説明

γ−カルボキシル化タンパク質の製造方法

本発明は、大量のγ−カルボキシル化されたタンパク質の製造のための方法およびツールであって、(i)γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼを少なくとも10:1の比で発現するように適合させた細胞を両方のタンパク質が発現するのに適した条件下で培養すること、および(ii)γ−カルボキシル化されたタンパク質を単離すること、を含む前記方法およびツールに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本発明は、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質および第1のプロモーターを含む関連する発現制御配列をコードする核酸分子、ならびにγ−グルタミルカルボキシラーゼおよび第2のプロモーターを含む関連する発現制御配列をコードする核酸分子を含む発現ベクターを含む宿主細胞に関する。本発明はさらに、高収率でのγ−カルボキシル化を必要とするタンパク質の製造方法にも関する。
【0002】
背景技術
出血は臨床の一般的な問題である。それは疾患、外傷、手術および医療処置の帰結である。出血を物理的に止めることは欠かせない。出血の場所によっては、またはそれが多くの(小)血管から拡散する場合には、これが困難となるか不可能にすらなる場合がある。そこで、出血している患者は、止血をサポートする薬剤による処置を必要とする場合がある。これは、血液由来製剤(血液療法)、内因性止血剤の放出を引き起こす薬剤、組み替え凝固因子(F)、または凝血塊の溶解を遅延させる薬剤であってもよい。
【0003】
血液由来製剤の中で、しばしば地方の病院において見られる第一選択処置は、量的置換および止血促進のための全血、酸素輸送能力の改善のための濃縮赤血球、(もし低いか問題がある場合は)血小板数の増加のための濃縮血小板、および止血(血液凝固および血小板凝集)促進のための新鮮凍結血漿である。第二選択の血漿由来製剤は、血漿クリオプレシピテート、プロトロンビン複合体濃縮製剤、活性化プロトロンビン複合体濃縮製剤および精製凝固因子である。今日、不活性の(凝固VIII因子およびIX因子)および活性化された(凝固VIIa因子)ヒト組み替えタンパク質として、いくつかの凝固因子が入手可能である。
【0004】
血友病は、凝血因子の異常または欠損、または凝血促進機能を阻害する凝血因子に対する抗体のいずれかによる、先天的または後天的な出血障害である。最も一般的な血友病は、血友病A(凝固VIII因子の欠損)および血友病B(IX因子)である。精製または組み替えの単一凝固因子は血友病の患者の主な処置である。阻害性抗体による患者には処置における問題が生じる。当該患者においては、彼らに投与した凝固因子もまた中和されうるからである。活性型プロテインC(APC)は、活性化凝固Va因子およびVIIIa因子の分解による血漿凝固の阻害剤である。組み替えAPCは、敗血症の患者における過度の血漿凝固の効果的な処置となることが示されている。
【0005】
精製の工程は単純ではなく、多くの工程(そのうちのいくつかは汚染ウイルスを除去すること目的とする工程)が必要となるが、治療的使用のための凝固因子はヒト血漿から得ることができる。しかし、血液由来製剤の多くの安全的手段および試験を伴ったとしても、感染性ウイルスまたはプリオンによる汚染は除去しきれない。このリスクのために、動物由来の成分を伴わない、ヒト治療用タンパク質の組み替え細胞培養からの製造が非常に望まれている。これは常に容易とは限らない。なぜなら、十分に機能的な形態で製造する(すなわち、翻訳後に正しく修飾する)ために多くのタンパク質においては哺乳類宿主が必要となるからである。凝固因子のうちで、組み替え細胞において商業的に製造されている凝固因子は、FVII(NovoSeven)、FVIII(Kogenate、Recombinate、Refacto)およびFIX(BeneFix)(RoddieおよびLudlam、Blood Rev.第11巻、第169〜177頁、1997年)および活性プロテインC(Xigris)である。十分に機能する組み替えヒト凝固因子を大量に得る場合の主な障害の1つは、FII、FVII、FIX、FXおよびプロテインCに存在するGla−ドメインにある。このドメインは、カルボキシル基の付加により翻訳後に修飾されるグルタミン酸残基を含む。これらの因子の製造は、それらの過剰発現が不十分なカルボキシル化、それによるタンパク質の不活性化を引き起こすという事実により妨げられている。Gla修飾は、γ−グルタミルカルボキシラーゼ(GGCX)と呼ばれるビタミンK依存性酵素の作用のよるものである。この酵素は、多くの科学者、特に凝固因子研究に関わる人々により多くの研究がなされている(WO−A−8803926;Wuら、Science 第254巻(5038):第1634−1636頁、1991年;Rehemtullaら、Proc Natl Acad Sci USA 第90巻:第4611−4615頁、1993年;Stanley J.Biol.Chem、第274巻(24):第16940−16944頁、1999年;Voら、FEBS letters 第445巻:第256−260頁、1999年;Begleyら、The Journal of Biological Chemistry 第275巻(46):第36245−36249頁、2000年;Walkerら、The Journal of Biological Chemistry 第276巻(11):第7769−7774頁、2001年;Bandyopadhyayら、Proc Natl Acad Sci USA 第99巻(3):第1264−1269頁、2002年;Czerwiecら、Eur J Biochem 第269巻:第6162−6172頁、2002年;Hallgrenら、Biochemistry 第41巻(50):第15045−15055頁,2002年;Harveyら、The Journal of Biological Chemistry 第278巻(10):第8363−8369頁、2003年)。凝固因子FIXと共にGGCXを共発現することにより収率を増加させる試みは、少なくとも2つの科学者グループにより行われているが成功していない(Rehemtullaら、1993年,ibid;Hallgrenら、2002年,ibid)。γ−カルボキシル化タンパク質における大きな関心を考慮すると、より多くの共発現の試みが失敗に終わり、そのため報告されなかったものと推測されうる。
【0006】
ヒトFII(プロトロンビン)については、十分に機能するプロトロンビンを得るためには、10のGlu残基のうちの少なくとも8が正しく修飾されなければならない(Malhotraら、J.Biol.Chem.第260巻:第279−287頁、1985年;SeegersおよびWalz「Prothrombin and other vitamin K proteins」、CRC Press、1986年)。例えば、CHO細胞、BHK細胞、293細胞およびワクシニアウイルス発現系などのいくつかの異なる系を使用して、rhFIIの高い生産レベルを実現するために多くの努力がなされたが、すべて、失敗に終わるか、または不十分にカルボキシル化された生成物、すなわち機能的に不活性なプロトロンビンが得られた(Jφrgensenら、J.Biol.Chem.第262巻:第6729−6734頁、1987年;Russoら、Biotechnol Appl Biochem 第14巻(2):第222−233頁、1991年;Fischerら、J Biotechnol 第38巻(2):第129−136頁、1995年;Herlitschkaら、Protein Expr.Purif.第8巻(3):第358−364頁、1996年;Russoら、Protein Expr.Purif.第10巻:第214−225頁、1997年;Voら、1999年、ibid;WuおよびSuttie、Thromb Res 第96巻(2):第91−98頁、1999年)。以前に報告されたカルボキシル化組み替えヒトプロトロンビンの生産性は低く、変異プロトロンビンについて20mg/L(Coteら、J.Biol.Chem 第269巻:第11374−11380頁、1994年)、CHO細胞で発現したヒトプロトロンビンについて0.55mg/L(十分にカルボキシル化されたもの、Jφrgensenら、1987年、ibid)、CHO細胞中で25mg/L(カルボキシル化の程度は示されていない、Russoら、1997年、ibid)である。
【0007】
WO92/19636は、ヒトおよびウシのビタミンK依存性カルボキシラーゼのクローニングおよび配列同定を開示する。当該出願は、ビタミンK依存性タンパク質の調製のために、ビタミンK依存性カルボキシラーゼおよびビタミンK依存性タンパク質を好適な宿主細胞中で共発現することを示唆している。カルボキシラーゼおよびビタミンK依存性タンパク質の共発現は何ら例示されていない。
【0008】
活性化された血液凝固因子を高収率で製造する方法が求められている。本発明は、この必要性に応えることを目的とする。
【0009】
発明の概要
本発明の第1の側面によれば、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質および第1のプロモーターを含む関連する発現制御配列をコードする核酸分子、およびγ−グルタミルカルボキシラーゼおよび第2のプロモーターを含む関連する発現制御配列をコードする核酸分子を含む発現ベクターを含む宿主細胞であって、第1のプロモーターは第2のプロモーターよりも十分に強力であり、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼは少なくとも10:1の比で発現する、前記宿主細胞が提供される。
【0010】
本発明の別の側面によれば、(i)γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質および(ii)γ−グルタミルカルボキシラーゼを発現するように設計された細胞であって、タンパク質(i)および(ii)は10:1〜500:1の比で発現する、前記細胞が提供される。
【0011】
本発明の別の側面によれば、遺伝子修飾された真核宿主細胞であって:
(i)γ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(前記γ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質をコードする配列は、前記細胞によるγ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質の発現を許容する発現制御配列に操作可能なように連結している);および
(ii)γ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質によるカルボキシル化を必要とするタンパク質をコードするポリヌクレオチド(前記細胞によるカルボキシル化を必要とする前記タンパク質の発現を許容する発現制御配列に操作可能なように連結している)
を含み、γ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質およびカルボキシル化を必要とするタンパク質を少なくとも1:10の比で発現することができる前記細胞が提供される。
【0012】
本発明のさらなる側面によれば、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質および第1のプロモーターを含む関連する発現制御配列をコードする核酸分子、およびγ−グルタミルカルボキシラーゼおよび第2のプロモーターを含む関連する発現制御配列をコードする核酸分子を含む発現ベクターであって、第1のプロモーターは第2のプロモーターよりも十分に強力であり、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼは少なくとも10:1の比で発現する、前記宿主細胞が提供される。
【0013】
本発明のさらに別の側面によれば、γ−カルボキシル化されたタンパク質の製造方法であって、(i)γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼを少なくとも10:1の比で発現するように適合させた細胞を両方のタンパク質が発現するのに適した条件下で培養すること、および(ii)γ−カルボキシル化されたタンパク質を単離すること、を含む前記方法が提供される。1つの態様において、当該方法はγ−カルボキシル化されたヒトIX因子を製造するために使用され、別の態様において当該方法はγ−カルボキシル化されたヒトプロトロンビンを製造するために使用される。別の側面において、製造したγ−カルボキシル化されたタンパク質はヒトγ−カルボキシル化X因子である。
【0014】
本発明の別の側面によれば、哺乳類細胞系におけるγ−カルボキシル化タンパク質の製造方法であって、γ−グルタミルカルボキシラーゼと哺乳類細胞系でγ−カルボキシル化を必要とする前記タンパク質を共発現させる工程であって、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質の発現量がγ−グルタミルカルボキシラーゼの発現量の少なくとも10倍を越える前記工程、および(ii)γ−カルボキシル化タンパク質を単離する工程を含む前記方法が提供される。1つの実施態様において、当該方法は、γ−カルボキシル化されたヒトIX因子の製造に使用され、別の態様において、当該方法は、γ−カルボキシル化されたヒトプロトロンビンの製造に使用される。別の態様において、製造されるγ−カルボキシル化タンパク質はヒトγ−カルボキシル化X因子である。
【0015】
本発明のさらなる側面によれば、上記の方法により製造され単離されたγ−カルボキシル化タンパク質、上記の方法により製造され単離されたγ−カルボキシル化タンパク質の凝固療法における使用、または上記の方法により製造され単離されたγ−カルボキシル化タンパク質の、凝固療法において使用するための医薬の製造における使用が提供される。
【0016】
本発明のさらなる側面によれば、血液凝固の誘導または凝固の増強または抑制の促進に適した医薬組成物の製造方法であって、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼを10:1〜500:1の比で発現するように設定された宿主細胞から発現された活性なカルボキシル化タンパク質を精製すること、および精製したカルボキシル化タンパク質を1以上の医薬として許容な担体または賦形剤と混合することを含む前記方法、ならびに当該方法から得られる医薬組成物が提供される。1つの態様において、活性なカルボキシル化タンパク質はγ−カルボキシル化ヒトIX因子であり、別の態様において、活性なカルボキシル化タンパク質はγ−カルボキシル化ヒトプロトロンビンである。別の態様において、活性なカルボキシル化タンパク質はγ−カルボキシル化X因子である。
【0017】
発明の詳細な説明
我々は、ビタミンK依存性凝固因子およびγ−グルタミルカルボキシラーゼ(GGCX)の異なる比での共発現に関連する、適切にカルボキシル化された組み替えビタミンK依存性凝固因子の発現のための異なるアプローチを創出した。一例として、ヒトプロトロンビン(rhFII)およびヒトGGCXを発現した。他者が試みたような(Rehemtullaら、1993年、ibid;Hallgrenら、2002年、ibid)rhFIIおよびGGCXの双方についての強いプロモーターを使用する代わりに、我々は、GGCXの発現量がrhFIIの発現量の1/10未満となるように、GGCXの弱いまたは非常に弱い発現を組み合わせたFIIの強い発現をねらった方策を用いた。驚くべきことに、この方策により、宿主細胞を動物成分を含まない化学的に定義される培地において培養した場合であっても、高レベルの分泌型の正しく修飾されたrhFIIおよび宿主細胞の良好な生存率を実現した。
【0018】
我々は、ヒトプロトロンビンのmRNAレベルがGGCXのmRNAレベルを少なくとも10倍上回るように、GGCXおよびヒトプロトロンビンを発現ベクターにクローン化した。これによりGGCXタンパク質と比較して大過剰のプロトロンビンタンパク質を生産することができた。
【0019】
さらなる例として、我々は、同じGGCX共発現ベクターを使用してrhFIXを発現した。この結果、ある場合に、GGCXmRNAレベルを少なくとも10倍上回るレベルでIX因子mRNAを生産する細胞系が得られた。別の細胞系において、mRNAのIX因子:GGCXの比は薬4〜5:1であった。少なくとも10:1の比を与える細胞系のみが実質的なrhFIX生産性の向上を示した(表1)。
【0020】
表1.生産性とカルボキシル化されたタンパク質:GGCXのmRNA比の概要
【0021】
【表1】

【0022】
*生産性は同様の培養条件下でのスピナー培養から測定した。
#Rehemtulla 1993年および米国特許No.5,460,950からのデータ
GGCXとの共発現の本方法により製造されたビタミンK依存性凝固因子(FII、FVII、FIX、およびそれらの活性型FIIaまたはトロンビン、FVIIa、FIXa、FXa)は、外傷、手術、または肝臓、腎臓、血小板もしくは血液凝固因子の疾患に伴う出血の予防または治療において有用であることが期待されうる。同様に、凝固因子プロテインCおよびその活性型APCもまた、プロテインCのレベルの減少を伴うか伴わないかによらず、凝固の増強の不全の予防また治療において有用であることが期待される。当該方法はまた、翻訳後のカルボキシル化を必要とするその他のタンパク質にも適用することができる。
【0023】
本発明の第1の側面によれば、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質および第1のプロモーターを含む関連する発現制御配列をコードする核酸分子、およびγ−グルタミルカルボキシラーゼおよび第2のプロモーターを含む関連する発現制御配列をコードする核酸分子を含む発現ベクターを含む宿主細胞であって、第1のプロモーターは第2のプロモーターよりも十分に強力であり、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼは少なくとも10:1の比で発現する、前記宿主細胞が提供される。
【0024】
好ましい実施態様において、発現されるタンパク質の比は10:1〜1000:1、より好ましくは10:1〜500:1、さらに好ましくは25:1〜250:1である。特に好適な比は約200:1である。
【0025】
別々の態様において、発現される2つのタンパク質はの比は、少なくとも10:1、30:1、45:1、50:1、100:1、200:1、250:1、300:1、400:1、500:1および1000:1でありうる。
【0026】
ある特定の実施態様において、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質および第1のプロモーターを含む関連する発現制御配列をコードする核酸分子、およびγ−グルタミルカルボキシラーゼおよび第2のプロモーターを含む関連する発現制御配列をコードする核酸分子の双方が同じ発現ベクターに位置する。別の態様において、これらの核酸分子は別々の発現ベクターに位置する。
【0027】
本発明のさらなる側面によれば、配列番号14および配列番号15の核酸が提供される。
本発明のさらなる側面によれば、ヒトIX因子の発現のための、配列番号14または配列番号15の配列を含むベクターにより形質移入または形質転換された宿主細胞が提供される。
【0028】
本発明のさらなる側面によれば、ヒト凝固IX因子およびヒトγ−カルボキシラーゼ酵素を発現することができる宿主細胞であって、前記ヒト凝固IX因子をコードする核酸およびγ−カルボキシラーゼをコードする核酸は、2つのタンパク質を各々少なくとも10:1の比で発現することができる制御配列と操作可能なように連結している前記細胞が提供される。
【0029】
本発明のさらなる側面によれば、ヒト凝固IX因子およびヒトγ−カルボキシラーゼ酵素を少なくとも10:1の比で発現するように適合させた非ヒト真核宿主細胞が提供される。特定の実施態様において、ヒト凝固IX因子をコードする核酸およびγ−カルボキシラーゼをコードする核酸は、2つのタンパク質を各々少なくとも10:1の比で発現することができる制御配列と操作可能なように連結する。
【0030】
本発明のさらなる側面によれば、hCMVプロモーターの制御下のヒト凝固IX因子をコードする核酸、およびSV40プロモーター制御下のヒトカルボキシラーゼをコードする核酸を含む外因性の核酸を保持する宿主細胞が提供される。
【0031】
本発明のさらなる側面によれば、配列番号1、配列番号2または配列番号3の核酸が提供される。
本発明のさらなる側面によれば、ヒトプロトロンビンの発現のための、配列番号1、配列番号2または配列番号3の配列を含むベクターにより形質移入または形質転換された宿主細胞が提供される。
【0032】
本発明のさらなる側面によれば、ヒトプロトロンビンおよびヒトγ−カルボキシラーゼ酵素を発現することができる宿主細胞であって、前記ヒトプロトロンビンをコードする核酸およびγ−カルボキシラーゼをコードする核酸は、2つのタンパク質を各々少なくとも10:1の比で発現することができる制御配列と操作可能なように連結している前記細胞が提供される。
【0033】
本発明のさらなる側面によれば、ヒトプロトロンビンおよびヒトγ−カルボキシラーゼ酵素を少なくとも10:1の比で発現するように適合させた非ヒト真核宿主細胞が提供される。特定の実施態様において、ヒト凝固IX因子をコードする核酸およびγ−カルボキシラーゼをコードする核酸は、2つのタンパク質を各々少なくとも10:1の比で発現することができる制御配列と操作可能なように連結する。
【0034】
本発明のさらなる側面によれば、hCMVプロモーターの制御下のヒトプロトロンビンをコードする核酸、およびSV40プロモーターの制御下のヒトカルボキシラーゼをコードする核酸を含む外因性の核酸を保持する宿主細胞が提供される。
【0035】
本発明はカルボキシル化を必要とするタンパク質としてプロトロンビンおよび凝固IX因子を使用して例示される。しかし、プロトロンビンおよびIX因子以外のいくつかのタンパク質は、十分な生物学的活性が正確なγ−カルボキシル化に依存している。ヒト由来の既知のものの中で、凝固因子FVIIのみが、現在比較的低いレベル(約10mg/L以下)で組み替え哺乳類細胞において商業的に製造されている。本発明は、γ−カルボキシル化に依存する任意のタンパク質の生産性の改善に適用されるであろう。限定はされないが、当該タンパク質には、プロトロンビン、凝固II因子(FII)、凝固VII因子(FVII)、凝固IX因子(FIX)、凝固X因子(FX)、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、骨Glaタンパク質(BGPまたはオステオカルシンとして知られている)、マトリックスGlaタンパク質(MGP)、プロリンリッチGlaポリペプチド1(PRRG1)、プロリンリッチGlaポリペプチド2(PRRG2)、増殖抑制特異的タンパク質6(Gas6)などが含まれる。その他の好適なタンパク質は、コブラ(Acanthophiinaサブファミリー)の蛇毒およびイモ貝(cone snail;Conus textile)の毒中のFXa様タンパク質である。
【0036】
これらのタンパク質の各々は、対応の核酸およびアミノ酸配列を含めて周知である。表2は、本発明において使用することができる種々のタンパク質の野生型および変異型の代表的な配列を特定する。
【0037】
表2
【0038】
【表2】

【0039】
本発明は、共発現するこれらのタンパク質の1つのうちの特定のタンパク質またはタンパク質をコードする配列に限定されないことは理解されるであろう。さらに、特に血液凝固因子に関して、当該タンパク質の多くの変異型が当該技術分野において開示されている。本発明は、自然に発生する突然変異を含む当該タンパク質のこれらの変異型にも、野生型配列と同様に適用可能である。1つの態様において、本発明は、任意の野生型タンパク質または少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の野生型との配列同一性を有するタンパク質において行われうる。
【0040】
2つの配列間の配列同一性は、BestFit、PILEUP、GapまたはFrameAlignなどのペアワイズコンピューターアラインメント分析により決定されうる。好ましいアラインメントツールはBestFitである。実際は、配列データベース内からクエリサーチに対する類似/同一の配列を検索する場合に、一般的には、Blast、Blast2、NCBI Blast2、WashU Blast2、FastA、またはFasta3などの好適なアルゴリズム、およびBlosum62などのスコア行列を使用しての類似配列の所期同定を行うことが必要である。当該アルゴリズムは、Smith−Watermanの「gold−standard」アラインメントアルゴリズムに近似させることを試みるものである。したがって、類似性の評価(すなわち、2つの一次ポリペプチド配列がどのような並んでいるか)において使用するために好ましいソフトウエア/サーチエンジンプログラムはSmith−Watermanである。同一とは直接一致を意味し、類似では慣用の置換がされていてもよい。
【0041】
本明細書で使用される用語「γ−グルタミルカルボキシラーゼ」または「GGCX」は、グルタミン酸残基のカルボキシル化を触媒するビタミンK依存性酵素を意味する。
GGCX酵素は広く分布しており、シロクジラ(Delphinapterus leucas)、トードフィッシュ(Opsanus tau)、ニワトリ(Gallus gallus)、メクラウナギ(Myxine glutinosa)、カブトガニ(Limulus polyphemus)、およびイモ貝(Conus textile)などの多くの異なる種からクローン化されている(Begleyら、2000年、ibid;Bandyopadhyayら、2002,ibid)。イモ貝由来のカルボキシラーゼはウシのカルボキシラーゼに類似し、COS細胞において発現されている(Czerwiecら、2002、ibid)。GGCXに類似する別のタンパク質が、昆虫およびAnopheles gambiae、Drosophila melanogasterおよびLeptospiraなどの原核生物において、各々、NCBI受け入れ番号:gi31217234、gi21298685、gi24216281、およびgi24197548で発見されている(Bandyopadhyayら、2002,ibid)。カルボキシラーゼ酵素は顕著な進化的保存性を示している。いくつかの非ヒト酵素は、我々が使用したヒトGGCXと類似の活性が確認されるか、類似の活性を有することが予想されうるものであり、したがってヒト酵素の代替として使用されうる。
【0042】
表3は、本発明で使用されうる、予想されるヒトGGCXと類似するタンパク質(種の由来によって分類)の代表的な配列を示す。
表3
【0043】
【表3−1】

【0044】
【表3−2】

【0045】
上掲のGGCXタンパク質および他の種由来のGGCXタンパク質の各々は本発明のカルボキシラーゼ酵素として使用されうる。
2つの共発現タンパク質の差別的発現を達成する1つの方法は、各々の発現制御配列の一部として異なるプロモーターを使用することである。異種のタンパク質を異なる程度および範囲で発現することができる、異なるプロモーターおよびその他の発現制御配列の例は、当該技術分野においては十分に存在する。組み替え発現技術は好適に進展しており、タンパク質発現の技術分野の当業者は、目的の比率で、カルボキシル化を必要とするタンパク質およびカルボキシラーゼの共発現を実現するためのプロモーターおよびその他の制御配列を選択することができる。使用する特定のプロモーターおよびその他の発現制御配列の選択は、個々の選択事項である。
【0046】
1つの態様において、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質に関連する制御配列は強力なプロモーターを含む。1つの態様において、それはヒトサイトメガロウイルス(hCMV)前初期プロモーターである。ここで、強力なプロモーターとは、1000転写物/細胞以上を引き起こすプロモーターと定義される。ここで、弱いプロモーターとは、1000転写物/細胞未満を引き起こすプロモーターと定義される。
【0047】
別の態様において、γ−グルタミルカルボキシラーゼに関連する制御配列は弱いプロモーターを含む。1つの態様において、これはSV40初期プロモーターである。別の態様において、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼは、γ−カルボキシラーゼを必要とするタンパク質の発現を制御するプロモーターよりも弱いγ−グルタミルカルボキシラーゼの発現を制御するプロモーターを伴う異なるプロモーター要素の制御下にある。
【0048】
別の態様において、γ−グルタミルカルボキシラーゼはSV40初期プロモーターの制御下にあり、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質はヒトサイトメガロウイルス(hCMV)前初期プロモーターの制御下にある。本発明のこの特定の側面による1つの態様において、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質はヒトX因子である。別の態様において、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質はヒトプロトロンビンである。別の態様において、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質はヒトIX因子である。
【0049】
本発明は、IX因子またはプロトロンビンを過剰発現するための強力なCMVプロモーター(Boshartら、Cell 第41巻:第521−530頁、1985年)およびGGCXの発現を制御するためのより弱いSV40プロモーター(Wengerら、Anal Biochem 第221巻:第416−418頁、1994年)の使用により例示される。本発明において使用されうるその他の強力なプロモーターには、限定されないが、pEF−1α[ヒト伸長因子−1αサブユニット遺伝子)(MizushimaおよびNagata、Nuc Acids Res 第18巻:第5322頁、1990年;Goldmanら、BioTechniques 第21巻:第1013−1015頁、1996年)、pRSV[ラウス肉腫ウイルス(Gormanら、Proc Natl Acad Sci USA 第79巻:第6777〜6781頁、1982年)]およびpUbC[ヒトユビキチン(Schorppら、Nuc Acids Res 第24巻:第1787〜1788頁、1996年)]が含まれる。
【0050】
製造されるタンパク質(カルボキシル化を必要とするタンパク質)が修飾酵素に対して、少なくとも10:1の比であるように過剰とすることを確保することが重要である。修飾酵素(γ−グルタミルカルボキシラーゼ)の低レベルの発現を実現する方法には:
1)限定はされないが、SV40前初期プロモーター、最小化FIXプロモーター(Rouetら、The Journal of Biological Chemistry 第267巻:第20765〜20773頁、1992年)またはHSVチミジンキナーゼプロモーター(Wengerら、1994年、ibid)が含まれる、修飾酵素の発現を制御する弱いプロモーターを使用すること、
2)プロモーター強度を減ずるためにプロモーターまたは強力なプロモーターのエンハンサー配列の変異させること、
3)翻訳効率を抑制するためにKozak配列(翻訳開始シグナル)を除去または変化させること(Kozak.Nuc Acids Res 第15巻:第8125〜8148頁、1987年;Kozak.Proc Natl Acad Sci USA 第87頁:第8301〜8305、1987年、1990年)、
4)製造されるタンパク質(カルボキシル化を必要とするタンパク質)をコードする核酸およびGGCXをコードする核酸を別々のベクター上にクローン化し、製造されるタンパク質を含むコンストラクトの多数の複製を有する細胞が発生するように、製造されるタンパク質を含む大過剰のコンストラクトをトランスフェクションすること、
5)製造されるタンパク質をコードするDNAおよびGGCX修飾ベクターをコードするDNAを別々のベクター上にクローン化し、同時にまたは別々にトランスフェクションし、製造されるタンパク質の発現を増幅するための増幅系を使用すること、
6)組み替え技術により低レベルでGGCXを発現する(しかし、内因的レベルは上回る)安定細胞系を単離し、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質の発現のための宿主細胞系として使用すること、
7)GGCXの基質親和性を減少させるために、GGCXに変異(複数でもよい)を導入すること、
が含まれる。
【0051】
これらの他に、組み替えタンパク質発現の技術分野の当業者であれば、少なくとも10:1の比でカルボキシル化を必要とするタンパク質とカルボキシラーゼタンパク質を発現する宿主細胞を発生させるために使用されうるその他の方法に気づくであろう。
【0052】
本発明のさらなる側面によれば、(i)γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質、および(ii)γ−グルタミルカルボキシラーゼを発現し、当該タンパク質(i)および(ii)が10:1〜500:1に比で発現するように処理された、または適合させた細胞が提供される。特定の態様において、γ−グルタミルカルボキシラーゼは内因性のレベル(すなわち、何らの処理も適合もされていない細胞におけるレベル)を2〜5倍上回って発現されている。
【0053】
本発明のさらなる側面によれば、(i)適合させていない対応する細胞における構成要素濃度を上回るγ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質、および(ii)カルボキシル化を必要とするタンパク質、を発現するように適合させた組み替え細胞であって、γ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質およびカルボキシル化を必要とするタンパク質の発現量が少なくとも1:10の比となる、前記細胞が提供される。
【0054】
本発明のさらなる側面によれば、遺伝子修飾された真核宿主細胞であって:
(i)γ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(前記γ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質をコードする配列は、前記細胞によるγ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質の発現を許容する発現制御配列に操作可能なように連結している);および
(ii)γ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質によるカルボキシル化を必要とするタンパク質をコードするポリヌクレオチド(前記細胞によるカルボキシル化を必要とする前記タンパク質の発現を許容する発現制御配列に操作可能なように連結している)
を含み、γ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質およびカルボキシル化を必要とするタンパク質を少なくとも1:10の比で発現することができる前記細胞が提供される。
【0055】
本発明のさらなる側面によれば、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼを発現するように適合された細胞であって、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質をコードする核酸およびγ−グルタミルカルボキシラーゼをコードする核酸が、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質の発現量がγ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質の少なくとも10倍量であることを確保するために適した制御配列の制御下にある、前記細胞が提供される。
【0056】
1つの態様において、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼの少なくとも1つが、組み替え技術により細胞内へ導入された核酸から発現される。本発明を実施するための代替の方法は、内因性のタンパク質(カルボキシル化を必要とするタンパク質またはカルボキシラーゼ)の発現であって、ただし目的のレベルの発現を生じさせるために、内因性の制御配列(プロモーターなど)を異種の配列で置換することを伴う発現である。
【0057】
宿主細胞は、好ましくは真核細胞である。限定はされないが、典型的な宿主細胞には、昆虫細胞、酵母細胞および哺乳類細胞が含まれる。哺乳類細胞は特に好ましい。限定はされないが、好適な哺乳類細胞系には、CHO、HEK、NS0、293、PerC.6、BHKおよびCOS細胞、およびその派生物が含まれる。1つの態様において、宿主細胞は哺乳類細胞系CHO−Sである。
【0058】
カルボキシル化依存性タンパク質の過剰発現は、一般的には、初期に不十分にカルボキシル化された生成物をもたらす。これは宿主細胞の内因性カルボキシル化能力が制限されていることに起因する。一方で、大過剰(16〜70倍)のGGCX活性の発現は、生成物の収率を改善しない(Rehemtullaら、Proc Natl Acad Sci USA 第90巻:第4611〜4615頁、1993年)、(BerknerおよびPudota、Proc Natl Acad Sci USA.第95巻:第446〜471頁、1998年)、(Hallgrenら、Biochemistry 第41巻(50):第15045〜15055頁、2002年)。この理由は十分に理解されていない。我々の発明は、GGCXの適度な過剰発現を要求する。これにより、例えば、GGCX活性レベルが1.5〜4倍のみで上昇した場合、GGCXが内因性レベルを超えて細胞から発現されることが確保される。この適度なレベルの上昇により、驚くべきことに、実施例1に示すように十分にカルボキシル化された高レベルのrhFIIを得ることができる。
【0059】
したがって、従前の共発現技術と本発明を区別するカルボキシル化を必要とするタンパク質およびカルボキシラーゼの発現比率は、内因的に製造されるGGCXのレベルを除外する。必要とされる高い生産性を実現するために、通常の細胞において観察されるレベルよりも高いレベルで、カルボキシラーゼおよびカルボキシル化を必要とするタンパク質を発現することが必要である。
【0060】
好ましい態様において、構成的に発現されるカルボキシラーゼおよび/またはカルボキシル化を必要とするタンパク質をほとんど、または全く有さない細胞または細胞系が使用される。
【0061】
1つの態様において、γ−グルタミルカルボキシラーゼは、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質の量の10%以下で発現される。代替のさらなる態様において、γ−グルタミルカルボキシラーゼは、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質の量の5%、2%、1%、0.5%、0.25%、0.1%、0.05%または0.01%以下で発現される。
【0062】
2つのタンパク質の発現の程度は、当該技術分野における当業者によく知られている技術を使用して測定されうる。これらには、例えばタンパク質の生物学的活性もしくはタンパク質の量(例えば、抗体を使用する)の測定などの直接的測定、または、例えばmRNA転写物レベルの測定(例えば、実施例3のようなタックマン分析)を介する非直接的測定方法が含まれる。以下の参照文献はGGCX酵素活性の測定方法を開示する(Lingenfelterら、Biochemistry 第35巻:第8234〜8243頁、1996年;Berknerら、Proc Natl Acad Sci USA 第95巻:第446〜471頁、1998年;Hallgrenら、Biochemistry 第41巻(50):第15045〜15055頁、2002年;および、Berknerら、Proc Natl Acad Sci USA 第89巻:第6242〜6246頁、1992年)。
【0063】
本発明の目的のために、2つのタンパク質発現の比は、mRNA転写レベル(例えば、タックマン分析による)を介して非直接的に決定されうる。
1つの態様において、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質はビタミンK依存性凝固因子である。さらなる態様において、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質は、好ましくは、プロトロンビン、凝固II因子、凝固FII、凝固VII因子、凝固FVII、凝固IX因子、凝固FIX、凝固X因子、凝固FX、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、骨Glaタンパク質、マトリックスGlaタンパク質、増殖抑制特異的タンパク質6およびアカントフィナエ(Acanthophiinae)FXa様タンパク質からなる群から選択される。
【0064】
1つの特定の態様において、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質はIX因子である。別の特定の態様において、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質はプロトロンビンである。別の態様において、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質はX因子である。
【0065】
本発明は、任意の起源由来のγ−カルボキシル化を必要とするタンパク質に対して一般的適用性を有する。しかし、発現されるタンパク質がヒトの治療目的で使用されるのであれば、ヒトタンパク質が特に好ましい。
【0066】
1つの態様において、γ−グルタミルカルボキシラーゼは、マウス、ラット、ウシまたはイモ貝起源のものである。別の態様において、γ−グルタミルカルボキシラーゼはヒトタンパク質である。
【0067】
本発明のさらなる側面によれば、γ−カルボキシル化されたタンパク質の製造方法であって、(i)γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼを少なくとも10:1の比で発現するように適合させた細胞を、双方のタンパク質の発現に好適な条件下で培養すること、および(ii)γ−カルボキシル化されたタンパク質を単離すること、を含む前記方法が提供される。
【0068】
本発明のさらなる側面によれば、哺乳類細胞系におけるγ−カルボキシル化タンパク質の製造方法であり、哺乳類細胞系における前記γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質と共に、γ−グルタミルカルボキシラーゼを共発現させる工程(ここで、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質の発現量が、γ−グルタミルカルボキシラーゼの発現量の少なくとも10倍である);および(ii)γ−カルボキシル化されたタンパク質を単離することを含む、前記方法が提供される。
【0069】
γ−カルボキシル化されたタンパク質の製造方法であって:
a)カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質を少なくとも10:1の比で共発現することができる真核宿主細胞を製造するための、カルボキシル化を必要とするタンパク質および付随する発現制御配列をコードする第1のポリヌクレオチド、およびγ−グルタミルカルボキシラーゼおよび付随する発現制御配列をコードする第2のポリヌクレオチドを導入するための真核細胞の遺伝子的修飾;
b)第1および第2のポリヌクレオチドを発現させるための条件下で好適な培地中で当該細胞を培養すること;およびc)当該培地または宿主細胞からのカルボキシル化されたタンパク質の単離、
を含む前記方法が提供される。
【0070】
発現ベクターは、通常、複製起点、プロモーター、翻訳開始部位、場合によってはシグナルペプチド、ポリアデニル化部位、および転写終結部位を含む。これらのベクターはまた、選択のための1以上の抗生物質耐性マーカー遺伝子(複数でもよい)を含む。好適な発現ベクターは、プラスミド、コスミド、またはファージもしくはレトロウイルスなどのウイルスであってもよい。ポリペプチドのコードする配列は、適切なプロモーター(すなわち、HSV、CMV、TK、RSV、SV40など)、制御要素および転写ターミネーター(これらは関連する発現制御配列である)の制御下に置かれ、そのため核酸をコードする核酸配列は、発現ベクターコンストラクトにより形質転換または形質移入された宿主細胞においてRNAに転写される。コードする配列は、宿主細胞の外へのポリペプチドの分泌のためのシグナルペプチドまたはリーダー配列を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。好ましいベクターは、通常、少なくとも1つの多重クローニング部位を有するであろう。特定の態様においては、プロモーターおよび発現する遺伝子の間に位置するクローニング部位または多重クローニング部位が存在するであろう。当該クローニング部位は、当該部位に第2の核酸配列をクローニングすることによりN−末端融合タンパク質を作成するために使用することができ、そのため遺伝子配列とインフレームで接続している。その他の態様において、上記のN−末端融合のための部位と類似の様式のC−末端融合の作成を容易にするために、遺伝子のすぐ下流に位置するクローニング部位または多重クローニング部位が存在してもよい。
【0071】
宿主細胞は、例えば形質移入、形質変換およびエレクトロポレーションなどの、当該技術分野における当業者に周知の種々の方法により、遺伝子修飾(追加の核酸を導入)されていてもよい。
【0072】
本発明はまた、本発明の方法により製造される精製γ−カルボキシル化タンパク質および凝固療法におけるそれらの使用に及ぶ。
本発明のさらに別の側面によれば、対象における凝固の増加または減少を促進する方法であって、それを必要とする患者に対して、上記の方法により得た薬理学的有効量の単離したγ−カルボキシル化タンパク質を投与することを含む前記方法が提供される。
【0073】
本発明のさらなる側面によれば、血液凝固の誘導に適した医薬組成物を製造する方法であって、少なくとも10:1の比でγ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼを発現させることに適合させた宿主細胞から発現した活性なカルボキシル化されたタンパク質を精製すること、および1以上の医薬的に許容な担体または賦形剤と当該精製したカルボキシル化されたタンパク質を混合することを含む前記方法が提供される。
【0074】
タンパク質系の治療剤は、通常、凍結、冷蔵、室温で、および/または凍結乾燥状態で貯蔵される。
本発明の組成物は、当該技術分野において周知の、慣用の医薬賦形剤を使用して、慣用の手法により得られうるが、非経口的または障害部位への直接的な注射に適した形態であるのが最も適当であろう。
【0075】
一般に、水性懸濁液は、1以上の懸濁剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムなど);分散剤または湿潤剤(例えば、レシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えば、ポリエチレンステアレート)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレート)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレート)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルの縮合生成物(例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレート))と一緒に、微粉化された形態の活性成分を含む。水性懸濁液はまた、1以上の保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチルもしくはプロピル)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、着色剤、香味剤、および/または甘味剤(例えば、スクロース、サッカリンまたはアスパルテーム)を含んでいてもよい。
【0076】
油性懸濁液は、植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはココナッツ油)または鉱油(例えば、流動パラフィン)中に活性成分を懸濁させることにより製剤されうる。油性懸濁液はまた、増粘剤(例えば、蜜ろう、固形パラフィンまたはセチルアルコール)を含んでいてもよい。甘味剤(例えば上記のもの)および香味剤は口当たりのよい経口製剤を提供するために加えてもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加により保存されうる。
【0077】
好適な希釈剤を加えることによる注射用の水性製剤の調製に適した粉末は、一般に、好適な担体および賦形剤を伴う活性成分、懸濁剤、および1以上の安定化剤または保存料を含む。希釈剤は、例えば、保存料、等張性調整剤および安定化剤などのその他の賦形剤を含んでいてもよい。
【0078】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、植物油(例えば、オリーブ油またはラッカセイ油)または鉱油(例えば、流動パラフィン)またはそれらのいずれかの混合物であってもよい。好適な乳化剤は、例えば、天然由来のゴム(例えばアカシアゴムまたはトラガカントゴム)、天然由来のホスファチド(例えば、ダイズまたはレシチン)、脂肪酸およびヘキシトール無水物由来のエステルまたは部分エステル(例えば、ソルビタンモノオレート)および当該部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)などであってもよい。
【0079】
本発明の医薬組成物はまた、無毒の非経口的に許容な希釈剤または溶媒中の無菌溶液または懸濁液の形態であってもよく、それらは、既に言及した、1以上の適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、既知の手法により製剤されうる。無菌の注射用製剤ははまた、無毒の非経口的に許容な希釈剤または溶媒中の無菌の注射用溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール溶液)であってもよい。
【0080】
製剤に関するさらなる情報については、読者は、Comprehensive Medicinal Chemistry、第5巻、第25.2章(Corwin Hansch;編集委員長)、Pergamon Press 1990年;またはDrugs and the pharmaceutical sciences、第99巻;Protein formulation and delivery(Eugen J.McNally、編集主幹)、Marcel Dekker Inc 2000年を参照されたい。
【0081】
単一の剤形を製造するための1以上の賦形剤と組み合わせる活性成分の量は、処置する対象および具体的な投与経路に依存して必然的に変動するであろう。例えば、ヒトに注射することを意図した製剤は、一般に、例えば、組成物全体の約5〜約98重量%に変動しうる、適切かつ便宜的な量の賦形剤と混合した、0.5mg〜2gの活性薬剤を含みうる。投与剤形は、一般に、約1mg〜約500mgの活性成分を含みうる。タンパク質治療剤は、通常、冷凍または冷凍乾燥されて貯蔵される。投与経路および投薬方法に関するさらなる情報については、読者は、Comprehensive Medicinal Chemistry、第5巻、第25.3章(Corwin Hansch;編集委員長)、Pergamon Press 1990年を参照されたい。
【0082】
治療または予防目的のための化合物の投薬規模は、状態の種類および重篤度、動物または患者の年齢および性別、および投与経路により、周知の医学原則に従って、当然に変動するであろう。治療または予防目的で化合物を使用する場合、一般的には、例えば体重1kgあたり0.5mg〜75mgの範囲の日薬量が、必要であれば分割投与で与えられるように投与されるであろう。一般に、非経口投与が使用される場合はより少ない薬量が投与されるであろう。したがって、例えば、静脈内投与については、例えば、体重1kgあたり0.5mg〜30mgの範囲の薬量が一般的には使用されるであろう。同様に、吸入による投与については、例えば、体重1kgあたり0.5mg〜25mgの範囲の薬量が使用されるであろう。
【0083】
本発明は、さらに、以下の非限定的実施例により記述されるであろう。
本発明の実施には、特に示されてない限り、当該技術分野における技術の範囲内の分子生物学および組み替えDNA技術の慣用の方法が使用されるであろう。当該技術は、文献において十分に説明されている。Sambrookら編集、Molecular Cloning: A Laboratory Manual(第3版)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(2001年);Ausubelら編集、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、New York、NY(2002年);Glover&Hames編集、DNA Cloning 3:A Practical Approach、第I巻、第II巻および第III巻、IRL Press、Oxford(1995年);Colowick&Kaplan編集、Methods in Enzymology、Academic Press;Weirら編集、Handbook of Experimental Immunology、第5版、Blackwell Scientific Publications,Ltd.,Edinburgh(1997年)を参照されたい。
【0084】
実施例1
ヒトFII(hPT)およびヒトGGCXをコードするcDNAの増幅
ヒト肝臓mRNAをClontechから購入し、InvitrogenのSuperscript systemを使用してcDNA合成を実施した。以下の:
プライマーPTF0(5’−ATTCCTCAGTGACCCAGGAGCTGACA−3’、配列番号:3)および
プライマーPTEXT(5’−CTACTCTCCAAACTGATCAATGACCTTCTGTATCCACTTCTT−3’、配列番号:4)
を使用して、ヒトFIIの増幅のためのテンプレートとして得られたcDNAを使用した。
【0085】
プライマーhglx5(5’−TCCGCAGAGCAATGGCGGTGTCT−3’、配列番号:5)および
hglx3(5’−CCAACATCTGGCCCCTTCAGAACT−3’、配列番号:6)
を使用して、ヒトGGCXを増幅した。
【0086】
FIIをコードするPCR生成物を、TA−TOPOで処理したベクターpCDNA3.1V5/His(Invitrogen)に直接クローン化した。正しい方向に挿入されたhFII cDNAを有するクローンの選択により、Ptext5コントロールコンストラクト(図1b)を得た。SV40プロモーターの制御下のGGCXをコードするcDNAは、制限酵素BamH1およびNotIを使用しての、pCDNA3.1V5/His TA−TOPOからのpZeoSV2+ベクター(Invitrogen)へのGGCXエンコーディングフラグメントの移動により得た。GGCXインサートの下流のEcoRV−NotI制限部位を除去した。その後、得られたpZeoSV2−GGCXプラスミド(SV40プロモーターおよびGGCXを含むインサートを含むが、GGCXエンコーディング配列の下流のポリアデニル化部位およびポリアデニル化シグナルは含まない)由来の鈍化した(blunted)ClaI−BclIフラグメントをpCDNA3.1+(Invitrogen)の鈍化した(blunted)DraIII制限部位にクローン化した。PN32コンストラクト(図1a)を得るために、CMVプロモーターに対して直列(同じ転写方向)で挿入されたpSV40−GGCXフラグメントを伴うクローンを選択し、Ptext5由来の鈍化したKpnI−NotI FIIをコードするフラグメントをEcoRV部位にクローン化した。PN32およびPtext5のDNA配列は別表2の通りである。すべてのクローン化方法は、標準的方法および/または製造者が推奨する方法にしたがった。
【0087】
PN32コンストラクトは、以下の重要な特徴を含む:
−ヒトプロトロンビンcDNAの転写を制御するヒトサイトメガロウイルス(hCMV)前初期プロモーター、それに続く、効率的な転写終結およびmRNAのポリアデニル化のためのウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニレーションシグナル。
【0088】
明確なポリアデニル化部位およびシグナルを含まない、ヒトγ−カルボキシラーゼcDNA(GGCX)の転写を制御するSV40初期プロモーター。
−図1aに示すその他の特徴。
【0089】
比較のために、GGCXを含まないPText5コンストラクトを使用した(図1b)。PTEXT5ヌクレオチド配列を配列番号1に示す。PN32ヌクレオチド配列を配列番号2に示す。
【0090】
得られるプロトロンビン製造細胞系
図1の2つのコンストラクトをCHO−S細胞(Invitrogen)にトランスフェクションした。安定な形質移入体を選択し、プロトロンビン活性についての市販のアッセイ(Chromogenix)を使用して高生産性のクローンについてスクリーニングした。このアッセイにおいて、プロトロンビンを含むサンプルを最初にヘビ毒の毒素(エカリン、Sigmaより入手可能)で処理し、トロンビンを発生させた。その後、トロンビンで処理されると色を発する色素生産性基質(S−2238)の添加により、トロンビン活性をアッセイした。クローンの形質移入および選択は、双方のコンストラクトを平行して用いて行った。細胞培養は、9%の加熱不活性化されたウシ胎仔血清を含むDMEM培地において行った。その後、得られたクローンを動物成分を含まない培地において成長するように適合させた。得られた最も生産性のよいクローンは、PN32(FII+GGCX)による形質移入によるもので、当該クローンにより、動物成分を含まない化学的に定義される培地において成長させた場合400mg/Lものヒト組み替えプロトロンビンが得られた(報告されたいかなるレベルも大きく上回っている)。組み替えにより製造されたrhFIIを精製(Josicら、Journal of Chromatography B、第790巻、第183〜197頁、2003年に開示された方法に従った)し、さらに標準的な方法によりQ−Sepharoseカラムを使用してイオン交換クロマトグラフィーで分画し、純粋な十分にカルボキシル化されたrhFIIを得た。発酵により製造されたrhFIIのうちの78mg/Lまでもが十分にカルボキシル化されており、ヒト血清から精製されたプロトロンビンと同じ生物活性を有していた。カルボキシル化は、タンパク質のN−末端配列決定、およびプロトロンビナーゼアッセイ(Maoら、JBC、第273巻、第30086〜30091頁、1998年)により分析した。トロンビンの発生は、ヒト血小板不足血清中に組織因子を添加することにより誘発され、内因性トロンビンの潜在性は、実質的にStigら(Blood Coagulation and Fibrinolysis、第14巻、第457〜462頁、2003年)により記載されたとおりに測定された。
【0091】
PText5コンストラクトにより得られた最もよいクローンは、動物成分を含まない化学的に定義される培地において10mg/Lもの生産性を示し、これは文献により報告されているのと同程度であった。PText5クローンから得られた十分にカルボキシル化されたプロトロンビンの割合は、約50%と推定された。したがって、γ−カルボキシラーゼの低い発現レベルの配列を含むPN32コンストラクトを使用して、十分に活性なrhFIIに最終的回収は少なくとも10倍以上高かった。コンストラクトの各々について、同じ発現レベルを有するいくつかのクローンが同定された。
【0092】
実施例2
CHO細胞系のGGCX活性の測定
PN32コンストラクト(ヒトGGCXの共発現)およびPTEXT5(GGCXの非共発現)を用いたトランスフェクションにより得られた2つのrhFII生産CHO−S細胞系を、各々、5μg/mLのビタミンKを補ったタンパク質を含まない培地を使用して、スピナー瓶中で培養した。毎日10分の1の培地を取り替えた。7日の培養後に細胞を採取し、Berknerら(Proc Natl Acad Sci USA、第89巻、第6242〜6246頁、1992年)に記載されたとおりにミクロソームを調製した。ヒト組み替えFIIを、採取した細胞の培養上澄み液から精製した。GGCX活性をBerknerおよびPudota(Proc Natl Acad Sci USA、第95巻、第446〜471頁、1998年)ならびにLingenfelterおよびBerkner(Biochemistry、第35巻、第8234〜8243頁、1996年)により記載されたとおりに測定した。我々の測定により、同じ培養条件を使用した場合に、rhFIIのみを発現するCHO細胞系と比較して、ヒトGGCXを共発現させたCHO細胞系においてGGCX活性は1.5倍高いことが示された。
【0093】
実施例3
CHO−S細胞系におけるγ−カルボキシラーゼおよびプロトロンビンのmRNA発現のリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)分析
PN32(FII+GGCX)およびPtext5(FIIのみ)コンストラクトの各々を用いての安定的トランスフェクションにより得られた2つのCHO−S細胞系をビタミンKを補ったタンパク質を含まない培地を使用して、スピナー瓶中で培養した。培養サンプルは、mRNA生産の算出されるピークレベルを調査するために、培養4、5および6日で培養サンプルを取り出した。RNAは、販売者Invirogenにより提供されたプロトコールに従って、Trizol(登録商標)を用いて単離した。単離したRNAを、AmbionのキットDNA−free(登録商標)を用いてDNaseI処理した。cDNA合成は、ランダムヘキサマープライマーおよびInvitrogenのRT−PCR用のSuperscript(登録商標)First−Strand Synthesis Systemのキットの内容物を使用して行った。
【0094】
リアルタイムRT−PCR用のプライマーおよびVic標識化プローブをソフトウエア(Primer Express(登録商標、Applied Biosystem)を使用して選択した。
【0095】
ヒトγ−カルボキシラーゼオリゴヌクレオチド
5´ACACCTCTGGTTCAGACCTTTCTT 3´
フォワードプライマー(配列番号:7)
5´ AATCGCTCATGGAAAGGAGTATTT 3´
リバースプライマー(配列番号:8)
5´ CAACAAAGGCTCCAGGAGATTGAACGC 3´
プローブ(配列番号:9)
アンプリコンの長さ 86bp
ヒトプロトロンビンオリゴヌクレオチド
5´ TGGAGGACAAAACCGAAAGAGA 3´
フォワードプライマー(配列番号:10)
5´ CATCCGAGCCCTCCACAA 3´
リバースプライマー(配列番号:11)
5´ CTCCTGGAATCCTACATCGACGGGC 3´
プローブ(配列番号:12)
アンプリコンの長さ 69bp
【0096】
プライマーはOperon/Qiagenにより作成し、プローブはApplied Biosystemsに注文した。齧歯類GAPDHコントロールプライマーおよびプローブも使用した(Applied Biosystems;ABI#4308318TaqMan(登録商標) Rodent GAPDH Control Reagents Protocol、アンプリコンの長さ 177bp)。リアルタイムRT−PCR反応をABI Prism(登録商標) 7700 Sequence detector(Applied Biosystems)で行った。増幅されたPCR生産物の予想された長さをアガロースゲル上で確認した。PCR反応の効率を検査するための希釈系列を、3つすべての遺伝子において実施した。γ−カルボキシラーゼおよびプロトロンビンの発現レベルを、コントロール遺伝子、齧歯類GAPDHと比較して示す。
【0097】
【表4】

【0098】
検出されたrhFII:GGCXの相対的発現レベルから、サンプル回収の比に依存して、およそ74〜232:1の比が算出された。PN32でトランスフェクションされた細胞系(rhFIIおよびGGCXの共発現)については、細胞毎の転写数が、GGCX mRNAについては約8、rhFII mRNAについては約2000と算出され、そこからrhFII:GGCXの比が約250:1と算出された。細胞毎のGAPDHコントロールmRNA転写は同じサンプルで約4000であった。
【0099】
実施例4
ヒトFIIの生産
実施例1でクローン化されたヒトFIIおよびGGCX cDNAを実施例1と同様にpCDNA3.1に挿入した。さらに高いGGCXレベルを得るために、pZeoSV2+由来のポリアデニル化シグナルを、pCDNA3.1の鈍化したDraIIIにクローン化したpSV40−GGCX−pAフラグメントに含めた。実施例1と逆の順番のGGCXを含むフラグメントのクローンを選択した。その後、FIIフラグメントのクローン化を実施例1と同じ方法で行った。最終のコンストラクトPP6を図2に示し、PP6ヌクレオチド配列を配列番号13に示す。
【0100】
2つのプロトロンビン生産細胞系、B2F4およびH3B10を、実施例1に記載したようにCHO−Sのトランスフェクションにより得た。これらの2つの細胞系由来のプロトロンビンを実施例1のように精製し、同定した。B2F4の培養は30〜70mg/Lの範囲の生産性であり、十分にカルボキシル化されたものの割合は55〜87%であった(rhFIIが増えれば十分にカルボキシル化されたものは減る)。ブチレートの添加により幾分かの高い生産性が得られたが、十分にカルボキシル化されたrhFIIの割合は減少し、有益であるとは認められなかった。H3B10は増殖が遅く、生産性は約50mg/Lであり、培養物中の細胞数と比較して高かった。十分にカルボキシル化されたrhFIIの割合は約60%であった。実施例1で得られた細胞系と比較して、CHO細胞系のPP6コンストラクトを使用して製造した十分にカルボキシル化されたrhFIIは減少した。しかし、それでも、十分に活性な組み替えプロトロンビンの生産は、以前に文献開示されたレベルを大きく上回っている。
【0101】
実施例5
mRNA量の測定による、CHO−S細胞系におけるγ−カルボキシラーゼおよびプロトロンビンの発現のリアルタイムRT−PCR分析
実施例4のB2F4およびH3B10細胞系を、実施例3と同じ方法および同じプライマーによるリアルタイムPCR分析により分析した。実施例3のサンプルと等価にするために、10mLの培養サンプルを生産性のピークにおいて採取した。クローンH3B10については、このクローンの増殖の遅さのためにサンプルは10日目のものであり、B2F4クローンについては、サンプルは6日目のものであった。
【0102】
表4.GGCXを共発現するプロトロンビン生産細胞系のリアルタイムRT−PCR分析の結果。B2F4およびH3B10の各々についての2つの独立の100mLスピナー培養物がリアルタイムRT−PCR分析のためにサンプリングされた。
【0103】
【表5】

【0104】
*比較のための実施例3のP1E2データ。
算出されたrhFII mRNA:GGCX mRNAの比は、クローンH3B10については約30:1、クローンB2F4については約50:1、およびクローンP1E2については約250:1であった。
【0105】
実施例6
ヒト凝固IX因子(FIX)の生産
ヒト凝固IX因子cDNAを、Invitrogenから購入したヒト遺伝子プール肝臓cDNAから増幅させた。オリゴヌクレオチドプライマーは、
5’−末端;F9f.ampl.:
5´−CACCATGCAGCGCGTGAACATGAT−3´ (配列番号:16), および、3’−末端;F9r.ampl.:
5´−CCTTGGAAATCCATCTTTCATTA−3´(配列番号:17)
であった。
【0106】
DNA配列決定により、正しい配列のクローン化を確認した。ヒトFIXフラグメントを、Pfxポリメラーゼ(Invitrogen)およびクローン化プライマーを使用してPCR増幅し、末端が鈍化されたフラグメントを作成した。末端鈍化フラグメントを、T4ポリヌクレオチドキナーゼを使用してリン酸化し、実施例1および実施例4の、EcoRV消化および脱リン酸化されたpCDNA−GGCXベクターにクローン化した。この方法において、ヒトプロトロンビンの製造(実施例1および実施例4)に使用した共発現コンストラクトに類似するヒトFIXおよびGGCXの共発現のためのコンストラクトを得た。正しい配列のクローン化を、DNA配列決定およびCOS−7細胞における一時的発現により確認した。ベクターコンストラクトF9NopAを図3aに示し、ベクターコンストラクトF9hglxを図3bに示した。ベクターF9NopAおよびF9hglxの差異は、GGCX遺伝子の転写方向である。F9NopAヌクレオチド配列を配列番号14に示し、F9hglxヌクレオチド配列を配列番号15に示す。
【0107】
rhFIXを産生する細胞系の確立
実施例1において記載した手法を使用して、rhFIXコンストラクトをCHO−S細胞にトランスフェクションした。各々のFIXコンストラクトについて、約3000クローンを細胞上清のELISAによりrhFIXの発現に関してスクリーニングした。使用した抗体はHaemathology Technology Inc.およびDakoCytomationのものであった。クローンを選択し、タンパク質を含まない化学的に定義されるCHO培地において増殖するように適合させた。細胞を、T−フラスコ中で37℃またはスピナー瓶中で32〜37℃のいずれかで培養した。双方の培養の型において、CO濃度を5%とした。産生されたrhFIXを、Q−Sepharoseアニオン交換クロマトグラフィーによりpH7.0で均質になるまで精製した。組み替えhFIXの活性は、FIX欠損血漿(Precision Biologic)を使用して凝固アッセイ(Clotting assay)により測定した。得られた最も生産性のよいrhFIXクローンは、F9NopAコンストラクトを使用して得られたN4D5であり、T−フラスコ中のタンパク質を含まない化学的に定義される培地で培養して4μg/mLの活性rhFIXを生産した。スピナー瓶で培養した場合、この同じクローンは7.1μg/mLのrhFIXを生産した。不完全にカルボキシル化された不活性なrhFIXも含めた全体の生産性はウエスタンブロッティングにより少なくとも30μg/mLであると推定された。rhFIXコンストラクトF9hglxにより得られた最も生産性のよいクローンは、同様の条件下で0.7(T−フラスコ)〜1.3(スピナー)μg/mLのrhFIXを生産するP1G9であった。この結果により、F9NopAコンストラクトを使用しての低レベルでのGGCXの共発現によりrhFIX生産性は改善されたが、F9hglxコンストラクトを使用してのGGCXの共発現は有益性が低いことが示された。N4D5クローンを生じさせるF9NopAコンストラクトは、一般に、細胞系開発手順の間の生産性の同時スクリーニングにおいて、P1G9を生じさせるF9hglxコンストラクトよりも高いELISAシグナルを与えることも確認された。
【0108】
N4D5細胞系の生産性は、比較可能な条件下で得られた以前に文献に開示されたレベルよりも約4〜6良く、ここで、IC4、IG8、r−FIX BHKおよびr−FIX293は参照文献において言及されているクローンの名前である(表5)。
【0109】
表5.ヒトFIX産生細胞系の生産性の比較
【0110】
【表6】

【0111】
実施例7
mRNAの量の測定によるCHO−S細胞系におけるγ−カルボキシラーゼおよびIX因子の発現のリアルタイムRT−PCR分析
組み替えhFIX産生クローンを、100mLのビタミンKを補ったタンパク質を含まない化学的に定義される培地で、32〜37℃でスピナー瓶中で培養した。5〜10mLのサンプルをrhFIX濃度のピークで採取し、ヒトFIXおよびGGCX転写物、ならびにGAPDHコントロール(ハウスキーピング)遺伝子の転写物の含有量を分析した。手法は実施例3の通りであった。rhFIXのプライマーは以下の通りであった:
ヒトIX因子プライマー
5´ AATAGTGCTGATAACAAGGTGGTTTG 3´
フォワードプライマー(配列番号:18)
5´ CACTGCTGGTTCACAGGACTTCT 3´
リバースプライマー(配列番号:19)
5´ TCCTGTACTGAGGGATATCGACTTGCAGAAAAC 3´
プローブ(配列番号:20)
アンプリコンの長さ 84bp。
【0112】
メッセンジャーRNAレベルは、培養温度および培養接種物規模に依存して、異なる日にピークとなることが見いだされた。mRNAのピークレベルは、培養培地におけるrhFIXの濃度のピークによく対応することが見いだされた。
【0113】
表6.rhFIX産生クローンのリアルタイムRT−PCR分析の結果
【0114】
【表7】

【0115】
リアルタイムRT−PCR分析より、2^デルタCt値が培養時間および条件により変動したにもかかわらず、FIX:GGCX mRNA比が各クローンでほぼ同一であったこともまた我々は確認した。最も良いrhFIX産生クローンN4D5について、当該比は約45:1であった。別のクローン、P1G9の分析においては約4.5:1というより低い比が得られた。P1G9クローンは、N4D5によって製造されるrhFIXの量の20%のみを生産した。
【0116】
配列表
配列番号1
【0117】
【化1】

【0118】
【化2】

【0119】
【化3】

【0120】
配列番号2
【0121】
【化4】

【0122】
【化5】

【0123】
【化6】

【0124】
【化7】

【0125】
配列番号13
PP6配列
【0126】
【化8】

【0127】
【化9】

【0128】
【化10】

【0129】
【化11】

【0130】
【化12】

【0131】
配列番号14
F9Nopa配列
【0132】
【化13】

【0133】
【化14】

【0134】
【化15】

【0135】
【化16】

【0136】
配列番号15
F9hglx
【0137】
【化17】

【0138】
【化18】

【0139】
【化19】

【0140】
【化20】

【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1a】図1aはPN32(プロトロンビン+GGCX)共発現ベクターのプラスミドマップを例示する。
【図1b】図1bはPtext5(プロトロンビン)発現ベクターのプラスミドマップを示す。
【図2】図2はPP6(プロトロンビン+GGCX)共発現ベクターのプラスミドマップを示す。
【図3a】図3aはF9NopA(IX因子+GGCX)共発現ベクターのプラスミドマップを示す。
【図3b】図3bはF9hglx(IX因子+GGCX)共発現ベクターのプラスミドマップを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質および第1のプロモーターを含む関連する発現制御配列をコードする核酸分子、およびγ−グルタミルカルボキシラーゼおよび第2のプロモーターを含む関連する発現制御配列をコードする核酸分子を含む発現ベクターを含む宿主細胞であって、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼが少なくとも10:1の比で発現するように第1のプロモーターが第2のプロモーターよりも十分に強力である、前記宿主細胞。
【請求項2】
前記核酸分子が単一の発現ベクター内にある、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項3】
第1のプロモーターがヒトサイトメガロウイルス(hCMV)前初期プロモーターであり、第2のプロモーターがSV40初期プロモーターである、請求項1または2に記載の宿主細胞。
【請求項4】
(i)γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質、および(ii)γ−グルタミルカルボキシラーゼを発現するように設計された細胞であって、タンパク質(i)および(ii)が10:1〜500:1の比で発現される前記細胞。
【請求項5】
γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質が、凝固VII因子、凝固FVII、凝固IX因子、凝固FIX、プロトロンビン、凝固II因子、凝固FII、凝固X因子、凝固FX、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、骨Glaタンパク質、マトリックスGlaタンパク質、増殖抑制特異的タンパク質6およびアカントフィナエ(Acanthophiinae)FXa様タンパク質からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項6】
γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質がビタミンK依存性凝固因子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項7】
γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質がIX因子である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項8】
γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質がX因子である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項9】
γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質がプロトロンビンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項10】
γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質がヒトタンパク質である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項11】
γ−グルタミルカルボキシラーゼがヒトタンパク質である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項12】
哺乳類細胞、酵母細胞または昆虫細胞からなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項13】
哺乳類細胞である、請求項12に記載の細胞。
【請求項14】
遺伝子修飾された真核宿主細胞であって、
(i)γ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(前記γ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質をコードする配列は、前記細胞によるγ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質の発現を許容する発現制御配列に操作可能なように連結している);および
(ii)γ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質によるカルボキシル化を必要とするタンパク質をコードするポリヌクレオチド(前記細胞によるカルボキシル化を必要とする前記タンパク質の発現を許容する発現制御配列に操作可能なように連結している)
を含み、γ−グルタミルカルボキシラーゼタンパク質およびカルボキシル化を必要とするタンパク質を少なくとも1:10の比で発現することができる前記細胞。
【請求項15】
γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質および第1のプロモーターを含む関連する発現制御配列をコードする核酸分子、およびγ−グルタミルカルボキシラーゼおよび第2のプロモーターを含む関連する発現制御配列をコードする核酸分子を含むベクターであって、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼが少なくとも10:1の比で発現するように第1のプロモーターが第2のプロモーターよりも十分に強力である、前記ベクター。
【請求項16】
第1のプロモーターがヒトサイトメガロウイルス(hCMV)前初期プロモーターであり、第2のプロモーターがSV40初期プロモーターである、請求項3に記載のベクター。
【請求項17】
γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質が、凝固VII因子、凝固FVII、凝固IX因子、凝固FIX、プロトロンビン、凝固II因子、凝固FII、凝固X因子、凝固FX、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、骨Glaタンパク質、マトリックスGlaタンパク質、増殖抑制特異的タンパク質6およびアカントフィナエ(Acanthophiinae)FXa様タンパク質からなる群から選択される、請求項3または4に記載のベクター。
【請求項18】
γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質がIX因子である、請求項15〜17のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項19】
γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質がX因子である、請求項15〜17のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項20】
γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質がプロトロンビンである、請求項15〜17のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項21】
γ−カルボキシル化されたタンパク質の製造方法であって、(i)γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼを少なくとも10:1の比で発現するように適合させた細胞を両方のタンパク質が発現するのに適した条件下で培養すること、および(ii)γ−カルボキシル化されたタンパク質を単離すること、を含む前記方法。
【請求項22】
哺乳類細胞系におけるγ−カルボキシル化されたタンパク質の製造方法であって、γ−グルタミルカルボキシラーゼと哺乳類細胞系でのγ−カルボキシル化を必要とする前記タンパク質を共発現させる工程であって、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質の発現量がγ−グルタミルカルボキシラーゼの発現量の少なくとも10倍を越える前記工程、および(ii)γ−カルボキシル化タンパク質を単離する工程を含む前記方法。
【請求項23】
請求項21または22に記載の方法にしたがって製造された、単離されたγ−カルボキシル化タンパク質。
【請求項24】
請求項21または22にしたがって製造された、単離されたγ−カルボキシル化タンパク質の凝固療法における使用。
【請求項25】
請求項21または22にしたがって製造された、単離されたγ−カルボキシル化タンパク質の凝固療法において使用される医薬の製造における使用。
【請求項26】
血液凝固の誘導または凝固の増強または抑制の促進に適した医薬組成物の製造方法であって、γ−カルボキシル化を必要とするタンパク質およびγ−グルタミルカルボキシラーゼを10:1〜500:1の比で発現するように適合させた宿主細胞から発現された活性なカルボキシル化タンパク質を精製すること、および精製したカルボキシル化タンパク質を1以上の医薬として許容な担体または賦形剤と混合することを含む前記方法。
【請求項27】
請求項26の方法により得ることができる医薬組成物。
【請求項28】
γ−カルボキシル化されたヒトX因子の製造方法であって、(i)ヒトX因子およびヒトγ−グルタミルカルボキシラーゼを少なくとも10:1の比で発現するように適合させた細胞を両方のタンパク質が発現するのに適した条件下で培養すること、および(ii)γ−カルボキシル化されたヒトX因子を単離すること、を含む前記方法。
【請求項29】
請求項28にしたがって製造された、単離されたX因子の凝固療法における使用。
【請求項30】
請求項28により製造された、単離されたX因子の凝固療法において使用するための医薬の製造における使用。
【請求項31】
請求項28の方法により得ることができるγ−カルボキシル化されたヒトX因子を含む医薬組成物。
【請求項32】
γ−カルボキシル化されたヒトIX因子の製造方法であって、(i)ヒトIX因子およびヒトγ−グルタミルカルボキシラーゼを少なくとも10:1の比で発現するように適合させた細胞を両方のタンパク質が発現するのに適した条件下で培養すること、および(ii)γ−カルボキシル化IX因子を単離すること、を含む前記方法。
【請求項33】
請求項32により製造された、単離されたIX因子の凝固療法における使用。
【請求項34】
請求項32により製造された、単離されたIX因子の凝固療法において使用するための医薬の製造における使用。
【請求項35】
請求項32の方法により得ることができるγ−カルボキシル化されたヒトIX因子を含む医薬組成物。
【請求項36】
γ−カルボキシル化されたヒトプロトロンビンの製造方法であって、(i)ヒトプロトロンビンおよびヒトγ−グルタミルカルボキシラーゼを少なくとも10:1の比で発現するように適合させた細胞を両方のタンパク質が発現するのに適した条件下で培養すること、および(ii)γ−カルボキシル化プロトロンビンを単離すること、を含む前記方法。
【請求項37】
請求項36により製造された、単離されたプロトロンビンの凝固療法における使用。
【請求項38】
請求項36により製造された、単離されたプロトロンビンの凝固療法において使用するための医薬の製造における使用。
【請求項39】
請求項36の方法により得ることができるγ−カルボキシル化されたヒトプロトロンビンを含む医薬組成物。
【請求項40】
対象における凝固の増加または減少を促進する方法であって、それを必要とする患者に対して、請求項21または22の方法により得た薬理学的有効量の単離されたγ−カルボキシル化タンパク質を投与することを含む前記方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2007−508820(P2007−508820A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535301(P2006−535301)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001453
【国際公開番号】WO2005/038019
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】