説明

ばね

【課題】系の共振周波数付近の低周波数帯域でも、振動伝達率を低減することができるばねを提供する。
【解決手段】ばね1の本体部10には、摩擦発生部21が形成されている。摩擦発生部21は、基台112に向かって突出し、摩擦発生部21の下端部と基台112との間に、間隔hの隙間が形成されている。ばね1では、系の共振周波数付近の低周波数帯域では、高周波数帯域の場合と異なり、大きく撓む。たとえば、第1筒状部11の当接部が押圧力の方向に所定量移動したとき(ばね1が所定量撓んだとき)、図3に示すように、摩擦発生部21は基台112に接触する。ばね1では、系の共振周波数付近の低周波数帯域において、ばね定数が不連続で大きくなる。摩擦発生部21の基台112に対する摺動により摩擦が発生して、ヒステリシス損失が発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手部材からの高周波振動の伝達を抑制するばねに係り、特にばねの形状の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業や、精密機器産業、家電、建築等の各種分野では、振動伝達を抑制する技術が要求されている。振動伝達の抑制技術は、エンジンや、高速回転するモータ、洗濯機の脱水槽、建築物等に適用されている。振動伝達の抑制技術としては、対象物と支持部により構成される系の共振周波数を、所定の周波数帯域よりも十分に低く設定することが有効である。その手法として、支持部のばね定数を小さくすることが考えられるが、この場合、支持部としてコイルばねや板ばねを用いたとき、ばね定数を小さくすると、高荷重を支えるためには、大きな撓みが必要となり、ばねが大型化してしまう。
【0003】
そこで、対象物と支持部との間に皿ばねを用いる手法が提案されている(たとえば特許文献1,2)。皿ばねの荷重特性は、図7に示す曲線のように設計することができるから、高荷重を支えることができるとともにばね定数を小さく設定することができる略平坦領域Aを設定することができる。
【0004】
皿ばねは、その形状が荷重印加により略平坦状をなすように変形するときに、皿ばねの内周縁部および外周縁部が、相手部材に対して摺動して摩擦が発生する。このため、皿ばねの使用範囲を図7の略平坦領域Aの範囲に設定した場合、実際の荷重曲線には、図8(A)に示すヒステリシスが生じる。その結果、皿ばねの使用範囲での実質的な動的ばね定数は、図8(A)の点Pと点Qを結ぶ対角線lの傾きとなる。この場合、使用範囲の振幅を小さくしたとき、図8(B)に示すように、対角線lの傾きが大きくなるため、動的ばね定数が大きくなってしまう。このように皿ばねが適用された系では、高周波振動のような微振幅の振動を入力すると、皿ばねの動的ばね定数が大きくなるため、系の共振周波数が大きくなり、その結果、高周波振動の伝達を抑制できないという問題があった。
【0005】
以上のような問題を解決するために本出願人は、図9に示すばね200を提案している(たとえば特許文献3)。図9は、ばね200の構成を表し、(A)は斜視図、(B)は、ばね200の右側部分の断面図である。図8(B)は、基台112(相手部材)に配置されたばね200が対象物111(相手部材)を支持する状態を表している。ばね200は、中心部に孔部210Aが形成された本体部210を備えている。本体部210は、皿ばねと同様の形状をなし、皿ばねとしての機能を有する。
【0006】
本体部210の内周部には、対象物111に向けて突出する第1筒状部211が設けられ、本体部210の外周部には、基台112に向けて突出する第2筒状部212が設けられている。本体部210と第1筒状部211との境界部には第1角部213が形成され、本体部210と第2筒状部212との境界部には第2角部214が形成されている。
【0007】
ばね200では、角部213,214が、荷重印加時に相手部材111,112からの押圧力に応じて、その角度を変化させるように弾性変形することができる。この場合、筒状部211,212の相手部材111,112側の部分は不変形部分となるように筒状部211,212の長さを設定している。これによりばね200では、筒状部211,212の相手部材111,112に対する摺動を防止することができるので、ばね200の荷重特性では、ヒステリシスが発生しない。したがって、ばね200は、高荷重を支えることができるとともに、動的ばね定数を小さくすることができる。その結果、系の共振周波数を低くすることができ、高周波振動の振動伝達率を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−172171号公報
【特許文献2】特開2002−54685号公報
【特許文献3】特開2009−275738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ばね200では、系の共振周波数を低く設定しているため、系の共振周波数付近の低周波数帯域において、振動の伝達率が大きくなる虞があった。その結果、系の共振周波数付近の低周波数帯域では、対象物の振幅の低減を図ることに限界があった。よって、系の共振周波数付近の低周波数帯域でも、振動伝達率を低減するために、より好適なばねが望まれている。
【0010】
したがって、本発明は、系の共振周波数付近の低周波数帯域でも、振動伝達率を低減することができるばねを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のばねは、孔部を有する本体部と、本体部の内周部および外周部に設けられた筒状部と、本体部と前記筒状部との境界部に形成された角部とを備え、筒状部は、内周部および外周部から、それぞれの相手部材に向けて突出してそこに当接する当接部を有し、角部は、その角度が相手部材から加えられる押圧力に応じて変化するように弾性変形可能であり、本体部に、相手部材の一方に向けて突出する摩擦発生部が形成され、初期状態では、摩擦発生部と相手部材の一方との間には所定の隙間が設けられ、筒状部の当接部が押圧力の方向に所定量移動したときに、摩擦発生部は相手部材の一方に接触することを特徴としている。
【0012】
本発明のばねでは、荷重印加時に角部が弾性変形することができるので、筒状部における角部と相手部材との間の距離を適宜設定することにより、荷重印加時に筒状部の相手部材近傍の部位の変形を防止することができる。したがって、高荷重を支えることができるとともに、動的ばね定数を小さくすることができる。その結果、系の共振周波数を低くすることができ、高周波振動の振動伝達率を低減することができる。
【0013】
このように本発明のばねでは、比較例のばね200と同様に高周波数帯域で上記効果を得ることができる。ここで本発明のばねでは、相手部材の一方に向けて突出する摩擦発生部が本体部に形成されているから、系の共振周波数付近の低周波数帯域において、次のような効果を得ることができる。
【0014】
すなわち、本発明のばねでは、系の共振周波数付近の低周波数帯域では、高周波数帯域の場合と異なり、大きく撓むから、摩擦発生部は、筒状部の当接部が押圧力の方向に所定量移動したとき(ばねが所定量撓んだとき)、相手部材の一方に接触することができる。この場合、ばね定数が不連続で大きくなるから、対象物としての相手部材と支持部としてのばねからなる系の共振現象を防止することができ、その結果、対象物の振幅の増大を抑制することができる。また、単位たわみ量当たりのばねによるエネルギー吸収量が増大するから、振幅を低減することができる。さらに、摩擦発生部の相手部材の一方に対する摺動により摩擦が発生して、ヒステリシス損失が発生するから、振動エネルギーを消費することができ、その結果、振幅をさらに低減することができる。
【0015】
以上のことから本発明のばねでは、系の共振周波数付近の低周波数帯域でも、振動伝達率を低減することができる。
【0016】
本発明のばねは種々の構成を用いることができる。たとえば、本体部にはスリットが形成され、摩擦発生部は、スリットの端部から折り曲げられて形成されている態様を用いることができる。この態様では、摩擦発生部の形成が容易となる。
【0017】
また、摩擦発生部は、本体部の内周部側の前記筒状部の端部に形成され、摩擦発生部の突出方向は、内周部側の筒状部の突出方向とは反対方向で、かつ外周部側に向かう方向である態様を用いることができる。摩擦発生部は、本体部の外周部側の筒状部の端部に形成され、摩擦発生部の突出方向は、外周部側の筒状部の突出方向とは反対方向で、かつ内周部側に向かう方向である態様を用いることができる。これら態様では、摩擦発生部は筒状部の本体部側端部に形成されるから、摩擦発生部が反対側相手部材に接触するまでの移動量と、筒状部の当接部の移動量(ばねのたわみ量)とが同等となり、その結果、ばねの設計が容易となる。また、摩擦発生部を相手部材の一方に対して傾斜させて配置することができるから、摩擦発生部は相手部材の一方に対する摺動をスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のばねによれば、系の高周波数帯域で振動伝達率を低減することができるのはもちろんのこと、系の共振周波数付近の低周波数帯域でも、振動伝達率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るばねの構成を表し、(A)は斜視図、(B)は、部材間に配置した状態にあるばねの側断面図である。
【図2】図1に示すばねの右側部分の動作時における摩擦発生部の相手部材への接触前の状態を表し、(A)は、ばねの動作前(点線)と動作時(実線)の側断面図であり、(B)は、ばねの動作時の第1角部および第2角部の拡大側断面図である。
【図3】図1に示すばねの右側部分の動作時における摩擦発生部の相手部材への接触後の状態を表す側断面図である。
【図4】(A),(B)は本発明例のばねおよび比較例のばねの荷重特性の実機評価結果を表し、(B)は(A)の破線の枠内Xで示される部分の拡大図である。
【図5】本発明例のばねおよび比較例のばねの周波数応答特性の実機評価結果を表すグラフである。
【図6】本発明の一実施形態に係るばねの変形例の構成を表し、部材間に配置した状態にあるばねの側断面図である。
【図7】皿ばねの荷重特性を表すグラフである。
【図8】ヒステリシスが生じる実際の皿ばねの荷重特性を表すグラフであり、(A)使用範囲の振幅が所定の大きさの場合、(B)使用範囲の振幅が(A)の場合よりも小さい場合のグラフである。
【図9】比較例のばねの構成を表し、(A)は斜視図、(B)は右側部分の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(1)実施形態の構成
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、ばね1の構成を表し、(A)はばね1の斜視図、(B)は、対象物111と基台112との間に配置されたばね1の右側部分の側断面図である。
【0021】
ばね1は、たとえば、ばね鋼や強化材プラスチックからなる。ばね1は、たとえば中心部に孔部10Aが形成された本体部10を備えている。本体部10は、たとえば対象物111と基台112からの押圧力の方向に対して交差する方向に延在し、皿ばねとしての機能を有する皿ばね部である。本体部10は、たとえば下方に向かうに従って傾斜する略円錐形状をなしている。ばね1は、その荷重特性が、図7に示す皿ばねの特性と同様に、略平坦領域Aを有するように非線形となる。
【0022】
孔部10Aは、たとえば円形状をなしている。本体部10の内周部には、対象物111に向けて突出する第1筒状部11(筒状部)が設けられている。第1筒状部11の上端部は、対象物111に当接する当接部である。本体部10の外周部には、基台112に向けて突出する第2筒状部12(筒状部)が設けられている。第2筒状部12の下端部は、対象物112に当接する当接部である。筒状部11,12はたとえば円筒部である。
【0023】
本体部10には、孔部10Aの周囲に複数(たとえば4)のスリット10Bが形成され、スリット10Bの端部から摩擦発生部21が折り曲げられて形成されている。摩擦発生部21は、たとえば矩形状の板状をなす。摩擦発生部21は、基台112に向かって突出し、摩擦発生部21の下端部と基台112との間に、間隔hの隙間が形成されている。摩擦発生部21は、第1筒状部11の当接部が下方に所定量移動したときに、基台112に接触する。
【0024】
摩擦発生部21は、基台112に接触した場合、対象物111からの押圧力に応じて、第1筒状部11の下端部回りに回動し、摩擦発生部21と本体部10とのなす角度が小さくなるように弾性変形可能である。摩擦発生部21は、たとえば第1筒状部11と本体部10との境界部近傍に形成され、第1筒状部11の下端部に形成されていることが好適である。また、摩擦発生部21の突出方向は、本体部10外周部側に向かう方向であることが好適である。
【0025】
本体部10と第1筒状部11との境界部には第1角部13が形成され、本体部10と第2筒状部12との境界部には第2角部14が形成されている。第1角部13および第2角部14は、対象物111と基台112からの押圧力に応じて、その角度を変化させるように弾性変形可能である。
【0026】
ばね1は、プレス成形により各部位を折り曲げて形成することができる。また、各部位を溶接して形成することができる。
【0027】
(2)筒状部の機能
荷重印加時における筒状部11,12の機能について、おもに図2を参照して説明する。図2は、対象物111と基台112の間に設置された1個のばね1の動作状態を表し、(A)は、ばね1の動作前(点線)と動作時(実線)の側断面図であり、(B)は、ばね1の動作時の第1角部13および第2角部14の拡大側断面図である。なお、図2は、スリット10Bおよび摩擦発生部21を含まない部分の側断面図であって、図2は、ばね1の動作時における摩擦発生部の対象物111への接触前の状態を表している。図2では、図1(B)と同様に、ばね1の右側部分のみを図示している。
【0028】
図2(A)の点線で示すように、対象物111と基台112の間に配置されたばね1に対して、対象物111から下側方向の荷重を加える。すると、図2(B)の実線で示すように、ばね1は撓んで対象物111が下方に移動する。図中の符号dは、ばね1のたわみの大きさを示している。
【0029】
本体部10は、対象物111からの押圧力の方向に交差する方向に延在し、ばね1の上側において、第1筒状部11は、本体部10の内周部から対象物111に向けて突出してそこに当接している。そのような本体部10と第1筒状部11の境界部に形成した第1角部13は、荷重印加時に対象物111からの押圧力に応じて角度αが変化するように弾性変形することができる。この場合、第1角部13は、上記のような位置関係にある本体部10と第1筒状部11の境界部に形成された部位であるから、そのような第1角部13は、荷重印加時に角度αを変化させながら、本体部10の内周部の内側(図の左側)に移動することができる。
【0030】
このように荷重印加時に第1角部13は弾性変形することができるので、第1筒状部11が荷重印加時に対象物111側の不変形部分(図2(B)中の点Sより上側)を有するように第1筒状部11の長さを適宜設定することにより、第1筒状部11の対象物111側部分の変形を防止することができる。
【0031】
一方、ばね1の下側において、第2筒状部11は、本体部10の内周部から基台112に向けて突出してそこに当接している。この場合、第1角部13と同様な機能を有する第2角部14は、荷重印加による弾性変形時に、基台112からの押圧力に応じて、角度βを変化させながら、本体部10の外周部の外部側(図の右側)に移動することができる。
【0032】
このように荷重印加時に第2角部14は弾性変形することができるので、第2筒状部12が荷重印加時に基台112側の不変形部分(図2(B)中の点Tより下側)を有するように第2筒状部12の長さを適宜設定することにより、第2筒状部12の基台112側部分の変形を防止することができる。
【0033】
以上のようにばね1は、筒状部11,12に不変形部分を有するので、ばね1と相手部材との摺動を防止することができる。その結果、ばね1の荷重特性では、皿ばねで問題となっていたヒステリシスが発生しない。
【0034】
(3)実施形態の動作
ばね1の動作について図面を参照して説明する。ばね1の荷重特性では、上記のようにヒステリシスが発生しないから、ばね1は、高荷重を支えることができるとともに、動的ばね定数を小さくすることができる。その結果、系の共振周波数を低くすることができ、高周波振動の振動伝達率を低減することができる。このようにばね1は、比較例のばね200と同様に高周波数帯域で上記効果を得ることができる。
【0035】
ここでばね1では、基台112に向けて突出する摩擦発生部21が本体部10に形成されているから、系の共振周波数付近の低周波数帯域において、次のような効果を得ることができる。
【0036】
ばね1では、系の共振周波数付近の低周波数帯域では、高周波数帯域の場合と異なり、大きく撓む。たとえば、第1筒状部11の当接部が押圧力の方向に所定量移動したとき(ばね1が所定量撓んだとき)、図3に示すように、摩擦発生部21は基台112に接触することができる。摩擦発生部21は、接触時、対象物111からの押圧力に応じて、第1筒状部11の下端部回りに回動することができ、摩擦発生部21と本体部10とのなす角度が小さくなる。このようにして摩擦発生部21は、基台112に対して摺動することができる。
【0037】
ばね1では、摩擦発生部21の上記作用により、系の共振周波数付近の低周波数帯域において、ばね定数が不連続で大きくなるから、対象物としての基台112と支持部としてのばね1からなる系の共振現象を防止することができ、その結果、基台112の振幅の増大を抑制することができる。また、単位たわみ量当たりのばねによるエネルギー吸収量が増大するから、振幅を低減することができる。さらに、摩擦発生部21の基台112に対する摺動により摩擦が発生して、ヒステリシス損失が発生するから、振動エネルギーを消費することができ、その結果、振幅をさらに低減することができる。
【0038】
図4は本発明のばね1の具体例(本発明例)および比較例のばね200の具体例(比較例)の荷重特性の実機評価結果を表し、(B)は(A)の破線の枠内Xで示される部分の拡大図である。図5は、本発明例のばねおよび比較例のばねの周波数応答特性の実機評価結果を表すグラフである。
【0039】
本発明例のばねおよび比較例のばねについて、板厚を0.4mm、本体部の高さを3.17mm、本体部の内径(第1筒状部の開口部の径)を13mm、本体部の外径(第2筒状部の開口部の径)を47mm、第2筒状部の高さを5.2mmに設定した。ばね1の具体例について、摩擦発生部の下端部と基台との間の隙間の間隔hを0.8mmに設定した。
【0040】
図4から判るように、摩擦発生部を有する本発明例のばねでは、摩擦発生部が基台に接触していないときには、摩擦発生部を有しない比較例のばねと同様、ヒステリシスが極めて小さな荷重特性を示すが、摩擦発生部が基台に接触しているときには、比較例のばねとは異なり、ばね定数が大きくなり、かつヒステリシスが大きくなることを確認した。この場合、図5から判るように、本発明例のばねでは、比較例のばねと比較して、系の共振周波数付近の低周波数帯域において、振動伝達率を低減することができることを確認した。
【0041】
以上のように本実施形態では、系の高周波数帯域に加えて、系の共振周波数付近の低周波数帯域でも、振動伝達率を低減することができる。
【0042】
特に、第1筒状部11を本体部10の内周部に設けることができるから、摩擦発生部21が基台112に接触するまでの移動量と、第1筒状部11の当接部の移動量(ばねのたわみ量)とが同等となり、その結果、ばね1の設計が容易となる。また、摩擦発生部21の突出方向を外周部へ向かう方向に設定することができるから、摩擦発生部21を基台112に対して傾斜して配置することができ、接触時に基台112との摺動をスムーズに行うことができる。また、本体部10にスリット10Bを形成し、スリット10Bの端部から摩擦発生部21を折り曲げて形成しているから、摩擦発生部21の形成が容易となる。また、摩擦発生部21を基台112に対して傾斜させて配置することができるから、摩擦発生部21は基台112に対する摺動をスムーズに行うことができる
【0043】
(3)変形例
以上のように上記実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。なお、以下の変形例では、上記実施形態と同様な構成要素には同符号を付し、その説明は省略している。
【0044】
たとえば上記実施形態では、摩擦発生部21を第1筒状部11の下端部に形成したが、図6に示すように、摩擦発生部22を第2筒状部12と本体部10との境界部の近傍に形成してもよく、この場合、第2筒状部12の上端部に形成することが好適である。この場合、摩擦発生部22は、対象物111に向かって突出し、摩擦発生部22の上端部と対象物111との間に間隔hの隙間が形成されている。摩擦発生部22は、第1筒状部11の当接部が下方に所定量移動したときに、対象物111に接触する。本体部10にスリット10Bを形成し、スリット10Bの端部から摩擦発生部22を折り曲げて形成することが好適である。また、摩擦発生部22の突出方向は、本体部10内周部側に向かう方向であることが好適である。摩擦発生部22は摩擦発生部21と同様な作用を示すことができる。
【0045】
摩擦発生部21,22の形成位置は、筒状部の端部(本体部10の内周部あるいは外周部)に設定したが、これに限定されるものではなく、必要に応じて、本体部10の上面あるいは下面の任意の位置に設定してもよい。また、摩擦発生部の突出方向は、それが設けられた周部とは異なる周部に向かう方向とは反対の方向に設定してもよい。摩擦発生部の形成個数は、2以上であればよい。
【0046】
本体部10は、たとえば、外周部から内周部に向かって下方に傾斜する円錐状、S字状や、階段状、平坦状をなすことができる。筒状部は、筒状であればよく、その断面形状は多角形でもよく、その側断面形状は、曲線状でもよい。
【0047】
上記実施形態では、第1筒状部11を対象物111に向けて突出させてそこに当接させ、かつ第2筒状部12を基台112に当接させたが、第1筒状部11を基台112に向けて突出させてそこに当接させ、第2筒状部12を対象物11に向けて突出させてそこに当接させてもよい。さらに、第1角部13および第2角部14の形状は、図示の形状に限定されるものではなく、曲面形状等の種々の形状に変更可能である。
【0048】
また、第1筒状部11および第2筒状部12を本体部10の内周部および外周部に形成したが、第1筒状部11および第2筒状部12のいずれか一方のみに形成してもよい。第1筒状部11および第2筒状部12の当接部は、各種固定手段を用いて、相手部材に固定してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…ばね、10…本体部、10A…孔部、10B…スリット、11…第1筒状部(筒状部)、12…第2筒状部(筒状部)、13…第1角部(角部)、14…第2角部(角部)、21,22…摩擦発生部、111…対象物(相手部材)、112…基台(相手部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔部を有する本体部と、
前記本体部の内周部および外周部に設けられた筒状部と、
前記本体部と前記筒状部との境界部に形成された角部とを備え、
前記筒状部は、前記内周部および前記外周部から、それぞれの相手部材に向けて突出してそこに当接する当接部を有し、
前記角部は、その角度が前記相手部材から加えられる押圧力に応じて変化するように弾性変形可能であり、
前記本体部に、前記相手部材の一方に向けて突出する摩擦発生部が形成され、
初期状態では、前記摩擦発生部と前記相手部材の一方との間には所定の隙間が設けられ、
前記筒状部の前記当接部が前記押圧力の方向に所定量移動したときに、前記摩擦発生部は前記相手部材の一方に接触することを特徴とするばね。
【請求項2】
前記本体部にはスリットが形成され、
前記摩擦発生部は、前記スリットの端部から折り曲げられて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のばね。
【請求項3】
前記摩擦発生部は、前記本体部の内周部側の前記筒状部の端部に形成され、
前記摩擦発生部の突出方向は、前記内周部側の前記筒状部の突出方向とは反対方向で、かつ前記外周部側に向かう方向であることを特徴とする請求項1または2に記載のばね。
【請求項4】
前記摩擦発生部は、前記本体部の外周部側の前記筒状部の端部に形成され、
前記摩擦発生部の突出方向は、前記外周部側の前記筒状部の突出方向とは反対方向で、かつ前記内周部側に向かう方向であることを特徴とする請求項1または2に記載のばね。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−2274(P2012−2274A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136783(P2010−136783)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】