アミノ酪酸含有組成物(固形物)を含む飼料は、γ-アミノ酪酸含有組成物そのものよりも嗜好性が高いことが示された。
【0039】
【表4】

【0040】
【表5】

【0041】
(2)表6によれば、γ-アミノ酪酸含有組成物(固形物)を含む飼料はγ-アミノ酪酸含有組成物そのものよりも粗脂肪含量が低く、飼料に適した化学組成であることが示された。
【0042】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は畜産分野での飼料として利用することができ、飼料製造企業或いは団体等に直接技術移転が可能である。更に本発明は畜産分野以外の犬、猫などのペット用飼料にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】試験例1におけるγ-アミノ酪酸含有組成物のウシ第一胃内消失率の結果と、大豆粕のウシ第一胃内消失率の結果を示すグラフである。
【図2】試験例1における、味覚センサーを用いたγ-アミノ酪酸含有組成物の味パターンである。
【図3】試験例1においての、離乳子豚におけるγ-アミノ酪酸含有組成物を配合した飼料給予後30分間のγ-アミノ酪酸含有組成物摂取量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地での乳酸菌の培養物を有するγ-アミノ酪酸含有組成物と、糖或いはデンプン含量の高い、液体又は固体原料と、から実質的になるγ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料。
【請求項2】
発芽玄米糠、米糠、米、脱脂米糠、ふすま、大豆種皮、小豆種皮及び竹小豆種皮よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものとグルタミン酸もしくはその塩を含む培地での乳酸菌の培養物を有するγ-アミノ酪酸含有組成物と、糖或いはデンプン含量の高い、液体又は固体原料とを、攪拌混合することを特徴とする、γ-アミノ酪酸含有組成物を含む飼料の製造方法。
【請求項3】
回転刃を有するブレンダー或いはカッターミキサーを用いて撹拌混合する、請求項2記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−319126(P2007−319126A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155356(P2006−155356)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(591108178)秋田県 (126)
【出願人】(397066856)秋田銘醸株式会社 (2)
【Fターム(参考)】