説明

うつ様症状改善剤

意欲の低下、全身性倦怠感、脱力感、無気力、集中力の低下、健忘、知覚異常・知覚の鈍磨(視覚障害等)、思考力の低下、不定愁訴、作業能率の低下または沈滞気分等のさまざまな症状を改善及び軽減する、D−リボースを含有するうつ様症状改善剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、うつ様症状改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会においては社会的・心理的ストレスが益々高くなり、この高ストレスの下、疲労を訴え、あるいは意欲の低下、全身性倦怠感、脱力感、無気力、集中力の低下、健忘、知覚異常・知覚の鈍磨(視覚障害等)、思考力の低下、不定愁訴、作業能率の低下、沈滞気分等で患っている人が増加している。1999年の厚生省疲労調査研究班による15〜65歳の男女4000人を対象とした日本での疲労の疫学調査結果によれば、疲労・倦怠感が認められる人の割合は約6割であり、また3人に1人は6ヶ月以上続くか繰り返す慢性的な疲労が認められていることが判明し(医学の歩み, 204(5), p.381-386 (2003))、慢性疲労および慢性疲労症候群が1つの社会的問題となっている。この慢性疲労等はストレス等の精神神経的な原因、慢性感染症、感染不明因子等によって引き起こされるとされており、その後、種々の要因が複雑に絡み合って発生していると推定されている(医学の歩み, 204(5), p.381-386 (2003))。
【0003】
D−リボースに関しては、種々の薬理効果が報告されている。特表2002-518321によれば、D−リボースは哺乳動物のATP合成を刺激してエネルギーレベルを増加させる効果を有する。また、冠状動脈性心臓病患者に有効であったことが報告され(Lancet, 340, p.507-510 (1992))、てんかん患者に効果があったことが報告されている(Biochimica et Biophisica Acta, 1453, p. 135-140 (1999))。しかし、D−リボースがうつ様症状を改善する効果を有していることは今まで知られていない。
【発明の開示】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は、優れたうつ様症状改善剤を提供することにある。
【0005】
本発明者らは、うつ様症状改善剤につき、鋭意研究した結果、意外にもD−リボースが抗うつ薬の評価試験であるマウス強制水泳試験およびレセルピン誘発低体温拮抗試験等において顕著な改善効果を有していることを見出して、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] D−リボースを含有するうつ様症状改善剤。
[2] うつ様症状が、意欲の低下、全身性倦怠感、脱力感、無気力、集中力の低下、健忘、知覚異常・知覚の鈍磨(視覚障害等)、思考力の低下、不定愁訴、作業能率の低下または沈滞気分である[1]記載のうつ様症状改善剤。
[3] うつ様症状が精神疲労または精神障害に伴ううつ様症状である[1]または[2]記載のうつ様症状改善剤。
[4] 成人1日当り10 mg〜100 gのD−リボースを含有する[1]〜[3]のいずれか記載のうつ様症状改善剤。
[5] マグネシウム塩、アミノ酸およびカルニチンの少なくとも1つをさらに含有する[1]〜[4]のいずれか記載のうつ様症状改善剤。
[6] アスパラギン酸マグネシウムカリウムをさらに含有する[1]〜[4]のいずれか記載のうつ様症状改善剤。
[7] D−リボースと、マグネシウム塩、アミノ酸およびカルニチンの少なくとも1つとを含有する組成物。
[8] D−リボースを含有するうつ様症状を改善するための飲食品。
[9] D−リボースを含有する精神疲労改善剤。
【発明の実施するための最良の形態】
【0006】
本発明において、D−リボースにはD−リボースの誘導体および生体内でD−リボースに変換される誘導体も含まれる。
【0007】
「うつ様症状」としては、意欲の低下、全身性倦怠感、脱力感、無気力、集中力の低下、健忘、知覚異常・知覚の鈍磨(視覚障害等)、思考力の低下、不定愁訴、作業能率の低下、沈滞気分等が挙げられる。また、「うつ様症状」には、精神疲労に伴ううつ様症状、精神障害に伴ううつ様症状等も含まれる。「精神疲労に伴ううつ様症状」としては、例えば、慢性疲労症候群および慢性疲労を感じている人等のうつ様症状が挙げられる。「精神障害に伴ううつ様症状」としては、内因性精神障害に伴ううつ様症状、心因性精神障害に伴ううつ様症状、外因性精神障害に伴ううつ様症状等が挙げられる。内因性精神障害としては、具体的には、うつ病、精神分裂病等が挙げられる。心因性精神障害としては、神経症(不安神経症、抑うつ神経症)、パニック障害、外傷後ストレス障害、睡眠障害等が挙げられる。外因性障害としては、脳器質性障害、神経変性疾患等が含まれ、具体的にはアルツハイマー病、老人性痴呆、パーキンソン病、ハンチントン病、脳血管障害後遺症、頭部外傷後遺症、アルコール依存症、片頭痛、甲状腺機能低下、副腎機能低下、脳腫瘍等の癌、不治の病等が挙げられる。
【0008】
D−リボースは、うつ様症状、精神疲労に伴ううつ様症状、精神障害に伴ううつ様症状等を改善することができる。また、精神疲労に伴ううつ様症状を改善することで、慢性疲労、慢性疲労症候群等に伴う免疫異常(NK活性などの免疫低下によって生じる、かぜ、クラミジア・マイコプラズマ等の慢性感染症、ヒトヘルペス・EBウィルス等の潜伏感染ウィルスの再活性化等)等をも改善することが期待される。
【0009】
マグネシウム塩としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン等のアミノ酸のマグネシウム塩、酢酸、ステアリン酸、ドコサヘキサエン酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸等の有機酸のマグネシウム塩、および塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸のマグネシウム塩等が挙げられる。好ましくは、アスパラギン酸、グルタミン酸、リン酸等のマグネシウム塩が挙げられ、より好ましくは、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウムマグネシウム、リン酸三マグネシウム等が挙げられる。マグネシウム塩には、D−リボースのうつ様症状改善効果を増強する効果があり、D−リボースのみでは十分な効果が生じない用量でも、マグネシウム塩を併用することで、うつ様症状を改善することができる。
また、マグネシウム塩として、マグネシウム塩含有飲食品を使用することもでき、かかるマグネシウム塩含有飲食品としては、例えば、下記飲食品が挙げられる。
(1)穀類:小麦、米、そば、とうもろこし、粟、オートミール、きび、ライ麦等
(2)いも及びでん粉類:じゃがいも、さつまいも等
(3)種実類:アーモンド、麻の実、カシューナッツ、ごま、ピスタチオ、マカダミアナッツ、松の実、落花生等
(4)豆類:小豆、いんげん豆、えんどう、ささげ、大豆等
(5)魚介類:あじ、煮干し、しらす、いわし、かつお、さけ、あかがい、あさり、さざえ、とこぶし、ほたてがい、ほっきがい、あみ、えび、かに、なまこ等
(6)獣鳥鯨肉類:牛、豚、鶏、綿羊等
(7)乳製品:牛乳、はっ酵乳、ヨーグルト、アイスクリーム、脱脂粉乳、チーズ等
(8)野菜類:おかひじき、かんぴょう、しそ、ずいき、ほうれんそう等
(9)きのこ類:しいたけ等
(10)藻類:あおのり、あまのり、あらめ、おごのり、こんぶ、てんぐさ、ひじき、ひとえぐさ、わかめ等
(11)嗜好飲料類:茶、ココア、昆布茶、海洋深層水等
(12)調味料及び香辛料類:にがり、塩、しょうゆ、辛子、カレー、こしょう、さんしょ、ジンジャー、唐辛子、酵母等
(13)その他:ドロマイト
D−リボースをこれらの飲食品と共に投与するには、例えばD−リボースを甘味料として使用して、これらの飲食品またはそのエキスを材料にして加工した飲食品として食することができる。これらの加工飲食品としては、これらマグネシウム塩含有飲食品を用いて加工されている限り、いかなるものでも良いが、例えば、パイ、クラッカー、チップス、プリン、チョコレート、カステラ、ワッフル、ドーナツ、クッキー、ビスケット、ケーキ、クリーム、せんべい、おこし等の各種菓子類、パン類、餅類、まんじゅう、ういろう、あん類、羊羹、水羊羹、ゼリー、飴玉、麺類、マカロニ類、米飯類、プレミックス粉類、人造肉、缶詰、蒲鉾、ちくわ、てんぷら類の魚肉製品類、塩辛、みりん干し等の各種珍味類及び佃煮類及び魚肉漬物類、ハム、ソーセージ、ベーコン等の食肉加工品、醤油、味噌、加工のり、佃煮、昆布巻き、各種飲料、各種調味料類、ポテトサラダ、肉じゃが、筑前煮等の惣菜食品類、煮豆、ペースト類、あん類等が挙げられる。
【0010】
アミノ酸としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、プロリン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、スレオニン、リジン、グリシン、アラニン等が挙げられる。好ましいアミノ酸としては、分岐鎖アミノ酸が挙げられ、具体的にはイソロイシン、ロイシン、バリン等が挙げられる。アミノ酸は、ナトリウム塩等の塩にすることもできる。
【0011】
本発明において、D−リボースにカルニチン、アセチルカルニチン、グルタミン酸、アミノ酸(アスパラギン酸、システイン、リジン、メチオニン、アルギニン、イソロイシン、ロイシン)等を添加することも好ましい。また、ビタミン類や、滋養強壮剤等を加えることもできる。ビタミンとしては、例えば、ビタミンA類、ビタミンB 類、ビタミンC、ビタミンD類、ビタミンE類、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸、パンテノール、ビオチン、葉酸等が挙げられる。滋養強壮剤としては、例えば、パンテチン、グルクロン酸、グルクロノラクトン、イノシトール、イノシトールヘキサニコチネート、ウルソデオキシコール酸、オロチン酸、ガンマ−オリザノール、コンドロイチン硫酸、タウリン、滋養強壮活性を有する生薬等が挙げられる。
【0012】
D−リボースをうつ様症状改善剤として使用するには、通常ドリンク剤として用いるのが好ましいが、その他、シロップ剤等の経口液剤、注射剤等の静脈内投与製剤、トローチ剤、舐薬、チュアブル剤等の経口固形製剤等として用いることもできる。これらの製剤は、通常公知の技術を用いることで製造することができる。D−リボースの投与量としては、投与形態、患者の年令、体重、症状等により変化するが、一般的には、成人1日当たり、約10 mg〜約100 g、好ましくは約30 mg〜約5 g、さらに好ましくは約100 mg〜約500 mg等が挙げられ、1日一回あるいはそれ以上で投与される。ただし、マグネシウム塩を併用する場合は、D−リボースの投与量を約1/2〜約1/5に減らすことができる。また、D−リボースをうつ様症状の改善のために、飲料、食品等の飲食品に添加することもできる。例えば、病院食に添加することで、入院患者の意欲を亢進させることもできる。
【0013】
D−リボースにさらに加えるマグネシウム塩の投与量としては、投与形態、患者の年令、体重、症状等により変化するが、一般的には、マグネシウム重量として成人1日当たり、約2 mg〜約500 mg、好ましくは約5 mg〜約200 mg、さらに好ましくは約10 mg〜約100 mg等が挙げられ、1日一回あるいはそれ以上で投与される。
D−リボースにさらに加えるアミノ酸の投与量としては、投与形態、患者の年令、体重、症状等により異なるが、一般的には、。アミノ酸重量として成人1日あたり、約2 mg〜約500 mg、好ましくは約5 mg〜約200 mg、さらに好ましくは約10 mg〜約100 mg等が挙げられ、1日一回あるいはそれ以上で投与される。
D−リボースにさらに加えるカルニチンの投与量としては、投与形態、患者の年令、体重、症状等により異なるが、一般的には、カルニチン重量として成人1日あたり、約2 mg〜約500 mg、好ましくは約5 mg〜約200 mg、さらに好ましくは約10 mg〜約100 mg等が挙げられ、1日一回あるいはそれ以上で投与される。
【0014】
うつ様症状の改善効果は、抗うつ薬の評価方法を用いて評価することができ、その評価方法としては、例えば、ヒトに投与してその症状を観察する方法の他、学習性無力モデル、分離飼育モデル、強制水泳モデル、慢性ストレス誘発モデル、ムリサイドモデル(神経精神薬理, 7(6), p.383-391 (1985))、レセルピン誘発低体温拮抗試験(Japan.J.Pharmacol.53,p451-461(1990))、回転棒法(J. Am. Pharm. Ass., 46, p.208-209 (1957); 日薬理誌, 104, p.39-49 (1994))、懸垂法(Courvoisier, S. et. al. In ”Psychotropic drugs” ed. By Garattini, S. and Ghetti, V., p.373, Elsevier, Amsterdam,( 1957) )、浸水飼育負荷ストレス性疲労モデル(医学のあゆみ, 204(5), p362-364(2003))等が挙げられる。
【実施例】
【0015】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はもとよりこれらに限定されるものではない。
【0016】
実施例1
マウス強制水泳試験におけるD−リボースのうつ様症状改善効果
[試験方法]
実験動物は5週齢のddY系雄性マウス(日本エスエルシー)を1群につき10匹用いた。動物は、プラスチック製飼育ケージ(26×43×16 cm;日本クレア製)に20匹ずつ入れ、室温23±2℃、相対湿度30〜80%、12時間照明(6:30〜18:30)の飼育室において、飼料(CRF-1、オリエンタル酵母工業)と水の自由摂取下に飼育した。
試験は、「D−リボース 30 mg/kg投与群」、「D−リボース 100 mg/kg投与群」、「D−リボース 300 mg/kg投与群」および「コントロール群」の4群により行った。群分けは試験開始前に予め測定したマウスの体重の平均値が、各群で均一となるように行った。「D−リボース 30 mg/kg投与群」、「D−リボース 100 mg/kg投与群」および「D−リボース 300 mg/kg投与群」にはそれぞれkg体重当たり当該量のD−リボースを注射用水に溶解させた水溶液を、「コントロール群」には注射用水を、いずれも10 mL/kgの容量で強制的に1日1回1週間連続経口投与した。強制水泳試験は、最終回投与の前日の被験物質または注射用水投与前に15分間、さらに翌日の最終投与1時間後に5分間の2回、Porsortの方法(Nature, 166, p.730-732 (1977))に準拠して実施した。すなわち、透明のポリカーボネート製のメスシリンダー(内径10 cm、高さ25 cm)に25℃の水を入れ、底面から10 cmの位置に水面を合わせた円筒型水槽の中でマウスを水泳させ、2回目の水泳時の無動時間を測定した。
[統計処理]
測定結果は各群の平均値±標準誤差で表した。群間の有意差は、Dunnett型多重比較検定法を用い、有意水準を5%として検定した。
[試験結果]
試験結果を図1に示す。300 mg/kg投与群では無動時間の有意な短縮が見られ、D−リボースにうつ様症状改善効果のあることが示された。
【0017】
実施例2
マウス強制水泳試験におけるD−リボースとアスパラギン酸マグネシウムカリウムの併用によるうつ様症状改善効果
[試験方法]
実験動物は5週齢のddY系雄性マウス(日本エスエルシー)を1群につき10匹用い、実施例1と同じ環境下で飼育した。試験は、「D−リボース 100 mg/kg投与群」、「アスパラギン酸マグネシウムカリウム(アスパラギン酸Mg・K) 50 mg/kg投与群」、「D−リボース 100 mg/kg+アスパラギン酸Mg・K 50 mg/kg投与群」および「コントロール群」の4群により行った。群分けは試験開始前に予め測定したマウスの体重の平均値が、各群で均一となるように行った。「D−リボース 100 mg/kg投与群」、「アスパラギン酸Mg・K 50 mg/kg投与群」および「D−リボース 100 mg/kg+アスパラギン酸Mg・K 50 mg/kg投与群」にはそれぞれkg体重当たり当該量のD−リボースおよびアスパラギン酸Mg・Kを注射用水に溶解させた水溶液を、「コントロール群」には注射用水を、いずれも10 mL/kgの容量で強制的に1日1回1週間連続経口投与した。
[統計処理]
強制水泳試験、水泳時の無動時間の測定、ならびに測定結果の表示、群間の有意差検定は、いずれも実施例1と同様に行った。
[試験結果]
試験結果を図2に示す。D−リボース 100 mg/kgとアスパラギン酸Mg・K 50 mg/kgのそれぞれの単独投与では無動時間に影響を及ぼさなかったが、D−リボース 100 mg/kgとアスパラギン酸Mg・K 50 mg/kgの併用投与で無動時間の有意な短縮が認められ、アスパラギン酸Mg・K等のマグネシウム塩がD−リボースのうつ様症状改善効果を顕著に増強することが示された。
【0018】
実施例3
レセルピン誘発低体温拮抗試験におけるD−リボースのうつ様症状改善効果
[実験方法]
実験動物は5週齢のddY系雄性マウス(日本エスエルシー)を1群につき8匹用い、実施例1と同じ環境下で飼育した。試験群として「D−リボース 30 mg/kg投与群」、「D−リボース 100 mg/kg投与群」、「D−リボース 300 mg/kg投与群」ならびに「コントロール群」の4群を設けた。群分けは試験開始前に予め測定したマウスの体温(直腸温)の平均値が、各群で均一となるように行った。「D−リボース投与群」の3群には、それぞれkg体重当たり当該量のD−リボースを注射用水に溶解させた水溶液を、「コントロール群」には注射用水を、いずれも10 mL/kgの容量で強制的に経口投与した。 レセルピン誘発低体温拮抗試験はWachtelの方法(Neuropharmacology, 22(3), p. 267-272 (1983))に準拠して実施した。すなわち、各群のマウスに被験物質または注射用水投与直前に、プロピレングリコール水溶液で溶解させたレセルピン(第一製薬)を 1 mg /kgの用量(容量10 mL/kg)で皮下投与し、続けてD−リボースの当該用量または注射用水を経口投与した後、被験物質または注射用水投与の1、2、4、6および8時間後に各マウスの直腸温を測定した。なお、レセルピン処置、被験物質投与は午前10:00から午前11:00の間に行った。
[統計処理]
測定結果は各群の平均値±標準誤差で表した。群間の有意差は、Bonferroni/Dunn型の多重比較検定法を用い、有意水準を5%として検定した。
[結果]
試験結果を図3に示す。D−リボースの30 mg/kgでは有意なレセルピン誘発低体温軽減効果はみられなかったものの、100、300 mg/kgでは、投与4〜6時間後にかけて、有意でほぼ用量依存的な低体温軽減効果が認められ、D−リボースにうつ様症状改善効果のあることが明らかになった。
【0019】
実施例4
レセルピン誘発低体温拮抗試験におけるD−リボースとアスパラギン酸マグネシウムカリウムの併用によるうつ様症状改善効果
[試験方法]
実験動物は5週齢のddY系雄性マウス(日本エスエルシー)を1群につき8匹用い、実施例1と同じ環境下で飼育した。試験群として、「D−リボース 100 mg/kg投与群」、「D−リボース 100 mg/kg+アスパラギン酸Mg・K 50 mg/kg投与群」、ならびに「コントロール群」の3群を設けた。「D−リボース投与群」の2群には、それぞれkg体重当たり当該量のD−リボースおよびアスパラギン酸Mg・Kを注射用水に溶解させた水溶液を、「コントロール群」には注射用水を、いずれも10 mL/kgの容量で強制的に経口投与した。群分け、レセルピン投与、体温測定は、実施例3の方法と同じ方法で行った。
[統計処理]
測定結果は各群の平均値±標準誤差で表した。群間の有意差は、Bonferroni/Dunn型の多重比較検定法を用い、有意水準を5%として検定した。
[結果]
試験結果を図4に示す。D−リボースの100 mg/kg単独投与群では、投与4時間後および投与6時間後においてレセルピン誘発低体温に対して有意な低体温軽減効果がみられた。一方、D−リボース100 mg/kgとアスパラギン酸Mg・K 50 mg/kgの併用投与群では、投与4時間後、投与6時間後および投与8時間後において有意な低体温軽減効果が認められ、アスパラギン酸Mg・K等のマグネシウム塩が、D−リボースのうつ様症状改善効果を増強・持続させる作用を有することが明らかになった。
【0020】
実施例5
ラット浸水飼育負荷疲労試験における抗疲労効果
[試験方法]
実験動物は7週齢のSD系雄性ラット(日本エスエルシー)を1群につき10匹用い、試験開始日の体重が群間で差のないように群分けした。動物は実施例1と同じ環境下で飼育した。試験群として、「D−リボース 300 mg/kg/日投与群」、「D−リボース 1000 mg/kg/日投与群」、ならびに「コントロール群」の3群を設けた。「D−リボース投与群」の2群には、それぞれkg体重当たり当該量のD−リボースを注射用水に溶解させた水溶液を、「コントロール群」には注射用水を、いずれも10 mL/kgの容量で強制的に経口投与した。
ラット浸水飼育負荷疲労試験は田中の方法(医学のあゆみ,204(5),p362-364(2003))に準拠して実施した。すなわち、各群のラットは23±1℃、水深約1.5cmの水を入れた飼育ケージで5日間飼育し、その間、D−リボース投与群の1日量(300 mg/kgおよび1000 mg/kg)をそれぞれ2回(150 mg/kgおよび500 mg/kg)に分け、10時と15時に5日間連続経口投与した。最終回投与24時間後、ラットの尾根部から4./5の先端部に約20g(体重の約8%)のおもりを負荷させたラットを、25±2℃、水深50cmのアクリル製円筒型水槽(内径25cm、高さ60cm)に1匹ずつ遊泳させ、遊泳開始から10秒以上鼻が水没するまでの時間を測定した。
[統計処理]
測定結果は各群の平均値±標準誤差で表した。群間の有意差は、一元配置分散分析後、Bonferroni /Dunn型の多重比較検定法を用い、有意水準を5%として検定した。
[結果]
試験結果を図5に示す。D−リボースの300mg/kgでは有意な抗疲労効果はみられなかったものの、D−リボース1000 mg/kg投与群の遊泳時間はコントロール群のそれより約70%長く、5日間の浸水飼育負荷ストレス性疲労に対する有意な抗疲労効果が認められた。以上より、D−リボースにはストレス等の原因で生じる精神疲労、及び騒音、振動や高温多湿等の環境の原因で生じる環境疲労に対する改善効果があることが示された。
【0021】
実施例6
ヒトにおける集中力維持効果の評価
D−リボースのヒトにおける集中力維持効果は、乱数表を用いた試験(試合に勝つためのスポーツ・メンタルトレーニング, 高畑 好秀著, ナツメ社刊, 2003年)により評価することができる。
健常人10名を2群に分けて、「D−リボース 2.2 g/日投与群」及び「コントロール群」とする。「D−リボース 2.2 g/日投与群」には、一日当たり、D−リボース 2.2 g、ほうじ茶エキス 0.24 g及びスクラロース 2 mgを注射用水に溶解させた水溶液を摂取させる。「コントロール群」には、一日当たり、デキストリン 2.2 g、ほうじ茶エキス 0.24 g及びスクラロース 2 mgを注射用水に溶解させた水溶液を摂取させる。両群とも、試験7日前より1日量を朝食前、昼食前、夕食前に3回に分けて摂取させ、試験当日は試験30分前に1日量を摂取させる。
集中力を評価する試験としては、00から99の数字の乱数を発生させて作成した縦、横10ずつの升目の表を用い、被験者に1分間に00から順番に01,02・・・とチェックさせる。そのチェックした数を両群で比較することにより集中力の評価を行う。
なお、集中力の評価試験から1ヶ月のウォッシュアウト期間の後に、両群を入れ替えて、再度同じ試験を行い、先の集中力の評価に合わせて、総合評価を行う。
本試験の結果、D−リボースの投与により、優位にヒトにおける集中力が維持される。
【0022】
比較例1
マウス強制水泳試験におけるD−リボースとグルコースのうつ様症状改善効果比較試験
[試験方法]
実験動物は5週齢のddY系雄性マウス(日本エスエルシー)を1群につき10匹用いた。試験開始日の体重が群間で差のないように群分けした。動物は実施例1と同じ環境下で飼育した。試験群として、「D−リボース 100 mg/kg投与群」、「D−リボース 300 mg/kg投与群」、「グルコース 300 mg/kg投与群」、ならびに「コントロール群」の4群を設けた。「D−リボース投与群」の2群には、それぞれkg体重当たり当該量のD−リボースを注射用水に溶解させた水溶液を、「コントロール群」には注射用水を、いずれも10 mL/kgの容量で強制的に1週間連続経口投与した。試験は、実施例1と同じPorsortの方法(Nature, 166, p.730-732 (1977))に準拠して実施した。
[統計処理]
測定結果は各群の平均値±標準誤差で表した。群間の有意差は、群間の有意差は、一元配置分散分析後、Bonferroni /Dunn型の多重比較検定法を用い、有意水準を5%として検定した。
[試験結果]
試験結果を図6に示す。D−リボースは100 mg/kg および300 mg/kgでほぼ用量依存的な無動時間短縮作用を示した。D−リボースにうつ様症状改善効果のあることが明らかになった。一方、グルコースの300 mg/kgでは無動時間の有意な短縮は見られず、グルコースにはうつ様症状改善効果のないことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
上記の通り、本発明によって、D−リボースを含有するうつ様症状改善剤が提供される。本うつ様症状改善剤によって、意欲の低下、全身性倦怠感、脱力感、無気力、集中力の低下、健忘、知覚異常・知覚の鈍磨(視覚障害等)、思考力の低下、不定愁訴、作業能率の低下または沈滞気分等を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、マウス強制水泳試験において、D−リボース投与による無動時間測定結果を示す。 * P<0.05,** P<0.01 vs コントロール群(Dunnett型多重比較検定)
【図2】図2は、マウス強制水泳試験において、D−リボースとアスパラギン酸Mg・Kの併用による無動時間測定結果を示す。 * P<0.05,** P<0.01 vs コントロール群(Dunnett型多重比較検定)
【図3】図3は、レセルピン誘発低体温拮抗試験において、D−リボース投与による低体温の拮抗作用を示す。 * P<0.05,** P<0.01 vs コントロール群(Bonferroni/Dunn型の多重比較検定)
【図4】図4は、レセルピン誘発低体温拮抗試験において、D−リボースとアスパラギン酸Mg・Kの併用による低体温の拮抗作用を示す。 * P<0.05,** P<0.01 vs コントロール群(Bonferroni/Dunn型の多重比較検定)
【図5】図5は、ラット浸水飼育負荷疲労試験において、D−リボース投与による水泳時間測定結果を示す。 *P<0.05、**P<0.01 vs コントロール(Bonferroni/Dunn型多重比較検定).
【図6】図6は、マウス強制水泳試験において、D−リボース及びグルコース投与による無動時間測定結果を示す。 **P<0.01 vs コントロール(Bonferroni/Dunn型多重比較検定)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
D−リボースを含有するうつ様症状改善剤。
【請求項2】
うつ様症状が、意欲の低下、全身性倦怠感、脱力感、無気力、集中力の低下、健忘、知覚異常・知覚の鈍磨(視覚障害等)、思考力の低下、不定愁訴、作業能率の低下または沈滞気分である請求項1記載のうつ様症状改善剤。
【請求項3】
うつ様症状が精神疲労または精神障害に伴ううつ様症状である請求項1または2記載のうつ様症状改善剤。
【請求項4】
成人1日当り10 mg〜100 gのD−リボースを含有する請求項1〜3のいずれか記載のうつ様症状改善剤。
【請求項5】
マグネシウム塩、アミノ酸およびカルニチンの少なくとも1つをさらに含有する請求項1〜4のいずれか記載のうつ様症状改善剤。
【請求項6】
アスパラギン酸マグネシウムカリウムをさらに含有する請求項1〜4のいずれか記載のうつ様症状改善剤。
【請求項7】
D−リボースと、マグネシウム塩、アミノ酸およびカルニチンの少なくとも1つとを含有する組成物。
【請求項8】
D−リボースを含有するうつ様症状を改善するための飲食品。
【請求項9】
D−リボースを含有する精神疲労改善剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−529409(P2007−529409A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519448(P2006−519448)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【国際出願番号】PCT/JP2005/005452
【国際公開番号】WO2005/089774
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000002956)田辺製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】