説明

にごり酒製造装置

【課題】狙いのにごり濃度のにごり酒を安定して製造することができ、にごり酒に浮遊している異物の完全除去が容易にでき、ろ過スクリーンが容易に洗浄できるにごり酒製造装置を提供することである。
【解決手段】逆円錐形スクリーン体を上方からの嵌挿のみで設置可能な構造とし、逆円錐形スクリーン体のウェッジワイヤースクリーンを水平面に対して3°〜45°の傾斜角で逆円錐形状に張設した逆円錐形スクリーン体の中心部にもろみを流出させ、回転数を低くした遠心力によってにごり酒を分離させ、分離したにごり酒を浅底の細長い溝形状からなる流下路に流下させ、流下路の底面を均一で低輝度な光で発光させて異物を検出しやすくすることによって課題を実現できた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熟成もろみからにごり酒となる成分を分離し、異物を除去する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
にごり酒は、タンク内の酒母に蒸米と米麹と仕込水を加えてもろみを造り、前記もろみをタンク内で熟成させた後に、前記熟成したもろみを所定のメッシュで濾過して、にごり酒を製造している。
【0003】
もろみの濾過技術に関しては、例えば、もろみからにごり酒となる成分を分離させることにより、にごり酒を製造する装置であって、もろみが収容される第1の容器と、前記第1の容器内に配置され、外側から内側に前記にごり酒となる成分を沁み出させる第2の容器形状をした部材とを有するにごり酒の製造装置が開示され、かつ前記第2の容器の部材が金網より構成されたメッシュ状の部材であることが開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、濾過後のにごり酒から異物を除去する作業を実施する場合は、濾過後のにごり酒を貯めたタンク内のにごり酒を上方から目視でチェックし異物を除去する作業、及び/又はにごり酒を注入した瓶を瓶外から目視でチェックし異物を除去する作業を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−41092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の発明は、段落[0049]に記載されているように、メッシュ容器内に沁み出され抽出されたにごり酒をバケツ、柄杓、小桶、ポンプなどによって別のタンクに移さなければならないという問題があった。
【0007】
また、段落[0046]に記載されているように、ろ過されなかった不溶物はもろみタンクの底に沈殿するため、もろみタンク内のにごり濃度が徐々に高まり、にごり酒のにごり濃度がばらつきやすいという問題があった。
【0008】
そして、もろみタンク内のもろみのにごり濃度が高まることによってメッシュ部に目詰まりが生じ、これによってろ過したにごり酒のにごり濃度が変化するので、にごり濃度にばらつきのない、安定した品質のにごり酒が製造できないという問題があった。
【0009】
さらに、段落[0049]に記されているように、タンク内に移し換えられたにごり酒は、そのまま生酒として販売されたり、又は火入れ殺菌し熟成貯蔵する作業を経て販売されている。そのため、ろ過後のにごり酒に異物が浮遊している場合であっても、前記異物の除去が実施されずに販売されるという問題があった。
【0010】
さらに、メッシュ状のろ過容器を、もろみタンク内に紐で吊設した状態にし、ろ過容器内に沁み込ませて、沁み込んだにごり酒のにごり濃度を人が判断してバケツや柄杓などによって別のタンクに移すため、にごり酒のにごり濃度が一定しにくいという問題があった。
【0011】
また、ろ過容器の洗浄を実施するときには、もろみタンク内のもろみを除去した後にろ過容器を吊り上げるか、又はろ過容器を沁み込んだにごり酒を排水させながら吊り上げるという、いずれの作業も重労働になるという問題があった。
【0012】
にごり酒から異物を除去する作業を行う場合であっても、タンクに貯留させている状態でのチェックであることから、濾過後のにごり酒中に浮遊する異物は、にごり酒の液面のみでなく液中にも浮遊しているので、タンク内のにごり酒を上方から目視によるチェックするのみでは異物を完全には検出できず除去できないという問題があった。
【0013】
そこで、本発明の目的は、もろみをろ過することにより狙いのにごり濃度のにごり酒を安定して製造することができ、連続ろ過ができ、ろ過後のにごり酒を人手を不要として移送することができ、にごり酒に浮遊している異物の完全除去が容易にでき、ろ過スクリーンが容易に洗浄できるにごり酒製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明において、「にごり濃度」とは、にごり酒の一定の体積中に浮遊及び沈殿する粕の量の割合を意味する。
【0015】
「発明が解決しようとする課題」に記載した課題を解決するために、請求項1に記載のにごり酒製造装置1の発明は、少なくとも底面60と外側周壁64を有し、前記底面60中央部の穴部と連通するように槽内側に垂設された円筒状ガイド65、前記円筒状ガイド65の外周側で前記円筒状ガイド65と内側周壁62と底面60とから構成される第1収容室32、及び前記第1収容室32の外周側で前記内側周壁62と外側周壁64と底面60とから構成される第2収容室33を具備し、外観形状が筒状で固設された固定槽67と、前記固定槽67下側から前記垂設された円筒状ガイド65に嵌挿する、上面側が開口部となる角柱形状の縦穴部を内部に形成させた伝達軸2と、前記伝達軸2の下部に配設され前記伝達軸2を回転させる駆動源3と、前記伝達軸2の縦穴部に上方より嵌挿する外形が角柱形状の回転軸4、及び前記回転軸4で軸支され、かつ前記回転軸4の上面に載設させた、水平面に対して3°〜45°の傾斜角で逆円錐形状に張設したウェッジワイヤースクリーン5とからなる逆円錐形スクリーン体7と、前記逆円錐形スクリーン体7でろ過された液状体に浮遊する異物を除去する異物除去手段34と、を含む手段からなることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載のにごり酒製造装置1の発明は、請求項1において、前記逆円錐形スクリーン体7の傾斜面下側、及び前記固定槽67の底面60槽内側に、反力又は引力が作用するように対でそれぞれ磁石8を配設したことを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載のにごり酒製造装置1の発明は、請求項1又は2において、前記異物除去手段34が、前記逆円錐形スクリーン体7の下流側でろ過された流体を略深さが同一で浅い深さの流れに変える流体形態変更手段35、及び前記浅い流れを維持しながら流下させる、透光性の材質からなる流下路11とからなる異物除去トラフ9と、前記流下路11の底面を均一に発光するようにした照明手段12と、前記流下路11に近接させて配設する、微小な異物を吸引する吸引手段36とからなることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載のにごり酒製造装置1の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記異物除去トラフ9を構成する前記流体形態変更手段35が、ろ過された流体を堰止めする堰止め手段と、前記堰止めされた流体の下流側への流出口の幅方向及び/又は深さ方向の長さを調整する流出口調整手段とからなり、前記異物除去トラフ9を構成する流下路11が、前記流出口調整手段の下流側で床面が下流方向に向かって下り傾斜している浅底の細長い溝形状からなり、かつ少なくとも前記流下路11が透明な材質からなることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載のにごり酒製造装置1の発明は、請求項1乃至4のいずれかの発明において、前記吸引手段36が、前記流下路11に近接させて配設され、先端部に異物吸引用の小孔を有し、排出側の他端が異物を収容するタンクに接続された細長パイプ形状を有する中空異物吸引管13と、前記中空異物吸引管13の排出側孔部と可撓性を有する管で連通され、かつ真空ポンプ装置14又は減圧ポンプ装置15と接続された、異物を収容する収容部を有する異物収容タンク16と、を含む手段からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明は、ろ過スクリーン6の網の目の大きさ、ろ過スクリーン6の回転数、又はろ過スクリーン6の傾斜角などの設定によって、狙いとするにごり濃度で、にごり濃度のばらつきがない、品質が安定したにごり酒23を製造することができるという効果を奏する。
【0021】
ろ過スクリーン6の傾斜角が45°超となると、もろみ21をろ過スクリーン6上に沿って昇らそうとすると回転数を上げなければならない。しかし、回転数を増加すると、柔らかい物質の粕22は、網の目より大きさが大きくても、遠心力によって結果的に網の目を通過してしまう。このため、にごり濃度の調整ができにくくなり、狙いのにごり濃度のにごり酒23が製造できない。また、回転数が少なすぎると、もろみ21がろ過スクリーン6上を昇っていかない。
【0022】
そこで、本発明では、ろ過スクリーン6を逆円錐状とし、ろ過スクリーン6の傾斜角を3°〜45°の範囲で緩やかな傾斜角を設定し、かつ回転数を回転が遅い10rpm〜1000rpmの範囲で回転数を調整し遠心力を調整することによって、ろ過スクリーン6を通過させる粕22の割合を調整して狙いのにごり濃度とすることができ、かつろ過スクリーン6を通過させない粕22はろ過スクリーン6上を昇らせることができる。これによって、狙いのにごり濃度のにごり酒23を安定して連続的に製造することができる。
【0023】
また、もろみ21は、ろ過スクリーン6を逆円錐状としたことによって、もろみ21を流下させたろ過スクリーン6の中心部から、遠心力によって前記ろ過スクリーン6の周縁に向けて薄膜状になって前記ろ過スクリーン6上を流れるように昇っていくので、最終的にはろ過しなかった粕22は前記ろ過スクリーン6の周縁から脱落する。これによって、ろ過しなかった粕22とろ過させる前のもろみ21とは混合することがないので、ろ過前のもろみ21のにごり濃度が安定するという効果を奏する。
【0024】
さらに、もろみ21と接するろ過スクリーン6側は、ウェッジワイヤースクリーン5の場合には略三角形状の線材の底面であるので、スクリーン面がフラットであることから、被処理物であるもろみ21又は粕22が極めてスムーズに前記ろ過スクリーン6の表面上を周縁まで昇る。したがって、ろ過スクリーン6が目詰まりしにくいという効果を奏する。
【0025】
そして、前記ろ過スクリーン6を載設した逆円錐形スクリーン体7は、回転軸4を伝達軸2の角穴に上方から嵌挿させただけでボルトナット等の締結具を使用していないので、極めて容易に前記逆円錐形スクリーン体7を取り外すことができ、前記ろ過スクリーン6の洗浄が容易にできるという効果を奏する。
【0026】
本発明の用途としては、にごり酒製造に限らず、甘酒製造など粕のような柔らかい物質と液状体との混合物から、液状体及び粕のような柔らかい物質のろ過割合を自由に設定したい製造に適用させることができる。
【0027】
また、果物を、種、果皮又は果肉に分離して、ぶどう酒やぶどう果汁製造のような酒や果汁を製造する場合にも使用することができる。
【0028】
請求項2に記載の発明は請求項1の発明と同じ効果を奏する。さらに、磁石8の取付によって、回転中のろ過スクリーン6に振動を与えるので、もろみ21の流動が活発となり、ろ過時間の短縮ができるという効果を奏する。
【0029】
請求項3に記載の発明は請求項1または2の発明と同じ効果を奏する。さらに、ろ過されたにごり酒23は自動的に下流側に配設された異物除去トラフ9に流出するので、バケツや柄杓などで人手によって移さなくてもよいという効果を奏するとともに、省人化が実現できて製造コスト削減効果が生じる。
【0030】
本発明においては、ろ過後のにごり酒23を堰止めし、幅広で浅い深さの流れに変えて、にごり酒23を薄膜状で下流側の流下路11に流下させ、さらに前記流下路11などの材質を透光性の材質とし、前記流下路11の底面を均一に発光するようにしたことにより、異物を明暗で顕在化させるようにした。
【0031】
これによって、蒸米の熟成工程などの製造工程において混入した異物の検出が目視によって容易にでき、異物の検出漏れがなくなり品質が安定するという効果を奏する。また、異物検出に要する時間を短縮ができ、製造コストの削減効果も生じる。
【0032】
請求項4に記載の発明は請求項1乃至3のいずれかに記載の発明と同じ効果を奏する。
【0033】
請求項5に記載の発明は請求項1乃至4のいずれかに記載の発明と同じ効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】にごり酒製造装置の全体概要図である。
【図2】逆円錐形スクリーン体及び管の平面概要図である。
【図3】図2における逆円錐形スクリーン体及び管のC−C断面の正面概要図である。
【図4】ウェッジワイヤースクリーン(ろ過スクリーン)の一部の断面概要図である。
【図5】図1におけるA−A断面の流体形態変更手段の右側面概要図である。
【図6】図1におけるB―B断面の流下路の右側面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1乃至図3で説明する。本発明であるにごり酒製造装置1は、少なくとも底面60と外側周壁64を有し、前記底面中央部の穴部と連通するように槽内側に垂設された円筒状ガイド65、前記円筒状ガイド65の外周側で前記円筒状ガイド65と内側周壁62と底面60とから構成される第1収容室32、及び前記第1収容室32の外周側で前記内側周壁62と外側周壁64と底面60とから構成される第2収容室33を具備し、外観形状が筒状で固設された固定槽67と、前記固定槽67下側から前記垂設された円筒状ガイド65に嵌挿する、上面側が開口部となる角柱形状の縦穴部を内部に形成させた伝達軸2と、前記伝達軸2の下部に配設され前記伝達軸2を回転させる駆動源3と、前記伝達軸2の縦穴部に上方より嵌挿する外形が角柱形状の回転軸4、及び前記回転軸4で軸支され、かつ前記回転軸4の上面に載設させた、水平面に対して3°〜45°の傾斜角で逆円錐形状に張設したウェッジワイヤースクリーン5とからなる逆円錐形スクリーン体7と、前記逆円錐形スクリーン体7の傾斜面下側、及び前記固定槽67の底面槽内側に、反力又は引力が作用するように対でそれぞれ配置した磁石8と、前記逆円錐形スクリーン体7の下流側でろ過された流状体を略深さが同一で浅い深さの流れに変える流体形態変更手段35と、前記浅い流れを維持しながら流下させる、透光性の材質からなる流下路11と、前記流下路11の底面を均一に発光するようにする照明手段12と、前記流下路11に近接させて配設する、微小な異物を吸引する吸引手段36とからなる。以下に、それぞれの手段ごとに説明する。
【0036】
固定槽67は、少なくとも底面60と外側周壁64を有し、底面60は底面全体が一方向に傾斜し、外観形状が筒状であり、構造体(図なし)に固設されている。そして、固定槽67の槽内には、固定槽67の底面60の中央部の槽内側に垂設され貫通孔を有する円筒状ガイド65と、前記円筒状ガイド65の外周側で前記円筒状ガイド65と内側周壁62と底面60とから構成される第1収容室32と、前記第1収容室32の外周側で前記内側周壁62と外側周壁64と底面60とから構成される第2収容室33とを具備している。
【0037】
また、前記逆円錐形スクリーン体7のろ過スクリーン6の傾斜面の上端部には環状で水平面からなる上面フランジ74が延設されており、前記上面フランジ74の内周縁には円筒形状の垂下内周壁61が垂設され、前記上面フランジ74の外周縁には円筒形状の垂下外周壁63が垂設されている。
【0038】
前記円筒状ガイド65には、下方から伝達軸2が嵌挿され、固定槽67の中心部に伝達軸2が配設される。また、第1収容室32は、固定された底面60と、前記床面60に立設された円筒状ガイド65と、逆円錐形スクリーン体7の垂下外周壁63の内側でかつ垂下内周壁61の外側で、前記床面60に立設させた内側周壁62とで形成された環状の収容室であり、第1収容室32の上部には回転する傾斜したろ過スクリーン6が配設され、ろ過スクリーン6でろ過された液状体が第1収容室32に流れ込む。
【0039】
第2収容室33は、固定された底面60と、前記床面60に立設された内側周壁62と、逆円錐形スクリーン体7の垂下外周壁63の外側で前記床面60に立設させた外側周壁64とで形成された環状の収容室であり、第2収容室33の上部内周面側には回転するろ過スクリーン6の周縁が配設され、ろ過スクリーン6でろ過されなかった粕が前記周縁から第2収容室33内に脱落してくる。
【0040】
前記垂下内周壁61は、ろ過スクリーン6でろ過されたにごり酒23が内側周壁62を飛び越えるのを防止し、前記垂下外周壁63は、ろ過スクリーン6でろ過されなかった粕22が、前記上面フランジ74と内側周壁62との間隙から第1収容室32側に侵入するのを防止する。これによって、ろ過されたにごり酒23と、ろ過されなかった粕22とは、ろ過スクリーン6の回転による遠心力によって、それぞれが飛散り又は反射しても交じり合うことはないという効果がある。
【0041】
伝達軸2は、上面側が開口部となる、角柱形状の縦穴部を形成させ垂設させた軸であり、前記軸の上部は固設された固定槽67の円筒状ガイド65の穴部に嵌挿され、下部はカップリング51を介してモーターなどの回転運動を駆動させる駆動源3と接続されている。前記開口部から角柱形状の回転軸4を嵌挿させ、駆動源3からの回転運動を逆円錐形スクリーン体7の構成部分である回転軸4に伝達する。また、伝達軸2の縦穴部の水平断面形状は、例えば六角形状に設定するが、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状、八角形状などいずれかの多角形状であればよい。
【0042】
駆動源3は、前記伝達軸2の下部に配設され、回転運動を駆動させるモーターや減速機構などからなる。また、駆動源3の回転数は、例えば100rpmに設定するが、10rpm〜1000rpmの範囲内で回転数を自由に設定することができる。
【0043】
逆円錐形スクリーン体7のウェッジワイヤースクリーン5(以降、ろ過スクリーン6と記載する)上を、もろみ21を薄膜状で昇らす場合に、回転数が速いと、もろみ21のほとんどがろ過スクリーン6の周縁から脱落してしまい、逆に回転数が遅いと、ろ過時間が長時間化する。また、回転数が速いと、ろ過スクリーン6の網目の大きさ未満の粕の一部がろ過されずに、ろ過スクリーン6の周縁まで昇って脱落してしまう。したがって、にごり酒を製造する前に、狙いのにごり濃度になるように、ろ過スクリーン6の網目の大きさを設定し、ろ過スクリーン6の回転数を調整して設定する。これにより、安定したにごり濃度のにごり酒を連続で製造することができる。
【0044】
もろみタンク41内に貯留させ熟成させたもろみ21をポンプ42で管43内を移送させ、逆円錐形スクリーン体7の中心部でかつ逆円錐形スクリーン体7の表面近傍まで延設した管43の先端開口部より、もろみ21を流出させる。これによって、もろみ21は飛び散ることがなく、逆円錐形スクリーン体7の中心部上に流れ出て放射線状に広がっていく。
【0045】
逆円錐形スクリーン体7は、回転軸4、ろ過スクリーン6、垂下内周壁61、垂下外周壁63、及び磁石8を含む手段からなる。回転軸4は、逆円錐形スクリーン体7の中心部の下部に配設し、伝達軸2の縦穴部に上方から嵌挿する角柱形状の軸である。前記角柱部の水平断面形状は、例えば六角形状に設定するが、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状、八角形状などのいずれかの多角形状であればよく、前記伝達軸2の縦穴部に嵌挿させて回転時に回転ズレが生じず、伝達軸と回転軸が一体化して回転される形状であればよい。
【0046】
回転軸4を伝達軸2の縦穴部に上方から嵌挿させるだけであるので、逆円錐形スクリーン体7を洗浄するときに、逆円錐形スクリーン体7を上方に向けて取り上げるだけで取り外すことができ、洗浄作業が容易にできる。
【0047】
そして、回転軸4には逆円錐形状のろ過スクリーン6が載設されている。これによって、駆動源3からの回転運動を伝達してろ過スクリーン6を回転させる。
【0048】
ろ過スクリーン6は、回転軸4の上面に載設され回転軸4で軸支されている。そして、ろ過スクリーン6は水平面に対して3°〜45°の傾斜角で、逆円錐形状に張設される。また、狙いのにごり濃度になるように、ろ過スクリーン6の網目の大きさなどを設定する。
【0049】
逆円錐形状に張設すること及び遠心力を加えることによって、ろ過スクリーン6の中心部に流下させたもろみを、ろ過スクリーン6上を薄膜状で徐々に周縁に向けて昇らすことができる。徐々に周縁に向けて昇らすように、ろ過スクリーン6の水平面に対する傾斜角を決め、その後ろ過スクリーン6の回転数を調整し設定する。
【0050】
もろみ21が、ろ過スクリーン6上を薄膜状で徐々に周縁に向けて昇る過程で、ろ過スクリーン6の網目の大きさ未満の粕22を含んだ液状体はろ過スクリーン6を通過し、前記ろ過スクリーン6の網目の大きさ以上の粕22はろ過されず、周縁まで昇りきって脱落する。ここで、ろ過スクリーン6の回転数が速いと、粕22は柔らかい物なのでろ過スクリーン6の網目の大きさ以上であっても遠心力によって前記網目を通過するので、回転数によってにごり濃度を調整することができる。
【0051】
図4で説明する。断面略三角形状のウェッジワイヤーでろ過用スリットを形成したウェッジワイヤースクリーン5は、もろみ21が流れる側の表面が略三角形状の網66の底面でありフラットであるので、もろみ21や粕22をスムーズに昇らすことができる。また、網66の目を通過したにごり酒23は、略三角形状の網66の先細り側に向かって噴出するので、噴出空間が広がっていくので、にごり酒23が付着しにくい。これによって、ウェッジワイヤースクリーン5の表面及び裏面にもろみ21や粕22の付着がないので洗浄が容易となる。
【0052】
管43内を移送されたもろみ21は、逆円錐形スクリーン体7の最下面である中心部に静かに流出し、回転運動をするろ過スクリーン6の上に沿って、逆円錐状のろ過スクリーン6の周縁に向かって昇っていく。この昇っていく過程で、ろ過スクリーン6の網66の目によって、もろみ21を構成する液状体と網66の目の大きさが小さい粕22はろ過スクリーン6を通過し、にごり酒23となって、ろ過スクリーン6の下部に構成された第1収容室32内に流入する。
【0053】
そして、前記流入した液状体であるにごり酒23は、傾斜した床面60上を流下し管44内に流出していく。
【0054】
一方、逆円錐状のろ過スクリーン6の周縁に向かって昇っていく過程で、ろ過スクリーン6の網66の目によってろ過スクリーン6を通過しなかった粕22は、ろ過スクリーン6の周縁まで昇っていき、垂下外周壁63の外側に落下し、第2収容室33内に排出される。
【0055】
前記落下した粕22は、傾斜した床面60上を滑り管45内に排出され、収容器46に貯留されていく。
【0056】
磁石8は、逆円錐形スクリーン体7の外側底面及び固定槽67の内側底面60上に対として、反力又は引力が作用するように1箇所又は等間隔で数箇所に配設する。
【0057】
図5及び図6で説明する。異物除去トラフ9は、逆円錐形スクリーン体7の下流側に配設され、流体形態変更手段35と流下路11とを含む手段からなる。流体形態変更手段35は、上面に開口部を有し、一つの側面の下部に流出口31を有する略箱状の形態であり、前記側面の流出口31の開口高さを調整するために、ガイド縦穴71に沿って上下方向でスライドさせて所定の高さでボルトナットで締結するゲート板51を有している。
【0058】
したがって、流体形態変更手段35は、逆円錐形スクリーン体7からの管44内を流動してきたにごり酒23を、略箱状の底面で堰止めし、略箱状の一つの側面の下部の流出口31の開口部の高さを調整することによって、下流側に配設された流下路11に浅くて幅広い流れに変えて流下させることができる。
【0059】
異物除去トラフ9を構成する流下路11は、前記流体形態変更手段35の下流側に配設され、床面が下流方向に向かって下り傾斜している浅底の細長い溝形状であって、透光性を有する材質でつくられる。
【0060】
照明手段12は、異物除去トラフ9の流下路11の下方に配設され、LEDや蛍光灯などの光源73と、前記光源73と前記流下路11との間に介設した光拡散カバー72とを含む構成からなる。光拡散カバー72は、光源73からの光を前記光拡散カバー72面に均一に低輝度で面発光させるもので、例えば、LED照明カバーグレード拡散板(タキロン株式会社製)や導光板を使用する。
【0061】
ここで、光拡散カバー72を、流下路11の底面の材質として使用することもでき、この場合には流下路11と光源73との間には光拡散カバー72を介設させないで、流下路11の下方には光源73のみの設置となる。
【0062】
以上より、流下路11を浅底の細長い溝形状とすることによって、流下するにごり酒の深さを浅くし、また、流下路11の底面全体を均一な低輝度の光で発光させることによって異物の存在を明暗により判別しやすくすることができ、異物の目視チェックでのチェック漏れがなくなる。
【0063】
中空異物吸引管13は、異物除去トラフ9に近接させて配設され、先端部に異物吸引用の小孔を有し、排出側の他端が異物を収容する異物収容タンク16に接続された細長パイプ形状からなる管である。検査員が目視チェックして異物を見つけたら、中空異物吸引管13の先端側を異物に近づけ吸引して異物を吸い込む。これにより、検査員は容易に異物を取り除くことができる。
【0064】
異物収容タンク16は、中空異物吸引管13の排出側孔部と可撓性を有する管で連通され、かつ真空ポンプ装置14又は減圧ポンプ装置15と接続され、異物を収容する収容部を含む構成からなる。中空異物吸引管13を流動してきた異物を異物収容タンク16内に貯留させることによって、異物をまとめて廃棄できる。
【0065】
以上の手段を経たにごり酒23は、流下路11の最下端まで流下し収容器47内に収容される。本発明であるにごり製造装置1によって、にごり濃度の品質のばらつきがなく、狙いのにごり濃度のにごり酒23を製造することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 にごり酒製造装置
2 伝達軸
3 駆動源
4 回転軸
5 ウェッジワイヤースクリーン
6 ろ過スクリーン
7 逆円錐形スクリーン体
8 磁石
9 異物除去トラフ
11 流下路
12 照明手段
13 中空異物吸引管
14 真空ポンプ
15 減圧ポンプ
16 異物収容タンク
21 もろみ
22 粕
23 にごり酒
31 流出口
32 第1収容室
33 第2収容室
34 異物除去手段
35 流体形態変更手段
36 吸引手段
41 もろみタンク
42 ポンプ
43 管
44 管
45 管
46 収容器
47 収容器
51 カップリング
52 ゲート板
60 床面
61 垂下内周壁
62 内側周壁
63 垂下外周壁
64 外側周壁
65 円筒状ガイド
66 網
67 固定槽
71 ガイド縦穴
72 光拡散カバー
73 光源
74 上面フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底面と外側周壁を有し、前記底面中央部の穴部と連通するように槽内側に垂設された円筒状ガイド、前記円筒状ガイドの外周側で前記円筒状ガイドと内側周壁と底面とから構成される第1収容室、及び前記第1収容室の外周側で前記内側周壁と外側周壁と底面とから構成される第2収容室を具備し、外観形状が筒状で固設された固定槽と、前記固定槽下側から前記垂設された円筒状ガイドに嵌挿する、上面側が開口部となる角柱形状の縦穴部を内部に形成させた伝達軸と、前記伝達軸の下部に配設され前記伝達軸を回転させる駆動源と、前記伝達軸の縦穴部に上方より嵌挿する外形が角柱形状の回転軸、及び前記回転軸で軸支され、かつ前記回転軸の上面に載設させた、水平面に対して3°〜45°の傾斜角で逆円錐形状に張設したウェッジワイヤースクリーンとからなる逆円錐形スクリーン体と、前記逆円錐形スクリーン体でろ過された液状体に浮遊する異物を除去する異物除去手段と、を含む手段からなることを特徴とするにごり酒製造装置。
【請求項2】
前記逆円錐形スクリーン体の傾斜面下側、及び前記固定槽の底面槽内側に、反力又は引力が作用するように対でそれぞれ磁石を配設したことを特徴とする請求項1に記載のにごり酒製造装置。
【請求項3】
前記異物除去手段が、前記逆円錐形スクリーン体の下流側でろ過された流体を略深さが同一で浅い深さの流れに変える流体形態変更手段、及び前記浅い流れを維持しながら流下させる、透光性の材質からなる流下路とからなる異物除去トラフと、前記流下路の底面を均一に発光するようにした照明手段と、前記流下路に近接させて配設する、微小な異物を吸引する吸引手段とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のにごり酒製造装置。
【請求項4】
前記異物除去トラフを構成する前記流体形態変更手段が、ろ過された流体を堰止めする堰止め手段と、前記堰止めされた流体の下流側への流出口の幅方向及び/又は深さ方向の長さを調整する流出口調整手段とからなり、前記異物除去トラフを構成する流下路が、前記流出口調整手段の下流側で床面が下流方向に向かって下り傾斜している浅底の細長い溝形状からなり、かつ少なくとも前記流下路が透明な材質からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のにごり酒製造装置。
【請求項5】
前記吸引手段が、前記流下路に近接させて配設され、先端部に異物吸引用の小孔を有し、排出側の他端が異物を収容するタンクに接続された細長パイプ形状を有する中空異物吸引管と、前記中空異物吸引管の排出側孔部と可撓性を有する管で連通され、かつ真空ポンプ装置又は減圧ポンプ装置と接続された、異物を収容する収容部を有する異物収容タンクと、を含む手段からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のにごり酒製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−29587(P2012−29587A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170019(P2010−170019)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(510208310)藤原工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】