説明

し尿浄化システム

【課題】平面形状がコンパクトで狭い場所にも設置可能であり、便器設置位置を低くできるし尿浄化システムを提供する。
【解決手段】固液分離型の便器12と当該便器12から落下した排泄物を含む洗浄水を受け入れる液槽14及び固形物槽16とを配設したトイレボックス18と、トイレボックス18の側面に配設され、洗浄水を浄化する浄化槽20と、洗浄水を液槽14から浄化槽20内に送り込む配管22と、洗浄水を浄化槽20から便器12内に導く配管24と、浄化槽20内に収容され、洗浄水の汚物の分解を促進する好気性菌の微生物とを備えた。浄化槽20をトイレボックス18の側面に配設してトイレボックス18を小型化した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園、キャンプ場等の屋外等におけるトイレに適する運搬可能なし尿浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
運搬可能なトイレには、清掃が容易な構造や設置し易さや特に老人や身体の動きが不自由な人の使い勝手のよさ等が要求され、様々な工夫が施されている。
また、戸外に設置する大型のトイレでは、浄化槽にし尿を蓄積し、酵素を用いて分解を促進することで、長期間清掃を不要にする構成のものが知られている(特許文献1参照)。また、固液分離型の便器を使用して排泄物を水分と固形分に分離し、このうち水分を浄化槽を流動させて浄化することにより洗浄水として再利用する構成のものも知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−1171号公報
【特許文献2】特開2004−337850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記の技術には、次のような解決すべき課題があった。
固液分離型の便器を使用して水分を浄化し、比較的きれいな洗浄水として再利用する、従来のし尿浄化システムでは、固液分離型の便器の下部開口直下に、固形物用の浄化漕が配置され、この固形物用の浄化漕の周囲を取り囲むように、複数の洗浄水用の浄化槽が配置された構成であるので、平面形状が大きくなって設置場所が限定されたり、便器設置面が地面から高くなって老人や身体の動きが不自由な人の使い勝手がよくないという支障を生じることがあった。
【0004】
本発明は、上記の点に着目してなされたもので、平面形状がコンパクトで狭い場所にも設置可能であり、便器設置位置を低くできるし尿浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉 固液分離型の便器と当該便器から落下した排泄物を含む洗浄水を受け入れる液槽及び固形物槽とを下部に配設したトイレボックスと、上記トイレボックスの側面に沿って配設され、上記洗浄水を浄化する浄化槽と、上記洗浄水を上記液槽から上記浄化槽内に送り込む往路配管と、上記洗浄水を上記浄化槽から上記便器内に導く復路配管と、上記浄化槽内に収容され、上記洗浄水の汚物の分解を促進する好気性菌の微生物とを備えたことを特徴とするし尿浄化システム。
【0006】
浄化槽をトイレボックスの側面(背面を含む。)に沿って配設したことにより、トイレボックスの底部に設けた場合と比べてトイレボックスの平面形状及び高さを縮小できる。従って狭い場所にも設置可能であり、また、便器設置位置を低くして床面との段差を縮小できるから、例えば、車いす利用者のアクセスが容易である。
【0007】
〈構成2〉 固液分離型の便器と当該便器から落下した排泄物を含む洗浄水を受け入れる液槽及び固形物槽とを配設したトイレボックスと、上記トイレボックスの側面に沿って配設されて上記洗浄水を、上記トイレボックスの上部から上記便器内に導きながら浄化する浄化槽兼用配管と、上記洗浄水を、上記液槽から上記浄化槽兼用配管の上部に送り込む配管と、上記浄化槽兼用配管内に収容され、上記洗浄水の汚物の分解を促進する好気性菌の微生物とを備えたことを特徴とするし尿浄化システム。
【0008】
浄化槽兼用配管をトイレボックスの側面(裏面を含む。)に配設したことにより、構成1のものに比べてトイレボックスをさらに小型化できる。
【0009】
〈構成3〉 構成1又は2記載のし尿浄化システムにおいて、上記浄化槽内、又は上記浄化槽兼用配管内に、空気を送り込んで曝気処理をする曝気用パイプを配設したことを特徴とするし尿浄化システム。
【0010】
空気は空気ポンプから供給され、浄化槽内の微生物の活性化を図る。洗浄水の浄化処理を効率よく行うことができる。
【0011】
〈構成4〉 構成1又は2記載のし尿浄化システムにおいて、上記トイレボックスの上部に、ソーラパネルを配設したことを特徴とするし尿浄化システム。
【0012】
トイレボックス内で使用するポンプ、電磁弁、制御弁、照明灯、その他の電気機器の電力をソーラパネルにより提供できる。
【0013】
〈構成5〉 構成4記載のし尿浄化システムにおいて、上記洗浄水を上記液槽から上記トイレボックスの上部に送り込む上記往路配管を、上記ソーラパネルの近傍に沿わせて配設したことを特徴とするし尿浄化システム。
【0014】
往路配管内の洗浄水でソーラパネルの熱を吸収することによって、ソーラパネルの過熱を防止する冷却機能を発揮し、また、冬場のように寒いときには配管内の洗浄水がソーラパネルにより適度に加熱されて浄化槽に導入されるので、浄化槽内の微生物を活性化できるという効果が得られる。
【0015】
〈構成6〉 構成2記載のし尿浄化システムにおいて、上記浄化槽兼用配管は、略コ字状に折曲げられた管体を備え、この管体の複数本を、上記トイレボックスの側面に沿って上下方向に配置すると共に、上下に隣接する各管体の端部を管継手により着脱自在に連結してなるものであることを特徴とするし尿浄化システム。
【0016】
例えば、浄化槽兼用配管の補修の際、管継手のみを取り外して行えるので作業が簡単であり、浄化槽兼用配管のメンテナンスが容易である。
【0017】
〈構成7〉 構成6記載のし尿浄化システムにおいて、上記トイレボックスの側面に位置する上記浄化槽兼用配管の内部に、好気性菌の微生物を収容すると共に、同浄化槽兼用配管の管体端部に、空気を送り込んで曝気処理をする曝気用パイプを着脱自在に配設したことを特徴とするし尿浄化システム。
【0018】
曝気用パイプを浄化槽兼用配管に着脱自在に設けられているので、曝気用パイプのメンテナンスが容易である。
【0019】
〈構成8〉 構成6記載のし尿浄化システムにおいて、上記管継手の洗浄水通路に、数種類の浄化材をそれぞれ網目シートからなる小袋に収容した状態で、着脱自在に挿入したことを特徴とするし尿浄化システム。
【0020】
より効果的に洗浄水の浄化を行うことができると共に、浄化材の交換が簡単である。
【0021】
〈構成9〉 構成1記載のし尿浄化システムにおいて、上記浄化槽は、縦に長い筒体を複数本並べ、これらの各端部を複数本の連結管で順次連結することにより構成されていることを特徴とするし尿浄化システム。
【0022】
筒体を市販の下水等の配管部品をそのまま使用して構成できるから、浄化槽を低コストで構成できる。
【0023】
〈構成10〉 構成9記載のし尿浄化システムにおいて、上記各筒体の下部には、スラッジを排出するための排出孔が設けられ、上記各排出孔に、常時閉のバルブを介してドレン管が連結されていることを特徴とするし尿浄化システム。
【0024】
簡単に浄化槽のメンテナンスをすることができる。
【0025】
〈構成11〉 構成9記載のし尿浄化システムにおいて、上記筒体に、浄化剤を収納した細長の袋と、ブラックライトを収納した透明パイプと、曝気用のチューブとが収納されていることを特徴とするし尿浄化システム。
【0026】
細長の袋と透明パイプは、筒体の上蓋を取り外すことにより、細長の袋内の浄化剤やブラックライトを簡単に取り替えることができる。また点検も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は実施例1のし尿浄化システムの概略を示す説明図、図2〜図4はそれぞれ各部の具体例を示す斜視図である。
実施例1のし尿浄化システムは、図1に示すように、固液分離型の便器12と当該便器から落下した排泄物を含む洗浄水13を受け入れる液槽14及び固形物槽16とを配設したトイレボックス18と、トイレボックス18の側面に沿って配設され、洗浄水13を浄化する浄化槽20A、20Bと、洗浄水13を送水ポンプ23により液槽14から浄化槽内に送り込む往路配管22と、ほぼ重力で流下する洗浄水13を浄化槽20Bから便器12内に導く復路配管24と、浄化槽内に収容され、洗浄水13の汚物の分解を促進する好気性菌の微生物とを備えている。
【0029】
上記し尿浄化システムにおいては、最初に液槽14、固形物槽16、浄化槽20A、20B等に既知の浄化材が散布収容される。そして、液槽14や固形物槽16で洗浄水13の浄化作用が行われたときに発生した好気性菌の微生物が洗浄水13を介して液槽14から浄化槽20A、20Bに送り込まれ浄化槽20A、20B内底部に生息することになる。なお、固形物槽16では図示を省略したが、常法により洗浄水13を介して独自に浄化作業が行われる。そして、浄化された洗浄水13が固形物槽16から液槽14に送り込まれる。
【0030】
固液分離型の便器12は、例えば、図2に示した便器本体と同様の構成を有するものである。すなわち、図2において、便器12を構成する便器本体110は、上部開口111の上縁から下部開口113に向って滑らかに傾斜し、あるいは湾曲した内面を有する漏斗状の構造のものである。これは、例えば、プラスチック、あるいは金属の板を成形して構成される。便器本体110の下部開口113には、固液分離筒120が連結固定されている。
【0031】
固液分離筒120の上部開口121は、便器本体110の下部開口113と一体に固定されている。固液分離筒120の上部開口121から下部開口122に至る部分には、漏斗状の傾斜した側壁123が設けられている。この側壁123は、例えば、金属の網から構成され、内側から外側に貫通する多数の貫通孔が形成されたものである。このように、固液分離筒120の下部開口122は、上部開口121よりも口径が大きく、側壁123が一定の傾斜を保つように構成されている。
【0032】
固液分離筒120の下部開口122は、樋130の内壁134を取り囲むように連結されて固定されている。樋130は、環状部131と直線部132とを備える。環状部131の外側には外壁133、内側には内壁134が設けられている。従って、この樋130の環状部131に固液分離筒120を伝わって流れ落ちてきた洗浄水13は、樋130の環状部を経て、直線部132から液槽に流れ落ちる。排泄物の大便である固形物は、固液分離筒120の上部開口121から下部開口122を通過して、真下の固形物槽16(図1)内に落下する。一方、洗浄水13は、その大部分が樋130に流れ込む。この洗浄水13は、後で説明するように浄化されて、再び便器本体110の上部開口111から噴出される。
【0033】
こうして、洗浄水を循環させながら浄化して再利用することで、外部からの水に供給を不要にする。しかも、使用中、常に洗浄水を流下させているため、便器本体110に汚れが付着せず、常に清潔な状態で使用できる。また、固液分離筒120によって、ほぼ大部分の洗浄水を樋130で受け止め、固形物と共に落下させないため、固形物槽16を小型化することができる。同時に洗浄水を減少させることなく、循環させることができる。
【0034】
トイレボックス18は、例えば、街中で見かける電話ボックスと同程度の高さ(約2メートル)の六面体のボックスであり、一側面に開閉自在なドア19(図5)が設けられ、屋根部分にソーラパネル38が配設されている。ソーラパネル38は、トイレボックス18内外で使用するポンプ、電磁弁、制御弁、照明灯、その他の電気機器の電力を提供する電源となる。
【0035】
往路配管22は、トイレボックス18の上部で切替弁25を介して2つの配管26、27に分岐されている。一方の分岐配管26は、図3に示すように、ソーラパネル38に接して配設された洗浄水槽37の一方端面に連結されている。洗浄水槽37は、ソーラパネル38とほぼ同じ平面形状サイズの箱状をなしており、その内部を流通する洗浄水によりソーラパネル38の熱を適度に吸収するものである。洗浄水槽37の他方端面に連結された配管35により浄化槽20Aに連結されている。他方の分岐配管27は、浄化槽20Aに直行して連結されている。
【0036】
洗浄水槽37によってソーラパネル38の熱を適度に吸収することにより、例えば、夏場にはソーラパネルの過熱を防止する冷却機能を発揮し、また、特に冬場の寒いときには配管26内の洗浄水がソーラパネル38により適度に加熱されて浄化槽20A、20Bに導入されるので、これらの浄化槽内の微生物を活性化できるという効果が得られる。状況に応じて切替弁25を作動して、洗浄水を、一方の分岐配管26もしくは他方の分岐配管27のいずれかに導入させるようにする。
【0037】
浄化槽20A、20Bは、図1に示すように、トイレボックス18の側面に沿って上部から下方に向って並べられ、かつ洗浄水を流下させる中間配管28が連結された状態で配設されている。ここで、トイレボックス18の側面とは、トイレボックス18のドア19(図5)面を正面とした場合、その背面を含むものである。また、トイレボックスの外側あるいは内側のいずれの側面でもよいものとする。
【0038】
各浄化槽20A、20Bは、1個、あるいは2個以上配備されていてもよく、図示しないが、内部に、洗浄水の汚物の分解を促進する好気性菌の微生物を備えている。
【0039】
また、図4に示すように、浄化槽20A内に、空気ポンプ36により空気を送り込んで曝気処理をする曝気用パイプ30が配設されている。この曝気処理とは、曝気用パイプ30に設けられている多数の気孔32を通じて浄化槽内の水分中に気泡34を送り込み、水分を攪拌して浄化槽内に生息する好気性菌を活性化することによって、し尿成分を分解し浄化するものである。浄化槽20B内にも同様の曝気用パイプ30が設けられている。
【0040】
図1に示すように、復路配管24は、洗浄水を浄化槽20Bから便器12内に導くものであるが、この中間部に制御弁29が配設されている。この制御弁29は、常時は復路配管24を閉じて洗浄水の流れを止めており、トイレ使用時に復路配管24を開いて洗浄水を便器12に送り込むようにする。制御弁29の開閉動作は、図示しないが、トイレボックス18のドア19や適所に設置したセンサ及びタイマによって適宜行われる。
【実施例2】
【0041】
図5は実施例2のし尿浄化システムを示す説明図で、(a)は平面図、(b)は浄化槽兼用配管39の一部を平面的に展開して示す側面図である。この図においては、図1と共通する部分に同一符号を付している。
このし尿浄化システムの、実施例1の構成と異なる点は、実施例1の浄化槽20A、20Bと復路配管24の機能を一体とした浄化槽兼用配管39を使用したことである。その他の構成については、図示を省略しているが、実施例1の場合と同様に、固液分離型の便器12と当該便器12から落下した排泄物を含む洗浄水を受け入れる液槽14及び固形物槽16とを配設したトイレボックス18と、洗浄水を、液槽14からトイレボックス18の上部に送り込む往路配管22とを使用している。
【0042】
浄化槽兼用配管39は、図5(a)に示すように、略コ字状に折曲げられた管体40の複数本を、図5(b)に示すように、トイレボックス18の側面(ドア19面を除く三側面)に沿って上下方向に配置すると共に、隣接する上下の各管体40の端部に、後述する管継手42を着脱自在に連結したものである。なお、浄化槽兼用配管39は、トイレボックス18の側面の外側あるいは内側のいずれに配置されてもよいものとする。
【0043】
各管体40は適度に傾斜しており、この中を通る洗浄水が自重で往復動しながら順次流下するようにされている。図5(b)に示す矢印は、各管体40内の洗浄水の流れ方向を示している。
浄化槽兼用配管39のうち、下位の管体40には図1に示した制御弁29と同機能の制御弁56が配設されている。
【0044】
このし尿浄化システムでは、上位の浄化槽兼用配管39内に、洗浄水の汚物の分解を促進する好気性菌の微生物を収容している。往路配管22により最上位の管体40に送り込まれた洗浄水は、各管体40を往復移動し徐々に流下しながら、浄化されて便器12まで導かれる。また、トイレボックス18の上部にソーラパネル38を配設してもよい。
【0045】
図6はその浄化槽兼用配管39の端部の一例を示す説明図で、(a)は断面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図、(c)は浄化槽兼用配管39の端部の他の例を示す断面図である。
図6(a)に示すように、浄化槽兼用配管39の各管体40の端部は、管継手42を介して着脱自在に連結されている。管継手42は本管42Aの中間部に、直交する分岐管42Bを備えており、一方の管継手42の分岐管42Bがその上位の他の管継手42の本管に液密に嵌入された状態で取り付けられている。嵌入された分岐管42Bは、その上端が開口され、かつその上位の他の管継手42の本管内の上部に位置するように配置されている。図6(a)に示す矢印は、各管継手42内の洗浄水の流れ方向を示している。
【0046】
使用時には、図6(b)に示されるように、上位の管継手42内の洗浄水13は、その水位が一定以上上昇したとき、分岐管42Bの上部開口から下位の管継手42に流下する。このため、各管体40内の洗浄水13は、その水位が分岐管42Bの上部開口までの高さまで上昇しないと流下変動しないので、流れが全体的に緩くなる。従って、管体内底部の好気性菌の微生物が活動し易い状態となると共に、所定量の洗浄水を浄化槽兼用配管39内にストックしておくことができる。
【0047】
管継手42を設けた、浄化槽兼用配管39の各管体40端部の管継手42は、図5(b)に示されるように、交互にずれて位置するように配置されている。これは、上下に位置する管継手42どうしがその取付けやメンテナンスの際に邪魔にならないようにして各種の作業をし易くするためである。
【0048】
浄化槽兼用配管39のうち、下位の各管体40では洗浄水を浄化する必要性が殆どないので、これらの管体の端部間は、図6(c)に示されるように、分岐管42の分岐管42Bを他方の管体に嵌入されず、単に突合せ接合した状態で連結されている。
【0049】
管継手42の端面には栓体52が着脱自在に結合されている。この栓体52を貫通して曝気用パイプ44が配設されている。曝気用パイプ44は、配管54を介して空気ポンプ50から供給される空気を、多数の気孔46を通じて浄化槽兼用配管39内の水分中に気泡を送り込み、浄化槽兼用配管39内の好気性菌の微生物を活性化する。
【0050】
各管体40上面の適所に空気抜き48が設けられ、管体40に送り込まれた空気が管体40の外部に自由に放出されるようにされている。例えば、空気抜き48は、逆止弁を配設した複数本の配管48Aが使用され、これらの配管48Aの各一端を各管体40上面に設けた開口にそれぞれ連結し、他端をトイレボックス18の上方に開口する1本の配管49にそれぞれ集結するように連結することにより、臭いがトイレボックス18の周辺にこもらないようにすることができる。
【0051】
曝気用パイプ44は、浄化槽兼用配管39の各管体40のすべての端部に設ける必要はない。また、曝気用パイプ44は、各管体40端部の着脱自在な管継手42に連結されていることにより、補修や交換等を自由に行うことができメンテナンスが容易である。洗浄水を浄化槽兼用配管39を使用して浄化するようにしたことにより、トイレボックス18をさらに小型化できる。
【実施例3】
【0052】
図7は実施例3のし尿浄化システムを示す説明図である。
図7は、図6(b)に示した上位の管体40内の洗浄水13が分岐管42Bの上部開口から下位の管体40に流下する構成の変形例を示している。また、図6(b)とほぼ同一部分に同一符号を付して重複説明を省略する。
【0053】
この実施例では、図7に示すように、管継手42の、洗浄水通路である分岐管42B内に浄化材を挿脱自在に取付けている。すなわち、浄化材として、例えば、ガラス材と貝殻焼結材とを混合したもの61、多孔質セラミック62、牡蠣の貝殻63が使用される。これらの浄化材は、それぞれ網目シートからなる小袋に収容され、重ねられて一体にされた状態で、分岐管42B内に挿脱自在に挿入されている。浄化材は、紐64で連結され、この紐64を利用して、管継手42の本管42A上部に気密に設けた開閉蓋65付きの開口から出し入れ可能とされる。
【0054】
このように構成することにより、洗浄水13は流動過程でさらに効果的に洗浄される。また、開閉蓋65から浄化材の出し入れが自由にできることから、メンテナンス時の交換や補充等が容易である。なお、図示を省略するが、図7に示す分岐管42Bは、1つの本管42Aに複数本設けられて、これらにそれぞれ浄化材を収納したものでもよい。
【実施例4】
【0055】
図8は、実施例4のし尿浄化システムの概略を示す説明図である。図8は、図1に示した洗浄水13を浄化する浄化槽20A、20Bに相当する浄化槽70を縦型構成とし、さらに、復路配管24に、コントローラ74、室内照明75、赤外センサ76をそれぞれ設けた構成の変形例を示している。図9は同し尿浄化システムにおける浄化槽70を示す説明図、図10は同し尿浄化システムの浄化槽70の一部を拡大して示す説明図、図11は同し尿浄化システムを設置したトイレボックスの説明図である。これらの図には、図1と実質的に同一の部分には同一符号を付しており、重複説明を省略する。
【0056】
この実施例4では、図8に示すように、洗浄水13を浄化する浄化槽70は、複数本の縦に長い筒体70A、70B、70C、・・を横に並べ、これらの上下の各端部を複数本の連結管73で順次連結することにより構成されている。各連結管73は各筒体70A、70B、70C、・・の上部と下部とを交互に連結するように配置されている。浄化槽70は、トイレボックス18(図11)の背面に沿って配設されている。このような浄化槽70は、筒体として市販の下水等の配管部品をそのまま使用して低コストで構成できるという利点がある。
【0057】
トイレボックス18には、室内照明灯75と、トイレ利用者を検出する赤外センサ76と、この赤外センサ76による検出信号により、送水ポンプ23を起動させたり、室内照明灯75を点灯させるコントローラ74が設けられている。
固形物槽16は、液槽14の中に引出し式に収納される箱体であり、液槽14内とは液密に仕切られている。固形物槽16は液槽14内の洗浄水を外部に漏らすことなく液槽14から引き出すことができるようにされている。固形物槽16と液槽14とは重複状態で設けられ、最小限の面積で設置可能である。
【0058】
上記し尿浄化システムは、無人運転される。コントローラ74は、トイレ利用者を検出すると、室内照明灯75を点灯させ、送水ポンプ23を起動させると同時に、配管の切替弁25を開いて、洗浄水を流動させる。切替弁25は第1番目の筒体70Aが一杯になると閉じる。送水ポンプ23も停止する。常に第1番目の筒体70Aが一杯になるように、送水ポンプ23と送り側の切替弁25がコントローラ74によって自動制御される。
【0059】
トイレ利用者の検出信号が出力されている間、戻り側の制御弁29が開放状態を維持して洗浄水を便器12に供給する。また、利用者の検出信号の出力が停止した後も、一定時間、洗浄水を便器12に供給し続ける。
第2番目以降の筒体70B、70C、・・には、その前段の筒体に収納された水が落差により流れ込んで一杯になる。各筒体の中で水が順に浄化されて、洗浄水に利用される。
【0060】
図9に示すように、各筒体70A、70B、70C、・・の下部(底面)には、スラッジを排出するための排出孔が設けられている。各排出孔は、常時閉のバルブ79を介してドレン管80に連通されている。バルブ79を開くと、各筒体70A、70B、70C、・・内のスラッジがドレン管80を通じて外部に排出される。従って、ドレン管80により、適時バルブ79を開いて浄化槽70のメンテナンスをすることができる。
【0061】
図10に示すように、筒体70Aには、浄化剤を収納した細長の袋81と、ブラックライト(紫外線照射光)を収納した透明パイプ82と、多数の気孔を有する曝気用のチューブ83とが収納されている。細長の袋81と透明パイプ82は、各上端に鉤部材81A、82Aがそれぞれ連結され、筒体70A内に設けた横棒等に、それぞれ鉤部材81A、82Aを介して着脱自在に係止されている。
【0062】
ブラックライトの電源コード84と曝気用のチューブ83は、筒体70Aの上蓋71Aから外部に引き出されている。電源コード84は適宜電源(図示せず)に電気的に接続される。細長の袋81と透明パイプ82は、上蓋71Aを取り外すことにより、細長の袋81内の浄化剤やブラックライトを簡単に取り替えられるようにされている。
【0063】
曝気用のチューブ83は、図示しないが、外部に配備された空気ポンプに配管等を介して接続される。この空気ポンプから供給される空気を、多数の気孔を通じて筒体70A内の洗浄水中に気泡を送り込み、筒体70A内の好気性菌の微生物を活性化する。筒体70Aの上蓋71Aには、換気孔72Aが設けられている。他の筒体70B、70C、・・も必要に応じて同様の構成としてもよい。
【0064】
図11は上記し尿浄化システムを設置したトイレボックスを示している。図11に示すように、トイレボックス18は、液槽14及び固形物槽16を配置した分だけ地面から高い台上に設置される。正面には出入り口用のドア19が設けられている。背面には、浄化槽70の複数本の筒体が縦置きに並べて取付けられている。トイレボックス18の正面にはドア19に向ってなだらかなスロープ85が設けられ、車いすでも容易にトイレボックス18内に進入できる。
【0065】
本発明のし尿浄化システムは、大容量を必要とする浄化槽をトイレボックス18の側面や背面に配置し、便器12の下位には液槽14と固形物槽16のみを配置しているので、液槽14と固形物槽16の各水平方向の寸法を拡げてその分、高さを低くできることから、便器12の設置位置を低くすることが可能である。また、トイレボックス18の設置面積の縮小化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施例1のし尿浄化システムの概略を示す説明図である。
【図2】便器を示す斜視図である。
【図3】ソーラパネル及び洗浄水槽を示す斜視図である。
【図4】浄化槽及び曝気用パイプを示す斜視図である。
【図5】実施例2のし尿浄化システムの概要を示す説明図で、(a)は平面図、(b)は浄化槽兼用配管の一部を平面的に展開して示す側面図である。
【図6】浄化槽兼用配管の端部の一例を示す説明図で、(a)は断面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図、(c)は浄化槽兼用配管の端部の他の例を示す断面図である。
【図7】実施例3のし尿浄化システムにおける浄化槽兼用配管の端部を示す説明図である。
【図8】実施例4のし尿浄化システムの概略を示す説明図である。
【図9】同し尿浄化システムにおける浄化槽を示す説明図である。
【図10】同し尿浄化システム浄化槽の一部を拡大して示す説明図である。
【図11】同し尿浄化システムを設置したトイレボックスを示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
12 便器
14 液槽
16 固形物槽
18 トイレボックス
19 ドア
20A 浄化槽
20B 浄化槽
22 往路配管
23 送水ポンプ
24 復路配管
25 切替弁
26 分岐配管
27 分岐配管
28 中間配管
29 制御弁
30 曝気用パイプ
32 気孔
34 気泡
36 空気ポンプ
38 ソーラパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固液分離型の便器と当該便器から落下した排泄物を含む洗浄水を受け入れる液槽及び固形物槽とを下部に配設したトイレボックスと、
前記トイレボックスの側面に沿って配設され、前記洗浄水を浄化する浄化槽と、
前記洗浄水を前記液槽から前記浄化槽内に送り込む往路配管と、
前記洗浄水を前記浄化槽から前記便器内に導く復路配管と、
前記浄化槽内に収容され、前記洗浄水の汚物の分解を促進する好気性菌の微生物とを備えたことを特徴とするし尿浄化システム。
【請求項2】
固液分離型の便器と当該便器から落下した排泄物を含む洗浄水を受け入れる液槽及び固形物槽とを配設したトイレボックスと、
前記トイレボックスの側面に沿って配設され、前記洗浄水を、前記トイレボックスの上部から前記便器内に導きながら浄化する浄化槽兼用配管と、
前記洗浄水を、前記液槽から前記浄化槽兼用配管の上部に送り込む配管と、
前記浄化槽兼用配管内に収容され、前記洗浄水の汚物の分解を促進する好気性菌の微生物とを備えたことを特徴とするし尿浄化システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のし尿浄化システムにおいて、
前記浄化槽内、又は前記浄化槽兼用配管内に、空気を送り込んで曝気処理をする曝気用パイプを配設したことを特徴とするし尿浄化システム。
【請求項4】
請求項1又は2記載のし尿浄化システムにおいて、
前記トイレボックスの上部に、ソーラパネルを配設したことを特徴とするし尿浄化システム。
【請求項5】
請求項4記載のし尿浄化システムにおいて、
前記洗浄水を前記液槽から前記トイレボックスの上部に送り込む前記往路配管を、前記ソーラパネルの近傍に沿わせて配設したことを特徴とするし尿浄化システム。
【請求項6】
請求項2記載のし尿浄化システムにおいて、
前記浄化槽兼用配管は、管体の複数本を、前記トイレボックスの側面に沿って上下方向に配置すると共に、上下に隣接する各管体の端部を管継手により着脱自在に連結してなるものであることを特徴とするし尿浄化システム。
【請求項7】
請求項6記載のし尿浄化システムにおいて、
前記トイレボックスの側面に位置する前記浄化槽兼用配管の内部に、好気性菌の微生物を収容すると共に、同浄化槽兼用配管の管体端部に、空気を送り込んで曝気処理をする曝気用パイプを着脱自在に配設したことを特徴とするし尿浄化システム。
【請求項8】
請求項6記載のし尿浄化システムにおいて、
前記管継手の洗浄水通路に、数種類の浄化材をそれぞれ網目シートからなる小袋に収容した状態で、着脱自在に挿入したことを特徴とするし尿浄化システム。
【請求項9】
請求項1記載のし尿浄化システムにおいて、
前記浄化槽は、縦に長い筒体を複数本並べ、これらの各端部を複数本の連結管で順次連結することにより構成されていることを特徴とするし尿浄化システム。
【請求項10】
請求項9記載のし尿浄化システムにおいて、
前記各筒体の下部には、スラッジを排出するための排出孔が設けられ、
前記各排出孔に、常時閉のバルブを介してドレン管が連結されていることを特徴とするし尿浄化システム。
【請求項11】
請求項9記載のし尿浄化システムにおいて、
前記筒体に、浄化剤を収納した細長の袋と、ブラックライトを収納した透明パイプと、曝気用のチューブとが収納されていることを特徴とするし尿浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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