説明

すでに呈色状態にあるフォトクロミック組成物を用いて感光性メイクアップでメイクアップをする方法

本発明は、
・ケラチン物質に、すでに少なくとも部分的に呈色状態にある熱安定性フォトクロミック剤を含むフォトクロミック組成物を適用する
ことを含む、ケラチン物質を感光性メイクアップでメイクアップする方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間のケラチン物質のメイクアップ、特に皮膚、唇ならびに、爪または髪などの外皮のメイクアップに関する。
【背景技術】
【0002】
メイクアップをする際、通例、身体または顔に被着される色つきの物質を使用する。
【0003】
最終結果は、使用する製品、特に採用される成分と配合技術の品質に左右されるだけでなく、利用者の器用さにも左右される。
【0004】
利用者によっては、より器用になってメイクアップの仕上がりが改善されることを期待しつつ、練習を積む。自分たちには練習をうまくこなすだけの技量はないと考えたり、あるいはそのために割く時間がないという理由から、そういうことをしない人もいる。
【0005】
最終結果は、以下の3つの質に左右される。
・人が生成しようとするイメージの質
・人の手の動きの質や人の視界の質に依存する人の器用さ
・メイクアップ道具および/またはカラーディスペンサの質。
【0006】
何年もの間、メイクアップ道具の改善には多大なる尽力がなされてきた。特に、使用するのに一層人間工学的になり、被着される材料の品質も改善されている。
【0007】
しかしながら、上述したように、最終結果は、人の器用さや使用する図形モデルにも左右される。
【0008】
これらの他の2つの要素を進歩させるのは極めて困難であるため、メイク仕上げの結果が望まれているほどは進歩していないということになる。
【0009】
図形モデルが適していないと、メイクアップの結果もそれほど魅力的ではないか、魅力に欠けることすらあることが周知である。
【0010】
また、人が十分な器用さを持たない場合、メイク仕上げが成功しないことも周知である。
【0011】
プロフェッショナルのメイクアップアーティストによるサービスを求めるという解決策が存在する。この解決策は、足を運ばなければならない上に費用が高いため、ほとんどの人々の状況には適さない。
【0012】
もうひとつの解決策に、プロフェッショナルのメイクアップアーティストなどの専門家と知り合って、アドバイスを求めるというものがある。専門家が図形モデルを推薦することもあろう。メイクアップを指南する書籍を参考にすることも可能である。この方法には、人がそのメイクアップを施すだけの器用さを持ち合わせていない場合、その方法は要領を得ないものとなり、あるいはフラストレーションの原因にすらなるため、極めて制約が多い。
【0013】
それによって、たとえば自分の目が悪くなったり手の器用さが若干失われたりした場合に、多くの人々がメイクアップを施さなくなったり、多くの人々にメイクアップを施すのをあきらめさせてしまう。
【0014】
メイクアップを施す人もいるが、メイクアップの可能性の大半を本当の意味で活用できているわけではなく、洗練されたメイク仕上げを試みて失敗するリスクを取るより、辛うじて見られる効果を生むことのほうを好む。
【0015】
また、洗練されたメイク仕上げを作り出す器用さを持ち合わせてはいても、多数の人々は時間がなくてそこまではしていない。
【0016】
解決策のひとつに、人が特に器用でなくても、短時間で失敗の危険性もなく、どのようなタイプのメイク仕上げでも作り出せるようにすることがあげられる。
【0017】
感光性メイクアップを使用すると、満足のいくメイクアップ結果を得られることが発見された。結果の精度は、特定の器用さと練習のどちらも必要とせずに、利用者が従来のメイクアップで通常得るものを越える。
【0018】
さらに、感光性メイクアップでは、メイクアップで通常許容される範囲を超える色彩効果を生成することができる。これは、従来のメイクアップパターンを模したどのようなパターンであってもよいし、文字、ロゴなどであってもよい。
【0019】
感光性メイクアップは、光放射、たとえばUV光線によって呈色でき、少なくとも1時間、照射と関連した外見の変化を保持する、少なくとも1種類のフォトクロミック組成物を用いることに立脚している。
【0020】
従来技術では、感光性メイク仕上げを作り出すために、少なくとも1種類のフォトクロミック組成物を、少なくとも1つの層の形で処理対象ゾーンに被着させる。
【0021】
フォトクロミック組成物を適用する際、これは非呈色状態にあるが、使用する成分次第で色つきの場合も無色の場合もある。
【0022】
フォトクロミック組成物の層への照射は、不均一に照射することで、選択的に実施してもよい。よって、特定の領域を呈色させる必要がなく、他の領域および/またはいくつかの領域をさまざまな度合いで呈色させて、異なる強度の色を得るようにしてもよい。
【0023】
使用する光エネルギは、比較的低いままであり、皮膚に日焼けを発生させることはない。
【0024】
感光性メイクアップでメイクアップをするひとつの方法が、本明細書に援用する欧州特許出願公開第0 938 887号明細書に記載されており、皮膚に適用される熱安定性フォトクロミック剤が採用されている。この公報には、ジアリールエテンおよびフルギドから選択されるフォトクロミック剤について記載されている。
【0025】
米国特許出願公開第2007/0038270−A1号明細書には、感光性組成物をパターンで皮膚に被着させるか、生成対象となるパターンに相当する光に曝露させるさまざまな方法が開示されている。
【0026】
国際特許出願公開第WO 2008/144787号パンフレットには、人間の皮膚に可視パターンを作り出す方法が開示されている。この方法では、UV光を放出するアドレス可能なマトリクスイメージャを用いて、皮膚を選択的に日焼けさせる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の特定の目的は、特に器用である必要なく、実用的かつ迅速な方法で、メイク仕上げを作り出せるようにすることにある。
【0028】
本発明の例示的な実施形態は、
・ケラチン物質に、少なくとも部分的に呈色状態にあるフォトクロミック剤を含むフォトクロミック組成物を適用する
ことからなるステップを含む、ケラチン物質を感光性メイクアップでメイクアップする方法を提供するものである。
【0029】
実用例では、本発明は、適用前に組成物をex situにて多かれ少なかれ呈色させることで、その色を修正できる可能性を提示するものであってもよい。
【0030】
本発明の実用例では、フォトクロミック剤は、光放射に曝露されることで、非呈色状態に変化するものであってもよい。
【0031】
よって、この方法は、
・フォトクロミック剤の部分的または完全な光失活後に、フォトクロミック組成物の外見を変化させるために、このようにメイクアップされるゾーンに前記放射線を当てること
からなるステップをさらに含むものであってもよい。
【0032】
感光性メイクアップは、徐々に起こりやすい組成物の少なくとも部分的な消色を引き起こすものであってもよく、フォトクロミック剤は、場合により、これを呈色状態に変化させる放射線に対する感受性がさらに高いまたはその逆のものであってもよい。パターンを作り出すために、上述したゾーンに前記放射線を不均一に当ててもよい。
【0033】
可視光を使用して組成物を消色し、これによってメイクアップ結果の確認を容易にしつつ、前記メイクアップを施してもよい。また、本発明は、皮膚がUV光線に曝露されるのを回避することを可能にするものである。
【0034】
また、本発明は、呈色がin situで生じる必要がなく、ex situでは起こり得るために、呈色されるのに高い光強度および/または高エネルギ波長、たとえばUVBを必要とするフォトクロミック剤を使用できるようにするものである。
【0035】
高線量では潜在的に有害な放射線に対する皮膚の曝露を回避することに加え、外側のUV光線に対する感受性が低めの組成物を使用してもよい。これは、呈色されるために高線量のUVが必要であり、利用者が感光性メイクアップ結果をさらに長い時間にわたって保てるようにしやすいためである。
【0036】
特に適用時、フォトクロミック組成物は、すでに少なくとも部分的に呈色状態にあり、かつ、呈色状態での色が異なる少なくとも2種類のフォトクロミック剤を含むものであってもよく、感光性メイクアップに使用される放射線が、たとえば、フォトクロミック剤を異なる方法で光失活させるよう、たとえば、一方のフォトクロミック剤を選択的に非呈色状態に変化させるよう選択される波長のものである。これによって、組成物を無色にしなくてもその色を修正することが可能になる。
【0037】
前記放射線は、可視ドメイン(400nm[ナノメートル]〜700nm)内に包含される主要波長を含むものであってもよい。放射線は、アドレス可能なマトリクスイメージャによって放出されることで、広範囲にわたる画像およびパターンを組成物に容易に作成できる可能性を提示するものであってもよい。
【0038】
前記放射線は、利用者がフォトクロミック組成物に向ける、ポータブル装置によって放出されるものであってもよい。
【0039】
本発明の他の例示的な実施形態は、すでに少なくとも部分的に呈色された少なくとも1種類の熱安定性フォトクロミック剤を含有する化粧用フォトクロミック組成物を含むおよび/または分注する包装装置を提供するものであり、フォトクロミック剤は、場合により、少なくとも主要波長が可視ドメイン(400nm〜700nm)、好ましくは近UVの外側の可視ドメイン(400nm〜440nm)に包含される放射線への曝露時に非呈色状態に変化する。
【0040】
「少なくとも部分的に呈色される」という表現は、考慮対象となるフォトクロミック剤(単数または複数)全量のうち、いくらかが呈色状態にはないことを意味するものと理解されるべきである。呈色状態にある重量比でのパーセンテージに応じて、色強度が、たとえば、強くなったり弱くなったりすることもある。
【0041】
装置は、フォトクロミック組成物を適用するためのアプリケーター部材を含むものであってもよい。
【0042】
装置は、装置内および/または組成物が分注される際に、フォトクロミック剤を呈色させる光に、このフォトクロミック剤を曝露できるようにする光源を含むものであってもよい。
【0043】
装置は、ケラチン物質に適用されるフォトクロミック組成物の層に、この組成物の少なくとも1種類のフォトクロミック剤を呈色状態から非呈色状態に変化させる光を当てるための光源を含むものであってもよい。一例として、このような光源は、1以上の発光ダイオード(LED)またはレーザダイオードを含む。
【0044】
例示的な実施形態では、フォトクロミック組成物は、装置内に包装されると周囲光から遮断される。
【0045】
また、本発明は、
・包装装置に含まれ、すでに少なくとも部分的に呈色状態にある少なくとも1種類のフォトクロミック剤を有する化粧用フォトクロミック組成物と、
・フォトクロミック組成物の適用後に、このフォトクロミック組成物に、少なくともフォトクロミック剤を呈色状態から非呈色状態に変化させる光を当てるための照射器と、
とを含む、キットを提供するものでもある。
【0046】
フォトクロミック組成物
本発明によれば、好適なフォトクロミック組成物を用いて、感光性メイク仕上げを作り出す。
【0047】
本発明のフォトクロミック組成物は、感光性メイク仕上げを作り出すのに適した1種類以上のフォトクロミック剤を含有する。本明細書では、「感光性メイクアップ」という用語は、呈色状態にある少なくとも1種類のフォトクロミック剤を部分的にまたは完全に失活させてメイク仕上げを作ることを包含する。
【0048】
フォトクロミック剤は、光放射によって呈色されるのに適している、すなわち、放射線の影響下で外見が変化する。本発明に用いられるフォトクロミック剤(単数または複数)は、好ましくは熱安定性フォトクロミック剤である。
【0049】
組成物をケラチン物質に適用するにあたってフォトクロミック剤(単数または複数)が、少なくとも部分的にすでに呈色状態のフォトクロミック組成物を使おうとする場合、任意に、たとえばこれを収容する容器のエンクロージャ内あるいは分配オリフィスまたは適用部材など、フォトクロミック組成物を光放射に曝露するのに適した光源を含む包装装置を用いることが可能であり、この光放射は、フォトクロミック剤(単数または複数)を呈色させるのに適した波長のものである。
【0050】
フォトクロミック組成物は、たとえば、呈色状態で色を生成できるフォトクロミック剤(たとえば、非呈色状態では無色)を含むものであってもよいし、呈色状態でそれぞれ異なる色を生み出すが、非呈色状態では別の色または無色であるフォトクロミック剤の混合物を含むものであってもよい。
【0051】
一例として、たとえば、呈色状態で黄色のフォトクロミック剤が大きな比率を占める、黄色、青、マゼンタのそれぞれのフォトクロミック剤の混合物を含むフォトクロミック組成物を用いることが可能な場合があり、この比率は、たとえばすべてのフォトクロミック剤が呈色状態のときに、皮膚に近い色相が得られるように選択される。よって、本発明の一例では、黄色、マゼンタ、青のそれぞれのフォトクロミック剤の混合物を、相対比率約50%、35%、15%で使用する。
【0052】
フォトクロミック組成物が複数のフォトクロミック剤を含む場合、それぞれ異なる主要波長の放射線に曝露することで呈色されるフォトクロミック剤を用いることが可能であるため、フォトクロミック組成物を曝露する放射線の波長を選択することで、ある色ではなく別の色を呈色させることが可能である。また、それぞれの主要波長に曝露されると消色されるフォトクロミック組成物にてフォトクロミック剤を用いることも可能であり、これは、フォトクロミック組成物を消色させるのに用いる光の特徴を選択することで、ある色ではなく特定の色を消色できることを意味する。
【0053】
フォトクロミック剤の熱安定性の測定
フォトクロミック剤が熱安定性であるか否かを判断するための試験は以下のとおりである。最初は非呈色状態で色Eiの試験対象となるフォトクロミック剤に、1J/cm2[平方センチメートルあたりのジュール]で1分間、UV光線を照射した後、MINOLTA CM 2002(d/8、SCI、D65、2°観測者)などの分光測色計を用いて、その最終色Efを判断する;CIE Lab空間で色差
【数1】

が得られ、これが最大呈色に相当する。次に、前記化合物を完全な暗闇にて25℃で60分間放置した後、上記の方法でその色Erを求める。ΔEi,rの新たな値が、最大呈色に対応するΔEi,fの値の少なくとも50%である場合、その化合物は熱安定性であるとみなされる。
【0054】
フォトクロミック組成物は、ドープ酸化チタン、スピロピラン、スピロオキサジンまたはクロメンなどの熱可逆性フォトクロミック化合物を含まないものであってもよい(これらの化合物の特定の形態が熱安定性フォトクロミック剤の定義に包含される場合を除く)。
【0055】
本発明で使用されるフォトクロミック剤(単数または複数)は、有利なことに、初期照射I1下で、この作用剤またはこれらの作用剤が、実質的に無色またはかすかに色つきの状態から始まって色がつくことで呈色され;第1の照射とは異なる第2の照射I2下で、この作用剤またはこれらの作用剤が、実質的に無色またはかすかに色つきに戻るようなものである。本発明を実施するにあたり、照射I1はUV照射(290nm〜400nm)、特にUVA(320nm〜400nm)および/またはUVB、好ましくは近UV(400nm〜440nm)であるのに対し、照射I2は、白色光などの可視域の照射である。
【0056】
呈色されると、熱安定性フォトクロミック剤は、その状態を、たとえば4時間より長くなど、1時間よりも長く可視的に保つことができる。
【0057】
この結果を得ることができるフォトクロミック剤の好ましい例に、ジアリールエテンファミリに属する化合物ならびに、フルギドファミリに属する化合物がある。しかしながら、この一覧は限定的なものではない。当業者であれば、熱安定性フォトクロミック剤の例について記載した欧州特許出願公開第0 938 887号明細書を参照できよう。
【0058】
ジアリールエテンは、以下の式(I):
【化1】

で表すことができ、式中、ラジカルR1およびR2は二重結合に対して常に「cis」である。
【0059】
これらのラジカルR1およびR2は、互いに独立に、C1〜C16アルキルラジカル(フッ素化または過フッ素化されたものであってもよい)およびニトリルから選択されるものであってもよい。
【0060】
特に、以下の式
【化2】

で表される化合物があげられる。
【0061】
また、5個または6個の炭素原子を含む環、(フッ素化または過フッ素化されたものであってもよい)、特に以下の式:
【化3】

で表される環あるいは、炭素原子数5の無水物環、特に以下の式
【化4】

で表される環を形成するものであってもよく、式中、Xは酸素原子または−NR3ラジカルであればよく、R3はC2〜C16アルキルおよび/またはヒドロキシアルキルラジカルを表す。
【0062】
ラジカルAおよびBは、等しくても異なっていてもよく、特に、以下の構造
【化5】

を有する5原子環または5または6原子二環を表すものであってもよく、式中、
・XおよびYは、同一であっても異なっていてもよく、酸素原子、硫黄原子、硫黄の酸化形態、窒素原子またはセレニウム原子を表すものであってもよく;
・ZおよびWは、同一であっても異なっていてもよく、炭素原子または窒素原子を表すものであってもよく;
・ラジカルR3〜R12は、同一であっても異なっていてもよく、水素、直鎖または分枝鎖のC1〜C16アルキル基またはアルコキシ基、ハロゲン、直鎖または分枝鎖のフッ素化または過フッ素化C1〜C4基、カルボキシル基、C1〜C16アルキルカルボキシル基、C1〜C16モノまたはジアルキルアミノ基、ニトリル基を表すものであってもよく;フェニル基、ナフタレン基または複素環(ピリジン、キノリン、チオフェン)が、前記ラジカルで置換されていてもよい。
【0063】
しかしながら、基AおよびBは、両方が以下のようなインドール型の構造と等しいものであってはならない。
【化6】

【0064】
基AおよびBは、1以上の二重結合によって環から分離されていてもよい。
【0065】
二重結合と残基AおよびBとの間の結合部分に対してオルトの位置には、常に、CH3、CNまたはCOOEtなどの水素以外の基がなければならず、すなわち、基R3またはR5、R4、R7、R8が水素以外でなければならない。
【0066】
取り上げることのできる一例に、404nm〜436nmでの照射後に以下のように無色から赤に変わる(546nm〜578nmで戻る)以下の化合物がある。
【化7】

【0067】
ジアリールエテンの一例に、商品名DAE−MPで山田化学工業株式会社(日本)から販売され、化学名および式が1、2−ビス(2−メチル−5−フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン
【化8】

である、呈色状態で色が青のものがあげられる。
【0068】
ジアリールエテンのもうひとつの例に、式
【化9】

で表され、商品名DAE−2BTで山田化学工業株式会社(日本)から販売され、化学名が1,2−ビス(3−メチルベンゾ(b)チオフェン−2−イル)パーフルオロシクロペンテンである、呈色状態で黄色のものがあげられる。
【0069】
フルギドは、以下の式
【化10】

で表され、式中、
・基Aは上記にて示した意味を持ち、
・基R13〜R15は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖または分枝鎖のC1〜C16アルキル基を表すものであってもよいか、基R13およびR14が、シクロプロパンまたはアダマンチレンなどの3〜12個の炭素原子を含む環を形成してもよい。
【0070】
フォトクロミック組成物は、合計で0.001重量%〜20重量%のフォトクロミック剤(単数または複数)、特に熱安定性フォトクロミック剤(単数または複数)を含有するものであってもよい。
【0071】
フォトクロミック組成物は、化粧用途に適した溶媒、特に欧州特許出願公開第0 938 887号明細書に言及された中から選択されるものを含有するものであってもよい。
【0072】
感度を落としたフォトクロミック組成物
フォトクロミック組成物は、UVまたは近UV光線に対するその感度を落とす、少なくとも1種類の光学的作用剤を含むものであってもよい。
【0073】
フォトクロミック組成物は、特に、下記にて定義するようなその遮蔽力Fが2以上あるいは、5、10、15または20になるのに十分な量で、1以上の光学的作用剤を含むものであってもよい。
【0074】
遮蔽力を測定するためのプロトコール
SPFの判断に用いられているものと類似のプロトコールを使用する。違いは、皮膚の紅斑応答が考慮されない点である。
【0075】
遮蔽力の判別対象となる組成物を、EUROPLASTから入手した5cm[センチメートル]×5cm、厚さ3mm[ミリメートル]、粗さ4.5±1μmの紙ヤスリ研磨したポリメチルメタクリレート(PMMA)プレート(UV遮蔽剤なし)に、1.2mg/cm2[平方センチメートルあたりのミリグラム]で適用する。このプレートには、10±1mgのVaseline 145Bを塗って前処理しておく。組成物については、組成物14ドットで塗り、5秒ごとに4分の1ずつ折り返してプレートをジグザグに往復しながら20秒間指で展着させる。
【0076】
展着後、0.6mg/cm2の組成物が存在する。そのまま20分間(min)乾燥させた後、再び展着させる。
【0077】
290mm〜400mmの拡散透過率を測定する、分光放射計を使用する(たとえば、積分球を有するLabsphere UV透過率分析装置)。透過度T(λ)のそれぞれの値を記録する。T(λ)は、入射光エネルギに対する透過される光エネルギの特定の照射波長λでの比である。1プレートあたり5回分の測定値を得て(プレートを移動させる)、これらの5回分の測定値の平均をとる。5枚のプレートについて、この操作を実施する。5回分の測定値の平均をとる。
【0078】
太陽のUV光線(290nm〜400nm)に対する遮蔽力Fを、以下の2つの積分の比で表す。
【数2】

式中、I(λ)は、太陽光スペクトルの各波長の出現を表す関数である。I(λ)は、刊行物COLIPA GUIDELINES Edition of 2007: A METHOD FOR THE IN VITRO DETERMINATION OF UVA PROTECTION PROVIDED BY SUNSCREEN PRODUCTSにてin vitroでのSPF計算に用いられているものと同じである。F=1である場合、この組成物は遮蔽しない。
【0079】
「波長λの放射線に対する遮蔽剤として作用」という表現は、光学的作用剤が波長λの放射線を少なくとも減衰係数2だけ減衰することを意味する。この測定は、吸収スペクトルを測定する装置を用いて、ゾーンへの照射光を波長λ±10nmのものに制限して実施される。比
【数3】

(式中、I(λ)およびT(λ)は上記にて定義したとおりである)から、波長λでの減衰係数が得られる。
【0080】
フォトクロミック組成物は、少なくとも1つの範囲Pの波長を間隔λ1λ2で有するものであってもよく、照射があまり遮蔽されない場合、この範囲での遮蔽力はFλ1,λ2の平均であり、ここで、F/Fλ1,λ2>2、好ましくはF/Fλ1,λ2>5である。範囲pの幅は、80nm未満、好ましくは40nm未満であってもよい。
【0081】
λ1,λ2
【数4】

によって定義され、上述したように測定される。ここで、上限と下限の290および400をλ1およびλ2で置き換えると、λ2λ1である。
【0082】
適切な場合、フォトクロミック組成物は、色が経時的に発色する着色剤など、色が変化する(空気に触れると徐々に色がつくことがあるDHAまたはポリフェノールなど、可能であればゆっくりと色が変化する)着色料を含むものであってもよい。フォトクロミック組成物は、たとえば、90%発色するまでに半時間より長い時間を要する着色剤を含むものであってもよい。このような着色剤の利点として、たとえば、周囲光の影響下で感光性メイクアップパターンの劣化を遅らせるために、ひとたび感光性メイク仕上げがなされたら遮蔽力を発揮し得ることがあげられる。
【0083】
第1の層に存在する光学的作用剤用の活性剤として作用する第2の層
本発明の一実用例では、第1の層が、フォトクロミック組成物で構成され、光学的作用剤を部分的または完全に失活した形態または前駆物質として含有する。この失活した形態または前駆物質状態の作用剤は、感光性メイクアップの結果を保護するのに十分なほどは、まだ活性化されていない。
【0084】
感光性メイクアップ後、第2の層を適用することで、失活した光学的作用剤を活性化するか、前駆物質を、フォトクロミック組成物を呈色させる放射線に対する遮蔽剤を形成するのに効果的な光学的作用剤の形態にする役割が果たされる。
【0085】
一例として、層のうちの1つにおける前駆物質の形態で、光学的作用剤は、溶液中の亜鉛、鉄またはマグネシウム塩などの塩の他の層に含まれることで、さらに活性化される、ポルフィリンクラスの着色剤であってもよい。
【0086】
ガレヌス形態
本発明のフォトクロミック組成物は、化粧的に許容される媒質すなわち、皮膚、爪、髪、睫および眉毛、粘膜および半粘膜、さらには身体および顔の他の任意の皮膚ゾーンなど、あらゆるケラチン物質になじむ媒質を含有する。前記媒質は、懸濁液、分散液、溶媒または含水アルコール媒質中の溶液(任意に増粘またはゲル化したもの);水中油滴型エマルション、油中水滴型エマルションまたは多相エマルション;ゲルまたはフォーム;ゲルエマルション;スプレー;ルース、コンパクトまたはキャスト粉末;無水ペースト;または特にフィルムを含むか、その形態のものであってもよい。
【0087】
組成物は、欧州特許出願公開第0 938 887号明細書の段落[0029]から[0041]に名前があげられた成分を含むものであってもよい。この一覧を、本明細書に援用する。
【0088】
処理されるゾーン
たとえば爪、睫、髪、皮膚、特に顔、たとえば頬、額、唇または目の輪郭、首、胸または脚の皮膚など、通常メイクアップがなされる身体のどの部分にも、本発明による感光性メイクアップをほどこすことができる。
【0089】
また、耳、手または歯など、ほとんどメイクアップがなされない身体の一部を処理することも可能である。これらのゾーンは、複雑な形状であって、従来のメイクアップ製品の適用を容易にする助けにならない。感光性メイクアップでは、その複雑な形状とは関係なく、審美的な結果を得ることができる。
【0090】
感光性メイクアップを利用して、皮膚のしみをカモフラージュしてもよい。
【0091】
感光性メイクアップは、任意に、利用者が着用する衣服またはアクセサリーのパターン、たとえば、宝石、財布、眼ミラー、靴、調度品、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)または携帯電話のパターンを模したものであってもよい。
【0092】
適宜、このような衣服またはこのようなアクセサリーの販売時に、アクセサリーまたは衣服とコーディネートされた感光性メイク仕上げを作れるようにするファイルまたはインターネットリンクを提供してもよい。
【0093】
ファイルまたはインターネットリンクは、衣服またはアクセサリーとコーディネートするために設計または選択された画像を生成するのに必要なデータへのアクセスを提供するものであってもよい。一例として、パターンのすべてまたは一部を模したものであってもよいし、あるいはこれを完成させるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明によって生成される感光性メイクアップを処理するためのシステムの一例を示す概略部分図である。
【図2】光照射時に処理対象となるゾーンをどのように保持するかを示す。
【図2a】画素で構成された画像内でのパターンの形成を示す。
【図3】照射器のバリエーションを示す概略部分図である。
【図4】照射器のバリエーションを示す概略部分図である。
【図5】照射器のバリエーションを示す概略部分図である。
【図6】照射器のバリエーションを示す概略部分図である。
【図7】いくつかの技術を用いるアドレス可能なマトリクスイメージャの異なる例を示す。
【図8】いくつかの技術を用いるアドレス可能なマトリクスイメージャの異なる例を示す。
【図9】いくつかの技術を用いるアドレス可能なマトリクスイメージャの異なる例を示す。
【図10】いくつかの技術を用いるアドレス可能なマトリクスイメージャの異なる例を示す。
【図10A】いくつかの技術を用いるアドレス可能なマトリクスイメージャの異なる例を示す。
【図11】感光性メイクアップの例を示す。
【図12】感光性メイクアップの例を示す。
【図13】感光性メイクアップの例を示す。
【図14A】感光性メイクアップの進捗状況の例を示す図である。
【図14B】感光性メイクアップの進捗状況の例を示す図である。
【図14C】感光性メイクアップの進捗状況の例を示す図である。
【図15A】感光性メイクアップの進捗状況の例を示す図である。
【図15B】感光性メイクアップの進捗状況の例を示す図である。
【図15C】感光性メイクアップの進捗状況の例を示す図である。
【図16】組成物を適用前に呈色できるようにする包装装置の例を示す図である。
【図17】処理対象となるゾーンに照射された画像に応じたメイクアップの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0095】
適用の形態
本発明の実施にあたって使用するのに適した上記の組成物または各組成物は、粉末、流体、スプレーまたはフィルムの形で適用できるものである。流体が異なるレオロジーを有するものであってもよい。たとえば、ケラチン物質にこすりつけると展着される製品の塊であってもよいし、液体であってもよい。
【0096】
フォトクロミックあるいは任意に光保護組成物の層、むしろ光保護組成物層を、乾燥した粉末またはほぼ乾燥した粉末の形で適用してもよい。
【0097】
上記の組成物または各組成物は、任意に、プリフォームフィルムの形であってもよい。
【0098】
好ましくは、多層での適用を用いる場合、第2の層は、好ましくはすでに適用されている第1の層を劣化させることなく適用される。この目的のため、第2の層を形成することを想定した組成物をスプレーで適用すると好ましいことがある。
【0099】
また、処理対象となるゾーンと接触され、任意にその上に移動される装置を用いて、インクジェットプリンターなどのプリンターを使用して適用してもよい。1以上の層をスプレーする場合、推進剤ガス、エアブラシによるスプレーあるいは、静電噴霧または圧電噴霧など、どのようなスプレー技術を用いてもよい。組成物のうちの少なくとも1種類を保持するか、あるいはさまざまな層を形成する支持シートを用いる転写によって、適用してもよい。転写は、圧力によって、熱によって、および/または支持シートおよび/または本発明による処理の対象となるケラチン物質に被着される溶媒を用いて達成すればよい。
【0100】
適用は、手作業で実施してもよいし、マニピュレーターアームを用いるなど自動で実施してもよい。
【0101】
いずれの層も、前の層を乾燥させてから適用してもよい。
【0102】
アプリケーター、おそらくは適用対象となる組成物を仕込んだ適用部材を含む単独使用のアプリケーターを用いて適用してもよい。
【0103】
組成物を、販売場所、美容室あるいは、特に家庭で適用してもよい。
【0104】
各組成物を、使用前に好適な容器内に収容してもよい。
【0105】
組成物、特にフォトクロミック組成物については、周囲光に消色作業または所望の感光性メイク仕上げを得るのに必要な他のあらゆる行為を乱す危険がないことを確認した上で適用してもよい。確認は、周囲光がフルエンス0.5mW/cm2または2mW/cm2など強すぎる光、特に可視光、放射線を含む場合に利用者に通知する警報装置を用いて実施されるものであってもよい。この閾値は、必要に応じて調節可能である。このような装置は、自立したものであってもよいし、包装装置またはフォトクロミック組成物を適用するための装置あるいは、包装装置または光保護組成物を適用するための装置と一体のものであってもよい。
【0106】
適宜、警報装置によって送られる情報が、可視光線のレベルに応じて、フォトクロミック組成物、光保護組成物および/または複数の組成物の中でベース層として機能する組成物を選択する上でも有用なことがある。
【0107】
上述したように、適宜、フォトクロミック組成物は、完全な呈色状態または部分的呈色状態で適用できるものである。
【0108】
フォトクロミック組成物およびコーティング層またはベース層または光保護性層を形成することを想定した組成物は、クリーム、ゲル、液体、手またはアプリケーター(ロールオンなど)を用いて展着させることができる組成物など、多岐にわたる形態をとり得るものである。
【0109】
組成物を、口紅などのケラチン物質と接触する組成物の塊を動かして適用してもよい。さらに、エーロゾル缶、ポンプボトルあるいは、静電、圧電またはエアブラシスプレー装置を用いて、組成物を噴霧適用してもよい。
【0110】
組成物は、必要があればブラシまたは絵筆で適用できる粉末などの乾燥形態であってもよい。
【0111】
本発明の例示的な実施形態では、フォトクロミック組成物は、ケラチン物質に適用される場合に、すでに少なくとも部分的に呈色された少なくとも1種類のフォトクロミック剤を含む。一例として、フォトクロミック組成物は、ケラチン物質に適用されるときと同じ呈色状態で包装装置に収容されるか、変形例では、呈色されないまたはわずかに呈色された状態でこれに収容され、包装装置は、フォトクロミック組成物をケラチン物質に適用する前にex situでのフォトクロミック組成物の呈色を可能にする手段と関連している。
【0112】
フォトクロミック組成物を、組成物の入った容器1000と、たとえば組成物を呈色させるためのUVを放射する光源1010と、アプリケーターペイントブラシ1020などのアプリケーター手段とを備える、図13に示すような包装装置に収容しておいてもよい。容器は、周囲光に対して不透明で、光源1010によって放出される光に対して局所的に透明なものであってもよい。
【0113】
包装装置が複数のフォトクロミック剤を含む場合、包装装置は、適宜、いつでも適用できる状態にあるフォトクロミック組成物が所望の色になるように、そのフォトクロミック剤のうちの1種類以上を選択的に呈色させられるよう構成されるものであってもよい。
【0114】
たとえば、図14に示すように、包装装置は、異なるフォトクロミック剤の入った少なくとも2つのリザーバ1000aおよび1000bと、対応するリザーバに収容されたフォトクロミック剤を呈色できるようにする、各リザーバと関連した手段と、を含むものであってもよい。たとえば、包装装置は、各々UV光源1021aおよび1021b(UV LEDなど)が設けられた2つの組成物出口1020aおよび1020bと関連した2つのリザーバを含む。
【0115】
利用者は、任意に異なるリザーバに対応するUV光源を点灯しながら組成物を分注してもよいし、分注された混合物MがどのUV光源がついているかに応じて、あるいは場合により、その強度に応じて、多かれ少なかれ呈色された状態でフォトクロミック剤を含むように、これらの光源を異なる強度で点灯しながら、組成物を分注してもよい。
【0116】
一例として、装置は、混合物に対する色の選択を可能にするユーザインタフェース1030と、選択された色に応じて、フォトクロミック剤が一緒に混合される場合に、求めている色を得られるようにする割合でフォトクロミック剤を呈色させるために点灯される光源(単数または複数)を決めることを可能にするプロセッサと、を含むものであってもよい。
【0117】
感光性メイクアップを処理するためのシステム
本発明の例示的な実施形態では、感光性メイクアップを処理するためのシステムが、たとえばパターンを形成するため、あるいはパターンを作ることなく色を修正するなど、最低でもその外見を変化させるために、フォトクロミック組成物を消色することで作用するものであってもよい。
【0118】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、呈色状態から非呈色状態にフォトクロミック剤を変化させられる可視光放射の生成を可能にする手段を含むものであってもよい。
【0119】
図1に概略的に示すように、少なくとも1つの光源2を含む照射器3を備える、感光性メイクアップを処理するためのシステム1を用いて、感光性メイク仕上げを作り出してもよい。イメージャは、たとえばそこに収容されたフォトクロミック剤(単数または複数)を呈色状態から非呈色状態にすることで、フォトクロミック組成物を消色するよう機能するものであってもよいし、あるいは、適宜、フォトクロミック組成物に含有されるフォトクロミック剤(単数または複数)をさらに呈色するよう機能するものであってもよい。照射器は、たとえば、可視光を放出するものであってもよいが、使用されるフォトクロミック剤次第では、フォトクロミック組成物がUVまたは近UV光線で呈色されるものであれば、UVまたは近UV光を放出するものであってもよい。
【0120】
処理対象ゾーンまで移動する光の経路に配置され、任意に、処理対象ゾーンと接触するマスクまたはネガによって、画像を画定してもよい。
【0121】
照射器は、好ましくは、処理対象ゾーンZ上で距離をあけて少なくとも1つの画像を形成するための1以上のイメージャ4を含む。
【0122】
単純化したものでは、イメージャ(単数または複数)でマスクまたはネガと、処理対象ゾーンに投射するための光学素子とを使用してもよい。ネガは、可視光を止めるのに適しており、可視光で画像を形成できるようにするネガであってもよい。
【0123】
光源2は、白熱ランプ、ハロゲンランプ、放電ランプおよび/またはエレクトロルミネッセント素子、特に1以上のLED、有機LED(OLED)または他のエレクトロルミネッセント技術など、どのようなタイプの発光素子を含むものであってもよい。適宜、波長の調節が可能な光源を使用してもよい。
【0124】
詳細については後述するように、照射器3は、UVまたは近UVならびに、可視、特に近−UV可視光超を放射するために、複数の光源を含むものであってもよい。
【0125】
好都合なことに、光源(単数または複数)とイメージャ(単数または複数)とを備える照射器は、UVまたは近UVならびに可視光を選択的に放射できる。
【0126】
可視光での画像の投射からUV光での画像の投射への変更については、可動式のミラーを用いる、半透明の表面を用いる、フィルタを追加または除去する、および/または周波数逓倍器または三倍器を用いるなどの方法で、光源を変更して実現すればよい。
【0127】
詳細については後述するように、可視光を用いると、処理対象ゾーンに投射される画像を消色できるだけでなく、すでに少なくとも部分的に呈色されているゾーンの呈色および/または光失活前に確認できるようになる。
【0128】
図1からわかるように、感光性メイクアップを処理するためのシステムは、たとえば、キーボード、マウス、タッチスクリーン、音声認識エンジン、グラフィックスタブレット、ジョイスティックおよび/またはタッチパッドなど(この一覧は限定的なものではない)を含むユーザインタフェース11と接続されていてもよい、コンピュータ10を含むものであってもよい。
【0129】
コンピュータ10は、マイクロコンピュータを含むものであってもよく、特に、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサおよび/またはプログラム可能な論理アレイなどを用いて生成されるアナログおよび/またはデジタルのどのような計算手段を含むものであってもよい。
【0130】
コンピュータ10は、1以上の電化製品の形で製造されてもよく、電子イメージャを用いる場合、適宜、このイメージャが計算のすべてまたは一部を実施するものであってもよい。コンピュータ10は、たとえばLCD、プラズマ、OLEDまたは陰極線管、任意にタッチスクリーンといったカラースクリーンなどの表示手段12と接続されていてもよい。後述するように、この表示手段12を使用して、処理時に処理されるゾーンを表示して、処理を制御可能におよび/またはシミュレーションを表示可能にしてもよい。
【0131】
コンピュータ10は、ハードディスク、磁気テープ、光ディスクおよび/またはフラッシュメモリなどのデータ格納手段13と接続されていてもよく、データ格納手段は、可能ならコンピュータ10、照射器3と一体および/または少なくとも一部が外部のデータ格納システムにある遠隔のものである。
【0132】
コンピュータ10は、たとえば、感光性メイクアップに付随するデータをダウンロードあるいは、適用されるまたは適用された感光性メイクアップに関連するデータを第三者またはサーバーに送信させる機能を果たすネットワークインタフェース14と接続されていてもよい。
【0133】
適宜、コンピュータ10は、好都合なことに、あらかじめ定義された光源(illuminant)で画像が形成されるように、画像の形成に用いられる光を生成する光源(単数または複数)を制御する。
【0134】
イメージャは、好都合なことに、後述するような電子的にアドレス可能なマトリクスイメージャであり、これにコンピュータがデータを送信し、あらかじめ定義された画像を処理対象ゾーンZに投射するようにしてもよい。
【0135】
感光性メイクアップを処理するためのシステムには、画像に手動または自動で焦点を合わせられるようにする少なくとも1つの光学システムおよび/または電子システムと、好都合なことに、移動を防止するための手段とが設けられていてもよい。
【0136】
処理中のゾーンを照射器に対して静止したまま保つために、感光性メイクアップを処理するためのシステムは、人間を静止したまま保つための手段を含むものであってもよい。これは、すなわち動きや曖昧な結果を回避できることを意味する。
【0137】
顔に画像を形成する場合、顔がリラックスしていることを検出し、その検出内容に応じてイメージャを制御するよう、感光性メイクアップを処理するためのシステムを構成してもよい。
【0138】
感光性メイクアップを処理するためのシステム1は、平坦な部分を含むものであってもよいし、身体の一部の形状に追随するものであってもよく、その部分が処理対象ゾーンに対して配置されていてもよい。
【0139】
変形例において、あるいは上記に追加して、感光性メイクアップを処理するためのシステムは、画像を静止画または動画カメラに安定させるのに用いるものと同じタイプの動きを是正するためのシステムを含むものであってもよい。
【0140】
顔の処理をする場合、感光性メイクアップを処理するためのシステムは、図2からわかるように、顎あてなど処理対象となる個人を動かなくするための手段8を含むものであってもよい。
【0141】
変形例では、照射器3が携帯式で、顔などを照明するために処理対象の個人が持つ架台に固定されていてもよい。
【0142】
感光性メイクアップを処理するためのシステム1は、詳細については後述するように、本発明の一実用例では、コンピュータ10にデータを送信して、これが感光性メイク仕上げを提案できるようにおよび/またはその製造を制御できるようにするための光学収集装置16を含むものであってもよい。光学収集装置16は、好都合なことに、画像の投射方向と実質的に平行な視軸を有する。光学収集装置は、モノピクセルであってもマルチピクセルであってもよく、イメージャから放射される光を直接受光してもよいし、処理対象ゾーンZから反射した光を受光してもよい。
【0143】
任意の光学収集装置、照射器、任意のコンピュータ、任意のビュースクリーンを、別々の要素の形で製造してもよいし、同じ筐体に統合してもよい。照射器および光学収集装置は、好都合なことに、同じ筐体に統合されたものであってもよく、他の手段によって一緒に固定されていてもよい。
【0144】
ビュースクリーンは、照射器の筐体の背面に固定されていてもよいし、筐体に統合されていてもよい。適宜、光学収集装置は、接写撮像のための内部照明手段を含む。
【0145】
照射器の筐体は、可動であってもよく、皮膚などに適用されてもよく、あるいは、手で保持されてもよい。本発明の一実用例では、照射器の筐体を、たとえば、テーブルの上においてもよい。次に、身体を傾けるなどして顔が筐体に近づくように動けばよい。
【0146】
感光性メイクアップを処理するためのシステムには、目および/または口が開いているときには照射を停止または開始しないために、目および/または口の開閉を検出するための手段が設けられていてもよい。光学収集装置16は、この目的でコンピュータ10によって分析される画像を提供するものであってもよい。
【0147】
顔に画像を形成する場合、感光性メイクアップを処理するためのシステムは、顔を識別するよう構成されるものであってもよく、イメージャは、少なくともこの同定内容に応じて制御されるものであってもよい。
【0148】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、好都合なことに、利用者が感光性メイクアップの進み具合を、目視または他の方法で評価できるように設計されている。
【0149】
図3は、処理対象ゾーンZに対する2つのイメージャ4aおよび4b(前者が紫外線を放出し、後者が可視光を放出する)を含む感光性メイクアップを処理するためのシステムの一部を示す図である。これらのイメージャ4aおよび4b間にウィンドウ403を設け、処理時にゾーンZの観察を可能にする。
【0150】
図4からわかるように、視認ゾーンは、ミラー404または他の光学系、たとえば光ファイバまたはプリズムを用いて、ずらされていてもよい。
【0151】
デジタル(動画または静止画)カメラなどの光学収集装置の存在下、処理されるゾーンZを、照射器上にあってもよいし、ずれていてもよいスクリーンで視認してもよい。
【0152】
図5は、処理対象ゾーンZに向いた光線をミラー18でずらして照射器3を生成できる可能性を示す。これによって、利用者は処理されるゾーンZを照射器のウィンドウ20経由で観察できるようになる。
【0153】
図6は、2つの光源2aおよび2bがそれぞれUVおよび可視光を放出する照射器3を生成できる可能性を示す。図6に示す照射器は、光源2bの前に配置された緑色フィルタなどのカラーフィルタ302と、調節可能な視準光学素子303と、可動式のミラー304とを含む。この例での照射器3は、ネガティブ308を光路内に配置することを可能にするものである。調節可能な視準光学素子303は、ネガティブの画像を、照射器3の光学出口から特定の距離、たとえば約20センチメートルのところに出現させる。
【0154】
照射器3には、2つのスイッチ306および307が設けられている。第1のスイッチは、光源2aおよび2bを作動させる。第2のスイッチの特定の位置に合わせて可視光だけが光学出口に送られるよう、可動式のミラーを配置する。スイッチを作動させると、たとえばマイクロモータまたは電磁石を移動させることで可動式のミラーが移動し、UV照射がネガティブ308に向けて送られる。
【0155】
上述したように、感光性メイクアップを処理するためのシステムは、好都合なことに、電子的にアドレス可能なマトリクスイメージャを含む。
【0156】
電子的にアドレス可能なマトリクスイメージャ
一例として、アドレス可能なマトリクスイメージャは、画素で構成された画像を、10×10画素を超える解像度、好ましくは10×100画素を超える解像度で投射するのに適している。
【0157】
イメージャが電子的にアドレス可能なマトリクスイメージャである場合、処理対象ゾーンに形成される画像は、任意に各々があらかじめ定義されたグレーレベルのオンまたはオフの画素によって形成される。一例として、図2の詳細を図2Aに示す。図中、生成される感光性メイクアップPが、唇の輪郭からなる。図2Aは、投射される画像のさまざまな画素の配置を示す。生成対象の輪郭に相当する画素だけがスイッチオンになっている。フォトクロミック組成物の光失活または呈色が、画素の状態と一致する。
【0158】
1種類以上のフォトクロミック剤を選択的に消色し、呈色状態のフォトクロミック組成物から感光性メイク仕上げを作り出すために、イメージャを使用して可視光を投射してもよい。この場合、イメージャは、従来のビデオプロジェクタなどであってもよい。
【0159】
イメージャは、フォトクロミック剤(単数または複数)を呈色状態にする、あるいは光失活前にその呈色状態を増すために、UV域で放出できるものであってもよい。
【0160】
アドレス可能なマトリクスイメージャから出る光は、単色であっても多色であってもよい。好ましくは、アドレス可能なマトリクスイメージャは、UVまたは近UVならびに、近UVを超えた可視光を選択的に放出することができ、可視域で放出される光は、場合により白色光または着色光、任意に単色光である。
【0161】
コンピュータ10は、デジタル画像を判断するものであってもよく、これに基づいて電子イメージャ、特に各画素のグレーレベルならびに、任意に各画素の光の主要波長が制御される。
【0162】
いくつかの技術を用いて、アドレス可能なマトリクスイメージャを製造することができる。
【0163】
TEXAS INSTRUMENTSが発明したDLP(デジタル光処理)として知られる技術を用いることが可能である。これは、電気パルスを用いて個々に制御可能な向きの数千のマイクロミラーからなるDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)チップを使用しており、その向きに応じて、光の入射光線をイメージャの光学出口まで伝送するまたは伝送しないようにするために、これを任意に反射してもよい。投射対象となる画像は、ミラーのマトリクスに形成される。マーク空間比を調節することで、各画素のグレーレベル(たとえば256レベル)を制御してもよい。
【0164】
図7は、参照番号111のDMDチップを使用した、この技術を用いて製造される電子イメージャ4の一例を示す。このチップを、チップを制御するためのプロセッサ113と、任意のメモリ114とを含んでもよいプラテン112に固定してもよい。図示の例では、チップをプロセッサ113およびメモリ114と同一のプラテン上に示してあるが、これらの品を別の場所に配置してもよい。
【0165】
図7に示すイメージャ4は、UVおよび/または可視光の両方を放出できる光源であってもよく、あるいは、可視光またはUVを選択的に放出できる光源であってもよい、光源2からの光を受光する。
【0166】
光源2は、UVおよび可視スペクトルを放出するハロゲンランプ、UVおよび白色光、あるいは特定色の光などを放出できる放電ランプまたは1以上のLEDであってもよい。
【0167】
図示のように、イメージャ4は、それぞれ光の集光、DMDチップ上への集束、処理対象ゾーンへの送達用の光学素子118、119、120を含むものであってもよい。
【0168】
光源2がUVおよび可視光の両方で放出スペクトルを有する場合、図示のように、イメージャ4は、集光光学素子118と集束光学素子119との間などで光線と交差するフィルタホイール130を有するものであってもよい。フィルタホイール130の位置によって、チップはUVまたは可視光を受光し、これを光学出口に送る。よって、可視光および/またはUV光から、処理対象ゾーン上に選択的に画像を形成することが可能である。
【0169】
図8の変形例の照射器では、光源2からの入射光を、たとえばUVまたは近UVと可視光など、主要波長の異なる少なくとも2本の光線に分けるプリズム上に固定された複数のDMDチップを使用する。
【0170】
DMDチップから反射する光線を、処理対象ゾーンに向けて投射する。
【0171】
UVまたは近UV光線と関連したDMDチップならびに、可視光の光線と関連したチップを制御することで、UV光の光線または可視光の光線あるいは、場合によりその両方を同時に、処理対象ゾーンに投射してもよい。呈色は比較的ゆっくりと起こり、呈色を実施するよう作用する光の適切な位置決めを可視的に監視できるようにする上では、これが有用なこともある。
【0172】
照射器は、液晶表示装置(LCD)技術を用いるものであってもよい。
【0173】
図9の例において、光源2は、主要波長の異なる少なくとも2本の光線を生成するダイクロイックミラー125に向いており、たとえば前記光線の一方は主要波長がUVまたは近UV、他方は可視域にある。
【0174】
光線は、投射対象画像が形成されるLCDマトリクススクリーン127に、ミラー125および126によって送られて、プリズム128の系に向けて送られる白黒画像を生成し、投射光学素子120を介して処理対象表面まで画像を送れるようにする。スクリーン127の不透明度に応じて、放出される光は可視領域またはUV領域にある。
【0175】
図10に示す照射器3は、LCDマトリクススクリーン132と、スクリーン132を照明する光源2とを含む。その上に形成される画像は、投射光学素子120によって処理対象ゾーンに投射される。一例として、光源2は、UVまたは可視で選択的に放出できる。
【0176】
変形例において、スクリーン132を、図6の例のネガティブ308と置き換えてもよい。
【0177】
投射系は、ケイ素(LCOS)技術での液晶に基づくものであってもよい。LCD技術は、光がLCDスクリーンを通過することから透過性と呼ばれるのに対し、DLP技術は、光がDMDチップのマイクロミラーで反射されるため反射性と呼ばれる。LCOS技術では、DMDチップのミラーが、光通過状態と光遮断状態とのあいだで切り替わってもよい液晶の層に覆われた反射面に置き換わる。液晶をオンオフする周波数を調整することで、画素のグレーレベルを変えてもよい。
【0178】
一例として、DMDチップをLCOSチップで置き換えた図7および図8に示す配置を使用してもよい。
【0179】
図10Aは、LCOSチップ照射器を示す。光源2、たとえば可視光放出ランプと、半透明ミラー903との間に、レンズ901の系を配置してもよい。これは、光源からチップ900に光を反射する。チップはさらに、画素で構成された画像を処理対象ゾーンに投射する集束システム120に光を反射する。
【0180】
通常、アドレス可能なマトリクスイメージャによって送達される画像は、個々にアドレス可能なグレーレベルの画素のマトリクスを含み、各グレーレベルは、たとえば、少なくとも4ビット、好ましくは8ビットにコードされる。各画素に関連する光も、適宜コードされていてもよい。
【0181】
投射対象となる画像を、VGA、SVGA、コンポジット、HDML、SVIDEO、YCBR、光学的ビデオ信号または他の標準に従うビデオ信号の形で、あるいはビデオまたはデジタル画像ファイル、たとえば、.jpeg、.pdf、.pptなどのファイルの形で電子イメージャに供給してもよい。これらの画像が白黒でない場合、ファイルにおける画像のあらかじめ定義された色が、UVまたは近UVなどの色を制御するものであってもよい。
【0182】
電子イメージャは、好都合なことに、画像を変えることなく放出される光の性質を変更できるように製造される。一例として、画像の画素はそのグレーレベルを保持し、上流で用いられる光源の放出スペクトルだけが変更される。これによって、画像を処理対象ゾーンで可視化でき、その上で、単に光源の放出スペクトルを変更してゾーンを呈色させればよい。
【0183】
投射された画像の選択
特に、電子的にアドレス可能なイメージャを用いる場合、感光性メイクアップを処理するためのシステムには、好ましくは、投射された画像を選択するための手段が設けられる。これを達成するには、画像のライブラリから選択し、場合により、前記ライブラリからの連続画像を表示して、利用者が表示画像を選択すればよい。画像は、デジタルまたは写真形式で、たとえばデータ格納手段に記憶しておけばよい。画像ライブラリは、感光性メイクアップを処理するためのシステムに含まれていてもよいし、ダウンロードされるものであってもよい。
【0184】
本発明の一実用例では、あつらえられた画像が、感光性メイクアップを受ける予定の個人あるいは、有名人または特定スタイルの個人などのモデルから始まって使用され、これらの画像は、場合により、メイクアップをした人またはメイクアップをしていない人から導き出される。また、絵、表、スケッチまたは戯画から導き出した画像を使用して、投射された画像を生成することも可能である。
【0185】
コンピュータは、線またはブラシストローク、あるいは単一の点または一連の線、ストロークまたは点の形で、少なくとも1つの図形モデルを、そのメモリに有する、あるいはダウンロードするものであってもよい。
【0186】
形成される画像は、撮像された画像に応じて自動で判断されてもよい。これによって、投射された画像を、顔の形態および/または色に合わせることができる。
【0187】
捕捉された顔の位置から開始して、コンピュータが、感光性メイク仕上げを作り出すことを想定した画像を正しく位置決めしてもよい。
【0188】
よって、感光性メイクアップを処理するためのシステムは、
・メイクアップを施す対象者のゾーンの少なくとも1つの画像を撮像するステップと、
・イメージャを撮像された画像に応じて制御するステップと、を含む方法で使用できるものである。
【0189】
一例として、顔または身体の他の処理されるゾーンのすべてまたは一部を捕捉するよう適合された光学収集装置16を用いて画像を撮像してもよい。
【0190】
一例として、上眼瞼に感光性メイク仕上げを作り出すために、以下のステップを実施することが可能である。
・顔の画像を捕捉し、そこから瞼ゾーンを推測し、
・フォトクロミック組成物を瞼ゾーンに適用したら、瞼ゾーンの領域に生成する図形モデルを照射する。したがって、得られる感光性メイクアップは、正しい場所に形成される。処理対象ゾーンの位置での照射は、すべての画素が照明される場合に画像がかなり余分なゾーンまで覆うことができる状況で、対応する画素だけを照明して実施すればよい。解像度を高めることで利益を得るために、処理されるゾーンは、たとえば、画像の画素総数の少なくとも2/3を必要とするものであってもよい。
【0191】
コンピュータは、図形モデルを顔の形状に合わせるために、その形状を修正してもよい。よって、たとえば、唇のメイクアップが望まれる場合、以下のステップを実施すればよい。
・顔の画像を捕捉し、そこから唇のゾーンを推測し、
・唇の形状を生成対象となる図形モデルと比較し、
・図形モデルが唇の形状内に内接するようにその図形モデルを修正し、
・少なくとも部分的に呈色されたフォトクロミック剤を含むフォトクロミック組成物を唇に適用したら、考慮対象となる部分またはエキスパートシステムによって要領を得ないとされる部分を消色させることで、これを照射して修正後の図形モデルを生成する。この方法は、身体の他の領域にも適用できるものである。
【0192】
よって、感光性メイクアップを処理するためのシステムには、以下の4つの機能が備わっていてもよい。
・処理対象となる身体の顔または他の任意の領域の画像を捕捉する。
・処理対象となる顔または他の任意の部分の画像を分析することで、これを受け取る身体の顔の部分に生成される図形モデルの位置をロックする。
・任意に、顔の形状に合うように図形モデルの形状を修正する。
・所定の美的結果を得るのに最も好適な形の感光性メイクアップを生成することを想定した画像の投射を制御する。
【0193】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、顔の3D形状を撮像するための手段を含むものであってもよい。感光性メイクアップを処理するためのシステムは、フリンジを投射するなどしてレリーフを検出するよう適合された光学収集装置を含むものであってもよいおよび/または光輝性を検出するよう適合されていてもよい。
【0194】
本発明の一実用例では、使用する図形モデルを自動で判断する。この選択は、無作為に実施してもよいし、たとえば顔の色彩調和スキームまたは自然調和スキームに適うように顔の外見を最適化するためのルールを用いるプログラムされたロジックを用いて実施してもよい。よって、たとえば、色白の皮膚の顔で、そばかすを作ることが可能である。
【0195】
非対称な顔の対称性を再構築するためのロジックを適用するおよび/または角張りすぎた顔をまるっぽくしたりその逆をしたり、あるいは自然なまたは魅力のないプロポーションを補正する目的で光と影を適用することによって、この選択を実施してもよい。
【0196】
本発明の一実用例では、感光性メイクアップを処理するためのシステムが、複数の図形モデルを提案し、利用者が自由に1つを選択する余地を残してある。これらの提案は、たとえばスクリーン上の表示など図で表現されるものであってもよい。提案された図形モデルは、感光性メイクアップを受けることを意図した対象者の画像上に重畳されてもよいし、線図で顔を示したスクリーン上にモデルを表示してもよい。利用者が図形モデルを選択できるようにするものであれば、どのようなインタフェースを使用してもよい。一例として、感光性メイクアップを処理するためのシステムが実施を提案する行為を説明することで、利用者に提案された図形モデルの説明を言語で示してもよい。
【0197】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、処理対象ゾーンにある皮膚のしみを自動的に検出するよう構成されるものであってもよく、イメージャは、検出されるしみの性質に応じて制御されるものであってもよい。
【0198】
感光性メイクアップを処理するためのシステムには、たとえば、しみなどを認識することを想定した特定の認識機能が設けられていてもよい。
・斑点、毛穴の黒ずみ、吹き出物、イチゴ状母斑、おでき;
・しわ、ひび、皮膚線条、静脈;
・痕などのレリーフの隆起部分またはくぼみ部分;
・非対称;
・落屑;
・艶のない皮膚またはぎらついた皮膚;
・髪。
【0199】
しみは、画像解析および/またはレリーフ解析によって検出できるものである。画像解析は、3D画像解析であってもよい。画像解析は、色および/または光輝性の解析を含むものであってもよい。
【0200】
感光性メイクアップを処理するためのシステムには、前記しみの視認性を限定する目的で図形モデルを計算または選択できるようにするための機能が備わっていてもよい。あげることのできるこれらの図形モデルの例には、しみがあるとして検出されたいくつかの部分をぼやかすことを意図したものや、特定部分、特に痕または非対称のアウトラインを変えることを意図したものがある。
【0201】
本発明のもうひとつの実用例では、利用者または第三者が、生成される図形モデルを定義してもよい。よって、利用者または第三者は、感光性メイクアップを処理するためのシステムによって解釈されるコマンドを送信してもよい。これらのコマンドは、図形によるものであってもよく、感光性メイクアップを処理するためのシステムは、タッチスクリーンタイプの人間と機械とのインタフェースを含むものであってもよい。利用者は、顔の画像または顔の線図上で、メイクアップラインを生成するゾーンを指定することで、メイクアップのオーダーを送信する。感光性メイクアップを処理するためのシステムは、利用者からの指示を解釈し、これを顔のトポグラフィに適合させた後、感光性メイク仕上げを作り出すよう構成されていてもよい。
【0202】
コマンドは、たとえば「唇のゾーンを赤で塗りつぶす」などの説明であってもよいし、たとえば「瞼メイクアップ」など直感的なものであってもよい。感光性メイクアップを処理するためのシステムは、従来の方法または特別にプログラムされた方法で、使用されるデフォルトの図形モデルを解釈するよう作用することになる。
【0203】
コマンドがプログラムされたものであってもよいし、プログラムがパーソナライズされたものであってもよい。
【0204】
提案された図形モデルから選択する人または生成する図形モデルを判断する人は、メイクアップをする本人であってもよいし、プロフェッショナルのメイクアップアーティストなど他の人であってもよい。図形モデルの選択または生成は、感光性メイク仕上げを作り出す場所でおこなってもよいし、遠隔地で実施してもよい。遠隔地でなされる場合、感光性メイクアップを処理するためのシステムには、たとえば上述したネットワークインタフェース14など、処理するゾーンの画像を通信できるようにする通信手段が設けられていてもよい。
【0205】
感光性メイクアップを処理するためのシステムには、任意に、雑誌または他の媒体からメイク仕上げを捕捉するための手段ならびに、スキャナまたはRFIDチップリーダーなど、そこから処理対象ゾーン上に再生可能な図形モデルを作る手段が設けられていてもよく、チップは、メイク仕上げの説明またはそれをダウンロードできるようにするインターネットのリンクを含む。このチップは、感光性メイク仕上げを作るのに用いられる組成物(単数または複数)の入ったパッケージに入れておくことや、感光性メイクアップで再生できる特定パターンの衣服または他のアクセサリーの物品に入れておくことが可能なものである。
【0206】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、多岐にわたる連続した図形モデルを、その中から生成されるモデルを人が選択できるようにするためにシミュレーションの形で表示するよう構成されるものであってもよい。
【0207】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、直接的に顔で多岐にわたるモデルをすみやかに試すことができる可能性を提供するものであってもよい。よって、人は、モデルが自分に合うかどうかを実際に試して知ることができる。これらのモデルは、フォトクロミック組成物を呈色させない可視光で顔に投射される画像あるいは、たとえば可視光での照射によって消色可能でもあるフォトクロミック組成物を用いて生成される感光性メイク仕上げであっても構わない。
【0208】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、好都合なことに、いくつかのあらかじめ記録されたモデルを、格納手段13におけるそのメモリ内に有し、自ら作り出すことができた図形モデルを記録するものであってもよい。このようにして、利用者は、記録された図形モデルを利用してもよいし、交換してもよい。
【0209】
本発明の一実用例では、ひとたび図形モデルを選択したら、人の顔のトポグラフィに対する図形モデルの適合化と、画像を投射することによる感光性メイクアップの作成が、自動的に実施される。顔の捕捉から画像生成までの時間を、たとえば1秒未満など比較的短くしてもよい。
【0210】
本発明のもうひとつの実用例では、作業の実施時に感光性メイクアップを受ける人または第三者が介在してもよい。この場合、メイクアップができあがるのが以前より遅くなることもある。感光性メイクアップを処理するためのシステムは、感光性メイクアップが進む速度を落としたりこれを停止したりするために、人または第三者がその進み具合を、たとえばスクリーン12上で見ることができるように構成されていてもよい。
【0211】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、任意に、顔の図形モデルをロックして適合させる作業を再開することで、フォトクロミック組成物を呈色させるために意図された照射時に人が動くことで生じ得る問題を回避するために、顔を規則的に再捕捉するものであってもよい。
【0212】
いくつかの部分的な感光性メイク仕上げを連続して作り出すことが可能である。よって、感光性メイク仕上げを作り出す過程で、各図形モデルを判断でき、その効果を目で推定でき、続いて次の図形モデルを選択することができるといった具合で、感光性メイクアップが徐々に構成される。
【0213】
上述したように、感光性メイクアップを処理するためのシステムは、1以上の特別なプログラムによって、顔または顔の一部に最も適合した図形モデルを評価するよう構成されるものであってもよい。このため、第1の図形モデルを生成した後、顔をもう一度評価してそこから生成すべき新たな図形モデルを推測するといった具合にして、感光性メイク仕上げを生成してもよい。
【0214】
顔のある部分を半自動で、別の部分を自動で処理することが可能である。また、顔の一部を特定の点まで自動で処理した後、感光性メイクアップを半自動で継続する、あるいはその逆にすることも可能である。
【0215】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、たとえば上述した光学収集装置を用いて画像を取得し、任意に、処理対象ゾーンに対応する部分を抽出し、適宜、この画像を是正することで、一度投射された結果を改善するよう構成されるものであってもよい。
【0216】
使用される感光性メイクアップを処理するためのシステムは、好ましくは、利用者が、顔または他の任意の処理対象ゾーンに投射された画像から開始して、たとえば一次元または二次元に拡大または縮小することで形状を是正できるように構成されている。修正もさらに複雑なことがある。よって、たとえば、画像の一部を是正し、特定のゾーンを伸ばし、線のサイズを変更するといったことが可能である。このため、Photoshop(登録商標)など、画像を生成して編集するためのソフトウェアに普通に存在するツールを用いることが可能である。適宜、光学収集装置によるフィードバックによって画像を編集してもよい。コンピュータは、投射された画像の結果を知ることになり、ループを実行する感光性メイクアップを処理するためのシステムのプログラムによって、所望の結果が得られるまでこれを自動的に修正する。
【0217】
感光性メイクアップを徐々に作り出す
すでにケラチン物質に適用されたフォトクロミック組成物の消色は、たとえば、所望の外見が得られたときに利用者が消色を中断できるようにするために、徐々になされるものであってもよい。
【0218】
消色は、フォトクロミック組成物に含有されるすべてのフォトクロミック剤に関するものであってもよいし、そのうちのいくつかに関するものであってもよい。そのような状況下、フォトクロミック剤が呈色状態で異なる色を呈する場合、フォトクロミック組成物の色は、1種類以上のフォトクロミック剤を選択的に消色させることで、徐々に修正されるものであってもよい。フォトクロミック剤(単数または複数)の消色は、進行性であってもよい。
【0219】
感光性メイクアップは、
・すでに少なくとも部分的に呈色されたフォトクロミック剤を含むフォトクロミック組成物を、処理対象ゾーンに適用し、
・フォトクロミック剤を徐々に消色させるよう選択された光をゾーンに照射し、
・所望の外見が達成されたら、照射の特徴を中断および/または修正する
ことからなるステップを実施することで、作り出されるものである。
【0220】
よって、意図した強度および/または色のメイクアップ結果を得るのが一層容易である。進行的な照明時、利用者および/または感光性メイクアップを処理するためのシステムが、感光性メイクアップの進み具合を監視してもよく、所望の結果が得られたら、これが変化するのを止めてもよい。
【0221】
同様に、フォトクロミック組成物がそれを許すのであれば、感光性メイクアップ時または後からのいずれかに、編集を実施して感光性メイクアップをさらに洗練させてもよい。
【0222】
照射を少なくとも1回中断した後、再開してもよい。
【0223】
所望の外見が達成される前に、照射の主要波長および/または強度を修正してもよい。一例として、照射の強度を修正することで、フォトクロミック組成物の呈色または消色の速度が変わることがある。主要波長を調節することによって、照射エネルギおよび/またはフォトクロミック剤に対する影響を調節することが可能である。
【0224】
画像全体を徐々に処理してもよいが、たとえば、自動で、プログラムされた方法で、あるいはプログラム可能な方法で、画像を一部分ずつ順次処理することも可能である。
【0225】
消色では、照射1秒あたりのエネルギE’が0.5E’0以下であればよく、式中、E’0は、フォトクロミック組成物の80%を消色するのに1秒あたりに必要なエネルギである。E’≦0.2E’0が可能である。
【0226】
消色に用いられる光は、105ルクス以下、好ましくは2.105ルクス以下、あるいは5.105ルクス以下またはそれを超える強度を有するものであってもよい。光は、IRフィルタを介して放出されるものであってもよい。
【0227】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、処理対象ゾーンの色を分析するよう構成されるものであってもよく、その場合、この分析結果が照射を自動的に制御する機能を果たすものであってもよい。一例として、フォトクロミック組成物の適用後かつ所望の外見が達成される前に、色を分析すればよい。これは、たとえば、所望の外見が達成されたときに感光性メイクアップを自動的に停止できるようにするものである。色については、たとえば、処理されるゾーンに形成される画像の画素の色を分析することで測定すればよい。
【0228】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、画像のあらかじめ定義された領域の分析を実施するよう構成されるものであってもよく、対応する領域における色に応じて観察されるさまざまなゾーンの照射の強度を調整して、照射を制御してもよい。アドレス可能なマトリクスイメージャを用いて照射を実施する場合、処理されるゾーンのマルチピクセルの照射を正確に監視することができる。
【0229】
照射は、一定であっても可変であってもよい。特に、「ブリングアップ」時間と呼ばれる特定の時間、かなり強いものであってもよく、その後「微調整」フェーズで弱くなってもよい。
【0230】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、照射を間欠的におこなうためにプログラムされたものであってもよく、一例として、一定の照射後に停止時間帯がたとえば30秒以下の時間帯であるといった具合である。利用者は、満足した時点でプロセスをやめてもよい。
【0231】
照射を止めてこれを再開するのに利用者が介在する場合、照射は、利用者が色の変化を確認できるよう十分に遅いものであってもよく、照射は、たとえば、CIE Lab空間で1秒あたりのEが3以下の単位、たとえばEが1秒あたり約2単位で変化する。
【0232】
照射の強度が調節可能である場合、感光性メイクアップを処理するためのシステムには、ボタン、センサー、ジョイスティック、音声制御インタフェースまたはコントロールパッドなど(特にイメージャの上流で、照射の強度に作用してもよい)、照射が減少または増大する速度および/または振幅を調整するための制御部材が設けられていてもよい。
【0233】
本発明の実用例に応じて、利用者は、結果を考慮および/または観察するために、必要に応じて照射を停止または抑制してもよい。
【0234】
感光性メイクアップを処理するためのシステムによる照射プログラムの実行に応じて、照射を実施する条件を設けてもよく、利用者は、プログラムの実行時にこれを中断または一時停止あるいは、1つのプログラムから別のプログラムに変更してもよい。たとえば、照射の増大または減少の速度を調整するために、照射時の経時的な変化自体の利用者による定義または指定を可能にするプログラム。
【0235】
照射強度の増大または減少は、必ずしも画像の形状または度合いの変化を引き起こすものではない。このため、照射を調節するために、少なくとも1つのフィルタ、絞りおよび/または偏光子および/または光源を制御するために電力を変えるための装置など、生成される光束を調整する電気系および/または光学系を用いることが可能である。照射の強度は、画像の画素のグレーレベルに左右されることもある。
【0236】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、生成される感光性メイクアップに応じて、進行型の照明プログラムを自動的に判断するよう構成されるものであってもよい。一例として、特定ゾーンの感光性メイクアップが、かなり飽和度の低い色を生成することからなる場合、感光性メイクアップを処理するためのシステムは、強い光失活を指定するプログラムを提案および/または適用するものであってもよい。別のゾーン上の感光性メイクアップが、強烈な色を生成することからなる場合、感光性メイクアップを処理するためのシステムは、一層弱く光失活することからなるプログラムを提案および/または適用するものであってもよい。
【0237】
照射の強度を判断するために、感光性メイクアップを処理するためのシステムは、最終的な感光性メイク仕上を作り出す目的で印可される線量の計算内容と、そこから照明プログラムを推測する目的で適用するルールとに基づくものであってもよい。一例として、完全な光失活に対して線量X Jが必要であると計算された場合、Xの80%を(たとえば1秒間などで)すみやかに適用した上で、最後の20%をたとえば1秒に5%ずつ適用すればよい。
【0238】
上述したように、感光性メイクアップを処理するためのシステムには、照射開始時または感光性メイクアップの途中のいずれかで、皮膚または他のケラチン物質の色を測定できるようにする光学収集装置が設けられていてもよい。それは、この情報を使って進行型の照明を計算または調節するものであってもよい。一例として、照明を落とすまたは止める必要のある時刻を識別するために、この情報を使用するものであってもよい。
【0239】
光学収集装置用のセンサー(単数または複数)は、モノピクセルまたはマルチピクセルでの測定で、白黒であっても多色であってもよい。
【0240】
感光性メイクアップの進み具合を代表する情報を、作っている途中の感光性メイクアップの色を代表する値、あるいは、プロセスの完成度合いを代表する値などを、たとえばパーセンテージとして表示するなどのさまざまな方法で、利用者に送信してもよい。測定された色を表す色も、スクリーン上に表示してもよい。
【0241】
バックトラック
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、フォトクロミック剤(単数または複数)を呈色状態に戻すのに適した照明を用いて、光失活できるようにするだけでなく、感光性メイクアップの強度を徐々に増すように配置されていてもよい。
【0242】
このようにして、処理されるゾーンのいくつかの領域が部分的に消色された利用者は、前のステップに戻って最終結果を一層よく調整してもよい。感光性メイクアップを処理するためのシステムは、好都合なことに、利用者がバックトラックを止め、望ましければ、消色を再開するといったことができるように生成される。
【0243】
たとえばジアリールエテンおよびフルギドから選択される特定のフォトクロミック剤では、可視照明のすべてまたはいくつかをUV照明に置き換えることで、前のステップに戻ることが可能である。
【0244】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、好ましくは、このUV照明が可視照明と少なくとも同一の表面に延在するよう構成される。
【0245】
複数のフォトクロミック剤を含むフォトクロミック組成物の場合
また、すでに呈色された状態で、それぞれ異なる波長で最もよく消色される複数の異なるフォトクロミック剤を含むフォトクロミック組成物を用いることも可能である。適宜、これらのフォトクロミック剤は、波長を選択することで、あるフォトクロミック剤ではなく別のフォトクロミック剤の消色に有利になるような形で、波長に応じて変動する可視領域での消色速度が異なる。同様に、フォトクロミック剤がUV光によって呈色され得るものである場合、UV領域における波長によっては異なる速度で呈色されてもよく、このUV波長を調整することで、あるフォトクロミック剤の呈色が別のフォトクロミック剤の呈色より有利になることがある。
【0246】
感光性メイクアップの変化のシミュレーション
本発明の一実用例では、感光性メイクアップを処理するためのシステムには、感光性メイクアップの変化を視認するためのシステムに加えて、あるいはこれの代わりに、感光性メイク仕上げの変化をシミュレートするためのシステムが設けられている。
【0247】
このため、感光性メイクアップの前および/または途中で、利用者は、このシミュレーションを観察してもよく、これを用いて、感光性メイクアップを遅くするか止めるか、あるいはバックトラックするか否かを決定してもよい。
【0248】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、フォトクロミック組成物の適用後かつ所望の外見が達成される前に、感光性メイクアップの結果をシミュレートできるようにするよう構成されるものであってもよい。シミュレーションの進み具合を、処理対象ゾーンでの照射の進み具合とリンクさせてもよい(フォトクロミック組成物を呈色させるよう作用するか、反対に、これを消色するよう作用するかを問わない)。感光性メイクアップの外見の変化のシミュレーションについては、スクリーンに表示されてもよい。
【0249】
ツールの使用
感光性メイクアップを処理するためのシステムが、電子イメージャを含む場合、利用者が操作するツールに応じて制御されてもよく、コンピュータは、投射された画像および/または照射の強度をツールの動きに応じて修正できる。ツールは、処理対象ゾーンの前またはその上で、あるいは処理対象ゾーンを視認できるようスクリーンの前またはその上で位置決めされる部分を含むものであってもよい。ツールは、処理対象ゾーンを視認できるようスクリーン上または処理対象ゾーンに形成された画像内のポインタの動きを制御するものであってもよい。
【0250】
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、利用者に、進行型の照射での処理対象となる特定のゾーンを制御させ、この目的のために、たとえば、タッチスクリーンを含むものであってもよい表示手段を利用するよう構成されるものであってもよい。利用者は、スクリーンの特定の領域を押すことで、このタッチスクリーンを介して照射の進み具合を制御してもよい。一層好ましくは、タッチスクリーンは、利用者によって加わる圧力の強度に敏感であり、感光性メイクアップを処理するためのシステムは、スクリーンに加わる圧力を分析し、光の強度および/または処理対象ゾーンに対応する領域への照射時間を制御することで、その圧力を色の強度に変換する。
【0251】
本発明の一実用例では、感光性メイクアップを処理するためのシステムは、タッチスクリーンの上または前に配置されたツールを検出するものであってもよく、利用者は、感光性メイク仕上げの調整にこのツールを使うものであってもよい。
【0252】
一例として、利用者にはいくつかのツールが利用可能であり、各々にバーコードまたはRFIDチップなどの識別手段が設けられ、感光性メイクアップを処理するためのシステムが識別できるようにしている。利用者が特定のツールを使う場合、それは認識され、感光性メイクアップを処理するためのシステムによって、各ツールを特定タイプのメイクアップと関連させてもよい。
【0253】
一例として、利用者は、厚さが異なるおよび/または色の強度が異なる、あるいは異なる色のメイクアップである、メイクアップの線に対応する複数のツールを有することになる。利用者は、選択されたツールを取り、メイク仕上げを変更するためにこれを表示手段上の画像で移動させてもよい。メイクアップのシミュレーションは、視認用のスクリーンに現れてもよく、利用者による必要な検証後、表示手段上に現れているメイク仕上げが、照射器を制御することで実施される感光性メイクアップによって自動的に作り出されてもよい。
【0254】
画像内容の調整および/または修正
感光性メイクアップを処理するためのシステムは、画像を処理対象ゾーン、たとえば顔まで送信し、シミュレーションを表し、利用者がこの画像を顔にロックするあるいはこれを修正するまでこれを残すように構成されるものであってもよい。この場合、ひとたび画像を正しく調整して定義すると、同一の光学素子または平行光学系を用いて、さらに強くて1種類以上のフォトクロミック剤を短時間で非呈色状態に変化させられる可視光で形成されたことだけが前の画像とは異なる画像を送信する。特に、強度を変更する際に、画像を定義するのに用いられるマスク、ネガまたはアドレス可能な画素のマトリクスが修正されている必要はない。
【0255】
光保護組成物
たとえば所望の外見が達成されたら、光保護組成物をフォトクロミック組成物に適用してもよい。この光保護組成物は、フォトクロミック組成物を呈色させるのに用いられる照射がUV照射である場合に、UV光線に対する遮蔽剤として作用するものであってもよい。
【0256】
必要であれば、光保護組成物は、適宜、フォトクロミック剤を偶然に消色させる危険性を制限することを視野に入れて、可視域またはIRにおける少なくともあらかじめ画定された波長で遮蔽剤として作用するものであってもよい。
【0257】
太陽光線(290nm〜400nm)に対する遮蔽力Fが2〜20の範囲、好ましくは4〜10の範囲にあるフォトクロミック組成物を提供する1以上の光学的作用剤を使用してもよい。
【0258】
適宜、光保護組成物は、グロス用組成物、油性または皮膚軟化剤組成物、マット化用組成物、クリーム頬紅、粉末頬紅、ポリッシュまたは仕上げ用組成物であってもよい。
【0259】
光学的作用剤
呈色の一助となる放射線、特にUVまたは近UVに対する遮蔽剤を形成する光学的作用剤
上述した光学的作用剤(単数または複数)は、遮蔽剤および拡散粒子またはUV、特にUVAおよび/またはUVBの透過度を制限する他の作用剤から選択されるものであってもよい。
【0260】
この(単数または複数の)光学的作用剤は、無機遮蔽剤、特に微粒子形態でナノメートルサイズのものと、有機遮蔽剤とから選択されるものであってもよい。
【0261】
光学的作用剤(単数または複数)は、親水性であっても親油性であってもよい。
【0262】
有機フィルタは、アントラニル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、サリチル酸誘導体、カンファー誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンザルマロン酸誘導体、イミダゾリン、ビス−ベンゾアゾリル誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,βジフェニルアクリレート誘導体、p−アミノ安息香酸誘導体、国際特許出願公開第WO 93/04665号パンフレットの出願書類に記載のポリマー遮蔽剤およびシリコーン遮蔽剤、α−アルキルスチレン由来の二量体、4,4−ジアリールブタジエン、これらの混合物から選択されるものであってもよい。
【0263】
親水性遮蔽剤は、欧州特許出願公開第0 678 292号明細書に記載されているもの、たとえば3−ベンジリデン2−カンファー、特にMexoryl SX(登録商標)から選択されるものであってもよい。
【0264】
言及できる親油性遮蔽剤の例として、フランス特許出願公開第2 326 405号明細書、フランス特許出願公開第2 440 933号明細書、欧州特許出願公開第0 114 607号明細書の各公報に記載されているジベンゾイルメタン誘導体、GivaudanのParsol(登録商標) 1789、MerckのEusolexがあげられる。また、オクトクリレンとして知られ、商品名Uvinul N 539でBASFから入手可能な2−エチルヘキシル2−シアノ−2,2−ジフェニルアクリレートに言及することも可能である。
【0265】
また、商品名Eusolex EX 6300でMerckによって販売されているp−メチルベンジリデンカンファーに言及することも可能である。
【0266】
以下から選択される遮蔽剤を、光学的作用剤として使用してもよい。ベンゾフェノン−3(オキシベンゾン)、ベンゾフェノン−4(スリソベンゾン)、ベンゾフェノン−8(ジオキシベンゾン)、ビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(BEMTまたはtinosorb S)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート(Uvinul +)、エチルヘキシルメトキシシンナメート、エチルヘキシルサリチレート、エチルヘキシルトリアゾン、メチルアントラニレート(meradimate),(4−)メチル−ベンジリデンカンファー(Parsol 5000)、メチレンビス−ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(tinosorb M)、パラ−アミノ安息香酸(PABA)、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(Ensulizole)、ポリシリコーン15(Parsol SLX)、トリエタノールアミンサリチレート。
【0267】
使用する光学的作用剤は、遮蔽剤として用いるのに適したチタンまたは酸化亜鉛ナノ顔料などの粒子を拡散させることで形成されるものであってもよく、さまざまな表面処理は選択される媒質に左右される。ナノ顔料は、一般的な平均寸法が5nm〜1000nmである。
【0268】
前記光学的作用剤(単数または複数)の重量での合計濃度は、乾燥またはほぼ乾燥した配合で、適用前の光保護組成物の重量に比して、0.001%〜30%の範囲またはそれよりさらに上にあってもよい。
【0269】
好ましくは、遮蔽剤または組み合わせを、320nm〜400nmの範囲、好ましくは320nm〜420nmの範囲の放射線に対する遮蔽剤として作用する組成物で使用する。
【0270】
フォトクロミック剤(単数または複数)に対する可視および赤外(IR)光の伝搬を制限することを想定した光学的作用剤
UV光線に対する遮蔽剤として作用する光学的作用剤は、非呈色ゾーンを保護する機能を果たすが、呈色されたゾーンを保護するために、UV照射によって呈色され得るフォトクロミック組成物を用いると可視域で遮蔽する1以上の光学的作用剤もフォトクロミック組成物に適用してもよく、この2つすなわち、UVの遮蔽と可視光の遮蔽を組み合わせると都合がよい場合がある。
【0271】
多くの着色剤または顔料を使用できる。特に、たとえば黄色の着色剤、オレンジ色の着色剤あるいは、黄色、オレンジ色、黄土色、茶色または栗色の色相を生成できるようにする混合物といった、色が皮膚の色に近い着色剤、さらには好ましくは少量で用いられるか白または黄色の拡散作用剤と混合され、たとえばピンクまたはベージュ−ピンクなどのパステルの外見の色相を与える赤色の着色剤を用いると好ましい。白人の皮膚にはわずかにピンクの色相、白人の皮膚にはわずかに黄色の色相、黒と呼ばれる皮膚の栗色または茶色の色相には、着色剤を用いると好ましい。
【0272】
単独または混合物として、着色剤は、皮膚の色度に近い色度を持つものであってもよい。これらは、好ましくは、色度C*(HVC*系で)が40未満である。
【0273】
着色剤(単数または複数)は、
・基準CI 11680、11710、15985、19140、20040、21100、21108、47000、47005の色指数に分類される黄色顔料、
・基準CI 11725、15510、45370、71105の色指数に分類されるオレンジ色の顔料、
・基準CI 12085、12120、12370、12420、12490、14700、15525、15580、15620、15630、15800、15850、15865、15880、17200、26100、45380、45410、58000、73360、73915、75470の色指数に分類される赤色顔料
から選択されるものであってもよい。
【0274】
光保護組成物では、Hoechstから商品名:
・JAUNE COSMENYL IOG:ピグメント5 tイエロー3(CI 11710)、
・JAUNE COSMENYL G:ピグメントイエロー1(CI 11680)、
・ORANGE COSMENYL GR:ピグメントオレンジ43(CI 71105)
で販売されているものなどの製品などの有機顔料の顔料ペーストを使用してもよい。
【0275】
特に単位名称D&Cレッド21(CI 45 380)、D&Cオレンジ5(CI 45370)、D&Cレッド27(CI 45 410)、D&Cオレンジ10(CI 45 425)、D&Cレッド3(CI 45 430)、D&Cレッド7(CI 15 850:1)、D&Cレッド4(CI 15 510)、D&Cレッド33(CI 17 200)、D&Cイエロー5(CI 19 140)、D&Cイエロー6(CI 15 985)、D&Cイエロー10(CI 77 002)で知られているものなどのレーキを使用してもよい。
【0276】
着色剤は、イオン性であっても中性であってもよい。
【0277】
自然な肌の艶とよく合い、いくつかは時間がたつと色を失うことから、天然の着色剤および顔料が特に好都合である。これらは、たとえば、植物からの抽出物または人工的に再生させた天然分子であり、たとえば、メラニン、アントシアン、ポリフェノール、ポルフィリン、クルクミンから選択される。
【0278】
これらは、たとえば、フランス特許第2 679 771号公報に記載されているものなどのインドールおよび/またはフェノール誘導体の酸化重合によって得られる顔料であってもよい。
【0279】
たとえば、特定の食品用着色剤といったアニオン官能基を有する着色剤ならびに、カチオンフィルタなど、UV遮蔽剤を補完するイオン性の着色剤および顔料が、特に好都合である。
【0280】
IRフィルタあるいは、反応時に色つきになる、DHAなどの化合物を用いることも可能である。
【0281】
空気に触れると徐々に色つきになる傾向があるDHAまたはポリフェノールなど、可能であればゆっくりと、経時的に呈色される色の着色剤など、色が変わる着色料を用いることも可能である。これは、光保護組成物の遮蔽力を徐々に呈色できるようにするものである。
【0282】
熱的に不安定なフォトクロミック剤
光保護組成物に用いられる光学的作用剤は、熱的に不安定なフォトクロミック着色性作用剤であってもよい。これは、感光性メイク仕上げを作り出す機能を果たすものではなく、むしろ、極めて強い太陽光線またはテレビのスタジオ、特定の医療処置、特定の美容処置(日焼け室など)、たとえば、フラッシュ写真撮影、あるいは特定の祭りの場で用いられる照明などの人工的な作用といった強すぎる光に曝露されたときに、感光性メイク仕上げを保護する機能を果たすものである。
【0283】
熱的に不安定なフォトクロミック剤は、極めて強い照明時に、特定の方法で、その色を帯びる。これは、下地にある感光性メイクアップの視認性を制限することがある。しかしながら、熱的に不安定なフォトクロミック剤は、極めて強い照明が停止されれば無色の形態をすみやかに回復するため、この現象は一過性のものである。
【0284】
好ましくは、暗所にて25℃で60秒以内にその色の少なくとも半分を失う、熱的に不安定なフォトクロミック剤を使用する。特に、熱的に不安定な無機フォトクロミック剤が好ましい。
【0285】
入射光を反射できる光学的作用剤
特に、UVまたは可視光を減衰させる目的で使用される光学的作用剤は、金属ミラーを形成する光学的作用剤あるいは、多層介在構造または回折格子をベースにした光学的作用剤であってもよい。
【0286】
単独でまたは先に列挙した光学的作用剤を補完するものとして用いるのに適した光学的作用剤は、入射光を反射できる光学的作用剤である。反射は、反射層と光波の伝搬媒質との界面で生じる。反射層を形成する材料は、屈折率が1.5を超え、可能であれば1.8を超えるものであればよい。
【0287】
光学的作用剤は、金属を含有するものであってもよいし、金属で形成されるものであってもよい。一例として、銀塩を還元または銀ナノ粒子の分散液を適用することで、光保護組成物の適用時に銀の層が形成される。
【0288】
光保護組成物の反射の度合いは、5%を超えてもよく、可能であれば10%を超えてもよい。好ましくは、感光性メイクアップの結果を損なわないようにするには、これは50%未満である。一例として、光保護組成物は、銀ナノ粒子の、水性またはエタノール性である分散液を含むものであってもよく、たとえば、試料次第で寸法が10nm〜60nmであり、ポリマー系によって安定化される、日本ペイントから得られるものがあげられる。乾燥時、この安定化は、粒子が接触するのを防止せず、反射能が銀ミラーで得られたものに近い最終材料を提供するのに十分な電気伝導度を保証するこれらの接触によって。
【0289】
多層干渉構造を有する光学的作用剤を用いることが可能である。
【0290】
この干渉構造は、構造のさまざまな層から反射する光波の相殺的干渉の現象によって光をフィルタする。
【0291】
多層構造は、好ましくは、可視域での透過率が高くなるよう選択されるため、可視域では顕著な色を生成せず、よって所望の透明度を有する。
【0292】
多層構造は、屈折率が低いものと高いものの交互層を含むものであってもよい。一例として、屈折率が高い層と低い層との屈折率の差は、0.1以上、好ましくは0.15以上、より一層好ましくは0.6以上である。
【0293】
上述した多層構造における層数は、好ましくは少なくとも2、一層好ましくは4または6、あるいは少なくとも12ですらあり、それがゆえに入射光に対して感受性が低く、なおかつ必要な選択性を呈する構造を容易に製造できる。多層構造は、任意に対称であってもよく、適宜構造に入る光にとってどれが主面なのかとは無関係に、入射光のフィルタリングを可能にする。
【0294】
屈折率の高い材料は、鉱物、たとえばアナターゼまたはルチル形態の二酸化チタン、酸化鉄、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、オキシ塩化ビスマス、これらの混合物あるいは、たとえば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、PVN(ポリ(2−ビニルナフタレン))、PVK(ポリ(N−ビニルカルバゾール))、PF(フェノールホルムアルデヒド樹脂)、PSU(ポリスルホン樹脂)、PaMes(ポリ(α−メチルスチレン))、PVDC、(ポリ(塩化ビニリデン))、MeOS(ポリ(4−メトキシスチレン))、PS(ポリスチレン)、BPA、(ビスフェノール−Aポリカーボネート)、PC(ポリカーボネート樹脂)、PVB(ポリ(ビニルベンゾエート))、PET(ポリ(エチレンテレフタレート))、PDAP(ポリ(フタル酸ジアリル))、PPhMA(ポリ(フェニルメタクリレート))、SAN(スチレン/アクリロニトリルコポリマー)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PVC(ポリ(塩化ビニル))、NYLON(登録商標)、POM(ポリ(オキシメチレン)またはポリホルムアルデヒド)、PMA(ポリ(アクリル酸メチル))など、これらの混合物から選択される有機物であってもよい。
【0295】
屈折率の低い材料は、たとえば、二酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、酸化アルミニウム、これらの混合物から選択される鉱物あるいは、たとえば、ポリメチルメタクリレートまたはポリスチレン、ポリウレタンおよびこれらの混合物などのポリマーから選択される有機物であってもよい。
【0296】
多層構造で干渉粒子を生成するために、当業者であれば特に、Applied Optics、Vol. 41、n 6、01/06/2002(本明細書に援用する)からの論文「Overcoated Microspheres for Specific Optical Powers」ならびに、FLEXPRODUCTSの名前での特許など、薄層堆積について扱う多くの刊行物を参照するであろう。
【0297】
光学的作用剤は、光を回折させるために、実質的に繰り返される表面パターンを有する格子であってもよい、少なくとも1つの回折格子など、回折構造を含むものであってもよい。
【0298】
格子の周期ならびに、場合によりその深度によって、特に格子の回折特性が決まる。回折格子のマーク空間比は、一貫性をもって選択されるものであってもよい。
【0299】
好ましくは、少なくとも1つの方向での回折格子の周期は、好都合なことに、光保護組成物の着色作用を生む危険性を抑えられるほど十分に低い。この場合、格子の周期は、好都合なことに、可視領域、特に400nm〜780nmの範囲の光を回折しないよう選択される。
【0300】
可視域での回折次数を回避するよう機能する格子の最大周期は、以下の関係から少なくとも近似的に判断できる。
【数5】

式中、θは格子面の法線に対して測定した入射角であり、Ψは透過角、Λは格子の周期、mは回折次数、n1およびn2は、入射と透過それぞれの媒質の屈折率である。n1およびn2は、第一近似で1.5となるものであってもよい。θ=0°の場合、最大周期はλ/n1=400/1.5すなわち、約267nmである。入射角の限定なしで、この周期は半分未満である。よって、好ましくは、格子の周期270nmまたはそれ未満を選択し、好ましくは140nmまたはそれ未満を選択する。
【0301】
格子の深度dおよびその周期Λは、たとえばUVAで最小の透過度を得るために、連続試験で選択されるものであってもよい。格子の特徴の計算は、たとえば、GRATING SOLVER DEVELOPMENT COMPANYから入手可能なGSOLVERソフトウェアを用いて、ベクトル的に実施されるものであってもよい。
【0302】
回折格子を生成するのに用いられる層またはさまざまな層は、任意に、有機または無機の性質を持った基材上に被着されるものであってもよく、この基材については、そのまま使用してもよいし、溶解処理をほどこしてもよい。
【0303】
よって、形状が球状または層状の有機基材または無機基材に材料を被着させた後で、格子(単数または複数)の構造を、材料のバルクまたはそれ以外のものにエッチングしてもよい。
【0304】
エッチングについては、色彩効果を抑える目的で、可視領域での光の回折が最小限になるように実施してもよい。エッチングの周期性とその厚さによって、系がUV光線を減衰する効率が決まる。
【0305】
干渉フィルタ剤は、任意に、たとえば2つの実質的に直交する方向など非平行の方向に延在する2つの回折格子を含むものであってもよく、この格子は、特に、回転偏光された入射光のUVの吸収を増大し、フィルタ入射角の遮蔽性能の依存性を小さくするものであってもよい。
【0306】
2つの回折格子は、実質的に等しい周期Λ1およびΛ2を有するものであってもよい。特に、ともに270nm以下、好ましくは140nm以下である。
【0307】
2つの回折格子が表面レリーフを有する場合、その深度も実質的に等しくてもよく、そのレリーフは、格子インデックスの周期的なばらつきを生むものであってもよい。
【0308】
格子の周期は一定であっても可変であってもよく、深度は一定であっても可変であってもよい。格子は、直線方向に延在してもよいし、曲線方向に延在してもよい。
【0309】
回折格子は、屈折率の異なる重畳層を含むものであってもよい。回折格子は、少なくとも部分的に誘電材料から生成されるものであってもよい。
【0310】
格子(単数または複数)には、さまざまなパターンを使用できる。これらは、たとえば、断面が矩形または三角形のギザギザあるいは、正弦波形または階段形のギザギザである。
【0311】
回折構造は、粒子の主面の少なくとも一部、好ましくは粒子の2つの主面に形成されるものであってもよい。
【0312】
回折構造は、格子(単数または複数)を覆う保護・非回折層を含むものであってもよい。
【0313】
液晶(Wackerから入手可能なHelicones HC)ならびに干渉ホログラフフレーク(Spectratrekから入手可能なGeometric顔料またはスペクトルf/x)など、干渉効果を有し、基材に固定されていない顔料についても言及できる。
【0314】
組成物は、たとえば、周期および/または深度の異なる回折格子を有する粒子など、UVAおよび/またはUVBを遮蔽するための干渉素子の混合物を含むものであってもよい。
【0315】
入射光の波長を変換できる光学的作用剤
光保護組成物は、蛍光化合物を含むものであってもよい。
【0316】
「蛍光」化合物という用語は、紫外スペクトル、場合により可視の光を吸収し、吸収したエネルギを、スペクトルの紫外または可視部分で放出される波長が長い蛍光の光に変換する化合物を意味する。
【0317】
化合物は、可視光を吸収しないがUVだけは吸収し、吸収したエネルギを、スペクトルの可視部分で放出される波長が長い、たとえば20nm長い、または好ましくは50nm長い、あるいは、100nm長い蛍光の光に変換する無色透明であってもよい蛍光増白剤であってもよい。このため、前記増白剤によって生成されるカラーインプレッションを、波長400nm〜500nmの主に青の純粋に蛍光の光によって単独で生成してもよい。
【0318】
前記化合物は、溶液または微粒子であってもよい。
【0319】
蛍光化合物は、式
【化11】

(式中、R1、R2、R3、R4は、互いに独立に、水素原子;ハロゲン原子;C6〜C30アリール基;ヒドロキシル基;シアノ基;ニトロ基;スルホ基;アミノ基;アシルアミノ基;ジ(C1〜C6)アルキルアミノ基;ジヒドロキシ(C1〜C6)アルキルアミノ基;(C1〜C6)アルキルヒドロキシ(C1〜C6)アルキルアミノ基;(C1〜C6)アルコキシ基;(C1〜C6)アルコキシカルボニル基;(C1〜C6)カルボキシアルコキシ基;ピペリジノスルホニル基;ピロリジノ基;(C1〜C6)アルキルハロゲノ(C1〜C6)アルキルアミノ基;ベンゾイル(C1〜C6)アルキル基;ビニル基;ホルミル基;C6〜C30アリールラジカル(ヒドロキシル、直鎖状、分枝鎖状または環式C1〜C6アルコキシ、任意に1以上の基から選択される1以上のヒドロキシル、アミノ、C1〜C6アルコキシ基で置換されている1〜22個の炭素原子自体を含有する直鎖状、分枝鎖状または環式アルキルで置換されていてもよい);ヒドロキシル、アミノ、直鎖状、分枝鎖状または環式C1〜C6アルコキシ基、任意に置換されたアリール、カルボキシル、スルホ基、ハロゲン原子から選択される1以上の基で任意に置換されている、1〜22個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝鎖状または環式アルキルラジカルを表し、前記アルキルラジカルは、場合によりヘテロ原子で中断される)で表されるジケトピロロピロールであってもよい。
【0320】
蛍光化合物は、式
【化12】

(式中、
1、R2、R3は、互いに独立に、水素原子;ハロゲン原子;C6〜C30アリール基;ヒドロキシル基;シアノ基;ニトロ基;スルホ基;アミノ基;アシルアミノ基;ジ(C1〜C6)アルキルアミノ基、ジドロキシ(C1〜C6)アルキルアミノ基;(C1〜C6)アルキルヒドロキシ(C1〜C6)アルキルアミノ基;(C1〜C6)アルコキシ基;(C1〜C6)アルコキシカルボニル基;C1〜C6カルボキシアルコキシ基;ピペリジノスルホニル基;ピロリジノ基;(C1〜C6)アルキルハロゲノ(C1〜C6)アルキルアミノ基;ベンゾイル(C1〜C6)アルキル基;ビニル基;ホルミル基;ヒドロキシル基、直鎖状、分枝鎖状または環式C1〜C6アルコキシ、1以上のヒドロキシル、アミノ、C1〜C6アルコキシ基で任意に置換された、1〜22個の炭素原子自体を含有する直鎖状、分枝鎖状または環式アルキル;ヒドロキシル、アミノ、直鎖状、分枝鎖状または環式C1〜C6アルコキシ、任意に置換されたアリール、カルボキシ、スルホ、ハロゲン原子から選択される1以上の基で任意に置換された、1〜22個の炭素原子を含有する、直鎖状、分枝鎖状または環式アルキルラジカルから選択される1以上の基で任意に置換されたC6〜C30アリールラジカルを表し、これらの5つのアルキルラジカルが、場合により、ヘテロ原子によって中断され;それぞれが結合する炭素原子が、合計で5〜30のリンクと1〜5のヘテロ原子を含む芳香族または非芳香族C6〜C30または複素環式環を形成する置換基R1、R2、R3;前記環が、任意に、集光させるものであってもよく、任意に、カルボニル基が挿入されたものであってもよく、C1〜C4アルキル基,(C1〜C4)アルコキシ(C1〜C4)アルキル、アミノ、ジ(C1〜C4)アルキルアミノ、ハロゲン、フェニル、カルボキシ、トリ(C1〜C4)アルキルアンモニオ(C1〜C4)アルキルから選択される1以上の基で置換されていても置換されていなくてもよい)で表されるナフタルイミドであってもよい。
【0321】
蛍光化合物は、
【化13】

(式中、Rはメチルラジカルまたはエチルラジカルを表し;R’はメチルラジカルを表し、X−は、塩化物、ヨウ化物、硫酸塩、メト硫酸塩、酢酸塩、過塩素酸塩タイプのアニオン)などのスチルベン誘導体であってもよい。
【0322】
言及できるこのタイプの化合物の例に、UBICHEMから販売されているPhotosensitizing Dye NK−557があり、ここで、Rはエチルラジカルを表し、R’はメチルラジカル、X−はヨウ化物を表す。
【0323】
蛍光化合物は、
【化14】

などのメチン誘導体あるいは、一般式
【化15】

のオキサジンまたはチアジン誘導体であってもよい。
【0324】
ジシアノピラジン誘導体(日本ペイントから)、ナフトールアセタム、アザラクトン誘導体、ローダミン、キサンテンに言及することも可能である。
【0325】
前記化合物をコアまたは表面に含む有機(ラテックスなど)顔料または粒子あるいは鉱物(MgO、TiO2、ZnO、Ca(OH)2など)を用いることも可能である。
【0326】
蛍光化合物は、たとえば、量子ドットと呼ばれる小さな粒子の形態での蛍光効果を持つ半導体化合物であってもよい。
【0327】
量子ドットは、光励起下で、400nm〜700nmの範囲の波長で放射線を放出できる、ルミネッセント半導体ナノ粒子である。これらのナノ粒子は、たとえば、米国特許第6 225 198号明細書または米国特許第5 990 479号明細書、その中で引用されている刊行物、さらには以下の刊行物:Dabboussi B.O. et al “(CdSe)ZnS core−shell quantum dots: synthesis and characterization of a size series of highly luminescent nanocrystallites” Journal of Physical Chemistry B, vol 101, 1997, pp 9463〜9475およびPeng, Xiaogang et al, “Epitaxial Growth of Highly Luminescent CdSe/CdS Core/shell Nanocrystals with Photostability and Electronic Accessibility” Journal of the American Chemical Society, vol 119, N°30, pp 7019〜7029に記載された方法に従って製造できるものである。
【0328】
好ましい蛍光化合物は、オレンジ色および黄色などを放出するものである。
【0329】
好ましくは、本発明において光学的作用剤として用いられる蛍光化合物(単数または複数)は、最大反射率が波長範囲500nm〜650nm、好ましくは波長範囲550ナノメートル〜620ナノメートルにある。
【0330】
蛍光化合物の例として、以下のファミリに属するものがあげられる。ナフタルイミド;カチオンまたは非カチオンクマリン;キサンテノジキノリジン(特にスルホローダミンなど);アザキサンテン;ナフトールアクタム;アズラクトン;オキサジン;チアジン;ジオキサジン;アゾ、アゾメチンタイプまたはメチンタイプの蛍光ポリカチオン着色剤(単独または混合物として用いられる)。
【0331】
特に、以下に言及することができる。
・SANDOZによって販売され、以下の構造を有するJaune Brilliant B6GL
【化16】

・PROLABO、ALDRICHまたはCARLO ERBAから販売され、以下の構造を有するBasic Yellow 2またはAurAuramine O
【化17】

【0332】
使用する蛍光化合物は、アリールが、任意に置換されていてもよいピリジニウム、あるいは任意で置換されていてもよいイミジゾリニウムなどの別のカチオン基であるアミノフェニルエテニルアリール化合物であってもよい。
【0333】
一例として、蛍光化合物には、ピリジニウム核のアルキルラジカルがメチルラジカルまたはエチルラジカルを表し、ベンゼン環のそれがメチルラジカルを表す、2−[2−(4−ジアルキルアミノ)フェニルエテニル]−1アルキルピリジニウムなどが使用されてもよい。
【0334】
光学的作用剤は、いくつかの蛍光基を同一分子に含有するものであってもよい。例としては、
【化18】

(式中、R1およびR2は、同一であっても異なっていてもよく、
・水素原子、
・1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を含有し、任意に、少なくとも1個のヘテロ原子および/または少なくとも1個のヘテロ原子を含む基で中断および/または置換されるおよび/または少なくとも1個のハロゲン原子で置換される、直鎖または分枝鎖のアルキルラジカル、
・アリール基が6個の炭素原子を含有し、アルキルラジカルが1〜4個の炭素原子を含有し、アリールラジカルが、任意に、1〜4個の炭素原子を含有する1以上の直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルで置換され、任意に、少なくとも1個のヘテロ原子および/または少なくとも1個のヘテロ原子を含む基で中断および/または置換されるおよび/または少なくとも1個のハロゲン原子で置換されるアリールまたはアリールアルキルラジカルに相当し、
・R1およびR2は、任意に、複素環を形成するために窒素原子と結合されてもよく、1つ以上の他のヘテロ原子を含み、複素環は、任意に、好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する少なくとも1つの直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルで置換され、任意に、少なくとも1個のヘテロ原子および/または少なくとも1個のヘテロ原子を含む基で中断および/または置換されるおよび/または少なくとも1個のハロゲン原子で置換され、
・R1またはR2は、任意に、窒素原子と前記窒素原子を有するフェニル基の炭素原子の1つとを含む複素環に関与してもよく、
・R3、R4は、任意に同一であってもよく、水素原子または1〜4個の炭素原子を含有するアルキルラジカルを表し、
・R5部分は、任意に同一であってもよく、水素原子、ハロゲン原子または1〜4個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルを表し、任意に、少なくとも1個のヘテロ原子で中断され、
・R6部分は、任意に同一であってもよく、水素原子;ハロゲン原子;任意に、少なくとも1個のヘテロ原子および/または少なくとも1個のヘテロ原子を有する基で置換および/または中断されるおよび/または少なくとも1個のハロゲン原子で置換される1〜4個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルを表す)などの二量体があげられる。
【0335】
Xは、
・1〜14個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルあるいは、2〜14個の炭素原子を含有するアルケニルラジカル、任意に、少なくとも1個のヘテロ原子および/または少なくとも1個のヘテロ原子を有する基で中断および/または置換されるおよび/または少なくとも1個のハロゲン原子で置換され、
・任意に、1〜14個の炭素原子を含有する少なくとも1つの直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルで置換され、任意に、少なくとも1個のヘテロ原子で置換され、1〜4個の炭素原子を含有し、任意に少なくとも1個のヘテロ原子で置換される少なくとも1つの直鎖または分枝鎖のアミノアルキルラジカルを有し、あるいは少なくとも1個のハロゲン原子を有する5または6つの結合を含む複素環ラジカル、
・1〜4個の炭素原子を含有するアルキルラジカルにより、任意に縮合、分離または分離されなくてもよく、アリールラジカルが(単数または複数)が、任意に、少なくとも1個のハロゲン原子で置換される、あるいは1〜10個の炭素原子を含有し、任意に、少なくとも1個のヘテロ原子および/または少なくとも1個のヘテロ原子を有する基で置換および/または中断される少なくとも1つのアルキルラジカルで置換される芳香族またはジ芳香族ラジカル、
・ジカルボニルラジカル、
・場合により、1つ以上のカチオン電荷を有する基X、
・aは0または1と等しい)を表す。
【0336】
Y−部分は、任意に同一であってもよく、nが、少なくとも2かつ最大で蛍光化合物に存在するカチオン電荷の数に等しい整数である、有機または鉱物アニオンを表す。
【0337】
他の二量体としては、たとえば付着点が2つの非カチオン基の間に形成される二量体など、あるいはたとえば、ピリジニウム基がイミダゾリニウム基などの別のアリールカチオン基によって置き換えられている二量体などが可能である。
【0338】
ジシアノピラジンファミリも、オレンジ色で蛍光を発し、本発明で対象となる化合物を提供する場合がある。
【0339】
オレンジ色で蛍光を発する顔料を使用してもよい。一例として、SunChemicalから販売されているSunbrite−SG2515黄オレンジ顔料があげられる。
【0340】
光保護組成物の適用
利用者は、フォトクロミック組成物の層を広範囲に展着させるか、反対に図12に示すように特定のゾーンだけに局所的に展着させて、光保護組成物を、処理されるゾーン全体に適用してもよい。同図では、感光性メイクアップは、フォトクロミック組成物PCが光保護組成物PPで完全に覆われた状態で作り出されている。光保護組成物は、たとえば、フォトクロミック組成物がコーティングされたゾーンの縁に局在することで、感光性メイクアップがフォトクロミック組成物の層よりも狭い場合に、この感光性メイクアップパターンを囲むものであってもよい。
【0341】
光保護組成物層は、ケラチン物質、たとえば皮膚に結合される可撓性フィルムの形をとってもよい。フィルムの物質は、光学的作用剤として作用してもよいおよび/またはフィルムが、フィルムの物質に分散された少なくとも1種類の光学的作用剤を含有するものであってもよい。フィルムは、たとえばインプレッションまたは多層干渉構造の形で、光学的作用剤を含有するコーティングを有するものであってもよい。
【0342】
利用者は、前記フィルムをフォトクロミック組成物層の上全体に適用してもよいし、フィルムを切断して、呈色ゾーンは覆わずに非呈色ゾーンだけを覆うようにすることも可能である。
【0343】
感光性メイクアップの内容、たとえばその輪郭から始まって、保護フィルムを好適な形状に切断する、自動切断システムを使用してもよい。この場合、利用者は、切断された保護フィルムを非呈色ゾーンにのせる。
【0344】
本発明のもうひとつの実用例では、光保護組成物は、少なくとも1種類の光学的作用剤を支持した支持シートを処理対象ゾーンに適用することによって、転写によって被着される。利用者は、シートをフォトクロミック組成物がコーティングされたケラチン物質と接触させた上で、摩擦または他の手段、たとえば熱または溶媒を用いて、光学的作用剤(単数または複数)がフォトクロミック組成物層に転写されるようにする。
【0345】
本発明の一実用例では、光保護組成物層は可逆性すなわち、利用者は、フォトクロミック組成物の第1の層を除去することなく、この光保護組成物層を除去することが可能である。
【0346】
この目的のために、第1の層は、耐水性であるか水と界面活性剤との混合物に対して耐性があるように配合されていてもよく、第2の層は、耐水性ではないか水と界面活性剤との混合物に対して耐性がないように配合されていてもよい。
【0347】
剥離可能な第2の層を生成することも可能である。この目的のために、第2の層を使用して、第1の層への適用前または後で、粘性コーティングを形成してもよい。第2の層は、剥離可能である場合、たとえばエラストマー材料を含む。
【0348】
本発明の一実用例では、第2の層は、たとえばシリコーンまたはフッ素化化合物などの表面張力の低い化合物を利用しているフォトクロミック組成物によって、第1の層に対する付着性が低い。本発明の別の実用例では、光保護組成物層の除去を容易にする中間の非粘着性層が、第1の層と第2の層との間に介在している。
【0349】
特に、可逆的である場合、光保護組成物層は、たとえば20以上の非常に高い遮蔽力Fを有するものであってもよい。
【0350】
光学的作用剤(単数または複数)を含有する単層あるいは、いくつかの異なる光学的作用剤を含有するいくつかの層を被着させてもよい。
【0351】
一例として、フォトクロミック層がUV光および可視光から保護されるようにする単層を被着させてもよい。
【0352】
また、特定のUV保護層ならびに、UVおよび/または可視域における追加の保護のための追加の層を被着させることが可能であり、前記追加の層は、たとえば着色剤または熱的に不安定なフォトクロミック剤を含む。
【0353】
また、1つのUV保護層と、UV領域における追加の保護を保証する蛍光化合物を含む追加の層を用いることも可能である。
【0354】
特定の可能性では、フォトクロミック組成物の第1の層と、フォトクロミック組成物用の呈色放射線に対してスクリーンを形成する光学的作用剤を含む光保護性の第2の層とを含む多層フィルムが適用される。このフィルムは、自立型であってもよいし、転写によって適用されるものであってもよい。
【0355】
フォトクロミック組成物を、そのままケラチン物質に適用してもよいし、ベース層、特に以下で定義するようなベース層にのせてもよい。
【0356】
第2の組成物を、フォトクロミック組成物層に直接的に適用してもよいし、あるいは、上述したように2つの間の中間層に適用してもよい。適宜、第2の組成物自体に、追加の層をコーティングしてもよい。
【0357】
さまざまな層の成分の選択
本発明の一実用例では、2つの連続的に適用される層、たとえば、フォトクロミック組成物の層と光保護組成物の層あるいは、ベース層とフォトクロミック組成物の層あるいは、フォトクロミックの層と感光性メイクアップを保護する材料を形成することを想定した層は、物理的に補完し合うものであってもよく、第2の層が第1の層上に把持されるのを可能にまたは容易にするおよび/または第1の層上における第2の層の展着を可能にまたは容易にするものである。
【0358】
互いに補完されるイオン性が存在すると好都合な場合がある。よって、たとえば、第1の層は、アニオンポリマーを含有するものであってもよく、この場合、第2の層は、カチオン化合物、たとえばカチオンフィルタ、カチオン着色剤またはカチオン蛍光化合物を含有する。その逆も可能である。
【0359】
また、表面張力が互いに補完されると好都合な場合がある。よって、第1の層は、たとえば、少なくとも1種類の親水性ポリマーを用いることにより、好ましくは40mN.m-1[1メートル当たりのミリニュートン]を上回る第1の表面張力を有するものであってもよい。第2の層は、たとえば主に油性、シリコーンまたはフッ素化組成物を用いることにより、あるいは1種類以上の界面活性剤が導入された水性組成物を用いることにより、第1の層よりも低い、好ましくは40未満の第2の表面張力を有するものであってもよい。
【0360】
第2の層の成分(溶媒、接着剤など)は、これらの成分が第1の層の溶媒ではないように選択されるものであってもよい。
【0361】
一例として、有機溶媒(エタノール、アセトン、アルキルアセテート、炭素系油(たとえば、イソドデカン)、揮発性シリコーン)を第1の層に選択してもよく、水性または含水アルコール溶媒を第2の層に選択してもよいし、逆でもよい。
【0362】
また、2種類の有機溶媒または2種類の水性溶媒を、2つの層について選択することが可能である。ただし、第1の層の乾燥時に、変換が生じるものとする。一例として、ラテックスを含有する第1の層を用いる。乾燥時、ラテックスは凝集し、第1の層を第2の層の適用に対して不活性にする。また、アンモニアなどの揮発性塩基との中和によって水溶性になる低水溶性アクリル/アクリレートコポリマーを含有する第1の層を用いることも可能である。第1の層の乾燥後、アンモニアが蒸発し、第1の層を耐水性にする。
【0363】
ベース層
第1の光保護組成物のベース層をケラチン物質に適用すればよい。このベース層は、少なくとも一時的に波長λ、特に320nm〜440nmの範囲内の波長でスクリーンを形成できる、少なくも1種類の光学的作用剤を含有し、前記ベース層には第2のフォトクロミック組成物が適用されていてもよく、第2のフォトクロミック組成物は、少なくとも波長λの放射線に曝露することで呈色可能である。光学的作用剤(単数)または複数は、上述したものから選択されてもよい。
【0364】
一例として、ベース層として適用される光保護組成物は、少なくともそれが適用されている間、太陽光線に対して少なくとも2、好ましくは5または10の遮蔽力Fを有する。
【0365】
ベース層を用いることで、フォトクロミック組成物のフォトクロミック剤(単数または複数)が下に位置するケラチン物質に移動しにくくして、皮膚にしみが生じる危険性を低減することができる。
【0366】
2つの相を形成するために、組成物のうちの一方がたとえば水性で他方は水性ではない、あるいはその逆で、第1および第2の組成物が互いに混和しない場合に、上記の移動がさらに遅くまたは妨害される場合がある。
【0367】
よって、フォトクロミック組成物の溶媒ではない第2の組成物のための成分(溶媒、接着剤など)を選択することが可能であり、逆もそうである。一例として、第2の光保護性組成物について、アルコールまたはケトン、たとえば特にエタノールまたはアセトン、アルキルアセテート、炭素系油、特にイソドデカンまたは揮発性シリコーンから有機溶媒が選択され、第1のフォトクロミック組成物については、水性溶媒または含水アルコール溶媒から選択されるか、その逆である。
【0368】
また、乾燥時に変換が生じるような形で、2種類の組成物について2種類の有機溶媒または2種類の水性溶媒を選択することも可能である。一例として、ラテックスを含有する第1の組成物を用いてもよい。乾燥時、この組成物は、凝集して層をフォトクロミック組成物の適用に対して不活性にする。
【0369】
ベース層は、フォトクロミック組成物よりも広い表面に形成されるものであってもよい。これにより、利用者は、適用される2種類の組成物のアウトラインを正確に対応させることに気をもまなくてよいため、フォトクロミック組成物の適用が容易になる。
【0370】
ベース層は、感光性メイクアップのかなり前、たとえば15分よりも前に適用できるものであり、それによって、上述したようにベース層が乾燥するのに十分な時間が得られ、その上に適用された層においてベース層を不溶性またはほぼ不溶性にする効果を有することがある。さらに、乾燥時、ベース層は、任意に、比較的なめらかな表面を形成し、フォトクロミック組成物の層を均一な厚さで適用しやすくしてもよい。皮膚が滑らかであれば、第2の層はさらに薄くてよいこともあり、呈色後に魅力のない視覚的効果を生み得る不均一な厚さとなる危険性が低減される。
【0371】
必要であれば、少なくとも1つの中間層をベース層に適用し、これをフォトクロミック組成物とベース層との間に配置してもよい。
【0372】
この中間層は、ベース層でのフォトクロミック組成物の保持性を向上させ、あるいはその逆で、メイクアップ落としなどの除去を容易にする効果を有することがある。中間層は、ポリマーまたはワックスの層であってもよい。
【0373】
さらに、別の組成物の層をベース層の下に適用して、皮膚に対するその付着を容易にしてもよい。よって、ベース層は、皮膚と直接的に接触している必要はない。変形例では、ベース層を皮膚または他のケラチン物質に直接適用する。
【0374】
感光性メイクアップの機械的保護
フォトクロミック組成物の少なくとも1つの層をケラチン物質に適用してもよく、第2の組成物によって、あるいは追加されるエネルギによって、フォトクロミック組成物の層で感光性メイクアップを機械的に保護する材料を形成してもよい。
【0375】
少なくとも1つの被覆層をフォトクロミック組成物の層の上に被着させることが可能であり、それにより感光性メイクアップの機械的保護を保証する材料を形成できるようになる。
【0376】
感光性メイク仕上げについては、感光性メイクアップを機械的に保護する材料を形成する前または後で作り出せばよい。
【0377】
感光性メイクアップの機械的保持性を向上させると、形成される画像の劣化を遅らせることができ、画像の鮮明さの経時的な劣化も遅くなる。さらに、感光性メイクアップは、摩擦や動きに対する感度が低くなる。フォトクロミック組成物が衣服または身体の他の領域についてしまう危険性も、低減される。
【0378】
よって、背中、腹、胸、脚または尻といった衣服で覆われたゾーンなどのゾーンに、一層持ちのよい感光性メイクアップを作り出すことができる。
【0379】
前記材料は、溶媒蒸発により、あるいは重合反応または架橋反応により形成されるものであってもよく、これは必ずしも完全である必要はない。重合および/または架橋による表面硬化は、保持性を向上させるのに十分であることが分かることもある。
【0380】
感光性メイクアップの機械的保護を提供する材料は、好都合なことに、透明である。
【0381】
材料がフォトクロミック組成物の層を覆っている場合、この材料は、日中に少しずつ摩耗することで、感光性メイクアップを保護する磨耗層を形成する。
【0382】
これがフォトクロミック組成物層を覆っている場合、この材料は、さらに光学的効果を提供する、たとえば誇張または着色効果を提供することにより、感光性メイクアップの審美性の一助をなす場合がある。
【0383】
フォトクロミック組成物が、フォトクロミック組成物を呈色させるのに用いる波長とは異なる波長でフォトクロミック組成物の層を照射することで感光性メイクアップを消色させる可能性を提供する場合、この材料は、感光性メイクアップの除去が望ましい場合にはそれを何ら妨害せずに、その保持性を向上させることができ、利用者は、この目的のためにメイクアップを完全に落とす必要はない。
【0384】
感光性メイクアップを機械的に保護する材料を形成するために、フォトクロミック組成物および/または被覆層に重合可能および/または架橋可能な化合物を用いることが可能である。
【0385】
フォトクロミック組成物は、潜在的に重合および/または架橋できる第1の作用剤を含有するものであってもよい。第1の化合物と関連することで、重合または架橋を実施できる第2の化合物を適用する。また、場合により、重合および/または架橋を生じさせるのに照射が役立つこともある。
【0386】
他の実用例では、フォトクロミック組成物を適用し、感光性メイク仕上げを作り出した後で、第2の組成物を適用する。
【0387】
フォトクロミック剤(単数または複数)を消色させるのに役立つ照射前または照射後のいずれかに被覆層を適用してもよい。その平均厚は、少なくとも2μm[マイクロメートル]であればよく、材料がむしろ硬質であるかエラストマーである場合、少なくとも5μmであり、好ましくは、材料がむしろ軟らかい弾性率を有する場合、少なくとも10μmである。
【0388】
ケラチン物質が感光性メイクアップを含む単層で被覆される場合、前記層の厚さは、好ましくは5μmを超え、より好ましくは10μmである。この厚さは、好ましくは1mm未満である。
【0389】
フォトクロミック組成物が潜在的に架橋できる化合物のすべてまたはいくつかを含む場合、第2段階において、第1の組成物の乾燥前または乾燥後に、架橋を生じさせるまたは架橋に必要な第2の化合物を適用することが可能である。第2の層の厚さ(溶媒の蒸発後に表される)は、好ましくは第1の層の厚さの少なくとも20%に等しく、好ましくは第1の層の厚さの50%を超える。第2の層の厚さは、好ましくは5μmを超える。
【0390】
フォトクロミック組成物が潜在的に架橋可能な化合物を含まない場合、第2段階において、架橋を生じさせる化合物を含有する第2の組成物を適用することが可能である。第2の層の厚さ(溶媒の蒸発後に表される)は、好ましくは第1の層の厚さの少なくとも10%に等しく、好ましくは第1の層の厚さの30%を超える。第2の層の厚さは、少なくとも5μmを超え、好ましくは1mm未満である。
【0391】
この材料の形成を可能にする重合および/または架橋は、化学的であっても物理的であってもよい。
【0392】
化学的重合および/または架橋
「化学的架橋」という用語は、化合物が単独であろうと第2の化合物との反応によるものであろうと、あるいは放射線の作用によるものやエネルギの供給によるものであれ、分子間に共有化学結合を形成できることを意味する。その結果、前記化合物を含む材料の凝集性が高まる。
【0393】
化合物は、単純な分子であってもよいし、オリゴマーまたはポリマーなど、すでにいくつかの分子の組み合わせの結果であってもよい。化合物は、1つ以上の反応性官能基を有するものであってもよい。
【0394】
好ましい分子は、架橋後に固体が得られるおよび/または変形可能であるがエラストマー性の材料が得られる分子である。
【0395】
化学的官能基は、性質が同一の別の官能基と反応するものであってもよく、別の化学的官能基と反応するものであってもよい。
【0396】
性質が同一の別の官能基との反応
これらは、たとえばエチレン官能基、特に、アクリレート、アクリル、メタクリレート、メタクリルまたはスチレンである。
【0397】
反応するために、これらの分子は通常、たとえば光、熱、触媒の使用または光重合開始剤との組み合わせ、場合により光重合開始剤の作用スペクトルの拡大を想定した光増感剤との組み合わせなど、外的な形態の活性化を必要とする。光重合可能および/または光架橋可能な組成物が、たとえば、カナダ特許第1 306 954号明細書および米国特許第5 456 905号明細書に記載されている。
【0398】
欧州特許出願公開第1 247 515号明細書に記載されたようなエチレン官能基を有するポリマー化合物を使用することも可能である。
【0399】
エチレン官能基は、反応を加速し、外部からの活性化の提供を冗長にするために、電子吸引基によって活性化されてもよい。これは、水などの触媒だけが存在することで反応が生じるエチルシアノアクリレートモノマーでは典型的である。
【0400】
エチレン官能基は、たとえば電子吸引基によって、適度に活性化されるものであってもよい。利点は、反応には反応の開始と収率とを制御する際に重要な外部からの活性化を必要とするが、光重合開始剤は必要としない点である。たとえば、シアノアクリレートモノマー、特に、エステル官能基が有する基が少なくとも2つ、可能であれば4つの炭素の連鎖を含有する、シアノアクリレートモノマーであってもよい。
【0401】
光などの外部からの活性化を必要とするが、光重合開始剤は必要としない分子が好ましい。したがって、欧州特許出願公開第1 572 139号明細書に記載されているものなどの光二量体化によって反応できる分子、特に、以下のような官能基を有する分子が特に好ましい。
1)スチルバゾリウム
【化19】

式中、
・Rは、水素原子、アルキル基またはヒドロキシアルキル基を表し、
・R’は、水素原子またはアルキル基を表す。
2)スチリルアゾリウム
【化20】

式中、
Aは、硫黄原子、酸素原子またはNR’基またはC(R’)2基を示し、RおよびR’は、上記で定義された通りである。
3)カルコン
4)(チオ)シンナメートおよび(チオ)シンナムアミド
5)マレイミド
6)(チオ)クマリン
7)チミン
8)ウラシル
9)ブタジエン
10)アントラセン
11)ピリドン
12)ピロリジノン
13)アクリジジニウム塩
14)フラノン
15)フェニルベンゾキサゾール
16)スチリルピラジン
【0402】
性質が同じ別の官能基でなされる反応は、エチレン官能基が関与する反応に限定されるものではない。
【0403】
以下のような、縮合によって反応できる化合物も好ましい。
・シロキサン基、特にジアルコキシ−またはジヒドロキシ−シラン官能基、トリアルコキシ−またはトリヒドロキシ−シラン官能基。アルキルトリアルコキシシラン官能基またはジアルキルトリアルコキシシラン官能基、特に、アルキル基がアミンなどの水溶性化官能基を有するアルキルアルコキシシラン官能基を持つ分子、たとえば、アミノトリエトキシシランまたはアミノトリエトキシシランなどの分子またはこのような官能基を有する分子などを用いることが可能である。シロキサンを主成分とする小分子(モノマーまたはオリゴマー)に加えて、特にフランス特許出願公開第2 910 315号明細書に記載されている、質量がより大きい化合物を使用してもよい。
・チタンを主成分とするゾル−ゲル
【0404】
これらの分子を用いることで、開始および反応収率を制御することが可能である。
【0405】
酸化による反応が可能な化合物、少なくとも2つのヒドロキシル官能基あるいは、1つのヒドロキシル官能基および1つのアミン官能基あるいは、1つのヒドロキシル官能基、たとえばカテコールまたはジヒドロキシインドールを有する芳香族などの化合物も好ましい。酸化剤は、空気からの酸素または別の酸化剤、たとえば過酸化水素であってもよい。
【0406】
別の官能基との反応
このような状況で反応する分子は、相補的な2つのタイプの官能基を有する。これらは、官能基FAを有する分子が官能基FAと反応可能な官能基FBを有する分子と接触する系であってもよい。
【0407】
これらは、同一構造上に1つ以上の官能基FAおよび1つ以上の官能基FBを有する分子であってもよい。
【0408】
官能基FAは、たとえば、下記から選択されるものであってもよい。
・エポキシド
・アジリジン
・ビニルおよび活性化ビニル、特に、アクリロニトリル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル
・クロトン酸およびクロトン酸エステル、ケイ皮酸およびケイ皮酸エステル、ステリンおよび誘導体、ブタジエン
・ビニルエーテル、ビニルケトン、マレイン酸エステル、ビニルスルホン、マレイミド
・カルボン酸無水物、塩化物およびエステル
・アルデヒド
・アセタール、ヘミアセタール
・アミナール、ヘミアミナール
・ケトン、α−ヒドロキシケトン、α−ハロケトン
・ラクトン、チオラクトン
・イソシアネート
・チオシアネート
・イミン
・イミド、特に、スクシンイミド、グルチミド
・N−ヒドロキシスクシンイミドエステル
・イミダート
・チオ硫酸塩
・オキサジンおよびオキサゾリン
・オキサジニウムおよびオキサゾリニウム
・C1〜C30アルキルまたはC6〜C30アリールまたは式RXを有し、X=I、Br、Clであるハロゲン化アラルキル
・不飽和のハロゲン化炭素環またはハロゲン化複素環、特に、クロロトリアジン
・クロロピリミジン、クロロキノキサリン、クロロベンゾトリアゾール
・ハロゲン化スルホニル、すなわち、RがC1〜C30アルキルであるRSO2−ClまたはRSO2−F
【0409】
例示として、基FAを含む官能基を有する以下の分子をあげることができる。
・特に、たとえばISPにより商品名Gantrezで販売されているメチルビニルエーテルとマレイン酸無水物のコポリマー
・特に、Polysciencesにより販売されているグリシジルポリメタクリレート
・特に、Shinetsuにより販売されている(参照X−2Z−173 FXまたはDX)、グリシジルポリジメチルシロキサン
・たとえば、HerculesによりHerculesの商品名Delsette 101、Kymene 450で販売されているエポキシポリアミドアミン
・エポキシ−デキストラン
・NaIO4を用いる多糖の酸化によって得られるポリアルデヒド多糖類(Bioconjugate Techniques; Hermanson GT, Academic Press, 1996)。
【0410】
官能基FBは、X=O、N、S、COOかつn=1または2であるXHn官能基から選択されるものであってもよく、特にアルコール、アミン、チオール、カルボン酸である。
【0411】
FBタイプの官能基を有する分子の例は、以下のとおりである。
・特に、Dendritech、DSM、Sigma−Aldrichによって販売されているPAMAMデンドリマー(DENDRITECH提供のSTARBURST、PAMAM DENDRIMER、G(2,0))
・特に、Perstorp、DSMによって販売されているヒドロキシル官能基を有するデンドリマー(例:HBP TMP core 2 Generation PERSTORP)
・特に、BASFによって商品名Lupasolで販売されているPEI(ポリエチレン−イミン)
・PEIチオール
・特に、チッソにより販売されているポリリシン
・HPセルロース、たとえばAQUALON提供のKLUCELEF
・たとえば、Carbomerにより販売されているアミノ−デキストラン
・たとえば、BASFによる国際特許出願公開第WO−01/25283号パンフレットに記載されているアミノ−セルロース
・PVA(ポリビニルアセタール)、たとえばAIRPRODUCTS CHEMICAL提供のAIRVOL 540
・たとえば、Carbomerによって販売されているアミノPVA
・キトサン
【0412】
この第2の例は、ヒドロシリル化によって反応できる分子
【化21】

(Wは、たとえば、炭素またはケイ素含有鎖を表す)
も含む。
【0413】
2つの成分、市販の分子、触媒条件、使用条件についての詳細は、フランス特許出願公開第2 910 315号明細書に記載されている。
【0414】
ある特定の可能性では、皮膚上にすでに存在する分子または皮膚から分泌される分子を、試薬または触媒剤として用いる。それは一般に、シアノアクリレート反応またはシロキサンが関与する特定の反応の一助となり得る、水である。
【0415】
別の特定の可能性では、分子を、周囲空気中に存在する試薬または触媒剤として用いる。それは一般に、乾性油などの特定の油、特に、あまに油、キリ油(またはシナアブラギリ油)、オイチシカ油、ベルノニア油、ポピーシード油、ザクロ油、カレンデュラ油またはアルキド樹脂などの乾性植物油などの架橋反応に関与する酸素である。反応は、オクチル酸塩、リノール酸塩またはオクタン酸塩などの形での、コバルト塩、マンガン塩、カルシウム塩、ジルコニウム塩、亜鉛塩、ストロンチウム塩、鉛塩、リチウム塩、鉄塩、セリウム塩、バリウム塩またはスズ塩などの触媒を用いることで加速されるものであってもよい。
【0416】
別の特定の可能性では、再配置によって互いに結合する分子を用いる。よって、内部ジスルフィドを有する分子を用いることが可能である。内部ジスルフィドを開き、前記ジスルフィドを反応させることによって、分子間に新しい共有結合を形成することが可能である。
【0417】
触媒を使用して、反応を加速してもよい。一例として、マンガン塩、銅塩、鉄塩、プラチナ塩、チタン酸塩などの金属塩またはオキシダーゼまたはラクターゼなどの酵素を使用してもよい。
【0418】
性質が同じまたは異なる別の官能基と反応する化学的官能基を用いて、いくつかの適用形態が可能である。
【0419】
一例として、反応するすべての成分がフォトクロミック組成物中に含まれ、あるいはすべての成分が、たとえば化合物のうちの1つなどの1以上の化合物または触媒を除いて、フォトクロミック組成物中に含まれる。フォトクロミック組成物に、いずれの成分も含まれないこともある。これらはいずれも、フォトクロミック組成物の適用後、好ましくは感光性メイク仕上げを作り出した後に、一度にまたは異なる時点で適用される。
【0420】
物理的架橋
分子間に持続的な物理的結合を形成でき、最終材料に耐水性を持たせる成分を使用する場合、架橋は物理的なものであってもよい。これらの結合は、非共有結合的であり、イオンタイプまたは水素タイプのものである。
【0421】
言及できる例は、カルシウム塩、亜鉛塩、ストロンチウム塩またはアルミニウム塩などの、2価または多価タイプの塩との混合物である。
【0422】
一例として、アルギン酸誘導体などの化合物Aと、カルシウム塩などの化合物Bとを混合してもよい。一例として、アルギン酸誘導体は、フォトクロミック組成物に含有される。第2の段階において、たとえば、架橋を引き起こすために、塩化カルシウムの水溶液がスプレーの形で適用される。
【0423】
たとえば、ポリシロキサンおよびポリ尿素ブロックコポリマー、特に以下の式
【化22】

(式中、
・Rは、1個以上のフッ素または塩素原子で置換されていてもよい、1〜20個の炭素原子を含有する1価の炭化水素ラジカルを表し、
・Xは、1〜20個の炭素原子を含有し、隣接しないメチレン単位を−O−ラジカルによって置き換えることもできる、アルキレンラジカルを表し、
・Aは、酸素原子またはアミノラジカル−NR’−を表し、
・Zは、酸素原子またはアミノラジカル−NR’−を表し、
・R’は、水素または1〜10個の炭素原子を含有するアルキルラジカルを表し、
・Yは、必要であればフッ素または塩素で置換され、1〜20個の炭素原子を含有する2価の炭化水素ラジカルを表し、
・Dは、必要であればフッ素、塩素、C1〜C6アルキルまたはC1〜C6アルキルエステルで置換され、1〜700個の炭素原子を含有し、隣接しないメチレン単位を−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−ラジカルによって置き換えてもよいアルキレンラジカルを表し、
・nは、1〜4000の数字であり、
・aは、少なくとも1の数字であり、
・bは、0〜40の数字であり、
・cは、0〜30の数字であり、
・dは、0を超える数字である)
で表されるものなど、強い水素結合を形成できる分子についても言及することができる。
【0424】
官能基の詳細、市販の分子および実施条件は、欧州特許出願公開第0 759 812号明細書に記載されている。
【0425】
特に耐性の高いコーティングの形成につながる架橋化合物
架橋が化学的であるか物理的であるかを問わず、架橋化合物を、特に水および水分に対して最大限に高い耐性を示すよう選択することができる。
【0426】
よって、特にバストまたは腋の下などの最も汗をかく身体の部分を処理するための疎水性の高いコーティングを生成することが可能である。
【0427】
一例として、セルロース誘導体などのポリオールタイプの第1の反応成分FAを使用してもよく、ペルフルオロアルキルトリエトキシシランタイプの第2の反応成分FBを使用してもよい。そのような状況下、適用は二段階で実施される。ポリオールをフォトクロミック組成物に導入する。成分FBを含有するコーティング組成物をフォトクロミック組成物に適用する。
【0428】
別の例では、架橋コーティングを生成できる系を用いる。これは、疎水性粒子を含有する。これら組み合わせの例示として、フランス特許出願公開第2 910 315号明細書に記載されているように、疎水性粒子と凝縮技術またはヒドロシリル化技術との組み合わせがある。使用できる固体粒子は、鉱物または有機物由来のものであってもよく、多孔性でも非多孔性でもよく、色つきであっても色つきでなくても構わない。固体粒子は、どのような形態であってもよく、好ましくは球形である。粒子はもともと疎水性であってもよく、これは、たとえばPTFE粉末の場合にそうである。あるいは、粒子は、特に炭化水素、シリコーン、蛍光化合物またはフルオロシリコーンのコーティングによって疎水性にされてもよい。
【0429】
また、皮脂および脂肪に対して一層高い耐性を提供する、酸化物または亜鉛塩を主成分とするコーティングあるいは、伸長または引き裂きに対して一層耐性が高くされるコーティングを生成することが可能である。これらの改善を、唇、手、腋の下、首または関節付近の任意のゾーンなど、最も動く身体の部分への適用時に利用してもよい。
【0430】
伸長強度については、たとえばエラストマー特性を持つ材料を生成する架橋成分を用いることで得ることができる。また、非反応性化合物を組成物(単数または複数)に取り入れ、エラストマー性、たとえば除タンパク天然ラテックスまたは繊維などのエラストマーポリマーを提供することが可能である。
【0431】
特定の可能性の1つに、織布または不織布に架橋成分を含浸させることがある。織布または不織布を、感光性メイクアップ組成物の適用前、適用時または適用後に皮膚に適用すればよい。組成物を布帛に含浸させることで、機械的強度が得られる。
【0432】
また、布帛と感光性メイクアップ組成物とを組み合わせ、一度このようにした上で、接着剤を用いてまたは用いないでこれを皮膚に適応することも可能である。
【0433】
潤滑用の活性成分、特に、窒化ホウ素またはアルミニウムなどの固体潤滑剤を組成物に取り入れてもよい。
【0434】
また、固体フィラー、特に、金属酸化物粒子、金属水酸化物粒子、金属カーボネート粒子または有機粒子などの親水性であるか親水性にされたフィラーを取り入れることが可能である。これらのフィラーは、耐摩耗性をさらに高めることがある。
【0435】
摩耗層を形成する被覆層
コーティング層は、フォトクロミック組成物層の上に機械的保護材料を形成でき、摩耗層として作用する。
【0436】
この場合、コーティング層は、好都合なことに、溶媒の留去後に粘性であり、これを照射の前または後に適用すればよい。
【0437】
「粘性」という用語は、層が接触に対して耐性であることを意味する。一例として、表面積が1cm2[平方センチメートル]の平らなプローブをコーティング層に近づけ、これを10N/cm2[1平方センチメートルあたりのニュートン]の圧力で接触させて、5秒間の接触時間経過後にプローブを引く際に、プローブが何も伴ってはならない。よって、油性化合物は除外される。
【0438】
コーティング層は、溶媒の留去後は粘着性ではない。「粘着性ではない」という表現は、層が引きに対して耐性を示さないことを意味する。一例として、表面積が1cm2の平らなプローブを層に近づけ、これを10N/cm2の圧力で接触させて、5秒間の接触時間経過後にプローブを引く際に、プローブは、その引きのために抵抗力を必要としてはならない。よって、PSA(感圧接着剤)として知られる化合物は除外される。
【0439】
コーティング層を形成する材料は、弾性率が、500MPa[メガパスカル]未満かつ100kPa[キロパスカル]を超えればよく、好ましくは200MPa〜1MPaの範囲内である。
【0440】
その平均厚さは、少なくとも1μmであり、材料の弾性率が10MPaを超える場合、可能であれば少なくとも2μmである。その平均厚さは、少なくとも2μmであり、材料の弾性率が10MPa未満である場合、可能であれば少なくとも5μmである。
【0441】
コーティング層を形成する材料がエラストマーすなわち、破断前に最大変形率が少なくとも400%であり、1分間待った後、弾性回復率が少なくとも90%である場合、平均厚さは、弾性率が10MPa未満であっても、好ましくは少なくとも1μmである。
【0442】
「弾性回復率」という用語は、40%引っ張り変形後に荷重を除去した後、標本の初期の長さに戻る度合いを意味する。よって、標本の初期の長さがL0で、40%引っ張り変形と荷重除去後の長さがL(t)である場合、荷重を除いてから時刻tの時点での回復率R(t)は、次のとおりである。
100×(1−(L(t)−L0)/L0)/0.4)
【0443】
よって、L(t)=L0であれば、R(t)=100である。
【0444】
L(t)=1.4×L0であれば、R(t)=0である。
【0445】
まず厚さ約200μm、長さ約6cm、幅約1cmの標本を作製することにより回復試験を実施する。必要であれば、標本を任意に支持フィルム上に生成し、その機械的衝撃を標本の機械的特性と比較して小さいと判断する。
【0446】
標本に対して、0.1mm/s[1秒あたりのミリメートル]の速度でその長さの40%の引っ張り変形をほどこす。次に、荷重をなくして1分間経過させる。
【0447】
好ましくは、フォトクロミック組成物層に用いた溶媒とは非常に異なる溶媒をコーティング層に適用する。しかしながら、この状態は、特にフォトクロミック組成物層に架橋または凝集性化合物を用いる場合、回避されるとよい。
【0448】
一例として、フォトクロミック組成物層が、ガラス転移点Tgが40℃未満のラテックスと水を含有する場合、たとえば、コーティング層も水を主成分とするものであってもよい。
【0449】
フォトクロミック組成物層が、上述したものなどの溶媒と架橋可能な化合物とを含有する場合、たとえば、コーティング層は同一の溶媒を含有するものであってもよい。
【0450】
コーティング層を適切に生成する一助となるように、その適用前に、たとえば光または熱を与えてもよい。また、接着剤または特定の粉末など、付着を助ける樹脂または他の製品などから生成される中間層、特に、砥粒サイズがゆえに把持の際に上層を助けるものを被着させることも可能である。
【0451】
コーティング層の適用後、光または熱を与えてもよい。
【0452】
コーティング層は、徐々に消失するものであってもよい。この場合、感光性メイクアップ層は、経時的には変化せず、感光性メイクアップの精度が十分に保たれる。
【0453】
摩耗層を形成するコーティング層の成分
前記コーティング層を形成する際に使用できる化合物は、ポリ(メタ−)アクリル、ポリ(メタ−)アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリスチレンまたは溶解もしくは分散形態でのコポリマーなどのポリマーであり、たとえば、Mexomer、ultrahold Strong DR 25、28−29−30、Gantrez、Amerhold DR 25、amphomer、Luviset Si Pur、AQ 38またはAQ 48から選択される。
【0454】
ポリマーは、その硬度を調整するために、側基または末端基を有するものであってもよい。一例として、コーティング層を形成する材料は、VS80などのシリコーン官能基を有するアクリレートポリマーを含むものであってもよい。
【0455】
ポリマーは、たとえばグアーガム、カロウバガムなどのポリオース系ポリマー、あるいはHPMCP[ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート]などのセルロース誘導体またはタンパクなど、天然ポリマーであっても修飾された天然ポリマーであってもよい。
【0456】
ポリマーは、炭化水素ポリマーであってもよい。
【0457】
ポリマーは、たとえばシリコーンガムなどのシリコーンであってもよい。
【0458】
大半のポリマーに固有の性質では、常に必要な硬度が得られるとはかぎらないため、可塑剤を加えると有用なことがある。
【0459】
通常用いられる可塑剤、たとえばグリコールエーテル(トリプロピレングリコールモノメチルエーテル)(DOW CHEMICALから入手できるPPG3メチルエーテルとして知られる)またはグリセリンに加えて、プロピレンカーボネート、アルコール、シリコーンまたは炭素系油などの特定の不揮発性溶媒を含むようにしてもよい。
【0460】
可塑剤の量は、ポリマーおよびその固有の性質の関数として計算される。一般的な値は次のとおりである(ポリマーの重量に対する%)。
【0461】
〔表1〕
グリコールエーテル グリセリン
Ultrahold Strong (BASF) 5% 10%
Mexomer (Chimex) 4% 8%
AQ 48 (Eastman Chemicals) 1% 2%
Luviset Si Pur (BASF) 3% 5%
VS 80 (3M) 5% 10%
【0462】
摩耗層に品質を損なわせることなく摩耗層の有効寿命を延ばすことができる鉱物または有機粒子を、組成物に含めるようにしてもよい。この粒子は、皮膚の突っ張りを引き起こさないが、剥落または球状化の現象を生じさせることがある。よって、好ましくは、粒子40重量%の濃度を超えないようにする(凝集可能な粒子は含まれない)。
【0463】
適用を助けるレオロジカル作用剤を含むようにしてもよい。
【0464】
また、沸点が80℃〜200℃の範囲にある界面活性剤または特定の溶媒などの展着剤を含むことが可能である。これら溶媒は、組成物のひび割れを遅らせつつ、時間の経過とともに消失するという利点を有する。
【0465】
乾燥後の濃度と厚さ
乾燥後の厚さが上述の仕様と一致するように、適用量を考慮して、さまざまな成分の濃度を調整してもよい。
【0466】
一例として、展着用に20mg/cm2の流体組成物を適用し、組成物が10%乾燥物質を含有すると仮定すると、約2mg/cm2を被着させることが可能である。密度が約1である場合、これは厚さ約20μmに相当する。
【0467】
別の例では、20%乾燥物質を含むエーロゾル組成物の噴霧が4秒間、顔から30cmのところで実施されると仮定すると、約0.4g[グラム]を400cm2に被着すなわち、1cm2あたり1mgを被着させることになる。相対密度が約1である場合、被着された層の厚さは約10μmになろう。
【0468】
よって、適用の形態およびガレヌス形態に応じて、乾燥物質濃度は1%〜50%であればよい。
【0469】
コーティング組成物は、乾燥していてもよい。
【0470】
他の成分
上述した成分に加えて、各組成物は、以下のことすなわち、ケラチン物質、特に皮膚上に分布させること、スキンケア、快適さ、たとえば臭いまたは軟らかさを提供すること、洗浄時の除去を助けること、たとえば、1種類以上の界面活性剤の使用、アストリンゼントなどの成分の皮膚への浸透を制限すること、または他の化粧的機能、たとえば加湿、色、光沢の提供および/または紫外線遮蔽による影響を制限すること、たとえば、自己日焼け剤またはビタミンD活性化剤の使用といったことを、可能にまたは容易にする成分を含有するものであってもよい。
【0471】
メイクアップ除去
メイクアップを落とす際、利用者は、非消色状態のフォトクロミック組成物の跡を残す場合がある。しかしながら、これらの跡が後に、たとえば周囲光中で数時間経過した後、呈色されてしまうことがある。その時点で、利用者がメイクアップを再び落とし始めるのは困難な場合がある。
【0472】
この問題を解決するために、メイクアップ落とし中または落とし後に、少なくとも1つの波長λでスクリーンを形成し、フォトクロミック組成物を呈色させるよう作用する少なくとも1種類の光学的作用剤を適用すると好都合な場合がある。
【0473】
前記光学的作用剤を、適宜、数回再適用してもよい。
【0474】
光学的作用剤は、メイクアップ除去組成物の一部であってもよい。
【0475】
「波長λでスクリーンを形成する」という表現は、光学的作用剤が波長λの放射線を少なくとも2分の1に減衰させることを意味し、測定は、上記にて詳細に説明したように、波長λを中心とする波長を持つゾーンに照射光を制限することにより吸収スペクトルを測定できる装置を用いて実施される。メイクアップ除去中、好ましくはメイクアップ除去後に光学的作用剤を適用すると、フォトクロミック剤の跡が呈色されるのを防止し、ケラチン物質または衣服にしみが生じる危険性が低減される。
【0476】
光学的作用剤の適用後1時間は、ケラチン物質を洗浄しないものとする。後に、利用者が洗浄する際、光学的作用剤によって保護されたフォトクロミック剤の非呈色状態の痕跡をなくすことができる。
【0477】
光学的作用剤の適用と関連したもう1つの利点は、新たな感光性メイク仕上げが作られたとき、光学的作用剤は、まだ存在している先の感光性メイクアップの特定の非呈色部分が、新たな感光性メイク仕上げを作るために用いる放射線への曝露時に呈色されるのを防止する。
【0478】
メイクアップを落とした後に、光学的作用剤を適用してもよい。また、光学的作用剤は、メイクアップ落としに用いるメイクアップ除去組成物の配合の一部をなすものであってもよい。
【0479】
波長λは、UVまたは近UVスペクトル(290nm〜400nm)、特に320nm〜440nmの範囲に収まるとよい。
【0480】
メイクアップ除去組成物は、界面活性剤を主成分とする従来のメイクアップ除去製品であってもよく、あるいは、フォトクロミック組成物からの化合物に適合する特定のメイクアップ除去製品であってもよく、溶媒、たとえばエチルまたはブチルアセテート、アセトン、エタノールまたはこれらの混合物、より一般的には、化粧的に許容可能な有機溶媒(許容可能な寛容、毒性、感触)から選択される任意の溶媒を含むものであればよい。これらの有機溶媒は、組成物の総重量の0%〜98%を占めるものであってもよい。かかる有機溶媒は、親水性有機溶媒、親油性有機溶媒、両親媒性溶媒およびこれらの混合物からなる群から選択できるものである。言及できる親水性有機溶媒の例として、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノールまたはイソブタノールなどの1〜8個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の低モノアルコール;6〜80個のエチレンオキシド部分を含有するポリエチレングリコール;プロピレングリコール、イソプレングリコール、ブチレングリコール、グリセロールまたはソルビトールなどのポリオール;1〜5個の炭素原子を含有するアルキル基のモノまたはジアルキルイソソルビド;ジエチレングリコールモノ−メチルまたはモノ−エチルエーテルなどのグリコールエーテルならびに、ジプロピレングリコールメチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテルがあげられる。
【0481】
言及できる両親媒性有機溶媒の例として、ポリプロピレングリコール(PPG)の誘導体などのポリオール、たとえばポリプロピレングリコールおよび脂肪酸のエステル、あるいはPPGおよび脂肪酸、たとえばPPG−23オレイルエーテルまたはPPG−36オレアートがあげられる。言及できる親油性有機溶媒の例として、ジイソプロピルアジパート、ジオクチルアジパート、アルキルベンゾエート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアレート、ヘキシルラウレート、イソノニルイソノナノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、2−ヘキシルデシルラウレート、2−オクチルデシルパルミテート、2−オクチルドデシルミリステート、ジ−(2−エチルヘキシル)スクシネート、ジイソステアリルマレート、2−オクチルドデシルラクテート、グリセリントリイソステアレートまたはジグリセリントリイソステアレートなどの脂肪酸エステルがあげられる。
【0482】
メイクアップ除去組成物は、
・たとえばマイクロエマルションの形態の油、
・フォトクロミック剤(単数または複数)を皮膚上に維持するのに用いられる化合物(単数または複数)が、カルボポールの場合のようにpH感受性である場合、pH作用剤または
・イオン性液体
をさらに含むものであってもよい。
【0483】
単独でまたはメイクアップ除去組成物中の混合物として用いることができ、特に言及できるアニオン界面活性剤の例は、アルカリ塩、アンモニウム塩、アミン塩または以下の化合物すなわち、アルコイルスルフェート、アルコイルエーテルスルフェート、アルコイルアミドスルフェートおよびエーテルスルフェート、アルコイルアリールポリエーテルスルフェート、モノグリセリドスルフェート、アルコイルスルホネート、アルコイルアミドスルホネート、アルコイルアリールスルホネート、α−オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、アルコイルスルホスクシネート、アルコイルエーテルスルホスクシネート、アルコイルアミドスルホスクシネート、アルコイルスルホスクシナメート、アルコイルスルホアセテート、アルコイルポリグリセロールカルボキシレート、アルコイルホスフェート/アルコイルエーテルホスフェート、アシルサルコシネート、アルコイルポリペプチデート、アルコイルアミドポリペプチデート、アシルイセチオネートおよびアルコイルラウレートのアミノアルコール塩である。
【0484】
これら化合物のすべてに含まれるアルコイルまたはアシルラジカルは通常、12〜18個の炭素原子を含有する鎖を呈する。
【0485】
また、石鹸および脂肪酸塩、たとえばオレイン酸、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、コプラ油酸または水素化コプラ油酸、特にアミンの塩、たとえばステアリン酸アミン;8〜20個の炭素原子を含有するアシルラジカルのアシルラクチルエートおよび次の式
Alk−(OCH2−CH2n−OCH2−COOH
を有する、酸または塩形態のポリグリコールエーテルのカルボン酸に言及することが可能であり、式中、置換基Alkは、12〜18個の炭素原子を含有する直鎖に対応し、nは5〜15の範囲の整数である。
【0486】
単独または混合物として用いることができ、特に言及できる非イオン界面活性剤の例は、アルコール、アルコイルフェノールならびに、8〜18個の炭素原子を含む脂肪酸鎖を有するポリエトキシル化、ポリプロプオキシル化またはポリグリセロール化脂肪酸;エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマー、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの脂肪酸アルコールでの凝縮物、ポリエトキシル化脂肪酸アミド、ポリエトキシル化脂肪酸アミン、エタノールアミド、グリコールと脂肪酸のエステル、ソルビタンと脂肪酸のエステル(これらは任意に、オキシエチレン化されていてもよい)、サッカロースと脂肪酸のエステル、ポリエチレングリコールと脂肪酸のエステル、リン酸トリエステル、グルコース誘導体と脂肪酸のエステル;アミン化糖のアルキルポリグリコシドおよびアルキルアミド;α−ジオール、モノアルコール、アルコイルフェノール、グリシドールを含むアミドまたはジグリコルアミドまたはグリシドールの前駆物質の縮合生成物があげられる。
【0487】
光学的作用剤を含有するメイクアップ除去組成物は、光学的作用剤をコアセルベーション効果などによってすすぎ時に被着させられるように配合されるものであってもよく、この効果は、PC/PA、TC/TA、TC/PA、TA/PCなど、相互に補完するイオン性を持つ界面活性剤とポリマー、場合によっては、被着を容易にするための両性および非イオン界面活性剤を用いることによって得られる。PCは一般に、カチオングアーガム(たとえばJaguar C13S)などの化合物あるいは、JR400またはイオネンなどの人工化合物である。TCは一般に、第4鎖化合物(特に、トリメチルアンモニウム基)および脂肪酸鎖化合物(C6〜C30)である。PAは、アクリレートまたはメタクリレートポリマーあるいは、スルホン基を含有するコポリマーまたはポリマーなどのマルチアニオンポリマーであればよい。TAは、カルボン酸、スルフェートまたはスルホン界面活性剤(LES、LS)などのアニオン界面活性剤である。
【0488】
好適な支持体、特に、吸収できるもの、たとえば、繊維状メイクアップ除去ディスク、たとえば織布または不織布、フェルト、綿毛、フロック加工フィルム、スポンジまたはタオルを用いて、メイクアップ除去組成物を適用してもよく、メイクアップ落としに用いられる支持体は、好都合なことに、メイクアップ落としの作業後に取り除かれる。
【0489】
メイクアップ除去組成物を容器に収容し、メイクアップを落とすたびに取り出すようにしてもよい。変形例では、メイクアップ落としに用いられる支持体にメイクアップ除去組成物を含浸させる。この場合、支持体は、場合により、密閉包装などで包装される。メイクアップ除去組成物の使用後、ケラチン物質をすすぐ必要はない。変形例では、これをすすいでもよい。すすぎは、流水を用いて、たとえば、石鹸を加えないで実施できる。
【0490】
提案される実施例(表記の割合は重量比である)
実施例1
以下の配合物5gを生成した。
ジアリールエテン* 1%
アセトン 適量100%
*山田化学工業株式会社 1,2ビス(2,4−ジメチル−3−チエニル)PERFLUORO CYCLOPENTENE。
【0491】
約1J[ジュール]のUVB照射を用いて、配合物をex situで呈色させた。
【0492】
次に、プラスチック材料で作られたリップ支持体に配合物を適用した。
【0493】
配合物を乾燥させ、赤/暗紫のメイクアップを唇の上に生成した。
【0494】
見た目の結果を洗練させるために、500,000ルクスの白色光などの光線を用いて、特定のゾーンを消色させた。
【0495】
実施例2
実施例1と同一の配合物を生成し、同一の適用を実施した。
【0496】
次に、UVAスクリーン(Parsol MSXを4%)を唇に適用して、配合物を濃くした。UVAスクリーンで濃くした配合物は透明で、唇を覆わず唇のアウトラインをはっきりと画定するように注意しながら、広く適用可能であった。次に、メイクアップを可視光照射に曝露させた。スクリーンで保護された部分以外、フォトクロミック配合物を使用した顔のすべての部分が無色になった。
【0497】
明らかに、本発明はここに記載の実施例に限定されるものではない。特に、顔以外の身体のゾーンを処理してもよい。顔の処理についての実施例はいずれも、他の領域の処理についても等しく有効である。
【0498】
「(単数の)〜を含む(comprising a)」という表現は、「少なくとも1つの〜を含む(comprising at least one)」と同義とみなされるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ケラチン物質に、すでに少なくとも部分的に呈色状態にある熱安定性フォトクロミック剤を含むフォトクロミック組成物を適用する
ことを含む、ケラチン物質を感光性メイクアップでメイクアップする方法。
【請求項2】
・前記組成物の外見を変化させるために、前記組成物にin situで放射線を当てる、
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光失活性の放射線に前記組成物を曝露する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
パターンを作り出すために、前記ゾーンに前記放射線を不均一に当てる、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記フォトクロミック組成物が、すでに少なくとも部分的に呈色状態にあり、かつ、呈色状態での色が異なる少なくとも2種類のフォトクロミック剤を含み、前記放射線が、前記フォトクロミック剤を異なる方法で光失活させるよう選択される波長のものである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記放射線が、可視ドメイン(400nm〜700nm)内に包含される主要波長を含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記放射線が、アドレス可能なマトリクスイメージャによって放出される、請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記フォトクロミック剤が、熱安定性フォトクロミック剤、特にジアリールエテンおよびフルギドから選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記フォトクロミック組成物が、前記フォトクロミック剤がすでに呈色状態にある包装装置から取得される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記フォトクロミック組成物が、当該フォトクロミック組成物をケラチン物質に適用する前に、これを部分的に呈色させるよう選択される光に、包装装置に含まれる間に曝露される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記フォトクロミック組成物に第2の組成物が適用され、前記第2の組成物が、前記フォトクロミック組成物を消色できるようにする放射線に対する遮蔽部を形成することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
すでに呈色状態にある少なくとも1種類のフォトクロミック剤を含有する化粧用フォトクロミック組成物および/または少なくとも1種類のフォトクロミック剤、特に、少なくとも主要波長が可視ドメイン(400nm〜700nm)、好ましくは近UVの外側の可視ドメインに包含される放射線への曝露時に非呈色状態に変化させるのに適したフォトクロミック剤を呈色できるようにする手段を含む、包装装置。
【請求項13】
前記装置内でおよび/または前記組成物が分注される際に前記フォトクロミック剤を呈色させる光に、当該フォトクロミック剤を曝露できるようにする光源を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記ケラチン物質に適用されるフォトクロミック組成物の層に、少なくとも1種類のフォトクロミック剤を失活させる失活光を当てるための光源を含む、請求項12または請求項13に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図10A】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2012−518629(P2012−518629A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550693(P2011−550693)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050781
【国際公開番号】WO2010/095117
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】