説明

ねじ部材締付け装置

【課題】複数のねじ部材の配置にかかわらず同時に締付けることができる小型、軽量、低コストで作業性の良好なねじ部材締付け装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のボルト締付け装置1は、ボルト締付け機構部11〜17と回転力入力部180と歯付きベルト181と回転力伝達部182〜188とを備えている。ボルト締付け機構部11〜17には歯付きプーリを備えた回転力伝達部182〜188が配設されている。回転力入力部180には歯付きプーリが固定されている。これらの歯付きプーリは歯付きベルト181で連結されている。回転力入力部180に入力された回転力は歯付きベルト181を介してボルト締付け機構部11〜17に伝達され、7本のボルトを同時に締付ける。1つの歯付きベルト181でボルト締付け機構部11〜17に回転力を伝達でき、部品点数を削減し小型、軽量、低コストで作業性の良好な装置を構成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のねじ部材を同時に締付けるねじ部材締付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動変速機のオイルポンプアッシーは、自動変速機のハウジングに、複数のボルトで固定されている。従来、複数のボルトを同時に締付けることができる装置として、特開平9−216172号公報に開示されているボルトの締付け装置や、TPMフェスタ2004 からくり改善くふう展で開示されているボルト両締め装置がある。
【0003】
ボルトの締付け装置は、回転力伝達手段と、複数の回転体とから構成されている。回転力伝達手段は、電動工具の駆動軸に接続される接続穴を備えている。回転体は、ボルトの頭部に係合する受容穴を備えている。回転力伝達手段と回転体の周囲には、ギアが形成されている。回転力伝達手段のギアは、全ての回転体のギアと歯合している。回転力伝達手段に接続された電動工具の回転力が、ギアを介して回転体に伝達される。回転力が伝達されると、全ての回転体が回転し、受容部に係合したボルトを同時に締付けることができる。
【0004】
図12に示すように、ボルト両締め治具は、駆動軸40と、回転軸41、42と、歯付きベルト43、44とから構成されている。駆動軸40の軸端部には、歯付きプーリ45、46が軸方向に直列に配設されている。回転軸41、42の一方の軸端部には、ボルトの頭部に係合するソケット47,48がそれぞれ配設されている。回転軸41、42の他方の軸端部には、歯付きプーリ49、50がそれぞれ配設されている。駆動軸40の歯付きプーリ45、46と回転軸41、42の歯付きプーリ49、50は、それぞれ歯付きベルト43、44で連結されている。駆動軸40を回転させると、その回転力が、それぞれの歯付きベルト43、44を介して回転軸41、42に伝達する。回転力が伝達すると、回転軸41、42が回転し、ソケット47、48に係合したボルトを同時に締付けることができる。
【特許文献1】特開平9−216172号公報
【非特許文献1】TPMフェスタ2004 からくり改善くふう展 配布資料
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したボルトの締付け装置は、ギアを介して回転力を伝達している。そのため、複数のボルトの間隔が広い場合、回転伝達手段や回転体の周囲に形成されているギアの径を大きくしなければならない。ギアの径が大きくなると、ボルトの締付け装置の重量が増加し、作業性が悪くなる。
【0006】
また、前述したボルト両締め治具は、回転軸41、42ごとに歯付きベルト43、44を備えている。駆動軸40に、歯付きプーリ45、46を軸方向に直列に配設している。そのため、部品点数が多くコストが高くなる。さらに、締付けボルトの数が増えた場合、駆動軸の歯付きプーリを増やさなければならず、軸方向長がさらに長くなる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複数のねじ部材の配置にかかわらず同時に締付けることができる小型、軽量、低コストで作業性の良好なねじ部材締付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
そこで、本発明者は、この課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、ねじ部材係合部を備えた複数の回転軸に、1つのベルトを介して回転力伝達手段で回転力を伝達することで、複数のねじ部材を同時に締付けられることを思いつき、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のねじ部材締付け装置は、ねじ部材と係合するねじ部材係合部を備えた複数の回転軸と、外部から入力される回転力を1つのベルトを介して前記複数の回転軸に伝達する回転力伝達手段とを備えることを特徴とする。このように、1つのベルトを介して回転力伝達することで、部品点数を削減し、小型、軽量化することができる。さらに、装置が軽量化されることで、作業性を向上させることができる。なお、外部からの回転力は、複数の回転軸のうち、少なくとも1つに入力されていてもよい。
【0010】
ここで、前記回転力伝達手段は、前記複数の回転軸のうち少なくともいずれかの回転力を制限する回転力制限手段を備えるようにしてもよい。これにより、ねじ部材を所定の回転力で締付けることができる。
【0011】
また、前記回転力伝達手段は、前記回転軸に配設され、前記ベルトと係合するプーリを備え、前記回転力制限手段は、前記プーリに対して前記回転軸の回転力を制限するようにしてもよい。これにより、ねじ部材を所定の回転力で確実に締付けることができる。
【0012】
また、前記回転力伝達手段は、前記ベルトの張力を調整する張力調整手段を備えるようにしてもよい。これにより、ベルトを介して、回転力発生手段の回転力を回転軸に確実に伝達することができる。
【0013】
また、本発明のねじ部材締付け装置は、さらに、被螺合部材のねじ部材螺合位置に前記複数の回転軸を位置決めする位置決め手段を備えるようにしていてもよい。これにより、ねじ部材締付けの作業性をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態は、本発明に係るねじ部材締付け装置を、自動変速機のオイルポンプアッシーの組付けに用いた例を示す。具体的には、固定のための7本のボルトを同時に締付けるボルト締付け装置に適用した例である。
【0015】
(1)自動変速機の全体構成
本実施形態における自動変速機の全体構成を図1〜図3を参照して説明する。図1は、自動変速機の断面図である。図2は、トルクコンバータアッシー組付け前の自動変速機の断面図である。図3は、トルクコンバータアッシー組付け前のオイルコンバータアッシー側から見た自動変速機の平面図である。なお、本実施形態における自動変速機は、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)車、または、リアエンジン・リアドライブ(RR)車に適用されるものを挙げている。また、自動変速機の構成については、例えば、特開2000−220704号公報などにより公知であるので、詳細な説明は省略し、ここでは概略のみについて説明する。
【0016】
図1に示すように、自動変速機2は、トルクコンバータアッシー20と、オイルポンプアッシー21と、フロントサブアッシー22と、カウンタギアアッシー23と、リアサブアッシー24と、デフアッシー25とから構成され、ハウジング26に収容されている。オイルポンプアッシー21は、自動変速機2の作動のための油圧を確保するとともに、潤滑油の送油などを行うものである。
【0017】
図2に示すように、リアサブアッシー24と、カウンタギアアッシー23と、デフアッシー25と、フロントサブアッシー22が、この順にハウジング26に組付けられる。その後、フロントサブアッシー22の上側に、オイルポンプアッシー21が組付けられる。具体的には、図3に示すように、オイルポンプアッシー21は、7本のボルト27a〜27gでハウジング26に固定される。また、ハウジング26の端面には、組付け時に各種装置を位置決めするための突起部26a〜26cが設けられている。
【0018】
(2)本発明のボルト締付け装置
(2.1)ボルト締付け装置の構成
次に、本発明のボルト締付け装置の一実施形態の構成について、図4〜図8を参照して説明する。図4は、ボルト締付け装置の底面図である。図5は、ボルト締付け機構部と回転力伝達機構部の断面図である。図6は、図5におけるA−A矢視断面図である。図7は、回転力入力部の断面図である。図8は、ベルト張力調整部の断面図である。
【0019】
図4に示すように、ボルト締付け装置1(ねじ部材締付け装置)は、本体部10(位置決め手段)と、ボルト締付け機構部11〜17(回転軸)と、回転力伝達機構部18(回転力伝達手段)とから構成されている。
【0020】
本体部10は、ボルト締付け機構部11〜17と回転力伝達機構部18を支持するとともに、オイルポンプアッシーのボルト孔に対して、ボルト締付け機構部11〜17を最適な位置に位置決めするものである。本体部10は、支持部材10aと、ワーク係合部材10b〜10dと、結合部材10e〜10gとから構成されている。
【0021】
支持部材は10a、ボルト締付け機構部11〜17と、回転力伝達機構部18とを支持するための略円板状の部材である。支持部材10aの中央には、軽量化のための貫通孔が設けられている。また、被締付けボルトに対応した位置には、ボルト締付け機構部11〜17を嵌設するための貫通孔が設けられている。
【0022】
ワーク係合部材10b〜10dは、自動変速機のハウジングの端面に設けられた突起部と係合するための略円柱状の部材である。ワーク係合部材10b〜10dの軸端部には、ハウジングの突起部と係合する係合孔10h〜10jが設けられている。
【0023】
結合部材10e〜10gは、ワーク係合部材10b〜10dを支持部材に結合するための板状の部材である。結合部材10e〜10gの一端には、ワーク係合部材10b〜10dが固定されている。結合部材10e〜10gの他端は、支持部材10aの外周側の端面に固定されている。
【0024】
ワーク係合部材10b〜10dが、ハウジングの突起部に係合したとき、ボルト締付け機構部11〜17が、対応したボルト締付け位置に配置されるように、結合部材10e〜10gの形状が調整されている。また、ボルト締付け機構部11〜17が、対応した被締付けボルトを確実に締付けられる高さになるように、ワーク係合部材10e〜10gの軸方向長が調整されている。
【0025】
ボルト締付け機構部11〜17は、ボルトを締付けるための機構であり、本体部10の支持部材10aに設けられた貫通孔に嵌設されている。ボルト締付け機構部11〜17は、互いに同じ構造であるため、ここでは、ボルト締付け機構部11についてのみ説明する。図5に示すように、ボルト締付け機構部11は、支持部材11aと、ベアリング11b、11cと、回転部材11d、11eと、結合部材11fと、ボルト係合部材11gと、ばね部材11hとから構成されている。
【0026】
支持部材11aは、ベアリング11b、11cを介して回転部材11dを支持するための略円筒状の部材である。支持部材11aの貫通孔には、ベアリング11b、11cが嵌設されている。
【0027】
回転部材11dは、回転力伝達機構部18を介して伝達される回転力によって回転する略円柱状の部材である。回転部材11dには、小径部11iと、大径部11jとが設けられている。回転部材11dの小径部11iは、ベアリング11b、11cを介して、支持部材11aに回転可能に支持されている。回転部材11dの小径部11iから大径部11jに至る段部11kには、後述するボールプランジャ182d,182eと係合するための係合溝11l、11mが設けられている。
【0028】
結合部材11fは、回転部材11d、11eを結合するとともに、回転部材11eを軸方向に摺動可能に支持するための略円筒状の部材である。結合部材11fには、大径部11nと、中径部11oと、小径部11pとからなる貫通孔が設けられている。貫通孔の大径部11nには、回転部材11dの大径部11jが嵌挿され、外周側からねじで固定されている。図6に示すように、貫通孔の中径部11oには、縮径側に突出した突出部11qが設けられている。
【0029】
図5に示すように、回転部材11eは、結合部材11fを介して伝達される回転力によって回転するとともに、軸方向に摺動する略円柱状の部材である。回転部材11eには、大径部11rと、小径部11sとが設けられている。図6に示すように、回転部材11eの大径部11rには、結合部材11fの中径部11oの突出部11qと係合するための切欠き部11tが設けられている。図5に示すように、回転部材11eの切欠き部11tは、結合部材11fの中径部11oの突出部11qに軸方向に摺動可能に係合されている。回転部材11eの小径部11sは、結合部材11fの小径部11pに軸方向に摺動可能に嵌挿されている。回転部材11eは、結合部材11fと回転するとともに、結合部材11fに対して軸方向に摺動可能に支持されている。
【0030】
ボルト係合部材11gは、被締付けボルトと係合するための円柱状の部材である。ボルト係合部材11gには、被締付けボルトの頭部と係合する係合孔11uが設けられている。また、回転部材11eを嵌挿する貫通孔が軸方向に設けられている。係合孔11uには、被締付けボルトの頭部を吸着する磁石が配設されている。貫通孔には、回転部材11eの小径部11sが嵌挿され、径方向に嵌挿されたピンで固定されている。
【0031】
ばね部材11hは、ボルト係合部材11gを被締付けボルト側に付勢するための部材、例えば、コイルスプリングである。ばね部材11hは、結合部材11fとボルト係合部材11gの間の回転部材11eに嵌挿されている。
【0032】
図4に戻り説明する。図4に示すように、回転力伝達機構部18は、電動ドライバの回転力をボルト締付け機構部11〜17に伝達するための機構であり、本体部10の支持部材10aとボルト締付け機構部11〜17に配設されている。回転力伝達機構部18は、回転力入力部180と、歯付きベルト181と、回転力伝達部182〜188(回転力制限手段)と、ベルト張力調整部189、190(張力調整手段)とから構成されている。
【0033】
回転力入力部180は、電動ドライバの発生する回転力を回転力伝達部181に入力するためのものであり、本体部10の支持部材10aに設けられた貫通穴に嵌設されている。図7に示すように、回転力入力部180は、支持部材180aと、ベアリング180b、180cと、回転部材180dと、歯付きプーリ180eとから構成されている。
【0034】
支持部材180aは、ベアリング180b、180cを介して回転部材180dを支持するための略円筒状の部材である。支持部材180aの貫通孔には、ベアリング180b、180cが嵌設されている。
【0035】
回転部材180dは、電動ドライバの回転力によって回転する略円柱状の部材である。回転部材180dの一端には、電動ドライバの先端係合部と係合する係合孔180fが設けられている。回転部材180dは、ベアリング180b、180cを介して、支持部材180aに回転可能に支持されている。
【0036】
歯付きプーリ180eは、回転部材180dの回転力を歯付きベルト181に伝達するための部材である。歯付きプーリ180eの外周面には、歯付きベルト181と係合する歯部180gが形成されている。歯付きプーリ180eは、回転部材180dに固定されている。
【0037】
図4に示すように、歯付きベルト181は、回転力入力部180の歯付きプーリ180eの回転力を回転力伝達部182〜188に伝達するための部材である。歯付きベルト181の内周面には、回転力入力部180の歯付きプーリ180e、後述する回転力伝達部182〜188の歯付きプーリと係合する歯部181aが形成されている。歯付きベルト181は、これら全ての歯付きプーリと係合し、連結するように配設されている。
【0038】
回転力伝達部182〜188は、歯付きベルト181の回転力をボルト締付け機構部11〜17に伝達するためのものである。回転力伝達部182〜188は、互いに同じ構造であるため、ここでは、回転力伝達部182についてのみ説明する。図5に示すように、回転力伝達部182は、歯付きプーリ182aと、ベアリング182bと、固定部材182cと、ボールプランジャ182d、182eとから構成されている。
【0039】
歯付きプーリ182aは、歯付きベルト181の回転力を固定部材182cに伝達するための部材である。歯付きプーリ182aの外周面には、歯付きベルトと係合する歯部182fが形成されている。歯付きプーリ182aは、ベアリング182bを介して、支持部材11aと結合部材11fの間の回転部材11dに回転可能に支持されている。
【0040】
固定部材182cは、ボールプランジャ182d、182eを歯付きプーリ182aに固定するための円板状の部材である。固定部材182cの中心には、回転軸11dを貫通させるための貫通孔が設けられている。また、ボールプランジャ182d、182eを嵌設するための貫通孔が設けられている。固定部材182cは、歯付きプーリ182aの結合部材11f側の端面に固定されている。
【0041】
ボールプランジャ182d、182eは、所定の外力が加わることで、先端に設けられた微小のボールが軸方向に変位する略円柱状の部材である。ボールプランジャ182d、182eは、固定部材182cの貫通孔に嵌設されている。ポールプランジャ182d、182eの先端は、回転部材11dの段部11kに設けられた係合溝11l、11mと係合している。
【0042】
歯付きプーリ182aの回転力は、固定部材182c、ボールプランジャ182d、182eを介して、回転部材11dに伝達される。歯付きプーリ182aの回転力が所定の大きさ以上になると、回転部材11dの係合溝11l、11kを介して、ボールプランジャ182d、182eの先端に大きな外力が加わり、先端に設けられた微小のボールが軸方向に変位する。ボールプランジャ182d、182eの先端のボールが変位すると、先端が回転部材11dの係合溝11l、11mからはずれ、回転部材11dへの回転力の伝達が遮断される。これにより、ボルトを所定の回転力、つまり、トルクで締付けることができる。
【0043】
ベルト張力調整部189、190は、歯付きベルト181の張力を調整するものであり、本体部10の支持部材10aに固定されている。ベルト張力調整部189、190は、互いに同じ構造であるため、ここでは、ベルト張力調整部189についてのみ説明する。図8に示すように、ベルト張力調整部189は、支持部材189aと、固定部材189bと、ベアリング189cと、プーリ189dとから構成されている。
【0044】
支持部材189aは、固定部材189bを支持するための板状の部材である。支持部材189aには、取付け位置を調整するための長孔が設けられている。固定部材189bは、ベアリング189cを介して支持されるプーリ189dを支持部材189aに固定するための略円柱状の部材である。固定部材189bの一端は支持部材に固定されている。プーリ189dは、歯付きベルト181の外周面を押さえるための部材である。プーリ189dは、ベアリング189cを介して、固定部材189bに回転可能に支持されている。
【0045】
(2.2)ボルト締付け装置の動作
次に、ボルト締付け装置の動作について、前述した図4と図9〜図11を参照して説明する。図9は、ボルトを装着した状態におけるボルト締付け装置の断面図である。図10は、締付け前の状態におけるボルト締付け装置と自動変速機の断面図である。図11は、締付け完了後の状態におけるボルト締付け装置と自動変速機の断面図である。なお、図9〜図11は、断面図であり、ボルト締付け機構部13〜17と、ワーク係合部材10c、10dと、結合部材10f、10gは表示されていない。さらに、図10と図11には、オイルポンプアッシー21と、ハウジング26の一部のみを示し、自動変速機2のその他の部分は省略してある。
【0046】
図9に示すように、作業者は、ボルト締付け機構部11のボルト係合部材11gの係合孔11uに、ボルト27gの頭部を係合させる。ボルト係合部材11gの係合孔11uには、磁石が配設されているため、ボルト27gの頭部は、係合孔11uに吸着される。ボルト締付け機構部12〜17についても、同様に、ボルトを係合させ吸着させる。
【0047】
次に、図10に示すように、作業者は、本体部10のワーク係合孔10hを、自動変速機2のハウジング26の端面に設けられた突起部26aに係合させる。ワーク係合孔10i、10jについても、同様に、ハウジング26の端面の別の箇所に設けられた突起部に係合させる。これにより、ボルトの先端部が、オイルポンプアッシー21のボルト孔に嵌挿された状態で、ボルト締付け装置1が、ハウジング26に固定される。このとき、回転部材11eは、ボルト27gに押圧され、結合部材11f側に摺動する。ボルト27gは、ボルト係合部材11gを介して、ばね部材11hによってオイルポンプアッシー21側に付勢される。ボルト締付け機構部12〜17についても同様である。
【0048】
この状態で、作業者は、回転力入力部180の係合孔180fに、電動ドライバ3の先端係合部3aを係合させ作動させる。電動ドライバ3が作動すると、回転部材180dに固定された歯付きプーリ180eが回転する。図4に示すように、歯付きプーリ180eの回転力は、歯付きベルト181を介して、回転力伝達部182〜188に伝達される。回転力伝達部182に伝達された回転力は、歯付きプーリ182a、ボールプランジャ182d、182eを介して、回転部材11dに伝達される。回転部材11dが回転すると、結合部材11fによって結合された回転部材11eとボルト係合部材11gが回転し、ボルト27gが締付けられる。回転力伝達部183〜188とボルト締付け機構部12〜17についても同様である。
【0049】
図11に示すように、ボルト27gの頭部の下端面が、オイルポンプアッシー21に当接し、回転力が所定の大きさ以上になると、ボールプランジャ182d、182eの先端に設けられた微小のボールが軸方向に変位する。ボールプランジャ182d、182eの先端が、回転部材11dの係合溝11l、11mからはずれ、回転力の伝達が遮断される。これにより、ボルト27gは所定の回転力、つまり、トルクで締付けられる。回転力伝達部183〜188とボルト締付け機構部12〜17についても同様である。
【0050】
(2.3)ボルト締付け装置の効果
次に、ボルト締付け装置の効果について説明する。ボルト締付け装置1は、1つの歯付きベルト181を介して、ボルト締付け機構部11〜17に回転力を伝達し、7本のボルトを同時に締付ける。そのため、前述した回転軸ごとに歯付きベルトを備える場合に比べ、部品点数が減少し、コストを抑えることができる。また、歯付きベルト181と係合する回転力入力部180の歯付きプーリ180aが1つで済む。そのため、前述した駆動軸に歯付きプーリを直列に配設する場合に比べ、軸方向長を抑えることができる。これにより、装置を小型、軽量化することができる。さらに、装置が軽量化されることで、作業性を向上させることができる。
【0051】
また、ボルト締付け装置1は、ねじ締付け機構部11〜17の回転力が所定の大きさ以上になると、回転力伝達部182〜188で、回転力の伝達を遮断する。そのため、ボルトを所定の回転力で締付けることができる。
【0052】
また、ボルト締付け装置1は、ベルト張力調整部189、190で、歯付きベルト181の張力を調整できる。これにより、歯付きベルト181の歯部と、回転力入力部180や回転力伝達部182〜188の歯付きプーリの歯部とが確実に係合し、回転力を確実に伝達することができる。
【0053】
さらに、ボルト締付け装置1は、本体部10のワーク係合部材10b〜10dをハウジング26の突起部に係合させることで、ボルト締付け機構部11〜17をオイルポンプアッシー21のボルト孔の上方に配置できる。これにより、ボルト締付け装置1の配置を調整する必要がなくなり、作業性をさらに向上させることができる。
【0054】
(3)その他
本実施形態においては、本発明に係るねじ部材締付け装置を、自動変速機2のオイルポンプアッシー21のボルト締付け装置1に適用した例を挙げているが、これに限られるものはない。本発明のねじ部材締付け装置は、本発明を逸脱しない範囲であれば、複数のねじ部材の締付けを必要とするあらゆる用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】自動変速機の断面図である。
【図2】トルクコンバータアッシー組付け前の自動変速機の断面図である。
【図3】トルクコンバータアッシー組付け前の自動変速機の平面図である。
【図4】ボルト締付け装置の底面図である。
【図5】ボルト締付け機構部と回転伝達機構部の断面図である。
【図6】図5におけるA−A矢視断面図である。
【図7】回転力入力部の断面図である。
【図8】ベルト張力調整部の断面図である。
【図9】ボルトを装着した状態におけるボルト締付け装置の断面図である。
【図10】締付け前の状態におけるボルト締付け装置と自動変速機の断面図である。
【図11】締付け完了後の状態におけるボルト締付け装置と自動変速機の断面図である。
【図12】ボルト両締め装置の平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1:ボルト締付け装置、10:本体部(位置決め手段)、10a:支持部材、10b〜10d:ワーク係合部材、10e〜10g:結合部材、10h〜10j:係合孔、11〜17:ボルト締付け機構部(回転軸)、11a:支持部材、11b、11c:ベアリング、11d、11e:回転部材、11f:結合部材、11g:ボルト係合部材、11h:ばね部材、11l、11m:係合溝、11u:係合孔、18:回転力伝達機構部(回転力伝達手段)、180:回転力入力部、180a:支持部材、180b、180c:ベアリング、180d:回転部材、180e:歯付きプーリ、180f:係合孔、181:歯付きベルト、182〜188:回転力伝達部(回転力制限手段)、182a:歯付きプーリ、182b:ベアリング、182c:固定部材、182d、182e:プランジャ、189、190:ベルト張力調整部(張力調整手段)、189a:支持部材、189b:固定部材、189c:ベアリング、189d:プーリ、2:自動変速機、21:オイルポンプアッシー、26:ハウジング、26a:突起部、3:電動ドライバ、3a:先端係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ部材と係合するねじ部材係合部を備えた複数の回転軸と、外部から入力される回転力を1つのベルトを介して前記複数の回転軸に伝達する回転力伝達手段とを備えることを特徴とするねじ部材締付け装置。
【請求項2】
前記回転力伝達手段は、前記複数の回転軸のうち少なくともいずれかの回転力を制限する回転力制限手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のねじ部材締付け装置。
【請求項3】
前記回転力伝達手段は、前記回転軸に配設され前記ベルトと係合するプーリを備え、
前記回転力制限手段は、前記プーリに対して前記回転軸の回転力を制限することを特徴とする請求項2に記載のねじ部材締付け装置。
【請求項4】
前記回転力伝達手段は、前記ベルトの張力を調整する張力調整手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のねじ部材締付け装置。
【請求項5】
被螺合部材のねじ部材螺合位置に前記複数の回転軸を位置決めする位置決め手段を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のねじ部材締付け装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−205321(P2006−205321A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22293(P2005−22293)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】