説明

うつ病の予防及び/又は治療剤

【課題】うつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤あるいは脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物からなる群から選ばれる物質を有効成分とするうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤あるいは脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。


〔Rは水素原子、ヒドロキシル基、−O−(CH−COOH(nは1〜5の整数を表わす。)、又はO−CO−(CH−COOH(lは1〜3の整数を表わす。)を表わし、Rは−N(R)(R)などを表わし、mは0〜5の整数を表わす。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物からなる群から選ばれる物質を有効成分とするうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤(以下、単にうつ病の予防及び/又は治療剤とも称する)あるいは脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤(以下、単に血管性うつ病の予防及び/又は治療剤とも称する)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
うつ病の主症状は生気感情の沈滞であるが、思考力の低下や悲観的で自責的になる思考障害、日常的な活動性の減退、意欲の低下、不安・焦燥感などの精神症状、さらには自律神経系の異常による身体症状なども見られる(非特許文献1参照)。
【0003】
うつ病は、脳の働きが一時的に低下することにより生じると考えられており、適切な治療を行えば寛解に至る疾患である。有効な治療法としては精神療法、生活指導(休息)、薬物療法の主に3つのアプローチがある(非特許文献2参照)。薬物療法としては、ミアンセリン、スルピリド、イミプラミン等が主に処方されている。
【0004】
脳血管障害とうつ状態の関連は現在まで多数報告されており、これら脳血管障害を伴ううつ病は血管性うつ病として提唱されている。血管性うつ病の治療は、脳血管障害に対する治療及び抗うつ薬治療の両方が行われる。SSRI(selective serotonin reuptake inhibitor)及びSNRI(serotonin noradorenaline reuptake inhibitor)が有力な治療選択薬であると考えられている。しかし、一般に血管性うつ病は抗うつ薬に対する治療反応性が乏しく、難治化することが少なくない(非特許文献3参照)。また、器質的脆弱性を有する血管性うつ病の患者では副作用が惹起されやすいことを念頭に、少量投与から開始して、副作用に注意しながら漸増させることが望ましい(非特許文献4参照)。
【0005】
シロスタゾールは抗血小板薬であり、ラクナ梗塞の再発防止に有効であることが実証されている(非特許文献5参照)。シロスタゾールは、SNRIとして知られているミルナシプランが無効であった血管性うつ病に対して効果を示したとの報告がある(非特許文献6参照)。その半面、十分な治療効果の得られなかった症例も存在することが知られている(非特許文献3参照)。またうつ病、難治性のうつ病又は難治性の血管性うつ病の症例に対する有効例は確認されていない。
【0006】
SSRIをはじめとする新規抗うつ薬は、旧来のいわゆる三環形抗うつ薬と比較してより使用しやすいとされ、一部の薬物選択のアルゴリズムでは既に第一選択薬となっている(非特許文献7参照)。しかし、SSRIやSNRIは自殺企図などの害作用が指摘される場合もあり(非特許文献8参照)、より安全な新規の抗うつ薬が望まれている。
【0007】
下記式(2):
【0008】
【化1】

【0009】
で表わされる塩酸サルポグレラートに代表される特定構造のアミノアルコキシビベンジル類は5HT受容体に高い選択性を示し、血圧にほとんど影響を与えないことが報告されており、さらに、重篤な副作用もほとんどなく、高い安全性を示す薬剤である。塩酸サルポグレラートについては、これまで脳循環障害、虚血性心疾患、末梢循環障害等の疾患における、血栓生成及び血管収縮に基づく種々の微小循環障害の改善に有効であることが知られている(特許文献1)。
【0010】
しかし塩酸サルポグレラートがうつ病の予防及び/又は治療剤、あるいは血管性うつ病の予防及び/又は治療剤として有用であることは従来知られていない。
【0011】
【特許文献1】特開平2−304022号公報
【非特許文献1】薬局 Vol.51,No.2(2000)2−10
【非特許文献2】薬局 Vol.51,No.2(2000)31−40
【非特許文献3】第3回 日本うつ病学会総会プログラム・抄録集、第85頁、P4−04
【非特許文献4】臨床精神医学 34(5):655−660,2005
【非特許文献5】小林祥泰:日本人における脳卒中リスク−脳卒中データバンクより−。Hypertens Front 7:22-31,2004
【非特許文献6】第16回 日本臨床精神神経薬理学会プログラム・抄録集、第122頁、O−19
【非特許文献7】Kennedy, S. H., Lam, R. W., Cohen, N. L. et al.:Clinical guidelines fortreatment of depressive disorders. IV. Medications and other biological treatments. Can. J. Psychiatry, 46(Suppl. 1):38S-58S,2001
【非特許文献8】臨床精神薬理 8:1663−1673,2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、新規なうつ病の予防及び/又は治療剤あるいは血管性うつ病の予防及び/又は治療剤を提供することにある。特にアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質の新規な用途としてのうつ病の予防及び/又は治療剤あるいは血管性うつ病の予防及び/又は治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、アミノアルコキシビベンジル類が抗うつ作用を有していることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0014】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 下記一般式(1)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質を有効成分とするうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤。
【化2】


〔式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、又はC〜Cのジアルキルアミノ基を表わし、Rは水素原子、ハロゲン原子又はC〜Cのアルコキシ基を表わし、Rは水素原子、ヒドロキシル基、−O−(CH−COOH(式中、nは1〜5の整数を表わす。)、又は−O−CO−(CHl−COOH(式中、lは1〜3の整数を表わす。)を表わし、Rは−N(R)(R)(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はC〜Cのアルキル基を表わす。)又は
【化3】


(式中、Aはカルボキシル基で置換されていてもよいC〜Cのアルキレン基を表わす。)を表わし、mは0〜5の整数を表わす。〕
[2] 下記式(2)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質を有効成分とするうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤。
【化4】


[3] 下記式(3)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質を有効成分とするうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤。
【化5】


[4] 塩酸塩の形態である[2]に記載のうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤。
[5] うつ病、うつ状態又は不安障害が難治性のうつ病、難治性のうつ状態又は難治性の不安障害である[1]〜[4]のいずれか1項に記載のうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤。
[6] 抗うつ薬、抗不安薬及び抗精神病薬からなる群から選択される少なくとも1種と併用して用いられる[1]〜[5]のいずれか1項に記載のうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤。
[7] 上記一般式(1)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質を有効成分とする脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
[8] 上記式(2)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質を有効成分とする脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
[9] 上記式(3)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質を有効成分とする脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
[10] 塩酸塩の形態である[8]に記載の脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
[11] 脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害が難治性の脳血管障害を伴ううつ病、難治性の脳血管障害を伴ううつ状態又は難治性の脳血管障害を伴う不安障害である[7]〜[10]のいずれか1項に記載の脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
[12] 脳血管障害が脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳出血、くも膜下出血、硬膜下血腫又は脳静脈閉塞症である[7]〜[11]のいずれか1項に記載の脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
[13] 脳血管障害が脳梗塞、一過性脳虚血発作又は脳静脈閉塞症である[7]〜[12]のいずれか1項に記載の脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
[14] 脳梗塞が脳血栓症又は脳塞栓症である[12]又は[13]に記載の脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
[15] 脳血管障害が無症候性の脳血管障害である[7]〜[14]のいずれか1項に記載の脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
[16] 抗うつ薬、抗不安薬及び抗精神病薬からなる群から選択される少なくとも1種と併用して用いられる[7]〜[15]のいずれか1項に記載の脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、うつ病の予防及び/又は治療剤あるいは血管性うつ病の予防及び/又は治療剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のうつ病の予防及び/又は治療剤あるいは血管性うつ病の予防及び/又は治療剤は、上記一般式(1)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質を有効成分として含む。
【0017】
1は水素原子;塩素原子、フッ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のC1〜C5のアルコキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等のC2〜C6のジアルキルアミノ基を示す。R2は水素原子;塩素原子、フッ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のC1〜C5のアルコキシ基を示す。R3は水素原子;ヒドロキシル基;−O−(CH22−COOH、−O−(CH23−COOH等の−O−(CH2n−COOH(式中、nは1〜5の整数を示す);−O−CO−(CH22−COOH、−O−CO−(CH23−COOH等の−O−CO−(CH2l−COOH(式中、lは1〜3の整数を示す)を示す。R4はアミノ基、若しくはメチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等の炭素数1〜8のアルキル基を1〜2個有するアミノ基を示すか、又はトリメチレンアミノ基、ペンタメチレンアミノ基、3−カルボキシペンタメチレンアミノ基等の環にカルボキシル基が置換していてもよい4〜6員のポリメチレンアミノ基を表わす。
【0018】
上記一般式(1)に包含される化合物のうち、本発明に好ましく用いられる化合物のいくつかを表−1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
これらのなかでも、アミノアルコキシ基;−OCH2C(R3)H−(CH2)m−R4がフェニル基の2−位に結合している化合物が好ましい。また、R1は水素原子、C1〜C5のアルコキシ基、又はC2〜C6のジアルキルアミノ基が好ましく、R2は水素原子が好ましく、R4は少なくとも1個のC1〜C8のアルキル基を有するアミノ基又はトリメチレン基ないしはペンタメチレン基を有する4〜6員のポリメチレンアミノ基であるのが好ましく、mは0〜2の整数であることが好ましい。特に好ましいのは、R1がメトキシ基であり、R2が水素原子であり、R3がヒドロキシル基であり、R4がジメチルアミノ基であり、mが1であるNo.15の化合物(以下、本明細書においてこの化合物を「M−1」と呼ぶ場合がある)及びそのコハク酸エステルであるNo.14の化合物である。
【0022】
「薬学上許容し得る塩」とは、上記一般式(1)で示されるアミノアルコキシベンジル類とともに形成される無毒性の塩であれば如何なるものであってもよいが、例えば、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩等の無機酸の付加塩;ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、グリコール酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、メチルマレイン酸塩、フマル酸塩、アジピン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、ケイ皮酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩、2−アセトキシ安息香酸塩、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩等の有機酸の付加塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ヒドロキシベンゼンスルホン酸塩、ジヒドロキシベンゼンスルホン酸塩等の有機スルホン酸の付加塩;アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の酸性アミノ酸の付加塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩等の有機塩基の付加塩;リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸の付加塩等を挙げることができる。
【0023】
上記一般式(1)で示されるアミノアルコキシベンジル類のエステルとしては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、グリコール酸、コハク酸、乳酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、アジピン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、アスコルビン酸、サリチル酸、2−アセトキシ安息香酸、ニコチン酸、イソニコチン酸等の有機酸や硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等の無機酸との脱水縮合により得られるエステルを挙げることができる。
【0024】
また、これらの化合物は、結晶形以外に、場合によっては水やアルコール等との溶媒和物あるいは水和物であってもよい。
【0025】
これらのうちで特に好ましいのは、下記式(4)で表わされる(±)−1−〔O−〔2−(m−メトキシフェニル)エチル〕フェノキシ〕−3−(ジメチルアミノ)−2−プロピル水素スクシナートの塩酸塩である(以下、本明細書において、この物質を「塩酸サルポグレラート」とも称する)。
【0026】
【化6】

【0027】
上記一般式(1)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学的に許容される塩及びそのエステルは公知であり、特開昭58−32847号公報に記載の方法又はそれに準じた方法により容易に合成できる。なお、上記式(4)で表わされる塩酸サルポグレラートは、田辺三菱製薬株式会社より「アンプラーグ(登録商標)」として市販されており、本発明においては市販の「アンプラーグ」をそのまま使用することも可能である。
【0028】
本発明の対象となる疾患としては、うつ病、うつ状態及び不安障害または脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態及び脳血管障害を伴う不安障害が挙げられる。
【0029】
うつ病は、脳の働きが一時的に低下することにより生じると考えられており、適切な治療を行えば寛解に至る疾患である。比較的軽症のうつ病では、身体症状に軽い意欲低下を伴う程度であるが、中等症のうつ病では、不眠や食欲低下、心気抑うつなどの症状が比較的強く、仕事や家事などに支障が出る。また、重症のうつ病では、意欲低下が顕著で、うつ病性の妄想(心気、罪業、貧困などの妄想がよく見られる)を伴う例、メランコリーを伴ううつ病や、中高年以上の女性のうつ病に多い不安焦燥の強い、いわゆる激越うつ病、希死念慮の強い例、自殺未遂のある例が見られる(非特許文献2)。他に、倦怠感、易徒労感、頭痛なども見られる。また、日本でも汎用されている米国精神医学会の診断基準としては、以下に示す大うつ病エピソードを呈している患者を指し、大うつ病エピソードとは、以下の9項目のうち5項目以上が認められる状態を指す。(1)抑うつ気分、(2)興味、喜びの著しい減退、(3)体重減少または増加、食欲減退または増加、(4)不眠または睡眠過多、(5)精神運動性の焦燥または制止、(6)易疲労性または気力の減退、(7)無価値観または罪責感、(8)思考力や集中力の減退または決断困難、(9)自殺念慮や自殺企図(樋口輝彦:気分障害の病態、診断と治療概説.臨床と研究 80(9):1582−1587,2003)。
【0030】
うつ状態とは、状態が抑うつ的であり、ある程度持続的であることを意味する。症状としては、悲哀・不安の両方あるいはそのいずれかを特徴とする気分の障害、思考過程の渋滞(集中困難や思考の反復)、精神運動抑制あるいは焦燥感、心身的症状、抑うつ性妄想観念(心気症、貧困妄想あるいは罪責妄想)が挙げられる(臨床精神医学 34(5):537−542、2005)。さらに倦怠感、易徒労感、頭痛などが観察される。また、上記米国精神医学会の診断基準に示す9項目のうち4項目以下の症状が認められる状態を指す。
【0031】
本発明は、特に抑うつ気分、思考障害、気力の低下、焦燥感、倦怠感、易疲労感、食欲不振、頭痛及び/又は睡眠障害等の症状を示すうつ病又はうつ状態の予防・治療に有効である。
【0032】
不安は不快な情緒状態であるが、誰しも経験するものである。しかしながら、特にふさわしい理由もなく過度に不安にかられる場合があり、そのような状態を不安障害と称することができる。不安障害とは、強迫観念と強迫観念による不快感を軽減しようとする衝動(強迫行為)によって特徴づけられる強迫性障害や、突然の発作として起こる不安が繰り返されるパニック障害、社会状況(例えば人前等)の中での不安が非常に強く、また非常な苦痛を伴う社会恐怖症、特定の場所や環境で強く不安を感じる広場恐怖、強いストレスを経験した後に発症する外傷後ストレス障害(PTSD)、理由の定まらない不安が長時間続く全般性不安障害、軽い不安症状と抑うつ症状が存在し、自律神経症状が間欠的に存在する混合性不安抑うつ障害等に分類される。
【0033】
本発明は、特に強迫性障害、パニック障害、社会恐怖、広場恐怖、外傷後ストレス障害(PTSD)、全般性不安障害又は混合性不安抑うつ障害などの不安障害に有効である。
【0034】
上述のうつ病、うつ状態及び不安障害だけでなく、さらに本発明は、脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態及び脳血管障害を伴う不安障害にも有効であると考えられる。脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態及び脳血管障害を伴う不安障害は、脳血管障害後に発生するうつ病、うつ状態及び不安障害であり、これらを総称して血管性うつ病とよぶ。血管性うつ病の発生要因は、直接的な脳損傷であり、その発生要因が心理的反応に起因すると考えられているうつ病、うつ状態及び不安障害とは明らかに病態が異なる。また、うつ病、うつ状態及び不安障害の治療に通常用いられる薬剤に対する反応性が乏しく、難治化しやすい。
血管性うつ病の原因となる脳血管障害としては、脳梗塞(脳血栓症、脳塞栓症等)、一過性脳虚血発作、脳出血、くも膜下出血、硬膜下血腫、脳静脈閉塞症及び無症候性の脳血管障害等が挙げられる。ここで、無症候性の脳血管障害とは、脳梗塞(脳血栓症、脳塞栓症等)、脳出血、くも膜下出血、硬膜下血腫又は脳静脈閉塞症等の脳血管障害に特有の症状は現れていないが、画像診断(CT、MRI等)により脳血管に微小な出血や梗塞が見出されたものをいう。
【0035】
近年では、画像診断の進歩により、びまん性白質病変や無症候性ラクナ梗塞が加齢とともに高頻度で見られることが明らかとなっている(非特許文献5)。高齢者うつ病では非うつ病に比べ、こうした所見が有意に高率であることが報告されている(Cervilla J, Prince M, Rabe-Hesketh S : Phychol Med , Vascular disease risk factors as determinants of incident depressive symptoms : a prospective community - based study. Phychol Med 34:635-641, 2004およびSteffens DC, Helms MJ, Krishnan KR : Cerebrovascular health study. Stroke 30 : 2159-2166, 1999)。
【0036】
また、上記うつ病、うつ状態及び不安障害または脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態及び脳血管障害を伴う不安障害の中でも、予後不良で長期化、慢性化するようなものは難治性と分類することができ、本発明はこのような難治性のうつ病、難治性のうつ状態及び難治性の不安障害または難治性の脳血管障害を伴ううつ病、難治性の脳血管障害を伴ううつ状態及び難治性の脳血管障害を伴う不安障害に対しても有用である。
【0037】
難治性とは、少なくとも3種類の抗うつ薬を十分量(イミプラミン相当で日に200mg)、十分な期間(4〜6週間)用いても十分な治療効果が現れない症例を指す。
【0038】
難治性の治療法として、抗うつ薬にリチウム、甲状腺ホルモン、ドパミンアゴニスト、非定型抗精神病薬などを併用する増強療法や電気痙攣療法などが使用されているが、その治療戦略に関しては、エビデンスに基づき治療を標準化するための十分な数の臨床研究はまだない(岡本長久:難知性うつ病への対応.医学のあゆみ 219(13):955−962,2006)。
【0039】
本発明化合物をうつ病の予防及び/又は治療剤あるいは血管性うつ病の予防及び/又は治療剤として用いる場合の投与方法は当業者が適宜選択可能である。例えば、皮下注射、静脈内注射、筋肉注射、腹腔内注射等の非経口投与、又は経口投与のいずれの投与経路を選択することも可能である。投与量は患者の年齢、健康状態、体重などの条件、同時に投与される医薬がある場合にはその種類や投与頻度などの条件、あるいは所望の効果の性質等により適宜決定することができる。一般的には、有効成分の1日投与量は0.5〜50mg/kg体重、通常1〜30mg/kg体重であり、1日あたり1回あるいはそれ以上投与することができる。
【0040】
本発明化合物をうつ病の予防及び/又は治療剤あるいは血管性うつ病の予防及び/又は治療剤として用いる場合には、上記の有効成分と1種又は2種以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物を調製して投与することが好ましい。経口投与に適した医薬組成物としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、エリキシル剤等を挙げることができ、非経口投与に適した医薬組成物としては、例えば、液剤あるいは懸濁化剤等の殺菌した液状の形態の医薬組成物を例示することができる。
【0041】
医薬組成物の調製に用いられる製剤用添加物の種類は特に制限されず、種々の医薬組成物の形態に応じて適宜の製剤用添加物を選択することが可能である。製剤用添加物は固体又は液体のいずれであってもよく、例えば固体担体や液状担体などを用いることができる。固体担体の例としては通常のゼラチンタイプのカプセルを用いることができる。また、例えば、有効成分を1種もしくは2種以上の製剤用添加物とともに、または製剤用添加物を用いずに錠剤化することができ、あるいは粉末として調製して包装することができる。これらのカプセル、錠剤、粉末は、一般的には製剤の全重量に対して5〜95重量%、好ましくは5〜90重量%の有効成分を含むことができ、投与単位形態は5〜500mg、好ましくは25〜250mgの有効成分を含有するのがよい。液状担体としては水性担体(水など)、あるいは油性担体(石油、ピーナツ油、大豆油、ミネラル油、ゴマ油等の動植物起源の油又は合成の油など)が用いられる。また、一般に生理食塩水、デキストロールあるいは類似のショ糖溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類が液状担体として好ましく、特に生理食塩水を用いた注射液の場合には通常0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の有効成分を含むように調製することができる。
【0042】
本発明のうつ病の予防及び/又は治療剤あるいは血管性うつ病の予防及び/又は治療剤は、抗うつ薬、抗不安薬及び抗精神病薬と併用することができる(以下、これらの薬剤を単に、併用薬剤とも称する)。併用される抗うつ薬としては、通常当分野で用いられているものが挙げられ、例えば、ミアンセリン、スルピリド、イミプラミン、クロミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、アモキサピン、トラゾドン、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム等が用いられる。併用される抗不安薬としては、通常当分野で用いられているものが挙げられ、例えばジアゼパム、フルニトラゼパム、ブロチゾラム、エチゾラム、ゾルピーデム、ロラゼパム、アルプラゾラム、クロチアゼパム、タンドスピロン、ブスピロン等が用いられる。併用される抗精神病薬としては、通常当分野で用いられているものが挙げられ、例えばオランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ペロスピロン、ハロペリドール、ブロンペリドール、スルピリド、モサプラミン、ピモジド、ゾテピン等が用いられる。併用薬剤の投与量は、用いる薬剤の種類や投与対象の性別、年齢、体重、あるいは症状の重篤度等に応じて、通常、従来、各薬剤において臨床的に用いられてきた量をもとに適宜決定される。本発明のうつ病の予防及び/又は治療剤、あるいは血管性うつ病の予防及び/又は治療剤が他の薬剤と併用されることを考慮して、各薬剤の投与量を減じてもよい。
【0043】
上記一般式(1)、式(2)または式(3)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質は、上記うつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤あるいは脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤の製造のために使用することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0045】
実施例1
X−2年、抑うつ気分、意欲・興味関心の低下、易徒労感、集中困難、早朝覚醒、食欲不振、体重減少(10kg減)、体のふらつきなど出現。仕事も休みがちになりX−2年3月退職。X−2年4月精神科A病院を受診し投薬治療受けるも改善に乏しく、X−2年11月B病院精神神経科受診。大うつ病性障害の診断にて、様々な抗うつ薬、オーギュメンテーション療法として甲状腺ホルモン剤等を使用するも改善に乏しく、自宅でほぼ終日臥床している生活が続いていたため、X年8月B病院精神神経科入院となった。
【0046】
入院時検査の結果などは以下の通りである。
血算・生化:特記事項なし。
EEG:WNL
記銘力・神経心理学的検査(HDS−R(28点)、WAIS−R、ベントン視覚記銘力検査、WMS−Rより言語性対連合、FAB、Stroop Test、Trail Making Test):いずれも平均レベルで、記銘力、前頭葉機能に障害があるとは言えない。
頭部MRI:前頭葉・側頭葉萎縮、大脳深部白質に微小梗塞巣が認められたが、血管性うつ病とは認定できない。
頭部99mTc−ECD SPECT:前頭葉・側頭葉の軽度血流低下あり。
神経内科受診:明らかな所見なく、認知症、変性疾患とは言えない。
【0047】
入院後も抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬などを使用し薬物療法継続するも効果に乏しく、X年10月ECT(9回)施行し、抑うつ気分の改善などを認めたが、意欲・活動性の低下は改善に乏しかった。
【0048】
X年10月25日ECT終了後より使用薬物(ミアンセリン(mianserin) 60mg/日、スルピリド(sulpiride) 30mg/日、ペロスピロン(perospirone) 12mg/日、ブロチゾラム(brotizolam) 0.25mg/日、フルニトラゼパム(flunitrazepam) 1mg/日)を固定し、X年11月21日より塩酸サルポグレラート(sarpogrelate hydrochloride:アンプラーグ(登録商標))100mg/日(半錠ずつ朝夕2回)で開始し、X年12月5日に200mg/日(1錠ずつ朝夕2回)まで増量した。開始前の頭部MRI、SPECTの所見は入院時とほぼ変化なく、前頭葉・側頭葉を中心とした血流低下、萎縮、深部白質の微小梗塞巣がみられた。
【0049】
アンプラーグ追加後よりラジオ体操に参加する(100mg投与時)、外泊に行き自宅の掃除をするなど活動性の改善(200mg投与時)を認め、X年12月14日に退院となった。
【0050】
アンプラーグ使用前後でのハミルトンうつ病評価尺度(HDRS;構造化面接SIGH−D日本語版使用)の得点は19点(開始時)→15点(1週間後)→13点(5週間後)と改善し、全般的機能評価尺度(The Global Assessment of Functioning:GAF)は38(開始時)→47(1週間後)→52(5週間後)と改善を示した。
【0051】
この結果より、塩酸サルポグレラートの投与により、難治性うつ病患者の症状に著明な改善が見られたことから、うつ病、うつ状態又は不安障害に対して塩酸サルポグレラートが有効であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば新規なうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤あるいは新規な脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態及び脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質を有効成分とするうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤。
【化1】


〔式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、又はC〜Cのジアルキルアミノ基を表わし、Rは水素原子、ハロゲン原子又はC〜Cのアルコキシ基を表わし、Rは水素原子、ヒドロキシル基、−O−(CH−COOH(式中、nは1〜5の整数を表わす。)、又は−O−CO−(CHl−COOH(式中、lは1〜3の整数を表わす。)を表わし、Rは−N(R)(R)(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はC〜Cのアルキル基を表わす。)又は
【化2】


(式中、Aはカルボキシル基で置換されていてもよいC〜Cのアルキレン基を表わす。)を表わし、mは0〜5の整数を表わす。〕
【請求項2】
下記式(2)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質を有効成分とするうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤。
【化3】

【請求項3】
下記式(3)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質を有効成分とするうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤。
【化4】

【請求項4】
塩酸塩の形態である請求項2に記載のうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤。
【請求項5】
うつ病、うつ状態又は不安障害が難治性のうつ病、難治性のうつ状態又は難治性の不安障害である請求項1〜4のいずれか1項に記載のうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤。
【請求項6】
抗うつ薬、抗不安薬及び抗精神病薬からなる群から選択される少なくとも1種と併用して用いられる請求項1〜5のいずれか1項に記載のうつ病、うつ状態又は不安障害の予防及び/又は治療剤。
【請求項7】
下記一般式(1)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質を有効成分とする脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
【化5】


〔式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、C〜Cのアルコキシ基、又はC〜Cのジアルキルアミノ基を表わし、Rは水素原子、ハロゲン原子又はC〜Cのアルコキシ基を表わし、Rは水素原子、ヒドロキシル基、−O−(CH−COOH(式中、nは1〜5の整数を表わす。)、又は−O−CO−(CHl−COOH(式中、lは1〜3の整数を表わす。)を表わし、Rは−N(R)(R)(式中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はC〜Cのアルキル基を表わす。)又は
【化6】


(式中、Aはカルボキシル基で置換されていてもよいC〜Cのアルキレン基を表わす。)を表わし、mは0〜5の整数を表わす。〕
【請求項8】
下記式(2)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質を有効成分とする脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
【化7】

【請求項9】
下記式(3)で表わされるアミノアルコキシビベンジル類、その薬学上許容し得る塩、そのエステル、並びにそれらの溶媒和物及びそれらの水和物よりなる群から選ばれる物質を有効成分とする脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
【化8】

【請求項10】
塩酸塩の形態である請求項8に記載の脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
【請求項11】
脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害が難治性の脳血管障害を伴ううつ病、難治性の脳血管障害を伴ううつ状態又は難治性の脳血管障害を伴う不安障害である請求項7〜10のいずれか1項に記載の脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
【請求項12】
脳血管障害が脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳出血、くも膜下出血、硬膜下血腫又は脳静脈閉塞症である請求項7〜11のいずれか1項に記載の脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
【請求項13】
脳血管障害が脳梗塞、一過性脳虚血発作又は脳静脈閉塞症である請求項7〜12のいずれか1項に記載の脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
【請求項14】
脳梗塞が脳血栓症又は脳塞栓症である請求項12又は13に記載の脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
【請求項15】
脳血管障害が無症候性の脳血管障害である請求項7〜14のいずれか1項に記載の脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。
【請求項16】
抗うつ薬、抗不安薬及び抗精神病薬からなる群から選択される少なくとも1種と併用して用いられる請求項7〜15のいずれか1項に記載の脳血管障害を伴ううつ病、脳血管障害を伴ううつ状態又は脳血管障害を伴う不安障害の予防及び/又は治療剤。

【公開番号】特開2008−273954(P2008−273954A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86294(P2008−86294)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】