説明

ほてりのためのステロイド治療

【課題】治療的に有効な用量のステロイド剤を鋤鼻器に投与することによってほてりをもつ個体を治療するための方法を提供する。
【解決手段】ほてりは、個体がもつ閉経後或いは去勢の結果であり得る。多くの実施態様において、ほてりをもつ個体を治療するための方法は、エストレン化合物、例えば、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オン、を含有するステロイド剤を個体に投与することによって提供される。他の実施態様において、ステロイド剤を含有する医薬組成物が、ほてりをもつ個体を治療するために用いられてもよい。実施態様は、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤を鋤鼻器に投与して、ほてりを緩和することによって、ほてりをもつ、去勢された男性、並びに閉経後の女性及び更年期以降の男性を治療するための方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施態様は、一般的には、ほてりの治療に関し、より詳細には、ステロイド剤を個体に鋤鼻器投与することによるほてりの治療に関する。
【背景技術】
【0002】
ほてり
ほてりは、女性又は男性の個体が血色のよい顔面紅潮と発汗を伴うことがあり得る瞬間的な熱感覚である。ほてりの原因は、循環の変化に関係し得るものである。ほてりは、皮膚表面近くの血管が拡張して冷やされるときに起こり、顔が赤く紅潮したように見える。個体は、また、発汗して、体が冷えることがあり得る。更に、ある個体は、心拍数が速くなるか或いは悪寒がする。発汗を伴うほてりは、夜にも起こり得る。これらは、寝汗と呼ばれ、睡眠を妨害することになる。顔面潮紅は、ほてりと個体の顔と首における発赤の外観である。
【0003】
ほてりは、最も一般的な閉経の症状であり得る。ほてりの出現はエストロゲン枯渇と同時期であるが、エストロゲンレベルが症候性の女性と無症候性の女性の間で異ならないことからこのことが現象を完全に説明するというわけではない。黄体形成ホルモン(“LH”)パルスは、ほてりも生じないし、体内麻薬の変化もない。最近の研究は、症候性の閉経後の女性の常温ゾーンの低下で作用するコア体温(“Tc”)の小さな上昇がほてりの引き金となることを提唱している。このことは中枢ノルアドレナリン活性化の増加によるものであり、クロニジンやいくつかの緩和方法がほてりを緩和させるという所見によって主張が支持されている。Tc上昇がほてりの引き金となり得ることから、周囲温度を低下させるようなTcを低下させる方法が有益である。エストロゲンは、Tc発汗許容限界を上げることによってほてりを緩和させるが、基礎にある機序は不明である。最近の研究は、睡眠障害が個体が眠っている間のほてりによるものであり得ることを提唱している。
【0004】
いくつかの健康調査は、調査を受ける女性の75%が症状の持続期間が平均4年間の、閉経期と閉経後の間の期間にほてりがあると報告したことを示した。ほてりは、通常、約1分間から約5分間まで続き、少しの割合は約6分間以上持続する。ほてりの経験は、通常、強い熱、発汗、紅潮、冷え、及びしめり感の感覚として記載される。発汗は、顔、首、及び胸部において最もしばしば報告されるが、尾側にはほとんどない。
【0005】
皮膚温度の上昇及び血流の増加によって示される末梢血管拡張は、ほてりの間、多くの体面積において起こる。ほてりの間、指、頬、額、上腕、胸部、腹部、背中、腓腹、及び大腿における皮膚温度が上昇する。また、指、手、腓腹、及び前腕の血流は、ほてりの間、増加することになる。これらの変化は、典型的には、ほてりの報告された開始の最初の数秒内に起こる。ほてりの間、発汗及び皮膚コンダクタンス(発汗の電気的基準)も増加する。
【0006】
自律神経系の緊張の変化は、ほてりの開始に関与する。自律神経系の交感神経系の緊張の増加(或いは副交感神経性の緊張の低下)の間に放出されるノルエピネフリン(“NE”)は、温度調節に主な役割を果たし、一部には、α2-アドレナリン受容体によって作用する。実験動物の視索前野視床下部に注入される場合、NEは末梢血管拡張及び熱損失を引き起こし、続いて体温が低下する。更にまた、性腺ステロイドは、中枢NE活性をモデュレートする。この理論は、選択的α2-アドレナリン作動薬クロニジンがほてり頻度を著しく減少させることを示している臨床研究によって支持されている。
【0007】
骨格筋緊張増加によって誘起される震えの増加は、体熱の生産に関与する。骨格筋の筋電図(EMG)を用いて測定される震えの許容限界は、無症候性の閉経後の女性より症候性の閉経後の女性が低い。骨格筋緊張低下が生じるある緩和方法は、ほてりを減少させるのを助けることができる。
【0008】
ほてりのサーカディアンリズムの分析(24時間正弦波に取り付ける)は、午後6時30分前後にピークがあるほてりのサーカディアンリズム(p < 0.02)を示し、症候性個体におけるTcのサーカディアンリズムを約3時間だけ遅らせる。大部分のほてりの前にTcが上昇した、統計的有意差(p < 0.05)。ほてりは、すべての非ほてり時間(36.70±0.005℃)と比較して著しく(p < 0.02)高いレベルのTc(36.82±0.04℃)から始まった。これらのデータは、Tcの上昇がほてりの引き金となる機序の一部として役に立つという仮説と一致している。
【0009】
ほてりが自然閉経或いは外科的閉経でエストロゲン枯渇を有するほとんどの女性に起こるので、エストロゲンがそれらの開始に関係していることはほとんど疑いない。これは、エストロゲン投与がほてりをほぼなくすという事実によって支持される。しかしながら、エストロゲン枯渇だけでは、ほてりの発生と血漿、尿、又は膣レベルのエストロゲンの間に相関がなく、症候性の女性と無症候性の女性の間の血漿レベルに差がないことから、この症状の病因を説明しない。更に、クロニジンは循環エストロゲンレベルを変えずにほてり頻度を減少させ、思春期前の少女はエストロゲンレベルが低いがほてりがない。従って、エストロゲン枯渇は必要であるが、ほてりの発生を説明するのに充分でない。LHの下垂体脈動と温度変化の間に時間的相関関係ある。しかしながら、LHパルスはほてりの根拠ではない。
【0010】
それ故、交感神経アドレナリン性緊張の増加(或いは副交感神経性緊張の低下)、体温の上昇、皮膚電位の増加、及び骨格筋緊張の増加が症候性の閉経期の女性のほてりを引き起こす。
【0011】
実際の去勢又は化学的去勢術によってアンドロゲンを喪失させる場合、男性もまたほてりを感じることができる。実際の去勢は - 例えば、精巣癌、前立腺癌、又は転移性前立腺癌の治療において - 少なくとも一方の精巣又は双方の精巣の偶発的或いは外科的喪失であり得る。男性個体は、性転換手術の過程で実際の去勢を受けることができる。
【0012】
化学的去勢は、抗アンドロゲン化合物或いは黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト化合物の投与によって誘導することができる。化学的去勢は、前立腺癌或いは転移性前立腺癌の治療中に起こり得るが、時には他の病状に起こり得る。いくつかの例において、化学去勢は、例えばある種の性犯罪者の治療において、男性個体の性的能力を自発的に衰えさせるために用いることができる。
【0013】
ほてりのための過去の治療
エストロゲン補充治療。閉経期中のエストロゲンレベルの低下は、17β-エストラジオールを全身的には経口剤形、鼻内噴霧剤を用いて投与することによって、及び最近では貼付剤を用いた低投与量経皮投与によって治療される。しかしながら、エストロゲン補充治療は、プロゲステロンと投与される場合に、乳癌、冠動脈性心疾患(“CHD”)、血栓塞栓症、卒中、及び痴呆のリスクを増加させ且つ単独で投与される場合に、CHDリスクを低下させずに卒中のリスクを増加させることが報告されている。これらの治療のために変えたリスク便益比を考慮して、現在はより少ない用量で投与されている。
【0014】
いくつかの最近の研究では、ほてりの治療においてある種の抗うつ剤の効能が報告されている。パロキセチン、選択的セロトニン-再取り込み阻害剤(“SSRI”)は、2-3回のほてり/日を報告している165人の女性において62%(12.5mg/日)及び65%(25.0mg/日)がほてり集成値を低下させることが示された。プラセボ応答率は、37.8%であった。フルオキセチンは、ほてりを治療するのに用いられる他のSSRIである。81人の乳癌生存者の研究において、クロスオーバー分析は、プラセボ条件より約20%のほてり頻度の減少を示した。ベンラファキシン、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤もまた、ほてりを治療するのに効力を示した。229人の女性の研究において、ベンラファキシンはプラセボの27%と比較して75mg/日及び150mg/日のベースラインから60%、また、37.5mg/日では37%がほてり評点を低下させた。これらの抗うつ剤の副作用には、吐き気、口渇、眠気、食欲減少、及び不眠が含まれる。副作用及び作用の遅い開始の他に、抗うつ剤は治療効果を達成する前に数週間の持続投与を必要とする。
【0015】
クロニジンは、Tc発汗許容限界を上げることによってほてりを緩和させる。2つの小さなプラセボ対照試験から、経口クロニジンが46%だけほてり頻度を減少させ、経皮クロニジンが80%だけそれを低下させることがわかった。タモキシフェンを投与する乳癌生存者の2つのより大きな研究は、プラセボと比較して経口クロニジン及び経皮クロニジンに対するほてり頻度のより少ないが有意な減少を示した。しかしながら、クロニジンは、遅い作用開始及び血圧低下、口渇、及び鎮静状態を含む副作用を有する。
【0016】
ガバペンチンは電位型カルシウムチャネルのα2δサブユニットに結合する抗痙攣薬であり、何人かの患者においてほてりを緩和させることが偶然に見いだされた。59人の女性対照試験から、プラセボの29%に対して45%のほてり頻度の減少がわかった。ガバペンチンの副作用には、めまい及び末梢浮腫が含まれる。
【0017】
イソフラボン又はフィトエストロゲンは、エストロゲン特性を有し、大豆製品やレッドクローバーに見られる。ブラックコホッシュは、ほてりを治療するのに用いられる他の植物由来物質である。22の対照試験の最近の再調査、大豆に関して12の試験及び他の植物化合物に関して10の研究には、プラセボに相対してほてりの一致する改善が見られなかった。
【0018】
非医薬治療には、Tc及び周囲温度を低下させる方法、例えば、層に服を着たり、ファン或いは空気調節を用いること、体重減少、禁煙、及び緩和方法が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
鋤鼻器及びボメロフェリン
鋤鼻器(“VNO”;“ヤコブソン器官”としても知られる)は、ヒトを含むほとんどの脊椎動物に見られる両側化学感覚器である。哺乳動物において、この器官は、鼻孔を通って接近することができ(鼻中隔の下縁に見られる一組の盲目管状憩室として)、ほとんどの種においてフェロモン受容と関連している。上口蓋に位置する、鋤鼻器の神経上皮の軸索は、鋤鼻神経を形成し、脳の視床下部及び辺縁扁桃体への直接入力を有する。遠位軸索の終末神経ニューロンもまた、VNOにおいて化学感覚受容体として役に立つことができる。この神経は、視床下部と直接シナプス結合を有する。
【0020】
鋤鼻器領域に送達されるヒトフェロモンは、局所受容体に結合し且つ生理的変化や行動的変化を誘導する脳に達する神経シグナルの引き金となる。VNOにおいて受容体に結合することができる物質である、ボメロフェリンと呼ばれるヒトフェロモンの合成類似体は、VNOに空中送達される場合に、強力な生理的、薬理的、及び行動的変化を誘導することができる。この情報は、機能的磁気共鳴画像法及びポジトロン断層法を用いたヒト志願者におけるいくつかの研究によって支持され、ボメロフェリンが、生理的、薬理的及び行動的作用が統合される脳領域(視床下部、大脳辺縁系、帯状回、視床前、及び前頭前皮質)を選択的に活性化することが示されている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の実施態様は、治療的に有効な用量のステロイド剤を鋤鼻器に投与することによってほてりをもつ個体を治療するための方法に関する。ほてりは、個体がもつ閉経後或いは去勢の結果であり得る。多くの実施態様において、ほてりをもつ個体を治療するための方法は、エストレン化合物、例えば16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤を鋤鼻器に投与することによって提供される。他の実施態様において、ステロイド剤を含有する医薬組成物は、ほてりをもつ個体を治療するために用いることができる。実施態様は、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤を鋤鼻器に投与することによって閉経後或いは去勢によるほてりをもつ女性或いは男性の個体を治療するための方法を含む。
【0022】
一実施態様において、ほてりをもつ去勢された男性を治療するための方法であって、治療的に有効な用量の16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤を去勢された男性に鋤鼻器に投与することを含む、前記方法を提供する。ステロイド剤は、ほてりの始まりに去勢された男性に投与されてもよく、或いは毎日の予定で去勢された男性に投与されてもよい。ある例において、ステロイド剤は毎日の予定の間に1日2〜8回投与されてもよく、他の例において、毎日の予定の間に1日3〜5回、例えば1日4回投与されてもよい。いくつかの実施形態において、治療的に有効な用量のステロイド剤は、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを約100ng(ナノグラム)〜約4,000ng、好ましくは約200ng〜約3,000ng、より好ましくは約400ng〜約1,600ng、例えば、約800ngの濃度或いは量で含有する。
【0023】
ある実施態様において、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤は、去勢された男性の鋤鼻器に局所的に投与されてもよい。一実施態様において、鋤鼻器は、投与の間、ステロイド剤を含有する鼻内噴霧或いは鼻内粉末噴霧にさらされてもよい。鼻内噴霧は、ステロイド剤及び水を含有してもよく、更に少なくとも1つの賦形剤を含有してもよい。賦形剤は、プロピレングリコール、エタノール、又はこれらの混合物であってもよい。他の例において、鼻内粉末噴霧は、ステロイド剤のエアゾール微粒子を含有してもよい。他の例において、鋤鼻器は、投与の間、ステロイド剤を含有するクリーム、ゲル、又は軟膏にさらされてもよい。ステロイド剤は、更に、徐放性剤、持続放出剤、又は放出制御剤(例えば、pH又は温度依存性)で被覆されてもよい。
【0024】
ある実施態様において、去勢された男性は、外科的去勢或いは偶発的去勢で少なくとも1つの精巣が去勢された男性から取り出されたような実際の去勢を経験している。通常、去勢された男性は、実際の去勢で外科的に或いは偶発的に切除される双方の精巣をもっていた。一実施態様において、去勢された男性は癌治療が行われている。即ち、去勢された男性は、現在癌患者であってもよく、元癌患者であってもよい。癌治療は、精巣癌、前立腺癌、又は転移性前立腺癌であってもよく、実際の去勢は、癌治療の間に行われた。他の実施態様において、去勢された男性は性転換者であってもよく、去勢は外科的性転換或いは性転換手術の間に行われた。
【0025】
他の実施態様において、去勢された男性は、一時的な去勢であっても永続的な去勢であってもよい化学的去勢を経験している。ある例において、去勢された男性は、治療の間に少なくとも1つの抗アンドロゲン化合物を投与されていてもよい。抗アンドロゲン化合物は、ビカルタミド、シプロテロン、フルタミド、ニルタミド、これらの誘導体、これらの塩、又はこれらの組み合わせであってもよい。他の例において、去勢された男性は、治療の間に少なくとも1つの黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト化合物を投与されていてもよい。黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト化合物は、ブセレリン、ゴセレリン、ロイプロリド、トリプトレリン、これらの誘導体、これらの塩、又はこれらの組み合わせであり得る。他の例において、化学的に去勢された男性は、前立腺癌、転移性前立腺癌、又は脳腫瘍のような癌治療が行われていてもよい。
【0026】
一例において、去勢された男性は、癌治療の間又は癌治療後に一時的に去勢されてもよい。或はまた、去勢された男性は、癌治療の間又は癌治療後に永久に去勢されてもよい。ある場合には、去勢された男性は、性的な能力を低下させる治療の間に化学的に去勢されていてもよく、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤を投与することによって治療することができるほてりをもっている。
【0027】
他の実施態様において、ほてりをもつ個体を治療するための方法であって、個体の鼻腔内に治療的に有効な量のステロイド剤を投与する段階であって、ステロイド剤が鼻腔神経上皮細胞で表面上の受容体に特異的に結合して、ほてりを緩和し、且つ鼻腔神経上皮細胞が嗅上皮以外の組織の一部である、前記段階を含む、前記方法が提供される。個々の例において、ほてりをもつ去勢された男性を治療するための方法であって、去勢された男性の鼻腔内に治療的に有効な量のステロイド剤を投与する段階であって、ステロイド剤が去勢された男性の鼻腔神経上皮細胞の表面上の受容体に特異的に結合して、ほてりを緩和する前記段階を含む、前記方法が提供される。
一実施態様において、ほてりを治療するためのステロイド剤は、下記の化学式を有するエストレン化合物である:
【0028】
【化1】


(式中、R1は、1つの水素原子、2つの水素原子、メチル、メチレン、1つのハロゲン原子、及び2つのハロゲン原子より選ばれてもよく; R2は、存在しないか又は水素及びメチルより選ばれてもよく; R3は、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、ベンゾイル、シピオニル、グルクロニド、及びスルホニルより選ばれてもよく; R4は、水素、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、及びハロより選ばれてもよく; R5は、存在しないか又は水素、ヒドロキシ、低級アルコキシ、及び低級アシルオキシより選ばれてもよく; R6は、水素又はハロゲンであり;“a”は、ステロイドの環Aの選択できる芳香族不飽和を表すか、又は“b”、“c”、及び“d”は、各々選択できる二重結合であり;“e”、“f”、“g”、“h”、“i”、及び“j”は、各々選択できる二重結合であり;“e”は、C16及びC17とエポキシ環を形成してもよい)。
【0029】
一例において、“a”は存在してもよく、“g”、“h”、又は“i”は、必要により二重結合であってもよい。更に、“h”及び“i”は、いずれも二重結合であってもよい。他の例において、“b”は、二重結合であってもよい。他の例において、“j”は、二重結合であってもよい。他の例において、“c”は、いずれも二重結合であってもよい。他の例において、“c”及び“d”は、二重結合であってもよい。他の例において、R2は、メチルであってもよく、“e”は、二重結合であってもよい。
【0030】
ある例において、エストレン化合物は、エストラ-4,16-ジエン-3-オン; エストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3-オール; エストラ-4,16-ジエン-3α-オール; エストラ-4,9(10),16-トリエン-3-オン; エストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3-オール-6-オン; 3-メトキシルエストラ-2,5(10),16-トリエン; エストラ-5(10),16-ジエン-3α-オール; 及びエストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3,6α-ジオールより選ばれてもよい。他の例において、R5は、メチルであってもよく、必要により、エストレン化合物は、エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール; エストラ-1,3,5(10),6-テトラエン-3-オール; 及びエストラ-1,3,5(10),7-テトラエン-3-オールより選ばれてもよい。他の例において、R1は、メチレンであってもよく、必要により、エストレン化合物は、17-メチレンエストラ-1,3,5(10),6,8(9)ヘキサエン-3-オールであってもよい。
【0031】
他の例において、R1はメチレン又は1つの水素原子であってもよく、R2はメチルである。例において、更に、“f”は、二重結合であってもよく、R2は、メチルである。エストレン化合物の個々の例は、1,3,5(10)16-エストラテトラエン-3-オールメチルエーテル; 1,3,5(10),16-エストラテトラエン-3-オール; 1,3,5(10),16-エストラテトラエン-3-イルアセテート; 及び1,3,5(10),16-エストラテトラエン-3-イルプロピオネートより選ばれてもよい。一例において、エストレン化合物は、1,3,5(10),16-エストラテトラエン-3-オールであってもよい。他の例において、エストレン化合物は、エストラ-4,16-ジエン-10β-オール-3-オンであってもよい。追加の例において、“e”は、C16及びC17を有するエポキシ環を形成し、必要により、エストレン化合物は、16α,17α-エポキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オールであってもよく、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンであってもよい。
【0032】
他の実施態様において、約50ng/dL以下のテストステロンレベルを有し且つほてりをもつ男性個体を治療するための方法であって、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有する治療的に有効な用量のステロイド剤を男性個体に鋤鼻器投与することを含む、前記方法が提供される。ある例において、男性個体のテストステロンレベルは、約20ng/dL以下であってもよい。
【0033】
ステロイド剤は、ほてりの始まりに男性個体に投与されてもよく、或いは、毎日の予定で男性個体に投与されてもよい。ある例において、ステロイド剤は毎日の予定の間に1日2〜8回投与されてもよく、他の例において、毎日の予定の間に1日3〜5回、例えば1日4回投与されてもよい。ある実施態様において、治療的に有効な用量のステロイド剤は、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを約100ng〜約4,000ng、好ましくは約200ng〜約3,000ng、より好ましくは約400ng〜約1,600ng、例えば、約800ngの濃度又は量で含有する。他の実施態様において、男性個体は、実際の去勢或いは化学的去勢を有する去勢された男性であり得る。
【0034】
他の実施態様において、閉経後にほてりをもつ個体を治療するための方法であって、治療的に有効な用量のエストレン化合物(例えば、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オン)を含有するステロイド剤を個体に鋤鼻器投与することを含む、前記方法が提供される。ある例において、男性個体のテストステロンレベルは、約20ng/dL以下であってもよい。ほてりをもつ個体が受ける閉経後は、薬剤によって誘導された閉経後、外科的に誘導された閉経後、又は自然に発生する閉経後であってもよい。ステロイド剤で治療される個体は、女性又は男性であってもよい。
【0035】
ある例において、薬剤によって誘導された閉経後によるほてりをもつ男性個体は、ステロイド剤を投与することによって治療されてもよい。他の例において、薬剤によって誘発されたほてりをもつ男性個体は、本明細書に記載されるステロイド剤を投与することによって治療されてもよい。ほてりを誘発する薬剤は、抗アンドロゲン化合物をアンドロゲン依存性治療を受けている男性個体に投与することから誘導される薬剤であり得る。
【0036】
他の例において、外科的に誘導された閉経後によるほてりをもつ女性個体は、ステロイド剤を投与することによって治療されてもよい。ある例において、女性個体は、摘出手術を受けていてもよく、さもなければ完全に或いは又は少なくとも1つの女性生殖器、例えば、子宮、卵巣、輪卵管、及び/又は他の女性生殖器の一部を単に欠いている。女性個体は、例えば、子宮摘出の間に、手術が行われていてもよい。このような手術は、一般的には、ほてりを生じるホルモンレベルにおいてかなりの変化が女性個体に残る。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施態様は、治療的に有効な用量のステロイド剤を鋤鼻器に投与することによってほてりをもつ個体を治療するための方法に関する。ほてりをもつ個体には、閉経後の女性及び更年期以降の男性、並びに去勢された男性及び、例えば子宮摘出術で、子宮、卵巣、輪卵管、及び/又は他の女性生殖器の摘出を受けた女性が含まれる。
【0038】
ある実施態様において、ほてりをもつ個体を治療するための方法は、エストレン化合物、例えば、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤を鋤鼻器に投与することによって提供される。他の実施態様において、ステロイド剤を含有する医薬組成物が、ほてりをもつ個体を治療するために用いられてもよい。実施態様は、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤を鋤鼻器に投与してほてりを緩和させることによって閉経後或いは去勢によるほてりをもつ女性或いは男性の個体を治療する方法を含む。
【0039】
一実施態様において、去勢された男性又はほてりをもつ他の個体を治療するための方法であって、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有する治療的に有効な用量のステロイド剤を去勢された男性に鋤鼻器投与することを含む、前記方法が提供される。ステロイド剤は、去勢された男性又はほてりの始まりに他の個体に投与されてもよく、或いは、毎日の予定で去勢された男性に投与されてもよい。16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤は、去勢された男性或いは他の個体に治療的に有効な用量を鋤鼻器に投与した直後に、ほてりを緩和するか或いは防止する作用の急速な開始、例えば約30秒〜約3分以内の時間を有する。
【0040】
ある例において、ステロイド剤は、毎日の予定の間に1日2〜8回個体に投与されてもよく、他の例において、毎日の予定の間に1日3〜5回、例えば1日4回個体に投与されてもよい。ある実施態様において、治療的に有効な用量のステロイド剤は、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを100ng(ナノグラム)〜約4,000ng、好ましくは約200ng〜約3,000ng、より好ましくは約400ng〜約1,600ng、例えば、約800ngの濃度又は量で含有する。
【0041】
ある実施態様において、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤は、去勢された男性又は他の個体の鋤鼻器に局所的に投与されてもよい。一実施態様において、鋤鼻器は、投与の間、ステロイド剤を含有する鼻内噴霧又は鼻内粉末噴霧にさらされてもよい。鼻内噴霧は、ステロイド剤及び水を含有し、更に、少なくとも1つの賦形剤を含有してもよい。賦形剤は、プロピレングリコール、エタノール、又はこれらの混合物であってもよい。他の例において、鼻内粉末噴霧は、ステロイド剤のエアゾール微粒子を含有してもよい。他の例において、鋤鼻器は、投与の間、ステロイド剤を含有するクリーム、ゲル、又は軟膏にさらされてもよい。ステロイド剤は、更に、徐放性剤、持続放出剤、又は放出制御剤で被覆されてもよい。
【0042】
ある実施態様において、去勢された男性は、外科的去勢或いは偶発的去勢で少なくとも1つの精巣が去勢された男性から取り出されたような実際の去勢を経験している。通常、去勢された男性は、実際の去勢で外科的に或いは偶発的に切除される双方の精巣をもっていた。一実施態様において、去勢された男性は癌治療が行われている。即ち、去勢された男性は、現在癌患者であってもよく、元癌患者であってもよい。癌治療は、精巣癌、前立腺癌、又は転移性前立腺癌であってもよく、実際の去勢は、癌治療の間に行われた。他の実施態様において、去勢された男性は性転換者であってもよく、去勢は外科的性転換或いは性転換手術の間に行われた。
【0043】
他の実施態様において、去勢された男性は、一時的な去勢であっても永続的な去勢であってもよい化学的去勢を経験している。ある例において、去勢された男性は、治療の間に少なくとも1つの抗アンドロゲン化合物を投与されていてもよい。抗アンドロゲン化合物は、ビカルタミド、シプロテロン、フルタミド、ニルタミド、これらの誘導体、これらの塩、又はこれらの組み合わせであってもよい。他の例において、去勢された男性は、治療の間に少なくとも1つの黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト化合物を投与されていてもよい。黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト化合物は、ブセレリン、ゴセレリン、ロイプロリド、トリプトレリン、これらの誘導体、これらの塩、又はこれらの組み合わせであり得る。他の例において、化学的に去勢された男性は、前立腺癌、転移性前立腺癌、又は脳腫瘍のような癌治療が行われていてもよい。
【0044】
一例において、去勢された男性は、癌治療の間又は癌治療後に一時的に去勢されてもよい。或はまた、去勢された男性は、癌治療の間又は癌治療後に永久に去勢されてもよい。ある場合には、去勢された男性は、性的な能力を低下させる治療の間に化学的に去勢されていてもよく、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤を投与することによって治療することができるほてりをもっている。
【0045】
他の実施態様において、ほてりをもつ個体を治療するための方法であって、個体の鼻腔内に治療的に有効な量のステロイド剤を投与する段階であって、ステロイド剤が鼻腔神経上皮細胞で表面上の受容体に特異的に結合して、ほてりを緩和し、且つ鼻腔神経上皮細胞が嗅上皮以外の組織の一部である、前記段階を含む、前記方法が提供される。個々の例において、ほてりをもつ去勢された男性を治療するための方法であって、去勢された男性の鼻腔内に治療的に有効な量のステロイド剤を投与する段階であって、ステロイド剤が去勢された男性の鼻腔神経上皮細胞の表面上の受容体に特異的に結合して、ほてりを緩和する前記段階を含む、前記方法が提供される。
【0046】
一実施態様において、ほてりを治療するためのステロイド剤は、下記の化学式を有するエストレン化合物である:
【化2】


(式中、R1は、1つの水素原子、2つの水素原子、メチル、メチレン、1つのハロゲン原子、及び2つのハロゲン原子より選ばれてもよく; R2は、存在しないか又は水素及びメチルより選ばれてもよく; R3は、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、ベンゾイル、シピオニル、グルクロニド、及びスルホニルより選ばれてもよく; R4は、水素、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、及びハロより選ばれてもよく; R5は、存在しないか又は水素、ヒドロキシ、低級アルコキシ、及び低級アシルオキシより選ばれてもよく; R6は、水素又はハロゲンであり;“a”は、ステロイドの環Aの選択できる芳香族不飽和を表すか、又は“b”、“c”、及び“d”は、各々選択できる二重結合であり;“e”、“f”、“g”、“h”、“i”、及び“j”は、各々選択できる二重結合であり;“e”は、C16及びC17とエポキシ環を形成してもよい)。
【0047】
一例において、“a”は存在してもよく、“g”、“h”、又は“i”は、必要により二重結合であってもよい。更に、“h”及び“i”は、いずれも二重結合であってもよい。他の例において、“b”は、二重結合であってもよい。他の例において、“j”は、二重結合であってもよい。他の例において、“c”は、いずれも二重結合であってもよい。他の例において、“c”及び“d”は、二重結合であってもよい。他の例において、R2は、メチルであってもよく、“e”は、二重結合であってもよい。
【0048】
ある例において、エストレン化合物は、エストラ-4,16-ジエン-3-オン; エストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3-オール; エストラ-4,16-ジエン-3α-オール; エストラ-4,9(10),16-トリエン-3-オン; エストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3-オール-6-オン; 3-メトキシルエストラ-2,5(10),16-トリエン; エストラ-5(10),16-ジエン-3α-オール; 及びエストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3,6α-ジオールより選ばれてもよい。他の例において、R5は、メチルであってもよく、必要により、エストレン化合物は、エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール; エストラ-1,3,5(10),6-テトラエン-3-オール; 及びエストラ-1,3,5(10),7-テトラエン-3-オールより選ばれてもよい。他の例において、R1は、メチレンであってもよく、必要により、エストレン化合物は、17-メチレンエストラ-1,3,5(10),6,8(9)ヘキサエン-3-オールであってもよい。
【0049】
他の例において、R1はメチレン又は1つの水素原子であってもよく、R2はメチルである。例において、更に、“f”は、二重結合であってもよく、R2は、メチルである。エストレン化合物の個々の例は、1,3,5(10)16-エストラテトラエン-3-オール-ジメチルエーテル; 1,3,5(10),16-エストラテトラエン-3-オール; 1,3,5(10),16-エストラテトラエン-3-イルアセテート; 及び1,3,5(10),16-エストラテトラエン-3-イルプロピオネートより選ばれてもよい。一例において、エストレン化合物は、1,3,5(10),16-エストラテトラエン-3-オールであってもよい。他の例において、エストレン化合物は、エストラ-4,16-ジエン-10β-オール-3-オンであってもよい。追加の例において、“e”は、C16及びC17とエポキシ環を形成し、必要により、エストレン化合物は、16α,17α-エポキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オールであってもよく、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンであってもよい。
【0050】
他の実施態様において、約50ng/dL以下のテストステロンレベルを有し且つほてりをもつ男性個体を治療するための方法であって、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有する治療的に有効な用量のステロイド剤を男性個体に鋤鼻器投与することを含む、前記方法が提供される。ある例において、男性個体のテストステロンレベルは、約20ng/dL以下であってもよい。
【0051】
ステロイド剤は、ほてりの始まりに男性個体に投与されてもよく、或いは、毎日の予定で男性個体に投与されてもよい。ある例において、ステロイド剤は毎日の予定の間に1日2〜8回投与されてもよく、他の例において、毎日の予定の間に1日3〜5回、例えば1日4回投与されてもよい。ある実施態様において、治療的に有効な用量のステロイド剤は、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを約100ng〜約4,000ng、好ましくは約200ng〜約3,000ng、より好ましくは約400ng〜約1,600ng、例えば、約800ngの濃度又は量で含有する。他の実施態様において、男性個体は、実際の去勢或いは化学的去勢を有する去勢された男性であり得る。
【0052】
他の実施態様において、閉経後にほてりをもつ個体を治療するための方法であって、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有する治療的に有効な用量のステロイド剤を個体に鋤鼻器投与することを含む、前記方法が提供される。ほてりをもつ個体が受ける閉経後は、薬剤によって誘導された閉経後、外科的に誘導された閉経後、又は自然に発生する閉経後であってもよい。ステロイド剤で治療される個体は、女性又は男性であってもよい。
【0053】
ある例において、薬剤によって誘導された閉経後によるほてりをもつ男性個体は、ステロイド剤を投与することによって治療されてもよい。他の例において、薬剤によって誘発されたほてりをもつ男性個体は、本明細書に記載されるステロイド剤を投与することによって治療されてもよい。ほてりを誘発する薬剤は、抗アンドロゲン化合物をアンドロゲン依存性治療を受けている男性個体に投与することから誘導される薬剤であり得る。
【0054】
他の例において、外科的に誘導された閉経後によるほてりをもつ女性個体は、ステロイド剤を投与することによって治療されてもよい。ある例において、女性個体は、例えば、子宮摘出の間に、子宮、卵巣、輪卵管、及び/又は他の女性生殖器の一部を切除する手術を受けていてもよい。このような手術は、一般的には、ほてりを生じるホルモンレベルにおいてかなりの変化が女性個体に残る。
【0055】
ある実施態様において、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤は、ほてりのサーカディアンリズム集団に相関した頻度で投与されてもよい。他の実施態様において、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤は、去勢された男性のほてりのサーカディアンリズムに相関した頻度で投与されてもよい。
【0056】
“ほてり”或いは“ほてり群”には、閉経後の個体や去勢された男性において感じられるように、場合により潮紅及び発汗を伴ってもよく、更に、場合により頻拍及び冷えを伴ってもよい、熱の一時的な感覚が含まれる。その用語には、“顔面潮紅”及び“寝汗”も含まれる。
【0057】
“閉経期前後の女性”は、月経の部分的であるが、まだ完全でない停止を経験した思春期以降の女性である。“閉経後の女性”は、月経の完全な停止を経験した思春期後の女性である。“閉経期の女性”は、閉経期前後の女性及び閉経後の女性双方を含む。これらの女性の閉経は、自然であってもよく(例えば年齢による)、外科的であってもよく(例えば双方の卵巣の切除による)、化学的治療によって誘導されてもよい(例えばエストロゲン拮抗薬、例えば、フルベストラント、ラロキシフェン、タモキシフェン、トレミフィンでの治療による)。
【0058】
“去勢された人”、“去勢された男性”、又は“去勢手術を受けた男性”は、実際の去勢又は化学的去勢を受けた思春期以降の男性である。化学的去勢は、少なくとも1つの抗アンドロゲン化合物、例えば、ビカルタミド、シプロテロン、フルタミド、ニルタミド、これらの塩、これらの誘導体、又はこれらの組み合わせを投与することが含まれてもよい。化学的去勢は、また、少なくとも一つの黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト化合物、例えば、ブセレリン、ゴセレリン、ロイプロリド、トリプトレリ、これらの塩、これらの誘導体、又はこれらの組み合わせを投与することが含まれてもよい。
【0059】
一般に、正常な成人男性は、50ng/dLを超えるテストステロンレベル又は濃度を有する。しかしながら、去勢男性、又は低テストステロン濃度を有する他の男性個体は、約50ng/dL以下、例えば、約35ng/dL以下、約20ng/dL以下、又は約10ng/dL以下さえものテストステロンレベル又は濃度を有してもよい。これらの低テストステロン濃度を有する去勢された男性、更年期以降の男性、及び他の男性個体は、しばしばほてりを感じる。それ故、本明細書の一実施態様において、約50ng/dL以下のテストステロンレベル又は濃度を有し且つほてりをもつ男性個体は、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有する治療的に有効な用量のステロイド剤を鋤鼻器に投与することによって治療されてもよい。
【0060】
“鋤鼻器投与”或いは“鋤鼻器に投与する”は、ヒト鋤鼻器への投与である。臨床状況において、これは、鋤鼻器に本質的に単独でステロイド剤を投与するように特に設計されたプローブの使用によって達成されてもよい。ステロイド剤を鋤鼻的に投与するのに有効なプローブは、共同譲渡された米国特許第5,303,703号に記載されており、この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。しかしながら、より一般的には、鋤鼻器投与には、ほとんど鋤鼻器に対してステロイド剤を向けることが望ましい方法での鼻腔内投与を含む。一例において、プローブは、ほてりを緩和する16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンのようなエストレン化合物を含有するステロイド剤を鋤鼻器に投与するために用いられてもよい。
【0061】
“治療的に有効な量”は、ほてりをもつ個体の鋤鼻器に投与される場合、ほてりの治療を行うのに充分な量のステロイド剤である。一実施態様において、ほてりを緩和するのに治療的に有効な量は、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンのようなエストレン化合物を含有する。
【0062】
ほてりを“治療すること”或いはほてりの“治療”には、以下の1つ以上が含まれる:
(1)ほてりの発生を阻止すること、
(2)発生するときにほてりを軽減すること、及び
(3)ほてりの症状を緩和すること。
エストレン化合物16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンの調製は、共同譲渡された米国特許第6,057,439号に記載されており、この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。ステロイド化合物16α,17α-エポキシ10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンは、下記の化学構造を有する:
【化3】

【0063】
単回(100μg/ラットまで、400μg/ウサギまで、600μg/イヌまで)及び反復(50μg/ラット/日まで、300μg/イヌ/日まで)鼻腔内用量及び単回(ラット、マウス、ウサギにおいて2.5mg/kgまで)及び反復(ラット及びウサギにおいて2.5mg/kg/日まで)静脈内用量の16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンによるラット、マウス、ウサギ及びイヌにおける急性及び多回(28日間)毒性実験は、化合物が試験されるすべての種において充分に許容されることを示し、死又は有害な臨床的症状又は実験パラメータ或いは病状パラメータに対する作用は見られなかった。
【0064】
遺伝子毒性試験は、エームズ復帰突然変異分析及び生体内骨髄小核試験において調べた場合に化合物の変異原性潜在力或いは染色体異常誘発能の証拠を示さなかった。妊娠しているウサギの生殖毒性実験は、器官形成期の間、投与される2.5mg/kg/日までの静脈内投与量の化合物に起因し得る母体又はリターパラメーターに対して悪影響を示さなかった。化合物による臨床前の薬物動態学的実験は、化合物が100μg/ラット、400μg/ウサギ、600μg/イヌまでの反復又は単回の段階的鼻腔内用量によって投与される場合に非常に低い全身暴露を示した。2.5mg/kgまでの単回反復静脈内投与量をラット、ウサギ又はイヌに投与した場合、化合物の血漿濃度は一般的には用量に比例し、急速に低下した。
【0065】
14人の生殖年齢の女性のグループにおいて、1投与当たり500ngの16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有する鼻内噴霧の鼻腔内投与(10μg/mLの16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンと2%プロピレングリコール及び2%エタノールとの水溶液50μlのバロア鼻内噴霧ポンプによる投与)は、呼吸数、筋電図活動、皮膚電位(皮膚コンダクタンス)、及びコア体温の統計的に有意な低下; 及び迷走神経緊張の統計的に有意な増加; 及び賦形剤に比較して心拍数の統計的に有意でない増加を引き起こした。
【0066】
また、生殖年齢の女性の他の試験において、1,600ngの16α,17α-エポキシ10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有する鼻内噴霧の鼻腔内投与(16μg/mLの16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンと2%プロピレングリコール及び2%エタノールとの水溶液50μLのバロア鼻内噴霧ポンプによる1鼻孔当たり1投与)は、9±2.5分間の持続した1±0.23℃のコア体温の急速な(待ち時間0.5〜4分間)低下を引き起こした。それは、また、投与の約5分以内に、交感神経アドレナリン作動系の緊張(生理的洞性不整脈を測定することによって評価される)を低下させ、効果は、約15分間〜約20分間持続した。コア体温を低下させることを含むこれらの結果は、ほてりの治療における16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンの鋤鼻器投与の効能を示す。
【0067】
製剤及び投与
16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤は、適切な経路によって鋤鼻器に投与することができる。投与経路としては、局所適用(例えば、経皮又は好ましくは鼻腔内クリーム又はゲル)、鼻内噴霧、鼻内粉末噴霧等が含まれるが、これらに限定されない。医薬製剤は、一般的には、粘膜全体に薬剤を投与するように設計された製剤又は経皮製剤である。
【0068】
これらの製剤の適切な送達デバイスは、アレルギーや喘息のためのステロイド、及び子宮内膜症のためのLHRHアンタゴニストナファレリンの鼻腔内送達の一般使用における定量鼻内噴霧ポンプである。このようなポンプは、Valois Pharma社を含む多くの製造業者によって製造されている。製剤が副鼻腔に流れ込むか又は鼻から落ちる過剰を含まず効率的に送達されるように液体の容積が供給され、50μLの容積が都合のいいことがわかったが、より大きい又はより小さい容積も良好である。
【0069】
一実施態様において、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有するステロイド剤の治療的に有効な用量は、約100ng〜約4,000ng、好ましくは約200ng〜約3,000ng、より好ましくは約400ng〜約1,600ng、例えば約800ngであってもよい。他の実施態様において、医薬組成物は、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有する治療的に有効な用量のステロイド剤を含有する。医薬組成物は、約100ng〜約4,000ng、好ましくは約200ng〜約3,000ng、より好ましくは約400ng〜約1,600ng、例えば、約800ngの濃度のステロイド剤を含有することができる。医薬組成物は、鼻内噴霧製剤、鼻内粉末噴霧製剤、クリーム、ゲル、軟膏、懸濁液、又は溶液であり得る。
【0070】
一実施態様において、鋤鼻器は、ほてりを防止するか又は緩和する投与の間、ステロイド剤を含有する鼻内噴霧又は鼻内粉末噴霧にさらされてもよい。一例において、鼻内噴霧製剤は、ステロイド剤(例えば、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有する)及び水を含有してもよい。他の例において、鼻内噴霧製剤は、更に、少なくとも1つの医薬的に許容され得る賦形剤を含有してもよい。賦形剤は、グリコールエーテル、アルコール、又はグリコールエーテルとアルコールの混合物であってもよい。例えば、賦形剤は、プロピレングリコール、エタノール、又はこれらの混合物であってもよい。鼻内噴霧の液体混合物は、約1%〜約10%、好ましくは約2%〜約6%、より好ましくは約3%〜約5%、例えば、約4%の容積濃度の賦形剤を有してもよい。鼻内噴霧製剤の液体混合物は、約0.5%〜約5%、好ましくは約1%〜約3%、より好ましくは約1.5%〜約2.5%、例えば、約2%の容積濃度のプロピレングリコールと、約0.5%〜約5%、好ましくは約1%〜約3%、より好ましくは約1.5%〜約2.5%、例えば、約2%の容積濃度のエタノールを有してもよい。一例において、鼻内噴霧は、約96容積%の水、約2容積%のプロピレングリコール及び約2容積%のエタノールを含有する液体混合物の中にステロイド剤を含有する。鼻内噴霧製剤は、また、防腐剤、例えば塩化ベンザルコニウムを含有することができる。鼻内噴霧製剤の液体混合物は、約0.1%〜約0.001%、例えば、約0.01%の防腐剤の質量/容積濃度を有してもよい。ステロイド剤は、液体混合物の中に溶解されても懸濁されてもよい。
【0071】
他の例において、鼻内粉末噴霧は、ステロイド剤(例えば、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシストラ-4-エン-3-オンを含有する)のエアゾール微粒子を含有することができる。ステロイド剤のエアゾール微粒子は、例えば、亜酸化窒素、窒素、二酸化炭素、種々のヒドロフルオロカーボン類、又はこれらの混合物のような加圧ガス供給量によって投与されてもよい。
【0072】
他の例において、鋤鼻器は、ほてりを防止するか又は緩和する投与の間、(例えば、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含有する)ステロイド剤を含有しているクリーム、ゲル、又は軟膏剤にさらされてもよい。ステロイド剤は、更に、例えば、ステロイド剤を特定のpH又は温度で放出することによって、徐放性剤、持続放出剤、又は放出制御剤で被覆されてもよい。
【0073】
鋤鼻器に実際に達するのはこの投与量の数パーセントまでとなるので、鋤鼻器に本質的に単独で投与される場合の治療的に有効な量は、おそらく20倍より少ないと予想される。鼻腔内及び直接鋤鼻器双方のこれらの用量は、鋤鼻器によって仲介されるもの以外の全身作用を引き起こすレベルよりかなり低いものである。
【0074】
鋤鼻器に投与される16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンの急速な開始のために、化合物は必要に応じて、例えば、個体がほてりの開始を感じるとすぐに投与されて、そのほてりの症状を軽減し且つ緩和することができることが予想される。また、化合物は、1日を通して予定の方法、例えば、約2回/日〜8回/日、例えば、約3回/日〜5回/日、例えば、4回/日で投与されて、ほてりの発生を防止することができることが予想される。このような予定の投与は、例えば、午前8時、正午、午後4時、及び午後8時(4回/日投与の場合)に均一な予定で又は不均一な予定であってもよく、この場合、投与頻度は、治療されている症候性の集団における或いは個体のほてりのサーカディアンリズムと相関する。従って、例えば、投与は、ほてりの発生頻度が最も大きいときに投与を最大にするために午前9時、午後3時、午後5時、及び午後7時(4回/日の場合)であってもよい。当然、予定の投与が用いられている場合であっても、ほてりがなお感じられる場合には必要に応じて化合物を投与することが可能である。
【0075】
上記は本発明の実施態様に関するが、本発明の他の多くの実施態様は本発明の基本的な範囲を逸脱することなく構成されてもよく、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほてりをもつ去勢された男性を治療するための方法であって、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含む治療的に有効な用量のステロイド剤を去勢された男性に鋤鼻器投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
ステロイド剤が、ほてりの始まりに去勢された男性に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステロイド剤が、毎日の予定で去勢された男性に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステロイド剤が、毎日の予定の間に1日2〜8回投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステロイド剤が、毎日の予定の間に1日3〜5回投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
治療的に有効な用量のステロイド剤が、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを約100ng〜約4,000ngの濃度で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
濃度が、約400ng〜約1,600ngである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステロイド剤が、去勢された男性の鋤鼻器に局所的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステロイド剤が、更に、徐放性剤で被覆される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
鋤鼻器が、投与の間、ステロイド剤を含むクリーム、ゲル、又は軟膏にさらされる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
鋤鼻器が、投与の間、ステロイド剤を含む鼻内噴霧又は鼻内粉末噴霧にさらされる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
鼻内噴霧が、ステロイド剤及び水を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
鼻内噴霧が、更に、少なくとも1つの賦形剤を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの賦形剤が、プロピレングリコール、エタノール、又はこれらの混合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
鼻粉末噴霧が、ステロイド剤のエアゾール微粒子を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
去勢された男性が、実際の去勢を経験している、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
去勢された男性が、実際の去勢の間に外科的に切除された少なくとも1つの精巣を有していた、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
去勢された男性が、実際の去勢の間に外科的に切除された双方の精巣を有していた、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
去勢された男性が、癌治療が行われていた、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
癌治療が、精巣癌、前立腺癌、又は転移性前立腺癌に対するものであった、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
去勢された男性が、性転換者である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
去勢された男性が、化学的去勢を経験している、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
去勢された男性が、治療の間、少なくとも1つの抗アンドロゲン化合物を投与されていた、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの抗アンドロゲン化合物が、ビカルタミド、シプロテロン、フルタミド、ニルタミド、これらの誘導体、これらの塩、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
去勢された男性が、治療の間、少なくとも1つの黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト化合物を投与されていた、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つの黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト化合物が、ブセレリン、ゴセレリン、ロイプロリド、トリプトレリン、これらの誘導体、これらの塩、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
去勢された男性が、癌治療が行われていた、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
癌治療が、前立腺癌又は転移性前立腺癌に対するものであった、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
去勢された男性が、癌治療の間又は癌治療後に一時的に去勢される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
去勢された男性が、癌治療の間又は癌治療後に永久に去勢される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
去勢された男性が、性的能力を低下させる治療の間にステロイド剤を投与されている、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
去勢された男性が、性転換者である、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
ほてりをもつ去勢された男性を治療するための方法であって、去勢された男性の鼻腔内に治療的に有効な量のステロイド剤を投与する段階であって、ステロイド剤が鼻腔神経上皮細胞の表面上の受容体に特異的に結合して、ほてりを緩和し、且つ鼻腔神経上皮細胞が嗅上皮以外の組織の一部である、前記段階を含む、前記方法。
【請求項34】
ステロイド剤が下記の化学式を有するエストレン化合物である、請求項33に記載の方法:
【化1】


(式中、R1は、1つの水素原子、2つの水素原子、メチル、メチレン、1つのハロゲン原子、及び2つのハロゲン原子からなる群より選ばれ;
R2は、存在しないか又は水素及びメチルからなる群より選ばれ;
R3は、オキソ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、ベンゾイル、シピオニル、グルクロニド、及びスルホニルからなる群より選ばれ;
R4は、水素、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アシルオキシ、及びハロからなる群より選ばれ;
R5は、存在しないか又は水素、ヒドロキシ、低級アルコキシ、及び低級アシルオキシからなる群より選ばれ;
R6は、水素又はハロゲンであり;
“a”は、ステロイドの環Aの選択できる芳香族不飽和を表すか、又は“b”、“c”、及び“d”は、各々選択できる二重結合であり;
“e”、“f”、“g”、“h”、“i”、及び“j”は、各々選択できる二重結合であり;
“e”は、また、C16及びC17とエポキシ環を形成してもよい)。
【請求項35】
“a”が存在し、“g”、“h”、又は“i”が、選択できる二重結合である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
“h”及び“i”が、いずれも二重結合である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
“b”が、二重結合である、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
“j”が、二重結合である、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
“c”が、二重結合である、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
“c”及び“d”が、二重結合である、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
R2が、メチルであり、“e”が、二重結合である、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
エストレン化合物が、エストラ-4,16-ジエン-3-オン; エストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3-オール; エストラ-4,16-ジエン-3α-オール; エストラ-4,9(10),16-トリエン-3-オン; エストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3-オール-6-オン; 3-メトキシルエストラ-2,5(10),16-トリエン; エストラ-5(10),16-ジエン-3α-オール; 及びエストラ-1,3,5(10),16-テトラエン-3,6α-ジオールからなる群より選ばれる、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
R5が、メチルである、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
エストレン化合物が、エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール; エストラ-1,3,5(10),6-テトラエン-3-オール; 及びエストラ-1,3,5(10),7-テトラエン-3-オールからなる群より選ばれる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
R1が、メチレンである、請求項34に記載の方法。
【請求項46】
エストレン化合物が、17-メチレンエストラ-1,3,5(10),6,8(9)ヘキサエン-3-オールである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
R1が、メチレン又は1つの水素原子であり、R2が、メチルである、請求項34に記載の方法。
【請求項48】
“f”が、二重結合であり、R2が、メチルである、請求項34に記載の方法。
【請求項49】
エストレン化合物が、1,3,5(10)16-エストラテトラエン-3-オールメチルエーテル; 1,3,5(10),16-エストラテトラエン-3-オール; 1,3,5(10),16-エストラテトラエン-3-イルアセテート; 及び1,3,5(10),16-エストラテトラエン-3-イルプロピオネートからなる群より選ばれる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
エストレン化合物が、1,3,5(10),16-エストラテトラエン-3-オールである、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
エストレン化合物が、エストラ-4,16-ジエン-10β-オール-3-オンである、請求項34に記載の方法。
【請求項52】
“e”が、C16及びC17とエポキシ環を形成する、請求項34に記載の方法。
【請求項53】
エストレン化合物が、16α,17α-エポキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オールである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
エストレン化合物が、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
約50ng/dL以下のテストステロンレベルを有し且つほてりをもつ男性個体を治療するための方法であって、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含む治療的に有効な用量のステロイド剤を男性個体に鋤鼻器投与することを含む、前記方法。
【請求項56】
テストステロンレベルが、約20ng/dL以下である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
ステロイド剤が、ほてりの始まりに男性個体に投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
ステロイド剤が、毎日の予定で男性個体に投与される、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
ステロイド剤が、毎日の予定の間に1日2〜8回投与される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
ステロイド剤が、毎日の予定の間に1日3〜5回投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
治療的に有効な用量のステロイド剤が、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを約100ng〜約4,000ngの濃度で含む、請求項55に記載の方法。
【請求項62】
濃度が、約400ng〜約1,600ngである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
男性個体が、実際の去勢を有する去勢された男性である、請求項55に記載の方法。
【請求項64】
去勢された男性が、実際の去勢の間に外科的に切除された双方の精巣を有していた、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
去勢された男性が、癌治療が行われていた、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
癌治療が、精巣癌、前立腺癌、又は転移性前立腺癌に対するものであった、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
男性個体が、化学的去勢を経験している去勢された男性である、請求項55に記載の方法。
【請求項68】
去勢された男性が、治療の間に少なくとも1つの抗アンドロゲン化合物を投与されている、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
抗アンドロゲン化合物が、ビカルタミド、シプロテロン、フルタミド、ニルタミド、これらの誘導体、これらの塩、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
去勢された男性が、治療の間に少なくとも1つの黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト化合物を投与されている、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
黄体形成ホルモン放出ホルモンアンタゴニスト化合物が、ブセレリン、ゴセレリン、ロイプロリド、トリプトレリン、これらの誘導体、これらの塩、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
去勢された男性が、癌治療が行われていた、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
癌治療が、前立腺癌又は転移性前立腺癌に対するものであった、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
去勢された男性が、癌治療の間又は癌治療後に一時的に去勢される、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
去勢された男性が、癌治療の間又は癌治療後に永久に去勢される、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
去勢された男性が、性的能力を低下させる治療の間にステロイド剤を投与されている、請求項67に記載の方法。
【請求項77】
閉経期中のほてりを持つ個体を治療するための方法であって、16α,17α-エポキシ-10β-ヒドロキシエストラ-4-エン-3-オンを含む治療的に有効な用量のステロイド剤を個体に鋤鼻器投与することを含む、前記方法。
【請求項78】
閉経が、薬剤によって誘発された閉経、外科的に誘導された閉経、又は自然に発生する閉経である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
個体が、女性個体である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
女性個体が、外科的に誘導された閉経後によるほてりをもつ、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
女性個体が完全に或いは少なくとも1つの女性生殖器の一部を欠いている、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
少なくとも1つの女性生殖器が、子宮、卵巣、及び輪卵管からなる群より選ばれる、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
女性個体が、子宮摘出が行われている、請求項79に記載の方法。
【請求項84】
個体が、男性個体である、請求項78に記載の方法。
【請求項85】
閉経が、薬剤によって誘発された閉経である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
ほてりが、薬剤によって誘発されたほてりである、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
ほてりが、抗アンドロゲン化合物の投与からの薬剤によって誘導される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
男性個体が、アンドロゲン依存性治療を受けている、請求項84に記載の方法。

【公表番号】特表2011−518136(P2011−518136A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504180(P2011−504180)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/040102
【国際公開番号】WO2009/126825
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510269609)フェリン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】