説明

がん治療のための細胞増殖抑制剤及び電子受容体を含有する医薬製剤

【課題】 腫瘍治療用、特にがん治療用に有効な医薬製剤を提供する。
【解決手段】 細胞増殖抑制作用を有する少なくとも1つの活性化合物、少なくとも1つの生物学的電子受容体、および製薬上慣用の添加物を含み、細胞増殖抑制作用を有する活性化合物が4H−1−ベンゾピラン−4−オンの塩をベースとする活性化合物であることを特徴とする製剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞増殖抑制活性を有する少なくとも一つの活性化合物、少なくとも一つの活性な生物学的電子受容体および慣用の医薬品添加物からなる医薬製剤、および腫瘍の治療のためのそれの使用、特にがんの治療のためのそれの使用に関する。
【0002】
多くの医薬製剤が腫瘍の治療に知られており、これらの知られており、或る場合には既に使用されている細胞増殖抑制剤は、例えば、特に、タキサン、タキサン誘導体、タキソール、キノン、ベンゾキノン、他のキノンおよびそれらの化合物の誘導体および/または塩のように、異なった細胞増殖抑制作用の活性化合物を含むという点で異なるものである。
【0003】
特に、有望な細胞増殖抑制剤は、4H−1−ベンゾピラン−4−オンおよびその誘導体であり、これらの化合物は、別名フラボピリドールであって、ヨーロッパ特許出願第0 137 193号、ヨーロッパ特許第0 366 061号およびドイツ出願公開公報第36 12 337号に開示されている。特に、これらは、式B
【0004】
【化1】

[式中、R1は水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル、アリール-C1-C4-アルキル、置換されたC1-C6-アルキル、C3-C6-シクロアルキル、1、2または3個のヘテロ原子、例えばN、S、Oまたはいずれかの所望のそれらの組合わせを有するC3-C9-ヘテロシクリル、C3-C6-シクロアルキル-C1-C4-アルキル、C2-C6-アルケニル、C2-C6-アルキニル、アリール、多環式環を含む芳香族複素環基、置換されたアリール、カルボキシまたはアルデヒドまたはCOO-C1-C4-アルキル基、一級アミノ、アルキルアミノ、アラルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アミド、アリールアミノまたはジアリールアミノ基または-CH2O-C1-C4-アルキルであり;
2は、水素またはC1-C3-アルキルであり;
3は、水素またはOCH3であり;
4は、水酸基であり;
5は、CH3であり;
mは、2であり、そして
nは、1である。]
に示される化合物としてヨーロッパ特許第0 366 061号に開示されている化合物およびそれの製薬上許容され得る酸付加塩である。
【0005】
本発明の化合物は、二つの不斉中心を有し、一つはベンゾピラン部分(C-4min)と窒素複素環の結合部位であり、もう一つはR4 (C-3min)により置換される炭素原子であり、
それ故に2対の光学異性体が可能である。本発明の化合物の定義には、全ての可能な立体異性体およびそれらの混合物が含まれる。特に、ラセミ体の形態および指示された活性を有する分割された光学異性体が含まれる。その2つのラセミ体は、物理的な方法、例えば、分別結晶により分離され得る。その個々の光学異性体は、標準的方法、例えば光学活性な酸との塩形成、次いでそれに続く結晶化によりラセミ体から得ることができる。
【0006】
1に好適したアルキル基は、例えば、6までの、好ましくは5までの炭素原子を有する直鎖または分枝状基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t-ブチル、ペンチルまたはイソペンチル基である。
【0007】
1に好適した置換アルキル基は、例えば、ハロアルキル基、例えばトリフルオロメチル、ヒドロキシアルキル、例えばヒドロキシエチル、またはカルボキシアルキル、例えばカルボキシエチルである。
【0008】
3〜6個の炭素原子を有するR1としてのシクロアルキル基の好適した例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロへキシルである。 シクロプロピルメチルは、シクロアルキルアルキルの一例である。
【0009】
1としてのアラルキル基の例は、フェニルアルキル基であって、そのフェニル基は、未置換であるか、例えばハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ニトロまたはトリフルオロメチル基、アミノ基または置換されたアミノ基のような置換基により単置換または多置換されたものである。
【0010】
1としてのアリール基の例は、未置換であるか、例えばハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、水酸基、カルボキシル、COO-アルキル、CONH2、CONH-アルキル、CON-(アルキル)2、ニトロまたはトリフルオロメチル、アミノ、C1-C4-アルキルアミノ、ジ-C1-C4-アルキルアミノ、芳香族複素環(例えばピリジル基)および多環式芳香環(例えばナフチル基)のような置換基により単置換または多置換されたフェニル基である。
【0011】
1のアルキルアミノ基の好適した例は、(CH2)n-NR67(n=1〜3)およびR3およびR7はアルキル基であって、上記R1〜R5のアルキル基と同じ意味であり;さらに、R6およびR7は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、1つまたはそれ以上のヘテロ原子を有する複素環であり得る。それらが結合している窒素と一緒になって、R6およびR7を形成する複素環の好適した例は、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン、ピペラジンまたはイミダゾールであり、未置換であるか、またはC1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、アリールまたは水酸基またはアミノ基で1つまたはそれ以上の部位が置換されたものであり得る。
【0012】
本発明の化合物と無機酸または有機酸との塩の好適した実施例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩またはフマル酸塩である。
【0013】
既知の腫瘍治療に用いられた医薬製剤の顕著で多大に不利な点は、場合によっては、このタイプの構成成分がその患者にかなりの副作用を引き起こすことであり、ここでこれらの副作用の性質および強度は、それの濃度およびそれの化学構造の各々の場合の細胞増殖抑制作用に依存して、かなり変えることができる。
【0014】
従って、例えば、EP0542807は、2-フェニル-1,2-ベンズイソセレナゾール-3(2H)-オン(エブセレン)の存在または同時投与により、細胞増殖抑制作用を有するシスプラチンの副作用の抑制について開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、腫瘍治療用、特にがん治療用に有効な医薬製剤を製造するという目的に基づいており、それに伴う細胞増殖抑制作用を有する化合物による副作用は、比較的長期の使用においてすら、特に効果的に減少および/または抑制される。
本発明のこの目的は、本特許の請求項1の特徴を有する医薬製剤により達成される。
【0016】
本発明により、腫瘍治療用医薬製剤、特にがん治療用医薬製剤は、本発明の構成成分は、細胞増殖抑制作用を有する活性化合物、特に、4H-1-ベンゾピラン-4-オン、タキサン、キノン、ベンゾキノン、アントラキノンおよびそれらの誘導体および/またはそれらの塩をベースとする活性化合物を少なくとも1つ、並びに慣用の医薬添加剤を含有するように提供される。さらに、少なくとも1つの生物学的電子受容体が本発明の製剤中に存在する。
【0017】
本発明の医薬製剤は、細胞増殖抑制作用を有する活性化合物が、腫瘍、特にがんの制御に役立ち、そのミトコンドリア膜からエネルギーに富む電子を受け取り、次にこれらの電子をその身体またはその細胞に存在する酸素に手渡すという基本原則に基づく。また、これにより有毒な酸素フリーラジカル(また、これを簡潔な表現で、反応性酸素種(ROS)と称呼される)も形成される。これらのエネルギーに富むROSは、体を構成する生体高分子の化学構造を破壊し、故に、この対応する経路により、場合によっては大変深刻な、副作用が引き起こされる。
【0018】
驚くべきことに、前記の過度および/または誤って方向づけられたエネルギーに富む電子は、これらの電子が酸素と反応して有毒なROSを形成し得る前に、動物および/またはヒト細胞のミトコンドリア膜から捕獲され得るということが、今や見出された。このため、本発明の医薬製剤は、適切な生物学的電子受容体、すなわち過度なおよび/または誤って方向づけられたエネルギーに富む電子および有毒な代謝産物としてのこのようなROSの形成を阻害する本発明の製剤中に含有される少なくとも1つの生物学的電子受容体を含有するということが必要である。ここに、何故本発明の医薬製剤が著しく低い副作用であり、従って細胞増殖抑制活性を有する化合物の許容性においてかなりの改善があるのかという理由が理解されるのである。故に本発明の製剤を腫瘍治療用、特にがん治療用に使用する場合、本発明の医薬製剤が長期にわたり投与される場合でも、所望でない副作用が、完全に、またはほとんど完全に抑制される。さらに、本発明の製剤に含有される生物学的電子受容体は、以下にさらに説明されるように、この方法によりさらなる利点が有効になるように、細胞増殖抑制作用を有する特定の活性化合物の溶解性を改善することができるか、またはこれらの活性化合物の吸収性を増加することができる。
【0019】
換言すれば、従って、本発明の医薬製剤は、少なくとも1つ生物学的電子受容体を含有し、この生物学的電子受容体は、ヒトおよび/または動物の体内において、ROSの形成が効果的に抑制されるように、細胞増殖抑制作用を有する化合物の投与中に得た、または生じた、エネルギーに富む電子を捕獲することができるということを特徴とする。その生物学的電子受容体それ自体は、毒性がない。
【0020】
最初に、本発明の医薬製剤の特に有利な実施態様は、生物学的電子受容体として、式1に示される官能基を少なくとも1つ含むタイプの化合物を少なくとも1つ有する本発明の製剤を提供するものである。
−(CH2)2−N+−(CH3)3 (式1)
【0021】
上記式1に示される官能基を少なくとも1つ以上含む生物学的電子受容体に関して、意
外にも、既に上記に説明されたような、誤って方向づけられた(misdirected)形態または過剰量で存在するエネルギーに富む所望されない電子が、前記および式1に示される官能基により捕獲されるということが発見された。
【0022】
この捕獲反応中、2つの電子および1つの陽子が、水素化物イオン(-H--)の形態で、メタンの脱離に伴い、電子受容体の官能基に受け渡される。これが結果として水素化物イオンになり、従ってそのエネルギーに富む原子は、ミトコンドリア膜に存在する酸素に受け渡されるのではなく、メタンの形で体から離脱することができる。
【0023】
生物学的有機体が本発明に関する医薬製剤で処理される場合には、このタイプの過度のエネルギーに富んだ電子(しかし、本発明の製剤の場合にはこの電子は捕獲される)の結果としてメタンの形成が検出されるという、肝細胞を用いた実験および動物実験により、前記捕獲反応もまた本来このように進行するということを証明することが可能である。この捕獲反応を用いて、有毒で過剰なエネルギーを、不活性でヒトまたは動物の体にとって無毒な、肺から吐き出されるガスに変換することができた。
【0024】
本発明の医薬製剤は、特に、生物学的電子受容体としてS−アデノシルメチオニン、それらの誘導体および/またはそれらの塩を含有する。生物学的電子受容体として本発明の製剤の実施態様中に含有される、S−アデノシルメチオニン、それの誘導体および/またはそれの塩は、同様に 電子受容体として、そこに少なくとも1つのメチル基を含有し、そしてこのように、これらの電子が、細胞増殖抑制作用を有する化合物の投与中に生じる副作用の最終的な主原因である、細胞への悪影響および/または損傷になりえないように、その細胞増殖抑制作用を有する化合物の投与中得られた過度にエネルギーに富む電子および/または誤って方向づけられた電子を捕獲し、その結果少なくとも一つのメチル基が脱離して、無害のメタンに変換されることにより、同様に機能する。
【0025】
本発明の医薬製剤の別な実施態様において、好気性細胞に存在する天然型電子受容体である生物学的電子受容体を含有する。特にここで言及すべきは、下記式Aに示される化合物であり、それらの化合物は、生物学的材料(即ち、好ましくは大豆、とうもろこし、小麦、菜種、含油果物および含油種子および/または卵)から単離されるか、または合成的または半合成的に製造または誘導される。
【化2】

式Aにおいて、R1およびR2は、同一または異なっており、それぞれ水素および/または飽和したおよび/または不飽和のC1-C22-脂肪酸の基、好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸および/またはリノール酸である。
【0026】
その合成化合物または半合成化合物および誘導体は、好ましくはジパルミトイルホスファチジルコリン (DPPC)、ジステアリルホスファチジルコリン(DSPC)およびジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)である。
【0027】
また、所望されないROSの形成、およびそれによる副作用の発生は、生物学的電子受容体として、ベタイン、アセチルコリン、コリン、グリセロホスホコリン、ホスファチジルコリン、リソホスファチジルコリン、カルニチン、アシルカルニチン、スフィンゴミエリンを、個々の物質として、混合物および/または誘導体として製剤中に含有する、本発明の医薬製剤の実施態様により著しく抑制される。
【0028】
特に好適しており、副作用に関して高い抑制能を有する本発明の医薬製剤の実施態様は、モル質量比が0.1:1〜5:1、特にモル質量比が0.5:1〜2:1の範囲である、生物学的電子受容体および細胞増殖抑制作用を有する活性化合物を含有する。
【0029】
本発明の医薬製剤の特に有利な実施態様は、生物学的電子受容体として、好ましくはベタインおよび少なくとも1つの脂肪酸塩の混合物、その脂肪酸塩は好ましくは炭素主鎖、特に飽和および/または不飽和の12〜18個の炭素原子を有する炭素主鎖を好ましく含有する脂肪酸塩の混合物を含有する製剤を提供する。
【0030】
この前記ベタインおよび脂肪酸塩の混合物以外に、本発明の医薬製剤は、また生物学的電子受容体として、少なくとも一つの脂肪酸塩、ここでもまたその脂肪酸塩が炭素主鎖、特に飽和および/または不飽和の12個の炭素原子を有する炭素主鎖を好ましく含有するものも含みうる。
【0031】
特に、ベタインラウレート、ベタインミリステート、ベタインパルミテート、ベタインステアレート、ベタインオレエートおよび/またはベタインリノレートが、本発明の製剤の前記の実施態様のベタインの脂肪酸塩として存在する。
【0032】
使用に特に好適しており、利点があり、安定に貯蔵可能である本発明の医薬製剤の実施態様が提案され、本発明の製剤の場合には生物学的電子受容体としてリン脂質、特に植物のリン脂質、好ましくは大豆のリン脂質を含有する。この場合には、これらのリン脂質生物学的電子受容体は、一方では、大変効果的に副作用を抑制し、他方では、溶解度の低いそれらの細胞増殖抑制活性を有する化合物を適した無毒の溶媒にかなりよく溶解させることができるか、安定に分散させるか、または安定に乳化させることができる。さらに、このタイプのリン脂質を生物学的電子受容体として使用することにより、エマルジョン、ナノエマルジョン、リポソーム製剤、混合ミセル含有製剤、またはリン脂質および細胞増殖抑制作用を有する活性化合物との複合体の形成においても製造することが可能である。故に、その結果、リン脂質生物学的電子受容体および少なくとも1つの活性化合物を含有するこのタイプの製剤は、他の多くの利点を有する。これらの利点は、例えば、細胞増殖抑制活性を有するその活性化合物が、例えば、その液体製剤の投与が容易であること、貯蔵安定性が増すこと、濾過滅菌が可能であること、透明度が保証されること、またはその活性化合物が適切なリン脂質のビヒクルにさらにカプセルに包まれることの理由で、より高濃度の活性化合物がより速やかに、より高い有効性で投与することができるという理由で、より優れた、および/またはより容易な溶解性、分散性、または乳化性を有することで表わされる。
【0033】
本発明の医薬製剤が細胞増殖抑制作用を有する活性化合物として4H-1-ベンゾピラン-4-オンおよび/またはそれの誘導体またはそれの塩、即ち、特に、好ましい化合物としてヨーロッパ特許第0366061号に記載されたフラボピリドールHClを含有する場合には、特に前記の利点が生ずる。フラボピリドールは式Cにより示される:
【化3】

【0034】
意外にも、生物学的電子受容体として、リン脂質、または、特に前記またはさらに以下に記載の、顕著な貯蔵安定性を有し、細胞増殖抑制活性を有する特定のリン脂質を含有するそれらの製剤を測定することができる。
【0035】
しかし、特に、生物学的電子受容体としてホスファチジルコリンおよび4H-1-ベンゾピラン-4-オン、それの誘導体および/またはそれの塩および好ましくはフラボピリゾールをベースとする活性化合物を含有するそれらの実施態様の場合には、貯蔵中、生物学的電子受容体および活性化合物との間の所望されない相互作用があり、それにより、活性化合物および/または電子受容体の所望されない脱活性および/または修飾をもたらすという懸念があった。それらのリン脂質生物学的電子受容体、その基礎を成すリン脂質、 特に大豆から単離されたリン脂質は、その製剤に含有される電子受容体の総量に基づき重量で少なくとも50%濃度のホスファチジルコリンを含有し、本発明の医薬製剤の実施態様に特に好適する。ここで特に好適していると言及すべきものは、例えば、それらのリン脂質生物学的電子受容体が、さらに重量で少なくとも50%のホスファチジルコリンを液体ビヒクル系、特に、製薬上許容され得る1級C2-C4-アルコールおよび/または天然型油および/またはポリアルキレングリコールに含有するものである。このタイプのホスファチジルコリン液体製剤中の油性の構成成分に関して、この目的のために、特に、各々の場合において単独または混合物として、液体トリグリセリド(即ち、例えばカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセリルステアレート、アスコルヒ゛ンパルミテート、オレイン酸パルミテート、ココナツ油および/またはポリエチレングリコール)が好ましく、ここでこのタイプの油状製剤中のホスファチジルコリン濃度が、好ましくは重量で45%〜75%、特に重量で50%〜60%の範囲であるのが好ましいことが強調される。
【0036】
他方では、より多量のエネルギーに富む電子および/または有毒な酸素フリーラジカル(ROSS)が本発明の製剤に捕獲される場合には、次にリン脂質電子受容体としてそれらのリン脂質成分は、ホスファチジルコリン濃度が重量で70%以上、好ましくは重量で80%以上、特に好ましくは重量で90%以上で使用され、これらの濃度は、本製剤に含まれるリン脂質電子受容体の総量に関して詳述される。このように、特に、本発明の製剤は、液体として処方され、重量で70〜80%のホスファチジルコリンおよび前記の油状物を含有するタイプのリン脂質生物学的電子受容体を含み得る。次に、高度に純粋なリン脂質生物学的電子受容体は、リン脂質生物学的電子受容体の量を基にして、重量で90%〜96%のホスファチジルコリンを含有する。
【0037】
さらに、特に有利な本発明の医薬製剤の実施態様は、前記のリン脂質生物学的電子受容体、さらに少なくとも1つの負に荷電したリン脂質、特にN-アシルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジック酸を含有する上記のホスファチジルコリンの濃度に加えて、並びに前記の負に荷電したリン脂質の塩および/または誘導体を提供する。この場合において、これらの負に荷電
したリン脂質が、細胞増殖抑制作用を有する活性化合物が各場合において使用される溶媒に不溶性かつその貯蔵安定性が同様に増加する場合であっても、かなり長期の保存においても沈殿が形成されないような、高い透明度を有する本発明の医薬製剤の液体製剤にさせる。
【0038】
好ましくは、本発明の製剤の前記実施態様における負に荷電したリン脂質濃度は、本製剤に含まれるリン脂質電子受容体の総量に基づき、重量で2%〜10%の範囲である。
【0039】
前述のリン脂質電子受容体に関して、リン脂質電子受容体は、リン脂質またはリン脂質の混合物、特にホスファチジルコリンからなることが記述されてきた。これらのうちで、既に繰り返し述べた1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスホコリン[(3-sn ホスファチジル)コリン]に加えて、また好ましく1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスホイノシトール、1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスホセリン、1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスホグリセロールおよび1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスフェートもまた、それぞれ単独または混合物で含有する。
【0040】
本発明の前記製剤の特に適する実施態様において、そのアシル基が、
重量で61〜73%のリノール酸基、
重量で10〜14%のパルミチン酸基、
重量で8〜12%のオレイン酸基、
重量で4〜6%のリノレン酸基、
重量で3〜5%のステアリン酸基および
重量で最大2%の他の脂肪酸基からなるホスファチジルコリンを含有するタイプのホスファチジルコリンを含有する。
【0041】
既に上述したように、本発明の製剤において提供されるリン脂質は、リン脂質混合物であることができる。これに適したリン脂質は、特に、既に前述した1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスフェート(1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスホイノシトール、1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスホセリン、1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスホグリセロールおよび/または1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスフェート)、好ましくは重量で最大30%まで上記の1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスフェートをそのリン脂質の混合物中に含有し、次に、このタイプの本発明の製剤の実施態様は、重量で少なくとも70%の1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスホコリンを含有する。この場合には、前記の質量パーセントは、本発明の製剤に含まれるリン脂質電子受容体の総質量に関して詳述する。
【0042】
また、同様に、本発明の製剤の特に適した実施態様は、リン脂質として、1,2-ジアシルグリセロ-3-ホスホコリンが含まれ、その1-アシル基は、
重量で45〜61%のリノール酸基、
重量で19〜26%のパルミチン酸基、
重量で8〜12%のオレイン酸基、
重量で4〜6%のリノレン酸基、
重量で6〜9%のステアリン酸基および
重量で2%の他の脂肪酸基からなり、
一方で、その2-アシル基は、
重量で77〜85%のリノール酸基、
重量で1〜2%のパルミチン酸基、
重量で8〜12%のオレイン酸基、
重量で4〜6%のリノレン酸基、
重量で0〜1%のステアリン酸基および
重量で2%の他の脂肪酸基からなる。
【0043】
本発明の医薬製剤の個々の処方に関して、この場合には、本発明の製剤の経口投与、非経口投与および/または局所投与のいずれの処方も適切であるということを強調することができる。さらに、本発明の製剤は、錠剤、カプセル剤、溶液、乳剤、分散剤、リポソームシステムとしておよび/またはミセルシステムと混合された液体として、製造される。
【0044】
また、糖衣製剤および徐放性糖衣製剤も本発明の範囲に含まれる。酸耐性製剤および腸溶性製剤が好ましい。製薬上慣用の医薬添加剤は、腸溶性コーティング、例えばセルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびメタアクリル酸およびメチルメタクリレートのアニオンポリマーからなる。
【0045】
経口投与用の好適な医薬化合物は、分割した単位、例えば、カプセル剤、カシェ剤、サッキング錠剤または錠剤、散剤または顆粒剤として;水性または非水性液体中の液体または懸濁液として;または水中油滴型または油中水滴型エマルジョンとして、存在することができる。これらの組成物は、活性化合物および担体(1つまたはそれ以上のさらなる構成成分からなることができる)が接触するようになるステップからなる、いずれかの適切な製薬方法により製造され得る。一般的に、その構成成分は、活性化合物と液体および/または微細に分割された固形担体の均一または均質な混合により製造され、その後製造物は、必要によっては、形作られる。従って、例えば、その化合物の粉末または顆粒を、適切な場合には1つまたはそれ以上の別の構成成分と共に、圧縮または形成することによって錠剤を製造することもできる。圧縮された錠剤は、自由に流れる形態(例えば粉末または顆粒)の該化合物を、適切な場合には製薬上慣用の医薬添加物(例えば結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤および/または1つまたはそれ以上の表面活性剤/分散剤)と適切な機械にかけて混合して錠剤化することにより製造され得る。成型された錠剤は、粉末の該化合物を適切な機械にかけて不活性な液体希釈剤で湿らせて成型することにより製造され得る。
【0046】
ペルオーラル(舌下)投与に適した医薬組成物は、製薬上許容され得る慣例の医薬添加物としてスクロース、アラビアゴムまたはトラガカントを含有するサッキング錠剤、および不活性な基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセロールまたはスクロースおよびアラビアゴム)中の該化合物からなる錠剤からなる。
【0047】
経口用およびペルオーラル製剤は、場合により、さらに製薬上慣用の添加物、例えば人工香味料、特にフルーツフレーバー、または甘味料(例えば、サッカリンナトリウム)を含み得る。
【0048】
非経口投与用に適した医薬組成物は、対象にされるレシピエントの血液と好ましくは等張である、好ましくは滅菌水性製剤からなる。これらの製剤は、好ましくは静脈内投与されるが、また注射剤として皮下投与、筋肉内投与または皮内投与も可能である。これらの製剤は、好ましくは、その化合物と水を混合し、溶かした溶液を滅菌して血液と等張にすることにより製造されることができる。
【0049】
皮膚への局所投与に適切な製剤組成物は、好ましくは軟膏、クリーム、ローション、パスタ剤、噴霧剤、エアロゾルまたはオイルとして存在する。使用され得る製薬上慣例の医薬添加物は、ビヒクル例えばペトレウムゼリー、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコールおよびこれらの化合物の2つまたはそれ以上の組み合わせである。
【0050】
経皮投与もまた可能である。経皮投与に適する製薬上の組成物は、それぞれパッチとし
て存在することができ、そのパッチは活性化合物および電子受容体を、場合により緩衝化された水性溶液中で、接着剤中に溶解および/または分散させて、またはポリマー中に分散させて、適切に含有する。特に可能性のあることとして、例えばPharmaceutical Research, 2(6): 318 (1986)に記載のような活性化合物は、電子伝達またはイオン導入により放出されることができる。
【0051】
本発明の製剤の特に適した比較的投与し易い実施態様は、この場合、処方される製剤用の注射剤または輸液として提供する。次にこの製剤は、細胞増殖抑制作用を有する活性化合物としてフラボピリドール×HCl、ドキソルビシン×HCl, イダルビシン×HClおよびダウノルビシン×HClを好ましく含有する。次に、前記活性化合物を溶解し、分散させ、乳化させることおよび/またはリポソームの形態で製造した、および/または適切な溶媒(即ち、例えば、水、エタノール、 プロパノール、イソプロパノールおよび/またはそれらの混合物)におけるミセルに混合する。さらに、前記の油および/またはポリアルキレンオキシドを、これらの液体製剤中に存在させることができる。さらに、これらの液体投与形態においては、生物学的電子受容体として、ベタインジヒドロゲンシトレート、コリンシトレート、リン脂質、好ましくは前記天然型リン脂質、および特にホスファチジルコリンおよび/またはアデメチオニントシレートビス(スルフェート)を含有する。
【0052】
前記液体投与形態中の細胞増殖抑制作用を有する化合物の濃度に関して、この濃度は、選択される特定の溶媒およびこの溶媒中の特定の細胞増殖抑制活性を有する化合物の溶解性、分散性、または乳化性に依存する。ここで特に適切であると判明した細胞増殖抑制作用を有する活性化合物の濃度は、1mg〜200mgの範囲、特に5mg〜40mgの範囲である。
【0053】
また、細胞増殖抑制作用を有する化合物の濃度およびそれの化学構造によって、本発明の医薬製剤中の生物学的電子受容体の濃度も定義される。本発明の製剤は、液体製剤の場合には、生物学的電子受容体を50mg〜3mgの範囲、特に250mg〜1mgの範囲の濃度で好ましく含有することがここで示され、各場合において用いられる生物学的電子受容体の性質(即ちそれの化学構造)はまた各々の場合に用いられる生物学的電子受容体の濃度に影響する。
【0054】
しかし、本発明の医薬製剤が経口投与用製剤(即ち、特に錠剤、顆粒剤または散剤)として処方される場合には、本発明の製剤は細胞増殖抑制作用を有する活性化合物としてフラボピリドール×HClおよび/またはイダルビシン×HClを好ましく含有し、同時に提供される生物学的電子受容体はベタインジヒドロゲンシトレート、コリンシトレート、リン脂質および特にホスファチジルコリンおよび/またはアデメチオニントシレートビス(サルフェート)である。
【0055】
前記液体製剤の場合には既に説明したように、経口投与用製剤における細胞増殖抑制作用を有する活性化合物の濃度は、特定の活性化合物または各場合に選択される活性化合物に依存しており、好ましくは細胞増殖抑制作用を有する化合物の濃度が5mg〜70mg、特に15mg〜40mgの範囲である。
【0056】
特に、前記経口投与用形態では、50mg〜3mg、特に好ましくは250mg〜1mgの濃度の生物学的電子受容体を含有する。
【0057】
以前に、本発明の医薬製剤に対する実施態様が記載され、本発明のその製剤には同時に細胞増殖抑制作用を有する少なくとも1つの活性化合物およびさらに生物学的電子受容体もまた含まれる。
【0058】
また、特に好適な実施の変形態様は、腫瘍治療用、特にがん治療用の本発明の医薬製剤の場合には、2つの液体製剤または2つの固体製剤または1つの固体製剤および1つの液体製剤からなっており、一次製剤が4H-1-ベンゾピラン-4-オン、タキサン、キノン、ベンゾキノン、アントラキノン、それらの誘導体および/またはそれらの塩、および慣用の医薬添加物をベースとする細胞増殖抑制作用を有する活性化合物を少なくとも1つ含有し、次に同時に二次製剤が生物学的電子受容体を含有する。換言すると、本発明の医薬製剤の実施態様においては、特に、これら2つの製剤が液体または粉末の形態で投与される場合には、細胞増殖抑制作用を有する化合物の個々の濃度が与えられ、さらに、治療され、それに個々に合わせた患者の反応に依存して選択された生物学的電子受容体の投与前、投与中、投与後の濃度が適切であるように、一次製剤は二次製剤と分離して処方される。本発明の製剤の実施態様において、前述された本発明の製剤の実施態様は、1つの製剤中に活性化合物および生物学的電子受容体を含有し、同時に使用するものである。
【0059】
特に本発明はまた、前記の腫瘍治療用医薬製剤の使用、特にがん治療用医薬製剤の使用に関するものであり、本発明の製剤はその細胞増殖抑制活性を有する活性化合物を日用量0.0001g〜2gの範囲で、特に0.01g〜1gの範囲で、生物学的電子受容体を日用量0.1g〜100gの範囲で、特に5g〜50gの範囲で投与され、前記の用量の割合は各々治療される患者の体表面積の1平方メートルに関するものである。
【0060】
本発明の製剤は、実施態様の助けとして、下記にさらに詳細に説明されるが、それに限定されるものではない。
【0061】
A1からA5の実施態様
下記のA1からA5の実施態様は、経口投与用を目的とし、細胞増殖抑制作用を有する各種の活性化合物および各種の電子受容体を含有する製剤に関する。
【0062】
A1、A2およびA5の製剤の製造のために、表1記載の構成成分の表1に記載の量を各々エタノールに溶解した。真空および不活性ガス下でその溶媒を除去し、残留物を20L(製剤A1およびA5)の水または10L(製剤A2)の水に分散させた。次に、その分散物をホモジナイズして、平均粒子径0.1μm〜1μmを有するリポソームを形成した。
【0063】
A1およびA5の製剤に、各々の場合、2Lの水に溶解した2kgのマルトースを、均質化した分散剤に添加して、そして製剤A2の場合には、1kgのマルトースを1Lの水に溶解し、その関連した分散物を再度均質化した。
この結果、リポソーム平均径0.1μm〜1μmを有するリポソーム製剤が得られた。
その均質な混合物を、ポアサイズ0.2μmを有するフィルターを用いて濾過滅菌した。
【0064】
この方法で濾過滅菌された製剤を、バイアルに分注し、各バイアルは、20ml中に100mgのフラボリピドールを含有するA1製剤、20ml中に10mgのドキソルビジシンを含有するA2製剤、20ml中に100mgのフラボピリドールを含有するA5製剤である。
貯蔵のために、その分注されたバイアルを、その後凍結乾燥する。
【0065】
注入のために、各バイアルを、次に20mlの水に再度分散させて、250mlのグルコース溶液(グルコース濃度:重量で5%)の添加後、混合する。
【0066】
【表1】

【0067】
A3およびA4製剤の製造のために、各々表2に記載の構成物質を表2に記載の量の水に溶解した。この後、その溶液をポアサイズ0.2μmを有する膜を使用して濾過滅菌した。細胞増殖抑制活性を有する10mgの濃度の活性化合物を10mlのバイアルの濃度を有する濾過滅菌溶液を調剤した後、バイアルを凍結乾燥した。
注入の直前に、このように凍結乾燥した構成成分を10mlの水に再度分散させて、200mlのグルコース溶液(グルコース濃度:重量で5%)に混合した。
【0068】
【表2】

【0069】
B1からB5の実施態様
下記のB1からB5の実施態様は、経口投与用を目的とし、細胞増殖抑制活性を有する異なった活性化合物であり、細胞増殖抑制作用を有する活性化合物を含有する一次製剤を、生物学的電子受容体を含有する二次製剤と、経口投与直前に混合するために、互いに分離して貯蔵される製剤に関する。
【0070】
細胞増殖抑制活性を有する活性化合物を含有する一次製剤の製造のために、表3記載の成分の表3記載の量を溶解した。この後、その溶液を0.2μmのフィルターを用いて濾
過滅菌し、B1製剤の場合には、1mgのフルオロウラシルを40mlアンプルに分注し、B2製剤の場合には、20mgのダウノルビシンを20mlバイアルに分注し、B3製剤の場合には10mgのドキソルビシンを5mlのバイアルに分注し、B4製剤の場合には10mgのイダルビシンを5mlのバイアルに分注し、B5製剤の場合には10mgのマイトマイシンを10mlのバイアルに分注した。
B2〜B5製剤を調合したバイアルを、凍結乾燥し、適切に貯蔵した。
【0071】
生物学的電子受容体を含有する、B1、B2、B4およびB5の二次製剤の製造のために、表4記載の成分を表4記載の量に溶解した。この後、その溶液を0.2μmのフィルターを用いて濾過滅菌した。
【0072】
二次製剤B1の場合には、500mgのベタインジヒドロゲンシトレートを10mlアンプルに分注し、B2製剤の場合には、100mgのコリンシトレートを5mlのアンプルに分注し、 B4製剤の場合には、200mgのコリンシトレートを10mgアンプルに分注し、B5製剤の場合には、250mgのベタインジヒドロゲンシトレートを5mlのアンプルに分注した。
【0073】
二次製剤B3を下記のように製造した;10kgのホスファチジルコリンを20gのDSPG(ジステアロイルホスファチジルグリセロール)と共に20Lのエタノールに溶解した。この後、エタノールを真空および不活性ガス存在下で除去した。残留物を20Lの水に分散させて、次に均質化して、リポソーム製剤(リポソーム径0.1〜1μm)を形成させた。
【0074】
次に、10kgのマルトースおよび10Lの水からなる溶液を、このリポソーム製剤に添加した。次に、透明になるまで混合して、均質な分散物を得た。
このようにして製造した分散物を、0.2μmのフィルターを用いて濾過滅菌した。
その濾過滅菌した分散物を、1gのホスファチジルコリンを含有する20mlバイアルに分散させた。この後、そのバイアルを凍結乾燥した。
【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
注入の直前に、B1の一次製剤のアンプルを、250mlのグルコース溶液(グルコース濃度:重量で5%)を添加したB1の二次製剤と混合した。
【0078】
注入の直前に、一次製剤B2のバイアルを、20mlの水に再度分散させ、グルコース溶液(グルコース濃度:重量で5%)を添加した二次製剤B2のアンプルと混合した。
【0079】
注入直前に、B3の一次製剤のバイアルを、5mlの水に再度分散し、B3の二次製剤のバイアル(但し、この二次製剤は予め20mlの水に再度分散させてある)と混合した。このために、250mlのグルコース溶液(グルコース濃度:重量で5%)を添加して混合した。
【0080】
注入直前に、B4の一次製剤のバイアルを、10mlの水に再度分散させた。このために、予め200mlのグルコース溶液(グルコース濃度:重量で5%)を添加しておいた、B4の二次製剤のアンプルを添加した。
【0081】
一次製剤B5は、注入直前に10mlの水に再度分散させ、次に二次製剤B5のアンプルおよび50mlのグルコース溶液(グルコース濃度:重量で5%)と混合した。
【0082】
C1からC4の実施態様
下記の実施態様C1〜C4は、前記実施態様B1〜B5同様、非経口投与を目的とし、一次製剤として細胞増殖抑制活性を有する多種の活性化合物を含有し、二次製剤として多種の生物学的電子受容体を含有し、使用直前にのみ一次製剤が二次製剤と混合されるものである、該製剤に関する。
【0083】
細胞増殖抑制活性を有する活性化合物を含有する一次製剤C1〜C4の製造のために、表5に記載の構成成分は、表5に記載の量をその都度エタノールに溶解した。真空および不活性ガスの存在下エタノールを除去した後、残留物を水(製剤C1の製造の場合には20Lの水を、製剤C2〜C4の製造の場合には各々10Lの水)に分散させた。このような方法で製造した均質な分散物を用いて次に実施した。
【0084】
この後、その均質な分散物に、マルトース水溶液を添加し、一次製剤C1の場合には、この2kgのマルトースおよび2Lの水を含有するマルトース溶液、製剤C2〜C4の場合には、このマルトース溶液はそれぞれ1kgのマルトースを1Lの水に含有する。
均質に混合した後、このようにして得られた分散液を0.2μmフィルターを用いて濾過滅菌した。
【0085】
100mgのフラボピリドールを20mlバイアルに(C1)、10mgのダウノルビシ
ンを10mlバイアルに(C2)、10mgのイダルビシンを10mlバイアルに(C3)、そして10mgのドキソルビシンを10mlバイアルに(C4)分注した後、それらのバイアルを凍結乾燥した。
【0086】
各種の生物学的電子受容体を含有する、二次製剤C1〜C4の製造のために、表6に記載の構成物質を、それぞれ表6に記載の量で水に溶解した。この後、その溶液を0.2μmフィルターを用いて濾過滅菌し、アンプルに分注した。これらのアンプルは、5ml中250mgのベタインヒドロゲンシトレートを含有するC1、5ml中100mgのコリンシトレートを含有するC2、5ml中250mgのコリンシトレートを含有するC3および5ml中250mgのベタインヒドロゲンシトレートを含有するC4である。
【0087】
【表5】

【0088】
【表6】

【0089】
注入直前に、バイアルに貯蔵されるそれぞれの乾燥細胞増殖抑制活性化合物を水に懸濁し、C1の実施態様の場合には20mlの水を使用し、実施態様C2〜C4の場合にはそれぞれ10mlの水をこれに用いる。この後、その再懸濁された活性化合物と前記C1〜C4の二次製剤を混合して、対応するアンプルに貯蔵した。さらに、250mlのグルコース溶液(グルコース濃度: 重量で5%)をそれぞれ添加し、前記の2つの液体と混合した。
【0090】
D1からD4の実施態様
下記のD1〜D4の実施態様は、経口投与用であって、同時に細胞増殖抑制活性を有する種々の活性化合物および種々の生物学的電子受容体を含有する製剤に関する。実施態様D1〜D3に記載のカシェ剤の製造用に、表7に記載の構成成分を互いに適切に均質化させて適切な混合デバイス中で混合した。
【0091】
この後、そのカシェ剤を、1カシェに付きイダルビシン25mgの濃度になるように、100mgで分注した。この経口投与型製剤の使用には、次に、一杯の水に構成成分D1〜D3のカシェ剤を分散させるだけである。
【0092】
【表7】

【0093】
経口投与用製剤D4は、下記のように調製される:
25kgのイダルビシンを、100kgの微細結晶セルロースおよび5kgのステアリン酸マグネシウム塩と均質になるよう混合した。この混合物130mgをイダルビシン濃度が100mgるよう硬質ゼラチンカプセルに分注した。200gのべタインヒドロゲンシトレート、50mgのソルビトールおよび2.5kgのサッカリンナトリウムを5000Lの水に溶解することにより、二次製剤を製造した。0.2μmフィルターを用いて滅菌濾過した後、この溶液を5mlの飲用アンプルに分注した。各飲用アンプルには濃度200mgの生物学的電子受容体を含有する。
【0094】
使用のために、実施態様D4を、それぞれの患者が活性化合物を含有する硬質ゼラチンカプセルを飲用アンプルの内容と共に摂取するというように投与した。
それらの製剤の実施態様に使用される水は、注射用水(W.F.I.)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞増殖抑制作用を有する少なくとも1つの活性化合物、式A
【化1】

[式中、R1およびR2は、互いに独立して、水素または飽和または不飽和のC1−C22脂肪酸の基である]で示される少なくとも1つの生物学的電子受容体、および製薬上慣用の添加物を含み、細胞増殖抑制作用を有する活性化合物が4H−1−ベンゾピラン−4−オンの塩をベースとする活性化合物であることを特徴とする製剤。
【請求項2】
1およびR2がパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸であることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
製剤が、生物学的電子受容体として、ホスファチジルコリンまたはその誘導体を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
生物学的電子受容体と細胞増殖抑制作用を有する活性化合物とのモル質量比が、0.1:1〜5:1の範囲であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製剤。
【請求項5】
製剤が生物学的電子受容体として植物リン脂質を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製剤。
【請求項6】
植物リン脂質が大豆リン脂質である請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
リン脂質が、その製剤に含有されるリン脂質生物学的電子受容体の総量をベースとし、少なくとも50重量%の濃度のホスファチジルコリンを含有することを特徴とする、請求項5または6に記載の製剤。
【請求項8】
製剤中のホスファチジルコリンの濃度が、各々その製剤に含有されるリン脂質生物学的電子受容体の総量をベースとして、70重量%を超えることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の製剤。
【請求項9】
リン脂質生物学的電子受容体がリン脂質の混合物であって、その混合物が、ホスファチジルコリンに加えて、さらに少なくとも1つの負に荷電したリン脂質を含有することを特徴とする、請求項5〜8のいずれかに記載の製剤。
【請求項10】
リン脂質の混合物中の負に荷電したリン脂質が、その製剤中に含有されるリン脂質生物学的電子受容体の総量をベースとして、2重量%〜10重量%の濃度で存在することを特徴とする、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
製剤が一つの注射剤または輸液として処方されること、その製剤が細胞増殖抑制作用を有する活性化合物として、フラボピリドール×HClを含有すること、およびその製剤が生物学的電子受容体として、ホスファチジルコリンを含有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の製剤。
【請求項12】
細胞増殖抑制作用を有する化合物の濃度が1mg〜200mgであることを特徴とする、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
生物学的電子受容体の濃度が50mg〜3mgであることを特徴とする、請求項10または11に記載の製剤。
【請求項14】
その製剤が、経口投与用製剤として処方されること、その製剤が細胞増殖抑制作用を有する活性化合物としてフラボピリドール×HClを含有すること、およびその製剤が生物学的電子受容体としてホスファチジルコリンを含有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の製剤。
【請求項15】
細胞増殖抑制作用を有する化合物の濃度が、5mg〜70mgの範囲であることを特徴とする、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
生物学的電子受容体の濃度が、50mg〜3mgの範囲であることを特徴とする、請求項14または15に記載の製剤。
【請求項17】
製剤が2つの液体製剤または固体製剤、または1つの固体製剤および1つの液体製剤からなるものであって、一次製剤が4H−1−ベンゾピラン−4−オンの塩をベースとする細胞増殖抑制作用を有する活性化合物を少なくとも1つ含有し、かつ二次製剤が少なくとも1つの生物学的電子受容体を含有するものであることを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の製剤。
【請求項18】
腫瘍治療用医薬品の製造のための請求項1〜17のいずれかに記載の製剤の使用。
【請求項19】
それぞれの場合について治療される患者の体表面積の1平方メートルをベースとして、細胞増殖抑制作用を有する化合物の日用量が、0.0001g〜2g、生物学的電子受容体の用量が0.1g〜100gである、請求項18に記載の製剤の使用。
【請求項20】
細胞増殖抑制作用を有する少なくとも1つの活性化合物、ベタイン、アセチルコリン、コリン、グリセロホスホコリン、リソホスファチジルコリン、カルニチン、アシルカルニチン、スフィンゴミエリン、それらの混合物および/またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つの生物学的電子受容体、および製薬上慣用の添加物を含み、細胞増殖抑制作用を有する活性化合物が4H−1−ベンゾピラン−4−オンの塩をベースとする活性化合物であることを特徴とする製剤。
【請求項21】
製剤が生物学的電子受容体としてベタインおよび少なくとも1つの脂肪酸塩との混合物を含有することを特徴とする、請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
製剤が生物学的電子受容体としてベタインの脂肪酸塩を少なくとも1つ含有することを特徴とする、請求項20に記載の製剤。
【請求項23】
脂肪酸塩が12〜18の炭素原子を有する炭素主鎖を含有することを特徴とする、請求項21に記載の製剤。
【請求項24】
製剤中に、ベタインラウレート、ベタインミリステート、ベタインパルミテート、ベタインステアレート、ベタインオレエートおよび/またはベタインリノレートがベタインの脂肪酸塩として存在することを特徴とする、請求項21に記載の製剤。
【請求項25】
製剤が一つの注射剤または輸液として処方されること、その製剤が細胞増殖抑制作用を
有する活性化合物として、フラボピリドール×HClを含有すること、およびその製剤が生物学的電子受容体として、ベタインジヒドロゲンシトレート、コリンシトレートおよび/またはアデメチオニントシレートビス(サルフェート)を含有することを特徴とする、請求項20に記載の製剤。
【請求項26】
その製剤が、経口投与用製剤として処方されること、その製剤が細胞増殖抑制作用を有する活性化合物としてフラボピリドール×HClを含有すること、およびその製剤が生物学的電子受容体としてベタインジヒドロゲンシトレート、コリンシトレートおよび/またはアデメチオニントシレートビス(スルフェート)を含有することを特徴とする、請求項20に記載の製剤。

【公開番号】特開2012−162577(P2012−162577A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128489(P2012−128489)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2001−543092(P2001−543092)の分割
【原出願日】平成12年11月25日(2000.11.25)
【出願人】(502205477)アー・ナッターマン・ウント・コンパニー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】A・Nattermann&Cie.GmbH
【Fターム(参考)】