説明

しわ除去剤組成物

【課題】アイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行わなくても繊維製品のしわを除去することができるしわ除去剤組成物を提供する。
【解決手段】特定のカチオン性基含有ビニル単量体と特定のノニオン性基含有ビニル単量体とを単量体成分とする共重合体(a)を0.001〜1質量%、水を70質量%以上含有し、25℃におけるpHが5〜9であり、25℃における粘度が15mPa・s以下である、しわ除去剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、しわ除去剤組成物、及びスプレー式しわ除去剤に関する。
【背景技術】
【0002】
スーツ等のドライクリーニング衣類は家庭での水洗いが困難であり、それらのしわ取り方法については、一般にアイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行う方法があるが、手間がかかる作業である上、風合いを損ねる場合がある。これまでに、熱処理を行わずに衣類のしわを伸ばす技術が開示されているが、しわ除去効果は不十分である。
【0003】
特許文献1にはヘキシレングリコールやイソプレングリコール等の特定の水溶性溶剤と水を組み合わせた組成物を衣類のしわ部にスプレーした後、放置するだけでしわ部を取り除く技術が記載されているが、この方法では衣類についた軽いしわは取り除けるが、深いしわを完全に除去するのは困難である。特許文献2にはシリコーンと皮膜形成ポリマーからなるしわを減少させる組成物、及び特許文献3には特定のアルコール、グリセリン、非イオン性界面活性剤と水から成るしわ取り用水性組成物に関する技術が開示されており、どちらも布帛にスプレー噴霧した後で吊り下げて自然乾燥するか、アイロンがけを行うことでしわを除去する技術が記載されているが、自然乾燥だけでは十分にしわを除去することができず、またアイロンがけはしわ取りには非常に効果的であるが、手間が掛かる作業である上、風合いを損ねる可能性がある。特許文献4には接着性ポリマーと未複合シクロデキストリンからなるシワ及び悪臭減少組成物に関する技術が記載されているが、しわ除去性能は十分ではない。
【0004】
また、特許文献5には、水溶性カチオン性ポリマーを含有する乾燥機用繊維製品処理剤組成物に関する技術が記載されているが、加熱式乾燥機を使用する際に生じるしわを軽減することを目的としており、乾燥機などの熱処理をしない場合、例えば着用により生じたしわを簡易に除去するような態様でのしわ除去性能については言及されていない。
【0005】
かかる状況から、繊維製品に対して、アイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行わなくても、風合いを損なうことなく繊維製品のしわを除去することができるしわ除去剤組成物の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開平10−25660号公報
【特許文献2】特開平10−508911号公報
【特許文献3】特開平1−6174号公報
【特許文献4】特開2003−525356号公報
【特許文献5】特開2008−111219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行わなくても繊維製品のしわを除去することができるしわ除去剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記一般式(1)で表されるカチオン性基含有ビニル単量体及び下記一般式(2)で表されるカチオン性基含有ビニル単量体の少なくとも1種〔以下(a1)成分という〕と、下記一般式(3)で表されるノニオン性基含有ビニル単量体及び下記一般式(4)で表されるノニオン性基含有ビニル単量体の少なくとも1種〔以下(a2)成分という〕とを単量体成分とする共重合体(a)〔以下、(a)成分という〕を0.001〜1質量%、水を70質量%以上含有し、25℃におけるpHが5〜9であり、25℃における粘度が15mPa・s以下である、しわ除去剤組成物に関する。
【0008】
【化5】

【0009】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2及びR3は同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R4は水素原子又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、Yは−O−、−NH−又は−O−CH2CH(OH)−基を示し、Zは炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、Xは酸の共役塩基、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキルサルフェート基を示す。〕
【0010】
【化6】

【0011】
〔式中、R5及びR6は同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R7及びR8は同一又は異なって水素原子又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは前記の意味を示す。〕
【0012】
【化7】

【0013】
〔式中、R1は前記の意味を示し、R9及びR10は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖の、ヒドロキシ基を有していてもよい、アルキル基又はアルケニル基を示す。〕
【0014】
【化8】

【0015】
〔式中、R1は前記の意味を示し、A1及びA2は同一又は異なって、式−(CH2n−(nは2〜6の整数を示す)で表される基を示し、Bは−O−又は−CH2−基を示す。〕
【0016】
また、本発明は、上記本発明のしわ除去剤組成物をスプレー容器に充填してなるスプレー式しわ除去剤に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のしわ除去剤組成物は、繊維製品の繊維潤滑性を向上できることから、アイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行わなくても、繊維製品のしわを除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、特定のカチオン性基含有ビニル単量体の少なくとも1種(以下(a1)成分という)と、特定のノニオン性基含有ビニル単量体の少なくとも1種(以下(a2)成分という)とを単量体成分とする共重合体である。
【0019】
(a1)成分において、R2、R3はそれぞれ炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基が好ましく、R4は水素原子又は炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基が好ましく、Yは−O−、−NH−が好ましく、Zは炭素数2〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が好ましく、R5、R6はそれぞれ水素原子が好ましく、R7、R8はそれぞれ炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基が好ましく、Xは酸の共役塩基、又はハロゲン原子が好ましい。
【0020】
(a1)成分の具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジt−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジt−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの酸中和物あるいは4級アンモニウム塩、又は、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドが好ましく、中でも、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドの4級アンモニウム塩がより好ましい。
【0021】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0022】
上記の酸中和物を得るための好ましい酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、スルファミン酸、トルエンスルホン酸、乳酸、ピロリドン−2−カルボン酸、コハク酸などが挙げられ、上記4級アンモニウム塩を得るための好ましい4級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ−n−プロピル等の一般的なアルキル化剤が挙げられる。
【0023】
(a2)成分のうち一般式(3)で表されるノニオン性基含有ビニル単量体では、R9、R10はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基が好ましい。(a2)成分は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
(a2)成分の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクロイルモルホリンが好ましく、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
【0025】
本発明の(a)成分を構成する(a1)成分と(a2)成分の割合は、しわ除去性能の観点から、(a1)成分/(a2)成分=1/99〜80/20(モル比率)が好ましく、3/97〜70/30がより好ましく、5/95〜60/40が更に好ましい。
【0026】
また、(a)成分は、しわ除去性能の観点から、(a1)成分、(a2)成分、並びに、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びアリル基から選ばれる少なくとも2個の基を分子内に有する架橋性ビニル単量体〔以下(a3)成分という〕を単量体成分とすることが好ましい。
【0027】
(a3)成分としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;N−メチルアリルアクリルアミド、N−ビニルアクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスアクリルアミド酢酸等のアクリルアミド類;ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルエチレン尿素等のジビニル化合物;ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、トリアリルアンモニウム塩、ペンタエリスリトールのアリルエーテル化体、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート等の不飽和アルコールの(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0028】
これらの架橋性ビニル単量体の中では、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテルが好ましい。
【0029】
本発明の(a)成分において、しわ除去性能の観点から、(a3)成分を用いることが好ましい。(a1)成分及び(a2)成分に対するに対する(a3)成分の割合は、(a3)成分/[(a1)成分+(a2)成分]×100(モル%)が0.0001〜2モル%が好ましく、0.0005〜1モル%がより好ましく、0.0005〜0.5モル%が更に好ましく、0.001〜0.5モル%が更に好ましく、0.001〜0.1モル%が特に好ましい。
【0030】
また、本発明の(a)成分を構成する(a1)成分と(a3)成分の割合は、しわ除去性能の観点から、(a1)成分と(a3)成分の割合が、(a3)/(a1)×10000=0〜100(モル比率)が好ましく、0.01〜50がより好ましく、0.1〜30が更に好ましく、0.1〜20が更に好ましく、0.1〜10が特に好ましい。
【0031】
本発明の(a)成分は、(a1)成分及び(a2)成分の2種類のビニル単量体を必須構成成分とし、好ましくは更に(a3)成分の架橋性ビニル単量体を構成成分とする共重合体であるが、これらビニル単量体と共重合可能な他のビニル単量体も構成成分とすることができる。
【0032】
他のビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、キシリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#210モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#600モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#1000モノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール#210(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール#600(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール#1000(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸誘導体(#の次の数字は重量平均分子量を示す);2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、アクリル酸、メタアクリル酸、2−スルホエチルメタクリレートなどのアニオン性基含有単量体;N−(3−スルホプロピル)−N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロイルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−カルボキシメチル)−N−メタクリロイルアミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン、N−カルボキシメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等のベタイン類が挙げられる。
【0033】
本発明の(a)成分の全構成単量体中、(a1)成分及び(a2)成分の合計が80〜100モル%、更に90〜99.9モル%が好ましい。また、(a3)成分を構成成分とする場合、全構成単量体中、(a1)成分、(a2)成分及び(a3)の合計が90〜100モル%、更に95〜100モル%が好ましい。
【0034】
本発明の(a)成分を製造する方法については必ずしも制限はないが、通常は水溶液重合法、逆相懸濁重合法、沈澱重合法などの方法によることが好ましい。例えば、水溶液重合法としては、水又は水と均一に混合可能な親水性有機溶媒或いはこれらの混合溶媒等の溶媒中に単量体成分、架橋剤を均一に溶解し、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスによる置換等により系内の溶存酸素を除去した後、重合開始剤を添加して反応させる方法が挙げられる。重合開始温度は通常20〜90℃程度であり、反応時間は1〜10時間程度である。単量体として水に溶け難い成分を使用する場合、親水性有機溶媒を併用するのが望ましい。
【0035】
上記親水性有機溶媒の代表的な例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低級アルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらのうち特に、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が好ましい。
【0036】
また、重合開始剤としては、溶媒中に均一に溶解する過酸化物、有機又は無機過酸若しくはその塩、アゾビス系化合物の単独或いは還元剤との組合せによるレドックス系のものが用いられ、それらの代表的な例としては、例えば、t−ブチルパーオキサイド、t−アミルパーオキサイド、クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルイソブチリルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、シクロヘキシルハイドロパーオキサイド、テトラリンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーアセテート、t−ブチルパーベンゾエート、ビス(2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、フェニルアゾトリフェニルメタン、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過硫酸塩とトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアニリン等の第3級アミンとの組合せ等が挙げられる。
【0037】
これらのうち特に、t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム若しくは過硫酸アンモニウムの単独、又はこれらの過硫酸塩とトリエチルアミン、トリエタノールアミン若しくはジメチルアニリン等の第3級アミンとの組合せが好ましい。
【0038】
本発明の(a)成分を製造する際に用いられる重合装置としては特に制限はなく、例えば一般的なニーダー、円筒型反応容器が用いられる。
【0039】
水溶液重合法では、本発明の(a)成分を製造する手順の一例を示すと、フタを有するニーダー中に単量体混合物の10〜50質量%の水溶液を送入し、必要に応じて系を窒素等の不活性気体で置換し、水溶性ラジカル重合開始剤を添加して、20〜90℃にして重合を開始させ、重合の進行に伴い生成する含水ゲル状重合体をニーダーの羽根の回転による剪断力で細分化しながら重合を完結する方法を挙げることができる。勿論本発明の範囲がこの例により限定されるものではない。ここで用いられる単量体混合物水溶液の初期濃度は10〜50質量%であることが好ましい。
【0040】
重合開始剤の使用量としては、(a1)成分及び(a2)成分の合計に対して、好ましくは0.01〜5モル%、より好ましくは0.01〜3モル%、特に好ましくは0.01〜1モル%の範囲である。因みに、重合開始剤の使用量が(a1)成分及び(a2)成分の合計を基準として5モル%以下であるときは、主鎖の高分子鎖の重合度が上がり、架橋されない高分子鎖の割合が低減されるために期待するしわ除去性能が十分に発揮される。一方、0.01モル%以上であるときは、重合反応の反応率が上がり、残留モノマーの量が低減されるため好ましい。
【0041】
(a)成分の製造では、必要に応じ連鎖移動剤が用いられる。連鎖移動剤としては一般的に用いられるものでよく、モノマー層が水系であることから、2−メルカプトエタノール、βメルカプトプロピオン酸、1−チオグリセロール等が好ましく用いられる。
【0042】
反応生成物は反応に使用した溶媒を含むゲル状であり、通常は回転式カッター等で粉砕し、更に、加熱、減圧等の方法により溶媒を除去して乾燥、粉砕分級して粉末とする。
【0043】
また、一般的な円筒型の密閉反応容器を用いた水溶液重合法も用いられる。この場合においても、単量体混合物の10〜50質量%の水溶液を仕込み、あるいは滴下しつつ、必要に応じて系を窒素等の不活性気体で置換し、水溶性ラジカル重合開始剤を添加して、常温であるいは30〜80℃に加熱して重合を開始させ、液状の共重合物として得る方法が挙げられる。
【0044】
逆相懸濁重合法としては、水中に単量体成分、架橋剤を均一に溶解し、分散剤などを用いて水と均一に混合しない有機溶媒中に懸濁又は乳化させて重合反応を行う。重合開始剤としては、必ずしも水溶性のもののみに限らず有機溶媒中に可溶なものも用いられる。ここで用いられる有機溶媒としては、前記のもの以外に、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素系有機溶媒、四塩化炭素、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素系有機溶媒、アイソバー等の鉱油等も用いられる。
【0045】
また、分散剤としては、例えば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、シュガーエステル等、更に一般に乳化分散剤に用いられる界面活性剤等が挙げられる。
【0046】
系内の溶存酸素の除去、反応生成物の処理等は前記と同様であり、また、反応条件は必ずしも制限はないが、概ね次の通りである。溶媒使用量:単量体水溶液と等量〜20倍、好ましくは等量〜10倍、重合開始剤の使用量:(a1)成分及び(a2)成分の合計を基準として0.01〜5モル%、好ましくは0.01〜3モル%、重合開始温度:10〜90℃程度、反応時間:1〜10時間程度である。
【0047】
以上の条件(更にはそれぞれの好適態様)を採用することにより、本発明の効果を奏する(a)成分を再現性よく製造できる。
【0048】
<しわ除去剤組成物>
本発明のしわ除去剤組成物中の(a)成分の含有量は、使用形態、繊維製品の種類、しわの程度によって適宜調整することができる。
【0049】
(a)成分の組成物中の含有量は、0.001〜1質量%、好ましくは0.001〜0.5質量%、より好ましくは0.001〜0.3質量%、更に好ましくは0.001〜0.2質量%、特に好ましくは0.001〜0.1質量%である。
【0050】
本発明のしわ除去剤組成物において、(a)成分は、水(以下(b1)成分という)と共存することにより、湿潤時の繊維潤滑性を向上し、繊維製品のしわを除去することができる。
【0051】
(b1)成分としては、蒸留水やイオン交換水等からイオン成分を除去したものが好ましい。(b1)成分の組成物中の含有量は、70質量%以上、好ましくは70〜99.9質量%、より好ましくは80〜99.9質量%である。
【0052】
(a)成分のしわ除去性能を発現するためには、(b1)成分に加え、溶剤(以下(b2)成分という)を併用することが有効である。(b2)成分としては、エタノール、イソプロパノール等の低級(炭素数3〜4)アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類(炭素数2〜12)、エチレングリコールやプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ジエチレングリコールやジプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノール性化合物のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物等が好ましく、中でも、エタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールがより好ましい。
【0053】
(b2)成分の組成物中の含有量は、通常0.001質量%以上、好ましくは0.005〜30質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%である。組成物中の(b1)成分と(b2)成分の割合は、しわ除去性能の観点から、(b1)/(b2)=1〜1000(質量比)が好ましく、1〜500がより好ましく、1〜200が更に好ましい。
【0054】
本発明のしわ除去剤組成物において、しわ除去性能及びスプレー容器での噴霧適性の観点から、塩酸、硫酸、酢酸、炭酸、リン酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、酒石酸、アジピン酸、スルファミン酸、トルエンスルホン酸、乳酸、コハク酸、又はグリコール酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又はモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩から選ばれる1種以上の塩(以下(c)成分という)を配合することが好ましい。本発明の(a)成分は、(c)成分と併用することにより、スプレー容器での噴霧により適した物性を発現し、しわ除去性能を向上することができる。
【0055】
本発明の(c)成分としては、塩酸、硫酸、酢酸、炭酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、乳酸、コハク酸、又はグリコール酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又はモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩がより好ましく、塩酸、硫酸、酢酸、炭酸、リン酸、クエン酸、トルエンスルホン酸、乳酸、又はグリコール酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又はモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩が更に好ましい。
【0056】
本発明の(c)成分の組成物中の含有量は、しわ除去性能及び噴霧適正の観点から、0.001〜1質量%、好ましくは0.001〜0.5質量%、より好ましくは0.001〜0.3質量%、更に好ましくは0.001〜0.2質量%、特に好ましくは0.001〜0.1質量%である。
【0057】
また必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、界面活性剤、硫酸ナトリウムやN,N,N−トリメチルグリシン等の塩、消臭剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、殺菌・抗菌剤、香料、染料・顔料、紫外線吸収剤等の他の成分を添加することができる。
【0058】
界面活性剤としては、特に制限はなく、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤の中から選ばれる1種種以上が挙げられる。これらの中では、非イオン性界面活性剤が好ましく、下記一般式(4)で表される化合物が、しわ除去性能の点から、特に好ましい。
3−Z−[(EO)s/(PO)t]−H (2)
〔式(2)中、R3は、炭素数10〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、Zは−O−又は−COO−のいずれかであり、EOは、オキシエチレン基であり、POはオキシプロピレン基であり、(EO)と(PO)はランダム付加でもブロック付加でもいずれでもよく、(EO)と(PO)の付加順序は問わない。s及びtは平均付加モル数であり、s+tの合計は5〜15の数であり、tは2以下の数である。〕
【0059】
しわ除去性能向上の観点から、一般式(2)で表される化合物のR3は、好ましくは炭素数10〜18、より好ましくは炭素数10〜16、更に好ましくは炭素数10〜14のアルキル基又はアルケニル基である。
【0060】
また、一般式(2)のsは、好ましくは5〜14の数、より好ましくは5〜13、更に好ましくは5〜12であり、tは好ましくは0である。一般式(4)で表される化合物としては、ポリオキシエチレン(n=6〜12)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=5〜12)モノアルキル(炭素数12〜14の2級の炭化水素基)エーテルから選ばれる1種以上が好ましい。ここで、nはオキシエチレン基の平均付加モル数である。
【0061】
界面活性剤の組成物中の含有量は、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.01〜3質量%、更に好ましくは0.01〜2質量%、特に好ましくは0.01〜1質量%である。
【0062】
本発明のしわ除去剤組成物の25℃におけるpHは、しわ除去性能の観点から、5〜9であり、pHが6〜9が好ましく、6.5〜8.5が更に好ましい。本発明のしわ除去剤組成物のpHは、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより調整することができる。
【0063】
本発明のしわ除去剤組成物の25℃における粘度は、スプレー容器での噴霧適性の観点から、15mPa・s以下であり、好ましくは1〜10mPa・s、より好ましくは1〜8mPa・sである。本発明のしわ除去剤組成物において、25℃における粘度が15mPa・s以下であると噴霧パターンが適正となる。粘度の調整は、(b2)成分、(c)成分を適当量添加する事によって行う事ができる。粘度は、東京計器株式会社製、B型粘度計(モデル形式BM)に、ローター番号No.1のローターを備え付けたものを準備し、試料をトールビーカーに充填し、25℃の恒温槽内にて25℃に調製し、恒温に調製された試料を粘度計にセットし、ローターの回転数を60r/minに設定し、回転を始めてから60秒後に測定した粘度である。
【0064】
本発明のしわ除去剤組成物をスプレー容器に充填してスプレー式しわ除去剤を得ることができる。本発明のしわ除去剤組成物は水を含有するミストタイプであり、これをスプレー容器に充填し、一回の噴霧量を0.1〜1mlに調整したものが好ましい。使用するスプレー容器としては、トリガースプレー容器(直圧あるいは蓄圧型)やディスペンサータイプのポンプスプレー容器等の公知のスプレー容器を用いることができる。トリガー式スプレーヤーを具備するスプレー容器が好ましい。
【0065】
スプレー容器としては、噴射口から噴射方向に10cm離れた地点における噴霧液滴の平均粒径が10〜200μmとなり、噴射口から噴射方向に15cm離れた地点における粒径200μmを超える液滴の数が噴霧液滴の総数の1%以下となり、噴射口から噴射方向に10cm離れた地点における粒径10μm未満の液滴の数が噴霧液滴の総数の1%以下となる噴霧手段を備えたものが好ましい。噴霧液滴の粒子径分布は、例えば、レーザー回折式粒度分布計(日本電子株式会社製)により測定することができる。
【0066】
このように、本発明では、本発明のしわ除去剤組成物をスプレー容器に充填してなるスプレー式しわ除去剤物品を得ることができる。本発明のしわ除去剤組成物及びスプレー式しわ除去剤は、繊維製品用として好適であり、かかるしわ除去剤組成物は、噴霧により繊維製品に付着させて、対象物のしわを低減させることが好ましく、前記スプレー式しわ除去剤はこの方法に好適に用いられる。繊維製品としては、スーツ、セーター等の衣類、カーテン、ソファー等が挙げられる。
【0067】
本発明のしわ除去剤組成物による繊維製品の処理方法としては以下のものが挙げられる。本発明のしわ除去剤組成物をスプレー容器に充填してなるスプレー式しわ除去剤物品から、本発明のしわ除去剤組成物を噴霧により繊維製品に付着させて加熱乾燥することなく当該繊維製品を自然乾燥する、繊維製品のしわ低減方法である。その際、繊維製品は、実質的に乾燥状態にあるものであってもよい。
【0068】
本発明のしわ除去剤組成物の使用場面は、洗濯により生じた洗濯じわを除去するのではなく、着用により生じた着用じわを除去するのに好適である。本発明のしわ除去剤組成物は、有効成分が繊維製品全体に均一に広がり、且つ適量の水分量が噴霧できるので、このような着用じわを除去するのに好適である。本発明のしわ除去剤組成物の使用量は、繊維製品の乾燥質量当たり、5〜120質量%が好ましく、5〜100質量%がより好ましく、10〜100質量%が更に好ましい。
【実施例】
【0069】
実施例1〜7及び比較例1〜2
<しわ除去剤組成物の調製>
表1に示す配合処方のしわ除去剤組成物を調製した。得られた組成物は、pH調整剤である1/10規定の水酸化ナトリウム水溶液でpH8(25℃)に調整した後、75μmのステンレス製メッシュ(200メッシュ)にてろ過した。表1中の記号の成分は下記のとおりである。なお、表1では、a’−1及びa’−2を(a)成分としてモル比率を示した。
【0070】
(a)成分
・a−1:下記製造例1で製造した化合物
・a−2:下記製造例2で製造した化合物
・a−3:下記製造例3で製造した化合物
・a−4:下記製造例4で製造した化合物
・a−5:下記製造例5で製造した化合物
・a−6:下記製造例6で製造した化合物
・a−7:下記製造例7で製造した化合物
【0071】
(a)成分の比較化合物
・a’−1:下記製造例8で製造した化合物
・a’−2:下記製造例9で製造した化合物
【0072】
<製造例1>
1Lビーカーにイオン交換水95.3g、MOEDES(ジメチルアミノエチルメタクリレートのジメチル硫酸による4級化物(有効分90質量%)。いずれも試薬、和光純薬工業(株)製)82.89g(有効分74.60g)、AAm(アクリルアミド、有効分40質量%、三井化学(株)製)383.13g(有効分153.25g)、NK−14G(架橋剤、ポリエチレングリコールジメタクリレート、新中村化学(株)製)0.088g、V−50(重合開始剤、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・2塩酸塩、和光純薬工業(株)製)0.708g(0.109モル%)を混合し、モノマー水溶液Aとした。5Lのガラス容器にシクロヘキサン2002g、分散剤としてシュガーエステルS−770(三菱化成(株)製)を2.28g仕込み、60℃で1時間かけ均一に溶解せしめた。溶解後、30℃に冷却し、分散剤溶液Bとした。
【0073】
分散剤溶液Bに、前記モノマー水溶液Aを加え、ホモミキサー(ROBOMICS、特殊機化工業(株)製)にセットし、9000回転で4分間攪拌し、平均粒子径5μmのモノマー分散液を得た。全量を5Lの攪拌機と温度計、冷却管の付いたSUS槽に仕込み、窒素置換後、昇温し、73℃で1時間重合した。更に73℃で1時間熟成した後、冷却管付きの脱水管を装着し、約4時間かけて系内から水317gを除去した。脱水が進むにつれ、槽内温度は73℃から82℃に上昇した。
【0074】
ついで40℃以下に冷却し、内容物をステンレス製トレーに移し、80℃、熱風乾燥して溶媒を除去し、白色・粒状のカチオン性基含有共重合体1を得た。なお、実施例で用いたカチオン性基含有共重合体1は、家庭用コーヒーミルで約1秒間、軽く粉砕し平均粒子径4.1μmのカチオン性基含有共重合体a−1を得た。表2にモノマー組成を示した。
【0075】
<製造例2、3及び7>
カチオン性基含有共重合体の製造例1に準じ、表2に示すモノマー組成でカチオン性基含有共重合体a−2(平均粒子径4.8μm)、a−3(平均粒子径4.3μm)、及びa−7(平均粒子径4.3μm)を製造した。
【0076】
<製造例4>
カチオン性基含有共重合体の製造例1に順じ、AAm(アクリルアミド)を、DMAAm(N,N−ジメチルアクリルアミド、試薬、和光純薬工業(株)製)に変え、表2に示すモノマー組成で、カチオン性基含有共重合体a−4(平均粒子4.5μm)を製造した。
【0077】
<製造例5>
内容積1リットルで、ジャケットに70℃のオイルを外部循環させたシグマ型攪拌腕を2本有するステンレス製ニーダー中に、DADMAC(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、65%水溶液、ダイソー(株)製)59.69g(固形分38.80g)、AAm(アクリルアミド、有効分40質量%、三井化学(株)製)99.50g(固形分39.80g)、MBAAm(架橋剤、メチレンビスアクリルアミド、和光純薬工業(株)製)0.2355g、イオン交換水287gからなるあらかじめ窒素置換したモノマー水溶液を入れ、30分更に窒素ガスを吹き込み反応系内を窒素置換しながら、モノマー水溶液の昇温を行った。ついで、重合開始剤としてV−50を0.22g添加した。重合開始剤を添加してから15分後から増粘し、1時間後に系全体が柔らかいゲル状となった。そのまま4時間重合を継続させた。餅状の重合物を取り出し、90℃で乾燥させた。その後、コーヒーミル、ジェットミルで粉砕した。粉砕した架橋粒子をハイボルターで分級し、カチオン性基含有共重合体a−5を得た(平均粒子径43μm)。
【0078】
<製造例6>
カチオン性基含有共重合体の製造例1に準じ、シクロヘキサン2002gをノルマルヘキサン2002gに変え、V−50 0.708g(0.109モル%)をV−50 19.38g(6.00モル%)に変えた以外は、表2に示すモノマー組成でカチオン性基含有共重合体a−6(平均粒子径5.5μm)を製造した。なお、重合温度と熟成温度は73℃から84℃に変えた製造した。
【0079】
<製造例8及び9>
カチオン性基含有共重合体の製造例1に準じ、表2に示すモノマー組成でカチオン性基含有共重合体a’−1(平均粒子径4.9μm)、及びa’−2(平均粒子径5.1μm)を製造した。
【0080】
<繊維潤滑性評価>
(1)試験片
木綿ブロード布((株)谷頭商店)1.8kgを市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)アタック)を用いて二槽式洗濯機(東芝銀河VH−360S1)で5回繰り返し洗濯した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水(20℃)36L使用、洗濯10分−脱水3分−すすぎ8分(流水すすぎ、水量15L/min.))。洗濯した木綿ブロード布を乾燥させた後、JIS L1096に記載の糸引抜き法(A法の図44)に準じて試験片に中央の糸を1本残して裁断する以外は同様のものを作製し、本試験における試験片として用いた。試験片の概略を図1に示す。
【0081】
(2)繊維潤滑性の評価
上記方法にて作成した試験片に対し、表1に示すしわ除去剤組成物をスプレーバイアル(株式会社マルエム、No.6)を用いて試験布乾燥時質量に対して50質量%噴霧した後、テンシロン万能試験機(RTC−1210A、(株)オリエンテック社製)を用いて、試験速度5mm/min、荷重レンジ5N、チャック間距離50mmにて引っ張った際の最大静止摩擦力を測定した。測定は、各サンプルについて10回行い、平均点を求めた。繊維潤滑性は、下記式に従い、イオン交換水を噴霧したサンプル(対照)と各サンプルの最大静止摩擦力の差として表した。この評価での繊維潤滑性としては、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましい。
繊維潤滑性=[対照の最大静止摩擦力(N)]−[サンプルの最大静止摩擦力(N)]
【0082】
【表1】

【0083】
*水酸化ナトリウムは、pH調整のため、表1の範囲で適宜添加を行った。
【0084】
【表2】

【0085】
**(a3)モル%は、(a3)成分/[(a1)成分+(a2)成分]×100(モル%)である。
【0086】
表1から、比較例1及び2の組成物は、繊維潤滑性が乏しいのに対し、実施例1〜7のしわ除去剤組成物は、繊維潤滑性が優れ、実衣料におけるしわ除去性能も優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例、比較例の繊維潤滑性評価に用いた試験片の概略を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるカチオン性基含有ビニル単量体及び下記一般式(2)で表されるカチオン性基含有ビニル単量体の少なくとも1種〔以下(a1)成分という〕と、下記一般式(3)で表されるノニオン性基含有ビニル単量体及び下記一般式(4)で表されるノニオン性基含有ビニル単量体の少なくとも1種〔以下(a2)成分という〕とを単量体成分とする共重合体(a)〔以下、(a)成分という〕を0.001〜1質量%、水を70質量%以上含有し、25℃におけるpHが5〜9であり、25℃における粘度が15mPa・s以下である、しわ除去剤組成物。
【化1】


〔式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2及びR3は同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R4は水素原子又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、Yは−O−、−NH−又は−O−CH2CH(OH)−基を示し、Zは炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、Xは酸の共役塩基、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキルサルフェート基を示す。〕
【化2】


〔式中、R5及びR6は同一又は異なって水素原子又はメチル基を示し、R7及びR8は同一又は異なって水素原子又は直鎖もしくは分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは前記の意味を示す。〕
【化3】


〔式中、R1は前記の意味を示し、R9及びR10は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖の、ヒドロキシ基を有していてもよい、アルキル基又はアルケニル基を示す。〕
【化4】


〔式中、R1は前記の意味を示し、A1及びA2は同一又は異なって、式−(CH2n−(nは2〜6の整数を示す)で表される基を示し、Bは−O−又は−CH2−基を示す。〕
【請求項2】
更に、(c)成分として、塩酸、硫酸、酢酸、炭酸、リン酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、酒石酸、アジピン酸、スルファミン酸、トルエンスルホン酸、乳酸、コハク酸、又はグリコール酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又はモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩から選ばれる1種以上の塩を含有する請求項1記載のしわ除去剤組成物。
【請求項3】
(a)成分を構成する(a1)成分と(a2)成分の割合が、(a1)成分/(a2)成分=1/99〜80/20(モル比率)である請求項1又は2記載のしわ除去剤組成物。
【請求項4】
(a)成分が、(a1)成分、(a2)成分、並びに、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びアリル基から選ばれる少なくとも2個の基を分子内に有する架橋性ビニル単量体〔以下(a3)成分という〕を単量体成分とする請求項1〜3の何れか1項記載のしわ除去剤組成物。
【請求項5】
(a1)成分及び(a2)成分に対する(a3)成分の割合が、(a3)成分/[(a1)成分+(a2)成分]×100(モル%)で0.0001〜2モル%である請求項4記載のしわ除去剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項記載のしわ除去剤組成物をスプレー容器に充填してなるスプレー式しわ除去剤。
【請求項7】
スプレー容器がトリガー式スプレーヤーを具備する請求項6記載のスプレー式しわ除去剤。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載のスプレー式しわ除去剤を用いる繊維製品のしわ除去方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−116647(P2010−116647A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290936(P2008−290936)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】