説明

さや管推進工法

【課題】安価かつ簡単な構造でもって、浮力材の円滑な排出を行なう。
【解決手段】地中埋設のさや管1内に新管2を継ぎ合せつつ順次挿入する際、さや管1の両端を閉塞し、そのさや管1内の浮力材aにより新管2に浮力を与えて、その新管2とさや管1間の摩擦を低減する。さや管1の他端に有蓋筒状体23を嵌めて閉塞し、その側面のさや管1の筒軸方向に長い長孔26から、浮力材aをオーバーフローさせ、さや管1内の浮力材aのレベルを一定とする。オーバーフロー構造はその構成が簡単であって、安価なものとなる。オーバーフロー用孔が長孔26であれば、オーバーフローの縁も長くなって、円滑な排出がなされる。円滑な浮力材の排出がなされれば、新管のさや管内面への衝突が生じず、円滑な新管の推進を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、さや管内に新管を挿入して管路を構築する際、そのさや管内に浮力材を注入して新管に浮力を与えて新管を挿入するさや管推進工法、及びその浮力材のレベル調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上下水道、農業用水、工業用水など、さまざまな分野で流体輸送に使用されるものとして鋼管やダクタイル鋳鉄管などがあり、それらの管路は、通常、地中に埋設され、近年、その更新をする必要が生じている。
例えば、ダクタイル鋳鉄管を用いた管路の構築(埋設)や旧管路の布設替え(更新)は、一般的には、地面を開削して管を埋設する開削工法が採用される。
しかし、近年の交通事情や、都心部等での複雑な管路の構築により、開削工法による管路の新規構築や旧管路の布設替えが困難な状況となっている。そのため、開削工法に代わる方法として、さや管推進工法やパイプインパイプ工法が採用されている。
【0003】
さや管推進工法は、図16に示すように、地面Wに、発進坑Sと到達坑Tだけを開削し、その発進坑Sから、まず、さや管1としてヒューム管や鋼管を土中Wに推進埋設し、この推進埋設されたさや管1内に、その一端(発進坑)Sから他端(到達坑)Tに向かってさや管径よりも小さい口径のダクタイル鋳鉄管等の新管2を継ぎ合せつつ順次挿入する工法であって、通常、新規管路の構築に採用されている。
【0004】
また、パイプインパイプ工法とは、土中に埋設されている既設管をさや管1として、その既設管1内に、上記さや管推進工法と同様に、油圧ジャッキJ等により、既設管径よりも小さい口径の新管2を継ぎ合せつつ順次挿入する工法である。
なお、このパイプインパイプ工法における既設管等もさや管1の一つであるため、この明細書(「特許請求の範囲」も含む)においては、図16に示す、上記さや管推進工法、パイプインパイプ工法等のように、さや管1の中に新管2を推進挿入して二重管構造とする工法を、特に特定しない限り、総称して「さや管推進工法」と言う。
【0005】
このさや管推進工法において、新管2の挿入は、通常、図16に示すように、発進坑Sに油圧ジャッキJを設置し、この油圧ジャッキJの後部に反力受けH、前部に押角Bを設けて、発進坑Sに設置した発進台の上に地上から吊り下ろした後行き新管2の挿し口2aをさや管1に挿入された先行き新管2の受口2bに挿入した継手部(継ぎ合せ部)で継ぎ合せつつ、油圧ジャッキJによって後行き新管2を押圧して順次挿入して行われる。この工法であれば、交通を遮断する問題もなく、複雑な管路が構築されていても新管2による管路の構築が可能となる。
【0006】
このさや管推進工法により新管2をさや管1全長に挿入した後、発進坑Sや到達坑Tからさや管1と新管2の空隙部にモルタルなどの充填材を充填することが一般的である。これは、空隙部に充填材を充填しておくことで、地盤沈下等を防ぐ必要からである。
【0007】
このようにして構築された二重管構造において、流量面積を最大限確保するためには、新管2は、さや管1とその径が近い方が好ましく、できれば、さや管径よりも1口径だけ呼び径が小さいものを採用するようにしている。
また、継手について、近年、耐震性が要求され、その耐震管継手は、一般的には、受口2bに対し挿し口2aが所要範囲において伸縮可能(抜き挿し可能)な構造のものであり、PII形、S形、NS形、SII形等がある。
【0008】
その耐震管継手、例えば、PII形継手は、図17に示すように、一の管2の受口2b内奥側にシール用ゴム輪3を、外側にロックリング4をそれぞれ装填したのち、挿し口2aを、ロックリング4を拡径して受口2bのその収納溝5に収めてゴム輪3を圧縮しつつ挿し込み、ロックリング4が挿し口2a外周面の環状溝6に至ったところで、受口2bにその周囲数箇所からセットボルト7をねじ込んでロックリング4を縮径して溝6に嵌め込んだ構造である(特許文献1参照)。この継手は、受口2bの厚さが薄くされており、通常、さや管1よりも1口径だけ呼び径が小さい新管2を挿入する場合、特に既設管1への挿入の場合に、その新管2の継手構造として用いられている。
【特許文献1】実開昭58−130189号公報
【0009】
一方、このさや管推進工法において、さや管1に新管2を推進挿入する際、一般的には、さや管1の内面に新管2を摺動させており、その挿入長さ(発進坑Sと到達坑Tの間隔)が長くなると、その摺動時の摩擦抵抗が大きくなり、それに伴って、油圧シリンダJ等の推進装置が大掛かりとなる。
また、PII形継手による新管2の挿入力は、受口2b端面側のロックリング4とその溝6端面の当接によって伝達されるため、その挿入力が大きくなると、ロックリング4が捩れ破損する等の恐れがあって、円滑な推進がされない恐れがある。このため、発進坑Sと到達坑Tの間隔の長い場合等の大きな推進力が働く場合には、挿し口2aの外周面にリブを別途に溶接などにより固定し、そのリブを受口2bの端面に当接させて推進力を伝達するようにしている。そのリブの取り付けは煩雑である。
【0010】
さらに、S形、NS形等の耐震管継手は、地震等の地殻変動が生じた際、受口2bに対する挿し口2aの押し込み又は引き出しに対して、受口2bに対し挿し口2aが抜けない範囲で伸縮(押し込み・引き出し)してその地殻変動に対応する構造である。
この構造の耐震管継手におけるさや管推進工法においては、地中Wに埋設されたさや管1内にその一端から他端に向かって新管2を継ぎ合せつつ順次挿入する際、新管2の挿し口2a外周面に推進力伝達材を設け、この推進力伝達材により、前記挿し口2aを抜けない範囲で動き得る所要長さの中程に維持して推進し、地震などによりその推進力よりも大きな押圧力が作用したときには、その押圧力が前記推進力伝達材の維持力より勝り、前記挿し口を抜けない範囲で動き得る所要長さの中程の維持が解放されて挿し口2aが受口2bにさらに押し込まれるようにしている(特許文献2参照)。
【0011】
それらのさや管推進工法における新管2の挿入時の摩擦抵抗を軽減させた一技術として、新管2外周面にソリを設けたり、車輪を設けたものがある(特許文献2参照)。しかし、この技術では、さや管1と新管2の間にソリ等を設けるための空隙(スペース)を必要とし、通常、さや管1よりも1口径だけ呼び径が小さい新管2を挿入することは困難である。
【特許文献2】特開2002−276284号公報
【0012】
また、新管2の挿入時の摩擦抵抗を軽減させた他の技術としては、さや管1の両端を閉塞し、そのさや管1内に水などの浮力材を注入して新管2に浮力を与えて、新管2をさや管1内に推進挿入するものがある(特許文献3、4参照)。
この技術は、さや管1内の閉塞を維持した状態で、新管2をさや管1内に挿入しなくてはならないため、その挿入部分の閉塞は、さや管1内面全周に膨縮チューブを設けたり(特許文献3)、さや管1の軸方向前後の内面全周にフラップ状のシール板を設け(特許文献4)、そのチューブ又はシール板の新管2外周面への摺動圧接によって行っている。
【特許文献3】特開平10−238655号公報
【特許文献4】特開2000−291827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この新管2に浮力を与えて、新管2をさや管1内に推進挿入する工法において、新管2の推進を円滑に行なうためには、その推進の際、新管2と既設管1内面との摩擦抵抗を極力低減する必要がある。その摩擦抵抗は、新管2の及ぼされる浮力に影響され、さや管1内の浮力材レベルに左右される。
このため、新管2がさや管1の内面に触れても推進できるように、さや管1内の浮力材レベルを一定に維持する必要がある。
【0014】
従来では、さや管他端面の所要レベルに排水管を設け、その排水管に浮力材をオバーフローさせてそのさや管1内の浮力材レベルを一定に維持するようにしている(特許文献3段落0033第1〜5行)。
【0015】
しかし、新管2の推進による浮力材の排水量はかなり多く、その排水の全部を排水管により行なうには、排水管に大径のものを採用する必要があり、コスト的に高くなるとともに、大径の排水管を設置できない場合もある。
【0016】
この発明は、安価かつ簡単な構造でもって、浮力材の円滑な排出を行なうことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を達成するため、この発明は、上記特許文献3と同様に、オバーフローにより、浮力材のレベルを維持し、かつそのオーバーフローを長孔によって行なうこととしたのである。
オーバーフローによる排水構造はその構成が簡単であって、安価なものとなり、また、そのオーバーフローする孔が長孔であれば、オーバーフローの縁も長くなって、円滑な排出(オーバーフロー)がなされる。
このとき、長孔が大きいものであれば、推進長さにもよるが、この長孔から、新管の推進状況を確認することもできる。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、上記のように、浮力材を長孔でもってオーバーフローさせて排出させてさや管内の浮力材のレベルを維持するようにしたので、その構成は簡単であり、コスト的に安価なものとなり、また、円滑にオーバーフローするため、浮力材の円滑なオーバーフローがなされないことによる新管のさや管内面への衝突が生じず、円滑な新管の推進を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明の実施形態としては、地中に埋設されたさや管内にその一端から他端に向かって新管を継ぎ合せつつ順次挿入する際、さや管の両端を閉塞し、そのさや管内に浮力材を注入して新管に浮力を与えて、その新管とさや管間の摩擦を低減し、さや管の他端にその他端の閉塞を行う治具を設け、この治具に孔を設け、この孔から、さや管内の浮力材を流し出してその浮力材のレベルを一定とするようにしたさや管推進工法において、その治具を、さや管と同軸の有蓋筒状体から構成し、その有蓋筒状体の側面に孔を形成し、その孔をさや管の筒軸方向に長い長孔とした構成を採用することができる。
その浮力材のレベル調整装置としては、上記さや管の他端に同軸の有蓋筒状体を嵌めてその他端を閉塞し、その有蓋筒状体の側面に孔を形成し、その孔をさや管の筒軸方向に長い長孔としたもの等を採用する。
【実施例】
【0020】
図1乃至図13に一実施例を示し、この実施例は、既設管1の更新に係わるものであり、図1に示すように、発進坑Sと到達坑Tを所要間隔をおいて形成し、その間の既設管(さや管)1の発進坑S側端(一端)に止水機構10が装着されて閉塞され、到達坑T側端(他端)には止水兼芯出し用治具20が取り付けられて閉塞されている。発進坑Sと到達坑Tは、既設管1の埋設時と同一個所に形成しても良いが、道路の側部等の形成し得る所であれば、任意である。さや管1に挿入される新管2の先頭管先端は円錐状のキャップ30を嵌めて閉塞され、新管2内に浮力材aが流入しないようになる。
【0021】
新管2の継ぎ合せ部(継手部)は、図11に示すように、挿し口2a外周面と受口2b内周面にそれぞれ軸方向の溝6a、6bを形成し、その両溝6a、6bにそれぞれロックリング4a、4bを嵌めたものであって、同図に示す状態が通常時(新管敷設完了時)である。この状態において、先行き新管2の受口2bに後行き新管2の挿し口2aを挿し込んだ後(又は挿し込む前に)、受口2b外側の挿し口2a外周面に推進力伝達材8を設け、その推進力伝達材8を挿し口2a外周面に溶接等により固定したフランジ(サドルリング)9により不動にした構成である(特許文献2、特願2004−50171参照)。推進力伝達材8の材質、構成、フランジ9の構成は、図示に限らず、任意である。例えば、推進力伝達材8には、圧縮応力が1〜30kgf/cm(≒0.1〜3MPa)のポリウレタン、ポリスチレン等の樹脂発泡体等を採用する。
【0022】
この継ぎ合せ部は、さや管1内にその一端から他端に向かって新管2を継ぎ合せつつ順次推進挿入する際、推進力伝達材8により、挿し口2の先端と受口2bの内面奥端面2b’との間隙を維持しつつ(図11の状態を維持しつつ)、後行き新管2から先行き新管2に推進力が伝達されて、新管2の推進が行われて、さや管1内全長に亘って新管2の管路が敷設される。
その推進は、上述の図16に記載の手段、特許文献5に記載の手段、特願2004−213203に記載の手段などの各種の手段を採用する。
【特許文献5】特開2004−238851号公報
【0023】
この敷設後の新管路は、地震などの大きな圧縮力に対しては、推進力伝達材8が収縮又は圧壊して、挿し口2a先端が受口2b内面奥端面2b’に当接又は挿し口側ロックリング4aが挿し口側溝6aの後端面側6a’で当接するまで、受口2bに対する挿し口2aの挿し込みを許容し、また、大きな引っ張り力に対しては、両ロックリング4a、4bが挿し口側溝6aの先端面側で当接するまで、受口2bに対する挿し口2aの引き出しを許容する。すなわち、この継ぎ合せ部は、挿し口2aの挿し込み・引き出しを許容する耐震機能を有する(特許文献2参照)。
【0024】
発進坑S側のさや管1の止水機構10は、図10、図11に示すように、ダクタイル製や鋼製等の円筒管(筒体)11の内面に止水部材12を軸方向に所要間隔をおいて設けたものである。止水部材12の数は任意である。
円筒管11は、同図に示すように、さや管1一端にパッキング11cを介して嵌め込み、ビス11dによりそのさや管1一端に取付ける。また、円筒管11は、図4に示すように、偏芯した2つの筒状部11a、11bとから成り、前者の筒状部11aはさや管1に嵌められて同一心Cとされ、後者の筒状部11bは新管2と同一心Cとされる。この円筒管11の前後の筒状部11a、11bの軸心C、Cが異なることにより、同図に示すように、キャップ30を円筒管11に嵌めると、その軸心がさや管1の軸心より少し下方となる。このため、新管2はさや管1にその軸心Cを少し下方にして挿入されることとなる。
円筒管11には、バルブ13a付給排水管13が設けられ、この給排水管13により、さや管1内に浮力材aを注入又は浮力材aを排出する。
【0025】
止水部材12は、図2、図5、図10及び図11に示すように、ゴムの一体成型品からなり、さや管1の内面にビス止めされる筒状部12aと、その内周全面にさや管1の軸心(筒軸心)に向くフラップ12bと、そのフラップ12bの先端縁全周にその先端縁より大径の中実断面円状のゴム製リング12cとからなる。
フラップ12bの厚み・長さ(軸心に向く長さ)、リング12cの径は、撓み度、圧接度(水密度)を考慮して適宜に設定すればよいが、フラップ12bの厚みは、柔軟な撓みを得ることができ、かつリング12cの保持ができる限りにおいて薄い方が好ましい。
この止水部材12は、その筒状部12aを円筒管11内面に当てがい、その内面に、図6に示す一つ割開き勝手のリング状止め具14を当ててビス15により円筒管11に取付ける。
【0026】
この止水部材12内に、キャップ30又は新管2が挿入されると、図10に示すように、そのリング12c及びフラップ12bが拡径するとともに、そのフラップ12bがさや管1の他端側に撓ませられて、リング12cをキャップ30又は新管2の外周面に水密に圧接しつつそのキャップ30又は新管2の摺動を許容する。
このとき、リング12cは、フラップ12b先端縁より大径のため、フラップ12bの撓みに影響されにくく、フラップ12bが摺動するキャップ30又は新管2外周面の大きさ(径)変化・振れに柔軟に対応して撓んでも、そのキャップ30又は新管2外周面への確実な圧接を維持して水密性を担保する。
【0027】
さや管1の他端閉塞兼芯出し用治具20は、図1、図3、図7に示すように、さや管1の先端部外周面に嵌る円筒状部21の端面に縮径の円筒状部22を設け、その縮径円筒状部22に、フランジ22a、23aを介して浮力材aのレベル調整部材23を接続したものである。
この治具20はビスによりさや管1の他端外面に取付けられ、上記止水機構10と同様に、バルブ13a付給排水管13が設けられており、この給排水管13により、さや管1内に浮力材aを注入又は浮力材aを排出する。
【0028】
その治具20の両円筒状部21、22はその外周面又は内周面に周囲等間隔に設けたリブ24により補強されている(図3参照)。また、それらの内面にはゴム輪(パッキング)25が設けられており、前者の円筒状部21のゴム輪25により、この治具20とさや管1の水密性が担保され、最先の新管2の挿し口2a(キャップ30)が後者の円筒状部22に入り込むと、そのゴム輪25により密封(液密)にされて浮力材aの漏れが防止される。このため、レベル調整部材23を外しても、さや管1内から浮力材aが流出することがなく、さらに、新管2を到達坑T側でさや管1から所定長さ引き出すこともできる。
【0029】
レベル調整部材23は、図3、図7に示すように、フランジ23aの反対端が閉塞された筒状体からなって、その筒状体の上部に透孔26が形成され、この透孔26から、さや管1内の浮力材aがオーバーフローして、さや管1内の浮力材aのレベルが一定に維持される。そのオーバーフローの高さ(透孔26の下縁高さ)は、新管2と既設管1内面とを非接触とすることが好ましいが、浮力材の給排作業等の煩雑性を考慮すれば、必ずしも非接触とする必要はなく、新管2とさや管1内面との摩擦抵抗を低減させて新管2を推進し得る限りにおいて任意である。例えば、摺動しても推進が可能であれば、その低減度合で十分である。新管に浮力が作用すれば、少なからず摩擦抵抗は低減される。
また、孔26の長さL・幅T(図7参照)等の大きさは、浮力材aが円滑に流し出されるように、実験・実操業等によって適宜に設定する。図1に示すように、レベル調整部材23は適宜な脚27によってさや管1と同一軸心となるように支持する。
【0030】
キャップ30は、図8に示すように、筒状部31と、その先端部に設けた円錐台状部32とからなり、その筒状部31の後端部は縮径してその全周に溝33が形成されている。この溝33にパッキング34が嵌められる。
このキャップ30の外周面には図9に示す挿込み防止リング35が固定される。このリング35は、同図に示すように、2つ割部材からなり、その両部材をボルト36により締結して構成され、周囲のねじ孔37にビス38をねじ通してその先端をキャップ30外周面に圧接することによりキャップ30に取付けられる。各ビスのねじ込み度合を調整することにより、このリング35とキャップ30の調芯を行なう。
【0031】
このキャップ30は、挿込み防止リング35を取付けた後、止水機構10の円筒管11の一端に嵌める。又は、キャップ30を円筒管11の一端に嵌めた後、挿込み防止リング35を取付ける。この状態は、キャップ30の筒状部31の後方が円筒管11端面から発進坑S側へ突出するように支持され、その支持状態から筒状部31外面に新管挿し口2aを挿入すると、新管2がキャップ30に接続されると共に、前記溝33内のパッキング34により両者2a、31の水密性が維持される。但し、キャップ30と挿し口2aの固定は、止水機能を発揮でき、後続の新管2挿入中に、先頭の新管2から外れない構成であれば、図示したものに限られない。
【0032】
この実施例は以上の構成であり、つぎにその作用について説明すると、まず、図1に示すように、既設管1の埋設路に所要間隔をもって発進坑Sと到達坑Tを形成する。
その発進坑Sにおいて、図10に示すように、止水部材12付の円筒管11を、さや管1の発進坑S側(一端)にゴム輪(パッキング)11cを介して嵌め、ビス11d止め等により取り付け、その円筒管11内に挿込み防止リング35付のキャップ30を嵌める(同図(a))。
一方、さや管1の到達坑T側(他端)には、レベル調整部材23付の治具20を取り付けて、さや管1の両端を閉塞する(さや管1内を液密にする)。
【0033】
つぎに、さや管1内に、両給排水管13、13から、浮力材aとなる水をレベル調整部材23の透孔26からオーバーフローする手前まで注入して充填する。この注入充填は一方の給排水管13からだけでも良い。
この浮力材aの充填が完了した後、又は充填前に、図10(b)に示すように、最先の新管2の挿し口2aをさや管1に嵌めたキャップ30の筒状部31に嵌め込む。このとき、挿込み防止リング35のさや管1の端面への当接により、キャップ30のさや管1内への挿し込みが阻止される。
挿し口2aをキャップ30に嵌めれば、挿込み防止リング35をキャップ30から外した後、浮力材aが充填されておれば、さらに新管2を押し込み、充填されていなければ、浮力材aの充填後、同様に押し込む。
【0034】
この押し込みによる新管2の推進挿入時、止水部材12のリング12c及びフラップ12bが拡径させられるとともに、そのフラップ12bがさや管1の他端側に撓み、リング12cが新管2の外周面に水密に圧接しつつその新管2の摺動を許容して、さや管1内に挿入される。
また、この新管2の推進挿入は、浮力材a内で行われるため、その浮力材aから浮力を受けながら、低摩擦でさや管1内を進む。このとき、新管2の進行により、押された浮力材aはさや管1の到達坑T側(他端)のレベル調整部材23の透孔26からオーバーフローし、そのレベルが一定に維持される。この浮力材aの液面レベルの維持により、新管2の軸心Cもほぼ一定レベルに維持され、新管2とさや管1内面との摩擦抵抗が低減されて新管2を円滑に推進し得る。このとき、推進長さにもよるが、この透孔26から、新管2の推進状況を確認することができる。
【0035】
最先の新管2の受口2bには後行の新管2の挿し口2aが挿入接続され、さらに新管2が挿し込まれて、図11に示すように、継ぎ合せ部(受口2b部)が止水部材12(止水機構10)に至れば、その受口2bの拡径に応じて、リング12c及びフラップ12bが大きく拡径させられるとともに、そのフラップ12bがさや管1の他端側に大きく撓み、リング12cが受口2bの外周面に水密に圧接しつつその受口2bの摺動を許容して、さや管1内に挿入される。
このとき、リング12cは、フラップ12b先端縁より大径のため、フラップ12bの撓みに影響されにくく、フラップ12bが摺動する受口2bの大きな外径変化・振れに柔軟に対応して撓んでも、その受口2b外周面への確実な圧接を維持して水密性を担保する。
【0036】
以後、先行きの新管2の受口2bに後行きの新管2の挿し口2aを順次挿入して継ぎ合せつつ、押し込み推進し、受口2b部において、上記と同様な作用がなされて、さや管1の到達坑Tに向かって新管2を推進する。
【0037】
その新管2の推進挿入が進み、図12(a)に示すように、最先の新管2の挿し口2aが到達坑Tに近づき、その挿し口2aが治具20の先端筒状部22内に嵌り込むと、その治具20により、止水性をもって(さや管1他端の閉塞とともに)芯出しされる。このとき、挿し口2aが治具20に入り込む前に芯がずれていても、その内面のリブ24のテーパ縁に当接して芯出しされる。
挿し口2aが治具20内に嵌り、さらにレベル調整部材23に至れば、同図(b)に示すように、レベル調整部材23を外して、必要であれば、さらに新管2の挿し口2aを到達坑T内に所要長さ突出させる。その後、給排水管13から排水してさや管1内から浮力材aを排出させる。排水は所要のバケットに入れる。このとき、新管2を、適宜な手段により、さや管1内の所要高さ・位置に維持する。
【0038】
つぎに、同図(c)に示すように、キャップ30を外して、さや管1内への新管2の推進装填は終了する(図13)。この後、一方の給排水管13からさや管1内にモルタルを送り込んで充填して、さや管1内に新管2を固定する
モルタルの充填は、一方の給排水管13から行い、他方の給排水管13から適宜に浮力材aを排出するようにしても良い。
【0039】
この実施例において、図14に示すように、止水部材12は、さや管1の一端内面に直接に取付けることができる。
【0040】
また、発進坑S側のさや管1の止水機構10は、図15に示すように、ダクタイル製や鋼製等の円筒管11の内面に膨縮チューブ112a、112bを軸方向に所要間隔をおいて設け、その間に中実のゴムリング(チューブ)113を設けたものとすることができる。
この円筒管11はさや管1の一端にパッキング43を介して取付ける。各チューブ112a、112b、113は接着やネジ止め等で固定する。
【0041】
両膨縮チューブ112a、112bには、エアーコンプレッサー、エアーポンプ等に接続されているホース114が、さや管1に穴を空けて接続されており、その各ホース114の三方弁(図示せず)の作用により、両膨縮チューブ112a、112bに空気(流体)bが選択的に注入され、各膨縮チューブ112a、112bが所要圧に膨張し、又は、両膨縮チューブ112a、112bが選択的に開放(排気)されて、各膨縮チューブ112a、112bが収縮する。このとき、膨縮チューブ112a、112bへの流体bの流入量(流入圧)は、新管2との摺動により受ける外圧に対応して適切な値となるように自動制御する。
【0042】
その膨縮チューブ112a、112bが所要圧に膨張すれば、膨縮チューブ112a、112bは新管2の直管部(挿し口2a部)の外周面に圧接して、浮力材aの漏れを防ぎつつその直管部の摺動を許容する。このとき、その摺動を許容かつ漏れを防止しつつ、自身が擦れ破損しないように、膨縮チューブ112a、112bの材質及び流体b圧を適宜に設定する。
【0043】
この実施例は、新管2が、その外周面を両膨縮チューブ112a、112bに圧接摺動させて浮力材aの漏れを防止しながら、低摩擦でさや管1内を進む。このとき、新管2の径の変化に合わせて両膨縮チューブ112a、112bへの空気の給排を調整して確実なシールと円滑な摺動を確保する。
【0044】
因みに、浮力をもって新管2をさや管1に推進挿入すれば、その推進に大きな力を必要としないため、実施例のように、推進力伝達材8を介して推進挿入する場合、その推進力伝達材8に上記の樹脂発泡体等の比較的機械的強度の低いものを使用できる等利点がある。
また、既設管内に耐震管継手を有する新管2を推進挿入するパイプインパイプ工法においては、そのさや管(既設管)内面は、錆や異物の付着により凹凸の激しい内面となっているのが通常であり、その内面を摺動させて新管2を推進する場合に比べて、この浮力による推進は、その内面から離して移動させるので、推進力が極めて小さくてすみ、より効果的である。
【0045】
管継ぎ手構造は、実施例のものに限らず、PII形、S形、NS形、SII形等の耐震型、及びA形,K形等の非耐震型でない周知のものを採用できることは勿論である。また、推力伝達の構造も、図示の推進力伝達材8等の態様に限らない。
また、上記実施例は、さや管1は既設管に限らず(パイプインパイプ工法に限らず)、ヒューム管や鋼管を新たに埋設した上記さや管推進工法に採用できることは言うまでもない。
さらに、新管2の挿入推進は、到達坑T側から行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】一実施例の概略断面図
【図2】同実施例のさや管一端部の断面図
【図3】同実施例のさや管他端部の断面図
【図4】同実施例のさや管一端側止水機構の円筒管の縦断面図であり、(a)は図10(a)のX−X線断面、(b)は同Y−Y線断面
【図5】同実施例の止水機構の止水部材を示し、(a)は左側面図、(b)は切断正面図
【図6】同止水部材の止め具を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は切断要部右側面図
【図7】同実施例のさや管他端側止水機構の浮力材レベル調整部材を示し、(a)は切断正面図、(b)は左側面図、(c)は切断側面図
【図8】同実施例のキャップを示し、(a)は切断正面図、(b)は左側面図、(c)は(a)のX−X線断面図
【図9】同実施例のキャップ挿し込み防止用リングを示し、(a)は正面図、(b)は左側面図、
【図10】同実施例の最先新管のさや管への挿入時の要部断面図
【図11】同実施例の新管の継ぎ合せ部のさや管への挿入時の要部断面図
【図12】同実施例の最先新管挿し口のさや管到達坑(他端)側止水部への挿入作用図
【図13】同実施例の新管推進終了時の概略断面図
【図14】他の実施例の最先新管のさや管への挿入時の要部断面図
【図15】他の実施例の要部概略断面図
【図16】さや管推進工法の概略図
【図17】PII形継手部の断面図
【符号の説明】
【0047】
1 さや管(既設管)
2 新管
10 さや管発進坑側止水機構
11 止水機構の円筒管
12 止水部材
12a 止水部材12の筒状部
12b 止水部材12のフラップ
12c 止水部材12の中実リング
13 給排水管
20 さや管到達坑側止水兼芯出し用治具
21、22 止水兼芯出し用円筒状部
23 浮力材レベル調整部材
26 浮力材レベル調整用透孔
30 最先新管挿し口用キャップ
a 浮力材(水)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中Wに埋設されたさや管1内にその一端Sから他端Tに向かって新管2を継ぎ合せつつ順次挿入する際、前記さや管1の両端を閉塞し、そのさや管1内に浮力材aを注入して前記新管2に浮力を与えて、その新管2とさや管1間の摩擦を低減し、前記さや管1の他端にその他端の閉塞を行う治具20を設け、この治具20に孔26を設け、この孔26から、前記さや管1内の浮力材aを流し出してその浮力材aのレベルを一定とするようにしたさや管推進工法において、
上記治具20を、上記さや管1と同軸の有蓋筒状体23から構成し、その有蓋筒状体23の側面に上記孔26を形成し、その孔26をさや管1の筒軸方向に長い長孔としたことを特徴とするさや管推進工法。
【請求項2】
請求項1に記載のさや管推進工法に使用するそのさや管内の浮力材aのレベル調整装置であって、上記さや管1の他端に同軸の有蓋筒状体23を嵌めてその他端を閉塞し、その有蓋筒状体23の側面に孔26を形成し、その孔26をさや管1の筒軸方向に長い長孔としたことを特徴とするさや管内の浮力材のレベル調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−2969(P2007−2969A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186670(P2005−186670)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】