説明

うず巻き形ガスケット

【課題】ガスケット本体の外径側に少なくとも外輪が具備されているうず巻き形ガスケットにおいて、締付け荷重でベンディング現象が生じた場合に本体部分のシール面に隙間が生じたとしても、ガスケット全体としてはシール性の低下を抑制することができるうず巻き形ガスケットを提供する。
【解決手段】金属製の波形薄板4と石綿紙などの緩衝材5とを、うず巻状に巻回して構成されるガスケット本体6の少なくとも外周側に、該本体6の厚さ寸法より厚さの小さい金属製の外輪24が嵌合されたうず巻き形ガスケット20において、外輪の表面硬度が、これに当接するフランジ部材1の硬度よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、流体が高温、高圧となる蒸気などの管継手部分のシール用として好ましく用いられるうず巻き形ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
うず巻き形ガスケットは高温・高圧用として設計されたガスケットで、豊かな弾性を有し装着厚さで締付け力を規制できるとともに、フランジ面の精密仕上げを必要とせず、交換作業も容易で、フランジに固着し難く、清掃し易いなどの利点を有することから、火力・原子力発電所やスチームタービン船の蒸気系はもちろんのこと、石油精製・石油化学工業のプロセスラインなどに広く使われている。
【0003】
このようなガスケットが用いられる配管の管継手部分では、例えば、図3に示したように、両フランジ1,1間にうず巻き形ガスケットGを介装して複数のボルト2により締付け、このうず巻き形ガスケットGとフランジ1,1間を互いに密着させて、内側通路3を流れる高圧流体などが外部に漏れないようにシールされている(例えば、特許文献1)。
【0004】
このようにして、継手部分にガスケットGが装着され適正な面圧が負荷された場合には、ガスケットGの両側に隙間dが確保されている。
このうず巻き形ガスケットGは、例えば図2に示したように、V字形断面の金属製の波形薄板4と仕様に応じて選ばれたフィラー材(緩衝材)5とを渦巻状に硬く巻き込んで構成したガスケット本体6を有している。そして、大口径寸法の場合には、ガスケット本体6の内径側あるいは外径側に、ガスケット本体6の厚さ寸法より厚さの小さい円環板状の内輪7および外輪8の両方、あるいは内外輪7,8のいずれか一方が必要に応じて装着される。
【0005】
ところで、このようなうず巻き形ガスケットGが装着される配管継手のフランジ1,1には、図4に示したように、ボルト2が挿通される孔の内側に平面座1a,1aを設けたものがある(特許文献2)。
【0006】
このような平面座1a,1aを設けた管継手にガスケットGが装着され、ボルト2により締付けられると、先ず密封効果を生じるガスケット本体6が締付けられる。
一方、内側通路3を流れる適用流体が高圧のときには、大きな締付け力が必要となるため、図3に示した隙間dの部分を小さくするように、ボルト2が過剰に締付けられる。このようにボルト2が過剰に締付けられたり、あるいはフランジ1,1の強度が弱かったりすると、締付けの際、フランジ1,1が最初に当接したガスケット本体6の点6a,6aを中心にいわゆるベンディングが生じ、結果として、内径側で生じた隙間から流体が漏洩する虞がある。このような傾向は、内側通路3が大口径になるほど著しい。
【特許文献1】特開平3−117782号公報
【特許文献2】実開昭60−58961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような実情に鑑み、ガスケット本体の外径側に少なくとも外輪が具備されているうず巻き形ガスケットにおいて、締付け荷重でベンディング現象が生じた場合に本体部分のシール面に隙間が生じたとしても、ガスケット全体としてはシール性の低下を抑制することができるうず巻き形ガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係るうず巻き形ガスケットは、
金属製の波形薄板と石綿紙などの緩衝材とを、うず巻状に巻回して構成されるガスケット本体の少なくとも外周側に、該本体の厚さ寸法より厚さの小さい金属製の外輪が嵌合されたうず巻き形ガスケットにおいて、
前記外輪の表面硬度が、これに当接するフランジ部材の硬度よりも小さくなるように設定されていることを特徴としている。
【0009】
係る構成による本発明によれば、外輪がフランジ部材の内面に設けられた平面座により強く締付けられたとしても、外輪の表面は平面座に対して軟質であるため、平面座が外輪の表面に食い込むようになる。したがって、ベンディング現象で本体部分のシール面に隙間が生じたとしても、ガスケット全体としてはシール性の低下を抑制することができる。
【0010】
ここで、本発明では、前記外輪は、表面に軟質金属からなるメッキ層が形成されることにより、中心部分に比べて表面硬度が小さくされていても良い。
さらに、前記外輪は、芯材となる金属板材の表面に軟質金属が貼り合わされることにより表面硬度が小さくされていても良い。あるいは、前記外輪は、径方向内周側と径方向外周側との2つの部材の接合により構成され、このうち前記フランジ部材に当接する部分の外輪が軟質材料から形成されていても良い。
【0011】
このようにして、前記外輪の表面硬度を小さくすることができる。
さらに、本発明では、前記外輪の高さは、前記ガスケット本体が適正圧力で締付けられた場合のガスケット本体の高さと略同一に設定されていても良い。
【0012】
このように外輪の高さが設定されていれば、ガスケット本体の過剰変形を防止することができるとともに、ベンディングによりシール面とフランジ面とが離れ難くなる。このときも同様に、ベンディング時に外輪表面にフランジ平面座端面が食い込みなじみを確保してシール性を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るうず巻き形ガスケットによれば、外輪の硬度をフランジ部材の平面座の硬度に対して小さく設定したので、平面座の食い込みが良好となる。したがって、ベンディング発生時に外輪とフランジ平面座との間にシール効果が得られる。これにより、ベンディング時に、本体部分のシール面に隙間が生じたとしてもガスケット全体としては、シール性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明の一実施例に係るうず巻き形ガスケット20が採用された管継手を示したものである。
【0015】
本実施例に係るうず巻き形ガスケット20のガスケット本体22は、上述した図2のガスケット本体6と略同様に形成されている。すなわち、金属製の波形薄板4とフィラー材5とが硬く巻きつけられることにより、ガスケット本体22が構成されている。そして、このガスケット本体22の外周側に外輪24が、内周側に内輪26が設置されている。なお、ガスケット本体22の外周側に外輪24が具備されていれば、内輪26は具備されていなくても良い。すなわち、内輪26は本発明の必須構成要件ではない。
【0016】
一方、金属製の波形薄板4としては、SUS304、SUS316、SUS321、アルミニウムなどを例示することができ、フィラー材5としては、非石綿無機質紙などを例
示することができる。また、内輪26としては、炭素鋼、SUS304、SUS316、SUS321,SUS430、外輪24としては炭素鋼SUS304などが例示される。
【0017】
本実施例では、外輪24の表面は、フランジ1の平面座1aに比べて軟質に形成されている。このように外輪24の表面を平面座1aに対して軟質にするには、メッキにより軟質な層を形成しても良い。
【0018】
メッキのほか、外輪24の表面を平面座1aに対して軟質にするには、2枚の円盤状の板材を用意し、軟質の材質からなる一方の板材を他方の板材に接着して外輪24を構成しても良い。
【0019】
さらに、軟質にする部分は、外輪24の全体でなくても、平面座1aが当たる部分のみとしても良い。要は、フランジ1の平面座1aにより外輪24が締付けられた場合に、平面座1aの端部が外輪24の表面に食い込むようにすれば良い。
このようにして、ベンディングが生じた場合にも、外周側でシール性を確保できる。これにより、ガスケット全体としてはシール性の低下を防止することができる。
【0020】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、内輪26は、必須ではない。また、使用条件として高温,高圧に限定されず、通常の温度、通常の圧力下でも用いることができる。
【0021】
また、ベンディングが生じ難いように、外輪8の高さを、図4に波線で示したように締付け時のガスケット本体6の高さと同様に設定することができる。
このようにベンディングの発生を防止するには、図3に示した隙間dを無くせば良いが、それには以下のようにすれば良い。
【0022】
すなわち、ガスケットの面圧に対するシール性能、およびガスケットの面圧に対する歪み量を予め測定しておくことにより、所望とするシール性能を得るときのガスケットの歪み量を想定する。そして、ガスケットの初期高さからその歪み量を差し引いた高さと同じ高さに外輪8の高さを設定すれば、締付け時にガスケット本体6の高さと外輪8の高さが同一になる。
【0023】
このようにして予め外輪8の高さを設定すれば、ベンディングによりシール面とフランジ面とが離れ難くなる。
このように、本実施例では、ベンディング時に外輪表面にフランジ平面座端面が食い込みなじみを確保してシール性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本発明の一実施例に係るうず巻き形ガスケットが装着されたフランジ継手を示した断面図である。
【図2】図2は従来のうず巻き形ガスケットの一部を示した斜視図である。
【図3】図3は従来のうず巻き形ガスケットが装着されたフランジ継手の断面図である。
【図4】図4はうず巻き形ガスケットにベンディングが生じたときの概略断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 フランジ
1a 平面座
2 ボルト
3 内側通路
4 金属製の波形薄板
5 フィラー材
6 ガスケット本体
7,8 内外輪
22 ガスケット本体
24 外輪
26 内輪
G ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の波形薄板と石綿紙などの緩衝材とを、うず巻状に巻回して構成されるガスケット本体の少なくとも外周側に、該本体の厚さ寸法より厚さの小さい金属製の外輪が嵌合されたうず巻き形ガスケットにおいて、
前記外輪の表面硬度が、これに当接するフランジ部材の硬度よりも小さくなるように設定されていることを特徴とするうず巻き形ガスケット。
【請求項2】
前記外輪は、芯材となる金属板材の表面に軟質金属からなるメッキ層が形成されることにより、中心部分に比べて表面硬度が小さくされていることを特徴とする請求項1に記載のうず巻き形ガスケット。
【請求項3】
前記外輪は、芯材となる金属板材の表面に軟質金属が貼り合わされることにより表面硬度が小さくされていることを特徴とする請求項1に記載のうず巻き形ガスケット。
【請求項4】
前記外輪は、径方向内周側と径方向外周側との2つの部材の接合により構成されており、このうち前記フランジ部材に当接する部分の外輪が軟質材料から形成されることにより、表面硬度が小さくされていることを特徴とする請求項1に記載のうず巻き形ガスケット。
【請求項5】
前記外輪の高さは、前記ガスケット本体が適正圧力で締付けられた場合のガスケット本体の高さと略同一に設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のうず巻き形ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−232133(P2007−232133A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56355(P2006−56355)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】