説明

たわみ性ポリ(アリーレンエーテル)組成物及びそれの物品

ポリ(アリーレンエーテル)と、ポリオレフィンと、(i)中心ブロックが制御分布コポリマーであるブロックコポリマー及び(ii)ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーからなる群から選択されるポリマー相溶化剤とを含んでなる熱可塑性樹脂組成物が開示される。この組成物は被覆線の製造に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はたわみ性熱可塑性樹脂組成物に関する。特に、本発明はたわみ性ポリ(アリーレンエーテル)組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル樹脂は、被覆線及びケーブル業界で被覆用樹脂として長い間使用されてきた。しかし、環境に対するハロゲン化材料の影響に関して関心が高まっており、非ハロゲン化代替物が探求されている。このような探求でポリエチレン組成物である程度の成功を収めたが、有用なポリエチレン組成物は高いレベルの無機難燃性を含むのが通例であり、これは若干の物理的性質及び加工性の低下をもたらすことがある。
【0003】
さらに、電子デバイスがますます小形化して輸送可能となるのに伴い、これらのデバイスの一部として使用されるケーブルや線及びそのアクセサリーが一層のたわみ性及び耐久性を有することの必要性が高まっている。例えば、自動車エンジンの電子部品の数が増加するのに伴い、電子部品を接続する線が、一定の温度範囲にわたり、かつ自動車環境で見られる各種の化学物質に暴露された後にもたわみ性及び耐久性を有することの必要性が高まっている。
【0004】
したがって、たわみ性熱可塑性樹脂組成物を用いて製造される被覆線及びケーブルの耐久性及び原価効率にとって重要である、優れた機械的性質及び加工性をもったたわみ性熱可塑性樹脂組成物に対するニーズが存在している。
【特許文献1】欧州特許第0358993号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述のニーズは、
25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/gを超える初期固有粘度を有するポリ(アリーレンエーテル)と、
120℃以上の融解温度及び0.3〜15のメルトフローレートを有するポリオレフィンと、
(i)ジブロックコポリマーとトリブロックコポリマーの組合せ、
(ii)中心ブロックが制御分布コポリマーであるブロックコポリマー、及び
(iii)ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーとブロックコポリマーの組合せ
からなる群から選択されるポリマー相溶化剤と
を含んでなる熱可塑性樹脂組成物であって、ポリ(アリーレンエーテル)がポリオレフィンの重量基準の量より多い重量基準の量で存在している熱可塑性樹脂組成物によって満たされる。本組成物はさらに難燃剤を含むことができる。
【0006】
また、心線及び熱可塑性樹脂組成物からなる被覆を含んでなる被覆心線であって、
熱可塑性樹脂組成物が、
25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/gを超える初期固有粘度を有するポリ(アリーレンエーテル)と、
120℃以上の融解温度及び0.3〜15のメルトフローレートを有するポリプロピレンと、
(i)ジブロックコポリマーとトリブロックコポリマーの組合せ、
(ii)制御分布コポリマーの中心ブロックを含むブロックコポリマー、及び
(iii)ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーとブロックコポリマーの組合せ
からなる群から選択されるポリマー相溶化剤と
を含んでなり、
ポリ(アリーレンエーテル)がポリオレフィンの重量基準の量より多い重量基準の量で存在しており、
被覆が心線をおおって配設されている被覆心線も提供される。熱可塑性樹脂組成物はさらに難燃剤を含むことができる。
【0007】
図面の簡単な説明
図1及び2は、本明細書中に記載される熱可塑性樹脂組成物の透過電子顕微鏡写真である。
【0008】
図3は、電線の横断面の略図である。
【0009】
図4及び5は、複数の層を有する電線の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語を用いるが、これらは以下の意味をもつものと定義される。
【0011】
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
【0012】
「任意」又は「任意には」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象が起こる場合と起こらない場合を包含する。
【0013】
同じ特性を記載しているすべての範囲の端点は、独立に結合可能であると共に、記載された端点を含んでいる。「約…より大きい」又は「約…より小さい」として示された値は、記載された端点を含んでいる。例えば、「約3.5より大きい」は3.5の値を包含する。
【0014】
ISO6722は、本明細書中で言及される場合、この規格の2002年12月15日版である。
【0015】
本明細書中に記載される組成物は、少なくとも2つの相、即ちポリオレフィン相及びポリ(アリーレンエーテル)相を含んでいる。ポリオレフィン相は連続相である。ポリ(アリーレンエーテル)相はポリオレフィン相中に分散し得る。両相間の良好な相溶化は、低温及び室温での高い衝撃強さ、良好な熱老化性、良好な難燃性、並びに大きい引張伸びをはじめとする向上した物理的性質をもたらし得る。一般に、組成物の形態は相溶化の程度又は品質を表すことが認められている。小さくて比較的一様な粒度のポリ(アリーレンエーテル)粒子が組成物の領域全体にわたって均等に分布していることは、良好な相溶化を表している。
【0016】
本明細書中に記載される組成物は、ポリスチレン又はゴム改質ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン又はHIPSとしても知られる)のようなアルケニル芳香族樹脂を実質的に含まない。実質的に含まないとは、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン及びブロックコポリマーの合計重量を基準にして10重量%(wt%)未満、さらに詳しくは7wt%未満、さらに詳しくは5wt%未満、さらに一段と詳しくは3wt%未満のアルケニル芳香族樹脂を含むこととして定義される。意外にも、アルケニル芳香族樹脂の存在はポリ(アリーレンエーテル)相とポリオレフィン相との相溶化にマイナスの影響を及ぼすことがある。
【0017】
若干の実施形態では、本組成物は連続ポリオレフィン相中に分散したポリ(アリーレンエーテル)粒子を有している。本組成物が射出成形又は押出しを受ける場合、特に押出しで被覆心線を形成する場合には、ポリ(アリーレンエーテル)粒子は5マイクロメートル未満、更に詳しくは3マイクロメートル以下、さらに一段と詳しくは2マイクロメートル以下の平均直径を有し得る。当業者には容易に理解される通り、ポリ(アリーレンエーテル)粒子は球形又は非球形の形状を有し得る。粒子の形状は、成形又は押出条件(特に、物品形成中に存在する剪断作用の量)に依存し得る。粒子形状が非球形である場合、粒子の直径は最長の線寸法として定義される。別法として、これが主軸と記述されることもある。
【0018】
若干の実施形態では、本組成物は連続ポリオレフィン相中に分散したポリ(アリーレンエーテル)粒子を有している。本組成物が射出成形又は押出しを受ける場合、ポリ(アリーレンエーテル)粒子は、下記のようにして測定して4平方マイクロメートル(μm)以下、さらに詳しくは2平方マイクロメートル以下、さらに一段と詳しくは1平方マイクロメートル以下の平均粒子面積を有する。
【0019】
射出成形品中のポリ(アリーレンエーテル)粒子の平均直径及び/又は粒子面積は、透過電子顕微鏡を用いて求めることができる。組成物から、ASTM D3763−03試験で使用されるような厚さ3.2ミリメートルのディスクを射出成形する。ディスクの(直径方向に関して)中心に位置する部分を取り出し、その部分の(厚さ方向に関して)中心から厚さ100ナノメートルの切片を取り出す。調製したばかりの四酸化ルテニウム染色液中で切片を30秒間染色する。顕微鏡検査は、Technai G2のような電子顕微鏡上で実施できる。ディジタル画像の取得は、Gatan Model 791サイドマウントカメラのようなカメラを用いて実施できる。Clemex Vision PEのような画像分析ソフトウェアを用いて画像を分析することで、平均直径又は平均粒子面積を求めることができる。観察領域内で完全に境界を有する粒子のみを分析に含める。分析及び平均値は100以上の粒子に基づいている。
【0020】
被覆心線のような押出品中のポリ(アリーレンエーテル)粒子の平均直径及び/又は粒子面積は、押し出された熱可塑性樹脂の一部を取り出すことで求めることができる。次いで、表面から50〜60マイクロメートルの深さにある部分から厚さ100ナノメートルの切片を取り出す。調製したばかりの四酸化ルテニウム染色液中で切片を30秒間染色する。顕微鏡検査は、Technai G2のような電子顕微鏡上で実施できる。ディジタル画像の取得は、Gatan Model 791サイドマウントカメラのようなカメラを用いて実施できる。Clemex Vision PEのような画像分析ソフトウェアを用いて画像を分析することで、平均直径又は平均粒子面積を求めることができる。観察領域内で完全に境界を有する粒子のみを分析に含める。分析及び平均値は100以上の粒子に基づいている。
【0021】
意外にも、ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度及びポリオレフィンのメルトフローインデックスは組成物の形態に影響を及ぼすことがある。一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)又はポリ(アリーレンエーテル)の組合せは、25℃のクロロホルム中で測定して0.31dl/gを超える初期固有粘度を有し、ポリオレフィンはASTM D1238に従って測定した場合に0.8〜15グラム/10分のメルトフローレートを有する。ポリ(アリーレンエーテル)又はポリ(アリーレンエーテル)の組合せが0.31dl/g未満の初期固有粘度を有する場合、組成物は熱老化性の低下を示すことがある。ポリオレフィンが15グラム/10分以上のメルトフローレートを有する場合には、組成物は低下した耐薬品性及び熱老化性を有することがある。ポリオレフィンが0.7グラム/10分以下のメルトフローレートを有する場合には、組成物は共連続した形態を有し、ある種の用途にとって不適格な機械的性質(即ち、引張伸び)を有することがある。
【0022】
上記に示唆した通り、熱可塑性樹脂組成物は被覆心線(特に、劣化を引き起こし得る化学物質(例えば、ガソリン、ディーゼル燃料、不凍液など)に暴露されることがある環境で使用される被覆線)で有用である。別の態様では、本組成物は電線に対して望ましい付着力を有する。付着力は、通常の使用条件下で電線の健全性を維持するのに十分でなければならないが、意図的なストリッピングを妨げるほどに強くてはならない。通例、電線から熱可塑性樹脂被覆を剥ぎ取るためには、心線のサイズ及び熱可塑性樹脂被覆の厚さに応じて約2〜100ニュートンの力が使用されるので、被覆線が心線と熱可塑性樹脂組成物との間に有する付着強さは、心線サイズ及び熱可塑性樹脂被覆厚さに対して通例使用されるストリッピング力以下であることが望ましい。各種の心線サイズに対する例示的なストリッピング力は、ISO6722中に見出すことができる。
【0023】
別の態様では、本明細書中に記載される熱可塑性樹脂組成物を含む被覆線は、ISO6722に記載される基準(例えば、難燃性、熱老化性及び耐摩耗性)を満たし又は超えるので、かかる被覆線は道路車両での使用に適する。特に、かかる被覆線はISO6722に記載されるようなクラスA、B又はCの熱老化性基準を満たし又は超える。
【0024】
別の態様では、本組成物は1.27ミリメートル/分の速度及び3.2ミリメートルの厚さを用いてASTM D790−03で測定して800〜1800メガパスカル(MPa)の曲げ弾性率を有する。この範囲内では、曲げ弾性率は900MPa以上、さらに詳しくは1200MPa以上であり得る。やはりこの範囲内では、曲げ弾性率は1700MPa以下、さらに詳しくは1600MPa以下であり得る。曲げ弾性率値は3つの試料の平均である。曲げ弾性率用の試料は、Toyo Machinery & Metal Co.LTDから入手したPlastar Ti−80G上で、600〜700キログラム重/平方センチメートルの射出圧力及び15〜20秒の保圧時間を用いて形成した。残りの成形条件は表1に示す。
【0025】
【表1】


本明細書中で使用する「ポリ(アリーレンエーテル)」は、下記の式(I)を有する構造単位を複数含んでいる。
【0026】
【化1】

式中、各構造単位について、Q及びQは各々独立に水素、ハロゲン、第一若しくは第二低級アルキル(例えば、1〜7の炭素原子を含むアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、炭化水素オキシ、アリール、又はハロゲン原子と酸素原子とを2以上の炭素原子が隔てているハロ炭化水素オキシである。若干の実施形態では、各Qは独立にアルキル又はフェニル(例えば、C1−4アルキル)であり、各Qは独立に水素又はメチルである。ポリ(アリーレンエーテル)は、通例はヒドロキシ基に対してオルト位に位置するアミノアルキル含有末端基を有する分子を含み得る。また、通例はテトラメチルジフェニルキノン副生物が存在する反応混合物から得られるテトラメチルジフェニルキノン(TMDQ)末端基が存在することも多い。
【0027】
ポリ(アリーレンエーテル)は、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、イオノマー又はブロックコポリマー、並びに上述のものの1種以上を含む組合せの形態を有し得る。ポリ(アリーレンエーテル)には、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位を任意には2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と共に含むポリフェニレンエーテルがある。
【0028】
ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−キシレノール及び/又は2,3,6−トリメチルフェノールのようなモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングで製造できる。かかるカップリングには一般に触媒系を使用する。触媒系は、銅、マンガン又はコバルトの化合物のような重金属化合物を、通常は他の各種物質(例えば、第二アミン、第三アミン、ハロゲン化物、又は上述のものの2種以上の組合せ)と共に含み得る。
【0029】
一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は封鎖ポリ(アリーレンエーテル)からなる。末端ヒドロキシ基は、例えばアシル化反応により封鎖剤で封鎖できる。選択される封鎖剤は、好ましくは、反応性の低いポリ(アリーレンエーテル)を生じることで、高温での加工中におけるポリマー鎖の架橋及びゲル又は黒斑点の形成を低減又は防止するものである。好適な封鎖剤には、例えば、サリチル酸、アントラニル酸又はこれらの置換誘導体のエステルなどがあり、サリチル酸のエステル、特にサリチルカーボネート及び線状ポリサリチレートが好ましい。本明細書中で使用する「サリチル酸のエステル」という用語は、カルボキシ基、ヒドロキシ基又はその両方がエステル化された化合物を包含する。好適なサリチレートには、例えば、フェニルサリチレートのようなアリールサリチレート、アセチルサリチル酸、サリチルカーボネート及びポリサリチレート(線状ポリサリチレート及びジサリチリドやトリサリチリドのような環状化合物の両方を含む)がある。好ましい封鎖剤はサリチルカーボネート及びポリサリチレート(特に線状ポリサリチレート)である。封鎖する場合、ポリ(アリーレンエーテル)は、ヒドロキシ基の80%まで、さらに詳しくは約90%まで、さらに一段と詳しくは100%までが封鎖される任意の望ましい程度に封鎖できる。好適な封鎖ポリ(アリーレンエーテル)及びその製法は、米国特許第4760118号(Whiteら)及び同第6306978号(Braatら)に記載されている。
【0030】
ポリサリチレートによるポリ(アリーレンエーテル)の封鎖は、ポリ(アリーレンエーテル)鎖中に存在するアミノアルキル末端基の量を低減させるとも考えられる。アミノアルキル基は、ポリ(アリーレンエーテル)の製造プロセス中にアミンを使用する酸化カップリング反応の結果である。ポリ(アリーレンエーテル)の末端ヒドロキシ基に対してオルト位にあるアミノアルキル基は、高温で分解しやすい。かかる分解は、第一又は第二アミンの再生及びキノンメチド末端基の生成をもたらすと考えられ、これは2,6−ジアルキル−1−ヒドロキシフェニル末端基を生成することがある。アミノアルキル基を含むポリ(アリーレンエーテル)をポリサリチレートで封鎖すれば、かかるアミノ基を除去してポリマー鎖の封鎖末端ヒドロキシ基を生じ、2−ヒドロキシ−N,N−アルキルベンズアミン(サリチルミド)の生成をもたらすと考えられる。アミノ基の除去及び封鎖は、高温に対して一層安定なポリ(アリーレンエーテル)を与え、それによってポリ(アリーレンエーテル)の加工中に生じるゲルや黒斑点のような分解生成物を減少させる。
【0031】
ポリ(アリーレンエーテル)は、単分散ポリスチレン標準(40℃のスチレン−ジビニルベンゼンゲル)及びクロロホルム1ミリリットル当たり1ミリグラムの濃度を有する試料を用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して約3000〜約40000グラム/モル(g/mol)の数平均分子量及び約5000〜約80000g/molの重量平均分子量を有し得る。ポリ(アリーレンエーテル)又はポリ(アリーレンエーテル)の組合せは、25℃のクロロホルム中で測定して約0.25デシリットル/グラム(dl/g)以上の初期固有粘度を有し得る。一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)又はポリ(アリーレンエーテル)の組合せは、25℃のクロロホルム中で測定して約0.35デシリットル/グラム(dl/g)以上の初期固有粘度を有し得る。初期固有粘度は、組成物の他の成分と溶融混合する前のポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度と定義され、最終固有粘度は、組成物の他の成分と溶融混合した後のポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度と定義される。当業者には理解される通り、ポリ(アリーレンエーテル)の粘度は溶融混合後には最大30%まで高くなることがある。増加パーセントは、((溶融混合後の最終固有粘度)−(溶融混合前の初期固有粘度))/(溶融混合前の初期固有粘度)で計算できる。2通りの固有粘度を使用する場合、正確な比率の決定は使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度及び所望の最終的な物理的性質に多少依存する。
【0032】
ポリ(アリーレンエーテル)は、フーリエ変換赤外分光測定法(FTIR)で測定した場合、ポリ(アリーレンエーテル)の総重量を基準にして6300ppm以下のヒドロキシ末端基含有量を有する。一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は3000ppm以下、さらに詳しくは1500ppm以下、さらに一段と詳しくは500ppm以下のヒドロキシ末端基含有量を有し得る。
【0033】
ポリ(アリーレンエーテル)は、可視微粒子不純物を実質的に含まないものであり得る。一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は15マイクロメートルを超える微粒子不純物を実質的に含まない。本明細書中で使用する「可視微粒子不純物を実質的に含まない」という用語は、ポリ(アリーレンエーテル)に適用される場合、50ミリリットルのクロロホルム(CHCl)中に溶解した10グラムのポリマー材料試料がライトボックス内で肉眼で観察して5未満の可視斑点を示すことを意味する。肉眼で見える粒子は、通例は直径が40マイクロメートルを超えるものである。本明細書中で使用する「約15マイクロメートルを超える微粒子不純物を実質的に含まない」という用語は、400ミリリットルのCHCl中に溶解した40グラムのポリマー材料試料についてPacific Instruments社のABS2アナライザーで測定した場合、約15マイクロメートルの粒度を有する微粒子の1グラム当たりの数が、溶解ポリマー材料20ミリリットルずつからなる5つの試料を1ミリリットル/分(±5%)の流量でアナライザーに流した場合の平均に基づいて50未満であることを意味する。
【0034】
本組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン、ポリマー相溶化剤及び任意成分としての難燃剤の合計重量を基準にして約30〜約65重量%(wt%)の量でポリ(アリーレンエーテル)を含み得る。この範囲内では、ポリ(アリーレンエーテル)の量は約40wt%以上、さらに詳しくは約45wt%以上であり得る。やはりこの範囲内では、ポリ(アリーレンエーテル)の量は約60wt%以下であり得る。
【0035】
ポリオレフィンは一般構造C2nを有し、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリイソブチレンを包含する。例示的なホモポリマーには、アタクチックポリプロピレン及びイソタクチックポリプロピレンがある。このような一般構造のポリオレフィン樹脂及びその製造方法は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第2933480号、同第3093621号、同第3211709号、同第3646168号、同第3790519号、同第3884993号、同第3894999号、同第4059654号、同第4166055号及び同第4584334号に記載されている。一実施形態では、ポリオレフィンはポリオレフィンホモポリマー、さらに詳しくは結晶性ポリオレフィンホモポリマーから実質的になる。
【0036】
ポリプロピレンとゴムコポリマーとのコポリマー又はポリエチレンとゴムコポリマーとのコポリマーのようなポリオレフィンのコポリマーも使用できる。かかるコポリマーは、例えば、エチレンオクテンゴム及びエチレンブタジエンのようなコポリマーを含み得る。かかるコポリマーは通例は異相性であり、非晶質相及び結晶相の両方を有するのに十分な長さの各成分セクションを有している。さらに、ポリオレフィンはホモポリマーとコポリマーの組合せ、異なる融解温度を有するホモポリマーの組合せ、及び/又は異なるメルトフローレートを有するホモポリマーの組合せからなり得る。
【0037】
一実施形態では、ポリオレフィンはイソタクチックポリプロピレンのような結晶性ポリオレフィンからなっている。結晶性ポリオレフィンは、20%以上、さらに詳しくは25%以上、さらに一段と詳しくは30%以上の結晶化度を有するポリオレフィンと定義される。結晶化度は示差走査熱量測定法(DSC)で測定できる。
【0038】
ポリオレフィンは120℃以上、さらに詳しくは125℃以上、さらに詳しくは130℃以上、さらに一段と詳しくは135℃以上の融解温度を有する。
【0039】
ポリオレフィンは、0.3グラム/10分以上で15グラム/10分(g/10分)以下のメルトフローレート(MFR)を有する。この範囲内では、メルトフローレートは0.7g/10分以上、さらに詳しくは1.0g/10分以下であり得る。やはりこの範囲内では、メルトフローレートは10g/10分以下、さらに詳しくは6g/10分以下、さらに一段と詳しくは5g/10分以下であり得る。メルトフローレートは、粉末化又はペレット化ポリオレフィン、2.16キログラムの荷重、及び樹脂に適した温度(エチレン系樹脂については190℃、プロピレン系樹脂については230℃)を使用しながらASTM D1238に従って測定できる。
【0040】
本組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン、ポリマー相溶化剤及び任意成分としての難燃剤の合計重量を基準にして20〜40重量%(wt%)の量でポリオレフィンを含み得る。この範囲内では、ポリオレフィンの量は23wt%以上、さらに詳しくは約25wt%以上であり得る。やはりこの範囲内では、ポリオレフィンの量は約35wt%以下、さらに詳しくは約33wt%以下であり得る。
【0041】
ポリマー相溶化剤は、ポリオレフィン相とポリ(アリーレンエーテル)相との相溶性を向上させる樹脂及び添加剤である。ポリマー相溶化剤には、ブロックコポリマー、及びブロックコポリマーと後述のようなポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーの組合せがある。
【0042】
本明細書中で使用する「ブロックコポリマー」とは、ただ1種のブロックコポリマー又はブロックコポリマーの組合せをいう。ブロックコポリマーは、繰返しアリールアルキレン単位からなる1以上のブロック(A)と、繰返しアルキレン単位からなる1以上のブロック(B)とを含んでいる。ブロック(A)及び(B)の配列は、線状構造又は枝分れ鎖を有するいわゆるラジアルテレブロック構造であり得る。アリールアルキレン単位のペンダントアリール部分は、単環式又は多環式であり得ると共に、環状部分上の任意の利用可能な位置に置換基を有し得る。好適な置換基には、炭素原子数1〜4のアルキル基がある。例示的なアリールアルキレン単位は、下記の式IIに示すフェニルエチレンである。
【0043】
【化2】

ブロックAはさらに、アリールアルキレン単位の量がアルキレン単位の量を超える限り、炭素原子数2〜15のアルキレン単位を含み得る。
【0044】
ブロックBは、エチレン、プロピレン、ブチレン又は上述のものの2以上の組合せのような炭素原子数2〜15の繰返しアルキレン単位を含んでいる。ブロックBはさらに、アルキレン単位の量がアリールアルキレン単位の量を超える限り、アリールアルキレン単位を含み得る。
【0045】
各々のブロックAは、他のブロックAと同一の又は異なる分子量を有し得る。同様に、各々のブロックBは他のブロックBと同一の又は異なる分子量を有し得る。ブロックコポリマーは、α,β−不飽和カルボン酸との反応で官能化できる。
【0046】
一実施形態では、Bブロックはアリールアルキレン単位と炭素原子数2〜15のアルキレン単位(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン又は上述のものの2以上の組合せ)とのコポリマーである。Bブロックはさらに、若干の不飽和非芳香族炭素−炭素結合を含み得る。
【0047】
繰返しアリールアルキレン単位は、スチレンのようなアリールアルキレンモノマーの重合で得られる。繰返しアルキレン単位は、ブタジエンのようなジエンから導かれた繰返し不飽和単位の水素化で得られる。ブタジエンは1,4−ブタジエン及び/又は1,2−ブタジエンからなり得る。Bブロックはさらに、若干の不飽和非芳香族炭素−炭素結合を含み得る。
【0048】
例示的なブロックコポリマーには、ポリフェニルエチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリフェニルエチレン(時にはポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレンともいう)及びポリフェニルエチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリフェニルエチレン(時にはポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレンともいう)がある。
【0049】
一実施形態では、ポリマー相溶化剤はジブロックコポリマー及びトリブロックコポリマーからなる。例示的なトリブロックコポリマーには、Asahi社からTUFTECの商品名で商業的に入手できる、H1043のようなグレード名を有するもの、並びにKuraray社からSEPTONの商品名で入手できる若干のグレードがある。他の例示的なトリブロックコポリマーには、Kraton Polymers社からKRATONの商標で商業的に入手できる、G−1650、G−1651及びG−1652のようなグレード名のものがある。例示的なジブロックコポリマーには、Kraton Polymers社からKRATONの商標で商業的に入手できる、G−1701、G−1702及びG−1730のようなグレード名のものがある。
【0050】
一実施形態では、ポリマー相溶化剤は、中心ブロック(Bブロック)が制御分布コポリマーであるブロックコポリマーである。本明細書中で使用する「制御分布」とは、いずれかのモノマーの明確なブロックが欠如している分子構造をいうものと定義される。即ち、各々のホモポリマーのTgの中間にただ1つのガラス転移温度(Tg)が存在することで示されるように、或いは陽子核磁気共鳴法で示されるように、所定の単一モノマーの「つながり」が20単位の平均最大数を有している。Bブロックが制御分布コポリマーからなる場合、各Aブロックは光散乱技術で測定して3000〜60000g/molの平均分子量を有し得る一方、各Bブロックは30000〜300000g/molの平均分子量を有し得る。Bブロックが制御分布コポリマーである場合、各Bブロックは、Aブロックに隣接した、アルキレン単位に富む1以上の末端領域と、Aブロックに隣接しない、アリールアルキレン単位に富む領域とを含んでいる。アリールアルキレン単位の総量は、ブロックコポリマーの総重量を基準にして15〜75重量%である。Bブロック中でのアルキレン単位とアリールアルキレン単位との重量比は5:1〜1:2であり得る。例示的なブロックコポリマーは、さらに米国特許出願公開第2003/181584号に開示されており、Kraton Polymers社からKRATONの商標で商業的に入手できる。例示的なグレードはA−RP6936及びA−RP6935である。
【0051】
若干の実施形態では、ブロックコポリマーは、ポリスチレン標準を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定して5000〜1000000グラム/モル(g/mol)の数平均分子量を有する。この範囲内では、数平均分子量は10000g/mol以上、さらに詳しくは30000g/mol以上、さらに一段と詳しくは45000g/mol以上であり得る。やはりこの範囲内では、数平均分子量は好ましくは800000g/mol以下、さらに詳しくは700000g/mol以下、さらに一段と詳しくは650000g/mol以下であり得る。
【0052】
本明細書中では、ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーは、プロピレンポリマー主鎖及び1以上のスチレンポリマーグラフトを有するグラフトコポリマーと定義される。
【0053】
ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーの主鎖又は基幹を形成するプロピレンポリマー材料は、(a)プロピレンのホモポリマー、(b)プロピレンと、エチレン及びC〜C10オレフィンからなる群から選択されるオレフィンとのランダムコポリマー(ただし、オレフィンがエチレンである場合には、重合エチレン含有量は約10重量%まで、好ましくは約4重量%までとし、オレフィンがC〜C10オレフィンである場合には、重合C〜C10オレフィン含有量は約20重量%まで、好ましくは約16重量%までとする。)、(c)プロピレンと、エチレン及びC〜C10α−オレフィンからなる群から選択される2種以上のオレフィンとのランダムターポリマー(ただし、重合C〜C10α−オレフィン含有量は約20重量%まで、好ましくは約16重量%までとし、エチレンがオレフィンの1種である場合には、重合エチレン含有量は約5重量%まで、好ましくは約4重量%までとする。)、或いは(d)反応器内で又は物理的ブレンディングでエチレン−プロピレンモノマーゴムにより耐衝撃性改良されたプロピレンのホモポリマー又はランダムコポリマーであって、改良ポリマーのエチレン−プロピレンモノマーゴム含有量が約5〜約30重量%であり、ゴムのエチレン含有量が約7〜約70重量%、好ましくは約10〜約40重量%であるものである。C〜C10オレフィンには、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、3−メチル−ヘキセンなどの線状及び枝分れC〜C10α−オレフィンがある。プロピレンホモポリマー及び耐衝撃性改良プロピレンホモポリマーが好ましいプロピレンポリマー材料である。好ましくはないが、約2〜約8重量%のジエン含有量を有するエチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴムで耐衝撃性改良されたプロピレンホモポリマー及びランダムコポリマーも、プロピレンポリマー材料として使用できる。好適なジエンには、ジシクロペンタジエン、1,6−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンなどがある。
【0054】
ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマー中でプロピレンポリマー材料の主鎖上に存在するグラフト化ポリマーに関して使用される「スチレンポリマー」という用語は、(a)スチレンのホモポリマー又は1以上のC〜C線状若しくは枝分れアルキル環内置換基を有するアルキルスチレン(特にp−アルキルスチレン)のホモポリマー、(b)(a)モノマー同士のあらゆる比率でのコポリマー、及び(c)1種以上の(a)モノマーとそのα−メチル誘導体(例えば、α−メチルスチレン)とのコポリマーであって、α−メチル誘導体がコポリマーの重量の約1〜約40%を占めるものを意味する。
【0055】
ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーは、約10〜約90重量%のプロピレンポリマー主鎖及び約90〜約10重量%のスチレンポリマーグラフトを含み得る。この範囲内では、プロピレンポリマー主鎖は総グラフトコポリマーの約20重量%以上を占め得ると共に、プロピレンポリマー主鎖は総グラフトコポリマーの約40重量%以下を占め得る。やはりこの範囲内では、スチレンポリマーグラフトは総グラフトコポリマーの約50重量%以上、さらに詳しくは約60重量%以上を占め得る。
【0056】
ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーの製法は、例えば、米国特許第4990558号(DeNicola,Jr.ら)に記載されている。好適なポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーはまた、例えば、Basell社からP1045H1及びP1085H1として商業的に入手できる。
【0057】
一実施形態では、ポリマー相溶化剤はポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーとブロックコポリマーの組合せである。
【0058】
ポリマー相溶化剤は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン、ポリマー相溶化剤及び任意成分としての難燃剤の合計重量に対して2〜20重量%の量で存在する。この範囲内では、ポリマー相溶化剤は組成物の総重量に対して4重量%以上、さらに詳しくは6重量%以上の量で存在し得る。やはりこの範囲内では、ポリマー相溶化剤は組成物の総重量に対して18重量%以下、さらに詳しくは16重量%以下、さらに一段と詳しくは14重量%以下の量で存在し得る。
【0059】
例示的な難燃剤には、メラミン(CAS No.108−78−1)、メラミンシアヌレート(CAS No.37640−57−6)、メラミンホスフェート(CAS No.20208−95−1)、メラミンピロホスフェート(CAS No.15541−60−3)、メラミンポリホスフェート(CAS No.218768−84−4)、メラム、メレム、メロン、ホウ酸亜鉛(CAS No.1332−07−6)、リン酸ホウ素、赤リン(CAS No.7723−14−0)、有機リン酸エステル、リン酸一アンモニウム(CAS No.7722−76−1)、リン酸二アンモニウム(CAS No.7783−28−0)、アルキルホスホネート(CAS No.78−38−6及び78−40−0)、金属ジアルキルホスフィネート、ポリリン酸アンモニウム(CAS No.68333−79−9)、低融点ガラス、並びに上述の難燃剤の2種以上の組合せがある。
【0060】
例示的な有機リン酸エステル難燃剤には、特に限定されないが、フェニル基、置換フェニル基、又はフェニル基と置換フェニル基の組合せを含むリン酸エステル、レソルシノールに基づくビス−アリールリン酸エステル(例えば、レソルシノールビス−ジフェニルホスフェート)並びにビスフェノールに基づくもの(例えば、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート)がある。一実施形態では、有機リン酸エステルは、トリス(アルキルフェニル)ホスフェート(例えば、CAS No.89492−23−9又はCAS No.78−33−1)、レソルシノールビス−ジフェニルホスフェート(例えば、CAS No.57583−54−7)、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート(例えば、CAS No.181028−79−5)、トリフェニルホスフェート(例えば、CAS No.115−86−6)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート(例えば、CAS No.68937−41−7)及び上述の有機リン酸エステルの2種以上の混合物から選択される。
【0061】
一実施形態では、有機リン酸エステルは下記の式IIIを有するビス−アリールホスフェートからなる。
【0062】
【化3】

式中、R、R及びRは独立に炭素原子数1〜5のアルキル基であり、R〜Rは独立に炭素原子数1〜10のアルキル基、アリール基、アリールアルキル基又はアルキルアリール基であり、nは1〜25に等しい整数であり、s1及びs2は独立に0〜2に等しい整数である。若干の実施形態では、OR、OR、OR及びORは独立にフェノール、モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノール又はトリアルキルフェノールから導かれる。
【0063】
当業者には容易に理解される通り、ビス−アリールホスフェートはビスフェノールから導かれる。例示的なビスフェノールには、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(いわゆるビスA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンから導かれる。一実施形態では、ビスフェノールはビスフェノールAからなる。
【0064】
有機リン酸エステルは相異なる分子量を有し得るので、熱可塑性樹脂組成物中で使用する様々な有機リン酸エステルの量を決定するのは困難である。一実施形態では、有機リン酸エステルの結果としてのリンの量は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン、ポリマー相溶化剤及び任意成分としての難燃剤の合計重量を基準にして0.8〜1.2重量%である。
【0065】
熱可塑性樹脂組成物中に存在する場合、難燃剤の量は、被覆心線がそれのタイプに関連した難燃性基準に合格するのに十分なものである。例えば、被覆心線が自動車用途のための電線である場合、難燃剤の量は、電線がISO6722に含まれる火炎伝搬方法に従って測定して70秒以下の消炎時間を有するのに十分なものである。
【0066】
一実施形態では、難燃剤は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン、ポリマー相溶化剤及び任意成分としての難燃剤の合計重量に対して5〜18重量%(wt%)の量で存在する有機リン酸エステルからなる。この範囲内では、有機リン酸エステルの量は7重量%以上、さらに詳しくは9重量%以上であり得る。やはりこの範囲内では、有機リン酸エステルの量は16重量%以下、さらに詳しくは14重量%以下であり得る。
【0067】
さらに、熱可塑性樹脂組成物は、酸化防止剤、10マイクロメートル以下の平均粒度を有する充填材及び補強材(例えば、ケイ酸塩、TiO、繊維、ガラス繊維、ガラス球、炭酸カルシウム、タルク及び雲母)、離型剤、UV吸収剤、安定剤(例えば、光安定剤など)、潤滑剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤、泡立て剤、金属不活性化剤、並びに上述の添加剤の1種以上を含む組合せのような各種添加剤を任意に含み得る。
【0068】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、通例は配合押出機又はバンバリーミキサーのような溶融混合装置内で成分を溶融混合(配合)することを含んでいる。一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリマー相溶化剤及びポリオレフィンが同時に溶融混合される。別の実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリマー相溶化剤及び任意にはポリオレフィンの一部を溶融混合することで第一の溶融混合物が形成される。次いで、ポリオレフィン又はポリオレフィンの残部を第一の溶融混合物とさらに溶融混合することで第二の溶融混合物が形成される。別法として、ポリ(アリーレンエーテル)及びポリマー相溶化剤の一部を溶融混合して第一の溶融混合物を形成し、次いでポリオレフィン及びポリマー相溶化剤の残部を第一の溶融混合物とさらに溶融混合して第二の溶融混合物を形成することもできる。
【0069】
上述の溶融混合方法は、第一の溶融混合物を単離することなく実施でき、或いは第一の溶融混合物を単離することでも実施できる。これらの方法では、1種以上の溶融混合装置を含む1以上の溶融混合装置を使用できる。一実施形態では、被覆を形成する熱可塑性樹脂組成物の若干の成分を、心線を被覆するために使用する押出機に導入して溶融混合できる。
【0070】
一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)及び50重量%以上のアリールアルキレン含有量を有するブロックコポリマーを溶融混合して第一の溶融混合物を形成し、次いでポリオレフィン及び50重量%未満のアリールアルキレン含有量を有するブロックコポリマーを第一の溶融混合物と溶融混合して第二の溶融混合物を形成することができる。
【0071】
難燃剤の添加方法及び添加位置は、通例、ポリマーアロイ及びその製造に関する一般技術分野でよく知られている通り、難燃剤の種類及び物理的性質(例えば、固体か液体か)によって決定される。一実施形態では、難燃剤を熱可塑性樹脂組成物の一成分(例えば、ポリオレフィンの一部)と合わせて濃縮物が形成され、次いでそれが残りの成分と溶融混合される。
【0072】
ポリ(アリーレンエーテル)、ポリマー相溶化剤、ポリオレフィン及び難燃剤は、ポリ(アリーレンエーテル)のガラス転移温度以上であるがポリオレフィンの劣化温度より低い温度で溶融混合される。例えば、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリマー相溶化剤、ポリオレフィン及び難燃剤は240〜320℃の押出機温度で溶融混合できるが、溶融混合中にこの範囲を超える短い期間が存在していてもよい。この範囲内では、温度は250℃以上、さらに詳しくは260℃以上であり得る。やはりこの範囲内では、温度は310℃以下、さらに詳しくは300℃以下であり得る。
【0073】
一部又は全部の成分を溶融混合した後、1以上のフィルターを通して溶融混合物を溶融濾過できる。一実施形態では、1以上のフィルターは20〜150マイクロメートルの孔径を有する。この範囲内では、孔径は130マイクロメートル以下、さらに詳しくは110マイクロメートル以下であり得る。やはりこの範囲内では、孔径は30マイクロメートル以上、さらに詳しくは40マイクロメートル以上であり得る。
【0074】
一実施形態では、フィルターは心線に適用される被覆の厚さの1/2以下の最大孔径を有する。例えば、被覆心線が厚さ200マイクロメートルの被覆を有するならば、フィルターは100マイクロメートル以下の最大孔径を有する。
【0075】
溶融混合物から微粒子不純物を除去し得る任意適宜の溶融濾過系又は装置が使用できる。一実施形態では、溶融物は単一の溶融濾過系で濾過される。複数の溶融濾過系も想定されている。
【0076】
好適な溶融濾過系には、各種の材料(特に限定されないが、焼結金属、メタルメッシュ又はスクリーン、繊維金属フェルト、セラミック、上述の材料の組合せ、など)で作製したフィルターがある。特に有用なフィルターは、Pall Corporation及びMartin Kurz & Company,Inc.で製造される焼結ワイヤーメッシュフィルターをはじめとして、高いくねり度を示す焼結金属フィルターである。
【0077】
一実施形態では、溶融濾過混合物をダイヘッドに通し、ストランドペレット化又は水中ペレット化でペレット化する。ペレット化材料は包装し、貯蔵し、輸送することができる。一実施形態では、ペレットは金属箔ラインドプラスチック袋(例えば、ポリプロピレン袋)又は金属箔ラインド紙袋中に包装される。ペレットを満たした袋からは、実質的にすべての空気を排気できる。
【0078】
一実施形態では、熱可塑性樹脂組成物は可視微粒子不純物を実質的に含まない。可視微粒子又は「黒斑点」は、一般に拡大なしに人間の目に見える暗色又は有色の微粒子であって、40マイクロメートル以上の平均直径を有している。30マイクロメートルより小さい平均直径を有する粒子を拡大なしに視覚的に認知できる人もいれば、40マイクロメートルより大きい平均直径を有する粒子しか認知できない人もいるが、本明細書中で規定平均直径に関して使用する「可視粒子」、「可視微粒子」及び「黒斑点」という用語は、40マイクロメートル以上の平均直径を有する微粒子を意味する。本明細書中で使用する「可視微粒子不純物を実質的に含まない」という用語は、熱可塑性樹脂組成物に適用される場合、組成物を射出成形して75mm×50mmの寸法及び3mmの厚さを有する5つのプラークを形成し、黒斑点の有無についてプラークを肉眼で目視検査した時に、5つのプラークのすべてに関する黒斑点の総数が100以下、さらに詳しくは70以下、さらに一段と詳しくは50以下であることを意味する。
【0079】
一実施形態では、ペレットを溶融し、組成物を押出被覆のような適当な方法で心線に適用することで被覆線が形成される。例えば、スクリュー、クロスヘッド、ブレーカープレート、分配器、ニップル及びダイを備えた被覆押出機が使用できる。溶融した熱可塑性樹脂組成物は、心線の周囲をおおって配設された被覆を形成する。押出被覆では、心線を中心に配置すると共にダイリップの蓄積を回避するため、単一テーパーダイ、二重テーパーダイ、他の適当なダイ又はダイの組合せを使用できる。
【0080】
一実施形態では、心線に組成物を適用することで、心線をおおって配設された被覆が形成される。追加の層を被覆に適用することもできる。
【0081】
一実施形態では、心線と被覆との間に1以上の介在層を有する心線に組成物を適用することで、心線をおおって配設された被覆が形成される。例えば、心線と被覆との間に任意の密着性向上剤を配設することができる。別の例では、被覆の適用に先立って心線を金属不活性化剤で被覆できる。別の例では、介在層は熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂組成物からなり、この組成物は場合によっては発泡している。
【0082】
心線は単一のストランド又は複数のストランドからなり得る。場合によっては、複数のストランドを束ね、撚り合わせ、又は編むことで心線を形成できる。さらに、心線は円形又は楕円形のような各種の形状を有し得る。心線は、信号を伝送するために使用される任意のタイプの心線であり得る。例示的な信号には、光学的、電気的及び電磁気的なものがある。ガラス繊維が光学的心線の一例である。好適な電気的心線には、特に限定されないが、銅、アルミニウム、鉛、及び上述の金属の1種以上を含む合金がある。
【0083】
心線の横断面積及び被覆の厚さは変化し得るが、通例は被覆心線の最終用途で決定される。一実施形態では、被覆心線は被覆線であり、被覆線は、例えば自動車用ハーネス電線、家庭電化製品用電線、電力用電線、計器用電線、情報通信用電線、電気自動車や船舶や飛行機用電線などを含め、特に限定せずに電線として使用できる。一実施形態では、被覆心線は光ケーブルであり、(建物内部の)屋内用途、(建物外部の)屋外用途、又は屋内兼屋外用途で使用できる。例示的な用途には、電話ネットワークやローカルエリアネットワーク(LAN)のようなデータ伝送ネットワーク及び音声伝送ネットワークがある。
【0084】
一実施形態では、心線は0.10〜4.5平方ミリメートルの横断面積を有し、被覆は0.15〜1.0ミリメートルの厚さを有する。
【0085】
若干の実施形態では、押出被覆前に熱可塑性樹脂組成物を乾燥することが有用であり得る。例示的な乾燥条件は、60〜90℃で2〜20時間である。さらに、一実施形態では、押出被覆に際して被覆の形成前に、20〜150マイクロメートルの孔径を有する1以上のフィルターを通して熱可塑性樹脂組成物が溶融濾過される。この範囲内では、孔径は30マイクロメートル以上、さらに詳しくは40マイクロメートル以上であり得る。やはりこの範囲内では、孔径は130マイクロメートル以下、さらに詳しくは110マイクロメートル以下であり得る。被覆押出機は、上述のようなフィルターの1以上を含み得る。
【0086】
一実施形態では、押出被覆に際して被覆の形成前に、心線に適用される被覆の厚さの1/2以下の最大孔径を有する1以上のフィルターを通して熱可塑性樹脂組成物が溶融濾過される。
【0087】
別の実施形態では、溶融混合で得られる溶融濾過混合物はペレット化されない。その代わりに、溶融混合装置(通例は配合押出機)と直列の被覆押出機を用いて、溶融濾過混合物は心線用の被覆に直接形成される。被覆押出機は、上述のようなフィルターの1以上を含み得る。
【0088】
若干の実施形態では、押出し又は他の方法により、熱可塑性樹脂組成物から被覆として役立つチューブを形成し得ることも想定されている。心線及び任意の介在層をチューブ中に挿入することで被覆心線を形成できる。
【0089】
押出被覆前又は押出被覆中にカラーコンセントレート又はマスターバッチを組成物に添加することができる。カラーコンセントレートを使用する場合、それは通例は組成物の総重量を基準にして3重量%以下の量で存在する。一実施形態では、カラーコンセントレート中に使用する染料及び/又は顔料は塩素、臭素及びフッ素を含まない。当業者には理解される通り、カラーコンセントレート添加前の組成物の色は得られる最終の色に影響を及ぼすことがあり、場合によっては漂白剤及び/又は色安定剤を使用するのが有利なこともある。漂白剤及び色安定剤は当技術分野で公知であり、商業的に入手できる。
【0090】
押出被覆中の押出機温度は、一般に320℃以下、さらに詳しくは310℃以下、さらに詳しくは290℃以下であり得る。さらに、加工温度は、心線に被覆を施すのに十分な流動性の溶融組成物を与えるように調整される。例えば、加工温度は熱可塑性樹脂組成物の融点より高く、さらに詳しくは熱可塑性樹脂組成物の融点より10℃以上高い。
【0091】
押出被覆後、被覆心線は通常は水浴、水スプレー、エアジェット、又は上述の冷却方法の1以上を含む組合せを用いて冷却される。例示的な水浴温度は20〜85℃である。
【0092】
例示的な被覆心線の横断面を図3に示す。図3は、心線2をおおって配設された被覆4を示している。一実施形態では、被覆4は発泡熱可塑性樹脂組成物からなっている。例示的な被覆心線の斜視図を図4及び5に示す。図4は、複数のストランドからなる心線2をおおって配設された被覆4と、被覆4及び心線2をおおって配設された任意の追加層6とを示している。一実施形態では、被覆4は発泡熱可塑性樹脂組成物からなっている。心線2は単一の心線からなっていてもよい。図5は、単一の心線2をおおって配設された被覆4と、介在層6とを示している。一実施形態では、介在層6は発泡組成物からなっている。心線2は複数のストランドからなっていてもよい。
【0093】
別法として、耐薬品性、熱老化性、耐摩耗性及び衝撃強さの組合せを有する物品が所望される場合には、本組成物を成形し又は押し出すことでシート又はトレーのような物品を形成することもできる。
【0094】
被覆心線は、特に限定されないが、電流、電気信号、光信号などを伝送するものを包含する。例示的な被覆心線には、車両とトレーラーとを接続するために使用される線材(ケーブル)、生体内医療機器を含む医療機器で使用される線材、建物の内部で使用するための線材、建物の外部で使用するための線材、などがある。被覆心線に加えて、熱可塑性樹脂組成物は航空機のワイヤーガイド、航空機の床材、及び(特に医療分野での)フレキシブルチューブとしても有用であり得る。
【実施例】
【0095】
組成物及び被覆線を以下の非限定的な実施例でさらに例証する。
【0096】
以下の例は、表1に示す材料を用いて製造した。
【0097】
【表2】


例1〜16
例1〜16は、二軸押出機で成分を混合することで製造した。PPE及びポリマー相溶化剤は供給スロートで添加し、PPは下流で添加した。BPADP(存在する場合)は、押出機の第二半部において液体インゼクターで添加した。押出材料から物理的性質試験用の試験片を射出成形した。物理的性質及びその試験方法を表2に示す。ASTM D638−03に準拠する試験では、曲げ弾性率試料と同じ条件下で射出成形したタイプI試料を使用した。引張伸びは50ミリメートル/分の速度で測定した。メガパスカルはMPaと略記し、ジュールはJと略記し、ニュートンはNと略記し、メートルはmと略記する。これらの例の組成を表3に示す。データを表4に示す。たわみ温度及び曲げ弾性率の値は3つの試料の平均である。残りの値は5つの試料の平均である。例5の形態の透過電子顕微鏡写真を図1に示す。図2は例5の透過電子顕微鏡写真であって、平均直径及び粒子面積を求めるための準備段階で選定した粒子(5)及び境界(10)を示している。例5は、0.96マイクロメートルの平均直径及び0.32平方マイクロメートルの平方粒子面積を有していた。平均値は129の粒子に基づいて求めた。
【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
【表5】

【0101】
【表6】


ジブロックコポリマーとトリブロックコポリマーの混合物を用いた実施例を、同じ種類のPPEを同等な量で用いた類似の比較例と比較した場合、他の測定した性質についての性能を維持しながら衝撃強さの顕著な増加が見られる。
【0102】
例17〜26
例17〜26は、二軸押出機で成分を混合することで製造した。PPE及びポリマー相溶化剤は供給スロートで添加し、PPは下流で添加した。BPADP(存在する場合)は、押出機の第二半部において液体インゼクターで添加した。押出材料から物理的性質試験用の試験片を射出成形した。物理的性質及びその試験方法を表2に示す。これらの例の組成を表5に示す。データを表6に示す。
【0103】
【表7】

【0104】
【表8】

【0105】
【表9】


実施例を、同じ種類のPPEを同等な量で用いた類似の比較例と比較した場合、他の物理的性質試験での性能を維持しながら、比較例に比べて衝撃強さの大幅な増加(場合によってはほぼ倍増)が見られる。
【0106】
例27〜33
例27〜33は、二軸押出機で成分を混合することで製造した。PPE及びポリプロピレン−グラフト−ポリスチレンポリマー相溶化剤は供給スロートで添加し、PPは下流で添加した。押出材料から物理的性質試験用の試験片を射出成形した。物理的性質及びその試験方法を表2に示す。これらの例の組成を表7に示す。データを表8に示す。
【0107】
【表10】

【0108】
【表11】


上述の例からわかる通り、ポリプロピレン−グラフト−ポリスチレンをブロックコポリマーと共に含む組成物は、ポリプロピレン−グラフト−ポリスチレンのみを含む組成物と比較した場合、衝撃強さ及び引張伸びのような物理的性質の向上を示す。
【0109】
以上、若干の実施形態に関して本発明を説明してきたが、当業者であれば、本発明の技術的範囲から逸脱せずに様々な変更及び同等物による構成要素の置換を行い得ることが理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明はこの発明を実施するために想定される最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を包含するものである。
【0110】
すべての引用された特許、特許出願及び他の参考文献の開示内容は、援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本明細書中に記載される熱可塑性樹脂組成物の透過電子顕微鏡写真である。
【図2】本明細書中に記載される熱可塑性樹脂組成物の透過電子顕微鏡写真である。
【図3】電線の横断面の略図である。
【図4】複数の層を有する電線の斜視図である。
【図5】複数の層を有する電線の斜視図である。
【符号の説明】
【0112】
2 心線
4 被覆
5 粒子
6 介在層
10 境界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/gを超える初期固有粘度を有するポリ(アリーレンエーテル)と、
120℃以上の融解温度及び0.3〜15のメルトフローレートを有するポリオレフィンと、
(i)中心ブロックが制御分布コポリマーであるブロックコポリマー、及び
(ii)ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーとブロックコポリマーの組合せ
からなる群から選択されるポリマー相溶化剤と
を含んでなる熱可塑性樹脂組成物であって、ポリ(アリーレンエーテル)がポリオレフィンの重量基準の量より多い重量基準の量で存在している、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
当該組成物がアルケニル芳香族樹脂を実質的に含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
熱可塑性樹脂組成物がポリオレフィンからなる母材中に分散したポリ(アリーレンエーテル)からなる粒子を含み、粒子が5マイクロメートル未満の平均直径を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
熱可塑性樹脂組成物がポリオレフィンからなる母材中に分散したポリ(アリーレンエーテル)からなる粒子を含み、ポリ(アリーレンエーテル)粒子が4平方マイクロメートル以下の平均粒子面積を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
当該組成物が、1.27ミリメートル/分の速度及び3.2ミリメートルの厚さを用いてASTM D790−03で測定して800〜1800メガパスカルの曲げ弾性率を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
ポリ(アリーレンエーテル)が、フーリエ変換赤外分光測定法(FTIR)で測定した場合、ポリ(アリーレンエーテル)の総重量を基準にして6300ppm以下のヒドロキシ末端基含有量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
ポリ(アリーレンエーテル)が可視微粒子不純物を実質的に含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
ポリ(アリーレンエーテル)が約15マイクロメートルを超える微粒子不純物を実質的に含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン及びポリマー相溶化剤の合計重量を基準にして、ポリ(アリーレンエーテル)が約30〜約65重量%の量で存在し、ポリオレフィンが20〜40重量%の量で存在し、ブロックコポリマー又はブロックコポリマーの組合せが2〜20重量%の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
ポリオレフィンがポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、又はポリプロピレンホモポリマーとポリプロピレンコポリマーの組合せからなる、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
当該組成物がさらに難燃剤が添加される含む、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
さらに、酸化防止剤、10マイクロメートル以下の平均粒度を有する充填材及び補強材(例えば、ケイ酸塩、TiO、繊維、ガラス繊維、ガラス球、炭酸カルシウム、タルク及び雲母)、離型剤、UV吸収剤、安定剤(例えば、光安定剤など)、潤滑剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、発泡剤、泡立て剤、金属不活性化剤、及び上述の添加剤の1種以上を含む組合せからなる群から選択される1種以上の添加剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
ポリ(アリーレンエーテル)が封鎖ポリ(アリーレンエーテル)である、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
当該組成物が可視微粒子不純物を実質的に含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
当該組成物が約15マイクロメートルを超える微粒子不純物を実質的に含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
心線及び熱可塑性樹脂組成物からなる被覆を含んでなる被覆心線であって、
熱可塑性樹脂組成物が、
25℃のクロロホルム中で測定して0.25dl/gを超える初期固有粘度を有するポリ(アリーレンエーテル)と、
120℃以上の融解温度及び0.3〜15のメルトフローレートを有するポリプロピレンと、
(i)制御分布コポリマーの中心ブロックを含むブロックコポリマー、及び
(ii)ポリプロピレン−ポリスチレングラフトコポリマーとブロックコポリマーの組合せ
からなる群から選択されるポリマー相溶化剤と
を含んでなり、
ポリ(アリーレンエーテル)がポリオレフィンの重量基準の量より多い重量基準の量で存在しており、
被覆が心線をおおって配設されている、被覆心線。
【請求項17】
心線が単一のストランド又は複数のストランドからなる、請求項16記載の被覆線。
【請求項18】
複数のストランドを束ね、撚り合わせ、又は編むことで心線を形成できる、請求項17記載の被覆線。
【請求項19】
心線が0.10〜4.5平方ミリメートルの横断面積を有し、被覆が0.15〜1.0ミリメートルの厚さを有する、請求項16記載の被覆線。
【請求項20】
熱可塑性樹脂組成物がポリオレフィンからなる母材中に分散したポリ(アリーレンエーテル)からなる粒子を含み、粒子が5マイクロメートル未満の平均直径を有する、請求項16記載の被覆線。
【請求項21】
熱可塑性樹脂組成物がポリオレフィンからなる母材中に分散したポリ(アリーレンエーテル)からなる粒子を含み、ポリ(アリーレンエーテル)粒子が4平方マイクロメートル以下の平均粒子面積を有する、請求項16記載の被覆線。
【請求項22】
組成物が、1.27ミリメートル/分の速度及び3.2ミリメートルの厚さを用いてASTM D790−03で測定して800〜1800メガパスカルの曲げ弾性率を有する、請求項16記載の被覆線。
【請求項23】
ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン及びポリマー相溶化剤の合計重量を基準にして、ポリ(アリーレンエーテル)が約30〜約65重量%の量で存在し、ポリオレフィンが20〜40重量%の量で存在し、ブロックコポリマー又はブロックコポリマーの組合せが2〜20重量%の量で存在する、請求項16記載の被覆線。
【請求項24】
ポリオレフィンがポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、又はポリプロピレンホモポリマーとポリプロピレンコポリマーの組合せからなる、請求項16記載の被覆線。
【請求項25】
熱可塑性樹脂組成物がさらに難燃剤が添加される含む、請求項16記載の被覆線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−524379(P2008−524379A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546690(P2007−546690)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/042289
【国際公開番号】WO2006/083358
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【復代理人】
【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫
【復代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
【復代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
【復代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
【復代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
【復代理人】
【識別番号】100075236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 忠彦
【復代理人】
【識別番号】100094008
【弁理士】
【氏名又は名称】沖本 一暁
【復代理人】
【識別番号】100147577
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏志
【復代理人】
【識別番号】100153187
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 由美子
【Fターム(参考)】