がん治療のためのペプタボディ
本発明は、単離された組み換え融合ペプタボディに関し、該ペプタボディは、特定の腫瘍細胞の成長阻害に有用な上皮成長因子受容体のメンバーに結合する。また、前記単離された組み換え融合ペプタボディをコードする核酸、前記単離された組み換え融合ペプタボディを活性物質として含むキットおよび医薬組成物が開示される。さらに、前記単離された組み換え融合ペプタボディの製造方法、ならびに、がんを治療または予防するための薬剤の調製のための使用が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は多量体分子に関し、該多量体分子は上皮成長因子受容体(epidermal growth factor)に結合する。特に、本発明は上皮成長因子受容体のメンバーに結合する、単離された組み換え融合ペプタボディに関し、この単離された組み換え融合ペプタボディは、前記受容体の発現が病原性の表現タイプと関連する疾患の治療に用いることができる。そのような疾患の例は、前立腺がん、膀胱がん、乳がん、頭頚部がん、および黒色腫である。また、単離された組み換え融合ペプタボディをコードする核酸、ならびに、単離された組み換え融合ペプタボディを活性物質として含むキットおよび医薬組成物が開示される。さらに、前記ペプタボディの製造方法、ならびにがんの治療または予防のための薬剤を調製するため前記ペプタボディの使用が提供される。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
近年の研究は、ヒト悪性腫瘍の病因および発生において、成長因子受容体チロシンキナーゼが担っている重要な役割を明らかにした。これらの生体受容体は、受容体を発現する細胞の膜中に膜貫通ドメインによりつなぎとめられている。細胞外ドメインは成長因子に結合する。細胞外ドメインに成長因子が結合することにより、細胞内のキナーゼドメインにシグナルが伝達される。このシグナル伝達は細胞の増殖および分化を引き起こす。
【0003】
上皮成長因子(EGF)受容体ファミリーのメンバーは、重要な成長因子受容体チロシンキナーゼである。最初に発見されたEGF受容体ファミリーの成長因子受容体は、分子量約165kDaの糖タンパク質だった。この糖タンパク質は、メンデルソン(Mendelsohn)らにより米国特許第4,943,533号中で述べられているが、EGFリセプターとして知られている。EGFまたはトランスフォーミング増殖因子α(transforming growth factor alpha (TGF-alpha))がEGF受容体に結合することにより、細胞の成長が引き起こされる。
【0004】
EGF受容体ファミリーの別の成長因子受容体は、erbB−2と呼ばれ、HER2またはp185としても知られている(コウセンス他,サイエンス,第230巻,1132−1139頁,1985年(Coussens et al., Science, 230 (1985), 1132-1139);ヤマモト他,ネイチャー,第319巻,230−234頁,1986年(Yamamoto et al., Nature 319 (1986), 230-234))。ErbB−2受容体は、c−erbB−2遺伝子によって発現されるが、ヒトneuがん遺伝子によって発現されるタンパク質と一致する。ErbB−2のアミノ酸配列は、EGF受容体のアミノ酸配列と異なるものの、非常に高い相同性を有する。ErbB−2はがん治療の効果的なターゲットと考えられている。ハーセプチンは抗ErbB−2モノクローナル抗体であり、ErbB−2を過剰発現する転移性乳がんの治療に現在使用されており、有効な結果が得られている。
【0005】
EGF受容体ファミリーの別のメンバーは、erbB−3/HER−3(クラウス他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第86巻,9193−0197頁,1989年(Kraus et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989), 9193-9197);プロウマン他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第87巻,4905−4909頁,1990年(Plowman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87 (1990), 4905-4909))、erbB−4/HER−4(プロウマン他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第90巻,1746−1750頁,1993年(Plowman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90 (1993), 1746-1750))である。
【0006】
多くの受容体チロシンキナーゼは、ヒトの腫瘍上で著しく多数存在していることが明らかになっている。例えば、上皮由来の多くの腫瘍は、細胞膜上にEGF受容体を過剰に発現する。上皮成長因子受容体(EGFR)は、成長、増殖などを制御することにより細胞の生存において中心的な役割を果たしている。この受容体の活性化は、リガンドの結合とそれに続く二量体化(二つの受容体の会合)によって引き起こされる。EGFRは通常の細胞の機能の維持および生存において重要であるが、EGFRの発現は腫瘍の成長および生存に明らかに貢献している。ErbBシグナルの制御不全は、遺伝子の増幅およびErbBの変異を含むさまざまな仕組みによって引き起こされ、遺伝子の増幅およびErbBの変異は、受容体の転写、翻訳、またはタンパク質の安定性を増加させる。EGF受容体を発現する腫瘍の例には、膠芽腫のほか、肺がん、乳がん、頭頸部がん、および膀胱がんなどが含まれる。腫瘍細胞の膜上でのEGF受容体の増幅および/または過剰発現は、予後不良と関連がある。
【0007】
細胞外ドメインに特異的なモノクローナル抗体(MAb)、チロシンキナーゼ(TK)ドメインのインヒビター(受容体の活性化のために必要)、およびアンチセンス治療を含むErbBファミリー受容体をターゲットにしたさまざまなアプローチが開発されている。
【0008】
腫瘍抗原に対する抗体(特にモノクローナル抗体)は、潜在的な抗腫瘍治療薬として研究されている。そのような抗体は、多数の機構を介して腫瘍の成長を抑えることができる。例えば、抗体は、抗体依存性細胞障害(ADCC)または補体依存性細胞障害(CDC)を介して、腫瘍の成長を免疫学的に抑えることができる。
【0009】
あるいは、抗体は、成長因子が受容体に結合することに競合し、受容体を発現する腫瘍の成長を抑制する。別のアプローチでは、腫瘍抗原に特異的な抗体に毒素を結合させることが挙げられる。抗体部位が腫瘍に結合し、その腫瘍は毒素部位によって殺される。
【0010】
抗腫瘍剤としての抗体および抗体断片の使用は有望であるが、克服しなければならない欠点がある。例えば、モノクローナル抗体はハイブリドーマ中で産生される。しかしながら、商業ベースの製造におけるハイブリドーマの使用は、バクテリアのような他の発現系の利用に比べて非効率的である。さらに、モノクローナル抗体は通常、ヒト以外の動物中で生成される。そのようなモノクローナル抗体はヒトの抗原(免疫源)となる。この免疫抗原性は、そのようなモノクローナル抗体を用いたヒトの治療効果を制限する。
【0011】
EGFR TKの活性を妨げる薬剤の利用は、EGFR経路を抑制する2番目のアプローチであった。インヒビターはTKドメインに結合するATPと競合し、自己リン酸化の減少を引き起こす。インヒビターの例としては、アストラゼネカ(スウェーデン)のZD1839、ノバルティス(スイス)のPKI−166、およびグラクソスミスクライン(イギリス)のGSK572016が挙げられる。
【0012】
MAbとTKインヒビターとの間には薬理学的および機構的違いがあるものの、前臨床試験はこれらの両方が細胞の増殖を抑制し、標準的な治療との組み合わせで付加的および相乗的な細胞毒性を有することを示唆している。
【0013】
アンチセンス技術は、興味深く有望ながん治療の戦略として注目されているが、臨床での実用に至るためには更なる開発が必要とされる。
【0014】
ほんの数年前、「ペプタボディ」と名づけられた有望な新しいタイプの結合活性(avidity)分子が開発された(テルスキク他,「ペプタボディ:新しいタイプの高結合活性タンパク質」,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第94(5)巻,1663−1668頁,1997年(Terskikh et al., 1997, “Peptabody: a new type of high avidity binding protein” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94(5): 1663-8))。このペプタボディ分子は、2つより多いユニットを含むオリゴマーとして、国際特許公開番号第9818943号(カジャバ(Kajava)他)に開示されており、それぞれのユニットは、オリゴマー化可能なペプチド性ドメインと、アクセプター(リガンド)結合ドメインとを含む。このオリゴマー化ドメインは、抗体でもなく、または定常領域の機能性抗体断片でもない。また、このオリゴマーの利用および合成が記述されている。多量体化ドメインは、ヒト軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド(COMP)からならなり、ヒンジ部位またはスペーサ(ヒトIgAの19アミノ酸残基)と融合している。このペプタボディの結合ドメインは短いペプチドリガンドであり、ヒンジ部位のC末端部位に位置する。この五量体分子は、モノクローナル抗体と比較して、有効な受容体をターゲットとする場合に2つの主要な利点を有する。
【0015】
−協同的な結合により、ターゲットの受容体に対する結合活性を劇的に増加させることができる。
【0016】
−受容体の架橋により、ターゲットの細胞上で強い生体効果を誘発させることができる。
【0017】
ペプタボディ分子のコンセプトは、ターゲット分子を高発現する細胞に強く結合し、その一方で、ターゲット分子をあまり発現しない細胞にはあまり結合しないことである。
【0018】
モノマーのポリペプチド鎖が短いため、オリゴマーは化学的に合成可能である。ペプチドリガンドのN末端部位で最初にコア分子が合成され(例えば、五量体化ドメインおよびリンカー)、次いで、そのサンプルを切断して、異なるペプチド配列がN末端に合成される。これにより、短いペプチドのオリゴマー化によって再生の問題を回避し、比較的複雑なタンパク質(単鎖Fvフラグメントなど)のオリゴマー化において従来経験された発現の困難さを解決することができる。
【0019】
ErbB−2受容体と特異的に反応する五量体ペプタボディ分子を合成する試みが最近報告された(ホイメル他,「ペプチドの選択、ならびにErbB−2受容体と特異的に反応する5量体ペプタボディの合成」,インターナショナル ジャーナル オブ キャンサー,第92巻,748−755頁,1997年(Houimel et al., (1997) “Selection of peptides and synthesis of pentameric Peptabody molecules reacting specifically with ErbB-2 receptor” Int. J.Cancer, 2001; 92: 748-755))。ErbB−2の細胞外ドメインタンパク質(ECD)に結合するヘキサペプチド(6アミノ酸残基)がファージディスプレイライブラリーから選抜され、上述のような五量体ペプタボディ分子をコンストラクトするために使われた。
【0020】
しかしながら、ペプタボディによってアポトーシスが引き起こされるという証拠は発表されていない。観察された増殖抑制はおそらく、部分的なアゴニストとしての効果によるものか、あるいは、抗ErbB−2 Mabに関して述べられている、受容体二量化の抑制効果によるものであろう(ハワース他,「部分的なリガンドアゴニストとしてのErbB−2受容体機能の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体」,ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー,第267巻,15160−15167頁,1992年(Harwerth et al. “Monoclonal antibodies against the extracellular domain of ErbB-2 receptor function as partial ligand agonist” J. Biol. Chem. 1992; 267: 15160-7))。実際のリガンドに比べて、選択されたヘキサペプチドのアフィニティーが比較的弱いことから、より長いペプチド分子を作り出す必要性が示唆される。しかしながら、その複雑さのため、このタイプの組み換え融合ペプタボディの産生はこれまで報告されていない。
【0021】
近年の研究は、上皮成長因子受容体(EGF−R,erbB−1)を過剰発現する腫瘍が予後不良と関連があることを裏付けている(メンデルソン ジェー,「がん治療のために上皮成長因子受容体をターゲットとすること」,第20巻,1S−13S,2002年(Mendelsohn J (2002) “Targeting the epidermal growth factor receptor for cancer therapy” J. Clin. Oncol. 20:1S-13S))。このため、十分な効果が得られ、低いコストで生産が可能であり、ヒトにおける免疫原性がわずかであるかまたは無く、かつ、腫瘍細胞上で高発現する上皮成長因子受容体のメンバー(特にErbB−1)に高親和性にて結合できる、「ペプタボディ」のような改良された抗腫瘍剤が引き続き求められている。
【発明の開示】
【0022】
本発明の目的は、上述の技術の有利な特徴を兼ね備えた新しい抗腫瘍剤を提供することである。
【0023】
[発明の要旨]
上述の内容から明らかなように、本発明の目的および他の目的は、抗腫瘍剤として高い潜在性を有する新しい組み換え融合ポリペプチドの産生によって達成されている。第1の態様によれば、本発明の目的は、特定の腫瘍細胞の成長を抑制するのに有用な上皮成長因子受容体のメンバーに結合する、単離された組み換え融合ペプタボディを提供することである。また、上述の単離された組み換え融合ペプタボディをコードする核酸、上述の組み換え融合ペプタボディを活性物質として含むキットおよび医薬組成物も開示されている。さらに、上述の単離された組み換え融合ペプタボディの製造方法、ならびにがんの治療または予防のための薬剤の調製のために上述の単離された組み換え融合ペプタボディを使用することが提供される。
【0024】
本発明の他の目的および利点は、以下の詳細な記述(リファレンスとそれに伴う図解そしてそれに付随する請求項)を参照することにより、当業者に明らかであるだろう。
【0025】
[発明の詳細な説明]
ここで用いられるように、以下の定義は本発明の理解を容易にするために提供される。
【0026】
国際特許公開番号第9818943号(カジャバ(Kajava)他)中で開示され、その特許全体を参照することによってここに組み込まれているように、「ペプタボディ」とは、異常な細胞シグナルを誘導するための多量体の概念を用いる、高い結合活性を有する分子を指す。多量体ドメインは、ヒト軟骨オリゴマーマトリクスタンパク質(COMP)の一部であり、ヒンジ部位またはスペーサ(好ましくは、ヒトIgA由来の19アミノ酸を含む)と、アクセプター(リガンド)に結合できるドメイン(結合ドメイン)とに融合されている。ペプタボディは、効果的な受容体を標的にするモノクローナル抗体に対して2つの主要な利点を有する;1)協同的に結合することによって、標的受容体の結合活性を劇的に増加できること、ならびに、2)受容体に対して強固に架橋することにより、細胞の成長阻止および/またはアポトーシスを引き起こす強力な生体効果を標的細胞上で引き起こすことができること(図1参照)である。ペプタボディ分子のコンセプトは、標的分子を高発現する細胞に強力な結合することであり、その一方で、標的分子を低発現する細胞は、ペプタボディの結合にとって都合が悪い。「デカボディ」は、10のアームを有し、その結果10の結合ドメインを有する点で異なるが、同じ原理に基づいて構築される。これらの分子が必ずしも明確に述べられていないとしても、本発明の保護の範囲はデカボディ分子にまで及ぶ。
【0027】
「ErbB受容体」のメンバーは、ErbB受容体ファミリーに属する受容体タンパク質チロシンキナーゼであり、EGFR,ErbB3,ErbB4受容体ならびに将来同定されるであろうこのファミリーの他のメンバーを含む。ErbB2受容体はこの定義に含まれず、これにより、本発明に係る単離された組み換え融合ペプタボディの標的ではない。ErbB受容体は一般に、ErbBリガンドと結合可能な細胞外ドメイン;脂溶性の膜貫通ドメイン;保存された細胞内チロシンキナーゼドメイン;およびリン酸化されうるいくつかのチロシン残基を有するカルボキシル末端シグナリングドメインを含む。ErbB受容体は、「本来の配列(native sequence)」であるErbB受容体、またはその「アミノ酸配列変異体」であってもよい。ErbB受容体は、本来の配列を有するヒトErbB受容体であるのが好ましい。
【0028】
「ErbB1」、「上皮成長因子受容体」、および「EGFR」という用語は、ここでは相互交換的に使用され、例えば、カーペンター他,アニュアル レビュー バイオケミストリー,第56巻,881−914頁,1987年(Carpenter et al. Ann. Rev. Biochem. 56:881-914 (1987))に開示されているように、自然発生する分子種またはその変異体(例えば、ハンフレイ他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第87巻,4207−4211頁,1990年(Humphrey et al. PNAS (USA), 87:4207-4211 (1990))における欠失変異体EGFR)を含む。erbB1という用語は、EGFRタンパク質をコードする遺伝子を指す。
【0029】
「ErbB2」および「HER2」という用語は、ここでは相互交換的に使用され、例えば、センバ他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第82巻,6497−6511頁,1985年(Semba et al, PNAS (USA), 82:6497-6501 (1985))、およびヤマモト他,ネイチャー,第319巻,230−234頁,1986年(Yamamoto et al. Nature, 319:230-234 (1986))(遺伝子バンク受入番号X03363)で述べられているヒトHER2タンパク質を指す。「erbB2」という用語は、ErbB2をコードする遺伝子を指し、「neu」はラットのp185をコードする遺伝子を指す。上記に定義されたように、ErbB2受容体は本発明の単離された組み換え融合ペプタボディの標的ではなく、本発明の範囲から除外される。
【0030】
「ErbB3」および「HER3」は、例えば、クラウス他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第86巻,9193−0197頁,1989年(Kraus et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86 (1989))、ならびに米国特許第5,183,884号特許および米国特許第5,480,968号特許に開示されているような受容体ポリペプチドを指す。
【0031】
「ErbB4」および「HER4」という用語は、ここでは、欧州特許第599274号;プロウマン他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第90巻,1746−1750頁,1993年(Plowman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:1746-1750(1993));プロウマン他,ネイチャー,第366巻,473−475頁,1993年(Plowman et al., Nature, 366:473-475(1993))で開示されているような受容体ポリペプチドを指し、例えば、国際公開公報第99/19488号で開示されいるような分子種およびその変異体も含まれる。
【0032】
「ErbBリガンド」は、ErbB受容体に結合する、および/またはErbB受容体を活性化するポリペプチドを意味する。EGFファミリーのリガンドは、性質の異なる受容体のホモダイマーおよびヘテロダイマーに結合しかつ活性化する能力に基づいて、3つのグループに分類される(ロペス−トレジョン他,「EGFファミリーの他のメンバーからモデル化されたヒトベータセルリン構造」,ジャーナル オブ モレキュラー モデル,第8巻,131−144頁,2002年(Lopez-Torrejon et al., 2002 “Human betacellulin structure modelled from other members of EGF family” J. Mol. Model. 8:131-44)。第1のグループは、EGF、アンフィレグリン、およびトランスフォーミング増殖因子α(TGF−α)からなり、EGFRに直接結合する。第2のグループは、複数のヘレグリンによって構成され、ErbB−3またはErbB−4とヘテロダイマーの形態で結合することが必要である。第3のグループは、EGFRまたはErbB−4の一方に結合するため、二重特異性リガンドである。ベータセルリン、ヘアピン結合−上皮成長因子、およびエピレグリンがこのグループに含まれる。
【0033】
ここで特に興味深いErbBリガンドは、上皮成長因子(EGF)(サバージ他,ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー,第247巻,7612−7621頁,1972年(Savage et al., J. Biol. Chem. 247:7612-7621 (1972))、トランスフォーミング増殖因子α(TGF−α)(マークアルト他,サイエンス,第223巻,1079−1082頁,1984年)、シュワノーマ(schwanoma)、ケラチノサイトオートクリン成長因子としても知られているアンフィレグリン(ショヤブ他,サイエンス,第243巻,1074−1076頁,1989年(Shoyab et al. Science, 243:1074-1076(1989));キムラ他,ネイチャー,第348巻:257−260頁,1990年(Kim ura et al. Nature, 348:257-260(1990));クック他,モレキュラー セル バイオロジー,第11巻,2547−2557頁,1991年(Cook et al. Mol. Cell. Biol. 11:2547-2557 (1991)))、
ベータセルリン(シン他,サイエンス,第259巻,1604−1607頁,1993年(Shing et al., Science 259:1604-1607 (1993));ササダ他,バイオケミストリー アンド バイオフィジックス リサーチ コミュニケーション,第190巻,1173頁,1993年(Sasada et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 190:1173 (1993))、ヘアピン−結合上皮成長因子(HB−EGF)(ヒガシヤマ他,サイエンス,第251巻,936−939頁,1991年(Higashiyama et al., Science, 251:936-939 (1991))、エピレグリン(トヨダ他,ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー,第270巻:7495−7500頁,1995年(Toyoda et al., J. Biol. Chem. 270:7495-7500 (1995))およびコムラサキ他,オンコジーン,第15巻,2841−2848頁,1997年(Komurasaki et al. Oncogene, 15:2841-2848 (1997))、ヘレグリン(以下参照)、ニューレグリン−2(NRG−2)(キャラッウェイ他,ネイチャー,第387巻,512−516頁,1997年(Carraway et al., Nature, 387:512-516 (1997))、ニューレグリン−3(NRG−3)(チャン他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第94巻,9562−9567頁,1997年(Zhang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 94:9562-9567 (1997))、ニューレグリン−4(NRG−4)(ハラリ他,オンコジーン,第18巻,2681−2689頁,1999年(Harari et al. Oncogene, 18:2681-89(1999))、クリプト(CR−1)(カナン他,ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー,第272(6)巻:3330−3335頁,1997年(Kannan et al. J. Biol. Chem. 272(6):3330-3335 (1997))のような、本来の配列を有するヒトErbBリガンドである。EGFRに結合するErbBリガンドは、EGF、TGF−α、アンフィレグリン(amphiregulin)、ベータセルリン(betacellulin)、HB−EGF、そしてエピレグリン(epiregulin)を含む。ErbB3に結合するErbBリガンドは、複数のヘレグリン(heregulin)を含んでいる。ErbB4に結合可能なErbBリガンドは、ベータセルリン、エピレグリン、HB−EGF、NRG−2、NRG−3、NRG−4、およびヘレグリンを含む。ウイルス性成長因子VGF、SFGF(shope fibroma growth factor)、MGF(Myxoma Growth Factor)のような生理活性を有するEGF様リガンドはまた、本発明に含まれる。
【0034】
「本来の配列」ポリペプチドとは、自然界から得られるポリペプチド(例えば、ErbB受容体またはErbBリガンド)と同じアミノ酸配列を有する配列をいう。このような本来の配列ペプチドは、自然界から単離されるか、あるいは、組み換えまたは合成的手段によって産生可能である。これにより、本来の配列ポリペプチドは、ヒトのポリペプチド、マウスのポリペプチド、または他の哺乳類種由来のポリペプチドにおいて、自然に生ずるアミノ酸配列を有する。
【0035】
「断片」は、上皮成長因子受容体に結合可能なポリペプチドの各配列の全長の少なくとも50%のアミノ酸を共有する配列を指す。これらの配列は、それらが由来する本来の配列と同じ性質を示す限り使用可能である。これらの配列は、EGFRに結合可能なポリペプチドの本来の配列の全長の少なくとも70%のアミノ酸を共有しているのが好ましく、80%より多く共有しているのがより好ましく、90%より多く共有しているのが特に好ましい。
【0036】
本発明はまた、上皮成長因子受容体に結合可能な上述の配列の変異体を含む。「アミノ酸配列変異体」または「変異体」という用語は、本来の配列ポリペプチドからある程度異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指し、すなわち、「アミノ酸配列変異体」または「変異体」は、保存性アミノ酸の置換により、本来の配列とは異なるアミノ酸配列であり、これにより、1つないしそれ以上のアミノ酸が同じ性質を有する別のアミノ酸で置換されている。通常、アミノ酸配列変異体は、本来のErbBリガンドの少なくとも1つの受容体結合ドメイン(または本来のErbB受容体の少なくとも1つのリガンド結合ドメイン)と少なくとも約70%の相同性を有することができ、そのような受容体結合ドメイン(またはリガンド結合ドメイン)と、約80%以上の相同性を有するのが好ましく、約90%以上の相同性を有するのがより好ましい。アミノ酸配列変異体は、本来のアミノ酸配列内のアミノ酸配列中の所定の部位に、置換、欠失、および/または挿入を有する。ここで、保存性アミノ酸の置換は例えば、以下の5つの群のうちの1つにおける交換として定義される。
【0037】
I. 小さく、非極性または僅かな極性を有する脂肪族残基:Ala, Ser, Thr, Pro, Gly
II. 極性を有し、正に帯電している残基:His, Arg, Lys
III. 極性を有し、負に帯電している残基およびそのアミド:Asp, Asn, Glu, Gln
IV. 大きく、芳香性の残基:Phe, Tyr, Trp
V. 大きく、非極性の脂肪族残基:Met, Leu, Ile, Val, Cys
「相同性」は、必要に応じて、相同性を最大にするために、配列のアライメントを行ないかつギャップを導入した後に、一致したアミノ酸配列変異体中の残基の割合として定義される。アライメントのための方法およびコンピュータプログラムは当該技術分野で良く知られている。そのようなコンピュータプログラムの一つが、ジェネンテック社(Genentech, Inc.)によって製作された「アライン2(Align 2)」であり、米国著作権協会(the United States Copyright Office)の使用者証拠書類に申請されている(ワシントンD.C.20559,1991年12月10日)。
【0038】
ペプタボディの「エンハンサー」配列は、真核細胞または原核細胞の発現システムにおいて、ペプタボディまたはデカボディの産生を有意に増加させるために、単離された組み換え融合ペプタボディまたはデカボディのN末端部位に配置されたペプチド配列である。
【0039】
ここで用いられている「プロモーター」とは、遺伝子の発現を制御する核酸配列を指す。「プロモーター配列」は、細胞内のRNAポリメラーゼと結合でき、かつ、下流(3’方向)のコーディング配列の転写を開始できるDNA制御部位である。プロモーター配列内では、RNAポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)とともに、(ヌクレアーゼS1によるマッピングによって都合よく定義される)転写開始部位が検出されうる。真核生物のプロモーターは、常にではないがしばしば、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含む。原核生物のプロモーターは、10−35配列のコンセンサス配列に加えて、シャイン・ダルガーノ配列を含む。
【0040】
核酸配列が別の核酸配列と機能的な関係に置かれたときに、前記核酸配列は「機能するように結合」される。例えば、プレ配列(presequence)または分泌リーダー(secretory leader)のDNAが、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドのDNAが機能するように該ポリペプチドのDNAに結合されているといえる。プロモーターがコーディング配列の転写に影響を与える場合、プロモーターはコーディング配列が機能するようにコーディング配列と結合されているといえる。あるいは、リボゾーム結合部位が翻訳を容易にするように配置されている場合、リボゾーム結合部位はコーディング配列が機能するようにコーディング配列と結合されているといえる。結合は、便利な制限酵素部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合、合成されたオリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが慣習的な実務に基づいて使用される。
【0041】
本発明において、「単離された」および「精製された」という用語は、本発明の組み換え融合ペプタボディまたはその組み換え融合ペプタボディをコードする核酸が存在する状態を指す。ペプタボディ分子および核酸は、それらの調整がin vitroまたはin vivoで組み換えDNA技術により行われる場合、自然界またはそれらが調製される環境(例えば培養細胞)で見られる、自然に相互作用する(他のポリペプチドまたは核酸などの)物質から遊離または実質的に遊離であろう。
【0042】
「精製されたDNAを真核または原核宿主細胞に導入する」または「形質転換」という用語は、付随する物質を用いてまたは付随する物質を用いずに、細胞外のDNAを宿主細胞に導入する方法に言及する。「形質転換された細胞」という用語は、細胞外DNAが導入され、その細胞外DNAを定着させた細胞を意味する。そのDNAは、核酸が染色体の統合体として複製可能となるか、あるいは、染色体外の成分として複製可能となるように、細胞に導入される。
【0043】
ここで、「宿主細胞」および「組み換え宿主細胞」という用語は相互交換可能に用いられ、本発明の1以上のDNAまたはベクターが導入された真核細胞または原核細胞を示す。そのような用語は、特定の細胞だけでなく、その細胞の子孫または潜在的な子孫も指すと理解される。変異または環境の影響によって、ある種の改変が次の世代で起こるかもしれないため、そのような子孫は実際には親細胞と一致しないかもしれないが、ここで用いられているように、そのような子孫はこの用語の範囲に含まれる。
【0044】
「真核細胞」は、真核生物由来のあらゆる哺乳類または非哺乳類細胞を指す。具体例を制限しないことにより、細胞培養の条件下で維持でき、次いでトランスフェクトされうるあらゆる真核細胞は本発明に含まれる。特に望ましい細胞種は、例えば、幹細胞、胚性肝細胞(ES細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、COS、BHK21、NIH3T3、HeLa、C2C12、癌細胞、および初代分化細胞または未分化細胞である。その他の適当な宿主細胞は、当業者によって知られている。
【0045】
「アポトーシス」または「ネクローシス(壊死)」を引き起こすペプタボディは、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の膨張、細胞の断片化、および/または膜小胞体の形成(アポトーシス小体)の形成によって決定されるように、計画細胞死を引き起こす分子である。その細胞は通常、ErbB受容体を過剰発現する。その細胞は例えば、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、胃がん、子宮内膜腫、唾液腺がん、肺がん、腎臓がん、大腸がん、甲状腺がん、または膀胱がんのような腫瘍細胞であるのが好ましい。in vitroで、その細胞はSK−BR−3、BT474、Calu 3細胞、MDA−MB−453、MDA−MB−361、SKOV3細胞であることができる。アポトーシスに関連する細胞事象を評価するために、さまざまな方法が利用できる。例えば、フォスファチジルセリン(PS)の細胞外露出は、アネックス(annex)の結合によって測定され、DNAの断片化は、DNAラダーリングにより判断され、そして、DNAの断片化に伴う核/クロマチンの凝集は、低二倍体細胞の増加によって判断される。
【0046】
「治療」は、治療処置、ならびに予防的または予防処置の両方を指す。治療が必要な処置には、疾患が予防するための処置とともに、疾患の治療が含まれる。ここで、処置される哺乳類は、その疾患にかかっていると診断されているか、あるいは、その疾患にかかりやすいかまたは影響されやすいだろう。
【0047】
処置の対象となる「哺乳類」は、ヒト、家庭用および農業用の動物、動物園用動物、スポーツ用動物、または愛玩動物を含めた哺乳類(犬、馬、猫、牛、猿など)として分類されるあらゆる動物を指す。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0048】
「治療上有効な量」という用語は、動物の病気または疾患を治療するのに有効な薬剤の量を指す。がんの場合、治療上有効な量の薬剤は、がん細胞の数を減少させたり、腫瘍の大きさを減少させたり、周囲の組織への浸潤を抑制したり(換言すれば、ある程度遅くしたり、好ましくは止める)、腫瘍の転移を抑制したり(換言すれば、ある程度遅くしたり、好ましくは止める)、腫瘍の成長をある程度抑制したり、および/またはがんに関連する1以上の症状をある程度軽減したりする。
【0049】
薬剤は、存在しているがん細胞の成長を抑制したりまたは殺したりすることができる程度に、細胞成長抑制性および/または細胞毒性を有することができる。ここで、「治療上有効な量」という用語は、標的となる細胞塊、がん細胞または腫瘍のグループの成長または進行あるいは細胞分裂活性の臨床的に重要な変化、あるいは他の病理的特徴を妨げるのに十分な量を意味し、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%を有意に減少するのに十分な量を意味する。
【0050】
「がん」および「がんの」という用語は、無秩序な細胞の成長によって一般的に特徴づけられた哺乳類の生理的状態を示す。がんの例は、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫(脂肪肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍、中皮腫、神経鞘腫、髄膜腫、腺腫、黒色腫、白血病、リンパ性悪性腫を含むがこれらに制限されない。そのようながんのより特異的な例は、扁平上皮がん(例えば上皮性扁平上皮がん)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の悪性腫瘍、肺の燐片悪性腫瘍、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がんを含む胃がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頚部がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝腫瘍、乳がん、大腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜腫瘍、子宮腫瘍、唾液腺腫瘍、腎臓がん、腎がん、前立腺がん、陰唇がん、甲状腺がん、肝腫瘍、肛門腫瘍、陰茎がん、精巣がん、食道がん、胆道がんや、頭頸部がんである。
【0051】
「ErbB発現がん」は、細胞表面に存在するErbBタンパク質を有する細胞を含むがんである。
【0052】
ErbB受容体の「過剰活性によって特徴づけられる」がんは、がん細胞のErbB受容体の活性の程度が、同じ組織種の非がん細胞のErbB受容体の活性レベルよりも有意に高いがんである。そのような過剰活性は、ErbB受容体の過剰発現、および/または、がん細胞のErbB受容体を活性化するのに有効なErbBリガンドが通常以上のレベルになることにより引き起こされるだろう。
【0053】
そのような過剰活性化は、がん細胞の悪性度を引き起こしたり、および/または、がん細胞の悪性度によって引き起こされたりするだろう。一実施形態によれば、ErbB受容体の過剰活性化を生ずる原因となる、ErbB受容体の増幅および/またはErbB受容体の過剰発現が起こっているかどうかを決定するために、そのがんは診断評価または進行評価の対象となるだろう。代替的にまたは付加的に、ErbB受容体の過剰活性化に起因するがんに、ErbB受容体の増幅および/またはErbB受容体の過剰発現が起こっているかどうかを決定するために、そのがんは診断評価または進行評価の対象となるだろう。
【0054】
ErbB受容体を「過剰発現している」がんは、同じ組織種の非がん細胞に比べて、その細胞表面上にErbB受容体(ErbB1など)が有意に高いレベルで存在しているがんである。そのような過剰発現は、遺伝子の増幅によって、あるいは転写または翻訳の増加によって引き起こされる。ErbB受容体の過剰発現は、細胞表面上に存在するErbBタンパク質の増加レベルを判断することによって(例えば免疫染色試験IHCによって)、診断評価および進行評価にて決定可能である。
【0055】
「含む(comprise)」という用語は一般に、「含有する(include)」の意味で使用され、すなわち、1つ以上の特徴または成分の存在を認めることをいう。
【0056】
「薬学的に許容できる」という表現は、生理学的に許容でき、ヒトに投与された場合、アレルギーまたは類似する都合が悪い反応(胃腸不良、めまいなど)を一般に引き起こさない分子の存在および組成物を指す。
【0057】
ペプタボディの非ヒト部分(例えばマウス)の「ヒト化された(humanized)」という用語の形態は、特に、ヒト化された軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド、および免疫グロブリンポリペプチドのヒンジ部位の一部であり、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小限の配列を含むキメラ部位を指す。
【0058】
「キメラ(な)」部分はその配列の機能部位を含むことができるアミノ酸配列を指し、当業者に知られている分子生物学的手法によって得ることができる。
【0059】
「キメラタンパク質」は、異なる起源に由来する2つ以上のポリペプチドを含み、すなわち、自然界では同時に発生しないタンパク質を指す。
【0060】
本発明にかかるポリペプチドは、単一のDNA配列によってコードされうる単離された組み換え融合ペプタボディである。単離された組み換え融合ペプタボディは、上皮成長因子受容体のメンバー(ErbB1,ErbB3,ErbB4、好ましくはErbB1)に結合可能である。本発明の単離された組み換え融合ペプタボディは、少なくとも以下の部分を含む。
【0061】
(a)ヒト化またはヒト由来軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位、
(b)ヒンジ部位、および
(c)3次元構造を有するモチーフを少なくとも含む上皮成長因子受容体リガンド
単離された組み換え融合ペプタボディは、上皮成長因子受容体を発現する細胞(好ましくはがん細胞、より好ましくはErbBを発現するがん細胞)において、細胞死(アポトーシスおよび/またはネクローシス)を誘導可能である。ErbB発現がん細胞は、ErbB受容体の過剰な活性化によって特徴付けられる細胞、または、ErbB受容体を「過剰発現する」細胞であるのが好ましい。
【0062】
「三次元構造」または三次構造は、タンパク質全体の三次元構造であり、言い換えれば、タンパク質またはポリペプチドが折り畳まれた立体配座である。タンパク質分子は、複雑な三次元構造に折り畳まれたアミノ酸配列の長い鎖からなる。それはしばしばタンパク質の機能を決定する幾何学的な形である。
【0063】
本発明の上皮成長因子受容体リガンドは長いアミノ酸配列を含み、そのEGFRリガンドは複雑なポリペプチドであるのが好ましく、タンパク質であるのがより好ましい。上皮成長因子受容体リガンドは、全長配列で存在するのが好ましいことは理解されるべきである。表1は、強い親和性および活性を有しつつEGFRに結合するために必要な最小のアミノ酸配列を示し、この最小のアミノ酸配列は、少なくとも10アミノ酸を含み、20アミノ酸を含むのが好ましく、20より多いアミノ酸を含むのがより好ましい。EGFポリペプチドリガンドの場合、EGFRを効果的に活性化するために必要な最小のEGF部位は、タンパク質の折り畳みを引き起こす3つのループ部位に関連する構造モチーフであることが示されている。
【0064】
EGFおよびこの成長因子ファミリーの他の全てのメンバーは、3つのジスルフィド架橋を形成するように位置する、6つの保存されたシステイン残基を有する。2つの保存されたグリシン残基と共同して、この分子は、適当なErbB受容体への結合に必要な三次元骨格を提供する(キャンプベル他,バイオケミストリー bi012016nb00006ファーマコロジー,第40巻,35−40頁,1990年(Campbell et al., 1990. Biochem. Pharmacol. 40, 35-40bi012016nb00006))。システインの間隔に基づいて、これらの分子は、線形のN末端部位、線形のC末端部位、および4番目と5番目のシステインの間の単一のアミノ酸ヒンジ部位(ストーレスター他,バイオケミストリー,第41(13)巻,4292−4301頁,2002年(Stortelers et al., 2002. Biochemistry, 41 (13), 4292-4301))に加えて、3つのループ部位(Aループ(Cys6−Cys20),Bループ(Cys14−Cys31),およびCループ(Cys33−Cys42)とする。)に分類することができる。高親和力の結合は、EGF受容体結合ドメイン中の特定の残基とともに、リガンドの適切な三次元構造を必要とする。
【0065】
単離された組み換え融合ペプタボディは、細胞(好ましくは真核細胞、より好ましくは脊椎動物の細胞、最も好ましくは哺乳類の細胞(例えばヒト細胞))の表面のEGFR分子を認識する。その結合は、細胞表面上の所定の構造に特異的である。結合はまた、高親和力により引き起こされ、5−10nMの結合定数であるのが好ましく、9nMの結合定数であるのがより好ましい。
【0066】
本発明の単離された組み換え融合ペプタボディは、完全にヒト由来であるか、またはヒト化されているのが好ましい。特に、軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチドおよびヒンジ部位は完全にヒト由来であるか、あるいはヒト化されているのが好ましい。オリゴマー化が可能であるペプチド部位(COMP、換言すれば、ヒト化またはヒト軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位の一部)および上皮成長因子受容体のメンバーに結合できるドメインがスペーサを介して結合されることにより、例えば、結合ドメインにより大きな柔軟性をもたらす。例えば、スペーサのプロリン−リッチな配列は、二次構造要素の形成を妨げる結果、固定された3−D構造の結果を妨げると思われる。さらに、一般に非常に硬いと仮定されているスペーサ部位は、プロリン残基の配座の束縛に基因して、マルチバレントな結合の協同性に有益な効果をもたらす。したがって、本発明の好ましい一実施形態によれば、オリゴマー化可能である、ヒト化またはヒト軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位と、上皮成長因子受容体のメンバーに結合可能である、上皮成長因子受容体リガンドとは、免疫グロブリンポリペプチドのヒンジ部位(スペーサ)を介して結合され、このヒンジ部位は、プロリン−リッチな部位を含むのが好ましい。このヒンジ部位は、免疫グロブリンポリペプチドの一部であるのがより好ましい。
【0067】
ヒト化またはヒト軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド(COMP)部位は、オリゴマー化および自己会合化が可能なペプチド性ドメインであることにより、自発的に五量体化することができる。本発明のオリゴマーの好ましい一実施形態は、in vivoおよび/またはin vitroでオリゴマー化が可能な自己会合分子を示す。
【0068】
好ましい実施形態では、単離された組み換え融合ペプタボディは多量体であり、換言すれば、二量体または三量体のペプタボディ分子である。
【0069】
本発明の単離された組み換え融合ペプタボディの構築は、従来の当該分野の技術と以下の点で異なる:ヒンジ部位の一部(好ましくは、免疫グロブリンペプチドの一領域)は、ヒト化軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位のC末端に位置し、上皮成長因子受容体リガンドはヒンジ部位のC末端に位置し、エンハンサー配列はヒト化軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位のN末端に位置する。この違いは、改善された効力およびより良好な産生効率へと導く。
【0070】
さらに、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディは、エンハンサー配列を含むことが好ましい。このエンハンサー配列は、YSFE,YSFED,YSFEDL,YSFEDLY,YSFEDLYR,およびYSFEDLYRR、そのフラグメント、そのキメラ分子、およびその変異体を含む群から選ばれる。N末端にエンハンサー配列が存在すること、そして、好ましくは上述の選ばれたエンハンサーが20−100倍高い産生効率を導くことが示されている(図25および図26参照)。しかしながら、当業者は、本発明の範囲から外れない別の適当なエンハンサー配列を選ぶことができる。
【0071】
上皮成長因子受容体リガンドは、以下の(a)〜(j)を含む群から選択される。
【0072】
(a)上皮成長因子ポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(b)成長阻害ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(c)トランスフォーミング増殖因子αポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(d)プラスマ細胞拡散ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(e)麻痺性ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(f)心作用性ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(g)アンフィレグリンポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(h)ヘパリン−結合上皮成長因子様ポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(i)ベータセルリンポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、および
(j)ウイルス性上皮成長因子様ポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体。
これらのキメラ部分もまた含まれると理解できる。上皮成長因子受容体リガンドの断片は、その断片が由来する本来の配列と同じ性質を示す限り使用可能である。
【0073】
表1は、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディに融合される、さまざまなEGF受容体リガンドを示す。
【0074】
【表1】
【0075】
精製をより容易にするために、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディはさらに、ポリヒスチジン−タグ配列を含む。その精製は、アフィニティークロマトグラフィー、または当業者に知られている他のあらゆる有用な技術によって行なうことができる。アフィニティークロマトグラフィー精製では、単離された組み換え融合ペプタボディポリヒスチジン−タグ配列に特異的に結合するあらゆる抗体が使われる。ポリヒスチジン−タグ配列に特異的に結合する、Ni2+−ニトリロトリ酢酸に結合されたアガロースビーズなどの他のアフィニティー分子もまた、本発明の想定の範囲内である。
【0076】
さらに、単離された組み換え融合ペプタボディのN末端は、少なくとも1つの機能ドメインまたはエフェクター領域(マーカー,酵素領域,または細胞毒素領域など、あるいは、例えばアフィニティークロマトグラフィーで使用可能な金属原子または他の構造化合物に付加的な結合特性を加える領域)を付加することによって修飾されているのが好ましい。エフェクター部位は、当該技術分野で知られている古典的な化学手法を用いて、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディに結合可能である。
【0077】
エフェクター部位の例は、診断目的のために検出可能な分子または検出部位であり、例えば、酵素または特殊な結合特性を有するペプチド(例えば、ストレプトアビジンまたはセイヨウワサビペルオキシダーゼ)である。検出部位はさらに、特異的な同種の検出可能な部位(例えば、標識化されたアビジン)に結合することにより検出可能な化学的部位(ビオチン)を含む。
【0078】
検出部位は蛍光ラベルやMRI−CTイメージングのために当技術分野で通常使われるラベルも含む。多数の蛍光物質が知られており、標識として利用されている。これらの物質は、例えば、フルオレセイン、ローダミン、オーラミン、テキサスレッド、AMCAブルー、ルシフェールイエローを含む。
【0079】
単離された組み換え融合ペプタボディは、3H,14C,32P,35S,36Cl,51Cr,57Co,58Co,59Fe,90Y,121I,124I,125I,131I,111In,211At,198Au,67Cu,225Ac,213bu,99Tc,186Reなどの放射性同位体を検出部位として放射性標識化可能である。放射性ラベルが使用される場合、特殊な結合部位を同定および定量化するために、現在知られている有用なカウント処理が利用可能である。例えば、そのラベルが酵素である場合、検出は、当該研究分野で知られている現在利用可能なあらゆる比色分析法、分光測光法、蛍光分光光度法、電流法、またはガス計量法によって達成可能である。
【0080】
放射性標識化された単離された組み換え融合ペプタボディは、in vitro診断技術およびin vivoの放射性イメージング技術で有用である。本発明の別の態様では、放射性標識化された単離された組み換え融合ペプタボディは、放射免疫治療、特にがんの治療に有用である。また、別の解釈では、放射性ラベルされた単離された組み換え融合ペプタボディは、免疫RIガイド手術技術に有用であり、この場合、そのペプタボディは、がん細胞、前がん細胞、腫瘍細胞、および過剰増殖細胞の存在および/または位置を、このような細胞を除去する手術の前、手術中、または手術後に同定および提示することができる。
【0081】
in vivoイメージングの例としては、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディは、放射性同位体よりもむしろ造影剤に結合させることができ、前記造影剤は、磁気共鳴撮影エンハンサー試薬を含むがそれに制限されない。この場合、例えば、単離された組み換え融合ペプタボディ分子は、キレート剤を介してより多くの常磁性イオンを装填される。キレート剤の例としては、EDTA、ポルフィリン、ポリアミンクラウンエーテル、およびポリオキシムを含む。常磁性イオンの例は、ガドリニウム、鉄、マンガン、レニウム、ユーロピウム、ランタニウム、ホルミウム、およびエルビウムを含む。
【0082】
エフェクター部位は、細胞毒素を含むのが好ましく、換言すれば、エフェクター部位は、細胞の成長を抑制したり、あるいは、細胞の破壊を引き起こしたりできるポリペプチドである。その細胞毒素は、Corynebacterium diphtheriae(コリネバクテリウム ジフテリアエ)由来のジフテリア毒素、Pseudomonas aeruginosa(シュードモナス エルギノサ)由来のエキソトキシン(exotoxin)、Bacillus anthracis(バチルス アンスラシス)由来の炭疽菌毒素、Shigella(シゲラ)由来の志賀毒素、Escherichia coli(エシェリヒア.コリ)由来の志賀様毒素、Bordatella pertussis(ボーダテラ ペルツシス)由来の百日咳毒素、これらの毒素部位などの細菌の細胞毒素である。細菌の毒素は、Pseudomonas aeruginosa(ATCC 25313−25363)由来のエキソトキシンAまたはその毒素部位(例えばドメインII,Ib,および/またはIII)であるのが好ましい。
【0083】
一方、細胞毒素は植物由来であることができる。植物の毒素の例は、リシン(ricin)(ラム他,ヨーロピアン ジャーナル オブ バイオケミストリー,第148巻,265−270頁,1985年(Lamb et al, Eur.J.Biochem. 148, 265-270 (1985)))、アブリン(abrin)(ウッド他,ヨーロピアン ジャーナル オブ バイオケミストリー,第98巻,723−732頁,1991年(Wood et al, Eur.J.Biochem. 198, 723-732 (1991))、サポニン(saporin)のようなリボザイム不活性化タンパク質(ベナッティ他,ヨーロピアン ジャーナル オブ バイオケミストリー,第183巻,465−7470頁,1989年(Benatti et al, Eur.J.Biochem. 183, 465-470 (1989)))、ポークウィード(pokeweed)抗ウイルスタンパク質(カタオカ他,プラント モレキュラー バイオロジー,第20巻,879−886頁,1992年(Kataoka et al, Plant Mol.Biol. 20, 879-886 (1992)))、ゲロニン(gelonin)(ノーラン他,ジーン,第134巻,223−227頁,1993年((Nolan et al, Gene, 134, 223-227 (1993))、トリコサンチン(trichosanthin)(シャウ他,ジーン,第97巻,267−272頁,1991年(Shaw et al, Gene, 97, 267-272 (1991)))である。
【0084】
別の望ましい事例で、そのエフェクター部位は、リボヌクレアーゼ(例えば、ウシ膵臓RNAseA(カルサナ他,ヌクレイック アシッズ リサーチ,第16巻,5491−65502頁,1988年(Carsana et al, Nucleic Acids Res. 16, 5491-5502 (1988)))、ヒトアンジオゲニン(angiogenin)(クラチ他,バイオケミストリー,第24巻,5494−5499頁,1985年(Kurachi et al, Biochemistry, 24, 5494-5499 (1985)))、およびヒト好酸球誘導ニューロトキシン(neurotoxin)(ローゼンバーグ他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第86巻,4460−4464頁,1989年(Rosenberg et al, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 86, 4460-4464 (1989)))のような哺乳類由来のリボヌクレアーゼ)を含む。リボヌクレアーゼはヒト由来であるのが最も好ましい。
【0085】
5−フルオロウラシルまたはリシン(ricin)などの他の細胞毒性薬剤、ならびに、細菌性カルボキシペプチダーゼまたはニトロレダクターゼなどの酵素(腫瘍部位にてプロドラッグを活性型薬剤に転換できる)が使用可能である。
【0086】
本発明の単離された組み換え融合ペプタボディは、あらゆる適切な経路を介して治療が必要な患者に投与可能であり、通常、血流または脳脊髄液への注入、あるいは、腫瘍への直接注入またはその周辺部位への注入によって行なわれることができる。その正確な投与量は多くの因子に依存すると考えられ、その多くの因子には、ペプタボディが診断用なのかまたは治療用なのか、腫瘍の大きさおよび位置、ペプタボディの正確な特性、ならびに、単離された組み換え融合ペプタボディに結合された検出可能な標識または機能的な標識の特性が含まれる。
【0087】
放射性核種が治療に用いられる場合、適切な最大投与量は、約45mCi/m2から最大で約250mCi/m2の間である。好ましい投与量は15−40mCiの範囲内であり、20−30mCiまたは10−30mCiであるのがさらに好ましい。
【0088】
本発明の別の主題は、上述の単離された組み換え融合ペプタボディをコードする単離および精製されたDNA、ならびに、この単離および精製されたDNAの複製物を少なくとも1つを含むベクターである。
【0089】
ここで使用されるDNAはあらゆるポリデオキシヌクレオチド配列であり、例えば、二本鎖DNA、一本鎖DNA、一方または両方の鎖が2つ以上の断片から構成されている二本鎖DNA、一方または両方の鎖が解釈できない燐酸エステル骨格を有する二本鎖DNA、1つ以上の一本鎖部位と1つ以上の二本鎖部位を含むDNA、DNA鎖が完全に相補的な二本鎖DNA、DNA鎖の一部のみが相補的な二本鎖DNA、環状DNA、共有結合によって閉じられたDNA、直鎖DNA、共有結合によって架橋されたDNA、cDNA、化学合成されたDNA、半合成されたDNA、生合成されたDNA、自然界から単離されたDNA、酵素によって消化されたDNA、摘み取られたDNA、放射線標識されたDNAおよび蛍光標識されたDNAなどの標識化されたDNA、1つ以上の自然界には存在しない種類の核酸を含むDNAである。単離された組み換え融合ペプタボディをコードするDNA配列またはその断片は、標準的な化学技術(例えば、ホスホトリエステル法、あるいは自動化された合成方法およびPCR法を介した方法など)によって合成可能である。本発明にかかる単離された組み換え融合ペプタボディをコードする、精製および単離されたDNA配列は、酵素学的な技術によって産生させてもよい。この場合、制限酵素は予め決定された認識配列を開裂し、かつ、単離された組み換え融合ペプタボディまたはその断片をコードするDNA(またはRNA)などの核酸配列を含むより大きな核酸分子から核酸配列を単離するために使用可能である。
【0090】
本発明はまた、上述の変異体の配列を含み、該変異体の配列は保存性ヌクレオチドの置換により、リファレンス配列と異なるヌクレオチド配列であり、これにより、1つ以上のヌクレオチドが同じ性質を有する別のヌクレオチドによって置換されている。
【0091】
ベクターは、真核生物および原核生物中で複製可能である。ベクターは、宿主細胞のゲノム中に統合可能なベクター(例えばバクテリオファージλ)、染色体外に存在するベクター(例えばプラスミド)であってもよい。好ましくは、ベクターはプラスミドである。
【0092】
さらに、ベクターは発現ベクターであることができ、すなわち、単離および精製されたDNA配列がプロモーターに機能するベクターである。このことは、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディをコードする結合された単離および精製されたDNAが、発現可能な適当な制御配列の制御下にあることを意味し、換言すれば、挿入された単離および精製されたDNA配列の転写および翻訳を意味する。真核宿主細胞の適当な発現ベクターは、サムブロック他,「分子クローニング;実験マニュアル(第2版)」,コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス,特に第1−4章および第17章,1989年(Sambrook et al., Molecular Cloning; a Laboratory Manual, 2nd Edition (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press, especially in Chapters 1-4 and 17)に記述されている。哺乳類の細胞でのクローン化遺伝子の発現に適当なベクターは、サムブロック他の第16章に記述されている。適当なベクターは、適当な制御配列を含むように選択または構築されることができ、この適当な制御配列には、プロモーター配列、終止配列、ポリアデニル化配列、マーカー遺伝子、および他の適当な配列を含む。
【0093】
本発明のDNA配列の発現において、膨大な種類の宿主/発現ベクターの組み合わせを用いることができる。有用な発現ベクターは例えば、染色体由来のDNA配列、非染色体由来のDNA配列、および合成DNA配列の断片からなることができる。適切なベクターは、SV40の誘導体、既知の細菌プラスミドおよびその誘導体(例えば、E.coliのプラスミド,col El,pCRl,pBR322、pMB9)、RP4などのプラスミド、ファージDNA(例えば、多数のファージX誘導体(例えばNM989))、他のファージDNA(例えば、M13、糸状一本鎖ファージDNA)、酵母プラスミドまたはその誘導体(例えば、2μプラスミド)、真核生物細胞で有用なベクター(例えば、昆虫または哺乳類の細胞で有用なベクター)、プラスミドおよびファージDNAの組み合わせから得られたベクター(ファージDNAまた他の発現を制御する配列が機能するように改変されたプラスミドなど)、ならびにこれらの類似物を含む。
【0094】
膨大な多様性を有するあらゆる発現制御配列(換言すれば、機能するように結合されたDNA配列の発現を制御する配列)は、本発明のDNA配列を発現するためのベクター内で用いることができる。このような有用な発現制御配列は、例えば、SV40、CMV、痘そう、ポリオーマウイルス、アデノウイルスの初期または後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、LTR系、ファージXの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−フォスフォグリセラートキナーゼまたは他の糖分解酵素のプロモーター、酸性フォスファターゼ(例えばPho5)のプロモーター、酵母接合因子のプロモーター、原核または真核細胞あるいはウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られている他の配列、ならびにこれらの組み合わせを含む。
【0095】
本発明の発現ベクターの特別な例は、E.coliのベクターである、pMS238−5−TGF,pMS238−5−225,pMS238−225−5,pMS240−5−225,pMS242−5−5 KDEL,pMS238−5−5,およびpMS246−5−5 KDELである。前記発現ベクターは、PQE−09(図27参照)であるのが好ましい。本発明のポリペプチドをコードするプラスミド断片のヌクレオチド配列およびそれに相当するアミノ酸配列は、図2、図23、図24および図27に示され、かつ、ペプタボディEGF(p−EGF)に対応する配列番号N°1および2、ならびにp−GBPに対応する配列番号N°3および4に示されている。
【0096】
本発明の別の主題は、上述で定義された単離および精製されたDNA分子を発現できる宿主細胞であり、特に、上述のDNA分子を含む発現ベクターを用いて安定的に形質転換された宿主細胞である。
【0097】
本発明のDNA配列の発現において、膨大な種類の単細胞系宿主細胞が有用である。これらの宿主は、良く知られた真核宿主および原核宿主(E.coli,シュードモナス(Pseudomonas),バチルス(Bacillus),ストレプトマイセス(Streptomyces)などの菌株)、真菌(酵母など)、動物細胞(CHO,YB/20,NSO,SP2/0,R1.1,B−W細胞,およびL−M細胞,アフリカミドリザル腎細胞(例えば、COS1,COS7,BSC1,BSC40,BMT10),昆虫細胞(例えばSf9))、および組織培養したヒト由来細胞および植物由来細胞を含んでいてもよい。宿主細胞は好ましくは細菌細胞であり、より好ましくはE.coli細胞である。
【0098】
全てのベクター、発現制御配列、および宿主が、本発明のDNA配列をうまく等しく発現するように機能できるわけではないことは理解されるだろう。同じ発現系において全ての宿主がうまく等しく機能するわけではないだろう。しかしながら、当業者は、本発明の範囲を逸脱せずに、望まれる発現を達成するために特殊な実験方法を用いることなく、適当なベクター、発現制御配列、宿主を選択することができるだろう。例えば、あるベクターが選ばれた場合、宿主は、そのベクターが宿主中で機能するように考慮されなければならない。そのベクターのコピー数、コピー数を制御する能力、およびそのベクターによってコードされた他のタンパク質(抗生物質マーカーなど)の発現が考慮されるだろう。
【0099】
ある発現制御配列が選ばれた場合、様々な因子が通常考慮されるだろう。これらの因子は例えば、発現系の相対的な強さ、制御しやすさ、特に潜在的二次構造のような点で発現される特異的DNA配列との適応性を含む。適当な単細胞宿主は例えば、選択されたベクターとの適応性、分泌特性、タンパク質を正確に折り畳む能力、発酵条件、発現されるDNA配列によってコードされる産生物の宿主に対する毒性、および発現された産生物の精製の容易さを考慮して選択されるだろう。
【0100】
これらの因子および他の因子を考慮して、当業者は、発酵またはラージスケールでの動物培養において、本発明のDNA配列を発現できる様々なベクター/発現制御配列/宿主の組み合わせを構築することができる。
【0101】
宿主細胞は、ペプタボディを産生するために、上述の発現またはクローニングベクターによってトランスフォームされ、かつ、プロモーターを含めるため、トランスフォーマーを選択するため、またはペプタボディの産生を増加するために適切に改良された一般的な培地で培養される。
【0102】
本発明の単離された組み換え融合ペプタボディを産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地で培養が可能である。ハムス(Ham's)F10(シグマ)、最小必須培地(MEM,シグマ)、RPMI−1640(シグマ)、ダルベッコ(Dulbecco)の改良イーグルス培地などの市販の培地は、宿主細胞を培養するために有用である。加えて、ハム他,Meth. Enz,第58巻,44頁,1979年(Ham et al., Meth. Enz. 58:44 (1979))およびバーンズ他,アナリティカル バイオケミストリー,第102巻,255頁,1980年(Barnes et al., Anal. Biochem. 102:255 (1980))、米国特許第4,767,704号、米国特許第4,657,866号、米国特許第4,927,762号、米国特許第4,560,655号、米国特許第5,122,469号、国際特許出願公開番号第90/03430号、または国際特許出願公開番号第87/00195号で記述されたあらゆる培地は、宿主細胞を培養するための培地として用いることができる。これらの培地はいずれも、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の成長因子(インシュリン、トランスフェリン、上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、およびリン酸塩など)、バッファー(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質(ゲンダマイシン(商標)薬剤など)、微量元素(通常μM範囲の最終濃度にて通常存在する無機化合物として定義される)、グルコースまたは同等のエネルギー源が補われる。他に必要な補足物はまた、当業者に知られている適切な濃度にて添加可能である。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞を用いて以前に用いられた条件であり、当業者によって理解できるだろう。
【0103】
本発明の別の主題は、ここで述べられている単離された組み換え融合ペプタボディを活性物質として含む医薬組成物に関し、1つ以上の薬学的に許容しうる担体,賦形剤,補助剤と任意に組み合わせられる。好ましくは、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容しうる賦形剤,担体,補助剤などを含む。許容しうる担体、賦形剤、および補助剤は非毒性であり、活性成分の効能を干渉してはならない。この医薬組成物は好ましくは、がんの治療または予防、細胞増殖の抑制のための薬剤の調製に使用される剤として使用され、より好ましくは抗腫瘍治療薬(換言すると、腫瘍の成長の抑制剤)として使用される。
【0104】
医薬組成物は適当な形態(例えば、溶液,懸濁液,粉末,凍結乾燥体,軟膏,またはチンキ)の形態であることができる。医薬組成物はあらゆる適切な方法(例えば、注射(全身的または部分的)により、または局所的に)投与可能である。担体または他の材料の正確な特性は投与経路に依存するだろうし、その投与経路は経口、局所、または注射(例えば、静脈または皮内)によることができる。
【0105】
経口投与のための医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末、または液体の形態であってもよい。錠剤はゼラチンまたは補助剤などの固形担体を含んでいてもよい。液体の医薬組成物は一般に、水、石油、動物油、植物油、ミネラルオイル、または合成油などの液体キャリアを含む。
【0106】
生理的食塩水、デキストース、または他の糖溶液、あるいはグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールなど)が含まれていてもよい。
【0107】
静脈注射、注射、または痛みのある部位への注射の場合、活性成分は、発熱性がなく適切なpH、等張性、および安定性を有する、非経口で許容しうる水溶液の形態である。当業者は、等張液(例えば、塩化ナトリウム注入、リンガー液注入、ラクテート化リンガー液注入など)を用いて、適切な溶液をうまく調製することができる。保存剤、安定剤、バッファー、抗酸化剤、および/または他の添加剤を必要に応じて含んでいてもよい。
【0108】
それぞれの薬学的に有効な量は、治療を受ける特定の患者、治療の対象となる疾患、および投与方法に依存するだろう。さらに、薬学的に有効な量は、使用されるポリペプチドに依存し、特に、そのポリペプチドが部分的に細胞毒性要素を含んでいるか否かに依存する。治療は通常、数時間、数日、または数週間の間隔での複数回の投与を含む。ポリペプチドの薬学的に有効な投与単位量は通常、治療を受ける患者の体重1kg当り0.001ng−100μgである。
【0109】
本発明で用いられる医薬組成物は、ここで述べられている、所定の純度を有し、薬学的に有効な量の単離された組み換え融合ペプタボディを、1つ以上の薬学的に許容しうる担体,賦形剤,補助剤と任意に混合することにより、凍結乾燥または水溶液の形態で調製される(オソル.A編,レミングトンの製薬科学,第16版,1980年)。許容しうる担体、賦形剤、および補助剤は、適用される投与量および濃度において、服用者に対して非毒性であり、かつ、バッファー(燐酸,クエン酸,およびその他の有機酸など)、抗酸化剤(アスコルビン酸およびメチオニンを含む)、保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム,塩化ヘキサメソニウム,塩化ベンゾアルコニウム,塩化ベンゼソニウム,フェノール,ブチルオーベンジルアルコール)、アルキルパラベン(メチルパラベン,プロピルパラベンなど),カテコール,レソシノール,シクロヘキサノール,3−ペンタノール,m−クレゾールなど)、低分子量のポリペプチド(10残基未満)、タンパク質(血清アルブミン,ゼラチン,免疫グロブリンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸(グリシン,グルタミン,アスパラギン,ヒスチジン,アルギニン,リジンなど)、単糖類,二糖類,およびその他の炭水化物(グルコース,マンノース,またはデキストリンを含む)、キレート剤(EDTAなど)、糖(ショ糖,マンニトール,トレハロース,ソルビトールなど)、塩形成カウンターイオン(ナトリウムなど)、金属錯体(例えばZn−タンパク質錯体)、および/または非イオン性界面活性剤(ツイーン(商標)、プロロニック(商標)、ポリエチレングリコール(PEG))を含む。
【0110】
ここで述べられている医薬組成物またはその製剤は、必要に応じて、治療の特殊な目的のために必要な1以上の活性化合物を含んでいてもよく、それらがお互いに不都合の無い相補的な活性を有する活性化合物であるのが好ましい。さらに、例えば、ある処方において、EGFR、ErbB2(例えば、ErbB2の異なるエピトープに結合する抗体)、ErbB3、ErbB4、または血管内皮因子(VEGF)に結合する抗体を提供するのが好ましい。代替的にまたは付加的に、医薬組成物は、単独で、あるいは、他の処置、治療、または薬剤と併用して、治療を受ける患者の体調に依存して同時にまたは特定の順序で投与されることは明白であろう。医薬組成物はさらに、化学療法剤、細胞毒素剤、サイトカイン、成長抑制剤、抗ホルモン剤、EGFR標的剤、抗血管新生剤、抗がん剤、免疫系モジュレーター、および/または心臓保護剤を含むことが好ましい。そのような分子は、予定された目的に対して効果的な量を併用されて適切に存在する。
【0111】
より一般的には、これらの抗がん剤はチロシンキナーゼインヒビター、リン酸化カスケードインヒビター、翻訳後モジュレーター、細胞増殖抑制剤または細胞分裂抑制剤(例えば抗有糸分裂剤)、またはシグナル伝達インヒビターであるのが好ましい。他の処置または治療は、非ステロイド性抗抗炎症剤(例えば、アスピリン,パラセタノール,イブプロフェン,ケトプロフェン)または鎮静剤(モルヒネまたは抗嘔吐剤など)の適切な量の投与を含む。医薬組成物は、チロシンキナーゼインヒビター(AG1478,ZD1839,STI571,OSI−774,SU−6668を含むがそれに制限されない)、ドキソルビシン、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、ニトロソウレア、プロカルバジン、ビンクリスチン、ヒドロキシウレア、5−フルオロウラシル、シトシン アラビノシド、シクロフォスファミド、エピポドフィルロトキシン、カルムスチン、ロムスチン、および/または他の化学療法剤と(特定の順序にて(換言すれば前か後)または同時に)併用して投与することを含む。したがって、これらの薬剤は、特殊な抗EGFR剤、またはチロシンキナーゼインヒビター(AG1478,ZD1839,STI571,OSI−774,SU−6668など)であることができ、あるいは、より一般的には、ドキソルビシン、シスプラチン、テモゾロミド、ニトロソウレア、プロカルバジン、ビンクリスチン、ヒドロキシウレア、5−フルオロウラシル、シトシン アラビノシド、エピポドフィルロトキシン、カルムスチン、ロムスチン、などの抗癌剤または抗悪性腫瘍剤であることができる。加えて、医薬組成物は、デキサメタゾンなどのホルモン、インターロイキンまたは腫瘍壊死因子(TNF)などの免疫系モジュレーター、あるいは、免疫応答と癌細胞または腫瘍の減少または排除とを刺激する他の成長因子またはサイトカインとともに投与可能である。
【0112】
より一般的には、これらの抗癌剤はまた、コアセルベーション技術によって、または、界面重合によって、マイクロカプセル(例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセル、ならびに、ポリ−(メチルメタクリレート)のマイクロカプセル)、コロイド薬物伝達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、ナノ粒子、ナノカプセル)、あるいはマイクロエマルジョンに包含されて調製することができる。そのような技術は、オソル A(Osol,A)編,レミングトンの製薬科学,第16版,1980年に開示されている。
【0113】
徐放性調剤を調製してもよい。徐放性調剤の適切な例は、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスであり、そのマトリクスは、例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの成形物の形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタメートの共重合体、非分解性のエチレン−酢酸ビニル共重合体、分解性の乳酸−グリコール酸共重合体(ルプロン デュポン(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドからなる注入可能なマイクロスフェア),およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸)が含まれる。
【0114】
in vivo投与に用いられる調剤は無菌でなければならない。これは、例えば無菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。
【0115】
上述の単離された組み換え融合ペプタボディを活性物質として含む医薬組成物は、様々な病気または疾患を治療するために使用できると考えられる。一般に、治療の対象となる病気または疾患はがんである。特に、本発明は上皮成長因子受容体を発現するがん(ErbB発現性がん)を治療または予防する方法を提供し、好ましくは、ErbB受容体の過剰活性化によって特徴付けられるがん、または、ErbB受容体を「過剰発現する」がんに対する治療または予防方法である。
【0116】
治療の対象となるがんの例は、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、白血病、またはリンパ性悪性腫を含むがこれらに制限されない。そのようながんのより特異的な例は、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、脂肪肉腫、神経内分泌腫瘍、中皮腫、神経鞘腫、髄膜腫、腺腫、黒色腫、白血病、リンパ性悪性腫、扁平上皮がん、上皮性扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の悪性腫瘍、肺の燐片悪性腫瘍、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん、胃腸がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頚部がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝腫瘍、乳がん、大腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜腫瘍、子宮腫瘍、唾液腺腫瘍、腎臓がん、腎がん、前立腺がん、陰唇がん、甲状腺がん、肝腫瘍、肛門腫瘍、陰茎がん、精巣がん、食道がん、胆道がん、頭頸部がんである。
【0117】
より好ましくは、ここで治療の対象となるがんは、頭部がん、頚部がん、膀胱がん、または黒色腫である、
本発明はまた、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディに細胞を接触させる工程を含む、アポトーシスおよび/またはネクローシスの誘導方法を提供する。接触させる細胞は、上述の癌細胞であるのが好ましい。
【0118】
また、本発明の目的は、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディに細胞を接触させる工程を含む、細胞増殖の阻害方法を提供する。接触させる細胞は、上述の癌細胞であるのが好ましい。
【0119】
病気(特にがん)の予防または治療のために、単離された組み換え融合ペプタボディの適切な投与量は、上記に定義されたように、治療の対象となる病気の種類、病気の深刻さおよび経過、単離された組み換え融合ペプタボディが予防または治療を目的として処方されるかどうか、治療歴、患者の既往歴および単離された組み換え融合ペプタボディに対する応答、ならびに処方する医師の判断に依存するだろう。単離された組み換え融合ペプタボディは、治療のある時点、または一連の治療を通じて患者に適切に処方される。病気の種類または深刻さに依存して、例えば、1回以上の個別投与によって、または連続的な注入によって、約1μg/kg−15mg/kg(例えば、0.1−20mg/kg)のペプタボディが、患者に対して処方するための初回投与量の候補である。典型的な1日あたりの投与量は、約1μg/kg−100mg/kgまたはそれ以上の範囲であり、上述されたような因子に依存する。数日またはそれ以上に当たる繰り返し投与では、状況に依存して、治療は病気の症状の抑制が起こるまで続けられる。単離された組み換え融合ペプタボディの投与量は約0.005mg/kgから約1.0mg/kgまでの範囲であるのが好ましい。したがって、約0.05mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、または10mg/kg(あるいはこのいずれかの組み合わせ)の1回以上の投与が患者に対して行なわれる。このような投与は断続的に(例えば毎週または三週間毎)行なわれてもよい(例えば、患者は、約2−約12回(例えば6回)の単離された組み換え融合ペプタボディの投与を受ける)。初期のより高い頻度の投与の後に、1回またはそれ以上の少ない回数の投与を行なってもよい。典型的な投与管理は、約0.4mg/kgの単離された組み換え融合ペプタボディを初回投与した後、約0.2mg/kgの投与を週単位で維持することである。しかしながら、他の投与管理が有用かもしれない。この治療の進捗は、一般的な技術および検査によって容易に監視される。
【0120】
本発明の単離された組み換え融合ペプタボディの高い特異性に起因して、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディは、(例えば、所定の受容体の活性化または不活性化を標的とする)遺伝子治療にも使用することができ、あるいは、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディを毒性物質と結合させる場合、分解を目的として使用することができる。上述の発現ベクターによってあらかじめトランスフェクトされた宿主細胞の使用に基づく細胞治療も想定可能である。
【0121】
本発明はまた、がんの診断方法を想定しており、このがんの診断方法は、上記の単離された組み換え融合ペプタボディを被験者に投与することを含み、任意に、薬学的に許容しうる担体、賦形剤、および補助剤との組み合わせにより行われる。
【0122】
本発明の別の目的は、ヒト患者で上皮成長因子受容体を発現するがんを診断するキットを提供することであり、このキットは、上述の少なくとも1つの検出部位を有する単離された組み換え融合ペプタボディを含み、必要に応じて試薬および/または取扱説明書を含む。
【0123】
EGFRの状態をin vitroで評価および判断する診断試験およびキットは、特にEGFRの異常発現に関して、がん、前癌性状態、過剰増殖する細胞を有する患者またはそれが疑われている患者のサンプル、あるいは腫瘍サンプルを、診断、評価、および監視するために使用可能である。また、EGFRの状態の評価および判断は、異なる薬剤と比較して、特定の治療薬の臨床試験のために、あるいは、特定の化学療法剤または特に本発明の単離された組み換え融合ペプタボディ(これらの組み合わせを含む)の投与のために、患者の適合性を決定するために有用である。
【0124】
本研究で最も一般的に使用される標識部位または検出部位は、放射性要素、酵素、紫外光および他の光に曝露された場合に蛍光を発する化学物質である。
【0125】
本発明の他の実施形態は、ヒト患者で上皮成長因子受容体を発現するがんを治療するキットを提供することであり、そのキットは上述の本発明の単離された組み換え融合ペプタボディを含み、任意に他の試薬および/または取扱説明書を含む。
【0126】
本発明のキットは、化学療法剤、抗上皮成長因子抗体、放射免疫治療剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれた付加的な抗がん剤を含む、分離した薬剤投与形態をさらに含んでいてもよい。
【0127】
一般に、前記キットは、容器と、その容器に関連するかまたはその容器に挿入されるラベルまたはパッケージとを含む。適当な容器は例えば、瓶、バイアル、注射器などを含む。前記容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な素材から形成可能である。前記容器は、状態を調整するのに効果的な組成物を保持し、無菌の取り出し口(例えば、前記容器は皮下注射針によりピアシング可能なストッパを有する静脈注射溶液バッグまたはバイアル)を有していてもよい。前記組成物中の活性物質の少なくとも1つは、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディである。ラベルまたは包装の挿入物は、前記組成物ががんなどの特定の症状を治療するために使用されることを示唆する。一実施形態では、ラベルまたは包装の挿入物は、ErbBを発現する、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディを含む組成物が、上皮成長因子受容体(EGFR)、ErbB3、およびErbB4(好ましくはEGFR)からなる群より選ばれるErbB受容体を発現するがんの治療に使われることを示唆する。加えて、ラベルまたは包装の挿入物は、治療を受ける患者が、EGFR、ErbB3、およびErbB4から選ばれるErbB受容体の過剰活性によって特徴付けられたがんを有する患者であることを示唆することができる。
【0128】
代替的にまたは付加的に、前記キットはさらに、注入用の静菌剤水溶液(BWFI)、塩水性燐酸バッファー、リンガー液、およびデキトロース溶液などの薬学的に許容しうるバッファーを含む第2の(または第3の)の容器を含んでいてもよい。前記キットはさらに、他のバッファー、賦形剤、フィルター、注射針、およびシリンジを含む商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料を含んでいてもよい。
【0129】
上述の発明のペプタボディはさまざまな方法によって合成される。
【0130】
アクセプター(リガンド)に結合可能なドメインは比較的短いため、上述のペプタボディは例えば固相合成を介して化学合成されるのが好ましい。
【0131】
あるいは、混合過程も報告されている。独創性を有する部位の一部は、適当な宿主により発現され、化学的に合成された部分と結合される。例えば、オリゴマー化部分は、微生物によって合成され、化学的な合成により伸長されて、アクセプターに結合可能なドメインが加えられる。
【0132】
ポリペプチドまたはタンパク質のような、複雑な構造および大きさを有するリガンドに関する遺伝子工学は今まで報告されていなかった。ヘキサペプチド(6アミノ酸)以下の小さなリガンドのみが、融合タンパク質として独創性を有する部位を発現することにより得られている。それらのほとんどは不溶性の形態で産生されるため、独創性を有する部位上に複雑な構造を形成するする困難さを示唆する。
【0133】
本発明の単離された組み換え融合ペプタボディは、遺伝子工学的な方法によって産生されるのが好ましい。上述の発現ベクターは、上述の適切な宿主細胞中で発現される単離された組み換え融合ペプタボディをコードする完全なDNA配列の発現カセットを含むように構築される。適切な発現カセットは、遺伝子工学の標準的な技術によって調製可能である。単離された組み換え融合ペプタボディの合成のために必要な情報に加えて、前記発現カセットは、産生されたタンパク質の分泌を誘引するシグナル配列を付加的に含んでいてもよい。
【0134】
本発明は、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディの産生方法を提供し、以下の工程を含む。
【0135】
a)上述の単離された組み換え融合ペプタボディをコードする単離および精製されたDNAの分子を構築する工程、
b)適切な条件下にて細胞発現系内で、前記単離および精製されたDNAの分子を発現させる工程、および
c)前記単離された組み換え融合ペプタボディを回収する工程。
【0136】
ペプタボディは、軟骨オリゴマーマトリクスタンパク質の多量体化によって形成される多量体分子である。この多量体化は、モノマーが適当な条件下(低塩濃度条件下)で混合された場合に自発的に生じる。しかしながら、五量体形成の効率は、物理化学的な条件およびモノマーの濃度により変化しうる。加えて、リガンド(特に、ジスルフィドの架橋を含むリガンド)の複雑さは、ペプタボディの凝集体または多量体の形成を引き起こしうる。
【0137】
上述のように、細胞発現系または宿主細胞は真核細胞または原核細胞である。細胞発現系は原核細胞であるのが好ましい。
【0138】
b)の適切な条件は、細胞発現系を10−40℃で2−40時間培養することであり、37℃で8−16時間の培養が好ましい。
【0139】
また、c)は、細胞発現系からの単離された組み換え融合ペプタボディの抽出、ならびにその後の精製工程および再生(refolding)工程によって達成される。
【0140】
組み換え融合ペプタボディが細胞発現系から分泌された場合、組み換え融合ペプタボディは培地から抽出および回収可能であり、一方、組み換え融合ペプタボディが分泌されない場合、組み換え融合ペプタボディは細胞発現系から抽出可能である。組み換え融合ペプタボディは、当該技術分野で知られている技術(高速液体クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、減外濾過、イオン交換など)によって精製可能である。特殊な組み換え融合ペプタボディを精製するために適用される実際の条件は、全体の電荷、疎水性、親水性などの要素に部分的に依存し、当業者に明らかであろう。
【0141】
アフィニティークロマトグラフィー精製に関しては、組み換え融合ペプタボディまたはHisタグに特異的に結合する抗体を使用してもよい。Ni2+−ニトリロトリ酢酸に結合されたアガロースビーズ、ならびに、Hisタグに特異的に結合する別のアフィニティー分子は、本発明の範囲内である。
【0142】
精製は還元剤の存在下で行われ、汚染物が除去される。
【0143】
再生工程は再生バッファー中での直接希釈によって行われ、一連の透析をさらに含む。非常に重要な点は、再生溶液中で変性ペプタボディを素早く希釈することである。
【0144】
単離された組み換え融合ペプタボディの回収は、凝集体の形成を避けるために低い濃度で行われた。再生バッファー中での直接希釈は、単離された組み換え融合ペプタボディの最終濃度を300nM未満にするのが好ましく、図4に示されるように、該最終濃度を100nM未満にするのが最も好ましい。
【0145】
一連の透析は、少なくとも2回の異なる透析を含み、少なくとも3回または4回の透析が好ましく、図4で示されるように、少なくとも5回の透析がより好ましい。
【0146】
しかしながら、当業者は、本発明の範囲を逸脱しない他の連続的なまたは一連の透析手順を選択することができる。
【0147】
再生工程は、濃縮前の単離された組み換え融合ペプタボディの酸化を含む。
【0148】
本発明にしたがって産生されるペプタボディは特に安定である。ペプタボディ分子の安定性は、不溶型への変換または凝集体の形成あるいはペプタボディの多量体形成あるいは生体活性の減損を生じることなく、分子の安定な可溶性形態を保持することを意味する。
【0149】
本発明のさらなる目的は、タンパク質産生を増加する活性を有する、精製および単離されたエンハンサー配列を提供することである。上述の精製および単離されたエンハンサー配列は、YSFE,YSFED,YSFEDL,YSFEDLY,YSFEDLYR,YSFEDLYRR,その断片,そのキメラ分子,およびそのバリアントを含む群から選ばれるのが好ましい。
【0150】
「タンパク質産生を増加する活性」とは、以下のように定義された、精製および単離されたエンハンサー配列の活性を指す:適当な条件下で真核細胞または原核細胞に導入された後、その配列は、上述のエンハンサー配列を用いずにトランスフェクトされた培養細胞と比較して、培養細胞中でのタンパク質産生レベルを増加させることができる。
【0151】
このエンハンサー配列はまた、ヒトカリクレインhK2(産生量が少なくとも3倍に増加する)またはヒトセルピン(serpin)ACT(産生量が少なくとも2倍に増加する)などの別種類の組み換えタンパク質の産生を増加することができる。実施例7を参照されたい。
【0152】
その増加は通常1.5−100倍であり、3−10倍であるのが好ましい(図25および図26参照)。
【0153】
当業者は、上述の本発明について、特に記述されていない変更および修正が行われる余地があることを理解できる。本発明が、本発明の意図またはその本質的な特徴を逸脱しない変更および修正改変などの全てを含むことは理解されるべきである。本発明はまた、本明細書で言及または示唆されている工程、特徴、組成物、および化合物の全て、ならびにこれらのうちのいずれかまたは全ての組み合わせ、あるいは前記工程または特徴のうちのいずれか2つ以上を独立してまたは集合的に含む。
【0154】
したがって、すべての態様において説明されたように、本開示は限定的ではなく、添付されるクレームによって本発明の範囲が示唆されており、かつ、同義の意味および範囲内での全ての変化が本発明に含まれることを意図すると解釈されるべきである。
【0155】
本明細書では様々な参考文献が引用されており、本明細書で参照することにより、本明細書に全体的に組み込まれている。
【0156】
上述の記述は、以下の実施例を参照することにより、より完全に理解されるであろう。しかしながら、これらの実施例は本発明を実施する方法の例示であり、本発明の範囲を制限することを意図していない。
【実施例】
【0157】
実施例1:抗EGFRペプタボディの構築および産生
ヒト上皮成長因子をコードする遺伝子は、その全長遺伝子を含むプラスミドからPCRによって増幅されて、適当な酵素によって消化された後、ペプタボディ遺伝子を含むプラスミドに挿入された。ペプタボディは、誘導によって、封入体として細菌内で37℃で一晩産生される。E.coli細胞は、変性溶液(8M尿素を含む)中で室温にて溶解される。遠心分離後、ペプタボディ分子はアフィニティークロマトグラフィーによって精製され、再生バッファー中での直接希釈によって再生される(図3参照)。
【0158】
腫瘍細胞上のEGF受容体へのペプタボディEGFの結合
結合試験は、モノクローナル抗体MAb425(Retuximab(登録商標)として治療で用いられている)、ペプタボディEGF、およびペプタボディイレレバント(peptabody Irrelevant)を用いて、A431細胞上で行われた。具体的には、10,000個の細胞は、10%のFCSを含む培養液中で96穴プレート中に10時間植え付けられた。その培地を除いた後、ペプタボディまたはモノクローナル抗体MAb425を、異なる濃度で、接着している細胞と90分間氷上でインキュベートさせた。洗浄後、MAb425およびペプタボディそれぞれに対して、ペルオキシダーゼ結合ポリクローナル抗Fab抗体またはペルオキシダーゼ結合モノクローナル抗His抗体を用いて曝露が行われた(図4参照)。
【0159】
MAb425およびペプタボディEGFが同じ結合部位(EGF受容体)で競合することを実証するために、6.67nMのMAb425と傾斜量のペプタボディEGF(0.1〜200nM)とを用いて競合試験が行われた(図5参照)。
【0160】
実施例2:異なる癌細胞株におけるin vitro作用
ヒト癌細胞上でのペプタボディの効果は、細胞生存性試験を用いて評価された。具体的には、2500個の細胞が、10%のFCS(ウシ胎仔血清)を含むDMEM中で96穴プレートに植え付けられた。1日後、培地が除去され、ペプタボディを含む最適条件に置換された。細胞の数を判断するために、さまざまな時間で、プレートに対してMTT試験が行われた。
【0161】
表皮癌細胞A431
図6は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバント(p−IRR)の存在下における、処置から1、2、3日後のヒト表皮癌細胞A431の細胞生存性試験を示す。抑制の割合(%)は、コントロールと比較した生存細胞の割合によって計算されている。図7は、ペプタボディEGFまたはイレレバント(p−IRR)を用いた処置から2日後の無血清DMEM中の表皮癌細胞A431のin vitro培養の可視像である。
【0162】
ヒト前立腺癌細胞DU145
図8は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバント(p−IRR)の存在下における、処置から1、2、3日後のヒト前立腺癌細胞DU145の細胞生存性試験を示す。抑制の割合(%)は、コントロールと比較した生存細胞の割合によって計算されている。図9は、ペプタボディEGFまたはイレレバント(p−IRR)を用いた処置から2日後の無血清DMEM中の前立腺癌細胞DU145のin vitro培養の可視像である。
【0163】
ヒト前立腺癌細胞LNCaP
図10は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバント(p−IRR)の存在下における、処置から1、2、3日後のヒト前立腺癌細胞LNCaPの細胞生存性試験を示す。抑制の割合(%)は、コントロールと比較した生存細胞の割合によって計算されている。図11は、ペプタボディEGFまたはイレレバント(p−IRR)を用いた処置から2日後の無血清DMEM中の前立腺癌細胞LNCaPのin vitro培養の可視像である。
【0164】
ヒト前立腺癌細胞PC−3
図12は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバント(p−IRR)の存在下における、処置から1、2、3日後のヒト前立腺癌細胞PC−3の細胞生存性試験を示す。抑制の割合(%)は、コントロールと比較した生存細胞の割合によって計算されている。図13は、ペプタボディEGFまたはイレレバント(p−IRR)を用いた処置から2日後の無血清DMEM中の前立腺癌細胞PC−3のin vitro培養の可視像である。
【0165】
ヒト乳癌細胞MCF−7
図14は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバント(p−IRR)の存在下における、処置から1、2、3日後のヒト乳癌細胞MCF−7の細胞生存性試験を示す。抑制の割合(%)は、コントロールと比較した生存細胞の割合によって計算されている。図15は、ペプタボディEGFまたはイレレバント(p−IRR)を用いた処置から2日後の無血清DMEM中の乳癌細胞MCF−7のin vitro培養の可視像である。
【0166】
ヒト正常筋細胞におけるコントロール
図16は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバント(p−IRR)の存在下における、処置から1、2、3日後のヒト正常筋細胞の細胞生存性試験を示す。抑制の割合(%)は、コントロールと比較した生存細胞の割合によって計算されている。図17は、ペプタボディEGFまたはイレレバント(p−IRR)を用いた処置から2日後の無血清DMEM中の筋細胞のin vitro培養の可視像である。
【0167】
異なるがん細胞株におけるin vitro作用
ヒト癌細胞上でのペプタボディの効果は、細胞生存性試験を用いて評価された。具体的には、2500個の細胞が、10%のFCS(ウシ胎仔血清)を含むDMEM中で96穴プレートに植え付けられた。1日後、培地が除去され、ペプタボディを含む最適条件に置換された(図18参照)。加えて、より低濃度のペプタボディが3日間評価された。細胞の数を判断するために、さまざまな時間で、プレートに対してMTT試験が行われた。
【0168】
その結果、イレレバントなペプタボディ(p−IRR,ブランク)と比較して、ペプタボディp−EGFの存在下において、細胞成長の強い抑制が観察された(図7、図9、図11、図13、および図15参照)。
【0169】
実施例3:アポトーシスの検出
A−431癌細胞(ウエルあたり500μl中に5×105個)はDMEM中で培養された。24時間後、培地は10nMのp−EGFまたはp−IRRを含む500μlの無血清培地OPTIMEMによって置換された。0−360分間の決められた時間(T0、T30、T60、T180、T360)にて、接着する細胞および浮遊細胞が収集され、プールされ、かつ、細胞膜の外表面のフォスファチジルセリンを検出するアネキシンV−FITCアポトーシス検出キット(アポテック(Apotech),スイス)を用いてアポトーシスが分析された。具体的には、細胞はPBSおよび染色バッファーで1回ずつ洗浄された後、50μLのアネキシンV−FITC[5μg/ml]を用いて室温で15分間染色された。染色された細胞のペレットは、染色バッファーおよびFACSバッファー(1×PBS、5%のFCSおよび0.02%のNaN3を含む)で1回ずつ洗浄された後、200μLのFACSバッファーに懸濁され、FACSによりカウントおよび分析が行なわれた。
【0170】
ペプタボディEGFは、30分後にA431癌細胞のアポトーシスを明確に誘導したのに対し、イレレバントなペプタボディ(IRR)は何の効果も示さなかった(図19aおよび図19b参照)。
【0171】
実施例4:ペプタボディの産生および再生プロトコール
−細菌による産生:組み換えタンパク質を産生するために、ペプタボディをコードするプラスミドを含むE.coliTG1菌株が使用された。一晩の前培養の後、100μg/mLのアンピシリンを含む250mLの2xTY培地中で、前培養溶液を100倍に希釈することにより、新しい培養が37℃にて開始された。濁度(600nm)0.6にて、培養液は250μMのイソプロピルβ−D−チオガラクトシド(IPTG)により誘導された。
【0172】
−精製:誘導の16時間後、遠心分離により細菌が回収され、ペレットは25mLの変性溶液(pH7,4にて、8Mの尿素、1×PBS、10mMのβ−メルカプトエタノールを含む)中で室温にて2時間懸濁された。不可溶成分は、10000g・10分間の遠心で除去され、上清は、250μLのNi2+−NTAアガロースビーズ(キアゲン)と混合された。室温で2時間振とうした後、ビーズは洗浄溶液(pH7.4にて、5Mの尿素、1×PBS、10mMのβ−メルカプトエタノール、20mMのイミダゾールを含む)により3回洗浄された。タンパク質は、2.5mLの溶出バッファー(pH7.4にて、5Mの尿素、1×PBS、10mMのβ−メルカプトエタノール、150mMのイミダゾールを含む)により溶出された。
【0173】
−再生:
・1.25mgの溶出されたタンパク質は、250mLの再生バッファー(pH8.2にて、50mMのTrisバッファー,50mMのNaCl,10mMのβ−メルカプトエタノール,0.1%のTriton−X100を含む)中で素早く希釈されて、該タンパク質の最終濃度が5μg/mL未満となるようにし、次いで、この条件下で少なくとも6時間保持した。
【0174】
・次いで、タンパク質はバッファー(4Lのバス)を用いて以下の順序で透析された。
・透析バッファー1:50mMのTrisバッファー,50mMのNaCl,1mMのβ−メルカプトエタノール,0.1%のTriton−X100で、pH8.2にて6時間
・透析バッファー2:50mMのTrisバッファー,50mMのNaCl,0.1%のTriton−X100で、pH8.2にて一晩
・透析バッファー3:50mMのTrisバッファー,50mMのNaCl,0.01%のTriton−X100で、pH8.2にて4時間
・透析バッファー4:50mMのTrisバッファー,50mMのNaCl,0.001%のTriton−X100で、pH8.2にて4時間
・透析バッファー5:50mMのTrisバッファー,50mMのNaClで、pH8.2にてバブルバスを用いて一晩
・再生されたタンパク質は、窒素攪拌細胞系および超遠心装置(ミリポア)を用いて、最終体積250μlまで濃縮され、−80℃で保存された。
【0175】
実施例5:
材料
プライマーは、マイクロシンセ(Microsynth)(スイス)から購入された。
【0176】
分子生物学試薬(Taqポリメラーゼ、リガーゼ、およびフォスファターゼ)は、プロメガ(ドイツ)から購入された。
【0177】
発現ベクターPQE−09およびNi−NTAアガロースカラムは、キアゲン(ドイツ)から購入された。
【0178】
抗EGFRペプタボディの産生
1)発現ベクターの準備
発現ベクターpQE−09は、制限酵素Xholおよび制限酵素Notlにより切断された。
【0179】
2)ペプタボディGBP/EGF/イレレバント(Irrelevant)
生体成長阻害ペプチド(GBP)をコードする合成遺伝子は、Pseudaletia separateの血リンパ由来の25アミノ酸からなる昆虫生体成長因子であり、ペプタボディGBPを構築するために使用された。
【0180】
ヒト上皮成長因子をコードする遺伝子は、全長遺伝子を含むプラスミドから、PCRによって増幅された。
【0181】
GBPまたはEGFは、制限酵素BglII/NotIによって切断されたデカボディ分子をコードする遺伝子を含むプラスミド中に挿入された。ペプタボディ部位(軟骨オリゴマーマトリクスタンパク質(COMP)、ヒンジ部位、リガンド)は、PCRおよび特異的なプライマーを用いて増幅された。得られた最終産生物は、pQE−09発現ベクター中に挿入するために消化された。
【0182】
3)ペプタボディGBP/EGF/イレレバント(Irrelevant)の産生
ペプタボディは、封入体として細菌の細胞質中で産生され、五量体化されたモノマーに相当する安定な可溶性形態として再生された。
【0183】
−ヒト上皮成長因子をコードする遺伝子は、全長の遺伝子を含むプラスミドから、PCRによって増幅された。
【0184】
−GBP遺伝子またはEGF遺伝子は、本発明において修飾されたペプタボディ遺伝子を含むプラスミドに挿入された。
【0185】
最終的に得られた産物は、pQE−09発現ベクター中に挿入するために消化された。
【0186】
4)ペプタボディGBP/EGF/イレレバント(Irrelevant)の産生および精製
ペプタボディは、37℃で一晩誘導することにより、封入体として細菌の細胞質中で産生された。
【0187】
Е.coli細胞を8M尿素中で室温にて2時間溶解させた。遠心分離後、溶解物をNi−NTAアガロースビーズと90分間混合させ、ペプタボディ分子はイミダゾール/尿素溶液により溶出される。
【0188】
5)ペプタボディGBP/EGF/イレレバント(Irrelevant)の再生
ペプタボディ分子は再生バッファー(pH8.3にて、50mMのTrisHC1,0.01%のTriton−X100,10mMのβ−メルカプトエタノールを含む)で直接希釈することにより再生され、最終濃度5μg/mLに調製され(希釈は100倍を超えなければならない)、pH8.3にて10mMのβ−メルカプトエタノールを含む50mMのTrisHC1中で24時間、次いで、pH8.3にて50mMのTrisHC1中で2日間透析される。
【0189】
6)ペプタボディGBP/EGF/イレレバント(Irrelevant)の最終精製
透析されたペプタボディは陰イオン交換カラムへ充填され、塩勾配を用いて溶出される。
【0190】
結果は図20に示されており、図20には、非還元条件または還元条件下でのペプタボディのSDS−PAGE分析が示されている。MDP01はペプタボディEGFに相当し、MDP03はペプタボディGBPに相当し、MDP00はイレレバント(irrelevant)なペプタボディに相当する。
【0191】
腫瘍細胞に対する抗EGFRペプタボディの作用
再生されたペプタボディは、細胞毒性を評価するために、異なる腫瘍細胞(А431:ヒト表皮癌細胞、DU145およびPC−3:ヒト前立腺腫瘍細胞)で試験が行なわれた。
【0192】
その結果が図21に示されており、図21は、MTT法を用いた癌細胞の細胞毒性試験を示す。癌細胞は、2μg/mL濃度のペプタボディ(またはEGFRに特異的なモノクローナル抗体)とインキュベートされた。MDP01およびMDP03のEGF受容体への結合の割合は、EGF受容体に特異的なモノクローナル抗体(MAb425)よりも有意に高かった(データは示さず)。А−431およびDU145癌細胞株での増殖の減少およびアポトーシスの増加がペプタボディの存在下で観察され、一方、PC−3はMDP03に対して低い感受性を示した。
【0193】
以上の結果より、ペプタボディは、癌細胞の死を媒介する効果がモノクローナル抗体MAb425より強かった。
【0194】
実施例6:ペプタボディのエンハンサー配列
これまでに、異なる種類のペプタボディが開発されている。しかしながら、これらのペプタボディのほとんどは十分に産生されなかったのに対して、本願では、ペプタボディ/デカボディの産生において大きな多様性が観察された。
【0195】
図25は、異なるエンハンサーに融合されたデカボディの産生に関する。細菌系を使用したデカボディの産生のクマシンブルー染色されたSDS−PAGEが示されている。A)は不溶性画分に相当し、B)は可溶性画分に相当する。
【0196】
図26は、異なるエンハンサーに融合されたペプタボディの産生に関する。細菌系を使用したペプタボディの産生のウエスタンブロット分析が示されている。検出は尿素バクテリア抽出からから抗His抗体を用いて行なわれた。
【0197】
実施例7:
産生レベルにおけるエンハンサー配列の評価が他のタンパク質を用いて行われている。エンハンサー配列(E0,E1,E2,E3,E4,E5,E6,E7:図25および図26を参照)は、ヒトカリクレイン2遺伝子のN末端またはヒトセルピンa1−アンチキモトリプシン遺伝子と融合され、産生レベルはIPTG誘導後に37℃にて一晩培養することにより評価された。エンハンサー配列は、ヒトカリクレイン2の産生(少なくとも3倍)およびヒトセルピンACTの発現(少なくとも2倍)を増加する。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】図1は、ペプタボディのコンセプトの図解およびペプタボディによってもたらされる結合活性効果を示す。図1の左側部分は、受容体を低発現する細胞に相当し、ペプタボディはEGFR経路を活性化することなくモノマーに結合する。図1の右側の部分は、受容体を高発現する腫瘍細胞に相当し、EGFRの補充が細胞死を導く。
【図2】図2は、ペプタボディ抗EGFRの構築および産生を示す。ペプタボディモノマーの図解は相違部分を含む:エンハンサー(Enh:細菌システムでの産生を増加させる配列)、ヒスチジンテール(H6:6×His)、hCOMP(49アミノ酸残基のヒトオリゴマーマトリクスポリペプチド)、ヒンジ(19アミノ酸配列のヒトIgA由来)、およびhEGF(全長のヒト上皮成長因子)。リガンドが無い(イレレバントな:irrelevant)ペプタボディのアミノ酸配列や、EGFペプタボディのアミノ酸配列も示されている。
【図3】図3は、SDS−PAGE後にクマシンブルーで染色されたペプタボディのモノマー(m p−IRRおよびm p−EGF)およびペンタマー(P−IRRおよびP−EGF)に相当する。
【図4】図4は、ヒトA431癌細胞株におけるペプタボディおよびMab−425の結合性のELISA分析を示している。
【図5】図5は、ヒトA431癌細胞株におけるペプタボディEGFとMab−425との間の競合試験を示す。固定濃度のMab 425(2.5nM)は、ペプタボディEGFの濃度増加の存在下に配置される。
【図6】図6は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)の存在下において、処置から1、2、3日後のヒト表皮癌細胞株A431の細胞生存性試験を示す。細胞成長阻害の割合(%)は、コントロールに対する生存細胞の割合によって計算されている。
【図7】図7は、ペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)を用いた処置から2日後のインビトロ培養物(無血清DMEM)中のヒト表皮由来癌細胞株A431の可視像である。
【図8】図8は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)の存在下において、処置から1、2、3日後のヒト前立腺癌細胞株DU−145の細胞生存性試験を示す。細胞成長阻害の割合(%)は、コントロールに対する生存細胞の割合によって計算されている。
【図9】図9は、ペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)を用いた処置から2日後のインビトロ培養物(無血清DMEM)中のヒト前立腺癌細胞株DU−145の可視像である。
【図10】図10は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)の存在下において、処置から1、2、3日後のヒト前立腺癌細胞株LNCaPの細胞生存性試験を示す。細胞成長阻害の割合(%)は、コントロールに対する生存細胞の割合によって計算されている。
【図11】図11は、ペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)を用いた処置から2日後のインビトロ培養物(無血清DMEM)中のヒト前立腺癌細胞株LNCaPの可視像である。
【図12】図12は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)の存在下において、処置から1、2、3日後のヒト前立腺癌細胞株PC−3の細胞生存性試験を示す。細胞成長阻害の割合(%)は、コントロールに対する生存細胞の割合によって計算されている。
【図13】図13は、ペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)を用いた処置から2日後のインビトロ培養物(無血清DMEM)中のヒト前立腺癌細胞株PC−3の可視像である。
【図14】図14は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)の存在下において、処置から1、2、3日後のヒト乳癌細胞株MCF−7の細胞生存性試験を示す。細胞成長阻害の割合(%)は、コントロールに対する生存細胞の割合によって計算されている。
【図15】図15は、ペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)を用いた処置から2日後のインビトロ培養物(無血清DMEM)中のヒト乳癌細胞株MCF−7の可視像である。
【図16】図16は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)の存在下において、処置から1、2、3日後の正常ヒト筋細胞の細胞生存性試験を示す。細胞成長阻害の割合(%)は、コントロールに対する生存細胞の割合によって計算されている。
【図17】図17は、ペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)を用いた処置から2日後のインビトロ培養物(無血清DMEM)中の正常ヒト筋細胞の可視像である。
【図18】図18は、10nMのペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)の存在下において、処置から1、3、6、24時間後の異なるヒト癌細胞株(A431:ヒト表皮癌、MCF−7:ヒト乳癌、DU−145:ヒト前立腺癌、UM−UC−3およびT24:ヒト膀胱癌、Na8:ヒト黒色腫)の細胞生存性試験を示す。細胞成長阻害の割合(%)は、コントロールに対する生存細胞の割合によって計算されている。
【図19A】図19は、ヒト表皮癌細胞株A431におけるペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)のアポトーシスの効果を測定するためのFACSアネキシンV染色プロトコールに相当する。表皮癌細胞株A−431は、0分(T0)、30分(T30)、60分(T60)、180分(T180)、360分(T360)の間、10nMのペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)それぞれを用いて処置が施された。アネキシンV−FITC結合の変化はFACSにより分析された(図19A:p−EGF(太線)とp−IRR(細線)によって引き起こされたアポトーシスの比較)。
【図19B】図19Bは、ペプタボディによって引き起こされたアポトーシスの時間経過を示す。
【図20】図20は、非還元条件下または還元条件でのペプタボディのSDS−PAGE分析に相当する。MDP01:ペプタボディEGF、MDP03:ペプタボディGBP、MDP00:イレレバントなペプタボディ。
【図21】図21は、MTT法によるがん細胞の細胞毒性試験を示す。がん細胞は、濃度2μg/mlのペプタボディ、またはEGFRに特異的なモノクローナル抗体とインキュベートさせた。
【図22】図22は、イレレバントなペプタボディMDP00のDNA配列およびタンパク質配列を示す。斜字は開始コドンATG(メチオニン)および終止コドンTAA(*)であり、太字はエンハンサーペプチドであり、下線はHisタグであり、文字飾りのない文字はヒトCOMPであり、斜字かつ太字はヒンジ部位(ヒト由来)である。
【図23】図23は、ペプタボディEGF:MDP01のDNA配列およびタンパク質配列を示す。斜字は開始コドンATG(メチオニン)および終止コドンTAA(*)であり、太字はエンハンサーペプチドであり、下線はHisタグであり、文字飾りのない文字はヒトCOMPであり、斜字かつ太字はヒンジ部位(ヒト由来)であり、太字かつ下線は上皮成長因子(EGF)である。
【図24】図24は、ペプタボディGBP:MDP03のDNA配列およびタンパク質配列を示す。斜字は開始コドンATG(メチオニン)および終止コドンTAA(*)であり、太字はエンハンサーペプチドであり、下線はHisタグであり、文字飾りのない文字はヒトCOMPであり、斜字かつ太字はヒンジ部位(ヒト由来)であり、太字かつ下線は成長阻害ペプチド(GBP)である。
【図25】図25は、異なるエンハンサーに融合されたデカボディの産生に関する。図25には、SDS−PAGE後にクマシンブルー染色された、細菌発現系を用いて産生されたデカボディが示されている。A)は不溶性画分に相当し、B)は可溶性画分に相当する。
【図26】図26は、異なるエンハンサーに融合されたペプタボディの産生に関する。図26には、SDS−PAGE後にクマシンブルー染色された、細菌発現系を用いて産生されたペプタボディのウエスタンブロット分析の結果が示されている。検出は、尿素による変性バクテリア分画に対して抗His抗体を用いて行われた。
【図27】図27は、pQE−09のプラスミドマップを示す。
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は多量体分子に関し、該多量体分子は上皮成長因子受容体(epidermal growth factor)に結合する。特に、本発明は上皮成長因子受容体のメンバーに結合する、単離された組み換え融合ペプタボディに関し、この単離された組み換え融合ペプタボディは、前記受容体の発現が病原性の表現タイプと関連する疾患の治療に用いることができる。そのような疾患の例は、前立腺がん、膀胱がん、乳がん、頭頚部がん、および黒色腫である。また、単離された組み換え融合ペプタボディをコードする核酸、ならびに、単離された組み換え融合ペプタボディを活性物質として含むキットおよび医薬組成物が開示される。さらに、前記ペプタボディの製造方法、ならびにがんの治療または予防のための薬剤を調製するため前記ペプタボディの使用が提供される。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
近年の研究は、ヒト悪性腫瘍の病因および発生において、成長因子受容体チロシンキナーゼが担っている重要な役割を明らかにした。これらの生体受容体は、受容体を発現する細胞の膜中に膜貫通ドメインによりつなぎとめられている。細胞外ドメインは成長因子に結合する。細胞外ドメインに成長因子が結合することにより、細胞内のキナーゼドメインにシグナルが伝達される。このシグナル伝達は細胞の増殖および分化を引き起こす。
【0003】
上皮成長因子(EGF)受容体ファミリーのメンバーは、重要な成長因子受容体チロシンキナーゼである。最初に発見されたEGF受容体ファミリーの成長因子受容体は、分子量約165kDaの糖タンパク質だった。この糖タンパク質は、メンデルソン(Mendelsohn)らにより米国特許第4,943,533号中で述べられているが、EGFリセプターとして知られている。EGFまたはトランスフォーミング増殖因子α(transforming growth factor alpha (TGF-alpha))がEGF受容体に結合することにより、細胞の成長が引き起こされる。
【0004】
EGF受容体ファミリーの別の成長因子受容体は、erbB−2と呼ばれ、HER2またはp185としても知られている(コウセンス他,サイエンス,第230巻,1132−1139頁,1985年(Coussens et al., Science, 230 (1985), 1132-1139);ヤマモト他,ネイチャー,第319巻,230−234頁,1986年(Yamamoto et al., Nature 319 (1986), 230-234))。ErbB−2受容体は、c−erbB−2遺伝子によって発現されるが、ヒトneuがん遺伝子によって発現されるタンパク質と一致する。ErbB−2のアミノ酸配列は、EGF受容体のアミノ酸配列と異なるものの、非常に高い相同性を有する。ErbB−2はがん治療の効果的なターゲットと考えられている。ハーセプチンは抗ErbB−2モノクローナル抗体であり、ErbB−2を過剰発現する転移性乳がんの治療に現在使用されており、有効な結果が得られている。
【0005】
EGF受容体ファミリーの別のメンバーは、erbB−3/HER−3(クラウス他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第86巻,9193−0197頁,1989年(Kraus et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989), 9193-9197);プロウマン他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第87巻,4905−4909頁,1990年(Plowman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87 (1990), 4905-4909))、erbB−4/HER−4(プロウマン他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第90巻,1746−1750頁,1993年(Plowman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90 (1993), 1746-1750))である。
【0006】
多くの受容体チロシンキナーゼは、ヒトの腫瘍上で著しく多数存在していることが明らかになっている。例えば、上皮由来の多くの腫瘍は、細胞膜上にEGF受容体を過剰に発現する。上皮成長因子受容体(EGFR)は、成長、増殖などを制御することにより細胞の生存において中心的な役割を果たしている。この受容体の活性化は、リガンドの結合とそれに続く二量体化(二つの受容体の会合)によって引き起こされる。EGFRは通常の細胞の機能の維持および生存において重要であるが、EGFRの発現は腫瘍の成長および生存に明らかに貢献している。ErbBシグナルの制御不全は、遺伝子の増幅およびErbBの変異を含むさまざまな仕組みによって引き起こされ、遺伝子の増幅およびErbBの変異は、受容体の転写、翻訳、またはタンパク質の安定性を増加させる。EGF受容体を発現する腫瘍の例には、膠芽腫のほか、肺がん、乳がん、頭頸部がん、および膀胱がんなどが含まれる。腫瘍細胞の膜上でのEGF受容体の増幅および/または過剰発現は、予後不良と関連がある。
【0007】
細胞外ドメインに特異的なモノクローナル抗体(MAb)、チロシンキナーゼ(TK)ドメインのインヒビター(受容体の活性化のために必要)、およびアンチセンス治療を含むErbBファミリー受容体をターゲットにしたさまざまなアプローチが開発されている。
【0008】
腫瘍抗原に対する抗体(特にモノクローナル抗体)は、潜在的な抗腫瘍治療薬として研究されている。そのような抗体は、多数の機構を介して腫瘍の成長を抑えることができる。例えば、抗体は、抗体依存性細胞障害(ADCC)または補体依存性細胞障害(CDC)を介して、腫瘍の成長を免疫学的に抑えることができる。
【0009】
あるいは、抗体は、成長因子が受容体に結合することに競合し、受容体を発現する腫瘍の成長を抑制する。別のアプローチでは、腫瘍抗原に特異的な抗体に毒素を結合させることが挙げられる。抗体部位が腫瘍に結合し、その腫瘍は毒素部位によって殺される。
【0010】
抗腫瘍剤としての抗体および抗体断片の使用は有望であるが、克服しなければならない欠点がある。例えば、モノクローナル抗体はハイブリドーマ中で産生される。しかしながら、商業ベースの製造におけるハイブリドーマの使用は、バクテリアのような他の発現系の利用に比べて非効率的である。さらに、モノクローナル抗体は通常、ヒト以外の動物中で生成される。そのようなモノクローナル抗体はヒトの抗原(免疫源)となる。この免疫抗原性は、そのようなモノクローナル抗体を用いたヒトの治療効果を制限する。
【0011】
EGFR TKの活性を妨げる薬剤の利用は、EGFR経路を抑制する2番目のアプローチであった。インヒビターはTKドメインに結合するATPと競合し、自己リン酸化の減少を引き起こす。インヒビターの例としては、アストラゼネカ(スウェーデン)のZD1839、ノバルティス(スイス)のPKI−166、およびグラクソスミスクライン(イギリス)のGSK572016が挙げられる。
【0012】
MAbとTKインヒビターとの間には薬理学的および機構的違いがあるものの、前臨床試験はこれらの両方が細胞の増殖を抑制し、標準的な治療との組み合わせで付加的および相乗的な細胞毒性を有することを示唆している。
【0013】
アンチセンス技術は、興味深く有望ながん治療の戦略として注目されているが、臨床での実用に至るためには更なる開発が必要とされる。
【0014】
ほんの数年前、「ペプタボディ」と名づけられた有望な新しいタイプの結合活性(avidity)分子が開発された(テルスキク他,「ペプタボディ:新しいタイプの高結合活性タンパク質」,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第94(5)巻,1663−1668頁,1997年(Terskikh et al., 1997, “Peptabody: a new type of high avidity binding protein” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94(5): 1663-8))。このペプタボディ分子は、2つより多いユニットを含むオリゴマーとして、国際特許公開番号第9818943号(カジャバ(Kajava)他)に開示されており、それぞれのユニットは、オリゴマー化可能なペプチド性ドメインと、アクセプター(リガンド)結合ドメインとを含む。このオリゴマー化ドメインは、抗体でもなく、または定常領域の機能性抗体断片でもない。また、このオリゴマーの利用および合成が記述されている。多量体化ドメインは、ヒト軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド(COMP)からならなり、ヒンジ部位またはスペーサ(ヒトIgAの19アミノ酸残基)と融合している。このペプタボディの結合ドメインは短いペプチドリガンドであり、ヒンジ部位のC末端部位に位置する。この五量体分子は、モノクローナル抗体と比較して、有効な受容体をターゲットとする場合に2つの主要な利点を有する。
【0015】
−協同的な結合により、ターゲットの受容体に対する結合活性を劇的に増加させることができる。
【0016】
−受容体の架橋により、ターゲットの細胞上で強い生体効果を誘発させることができる。
【0017】
ペプタボディ分子のコンセプトは、ターゲット分子を高発現する細胞に強く結合し、その一方で、ターゲット分子をあまり発現しない細胞にはあまり結合しないことである。
【0018】
モノマーのポリペプチド鎖が短いため、オリゴマーは化学的に合成可能である。ペプチドリガンドのN末端部位で最初にコア分子が合成され(例えば、五量体化ドメインおよびリンカー)、次いで、そのサンプルを切断して、異なるペプチド配列がN末端に合成される。これにより、短いペプチドのオリゴマー化によって再生の問題を回避し、比較的複雑なタンパク質(単鎖Fvフラグメントなど)のオリゴマー化において従来経験された発現の困難さを解決することができる。
【0019】
ErbB−2受容体と特異的に反応する五量体ペプタボディ分子を合成する試みが最近報告された(ホイメル他,「ペプチドの選択、ならびにErbB−2受容体と特異的に反応する5量体ペプタボディの合成」,インターナショナル ジャーナル オブ キャンサー,第92巻,748−755頁,1997年(Houimel et al., (1997) “Selection of peptides and synthesis of pentameric Peptabody molecules reacting specifically with ErbB-2 receptor” Int. J.Cancer, 2001; 92: 748-755))。ErbB−2の細胞外ドメインタンパク質(ECD)に結合するヘキサペプチド(6アミノ酸残基)がファージディスプレイライブラリーから選抜され、上述のような五量体ペプタボディ分子をコンストラクトするために使われた。
【0020】
しかしながら、ペプタボディによってアポトーシスが引き起こされるという証拠は発表されていない。観察された増殖抑制はおそらく、部分的なアゴニストとしての効果によるものか、あるいは、抗ErbB−2 Mabに関して述べられている、受容体二量化の抑制効果によるものであろう(ハワース他,「部分的なリガンドアゴニストとしてのErbB−2受容体機能の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体」,ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー,第267巻,15160−15167頁,1992年(Harwerth et al. “Monoclonal antibodies against the extracellular domain of ErbB-2 receptor function as partial ligand agonist” J. Biol. Chem. 1992; 267: 15160-7))。実際のリガンドに比べて、選択されたヘキサペプチドのアフィニティーが比較的弱いことから、より長いペプチド分子を作り出す必要性が示唆される。しかしながら、その複雑さのため、このタイプの組み換え融合ペプタボディの産生はこれまで報告されていない。
【0021】
近年の研究は、上皮成長因子受容体(EGF−R,erbB−1)を過剰発現する腫瘍が予後不良と関連があることを裏付けている(メンデルソン ジェー,「がん治療のために上皮成長因子受容体をターゲットとすること」,第20巻,1S−13S,2002年(Mendelsohn J (2002) “Targeting the epidermal growth factor receptor for cancer therapy” J. Clin. Oncol. 20:1S-13S))。このため、十分な効果が得られ、低いコストで生産が可能であり、ヒトにおける免疫原性がわずかであるかまたは無く、かつ、腫瘍細胞上で高発現する上皮成長因子受容体のメンバー(特にErbB−1)に高親和性にて結合できる、「ペプタボディ」のような改良された抗腫瘍剤が引き続き求められている。
【発明の開示】
【0022】
本発明の目的は、上述の技術の有利な特徴を兼ね備えた新しい抗腫瘍剤を提供することである。
【0023】
[発明の要旨]
上述の内容から明らかなように、本発明の目的および他の目的は、抗腫瘍剤として高い潜在性を有する新しい組み換え融合ポリペプチドの産生によって達成されている。第1の態様によれば、本発明の目的は、特定の腫瘍細胞の成長を抑制するのに有用な上皮成長因子受容体のメンバーに結合する、単離された組み換え融合ペプタボディを提供することである。また、上述の単離された組み換え融合ペプタボディをコードする核酸、上述の組み換え融合ペプタボディを活性物質として含むキットおよび医薬組成物も開示されている。さらに、上述の単離された組み換え融合ペプタボディの製造方法、ならびにがんの治療または予防のための薬剤の調製のために上述の単離された組み換え融合ペプタボディを使用することが提供される。
【0024】
本発明の他の目的および利点は、以下の詳細な記述(リファレンスとそれに伴う図解そしてそれに付随する請求項)を参照することにより、当業者に明らかであるだろう。
【0025】
[発明の詳細な説明]
ここで用いられるように、以下の定義は本発明の理解を容易にするために提供される。
【0026】
国際特許公開番号第9818943号(カジャバ(Kajava)他)中で開示され、その特許全体を参照することによってここに組み込まれているように、「ペプタボディ」とは、異常な細胞シグナルを誘導するための多量体の概念を用いる、高い結合活性を有する分子を指す。多量体ドメインは、ヒト軟骨オリゴマーマトリクスタンパク質(COMP)の一部であり、ヒンジ部位またはスペーサ(好ましくは、ヒトIgA由来の19アミノ酸を含む)と、アクセプター(リガンド)に結合できるドメイン(結合ドメイン)とに融合されている。ペプタボディは、効果的な受容体を標的にするモノクローナル抗体に対して2つの主要な利点を有する;1)協同的に結合することによって、標的受容体の結合活性を劇的に増加できること、ならびに、2)受容体に対して強固に架橋することにより、細胞の成長阻止および/またはアポトーシスを引き起こす強力な生体効果を標的細胞上で引き起こすことができること(図1参照)である。ペプタボディ分子のコンセプトは、標的分子を高発現する細胞に強力な結合することであり、その一方で、標的分子を低発現する細胞は、ペプタボディの結合にとって都合が悪い。「デカボディ」は、10のアームを有し、その結果10の結合ドメインを有する点で異なるが、同じ原理に基づいて構築される。これらの分子が必ずしも明確に述べられていないとしても、本発明の保護の範囲はデカボディ分子にまで及ぶ。
【0027】
「ErbB受容体」のメンバーは、ErbB受容体ファミリーに属する受容体タンパク質チロシンキナーゼであり、EGFR,ErbB3,ErbB4受容体ならびに将来同定されるであろうこのファミリーの他のメンバーを含む。ErbB2受容体はこの定義に含まれず、これにより、本発明に係る単離された組み換え融合ペプタボディの標的ではない。ErbB受容体は一般に、ErbBリガンドと結合可能な細胞外ドメイン;脂溶性の膜貫通ドメイン;保存された細胞内チロシンキナーゼドメイン;およびリン酸化されうるいくつかのチロシン残基を有するカルボキシル末端シグナリングドメインを含む。ErbB受容体は、「本来の配列(native sequence)」であるErbB受容体、またはその「アミノ酸配列変異体」であってもよい。ErbB受容体は、本来の配列を有するヒトErbB受容体であるのが好ましい。
【0028】
「ErbB1」、「上皮成長因子受容体」、および「EGFR」という用語は、ここでは相互交換的に使用され、例えば、カーペンター他,アニュアル レビュー バイオケミストリー,第56巻,881−914頁,1987年(Carpenter et al. Ann. Rev. Biochem. 56:881-914 (1987))に開示されているように、自然発生する分子種またはその変異体(例えば、ハンフレイ他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第87巻,4207−4211頁,1990年(Humphrey et al. PNAS (USA), 87:4207-4211 (1990))における欠失変異体EGFR)を含む。erbB1という用語は、EGFRタンパク質をコードする遺伝子を指す。
【0029】
「ErbB2」および「HER2」という用語は、ここでは相互交換的に使用され、例えば、センバ他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第82巻,6497−6511頁,1985年(Semba et al, PNAS (USA), 82:6497-6501 (1985))、およびヤマモト他,ネイチャー,第319巻,230−234頁,1986年(Yamamoto et al. Nature, 319:230-234 (1986))(遺伝子バンク受入番号X03363)で述べられているヒトHER2タンパク質を指す。「erbB2」という用語は、ErbB2をコードする遺伝子を指し、「neu」はラットのp185をコードする遺伝子を指す。上記に定義されたように、ErbB2受容体は本発明の単離された組み換え融合ペプタボディの標的ではなく、本発明の範囲から除外される。
【0030】
「ErbB3」および「HER3」は、例えば、クラウス他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第86巻,9193−0197頁,1989年(Kraus et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86 (1989))、ならびに米国特許第5,183,884号特許および米国特許第5,480,968号特許に開示されているような受容体ポリペプチドを指す。
【0031】
「ErbB4」および「HER4」という用語は、ここでは、欧州特許第599274号;プロウマン他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第90巻,1746−1750頁,1993年(Plowman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:1746-1750(1993));プロウマン他,ネイチャー,第366巻,473−475頁,1993年(Plowman et al., Nature, 366:473-475(1993))で開示されているような受容体ポリペプチドを指し、例えば、国際公開公報第99/19488号で開示されいるような分子種およびその変異体も含まれる。
【0032】
「ErbBリガンド」は、ErbB受容体に結合する、および/またはErbB受容体を活性化するポリペプチドを意味する。EGFファミリーのリガンドは、性質の異なる受容体のホモダイマーおよびヘテロダイマーに結合しかつ活性化する能力に基づいて、3つのグループに分類される(ロペス−トレジョン他,「EGFファミリーの他のメンバーからモデル化されたヒトベータセルリン構造」,ジャーナル オブ モレキュラー モデル,第8巻,131−144頁,2002年(Lopez-Torrejon et al., 2002 “Human betacellulin structure modelled from other members of EGF family” J. Mol. Model. 8:131-44)。第1のグループは、EGF、アンフィレグリン、およびトランスフォーミング増殖因子α(TGF−α)からなり、EGFRに直接結合する。第2のグループは、複数のヘレグリンによって構成され、ErbB−3またはErbB−4とヘテロダイマーの形態で結合することが必要である。第3のグループは、EGFRまたはErbB−4の一方に結合するため、二重特異性リガンドである。ベータセルリン、ヘアピン結合−上皮成長因子、およびエピレグリンがこのグループに含まれる。
【0033】
ここで特に興味深いErbBリガンドは、上皮成長因子(EGF)(サバージ他,ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー,第247巻,7612−7621頁,1972年(Savage et al., J. Biol. Chem. 247:7612-7621 (1972))、トランスフォーミング増殖因子α(TGF−α)(マークアルト他,サイエンス,第223巻,1079−1082頁,1984年)、シュワノーマ(schwanoma)、ケラチノサイトオートクリン成長因子としても知られているアンフィレグリン(ショヤブ他,サイエンス,第243巻,1074−1076頁,1989年(Shoyab et al. Science, 243:1074-1076(1989));キムラ他,ネイチャー,第348巻:257−260頁,1990年(Kim ura et al. Nature, 348:257-260(1990));クック他,モレキュラー セル バイオロジー,第11巻,2547−2557頁,1991年(Cook et al. Mol. Cell. Biol. 11:2547-2557 (1991)))、
ベータセルリン(シン他,サイエンス,第259巻,1604−1607頁,1993年(Shing et al., Science 259:1604-1607 (1993));ササダ他,バイオケミストリー アンド バイオフィジックス リサーチ コミュニケーション,第190巻,1173頁,1993年(Sasada et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 190:1173 (1993))、ヘアピン−結合上皮成長因子(HB−EGF)(ヒガシヤマ他,サイエンス,第251巻,936−939頁,1991年(Higashiyama et al., Science, 251:936-939 (1991))、エピレグリン(トヨダ他,ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー,第270巻:7495−7500頁,1995年(Toyoda et al., J. Biol. Chem. 270:7495-7500 (1995))およびコムラサキ他,オンコジーン,第15巻,2841−2848頁,1997年(Komurasaki et al. Oncogene, 15:2841-2848 (1997))、ヘレグリン(以下参照)、ニューレグリン−2(NRG−2)(キャラッウェイ他,ネイチャー,第387巻,512−516頁,1997年(Carraway et al., Nature, 387:512-516 (1997))、ニューレグリン−3(NRG−3)(チャン他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第94巻,9562−9567頁,1997年(Zhang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 94:9562-9567 (1997))、ニューレグリン−4(NRG−4)(ハラリ他,オンコジーン,第18巻,2681−2689頁,1999年(Harari et al. Oncogene, 18:2681-89(1999))、クリプト(CR−1)(カナン他,ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー,第272(6)巻:3330−3335頁,1997年(Kannan et al. J. Biol. Chem. 272(6):3330-3335 (1997))のような、本来の配列を有するヒトErbBリガンドである。EGFRに結合するErbBリガンドは、EGF、TGF−α、アンフィレグリン(amphiregulin)、ベータセルリン(betacellulin)、HB−EGF、そしてエピレグリン(epiregulin)を含む。ErbB3に結合するErbBリガンドは、複数のヘレグリン(heregulin)を含んでいる。ErbB4に結合可能なErbBリガンドは、ベータセルリン、エピレグリン、HB−EGF、NRG−2、NRG−3、NRG−4、およびヘレグリンを含む。ウイルス性成長因子VGF、SFGF(shope fibroma growth factor)、MGF(Myxoma Growth Factor)のような生理活性を有するEGF様リガンドはまた、本発明に含まれる。
【0034】
「本来の配列」ポリペプチドとは、自然界から得られるポリペプチド(例えば、ErbB受容体またはErbBリガンド)と同じアミノ酸配列を有する配列をいう。このような本来の配列ペプチドは、自然界から単離されるか、あるいは、組み換えまたは合成的手段によって産生可能である。これにより、本来の配列ポリペプチドは、ヒトのポリペプチド、マウスのポリペプチド、または他の哺乳類種由来のポリペプチドにおいて、自然に生ずるアミノ酸配列を有する。
【0035】
「断片」は、上皮成長因子受容体に結合可能なポリペプチドの各配列の全長の少なくとも50%のアミノ酸を共有する配列を指す。これらの配列は、それらが由来する本来の配列と同じ性質を示す限り使用可能である。これらの配列は、EGFRに結合可能なポリペプチドの本来の配列の全長の少なくとも70%のアミノ酸を共有しているのが好ましく、80%より多く共有しているのがより好ましく、90%より多く共有しているのが特に好ましい。
【0036】
本発明はまた、上皮成長因子受容体に結合可能な上述の配列の変異体を含む。「アミノ酸配列変異体」または「変異体」という用語は、本来の配列ポリペプチドからある程度異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指し、すなわち、「アミノ酸配列変異体」または「変異体」は、保存性アミノ酸の置換により、本来の配列とは異なるアミノ酸配列であり、これにより、1つないしそれ以上のアミノ酸が同じ性質を有する別のアミノ酸で置換されている。通常、アミノ酸配列変異体は、本来のErbBリガンドの少なくとも1つの受容体結合ドメイン(または本来のErbB受容体の少なくとも1つのリガンド結合ドメイン)と少なくとも約70%の相同性を有することができ、そのような受容体結合ドメイン(またはリガンド結合ドメイン)と、約80%以上の相同性を有するのが好ましく、約90%以上の相同性を有するのがより好ましい。アミノ酸配列変異体は、本来のアミノ酸配列内のアミノ酸配列中の所定の部位に、置換、欠失、および/または挿入を有する。ここで、保存性アミノ酸の置換は例えば、以下の5つの群のうちの1つにおける交換として定義される。
【0037】
I. 小さく、非極性または僅かな極性を有する脂肪族残基:Ala, Ser, Thr, Pro, Gly
II. 極性を有し、正に帯電している残基:His, Arg, Lys
III. 極性を有し、負に帯電している残基およびそのアミド:Asp, Asn, Glu, Gln
IV. 大きく、芳香性の残基:Phe, Tyr, Trp
V. 大きく、非極性の脂肪族残基:Met, Leu, Ile, Val, Cys
「相同性」は、必要に応じて、相同性を最大にするために、配列のアライメントを行ないかつギャップを導入した後に、一致したアミノ酸配列変異体中の残基の割合として定義される。アライメントのための方法およびコンピュータプログラムは当該技術分野で良く知られている。そのようなコンピュータプログラムの一つが、ジェネンテック社(Genentech, Inc.)によって製作された「アライン2(Align 2)」であり、米国著作権協会(the United States Copyright Office)の使用者証拠書類に申請されている(ワシントンD.C.20559,1991年12月10日)。
【0038】
ペプタボディの「エンハンサー」配列は、真核細胞または原核細胞の発現システムにおいて、ペプタボディまたはデカボディの産生を有意に増加させるために、単離された組み換え融合ペプタボディまたはデカボディのN末端部位に配置されたペプチド配列である。
【0039】
ここで用いられている「プロモーター」とは、遺伝子の発現を制御する核酸配列を指す。「プロモーター配列」は、細胞内のRNAポリメラーゼと結合でき、かつ、下流(3’方向)のコーディング配列の転写を開始できるDNA制御部位である。プロモーター配列内では、RNAポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)とともに、(ヌクレアーゼS1によるマッピングによって都合よく定義される)転写開始部位が検出されうる。真核生物のプロモーターは、常にではないがしばしば、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含む。原核生物のプロモーターは、10−35配列のコンセンサス配列に加えて、シャイン・ダルガーノ配列を含む。
【0040】
核酸配列が別の核酸配列と機能的な関係に置かれたときに、前記核酸配列は「機能するように結合」される。例えば、プレ配列(presequence)または分泌リーダー(secretory leader)のDNAが、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドのDNAが機能するように該ポリペプチドのDNAに結合されているといえる。プロモーターがコーディング配列の転写に影響を与える場合、プロモーターはコーディング配列が機能するようにコーディング配列と結合されているといえる。あるいは、リボゾーム結合部位が翻訳を容易にするように配置されている場合、リボゾーム結合部位はコーディング配列が機能するようにコーディング配列と結合されているといえる。結合は、便利な制限酵素部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合、合成されたオリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが慣習的な実務に基づいて使用される。
【0041】
本発明において、「単離された」および「精製された」という用語は、本発明の組み換え融合ペプタボディまたはその組み換え融合ペプタボディをコードする核酸が存在する状態を指す。ペプタボディ分子および核酸は、それらの調整がin vitroまたはin vivoで組み換えDNA技術により行われる場合、自然界またはそれらが調製される環境(例えば培養細胞)で見られる、自然に相互作用する(他のポリペプチドまたは核酸などの)物質から遊離または実質的に遊離であろう。
【0042】
「精製されたDNAを真核または原核宿主細胞に導入する」または「形質転換」という用語は、付随する物質を用いてまたは付随する物質を用いずに、細胞外のDNAを宿主細胞に導入する方法に言及する。「形質転換された細胞」という用語は、細胞外DNAが導入され、その細胞外DNAを定着させた細胞を意味する。そのDNAは、核酸が染色体の統合体として複製可能となるか、あるいは、染色体外の成分として複製可能となるように、細胞に導入される。
【0043】
ここで、「宿主細胞」および「組み換え宿主細胞」という用語は相互交換可能に用いられ、本発明の1以上のDNAまたはベクターが導入された真核細胞または原核細胞を示す。そのような用語は、特定の細胞だけでなく、その細胞の子孫または潜在的な子孫も指すと理解される。変異または環境の影響によって、ある種の改変が次の世代で起こるかもしれないため、そのような子孫は実際には親細胞と一致しないかもしれないが、ここで用いられているように、そのような子孫はこの用語の範囲に含まれる。
【0044】
「真核細胞」は、真核生物由来のあらゆる哺乳類または非哺乳類細胞を指す。具体例を制限しないことにより、細胞培養の条件下で維持でき、次いでトランスフェクトされうるあらゆる真核細胞は本発明に含まれる。特に望ましい細胞種は、例えば、幹細胞、胚性肝細胞(ES細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、COS、BHK21、NIH3T3、HeLa、C2C12、癌細胞、および初代分化細胞または未分化細胞である。その他の適当な宿主細胞は、当業者によって知られている。
【0045】
「アポトーシス」または「ネクローシス(壊死)」を引き起こすペプタボディは、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の膨張、細胞の断片化、および/または膜小胞体の形成(アポトーシス小体)の形成によって決定されるように、計画細胞死を引き起こす分子である。その細胞は通常、ErbB受容体を過剰発現する。その細胞は例えば、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、胃がん、子宮内膜腫、唾液腺がん、肺がん、腎臓がん、大腸がん、甲状腺がん、または膀胱がんのような腫瘍細胞であるのが好ましい。in vitroで、その細胞はSK−BR−3、BT474、Calu 3細胞、MDA−MB−453、MDA−MB−361、SKOV3細胞であることができる。アポトーシスに関連する細胞事象を評価するために、さまざまな方法が利用できる。例えば、フォスファチジルセリン(PS)の細胞外露出は、アネックス(annex)の結合によって測定され、DNAの断片化は、DNAラダーリングにより判断され、そして、DNAの断片化に伴う核/クロマチンの凝集は、低二倍体細胞の増加によって判断される。
【0046】
「治療」は、治療処置、ならびに予防的または予防処置の両方を指す。治療が必要な処置には、疾患が予防するための処置とともに、疾患の治療が含まれる。ここで、処置される哺乳類は、その疾患にかかっていると診断されているか、あるいは、その疾患にかかりやすいかまたは影響されやすいだろう。
【0047】
処置の対象となる「哺乳類」は、ヒト、家庭用および農業用の動物、動物園用動物、スポーツ用動物、または愛玩動物を含めた哺乳類(犬、馬、猫、牛、猿など)として分類されるあらゆる動物を指す。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0048】
「治療上有効な量」という用語は、動物の病気または疾患を治療するのに有効な薬剤の量を指す。がんの場合、治療上有効な量の薬剤は、がん細胞の数を減少させたり、腫瘍の大きさを減少させたり、周囲の組織への浸潤を抑制したり(換言すれば、ある程度遅くしたり、好ましくは止める)、腫瘍の転移を抑制したり(換言すれば、ある程度遅くしたり、好ましくは止める)、腫瘍の成長をある程度抑制したり、および/またはがんに関連する1以上の症状をある程度軽減したりする。
【0049】
薬剤は、存在しているがん細胞の成長を抑制したりまたは殺したりすることができる程度に、細胞成長抑制性および/または細胞毒性を有することができる。ここで、「治療上有効な量」という用語は、標的となる細胞塊、がん細胞または腫瘍のグループの成長または進行あるいは細胞分裂活性の臨床的に重要な変化、あるいは他の病理的特徴を妨げるのに十分な量を意味し、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%を有意に減少するのに十分な量を意味する。
【0050】
「がん」および「がんの」という用語は、無秩序な細胞の成長によって一般的に特徴づけられた哺乳類の生理的状態を示す。がんの例は、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫(脂肪肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍、中皮腫、神経鞘腫、髄膜腫、腺腫、黒色腫、白血病、リンパ性悪性腫を含むがこれらに制限されない。そのようながんのより特異的な例は、扁平上皮がん(例えば上皮性扁平上皮がん)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の悪性腫瘍、肺の燐片悪性腫瘍、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がんを含む胃がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頚部がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝腫瘍、乳がん、大腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜腫瘍、子宮腫瘍、唾液腺腫瘍、腎臓がん、腎がん、前立腺がん、陰唇がん、甲状腺がん、肝腫瘍、肛門腫瘍、陰茎がん、精巣がん、食道がん、胆道がんや、頭頸部がんである。
【0051】
「ErbB発現がん」は、細胞表面に存在するErbBタンパク質を有する細胞を含むがんである。
【0052】
ErbB受容体の「過剰活性によって特徴づけられる」がんは、がん細胞のErbB受容体の活性の程度が、同じ組織種の非がん細胞のErbB受容体の活性レベルよりも有意に高いがんである。そのような過剰活性は、ErbB受容体の過剰発現、および/または、がん細胞のErbB受容体を活性化するのに有効なErbBリガンドが通常以上のレベルになることにより引き起こされるだろう。
【0053】
そのような過剰活性化は、がん細胞の悪性度を引き起こしたり、および/または、がん細胞の悪性度によって引き起こされたりするだろう。一実施形態によれば、ErbB受容体の過剰活性化を生ずる原因となる、ErbB受容体の増幅および/またはErbB受容体の過剰発現が起こっているかどうかを決定するために、そのがんは診断評価または進行評価の対象となるだろう。代替的にまたは付加的に、ErbB受容体の過剰活性化に起因するがんに、ErbB受容体の増幅および/またはErbB受容体の過剰発現が起こっているかどうかを決定するために、そのがんは診断評価または進行評価の対象となるだろう。
【0054】
ErbB受容体を「過剰発現している」がんは、同じ組織種の非がん細胞に比べて、その細胞表面上にErbB受容体(ErbB1など)が有意に高いレベルで存在しているがんである。そのような過剰発現は、遺伝子の増幅によって、あるいは転写または翻訳の増加によって引き起こされる。ErbB受容体の過剰発現は、細胞表面上に存在するErbBタンパク質の増加レベルを判断することによって(例えば免疫染色試験IHCによって)、診断評価および進行評価にて決定可能である。
【0055】
「含む(comprise)」という用語は一般に、「含有する(include)」の意味で使用され、すなわち、1つ以上の特徴または成分の存在を認めることをいう。
【0056】
「薬学的に許容できる」という表現は、生理学的に許容でき、ヒトに投与された場合、アレルギーまたは類似する都合が悪い反応(胃腸不良、めまいなど)を一般に引き起こさない分子の存在および組成物を指す。
【0057】
ペプタボディの非ヒト部分(例えばマウス)の「ヒト化された(humanized)」という用語の形態は、特に、ヒト化された軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド、および免疫グロブリンポリペプチドのヒンジ部位の一部であり、非ヒト免疫グロブリンから誘導された最小限の配列を含むキメラ部位を指す。
【0058】
「キメラ(な)」部分はその配列の機能部位を含むことができるアミノ酸配列を指し、当業者に知られている分子生物学的手法によって得ることができる。
【0059】
「キメラタンパク質」は、異なる起源に由来する2つ以上のポリペプチドを含み、すなわち、自然界では同時に発生しないタンパク質を指す。
【0060】
本発明にかかるポリペプチドは、単一のDNA配列によってコードされうる単離された組み換え融合ペプタボディである。単離された組み換え融合ペプタボディは、上皮成長因子受容体のメンバー(ErbB1,ErbB3,ErbB4、好ましくはErbB1)に結合可能である。本発明の単離された組み換え融合ペプタボディは、少なくとも以下の部分を含む。
【0061】
(a)ヒト化またはヒト由来軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位、
(b)ヒンジ部位、および
(c)3次元構造を有するモチーフを少なくとも含む上皮成長因子受容体リガンド
単離された組み換え融合ペプタボディは、上皮成長因子受容体を発現する細胞(好ましくはがん細胞、より好ましくはErbBを発現するがん細胞)において、細胞死(アポトーシスおよび/またはネクローシス)を誘導可能である。ErbB発現がん細胞は、ErbB受容体の過剰な活性化によって特徴付けられる細胞、または、ErbB受容体を「過剰発現する」細胞であるのが好ましい。
【0062】
「三次元構造」または三次構造は、タンパク質全体の三次元構造であり、言い換えれば、タンパク質またはポリペプチドが折り畳まれた立体配座である。タンパク質分子は、複雑な三次元構造に折り畳まれたアミノ酸配列の長い鎖からなる。それはしばしばタンパク質の機能を決定する幾何学的な形である。
【0063】
本発明の上皮成長因子受容体リガンドは長いアミノ酸配列を含み、そのEGFRリガンドは複雑なポリペプチドであるのが好ましく、タンパク質であるのがより好ましい。上皮成長因子受容体リガンドは、全長配列で存在するのが好ましいことは理解されるべきである。表1は、強い親和性および活性を有しつつEGFRに結合するために必要な最小のアミノ酸配列を示し、この最小のアミノ酸配列は、少なくとも10アミノ酸を含み、20アミノ酸を含むのが好ましく、20より多いアミノ酸を含むのがより好ましい。EGFポリペプチドリガンドの場合、EGFRを効果的に活性化するために必要な最小のEGF部位は、タンパク質の折り畳みを引き起こす3つのループ部位に関連する構造モチーフであることが示されている。
【0064】
EGFおよびこの成長因子ファミリーの他の全てのメンバーは、3つのジスルフィド架橋を形成するように位置する、6つの保存されたシステイン残基を有する。2つの保存されたグリシン残基と共同して、この分子は、適当なErbB受容体への結合に必要な三次元骨格を提供する(キャンプベル他,バイオケミストリー bi012016nb00006ファーマコロジー,第40巻,35−40頁,1990年(Campbell et al., 1990. Biochem. Pharmacol. 40, 35-40bi012016nb00006))。システインの間隔に基づいて、これらの分子は、線形のN末端部位、線形のC末端部位、および4番目と5番目のシステインの間の単一のアミノ酸ヒンジ部位(ストーレスター他,バイオケミストリー,第41(13)巻,4292−4301頁,2002年(Stortelers et al., 2002. Biochemistry, 41 (13), 4292-4301))に加えて、3つのループ部位(Aループ(Cys6−Cys20),Bループ(Cys14−Cys31),およびCループ(Cys33−Cys42)とする。)に分類することができる。高親和力の結合は、EGF受容体結合ドメイン中の特定の残基とともに、リガンドの適切な三次元構造を必要とする。
【0065】
単離された組み換え融合ペプタボディは、細胞(好ましくは真核細胞、より好ましくは脊椎動物の細胞、最も好ましくは哺乳類の細胞(例えばヒト細胞))の表面のEGFR分子を認識する。その結合は、細胞表面上の所定の構造に特異的である。結合はまた、高親和力により引き起こされ、5−10nMの結合定数であるのが好ましく、9nMの結合定数であるのがより好ましい。
【0066】
本発明の単離された組み換え融合ペプタボディは、完全にヒト由来であるか、またはヒト化されているのが好ましい。特に、軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチドおよびヒンジ部位は完全にヒト由来であるか、あるいはヒト化されているのが好ましい。オリゴマー化が可能であるペプチド部位(COMP、換言すれば、ヒト化またはヒト軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位の一部)および上皮成長因子受容体のメンバーに結合できるドメインがスペーサを介して結合されることにより、例えば、結合ドメインにより大きな柔軟性をもたらす。例えば、スペーサのプロリン−リッチな配列は、二次構造要素の形成を妨げる結果、固定された3−D構造の結果を妨げると思われる。さらに、一般に非常に硬いと仮定されているスペーサ部位は、プロリン残基の配座の束縛に基因して、マルチバレントな結合の協同性に有益な効果をもたらす。したがって、本発明の好ましい一実施形態によれば、オリゴマー化可能である、ヒト化またはヒト軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位と、上皮成長因子受容体のメンバーに結合可能である、上皮成長因子受容体リガンドとは、免疫グロブリンポリペプチドのヒンジ部位(スペーサ)を介して結合され、このヒンジ部位は、プロリン−リッチな部位を含むのが好ましい。このヒンジ部位は、免疫グロブリンポリペプチドの一部であるのがより好ましい。
【0067】
ヒト化またはヒト軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド(COMP)部位は、オリゴマー化および自己会合化が可能なペプチド性ドメインであることにより、自発的に五量体化することができる。本発明のオリゴマーの好ましい一実施形態は、in vivoおよび/またはin vitroでオリゴマー化が可能な自己会合分子を示す。
【0068】
好ましい実施形態では、単離された組み換え融合ペプタボディは多量体であり、換言すれば、二量体または三量体のペプタボディ分子である。
【0069】
本発明の単離された組み換え融合ペプタボディの構築は、従来の当該分野の技術と以下の点で異なる:ヒンジ部位の一部(好ましくは、免疫グロブリンペプチドの一領域)は、ヒト化軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位のC末端に位置し、上皮成長因子受容体リガンドはヒンジ部位のC末端に位置し、エンハンサー配列はヒト化軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位のN末端に位置する。この違いは、改善された効力およびより良好な産生効率へと導く。
【0070】
さらに、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディは、エンハンサー配列を含むことが好ましい。このエンハンサー配列は、YSFE,YSFED,YSFEDL,YSFEDLY,YSFEDLYR,およびYSFEDLYRR、そのフラグメント、そのキメラ分子、およびその変異体を含む群から選ばれる。N末端にエンハンサー配列が存在すること、そして、好ましくは上述の選ばれたエンハンサーが20−100倍高い産生効率を導くことが示されている(図25および図26参照)。しかしながら、当業者は、本発明の範囲から外れない別の適当なエンハンサー配列を選ぶことができる。
【0071】
上皮成長因子受容体リガンドは、以下の(a)〜(j)を含む群から選択される。
【0072】
(a)上皮成長因子ポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(b)成長阻害ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(c)トランスフォーミング増殖因子αポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(d)プラスマ細胞拡散ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(e)麻痺性ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(f)心作用性ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(g)アンフィレグリンポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(h)ヘパリン−結合上皮成長因子様ポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(i)ベータセルリンポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、および
(j)ウイルス性上皮成長因子様ポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体。
これらのキメラ部分もまた含まれると理解できる。上皮成長因子受容体リガンドの断片は、その断片が由来する本来の配列と同じ性質を示す限り使用可能である。
【0073】
表1は、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディに融合される、さまざまなEGF受容体リガンドを示す。
【0074】
【表1】
【0075】
精製をより容易にするために、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディはさらに、ポリヒスチジン−タグ配列を含む。その精製は、アフィニティークロマトグラフィー、または当業者に知られている他のあらゆる有用な技術によって行なうことができる。アフィニティークロマトグラフィー精製では、単離された組み換え融合ペプタボディポリヒスチジン−タグ配列に特異的に結合するあらゆる抗体が使われる。ポリヒスチジン−タグ配列に特異的に結合する、Ni2+−ニトリロトリ酢酸に結合されたアガロースビーズなどの他のアフィニティー分子もまた、本発明の想定の範囲内である。
【0076】
さらに、単離された組み換え融合ペプタボディのN末端は、少なくとも1つの機能ドメインまたはエフェクター領域(マーカー,酵素領域,または細胞毒素領域など、あるいは、例えばアフィニティークロマトグラフィーで使用可能な金属原子または他の構造化合物に付加的な結合特性を加える領域)を付加することによって修飾されているのが好ましい。エフェクター部位は、当該技術分野で知られている古典的な化学手法を用いて、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディに結合可能である。
【0077】
エフェクター部位の例は、診断目的のために検出可能な分子または検出部位であり、例えば、酵素または特殊な結合特性を有するペプチド(例えば、ストレプトアビジンまたはセイヨウワサビペルオキシダーゼ)である。検出部位はさらに、特異的な同種の検出可能な部位(例えば、標識化されたアビジン)に結合することにより検出可能な化学的部位(ビオチン)を含む。
【0078】
検出部位は蛍光ラベルやMRI−CTイメージングのために当技術分野で通常使われるラベルも含む。多数の蛍光物質が知られており、標識として利用されている。これらの物質は、例えば、フルオレセイン、ローダミン、オーラミン、テキサスレッド、AMCAブルー、ルシフェールイエローを含む。
【0079】
単離された組み換え融合ペプタボディは、3H,14C,32P,35S,36Cl,51Cr,57Co,58Co,59Fe,90Y,121I,124I,125I,131I,111In,211At,198Au,67Cu,225Ac,213bu,99Tc,186Reなどの放射性同位体を検出部位として放射性標識化可能である。放射性ラベルが使用される場合、特殊な結合部位を同定および定量化するために、現在知られている有用なカウント処理が利用可能である。例えば、そのラベルが酵素である場合、検出は、当該研究分野で知られている現在利用可能なあらゆる比色分析法、分光測光法、蛍光分光光度法、電流法、またはガス計量法によって達成可能である。
【0080】
放射性標識化された単離された組み換え融合ペプタボディは、in vitro診断技術およびin vivoの放射性イメージング技術で有用である。本発明の別の態様では、放射性標識化された単離された組み換え融合ペプタボディは、放射免疫治療、特にがんの治療に有用である。また、別の解釈では、放射性ラベルされた単離された組み換え融合ペプタボディは、免疫RIガイド手術技術に有用であり、この場合、そのペプタボディは、がん細胞、前がん細胞、腫瘍細胞、および過剰増殖細胞の存在および/または位置を、このような細胞を除去する手術の前、手術中、または手術後に同定および提示することができる。
【0081】
in vivoイメージングの例としては、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディは、放射性同位体よりもむしろ造影剤に結合させることができ、前記造影剤は、磁気共鳴撮影エンハンサー試薬を含むがそれに制限されない。この場合、例えば、単離された組み換え融合ペプタボディ分子は、キレート剤を介してより多くの常磁性イオンを装填される。キレート剤の例としては、EDTA、ポルフィリン、ポリアミンクラウンエーテル、およびポリオキシムを含む。常磁性イオンの例は、ガドリニウム、鉄、マンガン、レニウム、ユーロピウム、ランタニウム、ホルミウム、およびエルビウムを含む。
【0082】
エフェクター部位は、細胞毒素を含むのが好ましく、換言すれば、エフェクター部位は、細胞の成長を抑制したり、あるいは、細胞の破壊を引き起こしたりできるポリペプチドである。その細胞毒素は、Corynebacterium diphtheriae(コリネバクテリウム ジフテリアエ)由来のジフテリア毒素、Pseudomonas aeruginosa(シュードモナス エルギノサ)由来のエキソトキシン(exotoxin)、Bacillus anthracis(バチルス アンスラシス)由来の炭疽菌毒素、Shigella(シゲラ)由来の志賀毒素、Escherichia coli(エシェリヒア.コリ)由来の志賀様毒素、Bordatella pertussis(ボーダテラ ペルツシス)由来の百日咳毒素、これらの毒素部位などの細菌の細胞毒素である。細菌の毒素は、Pseudomonas aeruginosa(ATCC 25313−25363)由来のエキソトキシンAまたはその毒素部位(例えばドメインII,Ib,および/またはIII)であるのが好ましい。
【0083】
一方、細胞毒素は植物由来であることができる。植物の毒素の例は、リシン(ricin)(ラム他,ヨーロピアン ジャーナル オブ バイオケミストリー,第148巻,265−270頁,1985年(Lamb et al, Eur.J.Biochem. 148, 265-270 (1985)))、アブリン(abrin)(ウッド他,ヨーロピアン ジャーナル オブ バイオケミストリー,第98巻,723−732頁,1991年(Wood et al, Eur.J.Biochem. 198, 723-732 (1991))、サポニン(saporin)のようなリボザイム不活性化タンパク質(ベナッティ他,ヨーロピアン ジャーナル オブ バイオケミストリー,第183巻,465−7470頁,1989年(Benatti et al, Eur.J.Biochem. 183, 465-470 (1989)))、ポークウィード(pokeweed)抗ウイルスタンパク質(カタオカ他,プラント モレキュラー バイオロジー,第20巻,879−886頁,1992年(Kataoka et al, Plant Mol.Biol. 20, 879-886 (1992)))、ゲロニン(gelonin)(ノーラン他,ジーン,第134巻,223−227頁,1993年((Nolan et al, Gene, 134, 223-227 (1993))、トリコサンチン(trichosanthin)(シャウ他,ジーン,第97巻,267−272頁,1991年(Shaw et al, Gene, 97, 267-272 (1991)))である。
【0084】
別の望ましい事例で、そのエフェクター部位は、リボヌクレアーゼ(例えば、ウシ膵臓RNAseA(カルサナ他,ヌクレイック アシッズ リサーチ,第16巻,5491−65502頁,1988年(Carsana et al, Nucleic Acids Res. 16, 5491-5502 (1988)))、ヒトアンジオゲニン(angiogenin)(クラチ他,バイオケミストリー,第24巻,5494−5499頁,1985年(Kurachi et al, Biochemistry, 24, 5494-5499 (1985)))、およびヒト好酸球誘導ニューロトキシン(neurotoxin)(ローゼンバーグ他,プロシーディング オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンセス オブ USA,第86巻,4460−4464頁,1989年(Rosenberg et al, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 86, 4460-4464 (1989)))のような哺乳類由来のリボヌクレアーゼ)を含む。リボヌクレアーゼはヒト由来であるのが最も好ましい。
【0085】
5−フルオロウラシルまたはリシン(ricin)などの他の細胞毒性薬剤、ならびに、細菌性カルボキシペプチダーゼまたはニトロレダクターゼなどの酵素(腫瘍部位にてプロドラッグを活性型薬剤に転換できる)が使用可能である。
【0086】
本発明の単離された組み換え融合ペプタボディは、あらゆる適切な経路を介して治療が必要な患者に投与可能であり、通常、血流または脳脊髄液への注入、あるいは、腫瘍への直接注入またはその周辺部位への注入によって行なわれることができる。その正確な投与量は多くの因子に依存すると考えられ、その多くの因子には、ペプタボディが診断用なのかまたは治療用なのか、腫瘍の大きさおよび位置、ペプタボディの正確な特性、ならびに、単離された組み換え融合ペプタボディに結合された検出可能な標識または機能的な標識の特性が含まれる。
【0087】
放射性核種が治療に用いられる場合、適切な最大投与量は、約45mCi/m2から最大で約250mCi/m2の間である。好ましい投与量は15−40mCiの範囲内であり、20−30mCiまたは10−30mCiであるのがさらに好ましい。
【0088】
本発明の別の主題は、上述の単離された組み換え融合ペプタボディをコードする単離および精製されたDNA、ならびに、この単離および精製されたDNAの複製物を少なくとも1つを含むベクターである。
【0089】
ここで使用されるDNAはあらゆるポリデオキシヌクレオチド配列であり、例えば、二本鎖DNA、一本鎖DNA、一方または両方の鎖が2つ以上の断片から構成されている二本鎖DNA、一方または両方の鎖が解釈できない燐酸エステル骨格を有する二本鎖DNA、1つ以上の一本鎖部位と1つ以上の二本鎖部位を含むDNA、DNA鎖が完全に相補的な二本鎖DNA、DNA鎖の一部のみが相補的な二本鎖DNA、環状DNA、共有結合によって閉じられたDNA、直鎖DNA、共有結合によって架橋されたDNA、cDNA、化学合成されたDNA、半合成されたDNA、生合成されたDNA、自然界から単離されたDNA、酵素によって消化されたDNA、摘み取られたDNA、放射線標識されたDNAおよび蛍光標識されたDNAなどの標識化されたDNA、1つ以上の自然界には存在しない種類の核酸を含むDNAである。単離された組み換え融合ペプタボディをコードするDNA配列またはその断片は、標準的な化学技術(例えば、ホスホトリエステル法、あるいは自動化された合成方法およびPCR法を介した方法など)によって合成可能である。本発明にかかる単離された組み換え融合ペプタボディをコードする、精製および単離されたDNA配列は、酵素学的な技術によって産生させてもよい。この場合、制限酵素は予め決定された認識配列を開裂し、かつ、単離された組み換え融合ペプタボディまたはその断片をコードするDNA(またはRNA)などの核酸配列を含むより大きな核酸分子から核酸配列を単離するために使用可能である。
【0090】
本発明はまた、上述の変異体の配列を含み、該変異体の配列は保存性ヌクレオチドの置換により、リファレンス配列と異なるヌクレオチド配列であり、これにより、1つ以上のヌクレオチドが同じ性質を有する別のヌクレオチドによって置換されている。
【0091】
ベクターは、真核生物および原核生物中で複製可能である。ベクターは、宿主細胞のゲノム中に統合可能なベクター(例えばバクテリオファージλ)、染色体外に存在するベクター(例えばプラスミド)であってもよい。好ましくは、ベクターはプラスミドである。
【0092】
さらに、ベクターは発現ベクターであることができ、すなわち、単離および精製されたDNA配列がプロモーターに機能するベクターである。このことは、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディをコードする結合された単離および精製されたDNAが、発現可能な適当な制御配列の制御下にあることを意味し、換言すれば、挿入された単離および精製されたDNA配列の転写および翻訳を意味する。真核宿主細胞の適当な発現ベクターは、サムブロック他,「分子クローニング;実験マニュアル(第2版)」,コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス,特に第1−4章および第17章,1989年(Sambrook et al., Molecular Cloning; a Laboratory Manual, 2nd Edition (1989), Cold Spring Harbor Laboratory Press, especially in Chapters 1-4 and 17)に記述されている。哺乳類の細胞でのクローン化遺伝子の発現に適当なベクターは、サムブロック他の第16章に記述されている。適当なベクターは、適当な制御配列を含むように選択または構築されることができ、この適当な制御配列には、プロモーター配列、終止配列、ポリアデニル化配列、マーカー遺伝子、および他の適当な配列を含む。
【0093】
本発明のDNA配列の発現において、膨大な種類の宿主/発現ベクターの組み合わせを用いることができる。有用な発現ベクターは例えば、染色体由来のDNA配列、非染色体由来のDNA配列、および合成DNA配列の断片からなることができる。適切なベクターは、SV40の誘導体、既知の細菌プラスミドおよびその誘導体(例えば、E.coliのプラスミド,col El,pCRl,pBR322、pMB9)、RP4などのプラスミド、ファージDNA(例えば、多数のファージX誘導体(例えばNM989))、他のファージDNA(例えば、M13、糸状一本鎖ファージDNA)、酵母プラスミドまたはその誘導体(例えば、2μプラスミド)、真核生物細胞で有用なベクター(例えば、昆虫または哺乳類の細胞で有用なベクター)、プラスミドおよびファージDNAの組み合わせから得られたベクター(ファージDNAまた他の発現を制御する配列が機能するように改変されたプラスミドなど)、ならびにこれらの類似物を含む。
【0094】
膨大な多様性を有するあらゆる発現制御配列(換言すれば、機能するように結合されたDNA配列の発現を制御する配列)は、本発明のDNA配列を発現するためのベクター内で用いることができる。このような有用な発現制御配列は、例えば、SV40、CMV、痘そう、ポリオーマウイルス、アデノウイルスの初期または後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、LTR系、ファージXの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−フォスフォグリセラートキナーゼまたは他の糖分解酵素のプロモーター、酸性フォスファターゼ(例えばPho5)のプロモーター、酵母接合因子のプロモーター、原核または真核細胞あるいはウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られている他の配列、ならびにこれらの組み合わせを含む。
【0095】
本発明の発現ベクターの特別な例は、E.coliのベクターである、pMS238−5−TGF,pMS238−5−225,pMS238−225−5,pMS240−5−225,pMS242−5−5 KDEL,pMS238−5−5,およびpMS246−5−5 KDELである。前記発現ベクターは、PQE−09(図27参照)であるのが好ましい。本発明のポリペプチドをコードするプラスミド断片のヌクレオチド配列およびそれに相当するアミノ酸配列は、図2、図23、図24および図27に示され、かつ、ペプタボディEGF(p−EGF)に対応する配列番号N°1および2、ならびにp−GBPに対応する配列番号N°3および4に示されている。
【0096】
本発明の別の主題は、上述で定義された単離および精製されたDNA分子を発現できる宿主細胞であり、特に、上述のDNA分子を含む発現ベクターを用いて安定的に形質転換された宿主細胞である。
【0097】
本発明のDNA配列の発現において、膨大な種類の単細胞系宿主細胞が有用である。これらの宿主は、良く知られた真核宿主および原核宿主(E.coli,シュードモナス(Pseudomonas),バチルス(Bacillus),ストレプトマイセス(Streptomyces)などの菌株)、真菌(酵母など)、動物細胞(CHO,YB/20,NSO,SP2/0,R1.1,B−W細胞,およびL−M細胞,アフリカミドリザル腎細胞(例えば、COS1,COS7,BSC1,BSC40,BMT10),昆虫細胞(例えばSf9))、および組織培養したヒト由来細胞および植物由来細胞を含んでいてもよい。宿主細胞は好ましくは細菌細胞であり、より好ましくはE.coli細胞である。
【0098】
全てのベクター、発現制御配列、および宿主が、本発明のDNA配列をうまく等しく発現するように機能できるわけではないことは理解されるだろう。同じ発現系において全ての宿主がうまく等しく機能するわけではないだろう。しかしながら、当業者は、本発明の範囲を逸脱せずに、望まれる発現を達成するために特殊な実験方法を用いることなく、適当なベクター、発現制御配列、宿主を選択することができるだろう。例えば、あるベクターが選ばれた場合、宿主は、そのベクターが宿主中で機能するように考慮されなければならない。そのベクターのコピー数、コピー数を制御する能力、およびそのベクターによってコードされた他のタンパク質(抗生物質マーカーなど)の発現が考慮されるだろう。
【0099】
ある発現制御配列が選ばれた場合、様々な因子が通常考慮されるだろう。これらの因子は例えば、発現系の相対的な強さ、制御しやすさ、特に潜在的二次構造のような点で発現される特異的DNA配列との適応性を含む。適当な単細胞宿主は例えば、選択されたベクターとの適応性、分泌特性、タンパク質を正確に折り畳む能力、発酵条件、発現されるDNA配列によってコードされる産生物の宿主に対する毒性、および発現された産生物の精製の容易さを考慮して選択されるだろう。
【0100】
これらの因子および他の因子を考慮して、当業者は、発酵またはラージスケールでの動物培養において、本発明のDNA配列を発現できる様々なベクター/発現制御配列/宿主の組み合わせを構築することができる。
【0101】
宿主細胞は、ペプタボディを産生するために、上述の発現またはクローニングベクターによってトランスフォームされ、かつ、プロモーターを含めるため、トランスフォーマーを選択するため、またはペプタボディの産生を増加するために適切に改良された一般的な培地で培養される。
【0102】
本発明の単離された組み換え融合ペプタボディを産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地で培養が可能である。ハムス(Ham's)F10(シグマ)、最小必須培地(MEM,シグマ)、RPMI−1640(シグマ)、ダルベッコ(Dulbecco)の改良イーグルス培地などの市販の培地は、宿主細胞を培養するために有用である。加えて、ハム他,Meth. Enz,第58巻,44頁,1979年(Ham et al., Meth. Enz. 58:44 (1979))およびバーンズ他,アナリティカル バイオケミストリー,第102巻,255頁,1980年(Barnes et al., Anal. Biochem. 102:255 (1980))、米国特許第4,767,704号、米国特許第4,657,866号、米国特許第4,927,762号、米国特許第4,560,655号、米国特許第5,122,469号、国際特許出願公開番号第90/03430号、または国際特許出願公開番号第87/00195号で記述されたあらゆる培地は、宿主細胞を培養するための培地として用いることができる。これらの培地はいずれも、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の成長因子(インシュリン、トランスフェリン、上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、およびリン酸塩など)、バッファー(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質(ゲンダマイシン(商標)薬剤など)、微量元素(通常μM範囲の最終濃度にて通常存在する無機化合物として定義される)、グルコースまたは同等のエネルギー源が補われる。他に必要な補足物はまた、当業者に知られている適切な濃度にて添加可能である。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞を用いて以前に用いられた条件であり、当業者によって理解できるだろう。
【0103】
本発明の別の主題は、ここで述べられている単離された組み換え融合ペプタボディを活性物質として含む医薬組成物に関し、1つ以上の薬学的に許容しうる担体,賦形剤,補助剤と任意に組み合わせられる。好ましくは、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容しうる賦形剤,担体,補助剤などを含む。許容しうる担体、賦形剤、および補助剤は非毒性であり、活性成分の効能を干渉してはならない。この医薬組成物は好ましくは、がんの治療または予防、細胞増殖の抑制のための薬剤の調製に使用される剤として使用され、より好ましくは抗腫瘍治療薬(換言すると、腫瘍の成長の抑制剤)として使用される。
【0104】
医薬組成物は適当な形態(例えば、溶液,懸濁液,粉末,凍結乾燥体,軟膏,またはチンキ)の形態であることができる。医薬組成物はあらゆる適切な方法(例えば、注射(全身的または部分的)により、または局所的に)投与可能である。担体または他の材料の正確な特性は投与経路に依存するだろうし、その投与経路は経口、局所、または注射(例えば、静脈または皮内)によることができる。
【0105】
経口投与のための医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末、または液体の形態であってもよい。錠剤はゼラチンまたは補助剤などの固形担体を含んでいてもよい。液体の医薬組成物は一般に、水、石油、動物油、植物油、ミネラルオイル、または合成油などの液体キャリアを含む。
【0106】
生理的食塩水、デキストース、または他の糖溶液、あるいはグリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールなど)が含まれていてもよい。
【0107】
静脈注射、注射、または痛みのある部位への注射の場合、活性成分は、発熱性がなく適切なpH、等張性、および安定性を有する、非経口で許容しうる水溶液の形態である。当業者は、等張液(例えば、塩化ナトリウム注入、リンガー液注入、ラクテート化リンガー液注入など)を用いて、適切な溶液をうまく調製することができる。保存剤、安定剤、バッファー、抗酸化剤、および/または他の添加剤を必要に応じて含んでいてもよい。
【0108】
それぞれの薬学的に有効な量は、治療を受ける特定の患者、治療の対象となる疾患、および投与方法に依存するだろう。さらに、薬学的に有効な量は、使用されるポリペプチドに依存し、特に、そのポリペプチドが部分的に細胞毒性要素を含んでいるか否かに依存する。治療は通常、数時間、数日、または数週間の間隔での複数回の投与を含む。ポリペプチドの薬学的に有効な投与単位量は通常、治療を受ける患者の体重1kg当り0.001ng−100μgである。
【0109】
本発明で用いられる医薬組成物は、ここで述べられている、所定の純度を有し、薬学的に有効な量の単離された組み換え融合ペプタボディを、1つ以上の薬学的に許容しうる担体,賦形剤,補助剤と任意に混合することにより、凍結乾燥または水溶液の形態で調製される(オソル.A編,レミングトンの製薬科学,第16版,1980年)。許容しうる担体、賦形剤、および補助剤は、適用される投与量および濃度において、服用者に対して非毒性であり、かつ、バッファー(燐酸,クエン酸,およびその他の有機酸など)、抗酸化剤(アスコルビン酸およびメチオニンを含む)、保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム,塩化ヘキサメソニウム,塩化ベンゾアルコニウム,塩化ベンゼソニウム,フェノール,ブチルオーベンジルアルコール)、アルキルパラベン(メチルパラベン,プロピルパラベンなど),カテコール,レソシノール,シクロヘキサノール,3−ペンタノール,m−クレゾールなど)、低分子量のポリペプチド(10残基未満)、タンパク質(血清アルブミン,ゼラチン,免疫グロブリンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸(グリシン,グルタミン,アスパラギン,ヒスチジン,アルギニン,リジンなど)、単糖類,二糖類,およびその他の炭水化物(グルコース,マンノース,またはデキストリンを含む)、キレート剤(EDTAなど)、糖(ショ糖,マンニトール,トレハロース,ソルビトールなど)、塩形成カウンターイオン(ナトリウムなど)、金属錯体(例えばZn−タンパク質錯体)、および/または非イオン性界面活性剤(ツイーン(商標)、プロロニック(商標)、ポリエチレングリコール(PEG))を含む。
【0110】
ここで述べられている医薬組成物またはその製剤は、必要に応じて、治療の特殊な目的のために必要な1以上の活性化合物を含んでいてもよく、それらがお互いに不都合の無い相補的な活性を有する活性化合物であるのが好ましい。さらに、例えば、ある処方において、EGFR、ErbB2(例えば、ErbB2の異なるエピトープに結合する抗体)、ErbB3、ErbB4、または血管内皮因子(VEGF)に結合する抗体を提供するのが好ましい。代替的にまたは付加的に、医薬組成物は、単独で、あるいは、他の処置、治療、または薬剤と併用して、治療を受ける患者の体調に依存して同時にまたは特定の順序で投与されることは明白であろう。医薬組成物はさらに、化学療法剤、細胞毒素剤、サイトカイン、成長抑制剤、抗ホルモン剤、EGFR標的剤、抗血管新生剤、抗がん剤、免疫系モジュレーター、および/または心臓保護剤を含むことが好ましい。そのような分子は、予定された目的に対して効果的な量を併用されて適切に存在する。
【0111】
より一般的には、これらの抗がん剤はチロシンキナーゼインヒビター、リン酸化カスケードインヒビター、翻訳後モジュレーター、細胞増殖抑制剤または細胞分裂抑制剤(例えば抗有糸分裂剤)、またはシグナル伝達インヒビターであるのが好ましい。他の処置または治療は、非ステロイド性抗抗炎症剤(例えば、アスピリン,パラセタノール,イブプロフェン,ケトプロフェン)または鎮静剤(モルヒネまたは抗嘔吐剤など)の適切な量の投与を含む。医薬組成物は、チロシンキナーゼインヒビター(AG1478,ZD1839,STI571,OSI−774,SU−6668を含むがそれに制限されない)、ドキソルビシン、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、ニトロソウレア、プロカルバジン、ビンクリスチン、ヒドロキシウレア、5−フルオロウラシル、シトシン アラビノシド、シクロフォスファミド、エピポドフィルロトキシン、カルムスチン、ロムスチン、および/または他の化学療法剤と(特定の順序にて(換言すれば前か後)または同時に)併用して投与することを含む。したがって、これらの薬剤は、特殊な抗EGFR剤、またはチロシンキナーゼインヒビター(AG1478,ZD1839,STI571,OSI−774,SU−6668など)であることができ、あるいは、より一般的には、ドキソルビシン、シスプラチン、テモゾロミド、ニトロソウレア、プロカルバジン、ビンクリスチン、ヒドロキシウレア、5−フルオロウラシル、シトシン アラビノシド、エピポドフィルロトキシン、カルムスチン、ロムスチン、などの抗癌剤または抗悪性腫瘍剤であることができる。加えて、医薬組成物は、デキサメタゾンなどのホルモン、インターロイキンまたは腫瘍壊死因子(TNF)などの免疫系モジュレーター、あるいは、免疫応答と癌細胞または腫瘍の減少または排除とを刺激する他の成長因子またはサイトカインとともに投与可能である。
【0112】
より一般的には、これらの抗癌剤はまた、コアセルベーション技術によって、または、界面重合によって、マイクロカプセル(例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセル、ならびに、ポリ−(メチルメタクリレート)のマイクロカプセル)、コロイド薬物伝達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、ナノ粒子、ナノカプセル)、あるいはマイクロエマルジョンに包含されて調製することができる。そのような技術は、オソル A(Osol,A)編,レミングトンの製薬科学,第16版,1980年に開示されている。
【0113】
徐放性調剤を調製してもよい。徐放性調剤の適切な例は、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスであり、そのマトリクスは、例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの成形物の形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシメチルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタメートの共重合体、非分解性のエチレン−酢酸ビニル共重合体、分解性の乳酸−グリコール酸共重合体(ルプロン デュポン(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドからなる注入可能なマイクロスフェア),およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸)が含まれる。
【0114】
in vivo投与に用いられる調剤は無菌でなければならない。これは、例えば無菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。
【0115】
上述の単離された組み換え融合ペプタボディを活性物質として含む医薬組成物は、様々な病気または疾患を治療するために使用できると考えられる。一般に、治療の対象となる病気または疾患はがんである。特に、本発明は上皮成長因子受容体を発現するがん(ErbB発現性がん)を治療または予防する方法を提供し、好ましくは、ErbB受容体の過剰活性化によって特徴付けられるがん、または、ErbB受容体を「過剰発現する」がんに対する治療または予防方法である。
【0116】
治療の対象となるがんの例は、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、白血病、またはリンパ性悪性腫を含むがこれらに制限されない。そのようながんのより特異的な例は、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、脂肪肉腫、神経内分泌腫瘍、中皮腫、神経鞘腫、髄膜腫、腺腫、黒色腫、白血病、リンパ性悪性腫、扁平上皮がん、上皮性扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の悪性腫瘍、肺の燐片悪性腫瘍、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん、胃腸がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頚部がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝腫瘍、乳がん、大腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜腫瘍、子宮腫瘍、唾液腺腫瘍、腎臓がん、腎がん、前立腺がん、陰唇がん、甲状腺がん、肝腫瘍、肛門腫瘍、陰茎がん、精巣がん、食道がん、胆道がん、頭頸部がんである。
【0117】
より好ましくは、ここで治療の対象となるがんは、頭部がん、頚部がん、膀胱がん、または黒色腫である、
本発明はまた、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディに細胞を接触させる工程を含む、アポトーシスおよび/またはネクローシスの誘導方法を提供する。接触させる細胞は、上述の癌細胞であるのが好ましい。
【0118】
また、本発明の目的は、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディに細胞を接触させる工程を含む、細胞増殖の阻害方法を提供する。接触させる細胞は、上述の癌細胞であるのが好ましい。
【0119】
病気(特にがん)の予防または治療のために、単離された組み換え融合ペプタボディの適切な投与量は、上記に定義されたように、治療の対象となる病気の種類、病気の深刻さおよび経過、単離された組み換え融合ペプタボディが予防または治療を目的として処方されるかどうか、治療歴、患者の既往歴および単離された組み換え融合ペプタボディに対する応答、ならびに処方する医師の判断に依存するだろう。単離された組み換え融合ペプタボディは、治療のある時点、または一連の治療を通じて患者に適切に処方される。病気の種類または深刻さに依存して、例えば、1回以上の個別投与によって、または連続的な注入によって、約1μg/kg−15mg/kg(例えば、0.1−20mg/kg)のペプタボディが、患者に対して処方するための初回投与量の候補である。典型的な1日あたりの投与量は、約1μg/kg−100mg/kgまたはそれ以上の範囲であり、上述されたような因子に依存する。数日またはそれ以上に当たる繰り返し投与では、状況に依存して、治療は病気の症状の抑制が起こるまで続けられる。単離された組み換え融合ペプタボディの投与量は約0.005mg/kgから約1.0mg/kgまでの範囲であるのが好ましい。したがって、約0.05mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、または10mg/kg(あるいはこのいずれかの組み合わせ)の1回以上の投与が患者に対して行なわれる。このような投与は断続的に(例えば毎週または三週間毎)行なわれてもよい(例えば、患者は、約2−約12回(例えば6回)の単離された組み換え融合ペプタボディの投与を受ける)。初期のより高い頻度の投与の後に、1回またはそれ以上の少ない回数の投与を行なってもよい。典型的な投与管理は、約0.4mg/kgの単離された組み換え融合ペプタボディを初回投与した後、約0.2mg/kgの投与を週単位で維持することである。しかしながら、他の投与管理が有用かもしれない。この治療の進捗は、一般的な技術および検査によって容易に監視される。
【0120】
本発明の単離された組み換え融合ペプタボディの高い特異性に起因して、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディは、(例えば、所定の受容体の活性化または不活性化を標的とする)遺伝子治療にも使用することができ、あるいは、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディを毒性物質と結合させる場合、分解を目的として使用することができる。上述の発現ベクターによってあらかじめトランスフェクトされた宿主細胞の使用に基づく細胞治療も想定可能である。
【0121】
本発明はまた、がんの診断方法を想定しており、このがんの診断方法は、上記の単離された組み換え融合ペプタボディを被験者に投与することを含み、任意に、薬学的に許容しうる担体、賦形剤、および補助剤との組み合わせにより行われる。
【0122】
本発明の別の目的は、ヒト患者で上皮成長因子受容体を発現するがんを診断するキットを提供することであり、このキットは、上述の少なくとも1つの検出部位を有する単離された組み換え融合ペプタボディを含み、必要に応じて試薬および/または取扱説明書を含む。
【0123】
EGFRの状態をin vitroで評価および判断する診断試験およびキットは、特にEGFRの異常発現に関して、がん、前癌性状態、過剰増殖する細胞を有する患者またはそれが疑われている患者のサンプル、あるいは腫瘍サンプルを、診断、評価、および監視するために使用可能である。また、EGFRの状態の評価および判断は、異なる薬剤と比較して、特定の治療薬の臨床試験のために、あるいは、特定の化学療法剤または特に本発明の単離された組み換え融合ペプタボディ(これらの組み合わせを含む)の投与のために、患者の適合性を決定するために有用である。
【0124】
本研究で最も一般的に使用される標識部位または検出部位は、放射性要素、酵素、紫外光および他の光に曝露された場合に蛍光を発する化学物質である。
【0125】
本発明の他の実施形態は、ヒト患者で上皮成長因子受容体を発現するがんを治療するキットを提供することであり、そのキットは上述の本発明の単離された組み換え融合ペプタボディを含み、任意に他の試薬および/または取扱説明書を含む。
【0126】
本発明のキットは、化学療法剤、抗上皮成長因子抗体、放射免疫治療剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれた付加的な抗がん剤を含む、分離した薬剤投与形態をさらに含んでいてもよい。
【0127】
一般に、前記キットは、容器と、その容器に関連するかまたはその容器に挿入されるラベルまたはパッケージとを含む。適当な容器は例えば、瓶、バイアル、注射器などを含む。前記容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な素材から形成可能である。前記容器は、状態を調整するのに効果的な組成物を保持し、無菌の取り出し口(例えば、前記容器は皮下注射針によりピアシング可能なストッパを有する静脈注射溶液バッグまたはバイアル)を有していてもよい。前記組成物中の活性物質の少なくとも1つは、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディである。ラベルまたは包装の挿入物は、前記組成物ががんなどの特定の症状を治療するために使用されることを示唆する。一実施形態では、ラベルまたは包装の挿入物は、ErbBを発現する、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディを含む組成物が、上皮成長因子受容体(EGFR)、ErbB3、およびErbB4(好ましくはEGFR)からなる群より選ばれるErbB受容体を発現するがんの治療に使われることを示唆する。加えて、ラベルまたは包装の挿入物は、治療を受ける患者が、EGFR、ErbB3、およびErbB4から選ばれるErbB受容体の過剰活性によって特徴付けられたがんを有する患者であることを示唆することができる。
【0128】
代替的にまたは付加的に、前記キットはさらに、注入用の静菌剤水溶液(BWFI)、塩水性燐酸バッファー、リンガー液、およびデキトロース溶液などの薬学的に許容しうるバッファーを含む第2の(または第3の)の容器を含んでいてもよい。前記キットはさらに、他のバッファー、賦形剤、フィルター、注射針、およびシリンジを含む商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料を含んでいてもよい。
【0129】
上述の発明のペプタボディはさまざまな方法によって合成される。
【0130】
アクセプター(リガンド)に結合可能なドメインは比較的短いため、上述のペプタボディは例えば固相合成を介して化学合成されるのが好ましい。
【0131】
あるいは、混合過程も報告されている。独創性を有する部位の一部は、適当な宿主により発現され、化学的に合成された部分と結合される。例えば、オリゴマー化部分は、微生物によって合成され、化学的な合成により伸長されて、アクセプターに結合可能なドメインが加えられる。
【0132】
ポリペプチドまたはタンパク質のような、複雑な構造および大きさを有するリガンドに関する遺伝子工学は今まで報告されていなかった。ヘキサペプチド(6アミノ酸)以下の小さなリガンドのみが、融合タンパク質として独創性を有する部位を発現することにより得られている。それらのほとんどは不溶性の形態で産生されるため、独創性を有する部位上に複雑な構造を形成するする困難さを示唆する。
【0133】
本発明の単離された組み換え融合ペプタボディは、遺伝子工学的な方法によって産生されるのが好ましい。上述の発現ベクターは、上述の適切な宿主細胞中で発現される単離された組み換え融合ペプタボディをコードする完全なDNA配列の発現カセットを含むように構築される。適切な発現カセットは、遺伝子工学の標準的な技術によって調製可能である。単離された組み換え融合ペプタボディの合成のために必要な情報に加えて、前記発現カセットは、産生されたタンパク質の分泌を誘引するシグナル配列を付加的に含んでいてもよい。
【0134】
本発明は、本発明の単離された組み換え融合ペプタボディの産生方法を提供し、以下の工程を含む。
【0135】
a)上述の単離された組み換え融合ペプタボディをコードする単離および精製されたDNAの分子を構築する工程、
b)適切な条件下にて細胞発現系内で、前記単離および精製されたDNAの分子を発現させる工程、および
c)前記単離された組み換え融合ペプタボディを回収する工程。
【0136】
ペプタボディは、軟骨オリゴマーマトリクスタンパク質の多量体化によって形成される多量体分子である。この多量体化は、モノマーが適当な条件下(低塩濃度条件下)で混合された場合に自発的に生じる。しかしながら、五量体形成の効率は、物理化学的な条件およびモノマーの濃度により変化しうる。加えて、リガンド(特に、ジスルフィドの架橋を含むリガンド)の複雑さは、ペプタボディの凝集体または多量体の形成を引き起こしうる。
【0137】
上述のように、細胞発現系または宿主細胞は真核細胞または原核細胞である。細胞発現系は原核細胞であるのが好ましい。
【0138】
b)の適切な条件は、細胞発現系を10−40℃で2−40時間培養することであり、37℃で8−16時間の培養が好ましい。
【0139】
また、c)は、細胞発現系からの単離された組み換え融合ペプタボディの抽出、ならびにその後の精製工程および再生(refolding)工程によって達成される。
【0140】
組み換え融合ペプタボディが細胞発現系から分泌された場合、組み換え融合ペプタボディは培地から抽出および回収可能であり、一方、組み換え融合ペプタボディが分泌されない場合、組み換え融合ペプタボディは細胞発現系から抽出可能である。組み換え融合ペプタボディは、当該技術分野で知られている技術(高速液体クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、減外濾過、イオン交換など)によって精製可能である。特殊な組み換え融合ペプタボディを精製するために適用される実際の条件は、全体の電荷、疎水性、親水性などの要素に部分的に依存し、当業者に明らかであろう。
【0141】
アフィニティークロマトグラフィー精製に関しては、組み換え融合ペプタボディまたはHisタグに特異的に結合する抗体を使用してもよい。Ni2+−ニトリロトリ酢酸に結合されたアガロースビーズ、ならびに、Hisタグに特異的に結合する別のアフィニティー分子は、本発明の範囲内である。
【0142】
精製は還元剤の存在下で行われ、汚染物が除去される。
【0143】
再生工程は再生バッファー中での直接希釈によって行われ、一連の透析をさらに含む。非常に重要な点は、再生溶液中で変性ペプタボディを素早く希釈することである。
【0144】
単離された組み換え融合ペプタボディの回収は、凝集体の形成を避けるために低い濃度で行われた。再生バッファー中での直接希釈は、単離された組み換え融合ペプタボディの最終濃度を300nM未満にするのが好ましく、図4に示されるように、該最終濃度を100nM未満にするのが最も好ましい。
【0145】
一連の透析は、少なくとも2回の異なる透析を含み、少なくとも3回または4回の透析が好ましく、図4で示されるように、少なくとも5回の透析がより好ましい。
【0146】
しかしながら、当業者は、本発明の範囲を逸脱しない他の連続的なまたは一連の透析手順を選択することができる。
【0147】
再生工程は、濃縮前の単離された組み換え融合ペプタボディの酸化を含む。
【0148】
本発明にしたがって産生されるペプタボディは特に安定である。ペプタボディ分子の安定性は、不溶型への変換または凝集体の形成あるいはペプタボディの多量体形成あるいは生体活性の減損を生じることなく、分子の安定な可溶性形態を保持することを意味する。
【0149】
本発明のさらなる目的は、タンパク質産生を増加する活性を有する、精製および単離されたエンハンサー配列を提供することである。上述の精製および単離されたエンハンサー配列は、YSFE,YSFED,YSFEDL,YSFEDLY,YSFEDLYR,YSFEDLYRR,その断片,そのキメラ分子,およびそのバリアントを含む群から選ばれるのが好ましい。
【0150】
「タンパク質産生を増加する活性」とは、以下のように定義された、精製および単離されたエンハンサー配列の活性を指す:適当な条件下で真核細胞または原核細胞に導入された後、その配列は、上述のエンハンサー配列を用いずにトランスフェクトされた培養細胞と比較して、培養細胞中でのタンパク質産生レベルを増加させることができる。
【0151】
このエンハンサー配列はまた、ヒトカリクレインhK2(産生量が少なくとも3倍に増加する)またはヒトセルピン(serpin)ACT(産生量が少なくとも2倍に増加する)などの別種類の組み換えタンパク質の産生を増加することができる。実施例7を参照されたい。
【0152】
その増加は通常1.5−100倍であり、3−10倍であるのが好ましい(図25および図26参照)。
【0153】
当業者は、上述の本発明について、特に記述されていない変更および修正が行われる余地があることを理解できる。本発明が、本発明の意図またはその本質的な特徴を逸脱しない変更および修正改変などの全てを含むことは理解されるべきである。本発明はまた、本明細書で言及または示唆されている工程、特徴、組成物、および化合物の全て、ならびにこれらのうちのいずれかまたは全ての組み合わせ、あるいは前記工程または特徴のうちのいずれか2つ以上を独立してまたは集合的に含む。
【0154】
したがって、すべての態様において説明されたように、本開示は限定的ではなく、添付されるクレームによって本発明の範囲が示唆されており、かつ、同義の意味および範囲内での全ての変化が本発明に含まれることを意図すると解釈されるべきである。
【0155】
本明細書では様々な参考文献が引用されており、本明細書で参照することにより、本明細書に全体的に組み込まれている。
【0156】
上述の記述は、以下の実施例を参照することにより、より完全に理解されるであろう。しかしながら、これらの実施例は本発明を実施する方法の例示であり、本発明の範囲を制限することを意図していない。
【実施例】
【0157】
実施例1:抗EGFRペプタボディの構築および産生
ヒト上皮成長因子をコードする遺伝子は、その全長遺伝子を含むプラスミドからPCRによって増幅されて、適当な酵素によって消化された後、ペプタボディ遺伝子を含むプラスミドに挿入された。ペプタボディは、誘導によって、封入体として細菌内で37℃で一晩産生される。E.coli細胞は、変性溶液(8M尿素を含む)中で室温にて溶解される。遠心分離後、ペプタボディ分子はアフィニティークロマトグラフィーによって精製され、再生バッファー中での直接希釈によって再生される(図3参照)。
【0158】
腫瘍細胞上のEGF受容体へのペプタボディEGFの結合
結合試験は、モノクローナル抗体MAb425(Retuximab(登録商標)として治療で用いられている)、ペプタボディEGF、およびペプタボディイレレバント(peptabody Irrelevant)を用いて、A431細胞上で行われた。具体的には、10,000個の細胞は、10%のFCSを含む培養液中で96穴プレート中に10時間植え付けられた。その培地を除いた後、ペプタボディまたはモノクローナル抗体MAb425を、異なる濃度で、接着している細胞と90分間氷上でインキュベートさせた。洗浄後、MAb425およびペプタボディそれぞれに対して、ペルオキシダーゼ結合ポリクローナル抗Fab抗体またはペルオキシダーゼ結合モノクローナル抗His抗体を用いて曝露が行われた(図4参照)。
【0159】
MAb425およびペプタボディEGFが同じ結合部位(EGF受容体)で競合することを実証するために、6.67nMのMAb425と傾斜量のペプタボディEGF(0.1〜200nM)とを用いて競合試験が行われた(図5参照)。
【0160】
実施例2:異なる癌細胞株におけるin vitro作用
ヒト癌細胞上でのペプタボディの効果は、細胞生存性試験を用いて評価された。具体的には、2500個の細胞が、10%のFCS(ウシ胎仔血清)を含むDMEM中で96穴プレートに植え付けられた。1日後、培地が除去され、ペプタボディを含む最適条件に置換された。細胞の数を判断するために、さまざまな時間で、プレートに対してMTT試験が行われた。
【0161】
表皮癌細胞A431
図6は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバント(p−IRR)の存在下における、処置から1、2、3日後のヒト表皮癌細胞A431の細胞生存性試験を示す。抑制の割合(%)は、コントロールと比較した生存細胞の割合によって計算されている。図7は、ペプタボディEGFまたはイレレバント(p−IRR)を用いた処置から2日後の無血清DMEM中の表皮癌細胞A431のin vitro培養の可視像である。
【0162】
ヒト前立腺癌細胞DU145
図8は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバント(p−IRR)の存在下における、処置から1、2、3日後のヒト前立腺癌細胞DU145の細胞生存性試験を示す。抑制の割合(%)は、コントロールと比較した生存細胞の割合によって計算されている。図9は、ペプタボディEGFまたはイレレバント(p−IRR)を用いた処置から2日後の無血清DMEM中の前立腺癌細胞DU145のin vitro培養の可視像である。
【0163】
ヒト前立腺癌細胞LNCaP
図10は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバント(p−IRR)の存在下における、処置から1、2、3日後のヒト前立腺癌細胞LNCaPの細胞生存性試験を示す。抑制の割合(%)は、コントロールと比較した生存細胞の割合によって計算されている。図11は、ペプタボディEGFまたはイレレバント(p−IRR)を用いた処置から2日後の無血清DMEM中の前立腺癌細胞LNCaPのin vitro培養の可視像である。
【0164】
ヒト前立腺癌細胞PC−3
図12は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバント(p−IRR)の存在下における、処置から1、2、3日後のヒト前立腺癌細胞PC−3の細胞生存性試験を示す。抑制の割合(%)は、コントロールと比較した生存細胞の割合によって計算されている。図13は、ペプタボディEGFまたはイレレバント(p−IRR)を用いた処置から2日後の無血清DMEM中の前立腺癌細胞PC−3のin vitro培養の可視像である。
【0165】
ヒト乳癌細胞MCF−7
図14は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバント(p−IRR)の存在下における、処置から1、2、3日後のヒト乳癌細胞MCF−7の細胞生存性試験を示す。抑制の割合(%)は、コントロールと比較した生存細胞の割合によって計算されている。図15は、ペプタボディEGFまたはイレレバント(p−IRR)を用いた処置から2日後の無血清DMEM中の乳癌細胞MCF−7のin vitro培養の可視像である。
【0166】
ヒト正常筋細胞におけるコントロール
図16は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバント(p−IRR)の存在下における、処置から1、2、3日後のヒト正常筋細胞の細胞生存性試験を示す。抑制の割合(%)は、コントロールと比較した生存細胞の割合によって計算されている。図17は、ペプタボディEGFまたはイレレバント(p−IRR)を用いた処置から2日後の無血清DMEM中の筋細胞のin vitro培養の可視像である。
【0167】
異なるがん細胞株におけるin vitro作用
ヒト癌細胞上でのペプタボディの効果は、細胞生存性試験を用いて評価された。具体的には、2500個の細胞が、10%のFCS(ウシ胎仔血清)を含むDMEM中で96穴プレートに植え付けられた。1日後、培地が除去され、ペプタボディを含む最適条件に置換された(図18参照)。加えて、より低濃度のペプタボディが3日間評価された。細胞の数を判断するために、さまざまな時間で、プレートに対してMTT試験が行われた。
【0168】
その結果、イレレバントなペプタボディ(p−IRR,ブランク)と比較して、ペプタボディp−EGFの存在下において、細胞成長の強い抑制が観察された(図7、図9、図11、図13、および図15参照)。
【0169】
実施例3:アポトーシスの検出
A−431癌細胞(ウエルあたり500μl中に5×105個)はDMEM中で培養された。24時間後、培地は10nMのp−EGFまたはp−IRRを含む500μlの無血清培地OPTIMEMによって置換された。0−360分間の決められた時間(T0、T30、T60、T180、T360)にて、接着する細胞および浮遊細胞が収集され、プールされ、かつ、細胞膜の外表面のフォスファチジルセリンを検出するアネキシンV−FITCアポトーシス検出キット(アポテック(Apotech),スイス)を用いてアポトーシスが分析された。具体的には、細胞はPBSおよび染色バッファーで1回ずつ洗浄された後、50μLのアネキシンV−FITC[5μg/ml]を用いて室温で15分間染色された。染色された細胞のペレットは、染色バッファーおよびFACSバッファー(1×PBS、5%のFCSおよび0.02%のNaN3を含む)で1回ずつ洗浄された後、200μLのFACSバッファーに懸濁され、FACSによりカウントおよび分析が行なわれた。
【0170】
ペプタボディEGFは、30分後にA431癌細胞のアポトーシスを明確に誘導したのに対し、イレレバントなペプタボディ(IRR)は何の効果も示さなかった(図19aおよび図19b参照)。
【0171】
実施例4:ペプタボディの産生および再生プロトコール
−細菌による産生:組み換えタンパク質を産生するために、ペプタボディをコードするプラスミドを含むE.coliTG1菌株が使用された。一晩の前培養の後、100μg/mLのアンピシリンを含む250mLの2xTY培地中で、前培養溶液を100倍に希釈することにより、新しい培養が37℃にて開始された。濁度(600nm)0.6にて、培養液は250μMのイソプロピルβ−D−チオガラクトシド(IPTG)により誘導された。
【0172】
−精製:誘導の16時間後、遠心分離により細菌が回収され、ペレットは25mLの変性溶液(pH7,4にて、8Mの尿素、1×PBS、10mMのβ−メルカプトエタノールを含む)中で室温にて2時間懸濁された。不可溶成分は、10000g・10分間の遠心で除去され、上清は、250μLのNi2+−NTAアガロースビーズ(キアゲン)と混合された。室温で2時間振とうした後、ビーズは洗浄溶液(pH7.4にて、5Mの尿素、1×PBS、10mMのβ−メルカプトエタノール、20mMのイミダゾールを含む)により3回洗浄された。タンパク質は、2.5mLの溶出バッファー(pH7.4にて、5Mの尿素、1×PBS、10mMのβ−メルカプトエタノール、150mMのイミダゾールを含む)により溶出された。
【0173】
−再生:
・1.25mgの溶出されたタンパク質は、250mLの再生バッファー(pH8.2にて、50mMのTrisバッファー,50mMのNaCl,10mMのβ−メルカプトエタノール,0.1%のTriton−X100を含む)中で素早く希釈されて、該タンパク質の最終濃度が5μg/mL未満となるようにし、次いで、この条件下で少なくとも6時間保持した。
【0174】
・次いで、タンパク質はバッファー(4Lのバス)を用いて以下の順序で透析された。
・透析バッファー1:50mMのTrisバッファー,50mMのNaCl,1mMのβ−メルカプトエタノール,0.1%のTriton−X100で、pH8.2にて6時間
・透析バッファー2:50mMのTrisバッファー,50mMのNaCl,0.1%のTriton−X100で、pH8.2にて一晩
・透析バッファー3:50mMのTrisバッファー,50mMのNaCl,0.01%のTriton−X100で、pH8.2にて4時間
・透析バッファー4:50mMのTrisバッファー,50mMのNaCl,0.001%のTriton−X100で、pH8.2にて4時間
・透析バッファー5:50mMのTrisバッファー,50mMのNaClで、pH8.2にてバブルバスを用いて一晩
・再生されたタンパク質は、窒素攪拌細胞系および超遠心装置(ミリポア)を用いて、最終体積250μlまで濃縮され、−80℃で保存された。
【0175】
実施例5:
材料
プライマーは、マイクロシンセ(Microsynth)(スイス)から購入された。
【0176】
分子生物学試薬(Taqポリメラーゼ、リガーゼ、およびフォスファターゼ)は、プロメガ(ドイツ)から購入された。
【0177】
発現ベクターPQE−09およびNi−NTAアガロースカラムは、キアゲン(ドイツ)から購入された。
【0178】
抗EGFRペプタボディの産生
1)発現ベクターの準備
発現ベクターpQE−09は、制限酵素Xholおよび制限酵素Notlにより切断された。
【0179】
2)ペプタボディGBP/EGF/イレレバント(Irrelevant)
生体成長阻害ペプチド(GBP)をコードする合成遺伝子は、Pseudaletia separateの血リンパ由来の25アミノ酸からなる昆虫生体成長因子であり、ペプタボディGBPを構築するために使用された。
【0180】
ヒト上皮成長因子をコードする遺伝子は、全長遺伝子を含むプラスミドから、PCRによって増幅された。
【0181】
GBPまたはEGFは、制限酵素BglII/NotIによって切断されたデカボディ分子をコードする遺伝子を含むプラスミド中に挿入された。ペプタボディ部位(軟骨オリゴマーマトリクスタンパク質(COMP)、ヒンジ部位、リガンド)は、PCRおよび特異的なプライマーを用いて増幅された。得られた最終産生物は、pQE−09発現ベクター中に挿入するために消化された。
【0182】
3)ペプタボディGBP/EGF/イレレバント(Irrelevant)の産生
ペプタボディは、封入体として細菌の細胞質中で産生され、五量体化されたモノマーに相当する安定な可溶性形態として再生された。
【0183】
−ヒト上皮成長因子をコードする遺伝子は、全長の遺伝子を含むプラスミドから、PCRによって増幅された。
【0184】
−GBP遺伝子またはEGF遺伝子は、本発明において修飾されたペプタボディ遺伝子を含むプラスミドに挿入された。
【0185】
最終的に得られた産物は、pQE−09発現ベクター中に挿入するために消化された。
【0186】
4)ペプタボディGBP/EGF/イレレバント(Irrelevant)の産生および精製
ペプタボディは、37℃で一晩誘導することにより、封入体として細菌の細胞質中で産生された。
【0187】
Е.coli細胞を8M尿素中で室温にて2時間溶解させた。遠心分離後、溶解物をNi−NTAアガロースビーズと90分間混合させ、ペプタボディ分子はイミダゾール/尿素溶液により溶出される。
【0188】
5)ペプタボディGBP/EGF/イレレバント(Irrelevant)の再生
ペプタボディ分子は再生バッファー(pH8.3にて、50mMのTrisHC1,0.01%のTriton−X100,10mMのβ−メルカプトエタノールを含む)で直接希釈することにより再生され、最終濃度5μg/mLに調製され(希釈は100倍を超えなければならない)、pH8.3にて10mMのβ−メルカプトエタノールを含む50mMのTrisHC1中で24時間、次いで、pH8.3にて50mMのTrisHC1中で2日間透析される。
【0189】
6)ペプタボディGBP/EGF/イレレバント(Irrelevant)の最終精製
透析されたペプタボディは陰イオン交換カラムへ充填され、塩勾配を用いて溶出される。
【0190】
結果は図20に示されており、図20には、非還元条件または還元条件下でのペプタボディのSDS−PAGE分析が示されている。MDP01はペプタボディEGFに相当し、MDP03はペプタボディGBPに相当し、MDP00はイレレバント(irrelevant)なペプタボディに相当する。
【0191】
腫瘍細胞に対する抗EGFRペプタボディの作用
再生されたペプタボディは、細胞毒性を評価するために、異なる腫瘍細胞(А431:ヒト表皮癌細胞、DU145およびPC−3:ヒト前立腺腫瘍細胞)で試験が行なわれた。
【0192】
その結果が図21に示されており、図21は、MTT法を用いた癌細胞の細胞毒性試験を示す。癌細胞は、2μg/mL濃度のペプタボディ(またはEGFRに特異的なモノクローナル抗体)とインキュベートされた。MDP01およびMDP03のEGF受容体への結合の割合は、EGF受容体に特異的なモノクローナル抗体(MAb425)よりも有意に高かった(データは示さず)。А−431およびDU145癌細胞株での増殖の減少およびアポトーシスの増加がペプタボディの存在下で観察され、一方、PC−3はMDP03に対して低い感受性を示した。
【0193】
以上の結果より、ペプタボディは、癌細胞の死を媒介する効果がモノクローナル抗体MAb425より強かった。
【0194】
実施例6:ペプタボディのエンハンサー配列
これまでに、異なる種類のペプタボディが開発されている。しかしながら、これらのペプタボディのほとんどは十分に産生されなかったのに対して、本願では、ペプタボディ/デカボディの産生において大きな多様性が観察された。
【0195】
図25は、異なるエンハンサーに融合されたデカボディの産生に関する。細菌系を使用したデカボディの産生のクマシンブルー染色されたSDS−PAGEが示されている。A)は不溶性画分に相当し、B)は可溶性画分に相当する。
【0196】
図26は、異なるエンハンサーに融合されたペプタボディの産生に関する。細菌系を使用したペプタボディの産生のウエスタンブロット分析が示されている。検出は尿素バクテリア抽出からから抗His抗体を用いて行なわれた。
【0197】
実施例7:
産生レベルにおけるエンハンサー配列の評価が他のタンパク質を用いて行われている。エンハンサー配列(E0,E1,E2,E3,E4,E5,E6,E7:図25および図26を参照)は、ヒトカリクレイン2遺伝子のN末端またはヒトセルピンa1−アンチキモトリプシン遺伝子と融合され、産生レベルはIPTG誘導後に37℃にて一晩培養することにより評価された。エンハンサー配列は、ヒトカリクレイン2の産生(少なくとも3倍)およびヒトセルピンACTの発現(少なくとも2倍)を増加する。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】図1は、ペプタボディのコンセプトの図解およびペプタボディによってもたらされる結合活性効果を示す。図1の左側部分は、受容体を低発現する細胞に相当し、ペプタボディはEGFR経路を活性化することなくモノマーに結合する。図1の右側の部分は、受容体を高発現する腫瘍細胞に相当し、EGFRの補充が細胞死を導く。
【図2】図2は、ペプタボディ抗EGFRの構築および産生を示す。ペプタボディモノマーの図解は相違部分を含む:エンハンサー(Enh:細菌システムでの産生を増加させる配列)、ヒスチジンテール(H6:6×His)、hCOMP(49アミノ酸残基のヒトオリゴマーマトリクスポリペプチド)、ヒンジ(19アミノ酸配列のヒトIgA由来)、およびhEGF(全長のヒト上皮成長因子)。リガンドが無い(イレレバントな:irrelevant)ペプタボディのアミノ酸配列や、EGFペプタボディのアミノ酸配列も示されている。
【図3】図3は、SDS−PAGE後にクマシンブルーで染色されたペプタボディのモノマー(m p−IRRおよびm p−EGF)およびペンタマー(P−IRRおよびP−EGF)に相当する。
【図4】図4は、ヒトA431癌細胞株におけるペプタボディおよびMab−425の結合性のELISA分析を示している。
【図5】図5は、ヒトA431癌細胞株におけるペプタボディEGFとMab−425との間の競合試験を示す。固定濃度のMab 425(2.5nM)は、ペプタボディEGFの濃度増加の存在下に配置される。
【図6】図6は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)の存在下において、処置から1、2、3日後のヒト表皮癌細胞株A431の細胞生存性試験を示す。細胞成長阻害の割合(%)は、コントロールに対する生存細胞の割合によって計算されている。
【図7】図7は、ペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)を用いた処置から2日後のインビトロ培養物(無血清DMEM)中のヒト表皮由来癌細胞株A431の可視像である。
【図8】図8は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)の存在下において、処置から1、2、3日後のヒト前立腺癌細胞株DU−145の細胞生存性試験を示す。細胞成長阻害の割合(%)は、コントロールに対する生存細胞の割合によって計算されている。
【図9】図9は、ペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)を用いた処置から2日後のインビトロ培養物(無血清DMEM)中のヒト前立腺癌細胞株DU−145の可視像である。
【図10】図10は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)の存在下において、処置から1、2、3日後のヒト前立腺癌細胞株LNCaPの細胞生存性試験を示す。細胞成長阻害の割合(%)は、コントロールに対する生存細胞の割合によって計算されている。
【図11】図11は、ペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)を用いた処置から2日後のインビトロ培養物(無血清DMEM)中のヒト前立腺癌細胞株LNCaPの可視像である。
【図12】図12は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)の存在下において、処置から1、2、3日後のヒト前立腺癌細胞株PC−3の細胞生存性試験を示す。細胞成長阻害の割合(%)は、コントロールに対する生存細胞の割合によって計算されている。
【図13】図13は、ペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)を用いた処置から2日後のインビトロ培養物(無血清DMEM)中のヒト前立腺癌細胞株PC−3の可視像である。
【図14】図14は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)の存在下において、処置から1、2、3日後のヒト乳癌細胞株MCF−7の細胞生存性試験を示す。細胞成長阻害の割合(%)は、コントロールに対する生存細胞の割合によって計算されている。
【図15】図15は、ペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)を用いた処置から2日後のインビトロ培養物(無血清DMEM)中のヒト乳癌細胞株MCF−7の可視像である。
【図16】図16は、異なる濃度のペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)の存在下において、処置から1、2、3日後の正常ヒト筋細胞の細胞生存性試験を示す。細胞成長阻害の割合(%)は、コントロールに対する生存細胞の割合によって計算されている。
【図17】図17は、ペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)を用いた処置から2日後のインビトロ培養物(無血清DMEM)中の正常ヒト筋細胞の可視像である。
【図18】図18は、10nMのペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)の存在下において、処置から1、3、6、24時間後の異なるヒト癌細胞株(A431:ヒト表皮癌、MCF−7:ヒト乳癌、DU−145:ヒト前立腺癌、UM−UC−3およびT24:ヒト膀胱癌、Na8:ヒト黒色腫)の細胞生存性試験を示す。細胞成長阻害の割合(%)は、コントロールに対する生存細胞の割合によって計算されている。
【図19A】図19は、ヒト表皮癌細胞株A431におけるペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)のアポトーシスの効果を測定するためのFACSアネキシンV染色プロトコールに相当する。表皮癌細胞株A−431は、0分(T0)、30分(T30)、60分(T60)、180分(T180)、360分(T360)の間、10nMのペプタボディEGF(p−EGF)またはイレレバントなペプタボディ(p−IRR)それぞれを用いて処置が施された。アネキシンV−FITC結合の変化はFACSにより分析された(図19A:p−EGF(太線)とp−IRR(細線)によって引き起こされたアポトーシスの比較)。
【図19B】図19Bは、ペプタボディによって引き起こされたアポトーシスの時間経過を示す。
【図20】図20は、非還元条件下または還元条件でのペプタボディのSDS−PAGE分析に相当する。MDP01:ペプタボディEGF、MDP03:ペプタボディGBP、MDP00:イレレバントなペプタボディ。
【図21】図21は、MTT法によるがん細胞の細胞毒性試験を示す。がん細胞は、濃度2μg/mlのペプタボディ、またはEGFRに特異的なモノクローナル抗体とインキュベートさせた。
【図22】図22は、イレレバントなペプタボディMDP00のDNA配列およびタンパク質配列を示す。斜字は開始コドンATG(メチオニン)および終止コドンTAA(*)であり、太字はエンハンサーペプチドであり、下線はHisタグであり、文字飾りのない文字はヒトCOMPであり、斜字かつ太字はヒンジ部位(ヒト由来)である。
【図23】図23は、ペプタボディEGF:MDP01のDNA配列およびタンパク質配列を示す。斜字は開始コドンATG(メチオニン)および終止コドンTAA(*)であり、太字はエンハンサーペプチドであり、下線はHisタグであり、文字飾りのない文字はヒトCOMPであり、斜字かつ太字はヒンジ部位(ヒト由来)であり、太字かつ下線は上皮成長因子(EGF)である。
【図24】図24は、ペプタボディGBP:MDP03のDNA配列およびタンパク質配列を示す。斜字は開始コドンATG(メチオニン)および終止コドンTAA(*)であり、太字はエンハンサーペプチドであり、下線はHisタグであり、文字飾りのない文字はヒトCOMPであり、斜字かつ太字はヒンジ部位(ヒト由来)であり、太字かつ下線は成長阻害ペプチド(GBP)である。
【図25】図25は、異なるエンハンサーに融合されたデカボディの産生に関する。図25には、SDS−PAGE後にクマシンブルー染色された、細菌発現系を用いて産生されたデカボディが示されている。A)は不溶性画分に相当し、B)は可溶性画分に相当する。
【図26】図26は、異なるエンハンサーに融合されたペプタボディの産生に関する。図26には、SDS−PAGE後にクマシンブルー染色された、細菌発現系を用いて産生されたペプタボディのウエスタンブロット分析の結果が示されている。検出は、尿素による変性バクテリア分画に対して抗His抗体を用いて行われた。
【図27】図27は、pQE−09のプラスミドマップを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮成長因子受容体のメンバーに結合し、
(a)ヒト化またはヒト由来軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位、
(b)ヒンジ部位、および
(c)3次元構造を有するモチーフを少なくとも含む上皮成長因子受容体リガンド
を少なくとも含み、
上皮成長因子受容体を発現する細胞中で細胞死を誘導することができる、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項2】
請求項1において、
前記上皮成長因子受容体のメンバーがErbB1、ErbB3、またはErbB4である、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項3】
請求項2において、
前記上皮成長因子受容体のメンバーがErbB1である、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
完全にヒト由来であるか、またはヒト化されている、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
多量体である、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記ヒンジ部位は、免疫グロブリンポリペプチドの領域であり、前記ヒト化軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位のC末端に位置する、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記上皮成長因子受容体リガンドは、前記ヒンジ部位のC末端に位置する、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、
エンハンサー配列をさらに含み、
前記エンハンサー配列は、前記ヒト化軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位のN末端に位置する、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項9】
請求項8において、
前記エンハンサー配列は、YSFE、YSFED、YSFEDL、YSFEDLY、YSFEDLYR、およびYSFEDLYRRを含む群から選ばれる、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、
前記上皮成長因子受容体リガンドは以下の群から選ばれる、単離された組み換え融合ペプタボディ。
(a)上皮成長因子ポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(b)成長阻害ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(c)トランスフォーミング増殖因子αポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(d)プラスマ細胞拡散ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(e)麻痺性ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(f)心作用性ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(g)アンフィレグリンポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(h)ヘパリン−結合上皮成長因子様ポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(i)ベータセルリンポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、および
(j)ウイルス性上皮成長因子様ポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体。
【請求項11】
請求項10において、
前記上皮成長因子受容体リガンドが、前記単離された組み換え融合ペプタボディの全長配列中に存在する、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかにおいて、
ポリ−ヒスチジンタグ配列をさらに含む、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかにおいて、
少なくとも1つのエフェクター領域をさらに含む、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項14】
請求項13において、
前記エフェクター領域は細胞毒素を含む、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項15】
請求項13において、
前記エフェクター領域は検出部位を含む、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項16】
請求項15において、
前記検出部位は蛍光性である、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項17】
請求項1ないし13のいずれかに記載の単離された組み換え融合ペプタボディをコードする、単離および精製されたDNA配列。
【請求項18】
請求項17に記載の単離および精製されたDNA配列の複製物を少なくとも1つ含む、ベクター。
【請求項19】
請求項18において、
前記単離および精製されたDNAの分子が機能するように、該DNA分子に結合されたプロモーターをさらに含む、ベクター。
【請求項20】
請求項17に記載の単離および精製されたDNAの分子を発現可能な真核または原核宿主細胞。
【請求項21】
薬学的に有効な量の請求項1ないし16のいずれかに記載の単離された組み換え融合ペプタボディを活性物質として含み、かつ、必要に応じて、薬学的に許容しうる担体、賦形剤、および補助剤をともに含む、医薬組成物。
【請求項22】
がんの治療または予防のための薬剤を調製するための請求項21に記載の医薬組成物の使用。
【請求項23】
請求項22において、
前記がんは、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、脂肪肉腫、神経内分泌腫瘍、中皮腫、神経鞘腫、髄膜腫、腺腫、黒色腫、白血病、リンパ性悪性腫、扁平上皮がん、上皮性扁平上皮がん、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺腫、肺の扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん、胃腸がん、すい臓がん、膠芽腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝腫瘍、乳がん、大腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌腫、子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓がん、腎がん、前立腺がん、陰唇がん、甲状腺がん、肝癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、精巣がん、食道がん、胆道腫瘍、頭部がん、および頸部がんからなる群より選ばれる、使用。
【請求項24】
請求項23において、
前記がんは頭部がん、頚部がん、膀胱がん、または黒色腫である、使用。
【請求項25】
治療上有効な量の請求項21に記載の医薬組成物を被験者に投与することを含み、
癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、脂肪肉腫、神経内分泌腫瘍、中皮腫、神経鞘腫、髄膜腫、腺腫、黒色腫、白血病、リンパ性悪性腫、扁平上皮がん、上皮性扁平上皮がん、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺腫、肺の扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん、胃腸がん、すい臓がん、膠芽腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝腫瘍、乳がん、大腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌腫、子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓がん、腎がん、前立腺がん、陰唇がん、甲状腺がん、肝癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、精巣がん、食道がん、胆道腫瘍、頭部がん、および頸部がんからなる群より選ばれる上皮成長因子受容体を発現するがんを治療または予防する方法。
【請求項26】
請求項25において、
前記がんは頭部がん、頚部がん、膀胱がん、または黒色腫である、方法。
【請求項27】
請求項1ないし16のいずれかに記載の単離された組み換え融合ペプタボディに細胞を接触させる工程を含む、アポトーシスおよび/またはネクローシスの誘導方法。
【請求項28】
請求項27において、
前記細胞は癌細胞である、方法。
【請求項29】
請求項1ないし16のいずれかに記載の単離された組み換え融合ペプタボディに細胞を接触させる工程を含む、細胞増殖の阻害方法。
【請求項30】
請求項29において、
前記細胞は癌細胞である、方法。
【請求項31】
必要に応じて、薬学的に許容しうる担体、賦形剤、および補助剤とともに、請求項15または16に記載の単離された組み換え融合ペプタボディを被験者に投与する工程を含む、がんの診断方法。
【請求項32】
必要に応じて、薬学的に許容しうる担体、賦形剤、および補助剤とともに、請求項1ないし16のいずれかに記載の単離された組み換え融合ペプタボディを含む、ヒト患者にて上皮増殖因子受容体を発現するがんを治療するためのキット。
【請求項33】
請求項32において、
化学療法剤、抗上皮成長因子受容体抗体、放射線療法剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる補助的な抗癌剤を含む、分離した薬剤投与形態を含む、キット。
【請求項34】
必要に応じて、試薬および/または使用説明書とともに、請求項15または16に記載の単離された組み換え融合ペプタボディを含む、ヒト患者にて上皮増殖因子受容体を発現するがんを治療するためのキット。
【請求項35】
請求項1ないし16のいずれかに記載の単離された組み換え融合ペプタボディの製造方法であって、
(a)請求項1ないし13のいずれかに記載の単離された組み換え融合ペプタボディをコードする単離および精製されたDNAの分子を構築する工程、
(b)適切な条件下にて細胞発現系内で、前記単離および精製されたDNAの分子を発現させる工程、および
(c)前記単離された組み換え融合ペプタボディを回収する工程。
【請求項36】
請求項35において、
前記細胞発現系が原核細胞である、方法。
【請求項37】
請求項35または36において、
前記適切な条件は、前記細胞発現系にて10−40℃で2−40時間培養することである、方法。
【請求項38】
請求項37において、
前記適切な条件は、37℃で8−16時間培養することである、方法。
【請求項39】
請求項35ないし38のいずれかにおいて、
前記工程(c)は、前記単離された組み換え融合ペプタボディを前記細胞発現系から抽出した後、精製および再生工程により達成される、方法。
【請求項40】
請求項39において、
前記精製は還元剤の存在下で行なわれ、その結果、汚染物が除去される、方法。
【請求項41】
請求項39において、
前記再生工程は、再生バッファー中で直接溶出することにより行なわれ、かつ、連続透析をさらに含む、方法。
【請求項42】
請求項41において、
前記直接溶出を前記再生バッファー中で行なうことにより、前記単離された組み換え融合ペプタボディの最終濃度を300nMとする、方法。
【請求項43】
請求項41において、
前記連続透析は、少なくとも2つの異なる透析緩衝液を含む、方法。
【請求項44】
請求項41において、
前記再生工程は、濃縮前に前記単離された組み換え融合ペプタボディを酸化する工程を含む、方法。
【請求項45】
タンパク質産生増加能を有し、
YSFE、YSFED、YSFEDL、YSFEDLY、YSFEDLYR、YSFEDLYRR、これらの断片、これらの分子キメラ、およびこれらの変異体を含む群から選ばれる、単離および精製されたエンハンサー配列。
【請求項1】
上皮成長因子受容体のメンバーに結合し、
(a)ヒト化またはヒト由来軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位、
(b)ヒンジ部位、および
(c)3次元構造を有するモチーフを少なくとも含む上皮成長因子受容体リガンド
を少なくとも含み、
上皮成長因子受容体を発現する細胞中で細胞死を誘導することができる、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項2】
請求項1において、
前記上皮成長因子受容体のメンバーがErbB1、ErbB3、またはErbB4である、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項3】
請求項2において、
前記上皮成長因子受容体のメンバーがErbB1である、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
完全にヒト由来であるか、またはヒト化されている、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
多量体である、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記ヒンジ部位は、免疫グロブリンポリペプチドの領域であり、前記ヒト化軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位のC末端に位置する、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記上皮成長因子受容体リガンドは、前記ヒンジ部位のC末端に位置する、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、
エンハンサー配列をさらに含み、
前記エンハンサー配列は、前記ヒト化軟骨オリゴマーマトリクスポリペプチド部位のN末端に位置する、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項9】
請求項8において、
前記エンハンサー配列は、YSFE、YSFED、YSFEDL、YSFEDLY、YSFEDLYR、およびYSFEDLYRRを含む群から選ばれる、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、
前記上皮成長因子受容体リガンドは以下の群から選ばれる、単離された組み換え融合ペプタボディ。
(a)上皮成長因子ポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(b)成長阻害ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(c)トランスフォーミング増殖因子αポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(d)プラスマ細胞拡散ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(e)麻痺性ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(f)心作用性ペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(g)アンフィレグリンポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(h)ヘパリン−結合上皮成長因子様ポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、
(i)ベータセルリンポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体、および
(j)ウイルス性上皮成長因子様ポリペプチド,またはその断片,あるいはその変異体。
【請求項11】
請求項10において、
前記上皮成長因子受容体リガンドが、前記単離された組み換え融合ペプタボディの全長配列中に存在する、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかにおいて、
ポリ−ヒスチジンタグ配列をさらに含む、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかにおいて、
少なくとも1つのエフェクター領域をさらに含む、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項14】
請求項13において、
前記エフェクター領域は細胞毒素を含む、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項15】
請求項13において、
前記エフェクター領域は検出部位を含む、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項16】
請求項15において、
前記検出部位は蛍光性である、単離された組み換え融合ペプタボディ。
【請求項17】
請求項1ないし13のいずれかに記載の単離された組み換え融合ペプタボディをコードする、単離および精製されたDNA配列。
【請求項18】
請求項17に記載の単離および精製されたDNA配列の複製物を少なくとも1つ含む、ベクター。
【請求項19】
請求項18において、
前記単離および精製されたDNAの分子が機能するように、該DNA分子に結合されたプロモーターをさらに含む、ベクター。
【請求項20】
請求項17に記載の単離および精製されたDNAの分子を発現可能な真核または原核宿主細胞。
【請求項21】
薬学的に有効な量の請求項1ないし16のいずれかに記載の単離された組み換え融合ペプタボディを活性物質として含み、かつ、必要に応じて、薬学的に許容しうる担体、賦形剤、および補助剤をともに含む、医薬組成物。
【請求項22】
がんの治療または予防のための薬剤を調製するための請求項21に記載の医薬組成物の使用。
【請求項23】
請求項22において、
前記がんは、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、脂肪肉腫、神経内分泌腫瘍、中皮腫、神経鞘腫、髄膜腫、腺腫、黒色腫、白血病、リンパ性悪性腫、扁平上皮がん、上皮性扁平上皮がん、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺腫、肺の扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん、胃腸がん、すい臓がん、膠芽腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝腫瘍、乳がん、大腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌腫、子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓がん、腎がん、前立腺がん、陰唇がん、甲状腺がん、肝癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、精巣がん、食道がん、胆道腫瘍、頭部がん、および頸部がんからなる群より選ばれる、使用。
【請求項24】
請求項23において、
前記がんは頭部がん、頚部がん、膀胱がん、または黒色腫である、使用。
【請求項25】
治療上有効な量の請求項21に記載の医薬組成物を被験者に投与することを含み、
癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、脂肪肉腫、神経内分泌腫瘍、中皮腫、神経鞘腫、髄膜腫、腺腫、黒色腫、白血病、リンパ性悪性腫、扁平上皮がん、上皮性扁平上皮がん、肺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺腫、肺の扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん、胃腸がん、すい臓がん、膠芽腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝腫瘍、乳がん、大腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌腫、子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓がん、腎がん、前立腺がん、陰唇がん、甲状腺がん、肝癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、精巣がん、食道がん、胆道腫瘍、頭部がん、および頸部がんからなる群より選ばれる上皮成長因子受容体を発現するがんを治療または予防する方法。
【請求項26】
請求項25において、
前記がんは頭部がん、頚部がん、膀胱がん、または黒色腫である、方法。
【請求項27】
請求項1ないし16のいずれかに記載の単離された組み換え融合ペプタボディに細胞を接触させる工程を含む、アポトーシスおよび/またはネクローシスの誘導方法。
【請求項28】
請求項27において、
前記細胞は癌細胞である、方法。
【請求項29】
請求項1ないし16のいずれかに記載の単離された組み換え融合ペプタボディに細胞を接触させる工程を含む、細胞増殖の阻害方法。
【請求項30】
請求項29において、
前記細胞は癌細胞である、方法。
【請求項31】
必要に応じて、薬学的に許容しうる担体、賦形剤、および補助剤とともに、請求項15または16に記載の単離された組み換え融合ペプタボディを被験者に投与する工程を含む、がんの診断方法。
【請求項32】
必要に応じて、薬学的に許容しうる担体、賦形剤、および補助剤とともに、請求項1ないし16のいずれかに記載の単離された組み換え融合ペプタボディを含む、ヒト患者にて上皮増殖因子受容体を発現するがんを治療するためのキット。
【請求項33】
請求項32において、
化学療法剤、抗上皮成長因子受容体抗体、放射線療法剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる補助的な抗癌剤を含む、分離した薬剤投与形態を含む、キット。
【請求項34】
必要に応じて、試薬および/または使用説明書とともに、請求項15または16に記載の単離された組み換え融合ペプタボディを含む、ヒト患者にて上皮増殖因子受容体を発現するがんを治療するためのキット。
【請求項35】
請求項1ないし16のいずれかに記載の単離された組み換え融合ペプタボディの製造方法であって、
(a)請求項1ないし13のいずれかに記載の単離された組み換え融合ペプタボディをコードする単離および精製されたDNAの分子を構築する工程、
(b)適切な条件下にて細胞発現系内で、前記単離および精製されたDNAの分子を発現させる工程、および
(c)前記単離された組み換え融合ペプタボディを回収する工程。
【請求項36】
請求項35において、
前記細胞発現系が原核細胞である、方法。
【請求項37】
請求項35または36において、
前記適切な条件は、前記細胞発現系にて10−40℃で2−40時間培養することである、方法。
【請求項38】
請求項37において、
前記適切な条件は、37℃で8−16時間培養することである、方法。
【請求項39】
請求項35ないし38のいずれかにおいて、
前記工程(c)は、前記単離された組み換え融合ペプタボディを前記細胞発現系から抽出した後、精製および再生工程により達成される、方法。
【請求項40】
請求項39において、
前記精製は還元剤の存在下で行なわれ、その結果、汚染物が除去される、方法。
【請求項41】
請求項39において、
前記再生工程は、再生バッファー中で直接溶出することにより行なわれ、かつ、連続透析をさらに含む、方法。
【請求項42】
請求項41において、
前記直接溶出を前記再生バッファー中で行なうことにより、前記単離された組み換え融合ペプタボディの最終濃度を300nMとする、方法。
【請求項43】
請求項41において、
前記連続透析は、少なくとも2つの異なる透析緩衝液を含む、方法。
【請求項44】
請求項41において、
前記再生工程は、濃縮前に前記単離された組み換え融合ペプタボディを酸化する工程を含む、方法。
【請求項45】
タンパク質産生増加能を有し、
YSFE、YSFED、YSFEDL、YSFEDLY、YSFEDLYR、YSFEDLYRR、これらの断片、これらの分子キメラ、およびこれらの変異体を含む群から選ばれる、単離および精製されたエンハンサー配列。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2007−527206(P2007−527206A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506445(P2006−506445)
【出願日】平成16年4月5日(2004.4.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001049
【国際公開番号】WO2004/087766
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(502129715)ユニバーシティ オブ ローザンヌ (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月5日(2004.4.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001049
【国際公開番号】WO2004/087766
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(502129715)ユニバーシティ オブ ローザンヌ (5)
【Fターム(参考)】
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