説明

ぬめりの除去剤、及びぬめりの除去方法

【課題】ぬめりの除去効果を長期間にわたって維持させることができるぬめりの除去剤を提供する。
【解決手段】50.0質量%以上の酸化マグネシウムと、0.1質量%以上の酸化カルシウムとからなる複合体の粒子を活性成分として含有する粒状物を含むぬめりの除去剤。ぬめり除去剤8を台所流し台の排水口1に接続するトラップ3付きの排水管2に用いる場合には、ぬめり除去剤8を袋状多孔性容器9に収容して、ゴミ取り用バスケット4の底部や、ゴミ取り用バスケット4と椀6との間に設置したり、ドーナツ状の袋状多孔性容器10に収容して、封水部7の排水管2の周囲に設置したりすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管などの固体表面に付着しているぬめりを剥離除去するのに有利に用いることができるぬめり除去剤に関する。本発明はまた、排水管などの固体表面に付着しているぬめりを剥離除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
台所、浴室、洗面所などの水回りの排水管の内部表面には、ぬめりが発生し易い。ぬめりは美観を損ねるだけでなく、異臭の原因ともなる。このため、排水管に付着しているぬめりを剥離除去することが必要となる。
【0003】
ぬめりは、食物残渣や人体の老廃物を栄養源として増殖した細菌と、細菌の排泄物とを含有する粘性物である。細菌(特に、緑膿菌)の排泄物としては、アルギン酸カルシウム塩などの多糖類、タンパク質などが含まれる。このようなぬめりを排水管から剥離除去するには、ぬめりに含まれるタンパク質あるいは多糖類を分解除去することが有効である。
【0004】
特許文献1には、タンパク質分解能力に優れたぬめり除去剤として、次亜塩素酸アルカリ金属塩を主基材として、N−アシルサルコシン塩、トリアルキルアミンオキシド、又はアルキルスルホン酸塩から選ばれる少なくとも一種の界面活性剤、水酸化アルカリ金属塩、及び水を含有する水性ぬめり除去剤が開示されている。この水性ぬめり除去剤は、ぬめりに直接噴霧することによってぬめりを除去する。
【0005】
特許文献2には、酸化カルシウムを有効成分として含む固形状のぬめり防止剤として、炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムに対し酸化カルシウム換算量で、TiO2、Fe23、FeO2、CuO、ZnO、MgO、SiO2、Al23又はこれらの混合物からなる群より選ばれた結合剤を1〜30質量%含む混合物を1200℃以上の温度で焼成して得られるぬめり防止剤が開示されている。この固形状のぬめり防止剤は、そのままの状態あるいは穴の開いた容器に収容した状態で、流し台排水口などの排水の流通路に配設して、排水との接触によってぬめり防止剤から生成するカルシウムを含むアルカリ性水溶液を、ぬめりに接触させることによってぬめりの発生を防止する。この特許文献2によれば、結合剤は酸化カルシウムの急激な水和を防止して、ぬめり防止剤の水中での形状安定性を向上させる作用がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−55698号公報
【特許文献2】特開2002−241207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている次亜塩素酸アルカリ金属塩を有効成分とする水性ぬめり除去剤は、ぬめりが付着している排水管に直接散布することができ、また即効性が高いという利点がある。しかしながら、次亜塩素酸アルカリ金属塩を含むぬめり除去剤は、ぬめりの除去効果の持続性が低く、また使用時に塩素ガスが発生することがあるという問題がある。
【0008】
一方、特許文献2に開示されている酸化カルシウムを有効成分とする固形状のぬめり防止剤は、排水との接触によって少量ずつ溶解するため、ぬめり除去効果の持続性が高いという利点がある。しかしながら、特許文献2のぬめり防止剤は、酸化カルシウムの含有量が70〜99質量%と多量であるため、これから生成する水は、pHが水酸化カルシウムの飽和水溶液(pH=12.6)に近い強アルカリ性の水溶液となる。この強アルカリ性水溶液に溶解しているカルシウムは、空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムとなって排水管の内壁面に析出し、水の円滑な流れを妨げることがあるため、カルシウムが多量に溶解したアルカリ性水溶液を長期間にわたって排水管に流すことは好ましくない。
【0009】
従って、本発明の目的は、塩素ガスが発生することがなく、ぬめりの除去効果を長期間にわたって持続させることができる固形状のぬめり除去剤であって、水との接触によって生成するアルカリ性水溶液が、従来の酸化カルシウムを主成分とするぬめり防止剤から生成するアルカリ性水溶液と比較して、pH及びカルシウム含有量が少ないぬめり除去剤、及び該ぬめり除去剤を利用したぬめりの除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、酸化マグネシウムを50.0質量%以上で、かつ酸化カルシウムを0.1質量%以上含む、酸化マグネシウムと酸化カルシウムとの複合体の粒子に水を接触させることにより生成するマグネシウムイオンを含有するアルカリ性水溶液は、pHが10.0〜11.5の範囲と、水酸化カルシウムの飽和溶液のpHよりも低い値でありながらも、高いぬめりの剥離除去効果を示すことを見出した。これは、アルカリ性水溶液に含まれるマグネシウムイオンがぬめりの粘性成分の一つであるアルギン酸カルシウム塩のカルシウムと置換して、水に溶解し易いアルギン酸マグネシウム塩が生成し、このアルギン酸マグネシウム塩が水に溶解して除去されることによって、ぬめりの粘性が低下するためであると考えられる。
【0011】
従って、本発明は、50.0質量%以上の酸化マグネシウムと、0.1質量%以上の酸化カルシウムとからなる複合体の粒子を活性成分として含有する粒状物である、固体表面に形成された細菌と細菌の排泄物とを含有するぬめりの除去剤にある。
【0012】
本発明のぬめり除去剤の好ましい態様は、次の通りである。
(1)上記粒状物の粒子の平均粒子径が0.1〜50mmの範囲にある。
(2)上記複合体粒子の酸化マグネシウム量が60.0〜98.0質量%の範囲にある。
(3)上記複合体粒子の酸化マグネシウム量が70.0〜98.0質量%の範囲にあり、酸化カルシウム量が2.0〜30.0質量%の範囲にある。
(4)上記複合体粒子の酸化マグネシウム量と酸化カルシウム量との合計量が80.0質量%以上である。
(5)さらに、酸化マグネシウム粒子を、複合体粒子1質量部に対して、0.1〜200質量部の範囲にて含有する。
【0013】
本発明はまた、上記本発明のぬめり除去剤を、管壁に細菌と細菌の排泄物とを含有するぬめりが付着している排水管の開口部の周囲、または排水管内でぬめり付着位置よりも上流側の位置に配設する工程、そして排水管の開口部の周囲から水を流すことにより上記除去剤を水と接触させてマグネシウムイオンを含有するアルカリ性水溶液を生成させ、ついでこのマグネシウムイオン含有アルカリ性水溶液をぬめりに接触させる工程を含むぬめりが付着している排水管からぬめりを除去する方法にもある。排水管は、例えば、台所、浴室または洗面所の排水管である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のぬめり除去剤を、ぬめりが付着している排水管に適用することによって、長期間にわたってぬめりを除去した状態に維持することができる。また、本発明のぬめり除去方法を利用することによって、ぬめりが付着している排水管の内部表面を、ぬめりが除去された状態に長期間にわたって維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のぬめり除去剤を、台所流し台の排水口に接続するトラップ付き排水管に設置する際の設置例を示す一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のぬめり除去剤は、50.0質量%以上の酸化マグネシウムと、0.1質量%以上の酸化カルシウムとの複合体の粒子を活性成分として含有する粒状物から構成されている。
【0017】
複合体粒子に含まれる酸化マグネシウムは、水との接触によりマグネシウムイオンを含むアルカリ水溶液を生成する作用がある。複合体粒子に含まれる酸化マグネシウムの量は60.0質量%以上であることが好ましく、60.0〜98.0質量%の範囲にあることがより好ましく、70.0〜98.0質量%の範囲にあることがさらに好ましく、70.0〜97.0質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0018】
本発明で用いる複合体粒子に含まれる酸化カルシウムは、水との接触によって生成するマグネシウムイオン含有アルカリ水溶液に、アルカリを供給してアルカリ性水溶液のpHを水酸化マグネシウム水溶液の飽和溶液のpHよりも高くして殺菌効果を高める作用がある。複合体粒子に含まれる酸化カルシウムの量は、30.0質量%以下であることが好ましく、0.1〜30.0質量%の範囲にあることがより好ましく、2.0〜30.0質量%の範囲にあることがさらに好ましく、3.0〜30.0質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0019】
複合体粒子の酸化マグネシウム量と酸化カルシウム量との合計量は80.0質量%以上であることが好ましく、90.0質量%以上であることがより好ましい。すなわち、複合体粒子には、酸化鉄や酸化ケイ素などの水に対して不活性な不純物を20.0質量%未満、好ましくは10.0質量%未満の量にて混入していてもよい。また、複合体粒子に含まれる酸化マグネシウム及び酸化カルシウムの一部は水和していてもよい。
【0020】
本発明で用いる複合体粒子は、酸化マグネシウム相が連続相を形成し、その酸化マグネシウム相中に酸化カルシウム相が不連続に点在している状態(海島状態)であることが好ましい。酸化カルシウムは酸化マグネシウムと比較して、一般に水への溶解性が高い。従って、複合体粒子中の酸化カルシウム相が連続相を形成している場合は、水との接触によって連続相が先に溶け出して結晶構造が大きく変異するため、水中での複合体粒子の形状安定性が低くなる傾向にある。一方、複合体粒子中の酸化カルシウム相が分散相を形成している(酸化マグネシウム相が連続相を形成している)場合は、連続相は水との接触によって緩やかに溶解するため、水中での複合体粒子の形状安定性が高くなる傾向にある。
【0021】
複合体粒子の嵩密度は1.5〜3.5g/cm3の範囲にあることが好ましい。嵩密度が上記の範囲よりも大きい、即ち緻密であると水との反応性が低下する傾向がある。一方、嵩密度が上記の範囲よりも小さい、即ち空隙が多くなると強度が低下し、水との接触によって崩壊し易くなる傾向がある。
【0022】
複合体粒子の形状は特には制限なく、球状、円柱状、アーモンド状、円板状などの任意の形状とすることができる。複合体粒子の平均粒子径は0.1〜50mmの範囲にあることが好ましく、0.5〜20mmの範囲にあることがより好ましい。
【0023】
本発明で用いる酸化マグネシウムと酸化カルシウムとの複合体粒子は、例えば、酸化カルシウム粉末もしくは加熱により酸化カルシウム粉末を生成するカルシウム化合物粉末と、酸化マグネシウム粉末もしくは加熱により酸化マグネシウム粉末を生成するマグネシウム化合物粉末とを、カルシウム量が酸化物換算量で0.1〜30.0質量%、かつマグネシウム量が酸化物換算量で50.0質量%以上となる割合にて含む粉末混合物を粒状に成形し、ついで得られた粒状混合物を900℃以上の温度にて加熱することによって製造することができる。
【0024】
加熱により酸化カルシウム粉末を生成するカルシウム化合物粉末の例としては、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム粉末、並びに硫酸カルシウム粉末等のカルシウム塩化合物粉末を挙げることができる。カルシウム化合物粉末には、石灰石粉末、ドロマイト(白雲石)粉末などの天然鉱石粉末を用いることもできる。
【0025】
加熱により酸化マグネシウム粉末を生成するマグネシウム化合物粉末の例としては、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム粉末、並びに硫酸マグネシウム粉末等のマグネシウム塩化合物粉末を挙げることができる。マグネシウム化合物粉末には、マグネサイト(菱苦土鉱)粉末、ブルーサイト(水滑石)粉末などの天然鉱石粉末を用いることができる。また、海水、苦汁、かん水等のマグネシウム含有溶液に、石灰乳等のアルカリ原料を投入することによって得られる水酸化マグネシウム粉末を用いることもできる。
【0026】
酸化カルシウム粉末もしくはカルシウム化合物粉末と、酸化マグネシウム粉末もしくはマグネシウム化合物粉末との粉末混合物は、一軸成形機あるいはブリケットマシーンなどの成形機を用いて粒状に成形することができる。
【0027】
粒状混合物の焼成には、電気炉、トンネルキルン、ロータリーキルンなどの焼成炉を用いることができる。焼成温度は、900〜2100℃の範囲にあることが好ましく、1200℃〜2100℃の範囲にあることがより好ましく、1600〜2000℃の範囲にあることが特に好ましい。
【0028】
複合体粒子は、酸化マグネシウム粒子及び/又は水酸化マグネシウム粒子、好ましくは酸化マグネシウム粒子と併用することができる。酸化マグネシウム粒子及び水酸化マグネシウム粒子を併用することによって、水との接触によって生成するアルカリ性水溶液中のマグネシウムイオン濃度が高くなり、ぬめりの剥離除去効果が向上する。
【0029】
複合体粒子と併用する酸化マグネシウム粒子及び水酸化マグネシウム粒子は、純度が90.0質量%以上であることが好ましい。酸化マグネシウム粒子及び水酸化マグネシウム粒子は、平均粒子径が0.1〜50mmの範囲にあることが好ましく、0.5〜20mmの範囲にあることがより好ましい。
【0030】
複合体粒子と酸化マグネシウム粒子及び/又は水酸化マグネシウム粒子の配合割合は、複合体粒子1質量部に対して、酸化マグネシウム粒子及び/又は水酸化マグネシウム粒子の量が0.1〜200質量部の範囲にあることが好ましく、0.5〜100質量部の範囲にあることがより好ましい。
【0031】
本発明のぬめり除去剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、少量の次亜塩素酸アルカリ金属塩、好気性細菌及び抗菌剤等の補助成分を配合することができる。
【0032】
次亜塩素酸アルカリ金属塩は、ぬめりに含まれている多糖類やタンパク質を分解する作用がある。次亜塩素酸アルカリ金属塩の例としては、次亜塩素酸ナトリウム及び次亜塩素酸カリウムを挙げることができる。
【0033】
好気性細菌は、ぬめりを形成する細菌の栄養源となる食物残渣や人体の老廃物を、異臭を発生させずに分解する作用がある。好気性細菌の例としては、枯草菌やEM菌を挙げることができる。
【0034】
抗菌剤は、ぬめりを形成する細菌の増殖を抑制して、ぬめりの発生を抑える作用がある。抗菌剤の例としては、酸化チタン、銅及び銀を挙げることができる。
【0035】
これらの補助成分は、複合体粒子の表面の一部もしくは全体に担持させて、補助成分と複合体粒子とを一体化してもよい。補助成分の使用量は、複合体粒子との質量比で、50:50〜99:1(複合体粒子:補助成分)の範囲となる量であることが好ましい。
【0036】
本発明のぬめり除去剤は、台所、洗面所、浴室及び洗濯機の排水管に発生しているぬめりの剥離除去剤として有利に使用することができる。
【0037】
本発明のぬめり除去剤は、そのままの状態で、あるいは多孔性容器に収容した状態で、ぬめりの発生している排水管に設置することができる。ぬめり除去剤を収容するための多孔性容器としては、合成繊維製網状袋、不織布製袋、及び内部にぬめり除去剤の収容部を有し、該収容部に水を導入するための導水口と、該収容部に導入された水を外部に導出するための導出口とを備えた合成樹脂製ケースを挙げることができる。
【0038】
ぬめり除去剤の設置場所は、排水管に流れる水に接する位置であれば特には制限はないが、通常は、排水管の開口部、開口部の周囲、及び排水管内のぬめりの発生位置よりも上流側の位置である。排水管にトラップが付設されている場合には、ぬめり除去剤をトラップの内部、特に封水部に設置してもよい。
【0039】
本発明のぬめり除去剤を用いた、ぬめり除去方法の実施態様の例を、図1を用いて説明する。
【0040】
図1は、本発明のぬめり除去剤を、台所流し台の排水口に接続するトラップ付き排水管に設置する際の設置例を示す一例の断面図である。
図1において、台所流し台の排水口1と排水管2との間に付設されているトラップ3は、排水口1の縁部にて支持されているゴミ取り用バスケット4、トラップ内壁面に形成されている椀支持部5、椀支持部5にて支持されている椀6、及び水で満たされた封水部7からなる椀トラップ(ベルトラップ)である。ゴミ取り用バスケット4の底部並びにゴミ取り用バスケット4と椀6との間には、ぬめり除去剤8が袋状多孔性容器9に収容された状態で設置されている。さらに、封水部7の排水管2の周囲には、ぬめり除去剤8がドーナツ状の袋状多孔性容器10に収容された状態で設置されている。なお、ぬめり除去剤8は上記3箇所の全てに配置する必要はなく、任意の場所に設置することができる。
【0041】
図1のトラップ付き排水管では、台所流し台の排水口1からトラップ3に流れた水は、ぬめり除去剤8に含まれるカルシウム及びマグネシウムを溶解し、pHが10.0〜11.5程度のマグネシウムイオンを含むアルカリ性水溶液として、トラップ3及び排水管2に流れて、トラップ3及び排水管2の内部表面に付着しているぬめりと接触して、ぬめりが剥離除去される。
【実施例】
【0042】
[実施例1]
マグネシウム濃度が1300mg/Lの海水に濃度15質量%の石灰乳を、海水中のマグネシウムと石灰乳中のカルシウムとのモル比が100:90(マグネシウム:カルシウム)となる割合にて添加して、水酸化マグネシウムスラリーを生成させた。得られた水酸化マグネシウムスラリーを静置して水酸化マグネシウムを沈降させ、上澄み水を分離し、新たな水を加えて水酸化マグネシウムスラリーを調製する操作を行なって、水中に溶解しているカルシウムイオンを除去した後、濃縮して、濃度30質量%の水酸化マグネシウムスラリーを調製した。
【0043】
上記のようにして調製した濃度30質量%の水酸化マグネシウムスラリーと濃度15質量%の石灰乳とを、マグネシウムの酸化物換算量とカルシウムの酸化物換算量とが質量比で94:5(マグネシウム:カルシウム)となる割合にて混合した。得られた混合物をろ過してケーキとし、ついで水分率が5質量%になるまで乾燥した後、成形圧196MPaの条件にて、アーモンド状に成形した。次に得られたアーモンド状粒子をロータリーキルンに投入し、温度1900℃で焼成した。得られた焼成物をふるい分けして、平均粒子径が4mmの酸化マグネシウムと酸化カルシウムとの複合体粒子からなる粒状物を得た。
【0044】
得られた複合体粒子の粒状物について、異臭及びぬめりの除去効果と形状安定性とを下記の方法により評価した。その結果を粒状物の組成と共に、表1に示す。
【0045】
[異臭及びぬめりの除去効果と形状安定性の評価方法]
ぬめりが排水管に発生している台所流し台を用意する。排水管は、図1に示した椀トラップ付き排水管である。ぬめりは、ゴミ取り用バスケット、封水部及び排水管内壁に発生しており、異臭が発生している。台所流し台の平均水道水使用量は120L/日である。 粒状物100gを塩化ビニル製ネットに入れて、椀トラップ付き排水管のゴミ取り用バスケットに設置し、21日間台所流し台を通常通りに使用する。
異臭及びぬめりの除去効果を、ゴミ取り用バスケット周囲での異臭の有無、及びゴミ取り用バスケット、封水部及び排水管内壁でのぬめりの有無を毎日観察して、複合体粒子の設置後、異臭及びぬめりが消失までに要する日数にて評価する。
形状安定性を、排水管に静置後21日目の粒状物の状態を目視にて観察し、下記の三段階で評価する。
優良:排水管設置前の形状をそのまま維持している。
良:排水管設置前より形状が若干膨張しているが、粒子の形状は維持している。
不良:消失している(粒子が溶解もしくは粉化して、排水管に流出したことによって、消失している)。
【0046】
[実施例2]
水酸化マグネシウムスラリーと石灰乳とを、マグネシウムの酸化物換算量とカルシウムの酸化物換算量とが質量比で89:10(マグネシウム:カルシウム)となる割合にて混合したこと以外は、実施例1と同様にして、複合体粒子からなる粒状物を製造した。得られた粒状物の異臭及びぬめりの除去効果と形状安定性とを実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
[実施例3]
水酸化マグネシウムスラリーと石灰乳とを、マグネシウムの酸化物換算量とカルシウムの酸化物換算量とが質量比で82:17(マグネシウム:カルシウム)となる割合にて混合したこと以外は、実施例1と同様にして、複合体粒子からなる粒状物を製造した。得られた粒状物の異臭及びぬめりの除去効果と形状安定性とを実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0048】
[実施例4]
水酸化マグネシウムスラリーと石灰乳とを、マグネシウムの酸化物換算量とカルシウムの酸化物換算量とが質量比で72:25(マグネシウム:カルシウム)となる割合にて混合したこと以外は、実施例1と同様にして、複合体粒子からなる粒状物を製造した。得られた粒状物の異臭及びぬめりの除去効果と形状安定性とを実施例1と同様にして評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
表1
────────────────────────────────────────
実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
────────────────────────────────────────
粒状物の組成
酸化カルシウム
(質量%) 5.0 10.0 17.0 25.0
酸化マグネシウム
(質量%) 94.0 89.0 82.0 72.0
その他
(質量%) 1.0 1.0 1.0 3.0
────────────────────────────────────────粒状物の設置による
効果発現までの日数
異臭消失 設置後1日目 設置後1日目 設置後1日目 設置後1日目
ぬめり消失
バスケット上 設置後2日目 設置後2日目 設置後2日目 設置後2日目
封水部 設置後5日目 設置後5日目 設置後5日目 設置後5日目
排水管内壁 設置後7日目 設置後7日目 設置後7日目 設置後7日目
────────────────────────────────────────形状安定性 優良 優良 優良 良
────────────────────────────────────────
【0050】
表1に示す結果から、本発明に従う酸化カルシウムと酸化マグネシウムとの複合体粒子は、異臭及びぬめりの除去効果が高く、また水との接触による形状安定性に優れることが分かる。
【0051】
[実施例5]
実施例1と同様にして調製した濃度30質量%の水酸化マグネシウムスラリーを、ろ過してケーキとし、ついで水分率が5質量%になるまで乾燥した後、成形圧196MPaの条件にて、アーモンド状に成形した。ついで得られたアーモンド状粒子をロータリーキルンに投入し、温度1900℃で焼成した。得られた焼成物をふるい分けして、平均粒子径4mmの酸化マグネシウム粒子からなる粒状物を得た。得られた酸化マグネシウム粒子の粒状物は、酸化マグネシウム含有率が99.0質量%であった。
【0052】
得られた酸化マグネシウム粒子と実施例4で製造した複合体粒子とを質量比で85:15(酸化マグネシウム粒子:複合体粒子)となる割合で混合して、酸化マグネシウム粒子と複合体粒子との粒子混合物からなる粒状物を得た。得られた粒状物の異臭及びぬめりの除去効果と形状安定性とを実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0053】
[実施例6]
実施例5にて製造した酸化マグネシウム粒子と、実施例3で製造した複合体粒子とを質量比で50:50(酸化マグネシウム粒子:複合体粒子)となる割合で混合して、酸化マグネシウム粒子と複合体粒子との粒子混合物からなる粒状物を得た。得られた粒状物の異臭及びぬめりの除去効果と形状安定性を実施例1と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0054】
表2
────────────────────────────────────────
実施例5 実施例6
────────────────────────────────────────粒状物の組成
酸化マグネシウム
(質量%) 95.0 90.5
酸化カルシウム
(質量%) 3.8 8.5
その他
(質量%) 1.2 1.0
────────────────────────────────────────粒状物の設置による
効果発現までの日数
異臭消失 設置後1日目 設置後1日目
ぬめり消失
バスケット上 設置後2日目 設置後2日目
封水部 設置後5日目 設置後5日目
排水管内壁 設置後7日目 設置後7日目
────────────────────────────────────────形状安定性 良 優良
────────────────────────────────────────
【0055】
表2に示す結果から、本発明に従う酸化カルシウムと酸化マグネシウムとの複合体粒子と酸化マグネシウム粒子との粒子混合物もまた、異臭及びぬめりの除去効果が高く、また水との接触による形状安定性に優れることが分かる。
【0056】
[比較例1]
酸化カルシウム粉末と酸化鉄粉末とを質量比で98:2(酸化カルシウム粉末:酸化鉄粉末)となる割合で混合した。得られた粉末混合物を粒状に成形して、温度1400℃で焼成した。得られた焼成物をふるい分けして、平均粒子径が4mmで、酸化鉄含有量が2質量%の酸化カルシウム粒子を得た。得られた酸化カルシウム粒子からなる粒状物の異臭及びぬめりの除去効果を実施例1と同様にして評価した。その結果、異臭の発生は配置後1日で消失した。ぬめりの増加は見られなかったが、台所流し台の排水管に付着していたぬめりは、配置後21日経過しても殆ど消失せずに残存していた。
【0057】
実施例1、実施例4及び比較例1で製造した粒状物について、水との接触により生成するアルカリ性水溶液のカルシウム濃度とpHを下記の方法により測定した。その結果を表3示す。
【0058】
[水との接触により生成するアルカリ性水溶液のカルシウム濃度とpHの測定方法]
粒状物100gを塩化ビニル製ネットに入れて、排水管にぬめりが付着している台所流し台の椀トラップ付き排水管のゴミ取り用バスケットに配置し、台所流し台を通常通りに使用する。ゴミ取り用バスケットの封水部の水を定期的に採取し、上澄み液をろ紙(5C)でろ過し、ろ液のカルシウム濃度とpHとを測定する。
【0059】
表3
────────────────────────────────────────
実施例1 実施例4 比較例1
──────────────────────── ───────────
カルシウム濃度 pH カルシウム濃度 pH カルシウム濃度 pH
────────────────────────────────────────
1日後 33 10.3 110 11.4 730 13.3
3日後 45 10.4 130 11.5 990 12.7
6日後 26 10.3 57 11.4 990 12.3
9日後 25 10.3 55 11.4 890 12.5
11日後 31 10.3 70 11.3 916 12.0
13日後 27 10.2 59 11.3 898 12.0
16日後 21 10.2 48 11.2 940 12.2
19日後 25 10.2 60 11.3 880 12.1
21日後 21 10.1 58 11.1 906 12.1
24日後 21 10.1 42 10.6 900 12.2
26日後 26 10.0 53 10.7 860 12.1
29日後 30 10.2 48 10.8 885 12.1
33日後 37 10.0 69 10.9 866 12.0
36日後 27 10.1 42 10.5 854 12.1
────────────────────────────────────────
カルシウム濃度の単位は、mg/Lである。
【0060】
表3の結果から、本発明に従う酸化マグネシウムと酸化カルシウムとの複合体粒子の粒状物(実施例1、実施例4)は、酸化カルシウム粒子の粒状物(比較例1)と比較して、水との接触により生成するアルカリ性水溶液のpHが低く、またスケールの発生原因となるカルシウムの量が少ないことが分かる。
【符号の説明】
【0061】
1 台所流し台の排水口
2 排水管
3 トラップ
4 ゴミ取り用バスケット
5 椀支持部
6 椀
7 封水部
8 ぬめり除去剤
9 袋状多孔性容器
10 ドーナツ状の袋状多孔性容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50.0質量%以上の酸化マグネシウムと、0.1質量%以上の酸化カルシウムとからなる複合体の粒子を活性成分として含有する粒状物である、固体表面に形成された細菌と細菌の排泄物とを含有するぬめりの除去剤。
【請求項2】
上記粒状物の粒子の平均粒子径が0.1〜50mmの範囲にある請求項1に記載のぬめりの除去剤。
【請求項3】
上記複合体粒子の酸化マグネシウム量が60.0〜98.0質量%の範囲にある請求項1に記載のぬめりの除去剤。
【請求項4】
上記複合体粒子の酸化マグネシウム量が70.0〜98.0質量%の範囲にあり、酸化カルシウム量が2.0〜30.0質量%の範囲にある請求項1に記載のぬめりの除去剤。
【請求項5】
上記複合体粒子の酸化マグネシウム量と酸化カルシウム量との合計量が80.0質量%以上である請求項1に記載のぬめりの除去剤。
【請求項6】
さらに、酸化マグネシウム粒子を、複合体粒子1質量部に対して、0.1〜200質量部の範囲にて含有する請求項1に記載のぬめりの除去剤。
【請求項7】
請求項1に記載のぬめりの除去剤を、管壁に細菌と細菌の排泄物とを含有するぬめりが付着している排水管の開口部の周囲、または排水管内でぬめり付着位置よりも上流側の位置に配設する工程、そして排水管の開口部の周囲から水を流すことにより上記除去剤を水と接触させてマグネシウムイオンを含有するアルカリ性水溶液を生成させ、ついでこのマグネシウムイオン含有アルカリ性水溶液をぬめりに接触させる工程を含むぬめりが付着している排水管からぬめりを除去する方法。
【請求項8】
排水管が、台所、浴室または洗面所の排水管である請求項7に記載の除去方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−287021(P2009−287021A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112026(P2009−112026)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000119988)宇部マテリアルズ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】