説明

しみ低減化用塗布剤

【課題】 皮膚にできたしみを低減化するためのもので、しみに金属の酸化物を貼りこれに紫外線を照射する方法を用い、しかも紫外線量の少ない太陽光を利用するために長時間の使用を可能にする。
【解決手段】 紫外線の吸収の少ないフィルムに金属酸化物をコーティングしたもので、コーティングした側がしみに接するように皮膚のしみのある部分に貼り付けて用いるもので、フィルムが簡単に剥離することなくしたがってフィルムを貼り付けたまま通常の生活を行なっている間の太陽光の照射により色素が分解されしみが低減されあるいは消失するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は美容用の塗布剤に関するもので、特に、ヒトの顔面等の皮膚に生じたシミ(老班)などを除去あるいは軽減することにより美容に寄与する塗布剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトは高齢化に伴い生理的機能が低下し、それに伴い様々な老化現象が顕在化する。その顕著な例が顔面をはじめ皮膚表面に発現するシミ(老班)である。特に、女性は、顔面にこのようなシミが発現することにより精神的ストレスとなり、鬱状態に陥ることも稀ではない。
【0003】
以上のような理由から、特に顔に発現するシミを除去あるいは可能な限り、薄くすることは美容上重要であるばかりか、精神的ストレスの低減、生き甲斐、QOLの向上に資すると考える。
【0004】
シミは、皮膚への色素(メラニン)の沈着、更には変性により毛細血管内への吸収が阻害される。
【0005】
従来の発現したシミの改善方法は、栄養クリーム等の塗布による皮膚の毛細血管の活性化を促すことによるものがほとんどであった。
【0006】
しかし、メラニンは、沈着するだけではなく、メラニン分子の酸化反応などによって分子鎖上に生成した活性種の再結合等により架橋反応が進行し、より不溶化が進行することになり、いわゆる変性することが考えられる。
【0007】
このように変性したメラニンは、前記従来の方法にて改善することは不可能である。
【0008】
このような、変性したメラニンのような蛋白質を毛細血管内に吸収させるためには、メラニンの低分子量化以外には方法がない。
【0009】
しかし、ヒトの皮膚は、通常の高分子物質の分子結合を切断するような激しい化学反応を適用することは不可能である。
【0010】
又、下記文献に、酸化チタンを光触媒として用い、太陽光の照射によりメラニンの低分子量化が期待し得ることが記載されている。
【非特許文献1】日本医科器械学会雑誌,69(No.10:485−486,1999) 本発明の発明者は、出来る限り温和な反応条件にてメラニンの低分子量化を行なうことにより、シミの除去あるいは低減化を行なって美容に寄与するようにした美容方法および装置を開発して、特願2003−71615号として出願した。
【0011】
この先願の美容方法は、ヒトの皮膚で色素の沈着した部位に多価アルコールに懸濁した金属酸化物を塗布し、前記の塗布した部分に特定波長の光線を照射することにより色素を除去あるいは色素沈着の度合いを軽減するようにしたものである。
【0012】
この先願にて用いられる多価アルコールは、エチレングリコール、プロビレングリコール、グリセリン等であり、また金属酸化物は、酸化チタン、酸化亜鉛などの光触媒作用を有する金属の酸化物であり、この酸化物を多価アルコールに分散させたものである。
【0013】
また、この美容法にて用いられる特定波長の光としては例えば近紫外部から可視部までの領域の光であり、例えば波長が350〜480nmの光、望ましくは370nm以上の光である。
【0014】
また、この方法を用いた装置は、特定波長の光を発する光源と集光レンズとを設けた鏡筒と、鏡筒を水平方向および垂直方向に移動させる上下動機構とを有し、ヒトの皮膚で色素の沈着した部位に酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物を塗布し、この塗布した部分に光源よりの特定波長の光を集光レンズにより集光させて色素を除去あるいは沈着度合いを軽減して美容に寄与するようにしたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上述べた先願の発明の方法の場合、人間の皮膚のメラニン色素が沈着した部分に多価アルコールに金属の酸化物を分散混入したものを塗布し30分程度の紫外線を照射することによって、メラニン色素の低分子量化を促進するものである。そのために強い紫外線をメラニン色素に対し照射する必要がある。その際、皮膚のメラニン色素以外の部分へ紫外線が照射された場合、強い紫外線による周辺の皮膚への影響が考えられる。
【0016】
そのために、先願の発明の装置は、光線より発する紫外線(近紫外線UVA)を比較的狭い部分に集光させるような構成にしている。これにより、メラニン色素が沈着した部分にのみ紫外線が当たるようにしている。しかもこれによって、比較的少ない光量の光源であっても集光する部分での強度が大になり、低分子量化の効果を得ることができる。
【0017】
しかし、この先願の装置は比較的高価である欠点がある。また、十分な効果を得るためには20〜30分間同じ状態を保っていなければならない。
【0018】
本発明は、長時間の紫外線照射を必要とするが、通常の生活、特に屋外での生活中に紫外線の照射を受けることにより、徐々にではあるがメラニン色素の濃度が減少し、それによりメラニン色素のほとんどが低濃度化してしみのない肌になるようにした美容つまりしみ低減化のための塗布剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の塗布剤は、金属酸化物を主成分とするもので、例えば金属酸化物を分散させたもので、この塗布剤を人間の皮膚のしみの部分に塗布し、この塗布した部分に太陽光を当てることにより太陽光に含まれる紫外線によりメラニン色素を分解してしみの濃度(色)の低減、更にはしみ取りを行なうものである。
【0020】
その場合、太陽光に含まれる比較的弱い紫外線を塗布剤に当てて、徐々に色素の分解を行なうため、塗布剤の金属酸化物が長時間にわたってしみの部分に保持される必要がある。
【0021】
以上の理由により、本発明の塗布剤は、次のような構成にした。
【0022】
本発明のフィルム状の塗布剤は、紫外線を透過するフィルムに金属酸化物の粉末をコーティングしたものを糊によりメラニン色素の沈着した部分に貼って一定時間継続的または断続的に太陽光に当てることによりメラニン色素の低分子量化を行なうようにするものである。
【0023】
また、本発明の他の塗布剤は、紫外線を透過する糊材中に金属酸化物を混入し均一に分散させて乳液状にしたものを、メラニン色素が沈着している部分に塗って、一定時間太陽光に当てることにより、メラニン色素を低濃度化するものである。
【0024】
この本発明の塗布剤で用いられる糊材は、紫外線を100%近く透過するものであると共に、皮膚に塗った時に皮膚に炎症を起こすことのない材料であることが好ましい。更に皮膚に塗った状態を長く保ち、容易に剥離することのないものが好ましい。
【0025】
本発明にて使用し得る金属の酸化物として、酸化チタン(TiO)酸化亜鉛(ZnO)、酸化銅(CuO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化錫(SnO2)、五酸化バナジン(V25)、酸化鉄(Fe23)がある。これらのうち酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化バリウム以外は色が濃い粉末である。したがって、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化バリウムが本発明で用いる酸化物としてより望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、紫外線を透過するフィルムに金属酸化物の粉末を紫外線を透過する糊材中に分散させたものを塗った簡単な構成のフィルムで、このフィルムをメラニン色素が沈着した部分に貼って太陽光に当たるだけでメラニン色素の低分子量化が可能であり、高価な装置を必要とせず、しかも日常の生活を行なっている間にメラニン色素の低分子量化が進み、その結果、しみの色が次第に薄くなり、完全に消失する可能性もあるという効果を奏する。
【0027】
また、本発明の他の構成は、紫外線を透過する糊材中に金属酸化物の粉末を混入分散させた塗布剤で、この塗布剤をメラニン色素が沈着した部分に塗ることにより、同様に高価な装置を用いることなしに、しかも日常の生活を行なっている間にメラニン色素の低濃度化が進み、したがってしみの色が薄くなり、更に完全な消失も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に本発明の実施例を述べる。
【実施例1】
【0029】
本発明の実施例1は、紫外線を透過するフィルムに酸化チタン等の金属酸化物の粉末を均一に分散するように塗布したフィルム状の塗布剤で、このフィルムをメラニン色素が沈着した部分に貼り、これに太陽光を当てることにより、太陽光に含まれる紫外線の作用によって、徐々にメラニン色素の低分子量化を行なうようにして、しみ低減化を行なうものである。
【0030】
この本発明のフィルム状の塗布剤は、ある程度の時間を必要とするが、前記の金属酸化物を付着させたフィルムを貼ったままの状態にて、通常の生活を行なうことにより紫外線の照射を受けて徐々にメラニン色素の低分子量化を実現するものである。
【0031】
この実施例にて用いる紫外線を透過するフィルムとしては、次のようなものがある。
(1) ポリビニールアルコール(1〜10モル%程度の酢酸基を残したポリビニルアルコール)

【0032】
(2) エチレン−ビニルアルコール系共重合体

【0033】
(3) セルローズ

【0034】
(4) ポリ塩化ビニリデン

【0035】
これらフィルムのうち、(1)のポリビニールアルコールは、親水性ポリマーで水をフィルム表面に塗り金属酸化物の粉末をフィルムに直接固定化できる。しかもこのフィルムを皮膚に付着させることにより、そのまま保持することが可能である。
【0036】
このように、ポリビニールアルコールに金属酸化物の粉末を塗布したフィルムを皮膚のメラニン色素が沈着した部分に貼って通常の生活を行なっていれば、自然光中に含まれる紫外線によりメラニン色素が低濃度化する。
【0037】
次の(2)のエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、親水性ポリマーであるが、そのフィルムに金属酸化物の粉末を直接固定化することができない。そのため、糊材として低重合度の水溶性のポリビニルアルコールをフィルム面に塗って、これに金属酸化物の粉末を固定化させたものを皮膚のメラニン色素の沈着部分に塗って使用する。
【0038】
また、(3)のセルローズは、疎水性であるため、金属酸化物の粉末をそのままフィルムに固定化することは困難である。そのため糊材を用いて、金属酸化物の粉末をフィルムに塗ればよい。
【0039】
更に、(4)も疎水性であり、糊材を塗布することも困難である。
【0040】
以上述べた実施例1にて用いるフィルムは、フィルムの金属酸化物の粉体を付着させた面に糊材を塗ってメラニン色素が沈着する部分に貼り、前述のように太陽光を断続的、または連続的にあてて、メラニン色素の低分子量化を促進し、しみの色が薄くなるようにする。
【0041】
本発明で用いる前記のフィルムを皮膚に貼る場合、糊材をフィルム全面に塗ってもよいし、あるいはフィルムの周辺部のみに塗ってもよい。
【0042】
ここで用いる糊材としては、前述の低重合度のポリビニルアルコールの水溶液のほか親水性のポリマーのポリアクリルアミド等が好ましい。いずれにしろ皮膚への一定の粘着性があり、剥離が容易であって皮膚への悪影響のないものであればよい。また、フィルム全面に糊を塗る場合、紫外線の吸収がないか吸収が少ないものがよい。
【実施例2】
【0043】
本発明の実施例2は紫外線を透過する糊材に金属酸化物を分散混入させて乳液状にしたものを、化粧品を皮膚に塗るようにしてメラニン色素が沈着した部分に塗り、これに太陽光をあてることにより紫外線を照射してメラニン色素を低分子量化するものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のフィルム状塗布剤は、人間の皮膚のしみの部分にフィルムを貼った状態にて通常の生活を行なううちにしみ低減化を行ない得る。同様に本発明のしみ低減化用の塗布剤は、しみの部分に化粧用の乳液を塗るのと同様に塗ることにより、しみ低減化を行ない得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物を用いた塗布剤であって、紫外線の吸収が少ない合成樹脂フィルムに金属酸化物をコーティングし、前記コーティングした面をメラニン色素が沈着した部分に接するように固定して用いるしみ低減化用塗布剤。
【請求項2】
金属酸化物を用いた塗布剤であって、紫外線の吸収が少ない合成樹脂フィルムの一面に紫外線吸収の少ない糊材を用いて粉末の金属酸化物を付着させたもので、前記金属酸化物が付着された面をメラニン色素が沈着した部分に接するようにして用いるしみ低減化用塗布剤。
【請求項3】
前記合成樹脂フィルムがポリビニールアルコール製フィルムである請求項1または2のしみ低減化用フィルム。
【請求項4】
紫外線の吸収が少ない糊材中に金属の酸化物の粉末を混入し分散させた塗布剤で、前記糊材をメラニン色素が沈着した部分に塗って用いるしみ低減化用塗布剤。
【請求項5】
前記糊材が低分子量ポリビニルアルコールの水溶液である請求項4の塗布剤。

【公開番号】特開2006−76929(P2006−76929A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263156(P2004−263156)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(503100728)有限会社T・I研究所 (3)
【Fターム(参考)】