説明

うなぎ焼きおにぎり及びその製造方法並びに保存方法

【課題】冷めてもうなぎの蒲焼き独特の香ばしさが感じられ、型くずれのないうなぎ焼きおにぎり及びその製造方法、保存方法を提供する。
【解決手段】
おにぎり内部30の米粒にまで第1のタレが被覆してあり、且つ、焼きおにぎりの表面20に具10となるうなぎの蒲焼きを有してなるうなぎ焼きおにぎり1であって、焼きおにぎりの表面20に具10を載せるための窪み40が形成してあり、その窪み40に具10となるうなぎの蒲焼きの表面が見えるように少なくとも一部埋設されていること、及び焼きおにぎり1の表面20の少なくとも一部に第2のタレ層50が形成してあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食するために供されるおにぎりに係り、特に、うなぎの蒲焼きを具とした焼きおにぎり及び焼きおにぎりの製造方法、さらには保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
元来おにぎりは携帯食として、或いはお弁当の中身として、広く食されている。近年はコンビニエンスストアやスーパーマーケットで販売しているだけでなく、おにぎり専門店がバリエーション豊かな具のおにぎりを提供し始めている。
その中には、うなぎの蒲焼きを具としたおにぎりもいくらか出回ってはいるが、それらの多くは土用の丑の日のためのキャンペーン商品として販売されているものであり、年間を通してうなぎの蒲焼きを具としたおにぎりを扱う店は少ない。
通常うなぎの蒲焼きは、うな重あるいはうな丼の形で店頭で提供されることが多く、その場合はうなぎを焼いた香ばしい香りと甘辛いタレの香りが食欲をそそる。
【0003】
しかしながら、うなぎの蒲焼きをおにぎりの具とした場合、既に作り置きした物を店頭に並べて販売するというおにぎりの性質上、レストラン形式で提供される物に比べ、どうしても色つやや香りに欠けるものであった。また、冷めた状態では、作りたてのうな重等と比較して味の劣るものであった。
そのため、店の多くは、うなぎの蒲焼きを具としたおにぎりを売り上げが見込める土用の丑の日のキャンペーン商品としては取り扱うものの、年間を通して取り扱う商品群の中には含めていなかった。
【0004】
例えば、下記の特許文献1には、うなぎの蒲焼きのたれを均一にまぶしたご飯で形成された握り本体と、焼き上げられたうなぎの蒲焼きの細片もしくはほぐし片からなる芯の具または分散混ぜ具とで構成されたうなぎ蒲焼き握りが開示されている。
また、特許文献2には、米と鰻を含んで構成され加熱し焼かれたおにぎり本体と、おにぎり本体の外面に添装された笹の葉とより構成されたことを特徴とする焼きおにぎりが開示されている。
【特許文献1】登録実用新案第3053960号公報
【特許文献2】特開2005−95060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載された発明は以下のような問題を有していた。
特許文献1に記載の発明は、うなぎのタレを均一にまぶしたご飯の型くずれを防ぐために海苔で握り本体を包皮することを必要とするが、海苔で巻いた場合には焼きおにぎりとするために焼いた際に表面の海苔が焦げてしまう。加えて、海苔が表面に存在することによりおにぎり内部にまで熱が伝わることを妨げられ、温め直して食べる際にも不便である。
特許文献2に記載の焼きおにぎりは、笹の葉で巻かれていることにより、笹の葉の香りがうなぎの蒲焼きの香りに勝り、うなぎの蒲焼きの味と香りを充分に堪能することができない。また、笹の葉を取り除いた場合にはおにぎりの形状が崩れやすいという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような問題点に鑑み、うなぎの蒲焼きを具としたおにぎりであってもうなぎの蒲焼き独特の香りやつやを損なわず、且つ冷めても味を損なわないおにぎり及びその製造方法を提供することを目的とする。併せて、長期間保存しても香りやつや、香ばしさ、味を損なわない保存方法を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうなぎ焼きおにぎりは、うなぎの蒲焼きを具とした焼きおにぎりであって、各米粒の表面に第1のタレが被覆された米粒同士が結合されておにぎりを構成し、且つ、焼きおにぎりの表面の一部に具となるうなぎの蒲焼きを載置したことを特徴とする。
請求項2に記載のうなぎ焼きおにぎりは、請求項1において、前記焼きおにぎりの表面に、具を載置するための窪みが形成されており、その窪みの中に具の表面が見えるように埋設したことを特徴とする。
請求項3に記載のうなぎ焼きおにぎりは、請求項1又は2において、前記焼きおにぎりの表面の少なくとも一部に、第2のタレ層が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載のうなぎ焼きおにぎりの製造方法は、炊きあがったご飯の米粒の表面に第1のタレを均一に被覆してして第1のタレ層を形成する工程と、第1のタレが被覆された複数の米粒を結合しておにぎり形状とするとともにおにぎりの表面の一部に具を埋設する窪みを形成する工程と、おにぎりをあぶりながら該表面に第2のタレを塗り第2のタレ層を形成して焼きおにぎりとする工程と、前記窪みにうなぎの蒲焼きを埋設する工程と、からなることを特徴とする。
請求項5に記載のうなぎ焼きおにぎりの製造方法は、請求項4において、前記第2のタレ層を形成して焼きおにぎりとする工程が、温めたおにぎりの表面に第2のタレを塗る下塗り工程と、第2のタレを塗った部分を焼き付けるおにぎり焼き付け工程と、前記焼き付け部分に重ねて第2のタレを塗る本塗り工程と、本塗り工程の後にさらに軽くあぶって第2のタレを焼き付けるあぶり工程と、からなることを特徴とする。
請求項6に記載のうなぎ焼きおにぎりの製造方法は、請求項4又は5において、前記第2のタレは、前記第1のタレよりも砂糖の濃度を濃くしたものであることを特徴とする。
【0009】
請求項7の記載のうなぎ焼きおにぎりの保存方法は、請求項1乃至3に記載のうなぎ焼きおにぎりをガスバリア性を有するラミネートフィルムからなる袋体に収容し、真空包装した後、冷凍保存することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のうなぎ焼きおにぎりは、焼きおにぎりとすることにより、冷めてもうなぎの蒲焼き独特の香ばしさを失わない。また、おにぎり内部の米粒の一粒一粒にまでタレが被覆されているため、冷めても味が落ちないという特有の効果を有する。おにぎり内部の米粒にまで第1のタレを被覆することにより、うな重でご飯にうなぎのタレがしみ込んだ部分のようなおいしさを有し好適である。
さらに、おにぎり内部の米粒にまで第1のタレを被覆することにより、タレが米粒1つ1つを接着する接着剤の代わりになり、おにぎりの型くずれを防ぐことが出来る。
【0011】
また、焼きおにぎりの内部ではなく外表面に具となるうなぎの蒲焼きを載せることにより、食する者がうなぎの蒲焼きを視認でき、具の大きさに満足できると共に、具がうなぎの蒲焼きであるということを一見して把握することができる。
本発明のうなぎ焼きおにぎりは、表面に具を載置するための窪みが形成してあり、その窪みに具となるうなぎの蒲焼きの表面が見えるように少なくとも一部埋設されていることにより、うなぎの蒲焼きが具であることが視認できつつ、具がおにぎり表面から剥がれ落ちることを防ぐという効果を有する。また、具が簡単に剥がれ落ちないため食する際に手で持ちやすいという効果を有する。
【0012】
焼きおにぎりの表面の少なくとも一部には、第2のタレ層が形成してあることにより、見た目にもつややかで香ばしく食欲をそそる。さらに第2のタレ層により焼きおにぎり内部の水分がおにぎり内部に封じ込められるので、おにぎりの乾燥により味と食感を損なうことを防止できる。
【0013】
本発明のうなぎ焼きおにぎりの製造方法によれば、甘辛く香ばしいタレの香りと、ぱりぱりとした焼きおにぎり独特の食感を最適な段階で同時に完成させることができる。
また、本発明においては、各米粒の表面に被覆する第1のタレと、前記米粒を結合して形成したおにぎりの表面に塗布する第2のタレとを使い分けることを特徴とし、
第2のタレが、第1のタレよりも砂糖の濃度を濃くすることが好ましい。第1のタレは第2のタレよりも砂糖の濃度が低く、それに伴って粘度が低いため、米粒の表面に均一に被覆しやすい。一方で第2のタレは第1のタレよりも粘度が高いため、おにぎりの表面に塗布した際に表面に留まって流れ落ちにくいという効果を有する。それ故、おにぎり表面にしっかりと味を付与することができることに加えて、その後におにぎりを焼き網で焼く段階においてもタレが流れ落ちることがなく好ましい。
【0014】
本発明のうなぎ焼きおにぎりの保存方法によれば、長期間保存することができる上に、保存後にうなぎ焼きおにぎりを解凍して食する場合にも、うなぎの蒲焼き独特の味と香りを、保存前と同程度に再現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るうなぎ焼きおにぎり及びその製造方法について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0016】
図1に、本発明に係るうなぎ焼きおにぎりの全体図を示す。本発明にかかるうなぎ焼きおにぎり1は、うなぎの蒲焼きを具10とした焼きおにぎりであって、おにぎり内部の米粒の表面に第1のタレが被覆されており、且つ、焼きおにぎりの表面20に具10となるうなぎの蒲焼きを有してなることを特徴とする。
本発明の焼きおにぎりとは、通常、俵型、丸形、或いは三角形状に握ったおにぎりの表面に醤油や味噌を薄く塗り、表面を軽く焼いて焼き目を付与したものなどをいい、香ばしい香りと表面のぱりぱりとした食感により通常のおにぎりとはまた違ったおいしさを有する。本発明においては、焼きおにぎりの香ばしさとうなぎの蒲焼きの香ばしさとが相俟って、冷めてもうなぎの蒲焼きの独特の味と香りを損なわないおにぎりとすることができるのである。
【0017】
図2は、図1におけるA−A’断面図である。本発明に係る焼きおにぎり1はうなぎの蒲焼きを具10としてある。本発明においては、うなぎの蒲焼きのタレ(第1のタレ)を、おにぎり1の表面20だけでなく内部30の米粒の表面にまで被覆している。従って、おにぎり1の内部30にまでタレの味が付与されているため、食べ進んで具10であるうなぎの蒲焼きを食べ終わり米のみになってしまった後でも最後までおいしく食べ終わることができる。さらに、通常ご飯のようなデンプンは冷めると変質し甘味や食感が損なわれるが、本発明においては、タレをおにぎり内部30の米粒にまで絡めてあるので、不適な味の変質を感じることがない。
【0018】
また、タレを各米粒の表面に被覆することにより、タレが多数の米粒同士を接着する接着剤としても機能する。よって、例えば、本発明にかかる焼きおにぎりを携帯食として持ち歩いた際でも、おにぎり1の形状を保ち型くずれを防ぐことが出来る。
第1のタレは、全ての米粒表面に均一に被覆してあることが好ましいが、上記のような理由から、必ずしも全ての米粒に均一に被覆されていなくても、隣り合う米粒同士が接着しうる程度、あるいは、米粒にタレの味が行き渡る程度に被覆してあれば問題はない。
【0019】
本発明において、具10となるうなぎの蒲焼きは、通常のおにぎりと同様におにぎりの中心部に埋め込んで外部から視認できないようにしたり、細かく刻んでおにぎり全体に分散させるようにしても構わない。しかしながら、うなぎの蒲焼きが具であるという満足感を得るため、また見た目を豪華に見せ食欲をそそるために、うなぎの蒲焼き片をおにぎり
1の表面20に載せて、外部から目視できるようにすることが好ましい。
うなぎの蒲焼きは、焼きおにぎり1からはみ出さない程度の大きさにカットしたものをおにぎり1の表面20に載置して或いは貼り付けても良いし(図1参照)、短冊状にカットしたうなぎの蒲焼きPを俵型のおにぎりQの外周に巻くようにして載置しても良い(図3(a))。また、丸形のおにぎりの両面Q’にうなぎの蒲焼き片P’を貼り付けるようにしても構わない(図3(b))。
【0020】
図2に示すように、本発明の焼きおにぎり1は、おにぎりの表面20に具10を載置するための窪み40が形成してあり、その窪み40に具10となるうなぎの蒲焼きの表面が見えるように少なくとも一部が埋設されていることが好ましい。
これは、単に具20となるうなぎの蒲焼き片を、おにぎり表面20に載置したり、貼り付けたりしただけでは剥がれやすいためである。また、通常おにぎりは箸を使わず直接手に持って食べる食べ方が主流であるが、この際、具10であるうなぎの蒲焼きが簡単に剥がれ落ちたのでは食べにくい。さらに、本発明に係る焼きおにぎり1を、例えば真空パックに密封して保存する際にも、具10であるうなぎ部分が突出しているとおにぎり1を重ねたときに崩れやすく、場所を取りやすい。
そこで、焼きおにぎり1の表面20に窪み40を形成し、そこに具10となるうなぎの蒲焼きを載置してうなぎの蒲焼きを一部埋設することが好ましい。
【0021】
本発明の焼きおにぎり1は、焼きおにぎりの表面20の少なくとも一部に、第2のタレ層50が形成してあることを特徴とする。
本発明に係るうなぎ焼きおにぎり1は、米粒表面に第1のタレを被覆してあるため、おにぎりの外観は全体的にタレの色となっている。さらに、その外表面20の一部に、第2のタレを二度塗り・或いは三度以上塗って、第2のタレ層50を形成させることによりおにぎり1の見た目にもつややかで香ばしく食欲をそそり、さらに第2のタレ層50により焼きおにぎり1の内部の水分が封じ込められるので、おにぎりの乾燥により味と食感を損なうことを防止できる。
また、第2のタレ層50の部分は、内部の米粒と比べて一段と味が濃いため、おにぎりを食する際に味の変化を楽しめ好適である。
【0022】
第2のタレ層50が形成された部分は、第2のタレ層が形成されていない部分と比較して色が濃いため、一見して分かる。第2のタレ層50は、例えば三角形状のおにぎりの場合三角形の表と裏の両面に第2のタレ層50を形成しても良いし、勿論片面だけでも構わない。
【0023】
次に、本発明に係るうなぎ焼きおにぎり1の製造方法について、図4のフローチャートを用いて説明する。
まず、通常の方法により米を炊く。炊飯時の水の量は、2升の米に対し約2.5L程度加えるのが通常であるが、この水の量は季節や湿度、食する者の好みなどによって変更することが可能である。炊飯の少なくとも一時間前に米を水洗いし、ザル等で水を切っておく。その後、炊飯器等に米と水を投入し、常法により炊飯する。
炊飯手段としては、電気釜、ガス釜、土鍋等、通常の器具を用いることが出来るが、ガス釜或いは土鍋で炊くと米の甘味が増すため好ましい。米の種類や産地としては特に限定されるものではなく、コシヒカリ、はえぬき、ひとめぼれ、あきたこまち、ヒノヒカリ、きらら397、キヌヒカリ、ほしのゆめ、ササニシキ、等を単品で、或いはブレンドして使用することができる。米は、味・食感等の観点から、精米直後のものを使用することが好ましい。
炊飯後は常法により10分〜30分間蒸らし、素早くお櫃や桶に移す。
続いて、米が冷めないように素早く第1のタレを混ぜ、しゃもじやへらを用いて、米粒が冷めないように素早く米をかき混ぜる。炊きあがった米が冷めてからタレを混ぜた場合には第1のタレが米粒表面に被覆されにくく、また米粒に味が浸透しにくいため好ましくない。
【0024】
前記第1のタレとしては、醤油、みりん、砂糖を混ぜて一度沸騰させた後に冷ましたものを用いる。醤油、みりん及び砂糖のそれぞれの割合は特に限定されず、食する者の好みにもよるが、最終的な焼きおにぎりの色つやや、おにぎりの味の観点から以下の割合とすることが好ましい。
すなわち具体的には、重量比において、醤油:みりん:砂糖=1:1〜1.8:0.25〜0.5となるようにすることが好ましい。なお、本発明において、醤油は比重1.1〜1.2程度、みりんは比重1.1〜1.7程度のものを使用する。
【0025】
本発明において第1のタレは、後述する第2のタレよりも濃度が薄いことが好ましく、特に少なくとも砂糖の濃度において、第2のタレよりも濃度が薄いことを特徴とする。
すなわち、第1のタレはおにぎり成形前に、米全体に絡めるように混ぜ込むものである。従って、第1のタレの濃度としては、米全体に行き渡る程度であり、且つ米粒同士の接着能力を保てる程度の粘度を有していることが好ましい。第1のタレの粘度は砂糖の量により調節することが可能であるため、第1のタレは第2のタレと比較して砂糖の量を少なくし、タレの粘度を低くすることが好ましい。
【0026】
第1のタレの混合量としては、米全体に行き渡り、且つ米全体にタレの色を付与することができる量、加えて、米粒同士を互いに接着することができる量が必要である。具体的には、炊飯した米2升に混合する量としては、上記第1のタレを450ml程度とすることが好ましい。
【0027】
第1のタレを米粒表面に被覆したら、扇風機、団扇、扇等を用いて素早く米を冷却する。炊きあがった米を自然に常温にまで冷却する方法では米の艶がなくなるため好ましくない。
米が冷却した後に、前記第1のタレを被覆した米粒を結合しおにぎりの形に成形する。おにぎりの形状は俵型或いは三角形状が多いが、これらに限定されることはなく、ハート形、星形、三角錐状、球状といった形状としても構わない。
また、成形方法としては、手で成形するほかにも、プラスチックやシリコンの型に米を詰めて成型する方法や、公知の機械を用いて成形しても良い。
おにぎり1つの重量は、食べやすい大きさの観点からは80〜200g程度が好ましく、特に100g前後とすることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0028】
おにぎりの形状を成形するとともに、おにぎりの表面20に、具を載置するための窪み40を形成することが好ましい。この窪みは、具10となるうなぎの蒲焼き片の表面を一部見せつつ埋設し得る程度の窪みであれば良い。窪み40の具体的な深さとしては5mm〜1cm程度であるが、具10となるうなぎの蒲焼き片の厚みによって調節することができる。窪み40の形状としては円形、楕円形、長方形、正方形等、通常の形でよいが、具10となるうなぎの蒲焼き片の形状に合わせて、具10とおにぎりの間に出来るだけ隙間がなく、具10が米に嵌るような窪みの形状とすることが好ましい。
この窪み40は、おにぎりの成形をする際に同時に完成させることが好ましいが、手で成形する場合等は、例えば三角形のおにぎりを成形した後に、表面を指で押し窪み40を成形する方法であっても構わない。
【0029】
次に、おにぎりの表面20に第2のタレを塗り、第2のタレ層50を形成させる。第2のタレ層50の形成方法としては、以下の工程を経ることが好ましい。
まずおにぎりを焼き網にのせて、遠火でおにぎり表面20をあたため、刷毛やへら等を用いて当該温めたおにぎりの表面20に第2のタレを塗る(下塗り工程)。
その後、塗ったタレの部分を直火で米と共に焼き付け、米の焼けるパチパチとした音が聞こえてきたら、(おにぎり焼き付け工程)更に重ねてもう一度、第2のタレを塗る(本塗り工程)。
本塗り後にさらに軽くあぶってタレを焼き付ける(あぶり工程)。既に米に焼き目が付いているため、あぶり工程では米を焼き付けるまで長時間あぶる必要はなく、タレの香りが強くなるまで比較的短時間あぶれば良い。
タレの香りが強くなった時点で第2のタレ層50が完全に形成される。場合によっては、前記本塗り工程及びあぶり工程の作業を何度か繰り返し、第2のタレ層50の厚みをさらに厚くしても良い。
【0030】
このように、第2のタレ層50の形成する工程と、おにぎりを焼いて焼きおにぎりとする工程とを同時に進行させるのは、甘辛いタレの香りと、香ばしいおにぎりの焼き目を同時に形成することができ、かつそれぞれが相乗効果を有するためである。
すなわち、(1)おにぎり表面に焼き目を付けて焼きおにぎりとしてからタレを複数回塗りタレ層50を形成させることや、(2)おにぎりにタレを複数回塗りつけて第2のタレ層50を予め形成したのちに直火でおにぎりに焼き目を付けることも、可能ではあるが、(1)の方法では焼きおにぎり独特の米の焼けた香ばしい香りが、タレによって覆われてしまい、さらにおにぎりの焼き目の上にタレがしみ込むのでぱりぱりとした食感も損なわれる。一方(2)の方法では、元来タレは砂糖やみりんを含んでおり焦げやすいところ、タレを塗った後におにぎりに焼き目を付けるために長くあぶっていると、タレが焦げてしまい、糖分が焦げた香りが強くなりすぎ食するのに適さない。そこで本発明のように、第2のタレ層50の形成する工程と、おにぎりを焼いて焼きおにぎりとする工程とを同時に、或いは交互に進行させることにより、甘辛く香ばしいタレの香りと、ぱりぱりとした焼きおにぎり独特の食感を最適な段階で同時に完成させることができるのである。
【0031】
前記「おにぎり焼き付け工程」及び「あぶり工程」において、焼き・あぶりの手段としては、ガス火、炭火、グリラー、オーブン等、特に限定されるものではない。特に、炭火は火力が強く短時間で焼き上げることができること、特に輻射熱により短時間でおにぎりの内部まで加熱できること等の理由から好ましい。その場合には煙でうなぎの蒲焼き及び焼きおにぎりの香りを損なわないように、煙の出ない炭を使用することが好ましく、例えば備長炭、竹炭、白炭等を使用することが好ましい。
また、鉄芯の周囲に炭粉を有してなる焼物専用のグリラー等によっても、好ましく加熱することができる。
【0032】
なお、第2のタレ層50を形成するためには、上述したように、米粒全体に混ぜる第1のタレよりも濃度の濃い第2のタレを使用することが好ましい。第2のタレは、上述の様に少なくとも砂糖の濃度において第1のタレよりも濃度が高く、粘性も増しているため、おにぎりの外表面に塗布したときにも流れ落ちることなく、おにぎり外表面に留まって第2のタレ層50を形成するものである。また、砂糖の分量が多いため、おにぎり外表面に、照り・つやを付与することができる。
第2のタレは、第1のタレと同様、醤油、みりん、砂糖から構成されている。分量としては、砂糖の量が、重量において第1のタレの1.1〜1.3倍であることが、上記目的を達成するためには好ましい。
砂糖の濃度を濃くすることにより、おにぎりの表面部分の第2のタレ層50において甘味を増すことになり、あぶったときの甘辛い香りを立たせやすくするという効果もある。さらには、おにぎり表面と内部の米の味を違えることにより、2種類の米の味を提供し、食する者を飽きさせないという好ましい効果をも有する。
なお、第2のタレの製造方法は第1のタレと同じであり、全ての材料を混合した後に加熱し砂糖を煮溶かして、常温にまで冷却したものを使用する。
【0033】
焼きおにぎりに第2のタレ層50を形成し終わった後、通常の方法により調理したうなぎの蒲焼きを適当な大きさにカットし、焼きおにぎりの窪み40部分に埋め込むように載置し、本発明に係るうなぎ焼きおにぎり1が完成する。
本発明において具10として使用するうなぎ焼きおにぎりは、一度蒸したうなぎにタレを塗り、上述のおにぎりと同じ方法で焼くことが好ましい。特にこの場合、蒸したうなぎは皮が柔らかく煙のにおいが吸着し易いため、焼く工程においては無煙の手段を用いることが好ましい。
なお、窪み40には、うなぎの蒲焼きを載せる前に第2のタレを塗布することが好ましい。第2のタレがうなぎの蒲焼きを貼り付ける接着剤の役割を果たすためである。窪みに第2のタレが塗られていることにより、うなぎ蒲焼きと焼きおにぎりとの密着性が高くなり、且つ具であるうなぎの蒲焼きが崩れることもないので好ましい。
【0034】
次に、本発明に係るうなぎ焼きおにぎり1の保存方法について説明する。
図6に示すように、本発明のうなぎ焼きおにぎり1はプラスチック製のラミネートフィルムからなる袋体Mに収容して真空包装し、この真空包装体を冷凍して保存することが好ましい。本発明に係るうなぎ焼きおにぎり1の香ばしい香り及び食感は、真空包装として冷凍保存することにより比較的長く保つことができる。また、食する際に自然解凍してオーブンなどで温めることにより、作りたての香りと食感を再現することが出来る。
また、本発明に係るうなぎ焼きおにぎり1は、おにぎりの表面20の窪み40に具10となるうなぎの蒲焼きを載せて一部埋め込んでなるが、それだけでは具10が表面20から剥がれ落ち易く取り扱いに不便である。そこで、保存時に真空包装とすることにより包装体であるラミネートフィルム袋体Mが具10をおにぎり表面20に押し付け密着させる。解凍し食する際には、具10がおにぎり1と一体となっており剥がれ落ちることがないので食べやすい。
さらに例えば三角形状のおにぎりを重ねて冷凍庫に保存するときなどは、具10であるうなぎ部分が突出していないため重ねやすい。
【0035】
以下具体的に本発明に係るうなぎ焼きおにぎり1の保存方法を説明すると、まず完成したうなぎ焼きおにぎり1を包装用の袋体Mに収容する。この袋体Mはガスバリア性を有するラミネートフィルムからなることが好ましい。具体的には、延伸ナイロン樹脂、未延伸ナイロン樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等のガスバリア性フィルムと、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等の透明性・耐衝撃性に優れた樹脂とを積層したラミネートフィルムが挙げられる。上記のようなガスバリア性樹脂に優れた樹脂を使用することにより、内容物であるうなぎ焼きおにぎりの品質劣化や酸化、乾燥を防ぎ、長期間の保存を可能とする。また、後述するように、真空包装後に熱殺菌及び氷水殺菌を行うため、耐熱性・耐冷性に優れる樹脂であることが必要である。
次に真空包装機を用いて袋体Mの内部の空気を引いて真空にし、袋体Mの開口部分を熱溶着してシールする。
【0036】
真空包装したうなぎ焼きおにぎり包装体を熱殺菌し、その後氷水殺菌を行うことが好ましい。熱殺菌及び氷水殺菌は通常の方法で行うことができるが、一例としては、沸騰した湯に包装体を投入して、75℃以上100℃以下の条件で5分以上保持して熱殺菌し、その後に氷水に投入して10分以上保持し氷水殺菌を行う。その後、−15℃以下のフリーザーを使用して包装体を冷凍することが好ましい。
保存可能期間は、包装及び冷凍条件にもよるが、−15℃以下の温度を保持することにより最短でも6か月程度は保存が可能であり、例えばガスバリア性に優れた袋体に二重包装した後に−40℃以下で急速冷凍すれば、2年程度は保存可能である。
【0037】
(実施例1)
以下に、本発明のうなぎ焼きおにぎり及びその製造方法の実施例を説明する。
まず、富山産コシヒカリ1升、山形産はえぬき1升をブレンドして、ガス釜を用いて通常の方法により米を炊いた。なお、米は前日に精米したものを使用した。炊飯時の水の量は、2.5Lとした。
米が炊きあがったら20分間蒸らした後に竹製の櫃に移し替え、第1のタレ450mlを投入し素早くかき混ぜた。第1のタレは、薄口醤油18L、みりん18L、氷砂糖5Kgを混ぜ合わせて加熱し、砂糖を煮溶かした後に常温にまで冷却したものを使用した。
第1のタレが米に均一に絡まるように混ぜ合わせた後に扇風機を使用して素早く米を冷却した。常温にまで冷却した後、米を100gずつ計量しておにぎり型を用いて成形し、一辺約5cmの正三角形となるようにおにぎりを作成した。なお、厚みは約2.5cmとなるようにし、おにぎり成形と同時に片面に約5mm深さの窪みを成形した。
【0038】
次に、おにぎり両面に第2のタレ層を形成すると共に焼き網で焼き付け、焼きおにぎりとした。まず焼き網を強火で充分に温めた後に成形したおにぎりをのせ両面を温めてから刷毛で第2のタレを一度塗った(下塗り工程)。なお、第2のタレは薄口醤油18L、みりん18L、氷砂糖6.25Kgを混ぜ合わせて加熱し、砂糖を煮溶かした後に冷却したものを使用した。
次に焼き網を外して直火とし、米に焼き目が付いて米がはじけるパチパチという音がするまでおにぎりを焼き付けた(おにぎり焼き付け工程)。そして、焼き網に戻しもう一度第2のタレを塗り(本塗り工程)、タレが乾燥する程度にあぶった(あぶり工程)。これを両面行い、両面に第2のタレ層を形成した。その後、さらに窪みに第2のタレを二回塗り、予め調理し適当な大きさにカットしてあったうなぎ蒲焼き片を載せて軽く押さえ、本発明のうなぎ焼きおにぎり1とした。
【0039】
(実施例2)
次に、本発明のうなぎ焼きおにぎりの保存方法について具体的な実施例を説明する。
上記実施例1のようにして完成したうなぎ焼きおにぎりを1つずつポリエチレンラミネートフィルム製の袋体に収容し、真空包装機を使用して開口片を熱溶着しシールした。
次に、包装体を約80℃の湯に投入し5分間加熱し熱殺菌した後に、約0℃の氷水に投入し10分間保持し氷水殺菌を行った。その後、約−20℃のフリーザーで保存した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、冷めてもうなぎの蒲焼き独特の香ばしさが感じられるうなぎ焼きおにぎりを提供することができる。またおにぎり内部の米粒にまで第1のタレを被覆してあるので、冷めても味が落ちることがなく、さらにタレが米粒1つ1つを接着する接着剤の代わりになり、おにぎりの型くずれを防ぐことが出来る。
おにぎりの外表面には具を載せるための窪みが形成してあり、その窪みに具となるうなぎの蒲焼きが一部埋設されていることにより、具が表面から剥がれ落ちにくいため食する際にも好適である。
焼きおにぎりの外表面の少なくとも一部に第2のタレ層が形成してあることにより、見た目にもつややかで香ばしく食欲をそそり、さらに第2のタレ層により焼きおにぎり内部の水分がおにぎり内部に封じ込められるので、おにぎりの乾燥により味と食感を損なうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るうなぎ焼きおにぎりの模式図である。
【図2】図1におけるA−A’断面図である。
【図3】(a),(b)は本発明のうなぎ焼きおにぎりの他の実施例を示す模式図である。
【図4】本発明のうなぎ焼きおにぎりの製造方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明のうなぎ焼きおにぎりの製造方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明のうなぎ焼きおにぎりの保存方法を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 うなぎ焼きおにぎり
10 具
20 表面
30 内部
40 窪み
50 第2のタレ層
P,P’ うなぎ蒲焼き
Q,Q’ 焼きおにぎり
M 袋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
うなぎの蒲焼きを具とした焼きおにぎりであって、各米粒の表面に第1のタレが被覆された米粒同士が結合されておにぎりを構成し、且つ、焼きおにぎりの表面の一部に具となるうなぎの蒲焼きを載置したうなぎ焼きおにぎり。
【請求項2】
前記焼きおにぎりの表面に、具を載置するための窪みが形成されており、その窪みの中に具の表面が見えるように埋設したことを特徴とする請求項1に記載のうなぎ焼きおにぎり。
【請求項3】
前記焼きおにぎりの表面の少なくとも一部に、第2のタレ層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のうなぎ焼きおにぎり。
【請求項4】
炊きあがったご飯の米粒の表面に第1のタレを均一に被覆して第1のタレ層を形成する工程と、
第1のタレが被覆された複数の米粒を結合しておにぎり形状とするとともにおにぎりの表面の一部に具を埋設する窪みを形成する工程と、
おにぎりをあぶりながら該表面に第2のタレを塗り第2のタレ層を形成して焼きおにぎりとする工程と、
前記窪みにうなぎの蒲焼きを埋設する工程と、からなるうなぎ焼きおにぎりの製造方法。
【請求項5】
前記第2のタレ層を形成して焼きおにぎりとする工程が、
温めたおにぎりの表面に第2のタレを塗る下塗り工程と、
第2のタレを塗った部分を焼き付けるおにぎり焼き付け工程と、
前記焼き付け部分に重ねて第2のタレを塗る本塗り工程と、
本塗り工程の後にさらに軽くあぶって第2のタレを焼き付けるあぶり工程と、
からなることを特徴とする請求項4に記載のうなぎ焼きおにぎりの製造方法。
【請求項6】
前記第2のタレは、前記第1のタレよりも砂糖の濃度を濃くしたものであることを特徴とする、請求項4又は5に記載のうなぎ焼きおにぎりの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至3に記載のうなぎ焼きおにぎりをガスバリア性を有するラミネートフィルムからなる袋体に収容し、真空包装した後、冷凍保存することを特徴とするうなぎ焼きおにぎりの保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−267649(P2007−267649A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95988(P2006−95988)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(506033492)有限会社勝美 (4)
【Fターム(参考)】