説明

じゃが芋の芽取り装置

【課題】じゃが芋の芽を、高い能率の下で確実に除去することができ、ポテトチップスの製造等、大量のじゃが芋を処理する用途において好適に用い得る芽取り装置を提供する。
【解決手段】一又は複数のじゃが芋を収容可能な処理筒3,3…と、これらの処理筒3,3…の底部開口を覆って回転する回転板2,2…とを備え、処理筒3,3…内に収容したじゃが芋を回転板2,2…の回転により転動させ、じゃが芋の外表面を処理筒3,3…の内周面に設けた摩擦層3aに摺接させ、外表面に突出する芽を、外表面を覆う皮と共に除去するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、じゃが芋の外表面に突出する芽を、高能率にて除去すべく用いられる芽取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄く輪切りしたじゃが芋のスライス片を油で揚げたポテトチップスの製造においては、材料として用いるじゃが芋を前処理する必要がある。この前処理には、洗浄、皮剥き、スライス等の複数の処理が含まれるが、これらのうちの皮剥き処理は、高い能率で実施することが難しく、ポテトチップスの生産性の向上を阻害する一因となっている。
【0003】
じゃが芋の皮剥き処理においては、外表面に突出する芽の存在が問題となる。じゃが芋の芽は、毒性を有する「ソラニン」を含むことから、ポテトチップスの製造における皮剥き処理においては、その前段階で芽を確実に除去することが求められており、このことが皮剥き処理の能率向上を妨げている。
【0004】
じゃが芋の芽の除去を目的とした芽取り装置は、従来、種々提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1に開示された装置は、芽取り対象となるじゃが芋を一個単位で上下両側から保持する保持体と、該保持体に保持されたじゃが芋の外表面に対向するように配した回転ドリルとを備えている。じゃが芋は、外表面に突出する芽の位置を回転ドリルの位置と整合させるべく上下の保持体と共に回転せしめられ、回転ドリルは、整合された芽の突出部位を周辺部分を含めて穿孔することにより前記芽を除去するように動作する。
【0005】
特許文献2に開示された装置は、軸回りに回転する自転ロールと、該自転ロールの回りを遊星回転する遊星ロールとを備えるロールユニットを、夫々の軸方向と直交する方向に複数組並設して構成されている。各ロールユニットの自転ロール及び遊星ロールは、夫々の外周に相互に噛合する歯を有している。
【0006】
じゃが芋は、並び方向の一側のロールユニットの上部に供給され、各組の自転ロール及び遊星ロールの回転に応じて転動しつつ他側に向けて搬送される。じゃが芋の外表面に突出する芽は、自転ロール及び遊星ロールの外周に設けた歯の間に咬み込まれ、引き抜くように除去される。この芽取り装置は、搬送されるじゃが芋のうち基準に満たない小サイズのじゃが芋を選別除去する選別装置を兼ねており、小サイズのじゃが芋は、相隣するロールユニットの自転ロールと遊星ロールとの間から落下して除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−95870号公報
【特許文献2】特開平7−170960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の如き従来の芽取り装置のうち、特許文献1に開示された装置は、じゃが芋の芽を確実に除去し得るという利点を有する反面、上下の保持体に保持されたじゃが芋を個々に芽取りする構成であり、前述したポテトチップスの製造分野等、大量のじゃが芋の芽を高能率に除去することが要求される用途には適さない。
【0009】
また除去すべき芽の位置を検出するために、じゃが芋の外表面を撮像するCCDを用いた検出手段を備え、更に、検出手段により検出された芽の位置を回転ドリルに整合させるべく保持体を回転制御する制御手段を備えており、これらの検出手段及び制御手段を含めた装置の構成が複雑であり、この点からみても大量のじゃが芋を取り扱う用途への適用は難しい。
【0010】
一方、特許文献2に開示された装置は、ポテトチップスの製造分野への適用を前提としており、複数並設されたロールユニット上を順次搬送される間に芽取りがなされるから、大量のじゃが芋を高能率に処理することができる反面、じゃが芋の芽は、自転ロールと遊星ロールとの間に咬み込まれて除去されるようになしてあり、除去される芽は、外表面から長く延び、咬み込みが可能な長さに達した芽に限られるという問題があり、短寸の芽を含む全てのじゃが芋の芽を確実に除去することは難しい。
【0011】
また、前述したように選別装置を兼ねるように構成された場合、自転ロール及び遊星ロールの直径が選別対象となるじゃが芋のサイズによって制約され、自転ロールと遊星ロールとの間に咬み込ませ得る芽の数が更に限定されることから、残された芽を除去するための芽取り作業が別途必要となる。
【0012】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、じゃが芋の芽を、高い能率の下で確実に除去することができ、ポテトチップスの製造等、大量のじゃが芋を処理する用途において好適に用い得る芽取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1発明に係るじゃが芋の芽取り装置は、じゃが芋の外表面に突出する芽を除去すべく用いられるじゃが芋の芽取り装置であって、一又は複数のじゃが芋を収容可能な処理筒と、該処理筒の一側の開口を覆うように配設され、前記処理筒の軸回りに回転する回転板とを備え、該回転板を底板として配置した前記処理筒内に収容されたじゃが芋を前記回転板の回転によって転動させ、前記処理筒の内周面との摺接により前記芽を除去するように構成してあることを特徴とする。
【0014】
本発明において、処理筒の内部に収容されたじゃが芋は、底板を構成する回転板の回転によって転動し、外表面に突出する芽は、前記転動に伴って処理筒の内周面に摺接せしめられて除去される。処理筒は、少なくとも1個のじゃが芋を収容可能であればよい。芽取りの能率向上のためには、多くのじゃが芋を収容可能な大サイズの処理筒を用いることが望ましいが、芽取りを確実に実施するためには、夫々が同時に内周面に摺接可能な数(3個〜4個)のじゃが芋が、底板としての回転板の上面に密に平置きされ得るサイズの処理筒を用いるのが望ましい。
【0015】
また第2発明に係るじゃが芋の芽取り装置は、第1発明における処理筒が、内周面に形成された摩擦層を備えることを特徴とする。
【0016】
この発明においては、処理筒の内周面に設けた摩擦層が、回転板の回転による転動に伴って摺接するじゃが芋の外表面に摩擦抵抗を加えて芽の除去を促進する。
【0017】
また第3発明に係るじゃが芋の芽取り装置は、第2発明における摩擦層が、前記処理筒の内周面にゴムを内張りして形成してあることを特徴とする。
【0018】
この発明においては、処理筒の内周面にゴムを内張りして形成された摩擦層が、回転板の回転により転動しつつ摺接するじゃが芋の外表面に大なる摩擦抵抗を加えて芽の除去を促進する。摩擦層を構成するゴムの内張り層は柔らかく、摺接するじゃが芋の損傷を防止する作用をなすから、損傷を軽微に抑えるという条件下にて回転板の回転速度を大とし、処理能率の向上を図ることができる。
【0019】
また第4発明に係るじゃが芋の芽取り装置は、第1〜第3発明における回転板が、上表面に形成された摩擦層を備えることを特徴とする。
【0020】
この発明においては、処理筒の底板となる回転板の上表面に設けた摩擦層が、回転板上で転動するじゃが芋に摩擦抵抗を加え、じゃが芋の滑りを抑制して確実に転動させ、芽の除去を促進する。
【0021】
また第5発明に係るじゃが芋の芽取り装置は、第4発明における摩擦層が、前記回転板の上表面へのゴム張りによって形成してあることを特徴とする。
【0022】
この発明においては、回転板の上表面にゴム張りして形成された摩擦層が、回転板上のじゃが芋に大なる摩擦抵抗を加え、より確実に転動させて芽の除去を促進する。摩擦層を構成するゴム張り層は柔らかく、処理筒内に投入される際、及び回転板上での転動の際のじゃが芋の損傷を損傷を軽微に抑えることができる。
【0023】
また第6発明に係るじゃが芋の芽取り装置は、第1〜第5発明において、処理筒の内周面と回転板の外周縁との間に、前記じゃが芋から除去された芽を通過させる隙間を設けてあることを特徴とする。
【0024】
この発明においては、処理筒の内周面との摺接により除去された芽を、回転板の外周縁と処理筒の内周面との間の隙間を通して外部に送り出し、適宜に回収する。前記隙間は、回転板の外周部に設けてあり、除去された芽は、回転板の回転に伴う遠心力の作用により隙間の形成位置に集まり、確実に送り出される。
【0025】
また第7発明に係るじゃが芋の芽取り装置は、第1〜第6発明における処理筒及び回転板が、駆動源からの伝動により回転する大歯車の周上に複数配してあり、夫々の回転板は、大歯車の周上の異なる位置に噛合する各別の小歯車により回転駆動される構成としてあることを特徴とする。
【0026】
この発明においては、モータ等の駆動源からの伝動により回転する大歯車の周上の異なる位置に噛合する小歯車の夫々が駆動する回転板と、これらの回転板を底板とする処理筒を備える処理ユニットを複数組設け、単一の駆動源からの伝動により夫々の処理ユニット内でのじゃが芋の芽取りを併行して行わせ、簡素な構成により高能率での芽取りを実現する。
【0027】
更に第8発明に係るじゃが芋の芽取り装置は、第7発明における複数の処理筒の内部に選択的にじゃが芋を投入する投入手段と、前記複数の処理筒の底部開口を選択的に開放する開放手段とを備えることを特徴とする。
【0028】
この発明においては、投入手段が、大歯車の周上に並ぶ複数の処理筒の内部に選択的にじゃが芋を投入し、開放手段が、回転板により塞がれた複数の処理筒の底部開口を選択的に開放する。投入手段により処理筒に投入されたじゃが芋は、夫々の処理筒の内部で回転板の回転により転動する間に芽取りされ、芽取りを終えたじゃが芋は、開放手段の動作により開放される処理筒の下部開口から落下して回収される。
【0029】
投入手段は、例えば、複数の処理筒の配設域の上部を覆うじゃが芋の受け皿と、該受け皿を複数の処理筒の配設ピッチ単位で間欠的に回転させる回転手段とを備え、受け皿の一部に設けたじゃが芋の投入穴を回転手段の動作により夫々の処理筒の上部に位置させ、受け皿上のじゃが芋を、投入穴の下部に位置する処理筒の内部に落下投入せしめる構成とすることができる。
【0030】
また開放手段は、例えば、前記大歯車の周上に並ぶ複数の処理筒に押し力を加える押圧手段を備え、該押圧手段の動作により押された処理筒が底板を構成する回転板の上部から離反し、前記処理筒の底部開口が開放される構成とすることができる。押圧手段は、夫々の処理筒に対応させて複数設けてもよく、また、複数の処理筒の配設周上で位置を変える単一の押圧手段を備え、該押圧手段が、整合する位置にある処理筒に押し力を加えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の第1発明に係るじゃが芋の芽取り装置においては、処理筒の内部に収容したじゃが芋が、底板を構成する回転板の回転によって転動し、転動するじゃが芋の外表面が処理筒の内周面に繰り返し摺接するから、外表面に突出する芽を、突出長が短いものを含めて、高い能率の下で確実に除去することができ、大量のじゃが芋の芽取りを必要とする用途に好適に適用することができる。また、じゃが芋の外表面を覆う皮も、芽取りの過程で一部除去されるから、後に実施される皮剥き工程も簡素化することができる。
【0032】
また第2発明に係るじゃが芋の芽取り装置においては、処理筒の内周面に形成した摩擦層がじゃが芋の外表面に摩擦抵抗を加えるから、外表面に突出する芽をより確実に除去することができ、第3発明に係るじゃが芋の芽取り装置においては、摩擦抵抗が大きく、弾性を有するゴムを処理筒の内周面に内張りして摩擦層を構成してあるから、じゃが芋の外表面に突出する芽を一層確実に除去することができる上、じゃが芋の損傷を防止することができる。
【0033】
また第4発明に係るじゃが芋の芽取り装置においては、回転板の上表面に形成した摩擦層が回転板上で転動するじゃが芋に摩擦抵抗を加えるから、回転板上のじゃが芋は、滑りを生じることなく確実に転動し、処理筒の内周面との摺接による芽の除去を良好に行わせることができ、第5発明に係るじゃが芋の芽取り装置においては、回転板の上表面の摩擦層を、摩擦抵抗が大きく、弾性を有するゴム製としたから、回転板上でのじゃが芋の転動をより確実に行わせることができる上、処理筒内に投入される際、及び回転板上での転動の際のじゃが芋の損傷を防止することができる。
【0034】
また第5発明に係るじゃが芋の芽取り装置は、第4発明における摩擦層が、前記回転板の上表面へのゴム張りによって形成してあることを特徴とする。
【0035】
この発明においては、回転板の上表面にゴム張りして形成された摩擦層が、回転板上のじゃが芋に大なる摩擦抵抗を加え、より確実に転動させて芽の除去を促進する。摩擦層を構成するゴム張り層は柔らかく、処理筒内に投入される際、及び回転板上での転動の際のじゃが芋の損傷を損傷を軽微に抑えることができる。
【0036】
また第6発明に係るじゃが芋の芽取り装置においては、回転板の外周縁と処理筒の内周面との間に隙間を設けたから、この隙間を経て処理筒の内部で除去された芽を、同時に除去された皮を含めて外部に送り出すことができ、処理筒の内部に除去された芽及び皮が滞留し、次なるじゃが芋の芽取りを阻害する虞れがない。
【0037】
また第7発明に係るじゃが芋の芽取り装置においては、大歯車に周方向の異なる位置で噛合する複数の小歯車の夫々により回転板を回転駆動し、これらの回転板を底板とする処理筒を複数設けたから、複数の処理筒の内部でじゃが芋の芽取りを併行して実施し、単一の駆動源からの伝動により高能率での芽取りを行わせることができる。
【0038】
更に第8発明に係るじゃが芋の芽取り装置においては、複数の処理筒の内部にじゃが芋を選択的に投入する投入手段と、複数の処理筒の底部開口を選択的に開放する開放手段とを設けたから、投入手段の動作により処理筒に投入したじゃが芋を芽取りした後、開放手段の動作により開放される底部開口から落下させて回収するまでの過程を自動化し、高能率での芽取り作業を実施することが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るじゃが芋の芽取り装置の縦断面図である。
【図2】処理筒及び回転板の動作説明のための斜視図である。
【図3】じゃが芋を収容した処理筒の拡大断面図である。
【図4】図3のIV−IV線による横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係るじゃが芋の芽取り装置(以下、本発明装置という)の縦断面図、図2は、処理筒及び回転板の動作説明のための斜視図である。
【0041】
図1に示すように本発明装置は、上面を略水平として設置された基台1を備えている。基台1の上面中央部には、大径円板の外周に歯を形成してなる大歯車10が配してある。大歯車10は、基台1の下部に固定された駆動モータ11の出力端に連結され、該駆動モータ11の駆動により、基台1の上面と平行をなす面内にて回転するようになしてある。
【0042】
大歯車10の周囲には、複数の小歯車20,20…が等配されている。小歯車20,20…は、基台1の上面に略垂直に立ち上がる各別の支軸21,21…により回転自在に支持され、夫々の支持位置にて大歯車10の外周の歯部に噛合させてある。これらの小歯車20,20…の上面には、回転板2,2…が同軸上に設けてある。図1中の22,22…は、支軸21,21…の軸受を内蔵する軸受ボックスを示している。
【0043】
小歯車20,20…及び回転板2,2…の上部には、円筒形をなす処理筒3,3…が配してある。これらの処理筒3,3…は、上下一対のガイドレール30,30により、これらの案内下にてスライド移動可能に支持されている。ガイドレール30,30は、基台1の上部に連設された外装ハウジング12の内面に基部を固定し、内側に向けて略水平に延設されている。ガイドレール30,30の先端は、回転板2,2…の配設周上に達しており、処理筒3,3…は、ガイドレール30,30の先端側の処理位置と、ガイドレール30,30の基端側の開放位置との間で移動することができる。
【0044】
図1の右側には、処理位置に移動した処理筒3を実線により示し、開放位置に移動した処理筒3を2点鎖線により示してある。回転板2は、処理位置に移動した処理筒3は、対応する回転板2の上部に略同軸上に整合し、該回転板2は、処理筒3の底部開口を覆う底板を構成する。開放位置に移動した処理筒3は、回転板2の上部から外れ、該処理筒3の底部開口は開放される。
【0045】
図1の左側には、処理筒3の断面が示されている。処理筒3は、金属製又は高強度の樹脂製の薄肉の円筒体であり、該処理筒3の内周面には、摩擦層3aが形成してある。摩擦層3aは、大なる摩擦係数を有する層であればよく、例えば、処理筒3の内周面に適宜の厚さを有してゴムを内張りして構成されている。
【0046】
以上の如く構成された処理筒3,3…の上部には、投入パン4が設けてある。投入パン4は、その上部に適量のじゃが芋を保留し得るように構成された皿状体であり、処理筒3,3…の配設域の全体を覆うように配してあり、前記大歯車10と同軸上での回転自在に支持されている。図1には、投入パン4の支持構造の図示を省略してあるが、この支持は、前記外装ハウジング12又は大歯車10を支持体として適宜に実現することができる。
【0047】
投入パン4の底板には、外周面の全周に歯を形成してなる平歯車40が設けてある。該平歯車40は、外装ハウジング12の一部に固定支持された投入モータ41の出力端のピニオン42に噛合させてあり、投入パン4は、投入モータ41の駆動により、水平面内にて所定ピッチ毎に間欠回転するように構成されている。
【0048】
以上の如き投入パン4の底板には、投入口43が開設されている。図2には、投入パン4の底板が図示されており、本図に示すように投入パン4の投入口43は、前述した処理位置に並ぶ処理筒3,3…の配設周上の一か所に整合するように、処理筒3の上部開口に対応する大きさを有して開設されている。
【0049】
このように開設された投入口43は、前述したように所定ピッチ毎に生じる投入パン4の間欠回転に応じて位置を変え、配設周上に並ぶ複数の処理筒3,3…の上部に順次整合する。投入パン4の底板上には、適量のじゃが芋5,5…が供給されており、これらのじゃが芋5,5…は、図2に示すように、投入口43から落下し、下部に整合した処理筒3,3…の内部に選択的に投入される。
【0050】
図1、2に示す投入口43は、単純な開口として示してあり、この場合、投入パン4上のじゃが芋5,5…は、投入口43からの自然落下により処理筒3,3…内に投入されるが、投入口43に適宜の開閉手段を付設し、この開閉手段を、いずれかの処理筒3,3…の上部に整合した場合にだけ開とする構成としてもよい。この構成によれば、各処理筒3,3…内に必要個数のじゃが芋5,5…の確実に投入することができる。
【0051】
投入パン4へのじゃが芋5,5…の供給は、図示しない供給装置によって行わせてもよく、また作業者の人手によって行わせてもよい。図に示す投入パン4は、平坦な底板を有しているが、底板を投入口43に向けて傾斜させ、底板上のじゃが芋5,5…を投入口43に集めるように構成することもできる。
【0052】
以上の実施の形態においては、投入口43を有する投入パン4と、該投入パン4を間欠回転させる投入モータ41とが、複数の処理筒3,3…の内部に選択的にじゃが芋5,5…を投入する投入手段を構成しているが、この投入手段は、他の適宜の構成により実現することができる。例えば、実施の形態に示す投入パン4の周上に、径方向外向きに突出する押圧部を投入口43,43…と同数設け、これらの突起をエアシリンダにより順次押圧して、投入パン4を所定角度毎に回転させる構成とすることができ、更には、じゃが芋5,5…を連続供給する供給パイプを、末端に設けた供給口を各処理筒3,3…の上部に位置変え可能に設け、この供給パイプの供給口から処理筒3,3…内にじゃが芋5,5…を直接投入するように構成することができる。
【0053】
以上のように処理筒3内に投入されるじゃが芋5,5…は、底板を構成する回転板2により下部を支えられ、処理筒3の内部に収容される。図3は、じゃが芋5,5…を収容した処理筒3の拡大断面図、図4は、図3のIV−IV線による横断面図であり、じゃが芋5,5…は、2点鎖線により示してある。
【0054】
回転板2は、前述の如く駆動モータ11の駆動により回転しており、処理筒3内に収容されたじゃが芋5,5…は、回転板2の回転に伴って転動し、転動するじゃが芋5,5…の外表面は、処理筒3の内周面に摺接せしめられ、外表面に突出する芽が除去される。処理筒3の内周面には、摩擦層3aが形成してある。この摩擦層3aは、摺接するじゃが芋5,5…の外表面に大なる摩擦抵抗を加えるから、これらのじゃが芋5,5…の芽を確実に除去することができる。またこのとき、じゃが芋5,5…の皮も一部除去されるから、その後に実施される後に実施される皮剥きの工程も簡素化することができる。
【0055】
摩擦層3aは、前述したように処理筒3の内周面にゴムを内張りして形成することができる。ゴム製の摩擦層3aは、弾性を有することから、大なる摩擦抵抗を加え得ると共に、外表面を摺接させつつ転動するじゃが芋5,5…の衝突を緩和し、これらの損傷を防止する作用をなす。従って、回転板2の回転速度を高くすることができ、処理筒3の内部での芽取りに要する時間を短縮し、能率向上を図ることができる。
【0056】
なお回転板2の上表面には、該上表面でのじゃが芋5,5…の転動を良好に行わせるために、処理筒3の内周面の摩擦層3aと同様、ゴム張りにより形成された摩擦層を設けるのが望ましい。ゴム製の摩擦層は柔らかく、上部から投入されるじゃが芋5,5…の衝突を緩和するから、回転板2上での転動時に加えて、処理筒3内への投入時のじゃが芋5,5…の損傷を防止することができる。
【0057】
図4に示すように、処理筒3の底板を構成する回転板2の外径は、処理筒3の内径よりも小さく、処理筒3の内周面と回転板2の外周縁との間には、全周に亘って隙間δが形成されている。従って、処理筒3の内部において前述の如く除去される芽は、同時に除去された皮と共に、前記隙間δを経て外部に送り出されることとなり、処理筒3の内部に除去された芽及び皮が滞留することがなく、順次投入されるじゃが芋5,5…の処理を連続して行わせることができる。
【0058】
芽取りを確実に行わせるためには、処理筒3内に投入されるじゃが芋5,5…の数は、夫々が同時に処理筒3の内周面及び回転板2の上面に接触可能な数とする必要があり、具体的には、図4に示すように、底板としての回転板2の上に密に平置きされた状態で夫々が処理筒3の内周面に接触し得るように、図示の3個又は4個程度を同時に投入可能に構成するのが望ましい。
【0059】
本発明装置は、以上の如く各処理筒3の内部で芽取りされたじゃが芋5,5…を外部に取り出すために、図1に示すように、投入パン4の下面の中央部に固定した押圧シリンダ6を備えている。押圧シリンダ6は、例えば、高圧空気の給排に応じて投入パン4の径方向に進退動作する出力ロッド60を有するエアシリンダである。
【0060】
押圧シリンダ6は、図1中に実線にて示すように、退入位置にある出力ロッド60の先端が前述した処理位置にある処理筒3の内側に対向するように位置決めされている。出力ロッド60は、この退入位置から図1中に2点鎖線により示す進出位置にまで進出する。処理筒3は、進出する出力ロッド60により外向きに押圧され、前述したように、上下一対のガイドレール30,30により案内されて開放位置に移動し、該処理筒3の底部開口は開放される。
【0061】
押圧シリンダ6は、投入パン4と共に回転して位置を変え、配設周上に並ぶ複数の処理筒3,3…のいずれかの内側に順次整合し、夫々の整合位置にて出力ロッド60を進出動作して対応する処理筒3を開放位置に移動させる。図2中の白抜矢符は、投入パン4の回転方向を示しており、押圧シリンダ6は、投入口43が整合する処理筒3の回転方向下流側に相隣する処理筒3を押し出し、該処理筒3を開放するように動作する。
【0062】
処理筒3,3…の内部には、前述の如く、投入口43が上部に整合したときじゃが芋5,5…が投入される。各処理筒3に投入されたじゃが芋5,5は、回転板2の回転によって処理筒3の内周面に摺接することにより芽取り処理された後、投入口43の下流側に位置したとき、押圧シリンダ6の動作により開放される処理筒3の底部開口から落下して回収される。
【0063】
押圧シリンダ6の動作により開放位置に移動した処理筒3は、処理位置に復帰して投入口43に整合し、該投入口43から再度投入されたじゃが芋5,5…に対する芽取り処理が繰り返して実行される。処理筒3の処理位置への復帰は、例えば、投入パン4にガイド手段を設け、このガイド手段が投入パン4の回転に応じて開放位置にある処理筒3に作用し、復帰位置に押し戻す構成とする等、適宜の構成により実現することができる。
【0064】
図1に示すように外装ハウジング12には、夫々の処理筒3,3…の下方に位置して回収穴13,13…が開設してあり、各処理筒3,3…から落下する処理済みのじゃが芋5,5…は、これらの回収穴13,13…を経て外部に送り出して回収する。なお回収穴13,13…の夫々には、落下するじゃが芋5,5…を受け止めて案内する適宜の案内部材を設け、各処理筒3,3…から順次落下するじゃが芋5,5…を、例えば、一箇所に集めて回収する構成とすることができる。
【符号の説明】
【0065】
2 回転板
3 処理筒
3a 摩擦層
4 投入パン(投入手段)
5 じゃが芋
6 押圧シリンダ(開放手段)
10 大歯車
11 駆動モータ
20 小歯車
41 投入モータ(投入手段)
43 投入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
じゃが芋の外表面に突出する芽を除去すべく用いられるじゃが芋の芽取り装置であって、
一又は複数のじゃが芋を収容可能な処理筒と、該処理筒の一側の開口を覆うように配設され、前記処理筒の軸回りに回転する回転板とを備え、該回転板を底板として配置した前記処理筒内に収容されたじゃが芋を前記回転板の回転によって転動させ、前記処理筒の内周面との摺接により前記芽を除去するように構成してあることを特徴とするじゃが芋の芽取り装置。
【請求項2】
前記処理筒は、内周面に形成された摩擦層を備える請求項1に記載のじゃが芋の芽取り装置。
【請求項3】
前記摩擦層は、前記処理筒の内周面にゴムを内張りして形成してある請求項2に記載のじゃが芋の芽取り装置。
【請求項4】
前記回転板は、上表面に形成された摩擦層を備える請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のじゃが芋の芽取り装置。
【請求項5】
前記摩擦層は、前記回転板の上表面へのゴム張りによって形成してある請求項4に記載のじゃが芋の芽取り装置。
【請求項6】
前記処理筒の内周面と前記回転板の外周縁との間に、前記じゃが芋から除去された芽を通過させる隙間を設けてある請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のじゃが芋の芽取り装置。
【請求項7】
前記処理筒及び回転板は、駆動源からの伝動により回転する大歯車の周上に複数配してあり、夫々の回転板は、大歯車の周上の異なる位置に噛合する各別の小歯車により回転駆動される構成としてある請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載のじゃが芋の芽取り装置。
【請求項8】
前記複数の処理筒の内部に選択的にじゃが芋を投入する投入手段と、前記複数の処理筒の底部開口を選択的に開放する開放手段とを備える請求項7に記載のじゃが芋の芽取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−161961(P2010−161961A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5825(P2009−5825)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【特許番号】特許第4309470号(P4309470)
【特許公報発行日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(506145957)光洋電機工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】