説明

ころ軸受用保持器、その保持器の成形金型及び製造方法

【課題】ころ軸受用保持器のポケットにおいて、内径側ころ止め突起を省略する一方、その突起に代わる新たなころ止め手段を案出することにより潤滑性を向上させることである。
【解決手段】ポケット14の内壁面16に外径側ころ止め突起17を設け、前記内壁面16の相互間に内径側に至るに従い相互間の距離が小さくなるくさび角θを付与し、内壁面16の内径側端部における相互間の距離yをころ径より小さくなるように設定し、ころ21が内壁面16のくさび形状に噛みこむことにより内径方向への逸脱を防止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円筒ころ軸受、針状ころ軸受等のころ軸受に使用される保持器、その保持器の成形金型及びその成形金型を用いた保持器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ころ軸受の合成樹脂製保持器(以下、「樹脂製保持器」という。)は、軸方向に対向した円環状の側縁部と、その側縁部相互を円周方向に所定の間隔をおいて連結する柱部によって構成され、柱部相互間にころ保持用のポケットが設けられる。前記ポケットの柱部側の対向した内壁面の外径側端部と内径側端部に、それぞれ外径側ころ止め突起と内径側ころ止め突起が設けられる(特許文献1)。
【0003】
ポケットの対向内壁面に設けられた前記のころ止め突起は、潤滑油の流通を妨げ軸受の潤滑性を低下させる要因となる。このため、外径側及び内径側ころ止め突起の位置を軸方向にずらせた配置、いわゆる千鳥形配置とすることによって潤滑油の流通性を改善し、潤滑性を向上させることが行われる(特許文献1)。また、ポケット相互間の柱部に径方向の通油溝を設けて流通性を改善し、潤滑性の向上を図ることも知られている(特許文献2)。
【0004】
一方、前記保持器の成形金型は、内径側金型と各ポケットを成形するための可動金型によって構成される。可動金型は、各ポケットに対応するよう円環状に配置されたスライドコアと、各スライドコアを放射方向に開閉する駆動手段を備えた、いわゆるスライドコア式が採用される(特許文献3、同4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−293569号公報(図3)
【特許文献2】特開平9−79268号公報(図1)
【特許文献3】特開平10−141376号公報(図4)
【特許文献4】特開2005−201457号公報(図3、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述のように、内径側及び外径側のころ止め突起の位置を軸方向にずらせたり、柱部に通油溝を設けたりする手段によって潤滑性を多少は向上できるとしても、潤滑油の流通を妨げるころ止め突起が内径側端部と外径側端部に存在することに変わりがないので、潤滑性の向上効果には限度がある。
【0007】
また、スライドコア式を採用した成形金型を用いて保持器を成形する場合は、スライドコアを外径方向に開く際に、外径側ころ止め突起の部分は逆テーパとなるので強制的に弾性変形させながら抜く、いわゆる無理抜きとなる。このため、外径側ころ止め突起の高さは無理抜きに耐え得る高さに制限される。また、スライドコアの合わせライン、いわゆるパーティングラインが保持器外径面に生じるため、ハウジングと接触した際に油膜切れが生じる問題もある。
【0008】
潤滑性を向上するその他の手段として、保持器の側縁部内径面に軸方向に立ち上がる鍔を設け、その鍔によって保持器内部に入ってきた潤滑油を保留させることが考えられる。しかし、このような鍔を設けるとすると、前記のスライドコア式の成形金型においては、内径側金型から保持器を軸方向に抜くこと(いわゆる型抜き)ができない問題がある。このため、従来の保持器においては前記のような鍔を設けることはできなかった。
【0009】
また、前記のスライドコア式の成形金型は、スライドコアを放射状に開閉させる構造であるので、金型が複雑・大型となりコストが高いこと、1つの金型から1個の保持器しか成形できず、しかもスライドコア相互の合わせ面に高い精度が求められるため生産効率が低いこと等の問題があった。
【0010】
そこで、この発明の第一の課題は、ころ軸受用保持器において、内径側ころ止め突起を省略する一方、そのころ止め突起に代わる新たなころ止め手段を案出することにより潤滑性を向上させること、また、側縁部内径面に鍔を設けることを可能にすることにより、一層潤滑性を向上させることにある。
【0011】
また、第二の課題は、前記の保持器を製作するための成形金型を提供することにあり、第三の課題は、その成形金型を用いた保持器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の第一の課題を解決するために、この発明に係るころ軸受用保持器は、軸方向に対向した円環状の側縁部と、両方の側縁部相互を円周方向に所定の間隔をおいて連結する柱部と、前記柱部相互間に形成されたポケットからなり、前記ポケットの柱部側の対向内壁面の外径側端部に外径側ころ止め突起が設けられたころ軸受用保持器において、前記対向内壁面は、内径側に至るに従い相互に接近する傾斜を有し、前記相互間の距離が外径側端部においてはころ径より大きく、内径側端部においてはころ径より小さく形成された構成としたものである。
【0013】
前記構成のころ軸受用保持器においては、ころの外径方向への逸脱は外径側ころ止め突起によって防止される。内壁面の内径側端部にはころ止め突起は設けられていない。しかし、対向内壁面が相互に接近する方向に傾斜することによって一定のくさび角を持ったくさび形状が形成され、内径側端部における対向内壁面間の距離がころ径より小さく形成されているため、内径方向へ移動したころは対向内壁面間に噛みこまれることにより逸脱が防止される。内径側端部にころ止め突起が設けられていない分だけ潤滑油の流通性が改善される。
【0014】
前記側縁部の内径面に、内径方向に突き出した鍔を設けた構成をとることができる。このような鍔を設けることにより、保持器内部に流入した潤滑油が鍔間で保留されるため、潤滑性が向上するとともに、保持器の剛性が増す。
【0015】
前記の鍔は、従来のスライドコア式の金型の場合は、型抜きの問題があるため成形が不可能である問題があったが、帯状の中間品を成形する工程、その中間品を湾曲させ、両端部を突き合わせて円環状に結合する工程を経る製造方法をとることにより、型抜きの問題が生じることがなく、前記の鍔を容易に成形することができる。
【0016】
前記の中間品は、軸方向に対向した側縁部と、両方の側縁部相互を長さ方向に所定の間隔をおいて連結する柱部と、前記柱部相互間に形成されたポケットを有し、前記ポケットの柱部側の対向内壁面の厚さ方向の一方の端部にころ止め突起が設けられた帯状の形状をなすものである。また、その中間品を湾曲させる際は、前記のころ止め突起を外径側に向けて行われる。
【0017】
中間品を湾曲させ、その両端部を突き合わせて円環状に結合した場合、ポケットを形成する対向内壁面は外径側端部間の距離がころ径より大きく、内径側端部間の距離がころ径より小さい傾斜を持ったくさび形状に形成される。外径側端部には外径側ころ止め突起が存在するため、これによってころの外径方向への逸脱が防止される。また内径方向への逸脱は、ころがくさび形状の対向内壁面間に噛みこまれることにより防止される。内径側ころ止め突起が無い分だけ潤滑性が改善される。
【0018】
前記第二の課題を解決するために、この発明に係るころ軸受用保持器の成形金型は、前記の中間品を射出成形するための金型であり、雌金型と雄金型の2プレート形金型によって構成され、前記雌金型又は雄金型のいずれか一方に、前記中間品のポケットを成形するための成形凸部が設けられた構成である。
【0019】
前記ポケットの対向内壁面に傾斜角を付与する加工は、後の曲げ工程によって行われるので、この成形金型の構造は簡単安価な構成となる。また、ころ止め突起は、ポケット内壁面の外径側端部にのみ設けられるので、無理抜きする必要がなく、容易に型抜きすることができる。
【0020】
また、前記第三の課題を解決するために、この発明に係るころ軸受用保持器の製造方法に係る発明は、中間品を成形する成形工程、前記中間品を長さ方向に曲げる曲げ工程、及び中間品の両端部を突き合わせて円環状に結合する結合工程を順次実行するようにしたものである。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、この発明に係るころ軸受用保持器は、ころの内径方向への逸脱は、ポケットの対向内壁面によって形成されるくさび形状の部分にころが噛みこまれることにより防止される。このため、内径側ころ止め突起を設ける必要がないので、ポケット内への潤滑油の流通性が改善され、ころの潤滑性が向上する。また、成形時においても、ころ止め突起は外径側端部にのみ設けられるものであるから、型抜きの支障になることがない。
【0022】
さらに、側縁部の内径面に鍔を設けることにより、保持器内部に流入した潤滑油が鍔間で保留されるので、この点からも潤滑性を向上させることができ、同時に剛性を増す効果がある。
【0023】
また、この発明に係るころ軸受用保持器の成形金型は、簡単な形状の中間品を成形するものであるため、スライドコア方式を採用する必要はない。このため、成形金型は2プレート形式の単純なものでよいので、小型化・低コスト化される。また、スライドコア式の一つの問題であるパーティングラインの発生がないので、油膜切れの要因が除去される。
【0024】
さらに、この発明に係る保持器の製造方法は、一度の成形工程で最終形態まで成形することなく、成形工程において中間品を成形したのち、曲げ工程と結合工程を順に実行することにより最終形態に仕上げるものであるから、成形工程において使用される成形金型は簡単な構造となり、小型化・低コスト化される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施形態1の保持器の縦断正面図である。
【図2】図2は、図1の一部拡大平面図である。
【図3】図3は、図2のX1−X1線の断面図である。
【図4】図4は、図3のX2−X2線の断面図である。
【図5】図5は、中間品の斜視図である。
【図6】図6は、中間品の成形工程図である。
【図7】図7は、保持器の突き合わせ部の平面図である。
【図8】図8は、保持器の突き合わせ部の他の例の平面図である。
【図9】図9は、保持器の突き合わせ部の他の例の平面図である。
【図10】図10は、中間品の他の成形工程図である。
【図11】図11は、実施形態2の中間品の成形工程図である。
【図12】図12は、実施形態2の中間品の拡大斜視図である。
【図13】図13は、実施形態3の保持器の断面図である。
【図14】図14は、実施形態4の成形金型の斜視図である。
【図15】図15は、図14の型締め状態の断面図である。
【図16】図16は、図14の雄金型の一部を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明を実施するための形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
【0027】
図1から図10に示した実施形態1は、ころ軸受用の樹脂製保持器11及びその保持器11の製造方法に関するものである。ころ軸受としては、円筒ころ軸受、針状ころ軸受などがある。樹脂としてはポリアミド樹脂にグラスファイバー、カーボンファイバー等の強化材を0%〜40%混入したものが使用される。

【0028】
保持器11は、軸方向に対向した両側部の側縁部12(図2、図4参照)と、両方の側縁部12相互を円周方向に所定の間隔をおいて連結する多数の柱部13と、柱部13の相互間に形成された多数のポケット14により構成された円環状のものである。この保持器11は、帯状に成形された中間品23(図5参照)を湾曲させてその両端部を突き合わせ、その突き合わせ部24(図1参照)において円環状に接合することにより構成される。
【0029】
保持器11のポケット14は、図2に示したように、柱部13に沿った長辺と、側縁部12に沿った短辺とによって形成された大略長方形をなしている。柱部13に沿った長辺側の相互に対向した内壁面16は、図3に示したように、相互間の距離が外径側端部における距離xが最大、内径側端部に至るに従い相互に接近し、内径側端部における相互間の距離yが最小となるように等角度に傾斜し、両方の傾斜面によって一定のくさび角θをもったくさび形状が形成される。距離xはころ径より大に形成され、距離yはころ径より小に形成される。
【0030】
前記内壁面16の外径側端部において、軸方向の2箇所に外径側ころ止め突起17が設けられる。外径側ころ止め突起17は、図3に示したように、外径面に沿って延びた上端壁面18と、その上端壁面18の先端から鋭角をもって傾斜して内壁面16に至る傾斜面19とにより構成された断面三角形のものである。外径側ころ止め突起17の相互間の間隔wはころ径より小さく設定される。これにより、ころ21の外径方向への逸脱が防止される(図3の二点鎖線参照)。
【0031】
また、内径側端部における内壁面16相互間の間隔の距離yは、前述のようにころ径より小さく設定されるので、ころ21の内径方向への逸脱が防止される(図3の二点鎖線参照)。
【0032】
前記の対向内壁面16の間のくさび角θは、以下説明するように、保持器11の製作工程において付与される。
【0033】
図5及び図6に保持器11の中間品23を示す。中間品23は、帯状の平板22に所要数のポケット14を長さ方向に一定間隔をおいて設けたものであり、射出成形によって製作される。ポケット14の相互間は柱部13となっている。各ポケット14を形成する相互に対向した内壁面16は平板22の面に直角に形成され、両方の内壁面16は平行になっている。
【0034】
また、各内壁面16の板厚方向の一方の端部(湾曲された際に外径面側となる端部)の軸方向2箇所に外径側ころ止め突起17が形成される
【0035】
前記中間品23の両端部は、柱部13の半分幅の柱部、即ち半幅柱部13aによって閉塞された形状となっている(図5、図7参照)。後述の半幅ポケット14a(図8参照)のように開放された形状の場合もある。便宜上、前者の端部形状を閉塞形端部、後者の端部形状を開放形端部と称する。
【0036】
前記の中間品23を円環状に湾曲させる工程は、図6の工程(a)〜(d)に示したように、150℃〜250℃の温度で加熱しつつ、外径側ころ止め突起17側が外径面となる向きに、まず両端部を曲げ、その後全体を曲げていく。曲げが進むに従いポケット14の対向内壁面16は内径側端部が相互に接近するように傾斜する(工程(c)(d)参照)。
【0037】
工程(d)において両端部を突き合わせ、突き合わせ部24を当接させ、円環状の保持器11に仕上げる。仕上がった状態においては、図3に示したように、ポケット14の対向した内壁面16の相互によってくさび角θを持ったくさび形状が形成され、外径側端部間の間隔は最大距離x、内径側端部間の間隔は最小距離yとなる。距離xはころ径より大であり、距離yはころ径より小である。
【0038】
なお、突き合わせ部24の部分においては、両側の半幅柱部13aによって他の部分と同幅の柱部13が形成される(図7参照)。この場合は、突き合わせ部24にころ21が存在しない形態となる。
【0039】
中間品23の両端部の形式が前述の開放形端部の場合は、図8に示したように、両方の半幅ポケット14a相互によって一つのポケット14が形成される。この場合は、突き合わせ部24にころ21が存在する形態となる。このとき、突き合わせ部24は互いに結合している。
【0040】
また、中間品23の両端部のその他の形状として、図9に示したように、一方の端部の柱部13の端縁中間部分に係合凹部25、他方の端部の柱部13の端縁中間部に相補形状の係合凸部26を設ける場合がある。このような係合凹部25及び係合凸部26をもった端部の形状を係合形端部と称する。
【0041】
この係合形端部の場合は、円環状に湾曲して両端部を突き合わせる際に係合凹部25と係合凸部26を相互に係合させる。
【0042】
また、図10に示したように、工程(a)において、1枚の長尺な中間品23を長さ方向に複数に分割することにより、複数枚の中間品27を製作し、それぞれ湾曲することにより、複数の保持器11を得ることができる。1台の金型によって成形した1枚の中間品23から複数の保持器11を得ることができるので効率的である。
[実施形態2]
【0043】
前記の実施形態1は、1枚の帯状平板22からなる中間品23を円環状に湾曲させ、その両端部を突き合わせ部24において係合したものであったが、図11に示した実施形態2に係る保持器の場合は、2枚の中間品23によって一つの保持器を作る二つ割り形の保持器である。
【0044】
即ち、この場合は、前記の実施形態1の中間品23の場合の半分の長さを持つ2枚の成形品によって中間品31を製作し(図11の工程(a)参照)、それぞれ曲げ加工を施し(工程(b)(c)参照)、半円環状の二つ割り形の中間品31を製作し(工程(d)参照)、その二つの中間品31の両端部を突き合わせ部24において突き合わせ、円環状の保持器11に仕上げるものである(工程(e)参照)。この突き合わせ部24は、それぞれ溶着等によって結合させてもよく、また結合させずに2つ割り保持器として使用する場合もある。
【0045】
前記の中間品31は、長尺の中間品23を一定長さに切断することによって製作されたものであってもよい。
【0046】
この場合も前記実施形態1の場合と同様に(図1参照)、内壁面16の外径側には外径側ころ止め突起17を設け、対向内壁面16の間に一定のくさび角θを持ったくさび形状を形成し、かつ内径側端部間の距離yをころ21の直径より小さく設定する。
【0047】
図12は半円環状の中間品31の例を示している。この場合は、一端部は半幅柱部13aによって閉塞された閉塞形端部であり、他端部は半幅ポケット14aによって開放された開放形端部である。両端部をともに閉塞形端部又は開放形端部とすることができる。また係合形端部とすることもできる。
[実施形態3]
【0048】
図13に示した実施形態3の保持器11は、側縁部12の内径面に内径方向に立ち上がった鍔28を設けたものである。このような鍔28を設けることにより、保持器11の内部に流入した潤滑油を両側の鍔28の間に保留することができるので、潤滑性が向上するとともに剛性が増す。
[実施形態4]
【0049】
実施形態4は、前記の中間品23(図5参照)を射出成形する際の成形金型に関するものである。溶融樹脂の通路となるランナー、ゲート等は図示を省略している。
【0050】
図14から図16に示したように、この成形金型を構成する雌金型32は、その合わせ面側に中間品23の帯状の平板22を成形するための成形凹部33を有する。
【0051】
また、雄金型34の合わせ面側に、前記平板22(図5参照)に所要数のポケット14を長さ方向に一定間隔をおいて成形するための多数の成形凸部35が設けられる(図16参照)。各成形凸部35は、四角柱の形状であり、配列の方向に対して直交する向きに設けられている。各成形凸部35の長さ方向の両端部近傍において、両側の稜辺の同じ位置に面取り状の小凹部36が設けられる。この小凹部36は外径側ころ止め突起17の成形に寄与する。
【0052】
前記雌金型32と雄金型34を型締めすることによって成形凹部33と成形凸部35との間に中間品23を成形するキャビティ37が形成される。そのキャビティ37に溶融樹脂が供給される。図示の場合、一面に6個所の成形部を設けているが、1箇所以上適宜な数の成形部を設けることができる。また、ポケット14を成形する成形凸部35を雌金型32の成形凹部33に設けてもよい。
【符号の説明】
【0053】
11 保持器
12 側縁部
13 柱部
13a 半幅柱部
14 ポケット
14a 半幅ポケット
16 内壁面
17 外径側ころ止め突起
18 上端壁面
19 傾斜面
21 ころ
22 平板
23 中間品
24 突き合わせ部
25 係合凹部
26 係合凸部
27 中間品
28 鍔
31 中間品
32 雌金型
33 成形凹部
34 雄金型
35 成形凸部
36 小凹部
37 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に対向した円環状の側縁部と、両方の側縁部相互を円周方向に所定の間隔をおいて連結する柱部と、前記柱部相互間に形成されたポケットからなる円環状の保持器本体を有し、前記ポケットの柱部側の対向内壁面の外径側端部に外径側ころ止め突起が設けられたころ軸受用保持器において、前記対向内壁面は、内径側に至るに従い相互に接近する傾斜を有し、前記相互間の距離が外径側端部においてはころ径より大きく、内径側端部においてはころ径より小さく形成されたことを特徴とするころ軸受用保持器。
【請求項2】
前記対向内壁面の相互によって一定のくさび角を有するくさび形状が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のころ軸受用保持器。
【請求項3】
前記側縁部の内径面に、内径方向に突き出した鍔が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載のころ軸受用保持器。
【請求項4】
前記ポケットの内壁面の傾斜は、帯状の中間品を湾曲させ、両端部を突き合わせて円環状に当接することにより形成されたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のころ軸受用保持器。
【請求項5】
前記中間品は、軸方向に対向した側縁部と、両方の側縁部相互を長さ方向に所定の間隔をおいて連結する柱部と、前記柱部相互間に形成されたポケットを有し、前記ポケットの柱部側の対向内壁面の厚さ方向の一端部に外径側ころ止め突起が設けられ帯状の形状をなし、前記中間品は前記外径側ころ止め突起を外径側に向けて湾曲されることを特徴とする請求項4に記載のころ軸受用保持器。
【請求項6】
前記中間品が合成樹脂の射出成形によって製作されたものであることを特徴とする請求項4又は5のいずれかに記載のころ軸受用保持器。
【請求項7】
前記中間品の長さ方向の一端部が柱部の半分幅の半幅柱部によって閉塞された閉塞形端部であるか、又はポケットの半分幅の半幅ポケットによって開放された開放形端部であるかのいずれかであることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載のころ軸受用保持器。
【請求項8】
前記中間品の長さ方向の一端部に係合凸部が設けられ、他端部に前記係合凸部と相補的形状の係合凹部が設けられたことを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載のころ軸受用保持器。
【請求項9】
前記中間品が半円環状に湾曲され、その両端部と同様形状の他の半円環状の中間品の両端部とを突き合わせることにより円環状に仕上げたことを特徴とする請求項2から8のいずれかに記載のころ軸受用保持器。
【請求項10】
請求項2から8のいずれかに記載の中間品を射出成形するころ軸受用保持器の成形金型において、当該成形金型は、雌金型と雄金型の2プレート形金型によって構成され、前記雌金型又は雄金型のいずれか一方に、前記中間品のポケットを成形するための成形凸部が設けられたことを特徴とするころ軸受用保持器の成形金型。
【請求項11】
前記成形凸部に前記ころ止め突起を成形する小凹部が設けられたことを特徴とする請求項10に記載のころ軸受用保持器の成形金型。
【請求項12】
中間品を成形する成形工程、前記中間品を長さ方向に曲げ円環状に形成する曲げ工程、及び前記中間品の両端部を突き合わせて円環状に当接する当接工程を順次実行することを特徴とするころ軸受用保持器の製造方法。
【請求項13】
前記中間品は、軸方向に対向した側縁部と、両方の側縁部相互を長さ方向に所定の間隔をおいて連結する柱部と、前記柱部相互間に形成されたポケットを有し、前記ポケットの柱部側の対向内壁面の厚さ方向の一端部に外径側ころ止め突起が設けられたものであることを特徴とする請求項12に記載のころ軸受用保持器の製造方法。
【請求項14】
前記成形工程において同一長さの2枚の中間品を成形し、前記曲げ工程において各中間品を半円環状に湾曲し、前記当接工程において前記半円環状の一対の中間品を突き合わせて円環状に当接することを特徴とする請求項12又は13のいずれかに記載のころ軸受用保持器の製造方法。
【請求項15】
前記成形工程の次に、前記中間品を長さ方向に複数に切断する切断工程を実行し、切断された中間品について前記の曲げ工程を実行することを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載のころ軸受用保持器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−29146(P2013−29146A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165083(P2011−165083)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】