説明

すり板組立体の組立治具

【課題】すり板組立体を高精度に短時間で容易に組み立てることができるすり板組立体の組立治具を提供する。
【解決手段】すり板組立治具30の搭載部31上に複数のすり板片13aを並べると、この複数のすり板片13aがすり板片整列部33によって一列に並べられるとともに、隣り合うすり板片13aが間隔保持部によって所定の間隔に保持される。複数の可動ガイド部17を導電部16上に並べて、すり板組立治具30に可動ガイド組立治具40を装着すると、可動ガイド整列部41,42の整列面41a,42aによってこの複数の可動ガイド部17の摺動面が同一平面上に一列に並ぶ。すり板片13aと可動ガイド部17とを固定部18によって締め付けたときに、すり板片13a及び可動ガイド部17がずれるのをすり板片整列部33,34、間隔保持部及び可動ガイド整列部41,42が防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のすり板片によってすり板が長さ方向に分割されているすり板組立体を組み立てるときに使用されるすり板組立体の組立治具に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、新幹線(登録商標)では360km/hでの走行が推進されており、この場合には従来型の新幹線用パンタグラフでは集電性能が不十分であり、この速度域で唯一十分な集電性能をもつ多分割すり板体の採用が有力である。従来の多分割すり板体は、架線のトロリ線と摺動する複数のすり板片と、この複数のすり板片の上下方向の移動に応じて弾性変形する可撓性シートと、複数のすり板片と電気的に接続する銅板と、複数のすり板片と一体となって上下方向に移動する複数の可動ガイドと、舟体フレームに取り付けられておりこの可動ガイドを移動自在にガイドする固定ガイド部と、この可動ガイド部の上下方向の移動を規制するストッパ部と、複数のすり板片を上下方向に移動在に支持する複数のばねなどを備えている(例えば、特許文献1参照)。このような従来の多分割すり板体では、すり板を長さ方向に複数のすり板片に分割して各すり板片の重量を軽減し、集電する際のトロリ線への追従性能を向上させることによって、すり板片がトロリ線から離れる離線を低減し集電性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-160266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多分割構造ではない従来のすり板体では、従来の多分割すり板体に比べて部品点数が少ないため、特別な組立治具などを使用せずに簡単に短時間で組立が可能であった。一方、従来の多分割すり板体では、すり板組立体を構成する部品点数が従来のすり板体に比べて格段に多い。このため、従来の多分割すり板体では、摩耗したすり板片を新品のすり板片に交換してすり板組立体を再組立する場合や、新品のすり板片を組み立ててすり板組立体を新たに製作する場合などに、高精度にすり板片を並べて短時間ですり板組立体を組み立てることが困難であった。また、従来の多分割すり板体では、多数のすり板片を正確に並べるだけではなく、この多数のすり板片に対して多数のガイド部も高精度に並べる必要がある。このため、従来の多分割すり板体では、隣接するすり板片間の間隔が狭すぎるとすり板片同士が干渉してしまう問題点があるとともに、多数のガイド部が不揃いであるとすり板組立体を舟体フレームに嵌め込むことができない問題点がある。さらに、従来の多分割すり板体では、ガイド部とすり板片とをボルトによって締結するときに、すり板片やガイド部がボルトを中心として回転してずれる可能性がある。このため、従来の多分割すり板体では、組立に手間がかかり高精度にすり板組立体を組み立てることが困難であるとともに、製作精度を確保することが困難であった。
【0005】
この発明の課題は、すり板組立体を高精度に短時間で容易に組み立てることができるすり板組立体の組立治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図7〜図9に示すように、複数のすり板片(13a,13b)によってすり板(13)が長さ方向に分割されているすり板組立体(12)を組み立てるときに使用されるすり板組立体の組立治具であって、前記複数のすり板片を並べて載せる搭載部(31)と、前記複数のすり板片が所定の方向に沿って前記搭載部上に並ぶように、この複数のすり板片を整列させるすり板片整列部(33,34)と、前記複数のすり板片が所定の間隔(Δ1)をあけて前記搭載部上に並ぶように、隣り合うすり板片を所定の間隔に保持する間隔保持部(36)とを備えるすり板組立体の組立治具(29)である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のすり板組立体の組立治具において、図12に示すように、前記複数のすり板片とともに移動する複数の可動ガイド部(17)が所定の方向に並ぶように、この複数の可動ガイド部を整列させる可動ガイド整列部(41,42)を備えることを特徴とするすり板組立体の組立治具。
【0008】
請求項3の発明は、図12に示すように、複数のすり板片(13a,13b)によってすり板(13)が長さ方向に分割されているすり板組立体(12)を組み立てるときに使用されるすり板組立体の組立治具であって、前記複数のすり板片とともに移動する複数の可動ガイド部(17)が所定の方向に並ぶように、この複数の可動ガイド部を整列させる可動ガイド整列部(41,42)を備えることを特徴とするすり板組立体の組立治具(29)である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載のすり板組立体の組立治具において、図13に示すように、前記可動ガイド整列部は、前記複数の可動ガイド部を移動自在にガイドする固定ガイド部(25)側の摺動面(25b)と摺動するこの複数の可動ガイド部側の摺動面(17b)が同一平面になるように、この複数の可動ガイド部を所定の方向に整列させることを特徴とするすり板組立体の組立治具である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載のすり板組立体の組立治具において、前記可動ガイド整列部は、前記複数のすり板片と前記複数の可動ガイド部とを固定するときに、この複数の可動ガイド部がずれるのを防止することを特徴とするすり板組立体の組立治具である。
【0011】
請求項6の発明は、請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載のすり板組立体の組立治具において、図13に示すように、前記可動ガイド整列部は、前記複数の可動ガイド部の一方の端部側の摺動面と接触するともに、この複数の可動ガイド部の他方の端部側の摺動面と接触して、これらの摺動面を整列させる整列面(41a,42a)を備えることを特徴とするすり板組立体の組立治具である。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のすり板組立体の組立治具において、図9に示すように、前記すり板の全長が所定の長さになるように、前記搭載部上のすり板片のうち両端に位置するすり板片(13b)を所定の位置に位置決めするすり板片位置決め部(32)を備えることを特徴とするすり板組立体の組立治具である。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7に記載のすり板組立体の組立治具において、図2及び図9に示すように、前記すり板片位置決め部は、前記すり板組立体側の装着部(14)が集電舟(9)の舟体枠(24)側の装着部(24a)に着脱自在に装着されるように、このすり板組立体側の装着部を所定の位置に位置決めすることを特徴とするすり板組立体の組立治具である。
【0014】
請求項9の発明は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のすり板組立体の組立治具において図14に示すように、前記複数のすり板片とともに移動する複数の可動ガイド部の可動範囲を所定範囲内に規制するストッパ部(20)をこの複数の可動ガイド部に位置決めするときに、この複数の可動ガイド部の中心線に沿ってこのストッパ部を導くストッパ誘導部を備えることを特徴とするすり板組立体の組立治具である。
【0015】
請求項10の発明は、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載のすり板組立体の組立治具において、図9及び図13に示すように、前記すり板片整列部は、前記複数のすり板片の端面と接触して、この複数のすり板片の端面を整列させる整列面(33a,34a)を備えることを特徴とするすり板組立体の組立治具である。
【0016】
請求項11の発明は、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載のすり板組立体の組立治具において、図7及び図8に示すように、前記間隔保持部は、前記搭載部の長さ方向に所定の間隔をあけてこの搭載部上から突出する突出部(31a)を備えることを特徴とするすり板組立体の組立治具である。
【発明の効果】
【0017】
この発明によると、すり板組立体を高精度に短時間で容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具によって組み立てられるすり板組立体を備える集電装置の模式図であり、(A)は側面図であり、(B)は正面図である。
【図2】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具によって組み立てられるすり板組立体を備える集電舟の一部を省略して示す断面図である。
【図3】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具によって組み立てられるすり板組立体の外観図であり、(A)はすり板組立体の平面図であり、(B)は(A)のIII-IIIB線で切断した状態を示す断面図である。
【図4】図2のIV-IV線で切断した状態を示す断面図である。
【図5】図2のV-V線で切断した状態を示す断面図である。
【図6】図2のVI-VI線で切断した状態を示す断面図である。
【図7】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具の斜視図である。
【図8】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具のすり板組立治具の外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は一部を破断して示す側面図であり、(C)は(A)のVIII-VIIC線で切断した状態を拡大して示す断面図である。
【図9】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具におけるすり板組立治具の搭載部にすり板片を搭載した状態を示す斜視図である。
【図10】図8(A)のX-X線で切断した状態を示す断面図である。
【図11】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具の可動ガイド組立治具の外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は側面図であり、(C)は一部を破断して示す正面図である。
【図12】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具における可動ガイド組立治具をすり板組立治具に装着した状態を示す斜視図である。
【図13】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具における可動ガイド組立治具をすり板組立治具に装着した状態を示す断面図である。
【図14】この発明の実施形態に係るすり板組立体におけるすり板組立治具のストッパ誘導部によってストッパ部を可動ガイド部に挿入する状態を示す斜視図である。
【図15】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具によってすり板組立体を組み立てるときの組立手順を説明するための工程図である。
【図16】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具によるすり板片整列/間隔保持工程を説明するための斜視図である。
【図17】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具による弾性部装着工程を説明するための斜視図である。
【図18】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具による間隔調整部装着工程を説明するための斜視図である。
【図19】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具による導電部装着工程を説明するための斜視図である。
【図20】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具による可動ガイド部仮固定工程を説明するための斜視図である。
【図21】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具による可動ガイド部固定工程を説明するための斜視図である。
【図22】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具によるストッパ部装着工程を説明するための斜視図である。
【図23】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具による間隔調整部装着工程を説明するための斜視図である。
【図24】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具による間隔調整部装着工程を説明するための斜視図である。
【図25】この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具によって組み立てられたすり板組立体の完成後の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1に示す架線1は、線路上空に架設される電車線であり、所定の間隔をあけて支持点で支持されている。トロリ線1aは、集電装置4のすり板13が接触する電線であり、すり板13が接触移動することによって車両2に負荷電流を供給する。車両2は、電車又は電気機関車などの電気車であり、例えば高速で走行する新幹線(登録商標)などの鉄道車両である。車体3は、乗客を積載し輸送するための構造物である。
【0020】
集電装置4は、トロリ線1aから電力を車両2に導くための装置であり、台枠5と、碍子6と、枠組7と、舟支え部8と、集電舟(舟体)9などを備えている。台枠5は、枠組7を支持する部分であり、碍子6は車体3と台枠5との間を電気的に絶縁する部材であり、枠組7は集電舟9を支持した状態で上下方向に動作可能なリンク機構である。舟支え部8は、集電舟9を架線1に対して水平に押上げるとともに、図示しないばねによる緩衝作用を与える機構部であり、台枠5が備える図示しない押上げ用ばねによって上方に押上げられる。図1に示す集電装置4は、車両2の進行方向L0に対して非対称であり、一方向又は両方向に使用可能なシングルアーム式パンタグラフであり、枠組7に対してすり板13が進行方向後側に位置するなびき方向に進行している。
【0021】
図1及び図2に示す集電舟9は、すり板13を取り付けて支持する部材であり、一般にトロリ線1aと直交する方向に伸びた細長い金属製の部材である。集電舟9は、図1(B)、図2及び図3に示すように、すり板13が複数に分割された多分割すり板体であり、すり板13を多数のすり板片13a,13bに分割することによって、トロリ線1aと接触して加振されるすり板13の質量を低減し、トロリ線1aに対する追従性能を向上させた新幹線用(高速用)パンタグラフの集電舟である。集電舟9は、図4〜図6に示す整流部10と、図1に示すホーン11と、図2〜図6に示すすり板組立体12と、図4〜図6に支援す舟体枠24と、図4及び図5に示す固定ガイド部25と、図2及び図5に示す弾性支持部26と、図5に示す固定部27などを備えている。
【0022】
図4〜図6に示す整流部10は、気流によって発生する揚力を調整するための部材である。整流部10は、図示しない固定部材によって舟体枠24に着脱自在であり、最適な形状のものと交換することによって集電舟9の断面形状を任意の形状に変更可能である。
【0023】
図1に示すホーン11は、車両2が分岐器を通過するときに、この分岐器の上方で交差する2本のトロリ線1aのうち車両2の進行方向とは異なる方向のトロリ線1aへの割込みを防止するための部材である。ホーン11は、図1(B)に示すように、集電舟9の長さ方向の両端部から突出しており、先端部が湾曲して形成された金属製の部材である。
【0024】
図2〜図6に示すすり板組立体12は、集電舟9の主要構成部分を組み立てた部材である。すり板組立体12は、複数のすり板片13a,13b及び複数の可動ガイド部17などが整列された状態で組み立てられている組立品(すり板体)である。すり板組立体12は、図2に示すように、集電舟9の舟体枠24に嵌め込まれてこの舟体枠24と一体化される。すり板組立体12は、図1〜図6に示すすり板13と、図2及び図3に示す装着部14と、図2〜図6に示す弾性部15と、導電部16と、図2、図3(B)及び図4に示す可動ガイド部17と、図3及び図4に示す固定部18と、間隔調整部19と、図2〜図6に示すストッパ部20と、図4及び図5に示す緩衝部21と、図2、図3(B)及び図6に示す間隔調整部22と、図2、図3及び図6に示す固定部23などを備えている。
【0025】
図1〜図6に示すすり板13は、トロリ線1aと摺動する部材である。すり板13は、図1に示すように、車両2の進行方向と直交する方向に伸びた金属製又は炭素製の板状部材であり、すり板組立体12の一部を構成する構成部品である。すり板13の中央部は、車両2が本線走行時に主にトロリ線1aと摺動する主すり板として機能し、すり板13の両端部は主すり板に比べて摺動頻度が低い補助すり板として機能する。すり板13には、トロリ線1aと接触移動(摺動)して大電流が流れるため、一定の機械的強度、導電性及び耐摩耗性などが要求される。すり板13は、図1(B)〜図3に示すように、長さ方向に複数に分割されたすり板であり、図3に示すように集電舟9の中央部に取り付けられている合計12枚のすり板片13aと、集電舟9の両端部に取り付けられている合計2枚のすり板片13bとを備えている。
【0026】
図1(B)〜図5に示すすり板片13aは、すり板13の主要部分を構成する部材である。すり板片13aは、図2及び図3に示すように、隣接するすり板片12a同士の干渉を防ぐために、集電舟9の長さ方向に沿って所定の間隔(隙間)Δ1をあけて一列に配置されているすり板小片であり、所定の幅(例えば52mm)、長さ(例えば74mm)及び厚さ(例えば10mm)に形成されている。すり板片13aは、例えば、図3(A)に示すように、外観形状が平行四辺形の薄板状部材であり、すり板13の進行方向(すり板13の長さ方向と直交する方向)L0に対して略15°の傾斜角度θで両側部が斜めに直線状に切断されており、隣接するすり板片13aとの間に2mmの間隔Δ1を形成している。すり板片13aは、例えば、補助すり板として機能する両端部の2枚がアルミニウム製であり、主すり板として機能する中央部(例えば540mmの範囲)の10枚が鉄系焼結合金製であるが、両端部の2枚の摩耗が大きいときにはこの両端部の2枚も鉄系焼結合金製に交換可能である。すり板片13aは、トロリ線1aと接触することによってこのトロリ線1aとの間に作用する接触力Cの変動、及びトロリ線1aの上下方向の変位に追従してそれぞれ独立して上下方向に移動可能である。すり板片13aは、図4に示すように、このすり板片13aを貫通する雌ねじ部13cを備えている。
【0027】
図1(B)〜図3及び図6に示すすり板片13bは、すり板13の補助的部分を構成する部材である。すり板片13bは、両端部の2枚のすり板片13aと同様に補助すり板として機能する。すり板片13bは、例えば、図3(A)に示すように、先端部が2つに分かれた薄板状部材であり、所定の幅(例えば52mm)、長さ(例えば175mm)及び厚さ(例えば8mm)に形成されている。すり板片12bは、すり板片13aと隣接する側部がすり板13の進行方向L0に対して略15°の傾斜角度θで斜めに直線状に切断されており、隣接するすり板片12a,12b同士が干渉するのを防ぐために、隣接するすり板片13aとの間に2mmの間隔Δ1を形成している。すり板片13bは、例えば、アルミニウム製の薄板状部材であり、中央部のすり板片13aに比べてトロリ線1aと接触する頻度が低いため耐摩耗性よりも軽量化が重要視されている。すり板片13bは、図6に示すように、このすり板片13bを貫通する雌ねじ部13dを備えている。
【0028】
図2及び図3に示す装着部14は、集電舟9の舟体枠24にすり板組立体12を着脱自在に装着する部材である。装着部14は、外観形状が長方形状の薄板状部材であり、図示しないボルトなどの固定部材によってすり板片13bの下面に着脱自在に固定されている。装着部14は、図2に示すように、舟体枠24側の装着部24aと嵌合可能な凸状の嵌合部であり、すり板13の下面から突出するようにこのすり板13の両端部に配置されている。装着部14の高さは、ストッパ部20と導電部16との間に間隔調整部22を横方向から挿入するときに、この間隔調整部22とこの装着部14とが干渉しないように、弾性部15及び導電部16の厚さの合計よりも僅かに低く形成されている。装着部14は、図3に示すように、すり板13の両端部に配置されており、弾性部15、導電部16及び間隔調整部22をすり板片13bに位置決めするときの指標としても機能する。
【0029】
図2〜図6に示す弾性部15は、すり板13の上下方向への移動に応じて弾性変形する部材である。弾性部15は、耐アーク性を有する非導電性の長板状の可撓性部材(シート状部材)であり、弾性部15の上面にはすり板片13a,13bの下面が接触している。弾性部15は、例えば、ガラスクロス繊維の両面にシリコンゴムを接合した合計3枚のサンドイッチ構造の可塑性シート、又は亀裂の発生が少ない1枚の高引裂強度シリコンゴムからなる可塑性シートである。弾性部15としては、強度不足による亀裂の発生を防止可能であり、接合面の剥離によって発生する雨水の浸入がなく、ガラスクロス繊維による補強を省略可能な高引裂強度シリコンゴムが好ましい。このような高引裂強度シリコンゴムからなる可塑性シートは、例えば、ガラスクロス繊維入りの可塑性シートが引張強さ9.4(MPa)、硬度55(Hsc)、伸び3.2(%)及び引裂き強さ21.4(kN/m)であるのに対して、引張強さ11.4(MPa)、硬度50(Hsc)、伸び680(%)及び引裂き強さ33.0(kN/m)であり、ガラスクロス繊維入りの可塑性シートに比べて十分な強度を有している。弾性部15は、トロリ線1aの変位に追従してすり板片13aが上下方向に移動すると、このすり板片13aの上下動作に応じて撓む。弾性部15は、図4及び図6に示すように、この弾性部15の長さ方向及び幅方向に所定の間隔をあけて貫通孔15aを備えている。
【0030】
図2〜図6に示す導電部16は、電流経路を確保するための部材である。導電部16は、弾性部15とともに弾性変形可能な可撓性を有する複数枚(例えば5枚1組)の銅板などを並べた導電性部材であり、図4〜図6に示すように導電部16の幅は弾性部15の幅よりも狭く形成されている。導電部16は、図4に示す固定ボルト18aを挿入するためにこの導電部16を貫通する貫通孔16aと、図6に示す固定ボルト23aを挿入するためにこの導電部16を貫通する貫通孔16bなどを備えている。図4〜図6に示すように、導電部16の上面には弾性部15の下面が接触し、導電部16の下面には可動ガイド部17、間隔調整部22及び弾性支持部26の上面がそれぞれ接触している。
【0031】
図2〜図4に示す可動ガイド部17は、すり板片13aとともに移動する部材である。可動ガイド部17は、図4に示すように、断面が四角形状の中空のフレーム部材であり、すり板片13a、弾性部15及び導電部16と一体となって上下方向にスライド可能である。可動ガイド部17は、図2及び図3に示すように、舟体枠24の長さ方向に所定の間隔をあけて複数配置されている。可動ガイド部17は、図4に示すように、この可動ガイド部17の上部を貫通する貫通孔17aと、固定ガイド部25側の摺動面25bと摺動する摺動面17bと、固定ボルト18aを挿入するために可動ガイド部17を貫通する貫通孔17cなどを備えている。可動ガイド部17は、トロリ線1aの変位に追従してすり板片13aが上下方向に移動するときに、このすり板片13aの上下動作に応じて上下方向にスライドする。
【0032】
図3及び図4に示す固定部18は、すり板片13aと可動ガイド部17とを固定する部材である。固定部18は、図4に示すように、すり板片13aの下面と可動ガイド部17の上面との間に弾性部15及び導電部16を挟み込むように、すり板片13aに可動ガイド部17を着脱自在に固定する。固定部18は、貫通孔16a,17a,19aを貫通して先端部がすり板片13aの雌ねじ部13cにねじ込まれる固定ボルト(すり板片取付ボルト)18aと、この固定ボルト18aと可動ガイド部17との間に挟み込まれる座金18bなどを備えている。
【0033】
図3、図4及び図6に示す間隔調整部19は、すり板片13a,13bと導電部16との間の間隔を調整する部材である。間隔調整部19は、図4及び図6に示すように、弾性部15の貫通孔15aに嵌め込まれる円環状のカラーなどであり、すり板片13aと導電部16との間の隙間を埋めてこれらを電気的に接続するスペーサとして機能する。間隔調整部19は、固定ボルト18a,23aが貫通する貫通孔19aを備えている。間隔調整部19は、図4に示すように、すり板片13a,13bと導電部16との間に挟み込まれることによってこれらの間の間隔を一定に調整している。
【0034】
図2〜図6に示すストッパ部20は、可動ガイド部17の可動範囲を所定範囲内に規制する部材である。ストッパ部20は、図4に示すように、断面形状が略W字状の薄板状部材であり、図2及び図3に示すように可動ガイド部17の内部を貫通しており、図2に示すようにストッパ部20の両端部は舟体枠24の内側底面に対して所定の高さで固定されている。ストッパ部20は、図4に示すこのストッパ部20の下部底面と可動ガイド部17の下部上面とを接触させることによって、可動ガイド部17の可動範囲(上下方向の移動量)の上限を規定するとともに、このストッパ部20の上端面と可動ガイド部17の上部下面とを接触させることによって、可動ガイド部17の可動範囲の下限を規定する。ストッパ部20は、図2に示す弾性支持部26の弾性力によってすり板片13a及び弾性部15などとともに可動ガイド部17が上方に移動して、これらの部材が舟体枠24から脱落するのを防止する。ストッパ部20は、図5に示すように、弾性支持部26を挿入するためにこのストッパ部20を貫通する貫通孔20aと、図4に示すように固定ボルト18aを挿入するためにこのストッパ部20を貫通する貫通孔20bと、図6に示すように固定ボルト23aを挿入するためにこのストッパ部20を貫通する貫通孔20cなどを備えている。
【0035】
図4及び図5に示す緩衝部21は、ストッパ部20の下部底面と可動ガイド部17の下部上面とが衝突したときに発生する衝撃を緩和する部材である。緩衝部21は、例えば、ゴム製の薄板状部材であり、図3に示すようにストッパ部20の長さ方向に沿ってこのストッパ部20の下部底面に接着剤などによって固定されている。緩衝部21は、図5に示すように、弾性支持部26を挿入するためにこの緩衝部21を貫通する貫通孔21aと、図4に示すように固定ボルト18aを挿入するためにこの緩衝部21を貫通する貫通孔21bなどを備えている。
【0036】
図2、図3(B)及び図6に示す間隔調整部22は、導電部16とストッパ部20との間の間隔を調整する部材である。間隔調整部22は、導電部16の下面とストッパ部20の上面との間に嵌め込まれる厚板状部材であり、図3(B)に示すように導電部16の両端部とストッパ部20の両端部との間の隙間を埋めるスペーサとして機能する。間隔調整部22は、図6に示すように、固定ボルト23aが貫通する貫通孔22aを備えており、導電部16とストッパ部20との間に挟み込まれることによってこれらの間の間隔を一定に調整している。
【0037】
図2、図3及び図6に示す固定部23は、すり板片13bとストッパ部20とを固定する部材である。固定部23は、図2及び図6に示すように、すり板片13bの下面とストッパ部20の上面との間に弾性部15、導電部16及び間隔調整部22を挟み込むように、すり板片13bにストッパ部20を着脱自在に固定する。固定部23は、図6に示すように、貫通孔16b,19a,20c,22aを貫通して先端部がすり板片13bの雌ねじ部13dにねじ込まれる固定ボルト(すり板片取付ボルト)23aと、この固定ボルト23aとストッパ部20との間に挟み込まれる座金23bなどを備えている。
【0038】
図2及び図4〜図6に示す舟体枠24は、集電舟9の本体部分を構成する部材である。舟体枠24は、図4〜図6に示すように、断面形状が略U字状の溝形のフレーム部材であり、舟体枠24の上部には開口部が形成されており、舟体枠24の内部には可動ガイド部17、ストッパ部20、固定ガイド部25及び弾性支持部26などが収容されている。舟体枠24の外側側面(前面及び後面)には、整流部10が取り付けられており、舟体枠24の下面には図1に示す舟支え部8が取り付けられている。舟体枠24の両端部には、図2に示すように、所定長さで溝のない厚板状部分が形成されており、この厚板状部分の上面にはすり板片13bの下面が取り付けられている。舟体枠24は、すり板組立体12側の装着部14を着脱自在に装着する装着部24aを備えており、この装着部24aは装着部14と嵌合可能な凹状の嵌合部である。
【0039】
図4及び図5に示す固定ガイド部25は、可動ガイド部17を移動自在にガイドする部材である。固定ガイド部25は、舟体枠24の内側両側面に対向して取り付けられた長板状部材であり、図4に示す可動ガイド部17側の摺動面17bと摺動する摺動面25bを備えている。固定ガイド部25は、可動ガイド部17の垂直方向の移動を許容し、この可動ガイド部17の水平方向の移動を規制するストッパ部として機能し、トロリ線1aの変位に追従して可動ガイド部17が上下方向に移動可能なようにこの可動ガイド部17を移動自在にガイドする。
【0040】
図2及び図5に示す弾性支持部26は、すり板片13aを弾性支持する部材である。弾性支持部26は、圧縮を受ける圧縮コイルばねなどの弾性体(付勢部材)であり、図2に示すように隣り合う可動ガイド部17間に配置されており、図2及び図5に示すように各すり板片13aに対応してすり板片13aと同じ個数配置されている。弾性支持部26は、図5に示すように、上端部がストッパ部20の貫通孔20a及び緩衝部21の貫通孔21aを貫通して導電部16の下面と接触しており、弾性支持部26の下端部は舟体枠24の底部上面に取り付けられている。弾性支持部26は、図2及び図5に示すように、弾性部15及び導電部16を介してすり板片13aを支持しており、図1に示すすり板片13aとトロリ線1aとの間に作用する接触力Cに応じて伸縮する。
【0041】
図5に示す固定部27は、弾性支持部26を舟体枠24に固定する部材である。固定部27は、舟体枠24の内側底面に取り付けられて弾性支持部26の下端部を保持する保持板27aと、この保持板27aとの間で弾性支持部26の下端部を挟み込みこの弾性支持部26の下端部を押さえ付ける押さえ板27bと、保持板27a及び押さえ板27bを舟体枠24に固定する固定ボルト27cと、この固定ボルト27cと押さえ板27bとの間に挟み込まれる座金27dなどを備えている。
【0042】
次に、この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具によって組み立てられるすり板組立体の動作を説明する。
図1に示すように、車両2が進行方向L0に走行するとすり板13がトロリ線1aに対して接触移動し、すり板13の進行に伴ってトロリ線1aが押上げられる。トロリ線1aは長さ方向に所定の間隔をあけて架線金具によって支持点で支持されているため、トロリ線1aの支持点付近が硬点となる。このため、すり板13がトロリ線1aを上方向に変位させる押上げ量が支持点付近では小さいが、このトロリ線1aの支持点間の中央付近ではこの押上げ量が大きくなる。その結果、車両2の走行に伴ってすり板13が上下の波状運動を繰り返し、すり板13がトロリ線1aから離れる離線が発生する原因となる。従来のすり板体とは異なり多数のすり板片13a,13bによってすり板13が分割されているため、各すり板片13aの重量が軽減されている。また、弾性部15及び導電部16によってすり板片13aが柔軟に支持されているとともに、独立した弾性支持部26によって各すり板片13aが支持されている。このため、各すり板片13aに接触力Cが作用すると弾性支持部26の弾性力に抗して弾性部15及び導電部16が撓み、接触力Cが作用するすり板片13aが変位するとともに、このすり板片13aと隣り合う両側のすり板片13aも追従して変位する。その結果、すり板片13aのトロリ線1aへの追従性能が向上して離線が低減し集電性能が向上するとともに、すり板片13aとトロリ線1aとの間に発生する離線アークによるすり板13の損傷が低減する。
【0043】
図7に示す組立治具29は、すり板組立体12を組み立てるときに使用される治具である。組立治具29は、すり板片13a,13bを所定の間隔Δ1をあけて直線状に正確に整列させるとともに、可動ガイド部17の摺動面17bを同一平面上(面一)に正確に整列させる。組立治具29は、図1〜図6に示す通常のすり板組立体12の使用時の姿勢とは上下を逆にして、このすり板組立体12の姿勢が裏返しになった状態で組み上げる。組立治具29は、すり板組立治具30と可動ガイド組立治具40とを備えており、すり板組立治具30と可動ガイド組立治具40とを着脱自在に組み合わせることによって、すり板組立体12を作業者が組み立てるときに組立作業を補助し、すり板組立体12を容易に組立可能にする。組立治具29の寸法は、すり板組立体12の各構成部品の公差を考慮して、各構成部品の寸法が公差内であれば正確に組立が可能であり、かつ、すり板組立体12が必要な組立精度で組み立てられるように設定されている。
【0044】
図7及び図8に示すすり板組立治具30は、複数のすり板片13a,13bを所定の間隔Δ1をあけて直線状に整列するための治具である。すり板組立治具30は、すり板片13a,13bを所定の間隔Δ1をあけて直線状に整列する機能と、すり板片13a,13bのトロリ線1aと接触する側の表面を同一平面上(面一)に整列する機能と、すり板13の全長が規定長さになるようにすり板片13a,13bを整列する機能と、すり板組立体12側の装着部14と舟体枠24側の装着部24aとが嵌合する位置にこの装着部14を位置決めする機能と、可動ガイド部17の中心とストッパ部20の中心とが一致するようにストッパ部20を位置決めする機能などを有する。すり板組立治具30は、図7及び図8に示す搭載部31と、すり板片位置決め部32と、すり板片整列部33,34と、固定部35と、間隔保持部36と、図8に示す間隔調整部37と、図7及び図8に示す固定部38と、ストッパ誘導部39などを備えている。
【0045】
図7〜図10に示す搭載部31は、複数のすり板片13aを並べて載せる部材である。搭載部31は、組立作業時に組立治具29とともにこの搭載部31が容易に動かないような重量を有する金属製の長板状部材であり、外観形状が長方形の厚板状のベース部である。搭載部31は、図1に示すトロリ線1aと接触する側のすり板片13a,13bの表面を支持しており、図9に示すようにこのすり板片13a,13bの表面を同一平面上(面一)に整列する。搭載部31の長さは、すり板13の全長よりも僅かに長く形成されており、搭載部31の幅はすり板13の幅よりも僅かに長く形成されている。搭載部31は、図8(C)に示すように、この搭載部31を貫通する長孔状の貫通孔31aと、この搭載部31を貫通する雌ねじ部31bと、図8(B)に示すように、すり板組立治具30を作業台などに乗せたときにこの作業台の上面と搭載部31の下面との間に所定の隙間を形成するための脚部31cなどを備えている。
【0046】
図9に示すすり板片位置決め部32は、すり板13の全長が所定の長さになるように、搭載部31上のすり板片13a,13bのうち両端に位置するすり板片13bを所定の位置に位置決めする部材である。すり板片位置決め部32は、例えば、すり板13の全長が異なる複数種類のすり板組立体12を組立可能なように、搭載部31の両端部に図示しないボルトなどの固定部材によって交換可能に着脱自在に固定されている。すり板片位置決め部32は、すり板組立体12側の装着部14が舟体枠24側の装着部24aに着脱自在に装着されるように、このすり板組立体12側の装着部14を所定の位置に位置決めする。すり板片位置決め部32は、例えば、図2に示すように、すり板組立体12側の装着部14と舟体枠24側の装着部24aとが正確に嵌合するように、図9に示すようにすり板片13bを所定の位置に位置決めするとともに、この装着部14も所定の位置に位置決めする。すり板片位置決め部32は、すり板13の幅と略同一長さに形成されており、外観が厚板状のブロックである。すり板片位置決め部32は、すり板13の全長と同じ間隔をあけて搭載部31の両端部にそれぞれ配置されている。すり板片位置決め部32は、搭載部31上にすり板片13a,13bを搭載したときにすり板片13bの先端部と接触することによって、すり板13の全長が所定長さになるように調整するとともに、すり板片13bに固定されている装着部14も正確な位置に調整する。すり板片位置決め部32は、一方の端部に雌ねじ部32aを備えている。
【0047】
図7〜図10に示すすり板片整列部33,34は、複数のすり板片13a,13bが所定の方向に沿って搭載部31上に並ぶように、この複数のすり板片13a,13bを整列させる部材である。すり板片整列部33,34は、図9及び図10に示すように、複数のすり板片13a,13bの端面と接触することによって、この複数のすり板片13a,13bを所定の方向に整列させる。すり板片整列部33,34は、いずれも略同一形状であり、すり板組立体12と略同じ高さの長板状部材であり、すり板片整列部33はすり板片13a,13bの一方の端部を固定する固定壁部であり、すり板片整列部34はこのすり板片13a,13bの他方の端部を塞ぐ着脱式(分割式)の蓋部である。すり板片整列部33,34は、搭載部31上ですり板片13a,13bが一列に並ぶように、すり板片13a,13bの両端面を位置決めしており、複数のすり板片13a,13bの端面と接触してこの複数のすり板片13a,13bの端面を整列させる整列面33a,34aを備えている。整列面33aは、すり板片13a,13bの一方の端面が直線状に整列するようにこのすり板片13a,13bの一方の端面と接触する平坦面であり、整列面34aはすり板片13a,13bの他方の端面が直線状に整列するようにこのすり板片13a,13bの他方の端面と接触する平坦面である。すり板片整列部33は、搭載部31の一方の縁部に図示しないボルトなどの固定部材によって固定されており、すり板片整列部34は組立完了後のすり板組立体12をすり板組立治具30から容易に取り出し可能なように、搭載部31の一方の縁部に着脱自在に固定されている。
【0048】
図7〜図9に示す固定部35は、すり板片整列部34を搭載部31に固定する部材である。固定部35は、すり板片整列部33とすり板片整列部34との間にすり板片13a,13bを挟み込むように、すり板片位置決め部32にこのすり板片整列部34を着脱自在に固定する。固定部35は、図7及び図9に示すすり板片位置決め部32の雌ねじ部32aにねじ込まれる固定ボルト35aと、この固定ボルト35aとすり板片位置決め部32との間に挟み込まれる座金35bなどを備えている。
【0049】
図7〜図10に示す間隔保持部36は、複数のすり板片13a,13bが所定の間隔Δ1をあけて搭載部31上に並ぶように、隣り合うすり板片13a,13bを所定の間隔Δ1に保持する部材である。間隔保持部36は、図8(C)に示すように、断面形状が略L字状の薄板状部材であり、図9に示すように隣り合うすり板片13a,13bの間に挟み込まれることによって、このすり板片13a,13bの間隔を所定の間隔Δ1に調整するすり板間調整板である。間隔保持部36は、例えば、破損時などに交換が容易なように搭載部31とは別部品として構成されており、この搭載部31に着脱自在である。間隔保持部36の厚さは、図2及び図3に示す隣り合うすり板片13a,13bの間隔Δ1と略同じに形成されている。間隔保持部36は、図8(C)に示すように、突出部36aと、屈曲部36bなどを備えている。突出部36aは、図7及び図8(A)(B)に示すように、搭載部31の長さ方向に所定の間隔をあけてこの搭載部31上から突出する部分であり、図8(C)に示すように搭載部31の貫通孔31aを貫通しており、図10に示すようにすり板片13a,13bの厚さよりも僅かに低くなるように搭載部31の上面から突出している。図8(C)に示す屈曲部36bは、搭載部31の下面から突出してこの搭載部31と平行に伸びる部分であり、この屈曲部36bを貫通する貫通する貫通孔36cを備えている。間隔保持部36は、図8(A)に示すように、すり板片13a,13bの傾斜面と同様に、すり板13の進行方向L0に対して略15°の傾斜角度θで搭載部31上に斜めに配置されており、この搭載部31の長さ方向にすり板片13aの幅と同じ略間隔をあけて一列に配置されている。
【0050】
図8(B)(C)及び図10に示す間隔調整部37は、搭載部31と間隔保持部36との間の間隔を調整する部材である。間隔調整部37は、搭載部31の下面と屈曲部36bの上面との間に嵌め込まれる薄板状部材であり、間隔保持部36の突出部36aの突出量を調整するスペーサである。間隔調整部37は、例えば、厚さの異なるものが複数存在し、厚さの異なるすり板片13a,13bを組み立てるときに、適当な厚さのものが選択され使用される。間隔調整部37は、図8(C)に示すように、固定ボルト38aが貫通する貫通孔37aを備えている。
【0051】
図8(C)及び図10に示す固定部38は、間隔保持部36を搭載部31に固定する部材である。固定部38は、搭載部31と間隔保持部36との間に間隔調整部37を挟み込むように、搭載部31に間隔保持部36を着脱自在に固定する。固定部38は、間隔保持部36の屈曲部36bの貫通孔36cと間隔調整部37の貫通孔37aとに挿入されて搭載部31の雌ねじ部32aにねじ込まれる固定ボルト38aと、この固定ボルト38aと屈曲部36bとの間に挟み込まれる座金38bなどを備えている。
【0052】
図7〜図10に示すストッパ誘導部39は、複数の可動ガイド部17にストッパ部20を位置決めするときに、この複数の可動ガイド部17の中心線に沿ってこのストッパ部20を導く部材である。ストッパ誘導部39は、図14に示すように、複数の可動ガイド部17にストッパ部20を挿入するときに、図4及び図13に示す可動ガイド部17の内側側面とストッパ部20の両縁部との間の左右の隙間Δ2が同一になるように、この複数の可動ガイド部17にストッパ部20を誘導する。ストッパ誘導部39は、複数の可動ガイド部17の中心とこのストッパ部20の中心とが一致するようにこれらを位置決めする。ストッパ誘導部39は、図7、図9、図10及び図14に示すように、すり板片位置決め部32に形成された凹状の切欠部であり、図14に示すようにストッパ誘導部39の幅はストッパ部20の幅よりも僅かに広く形成されており、図13に示すようにストッパ誘導部39の高さはストッパ部20の厚さよりも僅かに高く形成されている。ストッパ誘導部39は、図7〜図10に示すように、ストッパ部20の下面と接触してこのストッパ部20をガイドするガイド面39aと、ストッパ部20の一方の側面と接触してこのストッパ部20をガイドするガイド面39bとを備えている。ストッパ誘導部39は、図14に示すように、ストッパ部20の一方の側面とガイド面39bとを接触させた状態で、複数の可動ガイド部17にストッパ部20を挿入することによって、複数の可動ガイド部17の中心とストッパ部20の中心とを一致させる。
【0053】
図11〜図13に示す可動ガイド組立治具40は、複数の可動ガイド部17を直線状に整列させるための治具である。可動ガイド組立治具40は、すり板片13a,13bに対して可動ガイド部17を正確に位置決めしこの可動ガイド部17の摺動面17bを同一平面上に整列する機能と、すり板片13a,13bと可動ガイド部17とを固定するときにこの可動ガイド部17の姿勢が変化するのを防止する機能とを有する。可動ガイド組立治具40は、図11に示すように、作業者によって着脱が容易なようにすり板組立治具30よりも軽量な金属製の枠状部材であり、図9及び図13に示すように可動ガイド組立治具40の長さは、すり板13の全長と略同じに形成されており、可動ガイド組立治具40の幅はすり板片13a,13bの幅と略同じに形成されている。可動ガイド組立治具40は、図11〜図13に示す可動ガイド整列部41,42と、図11に示す装着部43,44と、図11及び図12に示す補強部45と、図11〜図13に示すハンドル部46などを備えている。
【0054】
図11〜図13に示す可動ガイド整列部41,42は、複数の可動ガイド部17が所定の方向に並ぶように、この複数の可動ガイド部17を整列させる部材である。可動ガイド整列部41,42は、図4に示す固定ガイド部25側の摺動面25bと摺動する複数の可動ガイド部17側の摺動面17bが同一平面になるように、この複数の可動ガイド部17を所定の方向に整列させる。可動ガイド整列部41,42は、図12及び図13に示すように、複数の可動ガイド部17の一方の端部側の摺動面17bと他方の端部側の摺動面17bとを挟み込むことによって、この複数の可動ガイド部17を直線状に整列させて、すり板片13a,13bに対して可動ガイド部17を正確に位置決めする。可動ガイド整列部41,42は、図9に示す複数のすり板片13a,13bと図12に示す複数の可動ガイド部17とを固定するときに、この複数の可動ガイド部17がずれるのを防止する。可動ガイド整列部41,42は、例えば、図13に示す固定ボルト18aをトルクレンチなどの締結用工具によって回転して、すり板片13a,13bと可動ガイド部17とを締結するときに、この可動ガイド部17が固定ボルト18aを中心として回転して姿勢が変化するのを防止する。可動ガイド整列部41は、図12及び図13に示すように、すり板片整列部33と複数の可動ガイド部17との間に着脱自在に嵌合可能であり、可動ガイド整列部42はすり板片整列部34と複数の可動ガイド部17との間に着脱自在に嵌合可能である。可動ガイド整列部41,42は、図11に示すように、断面形状が四角形の角柱状部材であり、一方の端部が装着部43と一体に連結されており、他方の端部が装着部44と一体に連結されている。可動ガイド整列部41,42は、図11及び図13に示すように、整列面41a,42aと接合面41b,42bなどを備えている。
【0055】
図11及び図13に示す整列面41a,42aは、複数の可動ガイド部17の摺動面17bを整列させる部分である。図13に示すように、整列面41aは複数の可動ガイド部17の一方の端部側の摺動面17bと接触し、整列面42aはこの複数の可動ガイド部17の他方の端部側の摺動面17bと接触する。整列面41a,42aは、図11(A)に示すように、可動ガイド整列部41,42の長さ方向に沿って形成された平坦面である。図13に示すように、接合面41bはすり板片整列部33の整列面33aと接合する部分であり、接合面42bはすり板片整列部34の整列面34aと接合する部分である。図11(A)に示すように、接合面41b,42bは可動ガイド整列部41,42の長さ方向に沿って形成された平坦面であり、整列面41a,42aと平行に形成されている。
【0056】
図11及び図12に示す装着部43,44は、すり板片13b上に着脱自在に装着される部分である。装着部43,44は、図12に示すように、すり板片位置決め部32と装着部14との間の隙間及びすり板片整列部33とすり板片整列部34との間の隙間に嵌合可能であり、図11(A)に示すように外観形状が略正方形の薄板状の部分である。装着部43は、可動ガイド組立治具40の一方の端部に配置されており、装着部44はこの可動ガイド組立治具40の他方の端部に配置されている。
【0057】
図11及び図12に示す補強部45は、可動ガイド整列部41,42を補強する部分である。補強部45は、図12に示すように、外観形状が略U字状に屈曲した薄板状部材であり、可動ガイド整列部41と可動ガイド整列部42とを強固に連結してこれらの間隔を一定に保持する。補強部45の高さは、すり板組立体12を組み立てるときに、可動ガイド部17との間に作業者が手を挿入し易いように設定されている。補強部45は、可動ガイド組立治具40の長さ方向の中央部を中心として左右に等間隔に2つ配置されており、図示しないボルトなどの固定部材によって可動ガイド整列部41,42に着脱自在に固定されている。
【0058】
図11〜図13に示すハンドル部46は、すり板組立治具30に可動ガイド組立治具40を着脱するときに作業者が把持する部分である。ハンドル部46は、図11(C)に示すように、外観形状が略U字状に屈曲した軸状部材であり、装着部43,44に着脱自在に固定されている。ハンドル部46の高さは、図14に示すように、複数の可動ガイド部17にストッパ部20を挿入するときに、このストッパ部20がハンドル部46の内側を通過可能に設定されている。ハンドル部46は、図11(C)に示すように、装着部43,44の貫通孔に挿入される雄ねじ部46aと、この雄ねじ部46aの先端部に装着される固定ナット46bと、この固定ナット46bとの間で装着部43,44を挟み込むようにこの雄ねじ部46aに装着される固定ナット46cなどを備えている。ハンドル部46は、図11及び図12に示すように、作業者の取扱いが容易なように、可動ガイド組立治具40の長さ方向の中央部を中心として補強部45よりも外側に、左右に等間隔に2つ配置されている。
【0059】
次に、この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具の使用方法を説明する。
図15に示すすり板片整列/間隔保持工程#100は、すり板片13a,13bを一列に整列するとともに、隣り合うすり板片13a,13bを所定の間隔Δ1に保持する工程である。図16に示すように、すり板組立治具30の搭載部31上の隣り合う間隔保持部36の間にすり板片13aを1枚ずつ作業者が並べるとともに、搭載部31上の両端の間隔保持部36とすり板片位置決め部32との間にすり板片13bを1枚ずつ作業者が並べる。このとき、すり板片整列部33の整列面33aにすり板片13a,13bの端面が接触するように、搭載部31上にすり板片13a,13bを作業者が並べる。その結果、すり板片13a,13bが搭載部31上で直線状に整列するとともに、隣り合うすり板片13a,13bが所定の間隔Δ1で搭載部31上に並ぶ。
【0060】
図15に示す弾性部装着工程#110は、すり板片13a,13b上に弾性部15を装着する工程である。図17に示すように、弾性部15の両端部が装着部14の段部に一致するようにすり板片13a,13b上にこの弾性部15を作業者が載せる。このとき、すり板片整列部33の整列面33aに弾性部15の一方の側面を接触させることによって、すり板片13a,13bの中心とこの弾性部15の中心とが一致した状態でこのすり板片13a,13b上にこの弾性部15が搭載される。
【0061】
図15に示す間隔調整部装着工程#120は、弾性部15に間隔調整部19を装着する工程であり、導電部装着工程#130はこの弾性部15に導電部16を装着する工程である。図18に示すように、図17に示す弾性部15の貫通孔15aに間隔調整部19を1つずつ作業者が嵌め込み、弾性部15に間隔調整部19が装着される。次に、図19に示すように、複数枚の導電部16のうち両端部の導電部16の先端部が装着部14の段部に一致するように、この複数枚の導電部16を弾性部15上に作業者が並べて載せる。このとき、図18に示す弾性部15に装着された間隔調整部19の貫通孔19aと図19に示す導電部16の貫通孔16aとが一致するように、この弾性部15上に導電部16が搭載される。
【0062】
図15に示す可動ガイド部仮固定工程#140は、導電部16上に可動ガイド部17を並べた状態で、この可動ガイド部17とすり板片13a,13bとを固定部18によって仮固定する工程である。図20に示すように、図4に示す導電部16の貫通孔16aと可動ガイド部17の貫通孔17aとが一致するように、この導電部16上に所定の間隔をあけて可動ガイド部17を作業者が並べて載せる。次に、図4に示す固定部18の固定ボルト18aの雄ねじ部に緩み止め剤を塗布し、可動ガイド部17の貫通孔17a、導電部16の貫通孔16a及び間隔調整部19の貫通孔19aにこの固定ボルト18aを挿入する。次に、すり板片13aの雌ねじ部13cと固定ボルト18aの雄ねじ部とを作業者が手で締め付けると、図20に示すようにすり板片13aと可動ガイド部17とが固定部18によって仮締めされる。
【0063】
図15に示す可動ガイド部整列/固定工程#150は、可動ガイド部17を一列に整列するとともに、この可動ガイド部17とすり板片13aとを固定部18によって固定する工程である。図21に示すように、すり板片整列部34をすり板片位置決め部32に固定部35によって作業者が締結すると、図13に示すようにすり板片整列部33とすり板片整列部34との間にすり板片13a及び弾性部15が挟み込まれる。次に、図21に示すように、すり板組立治具30に可動ガイド組立治具40を装着する。先ず、すり板組立治具30のすり板片整列部33とすり板片整列部34との間及びすり板片位置決め部32と装着部14との間に、可動ガイド組立治具40の装着部43,44を嵌め込むと、すり板片13b上に装着部43,44が搭載される。同時に、図13に示すすり板片整列部33,34の整列面33a,34aと可動ガイド部17の摺動面17bとの間に、可動ガイド組立治具40の可動ガイド整列部41,42が嵌め込まれて、弾性部15上に可動ガイド整列部41,42が搭載される。このとき、可動ガイド部17とすり板片13aとは固定部18によって仮締めされた状態であるため、この可動ガイド部17の姿勢を1つずつ作業者が手で微調整して、すり板片整列部33,34と可動ガイド部17との間に可動ガイド整列部41,42を嵌め込む。その結果、図21に示すように、複数の可動ガイド部17の摺動面17bが同一平面上に並ぶとともに、この複数の可動ガイド部17が直線状に一列に並ぶ。次に、図13に示す固定部18の固定ボルト18aにトルクレンチなどの締結用工具を装着し、所定の設定トルク値(例えば12.7±1.0(N・m))に達するまでこの締結用工具によって固定ボルト18aを本締めする。このとき、図10に示すすり板片整列部33,34及び図13に示す隣り合う間隔保持部36によってすり板片13aの両端部及び両縁部が挟み込まれており、可動ガイド整列部41,42によって可動ガイド部17の両端部も挟み込まれている。このため、固定ボルト18aを締結用工具によって回転しても、すり板片13a及び可動ガイド部17がこの固定ボルト18aを中心として回転してこれらがずれることがない。
【0064】
図15に示すストッパ部装着工程#160は、複数の可動ガイド部17にストッパ部20を装着する工程である。図22に示すように、可動ガイド組立治具40をすり板組立治具30から取り外して、図7に示すストッパ誘導部39のガイド面39aにストッパ部20の下面を接触させるとともに、このストッパ部20の一方の側面をこのストッパ誘導部39のガイド面39bに接触させる。次に、図22に示すように、可動ガイド部17に向かってストッパ部20を長さ方向(横方向)に作業者がスライドさせる。その結果、複数の可動ガイド部17の中心にストッパ部20の中心が位置決めされた状態で、導電部16の一端部が複数の可動ガイド部17内を通過しこの複数の可動ガイド部17内に順次挿入される。ストッパ部20の一方の端部を装着部14の段部に一致するまでこのストッパ部20を作業者が繰り出すと、このストッパ部20の両端部がすり板片13b上に位置決めされ搭載される。
【0065】
図15に示す間隔調整部装着工程#170は、導電部16とストッパ部20との間に間隔調整部22を装着する工程である。図23に示すように、図3(B)及び図6に示す導電部16とストッパ部20との間の隙間に、間隔調整部22を装着部14側から横方向にスライドさせる。導電部16の貫通孔16a及びストッパ部20の貫通孔20bと間隔調整部22の貫通孔22aとが一致するまで、導電部16とストッパ部20との間に間隔調整部22を作業者が挿入すると、これらの間に間隔調整部22が完全に嵌合した状態になる。
【0066】
図15に示すストッパ部固定工程#180は、ストッパ部20とすり板片13bとを固定部23によって固定する工程である。図24に示しように、図6に示す導電部16の貫通孔16a、ストッパ部20の貫通孔20b及び間隔調整部19,22の貫通孔19a,22aに固定部23の固定ボルト23aを挿入する。次に、トルクレンチなどの締結用工具を固定ボルト23aに装着して、すり板片13bの雌ねじ部13dと固定ボルト23aの雄ねじ部とを締め付けて、所定の設定トルク値に達するまでこの締結用工具によって固定ボルト23aを締め付ける。その結果、図3に示すように、すり板13の全長が所定の長さに設定されるとともに、図4に示すように可動ガイド部17の内側側面とストッパ部20の両縁部との間の左右の隙間Δ2が同一に設定される。次に、図25に示すように、すり板組立治具30から可動ガイド組立治具40を取り外すとともに、固定部35の固定ボルト35aを緩めてこのすり板組立治具30からすり板片整列部34を取り外す。最後に、完成後のすり板組立体12を搭載部31から取り出し、図2に示す舟体枠24の装着部24aにすり板組立体12の装着部14を嵌め込み、図示しない固定ボルトなどの固定部材によって装着部14と装着部24aとを締結して、すり板組立体12と舟体枠24とが一体になる。
【0067】
この発明の実施形態に係るすり板組立体の組立治具には、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、複数のすり板片13a,13bが所定の方向に沿って搭載部31上に並ぶように、この複数のすり板片13a,13bをすり板片整列部33,34が整列させ、この複数のすり板片13a,13bが所定の間隔Δ1をあけてこの搭載部31上に並ぶように、隣り合うすり板片13a,13bを所定の間隔Δ1に間隔保持部36が保持する。このため、すり板片13a,13bを精度よく正確に並べることができ、部品点数が多く複雑な構造のすり板組立体12を短時間で容易に組み立てることができる。例えば、この実施形態では、隣り合うすり板片13a,13bを2.0mm±0.4mmの間隔Δ1で一列に20分程度の短時間で正確に組み立てることができる。また、多数のすり板片13a,13bを所定の間隔Δ1をあけて正確に定盤上に並べてこのすり板片13a,13bがずれないように組み立てるような特別な技能や熟練を必要とせずに、短時間に誰でも綺麗に組み立てることができる。また、すり板片13a,13bが整列した状態ですり板片13a,13bの間隔Δ1が一定に保持されるため、すり板片13a,13bと可動ガイド部17とを固定ボルト18aによって締め付けるときに、すり板片13a,13bがずれるのを防止することができる。さらに、すり板組立体12を短時間で組み立てることができるため、このすり板組立体12の点検や構成部品の交換に必要なコストを低減することができるとともに、リサイクル性を向上させることができる。
【0068】
(2) この実施形態では、複数のすり板片13a,13bとともに移動する複数の可動ガイド部17が所定の方向に並ぶように、この複数の可動ガイド部17を可動ガイド整列部41,42が整列させる。このため、可動ガイド部17を精度よく正確に並べることができ、部品点数が多く複雑な構造のすり板組立体12を短時間で容易に組み立てることができる。
【0069】
(3) この実施形態では、複数の可動ガイド部17を移動自在にガイドする固定ガイド部25側の摺動面25bと摺動するこの複数の可動ガイド部17側の摺動面17bが同一平面になるように、この複数の可動ガイド部17を可動ガイド整列部41,42が所定の方向に整列させる。このため、可動ガイド部17側の摺動面17bを一列に正確に並べた状態で組み立てて、すり板組立体12を舟体枠24に精度よく装着することができる。その結果、可動ガイド部17側の摺動面17bと固定ガイド部25側の摺動面25bとが引っ掛からずに簡単に嵌合するため、すり板片13a,13bとトロリ線1aとが接触したときにこのすり板片13a,13bを可動ガイド部17によってスムーズに上下方向に移動させることができる。
【0070】
(4) この実施形態では、複数のすり板片13a,13bと複数の可動ガイド部17とを固定するときに、この複数の可動ガイド部17がずれるのを可動ガイド整列部41,42が防止する。このため、可動ガイド部17が整列した状態で組み立てることができるため、すり板片13a,13bと可動ガイド部17とを固定ボルト18aによって締め付けるときに、可動ガイド部17が固定ボルト18aを中心として回転し、可動ガイド部17の姿勢が変化してしまうのを防止することができる。
【0071】
(5) この実施形態では、複数の可動ガイド部17の一方の端部側の摺動面17bと接触するともに、この複数の可動ガイド部17の他方の端部側の摺動面17bと接触して、可動ガイド整列部41,42がこれらの摺動面17bを整列させる。このため、可動ガイド部17側の摺動面17bと固定ガイド部25側の摺動面25bとが引っ掛からずにこれらを簡単に嵌め込むことができる。その結果、すり板片13a,13bとトロリ線1aとが接触したときに、このすり板片13a,13bを可動ガイド部17によってスムーズに上下方向に移動させることができる。
【0072】
(6) この実施形態では、すり板13の全長が所定の長さになるように、搭載部31上のすり板片13a,13bのうち両端に位置するすり板片13bを所定の位置にすり板片位置決め部32が位置決めする。このため、すり板13の全長を規定の長さに簡単に調整することができるとともに、このすり板13を正確に組み立てることができる。
【0073】
(7) この実施形態では、すり板組立体12側の装着部14が舟体枠24側の装着部24aに着脱自在に装着されるように、このすり板組立体12側の装着部14をすり板片位置決め部32が所定の位置に位置決めする。このため、すり板組立体12と舟体枠24とが引っ掛からずに、このすり板組立体12を舟体枠24に簡単に組み込むことができる。
【0074】
(8) この実施形態では、複数のすり板片13a,13bとともに移動する複数の可動ガイド部17の可動範囲を所定範囲内に規制するストッパ部20をこの複数の可動ガイド部17に位置決めするときに、この複数の可動ガイド部17の中心線に沿ってこのストッパ部20をストッパ誘導部39が導く。このため、可動ガイド部17の中央にストッパ部20が正確に位置するように組み立てることができる。その結果、可動ガイド部17の内側側面とストッパ部20の両縁部との間に左右に均一な隙間Δ2が形成されるため、すり板片13aとトロリ線1aとが接触してこの可動ガイド部17が上下方向に移動するときに、この可動ガイド部17とこのストッパ部20とが干渉するのを防ぐことができる。
【0075】
(9) この実施形態では、複数のすり板片13a,13bの端面と接触して、この複数のすり板片13a,13bの端面を整列させる整列面33a,34aをすり板片整列部33,34が備えている。このため、すり板片13a,13bを整列面33a,34aに接触させるだけで、このすり板片13a,13bを自動的に一列に並べることができる。
【0076】
(10) この実施形態では、搭載部31の長さ方向に所定の間隔をあけてこの搭載部31上から突出する突出部36aを間隔保持部36が備えている。このため、突出部36aを指標としてすり板片13a,13bを隣り合う突出部36a間に並べるだけで、このすり板片13a,13bを自動的に所定の間隔Δ1をあけて並べることができる。
【0077】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、枠組7に対してすり板13が進行方向後側に位置するなびき方向(進行方向L0)に集電装置4が移動する場合を例に挙げて説明したが、枠組7に対してすり板13が進行方向前側に位置する反なびき方向(進行方向L0とは逆方向)に集電装置4が移動する場合についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、集電装置4がシングルアーム式パンタグラフである場合を例に挙げて説明したが、菱型パンタグラフ、翼型パンタグラフなどの他の形式のパンタグラフについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、新幹線用パンタグラフ舟体に使用されるすり板組立体12にこの発明を適用する場合を例に挙げて説明したが、在来線用パンタグラフ舟体にすり板組立体12が使用される場合にはこのすり板組立体12についてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、すり板片13aが12枚でありすり板片13bが2枚であるすり板13を例に挙げて説明したが、すり板片13a,13bの枚数はこの枚数に限定するものではない。
【0078】
(2) この実施形態では、すり板片整列部33が搭載部31に固定されすり板片整列部34が着脱可能である場合を例に挙げて説明したが、すり板片整列部33,34の双方を固定又は着脱可能にすることもできる。また、この実施形態では、図20及び図21に示すように、導電部16上に可動ガイド部17を載せてから可動ガイド組立治具40をこの導電部16上に載せる場合を例に挙げて説明したが、可動ガイド組立治具40を導電部16上に載せてからこの導電部16上に可動ガイド部17を載せることもできる。さらに、この実施形態では、図22に示すように、可動ガイド組立治具40をすり板組立治具30から取り外した状態で可動ガイド部17にストッパ部20を挿入しているが、可動ガイド組立治具40をすり板組立治具30に装着した状態で可動ガイド部17にストッパ部20を挿入することもできる。
【0079】
(3) この実施形態では、図23に示すように、可動ガイド組立治具40をすり板組立治具30に装着した状態で、ストッパ部20と導電部16との間に間隔調整部19を装着する場合を例に挙げて説明したが、可動ガイド組立治具40をすり板組立治具30から取り外した状態で、ストッパ部20と導電部16との間に間隔調整部19を装着することもできる。また、この実施形態では、図23に示すように、すり板組立治具30からすり板片整列部34を取り外した状態で、ストッパ部20と導電部16との間に間隔調整部19を装着する場合を例に挙げて説明したが、すり板組立治具30にすり板片整列部34を装着した状態でストッパ部20と導電部16との間に間隔調整部19を装着することもできる。
【符号の説明】
【0080】
1 架線(電車線)
1a トロリ線
2 車両
4 集電装置
9 集電舟
13 すり板
13a,13b すり板片
14 装着部
15 弾性部
16 導電部
17 可動ガイド部
17b 摺動面
18 固定部
19 間隔調整部
20 ストッパ部
21 緩衝部
22 間隔調整部
23 固定部
24 舟体枠
24a 装着部
25 固定ガイド部
25b 摺動面
26 弾性支持部
27 固定部
29 組立治具
30 すり板組立治具
31 搭載部
31a 突出部
32 すり板片位置決め部
33,34 すり板片整列部
33a,34a 整列面
35 固定部
36 間隔保持部
36a 突出部
37 間隔調整部
38 固定部
39 ストッパ誘導部
39a,39b ガイド面
40 可動ガイド組立治具
41,42 可動ガイド整列部
41a,42a 整列面
43,44 装着部
45 補強部
46 ハンドル部
0 進行方向
C 接触力
Δ1 間隔
Δ2 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のすり板片によってすり板が長さ方向に分割されているすり板組立体を組み立てるときに使用されるすり板組立体の組立治具であって、
前記複数のすり板片を並べて載せる搭載部と、
前記複数のすり板片が所定の方向に沿って前記搭載部上に並ぶように、この複数のすり板片を整列させるすり板片整列部と、
前記複数のすり板片が所定の間隔をあけて前記搭載部上に並ぶように、隣り合うすり板片を所定の間隔に保持する間隔保持部と、
を備えるすり板組立体の組立治具。
【請求項2】
請求項1に記載のすり板組立体の組立治具において、
前記複数のすり板片とともに移動する複数の可動ガイド部が所定の方向に並ぶように、この複数の可動ガイド部を整列させる可動ガイド整列部を備えること、
を特徴とするすり板組立体の組立治具。
【請求項3】
複数のすり板片によってすり板が長さ方向に分割されているすり板組立体を組み立てるときに使用されるすり板組立体の組立治具であって、
前記複数のすり板片とともに移動する複数の可動ガイド部が所定の方向に並ぶように、この複数の可動ガイド部を整列させる可動ガイド整列部を備えること、
を特徴とするすり板組立体の組立治具。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のすり板組立体の組立治具において、
前記可動ガイド整列部は、前記複数の可動ガイド部を移動自在にガイドする固定ガイド部側の摺動面と摺動するこの複数の可動ガイド部側の摺動面が同一平面になるように、この複数の可動ガイド部を所定の方向に整列させること、
を特徴とするすり板組立体の組立治具。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載のすり板組立体の組立治具において、
前記可動ガイド整列部は、前記複数のすり板片と前記複数の可動ガイド部とを固定するときに、この複数の可動ガイド部がずれるのを防止すること、
を特徴とするすり板組立体の組立治具。
【請求項6】
請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載のすり板組立体の組立治具において、
前記可動ガイド整列部は、前記複数の可動ガイド部の一方の端部側の摺動面と接触するともに、この複数の可動ガイド部の他方の端部側の摺動面と接触して、これらの摺動面を整列させる整列面を備えること、
を特徴とするすり板組立体の組立治具。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のすり板組立体の組立治具において、
前記すり板の全長が所定の長さになるように、前記搭載部上のすり板片のうち両端に位置するすり板片を所定の位置に位置決めするすり板片位置決め部を備えること、
を特徴とするすり板組立体の組立治具。
【請求項8】
請求項7に記載のすり板組立体の組立治具において、
前記すり板片位置決め部は、前記すり板組立体側の装着部が集電舟の舟体枠側の装着部に着脱自在に装着されるように、このすり板組立体側の装着部を所定の位置に位置決めすること、
を特徴とするすり板組立体の組立治具。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のすり板組立体の組立治具において、
前記複数のすり板片とともに移動する複数の可動ガイド部の可動範囲を所定範囲内に規制するストッパ部をこの複数の可動ガイド部に位置決めするときに、この複数の可動ガイド部の中心線に沿ってこのストッパ部を導くストッパ誘導部を備えること、
を特徴とするすり板組立体の組立治具。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載のすり板組立体の組立治具において、
前記すり板片整列部は、前記複数のすり板片の端面と接触して、この複数のすり板片の端面を整列させる整列面を備えること、
を特徴とするすり板組立体の組立治具。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載のすり板組立体の組立治具において、
前記間隔保持部は、前記搭載部の長さ方向に所定の間隔をあけてこの搭載部上から突出する突出部を備えること、
を特徴とするすり板組立体の組立治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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