説明

がいしクランプ

【課題】架空線をがいしに係留する作業を間接活線工法にて容易に行えるようにし、電線の振動によっても外れることがないがいしクランプを提供する。
【解決手段】がいしクランプ1は、一端部にて互いに軸支された一対の半裁クランプ2を備え、この一対の半裁クランプ2の相対峙する内面に、両半裁クランプを閉じることにより架空線を挟着する半筒状部6とがいしの端部の傘状部を挟着する凹窪部9とを形成する。各半裁クランプの半筒状部6と凹窪部9とを間に半筒状部と略平行をなすヒンジ部11を設けて相互に曲折可能とする。各半裁クランプの半筒状部の外側面に径方向外側へ突出する第1の張出部12を形成し、この第1の張出部に両半裁クランプを閉じた状態で互いに係合する第1の係合手段を設ける。各半裁クランプの凹窪部の外側面に第2の張出部15を形成し、この第2の張出部に両半裁クランプを閉じた状態で互いに係合する第2の係合手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力線や通信線などの架空線を碍子に係留するために用いられるがいしクランプに関するもので、特に、高圧架空電線路相互が交差する箇所において、電線を支持するためのスペーサとして用いられる交差がいしに架空線を係留するために適したがいしクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧架空電線路相互が交差する箇所では、互いの架空線を支持するために図4(a)で示されるような交差がいし7が設けられ、この交差がいし7に架空線を手巻バインドで支持したり、図4(b)で示されるようながいしクランプ1を用いて支持したりするようにしている。
【0003】
図5は、がいしクランプ1を用いて架空線5を交差がいし7に係留させた例であり、このがいしクランプ1は、上端部が軸受部3により回動可能に軸支されて鉛直面内で開閉する一対の半裁クランプ2,2から構成され、各半裁クランプ2には、相対する内面上部に両半裁クランプ2を閉じたときに架空線5を挟着する半筒状部6が形成され、また、相対する内面下部に両半裁クランプ2を閉じたときに交差がいし7の傘状部8を挟着する半円形の凹窪部9が形成され、各半裁クランプ2の外側面に突出部30を対設し、両半裁クランプ2,2を閉じたときにこの対をなす突出部30,30を合致させて、その部分に円筒状のキャップ31を外嵌させることで係留状態を保持するようにしている。
【0004】
このようながいしクランプ1を用いて架空線5を交差がいし7に系留するには、図6に示されるように、がいしクランプ1の対をなす半裁クランプ2,2を開き、一方の半裁クランプ2の半筒状部6に架空線5をあてがうと共に凹窪部9に交差がいし7の傘状部8をあてがい、その状態で他方の半裁クランプ2を回動させて、架空線5を両半裁クランプ2,2の対をなす半筒状部6,6で挟着すると同時に、交差がいし7の傘状部8を両半裁クランプ2,2の対をなす凹窪部9.9によって挟着する。そして、両半裁クランプ2,2を突き合わせた後に、対をなす突出部30,30に円筒状のキャップ31を外嵌して半裁クランプ2,2が開かないようにしている。
そして、このような操作を交差がいし7の上端部と下端部の傘状部8に対してそれぞれ行うことで、架空線5の交差部分を交差がいし7に係留させるようにしている。
尚、32は、交差ガイシ7の傘状部8が回転しないように保持するためのパッキンであり、33は、キャップ31を半裁クランプ2に留めておくバンドである。
【0005】
また、がいしクランプとしては、下記する特許文献1及び2に示されるように、各半裁クランプの外側面に張出部を対設し、この対をなす張出部に両半裁クランプを閉じたときに互いに合致する係合手段を設ける(一方の張出部に係合突起を設け、他方の張出部に前記係合突起と係合する係合孔を設ける)構成も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−27647号公報
【特許文献2】特開2010−176975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したがいしクランプ1を用いて架空線5を交差がいし7に係留する場合には、架空線5をがいしクランプ1の半筒状部6に収容させると共に交差がいし7の傘状部8を凹窪部9に収容させて、これら架空線5と交差がいし7の傘状部8とを両半裁クランプ2,2で同時に挟み込む作業が必要となるため、間接活線作業では非常にやりにくく、特に図4乃至図6で示されるがいしクランプ1を用いる場合には、両半裁クランプ2,2を突き合わせた後に互いに付き合う突出部30にキャップ31を外嵌させる必要があるため、絶縁ヤットコ等を用いた間接活線作業は非常に困難なものであった。
【0008】
この点、特許文献1及び2で示す構成にあっては、張出部に設けられた係合手段により両半裁クランプをワンタッチで係合させることは可能であるが、架空線とがいしの傘状部を同時に挟み込む作業は必要であり、また、張出部に設けられる係合手段には、上側の電線の揺れとがいしを介して伝達される下側の電線の揺れとが同時に作用することになるので、この係合箇所に負荷が集中し過ぎると、係合状態が外れる可能性がある。しかも、がいしの傘状部を係留する凹窪部にパッキンが施されていると、がいしは回転方向に動くことができなくなるため、係合箇所に一層負荷が集中しやすくなるという不都合がある。
このため、両半裁クランプの係合状態が解除され、半裁クランプが開いてがいしが落下し、重大な事故を誘発する可能性があった。
【0009】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、架空線をがいしに係留する作業を間接活線工法にて容易に行えるようにすると共に、電線の振動によっても外れることがない構造を有するがいしクランプを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明に係るがいしクランプは、一端部にて互いに軸支されて鉛直面内で開閉可能となる一対の半裁クランプを備え、各半裁クランプの相対峙する内面に、両半裁クランプを閉じることにより架空線を挟着する半筒状部とがいしの端部の傘状部を挟着する凹窪部とが形成されている構成において、前記各半裁クランプの前記半筒状部と前記凹窪部とを間に前記半筒状部と略平行をなすヒンジ部を設けて相互に曲折可能とし、前記各半裁クランプの前記半筒状部の外側面に径方向外側へ突出する第1の張出部を形成すると共に、この各半裁クランプに設けられた前記第1の張出部に前記両半裁クランプを閉じた状態で互いに係合する第1の係合手段を設け、前記各半裁クランプの前記凹窪部の外側面に第2の張出部を形成すると共に、この各半裁クランプに設けられた第2の張出部に前記両半裁クランプを閉じた状態で互いに係合する第2の係合手段を設けたことを特徴としている。
【0011】
したがって、架空線をがいしの傘状部に係留する場合には、両半裁クランプを開いて、先ず、一方の半裁クランプの半筒状部を架空線にあてがい、その状態で他方の半裁クランプを回動させて両半裁クランプの半筒状部で架空線を挟着する。そして、この状態を保持するために、各半裁クランプの第1の張出部を第1の係合手段により係合させる。
【0012】
その後、ヒンジ部を境に半裁クランプの凹窪部側を曲折して開き、両半裁クランプの凹窪部間に交差がいしの傘状部を挿入し、ヒンジ部を境に両半裁クランプを閉じることで、両半裁クランプの凹窪部でがいしの傘状部を挟み込む。そして、この状態を保持するために、各半裁クランプの第2の張出部を第2の係合手段により係合させる。
【0013】
ここで、前記第2の係合手段は、前記両半裁クランプの各々の前記第2の張出部を前記両半裁クランプを互いに閉じる方向に係合させる第1の係合部と、前記両半裁クランプを閉じた後に一方の前記第2の張出部を他方の前記第2の張出部の背面から係合させる第2の係合部とを有して構成するようにするとよい。
このような構成においては、第1の係合部の形状状態を第2の係合部が解除されない限り解除できなくなるダブルホック構造となっているので、電線の揺れによって係合状態が外れることがなくなる。
【0014】
第1の張出部は、間接活線工具にて把持可能な形状に形成され、前記第1の係合手段は、一方の半裁クランプの第1の張出部に係合突起を形成し、他方の半裁クランプの第1の張出部に前記係合突起と係合可能な係合孔を形成して構成するとよい。このような構成においては、第1の張出部を間接活線工具を用いて把持することで電線への取り付けを行うことが可能になると共に第1の係合手段による係合状態を形成することが可能となる。
【0015】
また、第2の張出部は、間接活線工具で把持可能な形状に形成され、前記第2の係合手段の前記第1の係合部は、一方の半裁クランプの第2の張出部に係合突起を形成し、他方の半裁クランプの第2の張出部に前記係合突起と係合可能な係合孔を形成して構成され、前記第2の係合手段の前記第2の係合部は、前記一方の半裁クランプの第2の張出部に係合孔を形成し、他方の半裁クランプの第2の張出部に前記一方の半裁クランプの第2の張出部を挟み込むように曲折可能な曲折部を設け、この曲折部に前記一方の半裁クランプの背後から前記係合孔に係合可能な係合突起を設けるようにしてもよい。
このような構成においては、第2の張出部を間接活線工具を用いて把持することでがいしの傘状部への取り付けを行うことが可能になると共に第2の係合手段による係合状態を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明に係るがいしクランプによれば、各半裁クランプの半筒状部と凹窪部との間を半筒状部と略平行をなすヒンジ部を介して曲折可能とし、各半裁クランプの半筒状部の外側面に径方向外側へ突出する第1の張出部を形成して、この各半裁クランプの第1の張出部に両半裁クランプを閉じた状態で互いに係合する第1の係合手段を設け、また、各半裁クランプの凹窪部の外側面に第2の張出部を形成して、この各半裁クランプの第2の張出部に両半裁クランプを閉じた状態で互いに係合する第2の係合手段を備えたので、両半裁クランプの半筒状部で架空線を挟着させて第1の係合手段により両半裁クランプの第1の張出部を係合させた後に、ヒンジ部を境に半裁クランプの凹窪部側を曲折して開き、両半裁クランプの凹窪部間に交差がいしの傘状部を挿入し、両半裁クランプの凹窪部でがいしの傘状部を挟み込み、第2の係合手段により、両半裁クランプの第2の張出部を係合させることが可能となる。このため、架空線とがいしの傘状部をがいしクランプによって同時に挟着する必要がなくなり、間接活線工法にて容易に行うことが可能となる。
【0017】
また、架空線が取り付けられる半裁クランプの半筒状部をその外側面に形成された第1の張出部において第1の係合手段により係合し、がいしの傘状部が取り付けられる半裁クランプの凹窪部をその外側面に形成された第2の係合手段により係合しているので、がいしクランプにかかる負荷をそれぞれの係合手段に分散させることが可能となり、また、第1の係合手段と第2の係合手段とがヒンジ部の両側に配置されているので、このヒンジ部によっても振動をある程度吸収することが可能となる。
【0018】
また、第2の係合手段を、両半裁クランプを互いに閉じる方向に変位させることにより係合させる第1の係合部と、両半裁クランプを閉じた後に一方の張出部に設けられた係合片を他方の張出部の背面から係合させる第2の係合部とを具備して構成することにより、第1の係合部の係合状態は、第2の係合部が解除されない限り解除できなくなり、電線の揺れによって係合状態が外れることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明に係るがいしクランプの全体構成を示す側面図である。
【図2】図2は、本発明に係るがいしクランプを示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明に係るがいしクランプの取付工程を架空線の軸方向から見た図であり、(a)は半裁クランプを開いて架空線に取り付ける直前の状態を示す図であり、(b)はがいしクランプを架空線に取り付けて第1の係合手段により係合した後にがいしの傘状部に取り付ける直前の状態を示す図であり、(c)はがいしの傘状部を挟み込むように半裁クランプを閉じた状態を示す図であり、(d)は第2の係合手段により係合した状態を示す図である。
【図4】図4(a)は、交差がいしを示す図であり、上段は交差がいしの平面図(上面図)、中段は交差がいしの側面図、下段は交差がいしの底面図(下面図)、図4(b)は、従来のがいしクランプを示す図であり、上段はがいしクランプの側面図、下段はがいしクランプの低面図である。
【図5】図5は、従来のがいしクランプを用いて架空線を交差がいしに係留した状態を示す図であり、(a)は交差がいしの上下端部にがいしクランプを介して架空線が係留されている状態を示す斜視図であり、(b)は、交差がいしの上端部にがいしクランプを介して架空線が係留されている状態を架空線に対して垂直方向から見た拡大図であり、(c)は、(b)を架空線の軸方向から見た拡大図である。
【図6】図6は、架空線を従来のがいしクランプによって交差がいしの取り付ける取り付け工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のがいしクランプの実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1及び図2において、がいしクランプ1は、硬質のポリエチレンなどの絶縁性の硬質合成樹脂材によって成形された一対の半裁クランプ2,2によって構成されている。この一対の半裁クランプ2,2は、同じ形状に形成されているもので、一端部(図中の上端部)にて軸受部3が形成され、両半裁クランプ2,2は、この軸受部3を一直線上に噛み合わせるように交差させて各軸受部3に支軸4を貫挿させることにより、この支軸4を中心に回動自在となっており、鉛直面内で開閉可能に軸支されている。
【0022】
各半裁クランプ2,2の相対する内面上部には、支軸4と平行に形成されて、両半裁クランプ2.2を閉じることにより架空線5を挟着する半筒状部6が形成され、また、各半裁クランプ2,2の相対する内面下部には、両半裁クランプ2,2を閉じることにより交差がいし7の端部に設けられた傘状部8を挟着する碗状の凹窪部9が形成されている。
各半裁クランプ2,2の半筒状部6と凹窪部9との間、即ち、半筒状部6と凹窪部9とを連結する中継部10には、半筒状部6の軸線と略平行をなすヒンジ部11が、例えば、中継部10の一部を薄肉状に形成したくびれを形成することによって設けられ、このヒンジ部11を中心として凹窪部側(半裁クランプの図中下半部)を半筒状部側(半裁クランプの図中上半部)に対して相対的に外側へ曲折可能(回動可能)としている。
【0023】
半筒状部6は、中継部10よりも軸方向に延設されており、この半筒状部6の延設された部分の外側面には径方向外側へ突出する第1の張出部12,12が形成されている。この例において、第1の張出部12は、半筒状部の両端部において間接活線工具で把持可能な形状に形成されているもので、この例では、半筒状部の開放面に沿って延設された平板状に形成されている。そして、この第1の張出部12には、両半裁クランプ2,2を閉じた状態において互いに係合する第1の係合手段が設けられている。
【0024】
第1の係合手段は、具体的には、両半裁クランプ2,2の一方の第1の張出部12に、該半裁クランプ2の開放面側へ突出する係合突起13を一体に形成し、他方の張出部12に、前記係合突起13が挿入する係合孔14を形成して構成されている。係合突起13の形状は特に限定されるものではないが、係合孔14に挿入された状態で強固な係合状態が形成されることが望ましい。
【0025】
また、各半裁クランプ2,2の凹窪部9の外側面には、開放面に沿って相対する外方へ張り出す第2の張出部15が形成されている。この第2の張出部15は、凹窪部の両端部において間接活線工具で把持可能な形状に形成されているもので、この例では、凹窪部9の開放面に沿って延設された平板状に形成されている。そして、この第2の張出部15には、両半裁クランプ2,2を閉じた状態において互いに係合する第2の係合手段が設けられている。
【0026】
前記第2の係合手段は、両半裁クランプ2,2を互いに閉じる方向に係合させる第1の係合部21と、この第1の係合部21に隣接され、両半裁クランプ2,2を閉じた後に一方の張出部を他方の張出部の背面から係合させる第2の係合部22とを具備して構成されている。
【0027】
より具体的には、第2の張出部15の一方は、半筒状部の軸方向と略平行に延設されており、凹窪部9に近い側に第1の係合代21aが形成され、凹窪部9から遠い側(第2の張出部15の先端側)に第2の係合代22aが形成されている。また、第2の張出部15の他方は、半筒状部の軸方向と略平行に延設されると共に先端部から略垂直に半筒状部側に向けて延設されており、半筒状部の軸方向と略平行に延設された部分の凹窪部に近い側に第1の係合代21bが形成され、先端部から半筒状部側に向けて延設された部分を一方の半裁クランプの第2の張出部15を挟み込むように曲折可能な曲折部22cとし、この曲折部22cの先端部に第2の係合代22bが形成されている。
【0028】
そして、一方の第2の張出部15の第1の係合代15aには、係合突起24が形成され、他方の第2の張出部15の第1の係合代21bには、前記係合突起24と係合する係合孔25がそれぞれ形成されている。また、一方の第2の張出部15の第2の係合代15bには、係合孔26が形成され、他方の第2の張出部15の第2の係合代22bには、前記係合孔26に背後から係合可能な係合突起27がそれぞれ形成されている。また、他方の第2の張出部15の前記係合孔26と対峙する箇所には、係合孔26と整合する係合孔28が必要により形成されている。
【0029】
この一方の第2の張出部15の第1の係合代21aに形成された係合突起24と他方の第2の張出部15の第1の係合代22aに形成された係合孔25とにより第1の係合部21が構成され、また、一方の第2の張出部15の第2の係合代21bに形成された係合孔26及び他方の第2の張出部15に必要により形成される係合孔28と、他方の張出部15の第2の係合代22bに形成された係合突起27とにより第2の係合部22が構成されている。
【0030】
したがって、第2の張出部15は、両半裁クランプ2,2の開放端を突き合わせるように閉じた状態において、絶縁ヤットコでそれぞれの第2の張出部15の第1の係合代21 a を両半裁クランプを閉じる方向に挟み込むことにより、一方の第2の張出部15に形成された係合突起24が、他方の第2の張出部15に形成された係合孔25に嵌合し、また、他方の第2の張出部に形成された曲折部22cを一方の第2の張出部側を挟み込むように折り返し、その状態で絶縁ヤットコで両第2の張出部を挟み込むことで、他方の第2の張出部に形成された係合突起27が、一方の第2の張出部に形成された係合孔26に背後から嵌合するようになっている(他方の第2の張出部15に係合孔28が形成されていれば、この係合孔28にも嵌合するようになっている)。
【0031】
尚、両半裁クランプ2,2の凹窪部9の内面に従来設けられていたパッキンは、この実施例においては割愛し、架空線の振動に伴うがいしの回転方向のずれを許容できるようにしている。
【0032】
以上の構成において、上述したがいしクランプ1を用いて上側の架空線5を交差がいし7に係留する場合について説明すると、先ず、がいしクランプ1の第1の張出部12の1つを絶縁ヤットコで把持して両半裁クランプ2,2を開いた状態にしつつ、架空線5の上方から間に架空線5を挿入するように被せ(図3(a)参照)、架空線5を両半裁クランプ2.2の間に挿入し、対をなす半筒状部6間に収容する。その後、両半裁クランプを閉じて両第1の張出部12を重ね合わせるように絶縁ヤットコで挟み込むように把持することで、両第1の張出部をホック留めする(係合突起13を係合孔14に係合させる)。
【0033】
その後、絶縁ヤットコで第2の張出部15の1つを把持してヒンジ部11を境にして凹窪部9を外側に曲折して対をなす凹窪部間を拡げ、その間に交差がいし7の傘状部8を挿入し、この傘状部8を対をなす凹窪部を閉じて挟み込む。
その後、絶縁ヤットコで両第2の張出部15の第1の係合片を挟み込むように把持して第2の係合手段の第1の係合部21をホック留めし(係合突起24を係合孔25に係合させ)、しかる後に、係合突起27が形成された曲折部22cを曲折して第2の係合代21bを挟み込み、絶縁ヤットコで両第2の張出部15の第2の係合片を挟み込むように把持して係合突起27を係合孔26(及び必要により係合孔28)に背面から挿入することで、第2の係合手段の第2の係合部22をホック留めする。
【0034】
これにより、架空線5を交差がいし7に係留する際に、架空線5と交差がいし7の傘状部8とを両半裁クランプ2,2によって同時に挟み込む作業が不要となり、架空線5にがいしクランプ1を一旦取り付けた後にがいしクランプ1に交差がいし7を取り付けることができるので、間接活線作業を容易に行うことが可能となる。また、両半裁クランプ2,2の保持をホック留め形式としたので、絶縁ヤットコでの操作が可能となり、また、がいしクランプ1を第1の係合手段と第2の係合手段の2箇所留めとしたので、架空線5の揺れによる負荷を第1の係合手段と第2の係合手段に分散させることが可能となる。しかも第2の係合手段を第1及び第2係合部21,22によるダブルホック構造としたので、第2の係合部22の係合状態が解除されない限り第1の係合部21の係合状態が解除されないこととなり、架空線5の揺れに起因してホックが外れることが殆ど無くなり、強固な取り付け状態を保持することが可能となる。
【0035】
また、この例では、クランプ内部の従来取り付けられていたパッキンを取り外し、交差がいし7が軸周りに自由に回転できるようにしたので、架空線5の振動を吸収することが可能となり、係合状態が一層外れにくくなる。
【0036】
尚、上述の構成においては、第2の係合部22を構成する係合突起27を半筒状部側に延設した曲折部22cの先端部に設け、上方から折り返すように曲折部22cを曲げて係合孔26に背後から挿入する構成であったが、曲折部22cを、半筒状部6の軸方向と同方向に延設して、曲折部を側方から挟み込むようにしても、係合突起27を半筒状部側とは反対側に延設した曲折部に設け、この曲折部を下方から折り返すようにしてもよい。また、係合突起と係合孔との位置関係は、逆にしてもよい。
また、各半裁クランプ2,2の半筒状部6と凹窪部9との間に形成されるヒンジ部11は、屈曲しやすいようにくびれを設ける形式を採用したが、耐久性を持たせるために蝶番を別途取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 がいしクランプ
2 半裁クランプ
5 架空線
6 半筒状部
7 交差がいし
8 傘状部
9 凹窪部
11 ヒンジ部
12 第1の張出部
13 係合突起
14 係合孔
15 第2の張出部
24 係合突起
25 係合孔
26 係合孔
27 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部にて互いに軸支されて鉛直面内で開閉可能となる一対の半裁クランプを備え、各半裁クランプの相対峙する内面に、両半裁クランプを閉じることにより架空線を挟着する半筒状部とがいしの端部の傘状部を挟着する凹窪部とが形成されているがいしクランプにおいて、
前記各半裁クランプの前記半筒状部と前記凹窪部とを間に前記半筒状部と略平行をなすヒンジ部を設けて相互に曲折可能とし、
前記各半裁クランプの前記半筒状部の外側面に径方向外側へ突出する第1の張出部を形成すると共に、この各半裁クランプに設けられた前記第1の張出部に前記両半裁クランプを閉じた状態で互いに係合する第1の係合手段を設け、
前記各半裁クランプの前記凹窪部の外側面に第2の張出部を形成すると共に、この各半裁クランプに設けられた第2の張出部に前記両半裁クランプを閉じた状態で互いに係合する第2の係合手段を設けたことを特徴とするがいしクランプ。
【請求項2】
前記第2の係合手段は、前記両半裁クランプの各々の前記第2の張出部を前記両半裁クランプを互いに閉じる方向に係合させる第1の係合部と、前記両半裁クランプを閉じた後に一方の前記第2の張出部を他方の前記第2の張出部の背面から係合させる第2の係合部とを有することを特徴とする請求項1記載のがいしクランプ。
【請求項3】
前記第1の張出部は、間接活線工具にて把持可能な形状に形成され、
前記第1の係合手段は、一方の半裁クランプの第1の張出部に係合突起を形成し、他方の半裁クランプの第1の張出部に前記係合突起と係合可能な係合孔を形成して構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のがいしクランプ。
【請求項4】
前記第2の張出部は、間接活線工具で把持可能な形状に形成され、
前記第2の係合手段の前記第1の係合部は、一方の半裁クランプの第2の張出部に第1の係合突起を形成し、他方の半裁クランプの第2の張出部に前記第1の係合突起と係合可能な第1の係合孔を形成して構成され、
前記第2の係合手段の前記第2の係合部は、前記一方の半裁クランプの第2の張出部に第2の係合孔を形成し、他方の半裁クランプの第2の張出部に前記一方の半裁クランプの第2の張出部を挟み込むように曲折可能な曲折部を設け、この曲折部に前記一方の半裁クランプの背後から前記第2の係合孔に係合可能な第2の係合突起を設けたことを特徴とする請求項2記載のがいしクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−51039(P2013−51039A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186819(P2011−186819)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】