説明

お茶抽出物の製造方法

本発明は、短い冷水抽出を含む、お茶植物材料から優先的にテアニンを抽出する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テアニンが富化したお茶抽出物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
お茶は一般的に、緑茶または紅茶として調製される。そのようなお茶の調製方法は、当業者に周知である、一般的に紅茶を調製するために、Camellia sinensis植物の新鮮な青葉を干し(穏やかな乾燥に供し)、微細化し、発酵し(茶葉中の酵素が各種の基質を酸化し、茶色の生成物を生ずる)、次いで焙じる(茶葉を乾かすため)。緑茶は発酵工程にはさらされない。部分的な発酵を使用して、「ウーロン茶」として既知の中間タイプのお茶を生じても良い。
【0003】
今日のお茶に基づく飲料は、熱湯中でお茶を煎じること以外の方法によって調製でき、ティーポットから注ぐこと以外の態様で給仕できる。例えばそれらは、自動販売機において熱湯と混合して、または缶やビンで茶を飲む準備のできた状態で使用される濃縮物または粉末を使用して調製できる。消費者はまた、より早い煎じ時間、より濃い色、より芳しい香りのようなお茶からより多くのものを要求している。
【0004】
特に最近の消費者は、現代の健康的なライフスタイルの一部を形成する天然の健康飲料に特に興味を有している。飲料としては、その固有のフラボノイド、カテキン、及びアミノ酸の天然含有物の点で、お茶はこの傾向によくフィットするものである。それ故、これらの天然の存在する健康な成分を濃縮する一方で、合成化合物を添加することなく、お茶の健康的な性質を維持するための方法を提供することが、当該技術分野で要求されている。
【0005】
一つのそのような成分はテアニンである。テアニンは、人体や精神に対する数多くの有益な効果を有することが見出されている。しかしながら現在では、これは合成サンテアニン形態でのみ高量で利用可能である。これは主に、天然に存在するテアニンが、お茶植物材料中で約1%のみの抽出可能なお茶固形分を構成するという事実のためである。
【0006】
GB 559,758は、紅茶葉を冷水で煎じてから熱湯で煎じることを開示している。冷水抽出物と熱湯抽出物を別個に粉末に乾かす。冷水の煎じ出し工程は少なくとも4時間かかる。
【0007】
EP 110 391は、紅茶葉を冷水で煎じてから熱湯で煎じ、インスタント冷水可溶性アイスティー粉末を提供することを開示している。冷水煎じ出し工程はGB 559,758のものより短時間であり、室温で10分間の抽出によって例示されている。二つの抽出物を共に混合し、次いで混合物を濃縮して乾燥させる。
【0008】
EP 267 660もまた、紅茶葉を冷水で煎じてから熱湯で煎じるが、熱湯インスタントお茶粉末を提供することを開示している。
【0009】
O. Kuntze, "Effect of extraction temperature on cream and extractability of black tea" Int. Journal of Food Sci and Tech (2003), 38, 37-45は、50℃程度の温水での抽出が、抽出されない乳状残留物の形成に関与する多数の成分を生ずることを開示している。しかしながら、50℃での抽出は低い収率を与えて大量の葉中のお茶固形分を残すため、残余のお茶固形分が通常のホットドリンクインスタントお茶の目的のために抽出できるように、90℃での第二の煎じ出しが引き続くことを示唆している。
【0010】
WO 2005/042470は、抽出工程、吸着剤との接触工程、次いで濾過工程を含む、お茶からのテアニンの抽出方法を開示している。これは短い冷水抽出を開示しておらず、好ましい初期抽出は熱湯での茶葉の浸水を含む。
【特許文献1】GB 559,758
【特許文献2】EP 110 391
【特許文献3】EP 267 660
【特許文献4】O. Kuntze, "Effect of extraction temperature on cream and extractability of black tea" Int. Journal of Food Sci and Tech (2003), 38, 37-45
【特許文献5】WO 2005/042470
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、発酵茶葉に対して短い冷水抽出を実施することが、茶葉からの高パーセンテージのアミノ酸を抽出する一方で、大多数の残余のお茶固形分はそのままにする非常に有効な方法を提供することを驚くべきことに発見した。これは、従来の熱湯抽出でのお茶固形分の更なる抽出が、アイスティーのための開始材料としてそれ自体有用である更なる抽出物を提供するという更なる利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かくして本発明は、
(i)1から120分間の期間1から50℃の温度の水を使用して、お茶植物材料の冷水抽出を実施し、前記温度及び継続時間は、摂氏単位の温度で分単位の抽出の継続時間の生成物(Cmins)が30から1000であるようなものであり、冷水お茶抽出物を準備する工程;
(ii)前記冷水お茶抽出物を濃縮して濃縮冷水抽出物を提供する工程
を含む、アミノ酸が富化したお茶抽出物の提供方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
お茶開始材料
本発明の開始材料はお茶植物材料であり、Camellia sinensis、Camellia assamica、またはAspalathus linearis由来の材料である。好ましくは開始材料は紅茶であり、葉および/または茎が、「紅茶」製造の早期の段階で放出する特定の内因性酵素によって酸化される「発酵」工程と称されるものに供されている。この酸化は、オキシダーゼ、ラッカーゼ、及びペルオキシダーゼのような外因性酵素の作用によって補われても良い。発酵工程は、本発明で使用される高感度フィルターでの困難を引き起こし得るポリフェノールを重合すると解される。
【0014】
冷水抽出
冷水抽出は、1から120分間の期間1から50℃の温度の水で実施される。好ましくは前記温度及び継続時間は、摂氏単位の温度で分単位の抽出の継続時間の生成物(Cmins)が30から1000、好ましくは100から500であるようなものである。
【0015】
冷水抽出工程は、バッチ様または連続態様で実施されて良い。連続的に稼動する場合、抽出時間は茶葉の平均滞留時間を指す。
【0016】
好ましくは前記水は、3から30℃、好ましくは5から20℃の温度を有する。
【0017】
好ましくは前記抽出は、5から60分、好ましくは10から45分の期間に亘る。
【0018】
前記抽出は、例えば攪拌タンクといったいずれかの適切な接触装置で実施されて良い。
【0019】
好ましくは水:葉の重量比は、5:1から50:1、より好ましくは10:1から30:1である。
【0020】
抽出に引き続き、前記抽出物は好ましくは濾過されて葉が除去される。次いで液体は好ましくは遠心分離され、上手くフィルターを通過したいずれかの粗い物質が除去される。別の好ましい工程は、液体の脱ミネラル処理である。
【0021】
好ましくは冷水抽出はまた、当該技術分野で既知のいずれかの適切な工程によって脱ミネラル処理される。
【0022】
濃縮工程
富化された抽出物は、普通99重量%を超える水を含むため、濃縮することが必要であろう。
【0023】
テアニンの熱不安定性のため、濃縮工程は、20分を超えて80を越える抽出物の温度を含まず、40分を超えて60を超えないことが好ましい。
【0024】
冷水抽出物は更に濃縮されて、液体濃縮物または粉末化冷水抽出物を形成することができる。これは、例えば凍結乾燥によって達成されて良い。最終濃縮物は、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%のお茶固形分を含むことができる。
【0025】
好ましくは冷水抽出物はまた、ポリビニルピロリドンで処理されて、ポリフェノール類を沈降する。
【0026】
任意熱湯抽出
本発明の冷水抽出が実施された際、茶葉は従来のアイスティー製造方法でお茶抽出物を提供する目的のために使用できるものである。それ故、茶葉の廃棄物が存在しない一方で、アミノ酸の良好な抽出物を得ることもできる。
【実施例】
【0027】
実施例1
紅茶葉を、10分間の継続時間5℃の温度で水中に煎じた(Cmins=50)。茶葉を液体から分離し、次いで液体を濃縮して粗い材料を除去し、分析により5.9重量%のテアニンを含む0.58重量%の乾燥固形分を有する水性お茶抽出物を得た。
【0028】
前記液体を逆浸透工程に供し水を除去し、5.9重量%のテアニンを含む約10重量%の乾燥固形分を有する液体を生じた。そのような液体を更に凍結乾燥し、5.9重量%のテアニン粉末を提供できた。
【0029】
実施例2
紅茶葉を、10分間の継続時間15℃の温度で水中に煎じた(Cmins=150)。茶葉を液体から分離し、次いで液体を濃縮して粗い材料を除去し、分析により4.3重量%のテアニンを含む0.80重量%の乾燥固形分を有する水性お茶抽出物を得た。
【0030】
前記液体を72ミリバールの真空下で回転蒸発に供して水を除去し、10.6重量%の乾燥固形分を有する液体を生じた。ポリビニルポリピロリドン(PVPP)を、前記液体中の1gの乾燥固形分当たり0.5gのPVPPの量で、前記液体に添加した。これを30分攪拌し、次いでPVPPを濾過により液体から除去した。これにより、分析により5.0重量%のテアニンを含む9.3重量%の乾燥固形分を有する水性お茶濃縮物を得た。そのような液体を更に凍結乾燥し、5.0重量%のテアニン粉末を提供できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1から120分間の期間1から50℃の温度の水を使用して、お茶植物材料の冷水抽出を実施し、前記温度及び継続時間は、摂氏単位の温度で分単位の抽出の継続時間の生成物(Cmins)が30から1000であるようなものであり、冷水お茶抽出物を準備する工程;
(ii)前記冷水お茶抽出物を濃縮して濃縮冷水抽出物を提供する工程
を含む、アミノ酸が富化したお茶抽出物の提供方法。
【請求項2】
開始材料が発酵お茶植物材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
開始材料がお茶の茎を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水が3から30℃、好ましくは5から20℃の温度である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記冷水抽出物が更に脱ミネラル処理される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記冷水抽出が5から60分間の期間に亘る、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
50から100℃の温度の水を使用して、冷水抽出された茶葉に熱湯抽出を実施し、熱湯お茶抽出物を提供する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
冷水抽出物がポリビニルピロリドンで処理されてポリフェノール類が沈降される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記濃縮工程が、20分を超えて80℃を越える抽出物の温度を含まず、40分を超えて60℃を超えない、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記冷水抽出のCminsが100から500である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−514211(P2008−514211A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533926(P2007−533926)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010377
【国際公開番号】WO2006/037504
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】