説明

おこわの製造方法

【課題】もち米に対し容易に可食のための加熱処理が出来、そのもち米を急速に冷却して菌数コントロールしても、粘りが強くならず、機械で盛り付けやおにぎりの成型が出来るおこわの製造方法を提供する。
【解決手段】洗浄後のもち米を水の存在下で加熱処理して可食状態にする工程で、もち米に対して0.10重量%ないし10.0重量%の多糖類を添加することで、可食状態のもち米の表層部に若干の水分を残し、すなわち、多糖類が水を抱き込むことによって生じている保水膜がもち米の表層部を覆うから、表層部の粘りが強くならず、冷却後に機械によりもち米の盛り付けやおにぎり成型が出来、上記課題を達成することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、もち米を主材料とした五目おこわ、山菜おこわ、赤飯などを可食状態に加熱処理したあと、冷却し、盛りつけやおにぎりを機械にて連続的・効率的且つ安全に作ることが出来るおこわの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の食を取り巻く環境では、コンビニエンスストアや食品スーパーが生活面で不可欠な存在であり、特に、これらの店舗で扱っているお弁当やおにぎりなどの米飯類は、単身者や調理時間の取れない人々にとり非常に重宝である。これらの米飯類は、店舗内で調理される場合と、工場で一括製造され各店舗に配送される場合とがある。工場で一括製造される米飯類は、各店舗に配送する時間が必要となり、その分、消費期限を長めに取ることが必要となり、製造工程での菌数コントロールを含めた衛生管理が重要になる。このため、可食状態に加熱処理後の米飯類は、真空冷却装置により急速に30℃以下に冷却されて、機械により弁当箱へ盛り付けられたり、おにぎりに成型されたりしたあと包装され、製品として各店舗に配送される。
【0003】
ところが、炊飯後の米飯類を真空冷却装置により急速に30℃以下に冷却して、機械で弁当箱に盛り付けたり、おにぎりに成型出来るのは、うるち米に限られる。可食出来るように加熱処理されたもち米は、必要量の水が吸収されたあとも、さらに、加熱されることでもち米澱粉のアルファー化度が100%近くなって、可食出来るようになるため、もち米の表層部が低水分の状態で加熱されることになるから、粘りが強くなるのである。したがって、可食できる状態のもち米を真空冷却装置により急速に30℃以下に冷却されると、うるち米と比較して粘りが非常に強くなって、おにぎりを機械にて成型しようとしても、詰まって機械化できないことになる。このため、通常、温かい状態のもち米(冷却後の粘りに比べればかなり低い)を機械によりおにぎりに成型したあと、真空冷却装置により冷却したあと包装している。しかしながら、真空冷却装置により急速に冷却出来ないから、菌数コントロールが難しく規格逸脱の原因ともなる。
【0004】
また、お弁当など成型を必要としない製品でも、急速冷却後は、機械にて可食状態のもち米を盛り付けることが出来ないから、手作業となる。しかしながら、もち米の粘りが強く作業性が悪く、手作業でも外観良く盛り付けをすることが出来ない。
【0005】
このような状況から、可食出来るように加熱処理されたもち米を、真空冷却により急速に30℃以下に冷却しても、うるち米と比較してさほど粘りが強くならず、機械により、盛り付けやおにぎりを成型出来るおこわの製造方法が知られている。
【0006】
すなわち、このおこわの製造方法は、洗米したのちに所要時間浸漬された水分含有のもち米を、蒸気噴射ノズルを有する蒸気発生機および蒸籠を含む蒸手段を介して蒸し、最終的にタレで調味されたおこわの製造方法であり、この水分含有のもち米を7分〜12分の短時間で、且つ1度に短時間で蒸して完全蒸米とし、しかるのちに、完全蒸米を蒸籠から取り出して混合容器に入れ替え、その後の味付け工程では、少なくとも混合容器にタレを入れ、且つ攪拌手段を介して攪拌することによって、急速冷却しても、機械により、盛り付けやおにぎりを成型出来るとしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 特開2009−55869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のおこわの製造方法は、完全蒸米とした後、タレを攪拌しながら完全蒸米の表層部に均一に加えることで、表層部の水分を一時的に増やし同時に表層部の温度を下げるから、表層部の粘りが弱くなり、結果的に、急速冷却しても、機械により盛り付けやおにぎりを成型出来る状態になっているものと、推察出来る。しかしながら、完全蒸米を混合容器に入れ替え、その混合容器にタレを入れ、且つ攪拌手段を介して攪拌することにより、完全蒸米の表層部にタレを均一に加えることが難しい。
【0009】
このため、完全蒸米の表層部にタレが行き渡らない箇所が有るにもかかわらず、急速冷却すると、タレが行き渡っていない箇所の表層部の粘りが強くなり、機械内で詰まることになるため、機械により盛り付けやおにぎりを成型出来なくなる危険性が非常に高いことになる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、もち米を可食出来るように加熱処理することが容易であり、しかも、加熱処理したもち米を、真空冷却装置などによって急速に冷却して菌数コントロールをしても、もち米の粘りが強くならず、機械により容易に盛り付けやおにぎり成型が出来るおこわの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、うるち米およびもち米の早炊き米の製造方法や、製造された早炊き米の利用分野について長年調査研究を重ねてきた。特に、もち米の早炊き米を使用したおこわ類の製造について、菌数コントロールのために、真空冷却装置などによって急速に冷却しても、もち米の粘りが強くならず、機械により容易に盛り付けやおにぎり成型が出来るものを提供してきた。ここに、もち米を水の存在下で直接加熱処理して可食状態にする過程において、調味料を含んだ水溶液にデキストリンなどの多糖類を加えて、もち米と共に加熱すれば、もち米をアルファー化しながら色や味付けが出来、しかも真空冷却装置によって急速に冷却しても、もち米の粘りが強くならず、機械により容易に盛り付けやおにぎり成型が出来ることを見い出し、本発明に到達したのである。
【0012】
すなわち、請求項1の発明は、洗浄後のもち米を水の存在下で加熱処理して可食状態にする工程で、もち米に対して0.10重量%ないし10.0重量%の多糖類を添加することを特徴とするおこわの製造方法である。
【0013】
もち米は、国内産、外国産を問わず、さらにその種類、例えば、滋賀羽二重糯、ヒメノモチ、新羽二重糯、ヒヨクモチ、こがねもちなど、も問わない。また、洗浄についてもその方法を問わない。要はもち米表面に付着しているゴミや吸水を阻害する糠などが除去されていれば良いのである。さらに、水はもち米を可食状態にするのに必要な量が確保されていればよく、水道水でも井戸水でもよい。そして、この水に調味料や具材が含まれていても差し支えない。
【0014】
水の存在下で加熱処理する方法は、特に限定がなく、もち米を水蒸気にて蒸しても、もち米の量に見合う水と共に炊き込んでも良く、要はもち米を可食状態にすればよい。その際、もち米に対して0.10重量%ないし10.0重量%の多糖類を添加するてことが重要である。この多糖類の添加は、水を媒介としてなされる。例えば、多糖類40gを1Lの水に溶かし、その水溶液にもち米1kgを浸漬して、1kgのもち米の表層部に40gの多糖類が付着するようにしたあと、加熱処理してもち米を可食状態にする。
【0015】
そして、この多糖類は、もち米の表層部にこれを覆うように付着して、もち米に水分を吸水しづらくする役割を担うものである。一般的に、もち米は水の存在下で熱を加えれば可食可能となるが、もち米に必要量の水が吸水された状態でも澱粉のアルファー化が不十分である。さらに、熱を加えてアルファー化を100%近くまで促進させる必要がある。この状態のもち米の表層部は低水分となって粘りが強くなり、冷却後に盛り付けやおにぎり成型が困難となる。しかしながら、上記のように、もち米の表層部に多糖類が覆うような状態で付着していると、水分が吸水されづらくなり、もち米に必要量の水が吸水されたあと、可食出来るように熱を加えても、もち米の表層部には若干の水分が残り、すなわち、多糖類が水を抱き込むことによって生じている保水膜がもち米の表層部を覆うことになるため、表層部の粘りが強くならず、冷却後に機械によってもち米の盛り付けやおにぎり成型が出来るようになる。
【0016】
もち米の表層部を覆う多糖類は、もち米に対して0.10重量%に満たない場合、水分が不足して表層部の粘りが強くなって、冷却後に盛り付けやおにぎり成型が難しくなり、逆に、10.0重量%を越えた場合、製造したおこわの味に影響を及ぼすことになる。したがって、より好ましい多糖類の添加量は、もち米に対して2.0重量%ないし8.0重量%である。さらに、より好ましい多糖類の添加量は、4.0重量%ないし6.0重量%である。そして、上記の多糖類を例示すれば、デキストリン、澱粉、キサンタンガム、ジェランガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、カラギーナン、ペクチン、アラビアガム、タラガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、寒天、マンナン、セルロース、グリコーゲン、グルカン、フルクトースなどである。なお、多糖類は、上記例示物に限定されず、もち米の表層部にこれを覆うように付着して保水膜を形成し、且つ製造したおこわの味に特に影響を及ぼさないものであれば、特に限定がない。
【0017】
請求項2の発明は、前記洗浄後のもち米が、早炊き米若しくはアルファー化米であるおこわの製造方法が提供される。
【0018】
洗浄後のもち米は、これに代えて早炊き米若しくはアルファー化米でも良い。この早炊き米は、例えば、洗浄したもち米を常温の水に20〜120分間浸漬してから水切りし、0.25〜1.5kg/cm2の蒸気でもち米を蒸しもち米澱粉をアルファー化したあと袋に入れ、開封状態で690mmHg以上の真空状態を10〜30秒間保持したあと無菌エアーにて大気圧とし、袋を密封して常温にて24〜48時間放置し、アルファー化したもち米澱粉を熟成させ、前記もち米をアルファー化処理米としたものである。この早炊き米に対して0.10重量%ないし10.0重量%の多糖類を不足分の水と共に添加し、その状態下で加熱処理して可食状態にすれば、その後に冷却しても機械にて盛り付けやおにぎり成型が出来るようになる。
【0019】
また、アルファー化米は、上記早炊き米の蒸し工程での蒸し時間を長めにして、もち米澱粉のアルファー化度を100%近くまで高めて可食可能とし、そのあと、乾燥させて10〜20重量%にしたものである。このアルファー化米に対して0.10重量%ないし10.0重量%の多糖類を不足分の水と共に添加し、その状態下で吸水させて、あるいは若干の加熱状態で吸水させて可食状態にすれば、その後に冷却しても機械にて盛り付けやおにぎり成型が出来るようになる。
【0020】
請求項3の発明は、前記工程が、洗浄後のもち米を、そのもち米量に対応する量の多糖類および調味料をそのもち米量に見合う量の水に混ぜてなる水溶液に漬け込んだあと、その状態のまま、もち米を可食状態になるまで加熱処理することであるおこわの製造方法である。
【0021】
前記工程、すなわち、既述のとおりの、洗浄後のもち米を水の存在下で加熱処理して可食状態にする工程は、洗浄後のもち米、例えば1kgを容器に入れ、そのもち米量1kgに対応する量の多糖類、例えば40g、および調味料、例えば20gをそのもち米量1kgに見合う量の水、例えば950mLに混ぜてなる水溶液も上記容器に入れ、その状態のまま、もち米を可食状態になるまで加熱処理、例えば、蒸気庫などに容器ごと入れ、その蒸気庫に蒸気を送り込み100℃程度にして約30分保持する。得られたもち米の表層部は多糖類による前記保水膜により覆われ、その表層部の粘りが強くならず、その後に冷却しても、上記した請求項1の発明と同様に、機械にて盛り付けやおにぎり成型が出来るようになる。なお、もち米量1kgおよび多糖類40g、調味料20gを水950mLに混ぜてなる水溶液を容器に入れ、30分間ないし90分間放置し、すなわち、1kgのもち米に飽和状態になるまで吸水させたあと、蒸気庫などに容器ごと入れ、100℃程度にして約30分保持してもよい。
【0022】
請求項4の発明は、前記工程が、洗浄後のもち米を吸水させたあと、蒸してもち米澱粉の少なくとも一部をアルファー化させ、このもち米を、そのもち米量に対応する量の多糖類および調味料をそのもち米量に見合う量の水に混ぜてなる水溶液に、所定時間漬け、その後、再度蒸してもち米を可食状態になるまで加熱処理することであるおこわの製造方法である。
【0023】
前記工程、すなわち、既述のとおりの、洗浄後のもち米を水の存在下で加熱処理して可食状態にする工程は、洗浄後のもち米、例えば1kgを容器に入れ、さらに水を張って吸水させたあと引き上げ、蒸して、例えば蒸気庫に入れ、蒸気を送り込み100℃程度にして約20分間蒸してもち米澱粉の少なくとも一部、例えば90%をアルファー化させ、このアルファー化させたもち米を、そのもち米量1kgに対応する量の多糖類、例えば40g、および調味料、例えば20gをそのもち米量1kgに見合う量の水、例えば950ccに混ぜてなる水溶液に、所定時間、例えば10秒間漬け、もち米の表面部に蒸気の40gの多糖類を覆わせてから引き上げ、その後、再度蒸してもち米を可食状態になるまで加熱処理、例えば、再度蒸気庫に入れ、その蒸気庫に蒸気を送り込み100℃程度にして約20分保持する。得られたもち米の表層部は、多糖類による保水膜により覆われ、その表層部の粘りが強くならず、その後に冷却しても、上記した請求項1の発明と同様に、機械にて盛り付けやおにぎり成型が出来るようになる。
【0024】
請求項5の発明は、前記工程が、洗浄後のもち米を、そのもち米量に対応する量の調味料をそのもち米量に見合う量の水に混ぜてなる水溶液にて吸水させたあと、蒸してもち米澱粉の少なくとも一部をアルファー化させ、このもち米を、そのもち米量に対応する量の多糖類をそのもち米量に見合う量の水に混ぜてなる水溶液に、所定時間漬け、その後、再度蒸してもち米を可食状態になるまで加熱処理するおこわの製造方法である。
【0025】
前記工程、すなわち、既述のとおりの、洗浄後のもち米を水の存在下で加熱処理して可食状態にする工程は、洗浄後のもち米、例えば1kgを容器に入れ、そのもち米量1kgに対応する量の調味料、例えば20gをそのもち米量1kgに見合う量の水、例えば950ccに混ぜてなる水溶液も上記容器に入れ、吸水させたあと引き上げ、蒸して、例えば蒸気庫に入れ、蒸気を送り込み100℃程度にして約20分間蒸してもち米澱粉の少なくとも一部、例えば90%をアルファー化させ、このアルファー化させたもち米を、そのもち米量1kgに対応する量の多糖類、例えば40gをそのもち米量1kgに見合う量の水、例えば950mLに混ぜてなる水溶液に、所定時間、例えば10秒間漬け、もち米の表面部に40gの多糖類を覆わせてから引き上げ、その後、再度蒸してもち米を可食状態になるまで加熱処理、例えば、再度蒸気庫に入れ、その蒸気庫に蒸気を送り込み100℃程度にして約20分保持する。得られたもち米の表層部は、多糖類による保水膜により覆われ、その表層部の粘りが強くならず、その後に冷却しても、上記した請求項1の発明と同様に、機械にて盛り付けやおにぎり成型が出来るようになる。
【0026】
請求項6の発明は、前記工程が、洗浄後のもち米を水に30分間ないし120分間漬け込んだあと水切りし、そのもち米を、そのもち米量に対応する量の多糖類および調味料をそのもち米量に見合う量の水に混ぜてなる水溶液で炊飯して、もち米を可食状態するおこわの製造方法である。
【0027】
前記工程、すなわち、既述のとおりの、洗浄後のもち米を水の存在下で加熱処理して可食状態にする工程は、洗浄後のもち米、例えば1kgを容器に入れさらに水を張り、30分間ないし120分間、例えば60分間漬け込んで1kgのもち米に飽和状態になるまで吸水させたあと、引き上げ水切りし、そのもち米1kgを炊飯器に入れ、そのもち米1kgに対応する量の多糖類、例えば40gおよび調味料、例えば20gをその吸水後のもち米量に見合う量の水、例えば500mLに混ぜてなる水溶液も炊飯器に入れて炊飯し、もち米を可食状態する。炊飯後のもち米の表層部は、多糖類による保水膜により覆われ、その表層部の粘りが強くならず、その後に冷却しても、上記した請求項1の発明と同様に、機械にて盛り付けやおにぎり成型が出来るようになる。
【0028】
請求項7の発明は、前記工程が、洗浄後のもち米を、そのもち米量に対応する量の多糖類および調味料をそのもち米量に見合う量の水に混ぜてなる水溶液に漬け込んだあと、そのまま炊飯してもち米を可食状態にする請求項1記載のおこわの製造方法である。
【0029】
前記工程、すなわち、既述のとおりの、洗浄後のもち米を水の存在下で加熱処理して可食状態にする工程は、洗浄後のもち米、例えば1kgを炊飯器に入れ、さらに、そのもち米1kgに対応する量の多糖類、例えば40g、および調味料、例えば20gをその吸水後のもち米量に見合う量の水、例えば950mLに混ぜてなる水溶液も炊飯器に入れて、そのままの状態で炊飯しもち米を可食状態する。炊飯後のもち米の表層部は、多糖類による保水膜により覆われ、その表層部の粘りが強くならず、その後に冷却しても、上記した請求項1の発明と同様に、機械にて盛り付けやおにぎり成型が出来るようになる。なお、もち米量1kgおよび多糖類40g、調味料20gを水950mLに混ぜてなる水溶液を炊飯器に入れ、30分間ないし90分間放置し、すなわち、1kgのもち米に飽和状態になるまで吸水させたあと、炊飯してもよい。
【発明の効果】
【0030】
請求項1の発明によれば、洗浄後のもち米を、その量に対して0.10重量%ないし10.0重量%の多糖類を添加して、水の存在下でもち米の表面部を覆い、その状態で加熱処理して、もち米を可食状態にするから、もち米を可食出来るように加熱処理することが容易であり、しかも、加熱処理したもち米を、真空冷却装置などによって急速に冷却して菌数コントロールをしても、もち米の表面部に水分が残りもち米の粘りが強くならず、機械により容易に盛り付けやおにぎり成型が出来る効果がある。
【0031】
請求項2の発明によれば、生のもち米以外に早炊き米やアルファー化米でも、上記した請求項1の発明の効果を得ることが出来る。
【0032】
請求項3の発明によれば、多糖類および調味料を水に混ぜてなる水溶液に漬け込んだあと、そのままの状態で加熱処理しても、上記した請求項1の発明の効果を得ることが出来る。
【0033】
請求項4の発明によれば、一次蒸ししたもち米を、多糖類および調味料を水に混ぜてなる水溶液に漬け、そのあと再度蒸しても、上記した請求項1の発明の効果を得ることが出来る。
【0034】
請求項5の発明によれば、先にもち米に調味料を水と共に吸収させて一次蒸しし、そのあと多糖類を水に混ぜてなる水溶液に漬け、再度蒸しても、上記した請求項1の発明の効果を得ることが出来る。
【0035】
請求項6の発明によれば、先にもち米に吸水させ、そのあと多糖類および調味料を水に混ぜてなる水溶液にて炊飯しても、上記した請求項1の発明の効果を得ることが出来る。
【0036】
請求項7の発明によれば、先に多糖類および調味料を水に混ぜてなる水溶液にもち米を漬け、そのあと炊飯しても、上記した請求項1の発明の効果を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】 本発明のおこわの製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、図1を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
洗浄後のもち米1kgあるいは表面のぬかを削り取った無洗もち米1kgを容器1に入れ、もち米1kgに対して多糖類のデキストリン40gを水1Lに入れて混ぜた水溶液も容器1に入れて、0〜90分間放置しもち米重量1に対して0〜0.35(下限値の0は吸水無しを意味し、上限値の0.35は飽和状態まで吸水させたことを意味する)になるように吸水させる。この状態の容器1を蒸気庫2に入れ、この蒸気庫2に蒸気発生装置3からの蒸気を、自動弁4を開にして導入し、蒸気庫2内を約100℃に保持し30分間ほど加熱を継続したのち、自動弁4を閉じ、蒸気庫2内から容器1を真空冷却庫5内に移して、真空冷却装置6を作動させたあと自動弁7を開き、蒸し上がった容器1内のもち米を15分間ほどかけて28℃まで冷却して、真空冷却庫5内から容器1を取り出す。なお、真空冷却装置6は、真空冷却庫5、気液分離タンク8、真空ポンプ9および気液分離タンク8に溜まった水を排出するポンプ10からなる。
【0039】
なお、上記の水溶液に調味料を添加しても良く、通常はそのようにする。例えば、おこわが、赤飯の場合であれば、調味料として、ささげ豆の煮汁やコチニール色素を適切な濃度に溶かした溶液を上記の水に混ぜ1Lの調味料入り水溶液とする。また、赤飯以外のおこわであれば、醤油、ダシ、食塩、砂糖、油などを上記の水に混ぜ1Lの調味料入り水溶液とする。
【0040】
また、多糖類のデキストリンは、最終的に、もち米の表層部を覆うようにしなければならず、水溶液に漬け込む場合や水溶液をかけ流す場合などにより、水溶液におけるデキストリンの濃度を変える必要がある。いずれの場合でも、もち米1kgに対しデキストリン40gを、もち米1kgの表層部を覆うことが出来るような濃度にしなければならない。
【0041】
そして、前記容器1から取り出されたもち米は、デキストリンが水を抱き込むことによって生じている保水膜がもち米の表層部を覆うから、もち米の表層部の粘りが強くならず、真空冷却装置6で冷却しても、機械によりもち米の盛り付けやおにぎり成型が出来るようになる。
【実施例1】
【0042】
赤飯の場合、ささげ豆を煮る際に出る煮汁100mLを水800mLで希釈して、ささげ豆煮汁希釈液900mLを作り、さらに、この希釈液にデキストリン40gと食用油5mLを混ぜて調味液とする。この調味液および洗浄後のもち米1kgを容器に入れ、60分間放置してもち米に吸水させる。次に、この調味液およびもち米入りの容器を蒸気庫に入れて、蒸気庫に蒸気を入れ庫内温度を約100℃にして20分間加熱を継続する。その後、蒸気庫から容器を取り出し、真空冷却装置にて15分間かけて蒸し上がったもち米を28℃にして、この28℃のもち米をおにぎり成型機(不二精機株式会社製、型式GKM−2400)。にて120g単位のおにぎりを成型した。
対照例1として、ささげ豆煮汁希釈液にデキストリン40gを混ぜないこと以外、実施例1と同様にして120g単位のおにぎりの成型を試みた。
【実施例2】
【0043】
調味液およびもち米1kgを容器に入れ吸水させないで、そのまま、調味液およびもち米入りの容器を蒸気庫に入れて加熱したこと以外、実施例1と同様にして120g単位のおにぎりを成型した。
【実施例3】
【0044】
3Lの水の入った容器に洗浄後のもち米1kgを入れ、90分間漬けて吸水させてから水切りし、セイロに入れ20分間蒸す。蒸し上がったもち米を調味液に10秒間漬けて調味液を吸水させ、再度セイロに入れ20分間蒸した。なお、この時の調味液は、ささげ豆を煮る際に出る煮汁1000mLを水8000mLで希釈して、ささげ豆煮汁希釈液9000mLを作り、さらに、この希釈液にデキストリン400gと食用油50mLを混ぜたものである。セイロから蒸し上がったもち米を取り出し、実施例1と同様にして120g単位のおにぎりを成型した。また、上記の調味液に漬けたあとのもち米重量は、洗浄前のもち米重量の1.9倍になっていた。
対照例2として、ささげ豆煮汁希釈液にデキストリン400gを混ぜないこと以外、実施例3と同様にして120g単位のおにぎりの成型を試みた。
【実施例4】
【0045】
蒸し上がったもち米を調味液に10秒間漬けて調味液を吸水させる代わりに、蒸し上がったもち米に調味液をかけ流して吸水させること以外、実施例3と同様にして120g単位のおにぎりを成型した。
【実施例5】
【0046】
蒸し上がったもち米を調味液に10秒間漬けて調味液を吸水させる代わりに、容器に蒸し上がったもち米と共に700mLの調味液を入れて、約4分間攪拌して吸水させること以外、実施例3と同様にして120g単位のおにぎりを成型した。
【実施例6】
【0047】
ささげ豆を煮る際に出る煮汁100mLを水800mLで希釈して、ささげ豆煮汁希釈液9000mLを作り、これに洗浄後のもち米1kgを入れ、90分間漬けて吸水させてから水切りし、そのもち米をセイロに入れ20分間蒸す。蒸し上がったもち米をデキストリン80gを水1800mLに混ぜさらに食用油10mLも混ぜて得た溶液に10秒間漬けて吸水させてから水切りし、再度セイロに入れ20分間蒸した。セイロから蒸し上がったもち米を取り出し、実施例1と同様にして120g単位のおにぎりを成型した。なお、溶液に漬けたあとのもち米重量は、洗浄前のもち米重量の1.9倍になっていた。
対照例3として、溶液にデキストリン80gを混ぜないこと以外、実施例6と同様にして120g単位のおにぎりの成型を試みた。
【実施例7】
【0048】
蒸し上がったもち米を溶液に10秒間漬けて溶液を吸水させる代わりに、蒸し上がったもち米に溶液をかけ流して吸水させること以外、実施例6と同様にして120g単位のおにぎりを成型した。なお、かけ流した溶液は、デキストリン160gを水3600mLに混ぜさらに食用油20mLも混ぜて得たものである。
【実施例8】
【0049】
また、蒸し上がったもち米を溶液に10秒間漬けて溶液を吸水させる代わりに、蒸し上がったもち米を容器に移し、700mLの溶液も容器に入れて、約4分間攪拌して吸水させること以外、実施例6と同様にして120g単位のおにぎりを成型した。なお、攪拌した溶液は、デキストリン40gを水700mLに混ぜさらに食用油5mLも混ぜて得たものである。
【実施例9】
【0050】
3Lの水の入った容器に洗浄後のもち米1kgを入れ、90分間漬けて吸水させてから水切りし、そのもち米をうるち米用のガス炊飯器に入れ、さらに、調味液700mLも入れて炊飯した。20分間経過したところで、ガスが遮断され炊飯が完了した。そのあと、10分間放置して蒸らし、ガス炊飯器から炊き上がったもち米を取り出し、真空冷却装置にて15分間かけて炊き上がったもち米を28℃にして、この28℃のもち米をおにぎり成型機にて120g単位のおにぎりを成型した。なお、上記の調味液は、ささげ豆を煮る際に出る煮汁100mLを水600mLで希釈して、ささげ豆煮汁希釈液700mLを作り、さらに、この希釈液にデキストリン40gと食用油5mLを混ぜたものである。
対照例4として、ささげ豆煮汁希釈液にデキストリン40gを混ぜないこと以外、実施例9と同様にして120g単位のおにぎりの成型を試みた。
【実施例10】
【0051】
うるち米用のガス炊飯器に洗浄後のもち米1kgを入れ、さらに、調味液も入れて90分間漬けて吸水させた後炊飯した。20分間経過したところで、ガスが遮断され炊飯が完了した。そのあと、10分間放置して蒸らし、ガス炊飯器から炊き上がったもち米を取り出し、実施例9と同様にして120g単位のおにぎりを成型した。なお、上記の調味液は、ささげ豆を煮る際に出る煮汁100mLを水800mLで希釈して、ささげ豆煮汁希釈液900mLを作り、さらに、この希釈液にデキストリン40gと食用油5mLを混ぜたものである。
【実施例11】
【0052】
うるち米用のガス炊飯器に実施例10と同じ調味液を入れ、さらにその調味液に洗浄後のもち米1kgを漬け込んだあと、そのままの状態で炊飯した。約20分間経過したところで、ガスが遮断され炊飯が完了した。そのあと、10分間放置して蒸らし、ガス炊飯器から炊き上がったもち米を取り出し、実施例9と同様にして120g単位のおにぎりを成型した。
【0053】
本発明の実施形態である実施例1ないし実施例11は、いずれも120g単位のおにぎりを連続的且つ効率的に成型することが出来た。しかしながら、デキストリンを添加しない対照例1ないし3は、いずれもおにぎり成型機内に詰まりが生じ、120g単位のおにぎりを連続的且つ効率的に成型することが出来なかった。なお、対照例4は、炊き上げること自体上手く出来ず、おにぎり成型機にかけることすら出来なかった。
【0054】
以上、本発明の実施例1ないし11を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更は適宜可能であることは理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のおこわの製造方法は、容易にもち米を可食出来るように加熱処理したい場合、しかも、加熱処理したもち米を菌数コントロールのために急速に冷却をしても、機械により連続的且つ効率的に盛り付けやおにぎり成型をしたいような場合に、その利用可能性が極めて高くなる。
【符号の説明】
【0056】
1 容器
2 蒸気庫
3 蒸気発生装置
4、7 自動弁
5 真空冷却庫
6 真空冷却装置
8 気液分離タンク
9 真空ポンプ
10 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄後のもち米を水の存在下で加熱処理して可食状態にする工程で、もち米に対して0.10重量%ないし10.0重量%の多糖類を添加することを特徴とするおこわの製造方法。
【請求項2】
前記洗浄後のもち米は、早炊き米若しくはアルファー化米である請求項1記載のおこわの製造方法。
【請求項3】
前記工程は、洗浄後のもち米を、そのもち米量に対応する量の多糖類および調味料をそのもち米量に見合う量の水に混ぜてなる水溶液に漬け込んだあと、その状態のまま、もち米を可食状態になるまで加熱処理することである請求項1または2記載のおこわの製造方法。
【請求項4】
前記工程は、洗浄後のもち米を吸水させたあと、蒸してもち米澱粉の少なくとも一部をアルファー化させ、このもち米を、そのもち米量に対応する量の多糖類および調味料をそのもち米量に見合う量の水に混ぜてなる水溶液に、所定時間漬け、その後、再度蒸してもち米を可食状態になるまで加熱処理することである請求項1または2記載のおこわの製造方法。
【請求項5】
前記工程は、洗浄後のもち米を、そのもち米量に対応する量の調味料をそのもち米量に見合う量の水に混ぜてなる水溶液にて吸水させたあと、蒸してもち米澱粉の少なくとも一部をアルファー化させ、このもち米を、そのもち米量に対応する量の多糖類をそのもち米量に見合う量の水に混ぜてなる水溶液に、所定時間漬け、その後、再度蒸してもち米を可食状態になるまで加熱処理することである請求項1または2記載のおこわの製造方法。
【請求項6】
前記工程は、洗浄後のもち米を水に30分間ないし120分間漬け込んだあと水切りし、そのもち米を、そのもち米量に対応する量の多糖類および調味料をそのもち米量に見合う量の水に混ぜてなる水溶液で炊飯して、もち米を可食状態にすることである請求項1または2記載のおこわの製造方法。
【請求項7】
前記工程は、洗浄後のもち米を、そのもち米量に対応する量の多糖類および調味料をそのもち米量に見合う量の水に混ぜてなる水溶液に漬け込んだあと、そのまま炊飯してもち米を可食状態にすることである請求項1または2記載のおこわの製造方法。

【図1】
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