説明

まくら木

【課題】 レールや道床等のような設置面との摩擦による摩耗が殆ど起こらず、資源を有効利用可能なまくら木の提供を目的とする。
【解決手段】 まくら木1は、長尺状の本体部2の底面6側に短尺のパッキン3を固定した構造を有する。本体部2は、長手方向にガラス長繊維を引き揃えて埋設した合成木材を加工して成形されたものである。また、パッキン3は、本体部2の加工の際に発生した合成木材の切削粉等からなる短繊維成分9と、合成ゴム等からなる耐摩耗性チップ11とを含んだ樹脂成形物であり、圧縮強度および耐摩耗性が本体部2よりも高い。まくら木1は、設置面たる橋桁Bと本体部2との間にパッキン3が介在しており、本体部2の摩耗が殆ど起こらない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールと当該レールが敷設される道床等の設置面との間に敷設されるまくら木に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、まくら木は、レールと当該レールが敷設される道床等の設置面との間に配置され、レール側から作用する荷重を道床側に分散し、支持している。従来より採用されているまくら木には、木製のものやコンクリートや樹脂発泡体を用いて作製されたものがある。まくら木は、列車等の通過に伴って道床やレールと摩擦を起こし、材質の違いによりその程度は多少異なるものの少しずつ摩耗していく。摩耗したまくら木は、新たなまくら木と交換され、大半が廃棄されている。
【0003】
摩耗等を起こし、交換されたまくら木の一部は、下記特許文献1に示すように建材等に再利用されている。
【特許文献1】特開平11−107405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のまくら木は、列車等の通過に伴って道床やレールと摩擦する部分が集中的に摩耗する傾向にある。しかし、列車運行上の安全性の観点からすると、摩耗を起こしたまくら木は、他の部分の摩耗や劣化の程度がごく僅かであっても交換せざるを得ない。摩耗などを起こして交換されたまくら木は、一部が上記特許文献1のように建材等に再利用されているが、その大半は、産業廃棄物として廃棄されており、資源の有効利用が図られていないという問題がある。
【0005】
また、従来のまくら木は、道床やレールと接触している部分に集中的に摩擦力が作用するため、当該部位における摩耗が激しく、頻繁に交換を行わねばならないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、レールや道床等のような設置面との摩擦による摩耗が殆ど起こらず、資源を有効利用可能なまくら木の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
レールと道床や橋桁等の設置面との間に配置されるまくら木は、レールから振動を受けるなどして次第に摩耗する。まくら木が摩耗を起こす部分は、設置面やレールとの接触部分に集中する。
【0008】
かかる知見に基づいて提供される請求項1に記載の発明は、長尺状のまくら木本体を備え、レールと当該レールが敷設される設置面との間に配置されるまくら木であって、前記まくら木本体には、まくら木本体よりも短尺で前記設置面およびレールのいずれか一方又は双方と前記まくら木本体との接触を防止する介在部材が一又は複数装着されていることを特徴とするまくら木である。
【0009】
本発明のまくら木は、設置面あるいはレールと前記まくら木本体との接触を防止する介在部材がまくら木本体に装着されている。そのため、本発明のまくら木は、レールや設置面とまくら木本体とが摩擦を起こさず、まくら木本体が摩耗しない。
【0010】
また、本発明のまくら木は、設置面やレールと接触する部分に配置される介在部材がまくら木本体よりも短尺である。そのため、例えば介在部材が摩耗した場合であっても、まくら木の大部分をなすまくら木本体をそのまま再利用でき、資源の有効利用に資することができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、まくら木本体と介在部材とを備え、レールと当該レールが敷設される設置面との間に配置されるまくら木であって、前記介在部材は、設置面およびレールのいずれか一方又は双方とまくら木本体との間に介在し、まくら木本体と嵌合構造を形成して一体化されており、まくら木本体は、長手方向に広がる長手面および短手方向に広がる短手面を有し、前記嵌合構造は、前記介在部材が、まくら木本体の前記長手面および短手面のいずれか一方または双方と面接触して形成されていることを特徴とするまくら木である。
【0012】
本発明のまくら木は、設置面あるいはレールと前記まくら木本体との間に介在部材が介在しているため、敷設時にまくら木本体が設置面やレールと直接的に接触しない。そのため、レールや設置面とまくら木本体との摩擦が起こらず、まくら木本体が摩耗しない。また、本発明のまくら木は、まくら木本体の摩耗が殆ど起こらないため、敷設後に介在部材が摩耗した場合であっても、まくら木本体をそのまま再利用できる。
【0013】
また、本発明のまくら木は、介在部材が、まくら木本体の前記長手面および短手面のいずれか一方または双方と面接触して嵌合構造を形成し、まくら木本体と一体化されている。そのため、本発明のまくら木は、まくら木本体の長手方向あるいは短手方向に外力が作用したり、長期的に敷設されたまま放置されても、まくら木本体と介在部材との接合強度が殆ど低下せず、レールをしっかりと支持できる。
【0014】
また、同様の課題を解決すべく提供される請求項3に記載の発明は、まくら木本体と介在部材とを備え、レールと当該レールが敷設される設置面との間に配置されるまくら木であって、前記介在部材は、設置面およびレールのいずれか一方又は双方とまくら木本体との間に介在しており、まくら木本体は、天面あるいは底面のいずれか一方に開口し、介在部材の天面あるいは底面および側面の一部又は全部に沿う形状に窪んだ開口部を有し、当該開口部に介在部材が嵌合してまくら木本体と嵌合構造を形成していることを特徴とするまくら木である。
【0015】
本発明のまくら木は、敷設時に設置面やレールと前記まくら木本体との間に介在部材が介在し、まくら木本体が設置面やレールと直接的に接触しない。そのため、本発明のまくら木は、列車の通過により振動が伝播する等してもまくら木本体はレールや設置面と摩擦せず、摩耗しない。また、本発明のまくら木は、まくら木本体の摩耗が殆ど起こらないため、摩耗した介在部材を取り除いたまくら木本体をそのまま再利用できる。
【0016】
本発明のまくら木は、まくら木本体に設けられた開口部に介在部材が嵌合して一体化されている。そのため、本発明のまくら木は、レール側から振動が伝播したり、長期的に敷設されたまま放置されても、まくら木本体と介在部材との接合強度が殆ど低下せず、レールをしっかりと支持できる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、まくら木本体と介在部材とを備え、レールと当該レールが敷設される設置面との間に配置されるまくら木であって、前記介在部材は、設置面およびレールのいずれか一方又は双方とまくら木本体との間に介在し、まくら木本体は、天面あるいは底面のいずれか一方から突出した突出部を有し、介在部材は、天面あるいは底面に前記突出部の外形に沿う形状に窪んだ開口部を有し、当該開口部に前記突出部が嵌合してまくら木本体と嵌合構造を形成していることを特徴とするまくら木である。
【0018】
本発明のまくら木についても、敷設時に介在部材がまくら木本体と設置面やレールとの間に介在し、設置面やレールがまくら木本体と直接的に接触しない。そのため、本発明のまくら木は、列車の通過による振動や外力が伝播してもレールや設置面とまくら木本体との摩擦が起こらない。そのため、本発明のまくら木は、敷設後長期にわたってまくら木本体の摩耗が殆ど起こらない。
【0019】
また、本発明のまくら木は、敷設後に介在部材が摩耗し、交換する必要が生じた場合であっても、まくら木本体は殆ど摩耗していない。そのため、本発明のまくら木は、摩耗した介在部材を取り除くことによりまくら木本体をそのまま再利用でき、資源を有効利用できる。
【0020】
本発明のまくら木は、まくら木本体の天面あるいは底面のいずれか一方から突出した突出部が介在部材側に設けられた開口部に嵌合して嵌合構造を形成し、一体化されている。そのため、本発明のまくら木は、レール側から伝播する振動や外力の影響を受けても、まくら木本体と介在部材との接合強度が殆ど低下せず、レールをしっかりと支持できる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、介在部材が、連結手段の短手方向に跨って嵌合構造部を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のまくら木である。
【0022】
本発明のまくら木は、介在部材が連結手段の短手方向に跨っているため、敷設後長期にわたってまくら木本体と介在部材との接合強度が殆ど低下しない。従って、本発明によれば、敷設後長期にわたってレールをしっかりと支持可能なまくら木を提供できる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、介在部材が、短繊維成分および耐摩耗性チップのいずれか一方または双方を含む混合体に対して硬化性樹脂を含浸させ、硬化させたものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のまくら木である。
【0024】
本発明のまくら木は、レールや設置面と接触し、摩耗が想定される介在部材に、短繊維成分および耐摩耗性チップのいずれか一方または双方を含む混合体に対して硬化性樹脂を含浸させ硬化させた、強度や耐摩耗性に優れたものを採用している。そのため、本発明のまくら木は、介在部材の摩耗が少なく、レールをしっかりと支持できる。
【0025】
上記請求項6に記載のまくら木において、耐摩耗性チップは、合成ゴム、セラミックス、金属のうちの少なくとも一種を含むものであることが望ましい。(請求項7)
【0026】
かかる構成によれば、介在部材の耐摩耗性をより一層向上でき、まくら木の交換頻度やメンテナンスに要するコストを最小限に抑制できる。
【0027】
また、上記請求項6又は7に記載のまくら木において、短繊維成分は、繊維補強された樹脂成型品を粉砕物あるいは粉体とした状態で添加されることが望ましい。(請求項8)
【0028】
かかる構成によれば、介在部材の強度や耐摩耗性をより一層向上でき、まくら木の交換頻度やメンテナンスに要するコストを最小限に抑制できる。
【0029】
また、本発明のまくら木は、介在部材が繊維補強された樹脂成型品を粉砕物あるいは粉体として添加して形成されるものである。従って、本発明によれば、例えば従来であれば交換によって廃棄されていた繊維補強されたまくら木を粉砕したものや、繊維補強されたまくら木の加工時に発生した粉体を有効利用できる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、まくら木本体と介在部材との間に弾性材が介在していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のまくら木である。
【0031】
かかる構成によれば、レール側から伝播する振動の大部分を吸収し、まくら木本体側への振動の伝播を最小限に抑制でき、まくら木本体に対する介在部材の接合強度を長期に渡って維持できる。
【0032】
請求項10に記載の発明は、まくら木本体と介在部材との間にまくら木本体側への振動の伝播を抑制する制振材が介在していることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のまくら木である。
【0033】
かかる構成によれば、レール側からまくら木本体側への振動の伝播を最小限に抑制でき、まくら木本体に対する介在部材の接合強度を長期に渡って維持できる。
【0034】
請求項11に記載の発明は、介在部材が、まくら木本体と材質が異なることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のまくら木である。
【0035】
本発明のまくら木は、介在部材とまくら木本体の材質が異なるため、固有振動数が異なる。そのため、本発明のまくら木は、介在部材に伝播する振動のまくら木本体側への伝播を最小限に抑制し、まくら木本体に対する介在部材の接合強度を長期に渡って維持できる。
【0036】
また、上記請求項1乃至11のいずれかに記載のまくら木は、介在部材が、レールとまくら木本体との間に配される短まくら木であり、レールが装着されるレール装着面に、レールの一部または全部を収納可能なレール収納部が設けられていることを特徴とするものであってもよい。(請求項12)
【0037】
請求項12に記載のまくら木は、レール収納部が、レールの延伸方向に対して傾斜した傾斜部を有し、当該傾斜部が、レールに沿う位置に配置され、レールを介在部材に固定するための固定部材と当接するものであってもよい。(請求項13)
【0038】
かかる構成によれば、固定部材を傾斜部に沿って移動させることによりレールをレール収納部内で移動させることができる。従って、本発明によれば、レールの敷設位置を容易に調整できる。
【0039】
請求項14に記載の発明は、介在部材が、レール又はタイプレートを締結する締結部材を装着可能な埋栓手段を有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のまくら木である。
【0040】
かかる構成によれば、まくら木およびレールの敷設現場において、レールやタイプレートを容易にまくら木に固定できる。従って、本発明によれば、レールの敷設作業を効率よく行えるまくら木を提供できる。
【0041】
ここで、敷設現場においてまくら木の底面側に位置する道床や橋桁等の設置面には、リベットやボルト、ナット等の何らかの突出物が露出していることがある。また、介在部材が装着されるまくら木本体には、レールを敷設するためのボルトやナット等が装着され、これらが突出して介在部材側に接触する可能性がある。このような状態でまくら木を敷設すると、突出物と介在部材とが接触してしまい、列車等が通過してまくら木に荷重が作用すると、前記した接触部に局所的に大きな荷重が作用し、場合によってはまくら木の破損に繋がるおそれがある。そのため、まくら木は、道床や橋桁等の設置面や、まくら木本体
等の他部材と介在部材との接触部分に突出物が接触しない構造とすることが望ましい。
【0042】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項15に記載の発明は、介在部材が、一又は複数の表面を有し当該表面から突出した突出部を有する他部材に面接触する接触面と、当該接触面に前記突出物を収納可能な凹部とを備えていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載のまくら木である。
【0043】
かかる構成によれば、列車の通過等に伴いまくら木に大きな荷重が作用しても、介在部材の接触面の局所に大きな応力が作用せず、これによる破損が起こらないまくら木を提供できる。
【0044】
請求項16に記載の発明は、介在部材が、レール側から作用する荷重を支持する位置に装着されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載のまくら木である。
【0045】
まくら木は、レール側から作用する荷重を支持する位置が最も摩耗しやすい。本発明のまくら木は、摩耗の程度が高いと想定されるレール側から作用する荷重を支持する位置に介在部材が装着されているためまくら木本体の摩耗が起こりにくい。従って、本発明によれば、敷設後、長期にわたってレール側から作用する荷重に起因する摩耗や劣化が起こらないまくら木を提供できる。
【0046】
請求項17に記載の発明は、介在部材が、まくら木本体よりも耐摩耗性が高いことを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載のまくら木である。
【0047】
上記したように、本発明のまくら木は、設置面あるいはレールとまくら木本体との間に介在部材が介在した状態で敷設される。そのため、本発明のまくら木では、介在部材が最も摩擦力を受ける部位である。かかる事情を考慮し、本発明のまくら木は、介在部材がまくら木本体よりも耐摩耗性に優れたものとされている。そのため、本発明のまくら木は、長期にわたって使用されても摩耗や破損が起こりにくい。
【0048】
請求項18に記載の発明は、介在部材が、まくら木本体よりも圧縮強度が高いことを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載のまくら木である。
【0049】
かかる構成によれば、大きな荷重が作用してもしっかりと支持可能なまくら木を提供できる。
【0050】
請求項19に記載の発明は、まくら木本体が、介在部材より引張強度が高いことを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載のまくら木である。
【0051】
かかる構成によれば、列車の通過等により大きな外力が作用するような場所に敷設されてもレール側から作用する荷重をしっかりと支持可能なまくら木を提供できる。
【0052】
請求項1乃至19のいずれかに記載のまくら木において、まくら木本体は、長手方向に引き揃えられた長繊維によって補強された樹脂発泡体であることが望ましい。(請求項20)
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、耐摩耗性に優れ、資源を有効利用可能なまくら木を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
続いて、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発
明の第1実施形態のまくら木1を示す斜視図である。まくら木1は、橋桁B(設置面)上にレールRを敷設するために使用されるものである。即ち、まくら木1は、橋桁BとレールRとの間に介在するように設置される。まくら木1は、本体部2と、この長手方向両端部に固定された2つのパッキン3(介在部材)とから構成されている。
【0055】
本体部2は、長繊維によって補強された樹脂を略直方体状に成形したものである。さらに具体的には、本体部2は、長手方向に向けて埋設した長繊維で補強した樹脂、すなわち合成木材により形成されたものであり、より好ましくはガラス長繊維を長手方向に引き揃えて埋設した合成木材やその他の熱硬化性樹脂発砲体により形成されたものであり、後述するパッキン3よりも引っ張り強度が高い。ここで、合成木材とは、埋設した長繊維で補強した樹脂である。本体部2に使用される合成木材は、ガラス長繊維を長手方向に引き揃えて埋設した熱硬化性樹脂発砲体であり、例えば、積水化学工業株式会社製、商品名「エスロンネオランバーFFU」などを好適に使用可能である。本体部2は、体積割合で約10〜20%のガラス長繊維を含んでいる。そのため、本体部2は、風雨にさらされる過酷な環境下に配置されても腐食せず、十分な引っ張り強度を発揮する。
【0056】
本体部2には、長尺方向両端部に、天面5側から底面6側に貫通した固定孔7がそれぞれ4つずつ設けられている。固定孔7は、レールRの装着に使用されるタイプレートPを固定するためのねじ釘やボルト等を挿通するためのものである。図1(a),(c)のように、本体部2の天面5側であって長手方向両端部には、タイプレートPおよび締結具Fを用いてレールRが固定されている。
【0057】
パッキン3は、図1(a)のように略直方体の外形を有し、本体部2の長手方向両端部の底面6側に接着固定されている。ここで、本体部2とパッキン3との固定に使用される接着剤としては、これらの接合面を接着することができるものであれば特に限定されるものではなく、本体部2やパッキン3等の材質に応じて適宜選定することができる。本実施形態のまくら木1は、本体部2が合成木材製であるため、例えばエポキシ樹脂等によって構成される接着剤を好適に用いることができる。
【0058】
パッキン3は、樹脂材料を所定形状に成形した成型品である。パッキン3は、図1(b)に示すように、短繊維成分10および様々な形状に破砕された耐摩耗性チップ11を含み、硬化性樹脂で硬化させた構成となっている。短繊維成分10は、例えば本体部2の製作の際に発生する研磨粉、切削粉、切断粉などの状態で添加される。また、耐摩耗性チップ11は、合成ゴムや金属、セラミックス等の材料を粉砕したものである。パッキン3は、本体部2よりも圧縮強度が高く、耐摩耗性に優れている。
【0059】
さらに具体的に説明すると、パッキン3に含まれている短繊維成分10は、体積割合で約5〜50%程度含んでいることが望ましく、約10〜20%程度の範囲内であることがより一層好ましい。また、短繊維成分10として添加される研磨粉、切削粉、切断粉は、約0.1mm角〜5mm角程度の大きさであることが好ましく、約1mm角〜3mm角程度の大きさであることが望ましい。耐摩耗性チップ11は、体積割合で約5〜50%程度含んでいることが望ましく、約10〜20%程度の範囲内であることがより一層好ましい。耐摩耗性チップ11は、平均粒径が約3mm〜20mm程度の大きさであることが好ましく、約10mm程度の大きさであることが望ましい。
【0060】
パッキン3は、図1(c)のように、本体部2の底面6側であって、まくら木1を橋桁Bに固定したときに橋桁Bの表面と本体部2との間に介在する位置に固定されている。そのため、本体部2は、橋桁Bの表面と本体部2の底面6とが直接的に接触せず、これらの間で摩擦が起こらない。また、パッキン3は、レールRの装着位置の直下あるいは直下を僅かに離れた位置に固定されている。換言すると、パッキン3は、レールR側から作用す
る荷重を支持可能な位置に設置されている。
【0061】
本体部2およびパッキン3の厚みの比率は、まくら木1の敷設条件等に応じて適宜調整可能であるが、約10:1〜1:1程度に調整されることが望ましく、約4:1〜3:1程度とすることがより一層望ましい。
【0062】
上記したように、まくら木1は、本体部2と設置面たる橋桁Bとの間にパッキン3が介在する構成である。また、パッキン3は、まくら木1に対して敷設されるレールR側から作用する荷重を支持する位置に配置されている。そのため、まくら木1は、長期にわたって敷設されても本体部2の摩耗が殆ど起こらない。また、まくら木1は、大部分を構成する本体部2の摩耗が殆ど起こらず、パッキン3が摩耗して交換の必要が生じた際であっても本体部2をそのまま再利用できる。
【0063】
上記実施形態において採用されているパッキン3は、短繊維成分10や耐摩耗性チップ11を含んでいるため、圧縮強度が高く、耐摩耗性に優れている。そのため、まくら木1は、レールR側から大きな荷重を受けてもこれをしっかりと支持可能であると共に、パッキン3の摩耗が起こりにくい。
【0064】
また、パッキン3は、本体部2を構成する合成木材(FFU)やその他の繊維強化樹脂(Fiber Reinforced Plastics 以下、単にFRPと称す)等の加工時や成型時に発生す
る廃材を再利用して製造できる。また、パッキン3に含まれている合成ゴム、金属、セラミックス等によって構成される耐摩耗性チップについても、廃材を再利用できる。そのため、本実施形態のまくら木1は、資源を有効利用して製造できる。
【0065】
上記実施形態において採用されている本体部2は、ガラス長繊維を長手方向に引き揃えて埋設した合成木材を成型したものであるため、引っ張り強度が高い。そのため、まくら木1は、レールR上を通過する列車等から作用する荷重をしっかりと支持できる。
【0066】
まくら木1は、橋桁B上に設置されるものであったが、例えばバラスト道床上に敷設される並まくら木や、分岐まくら木等としても採用可能である。
【0067】
続いて、本発明の第2実施形態に係るまくら木について図面を参照しながら詳細に説明する。図2において、20は本実施形態のまくら木である。まくら木20は、上記実施形態のまくら木1と同様の構成を有するため、共通する部分には同一の符号を付し、詳細の説明については省略する。
【0068】
まくら木20は、まくら木1と同様に、橋桁B上にレールRを敷設するために使用されるものである。まくら木20は、長尺状の本体部2の長手方向両端部にタイプレートPおよび締結具Fによって2本のレールRが取り付けられ、レールR側から作用する荷重を支持するものである。まくら木20は、本体部2の底面6側に固定されるパッキン21の形状がまくら木1と異なる。以下、まくら木20に特有の構成であるパッキン21についてさらに詳細に説明する。
【0069】
パッキン21は、図2(a)〜(c)のように略直方体の外形を有するブロック状の部材である。パッキン21は、まくら木1に採用されているパッキン3と同様に、樹脂材料を所定形状に成形した成型品である。さらに具体的には、パッキン21は、様々な形状に破砕された短繊維成分10や耐摩耗性チップ11を含んでおり、硬化性樹脂によって硬化されたものである。パッキン21は、本体部2よりも圧縮強度が高く、耐摩耗性に優れている。
【0070】
パッキン21は、天面22側が平坦であり、底面23側に2本の溝25,25が平行に設けられた構成となっている。パッキン21は、天面22を本体部2の底面6に接着することにより溝25,25が下方に開口した状態で固定されている。溝25,25は、橋桁Bに装着され、この表面から突出しているリベット26の頭部等の逃げとして機能する。そのため、まくら木20は、リベット26等によって設置面が凹凸状になった部位に敷設されてもがたつきが生じない。
【0071】
また、設置面たる橋桁Bの表面にリベット26等による凹凸があってもこれが溝25に収納され、パッキン21と直接接触しない。そのため、本実施形態のまくら木20は、本体部2上に敷設されたレールR側から大きな荷重を受けても、これに伴う応力が局所に集中せず、分散支持され、パッキン21の破損が起こらない。
【0072】
上記実施形態のまくら木1,20は、いずれもパッキン3,21を本体部2の底面6側に接着固定したものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばまくら木1は、図3に示すようにパッキン3の天面側に突起13を設けると共に、本体部2の底面6側に突起13が嵌合可能な凹部15を設け、これらを嵌合させた状態で接着する等の構成としてもよい。かかる構成によれば、本体部2とパッキン3,21の接合状態をより強固なものとすることができる。
【0073】
続いて、本発明の第3実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図4は、本実施形態のまくら木30を示す斜視図である。まくら木30は、図4のように、長尺状の本体部31の長手方向両端部に短まくら木32,32(介在部材)を固定したものである。換言すれば、まくら木30は、2本の短まくら木32,32を長尺状の本体部31によって連結した構成となっている。また、まくら木30は、本体部31とレールRとの間に短まくら木32(介在部材)が介在した状態で使用される。本体部31は、上記実施形態で使用されている本体部2と同様に、長手方向に引き揃えられたガラス長繊維で補強された合成木材を略直方体状に成型したものであり、引っ張り強度が高い。
【0074】
本体部31は、長尺方向両端部に相当する位置に天面33側から底面34側に向けて窪んだ嵌合凹部35が設けられている。嵌合凹部35は、短まくら木32を嵌め込むためのものであり、短まくら木32の外形と略合同形の矩形の開口を有する。嵌合凹部35の深さdは、短まくら木32の底面34側の部位が嵌る程度とされている。さらに具体的には、嵌合凹部35の深さdは、短まくら木32の厚みtの約1/4〜1/2程度であることが望ましい。本実施形態では、嵌合凹部35の深さdが、短まくら木32の厚みtの約1/3程度とされている。
【0075】
短まくら木32は、上記実施形態のパッキン3,21と同様に短繊維成分10や耐摩耗性チップ11を含有し、硬化性樹脂で硬化した樹脂材料をブロック状に成形したものである。短まくら木32に含有されている短繊維成分10は、本体部31を構成する合成木材(FFU)等の切削粉の状態や研磨粉等の状態で添加される。さらに具体的には、短繊維成分10は、合成木材等を約0.1mm角〜5mm角程度の大きさまで粉砕したものであることが望ましく、約1mm角〜5mm角程度の大きさまで粉砕したものであることが望ましい。また、短まくら木32に含まれている短繊維成分10は、体積割合で約5〜50%程度含んでいることが望ましく、約10〜20%程度の範囲内であることがより一層好ましい。
【0076】
短まくら木32が含有する耐摩耗性チップ11は、合成ゴムや金属、セラミックス等の材料を粉砕した状態で添加される。耐摩耗性チップ11は、平均粒径が約3mm〜20mm程度の大きさまで粉砕されたものであることが好ましく、約10mm程度の大きさまで粉砕されたものであることが望ましい。また、短まくら木32は、耐摩耗性チップ11を
体積割合で約5〜50%程度含んでいることが望ましく、約10〜20%程度の範囲内であることがより一層好ましい。
【0077】
短まくら木32は、図4および図5のように天面37側から底面38側に向けて窪んだレール収納部40を有する。レール収納部40は、側面41,43間を突き抜けた溝であり、側面41,43に隣接する側面45,46に対して所定の角度で傾斜した傾斜面47,48を有する。また、レール収納部40内であって、傾斜面47,48に沿う位置には底面38側に向けて貫通した長孔50,51が設けられている。長孔50,51には、底面38側から後述する締結具53を固定するためのネジ軸52が長孔50,51に沿って摺動可能な状態で挿通されている。
【0078】
図5および図6に示すように、長孔50,51から上方に向かって突出したネジ軸52,52には締結具53,53が装着される。締結具53は、表面54側から見ると略台形状のくさび状の部材である。締結具53は、表面54側から裏面58側に向けて貫通し、ネジ軸52を挿通するための貫通孔55を有する。また、締結具53は、裏面58側であって側面56側の位置に段部60が形成されている。段部60は、締結具53をレールRの底部57の上方から被せるように装着した際に底部57に沿う形状とされている。
【0079】
締結具53には、側面56に対向し、これに対して傾斜した当接面61が設けられている。図8のように、側面56に対する当接面61の傾斜角は、短まくら木32の側面45,46に対するレール収納部40の傾斜面47,48の傾斜角と略同一とされている。そのため、当接面61がレール収納部40の傾斜面47,48に沿うように締結具53を摺動させると、締結具53の側面56、即ち段部60が対向する傾斜面48,47に近接あるいは離反する。そのため、レール収納部40の略中央部にレールRを収納した状態でレールRの両側方に締結具53,53を差し込み、この締結具53,53を図8(b)に矢印で示すようにレールRの延伸方向に摺動させると、締結具53によってレールRがレールRの延伸方向に交差する方向(図8(b)の左右方向)に押し動かされ、敷設位置が微調整される。
【0080】
さらに具体的には、例えば図8(b)においてレールRの左方にある締結具53(53a)を矢印Aで示すように押し動かすと、傾斜面47に沿って締結具53aが移動し、レールRが矢印a方向に移動する。レールRが所望の位置まで移動すると、レールRの左方側の空間に別の締結具53(53b)が段部60がレールRの底部57に当接し、当接面61が傾斜面48に密着するまで差し込まれる。レールRは、締結具53a,53bによってレールRに交差する方向への移動が阻止された状態となる。この状態において締結具53の貫通孔55に挿通されたネジ軸52にナット62を装着すると、レールRの底部57が締め付けられ、レールRに対してまくら木30が固定された状態となる。また、逆にレールRを左方向に押し動かしたい場合は、締結具53aを取り外した状態で図8(b)に矢印Bで示すように締結具53bを差し込む。レールRは、締結具53bに押し動かされて矢印bで示すように左方向に移動する。その後、締結具53aを矢印Aで示すようにしっかりと差し込めば、レールRが締結具53a,53bによって挟まれ固定される。
【0081】
上記したように、本実施形態のまくら木30は、2本の短まくら木32を繋ぐ本体部31がレールRと直接的に接触していないため、レールR上を列車等が通過し、振動が発生しても本体部31の摩耗が起こらない。そのため、まくら木30は、短まくら木32が摩耗や損傷して交換せねばならなくなっても、まくら木30の大部分を構成する本体部31はそのまま再利用できる。
【0082】
また、まくら木30は、本体部31の嵌合凹部35内に短まくら木32を嵌め込んで接着固定したものであるため、長期にわたって使用されても本体部31と短まくら木32の
接合状態が維持される。
【0083】
本実施形態のまくら木30において、短まくら木32は、略直方体のブロック状のものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図9(a)に示す短まくら木32aのように天面37側から底面34側に向けて拡幅する形状であってもよい。また、上記した短まくら木32は、天面37側にレールRを収納可能なレール収納部40を備えたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図9(b)に示す短まくら木32bのように略直方体状のブロック体としてもよい。
【0084】
上記したまくら木30は、短まくら木32に代わって側面41,43,45,46がいずれも平坦なものであったが、図10(a)〜(f)に示すように側面41,43,45,46の一部または全部に溝65や凹部64を設けた短まくら木32c〜32hを採用した構成としてもよい。また、まくら木30は、短まくら木32に代わって図11(a)〜(f)のように側面41,43,45,46の一部または全部に突起66,67を設けた短まくら木32i〜32nを採用した構成としてもよい。
【0085】
上記したように側面41,43,45,46に溝65や凹部64、突起66,67を設けた短まくら木32c〜32hを採用する場合、図11および図12に示すように本体部31の嵌合凹部35内であって、溝65や凹部64、突起66,67に相当する位置に突起67や凹部64を設けた構成とすることが望ましい。この場合、図11(a)や図12(a)に矢印で示すように短まくら木32c〜32eを押し込むと溝65や凹部68と突起66,67とが嵌合し、短まくら木32c〜32eが本体部31にしっかりと固定される。
【0086】
また、上記したまくら木30は、図14〜図16に示すように、本体部31と短まくら木32との間に弾性材69や制振作用を有する制振材68を介在させることも可能である。さらに具体的には、弾性材69や制振材68は、図14のように短まくら木32の底面38と嵌合凹部35との間に挟まるシート状のものや、図15のように嵌合凹部35を構成する壁面全体をカバーし、短まくら木32の下部を包囲するものを採用可能である。また、図16のように短まくら木32の底面38よりも面積の大きなシート状の弾性材69や制振材68を短まくら木32と共に嵌合凹部35内に押し込み、短まくら木32の底面38と、側面41,43や側面45,46との間に介在させた構成としてもよい。また、短まくら木32と嵌合凹部35の隙間や、弾性材69や制振材68と短まくら木32および嵌合凹部35の隙間に接着剤や液体状の樹脂を流し込み硬化させてもよい。かかる構成によれば、レールR側から本体部31側への振動の伝播を最小限に抑制できる。
【0087】
続いて、本発明の第4実施形態のまくら木について説明する。図17は、本実施形態のまくら木70を示す分解斜視図である。まくら木70は、長尺状の本体部71の両端部に短まくら木72(介在部材)を装着したものである。換言すると、まくら木70は、2つの短まくら木72を本体部71によって連結した構成を有する。
【0088】
本体部71は、上記したまくら木1の本体部2等と同様に、長手方向に引き揃えられたガラス長繊維によって補強された合成木材を略直方体状に成型したものであり、引っ張り強度が高い。本体部71の長手方向両端側には、天面75側から底面76側に向けて窪んだ嵌合凹部73が設けられている。嵌合凹部73は、本体部71の長手方向に広がる長手側面77,78側に突き抜けている。また、嵌合凹部73は、本体部71の長手方向両端部の端面80,81に対して略平行な短手側面82,83を有する。嵌合凹部73には、本体部71の厚み方向に貫通し、短まくら木72を本体部71に固定するためのボルトを挿通するための6つの貫通孔85が設けられている。
【0089】
短まくら木72は、上記した短まくら木32と同様に短繊維成分10や耐摩耗性チップ11を含有し、硬化性樹脂で硬化した樹脂材料をブロック状に成形したものである。短まくら木72に含有されている短繊維成分10や耐摩耗性チップ11の材質や組成比、大きさ等の条件は、短まくら木32と略同一であることが好ましい。
【0090】
短まくら木72は、本体部71よりも短尺であり、本体部71の幅方向に跨るように装着されるブロック状の部材である。短まくら木72は、図17に示すように、全体的に幅W1が本体部71の幅W2(短手方向の長さ)よりも大きいが、天面87が本体部71の幅と略同一となるように面取りされ、面取り部88が形成されている。面取り部88は、図17(c)のようにレールRを敷設し、レールR側から観察した時に本体部71の幅方向にはみ出す部分にある。そのため、レールR側から短まくら木72側に作用する荷重の大部分は、本体部71の厚み方向(図17の上下方向)に作用し、まくら木70の設置安定性が確保される。
【0091】
短まくら木72の天面87には、後述する埋栓90を装着するための座繰穴91が4つ設けられている。また、短まくら木72の底面92には、図17(b)のように6つの装着穴93が設けられている。装着穴93は、上記した本体部71の貫通孔85に相当する位置に設けられており、この貫通孔85に本体部71の底面76側から挿通されたボルトをねじ込むためのものである。
【0092】
短まくら木72は、面取り部88から続き、天面87および底面92に対して略垂直に延伸した脚部95,95を有する。短まくら木72の底面92から脚部95の先端までの距離d1(脚部95の長さ)は、本体部71に設けられた嵌合凹部73の深さd2(短手側面82,83の高さ)よりも長い。また、脚部95,95に挟まれた部位の幅は、上記した本体部71の幅W2と略同一であり、嵌合凹部73を形成している。そのため、本体部71の嵌合凹部73と、短まくら木72の嵌合凹部73とによって嵌合構造を形成すると、図17(c)に斜線で示すように短まくら木72の脚部95が本体部71の長手側面77,78に面接触すると共に、短まくら木72の端面96,97の一部が本体部71の短手側面82,83と面接触する。そのため、短まくら木72は、本体部71との間に形成された嵌合構造によって本体部71の長手方向および短手方向への移動が阻止される。
【0093】
短まくら木72に装着される埋栓90は、FRP(繊維強化プラスチック)、ナイロン、金属、あるいは、セラミックなどの素材を用いて形成している。埋栓90には、例えば図18(a)〜(e)に示すような形状を有するものを採用できる。さらに具体的には、埋栓部材90aは、有底円筒形の埋栓本体100の上端部に鍔101が設けられ、埋栓本体100の内周面に、タイプレートPの固定に使用されるボルトを係止するためのねじ102が刻設されている。埋栓本体100の外周面には、埋栓部材90aに作用する引き抜き力に対する抵抗力を増加する突起103が全面に設けられている。
【0094】
また、図18(b)に示す埋栓部材90bは、円筒形状で、上端部に鍔105を有する埋栓本体106と、埋栓本体106に係止するボルト107で構成されている。埋栓本体106の内周壁には、タイプレートPの固定用のボルトおよびボルト107を係止するねじ108が刻設されている。ボルト107には、軸方向に貫通した貫通孔109が設けられている。これは、埋栓本体106の内部に侵入した雨水等を外部に排出するためのものである。埋栓部材90bを採用する場合は、上記した座繰穴91を短まくら木72の底面92側まで貫通させておき、天面87側から挿通された埋栓本体106に底面92側からボルト107を装着することにより埋栓部材90bを装着できる。
【0095】
図18(c)に示す埋栓部材90cは、角柱形状の埋栓本体110の内部に締結部材を係止するねじ111が刻設されたものであり、埋栓本体110の外面には、引き抜き力に
対する抗力を増すための溝状の凹部112が横方向に全面に渡って設けられている。
【0096】
図18(d)に示す埋栓部材90dは、角柱形状の埋栓本体115の内部に締結部材を係止するねじ116が刻設されたものであり、埋栓本体115の外面の角部が削設されて、引き抜き力に対する抗力を増すための凹部117が形成されている。また、図18(e)に示す埋栓部材90eは、有底円筒形の埋栓本体120の上端に方形状の鍔121が設けられ、埋栓本体の内部にねじ122が刻設されたものである。
【0097】
まくら木70は、図17(c)のように短まくら木72の天面87側に埋設された埋栓90にボルトを装着することにより固定されたタイプレートP上にレールRを敷設して使用される。まくら木70は、本体部71とレールRとの間に短まくら木72が介在した状態となるため、レールR上を列車等が通過しても本体部71の摩耗が起こらない。
【0098】
上記したように、まくら木70は、短まくら木72が本体部71の幅方向に跨ると共に、短まくら木72の幅方向両端側から下方に向けて延伸した脚部95,95が本体部71の長手側面77,78に面接触し、挟み込んだ状態となっている。さらに、短まくら木72の端面96,97は、本体部71の嵌合凹部73を形成し、端面80,81に平行な短手側面82,83に面接触している。そのため、まくら木70は、本体部71および短まくら木72が互いに他方の位置ズレを防止する構造となっている。従って、まくら木70は、長期にわたって使用しても本体部71と短まくら木72の位置ズレが起こらない。
【0099】
続いて、本発明の第5実施形態について図面を参照しながら説明する。図19(a)は、本実施形態のまくら木を示す分解斜視図であり、同(b)は同(a)のまくら木において採用されている短まくら木を底面側から観察した状態を示す斜視図、同(c)は、同(a)のまくら木の使用形態を示す斜視図である。
【0100】
図19において、130は本実施形態のまくら木である。まくら木130は、長尺状の本体部131の両端に短まくら木132,132を固定した構造となっている。本体部131は、上記したまくら木1の本体部2等と同様に、長手方向に引き揃えられたガラス長繊維によって補強された合成木材を略直方体状に成型したものであり、引っ張り強度が高い。本体部131の長手方向両端部には、天面133から突出した直方体状の突部135が設けられている。また、突部135の周囲には、短まくら木132を固定するためのボルトを装着可能なボルト装着穴134が4つ設けられている。
【0101】
短まくら木132は、上記した短まくら木32と同様に短繊維成分10や耐摩耗性チップ11を含有し、硬化性樹脂で硬化した樹脂材料をブロック状に成形したものである。短まくら木132は、短繊維成分10や耐摩耗性チップ11の材質や組成比、大きさ等の条件が短まくら木32と略同一とされている。そのため、短まくら木132は、短まくら32と同様に圧縮強度が高く、耐摩耗性に優れている。
【0102】
短まくら木132は、図19のように底面136および本体部131の幅が共にW3で同一である。短まくら木132は、底面136側が天面137よりも張り出した形状となっており、その張り出し部分に短まくら木132を固定するためのボルトを挿通可能な貫通孔138が設けられている。短まくら木132の底面136には、略中央部に本体部131の突部135の外形に沿う形状の凹部140が設けられている。短まくら木132の天面137側には、4つの座繰穴141が設けられており、埋栓90が埋め込まれている。
【0103】
短まくら木132は、図19(c)に示すように貫通孔138に装着されたボルトによって本体部131に固定されると共に、底面136側に開口した凹部140が本体部13
1の天面133の突部135と嵌合して嵌合構造を形成し、本体部131にしっかりと固定されている。
【0104】
本実施形態のまくら木130は、図19(c)のように、短まくら木132の天面137側にタイプレートPがボルトを埋栓90に締結することにより装着され、その上方にレールRが敷設される。本実施形態のまくら木130は、本体部131と短まくら木132とが上記した嵌合構造を形成して一体化されているため、短まくら木132上に敷設されるレールRから振動等が伝播しても本体部131と短まくら木132との摩擦が起こらない。そのため、本実施形態のまくら木130は、本体部131および短まくら木132の摩耗が極めて少なく、レールRを長期にわたりしっかりと支持できる。
【0105】
上記したように、本実施形態のまくら木130は、本体部131の天面133側から突出した突部135と、短まくら木132の底面136側に開口した凹部140とが嵌合構造を形成して一体化されている。さらに、凹部140は、突部135の外形に沿う形状であるため、両者の間に殆ど隙間がない。そのため、まくら木130は、レールR側から振動の影響を受けても本体部131と短まくら木132との接合状態が維持され、レールRをしっかりと支持できる。
【0106】
上記第1〜第5実施形態に示したまくら木1,20,30,70,130に採用されている本体部2,31,71,131は、いずれも単一の合成木材を所定の形状に成型したものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば複数の合成木材製の板体を積層した構成としてもよい。また、上記各実施形態において採用されていたパッキン3,21や短まくら木32,72,132は、いずれも短繊維成分10と耐摩耗性チップ11とを含むものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、短繊維成分10および耐摩耗性チップ11のいずれか一方を含まないものや、本体部2,31,71,131と同様に合成木材で製作されたものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態のまくら木を示す分解斜視図であり、同(b)は同(a)に示すまくら木に採用されているパッキンの断面図、同(c)は同(a)に示すまくら木の敷設状態を示す正面図である。
【図2】(a)は本発明の第2実施形態のまくら木を示す分解斜視図であり、同(b)は同(a)に示すまくら木に採用されているパッキンを示す斜視図、同(c)は同(a)に示すまくら木の敷設状態を示す正面図である。
【図3】(a)は、図1に示すまくら木の変形例の要部を拡大した斜視図であり、同(b)は同(a)のA−A断面図である。
【図4】(a)は本発明の第3実施形態のまくら木を示す分解斜視図であり、同(b)は同(a)に示すまくら木の敷設状態を示す正面図である。
【図5】(a)は図4に示すまくら木に採用されている短まくら木を示す斜視図であり、同(b)は同(a)に示す短まくら木に装着される締結具を裏面側から見た状態を示す斜視図である。
【図6】図4(b)の要部を拡大した斜視図である。
【図7】図6のA方向矢視図である。
【図8】(a)は図4に示すまくら木にレールを敷設した状態を示す正面図であり、同(b)は図4に示すまくら木に対するレールの敷設方法を示す概念図である。
【図9】図4に示すまくら木に採用されている短まくら木の変形例を示す斜視図である。
【図10】図4に示すまくら木に採用されている短まくら木の別の変形例を示す斜視図である。
【図11】図4に示すまくら木に採用されている短まくら木のさらに別の変形例を示す斜視図である。
【図12】図10に示す短まくら木を本体部に嵌め込む前後の状態を示す概念図である。
【図13】図11に示す短まくら木を本体部に嵌め込む前後の状態を示す概念図である。
【図14】(a)は図10の変形例であるまくら木の分解状態を示す断面図であり、同(b)は同(a)の斜視図、同(c)は同(a)に示すまくら木を示す断面図である。
【図15】(a)は図10の別の変形例であるまくら木の分解状態を示す断面図であり、同(b)は同(a)の斜視図、同(c)は同(a)に示すまくら木を示す断面図である。
【図16】(a)は図10のさらに別の変形例であるまくら木の分解状態を示す断面図であり、同(b)は同(a)の斜視図、同(c)は同(a)に示すまくら木を示す断面図である。
【図17】(a)は本発明の第4実施形態のまくら木を示す分解斜視図であり、同(b)は同(a)に示すまくら木に採用されている短まくら木を底面側から観察した状態を示す斜視図、同(c)は同(a)に示すまくら木の敷設状態を示す正面図、同(d)は同(a)のA方向矢視図である。
【図18】(a)は、図17に示すまくら木において採用されている埋栓を示す斜視図であり、同(b)〜(e)は同(a)に示す埋栓の変形例を示す斜視図である。
【図19】(a)は本発明の第5実施形態のまくら木を示す分解斜視図であり、同(b)は同(a)に示すまくら木に採用されている短まくら木を底面側から観察した状態を示す斜視図、同(c)は同(a)に示すまくら木の敷設状態を示す正面図、同(d)は同(a)のA方向矢視図である。
【符号の説明】
【0108】
1,20,30,70,130 まくら木
2,31,71,131 本体部
3,21 パッキン(介在部材)
10 短繊維成分
11 耐摩耗性チップ
13 突起
25 溝
32,72,132 短まくら木(介在部材)
35,73 嵌合凹部
40 レール収納部
47,48 傾斜面
53 締結具
68 制振材
69 弾性材
77,78 長手側面
82,83 短手側面
90 埋栓
95 脚部
135 突部
140 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のまくら木本体を備え、レールと当該レールが敷設される設置面との間に配置されるまくら木であって、前記まくら木本体には、まくら木本体よりも短尺で前記設置面およびレールのいずれか一方又は双方と前記まくら木本体との接触を防止する介在部材が一又は複数装着されていることを特徴とするまくら木。
【請求項2】
まくら木本体と介在部材とを備え、レールと当該レールが敷設される設置面との間に配置されるまくら木であって、前記介在部材は、設置面およびレールのいずれか一方又は双方とまくら木本体との間に介在し、まくら木本体と嵌合構造を形成して一体化されており、まくら木本体は、長手方向に広がる長手面および短手方向に広がる短手面を有し、前記嵌合構造は、前記介在部材が、まくら木本体の前記長手面および短手面のいずれか一方または双方と面接触して形成されていることを特徴とするまくら木。
【請求項3】
まくら木本体と介在部材とを備え、レールと当該レールが敷設される設置面との間に配置されるまくら木であって、前記介在部材は、設置面およびレールのいずれか一方又は双方とまくら木本体との間に介在しており、まくら木本体は、天面あるいは底面のいずれか一方に開口し、介在部材の天面あるいは底面および側面の一部又は全部に沿う形状に窪んだ開口部を有し、当該開口部に介在部材が嵌合してまくら木本体と嵌合構造を形成していることを特徴とするまくら木。
【請求項4】
まくら木本体と介在部材とを備え、レールと当該レールが敷設される設置面との間に配置されるまくら木であって、前記介在部材は、設置面およびレールのいずれか一方又は双方とまくら木本体との間に介在し、まくら木本体は、天面あるいは底面のいずれか一方から突出した突出部を有し、介在部材は、天面あるいは底面に前記突出部の外形に沿う形状に窪んだ開口部を有し、当該開口部に前記突出部が嵌合してまくら木本体と嵌合構造を形成していることを特徴とするまくら木。
【請求項5】
介在部材は、連結手段の短手方向に跨って嵌合構造部を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のまくら木。
【請求項6】
介在部材は、短繊維成分および耐摩耗性チップのいずれか一方または双方を含む混合体に対して硬化性樹脂を含浸させ、硬化させたものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のまくら木。
【請求項7】
耐摩耗性チップは、合成ゴム、セラミックス、金属のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項6に記載のまくら木。
【請求項8】
短繊維成分は、繊維補強された樹脂成型品を粉砕物あるいは粉体とした状態で添加されることを特徴とする請求項6又は7に記載のまくら木。
【請求項9】
まくら木本体と介在部材との間には、弾性材が介在していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のまくら木。
【請求項10】
まくら木本体と介在部材との間には、まくら木本体側への振動の伝播を抑制する制振材が介在していることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のまくら木。
【請求項11】
介在部材は、まくら木本体と材質が異なることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のまくら木。
【請求項12】
介在部材は、レールとまくら木本体との間に配される短まくら木であり、レールが装着されるレール装着面に、レールの一部または全部を収納可能なレール収納部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のまくら木。
【請求項13】
レール収納部は、レールの延伸方向に対して傾斜した傾斜部を有し、当該傾斜部は、レールに沿う位置に配置され、レールを介在部材に固定するための固定部材と当接することを特徴とする請求項12に記載のまくら木。
【請求項14】
介在部材は、レール又はタイプレートを締結する締結部材を装着可能な埋栓手段を有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のまくら木。
【請求項15】
介在部材は、一又は複数の表面を有し当該表面から突出した突出部を有する他部材に面接触する接触面と、当該接触面に前記突出物を収納可能な凹部とを備えていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載のまくら木。
【請求項16】
介在部材は、レール側から作用する荷重を支持する位置に装着されていることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載のまくら木。
【請求項17】
介在部材は、まくら木本体よりも耐摩耗性が高いことを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載のまくら木。
【請求項18】
介在部材は、まくら木本体よりも圧縮強度が高いことを特徴とする請求項1乃至17のいずれかに記載のまくら木。
【請求項19】
まくら木本体は、介在部材より引張強度が高いことを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載のまくら木。
【請求項20】
まくら木本体は、長手方向に引き揃えられた長繊維によって補強された樹脂発泡体であることを特徴とする請求項1乃至19のいずれかに記載のまくら木。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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