説明

し尿浄化装置とし尿浄化方法

【課題】簡易な構造で効率よくし尿浄化を行いうるし尿浄化装置とし尿浄化方法を提供する。
【解決手段】浄化槽14内の中間位に配置された浄化用フィルタ60と、浄化槽14内の、浄化用フィルタ60より下位に配置され、長さ方向に亘って多数の透孔52を有する配管50と、配管50の一端に接続され、吸引と給気を行うポンプとを備える。浄化槽14の底面は下方に突出するように傾斜し、配管50が浄化槽底面の略最下位に配置されていることが好ましい。ポンプで配管50を通じて吸引することにより、配管50内及びその周辺に溜まっているスラリーを外部に吐き出す。またスラリー吐出し後に、ポンプで空気を送り込むことにより、浄化槽14内の曝気を行う。ポンプとしては、1台で吸引と給気を行う両用のポンプか、あるいは吸引用ポンプと給気用ポンプの2台を使用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレの浄化槽として適用され、し尿を効率よく浄化するし尿浄化装置とし尿浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、し尿を含む排水等の汚水を浄化槽に配置した曝気手段を使って浄化することは一般的に知られている(特許文献1参照)。また、水分を浄化し、処理水として再利用する構成のものも知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−117727号公報
【特許文献2】特開平10−72858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、従来のし尿浄化装置には、次のような解決すべき課題があった。
すなわち、特許文献1に示される浄化装置は、生ゴミ収容用の容器本体内に、攪拌翼を放射状に有する回転軸が設けられており、容器本体内に、生ゴミの分解を促進する好気性菌、嫌気性菌、通性嫌気性菌の3種の微生物と、生ゴミの分解により生じた成分を吸着する木屑とを主成分とする分解媒体を備えたものであるが、装置が大掛かりで設置が煩雑であるという課題がある。また、従来の浄化剤のみで汚水を浄化するものは、浄化作用が不十分であるという課題がある。
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、簡易な構造で効率よくし尿浄化を行いうるし尿浄化装置とし尿浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
浄化槽内の中間位に配置された浄化用フィルタと、上記浄化槽内の、上記浄化用フィルタより下位に配置され、長さ方向に亘って多数の透孔を有する配管と、上記配管の一端に接続され、吸引と給気を行うポンプとを備えたことを特徴とするし尿浄化装置。
【0005】
ポンプで配管を通じて吸引することにより、浄化槽内における配管内部及びその周辺に溜まっているスラリーを外部に吐き出すことができる。また、スラリー吐出し後に、ポンプで空気を送り込む、すなわち給気することにより、浄化槽内の曝気を行うことができる。つまり、スラリーが大量に溜まったり、詰まって固まることにより浄化能力が大幅に低下することになるが、このような状況が起こる前に、1本の配管でスラリー吐出しと曝気処理を行うことができる。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載のし尿浄化装置において、上記浄化槽の底面が下方に突出するように傾斜し、上記配管が上記浄化槽の底面の略最下位に配置されていることを特徴とするし尿浄化装置。
【0007】
スラリーを浄化槽内底面に溜まり易くしてポンプによるスラリー吐出しを効率よく行うことができる。
【0008】
〈構成3〉
構成1に記載のし尿浄化装置において、上記浄化用フィルタは浄化効果の異なる複数の浄化剤を混在させてなるものであることを特徴とするし尿浄化装置。
【0009】
浄化槽の内部では、浄化用フィルタにより酵素等による浄化処理が行われる。浄化用フィルタは各浄化槽の適当な高さに配置される。
浄化用フィルタとしては、ガラスを含む細石、牡蠣殻等の貝殻、多孔質のセラミックボールのようにそれぞれ浄化効果の異なる複数の浄化剤を、網目状の容器に収容してなるフィルタを使用することが好ましい。
なお、浄化用フィルタを使用することにより、酵素による浄化機能が低下した場合に、酵素の交換が容易にできる。
【0010】
〈構成4〉
構成1に記載のし尿浄化装置において、上記浄化槽は、複数の浄化槽を連結すると共に、し尿の水分が隔壁を越えて順次流動するように構成され、上記複数の浄化槽に跨って上記配管を配設したものであることを特徴とするし尿浄化装置。
【0011】
複数の浄化槽内を縦走する配管により、複数の浄化槽内のスラリー吐出し及び曝気を一気に行うことができる。
【0012】
〈構成5〉
構成1ないし4のいずれかに記載のし尿浄化装置を使用して上記ポンプを駆動し、上記配管を通じて吸引を行って上記浄化槽内のスラリーを外部に吐き出した後に、同配管を通じて給気を行って上記浄化槽内の曝気処理をすることを特徴とするし尿浄化方法。
【0013】
浄化槽内におけるスラリーを外部に吐き出した後に曝気処理をするので、効率よくし尿浄化を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、実施例1のし尿浄化装置の要部を示す説明図、図2は図1の横断面図である。
図1、図2において、実施例1のし尿浄化装置は、浄化槽14内の中間位に配置された浄化用フィルタ60と、浄化槽14内の、浄化用フィルタ60より下位に配置され、長さ方向に亘って多数の透孔52を有する配管50と、配管50の一端に接続端子56を介して接続され、吸引と給気を行うポンプ58(図6)とを備えている。
【0016】
浄化槽14は、次のように構成されている。
すなわち、浄化槽14の外観は略直方体であるが、槽内部において長さ方向に延びる遮蔽板45により、底面46が下方に突出するように傾斜するように形成されている。遮蔽板45の両端縁は、略水平面であり、浄化槽14の側面との接合部において棚47を形成している。浄化槽14の内部は隔壁34、36、38、40により仕切られ、複数の各浄化槽20、22、24が構成されている。
【0017】
後述する処理水26(図6)が各浄化槽20、22、24を順次に流動するようにするために、隔壁36と40の各上端がそれぞれ隔壁34と38の上端より低くされ、また隔壁34と38の各下端が底面46より上位にあり、底面46に対して適宜間隔の隙間が形成されている。
【0018】
浄化槽14の下部に、遮蔽板45により液密に分断されて独立した2つの空洞48が設けられている。浄化用フィルタ60は、遮蔽板45の両端縁の棚47に跨って配置されている。各浄化槽20、22、24には、図4(a)に示す横型のフィルタ60が配置され、隔壁34と36及び38と40の各間隙には図4(b)に示す縦型のフィルタ60が配置されている。配管50は浄化槽14の底面46の略最下位に配置されている。
【0019】
図3は浄化用フィルタの説明図で、(a)はセラミックボールを用いた浄化用フィルタの説明図、(b)はそのセラミックボールの拡大図である。
図3(a)に示した浄化用フィルタ60は、網状の籠70の中に、セラミックボール68を収容したものである。セラミックボール68は、図3(b)に示すように、例えば、多孔質の素焼きの球により構成される。これは、多数の孔の内部に酵素を定着させて、酵素の働きを長期間継続させる役割を備える。
【0020】
この酵素の量やセラミックボール68の数量は、状況に応じて自由に選定する。なお、籠70を使用することにより、酵素による浄化機能が低下した場合に、棚47の上に載せた籠70を交換して酵素の交換が容易にできる。なお、こうした酵素を定着させて、長期間酵素の働きを助けるために、石やその他様々な多孔質素材が紹介されている。いずれの材料を使用しても構わない。
【0021】
図4は本発明に適用される浄化用フィルタの他の例を示す説明図で、(a)は横型のフィルタ、(b)は縦型のフィルタをそれぞれ示す概念図である。
図4(a)に示す浄化用フィルタ60は、それぞれ浄化効果の異なる複数の浄化剤、例えば、ガラスを含む細石を主成分とする浄化剤62と、牡蠣殻等の貝殻を主成分とする浄化剤63と、多孔質のセラミックボールを主成分とする浄化剤64とを重ね合わせ、これらを、網目状の容器に収容したものである。
【0022】
また、浄化用フィルタ60は、図4(b)に示すように、それぞれ浄化効果の異なる複数の浄化剤62、63、64を上下方向に細長く重ね合わせたものでもよい。この図4(b)に示す浄化用フィルタ60は、例えば、図1に示す浄化槽14内における隔壁34と隔壁36との間や隔壁38と隔壁40との間等の狭い隙間に挿置されて使用される。
【0023】
図5は、本発明に適用される浄化用フィルタのさらに他の例を示す説明図である。
図5に示す浄化用フィルタ60は、網状の籠65の中に、紫外線を発する蛍光管66と、それを取り囲むように、光触媒を塗布したシリカゲル(図示せず)を収納したものである。蛍光管66の両端の電極67は、籠65の上方に引き出され、図示しないリード線が接続されている。光触媒としては酸化チタン等の周知の光触媒が使用できる。
【0024】
このように構成された浄化用フィルタ60は、浄化槽14内に設置され蛍光管66を点灯すると、よく知られた光触媒の作用により処理水26の脱臭や殺菌処理ができる。籠65に収納したシリカゲルの表面全体に光触媒が塗布されていると、十分な量の光触媒により、脱臭等の効果が期待できる。
【0025】
図6は、本発明に係わるし尿浄化装置の具体的な構成を示す説明図である。
図6(a)は浄化槽全体を示す平面図、(b)はし尿浄化装置を展開して示す側面図である。
浄化槽は、図6(a)に示すように中央に固形物用の浄化槽16を配置し、その周りに処理水用の浄化槽18、20、22、24を配置した構造のものである。これらは金属板やプラスチック板を用いて箱型の構造とされる。固形物用浄化槽16の上方に、便器本体74(図7)から、排泄物の大便である固形物を通過させて浄化槽16内に落下させる開口と、その周りに、小便を含む処理水を受ける樋27とが配置されている。樋27に流れ落ちた処理水は、樋27の直線部28によって、浄化槽18に流れ込む。
【0026】
図6(b)に示すように、浄化槽18に流れ込んだ、小便を含む処理水26は、ポンプ30により汲み上げられ、浄化槽20に送り込まれる。その後は、隔壁32から44により仕切られた各浄化槽18、20、22、24において処理水26が順番に流動して浄化され、最後に浄化槽25に流れ込んだ処理水26が再び汲み上げられて便器本体74の洗浄に利用される。この便器本体74の洗浄は、例えば、使用者が使用開始する際に自動的にポンプ30にスイッチが入って開始され、所定時間経過後に終了するようにされる。
【0027】
これらの浄化槽の浄化能力を高めるために、各浄化槽の底面に溜まったスラリーを外部に吐出し、その後、各浄化槽の内部に空気を送り込み曝気処理をする。この処理のために、配管50が設けられている。配管50は、各浄化槽の隔壁32、36、40、44などを液密に貫くように配置されている。
【0028】
図6(b)に示すように、配管50の一端に接続されたポンプ58で各透孔52を通じて吸引することにより、配管50内及びその周辺に溜まっているスラリーを外部に吐き出すことができる。またスラリー吐出し後に、ポンプ58で空気を送り込むと、全ての浄化槽において、長さ方向に亘って配管に設けられた多数の透孔52からそれぞれ所定量の気泡54が噴出し、曝気処理を行うことが可能になる。
【0029】
曝気は配管50を通じて各浄化槽内の水分中に気泡54を送り込み、水分を攪拌して浄化用フィルタ及び浄化槽内に生息する好気性菌を活性化することによって、し尿成分を分解し浄化するものである。ポンプ58としては、1台で吸引と給気を行う両用のポンプか、あるいは吸引用ポンプと給気用ポンプの2台を使用してもよい。
複数の浄化槽14内を縦走する1本の配管50により、複数の浄化槽14内のスラリー吐出し及び曝気を一気に行うことができる。
【0030】
図7は、上記し尿浄化装置の具体的な使用例を示す側面図である。
図7に示すように、浄化槽14と便器本体74は、椅子76の下側に配置される。便座78は、蝶番80により椅子76に開閉可能に固定されている。浄化槽32の上部には、制御ボックス82が固定されている。この制御ボックス82には、大部分の制御機構、制御回路、ポンプ58等が収容される。
【0031】
なお、このし尿浄化装置は、例えば、便座78の蓋を開いたときに、上記処理水のポンプ30を動作させ、便座の蓋を閉じた後、所定時間経過後に処理水の流れを停止させる、といった制御を行う。さらに、同時にポンプ58を動作させて浄化槽14内のスラリー吐出し及び曝気を実行する。例えば、タイマを使ってポンプ58を動作させることによって、浄化槽14内のスラリー吐出しを行った後に、曝気を2〜3分程度実行し、その後、しばらくポンプ58の運転を休止してからスラリー吐出しと曝気を行う、というように任意のサイクルで浄化槽14内のスラリー吐出し及び曝気を行うことができる。スラリー吐出し及び曝気は、1日に1度程度、あるいは便器の使用頻度によっては1週間に1度程度のサイクルで行えばよい。
【0032】
なお、浄化槽14の下部に設けられている2つの空洞48は、水密構造とされて他の浄化槽と連通され、一時的あるいは予備の処理水の貯蔵所として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1のし尿浄化装置の要部を示す説明図である。
【図2】図1の横断面図である。
【図3】浄化用フィルタの説明図で、(a)はセラミックボールを用いた浄化用フィルタの説明図、(b)はそのセラミックボールの拡大図である。
【図4】浄化用フィルタの他の例を示す説明図で、(a)は横型のフィルタをそれぞれ示す概念図、(b)は縦型のフィルタを示す概念図である。
【図5】浄化用フィルタのさらに他の例を示す説明図である。
【図6】し尿浄化装置の具体的な構成を示す説明図で、(a)は浄化槽全体を示す平面図、(b)はし尿浄化装置を展開して示す側面図である。
【図7】し尿浄化装置の具体的な使用例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0034】
14、16、20、22、24 浄化槽
32、34、36、38、40、42、44 隔壁
46 底面
48 空洞
50 配管
52 透孔
58 ポンプ
60 浄化用フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化槽内の中間位に配置された浄化用フィルタと、
前記浄化槽内の、前記浄化用フィルタより下位に配置され、長さ方向に亘って多数の透孔を有する配管と、
前記配管の一端に接続され、吸引と給気を行うポンプとを備えたことを特徴とするし尿浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載のし尿浄化装置において、
前記浄化槽の底面が下方に突出するように傾斜し、前記配管が前記浄化槽の底面の略最下位に配置されていることを特徴とするし尿浄化装置。
【請求項3】
請求項1に記載のし尿浄化装置において、
前記浄化用フィルタは浄化効果の異なる複数の浄化剤を混在させてなるものであることを特徴とするし尿浄化装置。
【請求項4】
請求項1に記載のし尿浄化装置において、
前記浄化槽は、複数の浄化槽を連結すると共に、し尿の水分が隔壁を越えて順次流動するように構成され、前記複数の浄化槽に跨って前記配管を配設したものであることを特徴とするし尿浄化装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のし尿浄化装置を使用して前記ポンプを駆動し、前記配管を通じて吸引を行って前記浄化槽内のスラリーを外部に吐き出した後に、同配管を通じて給気を行って前記浄化槽内の曝気処理をすることを特徴とするし尿浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−130428(P2006−130428A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323174(P2004−323174)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(591235614)昭和電子工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】